説明

ナビゲーション装置

【課題】車車間通信においてパケット信号の衝突確率を低減したい。
【解決手段】位置情報取得部20は、対象物の存在位置を取得する。記憶部22は、地図データ50、付加情報52を記憶する。付加情報52は、複数のエリアのそれぞれが設定された位置に関するエリア情報と、各エリアにおいて所定の周期内に信号を送信可能なタイミングおよび期間に関するタイミング情報とを含む。エリア決定部58は、エリア情報を参照しながら、存在位置が含まれるエリアを特定する。タイミング決定部60は、タイミング情報を参照しながら、特定したエリアに対して、信号を送信可能なタイミングおよび期間を特定する。無線通信部30は、特定したタイミングおよび期間にて、信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション技術に関し、特に通信機能が備えられたナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点の出会い頭の衝突事故を防止するために、路車間通信の検討がなされている。路車間通信では、路側機と車載器との間において交差点の状況に関する情報が通信される。路車間通信では、路側機の設置が必要になり、手間と費用が大きくなる。これに対して、車車間通信、つまり車載器間で情報を通信する形態であれば、路側機の設置が不要になる。その場合、例えば、GPS(Global Positioning System)等によって現在の位置情報をリアルタイムに検出し、その位置情報を車載器同士で交換しあうことによって、自車両および他車両がそれぞれ交差点へ進入するどの道路に位置するかを判断する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−202913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能が使用されている。そのため、当該無線LANでは、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。このようなCSMA/CAでは、端末装置間の距離や電波を減衰させる障害物の影響などによって、互いの無線信号が到達しない状況、つまりキャリア・センスが機能しない状況が発生する。
【0004】
このような状況は、「隠れ端末」問題とも呼ばれる。一方、このようなCSMA/CAを車車間通信に適用した場合、交差点において、建物等の存在によって隠れ端末問題が発生する。さらに、交差点では、車両の数が増加しやすくなるので、隠れ端末問題によるパケット信号の衝突頻度が高くなる。その結果、パケット信号の再送が多発し、情報の転送能力、つまりスループットの低下につながる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車車間通信においてパケット信号の衝突確率を低減させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のナビゲーション装置は、対象物の存在位置を取得する位置情報取得部と、位置情報取得部において取得した存在位置が含まれる地図データを記憶する記憶部と、記憶部において記憶した地図データ上に、位置情報取得部において取得した存在位置を対応づける処理部とを備える。記憶部において記憶した地図データには、地図上に設定された複数のエリアのそれぞれに対する設定位置を特定するためのエリア情報と、各エリアにおいて所定の周期内に無線装置から信号を送信可能なタイミングおよび期間に関するタイミング情報とが付加されている。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車車間通信においてパケット信号の衝突確率を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載されたナビゲーション装置に関する。ナビゲーション装置は、地図データを記憶しており、運転者からの要求に応じて目的地までの経路を導出するとともに、導出した経路が重ねられた地図データをモニタに表示する。また、ナビゲーション装置は、無線通信機能を有しており、車車間通信を実行する。例えば、ナビゲーション装置は、車両に搭載された撮像装置にて生成した画像を他の車両へ送信するとともに、他の装置からの画像を受信し、これをモニタに表示する。ここで、無線通信は前述のCSMA/CAを使用しており、特に交差点等において隠れ端末問題が発生しやすくなる。そのため、車車間通信におけるパケット信号の衝突確率を低減させるために、本実施例に係るナビゲーション装置は、次の処理を実行する。
【0010】
