説明

バス回路及び半導体回路

【課題】波形品質の劣化、電源バウンス、及び電磁波放射を抑制して、高速動作を実現すると共に、使用ピンの数の増大及び回路規模の拡大を抑制することができるようにする。
【解決手段】バス回路10は、伝送線路12と、伝送線路12の送信端に接続されたオープンドレインのPMOS素子からなる駆動スイッチング回路14と、一端が伝送線路12の受信端に接続された終端抵抗16と、インダクタンス成分を有する接続回路20を介して、終端抵抗16の他端に接続され、終端電位となっている電源22と、終端抵抗16の一端に接続され、かつ、信号を受信するためのレシーバ素子18とを備える。バス回路10は、ドレインが、終端抵抗16を迂回するように接続回路20を介して電源22に接続され、ソースが接地されているNMOS素子からなる迂回スイッチング回路24を備え、迂回スイッチング回路24のゲートは伝送線路12の受信端に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス回路及び半導体回路に係り、特に、情報機器等の電子機器に用いられる信号伝送を行うバス回路及び該バス回路を用いた半導体回路に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板において観測される電磁波には、信号線上の電流分布から予測される電磁波とは周波数分布が異なっており、かつ、信号線の性質とは無関係に特定の周波数で鋭いピークを有する電磁波がある。この電磁波発生の主な要因は、プリント配線基板の信号線にはなく電源系にあり、対向する電源層及びグランド層において発生する電気的共振にあることが知られている(特許文献1)。
【0003】
このようなプリント配線基板の電源系に起因する電磁波放射の放射源が、プリント配線基板に搭載されたデジタルICの駆動の際にデジタルICの電源配線を経由して流れる電流であることから、特許文献1に記載された技術では、論理回路と電源供給線の間に能動ノイズ阻止回路を配置し、能動ノイズ阻止回路によってDC電流のみを論理回路に供給させて電源側への高周波電流を阻止している。
【0004】
しかしながら、シングルエンドのバスで近年主流となっている受信端での整合終端を行う場合、電源電位又はその分圧を用いる終端電位に接続した終端抵抗を介して、該終端電位より直接高周波の電流をバスに対して供給する必要があるため、該終端抵抗に対しては特許文献1の能動ノイズ阻止回路といった手段を用いることができない。また、終端抵抗が受信デバイスへの入力部の近傍にない場合や、駆動素子からみて受信デバイスより先に終端抵抗がない場合、信号反射による波形品質の劣化といった問題を生じる。
【0005】
そこで、信号入力バッファの信号入力回路が、基板やケーブルなどの伝送線路部の配線上で終端される構成ではなく、出力側電子デバイス部に設けられた信号出力バッファが、終端されずに、基板やケーブルなどの伝送線路部の配線を介して入力側電子デバイス部に設けられた信号入力バッファに直接回路接続され、伝送線路部の配線と信号入力回路との回路接続部から終端回路用配線を介して、入力側電子デバイス部付近で終端抵抗により終端されている伝送線路の終端方法が知られている(特許文献2)。
【0006】
また、駆動素子が、オープンドレイン構造のN型CMOS素子であって、そのソースが基準電位となり、ドレインが伝送線路に接続され、該伝送線路が終端抵抗を介して終端電位に接続される伝送線路の終端方法が知られている。この場合、駆動素子がオン状態になるとき、ソースとドレインとの間の急激なインピーダンス変化によって、チャネルあたり数10mAの電流が流れ、その変化は時には100mA/nsにも及ぶ急峻なものである。
【0007】
また、GHzに近い高速動作を行う場合、終端抵抗を介して終端電位からこれだけの電流変化に対応して電流供給を行う必要があり、終端抵抗をパッケージ内部、さらには素子上に持った場合でも、基板に接続する電源ピンから終端抵抗に至るパッケージングを含む電流供給路に急峻な電流が流れる。
【0008】
