説明

チロシンキナーゼ阻害剤としての融合2環および3環ピリミジン化合物

本明細書中で規定される式(I)の融合2環または3環化合物が開示される。また、これらの化合物を用いたEGFRキナーゼ活性の阻害方法および癌の治療方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、2008年11月10日出願の米国仮特許出願第61/112,865号の優先権の利益を主張する。本優先権主張出願の内容は、全体を本明細書中に引用する。
【背景技術】
【0002】
背景
プロテインキナーゼは、分化、増殖、移動、およびアポトーシス等の様々な細胞機能を調節する細胞シグナル経路において重要な役割を果たす。プロテインキナーゼの調節解除は、癌等の数多くの病気にかかわりがある。ゆえに、プロテインキナーゼは、癌の治療において魅力的な治療ターゲットである。
【0003】
上皮成長因子受容体(EGFR)は、4種の密接に関連のある受容体チロシンキナーゼ:EGFR、HER2、HER3、及びHER4のサブファミリーである。EGFRの細胞外ドメインへのEGFリガンドの結合により、細胞内タンパク質−チロシンキナーゼ活性が活性化される。その結果、EGFRのC末端ドメインにおける幾つかのチロシン残基の自己リン酸化が起こる(Kamath, S., Buolamwini, J.K., Med. Res. Rev. 2006, 26, 569-594)。
【0004】
EGFRシグナル伝達カスケードにおける調節解除は、膀胱癌、乳癌、結腸癌、及び肺癌等の様々な癌の発症にかかわりがある。ゲフィチニブ(Gefitinib)およびエルロチニブ(Erlotinib)等の、様々なEGFRキナーゼ阻害剤は、癌、特に非小細胞肺癌(NSCLC)を治療するのに使用されてきた。しかしながら、主にEGFRキナーゼでのT790M突然変異により起こる薬剤耐性によって、NSCLC患者のたった10〜20%しか、ゲフィチニブ(Gefitinib)治療に応答しない。ゆえに、EGFRキナーゼ阻害剤、特にEGFR変異体(例えば、T790M変異体)の活性を阻害できるものを、抗癌剤として開発することは非常に有益である。
【発明の概要】
【0005】
要約
本発明は、特定の融合2環または3環化合物がEGFRキナーゼ(例えば、EGFR T790M変異体)の活性を阻害するのに使用でき、これによりこれらの化合物が癌(例えば、NSCLC)の治療に適用できるという予想できない発見に基づくものである。
【0006】
一態様では、本発明は、下記式(I)の融合2環または3環化合物に関する。
【0007】
【化1】

【0008】
式(I)中、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;Aは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり;Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに環Cは、
【0009】
【化2】

【0010】
であり、この際、pは、0、1、または2であり、qは、1または2であり、Zは、O、S、またはNHであり、Wは、CHまたはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、またはSOであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、ならびにR、R、R、R、R10、およびR11のそれぞれは、独立して、H、アルキル、またはハロゲンである。特に、本発明は、下記式(II)の融合2環または3環化合物に関する。
【0011】
【化3】

【0012】
上記化合物の一つのサブセットとしては、WがNRであり、この際、RがSO
【0013】
【化4】

【0014】
であり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、必要であればアルキルアミノ(例えば、ジアルキルアミノ)で置換されてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、またはCHNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、ならびにRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルである化合物がある。これらの化合物において、AはORであってもよく、この際、Rは、H、アリール、ヘテロアリール、または必要であればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3アルキルである、またはAはC(O)ORであってもよく;Bは、フェニルであってもよく;mは、0または1であってもよく;nは、0であってもよく;Xは、Nであってもよく;Yは、NHであってもよく;またはZはSであってもよい。
【0015】
本化合物の他のサブセットとしては、WがCHである化合物がある。これらの化合物において、Aは、ORであってもよく、この際、Rは、H、アリール、ヘテロアリール、または必要であればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3アルキルであり、またはAは、C(O)ORであってもよく;Bは、フェニルであってもよく;mは、0または1であってもよく;nは、0であってもよく;Xは、Nであってもよく;Yは、NHであってもよく;またはZはSであってもよい。
【0016】
「アルキル」ということばは、1〜20炭素元素(例えば、C〜C10)を含む直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素を意味する。アルキルの例としては、以下に制限されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、及びt−ブチルが挙げられる。「アルケニル」ということばは、2〜20炭素元素(例えば、C〜C10)及び1以上の二重結合を含む直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素を意味する。アルケニルの例としては、以下に制限されないが、エテニル、プロペニル、及びアリルが挙げられる。「アルキニル」ということばは、2〜20炭素元素(例えば、C〜C10)及び1以上の三重結合を含む直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素を意味する。アルキニルの例としては、以下に制限されないが、エチニル、1−プロピニル、1−及び2−ブチニル、ならびに1−メチル−2−ブチニルが挙げられる。「アルキルアミノ」ということばは、RがH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、またはヘテロアリールでありうる−N(R)−アルキルを意味する。
【0017】
「シクロアルキル」ということばは、3〜30炭素元素(例えば、C〜C12)を有する一価の飽和炭化水素環系を意味する。シクロアルキルの例としては、以下に制限されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。「シクロアルケニル」ということばは、3〜30炭素元素(例えば、C〜C12)及び1以上の二重結合を有する一価の非芳香族炭化水素環系を意味する。例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、及びシクロヘプテニルが挙げられる。「ヘテロシクロアルキル」ということばは、1以上のヘテロ原子(例えば、O、N、SまたはSe)を有する一価の非芳香族5〜8員単環系、8〜12員2環系、または11〜14員3環系を意味する。ヘテロシクロアルキルの例としては、以下に制限されないが、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、及びテトラヒドロフラニルが挙げられる。「ヘテロシクロアルケニル」ということばは、1以上のヘテロ原子(例えば、O、N、SまたはSe)及び1以上の二重結合を有する一価の非芳香族5〜8員単環系、8〜12員2環系、または11〜14員3環系を意味する。
【0018】
「アリール」ということばは、一価の6炭素単環芳香族環系、10炭素2環芳香族環系、14炭素3環芳香族環系を意味する。アリールの例としては、以下に制限されないが、フェニル、ナフチル、及びアントラセニルが挙げられる。「ヘテロアリール」ということばは、1以上のヘテロ原子(例えば、O、N、SまたはSe)を有する一価の芳香族5〜8員単環系、8〜12員2環系、または11〜14員3環系を意味する。ヘテロアリールの例としては、以下に制限されないが、ピリジル、フリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チエニル、キノリニル、インドリル、及びチアゾリルが挙げられる。
【0019】
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アルキルアミノ、アリール及びヘテロアリールは、置換及び非置換部分双方を包含する。アルキルアミノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、及びヘテロアリールに存在しうる置換基としては、以下に制限されないが、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、C−C20シクロアルキル、C−C20シクロアルケニル、C−C20ヘテロシクロアルキル、C−C20ヘテロシクロアルケニル、C−C10アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、アミノ、C−C10アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、ハロゲン、オキソ(O=)、チオキソ(S=)、チオ、シリル、C−C10アルキルチオ、アリールチオ、C−C10アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アシルアミノ、アミノアシル、アミノチオアシル、アミジノ、メルカプト、アミド、チオウレイド、チオシアナト(thiocyanato)、スルホンアミド、グアニジン、ウレイド、シアノ、ニトロ、アシル、チオアシル、アシルオキシ、カルボアミド、カルバミル、カルボキシル、及びカルボン酸エステルが挙げられる。他方、アルキル、アルケニル、またはアルキニルに存在しうる置換基としては、C−C10アルキルを除く上記したすべての置換基が挙げられる。シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、及びヘテロアリールはまた、相互に融合していてもよい。
【0020】
他の態様では、本発明は、下記式(I)の融合2環または3環化合物に関する。
【0021】
【化5】

【0022】
式(I)中、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;Aは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり;Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに環Cは、下記:
【0023】
【化6】

