説明

テープ形状測定装置

【課題】 簡易な構成で、テープになるべく余分な力を付与せずに、湾曲、幅変動などのテープ形状を測定可能とするテープ形状測定装置を提供する。
【解決手段】 磁気テープMTの形状を測定するテープ形状測定装置S1であって、磁気テープMTを吸着するため、帯電可能かつ平坦な吸着面10aを有する吸着台10と、磁気テープMTと吸着面10aとの間で吸着面10aに沿って磁気テープMTの長手方向にスライド自在であり、磁気テープMTを吸着面10aから離間させて磁気テープMTの吸着を案内する案内部材21と、吸着した磁気テープMTを押圧し、磁気テープMTと吸着面10aとの間の空気を押し出す空気押出手段30と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープなどのテープの形状を測定するテープ形状測定装置に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気テープは、高記録密度化に伴って、そのトラック幅が著しく狭くなる傾向にある。これにより、磁気テープの幅方向の振れが大きくなると、トラッキングエラーが発生しやすくなる。このトラッキングエラーが発生する一要因には、磁気テープの湾曲や幅変動が挙げられる。したがって、磁気テープの湾曲や幅変動を正確に測定する装置、方法の開発が望まれている。
【0003】
このような磁気テープの湾曲を測定する従来の第1の方法としては、所定間隔で配置された2つのローラ上に磁気テープを配置すると共に、磁気テープの両端に錘を固定して、その長手方向に張力を付与し、この張力が付与された状態のまま、所定の基準線からエッジまでの距離を測定することで湾曲を求める方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、第2の方法としては、傾斜した測定台に磁気テープを配置した後、磁気テープの一部を半円状に撓ませ、その撓ませた部分の上側から、測定用ローラを自重により転動させることで、磁気テープを測定台に押し伸ばし、押し伸ばした磁気テープのエッジの高さから湾曲を測定する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、第3の方法としては、2つの基準ガイドの中間に傾斜ガイドを設け、湾曲によって変化する磁気テープの走行位置を検出することで、湾曲を測定する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平11−37704号公報(段落番号0023〜0056、図1)
【特許文献2】特開平11−339650号公報(段落番号0015〜0032、図1)
【特許文献3】特開2002−267437号公報(段落番号0019〜0025、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、無張力での測定が不可能であり、また、平面上に磁気テープが密着せず、エッジがカールし、測定値がばらつく場合があった。
【0007】
特許文献2記載された方法では、測定用ローラの転動速度が、測定台の上部と下部で変化するため、磁気テープを押し伸ばす条件が長手方向において一定とならない場合や、人力により磁気テープを撓ませるため、その撓み量が一定でなく、測定値にばらつきが生じる場合があった。また、磁気テープを押し伸ばした後に、磁気テープを測定台に吸着させる手段がないため、押し伸ばした後に磁気テープがカールし、エッジまたは中央部が浮き上がり、測定値がばらつく場合があった。
【0008】
特許文献3に記載された方法では、磁気テープを走行させた状態で測定を行うため、無張力での磁気テープの形状を測定することは不可能であった。また、測定データに、ガイドの回転によるノイズが含まれてしまい、正確に測定できない場合があった。
【0009】
そこで、本発明は、簡易な構成で、テープになるべく余分な力を付与せずに、湾曲、幅変動などのテープ形状を測定可能とするテープ形状測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、第1の発明は、テープの形状を測定するテープ形状測定装置であって、前記テープを吸着するため、帯電可能かつ平坦な吸着面を有する吸着台と、前記テープと前記吸着面との間で前記吸着面に沿って前記テープの長手方向にスライド自在であり、前記テープを前記吸着面から離間させて前記テープの吸着を案内する案内部材と、吸着したテープを押圧し、前記テープと前記吸着面との間の空気を押し出す空気押出手段と、を備えたことを特徴とするテープ形状測定装置である。
【0011】
このようなテープ形状測定装置によれば、吸着台の吸着面にテープを配置し、配置されたテープと吸着面との間で、案内部材を吸着面に沿って、テープの長手方向にスライドさせることで、テープを吸着面から、一旦、離間させた後、張力などの余分な力が付与されない状態で、テープを吸着面に案内することができる。そして、吸着面を適宜に帯電させることで、吸着面に案内されたテープを、吸着面に吸着することができ、カールなどの発生を防止することができる。また、空気押出手段が、吸着したテープを押圧することによって、テープと吸着面との間の空気が押し出されて、テープは吸着面に密着した状態となる。
したがって、このような簡易な構成で、なるべく余分な力を付与されない状態で吸着面に吸着したテープを、適宜な測定方法で測定することによって、テープの湾曲などの形状を正確に測定することができる。
【0012】
第2の発明は、前記案内部材は、前記テープ側に凸状の案内面を有することを特徴とする第1の発明に記載のテープ形状測定装置である。
【0013】
