ハイブリッド車両の制御装置
【課題】電動オイルポンプ作動時、電動オイルポンプを作動するサブモータの回転数の上昇を抑制することで、ライン圧制御精度向上・燃費向上・ノイズ低減・耐久性の向上を図ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】ライン圧制御手段(ATコントローラ)7により、サブモータS-Mにより作動する電動オイルポンプ(サブオイルポンプ)S-O/P作動時、油圧クラッチCL1や変速機ATの動作状態に応じて設定された必要ライン圧に、所定の上乗せ補正量を加えて制御弁指示値(ソレノイド指示値)を設定し、ライン圧制御弁(プレッシャレギュレータバルブ)24のドレンポート(第1ドレンポート,第2ドレンポート)24a,24bを閉じ側に制御する。
【解決手段】ライン圧制御手段(ATコントローラ)7により、サブモータS-Mにより作動する電動オイルポンプ(サブオイルポンプ)S-O/P作動時、油圧クラッチCL1や変速機ATの動作状態に応じて設定された必要ライン圧に、所定の上乗せ補正量を加えて制御弁指示値(ソレノイド指示値)を設定し、ライン圧制御弁(プレッシャレギュレータバルブ)24のドレンポート(第1ドレンポート,第2ドレンポート)24a,24bを閉じ側に制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド駆動系のライン圧を調整するライン圧調整弁を制御するハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン、第1クラッチ、モータジェネレータ、変速機、駆動輪の順に接続してハイブリッド駆動系を構成したハイブリッド車両において、第1クラッチは作動油の油圧により締結・解放が制御される油圧クラッチであり、変速機は作動油圧によって変速制御される。このようなハイブリッド車両では、基本的に、モータ軸によって作動される機械式オイルポンプ(以下、メカO/Pという)を用いて必要な油圧供給を行う。また、モータジェネレータのみを駆動源として走行するEVモード時や停車時等、メカO/Pからの吐出圧が不足するときには、サブモータによって作動される電動オイルポンプ(以下、電動O/Pという)を用いて油圧供給を行う(例えば、特許文献1参照)。
ここで、電動O/Pは、指定した油圧(トルク)によって吐出圧をコントロールするトルク制御方式によって制御される。トルク制御方式を採用することによって、電動O/Pからの吐出圧を無駄なく使用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-179860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のハイブリッド車両では、油圧源であるメカO/Pと電動O/Pは並列に設けられ、メカO/P及び電動O/Pの各吐出路には、吐出圧が所定値以上になったら開放するフラッパー弁がそれぞれ設けられている。そして、各フラッパー弁の下流側の油路は一つになり、この一つになった油路には、ライン圧制御弁(プレッシャーレギュレータバルブ)が設けられている。
【0005】
このライン圧制御弁は通常閉鎖しているドレンポートを有しており、指示圧に応じてライン圧ソレノイドから出力される信号圧によってドレンポートを開放することで、ポンプ圧(元圧)をドレンしてライン圧を指示圧通りに調圧する。
【0006】
しかしながら、ライン圧制御弁を構成する部品の機械的なバラツキ等によって、指示圧に対して実際のライン圧が低くなる特性を有する場合では、実際のライン圧が指定した油圧に達する前にドレンポートが開いてポンプ圧がドレンされてしまうことがある。
【0007】
一方、電動O/P作動時には、指定した油圧(トルク)によって電動O/Pからの吐出圧がコントロールされる。このため、ライン圧制御弁からポンプ圧がドレンされてライン圧が低下すると、電動O/Pの負荷が下がり、電動O/Pを作動するサブモータの回転数が上昇する。さらに、サブモータ回転数が最大回転数となっても、ライン圧制御弁からのドレンは続くため、電動O/Pにおけるトルクが釣り合わない状態となってしまう。これにより、サブモータ回転数が高回転状態を維持してしまい、サブモータからの高周波ノイズの発生や、高速運転の継続によるサブモータの寿命低下を生じさせるという問題があった。さらに、ライン圧制御弁からのドレンでライン圧の上昇が遅くなり、ライン圧制御精度の低下、燃費の悪化という問題も生じる。
【0008】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、電動オイルポンプ作動時、電動オイルポンプを作動するサブモータの回転数の上昇を抑制することで、ライン圧制御精度向上・燃費向上・ノイズ低減・耐久性の向上を図ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、
エンジンと、
モータと、
前記エンジンと前記モータとの間に設けられ、締結と開放を行う油圧クラッチと、
前記モータと駆動輪との間に設けられ、油圧により変速段あるいは変速比を変更する変速制御を行う変速機と、
前記エンジン又は前記モータにより作動されて油圧供給を行う機械式オイルポンプと、
サブモータにより作動されて油圧供給を行う電動オイルポンプと、
前記機械式オイルポンプと前記電動オイルポンプの下流に設けられ、前記機械式オイルポンプと前記電動オイルポンプの少なくとも一方からの供給油圧を、制御弁指示値に応じてドレンポートを開放することで減圧するライン圧制御弁と、
前記電動オイルポンプ作動時、前記油圧クラッチや前記変速機の動作状態に応じて設定された必要ライン圧に、所定の上乗せ補正量を加えて前記制御弁指示値を設定し、前記ライン圧制御弁のドレンポートを閉じ側に制御するライン圧制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
よって、本発明のハイブリッド車両の制御装置にあっては、電動オイルポンプ作動時、ライン圧制御手段により、必要ライン圧に、所定の上乗せ補正量を加えて制御弁指示値を設定することで、ライン圧制御弁のドレンポートが閉じ側に制御される。
すなわち、電動オイルポンプ作動時、ライン圧制御弁のドレンポートから電動オイルポンプからの供給油圧がドレンされにくくなり、供給油圧を確保することができる。これにより、電動オイルポンプの負荷が維持され、電動オイルポンプを作動するサブモータの回転数の上昇を抑制することができる。この結果、ライン圧制御精度向上・燃費向上・ノイズ低減・耐久性の向上を図ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。
【図2】実施例1のATコントローラに設定されている自動変速機のシフトマップの一例を示す図である。
【図3】実施例1の統合コントローラのモード選択部に設定されているEV-HEV選択マップの一例を示す図である。
【図4】実施例1のFRハイブリッド車両におけるライン圧制御構造を示す図である。
【図5】実施例1のATコントローラにおけるサブモータ指示値演算ブロックを示す図である。
【図6】実施例1のATコントローラにおけるP.Reg調圧演算ブロックを示す図である。
【図7】実施例1のATコントローラにおけるSubO/P調圧演算ブロックを示す図である。
【図8】P.Reg調圧演算ブロックにおける回転補正量演算マップの例であり、(a)は作動油温ごとにマップが異なることを示し、(b)は必要ライン圧ごとにマップが異なることを示す。
【図9】SubO/P調圧演算ブロックにおける回転補正量演算マップの例であり、(a)は作動油温ごとにマップが異なることを示し、(b)は必要ライン圧ごとにマップが異なることを示す。
【図10】実施例1のATコントローラ7にて実行されるライン圧制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】P.Reg調圧とSubO/P調圧における補正量とモータ軸回転数との関係を示す説明図である。
【図12】比較例の電動オイルポンプ作動時でのライン圧制御におけるモータ軸回転数・サブモータ回転数・ソレノイド指示値・サブモータ指示値・必要ライン圧・実ライン圧の各特性を示す図である。
【図13】(a)はライン圧制御弁の流量依存性についての説明図であり、(b)はライン圧制御弁の流量依存性に対する補正量を求める方法についての説明図である。
【図14】実施例1のハイブリッド車両の制御装置の電動オイルポンプ作動時でのモータ軸回転数・サブモータ回転数・ソレノイド指示値・サブポンプリリーフ圧・サブモータ指示値・必要ライン圧・実ライン圧の各特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の自動変速機を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【0014】
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1(油圧クラッチ)と、モータ/ジェネレータMG(モータ)と、第2クラッチCL2と、自動変速機AT(変速機)と、変速機入力軸INと、メカオイルポンプM-O/P(機械式オイルポンプ)と、サブオイルポンプS-O/P(電動オイルポンプ)と、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
【0015】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御やフューエルカット制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
【0016】
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの間に介装された油圧クラッチであり、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づき第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、締結・半締結状態・開放が制御される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力にて完全締結を保ち、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14を用いたストローク制御により、完全締結〜スリップ締結〜完全開放までが制御されるノーマルクローズの乾式単板クラッチが用いられる。
【0017】
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータ/ジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(力行)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(回生)。なお、このモータ/ジェネレータMGのロータ(モータ軸)は、自動変速機ATの変速機入力軸INに連結されている。
【0018】
前記第2クラッチCL2は、前記モータ/ジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装された油圧クラッチであり、ATコントローラ7からの第2クラッチ制御指令に基づき第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、締結・スリップ締結・開放が制御される。この第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できるノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設される油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
【0019】
前記自動変速機ATは、有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り替える有段変速機であり、実施例1では前進7速/後退1速の変速段を持つ有段変速機としている。そして、実施例1では、前記第2クラッチCL2として、自動変速機ATとは独立の専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数のクラッチ要素のうち、所定の条件に適合するクラッチ要素(多板クラッチや多板ブレーキ)を選択している。
【0020】
前記メカオイルポンプM-O/Pは、前記モータ/ジェネレータMGの出力軸の回転駆動力により作動するポンプであり、例えば、ギアポンプやベーンポンプ等が用いられる。ここでは、モータ/ジェネレータMGの出力軸に連結した自動変速機ATの変速機入力軸IN(=モータ軸)に取り付けられたポンプギアにチェーンを介してポンプ入力ギアが接続している。
【0021】
前記サブオイルポンプS-O/Pは、車両停止時等でメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が不足するとき、油圧低下を抑えるためにサブモータS-M(図4参照)により駆動される。このサブオイルポンプS-O/Pは、モータハウジング等に設けられている。
【0022】
そして、このメカオイルポンプM-O/PとサブオイルポンプS-O/Pは、第1,第2クラッチCL1,CL2への制御圧及び自動変速機ATへの制御圧を作り出す油圧源となっている。この油圧源では、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出油量が十分であるときはサブモータS-Mを停止してサブオイルポンプS-O/Pを停止させ、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出油圧が低下すると、サブモータS-Mを駆動してサブオイルポンプS-O/Pを作動させ、このサブオイルポンプS-O/Pからも作動油吐出するように切り替えられる。これらの作動制御は、後述するATコントローラ7により行われる。
【0023】
さらに、前記自動変速機ATの変速機出力軸には、プロペラシャフトPSが連結されている。そして、このプロペラシャフトPSは、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0024】
このFRハイブリッド車両は、駆動形態の違いによる走行モードとして、電気自動車モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロールモード(以下、「WSCモード」という。)と、を有する。
【0025】
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータ/ジェネレータMGの駆動力のみで走行するモードであり、モータ走行モード・回生走行モードを有する。この「EVモード」は、基本的に、要求駆動力が低く、バッテリSOCが確保されているときに選択される。
【0026】
前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態として走行するモードであり、モータアシスト走行モード・発電走行モード・エンジン走行モードを有し、何れかのモードにより走行する。この「HEVモード」は、基本的に、要求駆動力が高いとき、あるいは、バッテリSOCが不足するようなときに選択される。
