説明

ズームレンズを用いた電子撮像装置

【課題】ゴースト、フレアを抑え、結像性能も確保しやすい電子撮像装置を提供すること。
【解決手段】第1レンズ群の反射面により反射された光路中に配置された明るさ絞りを備え、明るさ絞りは、開口部の面積が最も大きくなる状態にて非円形形状であり、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、開口部の面積が最大状態での開口部の大きさが、第1レンズ群に入射する入射光軸とこの反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、開口部の面積が最大状態での開口部の大きさよりも小さく、第1レンズ群中の反射面により反射された光路中であって、且つ、最も像側に配置されるレンズの外形形状が、非円形であり、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、外形形状の大きさが、第1レンズ群に入射する入射光軸とこの反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、外形形状の大きさよりも小さく、所定の条件式を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路中に反射面を持つズームレンズを用いた電子撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、銀塩フィルムカメラに代わり、CCDやCMOSのような電子撮像素子を用いて被写体を撮影するようにしたデジタルカメラが主流となっている。更にそれは業務用高機能タイプからコンパクトな普及タイプまで幅広い範囲でいくつものカテゴリーを有するようになってきている。本発明においては、特にコンパクトな普及タイプのカテゴリーに注目している。
【0003】
このような普及タイプのデジタルカメラのユーザーは、いつでもどこでも手軽に幅広いシーンで撮影を楽しみたいという要望をもっている。そのため、小型な商品、特に服やカバンのポケット等への収納性がよく持ち運びが便利な、厚み方向のサイズが薄型であるタイプのデジタルカメラが好まれるようになっている。
【0004】
カメラの厚さ方向のサイズはレンズ鏡筒のサイズが大きなウェイトを占める。したがって、レンズ鏡筒の薄型化を考慮したズームレンズの構成が極めて重要である。
【0005】
レンズ鏡筒の薄型化にはいくつか手段があるが、そのうちのひとつに、光路の途中に配置したミラーやプリズムなどの反射部材により光路を反射させて薄型化を達成させようとするズームレンズがある。
【0006】
これには、撮影時と携帯時でカメラの形状がほとんど変わらないという特徴があり、デザイン、堅牢性、防塵・防滴への適用など、さまざまなメリットがあるが、薄型を達成できることが最大のメリットである。そのメリットを更に大きくするために、レンズの一部をカメラの厚さ方向にカットするという手段が採用される。特許文献1には、レンズの一部をカメラの厚さ方向にカットした例が示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−121799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなレンズのカットを行うと、撮像面の有効範囲内に到達する光線(有効光線)とレンズ外径との余裕が非常に小さくなるため、迷光がレンズのカット部に当たって反射または乱反射し、撮像面の有効範囲内に到達しやすくなる。所謂ゴースト、フレアの発生である。
【0009】
ゴースト、フレアはその強度が被写体の明るさに比して微弱である場合は問題にならないことが多い。しかし、それ以外の場合にはユーザーに対して好意的に受け止められることは稀である。
【0010】
また、迷光がレンズのカット面に当たらないようにするために、フレア絞りをレンズの周辺に設ける場合がある。しかし、レンズをカットした付近にフレア絞りを設けると、有効光束のケラレを生じやすくなる。この場合、撮影画面の中心部分と周辺部分での光量の差が大きくなりやすくなる。光量が低下した撮影画面の周辺部を信号処理により復元することも可能ではあるが、画面周辺でのノイズが出やすく、画面の中心と周辺の画質の差が目立ってくる。また、周辺部で被写界深度が深くなり違和感を生じやすくなる。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ズームレンズ内構成の工夫により、薄型化を行ってもゴースト、フレアの発生を抑え、結像性能も確保しやすい電子撮像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の電子撮像装置は、被写体の像を形成するズームレンズと、ズームレンズにより形成された像を受光して電気信号に変換する電子撮像素子と、を備えた電子撮像装置において、ズームレンズは、被写体側から像面にいたる光軸を含む光路に沿って並んで配置された複数のレンズ群を備え、複数のレンズ群の互いの間隔を変化させることによりズームレンズ全系の焦点距離を変化させ、複数のレンズ群中の最も物体側に配置されたレンズ群を第1レンズ群としたときに、第1レンズ群は光路を反射させる反射面を備え、第1レンズ群中の反射面により反射された光路中に配置された明るさ絞りを備えている。
【0013】
また、明るさ絞りは、開口部の面積が最も大きくなる状態にて非円形の形状の開口部を持ち、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさが、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさよりも小さいように構成されている。
【0014】
さらに、第1レンズ群中の反射面により反射された光路中であって、且つ、最も像側に配置されるレンズの外形形状が、非円形であり、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、外形形状の大きさが、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、外形形状の大きさよりも小さいように構成されている。そして、以下の条件式を満足することを特徴としている。
【0015】
1.10<Dx/Dy<1.75 ・・・(1)
ただし、
yは、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさ、
xは、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさ、である。
【0016】
第1の電子撮像装置において上記構成をとった理由と作用を説明する。本発明では複数のレンズ群を配置したズームレンズ内の構成の工夫により、電子撮像装置の薄型化(鏡筒の薄型化)を行うために、光軸を含む光路を反射する反射面を備えた構成を採用している。
【0017】
このような構成の中でも、ズームレンズ中で最も物体側に位置する第1レンズ群内に光路を反射させる反射面を有する構成とすることで、撮像装置の厚さ方向の大きさを最も小さくすることが出来る。
【0018】