【0024】
であり、この際、R’およびR”のそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OR、ORO、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、Zは、OまたはNHであり、この際、R’およびR”の少なくとも一方は、Hであり、ならびにWは、NまたはCRであり、この際、Rは、アルケニル、アルキニル、OR、ORO、若しくはNRC(O)Rで置換されるアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRである。特に、前記化合物は下記式(II)を有する。
【0025】
【化7】

【0026】
上記直前に記載される化合物の1つのサブセットとしては、R’が
【0027】
【化8】

【0028】
であり、この際、Rが、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、またはCHNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル若しくはヘテロアリールであり、ならびにRが、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルである、化合物がある。これらの化合物において、Aは、ORであってもよく、この際、Rは、H、アリール、ヘテロアリール、または必要あればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3アルキルであり;Bは、フェニルであってもよく;mは、1であってもよく;nは、0であってもよく;Xは、Nであってもよく;Yは、NHであってもよく;またはZはOであってもよい。
【0029】
当該化合物の他のサブセットとしては、Bがフェニルであり、およびnが0である、化合物がある。これらの化合物において、Aは、ORであってもよく、この際、Rは、H、アリール、ヘテロアリール、または必要あればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3アルキルである、またはAは、C(O)ORであってもよく;mは、0または1であってもよく;Xは、Nであってもよく;Yは、NHであってもよく;Zは、Oであってもよく;WはCRであってもよく、この際、Rは、ハロゲンであり;またはR’およびR”のそれぞれは、独立して、ORであってもよい。
【0030】
さらに他の態様では、本発明は、下記式(I)の融合2環または3環化合物に関する。
【0031】
【化9】

【0032】
式(I)中、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;Aは、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり;Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに環Cは、
【0033】
【化10】

【0034】
であり、この際、R’およびR”のそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OR、ORO、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、Zは、OまたはNHであり、ならびにWは、NまたはCRであり、この際、Rは、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRである。特に、前記化合物は下記式(II)を有する。
【0035】
【化11】

【0036】
さらなる他の態様では、本発明は、下記式(I)の融合2環または3環化合物に関する。
【0037】
【化12】

【0038】
式(I)中、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;XがNである際には、Aは、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、ならびにXがCRである際には、Aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり;Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに環Cは、
【0039】
【化13】

【0040】
であり、この際、R’およびR”のそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OR、ORO、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、Zは、Sであり、ならびにWはNまたはCRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRである。特に、前記化合物は下記式(II)を有する。
【0041】
【化14】

【0042】
さらに、本発明は、下記式(I)の融合2環または3環化合物に関する。
【0043】
【化15】

【0044】
式(I)中、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;Aは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり;Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに環Cは、
【0045】
【化16】

【0046】
であり、この際、R’およびR”のそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ニトロ、シアノ、OR、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、R’およびR”の少なくとも一方はNRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、またはNHSOである。特に、前記化合物は下記式(II)を有する。
【0047】
【化17】

【0048】
上記直前に記載された化合物の1つのサブセットとしては、R’は、
【0049】
【化18】

【0050】
であり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、若しくはCHNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、またはヘテロアリールであり、ならびにRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルである。これらの化合物において、Aは、ORであってもよく、この際、Rは、H、アリール、ヘテロアリール、または必要であればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3アルキルである、またはAは、C(O)ORであってもよく;Bは、フェニルであってもよく;mは、0または1であってもよく;またはnは0であってもよい。
【0051】
さらなる他の態様では、本発明は、下記式(I)の融合2環または3環化合物に関する。
【0052】
【化19】

【0053】
式(I)中、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;XがNである際には、Aは、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、およびXがCRである際には、Aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり;Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに環Cは、
【0054】
【化20】

【0055】
であり、この際、R’は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OR、ORO、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、Zは、OまたはSであり、ならびにWは、NまたはCRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRである。特に、前記化合物は下記式(II)を有する。
【0056】
【化21】

【0057】
上記直前に記載される化合物の1つのサブセットとしては、mは、1であり、およびAは、ORであり、この際、Rは、H、アリール、ヘテロアリール、または必要であればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3アルキルである、化合物がある。これらの化合物において、R’は、
【0058】
【化22】

【0059】
であり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、またはCHNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、ならびにRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルである。
【0060】
上記融合2環または3環化合物は、当該化合物それ自体、さらには、妥当である場合には、その塩、その溶媒和物、およびそのプロドラッグを包含する。例えば、塩は、融合2環または3環化合物のアニオンおよび正電荷を帯びた基(例えば、アミノ)との間に形成されてもよい。適当なアニオンとしては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、重硫酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、グルクロン酸塩、グルタル酸塩(glutarate)、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、トシレート、サリチル酸塩、乳酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、および酢酸塩がある。同様にして、塩はまた、融合2環または3環化合物のカチオンおよび負電荷を帯びた基(例えば、カルボキシレート)との間に形成されてもよい。適当なカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及びテトラメチルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオンがある。融合2環または3環化合物はまた、第4級窒素原子を含むこれらの塩をも包含する。プロドラッグの例としては、患者に投与されると、活性のある融合2環または3環化合物を提供できる、エステルおよび他の製薬上許容できる誘導体がある。
【0061】
本発明はまた、プロテインキナーゼを発現する細胞を、有効量の1以上の上記融合2環または3環化合物と接触させることによる、EGFRキナーゼ(またはERBB2キナーゼ等の他のチロシンキナーゼ)の阻害方法に関する。上記細胞は、腫瘍細胞またはプロテインキナーゼを過剰発現する細胞でありうる。
【0062】
加えて、本発明は、EGFRキナーゼが仲介する疾患(またはERBB2キナーゼが関連する疾患等の他のチロシンキナーゼが仲介する疾患)を治療する必要のある患者に、有効量の1以上の上記融合2環または3環化合物を投与することによる、癌等のEGFRキナーゼが仲介する疾患(またはERBB2キナーゼが関連する疾患等の他のチロシンキナーゼが仲介する疾患)の治療方法を包含する。
【0063】
癌(例えば、NSCLC)の治療に使用される1以上の上記融合2環または3環化合物を含む薬剤組成物、さらには、この治療用途および癌を治療するための薬剤の製造への上記化合物の使用もまた本発明の範囲に含まれる。
【0064】
(S)−2−(5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ)−2−フェニルエタノール[(S)-2-(5,6-dimethylthieno[2,3-d]pyrimidin-4-ylamino)-2-phenylethanol]、(S)−2−(5−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ)−2−フェニルエタノール[(S)-2-(5-methylthieno[2,3-d]pyrimidin-4-ylamino)-2-phenylethanol]、(S)−2−フェニル−2−(チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ)エタノール[(S)-2-phenyl-2-(thieno[2,3-d]pyrimidin-4-ylamino)ethanol]、およびこれらの類似体、さらにはこれらの上記したような治療用途もまた包含される。
【0065】
本発明の一以上の実施形態の詳細を下記説明に記載する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、下記説明からおよび特許請求の範囲から明らかであろう。
【0066】
詳細な説明
以下に、本明細書中に記載される具体的な化合物を示す。
【0067】
【化23】

【0068】
【化24】

【0069】
【化25】

【0070】
【化26】

【0071】
【化27】

【0072】
【化28】

【0073】
【化29】

【0074】
【化30】

【0075】
【化31】

【0076】
【化32】

【0077】
【化33】

【0078】
【化34】

【0079】
【化35】

【0080】
【化36】

【0081】
【化37】

【0082】
【化38】

【0083】
【化39】

【0084】
【化40】

【0085】
本発明の融合2環または3環化合物は、公知の化学変換(保護基方法を含む)、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rdEd., John Wiley and Sons (1999); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);およびL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)ならびにこれらの次の版に記載される方法によって調製できる。下記スキーム1〜4は、本発明の化合物を合成するための変換を示すものである。
【0086】
スキーム1における経路は、本発明のチエノピリミジン化合物(VII)の合成を例示するものである。トリエチルアミンを、無水エタノールにおける適当に置換されたケトン(I)、マロンニトリル(II)、及び硫黄(S)の混合物に添加する。得られた混合物を16時間還流した後、濃縮する。残渣を水および酢酸エチル間で分配する。有機層を濃縮して、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、チオフェン化合物(III)を得る。次に、HClを、チオフェン(III)及びギ酸の混合物に添加し、得られた混合物を16時間還流する。水を加え、形成した沈殿物を濾過して、チエノピリミジノン(IV)を得る。IV及びPOClの混合物を55〜65℃で3時間加熱する。次に、水を加えた後、重炭酸ナトリウムを加えて、酸を中和する。この混合物を酢酸エチルで抽出し、分離した有機層を濃縮する。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、塩素置換されたチエノピリミジノン(V)を得る。次に、n−ブタノール中で適当なアミン(VI)と共にVを16時間加熱すると、所望の置換チエノピリミジン(VII)が得られる。
【0087】
【化41】

