説明

ハイブリッド車両の動力伝達装置

【課題】エンジンと電動機とを備えたハイブリッドハイブリッド車両の動力伝達装置において、パーキングロック解除時に発生する衝撃トルク・ショックを、好適に抑制することができるハイブリッド車両の動力伝達装置を提供する。
【解決手段】第2電動機MG2のロータ42に、パーキングポール54と噛み合うことで記駆動輪28を回転停止させるためのパーキングギヤ46が形成されているため、パーキングギヤ46の外周歯58とパーキングポール54の噛合歯55とが噛み合うパーキングロック時において、駆動系ギヤのギヤバックラッシュが詰まった状態となる。この状態でパーキングロックが解除されても、駆動系ギヤのギヤバックラッシュが予め詰まっているため、ギヤバックラッシュが詰まる際に発生する衝撃トルク・ショックが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の動力伝達装置に係り、特に、パーキングロック解除時に発生する衝撃トルク・ショック抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動機とエンジンとを備えるハイブリッド形式の動力伝達装置を備えた車両がよく知られている。例えば、特許文献1の車両の制御装置がその一例である。特許文献1では、カウンタシャフト23に設けられたパーキングロックギヤ26をロックするためのロック装置33が設けられており、シフト選択装置31により、パーキングレンジが選択されるとロック装置33が作動しパーキングギヤ26が回転不能にロックされるように構成されている。そして、パーキングロックが解除される際に、衝撃トルクが発生するものと判断されると、発生する衝撃トルクのトルク方向に第2電動発電機の回転出力軸131が回転するように第2電動機発電機を制御することで、衝撃トルクの発生を抑制する技術が開示されている。
【0003】
具体的に説明すると、特許文献1の構成において、上記ロック装置33によってパーキングギヤ26がロックされてパーキング状態とされると、カウンタシャフト23と前輪28との間の動力伝達経路(ドライブシャフト27、デファレンシャル16等を含む)には、前輪28側からの捩りトルクが滞留された状態となっている。また、カウンタシャフト23より上流側(内燃機関11側)の動力伝達経路では、上記前輪28側からの捩りトルクが、パーキングギヤ26およびロック装置33の噛合によって遮断されるため、カウンタシャフト23より上流側に位置する各ギヤやスプラインの噛合部において、ギヤの詰まりがなく、余分な隙間(ギヤバックラッシュ)が形成されることとなる。ここで、パーキングロックが解除されると、カウンタシャフト23と前輪28側に滞留されていた捩りトルクが上流側の動力伝達経路に開放されて、上記各ギヤやスプラインの噛合部に形成されているギヤバックラッシュが詰まる方向の急激なトルク(衝撃トルク)がかかり、動力伝達経路を構成するギヤやそのギヤを支持する軸受等に大きな負荷がかかり耐久性が低下する。さらに、その際にショックが発生する(上記衝撃トルクがかかると共に、その衝撃トルクによってショックが発生する現象を、本明細書では、衝撃トルク・ショックと定義する)。特許文献1では、上記衝撃トルク・ショックを抑制するため、電動機の回転制御によって、パーキングロック解除前に予めギヤバックラッシュ(隙間)を詰めておくことで、衝撃トルクショックを抑制し、衝撃トルク・ショックの発生に伴う、各部品の耐久性低下やショック発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−113743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の車両の制御装置において、パーキングロック解除時に予めギヤバックラッシュを詰めるための電動機がフェールしている場合、パーキングロック解除時において、捩りトルク開放に起因して衝撃トルク・ショックが発生してしまう問題があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンと電動機とを備えたハイブリッドハイブリッド車両の動力伝達装置において、パーキングロック解除時に発生する衝撃トルク・ショックを、電動機による制御がなくとも抑制することができるハイブリッド車両の動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)エンジンと、走行用電動機とを備え、そのエンジンおよびその走行用電動機がそれぞれ駆動輪に駆動系ギヤを介して動力伝達可能に連結されているハイブリッド車両の動力伝達装置であって、(b)前記走行用電動機のロータには、パーキングポールと噛み合うことで、前記駆動輪を回転停止させるためのパーキングギヤが設けられており、(c)前記走行用電動機は、回転子であるロータと固定子であるステータとを、同軸心上に備え、そのロータが前記ステータよりも外周側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1のハイブリッド車両の動力伝達装置において、(a)前記エンジンに動力伝達可能に連結されて差動状態が電気的に制御される差動機構と、その差動機構の所定の回転要素に動力伝達可能に連結されてその差動状態を制御するための差動用電動機とを、さらに備え、(b)前記エンジン、前記走行用電動機、前記差動用電動機、および前記差動機構は、同軸心上に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1のハイブリッド車両の動力伝達装置において、(a)前記エンジンに動力伝達可能に連結されて差動状態が電気的に制御される差動機構と、その差動機構の所定の回転要素に動力伝達可能に連結されてその差動状態を制御するための差動用電動機とを、さらに備え、(b)前記走行用電動機と前記差動用電動機とは、異なる軸心上に配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3のハイブリッド車両の動力伝達装置において、(a)前記走行用電動機のロータに設けられているパーキングギヤと、前記差動用電動機のロータに設けられてその差動用電動機の回転を停止させる際に噛み合わされる電動機ロックギヤとが、軸方向において重複した位置に配置され、(b)前記パーキングギヤと前記電動機ロックギヤとの間に、そのパーキングギヤおよびその電動機ロックギヤと噛み合う共通の部材で構成されるパーキングポールが介装され、(c)そのパーキングポールが、一方の回転方向に回転させられると前記パーキングギヤが回転停止させられ、他方の回転方向に回転させられると前記電動機ロックギヤが回転停止させられることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項4のハイブリッド車両の動力伝達装置において、前記パーキングポールは、長手状に形成されて、その一端側が回動軸まわりに回動可能に設けられており、他端側には、長手方向に対して垂直に突設された左右対称の一対の噛合ギヤが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明のハイブリッド車両の動力伝達装置によれば、前記走行用電動機のロータには、パーキングポールと噛み合うことで前記駆動輪を回転停止させるためのパーキングギヤが設けられているため、パーキングギヤとパーキングポールとが噛み合うパーキングロック時において、走行用電動機と駆動輪との間の動力伝達経路では、駆動系ギヤのギヤバックラッシュが詰まった状態となる。この状態でパーキングロックが解除されて、駆動系ギヤのギヤバックラッシュが予め詰まっている状態で比較的慣性の大きい走行用電動機のロータの回転が解除されるため、走行用電動機と駆動輪との間に介装されている駆動系ギヤにおいて、走行用電動機のロータが比較的緩やかに回転することで、捩りトルクが解放されるので、ギヤバックラッシュが詰まる際に発生する衝撃トルク・ショックが抑制される。