タンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法、タンタルチューブとPIT炭素芯、タンタル炭化物配線の製造方法及びタンタル炭化物配線
【課題】簡易な方法で、所定の形状のタンタルと炭素との固相拡散接合を可能とし更に、タンタルと炭素の固相拡散接合を行う場所以外のタンタル表面に炭化物を形成する方法を提供する。
【解決手段】タンタル若しくはタンタル合金をチューブ状の形状に加工し、チューブの中に炭素粉末を圧入し、その後、チューブをコイル形状に加工した後に真空熱処理炉内に設置し、タンタル若しくはタンタル合金表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5を除去した後、タンタル若しくはタンタル合金チューブ内面と前記炭素粉末PITを固相拡散結合で分子接合させるとともに、前記真空熱処理炉内に炭素源を導入してタンタル若しくはタンタル合金チューブの外表面に炭素を侵入させてTaCを形成する。
【解決手段】タンタル若しくはタンタル合金をチューブ状の形状に加工し、チューブの中に炭素粉末を圧入し、その後、チューブをコイル形状に加工した後に真空熱処理炉内に設置し、タンタル若しくはタンタル合金表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5を除去した後、タンタル若しくはタンタル合金チューブ内面と前記炭素粉末PITを固相拡散結合で分子接合させるとともに、前記真空熱処理炉内に炭素源を導入してタンタル若しくはタンタル合金チューブの外表面に炭素を侵入させてTaCを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法、タンタルチューブとPIT炭素芯、タンタル炭化物配線の製造方法及びタンタル炭化物配線に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタルと炭素の固相拡散接合に付いては今だ研究の報告がないが神戸製鋼ホームページKOBELCOの拡散接合可能な金属としてTa及びTa合金とグラファイトは接合出来る組み合わせとして認知されていない。図12にKOBELCOホームページより引用した拡散接合可能な金属の組み合わせ可能図を示す。タンタルの炭化物、例えばTaCは、遷移金属炭化物中で一番融点が高く、化学的安定性が高く研究の報告がなされている。図13にTaCのフェーズダイアグラムを示す。このようなTaCは、従来から高温雰囲気下における各種用途への応用が模索され、以下のような種々の方法による製造方法が報告されている。従来のTaCを製造する方法の文献例として次のようなものが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、微粉末のTaC粉末と、HfC,ZrC,HfN等の他の化合物の微粉末を混合し、約1Paの真空中で2000℃で焼結し、TaCとこれら他の化合物の固溶体を形成し、TaCの粒成長を抑制することによって緻密なTaC焼結体を作製する方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、酸化タンタル(Ta2O5)とカーボンを混合し、水素炉で所定の温度で一次炭化を行い、得られた炭化物の遊離カーボンの量を測定し、次いでこの測定結果に基づいてカーボン量を調整して一次炭化物に添加し、次いで真空炭化炉で所定の温度で二次炭化を行いTaCを製造する方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、真空中で金属Taを蒸発させ、同時にC2H2ガスを導入して、両者を反応性イオンプレーティング法により蒸着中圧力/成膜速度を6.0×10-2Pa・min/μm以上で反応させてタングステン製電子放射材料の表面に組成比1<C/Ta<1.2から成る耐熱性に優れ、悪い真空状態でも安定に放射電流が得られ、且つ長寿命のTaC膜を被覆する方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、レンズやプリズム等の高精度のガラス光学素子をプレス成形する際に用いられる金型表面に被覆される離型膜として、次の(a)酸化クロムを50〜99モル%と酸化タンタルを1〜50モル%とからなるセラミック材料、(b)窒化クロムを50〜99モル%と窒化タンタルを1〜50モル%とからなるセラミック材料、(c)炭化クロムを50〜99モル%と炭化タンタルを1〜50モル%とからなるセラミック材料から選ばれる一種から構成したものが記載されている。
【0007】
また、特許文献5には、1000℃を超える高温の還元性ガス雰囲気中においても、優れた還元性ガス反応抑制効果を発揮し、製品寿命を大きく延ばすことができる還元性雰囲気炉用炭素複合材料として、金属タンタル及び反応ガスを使用してアークイオンプレーティング(AIP)式反応性蒸着法により黒鉛基材の表面に形成される炭化タンタルの皮膜について記載されている。
【0008】
また、特許文献6には、Taを有する化合物と、炭化水素系の溶媒とを含む導電性Ta系膜形成材料を使用してCVD法によって導電性のTa系膜を形成する方法について記載されている。
【0009】
また、特許文献7には、黒鉛製ルツボの内壁にTa板を配置する。そして、Ta板と接触するように炭素粉末を充填してTa板を覆う。その後、黒鉛製ルツボを加熱してTa板を炭化させ、黒鉛製ルツボの内壁をTaCでコーティングする方法が記載されている。
【0010】
また、特許文献8には、1300℃〜1600℃に加熱した真空炉内でTaまたはTa合金の表面に、炭素源を与えてTaCとTa2C膜を形成させその後に表面に付着した未反応の炭素原子をTa基材内部に拡散する様に真空中で高温アニール加熱して、炭化処理を行い、TaC形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−87656号公報
【特許文献2】特開2000−44222号公報
【特許文献3】特開平8−64110号公報
【特許文献4】特開平7−330351号公報
【特許文献5】特開平10−245285号公報
【特許文献6】特開2000−265274号公報
【特許文献7】特開平11−116399号公報
【特許文献8】米国特許第5383981号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、微粉末のTaC粉末と、HfC,ZrC,HfN等の他の化合物の微粉末を混合し、約1Paの真空中で2000℃で焼結してTaCを作製するため、任意の形状のTaCの形成が困難であるという問題がある。
【0013】
また、特許文献2に記載のものは、Ta2O5及びCとを混合し、成形後、2度の炭化処理を経てTaCを形成するものであるため、前述の特許文献1のものと同様、所定の形状のTaCを形成することが困難であるという問題を有している。
【0014】
また、特許文献3に記載のものは、タングステンフィラメントの外周面にTaCの被膜を形成するものであり、必然的にタングステン等の基材との界面が形成されるものであるため、TaCのクラック、剥離等の発生を避けることが困難である。
【0015】
また、特許文献4に記載のものは、特許文献3に記載のものと同様、基材表面に被膜として形成されるものであり、特許文献3と同様に、表面に形成される酸化クロムを50〜99モル%と酸化タンタルを1〜50モル%とからなるセラミック材料等のクラック、剥離等を避けることが困難である。
【0016】
また、特許文献5に記載のものは、基材である黒鉛材の表面にアークイオンプレーティング式反応性蒸着法によってTaCを形成したものであるため、特許文献3及び4に記載のものと同様に、基材とTaCとの界面が明確に形成され、TaCのクラック、剥離等を避けることが困難である。
【0017】
また、特許文献6に記載のものも、CVD法によって導電性Ta系膜を形成しているため、前述の特許文献3〜5に記載のものと同様に、基材と導電性Ta系膜との界面が形成されるため、熱履歴等によって導電性Ta系膜のクラック、剥離等を避けることが困難である。
