説明

センサパッケージ及びその製造方法

【課題】保護材に起因する応力の影響を小さくできるセンサパッケージ及び小型化されたパッケージの内部に保護材を均一に充填することができるセンサパッケージの製造方法を提供すること。
【解決手段】センサパッケージ10は、センサチップ40と、センサチップ40を収納するセンサチップ収納凹部20を有するパッケージ本体30と、センサチップ40の少なくとも一部を覆う保護材50とを有し、センサチップ収納凹部20の内壁には、センサチップ40の外周側面との距離を部分的に拡大する複数の保護材貯留部60、70が形成されていること、この保護材貯留部60、70のセンサチップ40と対向する部分の平面幅は、同センサチップ40の平面幅より小さいこと、及びセンサチップ40の外周側面と保護材貯留部60、70に連なって保護材50が充填されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを収納するためのセンサパッケージ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工技術の進展によりMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサ等の超微細センサが開発されており、同時にこれらのセンサをパッケージングしたセンサパッケージの開発も進められている(特許文献1)。
【0003】
図8は、従来のセンサパッケージ1の構成を示す概略断面図である。従来のセンサパッケージ1は、センサチップ収納凹部2を有するパッケージ本体3と、センサチップ収納凹部2に収納されたセンサチップ4と、センサチップ4とセンサチップ収納凹部2の隙間に充填された保護材5を有している。パッケージ本体3のセンサチップ収納凹部2は中間段部2bを有し、中間段部2bに配置されたボンディングパッド(図示せず)とセンサチップ4の端子がボンディングワイヤ(図示せず)により接続されている。
【0004】
保護材5はセンサチップ4の一部、例えばボンディングパッドを酸化及び腐食から守るための樹脂材料であり、特許文献1の図2に示されるように、センサチップ収納凹部2に収納されたセンサチップ4の上方から滴下し、センサチップ4やボンディングパッド(図示せず)を覆って充填することが一般的であった。
【特許文献1】特開2001−116639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、センサチップ及びセンサパッケージの小型化及び高密度化が進む中でセンサチップ収納凹部2の内壁とセンサチップ4の外周側面との空間距離が小さくなり、センサチップ収納凹部2に収納されたセンサチップ4の上方から保護材5を滴下しても、センサチップ収納凹部2の内壁とセンサチップ4の外周側面との間に表面張力の作用などが働き、保護材5がセンサチップ収納凹部2の内壁とセンサチップ4の外周側面との間に行き渡らずボイドや塗布ムラとなってしまうことがある。また、センサチップ4の外周側面と中間段部2bの壁面の空間距離dが特に小さくなっているので、センサチップ収納凹部2の角部2aにはボイドなどが発生しやすい傾向がある。
【0006】
こうした保護材5中のボイドや保護材5の塗布ムラは、樹脂硬化加熱工程における熱の影響や製品信頼性試験である熱サイクル試験での熱影響を受けパッケージ本体3の形状に歪みを与えたりする恐れがある。あるいは、センサチップ4は、パッケージ本体3が外部から晒される温度変化に応じてボイドや塗布ムラの応力を受けセンシング特性自体への影響も懸念される。
【0007】
本発明は、上記の問題意識に基づいてなされたものであり、保護材に起因する応力の影響を小さくできるセンサパッケージ及び小型化されたパッケージの内部に保護材を均一に充填することができるセンサパッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、パッケージ本体のセンサチップ収納凹部に最低限の保護材貯留部を形成し、この保護材貯留部により保護材に起因する応力の影響を小さくできるという着眼点に基づき、本発明をするに至った。また、センサチップの外周側面とセンサチップ収納凹部との空間距離を確保し、センサチップの高さより低い位置で、保護材を注入する始点としての保護材貯留部から保護材を注入することで保護材を均一に充填することができるという着眼点に基づき、本発明をするに至った。
【0009】
