説明

パワースプリット式自動変速機のギヤ比制御方法並びにパワースプリット式自動変速機

【課題】パワースプリット変速機の切替え性能改良。
【解決手段】パワースプリット式自動変速機のギヤ比の開ループ制御ないし閉ループ制御のための方法に関している。この変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータ12と、ギヤセット14と、出力軸10と、少なくとも2つの制御クラッチK1、K2を含んでおり、前記バリエータ12とギヤセット14は、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続されている。本発明による切替えストラテジによれば、巻掛け手段12の摩耗が低減され、さらにギヤ比領域間で快適性の高い切替えが達成される。さらに本発明では有利なパワースプリット式自動変速機の構造も論ぜられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワースプリット式変速機のギヤ比の閉ループ/開ループ制御のための方法に関している。また本発明は、本発明による方法を実施するためのパワースプリット式自動変速機に関している。
【背景技術】
【0002】
無段階に可変のギヤ比を有している変速機(CVT変速機)は、その高い快適性や専らプラネタリギヤ(遊星歯車)で作動する有段式自動変速機に比べて可及的に少ない燃料消費によって益々自家用車への適用が増加しつつある。動力の伝達は、このようなCVT変速機のもとでは例えば2つの円錐プーリー対の間を回っている巻掛け手段を介して行われており、この場合各円錐プーリーの有効半径が間隔距離の変更によって可変となっている。この他の無段階に可変のギヤ比は、適切なトロイダル表面の間で摩擦結合によって動作する回転体か若しくはその他の原理による回転体をベースにしている。有利にはCVT変速機は、可及的に大きな拡張性(最大ギア比と最小ギア比間の比率)を有している。今時では6以上の値まで達成される。摩擦結合の形成に対しては、常に2つの相互に摩擦結合状態におかれる回転体の間で押圧が必要である。円錐プーリー式の巻掛け伝動装置の場合、一般的には押圧ピストンを介して目下伝達されているトルクに依存した押圧力が形成される。このトルク押圧力が調整圧力に重畳され、それらを用いてギヤ比ないし変速比の設定が行われる。このギヤ比調整に対しては、円錐プーリー対に作用する設定可能な押圧力の差が必要である。
【0003】
燃料消費の低減の理由から、変速機の拡張性は、唯一のCVT変速機によって可能である値を超えて拡張されることが望ましい。このことは次のようなパワースプリット式変速機によって得られる。すなわちCVT変速機の拡張幅ないしギヤ比領域が"二重"に用いられ、その場合ギヤセットと相応の制御クラッチの作動の組合わせによってCVT変速機のギヤ比領域がパワースプリット式変速機の全減速比の変更のもとでその全拡張幅に亘って逆方向に二回通過する。
【0004】
図1には、パワースプリット式変速機を備えた車両ドライブトレーンの基本構造が示されている。
【0005】
車両の駆動モータ、例えば内燃機関2は、発進クラッチ4を介してパワースプリット式変速機8の駆動軸6と接続される。この変速機の出力軸には符号10が付されている。
【0006】
パワースプリット式変速機8は、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータ12と少なくとも1つのギヤセット14と、少なくとも2つの制御クラッチK1,K2を含んでいる。これらの制御クラッチを用いてバリエータ12は異なる手法でギヤセット14と結合可能である。電子的開ループないし閉ループ制御装置16は、アクセルペダルセンサ18と、内燃機関2の出力調整部材の状態検出センサ20と、エンジン回転数センサ22と、バリエータ12の入力軸(これは同時に駆動軸6でもあり得る)のためのセンサ24と、バリエータ12の出力軸の回転数検出用センサ26と、駆動軸10の回転数検出用センサ28と、場合によってはさらなるセンサとも接続されている。電子的閉ループ/開ループ制御装置は、これらのセンサの信号と、当該装置16内に記憶されているアルゴリズム、特性マップなどに依存して出力信号を生成する。これらの出力信号を用いて内燃機関2の出力調整部材30、発進クラッチ4のアクチュエータ、バリエータ12の円錐プーリー対の押圧シリンダ内におけるトルク依存性の圧力、そのギヤ比変更のための円錐プーリー対12の調節シリンダ内の圧力および制御クラッチK1,K2が制御される。なおリバース走行のためのギヤセットないしクラッチおよび/または制動装置は図示されていない。
【0007】
前述した構成要素群の構造と機能はそれ自体公知なものなので、それらのここでの詳細な説明は省く。
【0008】
図2には、バリエータ12を有するパワースプリット式変速機の一例が示されている。このバリエータの円錐プーリー対30は固定的に駆動軸6に結合されており、第1の制御クラッチK1を介して第1のギヤ32に結合可能である。
【0009】
バリエータ12の他方の円錐プーリー対34は、固定的に出力軸36に接続されており、該出力軸36は、プラネタリギヤセットとして構成されているギヤセット14のサンギヤ37に接続されている。この出力軸36は、さらに制御クラッチK2を介して第2のギヤ38に結合可能であり、この第2のギヤ38は中間ギヤ40を介して第1のギヤ32に回転係合する。第2のギヤ38は、固定的にプラネタリギヤセットのプラネタリキャリヤ42と接続されている。このプラネタリギヤセットのプラネタリギヤ44は、リングギヤ(インナーギヤ)46に噛合され、リングギヤ46は出力軸10に固定的に接続あれている。第2の制御クラッチK2が閉成し、第1の制御クラッチK1が開いている場合には、サンギヤ37とプラネタリキャリヤ42が共に回転し、それによってプラネタリギヤ44は静止し、リングギヤ46も同行する。そしてパワースプリット式変速機全体では、通常のCVT変速機のように作用する。この総減速比は、図3に従って二重に使用される。図3では、横軸にバリエータのギヤ比ivarが示され、縦軸には当該の胴録分岐型変速機全体のギヤ比igesが示されている。最大限可能なギヤ比(発進時ギヤ比;図3の右上方)から出発して、総減速比は特性曲線Low-Astに沿ってバリエータのギア比の増加と共に、切替え点Uに達するまで線形に低減する。ギヤ比ivarはこの切替え点Uで、予め定められた小さな値を有する。切替え点Uでは、制御クラッチK1,K2が切替えられ、それによってプラネタリキャリヤ42がここにおいて、固定的に入力軸6に接続されている第1のギヤ32と、中間ギヤ40と、第2のギヤ38の間で与えられる相応のギヤ比並びに相応に駆動軸6から回転され、プラネタリギヤセット14に作用する。ギヤ比は次のように選択される。すなわち、切替え点Uにおいて当該パワースプリット式変速機の総減速比igesが制御クラッチK1、K2の切替え状態に依存しないように選択される。ここにおいて新たにバリエータ12の分岐領域を通過する場合には、ギア比igesが図3中の特性曲線High-Astに沿って変化する(高速領域)。特性曲線R-Astは、リバース走行領域に対するギヤ比を表わしている。ここではパワースプリット式変速機の各構造形式に応じてその他の特性曲線も可能であることを理解されたい。
【0010】
図4には、パワースプリット式変速機の他の例が示されている。この例では、制御クラッチK1とK2の操作位置に応じてギヤ比が図5に示されているように得られる。そのような変速機は、ギヤードニュートラル式変速機とも称される。なぜなら、変速機が特性曲線Low-Ast状態におかれている場合、バリエータのギヤ比ivar=Gのもとで理論的に正ないし負の無限のギヤ比が得られるからである。
【0011】
図6及び図7には、パワースプリット式変速機のさらなる例が示されており、この例では、バリエータが制御クラッチK1、K1′の閉成と制御クラッチK2、K2′の開放のもとで図6によりトルクを下方のディスク対から上方のディスク対に伝達しており、それに対して制御クラッチK1、K1′が開放され制御クラッチK2、K2′が閉成された場合には図6により上方のディスク対から下方のディスク対にトルクが伝達される。これによってトルク伝達方向は、切替え点で反転する。ギヤ比は、図7に従って生じる。
【0012】
図8には、1つのバリエータ12と2つのプラネタリギヤセットを有するさらなるパワースプリット式自動変速機が示されている。
【0013】
図8による変速機の総減速比igesは、バリエータ12のギヤ比ivarに依存して図9に示されている。
【0014】
CVT変速機の場合には、ギヤ比を決定するための通常の方法が、回転数制御器を用いて実施されている。この制御器は、目標エンジン回転数を設定し、この目標エンジン回転数が生じるように変速機のギヤ比を変更する。目標エンジン回転数は、特性曲線の評価により、アクセルペダルの操作に依存して決定される。CVT変速機の特性に基づいて、いずれにせよギヤ比制御器若しくは回転数制御器としての制御回路は必要となる。
【0015】
パワースプリット式変速機のもとでは図3,5,7,9のギヤ比ダイヤグラム(変速比ダイヤグラム)からわかりやすいストラテジ、例えば切替え点Uにおける領域チェンジ、つまり予め定められた切替えギヤ比が実行される。この場合1つのギヤ比領域において調整が切替えギヤ比まで行われ、その後で切替えがなされ、引き続き新たなギヤ比領域においてギヤ比がさらに調整される。この場合バリエータの調整は、自身の方向で変更され、それにより制御クラッチK1,K2(これらはブレーキによっても実現可能)の切替えと協働してバリエータの操作も行われなければならない。
【0016】
同じドライブトレーンに作用している複数の個々の操作(クラッチ及び/又はブレーキ、設定調整器など)の組合わせから生じる問題も多岐にわたる。最初の操作による作用は、ドライブトレーンを介して他の操作の必要性やそれらの作用にも影響を及ぼす。目下のバリエータを備えたパワースプリット式自動変速機に対する問題としては次のようなものが挙げられる。すなわち、切替えの際に生じるドライブトレーンの振動、バリエータないし巻掛け手段の摩擦部材の過度な摩耗などである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、バリエータと少なくとも1つのギヤ装置を備えたパワースプリット式自動変速機のギヤ比ないし変速比を制御するための方法において、快適性に富んだ切替えを可能にしかつ、バリエータ内の摩擦部材の摩耗性のできるだけ少ない切替えが達成されるように改善を行うことである。また本発明のさらなる課題は、本発明による方法を実施するためのパワースプリット式自動変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題は、独立請求項に記載された本発明によって解決される。また従属請求項には本発明の別の有利な実施例が記載される。
