説明

チップ型電子部品

【課題】 薄膜容量素子等の薄膜回路素子を備えたチップ型電子部品において、実装密度を大きくする。
【解決手段】 基板1上に設けられたグランド層5の上面中央部には絶縁膜9が設けられている。絶縁膜9の上面には複数の上部電極11が設けられている。そして、薄膜容量素子2は、上部電極11、上部電極11下に設けられた絶縁膜9および当該絶縁膜9下に設けられたグランド層5からなる下部電極により構成されている。このように、基板1上に複数の薄膜容量素子2を設けているので、実装密度を大きくすることができる。この場合、グランド層5は薄膜容量素子2の下部電極を兼ねているので、専用の下部電極を形成する必要がなく、それに応じて、製造工程数を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はチップ型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチップ型電子部品には、集積回路が形成された半導体基板上に薄膜回路素子を一体的に形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載されたチップ型電子部品は、集積回路が形成された半導体基板上に第1の絶縁膜が設けられ、第1の絶縁膜上にグランド層が設けられ、グランド層を含む第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜が設けられ、第2の絶縁膜上にグランド層に接続されたグランド用接続パッド部と薄膜回路素子とが設けられている。また、グランド用接続パッド部上および薄膜回路素子上にグランド用柱状電極および素子用柱状電極が設けられている。そして、グランド用柱状電極および素子用柱状電極の周囲に封止膜がその上面がグランド用柱状電極および素子用柱状電極の上面と面一となるように設けられている。
【0003】
【特許文献1】特許第3465617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のチップ型電子部品では、半導体基板上に1個の薄膜回路素子を設けているので、実装密度が小さいという問題があった。また、薄膜回路素子が薄膜容量素子である場合には、グランド層を含む第1の絶縁膜上に設けられた第2の絶縁膜上に、下部電極、絶縁膜および上部電極をこの順で積層してなる薄膜容量素子を設けているので(特許文献1の図9参照)、グランド層を含む薄膜容量素子の部分における層構造がグランド層、第2の絶縁膜、下部電極、絶縁膜および上部電極の5層となり、層数が多く、製造工程数が多くなるという問題があった。
【0005】
そこで、この発明は、実装密度を大きくすることができるチップ型電子部品を提供することを目的とする。
また、この発明は、薄膜回路素子が薄膜容量素子である場合には、製造工程数を少なくすることができるチップ型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明のチップ型電子部品は、基板と、前記基板上に設けられた共通電位層と、前記共通電位層上に少なくとも前記共通電位層の一部を露出して設けられた絶縁膜と、前記共通電位層上に設けられた共通電位用柱状電極と、前記絶縁膜上に設けられ、それぞれ、少なくとも薄膜回路素子の一部を構成する複数の導電体と、少なくとも前記1つの導電体に接続されて設けられた素子用柱状電極と、前記共通電位用柱状電極および前記素子用柱状電極の周囲に設けられた封止膜とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、基板上に設けられた共通電位層上に絶縁膜を介して複数の導電体を設け、各々、少なくとも導電体の1つを含む複数の薄膜回路素子を構成しているので、実装密度を大きくすることができる。また、薄膜回路素子を構成する層数を少なくすることができ、ひいては製造工程数を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1(A)はこの発明の第1実施形態としてのチップ型電子部品の透過平面図を示し、図1(B)は図1(A)のIB−IB線に沿う断面図を示す。このチップ型電子部品は、簡単に説明すると、平面正方形状の基板1上の中央部に複数例えば5個の平面方形状の薄膜容量素子2が設けられた構造となっている。
【0009】
すなわち、この半導体装置は、シリコンからなる平面正方形状の半導体基板1を備えている。半導体基板1の上面には、図示はしないが、集積回路が形成されている。集積回路が形成された領域を含む半導体基板1の上面全体にはポリイミド系樹脂等からなる下地絶縁膜3が設けられている。下地絶縁膜3の上面全体には銅等からなる下地金属層4aが設けられている。下地金属層4aの上面全体には銅からなる上部金属層4bが形成されている。図1(B)に図示されるように、下地金属層4aと上部金属層4bとは積層構造を有し、接地電位が供給されるグランド層(共通電位層)5を構成する。
【0010】
グランド層5の上面周辺部には銅等からなる複数の平面円形状の下地金属層6aが設けられている。下地金属層6aの上面全体には銅からなる上部金属層6bが形成されている。図1(B)に図示されるように、下地金属層6aと上部金属層6bとは積層構造を有し、グランド用接続パッド部7を構成する。グランド用接続パッド部7の上面には銅からなるグランド用柱状電極8が設けられている。
【0011】
グランド層5の上面中央部には平面正方形状の絶縁膜9が設けられている。この場合、絶縁膜9はTa25、STO、BST等の強誘電体によって形成されている。絶縁膜9の上面には銅等からなる5つの平面方形状の下地金属層10aが設けられている。下地金属層10aの上面全体には銅からなる上部金属層10bが形成されている。図1(B)に図示されるように、下地金属層6aと上部金属層6bとは積層構造を有し、上部電極(導電体)11を構成する。この場合、5つの上部電極11の平面サイズは、異なっていてもよく、また同じであってもよい。