即ち、本発明のセンサパッケージは、センサチップと、センサチップを収納するセンサチップ収納凹部を有するパッケージ本体と、センサチップの少なくとも一部を覆う保護材とを有し、センサチップ収納凹部の内壁には、センサチップの外周側面との距離を部分的に拡大する複数の保護材貯留部が形成されていること、この保護材貯留部のセンサチップと対向する部分の平面幅は、同センサチップの平面幅より小さいこと、及びセンサチップ外周側面と保護材貯留部に連なって保護材が充填されていることを特徴とする。
【0010】
保護材貯留部は、センサチップ収納凹部の中心を基準として対称な位置に2箇所形成されていることが好ましい。
【0011】
パッケージ本体のセンサチップ収納凹部は、その一態様では、外枠部と、この外枠部の内側に一段低く位置する中間段部と、この中間段部の内側に一段低く位置するセンサチップ載置部とを有し、保護材貯留部は、センサチップ載置部から中間段部に食い込んで外枠部の内壁に達している。
【0012】
また、センサチップの端子とボンディングワイヤにより接続可能なボンディングパッドは、中間段部上面に、保護材貯留部とは平面的な位置を異ならせて配置されていることが好ましい。
【0013】
センサチップ、センサチップ収納凹部及びパッケージ本体は、好ましい一態様では、略正方形の平面形状を有する。
【0014】
センサチップは、センサチップ収納凹部と中心が一致し、該センサチップ外周側面とセンサチップ収納凹部の内壁とが略等距離となるように配置されていることが好ましい。
【0015】
パッケージ本体は外枠部を有し、この外枠部に、センサチップ収納凹部を封止する蓋部を被せることが好ましい。
【0016】
本発明のセンサパッケージの製造方法は、センサチップをパッケージ本体内のセンサチップを収納するセンサチップ収納凹部に載置するセンサチップ載置工程と、前記載置後に前記センサチップの端子と前記パッケージ本体内のボンディングパッドとをボンディングワイヤで接続する導電接続工程と、前記接続されたセンサチップの外周側面に、該センサチップの高さより低い位置で、保護材を注入する始点としての保護材貯留部から保護材を注入し、該センサチップ外周側面と保護材貯留部に連なって保護材を充填する保護材充填工程とを有することを特徴としている。
【0017】
保護材貯留部は、その一態様では、センサチップ収納凹部の内壁に該センサチップの外周側面との距離を部分的に拡大する複数が形成されていて、この保護材貯留部のセンサチップと対向する部分の平面幅は、同センサチップの平面幅より小さく構成されており、前記保護材充填工程では、個々の保護材貯留部から保護材が別々に充填されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセンサパッケージによれば、センサチップ収納凹部の内壁に該センサチップの外周側面との距離を部分的に拡大する保護材貯留部が複数形成されていて、この保護材貯留部のセンサチップと対向する部分の平面幅は、同センサチップの平面幅より小さく構成されており、センサチップ外周側面と保護材貯留部に連なって保護材が充填されるので、保護材に起因する応力の影響を小さくすることができる。
【0019】
本発明のセンサパッケージの製造方法によれば、センサチップの外周側面に、該センサチップの高さより低い位置で、保護材を注入する始点としての保護材貯留部から保護材を注入し、センサチップ外周側面と保護材貯留部に連なって保護材を充填するので、小型化されたパッケージの内部に保護材を均一に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るセンサパッケージ10の構成を示す平面図である。図1では、蓋部26のない状態を示しており、パッケージ本体30の中間段部23のみにハッチングを施している。図2は図1のII−II断面図である。図3は図1のIII−III断面図である。
【0021】
図1に示すように、センサパッケージ10は、センサチップ収納凹部20を有するパッケージ本体30と、センサチップ収納凹部20に収納されたセンサチップ40とを有するキャビティパッケージである。図1では図示を省略したが、図2又は図3に示すように、センサチップ40とセンサチップ収納凹部20の隙間には、センサチップ40を少なくとも覆う保護材50が充填されている。尚、図2及び図3共にセンサチップ40の内部は省略している。
【0022】