【0018】
また、特許文献7に記載のものは、Taと炭素粉末とを直接接触させて、熱処理することによってTaの表面にTaCを形成したものであり、明細書中には特に記載はないが、TaとTaCとの境界が明確に現れているものと考えられる。このため、熱履歴によってTaC層部分が剥離することが考えられる。
【0019】
また、特許文献8に記載のものは、その明細書のFIG5A〜FIG5Fに示されているようにTa2C、TaC層の形成後に高温アニールで表面の未反応の炭素原子をTa基板内部に拡散させることによりTa2C層も消滅しアニール前の約2倍の厚みのTaCのバルク状結晶に成している。拡大写真の観察でTa基材とTaCの境界が明確に分かれており、このため、その明細書中に記載はないが、繰返し受ける熱応力によって、層間での層間剥離とTaC層のクラックが発生しやすいものと考えられる。
【0020】
Ta基板表面の自然酸化膜Ta2O5に1300℃〜1600℃の低い温度で炭素原子を反応させても自然酸化膜Ta2O5が化学的に安定でありTaの炭化速度が低く炭素原子の拡散深さが非常に浅い為真空加熱アニールを数十時間も行って炭素原子を拡散させてTaC膜を成長させても所望の厚みが得られていない。 合わせて長時間の加熱で結晶粒子が大きく成長してバルク状に成り粒界も大きくなつておりTa基材とTaCの境界が明確に分かれてしまい層間での層間剥離とTaC層内のクラックが発生しやすいものと考えられる。
【0021】
本発明は上記問題に鑑みてなされ、簡易な方法で、タンタル或いはタンタル合金と炭素とを固相拡散接合させることが可能であり、また、タンタル或いはタンタル合金と炭素とを固相拡散接合させる場所以外のタンタル或いはタンタルの合金に均一な厚みのタンタルの炭化物を形成することができるとともに、熱履歴によっても剥離することのない固相拡散接合を行うと同時にタンタル表面にタンタル炭化物を生成出来るタンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法、タンタルチューブとPIT炭素芯、タンタル炭化物配線の製造方法、タンタル炭化物配線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記目的を達成するために以下のような幾つかの特徴を主に有している。本発明において、以下の主な特徴は単独で、若しくは、適宜組合わされて備えられている。
【0023】
本発明はタンタル若しくはタンタル合金をチューブ状の形状に加工しチューブの中にPIT方式で炭素粉末を圧入し更に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブを圧延成形して焼結固形化前の加工性の高い間に全体を所定のコイル形状に加工した後に、真空熱処理炉内に設置し、前記タンタル若しくはタンタル合金表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記Ta2O5を除去した後、前記真空熱処理炉内に炭素源を導入して前記真空熱処理炉内温度を更に上昇させて、前記タンタル若しくはタンタル合金チューブ内面と前記炭素粉末PITを固相拡散結合で分子接合する温度条件下で前記タンタル若しくはタンタル合金表面と前記PIT方式で圧縮圧接された炭素粉末が高温で焼結固形化しチューブの内表面と固相拡散分子結合すると同時に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブの外表面に炭素が侵入して形成されたTaCであることを特徴とするタンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法を提供する。
【0024】
本発明はタンタル若しくはタンタル合金をチューブ状の形状に加工しチューブの中にPIT方式で炭素粉末を圧入し更に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブを圧延成形してリボン状に成形して焼結固形化前の加工性の高い間に全体を所定のコイル形状に加工した後に、真空熱処理炉内に設置し、前記タンタル若しくはタンタル合金表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記Ta2O5を除去した後、前記真空熱処理炉内に炭素源を導入して前記真空熱処理炉内温度を更に上昇させて、前記タンタル若しくはタンタル合金リボン内表面と前記炭素粉末PITを固相拡散結合で分子接合する温度条件下で前記タンタル若しくはタンタル合金リボン内表面と前記PIT方式で圧縮圧接された炭素粉末が高温で焼結固形化しリボンの内表面と固相拡散分子結合すると同時に前記タンタル若しくはタンタル合金リボンの外表面に炭素が侵入して形成されたTaCであることを特徴とするタンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法を提供する。
【0025】
本発明は上述の製造方法で製造されたタンタルチューブとPIT炭素芯であって、前記タンタルチューブとPIT炭素芯がタンタル炭化物のフィラメント若しくはヒータであるタンタルチューブとPIT炭素芯を提供する。
【0026】
本発明はSiC半導体基板上に真空下で所定の形状にレーザー又は電子線でパターニングして加熱処理する事で炭素リッチな基板表面を作り、タンタル若しくはタンタル合金をその部分にパターニングして、前記パターニングしたタンタル若しくはタンタル合金の表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面から前記Ta2O5を除去した後、炭素源を導入して熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面とSiC基板表面の炭素リッチ部分から炭素を浸入させて形成されたSiC半導体のタンタル炭化物配線の製造方法を提供する。
【0027】
本発明はSiC半導体基板上を真空下で加熱処理する事で炭素リッチなSiC基板表面環境を作り、前記基板表面にタンタル若しくはタンタル合金をパターニングして、表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面から前記Ta2O5を除去した後、炭素源を導入して熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面とSiC基板表面の炭素リッチなSiC表面部分から炭素を浸入させて形成されたSiC半導体のタンタル炭化物配線の製造方法を提供する。
【0028】
本発明は上述の製造方法で製造されたタンタル炭化物配線であって、前記タンタル炭化物配線は所定の形状にCVD法又は真空蒸着されたタンタル若しくはタンタル合金の表面の全てに炭素が浸入して形成されたTaCであるタンタル炭化物配線を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、簡易な方法で、所定形状のタンタルと炭素の結合物を形成することができるとともに、タンタルと炭素の結合物のクラック、剥離等の発生がないため、タンタルと炭素の結合物の優位性、例えば、TaCの持つ、優れた高融点、高硬度、機械特性、電気特性等の性能を確実に発揮することが可能となり、各種用途への応用が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るタンタルと炭素結合物の製造方法に用いられる真空加熱炉の概要図。
【図2】本発明の実施形態に係る固相拡散接合工程におけるTaとグラファイトの拡散接合部の接合面積の増加過程を示す概念図。
【図3】本発明の実施形態に係るTaとグラファイトを接合させる材料の配置図を示す。
【図4】本発明の実施形態に係るグラファイトとタンタルを固相拡散結合させた試料の接合部浸炭層の炭化タンタルの傾斜組成断面拡大写真。
【図5】本発明の実施形態に係るタンタルの表面の酸化膜を離脱させた後に炭素源を導入してTa表面に浸炭させて炭化タンタルを作る工程フローチャートの概念図。
