説明

ナビゲーション装置および角速度検出信号補正値算出方法

【課題】車両の現在位置の算出精度を向上できるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】平均化する処理を行った操舵角検出信号の出力値に基づいて車両が直進しているか否かを判断し、車両が直進していると判断されると、ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号のばらつきが小さければ、角速度信号の平均値を角速度信号の補正値ωaとして設定するように構成した。したがって、直進走行時のハンドルの遊びや操舵角検出信号の出力値の微少な変動の影響を抑制して車両が直進しているか否かを判断できるので、車両が直進しているときに角速度信号の補正値ωaを設定する機会を増やすことができる。これにより、車両の進行方位の算出精度、および、車両の移動量の算出精度を向上して、車両の現在位置の算出精度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるナビゲーション装置、および、車両の角速度を検出する信号の補正値算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるナビゲーション装置では、車両の現在位置を算出する際に、車両の進行距離や旋回角度に基づいて車両の移動量を算出することで、車両の現在位置を推定している。ここで、車両の旋回角度はジャイロセンサから出力される検出信号に基づいて算出されている。しかし、ジャイロセンサから出力される検出信号には温度依存性などの変動要因があるため、適宜補正する必要がある。そのため、従来のナビゲーション装置では、たとえば、車両の操舵角センサから読み込んだ操舵角が所定の角度範囲内にあって車両が直進状態であると判断されると、ジャイロセンサから出力される検出信号を読み込んで、ジャイロセンサから出力される検出信号の補正値を設定・修正している(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−23298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、たとえば、路面の轍の影響や、左右のタイヤの空気圧の相違などによって車両の直進時でも操舵角が所定の角度範囲内に入らない場合もあり得るため、上述した従来のナビゲーション装置では、車両が直進していてもジャイロセンサから出力される検出信号の補正値が設定・修正されない恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明によるナビゲーション装置は、車両の角速度を検出して、検出した角速度に係る角速度検出信号を出力する角速度検出手段と、角速度検出手段から出力される角速度検出信号と、角速度検出信号の補正値とに基づいて、車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段と、車両の操舵角度を検出する操舵角度センサから出力される操舵角度検出信号を平均化する処理をして、車両が直進しているか否かを判断する車両直進判断手段と、車両直進判定手段によって車両が直進していると判断されると、旋回状態検出手段で車両が直進状態であると検出されるように、角速度検出信号の補正値を算出する角速度検出信号補正値算出手段とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、GPS衛星から送信されるGPS信号に基づいて、車両の進行方位を検出する進行方位検出手段と、進行方位検出手段が検出する車両の進行方位に基づいて、車両が直進していると判断されると、操舵角度検出信号の補正値を算出する操舵角度検出信号補正値算出手段をさらに備え、車両直進判断手段は、操舵角度検出信号を平均化する処理をして、車両が直進しているか否かを判断する際に、操舵角度検出信号補正値算出手段によって算出された操舵角度検出信号の補正値を参照することを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、少なくとも車両が走行する道路の道路方位に関するデータを記憶する地図データ記憶手段をさらに備え、車両直進判断手段は、地図データ記憶手段から読み込んだ道路方位に基づいて車両が走行する道路が直線道路であると判定し、かつ、操舵角度検出信号を平均化する処理の結果から車両が直進していると判定されると、車両が直進していると判断することを特徴とする。
(4) 請求項4の発明による角速度検出信号補正値算出方法は、車両の角速度を検出して、検出した角速度に係る角速度検出信号を出力し、出力される角速度検出信号と、角速度検出信号の補正値とに基づいて、車両の旋回状態を検出し、車両の操舵角度を検出する操舵角度センサから出力される操舵角度検出信号を平均化する処理をして、車両が直進しているか否かを判断し、操舵角度検出信号を平均化する処理をした結果に基づいて車両が直進していると判断されると、角速度検出信号と角速度検出信号の補正値とに基づいて検出される車両の旋回状態が直進状態とされるように、角速度検出信号の補正値を算出することを特徴とする。
(5) 請求項5の発明は、請求項4に記載の角速度検出信号補正値算出方法において、GPS衛星から送信されるGPS信号に基づいて、車両の進行方位を検出し、検出した車両の進行方位に基づいて、車両が直進していると判断されると、操舵角度検出信号の補正値を算出し、操舵角度検出信号を平均化する処理をして、車両が直進しているか否かを判断する際に、算出された操舵角度検出信号の補正値を参照することを特徴とする。