また、衝撃トルク・ショックが抑制されるに伴い、駆動系ギヤや駆動系ギヤを支持する軸受等の耐久性が向上する。さらに、前記走行用電動機において、前記ロータが、前記ステータよりも外周側に配置されているため、パーキングギヤの外周歯が大径部に配置されることとなり、径が大きい大径部に形成されるパーキングギヤにかかる荷重がモーメントの関係に基づいて小さくなる。したがって、パーキングギヤおよびパーキングポールの耐久性設計が容易となり、これらの部材を小型化することができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明のハイブリッド車両の動力伝達装置によれば、前記エンジンに動力伝達可能に連結されて差動状態が電気的に制御される差動機構と、その差動機構の所定の回転要素に動力伝達可能に連結されて差動状態を制御する差動用電動機とを、さらに備える。このようにすれば、駆動輪からエンジン側への間の動力伝達経路の一部では、ギヤバックラッシュが形成されており、パーキングロック解除時において、そのギヤバックラッシュの詰まりによる衝撃トルク・ショックが発生するが、その衝撃トルク・ショックは、差動用電動機および差動機構によって一部吸収されるので、衝撃トルク・ショックによる影響が一層緩和される。また、前記エンジン、前記走行用電動機、前記差動用電動機、および前記差動機構が、同軸心上に配置されているため、動力伝達装置が径方向に小型化される。
【0014】
また、請求項3にかかる発明のハイブリッド車両の動力伝達装置によれば、前記エンジンに動力伝達可能に連結されて差動状態が電気的に制御されて差動状態を制御する差動機構と、その差動機構の所定の回転要素に動力伝達可能に連結される差動用電動機とを、さらに備える。このようにすれば、駆動輪からエンジン側への間の動力伝達経路の一部では、ギヤバックラッシュが形成されており、パーキングロック解除時において、そのギヤバックラッシュの詰まりによる衝撃トルク・ショックが発生するが、その衝撃トルク・ショックは、差動用電動機および差動機構によって一部吸収されるので、衝撃トルク・ショックによる影響が一層緩和される。また、前記走行用電動機と前記差動用電動機とは、異なる軸心上に配置されているため、前記走行用電動機と前記差動用電動機とを軸方向において重複した位置に配置することで、動力伝達装置の軸方向の長さを短縮することができる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明のハイブリッド車両の動力伝達装置によれば、前記走行用電動機のロータに設けられているパーキングギヤと、前記差動用電動機のロータに設けられてその差動用電動機の回転を停止させる際に噛み合わされる電動機ロックギヤとが、軸方向において重複した位置に配置されることで、パーキングギヤおよび電動機ロックギヤと噛み合うパーキングポールを共通の部材で構成することができる。したがって、部品点数の増加を抑制しつつ、通常のパーキングロックに加え、選択的に差動用電動機を回転停止させることができる。
【0016】
また、請求項5にかかる発明のハイブリッド車両の動力伝達装置によれば、パーキングポールの他端側には、長手方向に対して垂直に突設された左右対称の一対の噛合ギヤが形成されているため、パーキングポールが一方に回転すると一方の噛合ギヤとパーキングギヤとが噛み合い、パーキングポールが他方に回転すると他方の噛合ギヤと電動機ロックギヤと噛み合うことで、パーキングポールを共通部品化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置の概要を説明するための骨子図である。
【図2】図1に示すパーキングロック機構の構成を一例として示す図である。
【図3】本発明の他の実施例であるハイブリッド車両の動力伝達装置の概要を説明するための骨子図である。
【図4】図3に示す動力伝達装置のパーキング機構の構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、好適には、前記差動用電動機の電動機ロックギヤは、高速走行時に噛み合わされるものである。このようにすれば、高速走行時において、差動用電動機が逆転方向に回転させられて、差動用電動機において電力が消費されることが防止されるため、高速走行時の燃費低下を抑制することができる。
【0019】
また、好適には、パーキングギヤと電動機ロックギヤとは、同時にパーキングポールと噛み合わせることがないため、パーキングポールを共通部品化することができる。
【0020】
また、好適には、前記エンジンと前記差動機構との間の動力伝達経路には、トルクリミッタ機能を備えるダンパ装置が介装されている。このようにすれば、パーキングロック解除において発生する衝撃トルク・ショックが上記ダンパ装置によって吸収され、衝撃トルク・ショックによる影響が緩和される。
【0021】
また、好適には、請求項2にかかる発明において、差動機構の軸心と共通の軸心が回転中心となる減速機構として機能する遊星歯車装置が差動機構と軸方向に並んで配置されており、走行用電動機の回転は、その遊星歯車装置によって減速されて差動機構と共通の出力歯車から出力されるものである。このようにすれば、パーキングギヤがパーキングポールと噛み合うパーキングロック状態では、その遊星歯車装置においてギヤバックラッシュが予め詰まった状態となるため、この状態でパーキングロックが解除されても上記遊星歯車装置で発生する衝撃トルク・ショックが抑制される。また、車速が零近傍の徐行走行時にパーキングギヤがパーキングポールと噛み込む(ラチェッティング)場合において、出力歯車の回転が遊星歯車装置によって増速されてパーキングギヤに伝達され、且つ、パーキングギヤは走行用電動機のロータに設けられているため、パーキングギヤの慣性トルクが大きくなるに従い、車速が十分に低くならない限り、パーキングロックされない。上記より、車速が十分に低くならない限りパーキングロックされないので、パーキングロック時の衝撃トルク・ショックが小さくなる。また、好適には、パーキングギヤの外径は、出力歯車の外径よりも大きく形成される。このようにすれば、パーキングギヤの外周部の周速度は、出力歯車の外周部の周速度よりも速くなる。したがって、例えば出力歯車にパーキングギヤが設けられる場合と比較して、同じ車速であっても走行用電動機のロータにパーキングギヤが設けらると、出力歯車にパーキングギヤが設けられる場合よりもパーキングギヤの外周部の周速度が速くなる。これより、パーキングロック可能となる車速が出力歯車にパーキングギヤが設けられる場合に比べて小さくなるため、パーキングロック時の衝撃トルク・ショックが小さくなる。
【0022】
また、好適には、請求項3にかかる発明において、走行用電動機の回転は、減速機構を介して差動機構の出力歯車とも噛み合う共通の歯車に減速されて出力される。このようにすれば、パーキングギヤがパーキングポールと噛み合うパーキングロック状態では、その減速機構においてギヤバックラッシュが予め詰まった状態となるため、この状態でパーキングロックが解除されても上記減速機構で発生する衝撃トルク・ショックが抑制される。また、車速が零近傍の徐行走行時にパーキングギヤがパーキングポールと噛み込む(ラチェッティング)場合において、前記共通の歯車の回転が減速機構を介して増速されてパーキングギヤに伝達され、且つ、パーキングギヤは走行用電動機のロータに設けられているため、パーキングギヤの慣性トルクが大きくなるに従い、車速が十分に低くならない限りパーキングロックされない。上記より、車速が十分に低くならない限りパーキングロックされないため、パーキングロック時の衝撃トルク・ショックが小さくなる。
【0023】