また、鏡筒の厚さを決めるのはこの反射面に続くレンズのうち、明るさ絞りから離れた位置のレンズ群の外径である場合が多い。このため、これを少しでも小さくする、つまりレンズの外形が円形ではなく、上述の形状として、撮像装置の厚さ方向の寸法がそれと直行する方向より小さくしている。例えば、円形のレンズをカットして小判型にするなどの方法が考えられる。
【0019】
ところが、このようなレンズ形状にすると、撮像装置の厚さは薄く出来るが、レンズのサイズを小さくした部分に迷光が当たり、ゴースト、フレアが発生する可能性が高くなってくる。
【0020】
迷光の発生を低減するために、上述の形状となる開口部としている。この形状により、レンズのサイズを小さくした方向での迷光を抑えやすくなる。付随的に、撮像画面周辺での光束のケラレによる光量低下を抑えやすくなり、撮影画面の中心と周辺の画質の差を低減しやすくなる。
【0021】
また、上述の条件式(1)は、明るさ絞りの開放時の開口部分の非円形の程度を規定するものである。上述の非円形形状とすると、撮像装置の厚さ方向にレンズの短辺方向を配置することになるので、Dyは撮像装置の厚さ方向の寸法に影響する。
【0022】
条件式(1)の下限を下回ると、ゴースト、フレア回避の効果が小さくなり、本発明の上記目的達成が困難になってくる。
【0023】
一方、条件式(1)の上限を上回ると、絞りの形状が円形から大きく乖離してしまい、それに付随した問題が出やすくなる。たとえば、撮影画面全体の光量低下が起こりやすくなる。また、点像のぼけ形状が明るさ絞りの開口形状を反映するという物理現象から、一般に明るさ絞りは円形が良いとされている。上限を上回ると、ボケ方が不自然になってくる。
【0024】
更には、レンズ鏡筒、電子撮像装置の小型化のために、第2の電子撮像装置は、第1の電子撮像装置において、開口部の面積が一定であることが好ましい。
【0025】
第2の電子撮像装置において上記構成をとった理由と作用を説明する。従来の、光軸を反射させないズームレンズにおいては、絞りの形状を可変にする構成を絞り周辺に設けるスペースの確保がしやすかった。
【0026】
しかしながら、光軸を反射させるタイプのズームレンズでは、薄型化のメリットを生かすために、絞り周辺に形状を変化させる機構をもたせると、鏡筒が厚くなってくる。そのため、上述の構成とすることで、開口部の面積を調整する機構を省略でき、電子撮像装置の薄型化に一層有利となる。
【0027】
また、明るさ絞りの開口部の面積を可変とする場合、以下の構成とすることが好ましい。第3の電子撮像装置は、第1の電子撮像装置において、開口部は、望遠端の最小Fナンバーとなる状態よりも、広角端での最小Fナンバーとなる状態にて明るさ絞り開口部の面積が小さくなり、広角端での最小Fナンバーとなる状態での開口部の形状が以下の条件式を満足することが好ましい。
【0028】
1.10<DxW/DyW<1.75 ・・・(2)
ただし、
yWは、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、広角端にて開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさ、
xWは、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、広角端にて開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさ、である。
【0029】
第3の電子撮像装置において上記構成をとった理由と作用を説明する。一般にズームレンズは、広角端に近いほど迷光による影響が目立ちやすくなる。例えば、太陽が撮影画角の外側周辺に位置する場合、ズームレンズ内に光線が入り込み、単純なフレア絞りでは迷光を低減し切れないことがある。そのため、広角端では絞りの面積を小さくして迷光の発生を抑え、一方望遠端では絞りの面積を大きくすることでFナンバーが大きくなりすぎる(暗くなる)ことを抑え易くなる。
【0030】
また、広角端での開口部の最大面積を小さくすることで、コマ収差の影響も抑えやすくなる。そして、広角端であっても条件式(2)を満足する非円形とすることが明るさの確保と迷光による影響を抑えることにつながり、より好ましい。
【0031】
第4の電子撮像装置は、第1または第3の電子撮像装置において、開口部の面積を小さくする機構を有し、開口部の面積を最も小さくした際に、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0032】
x/Dy>Dxm/Dym≧0.5 ・・・(3)
ただし、
ymは、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、開口部の面積が最も小さくなる状態での開口部の大きさ、
xmは、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、開口部の面積が最も小さくなる状態での開口部の大きさ、である。
【0033】
第4の電子撮像装置において上記構成をとった理由と作用を説明する。開口部の形状の非円形の度合いを確保したまま開口部の面積を小さくすると、絞り込んだ状態での回折の影響が大きくなり、解像度が低下しやすくなる。そのため、絞り込んだ状態での回折の影響を低減しやすくするため、上述の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0034】
条件式(3)の上限を上回ると、絞り込んだ状態での回折の影響が大きくなりやすくなる。
【0035】
条件式(3)の下限を下回ると、非円形の度合いによる影響(回折、ボケ方の不自然さ)が出やすくなる。
【0036】
さらには、第5の電子撮像装置は、第4の電子撮像装置において、開口部の面積を小さくする機構は、前期開口部の径の大きい方向に移動する開口形状が固定の補助絞りであることが好ましい。
【0037】
第5の電子撮像装置において上記構成をとった理由と作用を説明する。鏡筒の厚さの方向に対してほぼ垂直の方向に補助絞りが退避挿入されるので、補助絞りの退避スペースを確保しても撮像装置の厚さを抑えやすくなる。
【0038】
また、第6の電子撮像装置は、第4の電子撮像装置において、開口部の面積を小さくする機構は、開口部の径の大きい方向に移動する2枚の絞り羽であることが好ましい。
【0039】
第6の電子撮像装置において上記構成をとった理由と作用を説明する。鏡筒の厚さの方向に対してほぼ垂直の方向に絞り羽が退避挿入されるので、絞り羽の退避スペースを確保しても電子撮像装置の厚さを抑えやすくなる。
【0040】
第7の電子撮像装置は、第1〜第6の電子撮像装置において、明るさ絞りよりも物体側で明るさ絞りにもっとも近いレンズ面の有効面が、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0041】
1.15<Fx/Fy<1.80 ・・・(4)
ただし、
yは、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、明るさ絞りよりも物体側で明るさ絞りにもっとも近いレンズ面の有効面の大きさ、
xは、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、明るさ絞りよりも物体側で明るさ絞りにもっとも近いレンズ面の有効面の大きさ、である。
【0042】
