説明

スペクトル選択素子を有する光学装置

【課題】
励起光の波長の切換時に使用の光学素子の交換または特殊な調整を行う必要なく、波長の異なる励起光の差込入射が可能であるよう、蛍光励起に適する光源の光路、好ましくは、共焦レーザ走査顕微鏡の光路の光学装置を構成、改良することにある。
【解決手段】
少なくとも1つの光源(2)の励起光(3)を顕微鏡に差込入射し且つ物体(10)で散乱、反射された励起光(3)を分離抽出するまたは物体(10)から検知光路(12)を介して来る光(13)から励起波長を分離抽出する少なくとも1つのスペクトル選択素子(4)を有する形式の、蛍光励起に適する光源の光路、好ましくは、共焦レーザ走査顕微鏡の光路の光学装置は、簡単な構造で構成を変更できるよう、スペクトル選択素子(4)によって、波長の異なる励起光(3,9)を分離抽出できることを特徴とする。代替方策として、この種の光学装置は、スペクトル選択素子(4)を分離抽出すべき励起波長に設定できることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光励起に適する光源の光路、好ましくは、共焦レーザ走査顕微鏡の光路の光学装置であって、少なくとも1つの光源の励起光を顕微鏡に差込入射し且つ物体で散乱、反射された励起光を分離抽出する、または物体から検知光路を介して来る光から励起波長を分離抽出する、少なくとも1つのスペクトル選択素子を有する形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
通常のレーザ走査顕微鏡の場合も共焦レーザ走査顕微鏡の場合も、蛍光励起に適した光源の光路には、全く特殊な透過・反射特性を有する色分光器を使用する。この場合、主として、2色分光器が対象となる。このような素子によって、蛍光励起波長λill1(複数のレーザを使用した場合はλill1、λill2,λill3...,λilln)を照明光路に反射し、かくして、物体内に蛍光分布を形成し、次いで、物体で散乱、反射された励起光とともに光路を色分光器まで通過させる。波長λill1、λill2,λill3...,λillnの励起光は、色分光器においてレーザへ、即ち、検知光路から逆反射される。波長λfluo1、λfluo2,λfluo3...,λfluonの蛍光は、色分光器を通過し、−場合によっては、更にスペクトル分割した後−検知される。
【0003】
色分光器は、通常、干渉フィルタから構成され、励起または検知に使用される波長に応じて適切に減衰される。ここで注意するが、先行技術の上述の説明にもとづき、ダイクロイト(Dichroit)とは、波長の異なる光を偏光によらず波長によって分離する波長分離素子を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際、まず第1に、色分光器が、製造に手間がかかり、従って、高価な光学モジュールである限り、その使用は不利である。更に、色分光器が、一定の波長特性を有し、従って、励起光の波長に関して任意のフレキシビリティで使用することが不可能であるという欠点がある。即ち、例えば、1つのフィルタホイルに複数の色分光器を配置した場合、励起光の波長の切換時、色分光器も交換しなければならない。しかしながら、これは、煩瑣であり、従って、経費がかかり、更に、各色分光器の全く特殊な調整を必要とする。
【0005】
色分光器の使用には、更に、反射に起因する光損失、特に、まさに検知すべき蛍光の光損失が起きるという欠点がある。色分光器の場合、スペクトル透過/反射範囲は、まさに広く(λill±20nm)、全く理想的に“急勾配”(のピーク)をなすものではない。従って、上記スペクトル範囲の蛍光を理想的には検知できない。
【0006】
複数の色分光器を使用する場合、同時に差込入射できるレーザの数は、制限され、即ち、例えば、1つのフィルタホイルに配置され組合わされる色分光器の数に制限される。通常、最大3つのレーザを光路に差込入射する。既述の如く、すべての色分光器を、即ち、1つのフィルタホイルに配置した色分光器も、正確に調整しなければならず、従って、取扱いにおいて極めて著しい手間がかかる。代替法として、物体で散乱/反射された励起光とともに蛍光を効果的に検知器に導く適切なニュートラル分光器を使用できる。この場合、しかしながら、レーザ差込入射時の損失が顕著である。
【0007】
先行技術の資料として、例えば、共焦顕微鏡のための光学装置を示すドイツ特許公開第19627568号が引照される。この場合、具体的に、多数の適切な分散光点および関連の結像素子を有する物面と、観察装置にコントラストの良い共焦の結像を行う多数のピンホールとを同時に共焦的に照明する装置が対象である。この場合、顕微鏡が問題となる。この場合、複数の光源の差込入射は、分散素子を介して行う。複数の分光素子または色分光器が、検知光路に配置されており、かくして、極めて大がかりな装置的必要が生ずる

