説明

パターン化金属膜及びその形成方法

【課題】ドライエッチングが困難な遷移金属の膜を、サイドエッチングが極力生じないようにパターニングする。
【解決手段】絶縁膜の上にバリア層・密着層を形成し(S1)、その上に遷移金属からなるシード層を形成する(S2)。シード層の上にSiO膜及びフォトレジスト膜を順次形成し(S3、S4)、フォトレジスト膜、SiO膜をパターニングして開口を形成し(S5,S6)、開口内にCu膜及びマスクAl膜を積層する(S7、S8)。次に、SiO膜をエッチング(S9)、露出したシード層をその膜厚方向に異方的に改質し(S10)、改質されたシード層、露出したバリア・密着層、及びマスクAl膜を順次エッチングにより除去することにより(S10〜S13)、パターン化金属膜を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置において金属配線を形成するためのパターン化金属膜及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超LSIの配線は、現在では銅ダマシン法によって形成されている。銅ダマシン法とは、絶縁膜にフォトリソグラフィー技術とドライエッチング技術を組み合わせてパターン化された溝を形成し、その表面を銅バリア膜で被覆してから銅をめっきで埋め込み、不要な上層部をCMP(Chemical Mechanical Polishing)で研磨して除去し、金属パターンを形成する方法である(非特許文献1参照)。
【0003】
銅ダマシン法は、微細な溝に良好に銅バリア膜を被覆するプロセス、銅バリア膜上に良好に銅めっきシード膜を被覆するプロセス、銅めっきを微細構造に良好に埋め込むプロセスが必要とされ、より微細なパターンへの適用が難しくなってきている。さらに、パターン形成にCMPプロセスが必須となるため、TSV(Through Silicon Via)に接続させるバンプのような、大きなパターン形成プロセスにはコスト高になってしまう。
【0004】
ダマシン法以外の金属膜パターン形成プロセスの一つに、ウェットエッチング法がある。これは金属膜上にマスクをパターニングして、マスクがない金属膜部分を希塩酸などでウエットエッチング除去する手法である。しかし、この手法は金属を等方的にエッチングするため、微細な構造だとサイドエッチング量が制御できずに構造が崩壊してしまう。
【0005】
もう一つの手法として、RIE(Reactive Ion Etching)法がある。この手法は、反応性プラズマによりマスクされていない金属部をエッチングする方法であり、ハロゲン化物の蒸気圧が高い金属元素であるAl、Ti、Ta、Wなどは良好なパターン形成が確認されている(非特許文献2参照)。
【0006】
しかし、ハロゲン化物の蒸気圧が低い金属であるCo、Ni、Cu,Pt,RuなどをRIE法にてパターン形成する場合、ハロゲン化金属をガス化して取り除き、反応容器の壁への再付着を防ぐために基板と反応容器の壁の温度を高温に保つ必要がある。
【0007】
しかも、このような高温RIEプロセスでは、プラズマの活性種であるハロゲンイオンとラジカルがエッチングにより形成された開口(溝やホール)の側壁を腐食し、良好なパターン形状を保つことが難しい(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D. Edelstein et al, IEDM Technical Digest, IEEE (1997).
【非特許文献2】Y. Yasuda, Thin Solid Films, Volume 90, Issue 3, 23 April 1982, Pages 259-270.
