説明

ナビゲーション装置

【課題】道路データに道路幅や車線数が含まれていない場合であっても、車両の現在位置を精度よく算出することができるナビゲーション装置20を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置20は、車両が交差点の手前所定距離を通過したときからリンクの方向と所定の角度をなす方向への車両の移動量の累積を開始し、当該交差点を右折した場合に、右折後の車両の現在位置における車両の進行方向へ、累積した移動量を、当該車両の現在位置に加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体に搭載され、当該移動体の現在位置を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、それぞれの道路の幅のデータを有する地図データを参照して、交差点を右折または左折する前の道路の幅に基づいて、右折または左折した後の車両の現在位置を補正することにより、精度良く車両の現在位置を表示する現在位置算出システムが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−334353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地図データに道路幅のデータではなく道路の車線数のデータが格納されている場合であっても、その車線数と一般的な道路の1車線の幅とに基づいて、道路幅を概算することができる。これにより、地図データに道路の車線数のデータが格納されている場合にも、上記特許文献1に記載のシステムを用いることによって車両の現在位置を高い精度で算出することができる。
【0005】
ところで、従来のナビゲーション装置では、経路探索や探索した経路の誘導に重点が置かれており、ナビゲーション装置によって参照される地図データに含まれる道路データには、道路種別や旅行時間等が対応付けられているものの、道路幅や車線数が対応付けられていない場合があった。そのため、ナビゲーション装置は、実際の道路の道路幅を正確に取得することができず、車両の現在位置を精度よく補正することができない場合があった。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、道路データに道路幅や車線数のデータが含まれていない場合であっても、車両の現在位置をより精度よく算出することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のナビゲーション装置は、車両が交差点の手前所定距離を通過したときからリンクの方向と所定の角度をなす方向への車両の移動量の累積を開始し、当該交差点を右折した場合に、右折後の車両の現在位置における車両の進行方向へ、累積した移動量を、当該車両の現在位置に加える。
【0008】
また、本発明は、例えば、車両に搭載されるナビゲーション装置であって、定期的に、前回算出した車両の現在位置からの相対変位を算出して、車両の現在位置を更新する現在位置更新手段と、所定のタイミングで、現在位置更新手段が更新した車両の現在位置を、地図上の道路を構成する各リンクのリンクデータと照らし合わせて、いずれかのリンク上に、車両の現在位置を合わせ込むと共に、現在位置更新手段に、算出した車両の相対変位に基づいて、当該合わせ込んだ車両の現在位置を更新させるマップマッチ処理手段と、各リンクのリンクデータを参照して、車両の現在位置の前方所定距離以内に右折すべき交差点が存在する場合に、リンクの方向と所定の角度をなす方向への車両の移動量の累積を開始する移動量累積手段と、車両が交差点を右折した場合に、車両が当該交差点を右折するまで移動量累積手段によって累積された移動量の累積値に基づいて、交差点を右折した後の車両の現在位置を補正し、現在位置更新手段に、算出した車両の相対変位に基づいて、補正した車両の現在位置を更新させる現在位置補正手段と、現在位置更新手段が定期的に更新する車両の現在位置を表示する表示手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、道路データに道路幅や車線数のデータが含まれていない場合であっても、車両の現在位置を精度よく算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るナビゲーションシステム10の構成を示すブロック図である。ナビゲーションシステム10は、自動車等の移動体に搭載され、入力装置11、センサ12、出力装置13、およびナビゲーション装置20を備える。
【0012】
センサ12は、GPS受信機や、加速度センサ、方位センサ、車速センサ等であり、測地衛星に対する車両の現在位置や、車両の進行方位、車両の移動距離等を測定する。
【0013】