第7の電子撮像装置において上記構成をとった理由と作用を説明する。これは、明るさ絞りより物体側にあるレンズのうち、最も明るさ絞りに近いレンズ面の有効径を示している。
【0043】
(1)の条件式を満足する絞り形状に対しては、この条件式(4)を満足するような有効面形状とすることが、撮像装置の薄型化を行いながら、ゴースト、フレアの少ないズームレンズを実現するために望ましい構成である。
【0044】
また、さらに、第8の電子撮像装置は、第1〜第7の電子撮像装置において、明るさ絞りよりも像面側で明るさ絞りに最も近いレンズ面の有効面が、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0045】
1.15<Rx/Ry<1.80 ・・・(5)
ただし、
yは、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、明るさ絞りよりも像面側で明るさ絞りにもっとも近いレンズ面の有効面の大きさ、
xは、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、明るさ絞よりも像面側で明るさ絞りに最も近いレンズ面の有効面の大きさ、である。
【0046】
第8の電子撮像装置において上記構成をとった理由と作用を説明する。条件式(5)は、明るさ絞りより物体側にあるレンズのうち、最も明るさ絞りに近いレンズの長辺方向の大きさと短辺方向の有効面の比を表している。
【0047】
(1)の条件式を満足する絞り形状に対しては、条件式(5)を満足するような有効面形状とすることが、撮像装置の薄型化を行いながら、ゴースト、フレアの少ないズームレンズを実現するために望ましい構成である。
【0048】
第9の電子撮像装置は、第1〜第8の電子撮像装置において、電子撮像素子の受光面の有効撮像領域は、短辺方向と長辺方向とを持つ矩形であり、有効撮像領域の長辺方向が、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向となるように配置し、電子撮像素子上の像の長辺方向のコントラストにもとづきフォーカシング情報を検出する制御部を有することが好ましい。
【0049】
第9の電子撮像装置において上記構成をとった理由と作用を説明する。上述の構成とすることで、電子撮像素子の短辺方向が撮像装置本体の厚さ方向となり薄型化に有利となる。そして、絞りの径が大きい方向に対応する像面上の方向は回折の影響が小さくなり、コントラストは高くなる。そのため、上述のように電子撮像素子の長辺方向のコントラストにもとづいてフォーカシング情報を検出する方式とすることで、フォーカシングの精度を高くできる。
【0050】
また、良好な撮像を行いやすくするために、第10の電子撮像装置は、第1〜第9の電子撮像装置において、電子撮像素子が、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0051】
1.45μm<P<2.15μm ・・・(6)
ただし、Pは電子撮像素子の受光領域における画素ピッチの平均である。
【0052】
第10の電子撮像装置において上記構成をとった理由と作用を説明する。画素ピッチが条件式(6)の下限を超えて小さくなると、光学系のFナンバー(FNO)を小さくしていっても、各画素に入射する光量はさほど上がらなくなり、受光効率が落ち、解像度が向上しにくくなる。
【0053】
また、条件式(6)の上限を超えて大きくなると、有効画素数が少なくなるか、もしくは、撮像素子の有効撮像領域が大きくなる。条件式(6)を満足する範囲でも、条件式(1)の上限を超えると撮像素子上の厚さ方向の解像が低下し、不自然な画像になる。また、明るさ絞りを非円形としたので、明るさ絞りの直前、または直後、または双方のレンズについての形状を非円形として小型化を行っても迷光の発生を抑えやすくなる。
【0054】
また、第11の電子撮像装置は、第7の電子撮像装置において、条件式(4)を満足しながら、明るさ絞りの直前のレンズの外形形状を特定するものである。
【0055】
具体的には、明るさ絞りよりも物体側で明るさ絞りに最も近いレンズの外形形状について、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における外形形状の大きさが、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における外形形状の大きさよりも小さいことを特徴とする。
【0056】
また、第12の電子撮像装置は、第8の電子撮像装置において、条件式(5)を満足しながら、明るさ絞りの直後のレンズの外形形状を特定するものである。
【0057】
具体的には、明るさ絞りよりも像面側で明るさ絞りに最も近いレンズの外形形状について、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における外形形状の大きさが、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における外形形状の大きさよりも小さいことを特徴とする。
【0058】
明るさ絞り前後のレンズには、像高ごとに分離していない太い光束がレンズにあたる。明るさ絞りの形状が円形に近いと、これらのレンズの端部をカットした場合、この端部での反射による迷光が生じやすくなる。
【0059】
本発明は、明るさ絞りを非円形としたので、明るさ絞りの直前または直後、または双方のレンズの形状を非円形としても迷光の発生を低減でき、小型化に有利となる。なお、上述の各発明は、任意に複数を同時に満足することがより好ましい。
【発明の効果】
【0060】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ズームレンズ内構成の工夫により、薄型化を行ってもゴースト、フレアの発生を抑え、結像性能も確保しやすい電子撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に、本発明にかかる電子撮像装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の電子撮像装置の実施例について説明する。電子撮像装置は、ズームレンズとその像側に配置された電子撮像素子(CCD、CMOS等)を備えて構成される。物体側から像面側に向かって順に、正屈折力の第1レンズ群G1、負屈折力の第2レンズ群G2、正屈折力の第3レンズ群G3、正屈折力の第4レンズ群G4で構成される。明るさ絞りSは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に配置される。広角端から望遠端への変倍に際して各レンズ群は以下の移動を行う。ズームレンズは、電子撮像装置本体に固定されている。
【0063】
第2レンズ群G2は、像面側に移動し、第1レンズ群G1との距離を変化させることで変倍機能をもたせている。明るさ絞りSは、光軸方向には変位せず、位置固定としている。第3レンズ群G3は、物体側に移動して、変倍の機能を第2レンズ群G2と分担させている。第4レンズ群G4は、物体側に移動後、像面側に移動し、変倍時の像面の位置ずれを補正している。また、遠距離物体から近距離物体へのフォーカシング動作は、第4レンズ群G4を移動させることで行う。