【0088】
本発明のチエノピリミジン化合物XVIは、スキーム2に示されるような若干修飾された経路によって合成できる。ピペリジン−4−オン(VIII)を、塩基性条件下でBocで保護し、生成物をマロンニトリル及び硫黄と反応させてチオフェン環を形成する。100℃でDMF中で酢酸ホルムアミジンでXを環化することによって、チエノピリミジノンXIを得る。XIをPOClと反応させることによって、塩素置換されたチエノピリミジン(XII)が得られ、熱n−ブタノール中で適当なアミンと反応させることによって、これを置換チエノピリミジン(XIII)に変換する。次に、16時間、ジオキサン中でHClでXIII内のBoc保護基を除去することによって、化合物XIVが得られる。DMF中でHOBt及びEDCを用いて適当な酸XVでXIVをアミドカップリングした後、標準的な検査(work up)を行うことによって、所望の生成物XVIが得られる。
【0089】
【化42】

【0090】
スキーム3に示される経路は、本発明のフラノピリミジン化合物(XXI)の合成を例示するものである。ジエチルアミンを、0℃でDMF中で適当に置換されたベンゾイン(XVII)及びマロンニトリル(II)の混合物に30分かけて滴下する。得られた混合物を16時間攪拌する。次に、水を加えて、形成した沈殿物を濾過によって集めて、エタノールで結晶化することによって、置換フラン(XVIII)を得る。無水酢酸を、0℃でXVIII及びギ酸の混合物に30分かけて滴下する。得られた混合物を100℃で16時間加熱する。次に、加えて、形成した沈殿物を濾過によって集めて、フラノピリミジノン(XIX)を得る。XIX及びPOClの混合物を55〜65℃で3時間加熱する。次に、水、さらに重炭酸ナトリウムを加える。得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。有機層を濃縮した後、残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製することによって、塩素置換されたフラノピリミジン(XX)が得られる。XXを熱n−ブタノール中で適当なアミンと16時間加熱することによって、所望のアミノ置換フラノピリミジン(XXI)が得られる。
【0091】
【化43】

【0092】
本発明のフラノピリミジン化合物はまた、別の方法によっても合成できる。下記スキーム4は、このような別の合成経路を例示するものである。DMF中でN−ブロモコハク酸イミド(NBS)を用いて塩素置換されたフラノピリミジン(XX)を臭素化することによって、臭素、塩素置換されたフラノピリミジン(XXII)が得られる。または、N−クロロコハク酸イミド(N-chlorosuccinimide)(NCS)を使用することによって、XXIIの相当する2塩素誘導体が得られる。n−ブタノール中で加熱することによって適当なアミン(VI)とXXIIを反応させることによって、臭素、アミノ置換フラノピリミジン(XXIII)が得られる。次に、標準的なスズキカップリング条件(2〜3時間、還流条件下で水及びジオキサンの混合物中でPd(OAc)、PPh、及び炭酸ナトリウム)下で、化合物XXIIIを適当なボロン酸と反応させることによって、本発明のフラノピリミジン化合物(XXIV)が合成される。
【0093】
【化44】