【0019】
本発明は、バリエータを備えたパワースプリット式変速機の全てのタイプに適用可能であり、特に円錐プーリー対による巻掛け伝動式変速機に適用可能である。特に有利には、本発明は車両に用いられるパワースプリット式自動変速機への適用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】パワースプリット式CVT変速機を備えた車両ドライブトレーンのブロック回路図
【図2】パワースプリット式CVT変速機の1実施形態の断面図
【図3】図2によるCVT変速機のギヤ比ないしギヤ比ダイヤグラム
【図4】対応するギヤ比ダイヤグラムを備えたパワースプリット式変速機のさらなる例を示した図
【図5】対応するギヤ比ダイヤグラムを備えたパワースプリット式変速機のさらなる例を示した図
【図6】対応するギヤ比ダイヤグラムを備えたパワースプリット式変速機のさらなる例を示した図
【図7】対応するギヤ比ダイヤグラムを備えたパワースプリット式変速機のさらなる例を示した図
【図8】対応するギヤ比ダイヤグラムを備えたパワースプリット式変速機のさらなる例を示した図
【図9】対応するギヤ比ダイヤグラムを備えたパワースプリット式変速機のさらなる例を示した図
【図10】パワースプリット式変速機に対する開ループ制御装置ないし閉ループ制御装置の機能ブロックを示した図
【図11】切替えストラテジを説明するためのギヤ比ダイヤグラム
【図12】バリエータ調整部を説明するためのブロック回路図
【図13】領域切替えを説明するためのフローチャート
【図14】パワースプリット式変速機のさらなる別の実施形態の基本構成図
【図15】図12による変速機のギヤ比ダイヤグラム
【図16】状態オートマトンの形態で切替えストラテジを表わした図
【図17】種々異なる切替えストラテジによるギヤ比ダイヤグラム
【図18】切替えストラテジの効目を説明するためのダイヤグラム
【図19】切替えストラテジの効目を説明するためのダイヤグラム
【図20】高頻度なチェーン損傷回避の説明のためのギヤ比ダイヤグラム
【図21】頻繁な切替え回避のためのギヤ比ダイヤグラム
【図22】頻繁な切替え回避のためのギヤ比ダイヤグラム
【図23】制御クラッチの有利な操作の説明のためのダイヤグラム
【図24】制御クラッチの有利な操作の説明のためのダイヤグラム
【図25】目標回転数の作用による有利な走行ストラテジの説明のためのダイヤグラム
【図26】目標回転数の作用による有利な走行ストラテジの説明のためのダイヤグラ
【図27】エンジン介入制御による有利な切替えストラテジの説明のためのダイヤグラム
【図28】設定調整器の支援による有利な切替えストラテジの説明のためのギヤ比ダイヤグラム
【図29】さらに別のパワースプリット式変速機の基本構成図
【図30】図29による変速機の変更を示す図
【図31】4つの異なる構成で結合されたプラネタリギヤ装置
【図32】バリエータの駆動制御を説明するためのブロックダイヤグラム
【図33】バリエータの駆動制御を説明するためのブロックダイヤグラム
【図34】2つの異なる位置のカスケードバルブを示した図
【図35】は、カスケードバルブを備えた油圧回路を示した図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の明細書では図面に基づいて実施例の説明と個々のユニットの説明を記載する。
【実施例】
【0022】
図10には、開ループ制御モジュールないし閉ループ制御モジュールの基本構造が示されており、これらのモジュールは、図1による電子的な開ループないし閉ループ制御装置16内で、ハードウエア的および/またはソフトウエア的に実現され得る。ここでの個々の楕円は、機能ブロックないしはモジュールをそれぞれ表わしている。
【0023】
nsollストラテジモジュール50は、アクセルペダル18の位置と車両速度に依存して、エンジンないし駆動軸6の目標回転数nsollを決定する。この目標回転数nsollは、設定調整器52、領域ストラテジモジュール54、及び発進ストラテジモジュール56に供給される。領域ストラテジモジュール54、設定調整器52、発進ストラテジモジュール56並びに押圧調整器58には、さらにエンジンないし駆動軸6の回転数実際値が供給される。この場合は必ずしも全ての接続が必要となるわけではない(例えば発進ストラテジモジュールでの回転数実際値の考慮など)。またさらに付加的な接続が形成されてもよい。付加的にエンジン2から与えられるトルクが供給されている押圧制御器58は、トルク及び駆動軸6の回転数に依存している、CVT変速機ないしバリエータの円錐プーリーの押圧力を次のように制御している。すなわち円錐プーリーと巻掛け手段の間で不所望なスリップが生じないように制御されている。
【0024】
領域ストラテジモジュール54は、所望の目標回転数と回転数実際値に依存してパワースプリット式変速機のギヤ比領域(Low-Ast若しくはHigh-Ast)を決定し、相応の信号を切替えモジュール60に供給し、この信号が制御クラッチを相応に制御している。設定調整器52の入力側には、押圧調整器58のパラメータと切替えモジュール60のパラメータが供給されており、それによってこの設定調整器52は、その入力信号に依存して円錐プーリー対の調整シリンダに作用する応力を次のように制御する。すなわち回転数実際値が目標回転数に近似するように制御する。発進ストラテジモジュール56は、発進の際に、発進クラッチ4(図2)の操作を、目標回転数ないし回転数に依存して開ループ制御ないし閉ループ制御する。
【0025】
NSOLLストラテジモジュール50は、それ自体公知の手法で例えばアクセルペダル18の操作量と目下の車両速度から現下の出力要求を決定する。ペダルを介して入力されるドライバの加速要求は、次のように目標回転数に変換される。すなわち目標回転数とエンジントルクから算出される出力が当該の出力要求に相応するように変換される。同時にエンジンは、それ自体公知の手法で、できるだけ燃費の良好な回転数のもとで作動される。この種のストラテジとその利点は、従来のCVT変速機からも公知である。これに類似したストラテジでは、目標回転数から目標変速比ないし目標ギヤ比が導出される。
【0026】
設定調整器52は、駆動軸6(これは同時に変速機入力軸を形成する)の回転数を目標回転数に補償調整しており、この場合プーリーセットに対する応力とそれに伴うバリエータのギヤ比、及び(活動化されているギヤ比領域に依存した)変速機全体のギヤ比が変更される。この補償調整は、回転数変化率を設定する下位のグラジエント調整器を用いて行ってもよい。このケースでは、設定調整器52は相応の微分回路も含んでいる。設定調整器52は、有利には予制御(パイロット制御)を補足されてもよい。これはサポート的に調整器出力に直接介入する。そのような予制御は例えば支援シーケンスから必然的に必要とされる応力を直接生成するために用いられる。実際のバリエータの応力変化に対する不安定な応働を考慮するために、さらなる"減結合要素(係数など)"が用いられてもよい。それによってバリエータがギヤ比に依存して多かれ少なかれ敏感に反応することを考慮することができる。
【0027】
従来のバリエータをパワースプリット式変速機に適用する際には、とりわけ以下に述べるような問題が生じる。
【0028】
問題1:
パワースプリット式変速機の総減速比igesが、高い発進ギヤ比から低減されるべき場合には、図11に従って(これは図3に相応)、第1の領域においてバリエータのギヤ比ないし変速比ivarが低減され、その後で第2の領域において高められなければならない。そのため従来の設定調整器52では、両方の領域をカバーすることができず、これらの領域の一方においては意に反するものとなってしまう。
【0029】
この問題の本発明による第1の解決手段によれば、設定調整器52の少なくとも1つの調整器パラメータにおいて、2つのギヤ比領域間の切替えの際にその極性が変更される。そのつどの有効な極性は、切替えモジュール60から設定調整器52に伝達される。
【0030】
極性において変更がなされる調整器パラメータは、調整器の複雑性に応じて調整器内で処理される重要なパラメータであり得る。これは調整器の出力信号を変更させる。簡単な実施形態によれば、調整器パラメータ(場合によっては出力信号自体)は、切替えの際に出力信号の極性が変わるように変更される。
【0031】
前述した解決手法のさらなる展開によれば、設定調整器52の出力信号の極性だけがギヤ比領域に依存して変わるだけでなく、出力信号がさらにdiges/divarの瞬時値に相応して変更される(例えばその勾配が乗算)。ギヤ比特性曲線Astの勾配は、変速機全体に対するバリエータの作用の強さと方向性を表している。総減速比の所定の変更が望まれている場合には、バリエータを僅かだけ(B)かまたは特に強く(C)調整することが必要である。グラジエント(若しくはその逆数)によって、設定調整器52の出力側と乗算される係数に対する尺度が得られる。
【0032】
問題のさらなる解決手段は、設定調整器52がPID制御器である場合には、有利には次のことによって解決される。すなわち、当該制御器のP成分をdiges/divarの瞬時値と乗算することによって解決される。
【0033】
代替的にこの問題は、2つの異なる調整方向で用いられる唯一の設定調整器を用いれば次のように解決される。すなわち目標回転数と回転数実際値の間の偏差に相応する設定調整器の入力信号がdiges/divarの瞬時値に相応して変更されるようにして解決される(例えば乗算)。
【0034】
複雑な調整器構造のもとでは、どの調整器ユニットをギヤ比領域の切替えの際に切替えるかが選択的に決定されなければならない。
【0035】
図12には、前述の問題解決に用いられたような設定調整器52(図10)の構造が示されている。
【0036】