【0064】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負レンズと、反射面を持つ部材(ここでは直角プリズム)と正レンズで構成されており、物体側から入射した光束を反射させる。なお、第1レンズ群中G1中において、光路折り曲げプリズムPを展開して平行平板で示してある。なお、光路折り曲げプリズムPは、代表的には、光路を90°折り曲げる反射プリズムとして構成される。図3の(a)において、Y方向から入射した光軸は90°反射し、Z方向が射出光軸となる。
【0065】
後述するレンズデータ中には反射面の位置は示していないが、直角プリズムの入射面と射出面との丁度中間において光軸を90度反射する反射面が形成されるように配置されている。また、反射面以降の光軸(Z軸方向)に沿って、各レンズや明るさ絞り、電子撮像素子(CCD、CMOS等)は配置される。
【0066】
電子撮像素子の受光面は長辺方向と短辺方向をもち、短辺方向が撮像装置の厚さ方向となるように、第1レンズ群へ入射する光軸の方向(Y方向)と同じ方向となるように配置される。一方、長辺方向は、反射面での反射前後の光軸を含む面(図3における紙面であり図中のY−Z面)に垂直な方向(X方向)と同じ方向となるように配置されている。
【0067】
明るさ絞りSは、ズームレンズの焦点距離の状態に応じて、開口サイズが変化する構成としている。具体的には、広角端、望遠端それぞれ最小Fナンバーとした状態で比較したとき、広角端では開口面積を小さくし、望遠端で開口面積を最も大きくする構成としている。
【0068】
以下の数値例では、開口サイズを楕円形とし、楕円の短辺方向を上述のY方向、楕円の長辺方向をX方向として配置し、
x/Dy=1.350
となる形状としている。
【0069】
また、広角端では、絞りの開口面積を小さくし、焦点距離が変化した際も、短辺方向と長辺方向の大きさの比がほぼ一定となるように、開口面積を変化させ、
xW/DyW=1.350
となるように構成している。
【0070】
そのため、広角端での迷光の発生を抑え、一方望遠端では絞りの面積を大きくしてFナンバーが大きくなりすぎる(暗くなる)ことを抑えられる。
【0071】
明るさ絞りSの開口部の面積は、多数の絞り羽にて連続して変化させる構成としてもよく、また、それぞれ開口面積の異なる開口を持った絞り部材を光路中に抜き差しして、面積を多段階に変化させる構成としてもよい。
【0072】
明るさ絞りSの開口部の形状は楕円形に限らず、例えば、菱形としてもよい。開口部の形状を菱形とした場合は、例えば、図8の絞り部200に示すように、菱形の開口部を菱形の長辺方向(X方向)に移動する2枚の絞り羽201、202にて構成できる。そして、絞り羽201、202を移動することで、開口面積を変化させる構成とすれば、常に短辺方向(Y方向)の開口部の大きさと長辺方向(X方向)の開口部の大きさとの比は一定となる。また、この実施例では、最も絞り込んだ状態にて、s12x=1.0、s12y=1.0、s12x/s12y=1.0となる構成としている。
【0073】
また、各レンズの外形は、以下の数値データに示す有効面サイズを確保した上で、図3の紙面に示すように、第1レンズ群の負レンズはZ方向、その他のレンズはY方向にて短くなる形状としている。
【0074】
以下、本発明の電子撮像装置が備えるズームレンズについてさらに説明する。ズームレンズの無限遠物点合焦時の広角端(焦点距離6.81)(a)、第2の中間状態(焦点距離11.53)(b)、望遠端(焦点距離19.65)(c)のレンズ断面図を図1に示す。図1中、第1レンズ群はG1、第2レンズ群はG2、開口絞りはS、第3レンズ群はG3、第4レンズ群はG4、赤外光を制限する波長域制限コートを施したローパスフィルタを構成する平行平板はF、電子撮像素子のカバーガラスの平行平板はC、像面はIで示してある。なお、カバーガラスCの表面に波長域制限用の多層膜を施してもよい。また、そのカバーガラスCにローパスフィルタ作用を持たせるようにしてもよい。また、第1レンズ群中G1中の光路折り曲げプリズムを展開した平行平板はPで示してある。なお、光路折り曲げプリズムPは、代表的には、光路を90°折り曲げる反射プリズムとして構成される。なお、レンズ形状は最大光線高を考慮した状態になっている。
【0075】
本実施例のズームレンズは、図1に示すように、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1と、負の屈折力の第2レンズ群G2と、明るさ絞りSと、正の屈折力の第3レンズ群G3と、正の屈折力の第4レンズ群G4とで構成されている。
【0076】
広角端から望遠端にかけての変倍時、第1レンズ群G1は物体側に固定し、第2レンズ群G2は像側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は一旦物体側に移動したあと移動方向が反転して像側に移動する。
【0077】
物体側から順に、第1レンズ群G1は、第1両凹負レンズと、光路折り曲げプリズムPと、第2両凸正レンズから構成される。第2レンズ群G2は、物体側に凸面を向けた第3負メニスカスレンズと、第4両凹負レンズと、第5両凸正レンズで構成される。第4両凹負レンズと、第5両凸正レンズは接合されている。第3レンズ群G3は、第6両凸正レンズと、第7両凸正レンズと、第8両凸正レンズと、第9両凹負レンズとで構成される。第8両凸正レンズと、第9両凹負レンズとは接合されている。第4レンズ群G4は、第10両凸正レンズで構成されている。
【0078】
非球面は、第2両凸正レンズの両面と、第6両凸正レンズの両面と、第10両凸正レンズの両面との6面に用いている。
【0079】
以下に、上記各実施例の数値データを示す。記号は上記の外、fは全系焦点距離、FNOはFナンバー、ωは半画角、WEは広角端、ST1は第1の中間状態、ST2は第2の中間状態、ST3は第3の中間状態、TEは望遠端、r1、r2…は各レンズ面の曲率半径、d1、d2…は各レンズ面間の間隔、nd1、nd2…は各レンズのd線の屈折率、νd1、νd2…は各レンズのアッベ数である。なお、非球面形状は、zを光の進行方向を正とした光軸とし、yを光軸と直交する方向にとると、下記の式にて表される。ここで、非球面形状はz軸に関して回転対称である。このため、z軸に直交するx軸についても、以下と同様の式で表現することができる。
【0080】
z=(y2 /r)/[1+{1−(K+1)(y/r)2 1/2
+A4 4 +A6 6 +A8 8 +A1010+A1212
ただし、rは近軸曲率半径、Kは円錐係数、A4 、A6 、A8 、A10、A12はそれぞれ4次、6次、8次、10次、12次の非球面係数である。また、非球面係数において、「e−n」(nは整数)は、「10−n」を示している。
【0081】
また、
NO.xは、X方向のFナンバー、
NO.yは、Y方向のFナンバー、
edxは、各面のX方向の有効面の大きさの半分、
edyは、各面のY方向(反射面よりも物体側の面はZ方向)の有効面の大きさの半分、
12xは、明るさ絞りのX方向の大きさの半分、
12yは、明るさ絞りのY方向の大きさの半分、
をそれぞれ示している。
【0082】

1 = -205.452 d1 = 0.80 nd1 = 1.84666 νd1 = 23.78
