説明

ナビゲーション装置およびナビゲーション装置用プログラム

【課題】ナビゲーション装置の案内音声が他の音に紛れて聞き取りづらくなる度合いを軽減する。
【解決手段】車両用ナビゲーション装置2の周波数特性情報取得部32は、通信回路31を用いて携帯電話機50から車内の話者の音声の周波数特性情報を取得し、その情報に基づいて音声変換部26を制御することで、スピーカ24に出力させる案内音声の周波数特性を、入力された音声の中で聞き取り易くなるよう、低レベル帯域を強調するように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声案内または音声認識を行うためのナビゲーション装置およびナビゲーション装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声で案内を行うナビゲーション装置が広く用いられている。また従来、ユーザの発した音声の特徴量を、あらかじめ記憶している音声認識辞書と照合することで、その音声の表す語を特定する機能、すなわち音声認識機能を有するナビゲーション装置が広く用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ナビゲーション装置が音声案内を行うとき、その案内音声が会話音等の他の音に紛れてしまい、聞き取りづらくなってしまう場合がある。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、ナビゲーション装置の案内音声が他の音に紛れて聞き取りづらくなる度合いを軽減することを第1の目的とする。
【0005】
また、同じ語でも人によって発音やアクセントが多少異なっているので、一組の音声認識辞書を用いて万人の音声を精度よく行うことは難しい。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、ナビゲーション装置の音声認識に用いる音声認識辞書を、音声認識の対象となる人毎に切り替えることができるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、入力された音の周波数特性を分析する周波数分析手段と、前記周波数分析手段が分析した周波数特性に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記入力された音の中で聞き取り易くなるよう調整する周波数特性調整手段と、を備えたナビゲーション装置である。
【0008】
このように、ナビゲーション装置は、入力された音の周波数特性に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、この入力された音の中で聞き取り易くなるよう調整するので、ナビゲーション装置の案内音声が他の音に紛れて聞き取りづらくなる度合いが軽減される。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、前記周波数特性調整手段は、前記周波数分析手段が分析した周波数特性に基づいて、前記入力された音の強度が他の周波数帯域と比較して低い周波数帯域を利用することで、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記入力された音の中で聞き取り易くなるよう調整することを特徴とする。
【0010】
このように、ナビゲーション装置は、入力された音の中で聞き取り易くなるよう調整する具体的な方法として、入力された音の強度が他の周波数帯域と比較して低い周波数帯域を利用するようになっていてもよい。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、通信回路を用いて携帯電話機から話者の音声の周波数特性情報を取得する周波数特性情報取得手段と、前記周波数特性情報取得手段が取得した周波数特性情報に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記話者の音声の中で聞き取り易くなるよう調整する周波数特性調整手段と、を備えたナビゲーション装置である。
【0012】
このように、ナビゲーション装置は、携帯電話機から取得した話者の音声の周波数特性情報に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、この話者の音声の中で聞き取り易くなるよう調整するので、ナビゲーション装置の案内音声が、その携帯電話機を有する車内の話者の音声に紛れて聞き取りづらくなる度合いが軽減される。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のナビゲーション装置において、前記周波数特性調整手段は、前記周波数分析手段が分析した周波数特性に基づいて、前記入力された音声の強度が他の周波数帯域と比較して低い周波数帯域を利用することで、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記話者の音声の中で聞き取り易くなるよう調整することを特徴とする。
【0014】