このようなテープ形状測定装置によれば、案内部材の凸状の案内面により、テープを吸着面に緩やかに案内することができる。
【0014】
第3の発明は、前記案内部材を前記吸着面に沿って、所定速度でスライド駆動させるスライド駆動手段を、さらに備えたことを特徴とする第1の発明または第2の発明に記載のテープ形状測定装置である。
【0015】
このようなテープ形状測定装置によれば、スライド駆動手段により、案内部材を所定速度でスライド駆動することができる。
【0016】
第4の発明は、前記吸着台は、前記案内部材が通過した後方で、前記吸着面が順次帯電し、当該帯電した吸着面に前記テープが吸着されるように構成されたことを特徴とする第1の発明から第3の発明のいずれかに記載のテープ形状測定装置である。
【0017】
このようなテープ形状測定装置によれば、案内部材が通過した後方で、吸着面が順次に帯電し、案内されたテープを順次に吸着することができる。
【0018】
第5の発明は、前記空気押出手段は、前記テープに空気を吹き付けるノズルを備えたことを特徴とする第1の発明から第4の発明のいずれかに記載のテープ形状測定装置である。
【0019】
このようなテープ形状測定装置によれば、ノズルからテープに空気を吹き付けることにより、テープに損傷を与えずに、テープを押圧し、テープと吸着面との間の空気を押し出すことができる。
【0020】
第6の発明は、前記空気押出手段は、前記テープ上を転動するローラを備えたことを特徴とする第1の発明から第4の発明のいずれかに記載のテープ形状測定装置である。
【0021】
このようなテープ形状測定装置によれば、ローラによりテープを直接押圧して、空気を確実に押し出すことができる。
【0022】
第7の発明は、前記空気押出手段による前記テープの押圧位置と、前記案内部材との相対位置を保持する相対位置保持手段を、さらに備えたことを特徴とする第1の発明から第6の発明のいずれかに記載のテープ形状測定装置である。
【0023】
このようなテープ形状測定装置によれば、相対位置保持手段により、空気押出手段による押圧位置と、案内部材との相対位置関係は所定に保持される。すなわち、案内部材がスライドしても、相対位置保持手段により、案内されるテープの押圧位置は、所定に保持される。したがって、テープの長手方向において、空気押出手段により、テープを同様に押圧することができる。
【0024】
第8の発明は、前記吸着台は、光が透過可能な透明部を有し、当該透明部に光を照射することで、前記吸着台に吸着した前記テープの形状を光学的に測定する光学的測定手段を、さらに備えたことを特徴とする第1の発明から第7の発明のいずれかに記載のテープ形状測定装置である。
【0025】
このようなテープ形状測定装置によれば、光学的測定手段により、吸着台の透明部に光を照射し、透明部を通過した光を、適宜な受光器で受光することによって、吸着したテープの形状を測定することができる。
【0026】
第9の発明は、前記吸着台に吸着した前記テープの形状を測定するための、二次元変位センサまたはCCDラインセンサを、さらに備えたことを特徴とする第1の発明から第7の発明のいずれかに記載のテープ形状測定装置である。
【0027】
このようなテープ形状測定装置によれば、二次元変位センサまたはCCDラインセンサにより、吸着したテープの湾曲値、幅変動、湾曲変動量などの形状を測定することができる。
【0028】
第10の発明は、前記テープの形状の測定後に、前記吸着台および前記テープが帯びた静電気を除電する除電手段を、さらに備えたことを特徴とする第1の発明から第9の発明のいずれかに記載のテープ形状測定装置である。
【0029】
このようなテープ形状測定装置によれば、除電手段により、吸着台およびテープが帯びた静電気を除電することができる。したがって、例えば、吸着台の帯電による予期しないテープの吸着に基づく測定値のばらつきを防止することができる。
【0030】
第11の発明は、前記吸着面に沿って、前記テープの走行・停止を行うテープ走行手段を、さらに備えたことを特徴とする第1の発明から第10の発明のいずれかに記載のテープ形状測定装置である。
【0031】
このようなテープ形状測定装置によれば、テープ走行手段により、テープを所定に走行・停止させることで、連続的にテープの形状を測定することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、簡易な構成で、テープになるべく余分な力を付与せずに、湾曲、幅変動などのテープ形状を測定可能とするテープ形状測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0034】
≪第1実施形態≫
第1実施形態に係るテープ形状測定装置について、図1から図5を参照して説明する。参照する図面において、図1は、第1実施形態に係るテープ形状測定装置の構成を模式的に示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係るテープ形状測定装置の側面図であり、(a)は吸着初期状態を示し、(b)は吸着後期状態を示す。図3は、第1実施形態に係る光学的測定手段による測定状況を示す斜視図である。図4は、第1実施形態に係る光学的測定手段による測定方法を示す平面図である。図5は、第1実施形態に係る除電バーによる除電状況を示す平面図である。
なお、作図の都合上、図1において、図3に示す光学的測定手段を省略している。
【0035】
<テープ形状測定装置の構成>
