説明

トリプチセン誘導体の重合体を含有する組成物、それを用いた絶縁膜、及び電子デバイス

【課題】電子デバイスなどに用いられる、誘電率、機械強度等の膜特性が良好な絶縁膜を形成できる組成物を提供する。さらには該組成物を用いて得られる絶縁膜、および該絶縁膜を有する電子デバイスを提供する。
【解決手段】三重結合及びまたは二重結合を合計で複数個有するトリプチセン誘導体を重合単位として重合した重合体を含有することを特徴とする組成物、該組成物を用いた絶縁膜及び電子デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組成物に関し、さらに詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度等の膜特性が良好な膜形成用組成物に関し、さらには該組成物を用いて得られる絶縁膜およびそれを有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
【0003】
高耐熱性の絶縁膜として古くからポリベンゾオキサゾール、ポリイミドが広く知られている。また、ポリアリーレンエーテルからなる高耐熱性の絶縁膜が開示されている(特許文献1)。しかしながら、高速デバイスを実現するためには更なる誘電率の低減が強く要望されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6646081号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するための組成物、詳しくは、電子デバイスなどに用いられる、誘電率、機械強度等の膜特性が良好な絶縁膜を形成できる組成物を提供する。さらには該組成物を用いて得られる電子デバイスの絶縁膜および該絶縁膜を有する電子デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、下記の組成物、絶縁膜及び電子デバイスによって達せられる。
1.下記式(1)で表されるトリプチセン誘導体を重合単位として重合した重合体を含有することを特徴とする組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
式(1)中、R、R、R、R、Rは各々独立に水素原子または置換基を表す。m、n、pはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。但し、式(1)で表されるトリプチセン誘導体は、R〜Rの少なくともいずれかとして、少なくとも一つの重合可能な置換基を有する。
2.該式(1)で表されるトリプチセン誘導体が、R〜Rの少なくともいずれかとして、重合可能な置換基を少なくとも二つ以上有することを特徴とする上記1に記載の組成物。
3.重合可能な置換基がアルケニル基またはアルキニル基であることを特徴とする上記1または2に記載の組成物。
4.RおよびRがアルケニル基またはアルキニル基であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の組成物。
5.金属触媒存在下またはラジカル開始剤存在下で重合する重合体であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の組成物。
6.重合体がシクロヘキサノンまたはアニソールに25℃で3質量%以上溶解することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の組成物。
7.さらに有機溶剤を含むことを特徴とする上記1〜6に記載の組成物。
8.上記1〜7のいずれかに記載の組成物を用いて形成したことを特徴とする絶縁膜。
9.上記8に記載の絶縁膜を有することを特徴とする電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物に含まれる重合体はアニソールやシクロヘキサノン等の塗布溶剤に易溶であるので優れた塗布性が得られ、かつ該組成物を用いて形成した膜は低い誘電率、優れた機械強度、高い耐熱性を有する。したがって電子デバイスなどにおける層間絶縁膜として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるトリプチセン誘導体は下記式(1)で表される。
【0011】
【化2】

【0012】
式(1)中、R、R、R、R、Rは各々独立に水素原子または置換基を表す。該置換基の例としては、目的とする製品の品質に悪影響を与えないものであれば、どのようなものであっても構わないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、または環状のアルキル基(メチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、t−ブチルエチニル基等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル基等)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基等)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイル基等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ基等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル基等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリビニルシリル基等)等が挙げられる。
【0013】
式(1)中、R、R、R、R、およびRは好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、t−ブチルエチニル基等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等)、シリル基(トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリビニルシリル基等)であり、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、t−ブチルエチニル基等)、シリル基(トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリビニルシリル基等)であり、特に好ましくは、ビニル基とエチニル基である。
これらの置換基はさらに別の置換基で置換されていてもよい。
【0014】
式(1)において、R〜Rのうち少なくとも1つは重合可能な置換基を有する。本発明において重合可能な置換基として好ましい基は炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、t−ブチルエチニル基等)である。
【0015】
式(1)において、該式(1)で表されるトリプチセン誘導体が、R〜Rの少なくともいずれかとして、重合可能な置換基を少なくとも2個以上有することが好ましく、2〜4個有することがより好ましい。
およびRが共に重合性基を有することがより好ましく、RおよびRがアルケニル基またはアルキニル基であることがさらに好ましく、RおよびRがビニル基また
はエチニル基であることが特に好ましい。
【0016】
m、n、pはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、0〜2であることがより好ましく、0または1であることが特に好ましい。
【0017】
以下に本発明の式(1)のトリプチセン誘導体の具体例を記載するが、これらに限定されるものではない。
【0018】
【化3】

【0019】