このように、ナビゲーション装置は、入力された音声の中で聞き取り易くなるよう調整する具体的な方法として、この話者の音声の強度が他の周波数帯域と比較して低い周波数帯域を利用するようになっていてもよい。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、異なる複数組の音声認識辞書を記録する記憶媒体と、通信回路を用いて携帯電話機から話者の音声の特徴情報を取得する話者音声情報取得手段と、前記記憶媒体が有する音声認識辞書のうち、前記話者音声情報取得手段が取得した音声の特徴情報に対する類似度が他よりも高い音声認識辞書を特定する辞書特定手段と、前記辞書特定手段が特定した音声認識辞書と、入力された音声の特徴量とを照合することで、入力された音声の表す語を特定する音声認識手段と、を備えたナビゲーション装置である。
【0016】
このように、ナビゲーション装置は、通信回路を用いて携帯電話機から取得した話者の音声の特徴情報に対する類似度が他よりも高い音声認識辞書を選択的に用いて音声認識を行うことができるので、単一の組の音声認識辞書を用いる場合に比べ、音声認識の精度が向上する。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、入力された音の周波数特性を分析する周波数分析手段、および、 前記周波数分析手段が分析した周波数特性に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記入力された音の中で聞き取り易くなるよう調整する周波数特性調整手段として、コンピュータを機能させるナビゲーション装置用プログラムである。
【0018】
このように、請求項1に記載の発明は、プログラムとしても捉えることができる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、通信回路を用いて携帯電話機から話者の音声の周波数特性情報を取得する周波数特性情報取得手段、および、前記周波数特性情報取得手段が取得した周波数特性情報に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記入力された音声の中で聞き取り易くなるよう調整する周波数特性調整手段として、コンピュータを機能させるナビゲーション装置用プログラムである。
【0020】
このように、請求項3に記載の発明は、プログラムとしても捉えることができる。
【0021】
また、請求項8に記載の発明は、異なる複数組の音声認識辞書を記録する記憶媒体と、通信回路を用いて携帯電話機から話者の音声の特徴情報を取得する話者音声情報取得手段、記憶媒体が有する複数組の音声認識辞書のうち、前記話者音声情報取得手段が取得した音声の特徴情報に対する類似度が他よりも高い音声認識辞書を特定する辞書特定手段、および、前記辞書特定手段が特定した音声認識辞書と、入力された音声の特徴量とを照合することで、入力された音声の表す語を特定する音声認識手段として、コンピュータを機能させるナビゲーション装置用プログラムである。
【0022】
このように、請求項5に記載の発明は、プログラムとしても捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。本実施形態の車両用ナビゲーション装置1は、以下詳述する通り、入力された音声の周波数特性に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、この入力された音声の中で聞き取り易くなるよう調整するようになっている。
【0024】
この車両用ナビゲーション装置1は、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13、RAM16、ROM17、外部記憶媒体18、制御回路19、マイク21、A/Dコンバータ(図中ではA/Dと記す)22、周波数解析部23、スピーカ24、D/Aコンバータ(図中ではD/Aと記す)25、および音声変換部26を有している。
【0025】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置や向きを特定するための情報を制御回路19に出力する。
【0026】
操作スイッチ群12は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置13の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路19に出力する。
【0027】
画像表示装置13は、制御回路19から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。外部記憶媒体18は、HDD等の不揮発性の記憶媒体であり、制御回路19が読み出して実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。地図データは、リンクおよびノードの位置、種別、ノードとリンクとの接続関係情報等を含む道路データ、および施設データを有している。
【0028】
制御回路19は、ROM17および外部記憶媒体18から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM16、ROM17、および外部記憶媒体18から情報を読み出し、RAM16および外部記憶媒体18に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13および音声変換部26と信号の授受を行う。
【0029】
制御回路19がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、誘導経路探索処理、経路案内処理等がある。
【0030】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。
【0031】