【0012】
ここで、上部電極11、上部電極11下に設けられた強誘電体からなる絶縁膜9および当該絶縁膜9下に設けられたグランド層5からなる下部電極により、薄膜容量素子(薄膜回路素子)2が構成されている。すなわち、上部電極11下に設けられたグランド層5は、複数の薄膜容量素子2に共通であって、且つ、下部電極を兼ねている。
【0013】
薄膜容量素子2の上部電極11の上面には銅からなる素子用柱状電極12が設けられている。グランド用柱状電極8および素子用柱状電極12の周囲にはエポキシ系樹脂等からなる封止膜13がその上面がグランド用柱状電極8および素子用柱状電極12の上面と面一となるように設けられている。グランド用柱状電極8および素子用柱状電極12の上面にはグランド用半田ボール(グランド用半田層)14および素子用半田ボール(素子用半田層)15が設けられている。
【0014】
以上のように、この半導体装置では、半導体基板1上に設けられたグランド層5を共通の下部電極5とし、この下部電極5上に絶縁膜9を介して複数例えば5個の上部電極11を形成することにより、複数例えば5個の薄膜容量素子2を形成しているので、実装密度を大きくすることができ、また、層構造が下部電極を兼ねたグランド層5、絶縁膜9および上部電極2の3層となり、層数を少なくすることができ、ひいては製造工程数を少なくすることができる。
【0015】
(第2実施形態)
図2(A)はこの発明の第2実施形態としての半導体装置の透過平面図を示し、図2(B)は図2(A)のIIB−IIB線にほぼ沿う断面図を示す。この半導体装置において、図1(A)、(B)に示す半導体装置と大きく異なる点は、絶縁膜9の上面に複数例えば6個のスパイラル状の薄膜誘導素子21を設けた点である。
【0016】
この場合、絶縁膜9はポリイミド系樹脂等によって形成されている。薄膜誘導素子21は、絶縁膜9の上面にスパイラル状に設けられた銅等からなる下地金属層22aと、下地金属層22aの上面全体に設けられた銅からなる上層金属層22bとが積層された積層構造を有する導電体23からなっている。薄膜誘導素子21の内端部は、絶縁膜9に設けられた開口部24を介してグランド層5の上面に接続されている。
【0017】
薄膜誘導素子21の内端部は、絶縁膜9の上面に設けられた銅等からなる下地金属層25aおよびその上面全体に設けられた銅からなる上層金属層25bとが積層された積層構造を有する素子用接続パッド部26に接続されている。素子用接続パッド部26の上面には素子用柱状電極12が設けられている。素子用柱状電極12の上面には素子用半田ボール15が設けられている。
【0018】
以上のように、この半導体装置では、半導体基板1上に設けられた共通のグランド層5上に絶縁膜9を介して複数例えば6個の導電体23をスパイラル状に形成することにより、複数例えば6個の薄膜誘導素子21を設けているので、実装密度を大きくすることができ、また、層構造が共通のグランド層5、絶縁膜9および導電体23の3層となり、層数を少なくすることができ、ひいては製造工程数を少なくすることができる。
【0019】
(第3実施形態)
図3(A)はこの発明の第3実施形態としての半導体装置の透過平面図を示し、図3(B)は図3(A)のIIIB−IIIB線にほぼ沿う断面図を示す。この半導体装置において、図1(A)、(B)に示す半導体装置と大きく異なる点は、絶縁膜9の上面に複数例えば5個の薄膜容量素子2および複数例えば4個の蛇行状の薄膜誘導素子21を設けた点である。
【0020】
この場合、絶縁膜9はTa25、STO、BST等の強誘電体によって形成されている。5個の上部電極11は、それぞれ、絶縁膜9およびグランド層5を含む5個の薄膜容量素子2を構成し、これらは、図3(A)において、左上、右上、中央部、左下および右下に設けられている。また、4個の蛇行状に形成された配線23は、それぞれ、薄膜容量素子21を構成している。各薄膜容量素子2の上部電極11の上面には素子用柱状電極12が設けられている。図3(A)において、上側および下側に設けられた薄膜誘導素子21の左端部はその左側に設けられた薄膜容量素子2に接続され、右端部はその右側に設けられた薄膜容量素子2に接続されている。
【0021】
図3(A)において中央部に設けられた薄膜容量素子2には、その左側および右側に設けられた2個の薄膜誘導素子21の各一端部が接続されている。この2個の薄膜誘導素子21の各他端部は、その左側および右側に設けられた2個の素子用接続パッド部26(図2(B)参照)に接続されている。
【0022】
以上のように、この半導体装置では、半導体基板1上に設けられた共通のグランド層5上に絶縁膜9を介して複数例えば5個の上部電極11を形成することにより、複数例えば5個の薄膜容量素子2を構成し、また、共通のグランド層5上に絶縁膜9を介して、複数例えば4個の導電体23を蛇行状に形成することにより、4個の薄膜誘導素子21を構成しているので、実装密度を大きくすることができ、また、層構造が下部電極を兼ねたグランド層5、絶縁膜9および上部電極11または導電体23の3層となり、層数を少なくすることができ、ひいては製造工程数を少なくすることができる。
【0023】
なお、上記各実施形態において、符号5で示す層は電源(Vdd)電位の共通電位層としてもよい。また、絶縁膜9上に設ける薄膜回路素子は、符号5で示す層を含む薄膜容量素子、スパイラル状の薄膜誘導素子、蛇行状の薄膜誘導素子の他に、薄膜抵抗素子等であってもよく、またそれらを適宜に組み合わせたものであってもよい。
【0024】
また、上記実施形態における、グランド層5、グランド用接続パッド部7、上部電極11、導電体23および素子用接続パッド部26は、それぞれ、下層金属層と上層金属層の2層積層構造としたが、3層以上の金属層の積層構造としたり、単層の金属層で構成することもできる。