この急峻な電流変化di/dtによって、電源供給路のインダクタンスLに基づいてL×di/dtの電位差が発生する。パッケージ内部でこのようないわゆる電源バウンスが生じると、チャネルの動作の有無にかかわらず、全入出力ピンを通じてプリント基板上に電源バウンスが伝播し、時には著しい電磁波放射の問題を生じさせる。そこで、LSIの機能回路が存在しない部分に電源容量を配置することで、電源安定化を行う方法、いわゆるオンチップ・デカップリングが提案されている(特許文献3)。すなわち半導体層中の機能回路によって使用されていない部分に形成されたコンデンサを含む集積回路となっており、基板に接続する電源ピンから終端抵抗に至るパッケージングを含む電流供給路の、終端抵抗に極力近い側に、スイッチングする容量より十分大きな容量をグランドに対して配置して、電源供給路における急峻な電流変化を抑えている。
【0009】
また、電源供給路を流れる急峻な電流変化di/dtに対して、電源供給路のインダクタンスでL×di/dtの電位差が発生するのは、言い換えれば電源供給路のインダクタンスが電流を制限しているということで、これがバス構造の速度的な限界を規定しており、現状は数100MHzが限度であり、高速化に適さない構造となっている。これに対しCML(Current Mode Logic)及びLVDS(Low Voltage Differential Signaling:低電圧差動伝送)といった電流駆動の差動伝送においては、電源系からの過渡電流を差動チャネルが交互に引き込むことで電源供給路の電流変化を相殺しているため、動作速度は電源供給路のインダクタンスに制限されることが少なく高速化に適しており、しかも上述した電源バウンスを低減することができる。
【特許文献1】特開2002―93997
【特許文献2】特開2004―7286
【特許文献3】特許第3217098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の伝送線路の終端方法によると、全ての信号入力に対して一旦チップの入力を経由した後でパッケージ外部の終端素子と結ぶためのピンを、入力ピンと同数配置する必要があり、著しい多ピン化の問題がある。
【0011】
また、特許文献3に記載のオンチップ・デカップリングによると、スイッチングする容量より十分大きな容量を配置しなければならないため、回路規模が大きくなってしまう、という問題がある。
【0012】
また、上記の電流駆動の差動伝送によれば、チャネルあたりの高速化には適するが、並列データ転送において差動伝送を行う場合は使用する信号ピンおよび配線数がシングルエンド伝送の2倍になり、更に、近年のLSIの処理能力の増大にともない、大規模なデータを高速でLSI間でやりとりする必要が増しており、LSIの限られたピン数を消費すると同時に、チャネル間のスキューが大となり、高速化も制限されてしまう、という問題がある。
【0013】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、終端抵抗を介して流れる高周波の電流の電源供給路のインダクタンスによる、波形品質の劣化、電源バウンス、及び電磁波放射を抑制して、高速動作を実現すると共に、使用ピンの数の増大及び回路規模の拡大を抑制することができるバス回路及び半導体回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために本発明に係るバス回路は、信号を伝送するための伝送線路と、一端が前記伝送線路の受信端に接続され、かつ他端がインダクタンス成分を有する接続回路を介して電源に接続された終端抵抗と、前記伝送線路の送信端に接続され、かつ、複数の信号レベルからなる送信信号に基づいて、オンオフする第1のスイッチング回路と、前記終端抵抗の一端に接続され、かつ、前記第1のスイッチング回路のオンオフに応じて前記電源から前記接続回路及び前記終端抵抗を介して流れる電流に応じた信号を前記送信信号として受信する受信部と、前記終端抵抗を迂回するように設けられ、かつ、前記第1のスイッチング回路がオンのときオフとなって前記電源から前記接続回路を介して前記終端抵抗に電流が流れ、前記第1のスイッチング回路がオフのときオンとなって、前記電源から前記接続回路を介し、かつ、前記終端抵抗を迂回して電流が流れるようにスイッチングする第2のスイッチング回路とを含んで構成されている。
【0015】
本発明に係るバス回路によれば、送信信号に基づいて、第1のスイッチング回路がオンになると、第2のスイッチング回路がオフとなって、電源から接続回路及び終端抵抗を介して伝送線路に電流が流れ、受信部によって、接続回路及び終端抵抗を介して流れる電流に応じた信号が送信信号として受信される。