【0008】
レーザ走査顕微鏡の光路における能動光学素子の使用に関して、米国特許第4827125号および米国特許第5410371号を補足して印照される。この場合、上記公報には、常に、光束を偏向または弱化することを目的としたAOD(アコスト・オプティカル・デフレクタ、音響光学偏向器)およびAOTF(アコスト・オプティカル・チューナブル・フィルタ、音響光学同調フィルタ)の使用が記載されている。
【0009】
さて、本発明の課題は、励起光の波長の切換時に使用の光学素子の交換または特殊な調整を行う必要なく、波長の異なる励起光の差込入射が可能であるよう、蛍光励起に適する光源の光路、好ましくは、共焦レーザ走査顕微鏡の光路の光学装置を構成、改良することにある。更に、所要の光学素子の数を本質的に減少することを意図する。更に、蛍光の理想的検知を実現できることを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
蛍光励起に適する光源の光路、好ましくは、共焦レーザ走査顕微鏡の光路の本発明に係る光学装置は、請求項1の特徴部分記載の特徴によって上記課題を解決する。
即ち、本発明によれば、共焦レーザ走査顕微鏡の光路の光学装置であって、少なくとも1つの光源の励起光を顕微鏡に差込入射し且つ物体で散乱、反射された励起光を分離抽出する、または物体から検知光路を介して来る光から励起波長を分離抽出する、少なくとも1つのスペクトル選択素子を有する形式のものにおいて
該スペクトル選択素子によって、異なった波長(複数)の励起光を分離抽出すること、
該スペクトル選択素子が、音響光学的におよび/または電気光学的に作動すること、及び
該スペクトル選択素子が、AOD(音響光学偏向器)又はAOTF(音響光学同調フィルタ)として構成されていること、
を特徴とする光学装置が提供される(基本形態1)。
上記請求項にもとづき、この種の光学装置は、スペクトル選択素子が、異なった波長(複数)の励起光を分離抽出でき、対応して差込入射できると共にスペクトル選択素子が、分離抽出すべき励起波長に任意に設定可能であることを特徴とする。
なお、特許請求の範囲の付記した図面参照符号は、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にもとづき、蛍光励起に適する光源の光路、好ましくは、共焦レーザ走査顕微鏡の光路において、従来この光路に使用された色分光器を全く特殊なスペクトル選択素子で、即ち、波長の異なる励起光を分離取出または挿入、即ち、差込入射するのに適したスペクトル選択素子で置換え得ることが確認された。このスペクトル選択素子は、一方では、少なくとも1つの光源の励起光を顕微鏡に差込入射するのに役立ち、他方では、物体で散乱、反射された励起光を分離抽出(取出)するのに機能するか、検知光路を介して物体から来る光から対応する励起波長を分離抽出するのに機能する。この限りにおいて、スペクトル選択素子には、二重の機能が与えられる。この場合、双方の機能は、ほぼ準強制的に結合されている。
【0012】
波長の異なる励起光を分離抽出できるというスペクトル選択素子の性能に代えて、挿入または分離すべき各励起波長にスペクトル選択素子を設定することができる。この場合も、上述の二重機能にもとづき、前記の強制的結合関係は簡単に保証される。即ち、スペクトル設定素子によって、励起光を照明光路に差込入射でき、上記の設定機能にもとづき、検知光路を介して物体から来る光から励起光の波長、即ち、励起波長を分離抽出でき、かくして、物体から来る検知光(=蛍光)は、検知のために保存される。
【0013】
有利な態様で、スペクトル選択素子は、−上述の二重機能の助成のため−受動素子または受動構成部材であってよい。この場合、スペクトル選択素子は、透明な光学格子としてまたはホログラフィー素子として構成できる。更に、スペクトル選択素子を受動AOD(音響光学偏向器)またはAOTF(音響光学同調フィルタ)として構成することも考えられる。
【0014】
特に有利な態様で、即ち、分離抽出すべき励起波長に対するスペクトル選択素子の設定機能を具体的に達成するため、スペクトル選択素子は、能動構成部材、即ち、例えば、音響光学的におよび/または電気光学的に作動する素子であってよい。この場合、具体的に、スペクトル選択素子として、AOD(音響光学偏向器)またはAOTF(音響光学同調フィルタ)が考えられる。
【0015】