【0094】
本発明の融合2環または3環化合物はまた、当業者には認識されるように必要な修飾を加えたスキーム1〜4で概説されるものと同様にして合成できる。
【0095】
このようにして合成された融合2環または3環化合物は、フラッシュカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、結晶化、または他の適当な方法によってさらに精製されてもよい。
【0096】
本明細書に記載される化合物は、非芳香族由来の二重結合及び1以上の不斉中心を有していてもよい。ゆえに、本化合物は、ラセミ化合物及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、ならびにcis−またはtrans−異性体として存在してもよい。このような異性体形態すべてが包含される。
【0097】
また、(1)有効量の少なくとも1の本発明の融合2環または3環化合物および製薬上許容できる担体を含む薬剤組成物、ならびに(2)有効量のこのような融合2環または3環化合物を癌の治療の必要な患者に投与することによる癌の治療方法もまた本発明の範囲に含まれる。
【0098】
本明細書中で使用される、「治療(treating)」ということばは、癌、癌の症状または癌になりやすい素因を治療する(cure)、治す(heal)、軽減する(alleviate)、和らげる(relieve)、変える(alter)、矯正する(remedy)、改善する(ameliorate)、改良する(improve)、または影響を与える(affect)ことを目的として、癌を有する、または癌の症状若しくは癌になりやすい素因を有する患者に融合2環または3環化合物を投与することを意味する。「有効量」ということばは、患者に意図した治療効果を与えるのに必要な活性剤の量を意味する。有効量は、当業者によって認識されるように、投与経路、賦形剤の使用、及び他の薬剤と一緒に使用する可能性に応じて、異なる場合がある。
【0099】
癌は、様々な器官の固形腫瘍及び血液系腫瘍双方を包含する。固形腫瘍の例としては、膵臓癌;膀胱癌;結腸直腸癌;転移性乳癌等の、乳癌;アンドロゲン依存性及びアンドロゲン非依存性前立腺癌等の、前立腺癌;例えば、転移性腎細胞癌等の、腎癌;肝細胞癌;例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、細気管支肺胞上皮癌(BAC)、及び肺の腺癌等の、肺癌;例えば、進行性上皮性または初期腹膜癌等の、卵巣癌;子宮頸癌;胃癌;食道癌;例えば、頭部及び頚部の扁平上皮癌等の、頭部癌及び頚部癌;黒色腫;転移性神経内分泌腫瘍等の、神経内分泌癌;例えば、神経膠腫、未分化希突起グリオーマ、成人多形成グリア芽細胞腫、及び成人未分化星細胞腫等の、脳腫瘍;骨肉腫;ならびに軟部組織の肉腫が挙げられる。血液系腫瘍の例としては、急性骨髄性白血病(AML);加速期のCML及びCML急性転化期(CML−BP)等の、慢性骨髄性白血病(CML);急性リンパ性白血病(ALL);慢性リンパ球性白血病(CLL);ホジキン病(HD);濾胞性リンパ腫及びマントル細胞リンパ腫等の、非ホジキンリンパ腫(NHL);B細胞リンパ腫;T細胞リンパ腫;多発性骨髄腫(MM);ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;不応性貧血(RA)、環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)、(過剰芽細胞を伴う不応性貧血(RAEB)、及び白血病移行期を伴う不応性貧血(RAEB−T)等の、骨髄異形成症候群(MDS);ならびに骨髄増殖性症候群が挙げられる。EGFRキナーゼ活性がアップレギュレートする/無調節である、他の癌タイプは、Exp. Mol. Pathol., 2008, 84(2):79-89及びCrit. Rev. Oncol. Hematol., 1995, 19, 183に記載される。
【0100】
本発明の化合物は、細胞毒性薬、放射線治療薬、及び免疫療法薬からなる群より選択される治療剤と組み合わせて投与されてもよい。本発明のプロテインキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用するのに適する細胞毒性薬の例としては、以下に制限されないが、例えば、カペシタビン(capecitibine)、ゲムシタビン、5−フルオロウラシルまたは5−フルオロウラシル/ロイコボリン、フルダラビン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、及びメトトレキセート等の、代謝拮抗物質;例えば、エトポシド、テニポシド、カンプトセシン、トポテカン、イリノテカン、ドキソルビシン、及びダウノルビシン等の、トポイソメラーゼ阻害剤;例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン等の、ビンカアルカロイド;例えば、パクリタキセル及びドセタキセル等の、タキサン;例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン等の、白金剤(platinum agent);例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシンC、アドリアマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ドキソルビシン及びペグ化リポソームドキソルビシン等の、抗生物質;メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、イホスファミド、カルマスティン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、及びシクロホスファミド等の、アルキル化剤;例えば、CC−5013及びCC−4047等の、サリドマイド及び関連した類似体;例えば、メシル酸イマチニブ及びゲフィチニブ等の、プロテインチロシンキナーゼ阻害剤;例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、及びベバシズマブ等の、抗体;ミトキサントロン;デキサメタゾン;プレドニゾン;ならびにテモゾロマイドが挙げられる。
【0101】
本発明の方法を実施するために、上記薬剤組成物を、経口で、非経口で、吸入スプレーによって、局所的に、直腸内に、経鼻的に、口腔に、経膣的にまたは移植リザーバー(implanted reservoir)を介して投与できる。本明細書中で使用される、「非経口的」ということばは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内(intrasternal)、髄腔内、病巣内、及び頭蓋内注射または輸注技術を包含する。
【0102】
滅菌注射用組成物、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤(Tween 80等)および懸濁化剤を用いて当該分野において既知の技術に従って配合できる。滅菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口で許容できる希釈剤または溶剤における滅菌注射用溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオールにおける溶液であってもよい。使用できる許容できるベヒクルや溶剤の中には、マンニトール、水、リンガー溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌した固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来使用される(例えば、合成モノまたはジグリセリド)。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体等の、脂肪酸が注射剤の調製に使用でき、特にポリオキシエチレン化された型の、オリーブ油またはヒマシ油等の、天然の製薬上許容できる油もまた同様にして使用できる。また、これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤若しくは分散剤、またはカルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤を含んでもよい。ツィーン(Tween)もしくはスパン(Span)等の、他の一般的に使用される界面活性剤または製薬上許容できる固体、液体、または他の投与形態の製造に一般的に使用される他の同様の乳化剤若しくはバイオアベイラビリティ促進剤もまた、配合目的で使用されうる。
【0103】
経口投与用の組成物は、以下に制限されないが、カプセル、錠剤、エマルジョンならびに水性懸濁液、分散液および溶液などの経口投与が許容できる投与形態であってもよい。経口で使用される錠剤の場合には、一般的に使用される担体としては、ラクトース及びコーンスターチがある。ステアリン酸マグネシウム等の滑剤もまた一般的に添加される。カプセル形態での経口投与では、使用できる希釈剤としては、ラクトースや乾燥コーンスターチがある。水性懸濁液またはエマルジョンを経口投与する場合には、活性成分を乳化剤または懸濁化剤と組み合わせた油相中に懸濁または溶解することができる。必要であれば、特定の甘味剤、風味剤、または着色剤を添加してもよい。鼻エアロゾルまたは吸入用組成物は、製剤処方の分野で既知の技術に従って調製されうる。また、融合2環または3環化合物を含む組成物を、直腸投与用の座剤の形態で投与してもよい。
【0104】
薬剤組成物における担体は、製剤の活性成分と適合し(好ましくは、活性成分を安定化でき)、処置される患者に有害でないという意味で「許容でき」なければならない。例えば、融合2環または3環化合物とより可溶性な複合体を形成する、1以上の可溶化剤、またはより多くの可溶化剤を、活性のある化合物のデリバリーのための製薬賦形剤として使用してもよい。他の担体の例としては、コロイド酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびD&C Yellow # 10が挙げられる。
【0105】
適当なインビトロアッセイを用いて、本発明の融合2環または3環化合物のEGFRキナーゼの活性の阻害効果を予め評価してもよい。本化合物は、インビトロでのおよび/またはインビボでの癌の治療効果についてさらに試験されてもよい。例えば、化合物について、癌細胞の成長の阻害効果を試験してもよい(例えば、HCC827細胞の成長阻害アッセイ)し、または癌を有する動物(例えば、マウスモデル)に投与した後、その治療効果を評価してもよい。結果に基づいて、適当な投与量範囲および投与経路もまた決定できる。
【0106】
さらなる努力なしくとも、上記記載により本発明を適切に実施できると考えられる。したがって、下記実施例は、単に詳細に説明するものであり、何であれ、残りの開示部分を制限するものではないと、解されるべきである。本明細書中に列挙されたすべての公報は、全体を参考で本明細書中に引用される。
【実施例】
【0107】
実施例1:S−2−フェニル−2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ)−エタノール(化合物1)の合成
【0108】
【化45】

【0109】
2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン−3−イルシアナイド(段階a):無水エタノール(3ml)におけるシクロヘキサノン(1.18g)、マロンニトリル(0.66g)、及び硫黄(0.40g)の混合物に、トリエチルアミン(2mL)を添加した。16時間還流した後、この反応混合物を濃縮し、残渣を水及び酢酸エチルで分配した。有機層を濃縮して、未精製の化合物を、ヘキサン:酢酸エチル(4:1)の混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、標題の化合物(0.94g、44%)を得た。
【0110】
3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オン(段階b):2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン−3−イルシアナイド(0.9g)及びギ酸(10mL)の混合物に、0.1mLの濃HClを添加した。16時間還流した後、この反応混合物を冷却し、水(20mL)を添加した。沈殿物を濾過で集めて、水及びヘキサンでよく洗浄することによって、標題の化合物(0.8g、77%)を得た。 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.91 (s, 1H), 3.03-3.00 (m, 2H), 2.80-2.77 (m, 2H), 1.89-1.83 (m, 4H)。
【0111】
4−クロロ−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン(段階c):3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オン(0.8g)及びPOCl(10mL)の混合物を、55〜65℃で3時間加熱した。次に、水、さらに重炭酸ナトリウムを添加した。得られた混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮し、未精製の化合物を、ヘキサン:酢酸エチル(20:1)の混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、標題の化合物(0.52g、60%)を得た。 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.69 (s, 1H), 3.10-3.07 (m, 2H), 2.88-2.86 (m, 2H), 1.89-1.92 (m, 4H). LC-MS (ESI) m/z 225.3 (M+H)。
【0112】
S−2−フェニル−2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ)−エタノール(化合物1、段階d):n−ブタノール(1mL)における4−クロロ−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン(1g)及びS−2−アミノ−2−フェニル−エタノール(0.672g、1.1当量)の混合物を80℃で16時間加熱した。この反応混合物を濃縮し、残渣を水及びジクロロメタンで分配した。有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濃縮した。未精製の化合物を、ジクロロメタン:メタノール(30:1)の混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、標題の化合物(0.88g)を得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.20 (s, 1H), 7.25-7.36(m, 5H), 6.14 (d, 1H), 5.36 (dd, 1H, J = 9.6, 5.6 Hz), 3.93-4.02 (m, 2H), 2.81-2.99 (m, 2H), 2.74 (s, 2H), 1.80-1.96 (m, 4H). LC-MS (ESI) m/z 326.1 (M+H)。
【0113】
実施例2:化合物2〜8、17〜24、29、30、245、及び246の合成
化合物2〜8、17〜24、29、30、245、及び246を、実施例1に記載されるのと同様にして調製した。これらの化合物のH NMR及びMSデータを下記に示す。
【0114】
【化46】

【0115】
【化47】

【0116】
実施例3:1−[4−(2−ヒドロキシ−1−フェニル−エチルアミノ)−5,8−ジヒドロ−6H−9−チア−1,3,7−トリアザ−フルオレン−7−イル]−プロペノン(化合物12)の合成
【0117】
【化48】