ナビゲーション装置20は、道路データを含む地図データを格納しており、センサ12からの測定信号に基づいて車両の相対変位を算出し、地図データおよび算出した相対変位に基づいて車両の現在位置を算出し、算出した車両の現在位置を出力装置13に表示する。
【0014】
また、ナビゲーション装置20は、入力装置11を介して、ナビゲーションシステム10のユーザから出発地点や目的地点、探索条件等と共に推奨経路の探索指示を受け取った場合に、地図データに含まれる道路データを参照して、出発地点から目的地点までの推奨経路を探索し、探索した推奨経路の経由地点や所要時間等を出力装置13に表示する。
【0015】
そして、ナビゲーション装置20は、入力装置11を介して、ナビゲーションシステム10のユーザから推奨経路に基づく経路誘導の指示を受け取った場合、車両の走行に応じて車両の現在位置を算出する度に、算出した車両の現在位置を、探索した推奨経路と共に出力装置13に表示する。
【0016】
なお、出力装置13は、車両の現在位置を画像として表示すると共に、音声を再生する機能を有し、ナビゲーション装置20が推奨経路と共に生成した音声ガイダンス等を再生するものであってもよい。
【0017】
次に、ナビゲーション装置20についてさらに詳しく説明する。ナビゲーション装置20は、マップマッチ処理部200、現在位置更新部201、現在位置補正部202、右折判定部203、移動量累積部204、地図データ格納部205、経路誘導部206、および表示部207を有する。
【0018】
地図データ格納部205は、例えばハードディスク型記憶装置であり、道路を複数のリンクと呼ばれる線分で近似したリンクデータおよび地図データを格納する。それぞれのリンクには、当該リンクの長さや、一方通行または相互通行の別、車両が走行した場合の旅行時間、当該リンクの始点座標および終点座標等が対応付けられている。
【0019】
現在位置更新部201は、センサ12からの測定信号に基づいて、車両の走行距離を算出し、算出した走行距離を累積する。そして、現在位置更新部201は、車両の走行距離が所定距離(例えば2m)に達する都度、マップマッチ処理部200によって前回算出された車両の現在位置に、センサ12から取得した車両の進行方位の方向について、当該所定距離を加算することにより、車両の現在位置を移動させる、いわゆるデッドレコニングを行う。そして、現在位置更新部201は、デッドレコニングを行った車両の現在位置であるデッドレコニング位置を、現在位置補正部202、移動量累積部204、経路誘導部206、および表示部207へそれぞれ出力する。
【0020】
また、マップマッチ処理部200は、センサ12からの測定信号に基づいて、車両の走行距離を累積し、累積した走行距離が所定距離(例えば20m)に達する都度、現在位置更新部201によってデッドレコニングを施されたデッドレコニング位置についてマップマッチ処理を行う。マップマッチ処理とは、地図データ格納部205を参照して、デッドレコニング位置から所定範囲内のリンクであって、かつ、当該デッドレコニング位置における車両の進行方位との方位差が所定角度以内のリンクを抽出し、抽出したリンク上に、今回の候補点を算出する。デッドレコニング位置から所定範囲内にリンクが存在しない場合、マップマッチ処理部200は、当該デッドレコニング位置をフリー状態の今回の候補点として算出する。
【0021】
そして、マップマッチ処理部200は、算出したデッドレコニング位置における車両の進行方位と、算出した今回の候補点が位置するリンクの方位との方位差θ、および当該デッドレコニング位置から当該今回の候補点が位置するリンクまでの距離Lに基づいて、今回の候補点のそれぞれの信頼度を算出する。そして、マップマッチ処理部200は、今回の候補点のそれぞれの信頼度に基づいて、今回の候補点の中から今回の車両の現在位置を決定する。マップマッチ処理部200は、例えば最も信頼度の高い候補点を車両の現在位置として決定する。
【0022】
表示部207は、現在位置更新部201が算出したデッドレコニング位置を、地図データ格納部205に格納された地図データと共に出力装置13に表示する。
【0023】
経路誘導部206は、入力装置11を介して、ナビゲーションシステム10のユーザから出発地点や目的地点、探索条件等と共に推奨経路の探索指示を受け取った場合に、地図データ格納部205を参照して、地図データに含まれる道路データに基づいて、出発地点から目的地点までの推奨経路を、例えばダイクストラ法等を用いて探索し、探索した推奨経路を経由地点や所要時間等の情報と共に出力装置13に表示する。
【0024】
また、経路誘導部206は、入力装置11を介して、探索した推奨経路に基づく経路誘導の指示をユーザから受け取った場合に、現在位置更新部201から表示候補点に対応する現在位置を取得し、当該現在位置付近の推奨経路を出力装置13に表示する。このとき、経路誘導部206は、推奨経路上であって、現在位置更新部201から取得した現在位置の前方所定距離(例えば700m、300m、または100m等)以内に右折または左折すべき交差点が存在する場合、出力装置13に音声を再生させる等によって右折または左折すべき交差点が前方に存在する旨を車両の運転者に通知する。