【図6】本発明の実施形態に係る上記図5の工程の真空加熱温度制御と自然酸化膜の脱離時点を示す真空加熱炉の加熱条件とを示す概念図。
【図7】本発明の実施形態に係るタンタル基板表面に浸炭して基板表面にTa2C・Ta4C3・TaCが形成された断面拡大写真。
【図8】本発明の実施形態に係るPIT方式炭素内芯タンタルチューブ製法工程の一例を示す概念図。
【図9】本発明の実施形態に係るPIT方式炭素内芯タンタルチューブ断面図の一例を示す概念図
【図10】本発明の実施形態に係るタンタルの炭化物電極を製造するフローチャートを示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係るタンタル炭化物配線を製造するフローチャートを示す図である。
【図12】KOBELCOホームページより引用した拡散接合可能な金属の組み合わせ可能図。
【図13】TaとCのフェーズダイアグラムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るタンタルと炭素結合物の製造方法に用いられる真空加熱炉の概要を示す図である。図1において、符号1は真空加熱炉等の真空熱処理炉、2は真空チャンバー、3は予熱室、4は搬送室、5はタンタル若しくはタンタル合金の基材板、6は予熱ランプ、8は支持台、9は搬送トレイ、10は昇降台、11aは保温防護部材を兼ねた炭素トレイ、11bは保温防護部材、12は熱反射板、13は炭素源注入口、14は真空ポンプ接続口、15は基材5の出入口、16は温度等の測定窓、17は赤外線放射温度計、20は炭素ヒータ、22は搬送室4と真空チャンバー間2をシールするシール部材を示している。
【0032】
図2は、本実施形態に係る固相拡散接合工程におけるタンタルとグラファイト拡散接合部の接合面積の増加過程を示す。拡散接合においては、図2に示すような過程で進むと考えられている。図2(a)は常温で接合面を突き合わせた様子を示している。加熱・加圧によって、接触した突起部が塑性変形、クリープ変形機構によって変形し、密着面積が増加する。これと並行して、未密着部(空隙)表面への原子の拡散により接合が進行していく(図2(b))。図2(c)では、拡散の役割がより重要となり、空隙の消失と、一部の接合境界の移動が生じる。さらに接合が進行すると図2(d)に示すように、結晶粒界に取り残された空隙が原子の拡散によって消失する。ただし、これらの各段階は重なり合って進行する。
【0033】
図3に示すように、高温高真空熱処理炉にグラファイトブロック、もしくはグラファイトシートとTaをセットし、高真空環境下においてアニールすることにより接合を行った実施例を説明する。実験条件としては、2000℃〜2200℃(1×10−5torr)で2〜10時間真空アニールを行った。
I.グラファイトブロック、もしくはグラファイトシートとTaを図3のような配置で高温高真空熱処理炉中の予備加熱炉に設置し、炉内を1×10−5torr程度になるまで真空引きを行なう。
II.予備加熱炉内が真空に引けると、真空中で試料温度が800℃になるまで1時間ほど掛けてゆっくりと加熱を行ない、炉内のガス出しを行なう。
III.サンプルを予備加熱炉から熱処理炉に搬送することにより、800℃から2000℃〜2200℃まで瞬間昇温させ、2〜10時間真空アニールを行う。
【0034】
図4は前記の工程で行ったグラファイトとタンタルを固相拡散結合させた試料の接合部浸炭層の炭化タンタルの傾斜組成断面拡大写真を示す。Taの表面から炭素が内部に拡散し、表層部に略均一なTaC層が形成され、そのTaC層の内面には、TaとTaCを結合するアンカー層(遷移層)としてTa4C3、Ta2C層が現れている。図4の接合部拡大断面図がアンカー層(遷移層)を介して炭素とタンタル金属が分子拡散接合している状況が確認出来る。
【0035】
図5に示すフローチャートは本実施形態に係る浸炭工程を説明しており、真空環境内で炭素蒸気圧を金属Taに直接照射することにより浸炭処理を行い、その後高真空アニールをし、バルク内への炭素原子の拡散を促すことによって炭素濃度の層内均一化を行う。高温真空炭化処理炉に金属Taを挿入し、真空環境下においてカーボンヒーターからの炭素蒸気圧を金属Taに直接照射することにより炭化反応させTaCを合成する。実験条件としては1700℃〜2250℃(1×10−3torr)で2時間浸炭処理を行う。
【0036】
図6に上記図5の工程中の温度プロファイルを示す。自然酸化膜であるTa2O5が昇華する好ましい熱処理条件は、処理圧力が低ければ、比較的低温で行うことができるが、確実に表面の自然酸化膜を昇華するためには、圧力約1Pa以下において、約1750℃以上2250℃以下の範囲、更に好ましくは、圧力約0.5Pa以下において約1860℃以上2500℃以下の範囲の条件下で熱処理することが好ましい。このような条件で熱処理を行うことによって、表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が確実に昇華して、除去される。
【0037】
自然酸化膜であるTa2O5の除去後、前記真空熱処理炉1内に炭素源を導入して、前記タンタル若しくはタンタル合金基材5の表面にタンタルの炭化物を形成する好ましい熱処理条件は、圧力約1Pa以下において約1860℃以上2500℃以下の範囲である。更に好ましくは圧力約0.5Pa以下において約2000℃以上2500℃以下の範囲である。
【0038】
自然酸化膜であるTa2O5の除去後の熱処理条件において、ヒータに黒鉛製の抵抗加熱ヒータを使用した場合、ヒータからの蒸気が炭素源となり得る。しかしながら、本実施形態に係るタンタルの炭化物製造条件下においては、黒鉛ヒータの消耗も激しくなる為、このように、放射温度計の出力が変化した直後から、別途、炭素源となる炭素材料を基材5とともに加熱処理室内に設置することが好ましい。また、炭素を含むガスを導入することもできる。
【0039】
図7にはタンタル基板表面に浸炭してTa基板表面にTa2C・Ta4C3・TaCが形成された断面拡大写真を示しておりTaの表面から炭素が内部に拡散し、表層部に略均一なTaC層が形成され、そのTaC層の内面には、TaとTaCを結合するアンカー層(遷移層)としてTa4C3、Ta2C層が現れている。図7のタンタル基板表面の拡大断面図がアンカー層(遷移層)を介して炭化タンタルとタンタル金属が分子接合している状況が確認出来る。
【0040】
図8にはPIT方式炭素内芯タンタルチューブ製法工程の一例を示す。タンタル金属をチューブ状に加工し、炭素粉末や石油コークス粉体を注入し圧延引き落しドローイングして真円状又はリボン状形状のワイヤーチューブを形成させる。高温真空加熱によりタンタルチューブの表面の酸化皮膜を昇華させて除去した後に炭素源を挿入して高温真空加熱する事で、タンタルチューブの内面は焼結固形化したカーボン内芯と固相拡散接合して浸炭してTaCに改質され、タンタルチューブの外面は炭素源を挿入する事で浸炭してTaCに改質され、タンタルチューブの内外面両面からTaCに改質されて、カーボンを内芯とするTaC被覆カーボンヒーターが得られる。
【0041】
図9にはPIT方式炭素内芯タンタルチューブ断面図の一例を示す。従来からカーボンヒーターは白熱電球のヒーターに使われた歴史もあり数々の長所がある反面、寿命や強度等の問題があり寿命や強度に非常に安定した特性を持つTaCチューブを被覆したカーボンヒーターの内芯として高純度高温用途の加熱ヒーター材等に利用が期待できる。
【0042】
図10は本発明の実施形態に係るタンタルチューブとPIT炭素芯を製造するフローチャートを示す図である。Taチューブにカーボン粉末を圧入しチューブを圧延加工成形した後にコイル状に成形した後に、Taチューブを高温真空加熱する事でTaチューブ表面の酸化膜を昇華させる。更に温度を上げる事で内芯のカーボン粉末を焼結固形化させてTaチューブ内表面と固相拡散結合させてTaCに改質する。Taチューブ外表面は高温真空加熱中に炭素源を挿入して浸炭する事でTaCに改質する。以上の工程で内芯カーボンヒーターをTaCで被覆してシールする工程概念図を示し、比較的加工のしやすいTa若しくはTa合金のPITの段階で所定の形状に加工した後、本実施形態に係るタンタル炭化物の製造方法の条件下で処理すると、所定形状のTaCを形成することができる。このため、フィラメントやヒータの電極としても任意の形状に加工して使用することが可能となる。