【0118】
2−アミノ−4,7−ジヒドロ−5H−チエノ[2,3−c]ピリジン−3,6−ジカルボン酸6−tert−ブチルエステル3−エチルエステル(段階a) 無水エタノール(50mL)における4−オキソ−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(12.9g)、シアン酢酸エチル(7.345g)、及び硫黄(2.080g)の混合物に、トリエチルアミン(9mL)を添加した。16時間攪拌した後、沈殿物を濾過によって集め、エタノールで洗浄して、標題の化合物(18.7g、88%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 6.02 (s, 2H), 4.31 (s, 2H), 4.23 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 3.58 (t, 2H, J = 6.0 Hz), 2.72-2.80 (brs, 2H), 1.44 (s, 9H), 1.30 (t, 3H, J = 7.2 Hz). LC-MS (ESI) m/z 327.0 (M+H)。
【0119】
4−オキソ−3,5,6,8−テトラヒドロ−4H−9−チア−1,3,7−トリアザ−フルオレン−7−カルボン酸tert−ブチルエステル(段階b) DMF(100mL)における2−アミノ−4,7−ジヒドロ−5H−チエノ[2,3−c]ピリジン−3,6−ジカルボン酸6−tert−ブチルエステル3−エチルエステル(18.5g)及び酢酸ホルムアミジン(8.85g)の混合物を100℃で16時間加熱した。反応混合物を冷却し、濃縮した。残渣を水及び酢酸エチルで分配した。有機層を水で3回洗浄し、濃縮して、標題の化合物(15.8g、90%)を得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.88 (s, 1H), 4.56-4.62 (brs, 2H), 3.62-3.70 (brs, 2H), 3.02-3.08 (brs, 2H), 1.42 (s, 9H). LC-MS (ESI) m/z 308.1 (M+H)。
【0120】
4−クロロ−5,8−ジヒドロ−6H−9−チア−1,3,7−トリアザ−フルオレン−7−カルボン酸tert−ブチルエステル(段階c) 0℃のPOCl(30mL)及びトリエチルアミン(50mL)の混合物に、4−オキソ−3,5,6,8−テトラヒドロ−4H−9−チア−1,3,7−トリアザ−フルオレン−7−カルボン酸tert−ブチルエステル(10.0g)を添加した。この反応混合物を60℃で3時間加熱した。次に、水、さらには重炭酸ナトリウムを添加して、反応混合物を中和した。得られた混合物をジクロロメタンで抽出した。有機層を濃縮して、未精製の化合物を、ヘキサン:酢酸エチル(10:1)の混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、標題の化合物(3.1g、25%)を得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.70 (s, 1H), 4.69 (s, 2H), 3.74 (t, 2H, J = 5.6 Hz), 3.14-3.18 (brs, 2H), 1.46 (s, 9H). LC-MS (ESI) m/z 326.0 (M+H)。
【0121】
4−(2−ヒドロキシ−1−フェニル−エチルアミノ)−5,8−ジヒドロ−6H−9−チア−1,3,7−トリアザ−フルオレン−7−カルボン酸tert−ブチルエステル(化合物9、段階d) n−ブタノール(1mL)における4−クロロ−5,8−ジヒドロ−6H−9−チア−1,3,7−トリアザ−フルオレン−7−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.25g)及びS−2−アミノ−2−フェニル−エタノール(0.128g)の混合物を8時間還流した。この反応混合物を濃縮し、残渣を水及びジクロロメタンで分配した。有機層を濃縮し、未精製の化合物を、ジクロロメタン:メタノール(20:1)の混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製することによって、標題の化合物(0.309g、95%)を得た。 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.25 (s, 1H), 7.26-7.38 (m, 5H), 6.04 (d, 1H, J = 6.6 Hz), 5.36-5.43 (m, 1H), 4.62 (s, 2H), 3.97-4.02 (m, 2H), 3.72-3.81 (m, 2H), 2.90-3.08 (m, 2H), 1.46 (s, 9H). LC-MS (ESI) m/z 427.0 (M+H)。
【0122】
2−フェニル−2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−9−チア−1,3,7−トリアザ−フルオレン−4−イルアミノ)−エタノール(化合物11、段階e) 室温でジクロロメタン(2mL)における4−(2−ヒドロキシ−1−フェニル−エチルアミノ)−5,8−ジヒドロ−6H−9−チア−1,3,7−トリアザ−フルオレン−7−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.6g)の混合物に、TFA(1mL)を添加した。この反応混合物を4時間攪拌した後、重炭酸ナトリウム溶液をゆっくり加えることによって中和した。形成した沈殿物を濾過によって集め、水、次にジクロロメタンで洗浄して、標題の化合物(0.350g、76%)を得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.28 (s, 1H), 7.26-7.38 (m, 5H), 6.04 (d, 1H, J = 6.4 Hz), 5.38 (d, 1H, J = 4.8 Hz), 4.01 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 3.99 (d, 2H, J = 3.2 Hz), 3.20 (t, 2H, J = 4.4 Hz), 2.84-3.04 (m, 2H). LC-MS (ESI) m/z 327.1 (M+H)。
【0123】
1−[4−(2−ヒドロキシ−1−フェニル−エチルアミノ)−5,8−ジヒドロ−6H−9−チア−1,3,7−トリアザ−フルオレン−7−イル]−プロペノン(化合物12、段階f) 無水DMFにおけるアクリル酸(3.6mg)及びEDCI(9.4mg)の混合物を2時間攪拌した後、2−フェニル−2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−9−チア−1,3,7−トリアザ−フルオレン−4−イルアミノ)−エタノールを添加した。得られた混合物を16時間攪拌した後、水及び酢酸エチルで分配した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣を、ジクロロメタン:メタノール(5:1)を用いてシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、標題の化合物(8mg、44%)を得た。 1H NMR (300 MHz, CD3OD): δ 8.18 (s, 1H), 7.20-7.44 (m, 5H), 6.78-6.98 (m, 1H), 6.28 (d, 1H, J = 17.1 Hz), 5.78-5.84 (m, 1H), 5.39 (t, 1H, J = 5.1 Hz), 4.80-4.98 (m, 2H), 4.07 (t, 2H, J = 5.7 Hz), 3.82-3.98 (m, 2H), 3.20-3.38 (m, 2H). LC-MS (ESI) m/z 381.0 (M+H)。
【0124】
実施例4:化合物9〜11、13〜16、25〜28、および59〜68、75、106、107、154、176、178、180、181、183〜235、および327の合成
化合物9及び11の合成は、実施例3に記載した。化合物10、13〜16、25〜28、および59〜68、75、106、107、154、176、178、180、181、183〜235、および327を、実施例3に記載されるのと同様にして調製した。これらの化合物のH NMR及びMSデータを下記に示す。
【0125】
【化49】

【0126】
【化50】

【0127】
【化51】

【0128】
【化52】

【0129】
【化53】

【0130】
【化54】

【0131】
【化55】

【0132】
【化56】

【0133】
【化57】

【0134】
実施例5:S−2−(5,6−ジフェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ)−2−フェニル−エタノール(化合物31)の合成
【0135】
【化58】