ed1x = 6.20 ed1y = 4.24
2 = 10.665 d2 = 1.52
ed2x = 5.58 ed2y = 4.00
3 = ∞ d3 = 7.40 nd2 = 1.80610 νd2 = 40.92
ed3x = 5.56 ed3y = 3.97
4 = ∞ d4 = 0.20
ed4x = 5.22 ed4y = 4.53
5 = 15.074(非球面) d5 = 2.49 nd3 = 1.76802 νd3 = 49.24
ed5x = 5.14 ed5y = 4.66
6 = -14.697(非球面) d6 =(可変)
ed6x = 4.07 ed6y = 4.63
7 = 153.510 d7 = 0.70 nd4 = 1.88300 νd4 = 40.76
ed7x = 3.73 ed7y = 3.29
8 = 13.647 d8 = 1.15
ed8x = 3.60 ed8y = 3.10
9 = -11.094 d9 = 0.70 nd5 = 1.88300 νd5 = 40.76
ed9x = 3.53 ed9y = 2.45
10= 16.398 d10= 1.80 nd6 = 1.92286 νd6 = 20.88
ed10x= 4.00 ed10y= 2.45
11= -32.399 d11=(可変)
ed11x= 4.00 ed11y= 2.45
12= ∞(絞り) d12=(可変)
ed12x= s12x ed12y= s12y
13= 9.297(非球面) d13= 2.43 nd7 = 1.58913 νd7 = 61.25
ed13x= 4.00 ed13y= 3.45
14= -24.419(非球面) d14= 0.20
ed14x= 4.00 ed14y= 3.45
15= 9.855 d15= 2.60 nd8 = 1.49700 νd8 = 81.54
ed15x= 3.95 ed15y= 3.87
16= -150.333 d16= 0.80
ed16x= 3.71 ed16y= 3.54
17= 19.700 d17= 1.77 nd9 = 1.60172 νd9 = 60.60
ed17x= 3.50 ed17y= 3.26
18= -32.398 d18= 0.80 nd10= 1.84666 νd10= 23.78
ed18x= 3.24 ed18y= 2.93
19= 4.457 d19=(可変)
ed19x= 2.99 ed19y= 2.66
20= 15.828(非球面) d20= 2.49 nd11= 1.52500 νd11= 55.80
ed20x= 4.90 ed20y= 3.26
21= -15.755(非球面) d21=(可変)
ed21x= 5.02 ed21y= 3.28
22= ∞ d22= 0.88 nd12= 1.54771 νd12= 62.84
ed22x= 4.73 ed22y= 2.98
23= ∞ d23= 0.89
ed23x= 4.68 ed23y= 2.93
24= ∞ d24= 0.50 nd13= 1.51633 νd13= 64.14
ed24x= 4.61 ed24y= 2.85
25= ∞ d25= 0.60
ed25x= 4.60 ed25y= 2.83
26= ∞(電子撮像素子の受光面、像面)
ed26x= 4.58 ed26y= 2.79


非球面係数
第5面
= 15.074
= 0.000
4 = -1.26135e-04
6 = 2.52905e-06
8 = -4.00946e-08
10= -1.87589e-09

第6面
= -14.697
= 0.000
4 = -4.93971e-06
6 = 3.84372e-06
8 = -1.00573e-07
10= -6.58744e-10

第13面
= 9.297
= 0.000
4 = -2.02391e-04
6 = -4.63863e-07
8 = -2.67686e-08
10= -1.07522e-08

第14面
= -24.419
= 0.000
4 = 1.06475e-04
6 = 2.61409e-06
8 = -3.62177e-07

第20面
= 15.828
= 0.000
4 = 4.10682e-04
6 = -2.65177e-05
8 = 1.17779e-06
10= -3.98281e-08

第21面
= -15.755
= 0.000
4 = 3.52819e-04
6 = -1.96304e-05
8 = 7.23922e-07
10= -3.11244e-08

ズームデータ(∞)
WE ST1 ST2 ST3 TE
f(mm) 6.81 8.90 11.53 15.10 19.65
NO.x 3.57 3.99 4.00 4.70 5.10
NO.y 4.81 5.37 5.39 6.34 6.87
2ω(°) 61.19 46.43 35.86 27.81 21.70

d6 0.60 1.99 3.50 4.44 5.26
d11 5.56 4.17 2.66 1.72 0.90
d12 7.85 6.37 5.28 3.26 1.10
d19 3.00 4.45 5.69 7.77 9.96
d21 3.21 3.24 3.09 3.03 3.00

12x 1.957 1.984 2.175 2.184 2.391
12y 1.450 1.470 1.612 1.618 1.771
12x/s12y 1.350 1.350 1.349 1.350 1.350

【0083】
以上の実施例の無限遠物点合焦時の収差図を図2に示す。収差図において、(a)は広角端、(b)は第2の中間状態、(c)は望遠端における球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す。各図中、“ω”は半画角を示す。
【0084】
また、図3の(a)は、本発明の実施例のY−Z断面でのレンズ断面図を示している。撮像素子の受光面の有効撮像領域のアスペクト比(本実施例では、長辺4.58:短辺2.79)が横長であり、プリズム等で光軸を反射する際に、反射後の光軸が撮像装置の上または下方向へ向かうように反射させると撮像装置の厚さ方向を小さくするのに最も有利なレイアウトになる。つまり、撮像素子の有効撮像領域の短辺方向が撮像装置の厚さ方向となるように配置した場合である。この実施例はそのようなレイアウトにしたものである。なお、有効撮像領域は、撮像素子の受光面のうち、印刷、表示画像に用いるための領域である。
【0085】
各レンズが光軸方向から見て円形の場合、各レンズの有効面を確保すると、断面図では破線のような形状になるが、撮像装置の厚さ方向(Y方向)にレンズをカットしたような形状になっているため、実線の形状になっている。
【0086】
明るさ絞りについても同様にカメラの厚さ方向(Y方向)に小さくなっており、これにより明るさ絞りの像側のレンズに当たる光線を制限している。
【0087】
点線で示す形状が上述の数値データのEDXにあわせてレンズを円形とした場合の外形形状であり、実線がEDYを考慮して薄型化を行った場合の外形である。
【0088】
また、レンズ断面図の図3の(b)、(c)、(d)は、明るさ絞りとその直前、直後のレンズ面の有効領域を明るさ絞り側から見た概略構成を示している。なお、正確な形状は、上述した数値データに従う。
【0089】