誘導経路算出処理は、操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な誘導経路を算出する処理である。
【0032】
経路案内処理は、外部記憶媒体18から地図データを読み出し、算出された誘導経路、目的地、経由地および現在位置等をこの地図データの示す地図上に重ねた画像を、画像表示装置13に出力し、案内交差点の手前に自車両が到達した等の必要時に、右折、左折等を指示する案内音声信号を音声変換部26に出力する処理である。
【0033】
周波数解析部23は、マイク21から入力され、A/Dコンバータ22でデジタルデータ化された車室内の音(例えば乗員の声や雑音)の周波数解析を行い、その解析結果に基づいて音声変換部26の作動を調整するための装置である。この周波数解析部23は、通常のマイコンとして実現されており、そのマイコンのCPU(コンピュータに相当する;図示せず)が、そのマイコンのROM(図示せず)から図2に記載のプログラム100を読み出して繰り返し実行することで、上記の機能を実現する。
【0034】
具体的には、周波数解析部23のCPUは、プログラム100の実行において、まずステップ110で、A/Dコンバータ22からの音データをある量だけ取得する。取得する量は、一定時間分の量であってもよいし、ある音圧レベル以上の音が続く期間分の量でもよい。
【0035】
続いてステップ120では、その取得した時系列の音データの周波数特性の分析(すなわち周波数分析)を行う。周波数分析の具体的方法としては、例えば高速フーリエ変換等がある。この周波数分析の結果、取得した音の周波数−強度関係を得る。
【0036】
続いてステップ130では、周波数変換が必要であるか否かを判定する。周波数変換が必要であるか否かは、ステップ120で取得した周波数−強度関係において、ある周波数帯域の特徴的強度(例えば平均強度、自乗平均強度の平方根、重み付き平均強度、最大強度、最低強度等)が基準強度以上であるか否かによって判定する。
【0037】
ここで、ある周波数帯域とは、車両用ナビゲーション装置1が出力する案内音声にとって邪魔になりやすい帯域をいう。このような周波数帯域としては、あらかじめ記憶された一定帯域を用いてもよいし、各種条件(例えば、これから出力することがわかっている音声の種類等)に基づいて変動する帯域を用いてもよいし、その境界が一定の範囲内でランダムに決まる帯域を用いてもよい。また、基準強度は、あらかじめ記憶された一定強度であってもよいし、各種条件(例えば、時刻、車速、道路の渋滞度等)に基づいて変動する値であってもよいし、一定の範囲内でランダムに決まる値であってもよい。
【0038】
周波数変換が必要でない場合、続いてステップ140で、変換不要である旨の通知を音声変換部26に出力し、必要である場合、続いてステップ150を実行する。
【0039】
ステップ150では、ステップ120で取得した周波数−強度関係において、低レベル帯域を特定する。低レベル帯域であるための必要条件は、他の帯域と比較して強度の低い帯域であることである。また、低レベル帯域であるための必要条件として、平均的な人の可聴帯域であるという条件を採用してもよい。また、低レベル帯域であるための必要条件として、最も低い強度となっている周波数を含む所定の広さの帯域であるという条件を採用してもよい。
【0040】
続いてステップ160では、ステップ150で特定した低レベル帯域を音声変換部26に通知する。ステップ140およびステップ160の後、プログラム100の1回分の実行が終了する。
【0041】
このようなプログラム100の実行によって、周波数解析部23は、必要であれば、入力された音データの周波数分析の結果に基づいて特定した低レベル帯域を音声変換部26に通知する。
【0042】
音声変換部26は、制御回路19から受けた案内音声データをD/Aコンバータ25に出力する装置である。D/Aコンバータ25に出力された音声データは、最終的にスピーカ24から音声として出力され、乗員の耳に届くことになる。ただし、音声変換部26は、周波数解析部23から低レベル帯域の通知を受けると、高速フーリエ変換、逆フーリエ変換等を用いて、その低レベル帯域の強度がより増幅するように、受けた音声データを変換し、その変換結果の音声データをD/Aコンバータ25に出力する。また、音声変換部26は、周波数解析部23から変換不要通知を受けると、受けた音声データをそのままD/Aコンバータ25に出力する。なお、音声変換部26は、上記のような機能を実現するためのプログラムを実行するマイコンであってもよいし、上記のような機能を実現する回路構成を有している専用のICであってもよい。
【0043】
以上のような各構成要素の作動により、車両用ナビゲーション装置1は、入力された音声の周波数特性を分析し、その分析結果に基づいて、車内で会話がある場合等の必要時に、スピーカに出力させる案内音声の周波数特性を、入力された音声の中で聞き取り易くなるよう、低レベル帯域を強調するように調整し、その調整の結果変換された案内音声を出力する。したがって、車両用ナビゲーション装置1による案内音声が、他の音に紛れて聞き取りづらくなる度合いが軽減される。
【0044】