【非特許文献3】B.J. Howard and C. Steinbruchel, Applied Physics Letters, 59(8), 19 p914, (1991).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ドライエッチングが困難な遷移金属の膜を、サイドエッチングが極力生じないようにパターニングする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパターン化金属膜の形成方法は、
絶縁膜の上に、バリア・密着層を形成する工程と、
前記バリア・密着層の上に、遷移金属からなるシード層を形成する工程と、
前記シード層の上に二酸化珪素膜を形成する工程と、
二酸化珪素膜の上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
フォトレジスト膜をフォトリソグラフィー技術によりパターニングして開口を形成し、該開口の底に二酸化珪素膜を露出させる工程と、
前記開口内の前記二酸化珪素膜をドライエッチングして前記シード層が露出する深さまで前記開口を拡張する工程と、
前記開口内の前記シード層の上に、選択的熱CVD法により選択的にCu膜を充填する工程と、
前記開口内のCu膜の上に、選択的熱CVD法により選択的にマスクAl膜を積層する工程と、
ウエットエッチング処理により前記二酸化珪素膜を除去すると同時に前記フォトレジスト膜も除去して前記Cu膜とマスクAl膜とが積層したパターン化金属積層体を形成する工程と、
前記パターン化金属積層体をマスクとして、露出したシード層をその膜厚方向に異方的に改質する工程と、
改質された部分のシード層をエッチングにより除去する工程と、
前記シード層を除去した部分に露出したバリア・密着層を、エッチングにより除去する工程と、
前記Cu膜を残してマスクAl膜をエッチングにより除去することにより、パターン化金属膜を得る工程と、
を備えている。
【0011】
本発明のパターン化金属膜の形成方法において、前記シード層を異方的に改質する工程は、シード層を構成する遷移金属をハロゲン化又は酸化することにより、ハロゲン化物又は酸化物に変化させることが好ましい。この場合、前記改質されたシード層をエッチングにより除去する工程を、ヘキサフルオロアセチルアセトン(1,1,1,5,5,5-Hexafluoro-2,4-pentanedione:H(hfac))、トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid:TFA)、蟻酸(Formic acid)、酢酸(Acetic acid)、プロピオン酸、酪酸、及び吉草酸から選ばれるガスを用いるドライエッチングにより行うことが好ましい。
【0012】
また、本発明のパターン化金属膜の形成方法において、前記開口内に選択的にCu膜を充填する工程では、前記二酸化珪素膜の膜厚の80%以下の膜厚になるように前記Cu膜を形成することが好ましい。この場合、前記マスクAl膜とCu膜との合計膜厚が、前記二酸化珪素膜の膜厚以下になるように前記マスクAl膜を積層することが好ましい。
【0013】
また、本発明のパターン化金属膜の形成方法は、前記マスクAl膜のエッチングを強アルカリ性溶液によって行うことが好ましい。
【0014】
本発明のパターン化金属膜は、上記いずれかに記載のパターン化金属膜の形成方法により形成されたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明方法によれば、遷移金属からなる配線等の金属膜を所定の形状にパターニングする際に、遷移金属膜のエッチング量を必要最小限にすることができる。つまり、本発明方法では、目的とするパターン化金属膜の大部分を選択的熱CVD法によって形成するとともに、その形状はパターニングされた二酸化珪素膜の開口の形状を転写することによりほぼ規定することができる。そのため、遷移金属膜のエッチングはシード層だけでよく、エッチング量をシード層の膜厚にまで最小化できる。さらに選択的熱CVD法により遷移金属を埋め込むために、めっきに必要とされるシード層よりも膜厚を薄くすることが可能である。また、本発明方法によれば、エッチングしにくい遷移金属からなるシード層に対し、事前にマスクAl膜をマスクとして用い、選択的に異方性の改質処理を加えておくため、シード層を効率的に短時間でエッチングできる。つまり、シード層を改質させておくことによって、短時間で確実にシード膜のみを除去できる。従って、配線となるパターン化金属膜にサイドエッチングが入ることを極力抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態のパターン化金属膜の形成方法の概要を示すフローチャートである。