【0043】
図11は、本発明の実施形態に係るタンタル炭化物配線を製造するフローチャートを示す図である。半導体基板表面にレーザー照射等で所定のパターン形状の炭化層を形成する上にタンタル若しくはタンタル合金を本実施形態に係るタンタル炭化物の製造方法の条件下で処理すると、所定形状にパターニングされたTaCを形成することができる。炭化ケイ素(以下、SiCという。)等の半導体基板表面にレーザー照射等で局部加熱して所定のパターン形状の炭化層を形成する。更に半導体基板上に形成された炭化層の上にタンタル若しくはタンタル合金を蒸着等の任意の方法で積み重ねる(Ta金属パターニング工程)。高温真空加熱炉に炭素源を導入して熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面から炭素を浸炭してTaCを形成し、タンタル若しくはタンタル合金とSiC基板の界面からはSiC基板表面の炭化されたSiCがタンタル若しくはタンタル合金と固相拡散接合してタンタル若しくはタンタル合金を背面からTaCに改質させてタンタルの炭化物配線を形成する。
【0044】
このように本実施形態に係るタンタルの炭化物の製造方法は、1750℃以上2250℃以下の真空中でTa若しくはTa合金基材表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5を昇華させて除去してから真空中に炭素源を導入しTa若しくはTa合金基材表面にTaCとTa4C3及びTa2Cを形成する。
【0045】
本発明のTa基板表面の自然酸化膜除去及び真空中加熱炉に炭素源を挿入した時の化学変化を以下の化学式で説明する。
【化1】
【0046】
因みに、特許文献8に記載の従来製法では1300℃〜1600℃の真空中に炭素源を導入しTaC及びTa2Cを形成させた後に1300℃〜1600℃の真空中で15時間程度の長時間アニールして表面付着した未反応炭素原子を拡散させてTaC層を成長させる。
【0047】
特許文献8に記載の従来製法の化学変化を以下の化学式で説明される。
【化2】
【0048】
そのため、特許文献8に掲載の拡大写真の観察からわかるように、Ta基材とTaCの境界が明確に分かれており、繰返し受ける熱応力によって、層間での層間剥離とTaC層のクラックが発生しやすいものと考えられる。Ta基板表面の自然酸化膜Ta2O5に1300℃〜1600℃の低い温度で炭素原子を反応させても自然酸化膜Ta2O5が化学的に安定でありTaの炭化速度が低く炭素原子の拡散深さが非常に浅い為真空加熱アニールを数十時間も行って炭素原子を拡散させてTaC膜を成長させても所望の厚みが得られていない。合わせて長時間の加熱で結晶粒子が大きく成長してバルク状に成り粒界も大きくなつておりTa基材とTaCの境界が明確に分かれてしまい層間での層間剥離とTaC層内のクラックが発生しやすいものと考えられる。
【0049】
尚、本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることができることは理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によると、簡易な方法で、確実にタンタルと炭素結合物を製造することが可能であり、その優れた化学的特性を利用した熱処理用治具はもちろんであるが、照明等のフィラメントやヒータとして用いられる電極や半導体ウエハー上の回路の配線等、各種産業用用途への利用可能性を有している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法、タンタルチューブとPIT炭素芯、タンタル炭化物配線の製造方法及びタンタル炭化物配線に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタルと炭素の固相拡散接合に付いては今だ研究の報告がないが神戸製鋼ホームページKOBELCOの拡散接合可能な金属としてTa及びTa合金とグラファイトは接合出来る組み合わせとして認知されていない。図12にKOBELCOホームページより引用した拡散接合可能な金属の組み合わせ可能図を示す。タンタルの炭化物、例えばTaCは、遷移金属炭化物中で一番融点が高く、化学的安定性が高く研究の報告がなされている。図13にTaCのフェーズダイアグラムを示す。このようなTaCは、従来から高温雰囲気下における各種用途への応用が模索され、以下のような種々の方法による製造方法が報告されている。従来のTaCを製造する方法の文献例として次のようなものが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、微粉末のTaC粉末と、HfC,ZrC,HfN等の他の化合物の微粉末を混合し、約1Paの真空中で2000℃で焼結し、TaCとこれら他の化合物の固溶体を形成し、TaCの粒成長を抑制することによって緻密なTaC焼結体を作製する方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、酸化タンタル(Ta2O5)とカーボンを混合し、水素炉で所定の温度で一次炭化を行い、得られた炭化物の遊離カーボンの量を測定し、次いでこの測定結果に基づいてカーボン量を調整して一次炭化物に添加し、次いで真空炭化炉で所定の温度で二次炭化を行いTaCを製造する方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、真空中で金属Taを蒸発させ、同時にC2H2ガスを導入して、両者を反応性イオンプレーティング法により蒸着中圧力/成膜速度を6.0×10-2Pa・min/μm以上で反応させてタングステン製電子放射材料の表面に組成比1<C/Ta<1.2から成る耐熱性に優れ、悪い真空状態でも安定に放射電流が得られ、且つ長寿命のTaC膜を被覆する方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、レンズやプリズム等の高精度のガラス光学素子をプレス成形する際に用いられる金型表面に被覆される離型膜として、次の(a)酸化クロムを50〜99モル%と酸化タンタルを1〜50モル%とからなるセラミック材料、(b)窒化クロムを50〜99モル%と窒化タンタルを1〜50モル%とからなるセラミック材料、(c)炭化クロムを50〜99モル%と炭化タンタルを1〜50モル%とからなるセラミック材料から選ばれる一種から構成したものが記載されている。
【0007】
また、特許文献5には、1000℃を超える高温の還元性ガス雰囲気中においても、優れた還元性ガス反応抑制効果を発揮し、製品寿命を大きく延ばすことができる還元性雰囲気炉用炭素複合材料として、金属タンタル及び反応ガスを使用してアークイオンプレーティング(AIP)式反応性蒸着法により黒鉛基材の表面に形成される炭化タンタルの皮膜について記載されている。
【0008】
また、特許文献6には、Taを有する化合物と、炭化水素系の溶媒とを含む導電性Ta系膜形成材料を使用してCVD法によって導電性のTa系膜を形成する方法について記載されている。
【0009】
また、特許文献7には、黒鉛製ルツボの内壁にTa板を配置する。そして、Ta板と接触するように炭素粉末を充填してTa板を覆う。その後、黒鉛製ルツボを加熱してTa板を炭化させ、黒鉛製ルツボの内壁をTaCでコーティングする方法が記載されている。
【0010】
また、特許文献8には、1300℃〜1600℃に加熱した真空炉内でTaまたはTa合金の表面に、炭素源を与えてTaCとTa2C膜を形成させその後に表面に付着した未反応の炭素原子をTa基材内部に拡散する様に真空中で高温アニール加熱して、炭化処理を行い、TaC形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−87656号公報