パッケージ本体30は、エポキシ系樹脂又はセラミック等の材料からなる略正方形(例えば2.5mm四方)の平面形状を有する箱型容器である。パッケージ本体30は、この実施形態では、センサチップ載置部(内底部)21と、このセンサチップ載置部21の周縁から起立する中間段部23と、この中間段部23の周縁から起立する外枠部25とを有しており、この外枠部25によりパッケージ本体30のパッケージ収納凹部20が囲われている。すなわち、パッケージ本体30は、外側から順に、外枠部25と、この外枠部25の内壁24に沿う一段低い中間段部23と、この中間段部23の内壁22に沿う一段低いセンサチップ載置部21を有し、これらの外枠部25、中間段部23及びセンサチップ載置部21でセンサチップ収納凹部20を区画している。
【0023】
また、外枠部25には、例えばガラス板やセラミック板からなる蓋部26が被せられており、この蓋部26によりセンサチップ収納凹部20が封止されている。中間段部23には、センサチップ40の端子42A〜42Dと導通を取るための4つのボンディングパッド23A〜23Dが配置されており、これらボンディングパッド23A〜23Dは更に、パッケージ外部に延長されたリード線(図示せず)と導通されている。このリード線を外部装置(例えば、携帯端末装置、インクジェット等)に接続することにより、センサパッケージ10が外部装置とのインタフェースとして機能する。
【0024】
図1及び図2に示すように、センサチップ収納凹部20は、中間段部23の壁面(内壁)22とセンサチップ40の外周側面との距離dが、センサチップ40の各辺で略等距離となるように形状が設定されている。このとき、センサチップ40の中心とセンサチップ収納凹部20(センサチップ載置部21)の中心とが一致する。
【0025】
次に図1及び図3に示すように、センサチップ収納凹部20には、中間段部23の内壁22に連続させて、センサチップ40の外周側面との距離を部分的に拡大する一対の保護材貯留部60、70が形成されている。保護材貯留部60、70は、センサチップ載置部21から中間段部23に食い込んで(中間段部23を除去して)パッケージ本体30の内壁24に達している。別言すると、保護材貯留部60、70は中間段部23の壁面60a、70aで囲まれた領域に形成され、壁面60a、70aの形状は、両者の中間点で線対称な平面視略矩形となっている。
【0026】
保護材貯留部60、70のセンサチップ40と対向する部分の平面幅wは、センサチップ40の平面幅Wよりも小さく設定されている。すなわち、パッケージ本体10を平面的にみたときの保護材貯留部60、70の入口部の幅wは、センサチップ40の平面的な幅Wよりも小さく設定されている。保護材貯留部60、70の幅wをセンサチップ40の幅Wと同等にすると、保護材貯留部60、70に充填される保護材の体積(量)が他の箇所に充填される保護材の体積(量)よりも大きくなり、パッケージ自体の歪みの原因となるためである。また、中間段部23における保護材貯留部60、70の非形成領域が厚肉であるので、壁面60a、70aにかかる内圧に対して安定的であるし、保護材貯留部60、70の幅wの幅を小さくしたことから薄肉部分を最小とすることができている。
【0027】
これら保護材貯留部60、70は、センサチップ収納凹部20の中心を基準として左右対称な位置に2箇所形成されている。また、保護材貯留部60、70は同収容体積となっており、センサチップ収納凹部20の中心に対して180度回転対称な形状をしている。このように保護材貯留部60、70を互いに対称な位置に形成したのでバランスがよくなり、センサパッケージ10は保護材貯留部60、70に充填される保護材50に起因する歪みに対して打ち消しあう作用が得られる。
【0028】
図1〜図3に示すように中間段部23の壁面22とセンサチップ40の外周側面との空間は保護材貯留部60、70と繋がっている。つまり、保護材50は、中間段部23の壁面22とセンサチップ40の外周側面との空間(保護材貯留部60、70の非形成領域)と、保護材貯留部60、70とに連なって充填されている。また、保護材貯留部60、70は、中間段部23の上面のボンディングパッド23A〜23Dとは平面的な位置を異ならせて配置されている。
【0029】
センサチップ40は、略正方形(例えば1mm四方)の平面形状を有する微細なセンサ素子であり、例えば、加速度センサ、圧力センサ又はジャイロセンサ等のMEMSセンサである。センサチップ40は、センサチップ収納凹部20のセンサチップ載置部21にダイボンド樹脂41により接着されている。センサチップ40は、センサチップ収納凹部20(センサチップ載置部21)の内周と平面形状が相似(略正方形)している。
