説明

ヒドロキサム酸誘導体

本発明は、一般式(I)で表されるヒドロキサム酸化合物を提供する。式中、P、Z及びmは本明細書中と同じ意味を表す。また、本発明は、該化合物を用い、腫瘍性疾患及び免疫疾患を処置する方法を開示する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本国際出願は、2009年1月23日付け出願の米国仮出願第61/147002号、2009年2月28日付け出願の米国仮出願第61/156496号、2009年10月15日付け出願の米国仮出願第61/252156号及び2009年10月17日付け第61/252652号明細書の優先権を主張する。これらはすべて、あらゆる目的のために、ここに引用により援用される。
【0002】
本発明は、DNAアルキル化剤及び抗代謝剤のような伝統的な化学療法薬である新規ヒドロキサム酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0003】
体の一部における細胞増殖が制御できないために、癌は人間の命への最大の脅威の1つである。米国癌学会の最新統計によると、癌は、心臓病に次ぎ、死因の第2位となり、死亡者数は2007年だけで55万人を上回る。実際に米国居住者には、50%の男性及び33%の女性が一生にある癌を生み出すと見込んでいる。従って、癌は主要な公衆衛生上の負担となり、大きなコストをもたらす。過去数十年間、手術、化学療法及び放射線療法は多様な癌の処置に用いられる。通常、病気の種類と程度によって患者は組み合わせる処置法を受ける。しかし、手術治療が不可能な場合、癌患者に対して化学療法は最も重要な選択肢である。
【0004】
最初の癌治療薬、ナイトロジェンマスタード、白金系錯体のようなDNAアルキル化剤が知られている。通常、DNA付加体またはDNA鎖間架橋を形成させることにより、DNAアルキル化剤は細胞傷害活性を働かし、直接に細胞増殖サイクルを妨げる。第二次世界大戦における化学兵器研究から得られ、マスタードガスの一種であるメクロレタミンは、癌の化学治療に60年間以上用いられている。他の癌治療用の許可されたナイトロジェンマスタードとしては、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド、ベンダムスチン、エストラムスチン及びウラシルマスタードが挙げられる。新規ナイトロジェンマスタードは、例えば、TH−302及びPR−104、臨床試験を実施中である。また、その他の広く使われているDNAアルキル化剤は、白金系化合物である。具体例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、ロバプラチン及びヘプタプラチンが挙げられる。(非特許文献1)。
【0005】
例えば、1963年に始めて合成されたDNAアルキル化剤であるベンダムスチンは、アルキル化ナイトロジェンマスタードグループとプリン類似ベンゾイミダゾール基を含む(非特許文献2)。ベンダムスチンは、低悪性度リンパ腫(非特許文献3)、多発性骨髄腫(非特許文献4)および一部の固形腫瘍(非特許文献5)に対して実質活性を示している。また、ベンダムスチンは効率的にリンパ腫細胞のアポトーシスを誘導すると開示されている(非特許文献6)。2008年3月、慢性リンパ球性白血病(CLL)を処置するベンダムスチンの販売が米国FDAに認められた。さらに、2008年10月、低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)を処置するベンダムスチンの販売が米国FDAに認められた。NHLは、リツキシマブまたはリツキシマブを含むレジメンで、6ヶ月間以内の処置に起こされている。現在、ベンダムスチンは、白血病、リンパ腫、小細胞肺癌、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、卵巣癌、乳癌及び脳癌などの多様な癌に対する臨床試験の癌指示として使われている。
【0006】
シスプラチンもう癌治療用のDNAアルキル化剤として広く使用されている。Michele Peyroneがシスプラチンを初めて合成した125年後、Barnett Rosenbergが細菌増殖に対する電場の影響を検討してから4年間後、1969年にシスプラチンの癌抑制性質が始めて報告された。現在、シスプラチンは、最も成功する抗癌剤の1つとなり、約50%の腫瘍化学療法に用いられている。第一代のシスプラチンは広いスペクトル領域に抗癌活性を有しているが、強い毒性を有しているので、シスプラチンの臨床利用は抵抗性の存在のために制限されている。これらの問題を克服するために、数千の白金系化合物が合成され、厳選された。シスプラチンの2つアンミンはジアミノシクロヘキサン(DACH)で置換されることにより、良好な抗腫瘍活性及びシスプラチンとの交差耐性の不足を有している化合物が得られるが、水への溶解が悪いことから、臨床利用が制限されている。さらに、水への溶解性を改善させるために、シスプラチンの2つ塩素基が置換される化学修飾が行われることにより、オキサリプラチンが発見された(非特許文献7)。オキサリプラチンが広いスペクトル領域に抗癌活性を有し、よりよい安全性も有している。また、DACH−白金−DNA付加体の化学および立体の性質により、オキサリプラチンはシスプラチンまたはカルボプラチン(別の広く使用されている白金系化合物)との交差耐性の不足を示している。米国国立癌研究所における抗癌剤スクリーンパネルに指示中の臨床評価用の刺激を提供することにより、シスプラチンとカルボプラチンに比べ、結腸癌細胞系に対してオキサリプラチンがより高い活性を有していることが分かる。2002年、オキサリプラチンは世界中主要な癌死亡の死因である大腸癌の処置用の白金系抗癌剤の中で、始めて米国FDAに認められた。
【0007】
抗代謝剤は広く使用されている癌治療用の化学療法である。抗代謝剤は、DNAまたはRNAの生化学的合成経路における重要な天然代謝物と類似の構造を持つ物質であるが、生化学の合成経路の完成を阻害するように働く。具体的には、抗代謝剤は一般的に以下に示すように働く:(1)DNAまたはRNAの合成における鍵酵素の触媒または調節部位の代謝物と競争する;または(2)通常にDNAまたはRNAに組み入れる代謝物を置換することにより、複製できないDNAまたはRNAが得られる。主な種類の抗代謝剤は:(1)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の阻害剤である葉酸類似体と;(2)自然プリン(アデニンまたはグアニン)を模倣し、構造が異なることによりDNAまたはRNAの核プロセシングを競争的にまたは不可逆的に妨げるプリン類似体と;(3)自然ピリミジン(シトシン、チミン、ウラシル)を模倣し、構造が異なることによりDNAまたはRNAの核プロセシングを競争的にまたは不可逆的に妨げるピリミジン類似体とを含む。典型的な抗代謝剤は抗葉酸剤(例えば、アミノプテリン、メトトレキサート、ペメトレキセド及びラルチトレキセド)、プリン類似体(例えば、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン及びチオグアニン)及びピリミジン類似体(例えば、シタラビン、デシタビン、フルオロウラシル、カペシタビン、フロキシウリジン、ゲムシタビン、エノシタビン及びカペシタビンが挙げられる。抗代謝剤中の一部、例えば、メトトレキサート、フルオロウラシルおよびゲムシタビンは、近代的化学療法の柱石である。
【0008】
例えば、フルオロウラシル(5−FU)は抗代謝剤であり、約40年間癌の化学療法に用いられている。ピリミジン類似体として、細胞内に異なる細胞傷害代謝物に変換し、変換した細胞傷害代謝物がDNAまたはRNAに組み入れ、最後に細胞のDNA合成能力を妨げることで細胞周期休止とアポトーシスを誘導する。また、数多くの抗癌剤は、同様に、5―FUはメクレオチド合成機制を用い、全体のシステムに影響を与えるが、癌細胞のような快速分裂の細胞に与える影響が大きい。化学療法が実施された後の数十年間、5−FUの主な用途は大腸癌及び乳癌に用いられる。
【0009】
ゲムシタビンは他の広く使用されている抗代謝剤である。化学的に考えると、ゲムシタビンは、デオキシシチジンの2’位炭素原子上の水素原子がフッ素原子で置換されているヌクレオシド類似体である。フルオロウラシル及び他のピリミジン類似物と同様、ゲムシタビンはDNA複製中の核酸の構成要素の1つを置換することにより得られる。新規ヌクレオシドは「欠陥あり」ヌクレオシドに貼り付けないと同じように、このプロセスは腫瘍細胞の増殖を停止し、アポトーシスを引き起こす。ゲムシタビンは、小細胞肺癌、膵癌、膀胱癌及び乳癌などの多くの癌種に用いられる。
【0010】
よく知られている癌治療用のDNAアルキル化剤および抗代謝剤の一部を以下の表に示す。これらの伝統的な化学療法の薬は、癌治療に大きな貢献があるが、用量制限の毒性及び薬物抵抗性の問題のために、これらの薬物の応用は大きく制限される。従って、改善された抗癌活性を持つこれらの薬物の新規誘導体を開発する要請が高まっている。
【表1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Markus Galanski等、Current Medicinal Chemistry、2005年、第12巻、2075−2094頁
【非特許文献2】Barman Balfour JA等、Drugs、2001年、第61巻、631−640頁
【非特許文献3】Herold M等、Blood、1999年、第94巻、補遺1、262a頁
【非特許文献4】Poenisch W等、Blood、2000年、第96巻、補遺1、759a頁
【非特許文献5】Kollmannsberger C等、Anticancer Drugs、2000年、第11巻、535−539頁
【非特許文献6】Chow KU等、Haematologica、2001年、第86巻、485−493頁
【非特許文献7】Joanne Graham等、Nature Reviews−Drug Discovery、2004年、第3巻、11−12頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、DNAアルキル化剤及び抗代謝剤のような伝統的な化学療法薬である新規ヒドロキサム酸誘導体に関する。より詳しく言えば、本発明は、従来の化学療法の薬に比べ、特定のヒドロキサム酸誘導体は優れる抗腫瘍活性を持つという予想外の発見に基づくものである。従って、本発明の化合物は、腫瘍の処置に用いられ、免疫疾患の予防及び処置にも用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の一般式(I)で表されるヒドロキサム酸化合物に関する:
【化1】