【0136】
2−アミノ−4,5−ジフェニルフラン−3−カルボニトリル(段階a):ジエチルアミン(13.8g)を、0℃(内部温度は40℃を超えてはならない)で、DMF(30ml)におけるベンゾイン(10g)及びマロンニトリル(3.8g)の混合物に30分かけて滴下した。得られた混合物を室温で16時間攪拌した後、水(100mL)を添加した。得られた沈殿物を濾過し、十分量の水、次にヘキサンで洗浄し、乾燥した。固体をエタノールで再結晶化して、標題の化合物の黄褐色の固体生成物を得た(6g、49%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.47-7.34 (m, 8H), 7.28-7.18 (m, 2H), 4.94 (br, 2H). LC-MS (ESI) m/z 261.1 (M+H)。
【0137】
5,6−ジフェニルフロ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン(段階b):2−アミノ−4,5−ジフェニルフラン−3−カルボニトリル(2.0g)及びギ酸(24mL)の混合物を0℃に冷却し、無水酢酸(24mL)を滴下した。得られた混合物をさらに1時間攪拌した後、100℃で16時間加熱した。この反応混合物を冷却して、水を添加した(40mL)。沈殿物を濾過によって集め、水及びヘキサンでよく洗浄して、標題の化合物を得た(2.1g、95%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.94 (s, 1H), 7.56-7.52 (m, 4H), 7.46-7.43 (m, 3H), 7.32-7.28 (m, 3H), 7.22 (s, 1H). LC-MS (ESI) m/z 289.1 (M+H)。
【0138】
4−クロロ−5,6−ジフェニルフロ[2,3−d]ピリミジン(段階c):5,6−ジフェニルフロ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン(3g)及びPOCl(30mL)を55〜65℃で3時間加熱した。次に、水を、さらには重炭酸ナトリウムを添加した。得られた混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮して、未精製の化合物を、ヘキサン:酢酸エチル(95:5)の混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、標題の化合物を白色固体として得た(2g、63%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.77 (s, 1H), 7.61-7.58 (m, 2H), 7.52-7.46 (m, 5H), 7.35-7.32 (m, 3H). LC-MS (ESI) m/z 307.0 (M+H)。
【0139】
S−2−(5,6−ジフェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ)−2−フェニル−エタノール(化合物31、段階d):n−ブタノール(5mL)における4−クロロ−5,6−ジフェニルフロ[2,3−d]ピリミジン(0.160g)及びS−2−アミノ−2−フェニル−エタノール(0.137g、2当量)の混合物を80℃で16時間加熱した。この反応混合物を濃縮し、残渣を水及び酢酸エチルで分配した。有機層を濃縮し、未精製の化合物をジクロロメタン:メタノール(40:1)の混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、標題の化合物を得た(0.140g、69%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.31 (s, 1H), 7.50-7.47 (m, 2H), 7.45 (br s, 4H), 7.47-7.40 (m, 7H), 6.94 (m, 2H), 5.24(d, 1H, J = 5.6Hz), 5.16 (m, 1H), 3.72 (m, 2H). LC-MS (ESI) m/z 408.5 (M+H)。
【0140】
実施例6:S−N−(3−(4−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエチルアミノ)−6−フェニルフロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)フェニル)アクリルアミド(化合物236)の合成
【0141】
【化59】

【0142】
2−アミノ−5−フェニル−フラン−3−カルボニトリル(段階aから2):2を、2−アミノ−4,5−ジフェニルフラン−3−カルボニトリル(上記実施例5を参照)と同様にして、2−ブロモアセトフェノン(1)から38%の収率で調製した。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.50-7.47 (m, 2H), 7.39-7.33 (m, 2H), 7.27-7.25 (m, 1H), 6.54 (s, 1H), 4.86 (br, 2H). LCMS (ESI) m/z 185.0 (M+H)+
【0143】
6−フェニル−3H−フロ[2,3−d]ピリミジン−4−オン(段階bから3):3を、5,6−ジフェニルフロ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン(上記実施例5参照)と同様にして、2から80%の収率で調製した。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 9.00 (br, 1H), 8.36 (br, 1H), 7.67 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.44-7.38 (m, 2H), 7.32-7.25 (m, 1H), 7.10 (s, 1H). LCMS (ESI) m/z 235.0 (M+Na)+
【0144】
4−クロロ−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン(段階cから4):4を、4−クロロ−5,6−ジフェニルフロ[2,3−d]ピリミジン(上記実施例5参照)と同様にして、3から94%の収率で調製した。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.75 (s, 1H), 7.93-7.89 (m, 2H), 7.55-7.26 (m,3H), 7.09 (s, 1H). LCMS (ESI) m/z 231.0 (M+H)+
【0145】
5−ブロモ−4−クロロ−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン(段階dから5):N−ブロモコハク酸イミド(1.16g、6.50mmol)を、20mL DMFにおける4−クロロ−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン(4)(1.0g、4.33mmol)に少しずつ添加した。得られた混合物を室温で3時間攪拌した後、水(100mL)を添加した。得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、未精製の化合物を、酢酸エチル:n−ヘキサン(1:10)の混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、5を得た(1.14g、85%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.75 (s, 1H), 8.20-8.16 (m, 2H), 7.55-7.51 (m, 3H). LCMS (ESI) m/z 308.9 (M+H)+, 310.9 (M+2+H)+
【0146】
S−2−(5−ブロモ−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ)−2−フェニル−エタノール(段階eから6):n−ブタノール(5mL)における4−5−ブロモ−4−クロロ−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン(5)(0.2g;1当量)及び(S)−(+)−フェニルグリシノール(1.5当量)を、80℃で16時間加熱した。この反応混合物を濃縮し、残渣を水(50mL)及び酢酸エチル(3×50mL)で分配した。有機層を濃縮し、未精製の化合物を、ジクロロメタン:メタノール(40:1)の混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、2−(5−ブロモ−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ)−2−フェニル−エタノール(6)を69%の収率で得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.30 (s, 1H), 8.07-8.02 (m, 2H), 7.51-7.30 (m, 8H), 6.89 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 5.50-5.45 (m, 1H), 4.05 (d, J = 4.8 Hz, 2H), 3.39 (brs, 1H). LCMS (ESI) m/z 411.1 (M+H+)。
【0147】
S−2−[5−(4−ニトロ−フェニル)−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−2−フェニル−エタノール(段階fから7):6(410mg、1.0mmol)及びp−ニトロベンゼンボロン酸(195mg、1.2mmol)の混合物を、窒素雰囲気下でジオキサン(2.0mL)に溶解した。Pd(dppf)Cl(4.2mg、0.05mmol)及びNaCO溶液(2M、1.0mL)をこの混合物に加えて、窒素下で95℃で16時間加熱した。終了したら、この反応混合物を室温に冷却し、水を加え、酢酸エチルで抽出した(3×20mL)。有機層を合わせたものを、NaSOで乾燥し、真空下で濃縮し、残渣を、ヘキサン:酢酸エチル=1:1を用いてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、7を得た(346mg、77%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.41 (s, 1H), 8.29 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.67 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.50-7.47 (m , 2H), 7.34-7.26 (m, 6H), 7.09-7.05 (m, 2H), 5.23 (dd, J = 10.2, 5.4 Hz, 1H), 5.16 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 3.88-3.84 (m, 2H), 3.31 (t, J = 5.4 Hz, 1H). LC-MS (ESI) m/z 453.1 (M+H)+
【0148】
S−2−[5−(3−ニトロ−フェニル)−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−2−フェニル−エタノール(段階fから8):8を、m−ニトロベンゼンボロン酸を用いて7と同様にして、6から75%の収率で合成した。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.41 (s, 2H), 8.30 (ddd, J = 8.1, 1.2, 1.2 Hz, 1H), 7.82 (dd, J = 7.8, 1.2 Hz, 1H), 7.65 (dd, J = 8.1, 7.8 Hz, 1H), 7.50-7.47 (m , 2H), 7.34-7.26 (m, 6H), 7.11-7.07 (m, 2H), 5.27-5.20 (m, 2H), 3.88-3.84 (m, 2H), 3.31 (t, J = 5.4 Hz, 1H). LC-MS (ESI) m/z 453.1 (M+H)+
【0149】
S−N−{4−[4−(2−ヒドロキシ−1−フェニル−エチルアミノ)−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル]−フェニル}−アクリルアミド(段階gから化合物118):EtOH(3mL)における7(136mg、0.3mmol)及び5% Pd/C(10mg)の混合物を大気圧で16時間水素化した。この反応混合物をセライトで濾過し、溶媒を真空下で除去して、2−[5−(4−アミノ−フェニル)−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−2−フェニル−エタノールを得た。エーテル(3mL)の溶液における上記化合物及びピリジン(0.05mL、0.6mmol)の混合物に、塩化アクリロイル(0.03mL、0.33mmol)を添加し、この反応混合物を室温で16時間攪拌した。水を加え、酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。有機層を合わせたものを、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮し、残渣を、ヘキサン:酢酸エチル=2:3を用いてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物118を得た(29mg、20%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.33 (s, 1H), 8.00 (brs, 1H), 7.80-7.71 (m, 2H), 7.57 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.47-7.44 (m, 3H), 7.30-7.19 (m, 5H), 7.07 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.50 (d, J = 16.8 Hz, 1H), 6.32 (dd, J = 16.8, 10.2 Hz, 1H), 5.83 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 5.45 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 5.20-5.18 (m, 1H), 3.86-3.73 (m, 2H). LCMS (ESI) m/z 477.1 (M+H)。
【0150】
S−N−{3−[4−(2−ヒドロキシ−1−フェニル−エチルアミノ)−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル]−フェニル}−アクリルアミド(段階gから化合物236):化合物236を、化合物118と同様にして、8から25%の収率で合成した。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.58 (brs, 1H), 8.27 (s, 1H), 7.79-7.64 (m, 2H), 7.49-7.46 (m, 2H), 7.40 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.27-7.20 (m, 8H), 7.05-7.02 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 6.46 (d, J = 16.8Hz, 1H), 6.28 (dd, J = 16.8, 10.2 Hz, 1H), 5.73 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 5.64 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 5.30 (brs, 1H), 3.86 (dd, J = 11.4, 2.7 Hz, 1H), 3.69 (dd, J = 11.4, 6.9 Hz, 1H). HRMS (EI) calcd. for C29H24N4O3 476.1848, found 476.1843。
【0151】
実施例7:(S,E)−4−(ジメチルアミノ)−N−(3−(4−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエチルアミノ)−6−フェニルフロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)フェニル)ブト−2−エンアミド(化合物243)の合成
【0152】
【化60】