【特許文献2】特開2000−44222号公報
【特許文献3】特開平8−64110号公報
【特許文献4】特開平7−330351号公報
【特許文献5】特開平10−245285号公報
【特許文献6】特開2000−265274号公報
【特許文献7】特開平11−116399号公報
【特許文献8】米国特許第5383981号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、微粉末のTaC粉末と、HfC,ZrC,HfN等の他の化合物の微粉末を混合し、約1Paの真空中で2000℃で焼結してTaCを作製するため、任意の形状のTaCの形成が困難であるという問題がある。
【0013】
また、特許文献2に記載のものは、Ta2O5及びCとを混合し、成形後、2度の炭化処理を経てTaCを形成するものであるため、前述の特許文献1のものと同様、所定の形状のTaCを形成することが困難であるという問題を有している。
【0014】
また、特許文献3に記載のものは、タングステンフィラメントの外周面にTaCの被膜を形成するものであり、必然的にタングステン等の基材との界面が形成されるものであるため、TaCのクラック、剥離等の発生を避けることが困難である。
【0015】
また、特許文献4に記載のものは、特許文献3に記載のものと同様、基材表面に被膜として形成されるものであり、特許文献3と同様に、表面に形成される酸化クロムを50〜99モル%と酸化タンタルを1〜50モル%とからなるセラミック材料等のクラック、剥離等を避けることが困難である。
【0016】
また、特許文献5に記載のものは、基材である黒鉛材の表面にアークイオンプレーティング式反応性蒸着法によってTaCを形成したものであるため、特許文献3及び4に記載のものと同様に、基材とTaCとの界面が明確に形成され、TaCのクラック、剥離等を避けることが困難である。
【0017】
また、特許文献6に記載のものも、CVD法によって導電性Ta系膜を形成しているため、前述の特許文献3〜5に記載のものと同様に、基材と導電性Ta系膜との界面が形成されるため、熱履歴等によって導電性Ta系膜のクラック、剥離等を避けることが困難である。
【0018】
また、特許文献7に記載のものは、Taと炭素粉末とを直接接触させて、熱処理することによってTaの表面にTaCを形成したものであり、明細書中には特に記載はないが、TaとTaCとの境界が明確に現れているものと考えられる。このため、熱履歴によってTaC層部分が剥離することが考えられる。
【0019】
また、特許文献8に記載のものは、その明細書のFIG5A〜FIG5Fに示されているようにTa2C、TaC層の形成後に高温アニールで表面の未反応の炭素原子をTa基板内部に拡散させることによりTa2C層も消滅しアニール前の約2倍の厚みのTaCのバルク状結晶に成している。拡大写真の観察でTa基材とTaCの境界が明確に分かれており、このため、その明細書中に記載はないが、繰返し受ける熱応力によって、層間での層間剥離とTaC層のクラックが発生しやすいものと考えられる。
【0020】
Ta基板表面の自然酸化膜Ta2O5に1300℃〜1600℃の低い温度で炭素原子を反応させても自然酸化膜Ta2O5が化学的に安定でありTaの炭化速度が低く炭素原子の拡散深さが非常に浅い為真空加熱アニールを数十時間も行って炭素原子を拡散させてTaC膜を成長させても所望の厚みが得られていない。 合わせて長時間の加熱で結晶粒子が大きく成長してバルク状に成り粒界も大きくなつておりTa基材とTaCの境界が明確に分かれてしまい層間での層間剥離とTaC層内のクラックが発生しやすいものと考えられる。
【0021】
本発明は上記問題に鑑みてなされ、簡易な方法で、タンタル或いはタンタル合金と炭素とを固相拡散接合させることが可能であり、また、タンタル或いはタンタル合金と炭素とを固相拡散接合させる場所以外のタンタル或いはタンタルの合金に均一な厚みのタンタルの炭化物を形成することができるとともに、熱履歴によっても剥離することのない固相拡散接合を行うと同時にタンタル表面にタンタル炭化物を生成出来るタンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法、タンタルチューブとPIT炭素芯、タンタル炭化物配線の製造方法、タンタル炭化物配線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記目的を達成するために以下のような幾つかの特徴を主に有している。本発明において、以下の主な特徴は単独で、若しくは、適宜組合わされて備えられている。
【0023】
本発明はタンタル若しくはタンタル合金をチューブ状の形状に加工しチューブの中にPIT方式で炭素粉末を圧入し更に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブを圧延成形して焼結固形化前の加工性の高い間に全体を所定のコイル形状に加工した後に、真空熱処理炉内に設置し、前記タンタル若しくはタンタル合金表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記Ta2O5を除去した後、前記真空熱処理炉内に炭素源を導入して前記真空熱処理炉内温度を更に上昇させて、前記タンタル若しくはタンタル合金チューブ内面と前記炭素粉末PITを固相拡散結合で分子接合する温度条件下で前記タンタル若しくはタンタル合金表面と前記PIT方式で圧縮圧接された炭素粉末が高温で焼結固形化しチューブの内表面と固相拡散分子結合すると同時に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブの外表面に炭素が侵入して形成されたTaCであることを特徴とするタンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法を提供する。
【0024】
本発明はタンタル若しくはタンタル合金をチューブ状の形状に加工しチューブの中にPIT方式で炭素粉末を圧入し更に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブを圧延成形してリボン状に成形して焼結固形化前の加工性の高い間に全体を所定のコイル形状に加工した後に、真空熱処理炉内に設置し、前記タンタル若しくはタンタル合金表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記Ta2O5を除去した後、前記真空熱処理炉内に炭素源を導入して前記真空熱処理炉内温度を更に上昇させて、前記タンタル若しくはタンタル合金リボン内表面と前記炭素粉末PITを固相拡散結合で分子接合する温度条件下で前記タンタル若しくはタンタル合金リボン内表面と前記PIT方式で圧縮圧接された炭素粉末が高温で焼結固形化しリボンの内表面と固相拡散分子結合すると同時に前記タンタル若しくはタンタル合金リボンの外表面に炭素が侵入して形成されたTaCであることを特徴とするタンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法を提供する。
【0025】
本発明は上述の製造方法で製造されたタンタルチューブとPIT炭素芯であって、前記タンタルチューブとPIT炭素芯がタンタル炭化物のフィラメント若しくはヒータであるタンタルチューブとPIT炭素芯を提供する。
【0026】
本発明はSiC半導体基板上に真空下で所定の形状にレーザー又は電子線でパターニングして加熱処理する事で炭素リッチな基板表面を作り、タンタル若しくはタンタル合金をその部分にパターニングして、前記パターニングしたタンタル若しくはタンタル合金の表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面から前記Ta2O5を除去した後、炭素源を導入して熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面とSiC基板表面の炭素リッチ部分から炭素を浸入させて形成されたSiC半導体のタンタル炭化物配線の製造方法を提供する。