式中、Zは単結合、C(R)、O、S、C(O)、N(R)、SO、OC(O)、C(O)O、OSO、S(O)O、 C(O)S、SC(O)、C(O)C(O)、C(O)N(R)、N(R)C(O)、S(O)N(R)、N(R)S(O)、OC(O)N(R)、N(R)C(O)O、N(R)C(O)SまたはN(R)C(O)N(R)であり、ここでR及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、
mは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16であり、Pは白金を含む官能基、
【化2】

であり、
及びXはそれぞれ独立してハロゲンまたはOSOであり、ここでRはアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、Qは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、カルボニル基、−C=NH、シアノ基、OR、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)SR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)SR、C(O)NR、SOR、SO、NRまたはN(R)C(O)Rで置換されていてもよいシクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基であり、ここでR、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基またはアルコキシ基であり、W及びWはCRまたはNであり、Rは水素原子、ハロゲン、アルキル基,アルケニル基またはアルキニル基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、−C=NH、OR、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)SR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)SR、C(O)NR、SOR、SO、NRまたはN(R)C(O)Rである。
【0014】
上記化合物のサブセットは、Zは単結合、CH、O、CO、NH、SO、OC(O)、C(O)O、C(O)S、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)NH、NHC(O)OまたはNHC(O)Sであり;mは5、6、7または8である。これらの化合物の中で、Pは
【化3】