図1に示すように、第1実施形態に係るテープ形状測定装置S1は、測定対象を磁気テープMTとし、この磁気テープMTを静電吸着台10に吸着させた状態で、その形状(湾曲値)を測定する装置である。テープ形状測定装置S1は、主として、静電吸着台10と、案内部材21と、空気押出手段30と、案内部材・ノズルスライド駆動手段40(以下、スライド駆動手段40とする)と、光学的測定手段50A(図3参照)と、除電バー61(除電手段)と、磁気テープ走行手段70とを備えて構成されている。
ただし、本発明に係る測定対象は磁気テープMTに限定されず、テープ状(長尺の帯状体)であればどのようなものであってもよい。
【0036】
[静電吸着台]
静電吸着台10は、その上側に、平坦な吸着面10a(図2(a)参照)を有しており、この吸着面10aに静電気を帯電させて、磁気テープMTを好適に吸着するための台である。図2(a)に示すように、静電吸着台10は、複数(第1実施形態ではわかりやすくするため6組)の電極対11A、11B、11C、11D、11E、11Fと、3つの透明部13A、13B、13Cとを有している(図3参照)。
なお、電極対11A〜11Fを構成するプラス電極とマイナス電極との間隔や、隣り合う電極対11A〜11Fの間隔は、静電吸着台10に印加する電圧に基づいて設定される。具体的には、例えば、500V〜3KVの電圧を印加する場合、前記プラス電極とマイナス電極との間隔、隣り合う電極の間隔は、0.5〜5.0mmに設定される。
【0037】
(電極対)
電極対11A〜11Fは、送りリールR1側から巻きリールR2側に向かって、つまり、磁気テープMTの走行方向に沿って、電極対11A、11B、11C、11D、11E、11Fの順で、その一部が吸着面10aに露出する状態で、静電吸着台10に埋設されている。
【0038】
電極対11A〜11Fは、スイッチなどを介して電源(ともに図示しない)にそれぞれ接続している。これらスイッチは、磁気テープMTの長手方向における案内部材21の位置を検出するセンサ(図示しない)に接続しており、案内部材21が通過した後方の電極対11A〜11Fに対応するスイッチが順次にオンとなり、案内部材21の後方(送りリールR1側)で、吸着面10aが順次に帯電可能となっている。すなわち、案内部材21が通過した後方で、磁気テープMTが順次に吸着面10aに吸着されるようになっている(図2(b)参照)。
なお、図2(a)、(b)において、「+、−」を描いた電極対11A〜11Fは、前記スイッチがオンとなった状態を示す。
【0039】
(透明部)
透明部13A、13B、13Cは、光学的測定手段50Aで、磁気テープMTのエッジを測定する位置に配置している。具体的には、第1実施形態では、透明部13Aは電極対11Aと電極対11Bとの間に、透明部13Bは電極対11Cと電極対11Dとの間に、透明部13Cは電極対11Eと電極対11Fとの間に配置している。
また、透明部13A〜13Cは、少なくとも後記する基準線AC(図4参照)を跨ぐ幅を有している。
さらに、透明部13A〜13Cは、後記する光学的測定手段50Aのレーザ発生器51から照射されるレーザL1(図3参照)が通過可能な材料から形成されている。このような材料としては、例えば、ガラスや、ポリプロピレン、アクリルなどの樹脂などが挙げられる。
したがって、磁気テープMTが吸着面10aに吸着した状態で、透明部13A〜13CにレーザL1を照射し、静電吸着台10の下方で、透過したレーザL1を受光することで、磁気テープMTのエッジの位置を測定可能となっている。
【0040】
このような透明部13A〜13Cは、静電吸着台10を厚さ方向に打ち抜き、この打ち抜いた部分に、前記材料からなる透明部材が吸着面10aが平坦となるように嵌め込まれることで構成されている。したがって、測定位置に対応して、例えば、幅方向に単にスリット形成した場合と比べて、磁気テープMTのエッジが前記スリットに落ち込み、測定誤差が発生することを防止可能となっている。
【0041】
[案内部材]
案内部材21は、静電吸着台10に配置(載置)される磁気テープMTと吸着面10aとの間で、磁気テープMTの長手方向にスライド自在であり、磁気テープMTを一旦、吸着面10aから離間させた後、再び吸着面10aに磁気テープMTを案内するための部材である。このような案内部材21により、磁気テープMTに張力などの余分な力を与えずに、また、シワなどが発生しにくい状態で、磁気テープMTを吸着面10aに良好に案内可能となっており、前記余分な力などが付与されにくい状態で、磁気テープMTを吸着面10aに吸着可能となっている。
【0042】
第1実施形態に係る案内部材21は、磁気テープMTの幅方向の側面視が翼状を呈しており、その上側(磁気テープMT側)に案内面21aを有している(図2(a)参照)。すなわち、案内面21aは、側面視で上側に凸であり、その頂部がやや後側(送りリールR1側)に寄った曲面となっている。
したがって、案内部材21を前側(巻きリールR2側)にスライドさせることで、磁気テープMTを、一旦、案内部材21の前端と前記頂部との間で吸着面10aから緩やかに離間させた後に、前記頂部と案内部材21の後端との間で吸着面10aに磁気テープMTを緩やかに案内可能となっている。
【0043】
そして、案内部材21は、後記するスライド駆動手段40のアーム41(図1参照)により、吸着面10aに対して所定高さ(Δh1)で支持されている。また、案内部材21は、スライド駆動手段40が駆動することで、前記所定高さ(Δh1)を維持したまま、吸着面10aに沿ってスライド駆動可能となっている。なお、第1実施形態における前記所定高さ(Δh1)は、吸着面10aと、案内面21aの後端との間の距離であり、0.5〜15mmに設定されている。
【0044】
[空気押出手段]
空気押出手段30は、静電吸着台10に吸着した磁気テープMTの上面に空気を吹き付けて押圧し、磁気テープMTの下面や吸着面10aに同伴し、磁気テープMTと吸着面10aとの間に巻き込まれた(挟まれた)空気を押し出す手段である。すなわち、第1実施形態に係る空気押出手段30は、磁気テープMTに対して非接触式である。