【0025】
さらに、経路誘導部206は、現在位置更新部201から取得した現在位置の前方所定距離(例えば200m)以内に右折すべき交差点が存在する場合に、当該交差点に関する情報を右折判定部203に通知する。
【0026】
右折判定部203は、車両の前方所定距離以内の右折すべき交差点に関する情報を経路誘導部206から通知された場合に、リンクの方向と所定の角度をなす方向への車両の移動量の累積開始を移動量累積部204に指示すると共に、地図データ格納部205内の道路データおよびセンサ12からの測定信号に基づいて、車両が当該交差点を右折したか否かの監視を開始する。ここで、リンクの方向と所定の角度をなす方向とは、例えば、リンクと直角の方向である。
【0027】
そして、右折判定部203は、経路誘導部206から右折すべき交差点の情報を受けた後に車両が当該交差点を右折したことを検出した場合に、リンクの方向と所定の角度をなす方向への車両の移動量の累積停止を移動量累積部204に指示すると共に、累積開始の指示に応じて累積された移動量を移動量累積部204から取得する。そして、右折判定部203は、取得した移動量を現在位置補正部202へ送る。
【0028】
移動量累積部204は、移動量の累積開始を右折判定部203から指示された場合に、現在位置更新部201から随時出力されるそれぞれのデッドレコニング位置および地図データ格納部205内の道路データに基づいて、リンクの方向と所定の角度をなす方向への車両の移動量を随時算出して累積する。累積の具体的な処理については後述する。
【0029】
そして、移動量累積部204は、右折判定部203から累積停止を指示された場合に、リンクの方向と所定の角度をなす方向への車両の移動量の累積を停止すると共に、累積開始を指示されてから累積停止を指示されるまでに累積した移動量を右折判定部203へ送る。
【0030】
現在位置補正部202は、右折判定部203から移動量の累積値を受け取った場合に、右折後の車両のデッドレコニング位置における車両の進行方向へ、右折判定部203から受け取った移動量累積値を、当該デッドレコニング位置に加えることにより、右折後の車両のデッドレコニング位置を補正する。そして、現在位置補正部202は、補正した新たなデッドレコニング位置で、以後のデッドレコニング処理を行うよう現在位置更新部201に指示する。
【0031】
図2は、移動量の累積処理を説明するための概念図である。図2(a)は、実際の車両の挙動を示し、図2(b)は、図2(a)に示された車両の挙動に対応するカーマーク35の挙動を示す。
【0032】
図2(a)は、交差点付近の一方通行の道路において、車両が走行車線31bから右折専用の車線31cへ車線変更を行った例を示している。図2(b)は、カーマーク35が、マップマッチ処理部200によって所定のタイミングでリンク36上にマップマッチされた(カーマーク35a)後に、現在位置更新部201によってデッドレコニングされ(カーマーク35b〜カーマーク35f)、その後、再びマップマッチ処理部200によってマップマッチされた(カーマーク35g)様子を示している。
【0033】
移動量累積部204は、右折判定部203から車両の移動量の累積開始を指示された場合に、現在位置更新部201から出力されるデッドレコニング位置毎に、前回のデッドレコニング位置からの相対変位のうち、リンク36と所定の角度をなす方向への車両の移動量を求め、求めた移動量を移動量の一次累積値として保持する。そして、移動量累積部204は、車両が車線変更を行ったか否かを判定し、車線変更を行った場合に、移動量の一次累積値を累積値として加算する。移動量累積部204は、例えば旋回前の車両の進行方位と旋回後の車両の進行方位との方位差が所定角度(例えば±10度)以内の場合に車線変更を行ったと判定する。
【0034】
図2(b)に示す例では、移動量累積部204は、旋回開始前のカーマーク35bの進行方位と、旋回終了後のカーマーク35fの進行方位との方位差を算出し、当該方位差が所定角度以内と判定して、カーマーク35bから35fまでの間の、リンク36と所定の角度をなす方向への移動量であるl1〜l4を、移動量として累積する。
【0035】
図3は、右折専用の車線を通って交差点を右折した場合のデッドレコニング位置の補正処理を説明するための概念図である。
【0036】
右折専用の車線を走行中に、マップマッチ処理部200によってマップマッチ処理が行われると、本図に示すように、リンク52に対応する位置から右方向へ離れた車両位置40に実際の車両が位置する場合であっても、車両位置40に対応するカーマーク45は、リンク52上に配置される。この状態で、車両が交差点を右折すると、右折後の車両位置41に対応するカーマークは、デッドレコニング処理によって、実際の車両位置41よりも後方である46の位置に算出されることになる。