【0027】
本発明はSiC半導体基板上を真空下で加熱処理する事で炭素リッチなSiC基板表面環境を作り、前記基板表面にタンタル若しくはタンタル合金をパターニングして、表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面から前記Ta2O5を除去した後、炭素源を導入して熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面とSiC基板表面の炭素リッチなSiC表面部分から炭素を浸入させて形成されたSiC半導体のタンタル炭化物配線の製造方法を提供する。
【0028】
本発明は上述の製造方法で製造されたタンタル炭化物配線であって、前記タンタル炭化物配線は所定の形状にCVD法又は真空蒸着されたタンタル若しくはタンタル合金の表面の全てに炭素が浸入して形成されたTaCであるタンタル炭化物配線を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、簡易な方法で、所定形状のタンタルと炭素の結合物を形成することができるとともに、タンタルと炭素の結合物のクラック、剥離等の発生がないため、タンタルと炭素の結合物の優位性、例えば、TaCの持つ、優れた高融点、高硬度、機械特性、電気特性等の性能を確実に発揮することが可能となり、各種用途への応用が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るタンタルと炭素結合物の製造方法に用いられる真空加熱炉の概要図。
【図2】本発明の実施形態に係る固相拡散接合工程におけるTaとグラファイトの拡散接合部の接合面積の増加過程を示す概念図。
【図3】本発明の実施形態に係るTaとグラファイトを接合させる材料の配置図を示す。
【図4】本発明の実施形態に係るグラファイトとタンタルを固相拡散結合させた試料の接合部浸炭層の炭化タンタルの傾斜組成断面拡大写真。
【図5】本発明の実施形態に係るタンタルの表面の酸化膜を離脱させた後に炭素源を導入してTa表面に浸炭させて炭化タンタルを作る工程フローチャートの概念図。
【図6】本発明の実施形態に係る上記図5の工程の真空加熱温度制御と自然酸化膜の脱離時点を示す真空加熱炉の加熱条件とを示す概念図。
【図7】本発明の実施形態に係るタンタル基板表面に浸炭して基板表面にTa2C・Ta4C3・TaCが形成された断面拡大写真。
【図8】本発明の実施形態に係るPIT方式炭素内芯タンタルチューブ製法工程の一例を示す概念図。
【図9】本発明の実施形態に係るPIT方式炭素内芯タンタルチューブ断面図の一例を示す概念図
【図10】本発明の実施形態に係るタンタルの炭化物電極を製造するフローチャートを示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係るタンタル炭化物配線を製造するフローチャートを示す図である。
【図12】KOBELCOホームページより引用した拡散接合可能な金属の組み合わせ可能図。
【図13】TaとCのフェーズダイアグラムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るタンタルと炭素結合物の製造方法に用いられる真空加熱炉の概要を示す図である。図1において、符号1は真空加熱炉等の真空熱処理炉、2は真空チャンバー、3は予熱室、4は搬送室、5はタンタル若しくはタンタル合金の基材板、6は予熱ランプ、8は支持台、9は搬送トレイ、10は昇降台、11aは保温防護部材を兼ねた炭素トレイ、11bは保温防護部材、12は熱反射板、13は炭素源注入口、14は真空ポンプ接続口、15は基材5の出入口、16は温度等の測定窓、17は赤外線放射温度計、20は炭素ヒータ、22は搬送室4と真空チャンバー間2をシールするシール部材を示している。
【0032】
図2は、本実施形態に係る固相拡散接合工程におけるタンタルとグラファイト拡散接合部の接合面積の増加過程を示す。拡散接合においては、図2に示すような過程で進むと考えられている。図2(a)は常温で接合面を突き合わせた様子を示している。加熱・加圧によって、接触した突起部が塑性変形、クリープ変形機構によって変形し、密着面積が増加する。これと並行して、未密着部(空隙)表面への原子の拡散により接合が進行していく(図2(b))。図2(c)では、拡散の役割がより重要となり、空隙の消失と、一部の接合境界の移動が生じる。さらに接合が進行すると図2(d)に示すように、結晶粒界に取り残された空隙が原子の拡散によって消失する。ただし、これらの各段階は重なり合って進行する。
【0033】
図3に示すように、高温高真空熱処理炉にグラファイトブロック、もしくはグラファイトシートとTaをセットし、高真空環境下においてアニールすることにより接合を行った実施例を説明する。実験条件としては、2000℃〜2200℃(1×10−5torr)で2〜10時間真空アニールを行った。
I.グラファイトブロック、もしくはグラファイトシートとTaを図3のような配置で高温高真空熱処理炉中の予備加熱炉に設置し、炉内を1×10−5torr程度になるまで真空引きを行なう。
II.予備加熱炉内が真空に引けると、真空中で試料温度が800℃になるまで1時間ほど掛けてゆっくりと加熱を行ない、炉内のガス出しを行なう。
III.サンプルを予備加熱炉から熱処理炉に搬送することにより、800℃から2000℃〜2200℃まで瞬間昇温させ、2〜10時間真空アニールを行う。
【0034】
図4は前記の工程で行ったグラファイトとタンタルを固相拡散結合させた試料の接合部浸炭層の炭化タンタルの傾斜組成断面拡大写真を示す。Taの表面から炭素が内部に拡散し、表層部に略均一なTaC層が形成され、そのTaC層の内面には、TaとTaCを結合するアンカー層(遷移層)としてTa4C3、Ta2C層が現れている。図4の接合部拡大断面図がアンカー層(遷移層)を介して炭素とタンタル金属が分子拡散接合している状況が確認出来る。
【0035】
図5に示すフローチャートは本実施形態に係る浸炭工程を説明しており、真空環境内で炭素蒸気圧を金属Taに直接照射することにより浸炭処理を行い、その後高真空アニールをし、バルク内への炭素原子の拡散を促すことによって炭素濃度の層内均一化を行う。高温真空炭化処理炉に金属Taを挿入し、真空環境下においてカーボンヒーターからの炭素蒸気圧を金属Taに直接照射することにより炭化反応させTaCを合成する。実験条件としては1700℃〜2250℃(1×10−3torr)で2時間浸炭処理を行う。
【0036】
図6に上記図5の工程中の温度プロファイルを示す。自然酸化膜であるTa2O5が昇華する好ましい熱処理条件は、処理圧力が低ければ、比較的低温で行うことができるが、確実に表面の自然酸化膜を昇華するためには、圧力約1Pa以下において、約1750℃以上2250℃以下の範囲、更に好ましくは、圧力約0.5Pa以下において約1860℃以上2500℃以下の範囲の条件下で熱処理することが好ましい。このような条件で熱処理を行うことによって、表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が確実に昇華して、除去される。
【0037】
自然酸化膜であるTa2O5の除去後、前記真空熱処理炉1内に炭素源を導入して、前記タンタル若しくはタンタル合金基材5の表面にタンタルの炭化物を形成する好ましい熱処理条件は、圧力約1Pa以下において約1860℃以上2500℃以下の範囲である。更に好ましくは圧力約0.5Pa以下において約2000℃以上2500℃以下の範囲である。
【0038】
自然酸化膜であるTa2O5の除去後の熱処理条件において、ヒータに黒鉛製の抵抗加熱ヒータを使用した場合、ヒータからの蒸気が炭素源となり得る。しかしながら、本実施形態に係るタンタルの炭化物製造条件下においては、黒鉛ヒータの消耗も激しくなる為、このように、放射温度計の出力が変化した直後から、別途、炭素源となる炭素材料を基材5とともに加熱処理室内に設置することが好ましい。また、炭素を含むガスを導入することもできる。