ナビゲーション装置において記憶される地図データには、付加情報が含まれている。例えば、付加情報には、各交差点での車線がエリアとして示されている。ふたつの道路が交差する交差点において、4つのエリアが含まれている。さらに、所定の周期(以下、「フレーム」という)を分割した周期のそれぞれ(以下、「スロット」という)とエリアとを対応づけた情報(以下、「タイミング情報」という)も付加情報に含まれている。ここで、タイミング情報は、周期内のスロットをエリアに割り当てる順番、各スロットの期間を含む。ナビゲーション装置は、GPSによって現在の存在位置を取得するとともに、進行方向も取得し、付加情報を参照しながら現在のエリアを特定する。
【0011】
また、ナビゲーション装置は、特定したエリアに対応したスロットの開始タイミングおよびスロットの期間を取得する。さらに、ナビゲーション装置は、GPS衛星からの信号に同期するように、フレームを生成する。生成したフレームに、スロットの開始タイミングおよびスロットの期間を反映させることによって、ナビゲーション装置は、自らに割り当てられたスロットを決定する。ナビゲーション装置は、決定したスロットにおいて、CSMA/CAを使用しながら、パケット信号を送信する。一方、ナビゲーション装置は、決定したスロットに関係なく、他の車両から送信されたパケット信号を受信する。
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る道路状況を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両10a、第2車両10b、第3車両10cが、左から右へ向かって進んでおり、第4車両10d、第5車両10eが、右から左へ向かって進んでいる。また、第6車両10f、第7車両10g、第8車両10hが、下から上へ向かって進んでおり、第9車両10i、第10車両10j、第11車両10kが、上から下へ向かって進んでいる。
【0013】
複数の車両10のそれぞれは、図示しない無線通信機能と撮像機能とを備えている。例えば、各車両10は、交差点付近の画像を撮像し、無線通信にて他の車両10と交換する。その結果、運転手は、他の車両10において撮像された画像を確認することによって、交差点付近の道路の状態を確認できる。ここで、無線通信システムは、例えば、CSMA/CAに対応する。なお、車両10間において交換される情報は、画像に限定されないが、説明を容易にするために、以下では、画像の交換について説明する。
【0014】
図2は、本発明の実施例に係るナビゲーション装置100の構成を示す。ナビゲーション装置100は、位置情報取得部20、記憶部22、特定部24、同期部26、通信制御部28、無線通信部30、アンテナ32、処理部34、IF部36、操作部38、撮像部40、モニタ42、スピーカ44、装置制御部46、画像処理部48を含む。また、記憶部22は、地図データ50、付加情報52を含み、特定部24は、エリア決定部58、タイミング決定部60を含み、処理部34は、ルート探索部54、合成部56を含む。
【0015】
位置情報取得部20は、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、図示しない車両10、つまりナビゲーション装置100が搭載された車両10の存在位置を取得する。また、進行方向、移動速度も検出される。なお、位置情報取得部20は、GPS衛星からの受信信号をもとに、1sec周期のクロック信号を検出する。クロック信号は、1sec周期のタイミングを通知するための信号である。なお、クロック信号の検出には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。記憶部22は、電子情報としての地図データ50を記憶する記憶媒体である。ここで、地図データ50は、位置情報取得部20において取得した存在位置が含まれるように規定されている。
【0016】
地図データ50は、ベクトル形式のデータにて形成されており、ベクトル形式のデータでは、道路網表現上の結節点が「ノード」として規定され、道路網表現上のノードとノードとを連結する線分、つまり道路が「リンク」として規定されている。その際、例えば、ノードが緯度、経度と対応づけられている。また、リンク内の特定の区間や位置の属性が「リンク内属性」として規定されている。属性として、例えば、踏切のデータ等が含まれる。さらに、リンク内属性は、ノードを特定するための識別番号(以下、「ノードID」という)や、車線に関する情報、例えば、車線を特定するための識別番号(以下、「車線ID」という)を含む。ここでは、道路が向かう方向ごとに車線番号が含まれる。そのため、一方通行の道路には、ひとつの車線番号が付与されているが、双方向に通行が許可されている道路には、ふたつの車線番号が付与されている。
【0017】
また、記憶部22は、地図データ50に付加されるように付加情報52を記憶する。付加情報52は、ノードIDと車線IDとの組合せにて特定されるエリア情報と、各エリアにおいてフレーム内に無線通信部30から信号を送信可能なスロットおよびスロットの期間に関するタイミング情報とを含む。なお、エリア情報は、地図上に設定された複数のエリアのそれぞれが設定された位置を特定するための情報ともいえる。