【0037】
このままカーマーク46を車両の現在位置として採用すると、カーマーク46は、実際の車両の位置よりも後方に表示されることになる。この場合、例えば、図4(a)に示すように、高速道路60の脇を通る側道61および側道62を通って車両64が走行する場合、車両64の位置は、図4(b)に示すように、実際は側道61に対応するリンク71から側道62に対応するリンク72へ至っているにもかかわらず、高速道路60に対応するリンク70上にカーマーク78が表示される場合があった。そのため、実際には、車両64は、高速道路60を走行していないにもかかわらず、カーマーク78がリンク70上に表示され、ユーザに混乱を与える場合があった。
【0038】
そのため、本発明のナビゲーション装置20は、車両の右折を検出した場合に、図3に示すように、右折後の車両のデッドレコニング位置における車両の進行方向へ、累積した移動量累積値(図3中のL)を、当該デッドレコニング位置であるカーマーク46に加算することにより、右折後の車両のデッドレコニング位置を補正する。これにより、カーマーク47の位置を、実際の車両位置41に近い位置に表示することができる。従って、道路データに道路幅や車線数が含まれていない場合であっても、ナビゲーション装置20は、より精度よく車両の現在位置を算出することができる。
【0039】
図5は、経路探索処理および経路誘導処理の一例を示すフローチャートである。ナビゲーション装置20に電源が投入される等の所定のタイミングで、経路誘導部206は、本フローチャートに示す処理を開始する。
【0040】
まず、経路誘導部206は、入力装置11を介して、ユーザから出発地点や目的地点、探索条件等と共に、推奨経路の探索指示を受け付けたか否かを判定する(S100)。経路探索指示を受け付けた場合(S100:Yes)、経路誘導部206は、地図データ格納部205が格納する地図データに含まれる道路データを参照して、出発地点から目的地点までの推奨経路を探索する(S101)。そして、経路誘導部206は、探索した推奨経路の経由地点や所要時間等を出力装置13に表示すると共に、探索結果を格納し(S102)、再びステップ100に示した処理を行う。
【0041】
ステップ100において、経路探索指示を受け付けていない場合(S100:No)、経路誘導部206は、入力装置11を介して、探索した推奨経路に基づく経路誘導の指示をユーザから受け付けたか否かを判定する(S103)。経路誘導指示を受け付けていない場合(S103:No)、経路誘導部206は、再びステップ100に示した処理を行う。
【0042】
ステップ103において、経路誘導指示を受け付けた場合(S103:Yes)、経路誘導部206は、現在位置更新部201から車両の現在位置を取得する(S104)。そして、経路誘導部206は、取得した車両の現在位置付近の推奨経路を出力装置13に表示する(S105)。
【0043】
次に、経路誘導部206は、推奨経路に基づいて、車両の現在位置の前方所定距離(本例では700m、300m、または100m)以内に、右折または左折すべき交差点が存在するか否かを判定する(S106)。右折または左折すべき交差点が存在しない場合(S106:No)、経路誘導部206は、ステップ108に示す処理を行う。
【0044】
右折または左折すべき交差点が存在する場合(S106:Yes)、経路誘導部206は、音声ガイダンスを出力装置13に再生させる、交差点の拡大図を出力装置13に表示させる等により、前方所定距離以内に、右折または左折すべき交差点が存在する旨を運転者に通知する(S107)。
【0045】
次に、経路誘導部206は、前方所定距離(本例では200m)以内に、右折すべき交差点が存在するか否かを判定する(S108)。右折すべき交差点が存在しない場合(S108:No)、経路誘導部206は、ステップ110に示す処理を行う。
【0046】
右折すべき交差点が存在する場合(S110:Yes)、経路誘導部206は、右折判定部203に当該交差点に関する情報を通知し(S109)、経路誘導の終了指示をユーザから受け付けたか否かを判定する(S110)。経路誘導の終了指示を受け付けていない場合(S110:No)、経路誘導部206は、再びステップ104に示した処理を行う。経路誘導の終了指示を受け付けた場合(S110:Yes)、経路誘導部206は、再びステップ100に示した処理を行う。
【0047】
図6は、現在位置補正処理の一例を示すフローチャートである。図5のステップ109において、前方所定距離(本例では200m)以内の右折すべき交差点に関する情報を通知された場合に、右折判定部203は、本フローチャートに示す現在位置補正処理を開始する。
【0048】