【0045】
空気押出手段30は、主として、磁気テープMTに吹き付ける空気を吹き出すノズル31と、このノズル31にホース32を介して接続した空気供給ポンプ(図示しない)などを備えて構成されている。ノズル31は、磁気テープMTの幅に対応したスリット状の空気吹き出し口を有しており、磁気テープMTを幅方向において、均等に押圧できるようになっている。
【0046】
また、ノズル31は、後記するスライド駆動手段40のアーム41に回動自在に支持されており(吹き付け位置調整機構)、ノズル31を所定位置に回動させて、空気の吹き付け位置を調整可能となっている。なお、磁気テープMTへの吹き付け位置は、静電吸着した直後の磁気テープMTの略上面となるように調整されることが好ましい。
【0047】
さらに、ノズル31は前記したように、アーム41に支持されているため、案内部材21とノズル31との相対位置関係は、所定に保持されている。したがって、ノズル31を回動させずに、案内部材21とノズル31とを一体的にスライドさせた場合、磁気テープMTへの空気の吹き付け位置(押圧位置)と、案内部材21との相対位置は、アーム41により所定に保持可能となっており、アーム41が「相対位置保持手段」としての機能を奏している。
【0048】
さらにまた、ノズル31に空気を供給する前記空気供給ポンプは、ノズル31からの空気流量が、5〜50L/minとなるように設定されている。
【0049】
[スライド駆動手段]
スライド駆動手段40は、案内部材21およびノズル31を吸着面10aに対して所定の高さ位置を保持したまま、かつ、案内部材21とノズル31の相対位置を保持したまま、吸着面10aに沿って所定速度でスライド駆動(移動)させるための手段である。
【0050】
第1実施形態に係るスライド駆動手段40は、主として、案内部材21およびノズル31を支持するアーム41と、床面等に磁気テープMTの長手方向と平行で固定されたガイドレール42と、ガイドレール42に沿ってアーム41を移動させる移動機構とを備えて構成されている。移動機構は、アーム41の下端に設けられたローラ43と、このローラ43を回転させる駆動装置(図示しない)とを備えている。
【0051】
したがって、前記駆動装置を所定の条件で作動させることで、ローラ43を回転し、アーム41をガイドレール42に沿って移動させ、案内部材21とノズル31の相対位置を保持したまま、これらを吸着面10aに沿ってスライド可能となっている。また、前記駆動装置は、案内部材21およびノズル31のスライド(移動)速度が、0.5〜20m/minとなるように作動させることが好ましい。
【0052】
また、アーム41と案内部材21との間には、吸着面10aに対しての案内部材21の高さ位置を調整する高さ位置調整機構(図示しない)が設けられており、案内部材21を所望の高さ位置(Δh1)に調整可能となっている。この高さ位置調整機構は、例えば、アーム41の先端に、高さ方向(磁気テープMTの厚さ方向)に長孔を形成し、この長孔に案内部材21を固定するボルト(図示しない)を挿通することで構成される。
【0053】
さらに、アーム41とノズル31との間には、前記したように、ノズル31から吹き出される空気の吹き付け位置を調整する吹き付け調整機構が設けられている。この吹き付け位置調整機構は、例えば、前記したノズル31をアーム41に回動自在に軸支する回動軸部材(図示しない)などによって構成される。
【0054】
[光学的測定手段]
図3に示すように、光学的測定手段50Aは、静電吸着台10の吸着面10aに吸着した磁気テープMTの形状を、光学的に測定するための手段である。光学的測定手段50Aは、透明部13A〜13Cを覆う磁気テープMTのエッジの部分に、幅方向に帯状のレーザL1を照射することでエッジの位置を測定する手段であり、透明部13A〜13Cのそれぞれに対応して設けられている。ここでは、透明部13Aに対応する光学的測定手段50Aについて具体的に説明する。
【0055】
光学的測定手段50Aは、主として、透明部13AにレーザL1を照射するレーザ発生器51と、透明部13Aを透過したレーザL1を受光するレーザ受光器52と、これらを連結するアーム53とを備えている。レーザ発生器51は静電吸着台10の上側に、レーザ受光器52は静電吸着台10の下側にそれぞれ配置されると共に、静電吸着台10に対して所定位置に固定されている。
【0056】
したがって、レーザ発生器51から幅方向に帯状のレーザL1を、後記する基準線ACを跨ぐように透明部13Aに照射し、レーザ受光器52で透明部13Aを透過したレーザL1を受光し、その幅方向の長さを検出することで、透明部13A(具体的には測定点A)における磁気テープMTのエッジの位置を測定可能となっている。
【0057】
そして、透明部13B、13Cに係る光学的測定手段50A、50Aに対しても同様の操作を行うことで、透明部13B(具体的には測定点B)、透明部13C(具体的には測定点C)における、磁気テープMTのエッジ位置をそれぞれ測定可能となっている。
【0058】
[除電バー]
図1に戻って説明を続ける。
除電バー61(除電手段)は、光学的測定手段50Aによる測定後に、静電吸着台10および磁気テープMTが帯びた静電気(電荷)を取り除くための装置である。このような除電バー61は、公知の機器であり、例えば、電極を内臓し、これにパルス電流を付与することで放電させて、イオンを含む空気(イオンエア)を発生させるものなどがある(図5参照)。