【0153】
MeOH(10mL)における8(1g、0.002mmol、上記実施例6参照)及び5% Pd/C(10mg)の混合物を、3気圧で8時間水素化した。この反応混合物をセライトで濾過し、溶剤を真空下で除去して、S−2−[5−(3−アミノ−フェニル)−6−フェニル−フロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−2−フェニル−エタノールを得た。DCM(5mL)における上記化合物の混合物に、4−ブロモクロトン酸(422mg、2.55mmol)、EDCI(490mg、2.55mmol)を加え、この反応混合物を8時間攪拌した。次に、N,N−ジメチルアミン(1.18ml、23.2mmol)を添加し、室温で8時間攪拌し続けた。水をこの反応混合物に加え、ジクロロメタンで抽出した(3×20mL)。有機層を合わせたものをMgSOで乾燥し、真空下で濃縮し、残渣を、ジクロロメタン:メタノール(20:1)を用いてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物243(370mg、30%)を得た。
【0154】
【化61】

【0155】
実施例8:化合物32〜58、237〜242、244、及び247の合成
化合物32〜58、237〜242、244、及び247の合成を、実施例5、6、または7に記載されるのと同様にして、調製した。これらの化合物のH NMR及びMSデータを以下に列挙する。
【0156】
【化62】

【0157】
【化63】

【0158】
【化64】

【0159】
【化65】

【0160】
実施例9:EGFRキナーゼ活性の阻害
EGFRキナーゼアッセイを、下記成分を含む混合物50μlを用いて37℃で60分間、96ウェルプレート中で行った:50ng GST−EGFR−KDWTタンパク質、25mM Tris−HCl、pH 7.5、4mM MnCl、2mM DTT、10mM MgCl、0.1mg/ml ウシ血清アルブミン、10μM poly(Glu,Tyr) 4:1、0.5mM NaVO、5μM ATP及び試験化合物。インキュベーション後、50μl キナーゼ−Glo Plus Reagent(Promega)を加え、この混合物を25℃で20分間さらにインキュベートした。各反応混合物の70μlのアリコートを黒色のマイクロタイタープレートに移し、Wallac Vector 1420 マルチラベルカウンター(multilabel counter)(PerkinElmer)で、発光を測定した。
【0161】
GST−EGFR−KDWTタンパク質の発現および精製をAnalytical Biochemistry 377 (2008) 89-94に記載されるのと同様にして行った。
【0162】
化合物1〜68、75、106、107、118、154、176、178、180、181、183〜247、及び327を、このアッセイで試験した。予想されなかったことに、化合物1、7、8、15、18、20、22、23、31、35、38〜43、45、61、154、181、188、192、204、206、238〜240、242、及び247は、101nM〜0.9μMのIC50値(即ち、EGFRの50%の活性が阻害される試験化合物の濃度)を示し;化合物36、37、63、118、186、220、230、及び244は、60〜100nMのIC50値を示し;さらに、化合物12、50、53、62、64〜67、75、106、107、176、178、185、187、190、191、193〜195、198〜200、202、203、205、208〜219、223、224、226〜229、231〜233、236、241、243、245、246、及び327は、59nM未満のIC50値を示した。
【0163】
実施例10:インビトロでの抗癌活性
HCC827細胞の生存能を、MTSアッセイ(Promega, Madison, WI, USA)によって試験した。10% FBSを含むRPMI1640培地100μlにおける1000個のHCC827細胞を、96ウェルプレートの各ウェル中に播種した。試験化合物と共に96時間インキュベートした後、細胞を、5% COの加湿したインキュベーター中で、37℃で2時間、96ウェルプレートの各ウェル中で、さらに20μlのMTS/PMS混合物(MTS/PMS比:20:1)と共にインキュベートして、生存している細胞をテトラゾリウム塩(MTS)をホルマザン(formazan)に変化させた。PerkinElmer Victor2プレートリーダー(PerkinElmer, Shelton, CT, USA)を用いて490nmでの吸光度を測定することによって、生存細胞の数を示す、ホルマザンの量/濃度を測定した。
【0164】
実施例9の試験結果により、化合物1、3〜5、7〜8、12、15、23、31、35、37〜51、53、54、56、62〜68、75、106、107、118、176、178、181、185〜188、190〜195、198、200、202〜206、208〜219、223、224、226〜232、236、238、239、241、及び243〜246のみを、本アッセイで試験した。予想されなかったことに、化合物3、4、15、23、31、40、42、44、46、47、54、56、118、186、188、193、206、及び244は、301nM〜999nMのIC50値(即ち、50%細胞の死を引き起こす試験化合物の濃度)を示し;化合物1、35、37〜39、41、63、202、及び245は、100nM〜300nMのIC50値を示し;さらに、化合物12、62、64〜68、75、106、107、176、178、181、185、187、190〜192、194、195、198、200、203〜205、及び208〜219、223、224、226〜232、236、238、239、241、243、及び246は、1nM〜99nMのIC50値を示した。
【0165】
実施例11:二重変異EGFRキナーゼアッセイ
EGFRキナーゼ触媒ドメイン(catalytic domain)(696〜1022の残基およびL858R/T790Mを有する)を含むGST−EGFR−KDL858RT/790Mを、pBac−PAK8−GST−EGFR−KDL858RT/790Mプラスミドを有するバキュロウイルスでトランスフェクトしたSf9昆虫細胞中で発現させた。GST−EGFR−KDL858RT/790Mタンパク質の発現及び精製を、先に報告された(Analytical Biochemistry 377 (2008) 89-94)のと同様にして行った。
【0166】
EGFRL858RT790Mキナーゼ−Gloアッセイを、下記成分を含む最終容積50μl中で37℃で60分間、96ウェルプレート中で行った:200ng GST−EGFR−KDL858R/T790Mタンパク質、25mM HEPES、pH 7.4、4mM MnCl、2mM DTT、10mM MgCl、0.1mg/ml ウシ血清アルブミン、10μM poly(Glu,Tyr) 4:1、0.5mM NaVO、1μM ATP、及び試験化合物。インキュベーション後、50μL キナーゼ−Glo Plus Reagent(Promega)を加えて、この混合物を25℃で20分間インキュベートした。各反応混合物の70μLのアリコートを黒色のマイクロタイタープレートに移し、Wallac Vector 1420 マルチラベルカウンター(multilabel counter) (PerkinElmer)で、発光を測定した。
【0167】
化合物9、11〜16、36、59〜68、75、106、107、118、154、176、178、180、181、及び183〜236、238〜241、243、245〜247、及び327を本アッセイで試験した。予想されなかったことに、化合物63〜67、75、106、178、188、190、191、193、198、203、205、211、215、228、232、239、及び241は、500nM〜2.5μMのIC50値(即ち、変異EGFRの50%の活性が阻害される試験化合物の濃度)を示し;さらに、化合物12、62、176、185、187、195、200、202、210、223、226、227、236、240、及び243は、10nM〜499nMのIC50値を示した。
【0168】
実施例12:インビボでの抗癌活性
Cancer Research 2004, 64, 4621-4628に記載されるのと同様にして、肺癌異種移植マウス(HCC827を注射)を用いて、本発明の化合物のインビボでの有効性を評価した。
【0169】
HCC827細胞をヌードマウスの皮下に注射して、肺癌異種移植マウスを形成した。約100mmの大きさの腫瘍を有するマウスを、ランダムに2群に分けた:ベヒクルコントロール群(10匹マウス)、および処置群(21匹マウス)。これらの処置マウスのうち、21匹に、化合物62を、1日当たり5mg/kg及び15mg/kgの投与量で、尾静脈を介した静脈内注射により、2週連続で5日/週で投与した(1〜5日および8〜12日)。
【0170】
予想されなかったことに、5及び15mg/kgの投与量で、化合物62は、有意に(p<0.05)腫瘍の成長を抑制したことから、インビボでの抗癌活性の可能性が示唆される。この化合物で処置すると、腫瘍の大きさは、処置してから22日目の観察期間終了時に、ベヒクルコントロールの39%(5mg/kg)または23%(15mg/kg)になった。
【0171】
他の実施形態
本明細書中に開示されるすべての特徴は、いずれの組み合わせで組み合わせてもよい。本明細書中に開示される各特徴は、同じ、等価の、または同様の目的を果たす代わりの特徴で置換されてもよい。ゆえに、特記しない限り、開示される各特徴は、包括的な一連の等価のまたは同様の特徴の一例でしかない。
【0172】
上記説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認でき、本発明の概念および範囲から逸脱することなく、本発明を様々に変更したり修飾したりして、様々な用法や疾患に適用できる。ゆえに、他の実施形態もまた、以下の特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