この場合、先行技術において慣用の色分光器の代わりに、能動スペクトル選択素子、即ち、例えば、AODまたはAOTFを使用する。この能動構成部材の役割は、光源または1つまたは複数のレーザの励起光λill1、λill2,λill3...,λillnを照明光路に、即ち、顕微鏡に差込入射し、次いで、ビーム走査によって物体内に蛍光分布を励起することにある。検知時、物体から来る蛍光は、ほぼ妨害なく、能動スペクトル選択素子を通過できる。この場合、物体で散乱または反射された、光源または1つまたは複数のレーザの励起波長の光は、検知光路外に十分に導かれる。
【0016】
1つの光源または1つのレーザまたは異なる波長λill1、λill2,λill3...,λilln複数のレーザの差込入射のため、対応する周波数v1、v2,v3...,vnのAODを、好ましくは同時に、(切替)作動でき、かくして、各レーザ光束は、AODの通過後、光軸と同軸に進行する。AODの使用に関して、周波数vnが、本来の光路から偏向される波長λillnを選択することが肝要である。この場合、偏向角度φは、下式、即ち、
φ=λillnvn/2f
によって定義される。式中、fは、AOD内の音波の伝播速度である。さて、波長λfluo1、λfluo2,λfluo3...,λfluonのまわりにスペクトル分布を有する検知すべき蛍光は、物体で散乱または反射された波長λill1、λill2,λill3...,λillnの励起光とともに、AODを逆方向へ通過する。しかしながら、光路の逆行性にもとづき、波長λill1、λill2,λill3...,λillnの励起光は、AODの特殊(ないし固有)な設定によって、検知光路からレーザの方向へ偏向される(1次)。即ち、波長λfluo1、λfluo2,λfluo3...,λfluonのまわりの“スペクトル的に保存性の”蛍光は、−従来の色分光器に比して−改善された態様で検知できる(0次)。かくして、何れにせよ、各レーザの差込入射の光軸との整合は、(1つのフィルタホイルに従来の色分光器を使用した)先行技術の場合よりも簡単に実施できる。
【0017】
更に有利な態様で、更なるAOTFを後置すれば、光束統合後に、各波長の出力を選択できる。
【0018】
各種波長λill1、λill2,λill3...,λillnのレーザ光源を差込入射する場合、対応する周波数v1、v2,v3...,vnを有する一つのAOTFを同時に作動(simultan geschaltet)でき、かくして、各波長の励起出力を変更し、用途に最適化できる。レーザ光の供給は、光伝送ファイバによって行うことができる。
【0019】
何れにせよ、光源またはレーザは、結晶の1次方向から同軸に差込入射される。波長λfluo1、λfluo2,λfluo3...,λfluonのまわりにスペクトル分布を有する検知すべき蛍光は、物体で散乱または反射された波長λill1、λill2,λill3...,λillnの励起光とともに、AOTFを逆方向へ通過する。光路の逆行性にもとづき、波長λill1、λill2,λill3...,λillnの蛍光は、AOTFの特殊な設定によって、検知光路から光源またはレーザの方向へ偏向される。即ち、この場合、波長λfluo1、λfluo2,λfluo3...,λfluonのまわりの“スペクトル的に保存性の”励起光は、−従来の色分光器に比して−改善された態様で検知できる(0次)。
【0020】
AODまたはAOTFを使用した場合も透明格子を使用した場合も、励起光は、当該の能動素子の通過後、現れる分散にもとづきスペクトル的に展開(扇状に拡開)される。この場合、1つまたは複数の対応する“逆”素子を後置し、かくして、望ましくないスペクトル的展開が再び抑制されるという利点が得られる。更に、フォーカシングのためのまたは望ましくない光束成分を分離抽出するための更なる光学素子を各素子(AOD,AOTFまたは透明格子)に前置または後置することも考えられる。かくして再統合された光束は、次いで、従来の態様で、後置の色分光器によってスペクトル的に分割し、各種の検知器に結像させることができる。
【0021】
基本的に、“多重帯域検知器”の意味における装置が考えられる。これに関して、この限りにおいて、公知と想定される内容を有するドイツ特許出願5330347.1−42の記載内容をここに引用をもって繰込む。走査ユニットとAODまたは透明格子との間(複数の波長の複数の光源またはレーザの場合)またはAOTF(異なる波長の1つの光源またはレーザの場合)との間に、励起ピンホールが設けてあり、この場合、このピンホールは、検知ピンホールと同一である。この場合、有利な態様で、0次の光束をプリズム効果によってスペクトル的に展開する結晶の性質を検知に利用する。この場合、多重帯域検知器の分散素子は、色分光器と統合されて1つの構成部材を形成し、かくして、従来の検知光路に後置され蛍光強度の更なる損失を伴うすべての色分光器は不要である。
【0022】