であってもよい。
【0015】
式中、Lは環状アミン基であり、L及びLはそれぞれ独立してNHR1314であり、L、またはLおよびLは二座アミンを形成し、ここでR13およびR14はそれぞれ独立して水素原子であるか、またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、カルボニル基、−C=NH、シアノ基、OR、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)SR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)SR、C(O)NR、SOR、SO、NRまたはN(R)C(O)Rで置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基であり、R15はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、−C=NH、OR、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)SR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)SR、C(O)NR、SOR、SO、NRまたはN(R)C(O)Rであり、nは0、1、2または3であり、A、A、A、A、A及びAはそれぞれ独立してハロゲン、ヒドロキシル基、カルボン酸エステル基、アルコキシ基であるか、またはAおよびA、AおよびA、AおよびAは二座カルボン酸エステル基、アルコキシ基カルボン酸エステル基、ホスホノカルボン酸エステル基、ジホスホン酸エステル基、または硫酸エステル基を形成する。
【0016】
これらの化合物の中で、Pは
【化4】

であってもよく、Qはアリール基またはヘテロアリール基(例えば
【化5】

)、少なくとも1つのニトロ基で置換されたアリール基またはヘテロアリール基、(例えば
【化6】

)、またはリン含有ヘテロシクロアルキル基(例えば
【化7】

)である。あるいは、これらの化合物の中で、Pは
【化8】

であってもよく、ここでWはCHまたはNであり、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、C(O)R、C(O)OR、C(O)SR、ハロゲン、ヒドロキシル基またはシアノ基であり、WはCH、CFまたはNであり、R、R、R10、R11及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル基、シアノ基、OR、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)SR、C(O)R、C(O)OR、またはC(O)SRである。
【0017】
上記化合物は、妥当な場合、化合物それ自体、ならびにそれらの塩、溶媒和物及びプロドラッグが含められる。塩は、例えば、本発明のヒドロキサム酸化合物上でアニオンと正電荷官能基(例えば、アミノ)との間に形成することができる。好ましいアニオンには、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、スルファミン酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、グルタミン酸イオン、グルクロン酸イオン、グルタル酸イオン、リンゴ酸イオン、マレイン酸イオン、コハク酸イオン、フマル酸イオン、酒石酸イオン、トシル酸イオン、サリチル酸イオン、乳酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン及び酢酸イオンが挙げられる。同様に、塩はまた、本発明のヒドロキサム酸化合物上でカチオンと負電荷官能基(例えば、カルボキシレート)との間に形成することができる。好ましいカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオンのようなアンモニウムイオンイオンが挙げられる。本発明のヒドロキサム酸化合物は第四級窒素原子含有塩類を含む。プロドラッグの具体例は、エステル及び他の薬学的に許容される誘導体を含む。対象へ投与することにより、上記ヒドロキサム酸化合物を提供することができる。本発明の化合物は1つまたは複数の不斉炭素原子を含んでもよい。すなわち、該化合物は、ジアステレオマー、エナンチオマーまたはこれらの混合物として生じ得る。不斉炭素原子は、RまたはS構造でもよく、すべての構造は本発明の範囲に包含される。
【0018】
また、本発明の範囲に1つまたは複数の上記ヒドロキサム酸化合物を含む組成物が包含される。これらの組成物は、腫瘍または免疫異常症の処置及び治療、ならびに異常症を処置する薬物の製造に使用されている。
【0019】
本発明には、すべての薬学的に許容される上記ヒドロキサム酸化合物の塩が含まれる。未修飾化合物に比べて、すべての修飾ヒドロキサム酸化合物は、薬物の溶解性、安定性、及び/または生体利用率が改善される(例えば、向上する、高められる)。
【0020】
また、本発明は、1つまたは複数の上記ヒドロキサム酸化合物、組成物、及び/または塩及び修飾化合物を有効な量で対象へ投与する段階を含む腫瘍異常症(例えば、癌、骨髄異形成症候群または骨髄増殖性症候群)を処置する方法に関する。
【0021】
さらに、本発明は、1つまたは複数の上記ヒドロキサム酸化合物、組成物、及び/または塩及び修飾化合物を有効な量で対象へ投与する段階を含む腫瘍性疾患または免疫疾患を処置する方法に関する。
【0022】
本発明の詳細な説明は以下の記載に示す。他の特徴、対象、及び本発明の効果は説明及び請求項から自明である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特に限定されるものではないが、本発明の代表的な化合物を以下の表に示す。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0024】
本発明の化合物は、市販の出発物質または試薬を用い、標準的な有機合成技術で製造することができる。該化合物の特定の置換基によって、本発明の化合物の製造における合成ステップを決めることは望ましく、有機合成中の多様な保護または脱保護ステップが利用されてもよい。
【0025】
例としては、以下に示すスキーム1に従い、Pは
【化9】

である一般式(I)で表される化合物は調製される。L、A、A、mおよびZは前記と同じ意味を表す。
【化10】

【0026】
環状アミドL(1)は適切なエステルと結合することで中間体(2)が得られる。その後、中間体(2)はNHOHの存在下ヒドロキシルアミン化反応させることにより、ヒドロキサム酸リガンド(3)を生成する。リガンド(3)は、NMPまたはDMFのような非プロトン性溶媒の存在下KPtClと反応し、中間体(4)が得られる。中間体(4)は水酸化アンモニウム溶液の存在下中間体(5)に変換させる。最後、中間体(5)は、ジカルボン酸塩のような適切な銀塩と反応することにより目的物(6)が得られる。
【0027】
以下に示すスキーム2に従い、Pは
【化11】