【0030】
センサチップ40の側面と保護材貯留部60、70の非形成領域である中間段部23の壁面22との空間距離dは例えば0.25mm程度であり(図2)、センサチップ40の側面と保護材貯留部60、70の形成領域である中間段部23の壁面22との空間距離Dは例えば0.5mm程度である(図3)。また、センサチップ40の上面の四隅には端子42A〜42Dが設けられており、これらの端子42A〜42Dと中間段部23に配置されたボンディングパッド23A〜23Dは、ボンディングワイヤ43A〜43Dによって電気的に接続されている。
【0031】
保護材50は、電気絶縁性の樹脂材料(例えば、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等)からなり、センサチップ40とセンサチップ収納凹部20の隙間に充填され、センサチップ40の一部を少なくとも覆っている。センサチップ40及びその端子42A〜42D、ボンディングワイヤ43A〜43D、並びにボンディングパッド23A〜23Dは酸化や腐食等による劣化が起こり易いので、センサチップ収納凹部20に充填された保護材50がこれらの素子を被覆して電気信号経路を確保している。例えば、ボンディングワイヤ43A〜43Dを酸化や腐食等による劣化が起こり難い貴金属(金など)で形成すれば、センサチップ40の端子42A〜42D、並びにボンディングパッド23A〜23Dを保護材50で覆っておけばよい。
【0032】
このように、本実施の形態のセンサパッケージ10によれば、センサチップ及びセンサパッケージが相対的に小型化及び高密度化されている場合でも保護材に起因する応力の影響を小さくできる。即ち本実施の形態のセンサパッケージ10によれば、小型低背で信頼性の高い構造のセンサパッケージ10が実現できる。
【0033】
次に、図1乃至図4を参照して、本実施の形態のセンサパッケージ10の製造方法を説明する。本実施の形態のセンサパッケージ10は、以下の製造工程により製造される。
【0034】
1.パッケージ本体の製造工程
まず、図1のように構成されたパッケージ本体30を製造(あるいは用意)する。図2又は図3に示すようにセンサパッケージ10は、例えば、セラミックパッケージであれば、セラミックス原料粉末、有機結合剤、可塑剤、溶剤などの混合スラリをシート状に形成した未焼成セラミックシートを用意する。そして図2又は3に示す順序でセラミックシート11の上に所定形状にくりぬいたセラミックシート12及び13を積層し、この一体シートを焼成し個別化することでセンサパッケージ本体30を形成する。ここで、中間段部23となるセラミックシート12をくりぬく形状は、収納されるセンサチップ40の大きさを考慮し決められ、併せて保護材貯留部60、70の形状もくりぬいておく。セラミックシート13の形状も外枠部25を考慮して形成する。
【0035】
2.センサチップの載置工程
次に、図2又は図3に示すように、パッケージ本体30のセンサチップ収納凹部20のセンサチップ載置部21にダイボンド樹脂41を塗り、センサチップ40を載置する。ダイボンド樹脂41を硬化させ、センサチップ収納凹部20内にセンサチップ40を固定する。センサチップ40とセンサチップ収納凹部20(センサチップ載置部21)は平面形状が相似するので、センサチップ収納凹部20に載置するセンサチップ40の位置決めを簡単に行うことができる。
【0036】
3.導電接続工程
次に、図1に示すように、固定されたセンサチップの端子42A〜42Dとボンディングパッド23A〜23Dとを、ボンディングワイヤ43A〜43Dで接続する。
【0037】
4.保護材の充填工程
そして、図4に示す保護材射出ノズル51をパッケージ本体30のセンサチップ収納凹部20に進入させた状態で、保護材射出ノズル51の先端部51aから保護材50を射出する。具体的には、保護材射出ノズル51を保護材貯留部60、70に進入させて、その先端部51aがセンサチップ40上面よりも下になった位置から保護材50を射出する。
【0038】