一般式(1)で表されるトリプチセン誘導体モノマーは、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成したものを用いてもよい。
例えば、9,10−ジエチニルトリプチセンは、市販のトリプチセンの9位および10位を臭素中で臭素化した後、塩化アルミニウム触媒存在下で臭化ビニルを反応させることによりジブロモエチル基を置換させて、これを強塩基で脱臭化水素化することにより合成することができる。また、トリプチセンの芳香環を臭素化した後で、末端アセチレン化合物をパラジウム触媒存在下で反応させることによってアセチレン基を導入することができる。
【0020】
本発明の重合体は、トリプチセン誘導体をモノマーとするホモポリマーでも良いし、他のモノマーとの共重合体であっても良い。
【0021】
本発明において、モノマーの重合反応はモノマーに置換した重合性基によって行われる。該重合反応は、どのような重合反応でも良いが、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合、酸化カップリング等が挙げられる。
【0022】
本発明の好ましい重合反応のひとつとして、アルケニル基またはアルキニル基を有するモノマーを、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して重合を開始させる非金属の重合開始剤存在下で重合させる方法が挙げられる。
重合開始剤としては特に有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。
【0023】
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ‐n‐プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ‐sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,
3−テトラメチルブチルパーオキシ‐2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオ
キサイド、t−ブチルパーオキシ‐2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、
【0024】
1、1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ‐(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ‐3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ‐メチル‐2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジー(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル4,4−ジーt−ブチルパーオキシバレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ‐t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル‐2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーイキサイド、ジ‐t−ブチルパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル-2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,3−ジメチルー2,3−ジフェニルブタン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、トリス‐(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカノエート、α‐クミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジーt−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ‐t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ‐3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ‐イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコールビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート等が好ましく用いられる。
【0025】
有機アゾ系化合物としては和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類、2,2−アゾビス(4−メトキシ-2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、1−〔(1−シアノ-1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2,2−アゾビス{2−メチル-N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス〔2−メチル-N−(2−ヒドロキシブチル)プロピオンアミド〕、2,2−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕、2,2−アゾビス(N−ブチルー2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル-2−メチルプロピオアミド)、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン-2−イル)プロパン〕ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン-2−イル)プロパン〕ジスルフェートジヒドレート、2,2−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン‐2−イル〕プロパン}ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔2−〔2−イミダゾリン‐2−イル〕プロパン〕、2,2−アゾビス(1−イミノー1−ピロリジノ‐2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕テトラヒドレート、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が好ましく用いられる。
【0026】
本発明で使用する重合開始剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の重合開始剤の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0027】
本発明で使用するモノマーの重合反応は遷移金属触媒存在下で行うことも好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーを例えばPd(PPh34、Pd(OAc)2等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl等のW系触媒、MoCl等のMo系触媒、TaCl等のTa系触媒、NbCl等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等を用いて重合することが好ましい。
【0028】