【0027】
前記「WSCモード」は、モータ/ジェネレータMGの回転数制御により、第2クラッチCL2をスリップ締結状態に維持し、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態や運転者のアクセル操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら走行するモードである。この「WSCモード」は、「HEVモード」の選択状態での停車時・発進時・減速時等のように、エンジン回転数がアイドル回転数を下回るような走行領域において選択される。
【0028】
次に、FRハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7(ライン圧制御手段)と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、各コントローラ1,2,5,7,9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11(通信線)を介して接続されている。
【0029】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0030】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報を、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0031】
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・半締結・開放を制御する指令を油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0032】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類(作動油温度センサ)18等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図2に示すシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令を油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。前記シフトマップとは、図2に示すように、アクセル開度APOと車速VSPに応じてアップ変速線とダウン変速線を書き込んだマップをいう。
【0033】
この変速制御に加えて、前記ATコントローラ7は、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2のスリップ締結を制御する指令を油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行う。さらに、このATコントローラ7は、ハイブリッド駆動系の油圧システム(第1クラッチCL1、第2クラッチCL2を含む自動変速機AT)を動作させるための基本油圧であるライン圧PLを、ライン圧ソレノイド23によって制御する。
【0034】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
【0035】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21や他のセンサ・スイッチ類22からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0036】
この統合コントローラ10には、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図3に示すEV-HEV選択マップ上で存在する位置により最適な走行モードを検索し、検索した走行モードを目標走行モードとして選択するモード選択部を有する。このEV-HEV選択マップには、EV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「EVモード」から「HEVモード」へと切り替えるEV⇒HEV切替線と、HEV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「HEVモード」から「EVモード」へと切り替えるHEV⇒EV切替線と、運転点(APO,VSP)が横切ると「HEVモード」と「WSCモード」を切り替えるHEV⇔WSC切替線と、が設定されている。前記EV⇒HEV切替線と前記HEV⇒EV切替線は、EV領域とHEV領域を分ける線としてヒステリシス量を持たせて設定されている。前記HEV⇔WSC切替線は、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEngがアイドル回転数を維持する第1設定車速VSP1に沿って設定されている。但し、「EVモード」の選択中、バッテリSOCが所定値以下になると、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。
【0037】
図4は、実施例1のFRハイブリッド車両におけるライン圧制御構造を示す図である。
【0038】
実施例1のFRハイブリッド車両におけるライン圧制御は、図4に示すように、メカオイルポンプM-O/Pと、サブオイルポンプS-O/Pと、ATコントローラ7と、ライン圧ソレノイド23と、プレッシャレギュレータバルブ24(ライン圧制御弁)と、によって行われる。
【0039】
ここで、油圧源であるメカオイルポンプM-O/PとサブオイルポンプS-O/Pとは並列に設けられ、前記メカオイルポンプM-O/Pの吐出路25aと、前記サブオイルポンプS-O/Pの吐出路25bには、それぞれフラッパー弁26,26が設けられている。各フラッパー弁26,26は、上流側の油圧が所定値以上になったら開放する特性を有し、下流側から上流側(ここでは、ライン圧油圧回路27から各吐出路25a、25b)へ作動油が流れないようにする逆流防止弁となっている。さらに、サブオイルポンプS-O/Pの吐出路25bにはリリーフ弁26aが設けられ、吐出路25b内の油圧が所定圧を超えないように制御される。
【0040】
そして、各フラッパー弁26,26の下流側の油路(以下、ライン圧油圧回路27という)は一つになり、この一つになったライン圧油圧回路27に、プレッシャレギュレータバルブ24が設けられている。
【0041】
前記ATコントローラ7は、ハイブリッド駆動系の油圧システムの動作状態に応じて設定された必要ライン圧に基づいてサブモータ指示値を演算するサブモータ指示値演算ブロック7aと、上記必要ライン圧に基づいてソレノイド指示値(制御弁指示値)を演算するソレノイド指示値演算ブロック7bと、を有する。
前記サブモータ指示値は、サブオイルポンプS-O/Pを作動するサブモータS-Mに入力され、サブモータS-Mは、サブモータ指示値に応じたポンプ圧をサブオイルポンプS-O/Pから出力する。前記ソレノイド指示値は、ライン圧ソレノイド23に入力される。
ここで、ソレノイド指示値は、P.Reg調圧(第1制御弁指示値)と、SubO/P調圧(第2制御弁指示値)と、を選択することで設定される。すなわち、ソレノイド指示値演算ブロック7bは、P.Reg調圧を演算するP.Reg調圧演算ブロック(第1ライン圧制御手段)7cと、SubO/P調圧を演算するSubO/P調圧演算ブロック(第2ライン圧制御手段)7dと、を有する。
前記P.Reg調圧は、上記必要ライン圧に、モータ軸回転数Ninの増加に伴って所定の割合で減少する第1の上乗せ補正量を加えた値である。
前記SubO/P調圧は、上記必要ライン圧に、モータ軸回転数Ninが低い時は第1の上乗せ補正量よりも大きく、モータ軸回転数Ninの増加に伴って第1の上乗せ補正量の減少割合よりも大きい割合で減少する第2の上乗せ補正量を加えた値である。
【0042】
前記ライン圧ソレノイド23は、ATコントローラ7からのソレノイド指示値(制御弁指示値)に応じてプレッシャレギュレータバルブ24へのソレノイド圧を作り出す。
【0043】
前記プレッシャレギュレータバルブ24は、油圧源からの供給油圧(ポンプ圧)を元圧とし、ソレノイド圧を作動信号圧として、供給油圧をドレンすることでライン圧油圧回路27内の油圧をソレノイド圧に応じた値に制御してライン圧PLとする。このプレッシャレギュレータバルブ24は、第1ドレンポート24aと、第2ドレンポート24bと、スプール24cと、ばね24dと、を有する。
【0044】
前記第1,第2ドレンポート24a,24bは、スプール24cによって開閉可能となっている。前記スプール24cは、ばね24dの付勢力で、通常、第1,第2ドレンポート24a,24bを閉鎖している。このスプール24cは、ライン圧ソレノイド23から出力される信号圧によってばね24dの付勢力に抗して移動し、第1,第2ドレンポート24a,24bを順に開放する。第1,第2ドレンポート24a、24bが開放すると、ライン圧油圧回路27と潤滑回路28a,28bが連通し、油圧源からの供給油圧が潤滑回路28a、28bにドレンされる。ここで、第1ドレンポート24aの方が第2ドレンポート24bよりも先に、すなわち小さい信号圧で開放される。
【0045】
図5は、実施例1のATコントローラにおけるサブモータ指示値演算ブロックを示す図である。図6は、実施例1のATコントローラにおけるP.Reg調圧演算ブロックを示す図である。図7は、実施例1のATコントローラにおけるSubO/P調圧演算ブロックを示す図である。
【0046】
前記サブモータ指示値演算ブロック7aは、図5に示すように、必要圧選択部30と、P→T変換部31と、を有する。
【0047】
前記必要圧選択部30は、「クラッチ保持必要圧」と「CL1開放必要圧」とを入力し、これらの必要圧からセレクトハイにより最大必要圧を選択し、最大必要圧を得る指示値を「必要ライン圧」としてP→T変換部31に出力する。
ここで、「クラッチ保持必要圧」とは、自動変速機ATへのT/M入力トルクとT/M入力回転数と変速段に基づいて求められる値であり、各変速段において締結されるクラッチ要素が滑りなく締結状態が保持されるクラッチ保持に必要な最低ライン圧である。
また、「CL1開放必要圧」とは、第1クラッチCL1のCL1開放圧指令値に対応する第1クラッチCL1の開放に必要な最低ライン圧である。
【0048】
前記P→T変換部31は、必要圧選択部30から必要ライン圧を入力すると共に、作動油温Tempを入力する。そして、予め有するマップを用いて必要ライン圧をトルクに変換してサブモータ指示値を演算し、出力する。このとき、用いられる変換マップは作動油温Tempにより異なる。
【0049】
前記P.Reg調圧演算ブロック7cは、図6に示すように、必要圧選択部30´と、バルブ補正量加算部32と、第1回転補正量演算部33と、第1回転補正量加算部34と、を有する。
【0050】
前記必要圧選択部30´は、上述した「クラッチ保持必要圧」と「CL1開放必要圧」とを入力し、これらの必要圧からセレクトハイにより最大必要圧を選択し、最大必要圧を得る指示値を「必要ライン圧」としてバルブ補正量加算部32に出力する。
【0051】
前記バルブ補正量加算部32は、必要圧選択部30´から入力される必要ライン圧に対して、「P.Regバラツキ補正量」を加算して第1補正前指令値を演算する。この第1補正前指令値は、第1回転補正量演算部33及び第1回転補正量加算部34にそれぞれ入力される。
ここで、「P.Regバラツキ補正量」とは、プレッシャレギュレータバルブ24の機械的なばらつき(スプール24cの寸法誤差、ばね24dの誤差、バルブボディの寸法誤差等)に基づいて予め設定された補正量である。
【0052】
前記第1回転補正量演算部33は、変速機入力軸INの回転数(モータ軸回転数Nin)と作動油温Tempを入力すると共に、バルブ補正量加算部32から第1補正前指令値を入力する。そして、予め有するマップを用いてモータ軸回転数Ninに応じて決まる回転補正量を設定し、出力する。
この第1回転補正量演算部33によって出力される回転補正量とは、メカオイルポンプM-O/Pの吐出量が通常走行時流量(ポンプ圧が十分に確保できる状態)のときに設定した設定ライン圧特性と、実際のメカオイルポンプM-O/Pの吐出量でのライン圧特性との差である。すなわち、ライン圧特性はメカオイルポンプM-O/Pの吐出量(流量)に依存して異なるため、この流量依存性を考慮して設定する補正量であり、実際のメカオイルポンプM-O/Pの吐出量が小さい場合に、プレッシャレギュレータバルブ24の第1,第2ドレンポート24a、24bを閉じ勝手にすることで、必要ライン圧を確保するために必要な上乗せ補正量である。この回転補正量は実験データを元に設定されるが、モータ軸回転数Ninの増加に伴って所定の割合で減少する特性を有する。
このとき用いられる補正量設定マップは、図8(a),(b)に示すように、作動油温Temp及び第1補正前指令値(必要ライン圧)により異なる。
【0053】
前記第1回転補正量加算部34は、バルブ補正量加算部32から入力される第1補正前指令値に対して、第1回転補正量演算部33にて求められた回転補正量を加算してP.Reg調圧を演算する。このP.Reg調圧は、所定の条件に応じて選択され、ソレノイド指示値としてライン圧ソレノイド23に入力される。
【0054】
前記SubO/P調圧演算ブロック7dは、図7に示すように、必要圧選択部30´´と、バルブ・ポンプ補正量加算部35と、第2回転補正量演算部36と、第2回転補正量加算部37と、を有する。
【0055】
前記必要圧選択部30´´は、上述した「クラッチ保持必要圧」と「CL1開放必要圧」とを入力し、これらの必要圧からセレクトハイにより最大必要圧を選択し、最大必要圧を得る指示値を「必要ライン圧」としてバルブ・ポンプ補正量加算部35に出力する。
【0056】
前記バルブ・ポンプ補正量加算部35は、必要圧選択部30´´から入力される必要ライン圧に対して、「P.Regバラツキ補正量」及び「SubO/Pバラツキ補正量」を加算して第2補正前指令値を演算する。この第2補正前指令値は、第2回転補正量演算部36及び第2回転補正量加算部37にそれぞれ入力される。
ここで、「P.Regバラツキ補正量」とは、プレッシャレギュレータバルブ24の機械的なばらつき(スプール24cの寸法誤差、ばね24dの誤差、バルブボディの寸法誤差等)に基づいて予め設定された補正量である。
また、「SubO/Pバラツキ補正量」とは、サブオイルポンプS-O/Pのトルクばらつきに基づいて予め設定された補正量である。
【0057】
前記第2回転補正量演算部36は、変速機入力軸INの回転数(モータ軸回転数Nin)と作動油温Tempを入力すると共に、バルブ・ポンプ補正量加算部35から第2補正前指令値を入力する。そして、予め有するマップを用いてモータ軸回転数Ninに応じて決まる回転補正量を設定し、出力する。