【図2】絶縁膜上にバリア・密着層を形成した状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図3】バリア・密着層の上に、シード層を形成した状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図4】シード層の上に、SiO膜を形成した状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図5】SiO膜の上に、フォトレジスト膜を形成した状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図6】フォトレジスト膜をパターニングした状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図7】フォトレジスト膜をマスクとしてSiO膜をパターニングした状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図8】SiO膜の開口内にCu膜を形成した状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図9】Cu膜の上に、マスクAl膜を積層形成した状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図10】SiO膜及びフォトレジスト膜を除去し、パターン化金属積層体を残した状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図11】シード層の露出部分を改質して改質層を形成した状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図12】改質層を除去した状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図13】露出したバリア・密着層を除去した状態を示す基板表面付近の断面図である。
【図14】マスクAl膜を除去した後のパターン化Cu膜を示す基板表面付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図1から図14を参照しながら、本発明の一実施の形態に係るパターン化金属膜の形成方法について説明する。図1は、本実施の形態のパターン化金属膜の形成方法の工程の概要を示すフローチャートであり、図2から図14は、本実施の形態のパターン化金属膜の形成方法の各工程を説明する図面である。本実施の形態のパターン化金属膜の形成方法は、図1に示すステップS1〜ステップS13の手順で実施することができる。
【0018】
<バリア・密着層の形成>
ステップS1では、図2に示したように、図示しない基板(半導体ウエハ)に設けられた絶縁膜101上にバリア・密着層102を形成する。バリア・密着層102は、例えば、Ti膜、Ta膜等の金属膜に、それらの窒化物であるTiN膜、TaN膜等の少なくとも片方を積層したものが用いられる。バリア・密着層102は、例えばPVD法(物理気相成長法)により成膜することができる。バリア・密着層102の厚みは、例えば5nmとすることができる。
【0019】
<シード層の形成>
次に、ステップS2では、図3に示したように、バリア・密着層102の上に、シード層103を形成する。シード層103は、PVD法により形成された金属膜である。シード層103の厚みは、例えば10nmとすることができるが、後の工程(ステップS10、S11)で不要な部位を改質し、除去する必要があるため、極力薄く形成しておくことが好ましい。なお、シード層103は、後の熱CVDプロセスでシード層上103上にCu膜を成膜するときフォトレジスト膜105とSiO膜104とに対して選択性があれば、金属種は限定されるものではない。ただし、シード層103は、後の工程でSiO膜104の開口111に埋め込まれるCu膜106と直接接触するため(図8参照)、密着不足によるマイグレーションを抑制する観点から、Cu膜106と同じ材質の銅によって形成しておくことが好ましい。
【0020】
<SiO膜の形成>
次に、ステップS3では、図4に示したように、シード層103の上に、二酸化珪素(SiO)膜104を形成する。ここで、SiO膜104は、後の工程で形成するCu膜106(図8参照)の膜厚よりも、大きくなるように形成する。
【0021】
SiO膜104は、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)を用いてプラズマCVD法により形成することができる。例えばTEOSをバブリング法によりチャンバー内に供給し、プラズマの作用によって分解反応を生じさせ、Oガスと反応させることでSiO膜104を形成する。
【0022】
<フォトレジスト膜の形成>
次に、ステップS4では、図5に示したように、SiO膜104の上に、フォトレジスト膜105を形成する。フォトレジスト膜105は、例えばスピンコート法などの公知の塗布方法により形成することができる。
【0023】
<フォトレジスト膜のパターニング>