保護材射出ノズル51の先端部51aの先端径Ndは例えば0.35mm程度であり、一定の粘度を有する保護材50を押し出す射出圧力を維持するためにはこれ以上の飛躍的な小型化は望めない。即ち、一定の粘度を有する保護材を押し出すために保護材射出ノズルの小型化には限界がある一方、センサチップ及びセンサパッケージの小型化はこれとは無関係に進んでいるので、保護材射出ノズルに対してセンサパッケージが相対的に小さくなり過ぎる事態が生じている。このように小型化されたセンサパッケージに保護材射出ノズルを用いて保護材を射出すると、ノズル先端部と中間段部が干渉(接触)して保護材の円滑な射出が妨げられてしまうおそれもある。やむを得ずセンサチップの高さよりも高い位置で保護材を射出しても、センサチップの外周側面とセンサチップ収納凹部の壁面との空間距離(クリアランス)が小さいので、粘度を有する保護材はセンサチップとセンサチップ収納凹部の壁面との間の隅々まで落ちて行かず、ボイドや塗布ムラが発生してしまう。このボイドや塗布ムラの部位には応力が集中し易く、素子としての耐久性及び動作安定性が低下してしまう。
【0039】
そこで、本実施の形態のセンサパッケージ10は、保護材射出ノズル51を保護材貯留部60、70に進入させることにより、センサチップ40の高さより低い位置を、保護材50を注入する始点とすることができる(図4)。
【0040】
つまり、センサチップ40の外周側面からパッケージ本体30の内壁24までの空間距離D>保護材射出ノズル51の先端径Ndの関係を満たし、かつセンサチップ40の平面幅W>保護材貯留部60、70のセンサチップ40と対向する部分の平面幅w>保護材射出ノズル51の先端径Ndの関係を満たすことで、保護材射出ノズル51がセンサチップ収納凹部20の底面近くまで到達した状態で保護材50を射出することができる。即ち、保護材貯留部60、70は、超微細構造のセンサパッケージ10に保護材50を注入する際のツール(保護材射出ノズル51)のニゲとなるのである。
【0041】
その結果、射出された保護材50はまず、保護材貯留部60、70を伝ってセンサチップ40の側面を覆いながら、保護材貯留部60、70に連なってセンサチップ40の周囲を回り込むように充填されていく。保護材貯留部60、70とセンサチップ40の周囲の空間は、センサチップ載置部21と同一平面で繋がっているので、センサチップ40の上面よりも低い位置から射出される保護材50は、平面方向に広がりセンサチップ40の周囲を取り囲むことができ角部に対して表面張力などの作用が働きにくい。
【0042】
保護材貯留部60、70から保護材貯留部60を始点として保護材50を注入した後、保護材貯留部70を始点として保護材50を注入すると、より均一な充填が可能になる。保護材貯留部60を始点として注入する保護材50の量は、保護材貯留部70を始点として注入する保護材50の量と同程度であるほうが均一充填の観点で好ましい。保護材貯留部60を始点とする保護材50の注入と、保護材貯留部70を始点とする保護材50の注入とを同程度の保護材注入量で交互に行うことにより、均一度合を高めることが可能である。
【0043】
あるいは、保護材貯留部60を始点として保護材50を注入するノズルと、保護材貯留部70を始点として保護材50を注入するノズルの複数のノズルを用いて、保護材貯留部60、70の両方から同時に注入することもできる。本実施の形態のセンサパッケージの製造方法によれば、ボイドや塗布ムラの発生を抑制した状態でセンサチップの周囲全体に保護材50を行き渡せることができる。保護材50はセンサチップ40側面の空間領域を満たすとその空間領域から溢れ出るように、センサチップ40の上面を覆いながら中間段部23上に充填されていく。このようにして、保護材50は、センサチップ収納凹部20の底面から順に、均一に満遍なく充填されていく。
【0044】
また、保護材50がセンサチップ40の側面の空間領域を満たした後は、センサチップ上を保護するためにセンサチップ40の上から保護材50を滴下してもよい。また、ボンディングワイヤ43A〜43Dが酸化や腐食等による劣化が起こり難い貴金属(金など)で形成されていれば、センサチップ40及びその端子42A〜42D、並びにボンディングパッド23A〜23Dを覆う範囲の保護材50の樹脂量で充填することができ、保護材50から受けるセンサチップ40への応力を最小限とすることが可能である。
【0045】
また、保護材貯留部60、70を中間段部23のボンディングパッド23A〜23Dの配置部とは平面的な位置を異ならせて配置したので、保護材貯留部60、70に進入した保護材射出ノズル51がボンディングワイヤ43A〜43Dと干渉することはなく、保護材50を円滑に射出することができる。
【0046】
5.保護材の加熱硬化工程