なお、上記の第1実施形態において、周波数解析部23のCPUが、プログラム100のステップ120を実行することで、周波数分析手段として機能し、ステップ130〜160を実行することで、周波数特性調整手段として機能する。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置2のハードウェア構成を示す。本実施形態の車両用ナビゲーション装置2は、以下詳述する通り、携帯電話機から通信によって取得した話者の音声の周波数特性情報に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、この話者の音声の中で聞き取り易くなるよう調整するようになっている。さらに、本実施形態の車両用ナビゲーション装置2は、以下詳述する通り、携帯電話機から取得した話者の音声の特徴情報に対する類似度が他よりも高い音声認識辞書を選択的に用いて音声認識を行うようになっている。
【0046】
この車両用ナビゲーション装置2は、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13、RAM16、ROM17、外部記憶媒体18、制御回路19、マイク21、A/Dコンバータ(図中ではA/Dと記す)22、スピーカ24、D/Aコンバータ(図中ではD/Aと記す)25、音声変換部26、音声認識部27、通信回路31、周波数特性情報取得部32、および辞書選択部33を有している。なお、第1実施形態の車両用ナビゲーション装置1と本実施形態の車両用ナビゲーション装置2において同一の符号が付された構成要素は、互いに同一の機能を有するものであり、ここではそれらの詳細についての説明は省略する。ただし、本実施形態の外部記憶媒体18は、第1実施形態の外部記憶媒体18が有するデータに加え、複数組の認識辞書データ41〜43を有している。この認識辞書データ41〜43については後述する。
【0047】
通信回路31は、図示しないアンテナが受信した携帯電話機50からの信号に対して増幅、周波数変換、復調、A/D変換等、所定の通信規格(例えばブルートゥース、無線LAN、IrDA、シリアル通信、USB等)に従った処理を施し、その結果を制御回路19、周波数特性情報取得部32、および辞書選択部33に出力する。また通信回路31は、制御回路19、周波数特性情報取得部32、および辞書選択部33から入力されたデータに対してD/A変換、変調、周波数変換、増幅等、所定の無線通信プロトコルに従った処理を施し、その結果の信号を上記のアンテナに出力する。
【0048】
このような作動により、通信回路31は、制御回路19、周波数特性情報取得部32、および辞書選択部33の制御に基づいて、乗員によって車内に持ち込まれた携帯電話機50と有線または無線で通信を行うことができる。
【0049】
なお、通信によって携帯電話機50から車両用ナビゲーション装置1に送信されるデータは、周波数特性情報および話者音声情報である。周波数特性情報は、その携帯電話機50のユーザの音声の平均的な周波数特性を、周波数−強度関係として表すデータである。携帯電話機50は、ユーザの電話通話中の音声等に基づいて、このような周波数特性情報を繰り返し更新するようになっている。話者音声情報は、特定の複数の単語についての、その携帯電話機50のユーザの発声の特徴量(語毎の音韻、韻律、周波数−強度関係)を表すデータである。携帯電話機50は、音声認識機能を有しており、この音声認識によって特定した語に基づいて、その語をユーザが発した際の音声の特徴量を繰り返し記録、更新することで、話者音声情報を蓄積するようになっている。
【0050】
周波数特性情報取得部32は、通信回路31を用いて携帯電話機50から話者(すなわち携帯電話機50のユーザ)の音声の周波数特性情報を取得し、その取得した情報に基づいて音声変換部26の作動を調整するための装置である。この周波数特性情報取得部32は、通常のマイコンとして実現されており、そのマイコンのCPU(コンピュータに相当する;図示せず)が、例えば携帯電話機50との接続時に、そのマイコンのROM(図示せず)から図4に記載のプログラム200を読み出して実行することで、上記の機能を実現する。
【0051】
具体的には、周波数特性情報取得部32のCPUは、プログラム200の実行において、まずステップ210で、通信回路31に、携帯電話機50に対して周波数特性情報を要求する信号を送信させ、その結果として通信回路31が受信した周波数特性情報を取得する。
【0052】
続いてステップ220で、図2のステップ150と同様に、ステップ210で取得した周波数特性情報に示された周波数−強度関係において、低レベル帯域を特定する。
【0053】
続いてステップ230では、ステップ220で特定した低レベル帯域の情報を音声変換部26に通知し、その後プログラム200の実行を終了する。
【0054】
以上のような通信回路31、周波数特性情報取得部32等の作動により、車両用ナビゲーション装置2は、携帯電話機50から車内の話者の音声の周波数特性情報を取得し、その情報に基づいて、スピーカに出力させる案内音声の周波数特性を、入力された音声の中で聞き取り易くなるよう、低レベル帯域を強調するように調整し、その調整の結果変換された案内音声を出力する。したがって、車両用ナビゲーション装置2による案内音声が、車内の話者の音に紛れて聞き取りづらくなる度合いが軽減される。
【0055】
また、音声認識部27は、外部記憶媒体18中の音声認識辞書データと、入力された音声の特徴量(音韻、韻律、周波数特性等)とを照合することで、入力された音声の表す語を特定し、その特定した語のデータを制御回路19に出力する。1組の音声認識辞書データは、複数の語(例えば単語、母音等)のそれぞれに対応する音声特徴量のデータから成る。ここで、音声認識部27が用いる音声認識辞書データは、外部記憶媒体18に記憶されている複数組の認識辞書データ41〜43のうちから選んだ、1組または複数組(具体的には、通信回路31が一度に接続している携帯電話の数の組)である。そして、どの音声認識辞書データを用いるかは、辞書選択部33からの選択信号に従って決定する。この音声認識部27によって、スピーカ24に入力された音声に対する音声認識が実現する。なお、音声認識部27は、上記のような機能を実現するためのプログラムを実行するマイコンであってもよいし、上記のような機能を実現する回路構成を有している専用のICであってもよい。