この第2回転補正量演算部36によって出力される回転補正量とは、プレッシャレギュレータバルブ24の第1ドレンポート24aが開かないために必要な上乗せ補正量である。実験データを元に設定される。なお、モータ軸回転数Ninが上昇すると共に音振への影響が小さくなるため、第1ドレンポート24aを開放してポンプ圧をドレンしても構わない。そのため、この回転補正量は、モータ軸回転数Ninが所定回転数N1までは一定値とするが、その後、サブオイルポンプS-O/Pの停止に向けて、モータ軸回転数Ninの増加に伴って一定割合で次第に減少させる。これにより、メカオイルポンプM-O/Pの吐出量の上昇にライン圧PLが依存する特性となる。なお、この回転補正量の減少割合は、第1回転補正量演算部33によって出力される回転補正量の減少割合よりも大きい値とする。
このとき、用いられる補正量設定マップは、図9(a),(b)に示すように、作動油温Temp及び第2補正前指令値(必要ライン圧)により異なる。
【0058】
前記第2回転補正量加算部37は、バルブ・ポンプ補正量加算部35から入力される第2補正前指令値に対して、第2回転補正量演算部36にて求められた回転補正量を加算してSubO/P調圧を演算する。このSubO/P調圧は、所定の条件に応じて選択され、ソレノイド指示値としてライン圧ソレノイド23に入力される。
【0059】
次に、実施例1のATコントローラ7にて実行されるライン圧制御処理について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。
【0060】
ステップS1では、「クラッチ保持必要圧」と「CL1開放必要圧」とのセレクトハイにより求めた必要ライン圧に応じて、P.Reg調圧演算ブロック7cにてP.Reg調圧を演算し、SubO/P調圧演算ブロック7dにてSubO/P調圧を演算し、ステップS2へ移行する。
【0061】
ステップS2では、ステップS1でのP.Reg調圧及びSubO/P調圧の演算に続き、ステップS1にて使用した必要ライン圧がメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧以上であるか否かを判断する。YES(必要ライン圧≧メカO/P圧)の場合は、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出量不足として、ステップS4へ移行する。NO(必要ライン圧<メカO/P圧)の場合は、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧によって必要ライン圧を確保できるとして、ステップS3へ移行する。
【0062】
ステップS3では、ステップS2での必要ライン圧<メカO/P圧との判断に続き、サブモータS-M及びライン圧ソレノイド23に対して通常制御を実行し、リターンへ進む。
ここで「通常制御」とは、以下の制御をいう。
1) サブモータS-Mに対して、モータ停止信号を出力する。
2) P.Reg調圧をソレノイド指示値として選択し、ライン圧ソレノイド23に対して出力する。
これにより、サブオイルポンプS-O/Pは停止すると共に、P.Reg調圧に基づいてライン圧PLが制御される。
【0063】
ステップS4では、ステップS2での必要ライン圧≧メカO/P圧との判断に続き、サブオイルポンプS-O/Pを作動させ、ステップS5へ移行する。このとき、サブモータS-Mには、サブモータ指示値演算ブロック7aにて演算されたサブモータ指示値が入力される。
【0064】
ステップS5では、ステップS4でのサブオイルポンプS-O/P作動に続き、P.Reg調圧と、SubO/P調圧と、のセレクトハイによりソレノイド指示値を設定し、ライン圧ソレノイド23に対して出力し、リターンへ進む。
【0065】
すなわち、P.Reg調圧とSubO/P調圧における上乗せ補正量の大きさを図11に示す。SubO/P調圧を演算する際に、バルブ・ポンプ補正量加算部35において「SubO/Pバラツキ補正量」を加算している。このため、SubO/P調圧では、基本的に、必要ライン圧に所定の補正量(「P.Regバラツキ補正量」+「回転補正量」)を上乗せしたP.Reg調圧よりも、必要ライン圧に対する上乗せ補正量が大きくなり、SubO/P調圧>P.Reg調圧となる。しかしながら、回転補正量については、P.Reg調圧では通常走行時流量のときに設定したライン圧特性との差を補正する値であり、モータ軸回転数Ninの増加に伴って所定の割合で減少するのに対し、SubO/P調圧ではモータ軸回転数Ninが所定回転数N1に達すると、P.Reg調圧における減少割合よりも大きい割合で減少する。そのため、モータ軸回転数Ninが所定回転数N2以上では、上乗せ補正量が逆転してSubO/P調圧<P.Reg調圧となる。
【0066】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例のライン圧制御における課題」と、「プレッシャレギュレータバルブの流量依存性」について説明し、続いて、実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を、「低回転域に対応したライン圧制御作用」、「セレクトハイによるライン圧制御作用」に分けて説明する。
【0067】
[比較例のライン圧制御における課題]
図12は、比較例の電動オイルポンプ作動時でのライン圧制御におけるモータ軸回転数・サブモータ回転数・ソレノイド指示値・サブモータ指示値・必要ライン圧・実ライン圧の各特性を示す図である。
【0068】
ハイブリッド車両では、エンジンEngを停止した状態を作り出すために、第1クラッチCL1を切り離す必要が有り、その状態で「EVモード」により走行したり、停止したり、発進したり、回生したりする。すなわち、この「EVモード」を実現するためには、モータ回転数が低い領域でもライン圧を確保して第1クラッチCL1を開放する必要がある。
【0069】
ここで、メカオイルポンプM-O/Pはモータ軸に直結され、エンジンEng又はモータ/ジェネレータMGによって作動される。このため、「EVモード」での停止時にはモータ/ジェネレータMGが停止してしまい必要ライン圧が確保できない。また、「EVモード」時にモータ回転数が低い状態では、メカオイルポンプM-O/Pの吐出量が低下し、やはり必要ライン圧が確保できなくなることがある。そこで、サブモータS-Mによって作動するサブオイルポンプS-O/Pを設置することで、モータ軸回転数Ninの低回転域における油圧源を確保する。
【0070】
また、このサブオイルポンプS-O/Pは、サブモータS-Mに吐出圧を指定するサブモータ指示値が入力されることで吐出圧をコントロールするトルク制御方式が採用されている。このトルク制御方式を採用することによって、無駄な吐出もなくなり、燃費向上にも貢献できる。
【0071】
しかしながら、サブオイルポンプS-O/P作動時であっても、油圧回路の構成上、最終的なライン圧制御はプレッシャレギュレータバルブを用いて行っている。すなわち、サブオイルポンプS-O/P作動時には、サブモータS-Mにサブモータ指示値が出力され、プレッシャレギュレータバルブを制御するライン圧ソレノイドにソレノイド指示値が出力される。
【0072】
しかも、プレッシャレギュレータバルブのばらつきによって、ソレノイド指示値に対して実際のライン圧が低くなることがある。つまり、ソレノイド指示値は、ライン圧が所定値に達するとプレッシャレギュレータバルブのドレンポートを開放するように設定するが、そのプレッシャレギュレータバルブのばらつきでライン圧が所定値に達する前にドレンポートが開放してしまうことがある。サブオイルポンプS-O/P作動時にこのような現象が生じると、実際のライン圧が必要ライン圧に達する前にドレンポートが開放され、必要ライン圧が得られない状態となる。
【0073】
特に、流量に対するライン圧特性は、後述するように流量依存性を有しており、流量が低いほど、つまりモータ軸回転数が低いほど実際のライン圧が低くなる特性となる。
【0074】
さらに、プレッシャレギュレータバルブから元圧(サブオイルポンプS-O/Pからの供給油圧)がドレンされると、サブオイルポンプS-O/Pの負荷が下がるため、サブオイルポンプS-O/Pを作動するサブモータS-Mの回転数が上昇する。しかも、サブモータ回転数が最大回転数となっても、プレッシャレギュレータバルブからのドレンは続くため、サブオイルポンプS-O/Pにおけるトルクが釣り合わない状態となってしまう。これにより、サブモータ回転数が高回転状態を維持してしまい、サブモータS-Mからの高周波ノイズの発生や、高速運転の継続によるサブモータS-Mの寿命低下を生じさせるという問題が生じる。
【0075】
この問題を解決するために、サブオイルポンプS-O/P作動時、プレッシャレギュレータバルブのばらつきや流量依存性を踏まえ、サブモータS-Mに対する指示値を必要ライン圧よりも高い値に設定することが考えられる。つまり、図12に示すように、時刻t0においてイグニッションがON動作されると、必要ライン圧に対してサブモータ指示値が高めに設定される。これにより、サブモータ回転数は所定回転数Nで回転する。一方、ソレノイド指示値は、必要ライン圧に所定補正量(プレッシャレギュレータのばらつきに基づく補正量及び流量依存性に基づく補正量)を上乗せした値、すなわちP.Reg調圧となる。
【0076】
しかしながら、サブモータ指示値を高めに設定しても、ソレノイド指示値における上乗せ補正量が小さいため、プレッシャレギュレータバルブのドレンポートは開き気味になる。これにより、実ライン圧の上昇は遅くなって、ライン圧制御精度が低下する。そして、サブオイルポンプS-O/Pの負荷が低くなり、サブモータ回転数は上昇する。そして、時刻t1においてサブモータ回転数が最大値MAXとなる。その後、サブモータS-Mは最大回転数を維持しつづける。一方、サブモータ指示値が必要ライン圧よりも高いため、実ライン圧は次第に必要ライン圧よりも高い値となるが、サブオイルポンプS-O/Pからの吐出圧を無駄にドレンしているので、燃費悪化に繋がる。
【0077】
このように、サブモータ指令値を必要ライン圧よりも高めにすることでサブモータS-Mの回転数が高くなる上、サブモータ指令値を高くしてもプレッシャレギュレータバルブのばらつきを十分に吸収することができずに、ドレンポートが開き気味になって、サブモータ回転数が結局最大値MAXを維持しつづけることとなる。これにより、高周波ノイズの発生・サブモータ寿命低下・ライン圧制御精度の低下・燃費悪化等の問題を解決することができない。
【0078】
なお、プレッシャレギュレータバルブを、モータ軸回転数の低回転域から制御可能な特性に変更することで問題を解決することも考えられる。しかし、通常、プレッシャレギュレータバルブは、下流側に確実に作動油を供給することが目的であるため、元圧が所定値以下の場合には調圧せず、元圧が所定値以上のときに調圧する特性を有する。さらに、このプレッシャレギュレータバルブの調圧特性は、エンジン始動後のメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧を基準として設定されており、モータ軸回転数が低い場合を考慮していない。そのため、プレッシャレギュレータバルブの制御特性を変更するには、プレッシャレギュレータバルブの寸法変更及びそれに伴うレイアウト変更が必要になったり、プレッシャレギュレータバルブの機械的故障時に十分なライン圧を確保できない可能性が生じたりすることが考えられる。そのため、プレッシャレギュレータバルブの制御特性を変更することは現実的でない。
【0079】
[プレッシャレギュレータバルブの流量依存性]
図13(a)はライン圧制御弁の流量依存性についての説明図であり、(b)はライン圧制御弁の流量依存性に対する補正量を求める方法についての説明図である。
【0080】
プレッシャレギュレータバルブの調圧特性は、メカオイルポンプのポンプ圧が非常に高いとき(メカオイルポンプ吐出流量が大きい場合)を想定して設定されるため、第1,第2ドレンポートを開いた点で調圧する状態になっている。つまり、プレッシャレギュレータバルブの下流に配分される流量がドレンされることが前提である。このときの調圧特性は、図13(a)に破線で示したものとなる。
【0081】
しかしながら、メカオイルポンプのポンプ圧が低いとき(メカオイルポンプ吐出流量が小さい場合)には、図13(a)において破線で示した設定調圧特性に対して、同じ指令値(流量)であっても、ライン圧が小さくなる(図13(a)において実線で示す特性)ことが分かっている。つまり、プレッシャレギュレータバルブの調圧特性は、メカオイルポンプからの流量に依存して異なる。すなわち、設定調圧特性に基づいてプレッシャレギュレータバルブを制御すると、実ライン圧が必要圧に達する前にドレンポートが開いてしまう現象が生じる。
【0082】
しかし、このときのメカオイルポンプのポンプ圧がゼロではないため、プレッシャレギュレータバルブでのドレン流量を制限することで、ライン圧を上昇させることができる。つまり、プレッシャレギュレータバルブへの指示値を高くすれば、ドレンポートが開きにくくなって、メカオイルポンプ吐出流量が調圧特性設定時の想定流量以下であっても、ライン圧を上昇させることができる。
【0083】
具体的に説明すると、例えば、必要ライン圧がP1(図13(a)参照)であると仮定する。このとき、実際の調圧特性は実線で示すものであるため、プレッシャレギュレータバルブへの指示値を「P1」としてしまうと、ライン圧はP1´までしか上がらない。つまり、実際のライン圧が必要ライン圧(ここではP1)に達する前にドレンポートが開いてしまい、ドレン流量が発生してしまう。そこで、プレッシャレギュレータバルブの指示値に補正量を上乗せして「P2」まで上昇させると、流量Q1のときの実際のライン圧をP1にすることができる。この上乗せ分の補正量が、流量(回転)依存性に対する補正量である回転補正量となる。
【0084】
そして、この回転補正量を算出する方法として、図13(b)に示すように、モータ軸回転数Ninに応じて決まる油圧特性を、指示値ごと及び作動油温ごとに実験により求めておき、モータ軸回転数Nin、指示値、作動油温を入力条件として、現在の実ライン圧を算出する。この結果、設定調圧特性(図13(b)において破線で示す)におけるライン圧Pと、現在の実ライン圧(ここではPA)との油圧差分を求め、これを回転補正量とする。
【0085】
[低回転域に対応したライン圧制御作用]
図14は、実施例1のハイブリッド車両の制御装置の電動オイルポンプ作動時でのモータ軸回転数・サブモータ回転数・ソレノイド指示値・サブポンプリリーフ圧・サブモータ指示値・必要ライン圧・実ライン圧の各特性を示す図である。
【0086】
実施例1のハイブリッド車両の制御装置において、図14に示すように、時刻t2においてイグニッションがON動作されると、P.Reg調圧とSubO/P調圧を演算すると共に、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧によって必要ライン圧を維持できるか否かが判断される。このとき、モータ軸回転数Ninが非常に低いため、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧では必要ライン圧を維持できないと判断され、サブオイルポンプS-O/Pが作動する。
【0087】
つまり、図10に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS2→ステップS4と進む。このとき、サブモータS-Mには、サブモータ指示値演算ブロック7aにて演算されたサブモータ指示値が入力される。このサブモータ指示値は、作動油温Tempの影響を考慮するものの、必要ライン圧に応じた値となる(図14では一致した値となっている)。