本実施例では、明るさ絞り直前のレンズ面の有効範囲のX方向、Y方向のサイズをそれぞれFx、Fy、明るさ絞りの直後のレンズ面の有効範囲のX方向、Y方向のサイズをRx、Ryとして表している。
【0090】
この有効面のサイズを考慮してレンズをカットすることで小型化できる。レンズの外形は、一部を直線的にカットした形状である必要はなく、カメラ奥行き方向のサイズが小さくなれば、例えば楕円など、どんな形でもよい。
【0091】
同様に、本発明の実施例では、明るさ絞り開口部の形状が楕円になっているが、本発明の条件式(1)を満足していれば、形状は例えば菱形など、どのような形状でもよい。また、本発明の実施例では、光軸が明るさ絞り開口部やレンズの中央にあるが、中央からずれていても構わない。
【0092】
また、撮像素子の画素ピッチは、短辺方向、長辺方向、ともに1.7μm(P=1.7μm)としている。
【0093】
本発明の実施例の各条件式に対応する値は以下の通りである。
(1)Dx/Dy … 1.350
(2)DxW/DyW … 1.350
(3)Dxm/Dym … 1.0
(4)Fx/Fy … 1.63
(5)Rx/Ry … 1.16
(6)P … 1.7μm
【0094】
また、本実施例では第4レンズ群G4を光軸方向に移動させ、撮像素子の受光面の長辺方向のコントラストを検出する。第4レンズ群G4の位置(場所)によるコントラストを複数点測定し、コントラストが最も高くなる状態を合焦点状態とみなして第4レンズ群G4をその位置に移動させ固定する。
【0095】
もちろん、複数状態のコントラストからフォーカス位置を予測する演算を行い、第4レンズ群G4を移動させる構成としてもよい。X方向は明るさ絞りの大きいサイズの方向になるので、絞りによる回折の影響が抑えられ、良好なフォーカシングが行える。このようなフォーカシング制御は、後述の制御部にて制御を行っている。
【0096】
(デジタルカメラ)
さて、以上のような本発明のズームレンズで物体像を形成しその像をCCD等の電子撮像素子に受光させて撮影を行う電子撮影装置、とりわけデジタルカメラやビデオカメラ等に用いることができる。以下に、その実施形態を例示する。
【0097】
図4〜図6は、本発明によるズームレンズをデジタルカメラの撮影光学系141に組み込んだ構成の概念図を示す。図4はデジタルカメラ140の外観を示す前方斜視図、図5は同後方斜視図、図6はデジタルカメラ140の構成を示す断面図である。デジタルカメラ140は、この例の場合、撮影用光路142を有する撮影光学系141、ファインダー用光路144を有するファインダー光学系143、シャッター145、フラッシュ146、液晶表示モニター147等を含み、カメラ140の上部に配置されたシャッター145を押圧すると、それに連動して撮影光学系141、例えば上述の光路折り曲げズームレンズを通して撮影が行われる。撮影光学系141によって形成された物体像が、近赤外カットフィルターと光学的ローパスフィルターFを介してCCD149の撮像面上に形成される。このCCD149で受光された物体像は、処理手段151を介し、電子画像としてカメラ背面に設けられた液晶表示モニター147に表示される。また、この処理手段151には記録手段152が接続され、撮影された電子画像を記録することもできる。なお、この記録手段152は処理手段151と別体に設けてもよいし、フレキシブルディスクやメモリーカード、MO等により電子的に記録書込を行うように構成してもよい。また、CCD149に代わって銀塩フィルムを配置した銀塩カメラとして構成してもよい。
【0098】
さらに、ファインダー用光路144上にはファインダー用対物光学系153が配置してある。このファインダー用対物光学系153によって形成された物体像は、像正立部材であるポロプリズム155の視野枠157上に形成される。このポリプリズム155の後方には、正立正像にされた像を観察者眼球Eに導く接眼光学系159が配置されている。なお、撮影光学系141及びファインダー用対物光学系153の入射側、接眼光学系159の射出側にそれぞれカバー部材150が配置されている。
【0099】
このように構成されたデジタルカメラ140は、撮影光学系141が5倍程度の高変倍比で、高い光学性能を有するズームレンズであるので、高性能で、奥行き方向が極めて薄い安価なデジタルカメラが実現できる。
【0100】
なお、図6の例では、カバー部材150として平行平面板を配置しているが、パワーを持ったレンズを用いてもよい。あるいは、省いてもよい。
【0101】
(内部回路構成)
図7は、上記デジタルカメラ140の主要部の内部回路の構成ブロック図である。なお、以下の説明では、上記の処理手段は例えばCDS/ADC部124、一時記憶メモリ117、画像処理部118等からなり、記憶手段は例えば記憶媒体部119等からなる。
【0102】
図7に示すように、デジタルカメラ140は、操作部112と、操作部112に接続された制御部113と、制御部113の制御信号出力ポートにバス114及び115を介して接続された撮像駆動回路116並びに一時記憶メモリ117、画像処理部118、記憶媒体部119、表示部120、及び設定情報記憶メモリ部121を備えている。
【0103】
また、この制御部は、ズームレンズを制御するズームレンズ駆動回路130とも電気的に接続され、駆動回路に情報を伝達し、ズーミング動作、絞り形状の操作、CCDと連携をとりながらの上述のフォーカシング動作も行う。
【0104】
上記の一時記憶メモリ117、画像処理部118、記憶媒体部119、表示部120、及び設定情報記憶メモリ部121はバス122を介して相互にデータの入力又は出力が可能なように構成され、また、撮像駆動回路116には、CCD149とCDS/ADC部124が接続されている。
【0105】
操作部112は各種の入力ボタンやスイッチを備え、これらの入力ボタンやスイッチを介して外部(カメラ使用者)から入力されるイベント情報を制御部に通知する回路である。
【0106】
制御部113は、例えばCPU等からなる中央演算処理装置であり、不図示のプログラムメモリを内蔵し、そのプログラムメモリに格納されているプログラムにしたがって、操作部112を介してカメラ使用者から入力される指示命令を受けてデジタルカメラ140全体を制御する回路である。
【0107】
CCD149は、本発明による撮影光学系141を介して形成された物体像を受光する。CCD149は、撮像駆動回路116により駆動制御され、その物体像の各画素ごとの光量を電気信号に変換してCDS/ADC部124に出力する撮像素子である。
【0108】
CDS/ADC部124は、CCD149から入力する電気信号を増幅しかつアナログ/デジタル変換を行って、この増幅とデジタル変換を行っただけの映像生データ(ベイヤーデータ、以下RAWデータという。)を一時記憶メモリ17に出力する回路である。
【0109】
一時記憶メモリ117は、例えばSDRAM等からなるバッファであり、CDS/ADC部124から出力される上記RAWデータを一時的に記憶するメモリ装置である。画像処理部118は、一時記憶メモリ117に記憶されたRAWデータ又は記憶媒体部119に記憶されているRAWデータを読み出して、制御部113から指定された画質パラメータに基づいて歪曲収差補正を含む各種画像処理を電気的に行う回路である。
【0110】