極めて有利な態様で、上述の技術を、波長に関して可変に同調可能な光源−例えば、色素レーザ、OPO(optisch parametrisierter Oszillator、光学的にパラメータ化された発振器)、電子線衝突光源−と組合せて、蛍光顕微鏡の極めてフレキシビルな使用を実現できる。励起波長の調整または監視機能は、上述のスペクトル選択素子のうちの1つの素子の制御ユニットと直接に関連させることができ、かくして、上記励起波長のみが顕微鏡の照明光路に同軸に差込入射され、上記波長のみが検知光路から再び分離抽出される。光源と分光素子との結合ないし強制結合は、手動でまたは自動でまたは所定の規則にもとづき行うことができる。この場合、この可能性は、当該の要件プロフィルに適合させなければならない。例えば、走査した各像面にもとづき、励起波長および分光器を適切な態様で変更できる。即ち、多重帯域蛍光物体を検知できる。行毎の切換も考えられる。
【0023】
本発明に係る教示および有利な実施形態の利点は、下記の如く総括できる:
【0024】
スペクトル選択素子は、選択した励起波長λill1、λill2,λill3...,λilln以外のすべての波長について“透明”である。“スペクトル損失”は、最小である。なぜならば、スペクトル選択素子によって偏向できるのは、典型的にλilln±2nmの選択されたスペクトル範囲だけであるからである。かくして、検知のためのスペクトル範囲が拡大される。即ち、ほぼ任意に多数の種類の波長範囲を同時に差込入射、利用できる。スペクトル選択素子に起因するスペクトルの“喪失蛍光強度”は、従来の色分光器の場合よりも小さい。換言すれば、この場合、減少された強度損失は、有利な範囲内にある。能動スペクトル選択素子は、フレキシビルに調整でき、従って、波長の異なる原理的に任意に多数の光源またはレーザを同時に顕微鏡に差込入射できる。かくして、多色FISH(蛍光・in−situ・ハイブリット化)における使用を改善できる。この場合、従って、例えば、“クロストーク”による、蛍光のスペクトル分割が、更に制限される。従来の抑制ないし阻止フィルタは、全く不要となるので、検知時の蛍光の更なる損失は避けられる。
【0025】
更に、他の能動ホログラフィー素子をスペクトル選択素子に後置し、この際、光スキャナの役割を果たさせることも考えられる。双方の素子は、唯一つの構成部材に統合できる。
【0026】
基本的に、蛍光励起に適する限り各種の光源を使用できる。即ち、例えば、白色光源、光学的にパラメータ化された発振器を使用するための光源、電子線衝突光源またはレーザ光源が考えられる。この場合、レーザ光源は、波長に関して可変に同調させることができる。波長の異なる複数の光源または複数のレーザを含む光源を使用できる。
【0027】
さて、本発明の教示を有利な態様で構成、改良する多様な可能性がある。これに関して、一方では、請求項1および2に続く請求項を挙げ、他方では、図面を参照した本発明の好ましい実施例の以下の説明を挙げる。
即ち、本発明の有利な態様には以下の態様が含まれる。
波長の異なる複数の光源を差込入射できる形式のものにおいて、対応する周波数のAODが、好ましくは同時に、作動され、かくして、各種の光束が、AODの通過後、照明光路の光軸と同軸であることが好ましい(形態2)。
該スペクトル選択素子(4)が、AOTF(音響光学同調フィルタ)として構成されていることを特徴とするが好ましい(形態3)。
波長の異なる複数の光源を差込入射できる形式のものにおいて、対応する周波数のAOTFを同時に作動できることが好ましい(形態4)。
スペクトル選択素子が、検知光のスペクトル的展開が少なくとも十分に避けられるよう、構成されていることが好ましい(形態5)。
各波長の出力固有の調節のため、スペクトル選択素子に、少なくとも1つの更なる光学素子またはスペクトル選択素子が後置されていることが好ましい(形態6)。
更なるスペクトル選択素子が、AODであることが好ましい(形態7)。
更なるスペクトル選択素子が、AOTFであることが好ましい(形態8)。
スペクトル選択素子が制御ユニットを含む形式のものにおいて、制御ユニットによる励起波長の調節/監視機能が、強制結合されており、かくして、上記励起波長のみを、好ましくは同軸に、顕微鏡の照明光路に差込入射でき、上記波長のみを検知光路から分離抽出できることが好ましい(形態9)。
スペクトル選択素子による光源の制御を手動でまたは自動的に行うことが好ましい(形態10)。
スペクトル選択素子による光源の制御を任意に定めることができる規則にもとづき行うことが好ましい(形態11)。
該スペクトル選択素子に、少なくとも1つの更なる光学素子が前置および/または後置されていることが好ましい(形態12)。