【0016】
そして、送信信号に基づいて、第1のスイッチング回路がオフになると、第2のスイッチング回路がオンとなって、電源から接続回路を介し、かつ、終端抵抗を迂回して電流が流れる。
【0017】
従って、終端抵抗に電流が流れないときに、第2のスイッチング回路がオンになって、電源から接続回路を介し、かつ、終端抵抗を迂回して電流が流れるようにすることにより、接続回路に常に電流が流れるため、接続回路のインダクタンス成分と電流変化による波形品質の劣化、電源バウンス、及び電磁波放射を抑制することができ、高速動作を実現することができる。また、従来のバス回路に、終端回路を迂回するように第2のスイッチング回路を設けた構成となっているため、使用ピンの数の増大及び回路規模の拡大を抑制することができる。
【0018】
本発明に係る第2のスイッチング回路は、電源から接続回路を介して流れる電流を常に略一定にすることを特徴とすることができる。これにより、接続回路のインダクタンス成分と電流変化による波形品質の劣化、電源バウンス、及び電磁波放射を更に抑制することができる。
【0019】
また、本発明に係るバス回路は、第2のスイッチング回路に接続され、かつ、オンオフする第3のスイッチング回路と、バス回路を含む回路ブロックが動作状態であるとき、第3のスイッチング回路をオンにさせ、バス回路を含む回路ブロックが非動作状態であるとき、第3のスイッチング回路をオフにさせる制御手段とを更に含み、第3のスイッチング回路がオンとなり、かつ、第2のスイッチング回路がオンとなるときに、電源から接続回路を介し、かつ、終端抵抗を迂回して電流が流れることを特徴とすることができる。
【0020】
これにより、回路ブロックが非動作状態であるとき、第3のスイッチング回路がオフになって、終端抵抗を迂回して電流が流れないようになるため、無駄な電力の消費を防止することができる。
【0021】
また、本発明に係る半導体回路は、上記の複数のバス回路を含み、前記電源、前記接続回路、及び前記制御手段が共有して設けられ、かつ、前記複数のバス回路が並列に設けられている半導体回路であって、前記制御手段は、前記回路ブロックが動作状態及び非動作状態の一方から他方へ移行するときに、複数の前記バス回路における前記第3のスイッチング回路のオンオフの切り替えのタイミングをずらして制御することを特徴としている。
【0022】
本発明に係る半導体回路によれば、回路ブロックが動作状態及び非動作状態の一方から他方へ移行するときに、制御手段によって、複数の前記バス回路における第3のスイッチング回路のオンオフの切り替えのタイミングをずらして制御する。
【0023】
従って、終端抵抗に電流が流れないときに、第2のスイッチング回路がオンになって、電源から接続回路を介し、かつ、終端抵抗を迂回して電流が流れるようにすることにより、接続回路に常に電流が流れるため、接続回路のインダクタンス成分と電流変化による波形品質の劣化、電源バウンス、及び電磁波放射を抑制することができ、高速動作を実現することができる。また、従来のバス回路に、終端回路を迂回するように第2のスイッチング回路を設けた構成となっているため、使用ピンの数の増大及び回路規模の拡大を抑制することができる。
【0024】
また、複数のバス回路における第3のスイッチング回路のオンオフの切り替えのタイミングをずらして制御することにより、電源から接続回路を介して複数のバス回路に流れる電流の変化が急峻になるのを防ぐことができるため、電磁放射を抑制し、また回路ブロックの動作を安定させることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明のバス回路及び半導体回路によれば、終端抵抗に電流が流れないときに、第2のスイッチング回路がオンになって、電源から接続回路を介し、かつ、終端抵抗を迂回して電流が流れるようにすることにより、接続回路に常に電流が流れるため、接続回路のインダクタンス成分と電流変化による波形品質の劣化、電源バウンス、及び電磁波放射を抑制することができ、高速動作を実現することができる、という効果が得られる。また、従来のバス回路に、終端回路を迂回するように第2のスイッチング回路を設けた構成となっているため、使用ピンの数の増大及び回路規模の拡大を抑制することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0027】