記録媒体部119は、例えばフラッシュメモリ等からなるカード型又はスティック型の記録媒体を着脱自在に装着して、それらカード型又はスティック型のフラッシュメモリに、一時記憶メモリ117から転送されるRAWデータや画像処理部118で画像処理された画像データを記録して保持する装置の制御回路である。
【0111】
表示部120は、液晶表示モニターを備え、その液晶表示モニターに画像や操作メニュー等を表示する回路である。設定情報記憶メモリ部121には、予め各種の画質パラメータが格納されているROM部と、そのROM部から読み出された画質パラメータの中から操作部112の入力操作によって選択された画質パラメータを記憶するRAM部が備えられている。設定情報記憶メモリ部121は、それらのメモリへの入出力を制御する回路である。
【0112】
このように構成されたデジタルカメラ140は、撮影光学系141が、本発明により、十分な広角域を有し、コンパクトな構成としながら、高変倍で全変倍域で結像性能が極めて安定的であるので、高性能・小型化・広角化が実現できる。そして、広角側、望遠側での速い合焦動作が可能となる。
【0113】
上述の実施例では、広角端から望遠端にかけて明るさ絞りの開口部の面積が変化し、開口部の短辺方向と長辺方向の大きさの比を一定とする例を示した。もちろん、上述の記載のごとく、絞りの開口面積を常に一定とすれば、構成をより簡単に構成できる。例えば、開口部のサイズをs12x=1.957、s12y=1.450 で一定の固定絞りとしてもよい。
【0114】
また、開口部のサイズの比等も、上記数値実施例に限らない。さらに、開口部を絞り込んだときに、開口部のX方向とY方向の大きさの比が変化する構成としてもよい。また、明るさ絞りの面積を換えて光量調整を行う機構としてもよい。以下にその例を説明する。
【0115】
図9は、絞り部300の概略構成を示している。開口面積が最大となる状態において、楕円形状の開口AP1が絞り部本体301に形成されている。そして、明るさ絞りの面積の制御を、補助絞り302の抜き差しにより行うように構成されている。図9において、絞り部本体301には、X方向に2つのレール部303が形成されている。補助絞り302は、レール部303に沿って、X方向に移動可能に構成されている。
【0116】
補助絞り302には、中円形状の開口AP2と、小円形状の開口AP3との2種類の開口が形成されている。開口AP3は、開口AP2よりも小さい開口面積を有している。そして、補助絞り302をレール部303に沿ってX方向に移動する。これにより、明るさ絞りの面積を変更させることができる。本例では、開口AP1、AP2、AP3の3段階の明るさ絞り面積を得ることができる。
【0117】
また、絞り込んだ状態、即ち開口AP3の状態において、明るさ絞りのX方向とY方向のサイズの比が1(Dxm/Dym=1)としている。これにより、絞り込んだ状態での回折の影響を抑えやすくしている。この例を上述の実施例のズームレンズ、電子撮像装置に採用してもよい。
【0118】
次に、明るさ絞りの開口面積を可変とする他の構成例を説明する。開口部の面積が最も大きくなる状態となる楕円状の開口部の前面または背面側に、図10の(a)、(b)、(c)に示すようなX方向に移動可能な絞り羽401、402を配置する。
【0119】
絞り羽401、402を相互にX方向に近づけること、または遠ざけることで、開口部の面積を連続的に制御できる。図10の(a)は開口部の面積が最も大きくなる状態、(b)は中間状態、(c)は最も絞り込んだ状態をそれぞれ示している。
【0120】
最小に絞り込んだ(c)の状態において、開口部は略正方形となり、X方向の両端がやや丸みを持った形状となるように構成されている。ここで、Dxm/Dym≒0.8となるように制御している。
【0121】
なお、明るさ絞りの開口面積を可変とする構成は、上述したものに限られず、上述の構成以外の他の構成を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、薄型化を行ってもゴースト、フレアの発生を抑え、結像性能も確保しやすい電子撮像装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の電子撮像装置に用いるズームレンズの実施例の無限遠物点合焦時の広角端(a)、第2の中間状態(b)、望遠端(c)でのレンズ断面図である。
【図2】上記ズームレンズの無限遠物点合焦時の収差図である。
【図3】上記ズームレンズの他のレンズ断面図である。
【図4】光路折り曲げズームレンズを組み込んだデジタルカメラの外観を示す前方斜視図である。
【図5】図4のデジタルカメラの後方斜視図である。
【図6】図4のデジタルカメラの断面図である。
【図7】デジタルカメラの主要部の内部回路の構成ブロック図である。
【図8】明るさ絞りの概略構成を示す図である。
【図9】明るさ絞りの概略構成を示す他の図である。
【図10】明るさ絞りの概略構成を示す別の図である。
【符号の説明】
【0124】
G1…第1レンズ群
G2…第2レンズ群
G3…第3レンズ群
G4…第4レンズ群
S…開口絞り
F…ローパスフィルタ
C…カバーガラス
P…プリズム
I…像面
E…観察者眼球
112…操作部
113…制御部
114…バス
115…バス
116…撮像駆動回路
117…一時記憶メモリ
118…画像処理部
119…記憶媒体部
120…表示部
121…設定情報記憶メモリ部
122…バス
124…CDS/ADC部
130…ズームレンズ駆動回路
140…デジタルカメラ
141…撮影光学系
142…撮影用光路
143…ファインダー光学系
144…ファインダー用光路
145…シャッター
146…フラッシュ
147…液晶表示モニター
149…CCD
150…カバー部材
151…処理手段
152…記録手段
153…ファインダー用対物光学系
155…ポロプリズム
157…視野枠
159…接眼光学系
200…絞り部
201、202…絞り羽
300…絞り部
301…絞り部本体
302…補助絞り
401、402…絞り羽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の像を形成するズームレンズと、
前記ズームレンズにより形成された前記像を受光して電気信号に変換する電子撮像素子と、を備えた電子撮像装置において、
前記ズームレンズは、
被写体側から像面にいたる光軸を含む光路に沿って並んで配置された複数のレンズ群を備え、前記複数のレンズ群の互いの間隔を変化させることによりズームレンズ全系の焦点距離を変化させ、
前記複数のレンズ群中の最も物体側に配置されたレンズ群を第1レンズ群としたときに、
前記第1レンズ群は前記光路を反射させる反射面を備え、
前記第1レンズ群中の前記反射面により反射された光路中に配置された明るさ絞りを備え、
前記明るさ絞りは、開口部の面積が最も大きくなる状態にて非円形の形状の開口部を持ち、
前記第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、前記開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさが、
前記第1レンズ群に入射する入射光軸と前記第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、前記開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさよりも小さく、