照明光路内にスペクトル選択素子に後置された能動ホログラフィー素子が、光束スキャナとして作用することが好ましい(形態13)。
スペクトル選択素子および後置のホログラフィー素子が、1つの機能モジュールに統合されていることが好ましい(形態14)。
更なる光学素子が、光束調整手段であるか、スペクトル選択素子によって誘起されたスペクトル的展開を補償する手段であることが好ましい(形態15)。
前記光束調整手段が、レンズとして構成されていることが好ましい(形態16)。
前記光束調整手段が、プリズムとして構成されていることが好ましい(形態17)。 前記光束調整手段が、絞りとして、好ましくは、孔形絞りまたはスリット形絞りとして構成されていることが好ましい(形態18)。
前記光束調整手段が、フィルタとして、(阻止フィルタの場合を含めて)構成されていることが好ましい(形態19)。
前記フィルタが、検知器(15)の直前に設けてあることが好ましい(形態20)。
前記光束調整手段が、フォーカシング手段として構成されていることが好ましい(形態21)。
更なる光学素子として、更にスペクトル分解するための色分光器が設けてあることが好ましい(形態22)。
更なる光学素子として、少なくとも1つのAOTF(17)が設けてあることが好ましい(形態23)。
前記AOTF(17)を受動素子として使用可能であることが好ましい(形態24)。
更なる光学素子の組合せが設けてあることが好ましい(形態25)。
検知光束の展開の角度増を誘起する多重反射手段が、検知光路に設けてあることが好ましい(形態26)。
スリットフィルタが、検知光路に、好ましくは、検知器の直前に設けてあることが好ましい(形態27)。
スリットフィルタが、検知光路内に位置決め可能に配されることが好ましい(形態28)。
スリットフィルタのスリットが、可変であることが好ましい(形態29)。
スペクトル的展開を検知する分光計が、前記検知光路にスペクトル選択素子の後ろに設けてあることが好ましい(形態30)。
分光計が、多重帯域検知器として構成されていることが好ましい(形態31)。
分離抽出された励起波長(の光)が、前記検知光路から光源の方向へ偏向されることが好ましい(形態32)。
前記光源が、白色光源として構成されていることが好ましい(形態33)。
前記光源が、光学的にパラメータ化された発振器(OPO)として構成されていることが好ましい(形態34)。
前記光源が、電子線衝突光源として構成されていることが好ましい(形態35)。
前記光源が、レーザ光源として構成されていることが好ましい(形態36)。
前記レーザ光源を波長可変に同調させ得ることが好ましい(形態37)。
前記レーザ光源が、各種の波長を有する1つのレーザを含むことが好ましい(形態38)。
前記レーザ光源が、各種の波長を有する複数のレーザを含むことが好ましい(形態39)。
前記レーザが、色素レーザとして構成されていることが好ましい(形態40)。
以下図面を参照した本発明の好ましい実施例の説明と組合せて、教示の一般的に好ましい構成および実施例も説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の依拠する先行技術を示すための共焦レーザ走査顕微鏡の光路のこの種の光学装置の略図である。
【図2】第1実施例の略図である。
【図3】共焦レーザ走査顕微鏡の光路の本発明に係る光学装置の、励起波長の異なる3つのレーザを差込入射できる形式の第2実施例の略図である。
【図4】共焦レーザ走査顕微鏡の光路の本発明に係る光学装置の、3つのレーザ光源を透明格子を介して差込入射する形式の第3実施例の略図である。
【図5】光束統合手段を能動スペクトル選択素子に後置した形式の照明光路および検知光路の略部分拡大図である。
【図6】分散補正を行う形式の照明光路および検知光路の略部分拡大図である。
【図7】AODおよびAOTFの基本的機能態様を示す略図である。
【図8】多重帯域検知器の前でスペクトル展開を補足して行う形式の本発明に係る光学装置の他の実施例の略図である。
【図9】検知光路内に多重帯域検知器の前に可変スリットフィルタを設けた形式の図8の実施例の略図である。
【実施例】
【0029】
図1に、先行技術として、蛍光励起に適する光源の光路の従来の光学装置を示した。この装置は、共焦レーザ走査顕微鏡の光路の光学装置である。この場合、レーザスキャナ1は、単に模式的に示してある。先行技術に関する図面において、光源として、その励起光3をスペクトル選択素子4を介して顕微鏡の照明光路5に差込入射する合計3つのレーザ2が設けてある。スペクトル選択素子4は、具体的に、ミラー6および色分光器7である。何れにせよ、励起光3は、照明光路5に差込入射され、更なるミラー8を介して励起光9としてレーザスキャナ1に達する。
【0030】