また、好適には、本明細書において、ギヤバックラッシュが形成された状態とは、互いに噛み合うギヤ(またはスプライン)において、動力伝達が遮断された状態とされ、互いのギヤ(またはスプライン)が、互いのギヤの噛合部(またはスプライン嵌合部)の間に形成されている僅かな隙間分だけ自由に相対回転可能な状態に対応する。また、ギヤバックラッシュが詰まった状態とは、互いに噛み合うギヤ(またはスプライン)に、所定のトルク(強制力)が付与されることで、ギヤの回転が規制され、互いのギヤの噛合部(またはスプラインの嵌合部)の間に形成されている隙間が周方向(回転方向)に対して一方側が詰まった状態に対応している。
【0024】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置10(以下、動力伝達装置10と記載する)の概要を説明するための骨子図である。図1に示すように、動力伝達装置10は、エンジン12と、第1電動機MG1と、エンジン12および第1電動機MG1に動力伝達可能に連結されてエンジン12および第1電動機MG1の駆動力を適宜分配或いは合成する動力分配機構としての第1遊星歯車装置14と、第2電動機MG2と、第2電動機MG2の回転を減速させるリダクションギヤとして機能する第2遊星歯車装置18とを、同軸心C上に備えている。また、エンジン12に対して反対側の端部には、エンジン12の出力軸16の回転によって作動させられる機械式のオイルポンプ19が接続されている。上記のように、エンジン12、第1電動機MG1、第1遊星歯車装置14、第2遊星歯車装置18、第2電動機MG2が軸心C上に配置されることで、動力伝達装置10が径方向に小型化される。
【0026】
なお、第1電動機MG1および第2電動機MG2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、動力分配機構としての差動状態を制御するための差動用電動機として機能する第1電動機MG1は、反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備える。また、駆動輪28に動力伝達可能に連結された第2電動機MG2は、走行用の駆動力源として駆動力を出力する走行用電動機として機能するためモータ(電動機)機能を少なくとも備える。また、第2電動機MG2は、主として走行用の駆動力源として機能するため、第1電動機MG1よりも大きなものとなる。すなわち、第2電動機MG2のイナーシャが第1電動機MG1のイナーシャよりも大きなものとなる。なお、第1電動機MG1が本発明の差動用電動機に対応しており、第2電動機MG2が本発明の走行用電動機に対応している。
【0027】
第1電動機MG1は、同軸心C上において、軸方向の両端が軸受32および軸受34によって回転可能に支持されている回転子として機能する円筒状のロータ36と、ロータ36の外周側に配置され非回転部材であるケース30によって回転不能に固定されている固定子として機能する円筒状のステータ38とを、含んで構成されている。
【0028】
第2電動機MG2は、同軸心C上において、ケース30に接続されることで回転不能に固定されている固定子として機能する円筒状のステータ40と、ステータ40の外周側に配置されて回転子として機能する円筒状のロータ42とを備えている。ロータ42の軸方向のエンジン12側には、円板状のパーキングギヤ46が設けられており、そのパーキングギヤ46の内周側の端部に、円筒状の回転軸48が接続されている。上記回転軸48は、その両端が軸受50および軸受52によって回転可能に支持されることによって、回転軸48にパーキングギヤ46を介して接続されているロータ42も同様に、軸心Cまわりに回転可能に支持される。なお、回転軸48の軸方向の一方の端部が第2遊星歯車装置18の後述するサンギヤS2に連結されている。
【0029】
また、パーキングギヤ46の外径は、ロータ42の外径以上の長さに形成され、そのパーキングギヤ46の外周側の端部に、パーキングロック時においてパーキングポール54(図2参照)と噛み合うことで駆動輪28を回転停止させるパーキングギヤ46の外周歯58が形成されている。上記パーキングギヤ46の外周歯58とパーキングポール54とを含んで構成されるパーキング機構60については、後述することとする。
【0030】
第1遊星歯車装置14は、シングルピニオン型の遊星歯車装置で構成され、サンギヤS1と、サンギヤS1と同軸心上に配置されてピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1と、ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1とを備えている。そして、第1遊星歯車装置18のサンギヤS1が第1電動機MG1のロータ36に連結され、キャリヤCA1が出力軸16およびダンパ装置20を介してエンジン12に連結され、リングギヤR1が出力歯車22、減速歯車装置24、デファレンシャル装置26、および左右の車軸27を介して左右の駆動輪28に作動的に連結されている。なお、上記第1遊星歯車装置14が、本発明の差動機構として機能するものであり、その差動状態が第1電動機MG1によって好適に制御される。
【0031】
第2遊星歯車装置18は、第1遊星歯車装置14と共通の軸心Cを中心に軸方向に並んで配置されており、第2電動機MG2の回転を減速して出力する機構として機能する。第2遊星歯車装置18は、シングルピニオン型の遊星歯車装置で構成され、サンギヤS2と、サンギヤS2と同軸心上に配置されてピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2と、ピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2とを備えている。そして、第2遊星歯車装置20のサンギヤS2が第2電動機MG2のロータ42に連結され、キャリヤCA2が非回転部材であるケース30に連結され、リングギヤR2がリングギヤR1と同様に、出力歯車22、減速歯車装置24、デファレンシャル装置26、および車軸27を介して左右の駆動輪28に作動的に連結されている。そして、サンギヤS2から入力される第2電動機MG2の回転を減速してリングギヤR2から出力する。
【0032】
また、本実施例では、内周側に第1遊星歯車装置18のリングギヤR1の内歯および第2リングギヤR2の内歯が軸方向に並んで形成されると共に、外周側に出力歯車22の外歯が形成されている所謂複合式の複合歯車42が使用されている。上記のように、複合歯車42において複数の歯車機能が一体化されることにより、動力伝達装置10がコンパクトとなる。
【0033】
減速歯車機構24は、カウンタ軸62に出力歯車22(カウンタドライブギヤ)と噛み合うカウンタドリブンギヤ64と、デファレンシャル装置26のファイナルドリブンギヤ66と噛み合うファイナルドライブギヤ68とで構成されており、出力歯車22の回転を減速させてファイナルドリブンギヤ66に伝達する。
【0034】
デファレンシャル装置26は、公知である傘歯車式のものであり、デファレンシャル装置26のファイナルドリブンギヤ66に接続されているデフケース70と、両端がデフケース70に支持されているピニオンシャフト72と、ピニオンシャフト72に挿し通されてピニオンシャフト72の回転軸まわりに相対回転可能なピニオンギヤ74と、ピニオンギヤ74と噛み合う一対のサイドギヤ76とを、備えている。なお、一対のサイドギヤ76は、それぞれ左右の車軸27にスプライン嵌合されることにより一体的に回転させられる。デファレンシャル装置26の差動作用によって、車両の走行状態に応じて左右の車軸27(駆動輪28)に回転差が与えられる。
【0035】
上記エンジン12と駆動輪28の間の動力伝達経路を構成するギヤ等、具体的には、第1遊星歯車装置14、出力歯車22、減速歯車機構24、ディファレンシャル装置26、車軸27等、および第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路を構成するギヤ等、具体的には、第2遊星歯車装置18、出力歯車22、減速歯車機構24、ディファレンシャル装置26、車軸27等が、本発明の駆動系ギヤに対応する。なお、エンジン12と駆動輪28の間の動力伝達経路および第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路において、出力歯車22、減速歯車機構24、ディファレンシャル装置26、車軸27等は、共通の動力伝達経路を構成する駆動系ギヤとなる。