【0039】
図7にはタンタル基板表面に浸炭してTa基板表面にTa2C・Ta4C3・TaCが形成された断面拡大写真を示しておりTaの表面から炭素が内部に拡散し、表層部に略均一なTaC層が形成され、そのTaC層の内面には、TaとTaCを結合するアンカー層(遷移層)としてTa4C3、Ta2C層が現れている。図7のタンタル基板表面の拡大断面図がアンカー層(遷移層)を介して炭化タンタルとタンタル金属が分子接合している状況が確認出来る。
【0040】
図8にはPIT方式炭素内芯タンタルチューブ製法工程の一例を示す。タンタル金属をチューブ状に加工し、炭素粉末や石油コークス粉体を注入し圧延引き落しドローイングして真円状又はリボン状形状のワイヤーチューブを形成させる。高温真空加熱によりタンタルチューブの表面の酸化皮膜を昇華させて除去した後に炭素源を挿入して高温真空加熱する事で、タンタルチューブの内面は焼結固形化したカーボン内芯と固相拡散接合して浸炭してTaCに改質され、タンタルチューブの外面は炭素源を挿入する事で浸炭してTaCに改質され、タンタルチューブの内外面両面からTaCに改質されて、カーボンを内芯とするTaC被覆カーボンヒーターが得られる。
【0041】
図9にはPIT方式炭素内芯タンタルチューブ断面図の一例を示す。従来からカーボンヒーターは白熱電球のヒーターに使われた歴史もあり数々の長所がある反面、寿命や強度等の問題があり寿命や強度に非常に安定した特性を持つTaCチューブを被覆したカーボンヒーターの内芯として高純度高温用途の加熱ヒーター材等に利用が期待できる。
【0042】
図10は本発明の実施形態に係るタンタルチューブとPIT炭素芯を製造するフローチャートを示す図である。Taチューブにカーボン粉末を圧入しチューブを圧延加工成形した後にコイル状に成形した後に、Taチューブを高温真空加熱する事でTaチューブ表面の酸化膜を昇華させる。更に温度を上げる事で内芯のカーボン粉末を焼結固形化させてTaチューブ内表面と固相拡散結合させてTaCに改質する。Taチューブ外表面は高温真空加熱中に炭素源を挿入して浸炭する事でTaCに改質する。以上の工程で内芯カーボンヒーターをTaCで被覆してシールする工程概念図を示し、比較的加工のしやすいTa若しくはTa合金のPITの段階で所定の形状に加工した後、本実施形態に係るタンタル炭化物の製造方法の条件下で処理すると、所定形状のTaCを形成することができる。このため、フィラメントやヒータの電極としても任意の形状に加工して使用することが可能となる。
【0043】
図11は、本発明の実施形態に係るタンタル炭化物配線を製造するフローチャートを示す図である。半導体基板表面にレーザー照射等で所定のパターン形状の炭化層を形成する上にタンタル若しくはタンタル合金を本実施形態に係るタンタル炭化物の製造方法の条件下で処理すると、所定形状にパターニングされたTaCを形成することができる。炭化ケイ素(以下、SiCという。)等の半導体基板表面にレーザー照射等で局部加熱して所定のパターン形状の炭化層を形成する。更に半導体基板上に形成された炭化層の上にタンタル若しくはタンタル合金を蒸着等の任意の方法で積み重ねる(Ta金属パターニング工程)。高温真空加熱炉に炭素源を導入して熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面から炭素を浸炭してTaCを形成し、タンタル若しくはタンタル合金とSiC基板の界面からはSiC基板表面の炭化されたSiCがタンタル若しくはタンタル合金と固相拡散接合してタンタル若しくはタンタル合金を背面からTaCに改質させてタンタルの炭化物配線を形成する。
【0044】
このように本実施形態に係るタンタルの炭化物の製造方法は、1750℃以上2250℃以下の真空中でTa若しくはTa合金基材表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5を昇華させて除去してから真空中に炭素源を導入しTa若しくはTa合金基材表面にTaCとTa4C3及びTa2Cを形成する。
【0045】
本発明のTa基板表面の自然酸化膜除去及び真空中加熱炉に炭素源を挿入した時の化学変化を以下の化学式で説明する。
【化1】
【0046】
因みに、特許文献8に記載の従来製法では1300℃〜1600℃の真空中に炭素源を導入しTaC及びTa2Cを形成させた後に1300℃〜1600℃の真空中で15時間程度の長時間アニールして表面付着した未反応炭素原子を拡散させてTaC層を成長させる。
【0047】
特許文献8に記載の従来製法の化学変化を以下の化学式で説明される。
【化2】
【0048】
そのため、特許文献8に掲載の拡大写真の観察からわかるように、Ta基材とTaCの境界が明確に分かれており、繰返し受ける熱応力によって、層間での層間剥離とTaC層のクラックが発生しやすいものと考えられる。Ta基板表面の自然酸化膜Ta2O5に1300℃〜1600℃の低い温度で炭素原子を反応させても自然酸化膜Ta2O5が化学的に安定でありTaの炭化速度が低く炭素原子の拡散深さが非常に浅い為真空加熱アニールを数十時間も行って炭素原子を拡散させてTaC膜を成長させても所望の厚みが得られていない。合わせて長時間の加熱で結晶粒子が大きく成長してバルク状に成り粒界も大きくなつておりTa基材とTaCの境界が明確に分かれてしまい層間での層間剥離とTaC層内のクラックが発生しやすいものと考えられる。
【0049】
尚、本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることができることは理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によると、簡易な方法で、確実にタンタルと炭素結合物を製造することが可能であり、その優れた化学的特性を利用した熱処理用治具はもちろんであるが、照明等のフィラメントやヒータとして用いられる電極や半導体ウエハー上の回路の配線等、各種産業用用途への利用可能性を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタル若しくはタンタル合金をチューブ状の形状に加工しチューブの中にPIT方式で炭素粉末を圧入し更に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブを圧延成形して焼結固形化前の加工性の高い間に全体を所定のコイル形状に加工した後に、真空熱処理炉内に設置し、前記タンタル若しくはタンタル合金表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記Ta2O5を除去した後、前記真空熱処理炉内に炭素源を導入して前記真空熱処理炉内温度を更に上昇させて、前記タンタル若しくはタンタル合金チューブ内面と前記炭素粉末PITを固相拡散結合で分子接合する温度条件下で前記タンタル若しくはタンタル合金表面と前記PIT方式で圧縮圧接された炭素粉末が高温で焼結固形化しチューブの内表面と固相拡散分子結合すると同時に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブの外表面に炭素が侵入して形成されたTaCであることを特徴とするタンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法。
【請求項2】