図1に示すように、第1の実施の形態に係るバス回路10は、信号を伝送するための伝送線路12と、伝送線路12の送信端に接続されたオープンドレインのPMOS素子からなり、かつ、複数の信号レベルからなる送信信号に基づいてオンオフする駆動スイッチング回路14と、一端が伝送線路12の受信端に接続された終端抵抗16と、インダクタンス成分を有する接続回路20を介して、終端抵抗16の他端に接続され、終端電位となっている電源22と、終端抵抗16の一端に接続され、かつ、駆動スイッチング回路のオンオフに応じて電源22から接続回路20及び終端抵抗16を介して流れる電流に応じた信号を受信するためのレシーバ素子18とを備え、これらによって伝送系を成している。
【0028】
また、バス回路10は、ドレインが、終端抵抗16を迂回するように接続回路20を介して電源22に接続され、かつ、ソースが接地されているNMOS素子からなる迂回スイッチング回路24を備え、迂回スイッチング回路24のゲートは伝送線路12の受信端に接続されている。
【0029】
なお、迂回スイッチング回路24は、図1においては単一の素子となっているが、一般には複数個の素子が並列に接続された回路を成しており、各素子の特性とその並列数によってドレインおよびゲート間のチャネルのインピーダンスおよび電流容量を制御している。
【0030】
また、終端抵抗16に電流が流れないとき、終端抵抗16に電流が流れるときの電流値と等しい電流が迂回スイッチング回路24を通じて流れ、電源22から接続回路20を介して流れる電流が常に略一定になるように迂回スイッチング回路24の素子のパラメタが設定されている。
【0031】
例えば、迂回スイッチング回路24のオン抵抗が、伝送線路12の特性インピーダンスと終端抵抗16との和と等しくなるようにパラメタを設定するか、または迂回スイッチング回路24のソースもしくはドレインに抵抗が接続されている。
【0032】
また、接続回路20は、例えばプリント配線基板と接続するリードフレーム構造もしくは金属ボール、パッケージ内のリードフレーム、更にチップと接続するワイヤボンド等の直列接続であり、それぞれ高周波的に無視できないインダクタンス成分を有するものである。
【0033】
次に、第1の実施の形態に係るバス回路10の動作について説明する。
【0034】
まず、駆動スイッチング回路14に、送信信号としてローレベルの信号が入力されると、駆動スイッチング回路14がオンとなり、電源22から接続回路20を介して、終端抵抗16及び伝送線路12に電流が流れる。このとき、伝送線路12の受信端の電位は、伝送線路12が放電されているため、低電位となり、レシーバ素子18によってローレベルの信号が受信される。また、迂回スイッチング回路24では、ゲートが低電位となるため、オフとなり、電源22から接続回路20を介し、かつ、終端抵抗16を迂回して迂回スイッチング回路24に電流は流れない。
【0035】
次に、駆動スイッチング回路14に、送信信号としてハイレベルの信号が入力されると、駆動スイッチング回路14がオフとなり、終端抵抗16及び伝送線路12に電流が流れずに、伝送線路12が充電され、伝送線路12の受信端の電位が高電位となる。これにより、レシーバ素子18によってハイレベルの信号が受信されると共に、迂回スイッチング回路24のゲートが高電位となってオンとなり、電源22から接続回路20を介して終端抵抗16を迂回して迂回スイッチング回路24のドレイン、ソース間に電流が流れる。
【0036】
このように、駆動スイッチング回路14がオンオフすることにより、終端抵抗16に電流が流れたり、電流が停止されたりしても、接続回路20には継続して同じ電流が流れるようになっており、接続回路20のインダクタンス成分による電源バウンスが発生しないようなっている。
【0037】
次に、本発明の第1の実施形態に係るバス回路のシミュレーション結果について説明する。なお、図2に示す従来既知のバス回路100と比較して説明する。バス回路100は、迂回スイッチング回路が設けられていない点が第1の実施の形態に係るバス回路10と異なっている。
【0038】