【0036】
図2は、パーキングロック機構60の構成を一例として示す図である。パーキング機構60は、駆動輪28と作動的に連結されているパーキングギヤ46の外周端部に形成されている外周歯58と、噛合歯55がそのパーキングギヤ46の外周歯58と噛み合う噛合位置へ回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ46の回転をロックするパーキングポール54と、パーキングポール54と当接するテーパ部材78に挿し通されてテーパ部材78を一端部において支持するパーキングロッド80と、パーキングロッド80に設けられてテーパ部材78をその小径方向へ付勢するスプリング82と、パーキングロッド80の他端部に回動可能に接続されて節度機構により少なくともパーキング位置に位置決めされるディテントプレート84と、ディテントプレート84に固設されて一軸まわりに回転可能に支持されたシャフト86と、シャフト86を回転駆動させる電動アクチュエータ90と、シャフト86の回転角度を検出するロータリエンコーダ92と、ディテントプレート84の回転に節度を与えて各シフト位置に固定するディテントスプリング94およびその先端部に設けられた係合部96とを、備えている。
【0037】
図2は、パーキング機構60がパーキングロック状態にある場合を表している。パーキングロック機構60がパーキングロック状態にある場合、パーキングポール54の噛合歯55とパーキングギヤ46の外周歯58とが噛み合わされることで、パーキングギヤ46の回転が阻止される。なお、パーキングギヤ46は、第2遊星歯車装置18、減速歯車装置24、デファレンシャル装置26、車軸27等を介して駆動輪28に作動的に連結されているため、パーキングギヤ46がパーキングロック状態にあると、駆動輪28の回転も同様に阻止される。パーキングポール54は、パーキングロッド80の一端に設けられているテーパ部78との当接位置が変化させられることで、その位置が調節される。例えば、パーキングポール54がテーパ部78の大径部と当接する場合、パーキングギヤ22とパーキングポール24とが噛み合うことで、パーキングロック状態とされる(図2)。一方、パーキングポール54がテーパ部78の小径部と当接する場合、パーキングギヤ46との噛合いが外れ、パーキングロック状態が解除される。
【0038】
上記パーキングポール54とテーパ部78との当接位置は、テーパ部78の軸方向位置に基づいて調節される。テーパ部78の軸方向位置は、はパーキングロッド80によって変化させられ、それに伴ってパーキングポール54とテーパ部78との当接位置が調節される。例えば、矢印C方向にテーパ部78が移動させられると、パーキングポール54はテーパ部78の小径側と当接することとなる。したがって、パーキングポール54の先端が鉛直下方に移動されるに伴って、パーキングポール54の噛合歯55とパーキングギヤ46の外周歯58との噛合が解除される。すなわちパーキングロック状態が解除される。
【0039】
一方、矢印Cとは逆方向にテーパ部78が移動させられると、パーキングポール54の先端がテーパ部78の大径側と当接することとなる。したがって、パーキングポール54の先端が鉛直上方に移動されるに伴って、パーキングポール54の噛合歯55とパーキングギヤ46の外周歯58とが噛み合わされる。すなわち、パーキングロック状態とされる。
【0040】
また、パーキングロッド80の軸方向への移動は、ディテントプレート84の回動位置すなわちシャフト86の回転位置に応じて調節される。シャフト86は電動アクチュエータ90によって回転させられ、走行レンジを制御する電子制御装置から出力される電動アクチュエータ90の作動信号に基づいて、その回転位置が制御される。例えば、シャフト86が矢印A側に回転させられると、パーキングロッド80を介してテーパ部材78が、そのテーパ部材78の小径側とパーキングポール54とが当接する位置に移動させられる。このとき、パーキングギヤ46の外周歯58とパーキングポール54の噛合歯55との噛合が解除されて車両走行が可能な非パーキングロック状態とされる。一方、シャフト86が矢印B側に回転させられると、パーキングロッド80を介してテーパ部材78が、そのテーパ部材78の大径側とパーキングポール54とが当接する位置に移動させられる。このとき、パーキングギヤ46の外周歯58とパーキングポール54の噛合歯55とが噛み合うパーキングロック状態となる。
【0041】
上記のように構成される動力伝達装置10において、上記パーキング機構60が非パーキングロック状態からパーキングロック状態に切り替えられた状態では、第2電動機MG2から駆動輪28への動力伝達経路を構成する各ギヤおよびスプラインの噛合部においては、たとえば路面傾斜に関連して、上記噛合部のギヤバックラッシュが詰まった状態となる。具体的には、パーキングギヤ46とパーキングポール54とが噛み合わされると、駆動輪28と第2電動機MG2との間の動力伝達経路を構成する駆動系ギヤ、すなわち、車軸27、デファレンシャル装置26、減速歯車装置24、出力歯車22、および第2遊星歯車装置18等の各ギヤおよびスプラインの噛合部において、駆動輪側からのトルク(捩りトルク)によって、互いの歯車が当接させられ、各噛合部の間に周方向(回転方向)に形成されている隙間の一方が詰まった状態となる。
【0042】
この状態でパーキングロックが解除されると、第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路では、各ギヤおよびスプラインの噛合部において予めギヤバックラッシュが詰まった状態となっているため、駆動輪側からの捩りトルクの開放が、比較的慣性(イナーシャ)の大きいロータ42の緩やかな回転開始によって行われるので、各ギヤおよびスプラインの噛合部の互いの歯部に急激に負荷されるトルク(衝撃トルク)の発生、およびその衝撃トルクによるショック(以下、上記衝撃トルクおよび衝撃トルクによるショックが発生する現象を衝撃トルク・ショックと記載する)が抑制される。特に、出力歯車22にパーキングロック機構が設けられている場合と比較すると、出力歯車22と第2電動機MG2との間の動力伝達経路(主として、第2遊星歯車装置18)において、発生する衝撃トルク・ショックが抑制される。これより、上記衝撃トルク・ショックが抑制されるため、各ギヤおよびその各ギヤ等を保持する軸受の耐久性が向上する。また、衝撃トルク・ショックが抑制されるに伴い、上記各ギヤおよび軸受の耐久性設計が容易となり、各ギヤおよび軸受の小型化が可能となる。
【0043】
なお、従来では、出力歯車22にパーキングロック機構60が設けられていたが、このような場合では、パーキングロック状態に切り替えられると、第2遊星歯車装置18から第2電動機MG2の動力伝達経路(主として第2遊星歯車装置18)では、各ギヤに駆動輪からの捩りトルクに起因する強制力がかからないため、各ギヤやスプラインの噛合部に余分な隙間(ギヤバックラッシュ)が形成される。したがって、この状態でパーキングロックが解除されると、捩りトルクが開放されることにより、第2遊星歯車装置18から第2電動機MG2間の動力伝達経路において、各ギヤおよびスプラインの噛合部において、衝撃トルク・ショックが発生し、各部材の耐久性が低下する。特に、第2電動機MG2のイナーシャ等に起因して、出力歯車22と第2電動機MG2との間の動力伝達経路(主として第2遊星歯車装置18)において発生する衝撃トルク・ショックの影響が大きなものとなっていた。これに対して、従来では、第2電動機MG2のトルク制御もしくは回転制御によってギヤバックラッシュを予め詰めていたが、第2電動機MG2がフェールすると、衝撃トルク・ショックを抑制することが不可能となる。これに対して、本実施例では、第2電動機MG2による制御の実施、非実施に拘わらず、第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路のギヤバックラッシュ(主として、第2遊星歯車装置18のギヤの噛合部)が予め詰められるため、衝撃トルク・ショックの抑制が可能となる。