なお、イオンエアに含まれるイオンの種類(マイナスイオン、プラスイオン)は、静電吸着台10および磁気テープMTが帯びる静電気の種類(マイナスまたはプラス)に対応して決定される。また、磁気テープMTが帯びる静電気の種類は、主として、静電吸着台10およびその吸着面10aと、磁気テープMTとの材質にそれぞれ依存する。
【0059】
[磁気テープ走行手段]
磁気テープ走行手段70は、静電吸着台10に沿って、磁気テープMTの走行・停止を適宜に行う手段である。磁気テープ走行手段70は、主として、送りリールR1が装着される送り側スピンドル(図示しない)と、巻きリールR2が装着される巻き側スピンドル(図示しない)と、これらスピンドルの回転を制御するスピンドル制御部(図示しない)と、磁気テープMTを静電吸着台10に案内するガイドローラ71A、71Bと、を備えて構成されている。そして、スピンドル制御部により、送り側スピンドルおよび巻き側スピンドルの回転・停止が制御され、磁気テープMTが走行・停止を適宜に繰り返すようになっている。したがって、送りリールR1に巻装された磁気テープMTの全ての形状を、連続的に測定可能となっている。
【0060】
なお、前記スピンドル制御部と、空気押出手段30の空気供給ポンプ、スライド駆動手段40の駆動装置、電極対11A〜11Fのオン/オフを制御するための案内部材21の位置を検出するセンサ(いずれも図示しない)などを電気的に接続し、これらを制御する制御ユニット(図示しない)をさらに設けて、磁気テープMTの吸着、測定、除電、走行、吸着…を繰り返して行ってもよいことは言うまでもない。
【0061】
<テープ形状測定装置の動作>
続いて、第1実施形態に係るテープ形状測定装置S1の動作と共に、磁気テープMTの形状測定方法について説明する。
第1実施形態に係る磁気テープMTの形状測定方法は、静電吸着台10に磁気テープMTを静電吸着させる第1工程と、吸着した磁気テープMTの形状を測定する第2工程と、静電吸着台10および磁気テープMTが帯びた静電気を除電する第3工程と、磁気テープMTを走行させる第4工程とを含んでいる。
以下、各工程について説明する。
【0062】
[第1工程:磁気テープの静電吸着]
送りリールR1、巻きリールR2を、それぞれ対応するスピンドル(図示しない)に取り付け、送りリールR1から磁気テープMTを引き出し、ガイドローラ71A、案内部材21の上側、ガイドローラ71Bを経由させた後、巻きリールR2に固定し、静電吸着台10の吸着面10aに磁気テープを配置する。
そして、空気押出手段30の空気供給ポンプ(図示しない)を作動させて、ノズル31から所定流量の空気を磁気テープMTの所定位置に吹き付ける。
【0063】
次いで、図2(a)、(b)に示すように、磁気テープMTに空気を吹き付けたまま、スライド駆動手段40の駆動装置(図示しない)を作動させて、案内部材21およびノズル31を吸着面10aに沿って、所定速度でスライドさせる。すなわち、案内部材21を、静電吸着台10の吸着面10aに載置された磁気テープMTと、吸着面10aとの間で、吸着面10aに沿って、磁気テープMTの長手方向にスライドさせる。
そうすると、磁気テープMTは、案内部材21の案内面21aにより、一旦、吸着面10aから離間した後、張力などの余分な力が加えられることなく、吸着面10aに再び案内される。
【0064】
この磁気テープMTの吸着面10aへの案内と共に、案内部材21の磁気テープMTの長手方向における位置を検出するセンサ(図示しない)が作動し、吸着面10aに案内された磁気テープMTに対応する電極対11A〜11Fに接続するスイッチが順次に連動し、案内された磁気テープMTの部分に対応する電極対11A〜11Fがオンなる。そうすると、吸着面10aは、磁気テープMTの案内に対応して順次に帯電することになる。よって、磁気テープMTは、静電気(電荷)を帯び、静電吸着によって吸着面10aに順次に吸着される。
【0065】
さらに、ノズル31から吹き出された空気が、この吸着した磁気テープMTを所定圧力で押圧する。このように押圧されると、吸着面10a、磁気テープMTの下面に同伴し、磁気テープMTと吸着面10aとの間に介在する空気が押し出される。したがって、磁気テープMTを吸着面10aに良好に密着させることができる。
【0066】
[第2工程:磁気テープの形状測定]
続いて、このように吸着した磁気テープMTの形状を、光学的測定手段50Aにより測定する。さらに説明すると、図3、図4に示すように、透明部13A〜13Cを覆う磁気テープMTのエッジに、測定点A、B、Cをそれぞれ設定する。そして、測定点A、Cを通る基準線ACに対しての測定点Bの変位(湾曲値)を求める。
【0067】
具体的には、測定点A、B、Cの上側にそれぞれ配置するレーザ発生器51、51、51から、前記基準線ACを跨ぐように、幅方向に帯状のレーザL1、L1、L1をそれぞれ照射する。そして、静電吸着台10の下方、つまり、測定点A、B、Cの下側にそれぞれ配置するレーザ受光器52、52、52で、透明部13A、13B、13Cを透過したレーザL1、L1、L1をそれぞれ受光する。このとき、磁気テープMTが湾曲している場合、幅方向に帯状のレーザL1の受光量(透過したレーザL1の幅方向の長さ)は少なくなる。
【0068】
次いで、レーザ受光器52、52、52により、透過したレーザL1の幅方向の長さを検出することで、測定点A、B、Cの位置(エッジ位置)を求める。そして、この測定点A、B、Cの位置に基づいて、基準線ACと測定点Bとの距離、つまり、変位(ΔD)を算出し、算出された値が測定点Bにおける湾曲値となる(図示参照)。
【0069】
[第3工程:静電吸着台および磁気テープの静電気の除電]