【0088】
そして、図10に示すフローチャートにおいてステップS5へと進み、ソレノイド指示値が、P.Reg調圧とSubO/P調圧とのセレクトハイによって設定される。
【0089】
ここで、P.Reg調圧における上乗せ補正量とSubO/P調圧における上乗せ補正量とは、図11に示すように、モータ軸回転数が所定回転数N1に達するまでは、SubO/P調圧における上乗せ補正量の方が大きい。すなわち、ソレノイド指示値は、モータ軸回転数が所定回転数N1に達するまでは、SubO/P調圧に設定される。
【0090】
このように、モータ軸回転数が低回転域では、上乗せ補正量が大きいSubO/P調圧によってソレノイド指示値を設定することで、このソレノイド指示値が大きくなり、プレッシャレギュレータバルブ24の第1,第2ドレンポート24a,24bが閉じ側に制御される。すなわち、モータ軸回転数が低回転域におけるソレノイド指示値は、先に開放される第1ドレンポート24aが開かない値に設定される。
【0091】
そのため、プレッシャレギュレータバルブ24からのドレン流量がなくなって実ライン圧は上昇し、サブオイルポンプS-O/Pからの吐出圧で必要ライン圧を確保することができる。これにより、サブオイルポンプS-O/Pを作動するサブモータS-Mの負荷の低下が防止され、サブモータ回転数(サブモータ回転数)が上昇することはない。この結果、サブモータ回転数の上昇に伴う高周波ノイズの発生・サブモータ寿命低下・ライン圧制御精度の低下・燃費悪化等の問題の発生を防止することができる。
【0092】
また、このときのソレノイド指示値が、P.Reg調圧とSubO/P調圧とのセレクトハイによって設定される。これにより、サブモータS-Mの回転数上昇を抑えつつ、プレッシャレギュレータバルブ24に生じる流量依存性による誤差を適正に補正することができる。
【0093】
また、SubO/P調圧は、モータ軸回転数Ninが所定回転数N1に達すると、次第に減少するように設定されている。これは、モータ軸回転数Ninの上昇によって音振への影響が小さくなるため、第1,第2ドレンポート24a,24bを開放しても構わないからである。すなわち、モータ軸回転数Ninが一定回転数に達すれば、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出量がある程度確保でき、サブオイルポンプS-O/Pの停止に向けて上乗せ補正量を下げることができる。これにより、ライン圧PLを下げることができ、燃費向上を図ることができる。
【0094】
さらに、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、P.Reg調圧及びSubO/P調圧における回転補正量は、それぞれモータ軸回転数Nin、作動油温Temp、必要ライン圧に応じて設定される。このため、モータ軸回転数Nin、作動油温Temp、必要ライン圧の変化に応じて制御弁指示値を設定することができ、ライン圧制御弁を適切な状態に制御することができて燃費向上に貢献することもできる。
[セレクトハイによるライン圧制御作用]
図14に示す時刻t3において車両が発進し、モータ軸回転数Ninが上昇すると、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が次第に増加する。これに伴い実ライン圧は上昇するが、サブオイルポンプS-O/Pの吐出路25bに設けられたリリーフ弁26aのリリーフ圧に達すると、リリーフ弁26aからサブオイルポンプS-O/Pの吐出圧がドレンされる。これにより、実ライン圧はリリーフ圧を維持する。
【0095】
さらに、モータ軸回転数が上昇し、時刻t4においてモータ軸回転数が所定回転数N1に達すると、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が増え、サブオイルポンプS-O/Pの吐出路25bに設けられたフラッパー弁26が閉鎖する。フラッパー弁26が閉じた後は、リリーフ弁26aからドレンすることができなくなるため、ドレン流量分実ライン圧が上昇するおそれがある(図14において破線で示す)。
【0096】
これに対し、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、SubO/P調圧における上乗せ補正量を、モータ軸回転数が所定回転数N1から次第に低下させるため、ソレノイド指示値は時刻t4から次第に低くなる。これにより、プレッシャレギュレータバルブ24における第1,第2ドレンポート24a,24bは開き側に制御され、実ライン圧の上昇を抑えることができる。なお、ソレノイド指示値を急激に低下させると、実ライン圧が必要ライン圧を下回る可能性があるため、一定の割合で徐々に低下させる。
【0097】
そして、時刻t5においてメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が必要ライン圧を上回ると、図10に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS2→ステップS3へと進む。これにより、サブオイルポンプS-O/Pは停止し、サブモータ回転数はゼロとなる。一方、ソレノイド指示値は、P.Reg調圧に設定される。
【0098】
このように、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧によって必要ライン圧を確保することができれば、通常制御に移行することで、ライン圧PLを無駄に上昇させることなく燃費向上を図ることができる。
【0099】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0100】
(1) エンジンEngと、モータ(モータ/ジェネレータ)MGと、前記エンジンEngと前記モータMGとの間に設けられ、締結と開放を行う油圧クラッチ(第1クラッチ)CL1と、前記モータMGと駆動輪(左右後輪)RL,RRとの間に設けられ、油圧により変速段あるいは変速比を変更する変速制御を行う変速機(自動変速機)ATと、前記エンジンEng又は前記モータMGにより作動されて油圧供給を行う機械式オイルポンプ(メカオイルポンプ)M-O/Pと、サブモータS-Mにより作動されて油圧供給を行う電動オイルポンプ(サブオイルポンプ)S-O/Pと、前記機械式オイルポンプM-O/Pと前記電動オイルポンプS-O/Pの下流に設けられ、前記機械式オイルポンプM-O/Pと前記電動オイルポンプS-O/Pの少なくとも一方からの供給油圧を、制御弁指示値(ソレノイド指示値)に応じてドレンポート(第1ドレンポート,第2ドレンポート)24a,24bを開放することで減圧するライン圧制御弁(プレッシャレギュレータバルブ)24と、前記電動オイルポンプS-O/P作動時、前記油圧クラッチCL1や前記変速機ATの動作状態に応じて設定された必要ライン圧に、所定の上乗せ補正量を加えて前記制御弁指示値を設定し、前記ライン圧制御弁24のドレンポート24a,24bを閉じ側に制御するライン圧制御手段(ATコントローラ)7と、を備える構成とした。
このため、電動オイルポンプ作動時、電動オイルポンプを作動するサブモータの回転数の上昇を抑制することで、ライン圧制御精度向上・燃費向上・ノイズ低減・耐久性の向上を図ることができる。
【0101】
(2) 前記ライン圧制御手段(ATコントローラ)7は、前記必要ライン圧に、モータ回転数の増加に伴って所定の割合で減少する第1の上乗せ補正量を加えて第1制御弁指示値(P.Reg調圧)を設定する第1ライン圧制御手段(P.Reg調圧演算ブロック)7cと、前記必要ライン圧に、前記モータ回転数が低い時は前記第1の上乗せ補正量よりも大きく、前記モータ回転数が所定回転数N1に達すると、該モータ回転数の増加に伴って前記第1の上乗せ補正量の減少割合よりも大きい割合で減少する第2の上乗せ補正量を加えて第2制御弁指示値(SubO/P調圧)を設定する第2ライン圧制御手段(SubO/P調圧 演算ブロック)7dと、を有し、前記機械式オイルポンプM-O/Pからの吐出圧が前記必要ライン圧以下のとき、前記電動オイルポンプS-O/Pを作動すると共に、前記第1制御弁指示値(P.Reg調圧)と、前記第2制御弁指示値(SubO/P調圧)と、のセレクトハイにより、前記制御弁指示値(ソレノイド指示値)を設定する構成とした。
このため、制御弁指示値を適切な値に設定することができ、サブモータの回転数上昇を抑えつつ、ライン圧制御弁に生じる誤差を適正に補正することができる。
【0102】
(3) 前記ライン圧制御手段(ATコントローラ)7は、前記上乗せ補正量を、前記モータMGの回転数に応じて設定する構成とした。
このため、モータ回転数の変化に応じて制御弁指示値を設定することができ、例えば機械式オイルポンプと電動オイルポンプが同時に作動している状態であっても、ライン圧制御弁を適切な状態に制御することができ、燃費向上に貢献することもできる。
【0103】
(4) 前記ライン圧制御手段(ATコントローラ)7は、前記上乗せ補正量を、作動油温Tempに応じて設定する構成とした。
このため、作動油温の変化に応じて制御弁指示値を設定することができ、例えば油温が高くオイル粘性が低くなっている状態であっても、ライン圧制御弁を適切な状態に制御することができ、燃費向上に貢献することもできる。
【0104】
(5) 前記ライン圧制御手段(ATコントローラ)7は、前記上乗せ補正量を、前記必要ライン圧に応じて設定する構成とした。
このため、走行状態に応じて変動する必要ライン圧に応じて制御弁指示値を設定することができ、必要ライン圧に応じて異なるライン圧制御弁のライン圧特性が考慮される。そして、ライン圧制御弁を適切に制御することができて、燃費向上に貢献することもできる。
【0105】
(6) 前記ライン圧制御手段は、前記機械式オイルポンプM-O/Pからの吐出圧が前記必要ライン圧を超えるとき、前記電動オイルポンプS-O/Pを停止すると共に、前記第1制御弁指示値(P.Reg調圧)を、前記制御弁指示値(ソレノイド指示値)に設定する構成とした。
このため、ライン圧PLを無駄に上昇させることなく燃費向上を図ることができる。
【0106】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0107】
実施例1では、回転補正量を実験に基づいて得られたデータを基にマップを作成し、このマップを用いて設定しているが、例えば所定の演算によって求めるものであってもよい。
【0108】
また、実施例1では、第2クラッチCL2を、有段式の自動変速機ATに内蔵した摩擦要素の中から選択する例を示した。しかし、自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設けても良く、例えば、モータ/ジェネレータMGと変速機入力軸との間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例や、変速機出力軸と駆動輪の間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例も含まれる。
【0109】
実施例1では、変速機として、前進7速後退1速の有段式の自動変速機ATを用いる例を示した。しかし、有段式自動変速機の場合、変速段数はこれに限られるものではなく、変速段として2速段以上の複数の変速段を有する自動変速機であれば良い。また、変速機として、ベルト式無段変速機等のように、変速比を無段階に変更する無段変速機を用いてもよい。
【0110】
実施例1では、制御装置を後輪駆動のハイブリッド車両に対し適用した例を示したが、前輪駆動のハイブリッド車両に対しても適用することができる。要するに、機械式オイルポンプと電動オイルポンプとを備え、両オイルポンプから供給される供給油圧が、一つのライン圧制御弁によってドレンされることで、指令圧どおりのライン圧に制御されるハイブリッド車両であれば適用できる。
【符号の説明】
【0111】
Eng エンジン
CL1 第1クラッチ(油圧クラッチ)
MG モータ/ジェネレータ(モータ)
CL2 第2クラッチ
AT 自動変速機(変速機)
IN 変速機入力軸
M-O/P メカオイルポンプ(機械式オイルポンプ)
S-O/P サブオイルポンプ(電動オイルポンプ)
RL 左後輪(駆動輪)
RR 右後輪(駆動輪)
7 ATコントローラ(ライン圧制御手段)
7a サブモータ指示値演算ブロック
7b ソレノイド指示値演算ブロック
7c P.Reg調圧演算ブロック(第1ライン圧制御手段)
7d SubO/P調圧演算ブロック(第2ライン圧制御手段)
24 プレッシャレギュレータバルブ(ライン圧制御弁)
24a 第1ドレンポート(ドレンポート)
24b 第2ドレンポート(ドレンポート)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド駆動系のライン圧を調整するライン圧調整弁を制御するハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン、第1クラッチ、モータジェネレータ、変速機、駆動輪の順に接続してハイブリッド駆動系を構成したハイブリッド車両において、第1クラッチは作動油の油圧により締結・解放が制御される油圧クラッチであり、変速機は作動油圧によって変速制御される。このようなハイブリッド車両では、基本的に、モータ軸によって作動される機械式オイルポンプ(以下、メカO/Pという)を用いて必要な油圧供給を行う。また、モータジェネレータのみを駆動源として走行するEVモード時や停車時等、メカO/Pからの吐出圧が不足するときには、サブモータによって作動される電動オイルポンプ(以下、電動O/Pという)を用いて油圧供給を行う(例えば、特許文献1参照)。
ここで、電動O/Pは、指定した油圧(トルク)によって吐出圧をコントロールするトルク制御方式によって制御される。トルク制御方式を採用することによって、電動O/Pからの吐出圧を無駄なく使用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-179860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のハイブリッド車両では、油圧源であるメカO/Pと電動O/Pは並列に設けられ、メカO/P及び電動O/Pの各吐出路には、吐出圧が所定値以上になったら開放するフラッパー弁がそれぞれ設けられている。そして、各フラッパー弁の下流側の油路は一つになり、この一つになった油路には、ライン圧制御弁(プレッシャーレギュレータバルブ)が設けられている。
【0005】
このライン圧制御弁は通常閉鎖しているドレンポートを有しており、指示圧に応じてライン圧ソレノイドから出力される信号圧によってドレンポートを開放することで、ポンプ圧(元圧)をドレンしてライン圧を指示圧通りに調圧する。
【0006】
しかしながら、ライン圧制御弁を構成する部品の機械的なバラツキ等によって、指示圧に対して実際のライン圧が低くなる特性を有する場合では、実際のライン圧が指定した油圧に達する前にドレンポートが開いてポンプ圧がドレンされてしまうことがある。
【0007】