【0025】
また、上述の各実施形態では、集積回路が形成された半導体基板上に薄膜回路素子を形成するものであったが、集積回路が形成されていない、シリコン基板、ガラス布基材エポキシ樹脂、セラミックあるいはアルミナ等で形成された基板上に薄膜回路素子を形成する場合にも適用することができる。
【0026】
さらに、上記実施形態では、絶縁膜9上には、基本的には、薄膜回路素子を構成する部材のみを形成するものであったが、薄膜回路素子の構成部材と共に各薄膜回路素子を接続するための、あるいは、基板上に形成された回路(集積回路を含む)や外部回路に接続するための配線パターンも合わせて形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)はこの発明の第1実施形態としてのチップ型電子部品の透過平面図、(B)はそのIB−IB線に沿う断面図。
【図2】(A)はこの発明の第2実施形態としてのチップ型電子部品の透過平面図、(B)はそのIIB−IIB線にほぼ沿う断面図。
【図3】(A)はこの発明の第3実施形態としてのチップ型電子部品の透過平面図、(B)はそのIIIB−IIIB線にほぼ沿う断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 基板
2 薄膜容量素子
3 下地絶縁膜
5 グランド層
7 グランド用接続パッド部
8 グランド用柱状電極
9 絶縁膜
11 上部電極
12 素子用柱状電極
13 封止膜
14 グランド用半田ボール
15 素子用半田ボール
21 薄膜誘導素子
23 導電体
24 開口部
26 素子用接続パッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられた共通電位層と、前記共通電位層上に少なくとも前記共通電位層の一部を露出して設けられた絶縁膜と、前記共通電位層上に設けられた共通電位用柱状電極と、前記絶縁膜上に設けられ、それぞれ、少なくとも薄膜回路素子の一部を構成する複数の導電体と、少なくとも前記1つの導電体に接続されて設けられた素子用柱状電極と、前記共通電位用柱状電極および前記素子用柱状電極の周囲に設けられた封止膜とを有することを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、前記基板は集積回路を有する半導体基板であることを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項3】
請求項1に記載の発明において、前記共通電位層は前記基板上の全面に設けられ、前記共通電位用柱状電極は前記共通電位層上の周辺部に設けられ、前記絶縁膜は前記共通電位層上の中央領域に設けられていることを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項4】
請求項1に記載の発明において、前記各薄膜回路素子は、前記導電体と、前記導電体下に設けられた前記絶縁膜と、前記絶縁膜下に設けられた前記共通電位層を含んで構成された薄膜容量素子を含むことを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項5】
請求項1に記載の発明において、前記導電体は下層金属層および上層金属層を含むことを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項6】
請求項1に記載の発明において、前記各薄膜回路素子は、前記絶縁膜上にスパイラル状に形成された前記導電体からなる薄膜誘導素子を含むことを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項7】
請求項6に記載の発明において、前記導電体は下層金属層および上層金属層を含むことを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項8】
請求項6に記載の発明において、前記各薄膜誘導素子の一端部は前記素子用柱状電極に接続され、他端部は前記絶縁膜に設けられた開口部を介して前記共通電位層に接続されていることを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項9】
請求項1に記載の発明において、前記各薄膜回路素子は、前記絶縁膜上に蛇行状に形成された前記導電体からなる薄膜誘導素子であることを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項10】
請求項9に記載の発明において、前記導電体は下層金属層および上層金属層を含むことを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項11】
請求項1に記載の発明において、前記複数の薄膜回路素子は同種の回路素子であることを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項12】
請求項1に記載の発明において、前記複数の薄膜回路素子は異種の回路素子であることを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項13】
請求項1に記載の発明において、前記共通電位用柱状電極および前記素子用柱状電極の上面に、それぞれ、共通電位用半田層および素子用半田層が設けられていることを特徴とするチップ型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−335842(P2007−335842A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90453(P2007−90453)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】