【0018】
図3は、記憶部22に記憶された付加情報52のデータ構造を示す。付加情報52には、ノードID欄200、分割数欄202、インターバル欄204、第1スロット欄206、第2スロット欄208、第3スロット欄210、第4スロット欄212、第Nスロット欄214が含まれる。ノードID欄200では、ノードIDが示されており、各ノードIDが交差点に相当する。分割数欄202は、各交差点に含まれる車線の数に相当し、これは、各ノードIDに含まれる車線IDの数ともいえる。インターバル欄204については後述する。第1スロット欄206から第Nスロット欄214は、各スロットに関する情報である。各ノードにおいて使用されるスロットの数は、分割数欄202での分割数と同一である。
【0019】
例えば、分割数欄202での分割数が「4」であれば、第1スロットから第4スロットまでが使用される。また、ひとつのフレーム内において、第1スロットから第Nスロットの順にスロットが配置される。つまり、スロットの番号が小さいほど、フレーム内の前方に配置される。第1スロット欄206から第Nスロット欄214のそれぞれには、車線IDと配分が含まれている。車線IDとノードIDとの組合せが、前述のエリア情報であり、これらをもとに、割り当てられるスロットが特定される。また、配分は、ひとつのフレーム内においてスロットが占有する割合を示す。例えば、配分が「25%」であれば、ひとつのフレームの25%がスロットの占有期間に相当する。
【0020】
図4は、車線IDの概要を示す。図4は、図1と同様に示される。ここで、第1車線110は、左から右へ向かう車線であり、第2車線112は、右から左へ向かう車線であり、第3車線114は、下から上へ向かう車線であり、第4車線116は、上から下へ向かう車線である。また、第1車線110から第4車線116が、図3の車線IDのそれぞれに相当する。このように、各車線は、交差点をまたぐように規定されている。
【0021】
図5は、スロットの概要を示す。図示のごとく、ひとつのフレームが、100msecの期間にわたって規定されている。また、フレームは繰り返し配置される。ここでは、ひとつのフレームに4つのスロットが含まれ、かつ各スロットの期間が25msec、つまりフレーム中の25%の期間を占有している場合を想定する。ひとつのフレームの先頭に、第1スロットが配置され、これに続いて第2スロットが配置される。さらに、ひとつのフレームの最後に、第4スロットが配置されている。また、各スロットの最後の部分に「5msec」のインターバルが配置されている。インターバルは、信号を送信しない期間であり、ガードタイムに相当する。インターバルの期間は、各スロットにおいて共通であり、その値は、図4のインターバル欄204に示されている。インターバル欄204の単位は、msecである。図2に戻る。
【0022】
操作部38は、運転者からの指示を受けつけるインターフェイスであり、ボタン等によって構成されている。操作部38は、例えば、ナビゲーション機能の起動、ルート探索等の指示(以下、「ナビゲーション機能に関する指示」ともいう)を運転者から受けつける。操作部38は、受けつけた指示をIF部36に出力する。撮像部40は、図示しない車両10の前方や後方に設置され、画像を撮像する。ここでは、車両10の前方に設置されているものとする。また、撮像部40は、撮像した画像をデジタル信号に変換した後にIF部36へ出力する。以下では、デジタル信号に変換された画像あるいは画像そのものを区別せずに「画像」という。
【0023】
モニタ42は、IF部36からの入力に応じて運転者に通知すべき所定の情報を表示する。ナビゲーション機能が実行されている場合に、モニタ42は、記憶部22に記憶された地図データ50を表示する。また、モニタ42は、運転者が操作部38に入力すべき指示を促すための画像も表示する。このような表示に関しては、公知の技術であるので、説明を省略する。また、モニタ42は、後述のごとく、ナビゲーション装置100が、他の車両に搭載されたナビゲーション装置100からの画像を受けつけた場合に、画像を表示する。スピーカ44は、IF部36からの入力に応じて運転者に通知すべき音声を出力する。
【0024】
IF部36は、操作部38、撮像部40、モニタ42、スピーカ44に対するデータの入出力を制御する。IF部36は、ナビゲーション機能に関する指示を操作部38から受けつけ、受けつけた指示を処理部34へ出力する。また、IF部36は、指示に対する応答を処理部34から受けつけ、モニタ42、スピーカ44へ出力する。さらに、IF部36は、撮像部40から画像を受けつけ、画像処理部48を介して、受けつけた画像を無線通信部30へ出力するとともに、画像処理部48を介して、無線通信部30から画像を受けつけ、受けつけた画像をモニタ42へ出力する。
【0025】