目標回転数ストラテジモジュール50からは、目標回転数変化値dn/dtsollが調整モジュール62に供給され、該調整モジュール62の他方の入力側には、微分回路64によって形成された回転数実際値変化値dn/dtistが供給される。この値は回転数センサ24(図2)から導出された信号から形成されている。調整モジュール62の入力信号間の差分に相応する出力信号は、スイッチング素子66に供給され、この素子66には切替えモジュール60から1つの信号が供給され、該信号は、活動化領域に応じて調整モジュール62の出力信号に影響を与える(例えば極性変え)。スイッチング素子66の出力信号は、比例モジュール68と積分モジュール70に供給され、それらの出力信号が再び調整モジュール72において予制御信号、例えばトルク、回転数、バリエータギヤ比、目標回転数の時間変化などと共に加算されて処理される。当該調整モジュール72の出力信号は、バリエータに供給する調整力を定める。
【0037】
前記スイッチング素子66は、有利には、ギヤ比状態の範囲内で(例えば図3の"High-Ast"、図5の"Low-Ast"参照)、総減速比とバリエータギヤ比の間の特有の比特性への適応化に用いてもよい。例えば"High-Ast"は、そこから線形な特性曲線が得られるように適応化可能である。(12頁5行)
【0038】
積分モジュール70には、領域切替えの実施の際に調整パルス(図示せず)によって作用が生じる。その場合積分モジュール70の出力信号が一回影響を与える。このことはバリエータに作用する調整量の中で所定のレベルの段階的跳躍を生じさせる。この調整パルスは、常に次のように方向付けられる。すなわちバリエータ切替えギヤ比から離脱するようなバリエータの調整が生じるように方向付けられる(例えば"切替え時のディスク離脱移動の反射"のように作用する)。調整パルスのレベルは、どのくらいの早さでギヤ比に調整されるかに依存している。つまりdn/dtSollの大きさである。
【0039】
図13の左側には、切替えモジュール60(図10)において実行される切替えシーケンスのフローチャートが示されている。また図13の右側には、設定調整器52に該当する部分に関する切替えが表されている。
【0040】
ステップS1では、領域ストラテジモジュール54(図10)が、領域切替えが必要でかつ可能かどうかを検査する。可能な場合には、ステップS2において第1の制御クラッチの開放のための制御信号が生成される。以下でも説明するように、トラクション動作状態でのシフトダウン若しくはエンジンブレーキ動作状態でのシフトアップのケースでは、出力基準が満たされていない場合、第2の制御クラッチの閉成過程が若干遅延される。それ故ステップS3では、出力基準が満たされているかどうかが検査される。この基準が満たされていない場合には、第1のクラッチが開かれたままとなる。基準が満たされている場合には、ステップS4において、他方のクラッチが閉じられる。ステップS5では、第1のクラッチの開放と第2のクラッチの閉成が完全に実施され、当該の切替えが終了する。
【0041】
積分モジュール70(図12)へのパルスの印加は図13の右側に示されている。設定調整器52(図13)は、その入力側が目下の領域を例えば信号diges/divarを用いて連続的に識別する場合には、2つのギヤ比領域(スプリットモードと非スプリットモード)で適用される。ステップS6では、図12に基づいて説明した通常の設定調整ないしはバリエータ制御が行われる。ステップS7では、領域切替えの実施の決定がなされる。それによりステップS8では、積分モジュールに、前述したような変速機において設定調整力の段階的な変更を引き起こすパルスが印可される。
【0042】
問題2:
総減速比igesの実施の際には、バリエータのギヤ比ivarが切替え点Uに向けて順方向制御され、引き続き切替え点Uから逆方向制御される。この反転が正確に実施されない場合には、車両が不快な変速ショックを引き起こす。この変速ショックは、バリエータの巻掛け手段自体やそれに含まれている摩擦部材対の益々の摩耗を意味する。
【0043】
前述した問題の第1の解決手段は、調整器入力信号を、制御クラッチK1,K2の切替えの間に低減することからなり、そこでは例えば切替えの期間中に1よりも小さい値か若しくはデジタル値でゼロに切り替る係数の乗算が考えられる。このようにすれば、切換の最中に設定調整器52に伝達される有効な目標−実際値偏差が低減される。それにより、制御クラッチK1,K2の切替え中に設定調整器52に影響を与える潜在的な障害信号が無害となる。
【0044】
前述した問題のさらなる解決手段によれば、バリエータのディスク対の種々異なる押圧圧力の予制御が(これはそのつどの伝達されるトルクに依存する)、ギヤ比領域間の移行のもとで切替えられない。この予制御は、バリエータにおける目下のトルクに依存しており、いずれにせよ新たな領域に適応化される。
【0045】
前述した問題のさらなる解決手段によれば、前述した手段に対して代替的に若しくは付加的に、ギヤ比領域間の切換のもとで設定調整器52内に存在するI成分が変更、特に低減されるか特に有利には、跳躍的にゼロにセットされる。前述した問題2の解決のための方法のさらなる実施例によれば、I成分のうちの次のような部分、すなわち切替え点Uのスタートアップが速度divar/dtによって引き起こされる部分がさらに生じさせられる。このことは、理想的なケースでは、問題1の解決手段に相応して乗算の後でもI成分としてさらに存続し、バリエータの戻り調整にも寄与する全てのI成分の完璧な予制御である。
【0046】
問題3:
以下では領域間の切替えの一般的な問題の有利な解決手段を示す。:
図14には、バリエータ12,第1のプラネタリギヤセット14、第2のプラネタリギヤセット14、後置接続されたギヤ比段FOを備えたパワースプリット式変速機のさらなる例が示されており、それらと車両のさらなる構成要素とのねじれ結合部分は符号62で表されている。
【0047】
エンジン2と変速機の間には有利には発進クラッチ(図示せず)が設けられていてもよい。リバース走行用のクラッチは図には示されていない。
【0048】
プラネタリギヤセット14と14の接続は例えば以下のようであってもよい。すなわち、プラネタリギヤセット14のサンギヤがバリエータ12の出力軸と剛性結合され、
プラネタリギヤセット14のプラネタリキャリヤはプラネタリギヤセット14のリングギヤと剛性結合され、プラネタリギヤセット14のリングギヤは制御クラッチK2の出力軸と剛性結合され、プラネタリギヤセット14のリングギヤは、プラネタリギヤセット14のプラネタリキャリヤと剛性接続され、プラネタリギヤセット14のプラネタリキャリヤは、ギヤ比段FDの入力側に剛性接続され、プラネタリギヤセット14のサンギヤは、制御クラッチK1に剛性接続される。
【0049】
制御クラッチK1が閉じられ、制御クラッチK2が開かれている場合には、動力伝達がバリエータのみを介して行われる。iP1、iP2及びiFDがプラネタリギヤセット14と14およびギヤ比段FOのギヤ比であるならば、総減速比に対して以下の式が得られる(場合によって存在し得る中間軸ないし介在軸のギヤ比は考慮しない)。
ges=iFD×ivar×(iP1+iP2−1)/iP2
制御クラッチK1とK2が閉じている場合には、パワースプリット式変速機は制御クラッチK2とバリエータを介して動力伝達する。総減速比は以下の式、
ges=iFD×iP1/(1/ivar+iP1−1)
から算出される。
【0050】
P1=−2.5でiP2=−2であるならば、図15によるギヤ比ダイヤグラムが得られる。この場合igesは、ギヤ比段14のギヤ比iFDは含まない。
【0051】
領域ストラテジは以下のステップを含んでいる:
1.バリエータのギヤ比実際値ivarと変速機の総減速比igesを、測定された回転数と目 下の活動化された動作モード領域から算出するステップ
2.変速機入力側における振動減結合された回転数実際値nistを、総減速比igesと車両速 度に相応するパラメータ、例えば測定されたホイール回転数などから算出するステップ
3.回転数実際値の変化dnist/dtを算出するステップ、これは存在する変速機入力側回転数と、最後の評価以降の時間変化とから例えば時間導関数を用いた補外法によって求められる。さらに目標回転数dnsollの変化は次のようにして求められ、すなわち、
車両速度vistと変速機入力側回転数nistが求められ、
−目標回転数nsollはvistとアクセルペダルに依存する目標ギヤ比から算出され、
−dn/dtsoll=f(nsoll−nist)が求められ、それによって小さな偏差nsoll−nistは、緩慢なdn/dtsollによって修正され、大きな偏差は、比較的高いdn/dtsollによって修正される
4.切替え回転数numの算出(ここでは領域切替えUが現下の車両速度のもとで厳密に行われなければならない)
5.場合によって生じる領域切替えに関する前記算出パラメータに基づく決定。
【0052】
各ステップの詳細:
ステップ1.
パワースプリット式変速機では総減速比とバリエータギヤ比がギヤ比領域に応じて様々に関連している。総減速比の簡単な計算は、変速機入力側回転数と出力側回転数を測定し相互に除算することである。続いてバリエータギヤ比は、前述したようなギヤ比数式から算出可能である。
【0053】
逆の方法も可能であり、有利にはバリエータの入力軸と出力軸での回転数の直接の詳細な測定とivarの計算である。結果的にivarの計算は前述した数式に相応する。手段の選択に応じてどこに回転数センサを設けるかが決まる。最初に述べた方法では、変速機入力側と変速機出力側であり、二番目に述べた方法では、変速機入力側とバリエータの出力側である。付加的にこれらの2つの方法では、ホイール回転数若しくは車両速度に相応するパラメータが求められる。
【0054】
最初に述べた変化例の欠点は、クラッチないしはブレーキがスリップしている場合にバリエータのギヤ比が確定できないことである。それにより、特殊な閉ループ/開ループ制御アルゴリズムは付加的なセンサなしでは行えず、例えばいかに説明するさらなる閉ループ制御が中立的状態におかれる。
【0055】
ステップ2.
振動減結合は従来のCVT変速機に類似して可能である。
【0056】
ステップ3.
目標回転数および回転数実際値の変化の後からの考慮は重要である。
【0057】
ステップ4.
切替え点におけるギヤ比は、変速機の構造によって固定的に予め定められる。
【0058】
ステップ5.