保護材50の射出が終了した後は、保護材50を加熱硬化しゲル化させる。この場合、センサチップ40とセンサチップ収納凹部20(センサチップ載置部21)は平面形状を略正方形とすることで、保護材50への加熱による応力や完成後の外的負荷によるパッケージ本体30の破損を防止し又は反り上がりを低減することができる。また、センサチップ40をセンサチップ収納凹部20(センサチップ載置部21)の略中央部に配置することで、センサチップ端子42A〜42Dとボンディングパッド23A〜23Dを導通させるボンディングワイヤ43A〜43Dをパッケージ内部で対称に形成でき、センサパッケージ10の動作安定性が向上する。
【0047】
6.センサチップ収納凹部の封止工程
最後に、パッケージ本体30の外枠部25に、センサチップ収納凹部20を封止するパッケージ蓋部26を被せる。これにより、パッケージ内部の気密性または防塵性が確保され、センサチップ端子42A〜42D及びボンディングワイヤ43A〜43Dの劣化、並びにパッケージ内部へのダスト混入を防止することができる。
【0048】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に係るセンサパッケージ100の構成を示す平面図である。図5では、蓋部26のない状態を示しており、パッケージ本体30の中間段部23のみにハッチングを施している。本発明の実施の形態1に係るセンサパッケージ10の構成と同一の構成の説明は同一符号とし詳細説明を省略する。
【0049】
センサパッケージ100は、センサチップ40の各辺に対応する位置つまり4辺に対応する位置に保護材貯留部を4つ設けている。すなわち、図5に示すように、保護材貯留部80、90をセンサパッケージ10よりさらに有している。保護材貯留部80、90の構成は保護材貯留部60、70と同様であり、詳細説明を省略する。センサパッケージ100は、保護材貯留部を4つ設けてより対称性が高いので、保護材に起因する応力の影響をより小さくできる。尚、保護材貯留部の数は、充填する保護材の量の多少に応じて適宜変更することができる。
【0050】
次に、保護材貯留部の形状の変形例について、図6及び図7を用いて説明する。図6及び図7は、保護材貯留部の平面視形状を示す部分模式図である。上述の各実施の形態では、保護材貯留部60の壁面60aは平面視略矩形であったが、図6に示すように、保護材貯留部60の壁面60aが平面視円弧形状であってもよく、図7に示すように、保護材貯留部60の壁面60aがパッケージ本体30の内壁24と接していなくてもよい。図6及び図7では保護材貯留部60のみを図示したが、保護材貯留部70、80、90の形状についても同様に変形可能である。
【0051】
尚、上記各実施の形態では、センサチップ40の側面と保護材貯留部60、70(80、90)の非形成領域である中間段部23の壁面22との空間距離d、センサチップ40の側面と保護材貯留部60、70(80、90)の形成領域である中間段部23の壁面22との空間距離D、保護材貯留部60、70(80、90)の平面幅w、及びセンサチップ40の平面幅Wの値を具体的に例示して説明したが、本発明はこれに限定されず、種々変更が可能である。すなわち本発明は、小型化及び高密度化されたあらゆるセンサパッケージ及びその製造方法に適用することができる。
【0052】
尚、上記実施の形態ではセンサチップ40がMEMSセンサである場合を例示して説明したが、センサチップ40は、磁気センサ、CCD(Charged Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等のイメージセンサその他の各種の超微細センサとすることができる。
【0053】
尚、上記実施の形態では、センサチップ40、センサチップ収納凹部20及びパッケージ本体30の平面形状を略正方形の相似形状としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、センサチップとセンサチップ収納凹部の平面形状を円形又は楕円形等の相似形状としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1に係るセンサパッケージの構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】保護材貯留部への保護材の射出を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るセンサパッケージの構成を示す平面図である。