(6) 請求項6の発明は、請求項4に記載の角速度検出信号補正値算出方法において、少なくとも車両が走行する道路の道路方位に関するデータを読み込み、読み込んだ道路方位に基づいて車両が走行する道路が直線道路であると判定し、かつ、操舵角度検出信号を平均化する処理の結果から車両が直進していると判定されると、車両が直進していると判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両の進行方位の算出精度を向上して、車両の現在位置の算出精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜8を参照して、本発明によるナビゲーション装置の一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態のナビゲーション装置の全体構成を示す図である。カーナビゲーション装置1は、車両位置周辺の道路地図を表示する機能、出発地から目的地までの推奨経路を演算する機能、演算された推奨経路に基づいて経路誘導を行う機能など、車両の走行に関する情報を提示する機能を兼ね備えている。カーナビゲーション装置1は、いわゆるナビゲーションあるいは道路案内などを行う装置である。
【0008】
図1において、11は車両の現在地を検出する現在地検出装置であり、たとえば車両の進行方位の変化に伴う角速度を検出するジャイロセンサ11a、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ11c、車速を検出する車速センサ11d等から成る。ジャイロセンサ11aは、車両の進行方位の変化に伴う角速度を検出して、検出した角速度に応じた検出信号(角速度信号)を出力する。2は、車両のハンドルの近傍に設けられてハンドルの操舵角度(操舵角)を検出する操舵角センサである。
【0009】
100は制御装置であり、CPU101およびその周辺回路から成る。CPU101およびその周辺回路は互いにバスで接続されている。周辺回路は、メモリ102、パラレルI/O103、A/D変換器104,110、シリアルI/O105、カウンタ106、グラフィックコントローラ107、画像メモリ108、地図記憶装置109等から成る。14は車室内の乗員が視認可能な位置に配設されて、地図や各種情報を表示する表示モニタである。15は乗員が車両の目的地等の入力など、各種操作入力を行うためのスイッチである。スイッチ15は、表示モニタ14の画面上に設けられたタッチパネルスイッチや、カーソルの移動や画面のスクロールを指示するジョイスティックなどを含む。スイッチ15は、リモコンスイッチであってもよく、表示画面周辺に設けられたスイッチであってもよい。
【0010】
制御装置100のメモリ102は、制御プログラムを格納するROM、作業エリアのRAM、および、ジャイロセンサ11aの角速度信号の補正値(後述)や各種設定値などを記憶する不揮発メモリを含むメモリである。CPU101は、メモリ102にアクセスして制御プログラムを実行し、各種の制御を行う。パラレルI/O103は、スイッチ15を構成する個別のスイッチ等が接続されるパラレルI/Oポートである。A/D変換器104は、ジャイロセンサ11aの角速度信号(アナログ信号)をA/D変換する変換器である。シリアルI/O105は、GPSセンサ11cからのシリアル信号を受信するシリアルI/Oポートである。カウンタ106は、たとえば車軸の回転に伴って車速センサ11dから出力されるパルス信号をカウントするカウンタである。なお、車速センサ11dは、カーナビゲーション装置1が搭載された車両に設けられているセンサであってもよい。
【0011】
グラフィックコントローラ107は、CPU101から出力される表示データを、画像データとして画像メモリ(ビデオRAM)であるメモリ108に格納し、メモリ108に格納された画像データを表示モニタ14に表示するための制御を行う。CPU101から出力される表示データは、各種の文字データや道路地図などの各種の図形データなどから成る。制御装置100は、表示モニタ14の表示制御装置として機能する。
【0012】
地図記憶装置109は、ナビゲーション処理に使用する道路地図データやPOI情報(Point of Interest 観光地や各種施設の情報)など各種の情報を格納する地図記憶装置であり、ハードディスク装置が用いられている。なお、地図記憶装置109は、ハードディスク装置以外にも、道路地図データが格納されたCD−ROMやDVD、その他の記録媒体、および、その読み出し装置であってもよい。A/D変換器110は、操舵角センサ2から出力される車両のハンドルの操舵角度の検出信号(アナログ信号)をA/D変換する変換器である。
【0013】
−−−データ構成−−−
道路地図データは、地図に関する情報であり、地図表示用データ、経路探索用データ、誘導データ(交差点名称・道路名称・方面名称・方向ガイド施設情報など)などから成る。地図表示用データは道路や道路地図の背景を表示するためのデータである。経路探索用データは、道路形状とは直接関係しない分岐情報などから成るデータであり、主に推奨経路を演算(経路探索)する際に用いられる。誘導データは、交差点の名称などから成るデータであり、演算された推奨経路に基づき運転者等に推奨経路を誘導する際に用いられる。
【0014】
図2(a),(b)は、地図表示用データ(道路データ)の構成を示した図である。道路データはリンク列データとメッシュコードを含み、メッシュ領域単位で格納されている。なお、リンク列データとは、一本の道路を、交差点などのノードと、ノード間のリンクとして定義したデータ構造である。メッシュ領域とは、道路地図を所定範囲毎に区分けしたときの区分けされた各領域をいう。メッシュコードの記憶領域401には、メッシュ領域を識別する番号が格納される。リンク列データの記憶領域402には、図2(b)に示すように、ノードの位置座標Xn,Ynと、ノード間のリンクの番号と、リンクをさらに短く分割する補間点の位置座標Xn,Ynとがそれぞれの領域に格納される。これらの位置座標が地図表示や後述する現在位置算出処理の形状データとして用いられる。
【0015】
このように構成されるカーナビゲーション装置1は、現在地検出装置11により取得した情報および地図記憶装置109に格納されている道路地図データに基づき各種のナビゲーションを行う。たとえば、制御装置100のCPU101は、車両の現在位置近辺の道路地図および車両の現在位置を表示モニタ14に表示し、経路探索によって得られた経路(推奨経路)に沿って運転者を誘導するように各部を制御する。
【0016】
−−−現在位置算出処理−−−