【0044】
また、駆動輪28側から回転が入力される場合、パーキングギヤ46の回転速度は、第2遊星歯車装置18によって増速され、且つ、パーキングギヤ46の外径は、出力歯車22の外径よりも大きく形成されているため、パーキングギヤ46の外周歯58の周速度は、出力歯車22の外径側の周速度よりも速くなる。また、パーキングギヤ46は、第2電動機MG2のロータ42に一体的に設けられているため、パーキングギヤ46のイナーシャも同様に大きくなる。したがって、車速が零近傍の徐行走行時において、パーキングギヤ46の外周歯58とパーキングポール54の噛合歯55とが噛み込む(ラチェッティング)際には、パーキングギヤ46の慣性トルクが大きくなるため、パーキングギヤ46が十分に低い回転状態、すなわち十分に低い車速にならない限り、パーキングポール54との噛合が弾かれてパーキングロックされない。すなわち、パーキングロックが可能となる車速が小さくなる。例えば、出力歯車22にパーキングギヤが設けられている場合と比較すると、同じ車速でパーキングロックされる場合あっても、出力歯車22の外周側の周速度は、パーキングギヤ46の外周歯58の周速度よりも小さく、且つ、出力歯車22はパーキングギヤ46に比べてイナーシャが小さいため、出力歯車22にパーキングギヤが設けられた場合では、第2電動機MG2のロータ42に設けられた場合と比較しても、パーキングロックされ易くなる。言い換えれば、出力歯車22にパーキングギヤが設けられる場合、第2電動機MG2のロータ42にパーキングギヤ42が設けられる場合と比較して、高い車速でパーキングロックされることなり、それに伴う衝撃トルク・ショックが大きくなる。これに対して、本実施例では、第2電動機MG2のロータ42にパーキングギヤ46が設けられることで、さらに低車速でパーキングロックされるため、それに伴う衝撃トルク・ショックが小さくなる。
【0045】
なお、エンジン12(および第1電動機MG1)と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部では、パーキングロック状態において、ギヤバックラッシュが形成される。具体的には、第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路と共通する動力伝達経路を除いたエンジン12(および第1電動機MG1)と駆動輪28との間の動力伝達経路(第1遊星歯車装置14とエンジン12および第1電動機MG1との間の動力伝達経路)において、ギヤバックラッシュが形成される。これより、パーキングロック解除時において、駆動輪側からの捩りトルクが開放されると、上記動力伝達経路(第1遊星歯車装置14とエンジン12および第1電動機MG1との間の動力伝達経路)において衝撃トルク・ショックが発生する。これに対して、例えばエンジン12と第1遊星歯車装置14との間にはトルクリミッタ機能を有するダンパ装置20が介装されているため、衝撃トルク・ショックがダンパ装置20によって吸収されるので、その影響が緩和される。また、第1電動機MG1は第2電動機MG2に比べてイナーシャ(慣性力)が小さいため、衝撃トルク・ショックが第1電動機MG1の僅かな回転および第1遊星歯車装置14の差動作用によって一部吸収され、その影響が緩和される。すなわち、第2電動機MG2側の動力伝達経路で発生する衝撃トルク・ショックに比べてその影響が小さくなる。
【0046】
また、動力伝達装置10においては、第2電動機MG2から駆動輪28までの動力伝達経路のトータルギヤ比γmg2と、エンジン12から駆動輪28までの動力伝達経路のトータルギヤ比γeとを、比較すると、トータルギヤ比γmg2がトータルギヤ比γeよりも大きくなるように設計されている。これより、駆動輪側からのトルクに対して、エンジン12側にパーキング機構が設けられる場合よりも、パーキングギヤ46にかかる荷重が小さくなる。したがって、パーキングギヤ46およびパーキングポール54にかかる荷重が小さくなるので、耐久性に対する設計が容易となり、パーキングギヤ46およびパーキングポール54を小型化することも可能となる。
【0047】
また、動力伝達装置10では、第2電動機MG2において、ロータ42がステータ40の外周側に配置されるアウタロータタイプで構成されている。したがって、図1に示すように、パーキングギヤ46の外周歯58を大径部に設けることが容易となる。そして、パーキングギヤ46の外周歯58が大径部に配置されると、モーメントの関係より、径が大きいパーキングギヤ46にかかる荷重が小さくなるため、パーキングギヤ46およびパーキングポール54の耐久性設計が容易となり、パーキングギヤ46およびパーキングポール54を小型化することも可能となる。
【0048】
また、パーキングギヤ46を配置する際、第2電動機MG2がアウタロータタイプであるため、動力伝達装置10が軸方向に大型化するのを抑制することもできる。例えば、第2電動機MG2のロータ42がステータ40の内周側に配置されるインナロータタイプであった場合、パーキングギヤ46を設ける場合、ロータ42から軸方向に延説する必要があり、軸方向に大型化してしまう。これに対して、第2電動機MG2がアウタロータタイプであるため、ロータ42とパーキングギヤ46の外周歯58とを軸方向において重複させることも可能となるため、軸方向への大型化が防止される。
【0049】
上述のように、本実施例によれば、第2電動機MG2のロータ42に、パーキングポール54と噛み合うことで記駆動輪28を回転停止させるためのパーキングギヤ46が形成されているため、パーキングギヤ46の外周歯58とパーキングポール54の噛合歯55とが噛み合うパーキングロック時において、第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路では、駆動系ギヤのギヤバックラッシュが詰まった状態となる。この状態でパーキングロックが解除されても、駆動系ギヤのギヤバックラッシュが予め詰まっている状態で比較的慣性(イナーシャ)の大きいロータ42の回転が開始されることで捩りトルクが解放されるので、第2電動機MG2と駆動輪28との間に介装されている駆動系ギヤにおいて、ギヤバックラッシュが詰まる際に発生する衝撃トルク・ショックが抑制される。また、衝撃トルク・ショックが抑制されるに伴い、駆動系ギヤや駆動系ギヤを支持する軸受等の耐久性が向上する。
【0050】
また、第2電動機MG2において、ロータ42が、ステータより40も外周側に配置されているため、パーキングギヤ46の外周歯58が大径部に配置されることとなり、径が大きい大径部に形成されるパーキングギヤ46にかかる荷重がモーメントの関係に基づいて小さくなる。したがって、パーキングギヤ46およびパーキングポール54の耐久性設計が容易となり、これらの部材を小型化することができる。また、パーキングギヤ46の配置に伴う軸方向への大型化を抑制することができる。
【0051】
また、本実施例によれば、エンジン12に動力伝達可能に連結されて差動状態が電気的に制御される第1遊星歯車装置14と、その第1遊星歯車装置14の所定の回転要素に動力伝達可能に連結されて差動状態を制御する第1電動機MG1とを、さらに備える。このようにすれば、駆動輪28からエンジン側への間の動力伝達経路の一部では、ギヤバックラッシュが形成されており、パーキングロック解除時において、そのギヤバックラッシュの詰まりによる衝撃トルク・ショックが発生するが、その衝撃トルク・ショックは、遊星歯車装置14および第1電動機MG1によって一部吸収されるので、衝撃トルク・ショックによる影響が緩和される。また、エンジン12、第2電動機MG2、第1電動機MG1、および第1遊星歯車装置14が、同軸心C上に配置されているため、動力伝達装置が径方向に小型化される。