同じく単に模式的に示した物体10からもどる光は、−この場合、物体で散乱、反射された励起光であり、他方では、物体10から放射された蛍光11であり−ミラー8を介してスペクトル選択素子4に達する。この場合、この素子は、色分光器7である。次いで、励起光9または励起波長は、検知光路12を介して物体10から来る光13から分離抽出され、逆行する励起光9としてレーザ2にもどる。色分光器7によって偏向されなかった検知光14は、直接、検知器15に達する。
【0031】
本発明にもとづき、逆行する波長の異なる励起光3は、スペクトル選択素子4によって分離抽出できる。これを、特に、図4に示した。
【0032】
別の方策として、−同じく本発明に係る態様で−スペクトル選択素子4は、分離抽出すべき励起波長に設定できる。これは、図2,3,8,9の実施例から特に十分に知り得る。
【0033】
図2に示した実施例の場合、単に1つのレーザ2のみが設けてあり、その励起光3は、異なる波長を有することができる。何れにせよ、励起光3は、ミラー6および補足の光学素子、即ち、レンズ16を介して、スペクトル選択素子として作動するAOTF17に達する。次いで、励起光3は、補足の光学素子−図示の実施例の場合はレンズ18−およびミラー8を介して再びレーザスキャナ1に達する。物体10で反射されて、逆行する光−反射された励起光9および検知光11−は、ミラー8およびレンズ18を介してAOTF17にもどり、AOTF17の作動に対応して部分的に分離抽出される。即ち、具体的に、検知光または蛍光11は、検知光路12を介して検知器15に送られる(0次)。他方、逆行する励起光9は、レンズ16およびミラー6を介してレーザ2にもどされ、即ち、検知光路12から分離抽出される。
【0034】
図3に示した実施例の場合も、同様に推移する。この場合、3つのレーザ2は、同時に、その励起光3を補足の光学素子、この場合はレンズ16、AOD19、後置の更なるレンズ18およびミラー8を介して照明光路5に差込入射する。次いで、励起光3は、レンズスキャナ1および物体10に達する。
【0035】
上述の実施例の場合、物体から来る光13は、蛍光11および逆行する励起光9を含み、この場合、AOD19は、逆行する蛍光を検知光14として検知器15に送る。逆行する励起光9は、分離抽出され、レンズ16を介して当該のレーザ2に達する。
【0036】
図4に示した実施例は、スペクトル選択素子4として透明格子20を含む。この場合、3つのレーザ2は、その励起光3を透明格子20を介して顕微鏡の照明光路5に差込入射する。この場合、何れにせよ、透明格子20が、物体10からもどる励起光9を検知光路から分離抽出し、かくして、上記光がレーザ2にもどることが肝要である。検知すべき蛍光11は、検知光路12を介して検知器15に達する。
【0037】
図5に、分散補正方式を示した。この場合、物体からもどる光13は、AOTF17またはAOD19に達する。この場合、逆行する検知光14は、−必然的に−スペクトル的に展開され、後置の素子−AOD/AOTF−を介して平行化され、更に、収束される。スペクトル的に統合された検知光14は、検知器15(図5には示してない)に達する。
【0038】
図6に示した分散補正方式の場合、物体から来る光13は、AOD17/AOTF19によって展開される。この場合、展開された検知光14は、更なる受動スペクトル選択素子−AOTF17またはAOD19−および視野修正レンズ21を介して収束され、検知ピンホール22または検知スリットを介して検知器15に達する。
【0039】
図7に示した如く、スペクトル選択素子4は、AOTF17またはAOD19である。この場合、上記素子は、非分散性の0次の特殊結晶を含む。この結晶またはこのスペクトル選択素子は、ピエゾ素子23を介して励起または付勢される。特に図7から明らかな如く、物体から来る光13は、AOTF17またはAOD19において分割され、この場合、検知光14は、無分散の0次光として妨害されずに結晶を通過する。他方、物体からもどる励起光9は、1次光として偏向され、レーザ(図示してない)にもどる。
【0040】
図8に、スペクトル選択素子4のスペクトル展開(扇状拡開)を利用する特殊な検知方式を示した。この場合、具体的にAOTF17を使用する。物体10から来る光13は、AOTF17においてスペクトル的に展開される。この場合、検知光14は、レンズ16およびミラー6を介して多重帯域検知器24または分光計に達する。ミラー6は、行路長を延長するので、多重帯域検知器24まで逆行する検知光14の展開が促進される。
【0041】
AOTF17において分離抽出された励起光9は、レンズ16およびミラー8を介してレーザ2にもどる。
【0042】