測定後、第1工程おける静電吸着により、静電吸着台10および磁気テープMTが帯びた静電気(電荷)を取り除く。具体的には、図5に示すように、除電バー61を作動させて、静電吸着台10および磁気テープMTにイオンを含むイオンエアを吹き付ける。これにより、静電吸着台10および磁気テープMTが帯びた静電気(電荷)を取り除くことができる。
【0070】
[第4工程:磁気テープの走行]
その後、磁気テープ走行手段70のスピンドル(図示しない)を作動させて、測定した磁気テープMTの部分を巻きリールR2に巻き取ると共に、送りリールR1から新たな磁気テープMTを静電吸着台10上に引き出す。
その後、磁気テープMTの静電吸着台10への吸着、形状測定、除電を繰り返す。このような操作を繰り返すことによって、巻きリールR1に巻装された磁気テープMTの全ての形状を測定することができる。
【0071】
このように第1実施形態に係るテープ形状測定装置S1によれば、張力などの余分な力が付与されない状態で磁気テープMTを吸着面10aに案内し、さらに、空気押出手段30により空気を押し出し、磁気テープMTを吸着面10aに密着した状態で吸着することができる。そして、このような状態で吸着した磁気テープMTを測定することで、湾曲値などの形状を正確に測定することができる。
【0072】
なお、図4に示すように、磁気テープMTの幅方向両側のエッジ位置を測定し、長手方向における測定間隔を狭めたり、測定点を適宜に設定することで、幅変動、湾曲変動量を測定することもできる。
【0073】
≪第2実施形態≫
次に第2実施形態に係るテープ形状測定装置について、図6を参照して説明する。図6は、第2実施形態に係るテープ形状測定装置の側面図である。
【0074】
図6に示すように、第2実施形態に係るテープ形状測定装置は、ローラ36で磁気テープMTを直接押圧して、空気を押し出す点が、第1実施形態に係るテープ形状測定装置S1と異なる。
【0075】
さらに説明すると、第2実施形態に係るテープ形状測定装置は、ノズル31、ホース32、空気供給ポンプなどに代えて、空気押出手段として、主に、磁気テープMTの上面を押圧するローラ36と、ローラ36を回転自在に軸支すると共に、ローラ36による押圧力を調整するローラ押圧力調整機構を内蔵したローラアーム37とを備えている。ローラアーム37は、ノズル31と同様に、アーム41(図1参照)に回動自在に軸支されており、ローラ36の押圧位置は、吸着面10aに吸着した直後の磁気テープMTの上面に相当するように設定されている。すなわち、第2実施形態に係る空気押圧手段は磁気テープMTに対して、接触式である。
【0076】
磁気テープMTに直接接触するローラ36は、押圧により磁気テープMTに損傷を与えないように、ゴム硬度10°〜70°のゴム製とすることが好ましい。このようなゴムとしては、例えば、ウレタンゴムなどが挙げられる。
【0077】
ローラアーム37のローラ押圧力調整機構は、例えば、圧縮コイルバネ、油圧シリンダなどによって構成され、ローラ36による押圧力を所望に設定可能となっている。このローラ36による押圧力は、磁気テープMTの幅方向における線圧で、0.2942N/mm(0.03kgf/mm)〜9.80665N/mm(1.0kgf/mm)に設定することが好ましい。
【0078】
したがって、ローラ36により、吸着面10aに吸着した磁気テープMTの上面を直接押圧し、磁気テープMTと吸着面10aとの間の空気を確実に押し出して、磁気テープMTを吸着面10aに密着させることができる。
【0079】
≪第3実施形態≫
続いて、第3実施形態に係るテープ形状測定装置について、図7を参照して説明する。図7は、第3実施形態に係る光学的測定手段による測定状況を示す斜視図である。
【0080】
図7に示すように、第3実施形態に係るテープ形状測定装置は、透明部13A〜13Cに対応して設けられた光学的測定手段50B、50B、50Bを備えている。ここでは、透明部13Aに対して設けられた光学的測定手段50Bについて具体的に説明する。
【0081】
光学的測定手段50Bは、透明部13Aを覆うように吸着した磁気テープMTのエッジ部分に、集光式の光線L2を照射する投光器55と、受光器56と、リニアゲージ57と、アーム58とを備えて構成されている。投光器55が照射する集光式の光線L2のピント(集光点)は磁気テープMTに合わされている。
【0082】
投光器55は静電吸着台10の上側に、受光器56は、静電吸着台10の下側に、吸着した磁気テープMTを挟むように配置している。そして、投光器55と受光器56とは、アーム58によって連結されており、図示しないガイド等によって、磁気テープMT幅方向に移動自在となっている。リニアゲージ57は、アーム58に固定されると共に、その出没自在な測定部が静電吸着台10の側面に接触しており、投光器55および受光器56の幅方向の移動量、つまり、前記集光点の幅方向位置を測定可能となっている。
【0083】
したがって、第3実施形態に係る光学的測定手段50Bによれば、磁気テープMTが吸着面10aに吸着した状態で、第1実施形態と同様に、測定点A、B、Cを設定した後、集光式の光線L2を照射しながら、投光器55および受光器56を幅方向に移動させることで、各測定点A〜Cにおける磁気テープMTのエッジ位置を検出することができる。さらに説明すると、受光器56による光線L2の検出/未検出の切り替わる位置が、各測定点A〜Cにおけるエッジ部分となり、その位置がリニアゲージ57で測定される。
【0084】
そして、このように測定された各測定点A〜Cの位置に基づいて、第1実施形態と同様に、測定点Bにおける湾曲値を求めることができる。
【0085】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態で説明した各構成要素を適宜組み合わせてもよいし、その他に例えば以下のような適宜な変更が可能である。