【0052】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【実施例2】
【0053】
図3は、本発明の他の実施例であるハイブリッド車両の動力伝達装置150(以下、動力伝達装置150と記載する)の概要を説明するための骨子図である。図3に示すように、動力伝達装置150では、第1電動機MG1および第2電動機MG2が異なる軸心に配置されている。具体的には、第1電動機MG1は、軸心C1が回転中心となるように配置され、第2電動機MG2は、軸心C1に平行な軸心C2が回転中心となるように配置されている。これより、動力伝達装置150は、前述した動力伝達装置10と比べて、軸方向の長さが短縮化される。また、動力伝達装置150では、前述の実施例において第2電動機MG2の回転を減速させるリダクションギヤとして機能する第2遊星歯車装置18が省略されている。動力伝達装置150は、エンジン12と、第1電動機MG1と、エンジン12および第1電動機MG1に動力伝達可能に連結されてエンジン12および第1電動機MG1の駆動力を適宜分配或いは合成する動力分配機構としての遊星歯車装置152とを、同軸心C1上に備え、第2電動機MG2を軸心C2上に備えている。なお、遊星歯車装置152は、前述の実施例の第1遊星歯車装置14と同様の機能を有する。
【0054】
差動機構として機能する遊星歯車装置152は、シングルピニオン型の遊星歯車装置で構成され、サンギヤSと、サンギヤSと同軸心上に配置されてピニオンギヤPを介してサンギヤSと噛み合うリングギヤRと、ピニオンギヤPを自転および公転可能に支持するキャリヤCAとを備えている。そして、遊星歯車装置152のサンギヤSが第1電動機MG1の後述するロータ182に連結され、キャリヤCAが出力軸16およびダンパ装置20を介してエンジン12に連結され、リングギヤRが第1カウンタドライブギヤ154、カウンタギヤ対156、デファレンシャル装置26、および左右の車軸27を介して左右の駆動輪28に作動的に連結されている。なお、第1カウンタドライブギヤ154は、遊星歯車装置152(差動機構)の出力歯車として機能する。
【0055】
カウンタギヤ対156は、軸心C1と平行な軸心C3まわりに回転可能に支持されているカウンタ軸158と、カウンタ軸158に並列して設けられているカウンタドリブンギヤ160およびファイナルドライブギヤ162とを、一体的に備えて構成されている。第1カウンタドライブギヤ154および第2カウンタドライブギヤ164は、共通のカウンタドリブンギヤ160と噛み合わされている。また、ファイナルドライブギヤ162は、デファレンシャル装置26のファイナルドリブンギヤ166と噛み合うことで、ファイナルドライブギヤ162の回転が減速されてファイナルドリブンギヤ166に伝達される。
【0056】
第2カウンタドライブギヤ164は、軸心C2まわりに回転可能な動力伝達軸168の一端に設けられ、その動力伝達軸168の他端側には、第2電動機MG2のロータ170が動力伝達軸168に一体的に設けられているパーキングギヤ172を介して連結されている。なお、パーキングギヤ172の外径(ピッチ径)は、ロータ170の外径以上に形成され、好ましくは、第1カウンタドライブギヤ154の外径(ピッチ径)以上に形成される。上記カウンタドリブンギヤ160と第2カウンタドライブギヤ164とのギヤ比が好適に設定されることによって、第2電動機MG2の回転が、減速されてカウンタ軸158に出力される。すなわち、カウンタドリブンギヤ160および第2カウンタドライブギヤ164が、減速機構(リダクションギヤ)としての機能し、第2電動機MG2の回転が減速されてカウンタドリブンギヤ160から出力される。なお、第2カウンタドライブギヤ164の回転が、カウンタドリブンギヤ160に減速されて伝達されるに従い、第2カウンタドライブギヤ164のピッチ径は、カウンタドリブンギヤ160のピッチ径よりも小さくなる。
【0057】
第2電動機MG2は、軸心C2が中心となるように配置されケース30に接続されることで回転不能に固定されている固定子としての円筒状のステータ174と、ステータ174の外周側に配置され軸心C2まわりに回転可能に支持されている回転子としての円筒状のロータ170とを、含んで構成されている。すなわち、第2電動機MG2は、ロータ170がステータ174の外周側に配置されるアウタロータタイプの電動機である。また、ロータ170の軸方向においてエンジン側に、そのロータ170の外径よりも大径であるパーキングギヤ172が一体的に設けられている。また、パーキングギヤ172の内周端が動力伝達軸168に一体的に接続されていると共に、外周端には、パーキングギヤ172の外周歯176が形成されている。上記パーキングギヤ172の外周歯176が、後述するパーキングポールと噛み合うことで、パーキングギヤ172およびそれに接続されている第2電動機MG2のロータ170が回転停止させられる。すなわち、パーキングギヤ172がロックされると、第2電動機MG2および第2電動機MG2に動力伝達可能に連結されている駆動輪28が回転停止させられる。
【0058】
第1電動機MG1は、軸心C1を中心に配置されケース30に接続されることで回転不能に固定されている円筒状のステータ180と、ステータ180の外周側に配置され軸心C1回りに回転可能に支持されている円筒状のロータ182とを、含んで構成されている。すなわち、第1電動機MG1は、ロータ182がステータ180の外周側に配置されるアウタロータタイプの電動機である。第1電動機MG1のロータ182には、軸方向の一方の端部において、ロータ182の外径よりも大径である円板状のロックギヤ184(本発明の電動機ロックギヤに対応)が一体的に設けられている。ロックギヤ184は、外径がロータ182の外径よりも大径に形成されており、その外周端には、ロックギヤ184の外周歯186が形成されている。ロックギヤ184は、その外周歯186が後述するパーキングポールと噛み合うことで回転停止させられる。また、ロックギヤ184に接続されているロータ182も同様に回転停止させられる。すなわち、ロックギヤ184がロックされると、第1電動機MG1が回転停止させられる。また、ロックギヤ184の内周端は、遊星歯車装置152のサンギヤSに連結されている。
【0059】
上記エンジン12と駆動輪28の間の動力伝達経路を構成するギヤ等、具体的には、遊星歯車装置152、第1カウンタドライブギヤ154、カウンタギヤ対156、ディファレンシャル装置26、車軸27等、および、第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路を構成するギヤ等、具体的には、動力伝達軸168、第2カウンタドライブギヤ164、カウンタギヤ対156、ディファレンシャル装置26、車軸27等が本発明の駆動系ギヤに対応する。なお、エンジン12と駆動輪28の間の動力伝達経路および第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路において、カウンタギヤ対156、ディファレンシャル装置26、および車軸27は、共通の動力伝達経路を構成する駆動系ギヤとなる。
【0060】
図4は、動力伝達装置150のパーキング機構190の構成を示している。パーキング機構190は、外周端に外周歯176が形成されているパーキングギヤ172、外周端に外周歯186が形成されているロックギヤ184、およびパーキングギヤ172とロックギヤ184との間に介装されパーキングギヤ174の外周歯176およびロックギヤ184の外周歯186のいずれか一方と噛合可能なパーキングポール192を、含んで構成されている。
【0061】