次に、ステップS5では、フォトレジスト膜105をフォトリソグラフィー技術により露光・現像し、パターニングする。パターニングにより、図6に示したように、フォトレジスト膜105よりも下層のSiO膜104が部分的に露出した状態になるように開口110を形成する。つまり、フォトレジスト膜105を貫通するように開口110を形成する。この場合、開口110は、最終的に形成を目的とする配線パターンに対応する形状にする。例えば、ライン&スペースの配線パターンを形成する場合、開口110の幅D1は、最終的に形成される配線部分(パターン化Cu膜106A;図14参照)の幅に対応させる。また、隣接する開口110と開口110との間に残すフォトレジスト膜105の幅D2は、最終的に形成を目的とする配線パターンのスペース部分に対応させる。
【0024】
露光・現像の具体的条件は、フォトレジスト材料の種類とパターンの線幅に応じて既知の条件から適宜選択することができる。このように、本実施の形態のパターン形成方法では、既に技術的に確立された最先端のフォトリソグラフィー技術によって、精度良く配線パターンの形状を画定できる。
【0025】
<SiO膜のパターニング>
次に、ステップS6では、パターン形成されたフォトレジスト膜105をマスクとして用い、SiO膜104をドライエッチングし、パターニングする。パターニングにより、図7に示したように、SiO膜104よりも下層のシード層103が部分的に露出した状態になるように開口111を形成する。つまり、フォトレジスト膜105及びSiO膜104を貫通するように開口111を形成する。この場合、開口111は、ステップS5で形成した開口110が深さ方向に拡張されたものであり、最終的に形成を目的とする配線パターンに対応する形状にする。例えば、ライン&スペースの配線パターンを形成する場合、開口111の幅D1は、最終的に形成される配線部分(パターン化Cu膜106A;図14参照)の幅に対応させる。また、隣接する開口111と開口111との間に残すフォトレジスト膜105の幅D2は、最終的に形成を目的とする配線パターンのスペース部分に対応させる。
【0026】
<Cu膜の形成>
次に、ステップS7では、先ずCu膜を形成する前にTEOS形成プロセス(ステップS3のSiO膜104の形成)およびTEOSエッチング(ステップS6のSiO膜104のパターニング)時に酸化したシード層103の表面を改質する。具体的には窒素雰囲気下、圧力998Pa(7.5Torr)〜1663Pa(12.5Torr)、好ましくは1333Pa(10Torr)の条件で基板を100℃〜200℃、好ましくは150℃まで加熱し、その後圧力と基板温度を保ちつつ、ギ酸ガス(HCOOH)を75mL/min(sccm)〜125mL/min(sccm)、好ましくは100mL/min(sccm)流す。この処理により、酸化したシード層103の表面が還元される。
【0027】
次に、選択的熱CVD法で、開口111内にCuをボトムアップフィルすることにより、図8に示したようにCu膜106を形成する。Cu膜106を形成する選択的熱CVD処理の条件は、例えば基板温度は100℃〜200℃、好ましくは150℃、プロセス圧力は100Pa(0.75Torr)〜166Pa(1.25Torr)、好ましくは133Pa(1Torr)とする。プリカーサーとして第一ギ酸銅(Cu(HCOO))を用いる。また、プリカーサーガスのキャリアガスとしてギ酸(HCOOH)と窒素の混合ガスを用いる。なお、この工程では、選択性が破れて、フォトレジスト膜105上にCuが部分的に堆積することがあっても、後のウェット処理によりフォトレジスト膜105と一緒にリフトオフされるので問題ない。
【0028】
ステップS7で、開口111内に充填するCu膜106の膜厚T2は、次の工程(ステップS8)で開口111内のCu膜106上に積層形成するマスクAl膜107の厚みを考慮して、SiO膜104の膜厚T1より充分に小さくする。具体的には、例えば膜厚T2が膜厚T1の80%以下になるように調整することが好ましい。
【0029】
このように、本実施の形態のパターン化金属膜の形成方法では、開口111内に埋め込むCu膜106の厚み(膜厚T2)によって、配線となるパターン化金属膜の高さと幅との比(高さ/幅;アスペクト比)を自由に設定できる。つまり、エッチングが困難な遷移金属膜をエッチングする深さによって配線のアスペクト比が決定されていた従来法に比べて、SiO膜104の開口111にCu膜106を充填する方法を採用することによって、高アスペクト比の配線についても、高い寸法精度で容易に形成することができる。
【0030】
<マスクAl膜の積層形成>
次に、ステップS8では、図9に示したように、Cu膜106の上に、さらにマスクAl膜107を形成する。まず、選択性を確保するために、Cu膜106の表面を改質することが好ましい。具体的には窒素雰囲気下、圧力998Pa(7.5Torr)〜1663Pa(12.5Torr)、好ましくは1333Pa(10Torr)の条件で基板を100℃〜200℃、好ましくは150℃まで加熱し、その後圧力と基板温度を保ちつつ、ギ酸ガス(HCOOH)を75mL/min(sccm)〜125mL/min(sccm)、好ましくは100mL/min(sccm)の流量で流す。この処理により、Cu膜106の表面の酸化銅層が還元され金属に戻る。その後、大気暴露無しに、基板を、Al膜を成膜するためのCVD容器へと搬送する。
【0031】