処理部34は、IF部36を介して操作部38からの指示を受けつけ、受けつけた指示に応じて、ナビゲーション機能を実行する。ルート探索部54は、位置情報取得部20によって検出された車両10の存在位置を受けつけるとともに、IF部36を介して操作部38から目的地の指示を受けつける。ルート探索部54は、記憶部22に記憶された地図データ50を読み出し、地図データ50を参照しながら、現在地から目的地への経路を検索する。その際、ルート探索部54は、記憶部22において記憶した地図データ50上に、位置情報取得部20において取得した存在位置を対応づける。また、経路の検索には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。ルート探索部54は、検索結果を合成部56へ出力する。
【0026】
合成部56は、地図データ50と検索結果を合成する。つまり、合成部56は、地図データ50上に経路を重ねることによって、経路が重ねられた地図データ50(以下、「地図データ50」という)を生成する。合成部56は、生成した地図データ50をIF部36へ出力し、IF部36は、地図データ50をモニタ42へ出力する。モニタ42は、地図データ50を表示する。一方、ルート探索部54は、IF部36を介して、検索結果をスピーカ44へ出力し、検索結果を音声としてスピーカ44に出力させる。
【0027】
エリア決定部58は、位置情報取得部20から存在位置および進行方向を受けつけるとともに、記憶部22から地図データ50および付加情報52を受けつける。エリア決定部58は、地図データ50および付加情報52に含まれたエリア情報を参照しながら、存在位置が含まれるエリアを特定する。具体的に説明すると、エリア決定部58は、存在位置および進行方向から緯度、経度(以下、「予想値」という)を導出する。ここで、予想値は、所定の範囲を有するように規定されていてもよい。また、地図データ50において、ノードIDと緯度、経度とが対応づけられているので、エリア決定部58は、予想値に最も近い緯度、経度のノードを選択する。
【0028】
エリア決定部58は、選択したノードに対するノードIDを特定する。その結果、エリア決定部58は、図3のノードID欄200の中からひとつのノードIDを選択する。つまり、エリア決定部58は、存在位置および進行方向をもとに、図3のノードID欄200の中から最近接のノードIDを選択する。これに続いて、エリア決定部58は、選択したノードIDに対応した複数の車線IDのうち、進行方向に対応した車線IDを選択する。その結果、ノードIDと車線IDとの組合せが選択される。エリア決定部58は、選択した組合せをタイミング決定部60へ出力する。
【0029】
タイミング決定部60は、エリア決定部58から受けつけた組合せをもとに、付加情報52に含まれたタイミング情報を参照しながら、使用可能なスロットの開始タイミングおよび期間を特定する。つまり、タイミング決定部60は、組合せに含まれたノードIDと車線IDをもとに、スロットを特定する。例えば、図3において、ノードIDが「A」であり、車線IDが「3」である場合、タイミング決定部60は、第3スロットを特定するとともに、第3スロットの配分25%を特定する。タイミング決定部60は、特定した値を一旦記憶してもよい。また、タイミング決定部60は、特定したスロットよりも前に配置されるスロットの配分を積算することによって、第3スロットの開始タイミングを導出する。
【0030】
前述の例では、第1スロットおよび第2スロットの配分がともに25%であるので、積算結果は50%になる。そのため、100msecのフレームのうち、先頭から50msecのタイミングが第3スロットの開始タイミングになる。次に、タイミング決定部60は、特定したスロットの配分より、当該スロットの期間を導出する。前述の例では、第3スロットの配分が25%であるので、100msecのフレームのうち、25msecが第3スロットの期間になる。さらに、タイミング決定部60は、インターバルも設定する。タイミング決定部60は、スロットの開始タイミングおよび期間を通信制御部28へ出力する。
【0031】
同期部26は、位置情報取得部20からクロック信号を受けつける。前述のごとく、クロック信号は、1sec周期のタイミングを通知するための信号であるので、同期部26は、クロック信号を10分割することによって、100msec周期のタイミングを生成する。100msecの先頭タイミング(以下、単に「先頭タイミング」という)が、前述のフレームの先頭タイミングに相当する。同期部26は、先頭タイミングを通信制御部28へ出力する。
【0032】
通信制御部28は、同期部26からの先頭タイミングをもとに、連続したフレームを生成する。また、タイミング決定部60からのスロットの開始タイミングおよび期間をフレーム上に反映させることによって、ナビゲーション装置100が割り当てられたスロットを生成する。通信制御部28は、無線通信部30に対して、信号を送信可能な期間として、生成したスロットを指示する。