一方、電動O/P作動時には、指定した油圧(トルク)によって電動O/Pからの吐出圧がコントロールされる。このため、ライン圧制御弁からポンプ圧がドレンされてライン圧が低下すると、電動O/Pの負荷が下がり、電動O/Pを作動するサブモータの回転数が上昇する。さらに、サブモータ回転数が最大回転数となっても、ライン圧制御弁からのドレンは続くため、電動O/Pにおけるトルクが釣り合わない状態となってしまう。これにより、サブモータ回転数が高回転状態を維持してしまい、サブモータからの高周波ノイズの発生や、高速運転の継続によるサブモータの寿命低下を生じさせるという問題があった。さらに、ライン圧制御弁からのドレンでライン圧の上昇が遅くなり、ライン圧制御精度の低下、燃費の悪化という問題も生じる。
【0008】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、電動オイルポンプ作動時、電動オイルポンプを作動するサブモータの回転数の上昇を抑制することで、ライン圧制御精度向上・燃費向上・ノイズ低減・耐久性の向上を図ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、
エンジンと、
モータと、
前記エンジンと前記モータとの間に設けられ、締結と開放を行う油圧クラッチと、
前記モータと駆動輪との間に設けられ、油圧により変速段あるいは変速比を変更する変速制御を行う変速機と、
前記エンジン又は前記モータにより作動されて油圧供給を行う機械式オイルポンプと、
サブモータにより作動されて油圧供給を行う電動オイルポンプと、
前記機械式オイルポンプと前記電動オイルポンプの下流に設けられ、前記機械式オイルポンプと前記電動オイルポンプの少なくとも一方からの供給油圧を、制御弁指示値に応じてドレンポートを開放することで減圧するライン圧制御弁と、
前記電動オイルポンプ作動時、前記油圧クラッチや前記変速機の動作状態に応じて設定された必要ライン圧に、所定の上乗せ補正量を加えて前記制御弁指示値を設定し、前記ライン圧制御弁のドレンポートを閉じ側に制御するライン圧制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
よって、本発明のハイブリッド車両の制御装置にあっては、電動オイルポンプ作動時、ライン圧制御手段により、必要ライン圧に、所定の上乗せ補正量を加えて制御弁指示値を設定することで、ライン圧制御弁のドレンポートが閉じ側に制御される。
すなわち、電動オイルポンプ作動時、ライン圧制御弁のドレンポートから電動オイルポンプからの供給油圧がドレンされにくくなり、供給油圧を確保することができる。これにより、電動オイルポンプの負荷が維持され、電動オイルポンプを作動するサブモータの回転数の上昇を抑制することができる。この結果、ライン圧制御精度向上・燃費向上・ノイズ低減・耐久性の向上を図ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。
【図2】実施例1のATコントローラに設定されている自動変速機のシフトマップの一例を示す図である。
【図3】実施例1の統合コントローラのモード選択部に設定されているEV-HEV選択マップの一例を示す図である。
【図4】実施例1のFRハイブリッド車両におけるライン圧制御構造を示す図である。
【図5】実施例1のATコントローラにおけるサブモータ指示値演算ブロックを示す図である。
【図6】実施例1のATコントローラにおけるP.Reg調圧演算ブロックを示す図である。
【図7】実施例1のATコントローラにおけるSubO/P調圧演算ブロックを示す図である。
【図8】P.Reg調圧演算ブロックにおける回転補正量演算マップの例であり、(a)は作動油温ごとにマップが異なることを示し、(b)は必要ライン圧ごとにマップが異なることを示す。
【図9】SubO/P調圧演算ブロックにおける回転補正量演算マップの例であり、(a)は作動油温ごとにマップが異なることを示し、(b)は必要ライン圧ごとにマップが異なることを示す。
【図10】実施例1のATコントローラ7にて実行されるライン圧制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】P.Reg調圧とSubO/P調圧における補正量とモータ軸回転数との関係を示す説明図である。
【図12】比較例の電動オイルポンプ作動時でのライン圧制御におけるモータ軸回転数・サブモータ回転数・ソレノイド指示値・サブモータ指示値・必要ライン圧・実ライン圧の各特性を示す図である。
【図13】(a)はライン圧制御弁の流量依存性についての説明図であり、(b)はライン圧制御弁の流量依存性に対する補正量を求める方法についての説明図である。
【図14】実施例1のハイブリッド車両の制御装置の電動オイルポンプ作動時でのモータ軸回転数・サブモータ回転数・ソレノイド指示値・サブポンプリリーフ圧・サブモータ指示値・必要ライン圧・実ライン圧の各特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の自動変速機を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【0014】
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1(油圧クラッチ)と、モータ/ジェネレータMG(モータ)と、第2クラッチCL2と、自動変速機AT(変速機)と、変速機入力軸INと、メカオイルポンプM-O/P(機械式オイルポンプ)と、サブオイルポンプS-O/P(電動オイルポンプ)と、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
【0015】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御やフューエルカット制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
【0016】
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの間に介装された油圧クラッチであり、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づき第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、締結・半締結状態・開放が制御される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力にて完全締結を保ち、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14を用いたストローク制御により、完全締結〜スリップ締結〜完全開放までが制御されるノーマルクローズの乾式単板クラッチが用いられる。
【0017】
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータ/ジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(力行)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(回生)。なお、このモータ/ジェネレータMGのロータ(モータ軸)は、自動変速機ATの変速機入力軸INに連結されている。
【0018】
前記第2クラッチCL2は、前記モータ/ジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装された油圧クラッチであり、ATコントローラ7からの第2クラッチ制御指令に基づき第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、締結・スリップ締結・開放が制御される。この第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できるノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設される油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
【0019】
前記自動変速機ATは、有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り替える有段変速機であり、実施例1では前進7速/後退1速の変速段を持つ有段変速機としている。そして、実施例1では、前記第2クラッチCL2として、自動変速機ATとは独立の専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数のクラッチ要素のうち、所定の条件に適合するクラッチ要素(多板クラッチや多板ブレーキ)を選択している。
【0020】
前記メカオイルポンプM-O/Pは、前記モータ/ジェネレータMGの出力軸の回転駆動力により作動するポンプであり、例えば、ギアポンプやベーンポンプ等が用いられる。ここでは、モータ/ジェネレータMGの出力軸に連結した自動変速機ATの変速機入力軸IN(=モータ軸)に取り付けられたポンプギアにチェーンを介してポンプ入力ギアが接続している。
【0021】
前記サブオイルポンプS-O/Pは、車両停止時等でメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が不足するとき、油圧低下を抑えるためにサブモータS-M(図4参照)により駆動される。このサブオイルポンプS-O/Pは、モータハウジング等に設けられている。
【0022】
そして、このメカオイルポンプM-O/PとサブオイルポンプS-O/Pは、第1,第2クラッチCL1,CL2への制御圧及び自動変速機ATへの制御圧を作り出す油圧源となっている。この油圧源では、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出油量が十分であるときはサブモータS-Mを停止してサブオイルポンプS-O/Pを停止させ、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出油圧が低下すると、サブモータS-Mを駆動してサブオイルポンプS-O/Pを作動させ、このサブオイルポンプS-O/Pからも作動油吐出するように切り替えられる。これらの作動制御は、後述するATコントローラ7により行われる。
【0023】
さらに、前記自動変速機ATの変速機出力軸には、プロペラシャフトPSが連結されている。そして、このプロペラシャフトPSは、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0024】
このFRハイブリッド車両は、駆動形態の違いによる走行モードとして、電気自動車モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロールモード(以下、「WSCモード」という。)と、を有する。
【0025】
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータ/ジェネレータMGの駆動力のみで走行するモードであり、モータ走行モード・回生走行モードを有する。この「EVモード」は、基本的に、要求駆動力が低く、バッテリSOCが確保されているときに選択される。
【0026】
前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態として走行するモードであり、モータアシスト走行モード・発電走行モード・エンジン走行モードを有し、何れかのモードにより走行する。この「HEVモード」は、基本的に、要求駆動力が高いとき、あるいは、バッテリSOCが不足するようなときに選択される。
【0027】
前記「WSCモード」は、モータ/ジェネレータMGの回転数制御により、第2クラッチCL2をスリップ締結状態に維持し、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態や運転者のアクセル操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら走行するモードである。この「WSCモード」は、「HEVモード」の選択状態での停車時・発進時・減速時等のように、エンジン回転数がアイドル回転数を下回るような走行領域において選択される。
【0028】
次に、FRハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7(ライン圧制御手段)と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、各コントローラ1,2,5,7,9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11(通信線)を介して接続されている。
【0029】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0030】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報を、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0031】
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・半締結・開放を制御する指令を油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0032】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類(作動油温度センサ)18等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図2に示すシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令を油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。前記シフトマップとは、図2に示すように、アクセル開度APOと車速VSPに応じてアップ変速線とダウン変速線を書き込んだマップをいう。
【0033】
この変速制御に加えて、前記ATコントローラ7は、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2のスリップ締結を制御する指令を油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行う。さらに、このATコントローラ7は、ハイブリッド駆動系の油圧システム(第1クラッチCL1、第2クラッチCL2を含む自動変速機AT)を動作させるための基本油圧であるライン圧PLを、ライン圧ソレノイド23によって制御する。
【0034】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
【0035】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21や他のセンサ・スイッチ類22からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0036】