表示モニタ14に表示された現在位置近辺の道路地図に車両の現在位置を重畳的に表示するため、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、以下のような処理によって現在位置を算出している。図3は、現在位置算出処理の動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリーON(ACC ON)になると、カーナビゲーション装置1の電源が入り、図3に示す処理を行うプログラムが定期的に起動される。
【0017】
CPU101は、ジャイロセンサ11aおよび車速センサ11dからのデータを読み込むとともに、メモリ102からジャイロセンサ11aの角速度信号の補正値を読み込む(ステップS1)。そして、読み込んだデータに基づいて車両が直進しているか否かを判断する(ステップS3)。すなわち、CPU101は、読み込んだジャイロセンサ11aの角速度信号の出力値を角速度信号の補正値に基づいて補正し、補正後の角速度信号の出力値に対して積分することで車両の変位角を算出する。算出した車両の変位角が略0であると判断されると、すなわち、車両が直進していると判断されると(ステップS3肯定判断)、読み込んだデータや補正値に基づいて車両の進行方位と車両の走行距離を算出することで車両の移動量を算出する。そして、前回算出した車両の現在位置を起点として、今回算出した車両の移動量を加算することで、現在車両が存在すると推定される地点を算出する(ステップS5)。この地点を推定現在位置とする。なお、車両の進行方位は、前回車両の現在位置を算出した際に算出した車両の進行方位を、今回の演算で算出した車両の変位角だけ変位させた方位として算出される。
【0018】
なお、カーナビゲーション装置1の起動直後などには、前回カーナビゲーション装置1を停止する直前に算出して記憶されている車両の現在位置、もしくはあらかじめ別途設定された地点を前回算出した車両の現在位置として上記の処理を行う。
【0019】
上述したように推定現在位置を算出した後、現在位置の候補を以下のようにして算出する。CPU101は、下記の(イ)および(ロ)の双方を満たすリンク(候補リンク)を地図記憶装置109に格納された道路データから検索して抽出する(ステップS7)。
(イ) 推定現在位置の算出に際して算出された車両の進行方位と道路データのリンクの方位(リンク方位)との差が所定値以下である。
(ロ) 上述した推定現在位置からリンクに対して垂直に降ろした線分の長さが所定値以下である。
【0020】
上述した候補リンクが存在するか否かを判断し、存在すると判断されると(ステップS9肯定判断)、推定現在位置の算出に際して算出された車両の走行距離だけ前回の処理で算出した車両の現在位置からリンクに沿って移動させた地点を現在位置の候補とする(ステップS11)。このようにして得られた現在位置の候補を表示候補点と呼ぶ。上述した(イ),(ロ)を満たすリンクが存在しないと判断されると(ステップS9否定判断)、後に述べる、デッドレコニング処理(ステップS19)が実行される。
【0021】
上述した処理では、複数の候補リンクおよび表示候補点が抽出されるため、実際に車両が走行している道路としての確からしさ(信憑性)を表す信頼度trstを、それぞれの表示候補点について算出する(ステップS13)。それぞれの表示候補点について信頼度trstが算出されると、信頼度trstが最も高い表示候補点を選択する(ステップS15)。そして、選択した表示候補点を車両の現在位置として、周辺の道路地図とともに表示モニタ14に重畳的に表示させる(ステップS17)。このように、候補リンクを抽出し、信頼度trstが最も高い表示候補点を車両の現在位置として決定する処理は、一般にマップマッチングと呼ばれる。なお、信頼度trstが最も高い表示候補点はもちろんであるが、信頼度trstが最も高い表示候補点以外の表示候補点についても、その位置が記憶され、次回の処理の際に推定現在位置の算出する際の起点とされて信頼度trstが算出される。
【0022】
ジャイロセンサ11aおよび車速センサ11dからのデータを読み込むとともに、メモリ102からジャイロセンサ11aの角速度信号の補正値を読み込んだ(ステップS1)後、車両が旋回していると判断された場合(ステップS3否定判断)、または、上述した(イ),(ロ)を満たすリンクが存在しないと判断された場合(ステップS9否定判断)、公知のデッドレコニング処理が行われる(ステップS19)。すなわち、読み込んだデータや補正値に基づいて車両の進行方位と車両の走行距離を算出することで車両の移動量を算出する。車両の移動量の算出方法は上述したとおりである。そして、前回算出した車両の現在位置に今回算出した車両の移動量を加算することで得られる地点を車両の現在位置として(ステップS19)、周辺の道路地図とともに表示モニタ14に重畳的に表示させる(ステップS17)。
【0023】
−−−ジャイロセンサ11aの角速度信号の補正値について−−−
ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号には温度依存性があるため、ゼロ点、すなわち、静止状態のジャイロセンサ11aから出力される角速度信号(バイアス)が変動する。また、外部からの振動によってバイアスが変動することがある。そのため、角速度信号の補正値によってバイアスを補正する必要がある。そこで、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、次のようにして角速度信号の補正値を得ることでバイアスを補正する。なお、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、車速に応じて次の(1),(2)の2通りの方法でバイアスを補正する。
【0024】
(1) 車両が所定の速度を超える車速で走行している場合