まず、シミュレーションの条件について説明する。伝送線路12は特性インピーダンス50Ωで伝播遅延約1nsのマイクロストリップ配線となっており、50Ωの終端抵抗16で整合終端されている。また、駆動スイッチング回路14に用いたPMOS素子及び迂回スイッチング回路24のNMOS素子は180nmプロセスによるもので、NMOS素子のオン抵抗値を約100Ωとしている。また、接続回路20の実効インダクタンスは5nHとし、電源22の終端電圧及び入力パルス電圧は1.5Vとなっている。
【0039】
図3を用いて、2GHzの台形波パルスの送信信号によって駆動スイッチング回路14を駆動した場合の負荷電圧波形および終端抵抗16における電流波形について説明する。
【0040】
図3(a)に示されるように、本発明によるバス回路10では、2GHzのシングルエンド伝送パルスで台形波の形が崩れずレシーバ素子18に伝送されており(図3(a)の実線参照)、また終端抵抗16の電流が十分速く変化している(図3(a)の破線参照)。一方、図3(b)に示されるように、従来技術によるバス回路100では、レシーバ素子18で受信される電圧のリンギングが大きく(図3(b)の実線参照)、また、電流波形の立ち上がりが遅くなっている(図3(b)の破線参照)。以上のように、本発明に係るバス回路10によれば、電源が接続されている接続回路のインダクタンス成分によらず、従来のバス回路100では安定して行えなかった高速伝送が可能となっている。
【0041】
また、図4を用いて、2GHzの台形波パルスの送信信号によって駆動スイッチング回路14を駆動した場合の電源22による電流波形の周波数スペクトルについて説明する。
【0042】
図4(a)に示される本発明のバス回路10における周波数スペクトルは、図4(b)に示される従来のバス回路100における周波数スペクトルに比べて、電源22による電流の主要な高調波スペクトルが20dB程度低減されている。
【0043】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係るバス回路によれば、終端抵抗に電流が流れないときに、迂回スイッチング回路がオンになって、電源から接続回路を介し、かつ、終端抵抗を迂回して電流が流れるようにすることにより、接続回路に常に電流が流れるため、接続回路のインダクタンス成分と電流変化による波形品質の劣化、電源バウンス、及び電磁波放射を抑制することができ、高速動作を実現することができる。
【0044】
また、従来のバス回路に、終端回路を迂回するように迂回スイッチング回路を設けた構成となっているため、使用ピンの数の増大及び回路規模の拡大を抑制することができる。
【0045】
また、迂回スイッチング回路のドレインを接地電位より高い終端電位に接続し、ソースを接地電位に接続し、また、終端抵抗を迂回するようにゲートを接続するだけで、終端抵抗を介して流れる電流の急峻な変化によらず、電源から接続回路を介して流れる電流がほぼ一定となるため、負荷の容量をほとんど増やすことなく、また大きなコスト増なく上記の高速化および電磁放射抑制の効果を実現することができる。
【0046】
なお、上記の実施の形態では、オープンドレインのPMOS素子からなる駆動スイッチング回路を用いた場合を例に説明したが、これに限られるものではなく、一般の定電圧、定電流駆動の駆動スイッチング回路であってもよい。
【0047】
また、駆動スイッチング回路をPMOS素子によって構成し、迂回スイッチング回路をNMOS素子によって構成した場合を例に説明したが、駆動スイッチング回路及び迂回スイッチング回路を各々単一のCMOS素子によって構成してもよい。
【0048】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
図5に示すように、第2の実施の形態に係るバス回路210は、接続回路20と迂回スイッチング回路24との間に、NMOS素子からなるスイッチング素子214が設けられている点が第1の実施の形態と異なっている。
【0050】
スイッチング素子214のソースに接続回路20を接続し、ドレインに迂回スイッチング回路24のドレインが接続されている。また、スイッチング素子214のゲートは、バス回路210、送信デバイス、及び受信デバイスを含む回路ブロックの動作状態を検出し、スイッチング素子214のオンオフを制御する検出制御回路212の出力端が接続されており、回路ブロックが非動作状態のときにオフ信号が出力され、スイッチング素子214がオフになるようになっている。
