説明

タイヤ加硫方法

【課題】割モールドの間に未加硫タイヤの一部のゴムが入り込むのを容易に防止できるタイヤ加硫方法を提供する。
【解決手段】未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aにおける中型22の分割位置となる部位に凹部44を形成し、この未加硫タイヤ12を凹部44の位置が中型22の分割位置となるように金型14内に配置する。その後、ブラダーユニット16のブラダー34を加熱蒸気によって膨張させて未加硫タイヤ12の内面を加圧することにより、トレッド表面12Aを金型14に押し付け加硫成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気入りタイヤの製造に用いられるタイヤ加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ加硫方法については、例えば、特許文献1がある。この従来技術では、ブラダーにおける金型の分割位置に対応する部分を、他の部分よりも膨張時のタイヤ径方向の伸びが遅くなるように形成している。このため、各割モールドの周方向端部同士が完全に当接する前に各割モールドの間に未加硫タイヤの一部のゴムが入り込むことなく加硫成形できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−273077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ブラダーにおける金型の分割位置に対応する部分を、他の部分よりもタイヤ径方向の厚さの大きい偏肉部によって形成することにより、偏肉部が他の部分よりも膨張時のタイヤ径方向の伸びが遅くなるようにしている。このため、ブラダーを変更する必要がある。この結果、装置の構成が複雑になりコストアップになる。
【0005】
本発明は、上記問題を考慮し、割モールドの間に未加硫タイヤの一部のゴムが入り込むのを容易に防止できるタイヤ加硫方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明のタイヤ加硫方法は、タイヤ周方向に沿って複数の割モールドに分割された金型の分割位置となる未加硫タイヤのトレッド表面にラジアル方向の凹部を形成し、前記未加硫タイヤの前記トレッド表面側に前記金型を配置すると共に、前記未加硫タイヤ内に配置したブラダーを膨張させて前記未加硫タイヤの内面を加圧することにより、前記トレッド表面を前記金型に押し付け前記未加硫タイヤを加硫成形する。
【0007】
請求項1に記載のタイヤ加硫方法では、タイヤ周方向に沿って複数の割モールドに分割された金型の分割位置となる未加硫タイヤのトレッド表面に、ラジアル方向の凹部を形成する。次に、未加硫タイヤのトレッド表面側に金型を配置すると共に、未加硫タイヤ内に配置したブラダーを膨張させて未加硫タイヤの内面を加圧することにより、トレッド表面を金型に押し付け未加硫タイヤを加硫成形する。このため、未加硫タイヤのトレッド表面に形成したラジアル方向の凹部によって、未加硫タイヤのトレッド表面における金型の分割位置に対応する部分が、他の部分よりも膨張時の金型への到達が遅くなる。この結果、各割モールドの周方向端部同士が完全に当接する前に各割モールドの間に未加硫タイヤの一部のゴムが入り込むことなく加硫成形できる。また、未加硫タイヤのトレッド表面に、ラジアル方向の凹部を形成すればよいため、各割モールドの間に未加硫タイヤの一部のゴムが入り込むのを容易に防止できる。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のタイヤ加硫方法において、前記金型の分割位置の数と前記凹部の数とが同じである。
【0009】
請求項2に記載のタイヤ加硫方法によれば、金型の分割位置の数と凹部の数とが同じであるため、トレッド表面の全周において割モールドの間に未加硫タイヤの一部のゴムが入り込むのを容易に防止できる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載のタイヤ加硫方法において、前記凹部の形状は、前記凹部を設けない前記トレッド表面が前記金型の分割位置に噛み込まれる形状に対応している。
【0011】
請求項3に記載のタイヤ加硫方法によれば、凹部の形状が、凹部を設けないトレッド表面が金型の分割位置に噛み込まれる形状に対応している。このため、割モールドの間に未加硫タイヤの一部のゴムが入り込むのを容易に防止できると共に、、加硫成形後のタイヤのトレッド表面に凹部によって窪みが残るのを防止できるので加硫成形後のトレッド表面の形状を確保することができる。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のタイヤ加硫方法において、前記凹部は、タイヤグルーバーによって形成する。
【0013】
請求項4に記載のタイヤ加硫方法では、凹部をタイヤグルーバーによって形成するため、未加硫タイヤに凹部を容易に形成することができる。
【0014】
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のタイヤ加硫方法において、前記凹部は、電熱線を内蔵した凸形状突起によって形成する。
【0015】
請求項5に記載のタイヤ加硫方法では、凹部を電熱線を内蔵した凸形状突起(治具)によって形成するため、未加硫タイヤに凹部を容易に形成することができる。
【0016】
請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載のタイヤ加硫方法において、前記電熱線を内蔵した凸形状突起は、前記未加硫タイヤを取り出す際に使用するOリング形状となるセグメントに設けられている。
【0017】
請求項6に記載のタイヤ加硫方法では、電熱線を内蔵した凸形状突起(治具)が、記未加硫タイヤを取り出す際に使用するOリング形状となるセグメントに設けられているため、未加硫タイヤに凹部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の本発明に係るタイヤ加硫方法は、上記方法としたので、割モールドの間に未加硫タイヤの一部のゴムが入り込むのを容易に防止できる。