【0033】
無線通信部30は、CSMA/CAが使用される通信システムに対応した無線通信機能を実行する。ここで、無線通信部30は、通信制御部28から指示されたスロットにおいて、CSMA/CAによる信号の送信を実行する。以下では、無線通信部30における送信処理をまず説明する。無線通信部30は、画像処理部48を介して、IF部36から画像を受けつけると、画像をパケット信号に含ませる。画像のサイズがパケット信号のサイズよりも大きい場合、無線通信部30は、画像を複数に分割することによって、複数のパケット信号を生成する。また、無線通信部30は、通信制御部28から、送信可能なスロットに関する指示を受けつけると、当該スロットの期間においてキャリアセンスを実行して送信可能であれば、パケット信号をアンテナ32から送信する。その際、パケット信号には、変調等がなされているが、ここでは説明を省略する。
【0034】
次に、無線通信部30における受信処理を説明する。無線通信部30は、アンテナ32を介してパケット信号を受信する。パケット信号は、送信可能なスロットに関係なく、パケット信号を受信する。無線通信部30は、パケット信号を復調し、復調したパケット信号の中から画像を抽出する。当該画像は、図示しない他の車両10に装備されたナビゲーション装置100にて撮像された画像である。無線通信部30は、画像処理部48を介して、画像をIF部36へ出力する。
【0035】
画像処理部48は、無線通信部30において通信に使用される画像に対して、所定の処理を実行する。送信処理において、画像処理部48は、画像の符号化を実行する。また、受信処理において、画像処理部48は、画像の復号および画像の描画を実行する。これらには公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。装置制御部46は、ナビゲーション装置100全体のタイミングを制御する。
【0036】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0037】
以上の構成によるナビゲーション装置100の動作を説明する。図6は、ナビゲーション装置100によるスロットの番号、割当配分の取得手順を示すフローチャートである。位置情報取得部20は、現在位置、進行方向を取得する(S10)。エリア決定部58は、ノードID、車線IDを取得する(S12)。ノードID、車線IDに変更があれば(S14のN)、タイミング決定部60は、スロットの番号、割当配分を取得する(S16)。タイミング決定部60は、スロットの番号、割当配分を記憶する(S18)。一方、ノードID、車線IDに変更がなければ(S14のY)、処理は終了される。
【0038】
図7は、ナビゲーション装置100によるデータの送信手順を示すフローチャートである。タイミング決定部60は、スロットの番号、割当配分を読み出す(S30)。タイミング決定部60は、送信開始時刻を導出する(S32)とともに、送信許可期間を導出する(S34)。現在送信可能でなければ(S36のN)、無線通信部30は待機する。一方、現在送信可能であれば(S36のY)、無線通信部30はデータを送信する(S38)。
【0039】
次に、変形例を説明する。実施例では、存在するエリアに応じてスロットが割り当てられている。また、各スロットの期間は予め定められてる。一方、道路に存在する車両10の数は、一日のうちにおいても変動する。その際、車両10が多く存在する車線と、車両10が少ない車線とが、時間とともに入れかわる。変形例は、このような変動を考慮する。変形例に係るナビゲーション装置100は、VICS(Vehicle Information and Communication System)に対応し、渋滞しているエリア、車線に関する情報(以下、「渋滞情報」という)を取得する。ナビゲーション装置100は、渋滞情報をもとに付加情報52に含まれた配分を変更する。
【0040】
変形例に係るナビゲーション装置100は、実施例と同様のタイプである。そのため、ここでは、異なる点を主に説明する。位置情報取得部20は、前述の機能に加えてVICS機能を備える。VICSとは、FM多重放送や道路上の発信機から受信した渋滞情報を図形・文字で表示するシステムである。渋滞情報は、図示しないVICSセンタで編集・処理されている。また、このような渋滞情報は、記憶部22において記憶した地図データ50に設定されたエリアに対する渋滞情報といえる。位置情報取得部20は、渋滞情報を特定部24へ出力する。
【0041】
タイミング決定部60は、位置情報取得部20から渋滞情報を受けつけ、受けつけた渋滞情報をもとに、付加情報52の配分を修正する。ここでは、渋滞した車線IDに対する配分を所定の値だけ増加させ、渋滞していないIDに対する配分を所定の値だけ減少させる。ここで、所定の値は、予め定められていてもよいし、渋滞の程度に応じて変更してもよい。後者の場合、渋滞の程度が大きくなると、所定の値も大きくなる。例えば、所定の値が10%と予め定められており、図3において、ノードID「A」および車線ID「3」が渋滞している場合、タイミング決定部60は、当該車線ID「3」に対する配分を35%に増加させる。また、車線ID「4」が渋滞していなければ、タイミング決定部60は、当該車線ID「4」に対する配分を15%へ減少させる。