まず、右折判定部203は、リンクの方向と所定の角度をなす方向への車両の移動量の累積開始を移動量累積部204に指示する(S200)。移動量累積部204は、現在位置更新部201から出力されるデッドレコニング位置毎に、前回のデッドレコニング位置からの相対変位のうち、リンク36と所定の角度をなす方向への車両の移動量を求め、求めた移動量を移動量の一次累積値として保持する。そして、移動量累積部204は、車両が車線変更を行ったか否かを判定する(S201)。車両が車線変更を行っていない場合(S201:No)、右折判定部203は、ステップ203に示す処理を実行する。
【0049】
車両が車線変更を行った場合(S201:Yes)、移動量累積部204は、移動量の一次累積値を累積値として加算する(S202)。そして、右折判定部203は、経路誘導部206から受信した交差点に関する情報およびセンサ12からの測定信号に基づいて、車両が当該交差点を右折したか否かを判定する(S203)。
【0050】
車両が右折すべき交差点を右折した場合(S203:Yes)、右折判定部203は、移動量の累積停止を移動量累積部204に指示すると共に、移動量の累積値を移動量累積部204から取得する。そして、右折判定部203は、取得した移動量の累積値を現在位置補正部202へ送る。現在位置補正部202は、右折判定部203から移動量の累積値を受け取り、右折後の車両のデッドレコニング位置における車両の進行方向へ、右折判定部203から受け取った移動量の累積値を、当該デッドレコニング位置に加えることにより、右折後の車両のデッドレコニング位置を補正し(S204)、右折判定部203は、本フローチャートに示した現在位置補正処理を終了する。
【0051】
車両が右折すべき交差点を右折していない場合(S203:No)、右折判定部203は、経路誘導部206から受信した交差点に関する情報およびセンサ12からの測定信号に基づいて、車両が当該交差点を直進または左折することにより通過したか否かを判定する(S205)。車両が右折すべき交差点を通過していない場合(S205:No)、移動量累積部204は、再びステップ201に示した処理を実行する。
【0052】
車両が右折すべき交差点を通過した場合(S205:Yes)、右折判定部203は、移動量の累積停止および累積値の破棄を移動量累積部204に指示し(S205)、本フローチャートに示した現在位置補正処理を終了する。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0054】
上記説明から明らかなように、本実施形態のナビゲーションシステム10によれば、道路データに道路幅や車線数が含まれていない場合であっても、車両の現在位置を精度よく算出することができる。これにより、右折専用の車線を通って車両が交差点を右折した場合に、車両の現在位置を、実際の車両の位置に近い位置に表示することができる。
【0055】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0056】
例えば、上記した実施形態では、一方通行の道路において右折専用の車線を通って車両が交差点を右折する場合を例に説明したが、本発明はこれに限られず、一方通行の道路において左折専用の車線を通って車両が交差点を左折する場合においても、右折と左折とを逆に適用することにより、本発明を適用することができる。
【0057】
また、他の形態として、図7(a)に示すように、分岐点を通過した直後の車両の現在位置の算出時に、本発明において算出された、リンクの方向と所定の角度をなす方向への車両の移動量の累積値を適用することにより、より高い精度で車両の現在位置を表示することができる。例えば、図7(a)に示すように、車両が幹線道路81から側道82へ進入する場合、通常、車両は、側道82が接続されている側の車線へ車線変更を行った後に、分岐点を通って幹線道路81から側道82へ進入する。
【0058】
このとき、図7(b)に示すように、車両が幹線道路81を走行しているときにマップマッチ処理が行われると、車両の車線変更に応じてリンク95から離れた位置に算出されたカーマーク86が、リンク95上に引き戻されてカーマーク87となってします。そして、幹線道路81から側道82へ進入するための車両の旋回挙動(車両位置80b〜80e)に対応して生成されたカーマーク87〜カーマーク90には、幹線道路81内での車線変更分の移動量が加味されない。そのため、カーマーク90が幹線道路81に対応するリンク97に近い位置に算出され、マップマッチ処理により、カーマークがリンク97上に表示される場合がある。
【0059】
これに対して、幹線道路81と側道82との分岐点の手前所定距離(例えば200m)からリンクの方向と所定の角度をなす方向への車両の移動量を累積し、車両が分岐点を通過した場合に、車両の現在位置に、移動量の累積値を加算することにより、図7(b)に示すように、カーマーク90がカーマーク91の位置に補正され、カーマーク91の位置からマップマッチ処理が行われることにより、実際の車両が走行している側道82に対応するリンク98上にカーマーク92を表示することができる。