【0019】
請求項2に記載の本発明に係るタイヤ加硫方法は、上記方法としたので、トレッド表面の全周において割モールドの間に未加硫タイヤの一部のゴムが入り込むのを容易に防止できる。
【0020】
請求項3に記載の本発明に係るタイヤ加硫方法は、上記方法としたので、割モールドの間に未加硫タイヤの一部のゴムが入り込むのを容易に防止できると共に、加硫成形後のトレッド表面形状を確保することができる。
【0021】
請求項4に記載の本発明に係るタイヤ加硫方法は、上記構成としたので、未加硫タイヤの凹部を容易に形成することができる。
【0022】
請求項5に記載の本発明に係るタイヤ加硫方法は、上記構成としたので、未加硫タイヤの凹部を容易に形成することができる。
【0023】
請求項6に記載の本発明に係るタイヤ加硫方法は、上記構成としたので、未加硫タイヤの凹部を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における一実施形態の加硫装置の加硫前状態を示す概略平断面図である。
【図2】本発明における一実施形態の未加硫タイヤを示す斜視図である。
【図3】図2の3−3断面線に沿った拡大断面図である。
【図4】本発明における一実施形態の加硫装置の加硫状態を示す概略平断面図である。
【図5】本発明における一実施形態の加硫装置を示す半側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜図5に従って本発明に係るタイヤ加硫方法の一実施形態について説明する。
【0026】
(加硫装置)
図5に示すように、本実施形態の加硫装置10は、未加硫タイヤ12の外面側に配置される金型14と、未加硫タイヤ12の内面側に配置されるブラダーユニット16とを備えている。また、未加硫のタイヤ12は金型14とブラダーユニット16との間に配置されるようになっている。
【0027】
金型14は上下一対の上型18及び下型20と中型22とから構成されている。上型18及び下型20は、未加硫タイヤ12の両側面にそれぞれ対応するようになっている。また、上型18及び下型20はそれぞれ基板24、26によって支持されており、上型18は基板24と共に上方(図5の矢印A方向)と下方(図5の矢印B方向)とに移動可能となっている。
【0028】
中型22は、未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aに対応するようになっており、タイヤ周方向に沿って複数の割モールド22Aに分割されている。また、中型22の各割モールド22Aは内周面にトレッドパターンを成型するキャビティを有しており、それぞれ支持部28を介して基板24にタイヤ径方向(図5の矢印C方向とD方向)へ移動可能に支持されている。
【0029】
一方、ブラダーユニット16は、上下一対のブラダークランプ30、32と、ブラダー34とを有しており、ブラダー34は各ブラダークランプ30、32によって支持されている。また、ブラダー34は樹脂繊維製コードや金属製コードによって補強された加硫ゴムからなり可撓性となっている。
【0030】
各ブラダークランプ30、32は支軸40によって上下方向に移動可能に支持されている。また、下方のブラダークランプ32には蒸気流入口36が設けられており、各ブラダークランプ30、32及びブラダー34によって閉鎖された空間に蒸気流入口36から加熱蒸気を供給することにより、ブラダー34が膨張するようになっている。
【0031】
(未加硫タイヤ)
図2に示すように、未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aには、タイヤ周方向に沿って所定の間隔でラジアル方向(未加硫タイヤ12の軸線方向に沿った方向)に沿って連続した凹部44が形成されている。また、これらの凹部44は図1及び図4に示すタイヤ周方向に沿って複数の割モールド22Aに分割された中型22の分割位置と一致するようになっている。
【0032】
図3に示すように、凹部44のラジアル方向から見た断面形状は、底部と開口縁部が円弧状となったV字状となっており、凹部44の形状は、凹部44を設けない未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aが各割モールド22Aの間に噛み込まれるゴムの形状に対応している。即ち、凹部44の容積は、凹部44を設けない未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aが各割モールド22Aの間に噛み込まれるゴムの容積と同じになっている。
【0033】
また、図1に示すように、未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aに形成された凹部44の数は中型22の分割位置の数と同じになっている。即ち、中型22の全ての分割位置に対応する未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aに凹部44が形成されている。
【0034】
(タイヤ加硫方法)
【0035】
以上のように構成された加硫装置により未加硫タイヤ12を加硫する場合は、先ず、未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aの中型22の分割位置となる部位に凹部44を形成する。未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aに凹部44を形成する方法としては、タイヤのトレッドパターンのカットに使用するタイヤグルーバーによって形成する方法、又は電熱線を内蔵した凸形状突起(治具)によって形成する方法がある。なお、電熱線を内蔵した凸形状突起(治具)は、未加硫タイヤ12を取り出す際に使用するOリング形状となるセグメントに設けてもよい。
【0036】
次に、ブラダー34が収縮したブラダーユニット16を未加硫タイヤ12の内部(径方向内側)に配置すると共に未加硫タイヤ12を金型14内に配置する。その際、本実施形態では、図1に示すように、未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aに形成された凹部44の位置を中型22の分割位置、即ち、隣接する割モールド22Aの間に配置する。