車両が所定の速度(たとえば30km/h)を超える車速で走行している場合であって、GPSセンサ11cで検出したGPS信号に基づいて算出される車両の進行方位(GPS方位)が略一定で安定している場合には、CPU101は車両が直進状態であると判断する。そして、CPU101は、車速が所定の速度を超え、かつ、GPS方位が略一定で安定していると判断される期間にジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の出力値のばらつきを求める。ここでは、角速度信号の出力値に対して、たとえば分散(または標準偏差)を求めることでばらつきを求める。そして、求めた分散(または標準偏差)の値が所定の値よりも小さい場合には、当該期間にジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の出力値の平均値を算出し、算出した平均値をバイアス値、すなわち角速度信号の補正値ωaとして設定する。
【0025】
(2) 車両が所定の速度以下の車速で走行している場合
公知のとおり、GPS方位については、車両が走行することによって生じるGPS信号についてのドップラー効果を利用して算出するものである。したがって、車速が低下するにつれて算出されるGPS方位の精度も低下してしまう。そこで、車両が所定の速度(たとえば30km/h)以下の車速で走行している場合には、次の2つの条件(A),(B)をともに満たす場合には車両が直進状態であると判断して、後述するように、さらにジャイロセンサ11aから出力される角速度信号のばらつきが小さければ、ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の平均値をバイアス値、すなわち角速度信号の補正値ωaとして設定する。
(A) 車両のハンドルの操舵状況から車両が直進していると判断される。
(B) 車両が走行している道路が直線道路であると判断される。
【0026】
上述した条件(A)については、車両の操舵角センサ2から得られる車両のハンドルの操舵角度の検出信号(操舵角検出信号)の出力値がゼロ点近傍で安定しているか否かを判断する。なお、以下の説明では、操舵角検出信号の出力値のゼロ点とは、後述するように車両が実際に直進している状態における操舵角検出信号の出力値のことをいう。操舵角検出信号の出力値がゼロ点近傍で安定しているか否かの判断については、具体的には、操舵角検出信号の出力値を平均化する処理(たとえば積算平均化処理)をして得られる値が、略一定の値で推移するか否かを判断することとしている。すなわち、操舵角検出信号の出力値がゼロ点近傍であって変動幅が小さく、かつ、操舵角検出信号の出力値の増加または減少する傾向がないと判断されると、操舵角検出信号の出力値がゼロ点近傍で安定しているものと判断する。この条件(A)を満たすか否かを判断することで、直進走行時のハンドルの遊びや操舵角検出信号の出力値の微少な変動の影響を抑制した上で、車両のハンドルの操舵状況の点から車両の旋回状態、すなわち、車両が直進しているか否かを判断している。
【0027】
上述した条件(B)については、上述した道路データに基づいて車両が走行する道路の形状が直線であるか否かを判断することで、車両が走行している道路が直線道路であるか否かを判断する。この条件(B)を満たすか否かを判断することで、たとえば、曲率半径の大きいループ橋を走行した際に、上述した条件(A)では車両が直進しているとして誤った判断がなされることがあっても、角速度信号の補正値ωaが誤って設定されることを防止する。
【0028】
角速度信号の補正値ωaは、具体的には次のようにして設定される。車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリーON(ACC ON)になると、カーナビゲーション装置1の電源がオンされ、以降、カーナビゲーション装置1の電源がオフされるまで、CPU101は、ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の出力値、および、操舵角センサ2から得られる操舵角検出信号を読み込んで、その出力値を逐次メモリ102に記憶させる。なお、メモリ102には直近の一定時間分の角速度信号および操舵角検出信号の出力値が記憶され、一定時間が経過すると、古いものから順に消去される。これにより、角速度信号および操舵角検出信号の出力値について、最新の値から過去一定時間分まで遡った時点の値までがメモリ102に記憶される。
【0029】
CPU101は、上述した条件(A),(B)をともに満たすと判断すると、操舵角検出信号の出力値がゼロ点近傍で安定していると判断される期間の角速度信号の出力値をメモリ102から読み込んで、ばらつきを求める。ここでは、上述したのと同様に、角速度信号の出力値に対して、たとえば分散(または標準偏差)を求めることでばらつきを求める。そしてCPU101は、求めた分散(または標準偏差)の値が所定の値よりも小さい場合には、当該期間の角速度信号の出力値の平均値を算出し、算出した平均値をバイアス値、すなわち角速度信号の補正値ωaとして設定する。
【0030】
このように、上述した(1),(2)の2通りの方法のいずれかによって角速度信号の補正値ωaを設定してバイアスを補正することで、角速度信号の出力値が補正される。
【0031】
−−−操舵角検出信号の補正について−−−
なお、車両が実際に直進している場合であっても、路面の轍の影響や、左右のタイヤの空気圧の相違などによって、ハンドルが左右いずれか一方にとられたままとなることがある。すなわち、車両が実際に直進している場合であっても、操舵角検出信号の出力値のゼロ点は異なる値となる(すなわち変動する)ことがある。そこで、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、次の3つの条件を全て満たす場合に、車両が直進状態であると判断して、操舵角センサ2から得られる操舵角検出信号を平均化する処理をして得られた値をバイアス値、すなわち、操舵角検出信号の補正値θaを算出する。換言すれば、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、次の3つの条件を全て満たす場合に、車両が直進状態であると判断して、操舵角センサ2から得られる操舵角検出信号を平均化する処理をして得られた値を操舵角検出信号の出力値のゼロ点として設定する。