【0086】
前記した第1実施形態では、測定後、除電手段としての除電バー61(図1参照)により磁気テープMTが帯びた静電気を除電したが、除電手段はこれに限定されず、例えば、図8に示す局部除電器63を使用してもよい。局部除電器63は、導電性を有する細長の除電部63aを有しており、この除電部63aを静電吸着台10および磁気テープMTに接触させることで、除電可能な機器である。したがって、磁気テープMTの測定後に、除電部63aを接触させたまま、局部除電器63をスライドさせることによって、静電吸着台10および磁気テープMTの静電気を除電することができる。
【0087】
前記した第1実施形態では、凸状の案内面21a(図2(a)参照)を有する案内部材21を使用したが、案内部材の形状はこれに限らず、例えば、図9に示すように、幅方向の側面視が矩形を呈し、吸着面10aと平行な案内面23aを有する案内部材23を使用してもよい。このような案内部材23は、凸状の案内面21aを有する案内部材21に対して、吸着面10aへの磁気テープMTの案内精度は、若干劣るものの、容易に構成することができる。なお、この場合においては、案内面23aと吸着面10aとの距離(Δh2)を案内部材23の高さとする。
【0088】
前記した第1実施形態では、レーザ発生器51、レーザ受光器52などからなる光学的測定手段50Aを使用して、磁気テープMTの湾曲を測定したが、この他に例えば、二次元変位センサや、CCDラインセンサなどから光学的測定手段を構成し、磁気テープMTの形状を測定してもよい。このように二次元変位センサ、CCDラインセンサを使用する場合、磁気テープMTの湾曲値だけでなく、幅変動、湾曲変動量を測定することができる。また、このように二次元変位センサや、CCDラインセンサを使用する場合、静電吸着台10に、透明部13A〜13Cを設ける必要はない。
【0089】
前記した第1実施形態では、光学的測定手段50Aにより、吸着した磁気テープMTの位置を測定したが、例えば、静電吸着台10の吸着面10aに、幅方向に目盛を刻み、この目盛により磁気テープMTのエッジの位置を測定してもよい。
【0090】
前記した第1実施形態では、アーム41に、案内部材21およびノズル31が設けられた構成としたため、アーム41を移動させると、案内部材21およびノズル31が一体的に吸着面10aに沿ってスライド可能であるとしたが、その他に例えば、案内部材21とノズル31とを、それぞれ別のスライド駆動手段に接続し、同期してスライドさせるように構成してもよい。
【0091】
前記した第1実施形態では、スライド駆動手段40の駆動装置により、機械的に案内部材21およびノズル31を所定速度で移動させる構成としたが、案内部材21およびノズル31の移動は手動で行ってもよい。
【実施例】
【0092】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0093】
(1)実施例1、2:案内部材の形状の検討
湾曲値が0mmの磁気テープMT1と、湾曲値が2mmの磁気テープMT2とを測定対象とし、凸状の案内面21aを有する案内部材21(図2(a)参照)を使用した場合を実施例1、幅方向の側面視が矩形の案内部材23(図9参照)を使用した場合を実施例2として、両者の測定精度の比較を行った。また、この測定においては、第1実施形態に係る光学的測定手段40Aを使用し、同一の測定点において、10回にて測定を繰り返し、その繰り返し測定精度として、測定した湾曲値の標準偏差値(3σ)を求めた。その他の吸着条件および測定結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表1より明らかなように、凸状の案内面21aを有する案内部材21を使用した実施例1は、側面視が矩形の案内部材23を使用した実施例2に対して、繰り返し精度(測定値のばらつき)を示す標準偏差値(3σ)が小さいことが確認された。すなわち、凸状の案内面21aを有する案内部材21を使用した方が、磁気テープを吸着面10aに良好に案内できたと考えられる。
【0096】
(2)実施例3、比較例4:エア吹き付け位置の検討
次に、ノズル31(図1参照)からのエアの吹き付け位置について検討を行った。案内部材21により吸着面10aに案内され、静電吸着する直前の磁気テープにエアを吹き付ける場合を実施例3、吸着面10aに案内され、静電吸着した直後の磁気テープにエアを吹き付ける場合を実施例4とした。なお、エアの吹き付け位置は、ノズル31をアーム41に対して所定角度にて回動させることで調整した。その他の吸着条件および測定結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
表2より明らかなように、静電吸着した直後の磁気テープにエアを吹き付ける実施例4の方が、吸着する直前の磁気テープにエアを吹き付ける実施例3より、標準偏差値(3σ)は、小さくなることが確認された。これにより、磁気テープが吸着面10aに静電吸着した直後の磁気テープにエアを吹き付けることで、磁気テープと吸着面10aとの間の空気を押し出し、良好に密着させることができたと考えられる。
【0099】
(3)実施例5、6:エア流量の検討
次に、ノズル31から吹き出すエアの流量、すなわち、吸着直後の磁気テープに吹き付けるエアの流量について検討を行った。エア量を22.8(L/min)とした場合を実施例5、16.8(L/min)とした場合を実施例6とした。その他の吸着条件および測定結果を表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