【0037】
次に、図4に示すように、中型22の各割モールド22Aの周方向端部同士を当接させると共に、ブラダーユニット16のブラダー34を加熱蒸気によって膨張させる。これにより、未加硫タイヤ12の内面がブラダー34によって加圧及び加熱されるとともに、未加硫タイヤ12のトレッド表面が金型14に押し付けられて成形される。
【0038】
この際、本実施形態では、未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aに形成された凹部44の位置が中型22の分割位置となっている。このため、未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aにおける中型22の分割位置に対応する部分が、他の部分よりも膨張時の中型22への到達が遅くなる。このため、各割モールド22Aの間に未加硫タイヤ12の一部のゴムが入り込むことなく加硫成形される。
【0039】
(作用・効果)
このように、本実施形態では、中型22の分割位置となる未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aに、ラジアル方向の凹部44を形成したため、各割モールド22Aの間に未加硫タイヤ12の一部のゴムが入り込むことがない。この結果、各割モールド22Aの間に未加硫タイヤ12の一部のゴムが入り込むのを容易且つ低コストで防止できる。
【0040】
また、本実施形態では、分割された中型22の分割位置の数と、凹部44の数とが同じになっている。このため、未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aの全周において、各割モールド22Aの間に未加硫タイヤ12の一部のゴムが入り込むのを容易に防止できる。
【0041】
また、本実施形態では、凹部44のラジアル方向から見た断面形状が、凹部44を設けない未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aが中型22の分割位置に噛み込まれる形状に対応している。このため、各割モールド22Aの間に未加硫タイヤ12の一部のゴムが入り込むのを容易に防止できると共に、加硫成形後のタイヤのトレッド表面に凹部44によって窪みが残るのを防止できるのでトレッド表面形状を確保することができる。
【0042】
また、本実施形態では、タイヤグルーバー又は電熱線を内蔵した凸形状突起(治具)によって、未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aに凹部44を形成する。このため、凹部44を容易に形成することができる。さらに、電熱線を内蔵した凸形状突起(治具)を、未加硫タイヤ12を取り出す際に使用するOリング形状となるセグメントに設けることで、凹部44をさらに容易に形成することができる。
【0043】
(その他の実施形態)
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aに凹部44を形成する方法は、タイヤグルーバー又は電熱線を内蔵した凸形状突起(治具)による方法に限定されず、他の方法で形成してもよい。また、電熱線を内蔵した凸形状突起(治具)は未加硫タイヤ12を取り出す際に使用するOリング形状となるセグメント以外に設けてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、凹部44のラジアル方向から見た断面形状を、底部と開口縁部が円弧状となったV字状としたが、凹部44のラジアル方向から見た断面形状は半円状等の他の形状としてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、中型22の全ての分割位置に対応する未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aに凹部44を形成したが、これに代えて、未加硫タイヤの一部のゴムが入り込み易い所定の分割位置に対応する未加硫タイヤ12のトレッド表面12Aにのみ凹部44を形成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 加硫装置
12 未加硫タイヤ
12A 未加硫タイヤのトレッド表面
14 金型
16 ブラダーユニット
18 上型
20 下型
22 中型
22A 割モールド
34 ブラダー
44 未加硫タイヤの凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って複数の割モールドに分割された金型の分割位置となる未加硫タイヤのトレッド表面にラジアル方向の凹部を形成し、前記未加硫タイヤの前記トレッド表面側に前記金型を配置すると共に、前記未加硫タイヤ内に配置したブラダーを膨張させて前記未加硫タイヤの内面を加圧することにより、前記トレッド表面を前記金型に押し付け前記未加硫タイヤを加硫成形するタイヤ加硫方法。
【請求項2】
前記金型の分割位置の数と前記凹部の数とが同じ請求項1に記載のタイヤ加硫方法。
【請求項3】
前記凹部の形状は、前記凹部を設けない前記トレッド表面が前記金型の分割位置に噛み込まれる形状に対応している請求項1又は請求項2に記載のタイヤ加硫方法。
【請求項4】
前記凹部は、タイヤグルーバーによって形成する請求項1〜3の何れか1項に記載のタイヤ加硫方法。
【請求項5】
前記凹部は、電熱線を内蔵した凸形状突起によって形成する請求項1〜3の何れか1項に記載のタイヤ加硫方法。
【請求項6】
前記電熱線を内蔵した凸形状突起は、前記未加硫タイヤを取り出す際に使用するOリング形状となるセグメントに設けられている請求項5に記載のタイヤ加硫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101368(P2012−101368A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248906(P2010−248906)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】