本発明で使用する遷移金属触媒は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で使用する遷移金属触媒の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
電子材料分野では製品中に不純物としてメタルが混入すると性能に悪影響を及ぼす観点があるため、重合を促進する添加剤としては非金属の重合開始剤がより好ましい。
【0029】
重合反応で使用する溶媒は、原料モノマーが必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用しても良い。例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、ア
セトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。
【0030】
これらの中でより好ましい溶剤はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応液中のモノマーの濃度は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0031】
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、モノマー、溶媒の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜220℃、より好ましくは40℃〜180℃、特に好ましくは80℃〜150℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合阻害を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
【0032】
本発明に用いられる重合体の重量平均分子量は好ましくは1000〜500000、より好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。
本発明の組成物は、該重合体を、分子量分布を有する重合体のまま含有することができる。
【0033】
本発明の組成物は溶剤を含んでいてもよく、塗布液として使用することもできる。溶剤は特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール,1−メトキシー2−プロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン,シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
より好ましい溶剤は、1−メトキシー2−プロパノール、プロパノール、アセチルアセトン,シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル,乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンであり、特に好ましくは1−メトキシー2−プロパノール,シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル,γ−ブチロラクトン、t−ブチルベンゼン,アニソールである。
【0035】
本発明の組成物における本発明の重合体の濃度は、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1.0〜10質量%であり、特に好ましくは2.0〜5.0質量%である。
本発明の組成物の全固形分濃度は、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは1.0〜20質量%であり、特に好ましくは2.0〜10質量%である。
ここで全固形分とは、この組成物を用いて得られる絶縁膜を構成する全成分に相当する。
【0036】
本発明で使用する重合体は塗布液を含む組成物の保存経時で不溶物の析出を防止する観点から、溶剤への溶解度が高いほうが好ましい。好ましい溶解度は25℃でシクロヘキサノンまたはアニソールに3質量%以上(該重合体が溶解した溶液における重合体濃度)、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
【0037】
本発明の組成物には不純物としての金属含量が充分に少ないことが好ましい。本発明の組成物の金属濃度はICP−MS法にて高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は、好ましくは本発明の組成物の全量に対して質量基準で30ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは300ppb以下である。また、遷移金属については、酸化を促進する触媒能が高く、プリベーク、熱硬化プロセスにおいて酸化反応によって本発明で得られた膜の誘電率を上げてしまうという観点から、含有量が少ないほうがよく、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下、特に好ましくは100ppb以下である。
【0038】
本発明の組成物の金属濃度は本発明の組成物を用いて得た膜に対して全反射蛍光X線測定を行うことによっても評価できる。X線源としてW線を用いた場合、金属元素としてK、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pdが観測可能であり、それぞれ100×1010atom・cm−2以下が好ましく、より好ましくは50×1010atom・cm−2以下、特に好ましくは10×1010atom・cm−2以下である。また、ハロゲンであるBrも観測可能であり、残存量は10000×1010atom・cm−2以下が好ましく、より好ましくは1000×1010atom・cm−2以下、特に好ましくは400×1010atom・cm−2以下である。また、ハロゲンとしてClも観測可能であるが、CVD装置、エッチング装置等へダメージを与えるという観点から残存量は100×1010atom・cm−2以下が好ましく、より好ましくは50×1010atom・cm−2以下、特に好ましくは10×1010atom・cm−2以下である。
【0039】
更に、本発明の組成物には、得られる絶縁膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、密着促進剤などの添加剤を添加してもよい。
【0040】
本発明には界面活性剤を使用してもよく、界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界
面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。本発明で使用する界面活性剤は、一種類でも良いし、二種類以上でも良い。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0041】
本発明で使用する界面活性剤の添加量は、本発明の組成物の全量に対して0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0042】
本発明にはいかなる密着促進剤を使用してもよいが、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラ
ン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ビニルトリス(2-メ
トキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ポリビニルメトキシシロキサン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ビニルトリクロロシラン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、チオ尿素化合物等を挙げることができる。密着促進剤の好ましい使用量は、全固形分100質量部に対して10質量部以下、特に0.05〜5質量部であることが好ましい。
【0043】
本発明の組成物には膜の機械強度の許す範囲内で、空孔形成因子を使用して、膜を多孔質化し、低誘電率化を図ることができる。
空孔形成剤となる添加剤としての空孔形成因子としては特に限定はされないが、非金属化合物が好適に用いられ、本発明の組成物に含有してもよい溶剤との溶解性、本発明にかかる重合体との相溶性を同時に満たすことが必要である。
【0044】
空孔形成剤としてはポリマーも使用することができる。空孔形成剤として使用できるポリマーとしては、例えば、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ハロゲン化ポリビニル芳香族化合物など)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドなど)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリメタクリレート(ポリメチルメタクリレートなど)またはポリメタクリル酸、ポリアクリレート(ポリメチルアクリレートなど)およびポリアクリル酸、ポリジエン(ポリブタジエンおよびポリイソプレンなど)、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、およびアミンキャップドアルキレンオキシド、その他、ポリフェニレンオキシド、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリテトラヒドロフラン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピリジン、ポリカプロラクトン等であってもよい。
特にポリスチレンは、空孔形成剤として好適に使用できる。ポリスチレンはとしては、たとえば、アニオン性重合ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、未置換および置換ポリスチレン(たとえば、ポリ(α−メチルスチレン))が挙げられ、未置換ポリスチレンが好ましい。
【0045】
また、空孔形成剤としては熱可塑性のポリマーも使用することができる。熱可塑性空孔形成用ポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリテトラヒドロフラン、ポリエチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリエチルオキサゾリン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸およびポリビニルピリジン等が挙げられる。
【0046】
またこの空孔形成剤の沸点若しくは分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。分子量としては、200〜50000であることが好ましく、より好ましくは300〜10000、特に好ましくは400〜5000である。添加量は膜を形成する重合体に対して、質量%で好ましくは0.5〜75%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1%〜20%である。また、空孔形成因子として、重合体の中に分解性基を含んでいても良く、その分解温度は好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃であると良い。分解性基の含有率は膜を形成する重合体を構成する重合単位に対して、モル%で0.5〜75%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1〜20%である。
【0047】
本発明の組成物を使用して得られる膜は、本発明の組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。乾燥のための加熱条件としては、100℃〜250℃で1分〜5分行うことが好ましい。基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法によるものである。スピンコーティングについては、市販の装置を使用できる。例えば,クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。スピンコート条件としては、いずれの回転速度でもよいが、膜の面内均一性の観点より、300mmシリコン基板においては1300rpm程度の回転速度が好ましい。
【0048】
また本発明の組成物の吐出方法においては、回転する基板上に本発明の組成物を吐出する動的吐出、静止した基板上へ本発明の組成物を吐出する静的吐出のいずれでもよいが、膜の面内均一性の観点より、動的吐出が好ましい。また、本発明の組成物の消費量を抑制する観点より、溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後、その上から本発明の組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが、スループットの観点から180秒以内が好ましい。また,基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは,ホットプレート加熱,ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき,クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製),D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製),SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては,αシリーズ(東京エレクトロン製)等が好ましく使用できる。
【0049】
本発明に使用する重合体は基板上に塗布した後に加熱処理することによって硬化(焼成)させることが特に好ましい。硬化には例えば重合体中に残存する重合性基の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。
後加熱処理は数回に分けて行っても良い。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
【0050】
また、本発明では加熱処理ではなく高エネルギー線を照射することで重合体中に残存する炭素三重結合の重合反応を起こして硬化(焼成)させても良い。高エネルギー線としては、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは50keV以下が好ましく、より好ましくは30keV以下、特に好ましくは20keV以下である。電子線の総ドーズ量は好ましくは5μC/cm2以下、より好ましくは2μC/cm2以下、特に好ましくは1μC/cm2以下である。電子線を照射する際の基板温度は0〜450℃が好ま
しく、より好ましくは0〜400℃、特に好ましくは0〜350℃である。圧力は好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。本発明の重合体の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。本発明における電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
【0051】