マスクAl膜107は、選択的熱CVD法により形成することができる。マスクAl膜107を形成する選択的熱CVD法は、プリカーサーとしてジメチルアルミニウムハイドライド(Dimethylaluminumhydride:DMAH)を使用する。また還元ガスに水素ガスを使用する。ガス流量は、例えばDMAHは5〜15mL/min(sccm)、好ましくは10mL/min(sccm)、水素ガスは400〜600mL/min(sccm)、好ましくは500mL/min(sccm)とする。プロセス圧力は200Pa(1.5Torr)〜333Pa(2.5Torr)、好ましくは266Pa(2Torr)、成膜温度は210℃〜260℃により行うことができる。
【0032】
マスクAl膜107の膜厚T3は、Cu膜106上に積層された状態でマスクAl膜107の上面がSiO膜104とフォトレジスト膜105との境界よりも上に位置しない程度に調整する。つまり、膜厚T2+膜厚T3≦膜厚T1となるようにする。なお、マスクAl膜107は、最終的に除去するものであるため、マスクとしての役割を果たし得る最小膜厚にすることが好ましく、例えば5〜20nmとすることができる。
【0033】
<SiO膜の除去>
次に、ステップS9では、ウエットエッチング処理によりSiO膜104を除去し、同時にフォトレジスト膜105も除去する。この場合、フォトレジスト膜105の土台となっているSiO膜104を除去することで、同時にフォトレジスト膜105もリフトオフされる。このようにして、図10に示したように、シード層103上に、パターン化されたCu膜106とマスクAl膜107とからなる積層体(パターン化金属積層体108)を残すことができる。
【0034】
SiO膜104の除去は、例えば希フッ酸を用いたウエットエッチング処理により行うことが好ましい。希フッ酸によるウエットエッチング処理の条件としては、例えば、0.1wt%の希フッ酸溶液で1分間処理する。その後、リフトオフしたフォトレジスト膜105を純水洗浄によって残留フッ酸と共に除去する。
【0035】
<シード層の改質>
次に、ステップS10では、パターン化金属積層体108のマスクAl膜107をマスクとして、その周囲に露出しているシード層103を改質する。改質の目的は、次の工程(ステップS11)でシード層103の除去を容易にし、短時間でエッチングを完了させるためである。改質処理では、シード層103を、その膜厚方向へ異方的にハロゲン化もしくは酸化して、図11に示したように改質層103Aに変化させる。ここで、シード層103の膜厚T4は、Cu膜106及びマスクAl膜107の合計の膜厚T2+T3に比べてはるかに小さい(薄い)ため、膜厚方向への改質を容易に行うことができる。
【0036】
シード層103を異方的にハロゲン化する方法としては、例えば、NFガスもしくはClFガスを用いるGCIB(Gas Cluster Ion beam)処理、NFガスもしくはClFガスを用いるGCI(Gas Cluster Injection)処理、又は、図示しない基板へバイアス電圧を印加しながらCFガスとArガスを用いるプラズマ処理等の方法により行うことができる。
【0037】
また、シード層103を異方的に酸化する方法としては、例えば、OガスもしくはOガスにArガス、Heガス等の希ガスを混合したガスによるGCIB処理、OガスもしくはOガスにArガス、Heガス等の希ガスを混合したガスによるGCI処理、図示しない基板へバイアス電圧を印加しながらOガスとArガスの混合ガスを用いるプラズマ処理等の方法によって行うことができる。
【0038】
ここで、GCIB処理には、例えばnFusion(商標)プロセス装置[東京エレクトロン株式会社製]を利用することができる。
【0039】
シード層103を異方的に改質する方法として、例えば上記の中でOガスとArガスとの混合ガスを用いるGCIB処理を選択した場合の具体的条件としては、出来るだけ高いイオンエネルギーを持つ条件が好ましく、例えば60keVの打ち込みエネルギー以上のエネルギーでおこなう。
【0040】
異方的なハロゲン化又は酸化により、シード層103を構成するCu等の金属の露出部分が選択的にハロゲン化又は酸化されてハロゲン化物又は酸化物となり、改質層103Aが形成される。その一方で、パターン化金属積層体108のCu膜106の側壁部分は、シード層103と同種の材質であっても、異方的なハロゲン化又は酸化によってはほとんど改質されない。そのため、ステップS10の改質工程の後でも、パターン化金属積層体108はSiO膜104の開口111の形状が転写されたパターン精度を維持することができる。
【0041】
<シード層の除去>
次に、ステップS11では、改質層103Aを除去して図12に示したように下地のバリア・密着層102を表出させた状態にする。改質層103Aを除去する方法としては、例えば有機化合物気体への暴露によるドライエッチングや、薬液によるウエットエッチングを挙げることができる。本工程(ステップS11)では、ウエットエッチングを利用することも可能であるが、下地のバリア・密着層102のエッチングも同時に起こり、パターン化金属積層体108がリフトオフされる可能性があるので、ドライエッチングによって行うことが好ましい。