領域ストラテジは、以下の明細書で図16に基づいて説明するように状態オートマンの形態で表され得る。
【0059】
左方の円内に示されているローレベル状態は、バリエータ12に並列する動力伝達経路の開放(例えば図12の制御クラッチK2の開放)を生じさせ、他方の動力伝達経路の閉成(例えばクラッチK1の閉成)を生じさせる。右方の円内に示されているハイレベル状態は、バリエータに並列している動力伝達経路を閉成し、他方の動力伝達経路を解法させる。
【0060】
中央の円内に示されているニュートラル状態は、バリエータに並列する動力伝達経路もさらなる動力伝達経路も開放させ、それによって変速機が動力を伝達しない状態におかれる。
【0061】
ローレベル領域1からハイレベル領域2への切替えは、有利には以下の条件の存在のもとで行われる。すなわち、
遮断時間(先の領域切替え以降の持続時間)スタート AND
nsoll+a×dnsoll<num(切替え回転数)AND
ist+b×dnist−c<num(a,b,cは定数)。
【0062】
切替えは、最初は厳密に切替え点Uではなく、既にその直前で快適性の上昇がみられる。それによりこの切替えはギヤ比と回転数の僅かな跳躍的変動しか伴わず、それは適切なクラッチ操作によって快適に形成し得る。本来の切替え点前の切換は次のことによって達成する。すなわち前述した条件において項cが存在することで達成される。項b×dnistによれば、アクチュエータ系の遊び時間を考慮するために、切替えが付加的にやや早期に行われる。
【0063】
本来の切替えギヤ比前の切替えを要求するストラテジは、2つのギヤ比領域間の"負"のヒステリシスに結び付く。これは"1"から"2"への切替え直後の"2"から"1"へのリターン切替えの条件も満たしていることを意味する。その結果として生じ得る揺動的切替えを回避するために、遮断時間を伴う時間的なヒステリシスが状態オートマトンにおいて実行される。
【0064】
ハイレベル領域2からローレベル領域1への切替えは、以下の条件の存在のもとで行われる。:
遮断時間のスタート AND
soll+a×dnsoll>num AND
ist+b×dnist+c>num
状態0は、静止状態においてあるいは、例えばABSの介入による制動の際に、若しくは全く一般的なホイールロックの伴う制動の際に、発進時ギヤ比に対するバリエータの調整を容易にするために用いられる。CVT変速機ないしはバリエータの調整は、円錐プーリー対の回転が遅くなればなるほど難しくなる。ホイールロック傾向の制動の最中とその後では、この調整自体が困難となる。制動中の変速機の開放は、ABS制御を容易にするという利点のみでなく、発進時ギヤ比に対する調整を容易にさせる利点も伴う。これらの利点は、バリエータの構成がより小さな押圧シリンダで十分になる利点をもたらし、このことはコストの節約と重量の低減につながる。
【0065】
ハイレベル領域2からニュートラル領域0には、有利には以下の条件、
ABS制動 AND Dsoll>>num>>nist
の存在のもとで切替えられる。
【0066】
UD後のニュートラル迅速調整の活動化に対する条件は、ホイールロック傾向の制動が存在していることを意味し、これは不十分な早さで置換えられた領域切替えを越えたギヤ比調整を要求する。
【0067】
ニュートラル領域0からローレベル領域1へは有利には以下の条件、
var近傍 AND nist ≒0
の存在のもとで切替えられる。
【0068】
問題4
以下では、領域切替えの際の快適性が欠けている問題を解決するための有利な手段を説明する。
【0069】
快適な領域切替えは有利にはシフトタイプ(トラクション動作状態/エンジンブレーキ動作状態/アップシフト/ダウンシフト)に依存して切替え点の前後で行われなければならない。基本的には、切替えの際にスリップ特性量の極性に応じて加速動力または減速動力が分けられなければならない。有利には、次のような切替えストラテジ、すなわちトラクション動作状態のもとでは常に加速動力が解放され、エンジンブレーキ動作状態のもとでは常に減速動力が解放される。
【0070】
図17には、比率が表わされている。図17のaには、パワースプリット式変速機の総減速比igesがバリエータのギヤ比ivarに依存して示されている。ローレベル領域の特性曲線は、高いギヤ比に相応している。またハイレベル領域のは、低いギヤ比に相応している。切替え点Uでの総減速比は、ローレベル領域が活動化されているのかまたはハイレベル領域が活動化されているのかには係わらない。
【0071】
図17のb,c,d,eは種々異なる切替えストラテジを表わしている。
【0072】
トラクション動作状態でのシフトアップ(17b)では、切替え点Uの前にローレベル領域からハイレベル領域への切替えがなされる。エンジンブレーキ動作状態でのシフトダウン(17c)では、切替え点の前に、ハイレベル領域からローレベル領域への切替えがなされる。トラクション動作状態でのシフトダウン(17d)では、切替え点がローレベル領域において通過され、引き続きハイレベル領域に切替えられ、その際切替え点Uは再び通過されている。エンジンブレーキ動作状態(e)では、ハイレベル領域において切替え点Uが通過され、引き続きローレベル領域へ切替えられている。図17dとeでの斜線領域は、その都度の出力基準を表わしており、これは充たされていなければならないものであり、それによって切替えがなされ、ないしは最初に開かれたクラッチが閉じられる。この基準は、トラクション動作状態のもとでは加速出力を解放し、エンジンブレーキ動作状態のもとでは減速出力を解放する。図17dとeではそれぞれ可能な快適性をもたらす切替えの2つのトラジェクトリが表わされている。
【0073】
図18では、不都合な切替えに対する例が示されている。ここでは、バリエータのギヤ比ivar、クラッチK1によって伝達されるトルクMK、クラッチK2によって伝達されるトルクMK、エンジン回転数n、車両加速度bの経過が時間軸に亘って示されている。
【0074】
時点xでは、ivar=0.505のもとで、すなわち切替えギヤ比=0.5の直前で、トラクション動作状態シフトアップが行われている。クラッチトルクMKは、0になる。クラッチトルクMK2は、高い値になる(クラッチの摩擦結合)。エンジン回転数nと車両加速度bは、僅かな振動ないしショックしか有さない。時点yでは、トラクション動作状態/シフトダウンが、ここでも同じように切替えギヤ比の前に行われている。エンジン回転数と車両加速度は、明らかな振動ないしショックを表わしている。
【0075】
図19は、図18のようにトラクション動作状態シフトアップを示している。但し時点yでのトラクション動作状態シフトダウンのもとではバリエータのギヤ比ivarが、図17に示されたストラテジの適用のために、図18の時点yでのケースのivarよりも少ない。車両加速度とエンジン回転数は、明らかにさらに僅かな振動を示しており、このことは快適性の改善を示す。
【0076】
問題5:
図14による構造を有し、プラネタリギヤセット14のギヤ比iが例えば2.5で、プラネタリギヤセット14のギヤ比iは例えば1.5の変速機のもとでは(これは高トルクの自家用車エンジンに適用され得る)、変速機内部の回転質量体の調整の際にその加速ないし減速のもとで極端に大きな変動性の出力が使い果たされるか供給されることが明らかとなる。この出力の変動によっては、不都合に感じられるトラクション動力の変化が生じ、それはトラクション動力の中断まで引き起しかねない。変速機のギヤ比変化は、特にパワースプリット動作モードにおいては、非常に顕著である。その他にも回転数勾配のある中での切替えは、例えばキックダウンによるシフトダウンは、回転数勾配のない同じような切替えに比べて明らかに不快に感じる。
【0077】
前述したような問題の原因は、変速機内部の回転質量体、特にバリエータの出力側ディスク対の回転質量体であり、それはギヤ比調整の際に、大きな加速出力を要求する。この出力は、トラクション動力を失わせ、例えば切替え点Uにおける変動は、ショックを生じさせる。
【0078】
構造的な支援手段は、プラネタリギヤセットのギヤ比の有利な選択の中で成り立つ(さもないと同じギヤセット特性となる)。ギヤ比iは小さくて、ギヤ比iが大きい場合には有利となる。さらに有利には、後置介在段の代わりに、入力側プーリー対の前に前置介在段を用いて動作される。すなわち前置介在式変速機(Vorgelegegetrieben)が有利である。出力側プーリー対は、プラネタリギヤセット141nサンギヤと同軸に配置されるべきである。バリエータに並列する動力分岐内での僅かな回転質量も有利となる。
【0079】
変速機制御(ソフトウエア環境)に関しては、以下の改善の可能性も成り立つ。すなわち、
・切替えクラッチのトルク追従は、有効な慣性を考慮しなければならない
・エンジン介入制御は、切替え点Uにおける有効な慣性の跳躍的変動を考慮しなければならない
・走行ストラテジは、トラクション動力を方向付けて回転数勾配を動的に低減しなければならない。
【0080】
プラネタリギヤ比の不都合な選択、例えばi1=−2.5、i2=−1.5では、許容される快適性を達成するのに、開ループ制御のソフトウエア側の手段を満足できない。
【0081】
良好な結果は、既に前述してきた制御ストラテジによって、すなわち、
−調整器全体の構想、エンジン目標回転数が決定的な役割を果たし、後置接続されたモジュールが目標回転数に制御する。設定調整器52と切替えモジュール60(図10)は相互作用し、それと共に切替えが適正な時点で行われ、設定調整器が切替えの際に相応に極性を切替えられる。
【0082】
2つのギヤ比領域は、オートマトン(図16)の2つの状態として実施される。切替え過程は、それぞれの領域状態のパートであり、変数uのカウントアップないしダウンによって行われる。
【0083】
切替えの実施に関する決定は、回転数基準に基づいて甘受される。その際切替え回転数が算出される。目下の回転数(例えばD成分の)と目標回転数(例えばD成分の)が当該切替え回転数の他方の側にあるならば、状態が入れ替わり、それに伴って切替えがトリガされる。
【0084】
D成分と付加的な被加数を介して、トラクション動作状態シフトアップが常に切替え点の前に行われ、トラクション動作状態シフトダウンは常に切替え点の後に行われる(図17参照)。切替え変数u(例えば0(非スプリット動作モード)と1000(スプリット動作モード)の間の値をとり得る)は、どの領域にちょうど進むべきかを示し、他のモジュールに対するインターフェース変数を表わしている。この切替えは、状態オートマトンにおける変数uのアップないしダウンカウントによって実施される。この変数uは、多くの場面、例えば、
−クラッチトルクの計算の時
−バリエータクラッチの計算の時(制御偏差の反転による"極性替え")
−設定調整器の操作の際(例えばI成分の消去)
−バリエータトルクの計算の時
−回転数の計算の時
において無段階に考慮される。
【0085】
そのつどのクラッチトルクは、それ自体公知の手法で、ギヤ比に依存するkme係数を用いてエンジントルクから算出する。それにより例えばブレーキに作用する第1の制御クラッチK1(図14)が、UDにおいて数倍のエンジントルクで閉じられなければならないが、但し切替え点Uでは、エンジントルク自体のみである。このエンジントルクはこの場合回転数変化を考慮した動的なエンジントルクである。切替えの動特性は、変数uの値の依存性によって得られる。すなわち切替えの調整は、各クラッチ毎の変数uに依存した特性曲線に基づいて、及び変数uのカウントアップないしダウンに対する論理に基づいて行われる。クラッチの開放は、閉成よりも迅速に行われる。
【0086】
エンジン介入制御は、状態オートマトンにおいて考慮される。慣性ジャンプの補償は、回転数勾配に比例して行われる。分岐された領域(スプリット領域)では、ギヤ比に依存した関数の結果となり、分岐されない領域(非スプリット領域)では、切替え後に時間的に制限されて(例えば2つの半波周期)活動化される振動抑制機能が有利に用いられる。
【0087】
パワースプリット式変速機(例えば図14による構造タイプの)の調整器慣性の問題を解決するためのその他の手段は、スプリット動作モードにおいて回転数勾配を意識的に次のように変更することからなる。すなわち変速機内部の回転質量体の加速出力を僅かに変更するか、ないしはスプリット動作モードにおいて回転数グラジエントを、変速機出力側における加速出力が単調に若しくは常に変化するように変更する(トラクション動作状態シフトダウンのもとでは線形に増加する)。このことは、トラクション動作状態シフトダウンのもとで、非線形の但しそれによってショックの最小化されたエンジン回転数上昇を引き起す(シフト前は緩慢に始まり引き続いてその後迅速になる)。
【0088】
問題6:
切替えの領域、ないしはその近傍領域では、ローレベルギヤ比領域(非スプリット動作モード)で走行しているのかハイレベルギヤ比領域(スプリット動作モード)で走行しているのかが巻掛け手段の損傷、例えば金属チェーンの損傷に大きく係わってくる。例えば図20によるギヤ比特性(変速比特性)を有するパワースプリット式変速機においては一般に、スプリット動作モードの方が、非スプリット動作モードの場合よりもチェーン損傷の確率が高まる。
【0089】
前述した問題は以下のようにして解決可能:
領域切替え点U近傍の作動点において走行している場合には、チェーン負荷の低い領域に所期のように切替えることが可能である。緩慢な走行の際には非スプリット動作モードが存在し、それに続いてスプリット動作モードが存在するような変速機においては、上位に位置付けられる走行ストラテジ(例えばモジュール60(図10)にて実行される)によって、チェーン損傷の比較的少ない非スプリット動作モードへの切替えが強制される。それによりとりわけユーザーにとってじゃまに感じられない程度の極僅かに高いエンジン回転数が受入れられる。
【0090】
摩耗の少ない領域において開始された作動点は、最初に選択された高いチェーン損傷の伴う領域と同じ牽引力ないしホイール回転力が得られなければならない。Eガス機構(電子制御式スロットルバルブ)を備えたエンジン制御システムの場合には、新たな作動点がエンジンマネージメントによって支援開始される。
【0091】
ティプトロニックシフト(変速段のマニュアルシフト)を伴う変速機の場合も同じようにチェーン損傷が考慮され、それによって領域切替え近傍でパワースプリットを伴う領域が避けられる。
【0092】
当該のストラテジは、摩擦部材対を備えた全てのバリエータタイプのもとで有利となる。
【0093】
問題7:
目標ギヤ比ないし目標回転数が領域切替えUの領域に存在するならば、目標回転数ないし目標ギヤ比の比較的小さな変更も揺動シフトに結び付き得る。これもチェーン損傷の観点から避けられるべきである。
【0094】
前述の問題に対する第1の解決手段は、所望の目標ギヤ比が明らかに切替え点Uから離れて存在している場合、すなわち所定のヒステリシス領域を逸脱した場合にしか、先行の作動領域へのシフトダウンを実施しないことである。このことは図21に示されている。ヒステリシス領域は、差分ギヤ比若しくは差分回転数として示されている。目標ギヤ比は、バリエータのストッパにおけるギヤ比に限定される。作動点に応じて、比較的高い回転数が設定され得るが、領域チェンジは避けられる。:
例:
目標総減速比iges sollが少なくとも1つのΔ値分だけ、回転数補償の伴う領域切替えUが実施されるギヤ比よりも大きい場合に初めて、非スプリット領域(Low-Ast)への切替えが許容される。
【0095】
目標ギヤ比がヒステリシス領域よりも大きいために、領域チェンジが行われる場合には、目標ギヤ比は、適切なやり方で開始されるべきである(例えばギヤ比差分Δigesが線形に低減することによって)。
【0096】
前記問題の代替的若しくは付加的な解決手段は、領域チェンジが最後の領域チェンジ以降所定の期間が経過した後でのみ行われる。
【0097】
さらに別の若しくは付加的な解決手段は、先行の作動領域へのシフトダウンが、ドライバが相応の信号によって意志を表わした時にのみ行われる(例えばアクセルペダルが最後の領域チェンジ以来初めて操作されたこと、若しくはフットブレーキが最後の領域チェンジ以来初めて操作されたこと、あるいは変速機セレクトレバーが操作されたことなど)。
【0098】
問題8:
円錐プーリ式巻掛け伝動装置の場合、定常的な状態において2つの円錐プーリー対における押圧力の間で応力の均衡が生じる。すなわち所定の入力回転数と所定の入力トルクのもとで、ギヤ比を一定に保つために、押圧力の間で所定の応力比が必要である。この応力比は、例えば有効トルクを伴う回転数に依存している。この応力比が定常的値からずれている場合には、ギヤ比調整となる。
【0099】
領域切替えの伴うパワースプリット式変速機においては、領域切替えの際のパワースプリットに続いてトルクジャンプ(跳躍的トルク変化)が現れる。このトルクジャンプに対しては、とりわけトルクのゼロ交差となる。トルクジャンプのフェーズにおいては、一方では短時間の押圧低下となり、他方では快適性の損失となる。押圧の低下に基づいて障害的なスリップ事象は除外できない。円錐プーリー対に作用するトルクの変化によれば、さらに不所望な若しくは制御不能なギヤ比調整となり得る。それらは快適性に悪い影響を与える。
【0100】
前述した問題の解決手段は、ギア比領域の切替えの間に円錐プーリー対を過度に押圧することからなる。そのような過度な押圧は、スリップの危険性を回避させる。但しこの過度な押圧は、短時間の間でしか行われないので、負荷に関する不都合も寿命に関する不都合も見込まれることはない。領域切替えは、既に前述したように、予め求められ得る。それにより押圧力を適時に高める手段が得られる。
【0101】
特に有利には、この押圧力が低減され、それに対してトルクは極性チェンジの際に短時間だけ低減される。
【0102】
巻掛け伝動装置の場合、回転数とトルクに依存せずに、過度な押圧によって応力比が1:1の方向に変換されることは全く一般的に当てはまる。この過度な押圧が強い場合には、トルク変化が定常的な応力比において比較的僅かな変化しか生じさせず、すなわち、過度な押圧によって、円錐プーリー対における応力比は、過度な押圧なしの場合よりも明らかに僅かしか変化しない。それにより、領域切替えの間のバリエータのギヤ比に対するトルクジャンプは、僅かな影響しか与えず、制御不能なギヤ比調整が回避され得る。
【0103】
この過度な押圧圧力の形成も低減も様々な関数、例えばジャンプ、ランプ、PT1関数などによって実現され得る。
【0104】
問題9:
パワースプリット式変速機、特にバリエータ内のトルク伝達方向が当該パワースプリット変速機の2つのギヤ比領域で異なるタイプでは、切替えの際に巻掛けチェーンの損傷の危険性が高くなる。なぜなら牽引力が過度に揺動するからである。図22には、特性が表わされている。ここでは横軸に時間が示され、符号MKの付されている縦軸は、制御クラッチK1とK2の伝達可能なクラッチトルクが示され、符号Mvarの付された縦軸には、バリエータから伝達されるトルクが示されている。
【0105】
図示の例では、ギヤ比若しくは回転数の跳躍的変動が生じていないにもかかわらず、領域切替えがトルク伝達方向の反転に結び付くパワースプリット式変速機である(図6参照)。
【0106】
車両ドライブトレーンは、跳躍的変動形状のトルク変化に反応してショックを伴う。すなわちトルクの過度な揺動変動を伴う。
【0107】
図22によれば、*マークの付された、切替え領域の箇所において切替えがなされており、そこでは一方のクラッチ若しくはブレーキK1が開かれ、もう一方のクラッチないしブレーキK2は閉じられる。トルクスケールMKは、相対的に示されている。すなわち100%は、定常的条件のもとで必要とされるそのつどのトルクを表わし、それにより制御クラッチK1又はK2はスリップを開始しない。符号Mvarの付されたバリエータにおけるトルクは、切替えの際にその極性を変え、明らかに識別可能な揺動振動を伴う。負のピーク値はトルクの約200%となり、これは切換の前に印加されている。この種の高いトルクは、臨界的な負荷のかかる構成要素、例えば軸、歯車、巻掛けチェーンなどのより早い損傷ないし欠損に結び付きかねない。
【0108】
制御クラッチK1、K2は、図22に従って次のように強く閉成される。すなわち動的な状況においてもクラッチのスリップに対して十分な確実性ないし安全性が達成されるように強く閉成される。
【0109】
図23によれば、本発明による有利なクラッチの切替えが示されており、この場合切替えの後の短い持続時間の間(符号**が付されている)、クラッチが(図示の例ではK2)がごく僅かだけ所要の尺度を超えて(例えば120%〜130%)閉じられる。図から明らかなように、それによって負のピークトルクは、明らかに低減される(図示の例ではトルクの約130%まで)。これは切替え前に印加される。負荷の低減は、快適性の向上を伴う。なぜならショックが弱められて印可されるからである。100〜300msecの期間、120〜130%の数値が有利である。
【0110】
領域切替えの際のチェーン損傷の問題の解決のためのさらなる手段は、以下の通りである。:
完全に操作されたアクセルペダルのもとでは、高い目標回転数nsoll、典型的には、ガソリンエンジンでは、最大エンジン出力とそれに伴う最大加速を達成するために、毎分5800回転が開始される。このことは図24に示されている。2つの特性曲線は、時間軸に亘って回転数経過と速度経過が示されている。実際の回転数nは、バリエータの設定調整器によって目標回転数nsollに適応され、それに対して車両は加速される。符号Uで示されている時点では、領域切替えが毎分5800回転と最大トルクのもとで行われている。
【0111】
本発明によれば、目標回転数は領域切替えの前に有利には速度に依存する値、例えば毎分5000回転〜5400回転の間の値に限定される。この限定は、切替えの後では中止され、それによって、最初に限定された回転数nsoll1が値nsollに近似される。それと共に切替えは、図示の例では毎分5400回転のみの回転数のもとで行われる。速度が低い場合のエンジン出力のロスは、受入れなければならない。低いエンジン回転数は、少ないチェーン摩耗に結び付くだけでなく、騒音に関する快適性の向上にもつながる(図25)。
【0112】
問題10:
パワースプリット式変速機の場合は、ギヤ比領域切替え点Uにおいて領域チェンジが行われるが(これはギヤ比及び回転数における跳躍的変化なしで可能である)、しかしながら実際には車両加速度の変化が現れる。なぜなら切換のもとでは変速機内部の回転質量体の損失トルクと加速トルクが変化するからである。そのような予期できない加速変化は、快適性の欠陥を意味し、バリエータ、特に巻掛け手段に強く現れる振動を引き起す。
【0113】
本発明によれば、前述したようなショックの低減ないし解決のために、エンジン介入制御が有利には切替えの前後で行われる。
【0114】
例えばバリエータの押圧力と調整力の形成のために油圧ポンプに要する出力は、一般的には切替えの際に変化する。例えば所定の変速機構造のもとでは切換の際に、バリエータに作用するトルクが跳躍的に変化する。このトルクの跳躍的変動は、フルの押圧力とポンプトルクにも跳躍的変化を伴う。同時に(トルク上昇の際の)損失も拡大し、このことはエンジン出力に付加的な負担をもたらす。
【0115】
アクチュエータによって操作される出力調整部材を備えたエンジンにおいて簡単な形式で可能となるエンジン介入制御を介することによって、切替えの際に跳躍的形態で本来のレベルまで高めるために、エンジン出力が切替え直前で緩慢に低減される。さらに付加的もしくは代替的に、切替え後に緩慢に再び本来のレベルを受けるために、切替えの際にエンジン出力が跳躍的形態で高められる。
【0116】
これらのエンジン出力の変化は、そのつどの現下のギヤ比と結合されてもよい。切替えギヤ比に総減速比が近づけば近づくほどエンジン介入が大きくなる。最大のエンジン介入制御のレベルは、エンジンに有効に作用する跳躍的出力に方向付けられる。これは通常は目下のエンジントルクにほぼ比例して定められる。この比例定数は、通常は予め設定可能であり、一般的には最大で5%である。
【0117】
電子制御式エンジン介入制御に対するさらなる基礎は、バリエータの動的なトルクの跳躍的変化の組合わせにある。バリエータのギヤ比が切替えの前後で逆方向に変化することによって、バリエータの出力軸の加速変化により(これはギヤ比領域切替えを伴う)、車両加速度を変えるトルクが解放される。例えば切替えの前にバリエータの出力軸が加速されたならば(それに対しては切替え後に制動がなされる)、解放されたトルクが車両に加速を生じさせる。切替えの際に行われるエンジン介入制御は、動的なトルクのこの跳躍的変化を考慮し、その際には、当該介入制御が前述した例のように、新たなギヤ比領域の絶対値が先行のギヤ比領域の絶対値よりも小さな値を有する。この成分はバリエータの調整速度の絶対値に比例しており、この場合比例定数は、バリエータ出力側の回転質量体から得られる。さらにこの前述した動的なトルクは、切替え点がどの方向で通過されるかにかかわらず、車両に対して加速作用となる。また切替えに伴う動的なトルク変動が車両に制動作用を生じさせるような変速機構造も存在しており、その場合には補償のためのエンジン出力を上げなければならないことも理解されたい。
【0118】
図26及び図27は以下の過程を明らかにしている。:
これらの図面では、特性曲線Iがパワースプリット式変速機のバリエータのギヤ比の時間経過を表わしており、この場合符号Uでもって切替え点が表わされている。特性曲線IIaは、切替え点前の車両加速度を表わしており、特性曲線IIbは、切替え点後の車両加速度を表わしている。特性曲線IIIは、エンジン出力を表わしている。ここでは中程度のエンジン出力での加速過程が示されている。