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は190〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2000mWcm-2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃、特に好ましくは250〜350℃である。本発明では重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0052】
本発明の組成物を使用して得られる膜は、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があっても良く、また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMPでの剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、更には層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けても良い。
【0053】
本発明の組成物を使用して得られる膜は、銅配線あるいはその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしてはウエットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、あるいは窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、さらにはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0054】
本発明の組成物を使用して得られる膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMP(化学的機械的研磨)をすることができる。CMPスラリー(薬液)としては,
市販のスラリー(例えば、フジミ製、ロデールニッタ製、JSR製、日立化成製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製,荏原製作所製等)を適宜使用することができる。さらにCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0055】
本発明の組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することが出来る。例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することが出来る。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。実施例中で使用する化合物の構造を示す。
【0057】
【化4】

【0058】
<実施例1>
トリプチセン誘導体(A)5.0g、ジクミルパーオキシド0.86gおよびt−ブチルベンゼン25mlを100mlフラスコに仕込み、窒素気流下で内温150℃で5時間攪拌した。反応液を室温に冷却した後、250mlのイソプロピルアルコールに少しずつ加えて析出した固体をろ過した。得られた固体をイソプロピルアルコールで十分に洗浄して重合体(1)を2.0g得た。重合体(1)の重量平均分子量は約10000であった。この重合体(1)1.0gを25℃でシクロヘキサノン9gに溶解させた。重合体(1)が完全に溶解したことを確認した。この溶液を0.1μmのPTFE製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱して溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬した後、溶剤を乾燥して膜厚を測定した結果、浸漬前と同じであった。この結果から膜が硬膜していることを確認した。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出した。この結果、誘電率は2.49であった。
MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を25℃において測定した結果、6.0GPaであった。
【0059】
<実施例2>
トリプチセン誘導体(B)を等モル使用した他は実施例1と同様にして重合体(2)を2.0g合成した。重合体(2)の重量平均分子量は約11000であった。この重合体
(2)1.0gを25℃でシクロヘキサノン9gに溶解させた。重合体(2)が完全に溶解したことを確認した。この溶液を使用して実施例1と同様にして膜を作成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬した後、溶剤を乾燥して膜厚を測定した結果、浸漬前と同じであった。この結果から膜が硬膜していることを確認した。
膜の誘電率は2.45、ヤング率は5.5GPaであった。
【0060】
<比較例1>
米国特許第6,646,081号に記載のExample3bの調製方法におけるのに準じて、ポリアリーレンの10質量%溶液を調製した。この溶液を使用して実施例1と同様にして膜を作成した結果、膜厚0.5μmのブツのない均一な膜が得られた。この膜の誘電率は2.70、ヤング率は3.5GPaであった。
【0061】
実施例1、2及び比較例1の結果から、本発明用の重合体から形成した膜が層間絶縁膜として優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるトリプチセン誘導体を重合単位として重合した重合体を含有することを特徴とする組成物。
【化1】

式(1)中、R、R、R、R、Rは各々独立に水素原子または置換基を表す。m、n、pはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。但し、式(1)で表されるトリプチセン誘導体は、R〜Rの少なくともいずれかとして、少なくとも一つの重合可能な置換基を有する。
【請求項2】
該式(1)で表されるトリプチセン誘導体が、R〜Rの少なくともいずれかとして、重合可能な置換基を少なくとも二つ以上有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
重合可能な置換基がアルケニル基またはアルキニル基であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
およびRがアルケニル基またはアルキニル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
金属触媒存在下またはラジカル開始剤存在下で重合する重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
重合体がシクロヘキサノンまたはアニソールに25℃で3質量%以上溶解することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
さらに有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1〜6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物を用いて形成したことを特徴とする絶縁膜。
【請求項9】
請求項8に記載の絶縁膜を有することを特徴とする電子デバイス。

【公開番号】特開2008−75047(P2008−75047A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258947(P2006−258947)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】