この統合コントローラ10には、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図3に示すEV-HEV選択マップ上で存在する位置により最適な走行モードを検索し、検索した走行モードを目標走行モードとして選択するモード選択部を有する。このEV-HEV選択マップには、EV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「EVモード」から「HEVモード」へと切り替えるEV⇒HEV切替線と、HEV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「HEVモード」から「EVモード」へと切り替えるHEV⇒EV切替線と、運転点(APO,VSP)が横切ると「HEVモード」と「WSCモード」を切り替えるHEV⇔WSC切替線と、が設定されている。前記EV⇒HEV切替線と前記HEV⇒EV切替線は、EV領域とHEV領域を分ける線としてヒステリシス量を持たせて設定されている。前記HEV⇔WSC切替線は、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEngがアイドル回転数を維持する第1設定車速VSP1に沿って設定されている。但し、「EVモード」の選択中、バッテリSOCが所定値以下になると、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。
【0037】
図4は、実施例1のFRハイブリッド車両におけるライン圧制御構造を示す図である。
【0038】
実施例1のFRハイブリッド車両におけるライン圧制御は、図4に示すように、メカオイルポンプM-O/Pと、サブオイルポンプS-O/Pと、ATコントローラ7と、ライン圧ソレノイド23と、プレッシャレギュレータバルブ24(ライン圧制御弁)と、によって行われる。
【0039】
ここで、油圧源であるメカオイルポンプM-O/PとサブオイルポンプS-O/Pとは並列に設けられ、前記メカオイルポンプM-O/Pの吐出路25aと、前記サブオイルポンプS-O/Pの吐出路25bには、それぞれフラッパー弁26,26が設けられている。各フラッパー弁26,26は、上流側の油圧が所定値以上になったら開放する特性を有し、下流側から上流側(ここでは、ライン圧油圧回路27から各吐出路25a、25b)へ作動油が流れないようにする逆流防止弁となっている。さらに、サブオイルポンプS-O/Pの吐出路25bにはリリーフ弁26aが設けられ、吐出路25b内の油圧が所定圧を超えないように制御される。
【0040】
そして、各フラッパー弁26,26の下流側の油路(以下、ライン圧油圧回路27という)は一つになり、この一つになったライン圧油圧回路27に、プレッシャレギュレータバルブ24が設けられている。
【0041】
前記ATコントローラ7は、ハイブリッド駆動系の油圧システムの動作状態に応じて設定された必要ライン圧に基づいてサブモータ指示値を演算するサブモータ指示値演算ブロック7aと、上記必要ライン圧に基づいてソレノイド指示値(制御弁指示値)を演算するソレノイド指示値演算ブロック7bと、を有する。
前記サブモータ指示値は、サブオイルポンプS-O/Pを作動するサブモータS-Mに入力され、サブモータS-Mは、サブモータ指示値に応じたポンプ圧をサブオイルポンプS-O/Pから出力する。前記ソレノイド指示値は、ライン圧ソレノイド23に入力される。
ここで、ソレノイド指示値は、P.Reg調圧(第1制御弁指示値)と、SubO/P調圧(第2制御弁指示値)と、を選択することで設定される。すなわち、ソレノイド指示値演算ブロック7bは、P.Reg調圧を演算するP.Reg調圧演算ブロック(第1ライン圧制御手段)7cと、SubO/P調圧を演算するSubO/P調圧演算ブロック(第2ライン圧制御手段)7dと、を有する。
前記P.Reg調圧は、上記必要ライン圧に、モータ軸回転数Ninの増加に伴って所定の割合で減少する第1の上乗せ補正量を加えた値である。
前記SubO/P調圧は、上記必要ライン圧に、モータ軸回転数Ninが低い時は第1の上乗せ補正量よりも大きく、モータ軸回転数Ninの増加に伴って第1の上乗せ補正量の減少割合よりも大きい割合で減少する第2の上乗せ補正量を加えた値である。
【0042】
前記ライン圧ソレノイド23は、ATコントローラ7からのソレノイド指示値(制御弁指示値)に応じてプレッシャレギュレータバルブ24へのソレノイド圧を作り出す。
【0043】
前記プレッシャレギュレータバルブ24は、油圧源からの供給油圧(ポンプ圧)を元圧とし、ソレノイド圧を作動信号圧として、供給油圧をドレンすることでライン圧油圧回路27内の油圧をソレノイド圧に応じた値に制御してライン圧PLとする。このプレッシャレギュレータバルブ24は、第1ドレンポート24aと、第2ドレンポート24bと、スプール24cと、ばね24dと、を有する。
【0044】
前記第1,第2ドレンポート24a,24bは、スプール24cによって開閉可能となっている。前記スプール24cは、ばね24dの付勢力で、通常、第1,第2ドレンポート24a,24bを閉鎖している。このスプール24cは、ライン圧ソレノイド23から出力される信号圧によってばね24dの付勢力に抗して移動し、第1,第2ドレンポート24a,24bを順に開放する。第1,第2ドレンポート24a、24bが開放すると、ライン圧油圧回路27と潤滑回路28a,28bが連通し、油圧源からの供給油圧が潤滑回路28a、28bにドレンされる。ここで、第1ドレンポート24aの方が第2ドレンポート24bよりも先に、すなわち小さい信号圧で開放される。
【0045】
図5は、実施例1のATコントローラにおけるサブモータ指示値演算ブロックを示す図である。図6は、実施例1のATコントローラにおけるP.Reg調圧演算ブロックを示す図である。図7は、実施例1のATコントローラにおけるSubO/P調圧演算ブロックを示す図である。
【0046】
前記サブモータ指示値演算ブロック7aは、図5に示すように、必要圧選択部30と、P→T変換部31と、を有する。
【0047】
前記必要圧選択部30は、「クラッチ保持必要圧」と「CL1開放必要圧」とを入力し、これらの必要圧からセレクトハイにより最大必要圧を選択し、最大必要圧を得る指示値を「必要ライン圧」としてP→T変換部31に出力する。
ここで、「クラッチ保持必要圧」とは、自動変速機ATへのT/M入力トルクとT/M入力回転数と変速段に基づいて求められる値であり、各変速段において締結されるクラッチ要素が滑りなく締結状態が保持されるクラッチ保持に必要な最低ライン圧である。
また、「CL1開放必要圧」とは、第1クラッチCL1のCL1開放圧指令値に対応する第1クラッチCL1の開放に必要な最低ライン圧である。
【0048】
前記P→T変換部31は、必要圧選択部30から必要ライン圧を入力すると共に、作動油温Tempを入力する。そして、予め有するマップを用いて必要ライン圧をトルクに変換してサブモータ指示値を演算し、出力する。このとき、用いられる変換マップは作動油温Tempにより異なる。
【0049】
前記P.Reg調圧演算ブロック7cは、図6に示すように、必要圧選択部30´と、バルブ補正量加算部32と、第1回転補正量演算部33と、第1回転補正量加算部34と、を有する。
【0050】
前記必要圧選択部30´は、上述した「クラッチ保持必要圧」と「CL1開放必要圧」とを入力し、これらの必要圧からセレクトハイにより最大必要圧を選択し、最大必要圧を得る指示値を「必要ライン圧」としてバルブ補正量加算部32に出力する。
【0051】
前記バルブ補正量加算部32は、必要圧選択部30´から入力される必要ライン圧に対して、「P.Regバラツキ補正量」を加算して第1補正前指令値を演算する。この第1補正前指令値は、第1回転補正量演算部33及び第1回転補正量加算部34にそれぞれ入力される。
ここで、「P.Regバラツキ補正量」とは、プレッシャレギュレータバルブ24の機械的なばらつき(スプール24cの寸法誤差、ばね24dの誤差、バルブボディの寸法誤差等)に基づいて予め設定された補正量である。
【0052】
前記第1回転補正量演算部33は、変速機入力軸INの回転数(モータ軸回転数Nin)と作動油温Tempを入力すると共に、バルブ補正量加算部32から第1補正前指令値を入力する。そして、予め有するマップを用いてモータ軸回転数Ninに応じて決まる回転補正量を設定し、出力する。
この第1回転補正量演算部33によって出力される回転補正量とは、メカオイルポンプM-O/Pの吐出量が通常走行時流量(ポンプ圧が十分に確保できる状態)のときに設定した設定ライン圧特性と、実際のメカオイルポンプM-O/Pの吐出量でのライン圧特性との差である。すなわち、ライン圧特性はメカオイルポンプM-O/Pの吐出量(流量)に依存して異なるため、この流量依存性を考慮して設定する補正量であり、実際のメカオイルポンプM-O/Pの吐出量が小さい場合に、プレッシャレギュレータバルブ24の第1,第2ドレンポート24a、24bを閉じ勝手にすることで、必要ライン圧を確保するために必要な上乗せ補正量である。この回転補正量は実験データを元に設定されるが、モータ軸回転数Ninの増加に伴って所定の割合で減少する特性を有する。
このとき用いられる補正量設定マップは、図8(a),(b)に示すように、作動油温Temp及び第1補正前指令値(必要ライン圧)により異なる。
【0053】
前記第1回転補正量加算部34は、バルブ補正量加算部32から入力される第1補正前指令値に対して、第1回転補正量演算部33にて求められた回転補正量を加算してP.Reg調圧を演算する。このP.Reg調圧は、所定の条件に応じて選択され、ソレノイド指示値としてライン圧ソレノイド23に入力される。
【0054】
前記SubO/P調圧演算ブロック7dは、図7に示すように、必要圧選択部30´´と、バルブ・ポンプ補正量加算部35と、第2回転補正量演算部36と、第2回転補正量加算部37と、を有する。
【0055】
前記必要圧選択部30´´は、上述した「クラッチ保持必要圧」と「CL1開放必要圧」とを入力し、これらの必要圧からセレクトハイにより最大必要圧を選択し、最大必要圧を得る指示値を「必要ライン圧」としてバルブ・ポンプ補正量加算部35に出力する。
【0056】
前記バルブ・ポンプ補正量加算部35は、必要圧選択部30´´から入力される必要ライン圧に対して、「P.Regバラツキ補正量」及び「SubO/Pバラツキ補正量」を加算して第2補正前指令値を演算する。この第2補正前指令値は、第2回転補正量演算部36及び第2回転補正量加算部37にそれぞれ入力される。
ここで、「P.Regバラツキ補正量」とは、プレッシャレギュレータバルブ24の機械的なばらつき(スプール24cの寸法誤差、ばね24dの誤差、バルブボディの寸法誤差等)に基づいて予め設定された補正量である。
また、「SubO/Pバラツキ補正量」とは、サブオイルポンプS-O/Pのトルクばらつきに基づいて予め設定された補正量である。
【0057】
前記第2回転補正量演算部36は、変速機入力軸INの回転数(モータ軸回転数Nin)と作動油温Tempを入力すると共に、バルブ・ポンプ補正量加算部35から第2補正前指令値を入力する。そして、予め有するマップを用いてモータ軸回転数Ninに応じて決まる回転補正量を設定し、出力する。
この第2回転補正量演算部36によって出力される回転補正量とは、プレッシャレギュレータバルブ24の第1ドレンポート24aが開かないために必要な上乗せ補正量である。実験データを元に設定される。なお、モータ軸回転数Ninが上昇すると共に音振への影響が小さくなるため、第1ドレンポート24aを開放してポンプ圧をドレンしても構わない。そのため、この回転補正量は、モータ軸回転数Ninが所定回転数N1までは一定値とするが、その後、サブオイルポンプS-O/Pの停止に向けて、モータ軸回転数Ninの増加に伴って一定割合で次第に減少させる。これにより、メカオイルポンプM-O/Pの吐出量の上昇にライン圧PLが依存する特性となる。なお、この回転補正量の減少割合は、第1回転補正量演算部33によって出力される回転補正量の減少割合よりも大きい値とする。
このとき、用いられる補正量設定マップは、図9(a),(b)に示すように、作動油温Temp及び第2補正前指令値(必要ライン圧)により異なる。
【0058】
前記第2回転補正量加算部37は、バルブ・ポンプ補正量加算部35から入力される第2補正前指令値に対して、第2回転補正量演算部36にて求められた回転補正量を加算してSubO/P調圧を演算する。このSubO/P調圧は、所定の条件に応じて選択され、ソレノイド指示値としてライン圧ソレノイド23に入力される。
【0059】
次に、実施例1のATコントローラ7にて実行されるライン圧制御処理について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。
【0060】
ステップS1では、「クラッチ保持必要圧」と「CL1開放必要圧」とのセレクトハイにより求めた必要ライン圧に応じて、P.Reg調圧演算ブロック7cにてP.Reg調圧を演算し、SubO/P調圧演算ブロック7dにてSubO/P調圧を演算し、ステップS2へ移行する。
【0061】
ステップS2では、ステップS1でのP.Reg調圧及びSubO/P調圧の演算に続き、ステップS1にて使用した必要ライン圧がメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧以上であるか否かを判断する。YES(必要ライン圧≧メカO/P圧)の場合は、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出量不足として、ステップS4へ移行する。NO(必要ライン圧<メカO/P圧)の場合は、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧によって必要ライン圧を確保できるとして、ステップS3へ移行する。
【0062】
ステップS3では、ステップS2での必要ライン圧<メカO/P圧との判断に続き、サブモータS-M及びライン圧ソレノイド23に対して通常制御を実行し、リターンへ進む。
ここで「通常制御」とは、以下の制御をいう。
1) サブモータS-Mに対して、モータ停止信号を出力する。
2) P.Reg調圧をソレノイド指示値として選択し、ライン圧ソレノイド23に対して出力する。
これにより、サブオイルポンプS-O/Pは停止すると共に、P.Reg調圧に基づいてライン圧PLが制御される。
【0063】
ステップS4では、ステップS2での必要ライン圧≧メカO/P圧との判断に続き、サブオイルポンプS-O/Pを作動させ、ステップS5へ移行する。このとき、サブモータS-Mには、サブモータ指示値演算ブロック7aにて演算されたサブモータ指示値が入力される。
【0064】
ステップS5では、ステップS4でのサブオイルポンプS-O/P作動に続き、P.Reg調圧と、SubO/P調圧と、のセレクトハイによりソレノイド指示値を設定し、ライン圧ソレノイド23に対して出力し、リターンへ進む。
【0065】