である一般式(I)で表される類似化合物は調製される。R15、n、A、A、mおよびZは前記と同じ意味を表す。
【化12】

【0028】
環状アミドL(1)は適切なエステルと結合することで中間体(2)が得られる。その後、中間体(2)はNHOHの存在下ヒドロキシルアミン化反応させるにより、ヒドロキサム酸リガンド(3)を生成する。リガンド(3)は、NMPまたはDMFのような非プロトン性溶媒の存在下KPtClと反応し、中間体(4)が得られる。中間体(4)は水酸化アンモニウム溶液の存在下中間体(5)に変換させる。最後に、中間体(5)は、ジカルボン酸塩のような適切な銀塩と反応することにより目的物(6)が得られる。
【0029】
以下に示すスキーム3に従い、Pは
【化13】

である一般式(I)で表される化合物は調製される。A、A、mおよびZは前記と同じ意味を表す。
【化14】

【0030】
出発物質(1)はNHOHの存在下ヒドロキシルアミン化反応させることにより、中間体(2)が得られる。中間体(2)はKPtCl及びKIと反応し、中間体(3)を生成する。得られる中間体(3)は過塩素酸と反応し、オリゴマー(4)が得られる。オリゴマー(4)はNHOHと反応し、中間体(5)を生成する。中間体(5)は、ジカルボン酸塩のような適切な銀塩と反応することにより目的物(6)が得られる。
【0031】
以下に示すスキーム4に従い、Pは
【化15】

である一般式(I)で表される化合物は調製される。A、A、mおよびZは前記と同じ意味を表す。
【化16】

【0032】
PtClは、トランス−L−4−シクロヘキセン−1,2−ジアミンの存在下KIと反応し、試薬(1)は製造できる。ここで、先行技術文献(J. Mem. Chem. 1987, vol.30, 1327−1336)に開示されている製造方法に参照し、トランス−L−4−シクロヘキセン−1,2−ジアミンは製造できる。出発物質(1)はジカルボン酸塩のような適切な銀塩と反応し、中間体(2)が得られる。同様に、NHOHの存在下ハロゲンで置換されるエステルはヒドロキシルアミン化反応させることにより試薬(4)が得られる。中間体(2)は中間体(4)と反応し、目的物(5)が得られる。
【0033】
以下に示すスキーム5に従い、Pは
【化17】

である一般式(I)で表される化合物は調製される。L、L、mおよびZは前記と同じ意味を表す。
【化18】

【0034】
具体的には、ハロゲンで置換されるカルボン酸である出発物質(1)は、マロン酸ジエチルと反応し、カルボン酸の中間体を生成する。続いて、中間体(2)は中間体(3)に変換させる。中間体(3)は加水分解させることにより中間体(4)が得られる。得られた中間体(4)は銀塩(5)に変換させ、得られた銀塩(5)は適切なPt(II)錯体と反応することにより、目的物(7)が得られる。Pt(II)錯体は、適切なアミンLとLを用い、KPtClとKIの反応により得られる。
【0035】
以下に示すスキーム6に従い、Pは
【化19】

(ここで、Qはアリール基またはヘテロアリール基であり、例えば
【化20】

)である一般式(I)で表される化合物は調製される。X、X、Zとmは前記と同じ意味を表す。
【化21】

【0036】
出発物質(1)は、ニトロ置換の5〜10員の環であり、適切なカルボン酸と反応することにより中間体(2)が得られる。中間体(2)はH、Pd/Cのような還元剤の存在下で還元され、中間体(3)を生成する。得られた中間体(3)は簡単に中間体(4)に変換でき、その後、高収率で標準的な有機合成技術を用い、中間体(5)が得られる。中間体(5)はNHOHの存在下ヒドロキシルアミン化反応を発生させ、目的物(6)が得られる。
【0037】
以下に示すスキーム7に従い、Pは
【化22】

(ここで、Qは少なくとも1つのアミノ基で置換されるアリール基またはヘテロアリール基であり、例えば
【化23】

)である一般式(I)で表される化合物は調製される。X、X、Zとmは前記と同じ意味を表す。
【化24】

【0038】
出発物質(1)は、Li−X(例えば、XはBrである)と1−(2−ヒドロキシエチル)エチレンイミンと反応することにより、中間体(2)を生成する。その後、中間体(2)は中間体(3)に変換させる(例えば、Xは−OSOCHである)。次に、中間体(3)は加水分解させ、適切なカルボン酸(4)が得られる。得られたカルボン酸(4)は(COCl)と反応し、中間体(5)はエステルと結合させ、中間体(6)を生成する。中間体(6)は、ヒドロキシルアミン化反応させることにより中間体(7)が得られる。
【0039】
以下に示すスキーム8に従い、Pは
【化25】

(ここで、Qはリン含有ヘテロシクロアルキル基であり、例えば
【化26】

)である一般式(I)で表される化合物が調製される。X、X、Zとmは前記と同じ意味を表す。
【化27】

【0040】
出発物質(1)はハロゲン化X−Z−(CHCOOCHと反応することにより、中間体(2)が得られる。ここで、ZはCH、C(O)、C(O)O、C(O)SまたはSOである。中間体(2)は加水分解されることにより中間体(3)カルボン酸を生成する。その後、中間体(3)は目的物(4)に変換させる。
【0041】
他の例としては、以下に示すスキーム9に従い、Pは
【化28】

である一般式(I)で表される化合物は調製される。Zとmは前記と同じ意味を表す。
【化29】

【0042】
出発物質(1)はハロゲン化X−Z−(CHCOOCHと反応することにより中間体(2)が得られる。ここで、ZはCH、C(O)、C(O)O、C(O)SまたはSOである。中間体(2)はNHOHの存在下ヒドロキシルアミン化反応させることにより目的物を生成する。
【0043】
以下に示すスキーム10に従い、Pは
【化30】