【0119】
図26からも明らかなように、車両加速度は、切替えの際に明らかな跳躍的変化を伴っている。
【0120】
図27には、電子制御によるエンジン介入制御の特性が示されており、この場合は、図からみてとれるように、切替え点のスタートのもとでエンジン出力が緩慢にフィードバックされ、切替えの間は跳躍的に高まり、その後再び緩慢に先行値まで低下している。明らかに見て取れることは、著しく少ない跳躍底辺かが車両加速度内の跳躍的変化が著しく少ないことで、これは快適性の獲得を意味している。
【0121】
問題11:
切替え点の領域におけるパワースプリット式変速機のギヤ比制御の特性は、次のようなことからなっている。すなわち、ギヤ比がまず、バリエータの終端位置へ迅速に調整され、続いてこの経路から続けられる。分岐された領域(スプリット領域)と分岐されていない領域(非スプリット領域)の間の切替えをドライバにとってできるだけ感じ取れるように実施するためには、当該設定調整が高い動特性の他にも正確でかつ安定したギヤ比制御が維持されなければならない。この2つの要求は通常は相互に相反している。
【0122】
次に図28に基づいて前記問題の解決を説明する。:
図では、総減速比igesがどのようにして、バリエータのギヤ比ivarの通過によってその発進時ギヤ比から特性曲線"Low-Ast"に沿ってできるだけ長いギア比まで調整され、そして切替えの後で再びバリエータのギア比領域の通過のもとで逆方向に特性曲線"High-Ast"の方向に沿って迅速に調整されているかが示されている。ここで明らかに有利だとわかっていることは、切替え点Uの領域においてバリエータのその終端位置からの調整が、ギヤ比ないしは回転数の所望の目標勾配に相応する調整パルスによって支援されることである。それによりギヤ比制御の観点から支援された切換が、有利には、次のようなパルスを印加されている。すなわち希望するギヤ比に相応し、例えば応力、圧力、電流パルスとして実現されるパルスである。この方法の利点は、当該の制御された方法が設定調整器52(図10)のI成分の引き上げにはつながらないことである。それによりこの調整は迅速にかつ目標値の制御開始が不都合な振動なしで実現できる。
【0123】
有利には、パルスが設定調整器のI成分にもたらされ、その際このパルスが切替えモジュール60(図10)によってトリガされ得る。
【0124】
さらに有利には、より大きな目標グラジエントが要求された場合には、前記パルスないしはそれによって得られる予制御が高められる。その際さらに有利には、もたらされたパルスないしは予制御が所望の調整グラジエントよりも大きい。
【0125】
さらに有利には、パルスレベルないしは予制御が設定調整器のI成分の値に対して切替え前になされる。またさらに有利には、このパルスないし予制御を、バリエータに作用する入力トルクが上昇した場合には高められる。このパルスは例えば入力トルクに比例していてもよい。
【0126】
前述した問題の別の解決手段は、ギヤ比制御に対する目標設定値としてもはや総減速比igesが設定されるのではなく、直接バリエータのギヤ比が算出され、それが目標値として設定調整器に与えられる。すなわち、バリエータの目標ギヤ比の計算が変速機全体のギヤ比の特性曲線"Low−Ast"と"High-Ast"において区別される。しかしながら設定調整器52の作動モードは、実質的にはそのまま維持される。総減速比に対するバリエータのギヤ比の作用に応じて、例えばパワースプリット領域においてはさらに調整器パラメータの補正などの適応化が行われなければならない。このことは切替えモジュール60(図10)による制御のもとで可能である。
【0127】
問題12:
パワースプリット式変速機に用いられるバリエータの設計基準は、単独で用いられるCVT変速機の基準とは異なる。なぜならパワースプリット式変速機のバリエータは、トラクション動作状態においても、エンジンブレーキ動作状態においても、高いトルクで作動できるからである。
【0128】
それ故に、面構成を次のように選択することは有利となる。すなわち各円錐プーリー対の押圧面と調整面からなる面全体が同じ大きさであるように選択することである。このkとは幾何学的形態の理由から不可能である箇所は、有利には、例えば油圧駆動制御系の非対称構成によって、当該非対称な面構成を補償できる。それにより総体的に、ほぼ同じ大きさの軸方向最大圧力が2つの円錐プーリー対で得られる。
【0129】
問題13:
動力分岐機能(パワースプリット機能)を有するCVT変速機の場合、無段階の走行動作モードの他に、いわゆるティプトロニック動作によって予め選択される(変速段に類似した)固定のギヤ比を実現することも可能である。このティプトロニック動作モードにおけるギヤシフトでは、CVT変速機のギヤ比の連続的な設定調整という条件のために、マニュアルシフトに比べて自発性と有段性に乏しいものと感じ取られる。
【0130】
この問題を解決するために、パワースプリット式変速機においては、マニュアル操作モードのシフトが、制御クラッチK1、K2の操作によって支援され得る。
【0131】
例えばマニュアルモードで予め選択された変速段が動力分岐された領域(パワースプリット領域)にあり、その後に続いてマニュアルで選択された変速段が動力分岐されていない領域(非パワースプリット領域)にあるならば、これらの変速段の間のシフトは、次のことによって有段的にできる。すなわちクラッチが最初から切替え点において操作されるのではなく、切替え点以外で、クラッチの操作によって一方の特性曲線(Low-AstないしHigh-Ast)から他方の特性曲線へ直接ジャンプするように操作され、それによって変速機への所期のシフトショックが導入される。制御クラッチの切替えは、種々の手法でバリエータのギヤ比の設定調整と結びつけることができ、そのためシフトショックは、予め選択可能な振動を含み得ることを理解されたい。
【0132】
同じ特性曲線(Ast)上にある変速段のもとでも、有段的な感覚のシフトは、次のことによって達成できる。すなわち、そのつどの閉成されている制御クラッチを開き、その後でバリエータのギヤ比を迅速に所望のギア比に設定し、続いて制御クラッチを当該所望ギヤ比に迅速に接続されることによって達成できる。
【0133】
バリエータを含んだパワースプリット式変速機は、所定の制御クラッチの開放によってバリエータを出力軸から結合解除させることが可能である。この状態では動力伝達の停止が可能である。なぜなら円錐プーリー対が回転し続けたまま、静止状態調整が実施されるからである。このことは例えば図2による変速機のもとで、制御クラッチK1とK2が開放されている場合に可能である。
【0134】
有利には、各円錐プーリー対に回転数センサが設けられる。それにより制御クラッチK1、K2が開かれている場合でも、迅速な設定調整のもとで、バリエータの出力軸と入力軸の回転数に関する情報が得られる。この迅速調整ないし静止状態のもとでもギヤ比は、閉ループ制御ないし開ループ制御可能である。
【0135】
残りのドライブトレーンからのバリエータの結合解錠のために、バリエータの設定調整のための有効な慣性質量体は、大幅に軽減できる。そのため、設定調整に対しては比較的僅かな軸方向応力しか必要としない。このことは、バリエータのギヤ比変更が総減速比に対して僅かな作用しか持たない領域(例えば図3の"High-Ast"上のケースなど)において、設定調整の動特性の改善を可能にする。
【0136】
問題14:
バリエータを有するパワースプリット式変速機は、一般に4つの構造空間を必要とする。図29には、パワースプリット式変速機の有利な実施形態が示されている。
【0137】
図には示されていない内燃機関によって駆動される駆動軸80は、発進クラッチAKを介してバリエータ12の入力軸82に回転係合され得る。バリエータ12の出力軸84は、組込みギヤ装置として構成されたプラネタリギヤセット88の入力側サンギヤ86と噛合する。この入力側サンギヤ86は、第1のプラネタリギヤセット90のプラネタリギヤを介して第1のリングギヤ92と回転係合する。このリングギヤ92は同時に、対応するプラネタリギヤに対する第2のプラネタリキャリヤ92aを形成している。第2のプラネタリキャリヤ92aのプラネタリギヤは、一方では第2のサンギヤ94と噛合し、他方では第2のリングギヤ96と噛合する。この第2のリングギヤ96は、固定的にないしは剛性的に第1のプラネタリキャリヤ90と結合している。第1のリングギヤは、固定的に出力軸98と接続しており、この出力軸98は、図示の例ではディファレンシャルを介して車両の後輪に接続しており、さらに別のシャフトとディファレンシャルを介して車両前輪にも接続している。この図からは四輪駆動が理想的であることが理解できる。駆動軸80は、発進クラッチAK、バリエータ12及び第1のサンギヤを貫通して延在しており、さらに第2の制御クラッチK2の駆動ディスクに接続されている。この第2の制御クラッチK2は、第1のリングギヤ92と第2のプラネタリキャリヤ92a内に収容されており、それらの出力側は、第1のプラネタリキャリヤ90に接続している。第2のサンギヤ94の回転は、第1の制御クラッチK1を介して定められる。第1のプラネタリキャリヤ90並びにそれに剛性結合されている第2のリングギヤ96の回転は、さらなるクラッチKRを用いて定められる。このクラッチKRはリバース走行のために形成されている。
【0138】
第2の制御クラッチK2のプラネタリギヤセット88内の配置構成によって、コンパクトな構造形式が達成できる。この図からは変速機の数多くのバリエーションが可能であることが理解できる。例えば駆動軸80は、バリエータの入力軸に直接結合されていてもよいし、変速段がその他の配置構成で構成されていてもよい。
【0139】
図30には、図29による変速機の変化例が示されており、ここでは発進クラッチAKが省かれている。そのため駆動軸80は永続的に入力軸82と噛合する。発進に対しては、クラッチK1とKRが共通して用いられる。このようにして図29による発進クラッチAKは省略可能である。
【0140】
図31は、そのつどの回転数に対して一義的な解決を伴う、それぞれ2つの連結されたプラネタリギヤセットを備えたパワースプリット式変速機が4つのタイプで示されている。この場合、図31には示されていないバリエータのギヤ比領域は、図29及び30による変速機の場合に類似して二重に用いることが可能であり、その際には、変速機が、図31には示されていないクラッチの目的に応じた駆動制御によって、パワースプリット領域と非パワースプリット領域で駆動される。ここでAnは、動力分岐されていないモードと動力分岐されたモードに対する駆動軸を表わし、Anは、それぞれ符号Kで表わされたクラッチの閉成によって得られる動力分岐されたモードに対する駆動軸を表わしている。Abは、出力時を表わす。BとBは、後進ないし前進走行に対するブレーキである。2つのプラネタリギヤセットは、それぞれ円(ウォルフシンボル)とその中に象徴的に表わされた標準ギヤ比i,iで示されている。図から明らかなように、この4つのタイプは、プラネタリギヤセットへの駆動軸の結合と、プラネタリギヤセットへの出力軸の結合と、ブレーキの配置構成によってそれぞれ異なっている。図示のように結合されているプラネタリギヤセットは、図示されていないバリエータと共にパワースプリット式変速機に組込まれ、それらは有利には前述したような手法に従って開ループ制御ないし閉ループ制御され得る。図示のギヤ装置構造に対しては、開ループ制御ないし閉ループ制御に依存することなく権利を主張する。
【0141】
問題15:
特にその調整領域が逆方向に通過する、バリエータを含んだパワースプリット式変速機の場合、その設定調整(これは多くの場合油圧で行われる)が、所要の調整力のもとで、可及的に僅かなポンプ出力ないしは簡単な油圧システム構造で実施するための問題が避けられない。
【0142】
押圧/調整システムの目的は、それぞれギヤ比調整を行うことが望まれた場合に、バリエータに要求される円錐プーリー対の押圧力を形成することと、巻掛け手段をスリップさせないようにすることである。押圧力ないし押圧要求は、一方では、伝達されるトルクに依存する。それに対してはギヤ比変更のための調整力が求められる。
【0143】
トルクに依存した押圧力と設定に要する調整力を形成するのに以下に述べる形態が公知である。すなわち、
−押圧装置のための制御バルブ、これは各円錐プーリー対の調整チャンバに対して1つの圧力室しか含んでいない。この場合制御プログラムが実行され、2つの油圧式圧力制御バルブに応じて駆動制御される。そのようなシングルチャンバシステムの欠点は、ギヤ比変更の際に、大型の圧力チャンバが多くの油量で充たされなければならないことである。このことはロスの多い大容量のポンプを必要とすることを意味する
−トルクセンサ及びダブルチャンバシステム:
トルクに依存した所要押圧圧力は、押圧ユニットにおいて形成される。この場合は2つのプーリーセットの押圧チャンバが油圧的に相互に接続されている。この油圧系圧力は、相応のバルブを駆動制御しているトルクセンサに依存する。調整力は、設定調整ユニット内で相応の調整チャンバによって形成され、その圧力印加は、1つ又は2つの制御可能なバルブを介して行われる。この装置においては、比較的小型のポンプが利用可能である。欠点として挙げられることは、所要押圧圧力のギヤ比への依存性が比較的多大なコストをかけなければ表わすことができないことである
−ダブルチャンバ構成による自由な押圧
この場合トルクセンサが制御可能なプロポーションナルバルブに置換えられる。所要押圧圧力のトルク及びギヤ比への依存性は、制御の中に含まれる。前述した欠点は、回避され得る。いずれにせよ、押圧圧力に対して制御可能なバルブのコストがかかる。
【0144】
最後に挙げた、トルク依存性並びに付加的にギヤ比依存性の押圧圧力のためのプロポーショナルバルブを用いて、円錐プーリー対に割当てられた調整ユニットをそれぞれ固有のバルブによって駆動制御する方法では、つぎのような利点が得られる。すなわち3つのバルブを用いて2つの応力を制御するだけでよいので、自由度が増すことである。
【0145】
図32には、そのようなシステムの基本構造が示されている。:
図示されているのは、固定ディスク30aを調整ディスク30bを有する円錐プーリー対30である。この調整ディスクは、押圧チャンバ100の圧力と調整チャンバ102の圧力を印可される。
【0146】
図示の円錐プーリー対の押圧チャンバ100内の圧力、並びに図示されていない円錐プーリー対の押圧チャンバ100内の圧力は、バルブ104(有利にはプロポーショナルバルブ)を用いて制御される。押圧チャンバ102内の圧力は、バルブ106を用いて、そして図示されていない他方の円錐プーリー対の押圧チャンバ内の圧力は、バルブ108を用いて制御される。これらのバルブは、ポンプ110から圧力を供給される。これらのバルブ並びにポンプ110の制御のために、制御装置112が用いられており、この制御装置の入力側は、適切なセンサ類および/またはさらなる制御機器に接続されており、前記制御装置の出力側は、バルブ並びに場合によってはポンプ110を駆動制御する。前述したユニットの構造と機能自体は、公知であるので、ここでの説明は省く。制御装置112がバスシステムと接続可能であることも理解されたい。
【0147】
本発明によれば有利には、ポンプを可及的に少ない負荷で作動させ、ないしは少ない圧力で動作させるために、以下の手段が行われる。:
第1のステップでは、ディスクセットの押圧力がそれ自体公知の手法で算出される。このことは、メモリ内にファイルされた目標応力を求めることによって行われるか(この場合はそのつどの目標応力が伝達されたトルク、目下のギヤ比、所望の設定調整に依存して求められる)、若しくはセンサによって検出される応力実際値の形態で、あるいは2つの手段の組合わせによって行われてもよい。
【0148】
第2のステップでは、そのつどのプーリー対に作用する押圧力の大きさが求められる。
【0149】
第3のステップでは、比較的大きな応力Fの印加されるディスク対の、押圧チャンバと調整チャンバ内で必要とされる圧力pmおよびpvが、ほぼ圧力の均等を生じるように決定される。このステップでは、例えばpm=pv=F/(Am+Av)となるように算出される。この場合AmとAvは、比較的大きな応力Fの必要なディスクセット対における押圧及び調整チャンバの面である。
【0150】
第4のステップでは、小さな応力の印加される他のディスクセット対の押圧圧力pvが算出される。このステップでは、例えばpv=(F−pm×Am)Avが算出される。その場合pmは既に公知の押圧圧力であり、Av並びにAmは、比較的小さな応力の必要なディスクセットの押圧及び調整チャンバの面である。
【0151】
総体的に、所要の最大圧力が比較的僅かな圧力で得られることが達成され、それによって相応にポンプ110は、要求が少なく、エネルギ消費も少ない。
【0152】
パワースプリット式変速機に用いられるバリエータに対しては、次のような状況が生じ得る。すなわちバリエータが非常に僅かな圧力で作動できる状況である。なぜなら、それによって非常に僅かなトルクだけが伝達されるからである。にもかかわらず、変速機の他の構成要素(図32には図示されていない)、例えば発進クラッチや他の切替え要素に対しては高い油圧を必要とし得る。
【0153】
意識的に高めた圧力の別の適用は、次のことによって動機付けとなり得る。すなわち例えばオイルの噴霧化、オイル冷却を向上させることである。さらに有利には、例えば油圧管路ないしチャンバの"空転"を避けるために、僅かな最小圧力が維持される。このことは、これらのチャンバの駆動制御の再現性を高め、あるいは可動部材の潤滑を維持する。冷間時の変速機のもとでは、短時間だけ圧力引き上げによって効率を悪化させることはいたしかたない。なぜならそれによって変速機と場合によっては内燃機関も良好な動作温度まで迅速に引き上げることができるからである。
【0154】
これらの全てのケースにおいて必要なのは、油圧系の圧力が付加的に少なくとも当該他の構成要素の少なくとも所要圧力をカバーするような論理を実行することである。
【0155】
本発明によれば、最小圧力論理が次のことによって置換えられる。すなわち前述した第3のステップの後で、算出された押圧圧力を変調することによって置換えられる。この変調では、当該押圧圧力が所要の最小圧力に達するか若しくは前記第4ステップで生じた他のディスクセット用の調整圧力が最小圧力に達するまで、当該押圧圧力が高められる(この場合は同時に、比較的大きな押圧力の維持に要する調整圧力が相応に低減される)。
【0156】
前述した方法では、調整圧力をゼロまで低減しなければならない時には、過度な押圧も甘受される。
【0157】
前述した方法は、単独でソフトウエアによって置換えることも可能であり、それによれば著しい低コスト化が可能となる。
【0158】
前述した方法の実施に対しては、図33及び図34に基づいて以下で説明するカスケードバルブが非常に良好に適している。
【0159】
図33によれば、カスケードバルブはバルブエレメント120を有する。このバルブエレメント120は、円筒状のその内部輪郭しか表わされていないケーシング122内で動作している。このケーシングは符号124のもとで段付けられたシリンダ孔部126を有している。図の左側では、このシリンダ孔部は閉じられており、それによって、拡大された直径で構成されたシリンダ孔部126の断面内を案内されるバルブエレメント120のフランジ部128の左側でチャンバ130が仕切られている。このチャンバには予制御圧力が印加されている。このフランジ128と別のフランジ132の間では、当該バルブエレメントが小さめの直径で構成されており、それによって、第1の環状空間134が形成される。この第1の環状空間134は、図32によるバルブエレメントの位置では、左側に第1の導出路136を有し、この第1の導出路136は負荷に接続可能である。図32によれば第1の環状空間134は、その右側端部にオイルポンプに接続される第1の導入路138を有している。
【0160】
前記フランジ132の右側では当該バルブエレメントが、縮小された直径でさらなる別のフランジ140に続くシャフトを有しており、それによって第2の環状空間142が形成されている。
【0161】
図33に示されているバルブエレメントの位置では、この第2の環状空間142が、第2の同様に油圧ポンプに接続した導入路144と接続しており、導出路146は、次のように設けられている。すなわち、それがフランジ132の右側端部に形成されている制御エッジを用いて第2の環状空間142から分離されるように設けられている。
【0162】
フランジ140の右側では、ケーシングから還流路が出ている。フランジ128の領域内にも同じように還流路が設けられている。
【0163】
図33による位置は、カスケードバルブの圧力制限位置に相応しており、ここでは油圧ポンプから到来した全油圧媒体が、第1の環状空間134を通過して導出路136に供給される。この場合第1の環状空間134内で作用する圧力は、段付けられたシリンダ孔部126と、それに伴って異なる直径のフランジ128、132のために、チャンバ130内の予制御圧力に反作用する。第1の環状空間134内の圧力が過度に大きい場合には、バルブエレメント120が左方へ移動し、これによって、第1の環状空間134内への導入路がフランジ132の制御エッジによって益々閉じられ、第2の導出路146は益々開かれる。ポンプから到来する体積流量は、当該カスケードバルブにおいては、圧力制限機能によってバイアスをかけられ、予制御圧力によって定められる圧力が第1の導出路136の下流の負荷に対して設定される。
【0164】
負荷圧力とそれに伴って第1の環状空間134内の圧力がさらに上昇した場合には、当該バルブエレメント120が益々左方へスライドされ、図34による圧力低減位置が取られる。この圧力低減位置では、第1の環状空間134がフランジ132の左側の制御エッジによって第1の導入路から分離され、フランジ124の右側制御エッジを介して益々導出路148とつながる。右方の第1の環状空間142は、第2の導入路144を第2の導出路146に接続している。
【0165】
複数のカスケードバルブの直列接続によって、油圧のバイアスのための専用バルブを何も必要としない油圧制御を構成することが可能となる。その代わりに、最大動作圧力を必要とするカスケードバルブがそれ自身で生じる。前述のカスケードバルブは、圧力低減に機能し、後述のカスケードバルブは、低下する所要圧力でもって圧力制限に機能する。
【0166】
複数のカスケードバルブの直列接続のもとでは有利には、カスケードバルブがその重要度の順番で縦続接続される。このことは、最も重要な圧力を設定するバルブが当該直列接続の中で第1のバルブとして配置されることを意味する。そのような油圧回路の例は、図35に示されている。ここに示されているのは、バリエータの2つの円錐プーリー対の押圧チャンバ160と、各円錐プーリー対の調整チャンバ162、164の制御のための油圧系構成図である。油圧ポンプ166は、体積流量制限バルブVQP内で制限されて予制御圧力バルブ(図示せず)を通過して第1のカスケードバルブKV1の導入路へ供給される、体積流量を生成する。このカスケードバルブKV1の第1導出路は、押圧チャンバ160に接続している。第2の導出路は、第2のカスケードバルブKV2の導入路に接続されており、該第2のカスケードバルブKV2の第1の導出路は、調整チャンバ162に接続され、その第2の導出路は、第3のカスケードバルブKV3の導入路に接続されている。第3のカスケードバルブKV3の第1の導出路は、調整チャンバ164に接続され、第2の導出路は有利には、少なくとも1つの通流モードで作動するバリエータのユニット、例えば円錐プーリーの冷却用および/または遠心式オイルカウリング(Fliehoelhaube)の油圧媒体の給油用の開口部に接続される。これらのカスケードバルブの予制御圧力は、左側に示されている、図には示されていない電子制御装置によって駆動制御されたバルブを介して制御される。また図35に示されているように、それらのバルブを介して、個々のクラッチK1,K2,KA,KRを駆動制御するバルブも制御されている。
【0167】
図35による油圧系構成のもとでは、押圧チャンバ160内への圧力が最重要と見なされているので、このチャンバがカスケードバルブKV1に接続されている。
【0168】
前述したカスケードバルブのさらなる利点は、このバルブの圧力制限位置において、負荷から環流される油圧媒体がフィードバックされることである。それにより、この油圧媒体は、他の負荷にも供給できる。このことは、制御の体積流量バランスにプラスに作用し、比較的小型のポンプの使用を可能にする。
【0169】
前述してきた問題解決手段は、個々に単独で使用することもできるし、また有利には相互に組み合わせて使用することも可能である。図示された油圧系の適用範囲と該油圧系の制御方法の適用範囲は、パワースプリット式CVT変速機に限定されるものでもない。
【0170】
本願発明に伴って差し出される特許請求の範囲は、継続的な権利保護を獲得するための先例のない文言上の提案である。従って本願出願人はこれまでに明細書及び/又は図面に開示された特徴部分のみの請求は留保するものである。
【0171】
従属請求項に用いられる従属関係においては各従属請求項の特徴によって独立請求項の要件のさらなる展開が示唆される。しかしながらそれらは従属関係にある従属請求項の特徴の組合わせによる独立的な対象保護の獲得の放棄を意味するものではない。
【0172】
しかしながらこれらの従属請求項の対象も、先行する従属請求項の対象に依存しない構成を有する独立した発明である。
【0173】