すなわち、P.Reg調圧とSubO/P調圧における上乗せ補正量の大きさを図11に示す。SubO/P調圧を演算する際に、バルブ・ポンプ補正量加算部35において「SubO/Pバラツキ補正量」を加算している。このため、SubO/P調圧では、基本的に、必要ライン圧に所定の補正量(「P.Regバラツキ補正量」+「回転補正量」)を上乗せしたP.Reg調圧よりも、必要ライン圧に対する上乗せ補正量が大きくなり、SubO/P調圧>P.Reg調圧となる。しかしながら、回転補正量については、P.Reg調圧では通常走行時流量のときに設定したライン圧特性との差を補正する値であり、モータ軸回転数Ninの増加に伴って所定の割合で減少するのに対し、SubO/P調圧ではモータ軸回転数Ninが所定回転数N1に達すると、P.Reg調圧における減少割合よりも大きい割合で減少する。そのため、モータ軸回転数Ninが所定回転数N2以上では、上乗せ補正量が逆転してSubO/P調圧<P.Reg調圧となる。
【0066】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例のライン圧制御における課題」と、「プレッシャレギュレータバルブの流量依存性」について説明し、続いて、実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を、「低回転域に対応したライン圧制御作用」、「セレクトハイによるライン圧制御作用」に分けて説明する。
【0067】
[比較例のライン圧制御における課題]
図12は、比較例の電動オイルポンプ作動時でのライン圧制御におけるモータ軸回転数・サブモータ回転数・ソレノイド指示値・サブモータ指示値・必要ライン圧・実ライン圧の各特性を示す図である。
【0068】
ハイブリッド車両では、エンジンEngを停止した状態を作り出すために、第1クラッチCL1を切り離す必要が有り、その状態で「EVモード」により走行したり、停止したり、発進したり、回生したりする。すなわち、この「EVモード」を実現するためには、モータ回転数が低い領域でもライン圧を確保して第1クラッチCL1を開放する必要がある。
【0069】
ここで、メカオイルポンプM-O/Pはモータ軸に直結され、エンジンEng又はモータ/ジェネレータMGによって作動される。このため、「EVモード」での停止時にはモータ/ジェネレータMGが停止してしまい必要ライン圧が確保できない。また、「EVモード」時にモータ回転数が低い状態では、メカオイルポンプM-O/Pの吐出量が低下し、やはり必要ライン圧が確保できなくなることがある。そこで、サブモータS-Mによって作動するサブオイルポンプS-O/Pを設置することで、モータ軸回転数Ninの低回転域における油圧源を確保する。
【0070】
また、このサブオイルポンプS-O/Pは、サブモータS-Mに吐出圧を指定するサブモータ指示値が入力されることで吐出圧をコントロールするトルク制御方式が採用されている。このトルク制御方式を採用することによって、無駄な吐出もなくなり、燃費向上にも貢献できる。
【0071】
しかしながら、サブオイルポンプS-O/P作動時であっても、油圧回路の構成上、最終的なライン圧制御はプレッシャレギュレータバルブを用いて行っている。すなわち、サブオイルポンプS-O/P作動時には、サブモータS-Mにサブモータ指示値が出力され、プレッシャレギュレータバルブを制御するライン圧ソレノイドにソレノイド指示値が出力される。
【0072】
しかも、プレッシャレギュレータバルブのばらつきによって、ソレノイド指示値に対して実際のライン圧が低くなることがある。つまり、ソレノイド指示値は、ライン圧が所定値に達するとプレッシャレギュレータバルブのドレンポートを開放するように設定するが、そのプレッシャレギュレータバルブのばらつきでライン圧が所定値に達する前にドレンポートが開放してしまうことがある。サブオイルポンプS-O/P作動時にこのような現象が生じると、実際のライン圧が必要ライン圧に達する前にドレンポートが開放され、必要ライン圧が得られない状態となる。
【0073】
特に、流量に対するライン圧特性は、後述するように流量依存性を有しており、流量が低いほど、つまりモータ軸回転数が低いほど実際のライン圧が低くなる特性となる。
【0074】
さらに、プレッシャレギュレータバルブから元圧(サブオイルポンプS-O/Pからの供給油圧)がドレンされると、サブオイルポンプS-O/Pの負荷が下がるため、サブオイルポンプS-O/Pを作動するサブモータS-Mの回転数が上昇する。しかも、サブモータ回転数が最大回転数となっても、プレッシャレギュレータバルブからのドレンは続くため、サブオイルポンプS-O/Pにおけるトルクが釣り合わない状態となってしまう。これにより、サブモータ回転数が高回転状態を維持してしまい、サブモータS-Mからの高周波ノイズの発生や、高速運転の継続によるサブモータS-Mの寿命低下を生じさせるという問題が生じる。
【0075】
この問題を解決するために、サブオイルポンプS-O/P作動時、プレッシャレギュレータバルブのばらつきや流量依存性を踏まえ、サブモータS-Mに対する指示値を必要ライン圧よりも高い値に設定することが考えられる。つまり、図12に示すように、時刻t0においてイグニッションがON動作されると、必要ライン圧に対してサブモータ指示値が高めに設定される。これにより、サブモータ回転数は所定回転数Nで回転する。一方、ソレノイド指示値は、必要ライン圧に所定補正量(プレッシャレギュレータのばらつきに基づく補正量及び流量依存性に基づく補正量)を上乗せした値、すなわちP.Reg調圧となる。
【0076】
しかしながら、サブモータ指示値を高めに設定しても、ソレノイド指示値における上乗せ補正量が小さいため、プレッシャレギュレータバルブのドレンポートは開き気味になる。これにより、実ライン圧の上昇は遅くなって、ライン圧制御精度が低下する。そして、サブオイルポンプS-O/Pの負荷が低くなり、サブモータ回転数は上昇する。そして、時刻t1においてサブモータ回転数が最大値MAXとなる。その後、サブモータS-Mは最大回転数を維持しつづける。一方、サブモータ指示値が必要ライン圧よりも高いため、実ライン圧は次第に必要ライン圧よりも高い値となるが、サブオイルポンプS-O/Pからの吐出圧を無駄にドレンしているので、燃費悪化に繋がる。
【0077】
このように、サブモータ指令値を必要ライン圧よりも高めにすることでサブモータS-Mの回転数が高くなる上、サブモータ指令値を高くしてもプレッシャレギュレータバルブのばらつきを十分に吸収することができずに、ドレンポートが開き気味になって、サブモータ回転数が結局最大値MAXを維持しつづけることとなる。これにより、高周波ノイズの発生・サブモータ寿命低下・ライン圧制御精度の低下・燃費悪化等の問題を解決することができない。
【0078】
なお、プレッシャレギュレータバルブを、モータ軸回転数の低回転域から制御可能な特性に変更することで問題を解決することも考えられる。しかし、通常、プレッシャレギュレータバルブは、下流側に確実に作動油を供給することが目的であるため、元圧が所定値以下の場合には調圧せず、元圧が所定値以上のときに調圧する特性を有する。さらに、このプレッシャレギュレータバルブの調圧特性は、エンジン始動後のメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧を基準として設定されており、モータ軸回転数が低い場合を考慮していない。そのため、プレッシャレギュレータバルブの制御特性を変更するには、プレッシャレギュレータバルブの寸法変更及びそれに伴うレイアウト変更が必要になったり、プレッシャレギュレータバルブの機械的故障時に十分なライン圧を確保できない可能性が生じたりすることが考えられる。そのため、プレッシャレギュレータバルブの制御特性を変更することは現実的でない。
【0079】
[プレッシャレギュレータバルブの流量依存性]
図13(a)はライン圧制御弁の流量依存性についての説明図であり、(b)はライン圧制御弁の流量依存性に対する補正量を求める方法についての説明図である。
【0080】
プレッシャレギュレータバルブの調圧特性は、メカオイルポンプのポンプ圧が非常に高いとき(メカオイルポンプ吐出流量が大きい場合)を想定して設定されるため、第1,第2ドレンポートを開いた点で調圧する状態になっている。つまり、プレッシャレギュレータバルブの下流に配分される流量がドレンされることが前提である。このときの調圧特性は、図13(a)に破線で示したものとなる。
【0081】
しかしながら、メカオイルポンプのポンプ圧が低いとき(メカオイルポンプ吐出流量が小さい場合)には、図13(a)において破線で示した設定調圧特性に対して、同じ指令値(流量)であっても、ライン圧が小さくなる(図13(a)において実線で示す特性)ことが分かっている。つまり、プレッシャレギュレータバルブの調圧特性は、メカオイルポンプからの流量に依存して異なる。すなわち、設定調圧特性に基づいてプレッシャレギュレータバルブを制御すると、実ライン圧が必要圧に達する前にドレンポートが開いてしまう現象が生じる。
【0082】
しかし、このときのメカオイルポンプのポンプ圧がゼロではないため、プレッシャレギュレータバルブでのドレン流量を制限することで、ライン圧を上昇させることができる。つまり、プレッシャレギュレータバルブへの指示値を高くすれば、ドレンポートが開きにくくなって、メカオイルポンプ吐出流量が調圧特性設定時の想定流量以下であっても、ライン圧を上昇させることができる。
【0083】
具体的に説明すると、例えば、必要ライン圧がP1(図13(a)参照)であると仮定する。このとき、実際の調圧特性は実線で示すものであるため、プレッシャレギュレータバルブへの指示値を「P1」としてしまうと、ライン圧はP1´までしか上がらない。つまり、実際のライン圧が必要ライン圧(ここではP1)に達する前にドレンポートが開いてしまい、ドレン流量が発生してしまう。そこで、プレッシャレギュレータバルブの指示値に補正量を上乗せして「P2」まで上昇させると、流量Q1のときの実際のライン圧をP1にすることができる。この上乗せ分の補正量が、流量(回転)依存性に対する補正量である回転補正量となる。
【0084】
そして、この回転補正量を算出する方法として、図13(b)に示すように、モータ軸回転数Ninに応じて決まる油圧特性を、指示値ごと及び作動油温ごとに実験により求めておき、モータ軸回転数Nin、指示値、作動油温を入力条件として、現在の実ライン圧を算出する。この結果、設定調圧特性(図13(b)において破線で示す)におけるライン圧Pと、現在の実ライン圧(ここではPA)との油圧差分を求め、これを回転補正量とする。
【0085】
[低回転域に対応したライン圧制御作用]
図14は、実施例1のハイブリッド車両の制御装置の電動オイルポンプ作動時でのモータ軸回転数・サブモータ回転数・ソレノイド指示値・サブポンプリリーフ圧・サブモータ指示値・必要ライン圧・実ライン圧の各特性を示す図である。
【0086】
実施例1のハイブリッド車両の制御装置において、図14に示すように、時刻t2においてイグニッションがON動作されると、P.Reg調圧とSubO/P調圧を演算すると共に、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧によって必要ライン圧を維持できるか否かが判断される。このとき、モータ軸回転数Ninが非常に低いため、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧では必要ライン圧を維持できないと判断され、サブオイルポンプS-O/Pが作動する。
【0087】
つまり、図10に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS2→ステップS4と進む。このとき、サブモータS-Mには、サブモータ指示値演算ブロック7aにて演算されたサブモータ指示値が入力される。このサブモータ指示値は、作動油温Tempの影響を考慮するものの、必要ライン圧に応じた値となる(図14では一致した値となっている)。
【0088】
そして、図10に示すフローチャートにおいてステップS5へと進み、ソレノイド指示値が、P.Reg調圧とSubO/P調圧とのセレクトハイによって設定される。
【0089】
ここで、P.Reg調圧における上乗せ補正量とSubO/P調圧における上乗せ補正量とは、図11に示すように、モータ軸回転数が所定回転数N1に達するまでは、SubO/P調圧における上乗せ補正量の方が大きい。すなわち、ソレノイド指示値は、モータ軸回転数が所定回転数N1に達するまでは、SubO/P調圧に設定される。
【0090】
このように、モータ軸回転数が低回転域では、上乗せ補正量が大きいSubO/P調圧によってソレノイド指示値を設定することで、このソレノイド指示値が大きくなり、プレッシャレギュレータバルブ24の第1,第2ドレンポート24a,24bが閉じ側に制御される。すなわち、モータ軸回転数が低回転域におけるソレノイド指示値は、先に開放される第1ドレンポート24aが開かない値に設定される。
【0091】
そのため、プレッシャレギュレータバルブ24からのドレン流量がなくなって実ライン圧は上昇し、サブオイルポンプS-O/Pからの吐出圧で必要ライン圧を確保することができる。これにより、サブオイルポンプS-O/Pを作動するサブモータS-Mの負荷の低下が防止され、サブモータ回転数(サブモータ回転数)が上昇することはない。この結果、サブモータ回転数の上昇に伴う高周波ノイズの発生・サブモータ寿命低下・ライン圧制御精度の低下・燃費悪化等の問題の発生を防止することができる。
【0092】
また、このときのソレノイド指示値が、P.Reg調圧とSubO/P調圧とのセレクトハイによって設定される。これにより、サブモータS-Mの回転数上昇を抑えつつ、プレッシャレギュレータバルブ24に生じる流量依存性による誤差を適正に補正することができる。
【0093】
また、SubO/P調圧は、モータ軸回転数Ninが所定回転数N1に達すると、次第に減少するように設定されている。これは、モータ軸回転数Ninの上昇によって音振への影響が小さくなるため、第1,第2ドレンポート24a,24bを開放しても構わないからである。すなわち、モータ軸回転数Ninが一定回転数に達すれば、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出量がある程度確保でき、サブオイルポンプS-O/Pの停止に向けて上乗せ補正量を下げることができる。これにより、ライン圧PLを下げることができ、燃費向上を図ることができる。
【0094】
さらに、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、P.Reg調圧及びSubO/P調圧における回転補正量は、それぞれモータ軸回転数Nin、作動油温Temp、必要ライン圧に応じて設定される。このため、モータ軸回転数Nin、作動油温Temp、必要ライン圧の変化に応じて制御弁指示値を設定することができ、ライン圧制御弁を適切な状態に制御することができて燃費向上に貢献することもできる。
[セレクトハイによるライン圧制御作用]
図14に示す時刻t3において車両が発進し、モータ軸回転数Ninが上昇すると、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が次第に増加する。これに伴い実ライン圧は上昇するが、サブオイルポンプS-O/Pの吐出路25bに設けられたリリーフ弁26aのリリーフ圧に達すると、リリーフ弁26aからサブオイルポンプS-O/Pの吐出圧がドレンされる。これにより、実ライン圧はリリーフ圧を維持する。