である一般式(I)で表される化合物は調製される。Zとmは前記と同じ意味を表す。
【化31】

【0044】
出発物質(1)のNH基はシランと反応させることにより保護され、得られた中間体(2)は適切なエステルと結合させ、中間体(3)を生成する。中間体(3)はNHOHの存在下ヒドロキシルアミン化反応させ、中間体(4)が得られる。NH基はHClの存在下、脱保護反応させることにより中間体(5)を生成する、その後、中間体(5)は目的物(6)に変換させる。
【0045】
以下に示すスキーム11に従い、Pは
【化32】

である一般式(I)で表される化合物は調製される。Z及びmは前記と同じ意味を表す。
【化33】

【0046】
出発物質(1)は、適切なエステルと反応させることにより中間体(2)が得られる。その後、中間体(2)はNHOHの存在下ヒドロキシアミン化反応させることにより目的物(3)が得られる。
【0047】
以下に示すスキーム12に従い、Pは
【化34】

である一般式(I)で表される化合物は調製される。W、R、R、R、R、Z及びmは前記と同じ意味を表す。
【化35】

【0048】
本発明の出発物質(1)は市販の薬として使われている。例えば、ゲムシタビン、デシタビン、アザシチジン(アザ−C)、TAS−106、シタラビン、エノシタビンまたはカペシタビンが挙げられる。出発物質(1)は、適切なハロゲン化X−Z−(CHCOOCH(2)と結合させることにより中間体(3)が得られる。ここで、ZはCO、C(O)NH、C(O)S、SO或はCH(3)である。中間体(3)は加水分解され、カルボン酸中間体(4)を得る。その後、中性pH条件で中間体(4)はヒドロキサム酸に変換させる。
【0049】
以下に示すスキーム13に従い、Pは
【化36】

である一般式(I)で表される化合物は調製される。W、R、R、R10、R11、R12、Z及びmは前記と同じ意味を表す。
【化37】

【0050】
本発明の出発物質(1)は市販の薬として使われている。例えば、ゲムシタビン、デシタビン、アザシチジン(アザ−C)、TAS−106、シタラビン、エノシタビンまたはカペシタビンが挙げられる。出発物質(1)は、適切なエステルと結合させることにより中間体(3)が得られる。ここで、ZはC(O)、C(O)OまたはC(O)Sである。得られた中間体(3)は加水分解され、カルボン酸中間体(4)を得る。その後、中性pH条件で、中間体(4)はヒドロキサム酸に変換させる。
【0051】
具体的には、以下に示すスキーム14に従い、Pは
【化38】

(ここで、WはCFであり、R、R10及びR12は水素原子である)である一般式(I)で表される化合物は調製される。R、R11、Z及びmは前記と同じ意味を表す。
【化39】