前記第1レンズ群中の前記反射面により反射された光路中であって、且つ、最も像側に配置されるレンズの外形形状が、非円形であり、
前記第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、前記外形形状の大きさが、
前記第1レンズ群に入射する入射光軸と前記第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、前記外形形状の大きさよりも小さく、
以下の条件式を満足することを特徴とする電子撮像装置。
1.10<Dx/Dy<1.75 ・・・(1)
ただし、
yは、前記第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさ、
xは、前記第1レンズ群に入射する入射光軸と前記第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、前記開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさ、
である。
【請求項2】
前記開口部の面積が一定であることを特徴とする請求項1に記載の電子撮像装置。
【請求項3】
前記開口部は、望遠端の最小Fナンバーとなる状態よりも、広角端での最小Fナンバーとなる状態において明るさ絞り開口部の面積が小さくなり、
広角端での最小Fナンバーとなる状態での開口部の形状が以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の電子撮像装置。
1.10<DxW/DyW<1.75 ・・・(2)
ただし、
yWは、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、広角端にて開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさ、
xWは、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、広角端にて開口部の面積が最も大きくなる状態での開口部の大きさ、
である。
【請求項4】
前記開口部の面積を小さくする機構を有し、
前記開口部の面積を最も小さくした際に、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1または3に記載の電子撮像装置。
x/Dy>Dxm/Dym≧0.5 ・・・(3)
ただし、
ymは、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、開口部の面積が最も小さくなる状態での開口部の大きさ、
xmは、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、開口部の面積が最も小さくなる状態での開口部の大きさ、
である。
【請求項5】
前記開口部の面積を小さくする機構は、前記開口部の径の大きい方向に移動する開口形状が固定の補助絞りであることを特徴とする請求項4に記載の電子撮像装置。
【請求項6】
前記開口部の面積を小さくする機構は、前記開口部の径の大きい方向に移動する2枚の絞り羽であることを特徴とする請求項4に記載の電子撮像装置。
【請求項7】
前記明るさ絞りよりも物体側で前記明るさ絞りにもっとも近いレンズ面の有効面が、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子撮像装置。
1.15<Fx/Fy<1.80 ・・・(4)
ただし、
yは、前記第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、明るさ絞りよりも物体側で明るさ絞りにもっとも近いレンズ面の有効面の大きさ、
xは、前記第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、明るさ絞りよりも物体側で明るさ絞りにもっとも近いレンズ面の有効面の大きさ、
である。
【請求項8】
前記明るさ絞りよりも像面側で前記明るさ絞りに最も近いレンズ面の有効面が、
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子撮像装置。
1.15<Rx/Ry<1.80 ・・・(5)
ただし、
yは、第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、明るさ絞りよりも像面側で明るさ絞りにもっとも近いレンズ面の有効面の大きさ、
xは、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、明るさ絞りよりも像面側で明るさ絞りに最も近いレンズ面の有効面の大きさ、
である。
【請求項9】
前記電子撮像素子の受光面の有効撮像領域は、短辺方向と長辺方向とを持つ矩形であり、
前記有効撮像領域の長辺方向が、第1レンズ群に入射する入射光軸と第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向となるように配置し、
前記電子撮像素子上の像の前記長辺方向のコントラストに基づいてフォーカシング情報を検出する制御部を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子撮像装置。
【請求項10】
前記電子撮像素子が、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子撮像装置。
1.45μm<P<2.15μm ・・・(6)
ただし、Pは電子撮像素子の受光領域における画素ピッチの平均である。
【請求項11】
前記明るさ絞りよりも物体側で前記明るさ絞りに最も近いレンズの外形形状について、
前記第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、前記外形形状の大きさが、前記第1レンズ群に入射する入射光軸と前記第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、前記外形形状の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項7に記載の電子撮像装置。
【請求項12】
前記明るさ絞りよりも像面側で前記明るさ絞りに最も近いレンズの外形形状について、
前記第1レンズ群に入射する入射光軸の方向における、前記外形形状の大きさが、前記第1レンズ群に入射する入射光軸と前記第1レンズ群の反射面により反射された反射光軸とに垂直な方向における、前記外形形状の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項8に記載の電子撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−96559(P2008−96559A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276137(P2006−276137)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】