【0042】
改質層103Aをドライエッチングする場合、使用可能な気体としては、例えばH(hfac)[ヘキサフルオロアセチルアセトン;Hexafluoroacetylacetone]等のハロゲン含有有機溶媒や、TFA[トリフルオロ酢酸;Trifluoroacetic acid )、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の有機酸を挙げることができる。これらの中で、例えば、H(hfac)を用いた場合には、処理温度150℃〜250℃、好ましくは200℃、処理圧力100Pa(0.75Torr)〜166Pa(1.25Torr)、好ましくは133Pa(1Torr)、H(hfac)流量75mL/min(sccm)〜125mL/min(sccm)、好ましくは100mL/min(sccm)などの条件でドライエッチングを行うことが好ましい。この場合の反応は、例えば以下の式(i)のように記述することができる。
CuO+2H(hfac)→Cu(hfac)↑ + HO↑・・・(i)
【0043】
<バリア・密着層のエッチング>
次に、ステップS12では、バリア・密着層102の露出部分を除去して図13に示したように下地の絶縁膜101を表出させた状態にする。バリア・密着層102には、上記のとおり、Ti膜、Ta膜等の金属膜に、その窒化物であるTiN膜、TaN膜等を積層したものが用いられている。これらの材質は、遷移金属であるCuと異なり、ハロゲン化物の蒸気圧が高いので、ハロゲンガスを用いたドライエッチングによって容易に除去することができる。
【0044】
ステップS12でバリア・密着層102のドライエッチングを行う場合の具体的な方法としては、例えば図示しない基板にバイアス電圧を印加しながら、CFガスとArガスを用いたプラズマに曝すプラズマエッチング処理が好ましい。この場合、例えば、CF流量40mL/min(sccm)〜60mL/min(sccm)、好ましくは50mL/min(sccm)、Ar流量40mL/min(sccm)〜60mL/min(sccm)、好ましくは50sccm、圧力0.07Pa(0.5mTorr)〜0.2Pa(1.5mTorr)、好ましくは0.13Pa(1mTorr)、バイアス用のRFパワー400W〜600W、好ましくは500Wの条件でドライエッチングを行うことが好ましい。
【0045】
<マスク膜の除去>
次に、ステップS13では、パターン化金属積層体108の上部に形成されたマスクAl膜107を除去し、図14に示したように、絶縁膜101上に所定の間隔で形成されたパターン化Cu膜106Aを得る。マスクAl膜107は、両性金属であるAlによって形成されているため、強アルカリ性溶液に溶解する。それに対して、パターン化金属積層体108の大部分を占める遷移金属のCu膜106はアルカリ性溶液には溶解しない。このような化学的特性の違いを利用し、強アルカリ性溶液を用いたウエットエッチング処理によって選択的にマスクAl膜107のみを除去することができる。ステップS13で使用可能な強アルカリ性溶液としては、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液を挙げることができる。例えば強アルカリ性溶液として水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液を用いてウエットエッチングを行う場合の条件としては、例えば、処理温度は常温、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のモル濃度は2〜3%、好ましくは2.38%、処理時間は1分〜2分、好ましくは1分30秒とすることができる。
【0046】
以上のように、ステップS1からステップS13の各工程を実施することによって、絶縁膜101上に所定の間隔で形成されたパターン化Cu膜106Aを得ることができる。
【0047】
本実施の形態のパターン化金属膜の形成方法によれば、遷移金属からなる金属膜(遷移金属膜)を所定の形状にパターニングする際に、遷移金属膜のエッチング量を必要最小限にすることができる。つまり、本発明方法では、目的とするパターン化Cu膜106Aの形状は、パターニングされたSiO膜104の開口111の形状が転写されたCu膜106の形状である。そのため、遷移金属膜をエッチングする工程は、シード層103だけでよく、遷移金属膜のエッチング量をシード層103の膜厚T4(図11参照)にまで最小化できる。
【0048】
また、本実施の形態のパターン化金属膜の形成方法によれば、エッチングしにくい遷移金属からなるシード膜103は、事前にマスクAl膜107をマスクとして用い、異方性のハロゲン化処理もしくは酸化処理によって化学的に改質させておくことにより、短時間で効率的にエッチングできる。つまり、シード層103のみを選択的に改質させておくことによって、エッチング工程で遷移金属からなるCu膜106のサイドエッチング量を最小限に抑えつつ、確実にシード層103のみをエッチングできる。