パーキングポール192は、長手状に形成され、その一端が回動軸C4まわりに回動可能に構成されている。また、パーキングポール192の他端には、長手方向に対して垂直方向に突設された一対の噛合ギヤ194および噛合ギヤ196が左右対称に形成されている。噛合ギヤ194は、パーキングギヤ172の外周歯176と噛合可能に形成され、噛合ギヤ196は、ロックギヤ184の外周歯186と噛合可能に形成されている。また、パーキングギヤ172、ロックギヤ184、およびパーキングポール192は、図3に示すように、軸方向において重複する位置に配置されている。上記配置は、第1電動機MG1と第2電動機MG2とが、異なる軸心上(C1、C2)に配置されるために可能となる。そして、パーキング機構190では、パーキングギヤ172とロックギヤ184との間にパーキングポール192が介装され、パーキングギヤ172およびロックギヤ184は、共通のパーキングポール192によってロック可能に構成されている。なお、パーキングポール192が左右対称に形成されることで、製造時の加工が容易となり、加工精度が向上する。
【0062】
パーキング機構190において、例えばパーキングポール192が、回動軸C4を中心に、図4において時計方向に回動すると、噛合ギヤ194と外周歯176とが噛み合うこととなる。なお、パーキングポール192は、例えば図示しない電動アクチュエータによって回動させられる。このとき、パーキングギヤ172が回転停止させられる。ここで、パーキングギヤ172は、第2電動機MG2、第2カウンタドライブギヤ164、カウンタギヤ対156、ディファレンシャル装置26、車軸27、および駆動輪28に作動的(動力伝達可能)に連結されているため、パーキングギヤ172が回転停止させられると、上記第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路を構成する上記各回転要素(カウンタギヤ対156、ディファレンシャル装置26等)も同様に回転停止させられる。すなわち、パーキングギヤ172がロックされると、パーキングギヤ172から駆動輪28の間の動力伝達経路を介して、駆動輪28がロックされる。
【0063】
一方、パーキングポール192が回動軸C4を中心に図4において反時計方向に回動すると、噛合ギヤ196とロックギヤ184の外周歯186とが噛み合うこととなる。このとき、ロックギヤ184が回転停止させられる。上記ロックギヤ184が回転停止させられると、ロックギヤ184に接続されている第1電動機MG1の(ロータ182)が回転停止(ロック)させられことになる。なお、第1電動機MG1のロックは、高速走行時において好適に実施される。高速走行時においては、通常、第1電動機MG1の回転速度が零に維持されるが、走行状態によっては、第1電動機MG1が逆転することがあり、そのときに電力が消費されて燃費が低下することが知られている。これに対して、高速走行時に第1電動機MG1がパーキング機構190によって機械的にロックされることで、第1電動機MG1の逆転が抑制され、燃費が向上する。上記より、第1電動機MG1および第2電動機MG2を同時にロックする必要はないため、パーキングギヤ172およびロックギヤ184をロックするパーキングポール192を共通部品化することができる。また、パーキングポール192が共通部品化されるため、部品点数の増加が抑制される。
【0064】
上記のように構成される動力伝達装置150において、パーキング機構190によってパーキングギヤ172の噛合ギヤ176とパーキングポール192の噛合ギヤ194とが噛み合わされることで、パーキングギヤ172がパーキングロックされると、第2電動機MG2から駆動輪28の間の動力伝達経路を構成する各ギヤおよびスプラインの噛合部(主として、カウンタドリブンギヤ160および第2カウンタドライブギヤ164の噛合部)において、ギヤバックラッシュが詰まった状態となる。したがって、この状態でパーキングロックが解除されると、第2電動機MG2から駆動輪28の間の動力伝達経路では、予めギヤバックラッシュが詰まっている状態で比較的慣性(イナーシャ)の大きいロータ170の回転が開始されることで捩りトルクが解放されるので、第2電動機MG2から駆動輪28の間の動力伝達経路において、各ギヤおよびスプラインの噛合部において発生する衝撃トルク・ショックが抑制される。したがって、上記各ギヤの噛合部およびスプライン嵌合部およびそれらを支持する軸受の耐久性が向上し、これらを小型化することも可能となる。
【0065】
また、駆動輪28側から回転が入力される場合、パーキングギヤ172の回転速度は、カウンタドリブンギヤ160および第2カウンタドライブギヤによって増速される。また、パーキングギヤ172は、第2電動機MG2のロータ170に一体的に設けられているため、パーキングギヤ172のイナーシャも同様に大きくなる。したがって、車速が零近傍の徐行走行時において、パーキングギヤ172の外周歯176とパーキングポール192の噛合ギヤ194とが噛み込む(ラチェッティング)際には、パーキングギヤ172の慣性トルクが大きくなるため、パーキングギヤ172が十分に低い回転状態、すなわち十分に低い車速にならない限り、パーキングポール192が弾かれてパーキングロックされない。すなわち、パーキングロックが可能となる車速が小さくなる。例えば、遊星歯車装置152の出力歯車として機能する第1カウンタドライブギヤ154にパーキングギヤが設けられてる場合と比較すると、パーキングギヤ172は、第2電動機MG2に設けられることで、そのイナーシャが第1カウンタドライブギヤ154よりも大きく、且つ、その回転が増速されるため、第1カウンタドライブギヤ154にパーキングギヤが設けられる場合に比べて、慣性トルクが大きくなる。したがって、パーキングギヤ172がパーキングロック可能となる車速は、第1カウンタドライブギヤ154にパーキングギヤが設けられる場合に比較して、低い車速となるため、パーキングロックされたときの衝撃トルク・ショックが小さくなる。また、パーキングギヤ172の外径が、第1カウンタドライブギヤ154の外径よりも大きく形成されることで、パーキングギヤ172の外周部の周速度が、第1カウンタドライブギヤ154の外周部の周速度よりも速くなる。したがって、パーキングギヤ172がパーキングロック可能となる車速が、例えば第1カウンタドライブギヤ154にパーキングギヤが設けられる場合にパーキングロック可能となる車速に比べてもさらに低い車速となるため、パーキングロック時の衝撃トルク・ショックがさらに小さくなる。
【0066】
ここで、エンジン12(および第1電動機MG1)と駆動輪28との間の動力伝達経路の各ギヤの噛合部およびスプライン嵌合部の一部では、パーキングロック時において、ギヤバックラッシュが形成されており、パーキングロックが解除されると、駆動輪側からの捩りトルクが開放され、衝撃トルク・ショックが発生する。具体的には、エンジン12と駆動輪28との間の動力伝達経路であって、第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路と共通しない部分(第1カウンタドライブギヤ154とエンジン12および第1電動機MG1との間の動力伝達経路)の各ギヤおよびスプラインの噛合部では、パーキングロック時においてギヤバックラッシュが形成された状態となる。この状態でパーキングロックが解除されると、上記動力伝達経路(第1カウンタドライブギヤ154と第1電動機MG1およびエンジン12の間の動力伝達経路)において、ギヤバックラッシュに伴う衝撃トルク・ショックが発生する。しかしながら、上記動力伝達経路では、例えばエンジン12と遊星歯車装置152との間に介装されているトルクリミッタ機能を有するダンパ装置20によって衝撃トルク・ショックが吸収され、その影響が緩和される。また、第1電動機MG1の僅かな回転や遊星歯車装置152の差動作用によって一部吸収されるなどして、その影響が緩和される。すなわち、第2電動機MG2側の動力伝達経路で発生する衝撃トルク・ショックに比べてその影響が小さくなる。
【0067】