【0042】
その結果、第3スロットの期間が35msecとなり、第4スロットの期間が15msecとなるように、スロットの期間が変更される。一方、第4スロットの開始タイミングが、フレームの先頭から85msecとなるように、スロットの開始タイミングが変更される。これに続く、タイミング決定部60、通信制御部28、無線通信部30の処理は、前述の通りである。なお、タイミング決定部60は、以上の変更を付加情報52に反映させてもよい。一方、タイミング決定部60は、スロットの開始タイミングおよびスロットの期間を修正した後、所定の期間が経過すれば、これらを元に戻す。なお、タイミング決定部60は、渋滞情報をもとに、スロットの開始タイミングおよびスロットの期間を元に戻してもよい。
【0043】
図8は、本発明の変形例に係るナビゲーション装置100における送信開始時刻、送信許可期間の変更手順を示すフローチャートである。位置情報取得部20は、渋滞情報を取得する(S50)。現在のノードIDに渋滞している車線IDがあれば(S52のY)、タイミング決定部60は、各車線IDに対する送信開始時刻、送信許可期間を変更する(S54)。現在のノードIDに渋滞している車線IDがなければ(S52のN)、処理は終了される。
【0044】
図9は、本発明の変形例に係るナビゲーション装置100において変更した送信開始時刻、送信許可期間を元に戻す手順を示すフローチャートである。タイミング決定部60は、送信開始時刻、送信許可期間を変更してから一定期間経過したことを認識する(S70)。渋滞が継続していなければ(S72のN)、タイミング決定部60は、送信開始時刻、送信許可期間を元に戻す(S74)。一方、渋滞が継続していれば(S72のY)、ステップ74がスキップされて、処理は終了される。
【0045】
本発明の実施例によれば、地図データに、ノードIDと車線IDとの組合せと、各組合せにおいてフレーム内に信号を送信可能なスロットおよびスロットの期間に関する情報とが付加されているので、当該情報を車車間通信でのパケット信号に使用させることができる。また、取得した存在位置をもとに、信号を送信可能なスロットおよびスロットの期間を特定し、特定したスロットにてCSMA/CAを実行するので、ある程度近接したナビゲーション装置間でCSMA/CAを実行できる。また、ある程度近接したナビゲーション装置間でCSMA/CAが実行されるので、隠れ端末の存在確率を低減できる。また、隠れ端末の存在確率が低減されるので、隠れ端末問題の発生を低減できる。また、隠れ端末問題の発生が低減されるので、パケット信号の衝突確率を低減できる。また、パケット信号の衝突確率が低減されるので、伝送効率を向上できる。
【0046】
また、渋滞情報に応じて割当配分を変更するので、ナビゲーション装置の数が増大しても、スロットの期間も増大できる。また、ナビゲーション装置の数が増大しても、スロットの期間が増大されるので、パケット信号の衝突確率の増加を抑制できる。また、タイミング情報を修正した後、所定の期間が経過すれば、タイミング情報を元に戻すので、他のナビゲーション装置での設定との整合性を維持できる。また、タイミング情報を修正した後、所定の期間が経過すれば、タイミング情報を元に戻すので、処理を簡易にできる。
【0047】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0048】
本発明の実施例において、位置情報取得部20は、GPS等を使用することによって、現在の存在位置を取得する。しかしながらこれに限らず例えば、位置情報取得部20は、携帯電話システム等に対応しており、接続した基地局装置をもとに現在の存在位置を取得してもよい。具体的には、位置情報取得部20は、接続した基地局装置から、当該基地局装置の識別番号を受信する。また、記憶部22に記憶された地図データ50上に、基地局装置の識別番号も対応づけられている。位置情報取得部20は、受信した識別番号をもとに、地図データ50から存在値を取得する。なお、基地局装置の識別番号が複数であってもよく、その際には、三点計測等の原理によって、存在位置が導出されればよい。本変形例によれば、さまざまな処理によって存在位置を取得できる。
【0049】
本発明の実施例において、地図データ50および付加情報52では、ひとつのノードID、つまりひとつ交差点に対して、複数の車線IDが規定されている。しかしながらこれに限らず例えば、地図データ50および付加情報52では、複数のノードIDにわたって共通の車線IDが規定されてもよい。つまり、ノードID「A」とノードID「B」において、同一の車線に車線ID「1」が付与される。本変形例によれば、複数の交差点間の距離が短い場合に、スロットを共通にできる。また、スロットが共通になるので、スロットを効率的に割り当てることができる。