【0049】
このように、本実施の形態のパターン化金属膜の形成方法では、ドライエッチングが困難な遷移金属膜をウエットエッチングによってパターニングする場合の問題点であったサイドエッチングの問題を回避できるので、配線パターンの微細化への対応が可能になる。従って、本実施の形態の方法は、微細化が進むLSIの配線形成において、例えばライン幅/スペース幅が20〜50nm/20〜50nmの微細配線パターンを形成する場合にも有利に適用できる。この場合、例えば配線の高さと幅との比(高さ/幅)が1以上、例えば1〜5程度であっても、パターン精度の高い配線を形成できる。また、本実施の形態の方法は、例えば3次元半導体集積回路において3次元配線を形成する場合にも適用可能である。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。当業者は本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を成し得、それらも本発明の範囲内に含まれる。例えば、上記実施の形態では、処理対象の基板として半導体ウエハを例示としたが、これに限るものではなく、液晶表示装置に用いるガラス基板などのフラットパネルディスプレイ用の基板も対象とすることができる。
【符号の説明】
【0051】
101…絶縁膜、102…バリア・密着層、103…シード層、103A…改質層、104…SiO膜、105…フォトレジスト膜、106…Cu膜、106A…パターン化Cu膜、107…マスクAl膜、108…パターン化金属積層体、110,111…開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜の上に、バリア・密着層を形成する工程と、
前記バリア・密着層の上に、遷移金属からなるシード層を形成する工程と、
前記シード層の上に二酸化珪素膜を形成する工程と、
二酸化珪素膜の上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
フォトレジスト膜をフォトリソグラフィー技術によりパターニングして開口を形成し、該開口の底に二酸化珪素膜を露出させる工程と、
前記開口内の前記二酸化珪素膜をドライエッチングして前記シード層が露出する深さまで前記開口を拡張する工程と、
前記開口内の前記シード層の上に、選択的熱CVD法により選択的にCu膜を充填する工程と、
前記開口内のCu膜の上に、選択的熱CVD法により選択的にマスクAl膜を積層する工程と、
ウエットエッチング処理により前記二酸化珪素膜を除去すると同時に前記フォトレジスト膜も除去して前記Cu膜とマスクAl膜とが積層したパターン化金属積層体を形成する工程と、
前記パターン化金属積層体をマスクとして、露出したシード層をその膜厚方向に異方的に改質する工程と、
改質された部分のシード層をエッチングにより除去する工程と、
前記シード層を除去した部分に露出したバリア・密着層を、エッチングにより除去する工程と、
前記Cu膜を残してマスクAl膜をエッチングにより除去することにより、パターン化金属膜を得る工程と、
を備えたパターン化金属膜の形成方法。
【請求項2】
前記シード層を異方的に改質する工程は、シード層を構成する遷移金属をハロゲン化又は酸化することにより、ハロゲン化物又は酸化物に変化させる請求項1に記載のパターン化金属膜の形成方法。
【請求項3】
前記改質されたシード層をエッチングにより除去する工程を、H(hfac)[ヘキサフルオロアセチルアセトン;Hexafluoroacetylacetone]、TFA[トリフルオロ酢酸;Trifluoroacetic acid)、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、及び吉草酸から選ばれるガスを用いるドライエッチングにより行う請求項2に記載のパターン化金属膜の形成方法。
【請求項4】
前記開口内に選択的にCu膜を充填する工程では、前記二酸化珪素膜の膜厚の80%以下の膜厚になるように前記Cu膜を形成する請求項1から3のいずれか1項に記載のパターン化金属膜の形成方法。
【請求項5】
前記マスクAl膜とCu膜との合計膜厚が、前記二酸化珪素膜の膜厚以下になるように前記マスクAl膜を積層する請求項4に記載のパターン化金属膜の形成方法。
【請求項6】
前記マスクAl膜のエッチングを強アルカリ性溶液によって行う請求項1から5のいずれか1項に記載のパターン化金属膜の形成方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のパターン化金属膜の形成方法により形成されたパターン化金属膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−114287(P2012−114287A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262701(P2010−262701)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】