【0056】
辞書選択部33は、通信回路31を用いて携帯電話機50から話者(すなわち携帯電話機50のユーザ)の音声の話者音声情報を取得し、その取得した情報に基づいて音声認識部27の使用する音声認識辞書データを選択するための装置である。この辞書選択部33は、通常のマイコンとして実現されており、そのマイコンのCPU(コンピュータに相当する;図示せず)が、例えば携帯電話機50との接続時に、そのマイコンのROM(図示せず)から図5に記載のプログラム300を読み出して実行することで、上記の機能を実現する。
【0057】
具体的には、辞書選択部33のCPUは、プログラム300の実行において、まずステップ310で、通信回路31に、携帯電話機50に対して話者音声情報を要求する信号を送信させ、その結果として通信回路31が受信した話者音声情報を取得する。
【0058】
続いてステップ320で、ステップ310で取得した話者音声情報に示された特定の語の特徴量と、外部記憶媒体18中の認識辞書データ41〜43のそれぞれに示された当該特定の語の音声の特徴量との類似度の比較を行い、最も類似度の高い認識辞書データを特定する。ここで類似度としては、例えば周波数特性の相関値を用いてもよいし、音韻や韻律の特徴量を示すベクトルデータ間のユークリッド距離が短いほど高い値を用いてもよい。
【0059】
続いてステップ330では、ステップ320で特定した認識辞書データを選択するよう指示する選択信号を、音声認識部27に出力する。ステップ330の後、プログラム300の実行が終了する。
【0060】
以上のような音声認識部27、通信回路31、辞書選択部33等の作動により、車両用ナビゲーション装置2は、携帯電話機50から話者音声情報(話者の音声の特徴情報に相当する)を取得し、その取得した話者音声情報に対する類似度が最も高い音声認識辞書データを用いて音声認識を行うことができるので、単一の組の音声認識辞書を用いる場合に比べ、音声認識の精度が向上する。
【0061】
なお、上記の第2実施形態において、周波数特性情報取得部32のCPUが、プログラム200のステップ210を実行することで、周波数特性情報取得手段として機能し、ステップ220および230を実行することで、周波数特性調整手段として機能する。また、辞書選択部33のCPUが、プログラム300のステップ310を実行することで、話者音声情報取得手段として機能し、ステップ320を実行することで辞書特定手段として機能する。また、音声認識部27が、音声認識手段に相当する。
【0062】
(他の実施形態)
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各構成要素の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0063】
例えば、周波数解析部23、音声変換部26、音声認識部27、周波数特性情報取得部32、辞書選択部33が行う処理は、制御回路19が行うようになっていてもよい。
【0064】
また、周波数解析部23、周波数特性情報取得部32、辞書選択部33は、それらの機能を実現するような回路構成を有している専用のICであってもよい。
【0065】
また、出力する案内音声を入力された音の中で聞き取り易くなるよう調整する方法としては、低レベル帯域の強度を高くするような方法のみならず、案内音声全体の周波数を一律にシフトすることで、案内音声の強度のピークを含む周波数帯域を、その低レベル帯域に移動さえるようになっていてもよい。すなわち、車両用ナビゲーション装置1は、その低レベル帯域を有効に利用すれば足りる。
【0066】
また、周波数解析部23、周波数特性情報取得部32は、周波数毎の重みのデータを音声変換部26に出力し、音声変換部26はその重みのデータに基づいて周波数毎の強度の変換を行うようになっていてもよい。
【0067】
また、外部記憶媒体18が、周囲の雑音、騒音についての複数の典型的な周波数特性毎に、その周波数特性の音の中での中で聞き取り易くなるような周波数特性を有する案内音声のパターンをいくつか記憶している場合は、周波数解析部23が、入力された音声の周波数特性の分析を、その入力された音声がそれら典型的な周波数特性のいずれに最も近いかを判定することで実現し、スピーカ24が出力する音声の周波数特性の調整を、その最も近い周波数特性に対応したパターンの案内音声を、制御回路19に出力させることで実現するようになっていてもよい。
【0068】
また、第2実施形態の音声認識部27が、第1実施形態の周波数解析部23の機能を併せ持っていてもよい。
【0069】
また、プログラム200およびプログラム300の処理は、携帯電話機50からのデータの送信は、携帯電話機50が車内に持ち込まれる度に行われてもよいし、初めて携帯電話機50が車内に持ち込まれたときに一度だけ行われ、その語は、携帯電話機50が車内に持ち込まれる度に、過去に車両用ナビゲーション装置2が受信した周波数特性情報および話者音声情報を読み出して用いるようになっていてもよい。
【0070】