【0050】
実施例に記載された発明の特徴は、次の項目によって規定されてもよい。
(項目1)
対象物の存在位置を取得する位置情報取得部と、
複数のエリアのそれぞれが設定された位置に関するエリア情報と、各エリアにおいて所定の周期内に信号を送信可能なタイミングおよび期間に関するタイミング情報とを記憶する記憶部と、
前記記憶部において記憶したエリア情報を参照しながら、前記位置情報取得部において取得した存在位置が含まれるエリアを特定するとともに、前記記憶部において記憶したタイミング情報を参照しながら、特定したエリアに対して、信号を送信可能なタイミングおよび期間を特定する特定部と、
前記特定部において特定したタイミングおよび期間にて、信号を送信する通信部と、
を備えることを特徴とする無線装置。
【0051】
(項目2)
エリアに対する渋滞情報を取得する渋滞情報取得部をさらに備え、
前記特定部は、前記渋滞情報取得部において取得した渋滞情報をもとに、特定したタイミングおよび期間を修正することを特徴とする項目1に記載の無線装置。
(項目3)
前記特定部は、タイミング情報を修正した後、所定の期間が経過すれば、タイミング情報を元に戻すことを特徴とする項目2に記載の無線装置。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例に係る道路状況を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係るナビゲーション装置の構成を示す図である。
【図3】図2の記憶部に記憶された付加情報のデータ構造を示す図である。
【図4】図3の車線IDの概要を示す図である。
【図5】図3のスロットの概要を示す図である。
【図6】図2のナビゲーション装置によるスロットの番号、割当配分の取得手順を示すフローチャートである。
【図7】図2のナビゲーション装置によるデータの送信手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の変形例に係るナビゲーション装置における送信開始時刻、送信許可期間の変更手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の変形例に係るナビゲーション装置において変更した送信開始時刻、送信許可期間を元に戻す手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
10 車両、 20 位置情報取得部、 22 記憶部、 24 特定部、 26 同期部、 28 通信制御部、 30 無線通信部、 32 アンテナ、 34 処理部、 36 IF部、 38 操作部、 40 撮像部、 42 モニタ、 44 スピーカ、 46 装置制御部、 50 地図データ、 52 付加情報、 54 ルート探索部、 56 合成部、 58 エリア決定部、 60 タイミング決定部、 100 ナビゲーション装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の存在位置を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部において取得した存在位置が含まれる地図データを記憶する記憶部と、
前記記憶部において記憶した地図データ上に、前記位置情報取得部において取得した存在位置を対応づける処理部とを備え、
前記記憶部において記憶した地図データには、地図上に設定された複数のエリアのそれぞれに対する設定位置を特定するためのエリア情報と、各エリアにおいて所定の周期内に無線装置から信号を送信可能なタイミングおよび期間に関するタイミング情報とが付加されていることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記記憶部において記憶した地図データに設定されたエリアに対する渋滞情報を取得する渋滞情報取得部と、
前記渋滞情報取得部において取得した渋滞情報をもとに、前記記憶部において記憶したタイミング情報を修正する修正部とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記修正部は、タイミング情報を修正した後、所定の期間が経過すれば、タイミング情報を元に戻すことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−11413(P2010−11413A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171704(P2008−171704)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】