(a) 車両のハンドルの操舵角度が略一定の値で安定している。具体的には、操舵角検出信号の出力値を平均化する処理(たとえば積算平均化処理)をして得られる値が、略一定の値で推移する。すなわち、操舵角検出信号の出力値の変動幅が小さく、かつ、操舵角検出信号の出力値の増加または減少する傾向がないと判断される。
(b) 車両が所定の速度以上の車速で走行している場合であって、GPSセンサ11cで検出したGPS信号に基づいて算出される車両の進行方位(GPS方位)が略一定で安定している。
(c) ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の出力値が略一定で安定している。
【0032】
条件(b)からも分かるように、操舵角検出信号の出力値のゼロ点の設定に際しては、GPS方位によって車両が直進しているか否か判断している。
【0033】
操舵角検出信号の出力値のゼロ点の設定は、具体的には次のようにして設定される。上述したように、CPU101は、ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の出力値、および、操舵角センサ2から得られる操舵角検出信号を読み込んで、その出力値を逐次メモリ102に記憶させている。CPU101は、上述した条件(a)〜(c)を全て満たすと判断すると、条件(a)を判断する際に操舵角検出信号の出力値を積算平均化処理をするなどして得られた値を、操舵角検出信号の出力値のゼロ点として設定する。
【0034】
−−−フローチャート−−−
図4は、上述した条件(a)の判断動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリーON(ACC ON)になると、カーナビゲーション装置1の電源が入り、図4に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU101で実行される。ステップS101において、メモリ102で記憶している操舵角検出信号の出力値を読み込んでステップS103へ進む。ステップS103において、ステップS101で読み込んだ操舵角検出信号の出力値について、直近の所定時間分の出力値に対してたとえば積算平均化処理を行ってステップS105へ進む。
【0035】
ステップS105において、ステップS103で行われた平均化する処理の結果に基づいて、車両が直進しているか否かを判断する。ステップS105が肯定判断されるとステップS107へ進み、フラグAに1をセットして、ステップS109へ進む。ステップS105が否定判断されるとステップS111へ進み、フラグAに0をセットして、ステップS109へ進む。ステップS109において、イグニッションキーによりアクセサリーOFF(ACC OFF)にされたか否かを判断する。ステップS109が否定判断されるとステップS101へ戻る。ステップS109が肯定判断されると本プログラムを終了する。
【0036】
図5は、上述した条件(b)の判断動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリーON(ACC ON)になると、カーナビゲーション装置1の電源が入り、図5に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU101で実行される。ステップS201において、車速センサ11dから出力されるパルス信号に基づいて算出される車速を読み込んでステップS203へ進む。ステップS203において、ステップS201で読み込んだ車速が30km/hを超えているか否かを判断する。ステップS203が否定判断されるとステップS201へ戻る。
【0037】
ステップS203が肯定判断されるとステップS205へ進み、GPSセンサ11cで検出したGPS信号に基づいて算出されるGPS方位を読み込んでステップS207へ進む。ステップS207において、ステップSS205で読み込んだGPS方位の推移に基づいて、車両が直進しているか否かを判断する。ステップS207が肯定判断されるとステップS209へ進み、フラグBに1をセットして、ステップS211へ進む。ステップS207が否定判断されるとステップS213へ進み、フラグBに0をセットして、ステップS211へ進む。ステップS211において、イグニッションキーによりアクセサリーOFF(ACC OFF)にされたか否かを判断する。ステップS211が否定判断されるとステップS201へ戻る。ステップS211が肯定判断されると本プログラムを終了する。
【0038】
図6は、上述した条件(c)の判断動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリーON(ACC ON)になると、カーナビゲーション装置1の電源が入り、図6に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU101で実行される。ステップS301において、メモリ102で記憶している角速度信号の出力値を読み込んでステップS303へ進む。ステップS303において、ステップS301で読み込んだ角速度信号の出力値について、直近の所定時間分の出力値のばらつきを求める。ここでは、角速度信号の出力値に対して、たとえば分散(または標準偏差)を求めることでばらつきを求める。
【0039】
ステップS303が実行されるとステップS305へ進み、ステップS303で求めたばらつきが小さいか否かを判断する。すなわち、ステップS303で求めた分散(または標準偏差)の値が所定の値よりも小さいか否かを判断する。ステップS305が肯定判断されるとステップS307へ進み、フラグCに1をセットして、ステップS309へ進む。ステップS305が否定判断されるとステップS311へ進み、フラグCに0をセットして、ステップS309へ進む。ステップS309において、イグニッションキーによりアクセサリーOFF(ACC OFF)にされたか否かを判断する。ステップS309が否定判断されるとステップS301へ戻る。ステップS309が肯定判断されると本プログラムを終了する。
【0040】