また、上記の実施形態においては、車両用ナビゲーション装置1、2が、本発明のナビゲーション装置の一例として挙げられているが、本発明のナビゲーションシステムは、車両用ナビゲーション装置に限らず、例えば、人が携帯できるような携帯型ナビゲーション装置としても実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成図である。
【図2】周波数解析部23のCPUが実行するプログラム100のフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成図である。
【図4】周波数特性情報取得部32のCPUが実行するプログラム200のフローチャートである。
【図5】辞書選択部33のCPUが実行するプログラム300のフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1、2…車両用ナビゲーション装置、11…位置検出器、12…操作スイッチ群、
13…画像表示装置、16…RAM、17…ROM、18…外部記憶媒体、
19…制御回路、21…マイク、22…A/Dコンバータ、23…周波数解析部、
24…スピーカ、25…D/Aコンバータ、26…音声変換部、27…音声認識部、
31…通信回路、32…周波数特性情報取得部、33…辞書選択部、
41〜43…認識辞書データ、50…携帯電話機、100〜300…プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音の周波数特性を分析する周波数分析手段と、
前記周波数分析手段が分析した周波数特性に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記入力された音の中で聞き取り易くなるよう調整する周波数特性調整手段と、を備えたナビゲーション装置。
【請求項2】
前記周波数特性調整手段は、前記周波数分析手段が分析した周波数特性に基づいて、前記入力された音の強度が他の周波数帯域と比較して低い周波数帯域を利用することで、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記入力された音の中で聞き取り易くなるよう調整することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
通信回路を用いて携帯電話機から話者の音声の周波数特性情報を取得する周波数特性情報取得手段と、
前記周波数特性情報取得手段が取得した周波数特性情報に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記話者の音声の中で聞き取り易くなるよう調整する周波数特性調整手段と、を備えたナビゲーション装置。
【請求項4】
前記周波数特性調整手段は、前記周波数分析手段が分析した周波数特性に基づいて、前記入力された音声の強度が他の周波数帯域と比較して低い周波数帯域を利用することで、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記話者の音声の中で聞き取り易くなるよう調整することを特徴とする請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
異なる複数組の音声認識辞書を記録する記憶媒体と、
通信回路を用いて携帯電話機から話者の音声の特徴情報を取得する話者音声情報取得手段と、
前記記憶媒体が有する音声認識辞書のうち、前記話者音声情報取得手段が取得した音声の特徴情報に対する類似度が他よりも高い音声認識辞書を特定する辞書特定手段と、
前記辞書特定手段が特定した音声認識辞書と、入力された音声の特徴量とを照合することで、入力された音声の表す語を特定する音声認識手段と、を備えたナビゲーション装置。
【請求項6】
入力された音の周波数特性を分析する周波数分析手段、および、
前記周波数分析手段が分析した周波数特性に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記入力された音の中で聞き取り易くなるよう調整する周波数特性調整手段として、コンピュータを機能させるナビゲーション装置用プログラム。
【請求項7】
通信回路を用いて携帯電話機から話者の音声の周波数特性情報を取得する周波数特性情報取得手段、および、
前記周波数特性情報取得手段が取得した周波数特性情報に基づいて、スピーカに出力させる音声の周波数特性を、前記入力された音声の中で聞き取り易くなるよう調整する周波数特性調整手段として、コンピュータを機能させるナビゲーション装置用プログラム。
【請求項8】
異なる複数組の音声認識辞書を記録する記憶媒体と、
通信回路を用いて携帯電話機から話者の音声の特徴情報を取得する話者音声情報取得手段、
記憶媒体が有する複数組の音声認識辞書のうち、前記話者音声情報取得手段が取得した音声の特徴情報に対する類似度が他よりも高い音声認識辞書を特定する辞書特定手段、および、
前記辞書特定手段が特定した音声認識辞書と、入力された音声の特徴量とを照合することで、入力された音声の表す語を特定する音声認識手段として、コンピュータを機能させるナビゲーション装置用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−292918(P2006−292918A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111902(P2005−111902)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】