【0052】
出発物質(i)は適切なエステル(ii)と結合させ、中間体(iii)が得られる。ここで、ZはO、C(O)S、C(O)O、C(O)NH、SOまたはCHである。その後、中間体(iv)は加水分解されることによりカルボン酸中間体(v)を生成する。中間体(v)は、中性pH条件で、続いてワンステップでヒドロキサム酸に変換させる。
【0053】
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉炭素原子を含んでもよい。従って、これらの化合物は、ジアステレオマー、エナンチオマーまたはこれらの混合物として生じ得る。これらの化合物の合成は、ラセミ体、ジアステレオマーまたはエナンチオマーを出発物質または中間体として使用されてもよい。ジアステレオマー化合物の分離は、クロマトグラフィーまたは結晶化の方法が利用可能である。同様に、エナンチオマー混合物は、同様の技術またはその他の公知の技術を利用する可能である。不斉炭素原子は、RまたはS構造でもよく、すべての構造は本発明の範囲に包含される。さらに、本発明は哺乳動物の腫瘍異常症の処置に対し、一般式(I)で表される化合物、または薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、プロドラッグ、活性代謝物、対応のエナンチオマー、対応のラセミ体または対応のジアステレオマーを薬学的に有効な量で含む薬物組成物に関する。
【0054】
前記腫瘍性疾患は、肺癌、頭頸部癌、中枢神経系腫瘍、前立腺癌、精巣癌、大腸癌、膵臓癌、肝癌、胃癌、胆道癌、食道癌、消化管間質腫瘍、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、子宮癌、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、膀胱癌、腎癌、肉腫、中皮腫、胸腺腫、骨髄異形成症候群及び骨髄増殖性疾患からなる群から選択されることが好ましい。
【0055】
免疫抑制が化学療法薬の主な副作用の1つであることはよく知られている。低用量の場合、化学療法薬は、多発性硬化症、リウマチ性関節炎及び移植拒絶反応の抑制のような免疫疾患の処置に用いられる。最近、よく知られている化学療法薬であるメトトレキサートは、強直性脊椎炎、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、リウマチ性関節炎及び皮膚硬化症を含む自己免疫疾患の処置に用いられる。もう1つのよく知られている化学療法薬であるミトキサントロンは、多発性硬化症の処置、特に二次性進行型多発性硬化症の処置に用いられる。3番目の例としては、DNAアルキル化剤であるシクロホスファミドは、全身性エリテマトーデス(SLE)、微小変化群、重度のリウマチ性関節炎、ウェゲナー肉芽種症(商品名シトキサン)、及び多発性硬化症(商品名Revimmune)のような多様な非腫瘍性の自己免疫疾患に用いられる。従って、一般式(I)で表される化合物は、免疫疾患の処置に用いられることは想像できる。さらに、本発明は哺乳動物の腫瘍異常症の処置に対し、一般式(I)で表される化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、プロドラッグ、活性代謝物、対応のエナンチオマー、対応のラセミ体または対応のジアステレオマーを薬学的に有効な量で含む薬物組成物に関する。免疫疾患は、臓器及び組織移植の拒絶反応、移植片対宿主反応疾患、非自己免疫炎症性疾患及び自己免疫疾患よりなる群から選択されることが好ましい。ここで、自己免疫疾患は、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、水疱性類天疱瘡、セリアック病、シャガス病、慢性閉塞性肺疾患、チャーグストラウス症候群、皮膚筋炎、クローン病、1型糖尿病、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、ギランバレー症候群、橋本病、汗腺膿瘍、特発性血小板減少性紫斑病、間質性膀胱炎、紅斑性狼瘡、斑状強皮症、多発性硬化症、重症筋無力症、ナルコレプシー、神経性筋緊張病、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、リウマチ性関節炎、統合失調症、強皮症、側頭動脈炎、血管炎、白斑およびウェゲナー肉芽腫症よりなる群から選択される。
【0056】
定義:
本明細書において、アルキル基、アルコキシル基、炭素環基及びヘテロシクロ基は以下で定義される様に理解される。「アシル基」という用語は、−C(O)−Rで表される置換基を有するカルボニル基を意味する。ここで、Rは水素原子、アルキル基、炭素環基、ヘテロシクロ基、置換炭素環基を有するアルキル基または置換ヘテロシクロ基を有するアルキル基である。アシル基の例としては、アルカノイル基(例えば、アセチル基)、アロイル基(例えば、ベンゾイル基)およびヘテロアロイル基が挙げられる。
【0057】
「脂肪族基」という用語は、炭素原子からなる直鎖状または分岐状の官能基であり、飽和炭素基であってもよく、1つまたは複数の二重結合または三重結合を含む不飽和基であってもよい。
「アルキル基」という用語は、炭素数1〜20(例えば、C〜C10)の直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味する。アルキル基の具体例としては、これに限定されるものではないが、メチル基、メチレン基、エチル基、エチレン基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基及びt−ブチル基が挙げられる。「アルケニル基」という用語は、1つまたは複数の二重結合を含み、炭素数2〜20(例えば、C〜C20)の直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味する。アルケニル基の具体例としては、これに限定されるものではないが、エテニル基、プロペニル基及びアリル基が挙げられる。「アルキニル基」という用語は、1つまたは複数の三重結合を含み、炭素数2〜20(例えば、C〜C20)の直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味する。アルキニル基の具体例としては、これに限定されるものではないが、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基と2−ブチニル基、及び1−メチル−2−ブチニル基が挙げられる。「アルキルアミノ基」という用語は、−N(R)−アルキルで表される。ここで、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基である。「アルコキシ基」という用語は、アルキル基置換酸素原子官能基である。「アルコキシカルボニル基」という用語は、置換アルコキシ基を有するカルボニル基を意味する。「オキソアルキル基」という用語は、置換カルボニル基を有するアルキル基を意味する。カルボニル基はアルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、酸基または酸クロリド基であってもよい。
【0058】