図7は、操舵角検出信号の出力値のゼロ点の設定動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリーON(ACC ON)になると、カーナビゲーション装置1の電源が入り、図7に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU101で実行される。ステップS401において、フラグA〜Cの設定値を読み込んでステップS405へ進む。ステップS405において、ステップS401で読み込んだフラグA〜Cの設定値が全て1であるか否かを判断する。ステップS405が否定判断されるとステップS401へ戻る。
【0041】
ステップS405が肯定判断されるとステップS407へ進み、図4のステップS103で操舵角検出信号の出力値に対して積算平均化処理して得られた値を操舵角検出信号の出力値のゼロ点として設定してステップS409へ進む。ステップS409において、イグニッションキーによりアクセサリーOFF(ACC OFF)にされたか否かを判断する。ステップS409が否定判断されるとステップS401へ戻る。ステップS409が肯定判断されると本プログラムを終了する。
【0042】
図8は、角速度信号の補正値ωaの設定動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリーON(ACC ON)になると、カーナビゲーション装置1の電源が入り、図8に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU101で実行される。ステップS501において、各種のデータを読み込んでステップS503へ進む。ステップS503において、ステップS501で読み込んだ道路データおよび車両の現在位置の情報に基づいて、車両が走行する道路の形状が直線であるか否かを判断する。ステップS503が否定判断されるとステップS501へ戻る。
【0043】
ステップS503が肯定判断されるとステップS505へ進み、ステップS501で読み込んだ車速が30km/h以下であるか否かを判断する。ステップS505が肯定判断されるとステップS507へ進み、ステップS501でメモリ102から読み込んだ操舵角検出信号の出力値について、たとえば上述したように積算平均化処理を行うことによって、直近の所定時間分の出力値がゼロ点近傍で安定しているか否かを判断する。ステップS507が否定判断されるとステップS501へ戻る。
【0044】
ステップS507が肯定判断されるとステップS508へ進み、ステップS507で操舵角検出信号の出力値がゼロ点近傍で安定していると判断した期間(直近の所定時間)の角速度信号の出力値をメモリ102から読み込んで、出力値のばらつきを求める。ここでは、角速度信号の出力値に対して、たとえば分散(または標準偏差)を求めることでばらつきを求める。そして、求めたばらつきが小さいか否か、すなわち、求めた分散(または標準偏差)の値が所定の値よりも小さいか否かを判断する。ステップS508が否定判断されるとステップS501へ戻る。
【0045】
ステップS508が肯定判断されるとステップS509へ進み、ステップS507で操舵角検出信号の出力値がゼロ点近傍で安定していると判断した期間(直近の所定時間)の角速度信号の出力値の平均値を算出してステップS511へ進む。ステップS511において、ステップS509で算出した角速度信号の平均値、または、後述するステップS517で算出した角速度信号の平均値をバイアス値、すなわち角速度信号の補正値ωaとして設定してステップS513へ進む。
【0046】
ステップS513において、イグニッションキーによりアクセサリーOFF(ACC OFF)にされたか否かを判断する。ステップS513が否定判断されるとステップS501へ戻る。ステップS513が肯定判断されると本プログラムを終了する。
【0047】
ステップS505が否定判断されるとステップS515へ進み、ステップS501で読み込んだ、図5のステップS209またはステップS213で設定されるフラグBの設定値が1であるか否かを判断する。ステップS515が否定判断されるとステップS501へ戻る。ステップS515が肯定判断されるとステップS516へ進み、車速が所定の速度を超え、かつ、GPS方位が略一定で安定していると判断される期間にジャイロセンサ11aから出力される角速度信号について、ステップS508と同様に、ばらつきを求めて、ばらつきが小さいか否かを判断する。ステップS516が否定判断されるとステップS501へ戻る。
【0048】
ステップS516が肯定判断されるとステップS517へ進み、車速が所定の速度を超え、かつ、GPS方位が略一定で安定していると判断される期間にジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の平均値を算出してステップS511へ進む。
【0049】
上述したカーナビゲーション装置1では、次の作用効果を奏する。
(1) 平均化する処理を行った操舵角検出信号の出力値に基づいて車両が直進しているか否かを判断し、車両が直進していると判断されると、ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号のばらつきが小さければ、角速度信号の平均値を角速度信号の補正値ωaとして設定するように構成した。したがって、直進走行時のハンドルの遊びや操舵角検出信号の出力値の微少な変動の影響を抑制して車両が直進しているか否かを判断できるので、車両が直進しているときに角速度信号の補正値ωaを設定する機会を増やすことができる。これにより、車両の進行方位の算出精度、および、車両の移動量の算出精度を向上して、車両の現在位置の算出精度を向上できる。
【0050】
(2) 車両が所定の速度以上の車速で走行している場合であって、GPSセンサ11cで検出したGPS信号に基づいて算出される車両の進行方位(GPS方位)が略一定で安定していると判断されるときに、操舵角センサ2から得られる操舵角検出信号を平均化する処理をして得られる値を操舵角検出信号の出力値のゼロ点として設定するように構成した。これにより、たとえば、路面の轍の影響や、左右のタイヤの空気圧の相違などによってハンドルが左右いずれか一方にとられたままとなっても、操舵角検出信号の出力値のゼロ点を設定できるので、操舵角センサ2から得られる操舵角検出信号に基づいて車両が直進しているか否かを判断できる。これにより、車両が直進しているときに角速度信号の補正値ωaを設定する機会をさらに増やすことができるので、車両の進行方位の算出精度、および、車両の移動量の算出精度を向上して、車両の現在位置の算出精度をさらに向上できる。