また、動力伝達装置150では、第2電動機MG2から駆動輪28の間のギヤ比γmg2が、エンジン12から駆動輪28の間のギヤ比γeよりも大きく設計されている。したがって、仮にエンジン12の出力軸16にパーキング機構が設けられている場合と比較しても、駆動輪28からのトルクに対して、パーキングギヤ172にかかる荷重が、エンジン12側にパーキングギヤが設けられていた場合においてそのパーキングギヤにかかる荷重と比べても小さくなる。上記より、パーキングギヤ172にかかる荷重が小さくなるため、耐久性設計が容易となり、パーキングギヤ172およびパーキングポール192の小型化が可能となる。
【0068】
また、第2電動機MG2は、ロータ170がステータ174の外周側に配置されるアウタロータタイプであるため、ロータ170に形成されているパーキングギヤ172の外径が大きくなり、結果として、パーキングギヤ172の外周歯176が大径部に配置し易くなる。したがって、モーメントの関係より、パーキングギヤ172の外周歯186にかかる荷重は小さくなる。上記より、パーキングギヤ172にかかる荷重が小さくなるため、これらの耐久性設計が容易となり、パーキングギヤ172およびパーキングポール192の小型化が可能となる。また、パーキングギヤ172を配置するに際して、第2電動機MG2がアウタロータタイプであるため、パーキングギヤ172の外周歯176を軸方向においてロータ170と重複させることも可能となるため、軸方向への大型化が抑制される。
【0069】
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様に、パーキングギヤ172とパーキングポール192とが噛み合うパーキングロック時において、第2電動機MG2と駆動輪28との間の動力伝達経路では、駆動系ギヤのギヤバックラッシュが詰まった状態となる。この状態でパーキングロックが解除されて、駆動系ギヤのギヤバックラッシュが予め詰まっている状態で比較的慣性(イナーシャ)の大きいロータ170の回転が開始されることで捩りトルクが解放されるので、走第2電動機MG2と駆動輪28との間に介装されている駆動系ギヤにおいて、バックラッシュが詰まる際に発生する衝撃トルク・ショックが抑制される。また、衝撃トルク・ショックが抑制されるに伴い、駆動系ギヤや駆動系ギヤを支持する軸受等の耐久性が向上する。
【0070】
また、本実施例によれば、エンジン12に動力伝達可能に連結されて差動状態が電気的に制御されて差動状態を制御する遊星歯車装置152と、その遊星歯車装置152の所定の回転要素に動力伝達可能に連結される第1電動機MG1とを、さらに備える。このようにすれば、駆動輪28からエンジン12側への間の動力伝達経路の一部では、ギヤバックラッシュが形成されており、パーキングロック解除時において、そのギヤバックラッシュの詰まりによる衝撃トルク・ショックが発生するが、その衝撃トルク・ショックは、遊星歯車装置152および第1電動機MG1によって一部吸収されるので、衝撃トルク・ショックによる影響が緩和される。また、第2電動機MG2と第1電動機MG1とは、異なる軸心上に配置されているため、例えば第2電動機MG2の回転を減速させて出力する必要がある場合には、カウンタドリブンギヤ160および第2カウンタドライブギヤ164のギヤ比を好適に設定することで、容易に実現することができる。また、第2電動機MG2と第1電動機MG1とは、異なる軸心上に配置されているため、第1電動機MG1と第2電動機MG2とを軸方向において重複した位置に配置することで、動力伝達装置150の軸方向の長さを短縮することができる。
【0071】
また、本実施例によれば、第2電動機MG2のロータ170に形成されているパーキングギヤ172と、第1電動機MG1のロータ182に形成されて第1電動機MG1の回転を停止させる際に噛み合わされるロックギヤ184とが、軸方向において重複した位置に配置されることで、パーキングギヤ172およびロックギヤ184と噛み合うパーキングポール192を共通の部材で構成することができる。したがって、部品点数の増加を抑制しつつ、通常のパーキングロックに加え、選択的に第1電動機MG1を回転停止させることができる。
【0072】
また、本実施例によれば、パーキングポール192の他端側には、長手方向に対して垂直に突設された左右対称の一対の噛合ギヤ194、196が形成されているため、パーキングポール192が一方に回転すると一方の噛合ギヤ194とパーキングギヤ172とが噛み合い、パーキングポール192が他方に回転すると他方の噛合ギヤ196とロックギヤ184と噛み合うことで、パーキングポール192を共通部品化させることができる。
【0073】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
10、150:動力伝達装置
12:エンジン
14、152:第1遊星歯車装置(差動機構)
40、174:ステータ
42、170:ロータ(走行用電動機のロータ)
46、172:パーキングギヤ
54、192:パーキングポール
182:ロータ(差動用電動機のロータ)
184:ロックギヤ(電動機ロックギヤ)
194、196:噛合ギヤ(一対の噛合ギヤ)
MG1:第1電動機(差動用電動機)
MG2:第2電動機(走行用電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、走行用電動機とを備え、該エンジンおよび該走行用電動機がそれぞれ駆動輪に駆動系ギヤを介して動力伝達可能に連結されているハイブリッド車両の動力伝達装置であって、
前記走行用電動機のロータには、パーキングポールと噛み合うことで、前記駆動輪を回転停止させるためのパーキングギヤが設けられており、
前記走行用電動機は、回転子であるロータと固定子であるステータとを、同軸心上に備え、該ロータが前記ステータよりも外周側に配置されていることを特徴とするハイブリッド車両の動力伝達装置。
【請求項2】
前記エンジンに動力伝達可能に連結されて差動状態が電気的に制御される差動機構と、該差動機構の所定の回転要素に動力伝達可能に連結されて該差動状態を制御するための差動用電動機とを、さらに備え、
前記エンジン、前記走行用電動機、前記差動用電動機、および前記差動機構が、同軸心上に配置されていることを特徴とする請求項1のハイブリッド車両の動力伝達装置。
【請求項3】
前記エンジンに動力伝達可能に連結されて差動状態が電気的に制御される差動機構と、該差動機構の所定の回転要素に動力伝達可能に連結されて該差動状態を制御するための差動用電動機とを、さらに備え、
前記走行用電動機と前記差動用電動機とは、異なる軸心上に配置されていることを特徴とする請求項1のハイブリッド車両の動力伝達装置。
【請求項4】
前記走行用電動機のロータに設けられているパーキングギヤと、前記差動用電動機のロータに設けられて該差動用電動機の回転を停止させる際に噛み合わされる電動機ロックギヤとが、軸方向において重複した位置に配置され、
前記パーキングギヤと前記電動機ロックギヤとの間に、該パーキングギヤおよび該電動機ロックギヤと噛み合う共通の部材で構成されるパーキングポールが介装され、
該パーキングポールが、一方の回転方向に回転させられると前記パーキングギヤが回転停止させられ、他方の回転方向に回転させられると前記電動機ロックギヤが回転停止させられることを特徴とする請求項3のハイブリッド車両の動力伝達装置。
【請求項5】
前記パーキングポールは、長手状に形成されて、その一端側が回動軸まわりに回動可能に設けられており、
他端側には、長手方向に対して垂直に突設された左右対称の一対の噛合ギヤが形成されていることを特徴とする請求項4のハイブリッド車両の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−230713(P2011−230713A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104524(P2010−104524)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】