表3から明らかなように、実施例5に対して、エア吹き付け量が少ない実施例6の方が、標準偏差値(3σ)は小さくなった。これにより、磁気テープに吹き付けるエア量は少ない方が好ましいと想定される。これは、エア量が多いと乱流が発生しやすくなるためと考えられる。
【0102】
(4)実施例7、8:案内部材の移動速度の検討
次に、案内部材21の移動(スライド)速度について検討を行った。案内部材21を低速である2.0(m/min)で移動させた場合を実施例7、中速である8.0(m/min)で移動させた場合を実施例8とした。その他の吸着条件および測定結果を表4に示す。
【0103】
【表4】

【0104】
表4より明らかなように、実施例8に対して、案内部材21を低速で移動した実施例7の方が、標準偏差値(3σ)が小さくなった。これは、案内部材21を低速で移動させることにより、磁気テープの下面に同伴する空気の量が少なくなると共に、案内部材21と同期する空気押出手段30により、空気が良好に押し出されたためと考えられる。
【0105】
(5)実施例9、10:案内部材高さの検討
次に、吸着面10aに対する案内部材21の高さ位置について検討した。案内部材21の高さ(Δh1)を7.0mmとした場合を実施例9、1.0mmとした場合を実施例10とした。その他の吸着条件および測定結果を表5に示す。なお、この検討は湾曲値が0mmの磁気テープMT1に対してのみ行った。
【0106】
【表5】

【0107】
表5より明らかなように、実施例9に対して、案内部材21の高さ位置を低くした実施例10の方が、標準偏差値(3σ)が小さくなった。これは、案内部材21を低くすることで、案内部材21と吸着面10aとの間に位置する磁気テープの長さが短くなり、これにより磁気テープの下面に同伴する空気が減少したためと考えられる。
【0108】
(6)実施例11、比較例1:本発明方法と従来方法との対比検討
続いて、湾曲値2mmの磁気テープMT2に対して、実施例11に係る方法と、比較例1に係る方法とで、繰り返し精度の比較を行った。次の表6に吸着条件および測定結果を示す。
磁気テープMT2に対して、10個の測定点を設定し、各測定点について、実施例1と同様の方法で、5回にて湾曲値を測定し、その繰り返し精度(σ)を求めた。
【0109】
次に、比較例1に係る方法で、前記10個の測定点について、5回にて湾曲値を繰り返して測定し、繰り返し精度(σ)を求めた。ここで、比較例1について説明すると、比較例1では、静電吸着台10を使用せず、適宜なエア吸引装置が設けられた多孔質からなる吸着台を使用し、エア吸引によって磁気テープを吸着させた。また、案内部材は、スライド駆動手段40で移動させず、人力により手動で移動させた。
【0110】
【表6】

【0111】
表6から明らかなように、実施例11に係る繰り返し精度(σ)は、比較例1に係る繰り返し精度(σ)に対して、全体的に小さくなった。つまり、実施例11によれば高精度で測定可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】第1実施形態に係るテープ形所測定装置の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)、(b)共に第1実施形態に係るテープ形状測定装置の側面図であり、(a)は吸着初期状態を示し、(b)は吸着後期状態を示す。
【図3】第1実施形態に係るテープ形状測定装置による測定状況を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態に係るテープ形状測定装置による測定方法を示す平面図である。
【図5】第1実施形態に係る除電バーによる除電状況を示す平面図である。
【図6】第2実施形態に係るテープ形状測定装置の一部を示す側面図である。
【図7】第3実施形態に係る光学的測定手段による測定状況を示す斜視図である。
【図8】除電手段の変形例に係る局部除電器による除電状況を示す側面図である。
【図9】案内部材の変形例に係る側面図である。
【符号の説明】
【0113】
MT 磁気テープ
S1 テープ形状測定装置
10 静電吸着台
10a 吸着面
11A、11B、11C、11D、11E、11F 電極対
13A、13B、13C 透明部
21、23 案内部材
21a、23a 案内面
30 空気押出手段
31 ノズル
36 ローラ
40 スライド駆動手段
41 アーム(相対位置保持手段)
50A、50B 光学的測定手段
51 レーザ発生器
52 レーザ受光器
55 投光器
56 受光器
57 リニアゲージ
61 除電バー(除電手段)
63 局部除電器(除電手段)
70 磁気テープ走行手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープの形状を測定するテープ形状測定装置であって、
前記テープを吸着するため、帯電可能かつ平坦な吸着面を有する吸着台と、
前記テープと前記吸着面との間で前記吸着面に沿って前記テープの長手方向にスライド自在であり、前記テープを前記吸着面から離間させて前記テープの吸着を案内する案内部材と、
吸着したテープを押圧し、前記テープと前記吸着面との間の空気を押し出す空気押出手段と、
を備えたことを特徴とするテープ形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−53077(P2006−53077A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235540(P2004−235540)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】