【0051】
なお、スイッチング素子214には、一般的なNMOSのアナログスイッチ回路を用いることができる。
【0052】
次に、第2の実施の形態に係るバス回路210の動作について説明する。
【0053】
回路ブロックが動作状態であると、検出制御回路212からオン信号が出力され、スイッチング素子214はオンとなり、ここで、駆動スイッチング回路14に、送信信号としてローレベルの信号が入力されると、駆動スイッチング回路14がオンとなり、電源22から接続回路20を介して、終端抵抗16及び伝送線路12に電流が流れ、レシーバ素子18によってローレベルの信号が受信され、また、迂回スイッチング回路24がオフとなり、電源22から接続回路20を介し、かつ、終端抵抗16を迂回して迂回スイッチング回路24に電流は流れない。また、駆動スイッチング回路14に、送信信号としてハイレベルの信号が入力されると、駆動スイッチング回路14がオフとなり、終端抵抗16及び伝送線路12に電流が流れずに、レシーバ素子18によってハイレベルの信号が受信されると共に、迂回スイッチング回路24がオンとなり、電源22から接続回路20を介して終端抵抗16を迂回して迂回スイッチング回路24のドレイン、ソース間に電流が流れる。このようにして、接続回路20には継続して一定の電流が流れる。
【0054】
次に、回路ブロックが非動作状態であると、検出制御回路212からオフ信号が出力され、スイッチング素子214はオフとなり、終端抵抗16にも迂回スイッチング回路24にも電流が流れず、また、非動作状態であるため、迂回スイッチング回路24もオフとなり、電源22から電流が流れない。
【0055】
以上説明したように、第2の実施の形態に係るバス回路によれば、回路ブロックが非動作状態であるとき、スイッチング素子がオフになって、終端抵抗を迂回して電流が流れないようになるため、無駄な電力の消費を防止することができる。
【0056】
なお、本実施形態ではスイッチング素子が迂回スイッチング回路のソース側でスイッチングを行っているが、迂回スイッチング回路のゲート入力側又はドレイン側にスイッチング素子を設けて同様の制御を行うことも可能である。
【0057】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
図6に示すように、第3の実施の形態に係る半導体回路300は、複数のバス回路310が並列に接続されて設けられており、電源22及び接続回路20が共有されている。また、各バス回路310のスイッチング素子214のゲートは、制御回路312に共有接続されている。
【0059】
制御回路312は、複数のバス回路310のスイッチング素子214のゲートの各々にオン信号又はオフ信号を出力し、各スイッチング素子214のオンオフを個別に制御できるようになっている。
【0060】
次に、第3の実施の形態に係る半導体回路300の動作について説明する。
【0061】
制御回路312は、バス回路310、送信デバイス、及び受信デバイスを含む回路ブロックの動作状態を検出して、何れかの回路ブロックが動作を開始し、動作状態に移行すると、回路ブロックに対応するスイッチング素子214のゲートにオン信号を出力する。このとき、他の回路ブロックでも動作を開始し、動作状態に移行する場合には、オン信号の出力開始のタイミングをずらして出力する。
【0062】
また、何れかの回路ブロックについて非動作状態に移行したことを検出すると、この回路ブロックに対応するスイッチング素子214のゲートにオフ信号を出力する。このとき、他の回路ブロックについても非動作状態に移行したことが検出された場合には、オフ信号を出力するタイミングをずらして出力する。
【0063】
このように、制御回路312からのオン信号及びオフ信号の出力タイミングをずらすことにより、電源22から接続回路20を介して流れる電流が急激に変化しないようにしている。