【0060】
なお、移動量の累積値をカーマーク90に加算する場合、加算方向は、例えば、幹線道路81と側道82との分岐点に対応する道路データ上のノード96に接続されているリンクであって、当該分岐点に進入する際に通過するリンク95の方向と直角をなす方向であることが好ましい。
【0061】
また、本例において、ナビゲーション装置20は、地図データを有する地図データ格納部205を備えるが、他の例として、ナビゲーション装置20は、DVD等の記録媒体に記録された地図データを、DVD読取装置等を介して外部から取得してもよい。
【0062】
また、ナビゲーション装置20内のマップマッチ処理部200、現在位置更新部201、現在位置補正部202、右折判定部203、移動量累積部204、経路誘導部206、および表示部207の各機能ブロックは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよく、DSP(Digital Signal Processor)や汎用計算機等によりソフトウェア的に実現されてもよく、あるいは、部分的にハードウェアまたはソフトウェアで実現させた機能ブロックを組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係るナビゲーションシステム10の構成を示すブロック図である。
【図2】移動量の累積処理を説明するための概念図である。
【図3】右折専用の車線を通って交差点を右折した場合のデッドレコニング位置の補正処理を説明するための概念図である。
【図4】従来のナビゲーション装置における車両の現在位置表示例を説明するための概念図である。
【図5】経路探索処理および経路誘導処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】現在位置補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施形態における処理を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0064】
10・・・ナビゲーションシステム、11・・・入力装置、12・・・センサ、13・・・出力装置、20・・・ナビゲーション装置、200・・・マップマッチ処理部、201・・・現在位置更新部、202・・・現在位置補正部、203・・・右折判定部、204・・・移動量累積部、205・・・地図データ格納部、206・・・経路誘導部、207・・・表示部、30・・・車両位置、31・・・車線、35・・・カーマーク、36・・・リンク、40・・・車両位置、45・・・カーマーク、51・・・リンク、60・・・高速道路、61・・・側道、64・・・車両、70・・・リンク、74・・・カーマーク、76・・・軌跡、78・・・カーマーク、80・・・車両位置、81・・・幹線道路、82・・・側道、85・・・カーマーク、95・・・リンク、96・・・ノード、97・・・リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるナビゲーション装置であって、
定期的に、前回算出した前記車両の現在位置からの相対変位を算出して、前記車両の現在位置を更新する現在位置更新手段と、
所定のタイミングで、前記現在位置更新手段が更新した車両の現在位置を、地図上の道路を構成する各リンクのリンクデータと照らし合わせて、いずれかのリンク上に、前記車両の現在位置を合わせ込むと共に、前記現在位置更新手段に、算出した車両の相対変位に基づいて、当該合わせ込んだ車両の現在位置を更新させるマップマッチ処理手段と、
各リンクのリンクデータを参照して、前記車両の現在位置の前方所定距離以内に右折すべき交差点が存在する場合に、リンクの方向と所定の角度をなす方向への前記車両の移動量の累積を開始する移動量累積手段と、
前記車両が交差点を右折した場合に、前記車両が当該交差点を右折するまで前記移動量累積手段によって累積された前記移動量の累積値に基づいて、交差点を右折した後の前記車両の現在位置を補正し、前記現在位置更新手段に、算出した車両の相対変位に基づいて、前記補正した車両の現在位置を更新させる現在位置補正手段と、
前記現在位置更新手段が定期的に更新する車両の現在位置を表示する表示手段と
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−278976(P2007−278976A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108630(P2006−108630)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】