【0051】
(3) 道路データに基づいて車両が走行する道路の形状が直線であるか否かを判断することで、車両が走行している道路が直線道路であるか否かを判断するように構成した。そして、道路データに基づいて車両が走行している道路が直線道路であると判断され(上述した条件(B)を満たし)、かつ、車両のハンドルの操舵状況から車両が直進していると判断される(上述した条件(A)を満たす)場合に角速度信号の補正値ωaが設定されるように構成した。したがって、たとえば、曲率半径の大きいループ橋を走行した際に、上述した条件(A)では車両が直進しているとして誤った判断がなされることがあっても、角速度信号の補正値ωaが誤って設定されることを防止できる。これにより、車両の進行方位の算出精度、および、車両の移動量の算出精度の低下を防止して、車両の現在位置の算出精度低下を防止できる。
【0052】
(4) 上記条件(c)に示すように、ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の出力値が略一定で安定していることを操舵角検出信号の出力値のゼロ点を設定する際の条件とするように構成した。これにより、車両が直進状態であるか否かの判断精度を向上できるので、車両の進行方位の算出精度、および、車両の移動量の算出精度の向上に資する。
【0053】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、上記条件(a)〜(c)の全て満たす場合に、車両が直進状態であると判断して、操舵角検出信号の出力値のゼロ点として設定するように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、上記条件(a),(b)の双方を満たす場合に、車両が直進状態であると判断してもよく、上記条件(a),(c)の双方を満たす場合に、車両が直進状態であると判断してもよい。また、上記条件(a)を満たし、かつ、道路データに基づいて車両が走行する道路の形状が直線であると判断される場合に車両が直進状態であると判断して、操舵角検出信号の出力値のゼロ点として設定するように構成してもよい。
【0054】
(2) 上述の説明では、上記条件(A)における、操舵角検出信号の出力値がゼロ点近傍で安定しているか否かを判断する際や、上記条件(a)における、車両のハンドルの操舵角度が略一定の値で安定しているか否かを判断する際などに、積算平均化処理を行うように構成しているが、本発明はこれに限定されない。積算平均化処理に代えて分散(または標準偏差)を求めることでばらつきを求め、分散(または標準偏差)の値が所定の値よりも小さい場合に操舵角検出信号の出力値がゼロ点近傍で安定している、または、車両のハンドルの操舵角度が略一定の値で安定していると判断するようにしてもよい。また、積算平均化処理に代えて、最小二乗法やカルマンフィルタなど、他の手法を用いてもよい。
【0055】
(3) 上述の説明では、上述した2つの条件(A),(B)をともに満たす場合には車両が直進状態であると判断して、ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号のばらつきが小さければ、角速度信号の平均値を角速度信号の補正値ωaとして設定するように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の平均値に代えて、ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の出力値に積算平均化処理を行って得られる値を角速度信号の補正値ωaとして設定するように構成してもよい。
【0056】
(4) 上述の説明では、上述した条件(a)〜(c)を全て満たすと判断すると、条件(a)を判断する際に操舵角検出信号の出力値に積算平均化処理をするなどして得られた値を、操舵角検出信号の出力値のゼロ点として設定するように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、上述した条件(a)〜(c)を全て満たすと判断すると、操舵角検出信号の出力値を単純に平均した値、すなわち平均値を、操舵角検出信号の出力値のゼロ点として設定するように構成してもよい。
【0057】
(5) 上述の説明では、車速が30km/hを超える場合には、GPS方位が略一定で安定していると判断されると、GPS方位が略一定で安定していると判断される期間にジャイロセンサ11aから出力される角速度信号について、ばらつきが小さければ、当該期間の角速度信号の平均値を算出し、算出した平均値を角速度信号の補正値ωaとして設定するように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、車速が30km/hを超える場合であっても、上述した「(2)車両が所定の速度以下の車速で走行している場合」と同様の処理を行うように構成しても良い。
【0058】
また、車速が30km/hを超える場合には、次のようにして角速度信号の補正値ωaとして設定するように構成してもよい。GPS方位が略一定で安定していると判断されると、GPS方位が略一定で安定していると判断される期間にジャイロセンサ11aから出力される角速度信号について、ばらつきが小さければ、当該期間の角速度信号の平均値を算出し、算出した平均値を角速度信号の補正値ωaの第1の候補とする。上述した「(2)車両が所定の速度以下の車速で走行している場合」と同様の処理を行うことで得られる、ジャイロセンサ11aから出力される角速度信号の平均値を第2の候補とする。そして、これら第1および第2の候補のいずれか一方を角速度信号の補正値ωaとして設定するように構成してもよい。その際、操舵角検出信号の出力値から判断される車両の挙動と、GPS方位の変化から判断される車両の挙動とに明らかな差が生じた場合には、上記第2の候補を角速度信号の補正値ωaとして設定するように構成してもよい。