「シクロアルキル基」という用語は、炭素数3〜30(例えば、C〜C12)の飽和環状炭化水素基を意味する。シクロアルキル基の具体例としては、これに限定されるものではないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。「シクロアルケニル基」という用語は、1つまたは複数の二重結合を含み、炭素数3〜30(例えば、C〜C12)の非芳香族炭化水素基を意味する。具体例としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基及びシクロヘプテニル基が挙げられる。「ヘテロシクロアルキル基」という用語は、1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、O、N、S、PまたはSe)を含み、非芳香族の5〜8員の一環、8〜12員の二環または11〜14の三環基を意味する。ヘテロシクロアルキル基の具体例は、これに限定されるものではないが、ピペラジニル基、ピロリジニル基、ジオキサニル基、モルホリニル基及びテトラヒドロフラニル基が挙げられる。「ヘテロシクロアルケニル基」という用語は、1つ又は複数のヘテロ原子(例えば、O、N、S、PまたはSe)と1つ又は複数の二重結合を含み、非芳香族の5〜8員の一環、8〜12員の二環または11〜14の三環基を意味する。
【0059】
「アリール基」という用語は、炭素数6の一環、炭素数10の二環、炭素数14の三環を意味する。アリール基の具体例としては、これに限定されるものではないが、フェニル基、ナフチル基及びアントラセニル基が挙げられる。「ヘテロアリール基」は、1つまた複数のヘテロ原子(例えば、O、N、S、PまたはSe)を含み、芳香族の5〜8員の一環、8〜12員の二環または11〜14の三環を意味する。ヘテロアリール基の具体例としては、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリミジニル基、チエニル基、キノリニル基、インドリル基及びチアゾリル基が挙げられる。
【0060】
上記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アルキルアミノ基、アリール基及びヘテロアリール基は置換されてもよく、置換されなくてもよい。アルキルアミノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基およびヘテロアリール基において、これに限定されるものではないが、C〜C10アルキル基、C〜C10アルケニル基、C〜C10アルキニル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20シクロアルケニル基、C〜C20ヘテロシクロアルキル基、C〜C20ヘテロシクロアルケニル基、C〜C10アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ基、アミノ基、C〜C10アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、オキソ基(O=)、チオキソ基(S=)、チオ基、シリル基、C〜C10アルキルチオ基、アリールチオ基、C〜C10アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシルアミノ基、アミノアシル基、アミノチオアシル基、アミジノ基、メルカプト基、アミド基、チオウレイド基、チオシアナト基、スルホンアミド基、グアニジン基、ウレイド基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、チオアシル基、アシルオキシ基、カルバミド基、カルバミル基、カルボキシル基およびカルボン酸エステル基で置換される可能である。他方、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基において、C〜C10アルキル基以外の上記のすべての置換基で置換可能である。シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基およびヘテロアリール基は共に縮合することができる。
【0061】
「アミノ基」という用語は、水素原子または窒素に結合されるα位の炭素原子を持つ2つの置換基を有する窒素部分を意味する。特に指示しない限り、本発明のアミノ基を持つ化合物は、保護された誘導体を含んでもよい。アミノ基の適切な保護官能基は、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0062】
「生体利用率」という用語は、投与された薬または薬物組成物が、全身循環血に到達する割合である。一般的に、薬物は静脈注射で投与される場合、生体利用率は100%である。しかし、他の手段(例えば、経口)薬を投与することで、生体利用率は(例えば、不完全な吸収と初回通過代謝のために)低減される。生体利用率を向上させるために、プロドラッグ、塩合成、粒径低減、複合、物理状態の変更、固体分散、スプレー乾燥及びホットメルト押出などの方法が利用されている。
【0063】
「二座配位子」という用語は、二配位サイトを持ち、白金のような金属原子に同時に結合することができるリガンドを意味する。典型的な二座配位子は、二座アミン、二座カルボン酸塩、二座チオカルボン酸塩、二座ジホスフイン、二座メルカプトピリミジン及び二座ジチオカルボキシレートが挙げられる。
【0064】
「環状アミン」という用語は、1つ炭素原子が窒素原子で置換された炭化水素環を意味する。環状アミンは、1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、O、N、S、PまたはSe)を含んでもよい。環状アミンは、非飽和、一部または全部飽和であってもよい。また、環状アミンは二環、三環または多環であってもよい。環状アミンは置換されてもよく、置換されなくてもよい。環状アミンの具体例としては、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、チオトリアゾール、インドール、1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン、イソキノリンなどが挙げられる。
【0065】
「芳香族」という用語は、原子で構成される不飽和環系を意味する。ここで、環の全ての原子はsp2混成であり、π電子の総数は4n+2である。芳香族環は、炭素原子のみで構成されてもよく、または炭素原子及び非炭素原子を含んでもよい。(ヘテロアリール基への参照により援用される)。
【0066】
「カルバモイル基」という用語は、−OC(O)NRを意味する。ここで、R及びRは、それぞれ独立して水素原子または窒素原子に対してα位の炭素原子を表す置換基である。カルバモイル基は保護される誘導体を含んでもよい。カルバモイル基の適切な保護基の具体例としては、アセチル基、t−ブトキシカルボニル基及びベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。誘導体は保護されていなくてもよく、保護されていてもよく、いずれも本発明の範囲に包含される。
【0067】
「カルボニル基」という用語は、−C(O)−基を意味する。カルボニル基は、多様な置換基で置換されることにより、酸基、酸ハロゲン基、アミド基及びケトン基に変換されてもよい。
【0068】
「カルボキシル基」という用語は、−C(O)O−基を意味する。本発明の化合物は、保護される誘導体を含んでもよいカルボキシル基を含む。すなわち、酸素原子は保護基で置換される。カルボキシル基の適切な保護基は、ベンジル基、t−ブチル基などを含む。
【0069】
「シアノ基」という用語は、−CN基を意味する。
【0070】
「ホルミル基」という用語は、−CH=O基を意味する。
【0071】
「ホルムイミノ基」という用語は、−HC=NH基を意味する。
【0072】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0073】
本発明において用語の定義としては、「ハロゲンで置換されるアルキル基」は、孤立基またはより大きいな基の一部であり、1つまたは複数の「ハロゲン」で置換される「アルキル基」を意味する。ハロゲンで置換されるアルキル基としては、ハロアルキル基、ジハロアルキル基、トリハロアルキル基、パーハロアルキル基などが挙げられる。