タンタル若しくはタンタル合金をチューブ状の形状に加工しチューブの中にPIT方式で炭素粉末を圧入し更に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブを圧延成形してリボン状に成形して焼結固形化前の加工性の高い間に全体を所定のコイル形状に加工した後に、真空熱処理炉内に設置し、前記タンタル若しくはタンタル合金表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記Ta2O5を除去した後、前記真空熱処理炉内に炭素源を導入して前記真空熱処理炉内温度を更に上昇させて、前記タンタル若しくはタンタル合金リボン内表面と前記炭素粉末PITを固相拡散結合で分子接合する温度条件下で前記タンタル若しくはタンタル合金リボン内表面と前記PIT方式で圧縮圧接された炭素粉末が高温で焼結固形化しリボンの内表面と固相拡散分子結合すると同時に前記タンタル若しくはタンタル合金リボンの外表面に炭素が侵入して形成されたTaCであることを特徴とするタンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法で製造されたタンタルチューブとPIT炭素芯であって、前記タンタルチューブとPIT炭素芯がタンタル炭化物のフィラメント若しくはヒータであることを特徴とするタンタルチューブとPIT炭素芯。
【請求項4】
SiC半導体基板上に真空下で所定の形状にレーザー又は電子線でパターニングして加熱処理する事で炭素リッチな基板表面を作り、タンタル若しくはタンタル合金をその部分にパターニングして、前記パターニングしたタンタル若しくはタンタル合金の表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面から前記Ta2O5を除去した後、炭素源を導入して熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面とSiC基板表面の炭素リッチ部分から炭素を浸入させて形成されたSiC半導体のタンタル炭化物配線の製造方法。
【請求項5】
SiC半導体基板上を真空下で加熱処理する事で炭素リッチなSiC基板表面環境を作り、前記基板表面にタンタル若しくはタンタル合金をパターニングして、表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面から前記Ta2O5を除去した後、炭素源を導入して熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面とSiC基板表面の炭素リッチなSiC表面部分から炭素を浸入させて形成されたSiC半導体のタンタル炭化物配線の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の製造方法で製造されたタンタル炭化物配線であって、前記タンタル炭化物配線は所定の形状にCVD法又は真空蒸着されたタンタル若しくはタンタル合金の表面の全てに炭素が浸入して形成されたTaCであることを特徴とするタンタル炭化物配線。
【請求項1】
タンタル若しくはタンタル合金をチューブ状の形状に加工しチューブの中にPIT方式で炭素粉末を圧入し更に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブを圧延成形して焼結固形化前の加工性の高い間に全体を所定のコイル形状に加工した後に、真空熱処理炉内に設置し、前記タンタル若しくはタンタル合金表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記Ta2O5を除去した後、前記真空熱処理炉内に炭素源を導入して前記真空熱処理炉内温度を更に上昇させて、前記タンタル若しくはタンタル合金チューブ内面と前記炭素粉末PITを固相拡散結合で分子接合する温度条件下で前記タンタル若しくはタンタル合金表面と前記PIT方式で圧縮圧接された炭素粉末が高温で焼結固形化しチューブの内表面と固相拡散分子結合すると同時に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブの外表面に炭素が侵入して形成されたTaCであることを特徴とするタンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法。
【請求項2】
タンタル若しくはタンタル合金をチューブ状の形状に加工しチューブの中にPIT方式で炭素粉末を圧入し更に前記タンタル若しくはタンタル合金チューブを圧延成形してリボン状に成形して焼結固形化前の加工性の高い間に全体を所定のコイル形状に加工した後に、真空熱処理炉内に設置し、前記タンタル若しくはタンタル合金表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記Ta2O5を除去した後、前記真空熱処理炉内に炭素源を導入して前記真空熱処理炉内温度を更に上昇させて、前記タンタル若しくはタンタル合金リボン内表面と前記炭素粉末PITを固相拡散結合で分子接合する温度条件下で前記タンタル若しくはタンタル合金リボン内表面と前記PIT方式で圧縮圧接された炭素粉末が高温で焼結固形化しリボンの内表面と固相拡散分子結合すると同時に前記タンタル若しくはタンタル合金リボンの外表面に炭素が侵入して形成されたTaCであることを特徴とするタンタルチューブとPIT炭素芯の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法で製造されたタンタルチューブとPIT炭素芯であって、前記タンタルチューブとPIT炭素芯がタンタル炭化物のフィラメント若しくはヒータであることを特徴とするタンタルチューブとPIT炭素芯。
【請求項4】
SiC半導体基板上に真空下で所定の形状にレーザー又は電子線でパターニングして加熱処理する事で炭素リッチな基板表面を作り、タンタル若しくはタンタル合金をその部分にパターニングして、前記パターニングしたタンタル若しくはタンタル合金の表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面から前記Ta2O5を除去した後、炭素源を導入して熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面とSiC基板表面の炭素リッチ部分から炭素を浸入させて形成されたSiC半導体のタンタル炭化物配線の製造方法。
【請求項5】
SiC半導体基板上を真空下で加熱処理する事で炭素リッチなSiC基板表面環境を作り、前記基板表面にタンタル若しくはタンタル合金をパターニングして、表面に形成されている自然酸化膜であるTa2O5が昇華する条件下で熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面から前記Ta2O5を除去した後、炭素源を導入して熱処理を行い、前記パターニングされたタンタル若しくはタンタル合金の表面とSiC基板表面の炭素リッチなSiC表面部分から炭素を浸入させて形成されたSiC半導体のタンタル炭化物配線の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の製造方法で製造されたタンタル炭化物配線であって、前記タンタル炭化物配線は所定の形状にCVD法又は真空蒸着されたタンタル若しくはタンタル合金の表面の全てに炭素が浸入して形成されたTaCであることを特徴とするタンタル炭化物配線。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図7】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図7】
【公開番号】特開2012−52235(P2012−52235A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198901(P2011−198901)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【分割の表示】特願2006−263429(P2006−263429)の分割
【原出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【分割の表示】特願2006−263429(P2006−263429)の分割
【原出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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