ただし、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;
Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;
Aは、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり;
Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに
環Cは、下記:
【化2】

であり、この際、pは、0、1、または2であり、qは、1または2であり、Zは、O、S、またはNHであり、Wは、CHまたはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、またはSOであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、ならびにR、R、R、R、R10、およびR11のそれぞれは、独立して、H、アルキル、またはハロゲンである、
の化合物。
【請求項2】
Wは、NRであり、この際、Rは、SO
【化3】

であり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、必要であればアルキルアミノで置換されてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、またはCHNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、ならびにRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Bはフェニルであり、nは0である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
mは1であり、およびAはORであり、この際、RはH、アリール、ヘテロアリール、または必要であればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3アルキルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
XはNであり、YはNHであり、およびZはSである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
AはC(O)ORであり、およびmは0である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
WはCHである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Wは、NRであり、この際、Rは、SO
【化4】

であり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、必要であればアルキルアミノで置換されてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、またはCHNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、およびRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物は、化合物12、62、210、または249である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
下記式(I):
【化5】

ただし、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;
Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;
Aは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり;
Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに
環Cは、下記:
【化6】

であり、この際、R’およびR”のそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OR、ORO、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、Zは、OまたはNHであり、この際、R’およびR”の少なくとも一方は、Hであり、ならびにWは、NまたはCRであり、この際、Rは、アルケニル、アルキニル、OR、ORO、若しくはNRC(O)Rで置換されるアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRである、
の化合物。
【請求項11】
R’は、
【化7】

であり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、またはCHNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、ならびにRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
R’およびR”のそれぞれは、独立して、ORである、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
Bはフェニルであり、nは0である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
mは1であり、およびAはORであり、この際、RはH、アリール、ヘテロアリール、または必要であればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3アルキルである、請求項10〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
AはC(O)ORであり、およびmは0である、請求項10〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
XはNであり、YはNHであり、およびZはOである、請求項10〜15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
WはCRであり、この際、Rはハロゲンである、請求項10〜16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
前記化合物は化合物236または243である、請求項10に記載の化合物。
【請求項19】
下記式(I):
【化8】

ただし、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;
Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;
Aは、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり;
Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに
環Cは、
【化9】

であり、この際、R’およびR”のそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OR、ORO、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、Zは、OまたはNHであり、ならびにWは、NまたはCRであり、この際、Rは、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRである、
の化合物。
【請求項20】
下記式(I):
【化10】

ただし、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;
Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;
XがNである際には、Aは、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、ならびにXがCRである際には、Aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり;
Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに
環Cは、
【化11】

であり、この際、R’およびR”のそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OR、ORO、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、Zは、Sであり、ならびにWはNまたはCRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRである、
の化合物。
【請求項21】
mは1であり、およびAはORであり、この際、RはH、アリール、ヘテロアリール、または必要であればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3アルキルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記化合物は化合物321である、請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
下記式(I):
【化12】

ただし、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;
Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;
Aは、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり;
Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに
環Cは、
【化13】

であり、この際、R’およびR”のそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ニトロ、シアノ、OR、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、R’およびR”の少なくとも一方はNRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、またはNHSOである、
の化合物。
【請求項24】
R’は、
【化14】

この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、またはCHNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、ならびにRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルである、
である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
Bはフェニルであり、およびnは0である、請求項23または24に記載の化合物。
【請求項26】
AはC(O)ORであり、およびmは0である、請求項23〜25のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
mは1であり、およびAはORであり、この際、RはH、アリール、ヘテロアリール、または必要であればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3アルキルである、請求項23〜25のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
前記化合物は、化合物133、147、または271である、請求項23に記載の化合物。
【請求項29】
下記式(I):
【化15】

ただし、Xは、NまたはCRであり、この際、Rは、CN、CONH、ハロゲン、またはHであり;
Yは、O、S、またはNRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルであり;
XがNである際には、Aは、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、およびXがCRである際には、Aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、OR、OC(O)R、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR、NHC(O)R、NHC(O)NR、NHC(S)R、NHC(O)OR、SO、SO、またはSONRであり;
Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
mおよびnのそれぞれは、独立して、0、1、または2であり;ならびに
環Cは、
【化16】

であり、この際、R’は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OR、ORO、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、Zは、OまたはSであり、ならびにWは、NまたはCRであり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ハロゲン、ニトロ、C(O)OR、C(O)NR、NRC(O)R、NHC(O)NR、NRC(S)R、NHSO、またはNRである、
の化合物。
【請求項30】
mは1であり、およびAはORであり、この際、RはH、アリール、ヘテロアリール、または必要であればアリール若しくはヘテロアリールで置換されてもよいC1−3 アルキルである、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
R’は、
【化17】

であり、この際、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、またはCHNRであり、この際、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、若しくはヘテロシクロアルケニルであり、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、若しくはヘテロアリールであり、ならびにRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルである、請求項29または30に記載の化合物。
【請求項32】
前記化合物は、化合物286または315である、請求項29に記載の化合物。
【請求項33】
前記化合物は、下記式(II):
【化18】

を有する、請求項1〜32のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
癌を治療するための請求項1〜33のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項35】
癌の治療のための薬剤の製造における請求項1〜33のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項36】
請求項1〜33のいずれか1項に記載の化合物および製薬上許容できる担体を含む、薬剤組成物。
【請求項37】
EGFRまたはERBB2キナーゼを発現する細胞を、有効量の請求項1〜33のいずれか1項に記載の化合物と接触させることを有する、EGFRまたはERBB2キナーゼ活性の阻害方法。

【公表番号】特表2012−508252(P2012−508252A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535715(P2011−535715)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/063684
【国際公開番号】WO2010/054285
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(509093370)ナショナル ヘルス リサーチ インスティテューツ (6)
【Fターム(参考)】