【0095】
さらに、モータ軸回転数が上昇し、時刻t4においてモータ軸回転数が所定回転数N1に達すると、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が増え、サブオイルポンプS-O/Pの吐出路25bに設けられたフラッパー弁26が閉鎖する。フラッパー弁26が閉じた後は、リリーフ弁26aからドレンすることができなくなるため、ドレン流量分実ライン圧が上昇するおそれがある(図14において破線で示す)。
【0096】
これに対し、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、SubO/P調圧における上乗せ補正量を、モータ軸回転数が所定回転数N1から次第に低下させるため、ソレノイド指示値は時刻t4から次第に低くなる。これにより、プレッシャレギュレータバルブ24における第1,第2ドレンポート24a,24bは開き側に制御され、実ライン圧の上昇を抑えることができる。なお、ソレノイド指示値を急激に低下させると、実ライン圧が必要ライン圧を下回る可能性があるため、一定の割合で徐々に低下させる。
【0097】
そして、時刻t5においてメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が必要ライン圧を上回ると、図10に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS2→ステップS3へと進む。これにより、サブオイルポンプS-O/Pは停止し、サブモータ回転数はゼロとなる。一方、ソレノイド指示値は、P.Reg調圧に設定される。
【0098】
このように、メカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧によって必要ライン圧を確保することができれば、通常制御に移行することで、ライン圧PLを無駄に上昇させることなく燃費向上を図ることができる。
【0099】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0100】
(1) エンジンEngと、モータ(モータ/ジェネレータ)MGと、前記エンジンEngと前記モータMGとの間に設けられ、締結と開放を行う油圧クラッチ(第1クラッチ)CL1と、前記モータMGと駆動輪(左右後輪)RL,RRとの間に設けられ、油圧により変速段あるいは変速比を変更する変速制御を行う変速機(自動変速機)ATと、前記エンジンEng又は前記モータMGにより作動されて油圧供給を行う機械式オイルポンプ(メカオイルポンプ)M-O/Pと、サブモータS-Mにより作動されて油圧供給を行う電動オイルポンプ(サブオイルポンプ)S-O/Pと、前記機械式オイルポンプM-O/Pと前記電動オイルポンプS-O/Pの下流に設けられ、前記機械式オイルポンプM-O/Pと前記電動オイルポンプS-O/Pの少なくとも一方からの供給油圧を、制御弁指示値(ソレノイド指示値)に応じてドレンポート(第1ドレンポート,第2ドレンポート)24a,24bを開放することで減圧するライン圧制御弁(プレッシャレギュレータバルブ)24と、前記電動オイルポンプS-O/P作動時、前記油圧クラッチCL1や前記変速機ATの動作状態に応じて設定された必要ライン圧に、所定の上乗せ補正量を加えて前記制御弁指示値を設定し、前記ライン圧制御弁24のドレンポート24a,24bを閉じ側に制御するライン圧制御手段(ATコントローラ)7と、を備える構成とした。
このため、電動オイルポンプ作動時、電動オイルポンプを作動するサブモータの回転数の上昇を抑制することで、ライン圧制御精度向上・燃費向上・ノイズ低減・耐久性の向上を図ることができる。
【0101】
(2) 前記ライン圧制御手段(ATコントローラ)7は、前記必要ライン圧に、モータ回転数の増加に伴って所定の割合で減少する第1の上乗せ補正量を加えて第1制御弁指示値(P.Reg調圧)を設定する第1ライン圧制御手段(P.Reg調圧演算ブロック)7cと、前記必要ライン圧に、前記モータ回転数が低い時は前記第1の上乗せ補正量よりも大きく、前記モータ回転数が所定回転数N1に達すると、該モータ回転数の増加に伴って前記第1の上乗せ補正量の減少割合よりも大きい割合で減少する第2の上乗せ補正量を加えて第2制御弁指示値(SubO/P調圧)を設定する第2ライン圧制御手段(SubO/P調圧 演算ブロック)7dと、を有し、前記機械式オイルポンプM-O/Pからの吐出圧が前記必要ライン圧以下のとき、前記電動オイルポンプS-O/Pを作動すると共に、前記第1制御弁指示値(P.Reg調圧)と、前記第2制御弁指示値(SubO/P調圧)と、のセレクトハイにより、前記制御弁指示値(ソレノイド指示値)を設定する構成とした。
このため、制御弁指示値を適切な値に設定することができ、サブモータの回転数上昇を抑えつつ、ライン圧制御弁に生じる誤差を適正に補正することができる。
【0102】
(3) 前記ライン圧制御手段(ATコントローラ)7は、前記上乗せ補正量を、前記モータMGの回転数に応じて設定する構成とした。
このため、モータ回転数の変化に応じて制御弁指示値を設定することができ、例えば機械式オイルポンプと電動オイルポンプが同時に作動している状態であっても、ライン圧制御弁を適切な状態に制御することができ、燃費向上に貢献することもできる。
【0103】
(4) 前記ライン圧制御手段(ATコントローラ)7は、前記上乗せ補正量を、作動油温Tempに応じて設定する構成とした。
このため、作動油温の変化に応じて制御弁指示値を設定することができ、例えば油温が高くオイル粘性が低くなっている状態であっても、ライン圧制御弁を適切な状態に制御することができ、燃費向上に貢献することもできる。
【0104】
(5) 前記ライン圧制御手段(ATコントローラ)7は、前記上乗せ補正量を、前記必要ライン圧に応じて設定する構成とした。
このため、走行状態に応じて変動する必要ライン圧に応じて制御弁指示値を設定することができ、必要ライン圧に応じて異なるライン圧制御弁のライン圧特性が考慮される。そして、ライン圧制御弁を適切に制御することができて、燃費向上に貢献することもできる。
【0105】
(6) 前記ライン圧制御手段は、前記機械式オイルポンプM-O/Pからの吐出圧が前記必要ライン圧を超えるとき、前記電動オイルポンプS-O/Pを停止すると共に、前記第1制御弁指示値(P.Reg調圧)を、前記制御弁指示値(ソレノイド指示値)に設定する構成とした。
このため、ライン圧PLを無駄に上昇させることなく燃費向上を図ることができる。
【0106】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0107】
実施例1では、回転補正量を実験に基づいて得られたデータを基にマップを作成し、このマップを用いて設定しているが、例えば所定の演算によって求めるものであってもよい。
【0108】
また、実施例1では、第2クラッチCL2を、有段式の自動変速機ATに内蔵した摩擦要素の中から選択する例を示した。しかし、自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設けても良く、例えば、モータ/ジェネレータMGと変速機入力軸との間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例や、変速機出力軸と駆動輪の間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例も含まれる。
【0109】
実施例1では、変速機として、前進7速後退1速の有段式の自動変速機ATを用いる例を示した。しかし、有段式自動変速機の場合、変速段数はこれに限られるものではなく、変速段として2速段以上の複数の変速段を有する自動変速機であれば良い。また、変速機として、ベルト式無段変速機等のように、変速比を無段階に変更する無段変速機を用いてもよい。
【0110】
実施例1では、制御装置を後輪駆動のハイブリッド車両に対し適用した例を示したが、前輪駆動のハイブリッド車両に対しても適用することができる。要するに、機械式オイルポンプと電動オイルポンプとを備え、両オイルポンプから供給される供給油圧が、一つのライン圧制御弁によってドレンされることで、指令圧どおりのライン圧に制御されるハイブリッド車両であれば適用できる。
【符号の説明】
【0111】
Eng エンジン
CL1 第1クラッチ(油圧クラッチ)
MG モータ/ジェネレータ(モータ)
CL2 第2クラッチ
AT 自動変速機(変速機)
IN 変速機入力軸
M-O/P メカオイルポンプ(機械式オイルポンプ)
S-O/P サブオイルポンプ(電動オイルポンプ)
RL 左後輪(駆動輪)
RR 右後輪(駆動輪)
7 ATコントローラ(ライン圧制御手段)
7a サブモータ指示値演算ブロック
7b ソレノイド指示値演算ブロック
7c P.Reg調圧演算ブロック(第1ライン圧制御手段)
7d SubO/P調圧演算ブロック(第2ライン圧制御手段)
24 プレッシャレギュレータバルブ(ライン圧制御弁)
24a 第1ドレンポート(ドレンポート)
24b 第2ドレンポート(ドレンポート)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
モータと、
前記エンジンと前記モータとの間に設けられ、締結と開放を行う油圧クラッチと、
前記モータと駆動輪との間に設けられ、油圧により変速段あるいは変速比を変更する変速制御を行う変速機と、
前記エンジン又は前記モータにより作動されて油圧供給を行う機械式オイルポンプと、
サブモータにより作動されて油圧供給を行う電動オイルポンプと、
前記機械式オイルポンプと前記電動オイルポンプの下流に設けられ、前記機械式オイルポンプと前記電動オイルポンプの少なくとも一方からの供給油圧を、制御弁指示値に応じてドレンポートを開放することで減圧するライン圧制御弁と、
前記電動オイルポンプ作動時、前記油圧クラッチや前記変速機の動作状態に応じて設定された必要ライン圧に、所定の上乗せ補正量を加えて前記制御弁指示値を設定し、前記ライン圧制御弁のドレンポートを閉じ側に制御するライン圧制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ライン圧制御手段は、前記必要ライン圧に、モータ回転数の増加に伴って所定の割合で減少する第1の上乗せ補正量を加えて第1制御弁指示値を設定する第1ライン圧制御手段と、
前記必要ライン圧に、前記モータ回転数が低い時は前記第1の上乗せ補正量よりも大きく、前記モータ回転数が所定回転数に達すると、該モータ回転数の増加に伴って前記第1の上乗せ補正量の減少割合よりも大きい割合で減少する第2の上乗せ補正量を加えて第2制御弁指示値を設定する第2ライン圧制御手段と、
を有し、
前記機械式オイルポンプからの吐出圧が前記必要ライン圧以下のとき、前記電動オイルポンプを作動すると共に、前記第1制御弁指示値と、前記第2制御弁指示値と、のセレクトハイにより、前記制御弁指示値を設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ライン圧制御手段は、前記上乗せ補正量を、前記モータの回転数に応じて設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ライン圧制御手段は、前記上乗せ補正量を、作動油温に応じて設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ライン圧制御手段は、前記上乗せ補正量を、前記必要ライン圧に応じて設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ライン圧制御手段は、前記機械式オイルポンプからの吐出圧が前記必要ライン圧を超えるとき、前記電動オイルポンプを停止すると共に、前記第1制御弁指示値を、前記制御弁指示値に設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項1】
エンジンと、
モータと、
前記エンジンと前記モータとの間に設けられ、締結と開放を行う油圧クラッチと、
前記モータと駆動輪との間に設けられ、油圧により変速段あるいは変速比を変更する変速制御を行う変速機と、
前記エンジン又は前記モータにより作動されて油圧供給を行う機械式オイルポンプと、
サブモータにより作動されて油圧供給を行う電動オイルポンプと、
前記機械式オイルポンプと前記電動オイルポンプの下流に設けられ、前記機械式オイルポンプと前記電動オイルポンプの少なくとも一方からの供給油圧を、制御弁指示値に応じてドレンポートを開放することで減圧するライン圧制御弁と、
前記電動オイルポンプ作動時、前記油圧クラッチや前記変速機の動作状態に応じて設定された必要ライン圧に、所定の上乗せ補正量を加えて前記制御弁指示値を設定し、前記ライン圧制御弁のドレンポートを閉じ側に制御するライン圧制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ライン圧制御手段は、前記必要ライン圧に、モータ回転数の増加に伴って所定の割合で減少する第1の上乗せ補正量を加えて第1制御弁指示値を設定する第1ライン圧制御手段と、
前記必要ライン圧に、前記モータ回転数が低い時は前記第1の上乗せ補正量よりも大きく、前記モータ回転数が所定回転数に達すると、該モータ回転数の増加に伴って前記第1の上乗せ補正量の減少割合よりも大きい割合で減少する第2の上乗せ補正量を加えて第2制御弁指示値を設定する第2ライン圧制御手段と、
を有し、
前記機械式オイルポンプからの吐出圧が前記必要ライン圧以下のとき、前記電動オイルポンプを作動すると共に、前記第1制御弁指示値と、前記第2制御弁指示値と、のセレクトハイにより、前記制御弁指示値を設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ライン圧制御手段は、前記上乗せ補正量を、前記モータの回転数に応じて設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ライン圧制御手段は、前記上乗せ補正量を、作動油温に応じて設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ライン圧制御手段は、前記上乗せ補正量を、前記必要ライン圧に応じて設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ライン圧制御手段は、前記機械式オイルポンプからの吐出圧が前記必要ライン圧を超えるとき、前記電動オイルポンプを停止すると共に、前記第1制御弁指示値を、前記制御弁指示値に設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−97813(P2012−97813A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245826(P2010−245826)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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