本発明は、明細書に記載された実施例に限定されるものではない。それどころか本発明の枠内では多くの変更ないし修正が可能である。特にそのような変化例、変更要素の組み合わせにおいては、例えば明細書全般にわたる個々の実施形態の組み合わせや変更、並びに請求項に記載されたあるいは図面に含まれた特徴ないし要件又は方法ステップもそれぞれ特異的な発明を呈しており、これらの特徴の組み合わせによって製造方法、検査方法、作動方法にも関係する新たな要件や方法ステップないし方法ステップシーケンスが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
バリエータのギア比の設定調整のための設定調整器の入力信号を、ギヤ比領域間の移行の際に低減するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項2】
バリエータのプーリー対の押圧圧力の差分の、バリエータから伝達されるトルクに依存した予制御を、ギヤ比領域間の移行の際に、それ自体変化するトルクにのみ相応して変更させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
バリエータのギア比の設定調整のための設定調整器の整数成分を、ギヤ比領域間の移行の際に変更するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項4】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
−バリエータのギヤ比実際値とパワースプリット式変速機の総減速比実際値を、測定された回転数と制御クラッチの切替え状態から算出するステップと、
−バリエータの入力軸の回転数実際値nistを、総減速比と測定された車両ホイール回転数から算出するステップと、
−入力軸の回転数実際値nistの変化と入力軸の回転数目標値nsollの変化を算出するステップと、
−制御クラッチの切替えが目下のホイール回転数のもとで正確に行われるべき切替え回転数numを算出するステップと、
前記切替えに関して、算出された特性量に基づいて決定するステップとが含まれていることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記切替えは、切替え回転数numへの到達のやや前に行われ、さらなる切換は、遮断期間の経過後にのみ可能となる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
予め定められた条件の存在する場合に、変速機がトルクを何も伝達せず、かつバリエータのギヤ比が当該状態において迅速に調整されるようにクラッチを制御するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項7】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
制御クラッチが、ギア比領域間の切替えのために、パワースプリット式変速機のギア比が起動中のギヤ比領域に依存しないギヤ比外のバリエータギヤ比のもとで、次のように切替えられる、すなわちトラクション動作状態シフトの場合には加速力が発生し、および/またはエンジンブレーキ動作状態シフトの場合には減速力が発生するように切替えられることを特徴とする方法。
【請求項8】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
バリエータの巻掛け手段の摩耗が、ギヤ比領域の相互に接する領域において異なっており、変速機制御ストラテジが次のように設定される、すなわちバリエータによって伝達されるトルクが少なくとも高い場合に、ギヤ比領域の相互に接している領域内で、駆動軸の回転数に優先して巻掛け手段の摩耗が少ないギヤ比領域で運転がなされるように設定されることを特徴とする方法。
【請求項9】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
1つのギヤ比領域から他のギヤ比領域への切替えの後で、新たな切替えが、予め定められたヒステリシス領域の通過後にのみ行われるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項10】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
1つのギヤ比領域から他のギヤ比領域への切替えの後で、新たな切替えが、予め定められた持続時間の経過後にのみ行われるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項11】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
1つのギヤ比領域から他のギヤ比領域への切替えの後で、新たな切替えが、予め定められた車両操作部材の操作の後でのみ行われるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項12】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
ギヤ比領域間の切替えの間に、バリエータの摩擦プーリー対の過圧が生じるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項13】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能であり、
パワースプリット式変速機の第1のギヤ比領域内でバリエータのトルク伝達方向が有利には、第2のギヤ比領域内の場合とは逆になる形式の方法において、
ギヤ比領域間の切替えのもとで、閉成すべきクラッチが次のように閉成される、すなわち伝達可能なクラッチトルクが、変速機に印加されるトルクを短時間だけ僅かに越えるように閉成されることを特徴とする方法。
【請求項14】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能であり、
パワースプリット式変速機の第1のギヤ比領域内でバリエータのトルク伝達方向が有利には、第2のギヤ比領域内の場合とは逆になる形式の方法において、
アクセルペダルの位置に依存するエンジンの目標回転数が、低速の車両速度に相応する変速機のギヤ比領域内で、車両速度に依存した上限値に制限されるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項15】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
ギヤ比領域間の切替えのもとで、エンジン出力が、変速機の操作に要するユニットの様々な電力消費に応じて、切換の前、切換の最中、切換の後で変更するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項16】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
ギヤ比領域間の切替えの際に、エンジン出力が、切替え中に生じた回転可能な構成部材の種々の加速度に応じて変更されるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項17】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
ギヤ比領域間の切替えの際に、制御クラッチが、切替え中に生じた回転可能な構成部材の種々の加速度に応じて駆動制御されるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項18】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
ギヤ比領域間の切替えの際に、ギヤ比調整を制御する特性量にギア比調整をサポートする制御パルスが印加されるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記制御パルスは、調整グラジエントの増加と共に増加する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記制御パルスは、設定調整器のI成分が切替え前に有している値に依存する、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
前記制御パルスは、設定調整器のI成分に印加される、請求項18から20いずれか1項記載の方法。
【請求項22】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
ギヤ比間の切替え領域にてパワースプリット式変速機のギヤ比に対する目標設定値から直接、バリエータの目標ギヤ比を算出し、当該バリエータの設定調整器に目標設定値として供給するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項23】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
種々異なるギア比領域にあるギヤ比のマニュアルプリセレクトを伴う切替えを行い、その際に制御クラッチを、ギヤ比領域間に存在する切替え点の到達前に既に操作するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項24】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
ギヤ比のマニュアルプリセレクタを備えた切替えでそれぞれ閉成される制御クラッチのうちの一方を開き、バリエータを所望の新たなギヤ比に迅速に設定調整し、引き続き制御クラッチを再び閉成するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項25】
パワースプリット式自動変速機のギヤ比の閉ループ制御のための方法であって、
前記変速機は、エンジンによって駆動される駆動軸と、連続的に可変のギヤ比を有するバリエータと、ギヤセットと、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチを含んでおり、前記バリエータとギヤセットは、制御クラッチを用いて、パワースプリット式変速機の全ギヤ比領域の通過の際にバリエータの調整領域が、第1のギヤ比領域内では1つの方向にそして第2のギヤ比領域内では逆方向に通過するように相互接続可能である形式の方法において、
変速機の動力分岐モードにて、その入力側回転数のグラジエントを変更し、それによって変速機内部の回転質量対に対する加速力が僅かに変化するか若しくは出力側からの出力が均等に変化するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項26】
バリエータの円錐プーリー対の円錐プーリーの相互押圧圧力の開ループ制御のための方法であって、
各円錐プーリー対に、バリエータから伝達されるトルクに依存する押圧圧力が印加される押圧ユニットと、所望のギヤ比変更に依存する調整圧力が印可される調整ユニットが対応付けられている形式の方法において、
プーリー対に要する押圧力を確定するステップと、
より大きな押圧力Fmaxを確定するステップと、
押圧圧力pと調整圧力pを、この2つの圧力が押圧力Fmax到達時にほぼ同じ大きさとなるように算出するステップと、
算出された圧力pを用いて、より大きな押圧力が印可されるプーリー対の調整ユニットと押圧ユニットを駆動制御するステップと、
他方のプーリー対の調整ユニットの調整圧力pを確定するにあたって、その押圧ユニットに押圧圧力pを印加し調整ユニットに調整圧力pを印加した場合に所望の押圧圧力が達成されるように実施するステップと、
前記圧力pm及びpvを用いて他のプーリー対のユニットを駆動制御するステップとを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項27】
算出された押圧圧力pを高め、高められた押圧圧力が所定の最小圧力に達するか、若しくは高められた押圧圧力から算出される他方のプーリー対の調整圧力から所定の最小圧力が算出されるまで、より高い押圧力Fmaxの印可されるプーリー対の調整圧力を相応に低減する、請求項26記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2009−198008(P2009−198008A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105968(P2009−105968)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【分割の表示】特願2003−566445(P2003−566445)の分割
【原出願日】平成15年1月27日(2003.1.27)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】