【図6】保護材貯留部の第1変形例の平面視形状を示す部分模式図である。
【図7】保護材貯留部の第2変形例の平面視形状を示す部分模式図である。
【図8】従来のセンサパッケージの構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10、100 センサパッケージ
11、12、13 セラミックシート
20 センサチップ収納凹部
21 センサチップ載置部
22 中間段部の壁面
23 中間段部
23A〜23D ボンディングパッド
24 外枠部の内壁
25 外枠部
26 蓋部
30 パッケージ本体
40 センサチップ
41 ダイボンド樹脂
42A〜42D センサチップ端子
43A〜43D ボンディングワイヤ
50 保護材
51 保護材射出ノズル
51a ノズル先端部
60、70、80、90 保護材貯留部
60a、70a、80a、90a 保護材貯留部の壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサチップと、
前記センサチップを収納するセンサチップ収納凹部を有するパッケージ本体と、
前記センサチップの少なくとも一部を覆う保護材とを有し、
前記センサチップ収納凹部の内壁には、前記センサチップの外周側面との距離を部分的に拡大する複数の保護材貯留部が形成されていること、
この保護材貯留部のセンサチップと対向する部分の平面幅は、同センサチップの平面幅より小さいこと、及び
上記センサチップ外周側面と保護材貯留部に連なって前記保護材が充填されていること、
を特徴とするセンサパッケージ。
【請求項2】
前記保護材貯留部は、前記センサチップ収納凹部の中心を基準として対称な位置に2箇所形成されている請求項1記載のセンサパッケージ。
【請求項3】
前記パッケージ本体のセンサチップ収納凹部は、外枠部と、この外枠部の内側に一段低く位置する中間段部と、この中間段部の内側に一段低く位置するセンサチップ載置部とを有し、前記保護材貯留部は、前記センサチップ載置部から前記中間段部に食い込み前記外枠部の内壁に達している請求項1または2記載のセンサパッケージ。
【請求項4】
前記センサチップの端子とボンディングワイヤにより接続可能なボンディングパッドが、前記中間段部上面に、保護材貯留部とは平面的な位置を異ならせて配置されている請求項3記載のセンサパッケージ。
【請求項5】
前記センサチップ、センサチップ収納凹部及びパッケージ本体は、略正方形の平面形状を有する請求項1乃至4のいずれか1項記載のセンサパッケージ。
【請求項6】
前記センサチップは、前記センサチップ収納凹部と中心が一致し、該センサチップ外周側面とセンサチップ収納凹部の内壁とが略等距離となるように配置されている請求項5記載のセンサパッケージ。
【請求項7】
前記パッケージ本体は外枠部を有し、該外枠部に、前記センサチップ収納凹部を封止する蓋部を被せた請求項1乃至6のいずれか1項記載のセンサパッケージ。
【請求項8】
センサチップをパッケージ本体内のセンサチップを収納するセンサチップ収納凹部に載置するセンサチップ載置工程と、
前記載置後に前記センサチップの端子と前記パッケージ本体内のボンディングパッドとをボンディングワイヤで接続する導電接続工程と、
前記接続された前記センサチップの外周側面に、該センサチップの高さより低い位置で、保護材を注入する始点としての保護材貯留部から保護材を注入し、該センサチップ外周側面と保護材貯留部に連なって保護材を充填する保護材充填工程と、
を有することを特徴とするセンサパッケージの製造方法。
【請求項9】
前記保護材貯留部は、前記センサチップ収納凹部の内壁に該センサチップの外周側面との距離を部分的に拡大する複数が形成されていて、この保護材貯留部のセンサチップと対向する部分の平面幅は、同センサチップの平面幅より小さく構成されており、前記保護材充填工程では、個々の保護材貯留部から保護材が別々に充填される請求項8記載のセンサパッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−129951(P2010−129951A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306136(P2008−306136)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】