(6) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0059】
上述の実施の形態およびその変形例において、たとえば、角速度検出手段はジャイロセンサ11aに、地図データ記憶手段は地図記憶装置109にそれぞれ対応する。旋回状態検出手段、車両直進判断手段、角速度検出信号補正値算出手段、および、操舵角度検出信号補正値算出手段は、CPU101と、メモリ102に格納されてCPU101で実行されるプログラムとによって実現される。進行方位検出手段は、GPSセンサ11cと、CPU101と、メモリ102に格納されてCPU101で実行されるプログラムとによって実現される。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】カーナビゲーション装置1の全体構成を示す図である。
【図2】地図表示用データ(道路データ)の構成を示した図である。
【図3】現在位置算出処理の動作を示したフローチャートである。
【図4】条件(a)の判断動作を示したフローチャートである。
【図5】条件(b)の判断動作を示したフローチャートである。
【図6】条件(c)の判断動作を示したフローチャートである。
【図7】操舵角検出信号の出力値のゼロ点の設定動作を示したフローチャートである。
【図8】角速度信号の補正値ωaの設定動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 カーナビゲーション装置 2 操舵角センサ
11 現在地検出装置 11a ジャイロセンサ
11c GPSセンサ 11d 車速センサ
100 制御装置 101 CPU
102 メモリ 109 地図記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の角速度を検出して、検出した角速度に係る角速度検出信号を出力する角速度検出手段と、
前記角速度検出手段から出力される前記角速度検出信号と、角速度検出信号の補正値とに基づいて、前記車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段と、
前記車両の操舵角度を検出する操舵角度センサから出力される操舵角度検出信号を平均化する処理をして、前記車両が直進しているか否かを判断する車両直進判断手段と、
前記車両直進判定手段によって前記車両が直進していると判断されると、前記旋回状態検出手段で前記車両が直進状態であると検出されるように、前記角速度検出信号の補正値を算出する角速度検出信号補正値算出手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
GPS衛星から送信されるGPS信号に基づいて、前記車両の進行方位を検出する進行方位検出手段と、
前記進行方位検出手段が検出する前記車両の進行方位に基づいて、前記車両が直進していると判断されると、操舵角度検出信号の補正値を算出する操舵角度検出信号補正値算出手段をさらに備え、
前記車両直進判断手段は、前記操舵角度検出信号を平均化する処理をして、前記車両が直進しているか否かを判断する際に、前記操舵角度検出信号補正値算出手段によって算出された前記操舵角度検出信号の補正値を参照することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
少なくとも前記車両が走行する道路の道路方位に関するデータを記憶する地図データ記憶手段をさらに備え、
前記車両直進判断手段は、前記地図データ記憶手段から読み込んだ前記道路方位に基づいて前記車両が走行する道路が直線道路であると判定し、かつ、操舵角度検出信号を平均化する処理の結果から前記車両が直進していると判定されると、前記車両が直進していると判断することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
車両の角速度を検出して、検出した角速度に係る角速度検出信号を出力し、
前記出力された前記角速度検出信号と、角速度検出信号の補正値とに基づいて、前記車両の旋回状態を検出し、
前記車両の操舵角度を検出する操舵角度センサから出力される操舵角度検出信号を平均化する処理をして、前記車両が直進しているか否かを判断し、
前記操舵角度検出信号を平均化する処理をした結果に基づいて前記車両が直進していると判断されると、前記角速度検出信号と前記角速度検出信号の補正値とに基づいて検出される前記車両の旋回状態が直進状態とされるように、前記角速度検出信号の補正値を算出することを特徴とする角速度検出信号補正値算出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の角速度検出信号補正値算出方法において、
GPS衛星から送信されるGPS信号に基づいて、前記車両の進行方位を検出し、
前記検出した前記車両の進行方位に基づいて、前記車両が直進していると判断されると、操舵角度検出信号の補正値を算出し、
前記操舵角度検出信号を平均化する処理をして、前記車両が直進しているか否かを判断する際に、前記算出された前記操舵角度検出信号の補正値を参照することを特徴とする角速度検出信号補正値算出方法。
【請求項6】
請求項4に記載の角速度検出信号補正値算出方法において、
少なくとも前記車両が走行する道路の道路方位に関するデータを読み込み、
前記読み込んだ道路方位に基づいて前記車両が走行する道路が直線道路であると判定し、かつ、操舵角度検出信号を平均化する処理の結果から前記車両が直進していると判定されると、前記車両が直進していると判断することを特徴とする角速度検出信号補正値算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−121957(P2009−121957A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296416(P2007−296416)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】