更に、図9に、図8の実施例の略図を示した。この場合、−補足して−検知光路には多重帯域検知器24の前に、可変スリットフィルタ25が設けてある。このスリットフィルタ25は、検知光路12に、検知器15の直前に設けてあり、検知光路において位置決め可能に配される。更に、スリットフィルタ25のスリット26は、可変であり、従って、その限りにおいて、検知光14のスペクトル選択が可能である。
【0043】
本発明の教示の図面から知り得ない他の実施例に関して、反復を避けるため、詳細な説明の総括的部分、教示および有利な実施例の既述の機能態様を参照する。
【符号の説明】
【0044】
1 レーザスキャナ
2 レーザ(光源)
3 励起光
4 スペクトル選択素子
5 照明光路
6 ミラー
7 色分光器
8 ミラー
9 励起・検知光
10 物体
11 蛍光(検知光)
12 検知光路
13 (物体から来る)光
14 検知光(偏向されてない検知光)
15 検知器
16 レンズ
17 AOTF
18 レンズ
19 AOD
20 透明格子
21 (視野修正式)レンズ
22 検知ピンホール
23 ピエゾ素子
24 多重帯域検知器(分光計)
25 (可変)スリットフィルタ
26 (25の)スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共焦レーザ走査顕微鏡の光路の光学装置であって、少なくとも1つの光源(2)の励起光(3)を顕微鏡に差込入射し且つ物体(10)で散乱、反射された励起光(3)を分離抽出する、または物体(10)から検知光路(12)を介して来る光(13)から励起波長を分離抽出する、少なくとも1つのスペクトル選択素子(4)を有する形式のものにおいて、
該スペクトル選択素子(4)によって、異なった波長(複数)の励起光を分離抽出すること、
該スペクトル選択素子(4)が、音響光学的におよび/または電気光学的に作動すること、及び
該スペクトル選択素子(4)が、AOD(音響光学偏向器)(19)又はAOTF(音響光学同調フィルタ)(17)として構成されていること、
を特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置であって、波長の異なる複数の光源を差込入射できる形式のものにおいて、対応する周波数のAOD(19)が、同時の場合も含めて、作動され、かくして、各種の光束が、AOD(19)の通過後、照明光路(5)の光軸と同軸であることを特徴とする光学装置。
【請求項3】
該スペクトル選択素子(4)が、AOTF(音響光学同調フィルタ)(17)として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学装置であって、波長の異なる複数の光源を差込入射できる形式のものにおいて、対応する周波数のAOTF(17)を同時に作動できることを特徴とする光学装置。
【請求項5】
スペクトル選択素子(4)が、検知光(11)のスペクトル的展開が少なくとも十分に避けられるよう、構成されていることを特徴とする請求項1−4の1つに記載の光学装置。
【請求項6】
各波長の出力の調節のため、スペクトル選択素子(4)に、少なくとも1つの更なる能動素子またはスペクトル選択素子が後置されていることを特徴とする請求項1−5の1つに記載の光学装置。
【請求項7】
更なるスペクトル選択素子が、AOD(19)であることを特徴とする請求項6に記載の光学装置。
【請求項8】
更なるスペクトル選択素子が、AOTF(17)であることを特徴とする請求項6に記載の光学装置。
【請求項9】
請求項1−8の1つに記載の光学装置であって、スペクトル選択素子(4)が制御ユニットを含む形式のものにおいて、制御ユニットによる励起波長の調節/監視機能が、強制結合されており、かくして、上記励起波長のみを、同軸の場合も含めて、顕微鏡の照明光路(5)に差込入射でき、上記波長のみを検知光路(12)から分離抽出できることを特徴とする光学装置。
【請求項10】
スペクトル選択素子(4)による光源(2)の制御を手動でまたは自動的に行うことを特徴とする請求項1−9の1つに記載の光学装置。
【請求項11】
スペクトル選択素子(4)による光源(2)の制御を任意に定めることができる規則にもとづき行うことを特徴とする請求項10に記載の光学装置。
【請求項12】
スペクトル選択素子(4)に、少なくとも1つの更なる光学素子が前置および/または後置されていることを特徴とする請求項1−11の1つに記載の光学装置。
【請求項13】
照明光路(5)内にスペクトル選択素子(4)に後置された能動ホログラフィー素子が、光束スキャナとして作用することを特徴とする請求項12に記載の光学装置。
【請求項14】
スペクトル選択素子(4)および後置のホログラフィー素子が、1つの機能モジュールに統合されていることを特徴とする請求項13に記載の光学装置。