【0064】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る半導体回路によれば、複数のバス回路のスイッチング素子のオンオフの切り替えのタイミングをずらして制御することにより、電源から接続回路を介して複数のバス回路に流れる電流の変化が急峻になるのを防ぐことができるため、電磁放射を抑制し、また回路ブロックの動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るバス回路の構成を示す回路図である。
【図2】従来のバス回路の構成を示す回路図である。
【図3】(a)本発明の第1の実施の形態に係るバス回路の負荷電圧波形及び電流波形のシミュレーション結果を示す図、及び(b)従来のバス回路の負荷電圧波形及び電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図4】(a)本発明の第1の実施の形態に係るバス回路の電流波形の周波数スペクトルのシミュレーション結果を示す図、及び(b)従来のバス回路の電流波形の周波数スペクトルのシミュレーション結果を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るバス回路の構成を示す回路図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る半導体回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0066】
10、100、210、310 バス回路
12 伝送線路
14 駆動スイッチング回路
16 終端抵抗
18 レシーバ素子
20 接続回路
22 電源
24 迂回スイッチング回路
212 検出制御回路
214 スイッチング素子
300 半導体回路
312 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を伝送するための伝送線路と、
一端が前記伝送線路の受信端に接続され、かつ他端がインダクタンス成分を有する接続回路を介して電源に接続された終端抵抗と、
前記伝送線路の送信端に接続され、かつ、複数の信号レベルからなる送信信号に基づいて、オンオフする第1のスイッチング回路と、
前記終端抵抗の一端に接続され、かつ、前記第1のスイッチング回路のオンオフに応じて前記電源から前記接続回路及び前記終端抵抗を介して流れる電流に応じた信号を前記送信信号として受信する受信部と、
前記終端抵抗を迂回するように設けられ、かつ、前記第1のスイッチング回路がオンのときオフとなって前記電源から前記接続回路を介して前記終端抵抗に電流が流れ、前記第1のスイッチング回路がオフのときオンとなって、前記電源から前記接続回路を介し、かつ、前記終端抵抗を迂回して電流が流れるようにスイッチングする第2のスイッチング回路と、
を含むバス回路。
【請求項2】
前記第2のスイッチング回路は、前記電源から前記接続回路を介して流れる電流を常に略一定にすることを特徴とする請求項1記載のバス回路。
【請求項3】
前記第2のスイッチング回路に接続され、かつ、オンオフする第3のスイッチング回路と、
前記バス回路を含む回路ブロックが動作状態であるとき、前記第3のスイッチング回路をオンにさせ、前記バス回路を含む回路ブロックが非動作状態であるとき、前記第3のスイッチング回路をオフにさせる制御手段とを更に含み、
前記第3のスイッチング回路がオンとなり、かつ、第2のスイッチング回路がオンとなるときに、前記電源から前記接続回路を介し、かつ、前記終端抵抗を迂回して電流が流れることを特徴とする請求項1又は2記載のバス回路。
【請求項4】
請求項3記載の複数のバス回路を含み、
前記電源、前記接続回路、及び前記制御手段が共有して設けられ、かつ、前記複数のバス回路が並列に設けられている半導体回路であって、
前記制御手段は、前記回路ブロックが動作状態及び非動作状態の一方から他方へ移行するときに、前記複数のバス回路における前記第3のスイッチング回路のオンオフの切り替えのタイミングをずらして制御する半導体回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−82099(P2007−82099A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270332(P2005−270332)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】