【請求項15】
更なる光学素子が、光束調整手段であるか、スペクトル選択素子(4)によって誘起されたスペクトル的展開を補償する手段であることを特徴とする請求項12に記載の光学装置。
【請求項16】
前記光束調整手段が、レンズ(16)として構成されていることを特徴とする請求項15に記載の光学装置。
【請求項17】
前記光束調整手段が、プリズムとして構成されていることを特徴とする請求項15に記載の光学装置。
【請求項18】
前記光束調整手段が、絞り(孔形絞りまたはスリット形絞りの場合を含めて)として構成されていることを特徴とする請求項15に記載の光学装置。
【請求項19】
前記光束調整手段が、フィルタとして、(阻止フィルタの場合を含めて)構成されていることを特徴とする請求項15に記載の光学装置。
【請求項20】
前記フィルタが、検知器(15)の直前に設けてあることを特徴とする請求項19に記載の光学装置。
【請求項21】
前記光束調整手段が、フォーカシング手段として構成されていることを特徴とする請求項15に記載の光学装置。
【請求項22】
更なる光学素子として、更にスペクトル分解するための色分光器が設けてあることを特徴とする請求項2−21の1つに記載の光学装置。
【請求項23】
更なる光学素子として、少なくとも1つのAOTF(17)が設けてあることを特徴とする請求項12−22の1つに記載の光学装置。
【請求項24】
前記AOTF(17)を受動素子として使用可能であることを特徴とする請求項23に記載の光学装置。
【請求項25】
更なる光学素子の組合せが設けてあることを特徴とする請求項12−24の1つに記載の光学装置。
【請求項26】
検知光束の展開の角度増を誘起する多重反射手段が、検知光路(12)に設けてあることを特徴とする請求項1−25に記載の光学装置。
【請求項27】
スリットフィルタ(25)が、検知光路(12)に、(検知器(15)の直前の場合を含めて)、設けてあることを特徴とする請求項1−26の1つに記載の光学装置。
【請求項28】
スリットフィルタ(25)が、検知光路(12)内に位置決め可能に配されることを特徴とする請求項27に記載の光学装置。
【請求項29】
スリットフィルタ(25)のスリット(26)が、可変であることを特徴とする請求項27または28に記載の光学装置。
【請求項30】
スペクトル的展開を検知する分光計が、前記検知光路(12)にスペクトル選択素子(4)の後ろに設けてあることを特徴とする請求項1−29の1つに記載の光学装置。
【請求項31】
分光計が、多重帯域検知器(24)として構成されていることを特徴とする請求項29に記載の光学装置。
【請求項32】
分離抽出された励起波長(の光)が、前記検知光路(12)から光源(2)の方向へ偏向されることを特徴とする請求項1−31の1つに記載の光学装置。
【請求項33】
前記光源(2)が、白色光源として構成されていることを特徴とする請求項1−32の1つに記載の光学装置。
【請求項34】
前記光源(2)が、光学的にパラメータ化された発振器(OPO)として構成されていることを特徴とする請求項1−32の1つに記載の光学装置。
【請求項35】
前記光源(2)が、電子線衝突光源として構成されていることを特徴とする請求項1−32の1つに記載の光学装置。
【請求項36】
前記光源(2)が、レーザ光源として構成されていることを特徴とする請求項1−32の1つに記載の光学装置。
【請求項37】
前記レーザ光源を波長可変に同調させ得ることを特徴とする請求項36に記載の光学装置。
【請求項38】
前記レーザ光源が、各種の波長を有する1つのレーザを含むことを特徴とする請求項36または37に記載の光学装置。
【請求項39】
前記レーザ光源が、各種の波長を有する複数のレーザ(2)を含むことを特徴とする請求項36に記載の光学装置。
【請求項40】
前記レーザ(2)が、色素レーザとして構成されていることを特徴とする請求項36−39の1つに記載の光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−139969(P2009−139969A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13039(P2009−13039)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【分割の表示】特願2000−532762(P2000−532762)の分割
【原出願日】平成11年2月19日(1999.2.19)
【出願人】(500218345)ライカ ミクロジュステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】