【0074】
「ヒドロキシ基」という用語は、−OH基を意味する。
【0075】
「イミン誘導体」という用語は、−C(NR)−を含有する誘導体を意味する。ここで、Rは、水素原子または窒素原子に対してα位の炭素原子である。
【0076】
「異性体」という用語は、同じ分子式を持つが、原子の結合の順番または性質、または空間中の原子構造が異なる化合物を意味する。空間中の原子構造が異なる異性体は「立体異性体」という。お互いに鏡像異性体でない立体異性体は、「ジアステレオマー」という。また、お互いに重ならない鏡像異性体は、「エナンチオマー」または「光学異性体」という。四つの異なる置換基に接続される1つの炭素原子は、「不斉中心」という。1つの不斉中心を含有する化合物は2つ反対キラリティーの2つエナンチオマー型を有する。2つエナンチオマー型の混合物は、「ラセミ混合物」という。
【0077】
「ニトロ基」という用語は、−NO−基を意味する。
【0078】
「保護された誘導体」という用語は、活性サイトが保護基によりブロックされる阻害剤の誘導体を意味する。保護された誘導体は、阻害剤の製造に有用であり、または自らが阻害剤となり得る。適切な保護基の完全なリストはT. W. Greene、有機合成グループの保護、第3版、John Wiley & Sons、1999に記載されている。
【0079】
「置換または非置換」という用語は、既知の官能基が利用可能な結合価(非置換)により水素原子置換基のみを含んでもよく、またはさらに、既知の官能基に特定されなく、利用可能な結合価(置換)により1つまたは複数の非水素原子置換基を含んでもよい。
【0080】
「スルフィド基」という用語は、−S−Rを意味する。ここで、Rは水素原子、アルキル基、炭素環基、ヘテロ環基、炭素シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基である。具体的なスルフィド基は、メルカプト基、アルキルスルフィド基(例えば、メチルスルフィド(−S−Me))、アリールスルフィド基(例えば、フェニルスルフィド基)、アラルキルスルフィド基(例えば、ベンジルスルフィド基)が挙げられる。
【0081】
「スルフィニル基」という用語は、−S(O)−を意味する。スルフィニル基は、さらに多様な置換基で置換されてもよく、この置換によりスルフィン酸基、スルフィンアミド基、スルフィニルエステル基及びスルホキシドが挙げられるスルフィニル基が形成される。
【0082】
「スルホニル基」という用語は、−S(O)(O)−を意味する。スルホニル基は、さらに多様な置換基で置換されてもよく、この置換によりスルホン酸基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基およびスルホン基が挙げられるスルホニル基が形成される。
【0083】
「チオカルボニル基」という用語は、−C(S)−を意味する。チオカルボニル基は、さらに多様な置換基で置換されてもよく、この置換によりチオ酸基、チオアミド基、チオエステル基及びチオケトン基が挙げられるスルホニル基が形成される。
【0084】
「動物」という用語は、ヒト、ヒト以外の哺乳動物(例えば、犬、猫、ウサギ、牛、馬、羊、山羊、豚、鹿など)及び非哺乳類(鳥など)を意味する。
【0085】
「疾患」という用語は、具体的に動物のいずれかの不健康な状態、または動物が医学治療または獣医治療により起こされる不健康な状態(例えば、「副作用」)を意味する。
【0086】
「DNAアルキル化剤」は、細胞中DNA付加体またはDNA鎖間架橋を形成させることができる。DNAアルキル化剤の具体例としては、(1)、シクロホスファミド、メクロレタミン、ウラシルマスタード、メルファラン、クロラムブシル及びイホスファミドのようなナイトロジェンマスタード;及び(2)シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチンのような白金系の化学療法薬が挙げられる。白金系の化学療法薬は、よくアルキル化剤として設計されるが、アルキル基を含まずにアルキル化反応を実施できない。従って、白金系の化学療法薬はアルキル化類似体として分類される。
【0087】
「薬学的に許容される」という用語は、安全的に、無毒、非生物的にも他の点でも望ましくないものではない薬学的な組成物の製造に有用であるということを意味し、さらに、獣医科的に及びヒトに対して薬学的に許容されるということを包含する。
【0088】
「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容され、望ましい薬学的な活性を有する本発明の化合物の塩を意味する。薬学的に許容される塩は、無機酸および/または有機酸で形成される酸付加塩を含む。また、薬学的に許容される塩は、酸性プロトンと無機塩基および/または有機塩基は反応することで生成される可能な塩基付加塩を含む。
【0089】
「プロドラッグ」という用語は、本発明に従い、in vivoの代謝変換で阻害剤に変換される化合物を意味する。例えば、ヒドロキシル基を有する阻害剤の投与は、エステルとして投与され、in vivoで加水分解によりヒドロキシル化合物に変換されてもよい。
【0090】
「安定性」という用語は、薬物の効能を失わずに、性質を維持できる期間を意味する。保存期間ということもある。薬物の安定性の影響因子は、薬物の化学構造、不純物、pH、水分含量、温度、酸化、光、相対湿度及び他の環境因子を含む。適切な化学物質及び/または結晶修飾(例えば、表面修飾は水和動力学を変えることができ、異なる結晶が異なる性質を持つ)、添加物(例えば、製剤中活性成分以外の物)、包装条件、保管条件などにより、薬物の安定性を改善することができる。
【0091】
本明細書に用いられる「処置」という用語は、治療、治癒、緩和、変更、軽減、改良、改善、または異常症、症状または異常への傾向に影響を及ぼすために、ヒドロキサム酸化合物を、腫瘍または免疫異常症を有する、または、症状または異常への傾向を有する対象へ投与することを指す。「有効な量」という用語は、対象へ予想中の薬学的な効果を達成するために必要的な量を意味する。当業者に対しては、投与経路、添加物の使用、薬物の組み合わせにより有効な量が異なることが可能である。「対象」という用語は、ヒト又はヒト以外の動物を意味する。ヒト以外の動物の具体例としては、すべての脊椎動物、(例えば、非人間的な霊長類などの哺乳動物、特に高等霊長類)、犬、げっし動物(例えば、鼠またはラット)、モルモット、猫、鳥、両生類、爬虫類などの非哺乳動物が挙げられる。対象がヒトであることが好ましい。別の実施態様には、対象が実験動物または適切な疾患モデルとしての動物である。
【0092】
(有用性)
本発明の化合物の存在態様及び投与態様は、塩、溶媒和物またはin vivoで本発明の化合物に変換されるプロドラッグであってもよいと認識するべきである。公知の技術に従い、本発明の化合物は変換されること、及び多様な有機酸、無機酸及び塩基で得られる薬学的に許容される塩の態様で利用されることは、明細書に記載の範囲内である。
【0093】
本発明に従い、化合物のプロドラッグ誘導体は、本発明の化合物の置換基を修飾し、in vivoで異なる置換基に変換させることにより得られる。本発明に従い、プロドラッグ自体も化合物の範囲以内であることに留意する必要がある。例えば、プロドラッグは、化合物とカルバミル化剤(例えば、1,1−アシルオキシアルキルカルボノクロリデード、p−ニトロフェニル炭酸など)またはアシル化剤と反応することにより得られる。他のプロドラッグの製造方法の例は(Saulnierら (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985.)に記載されている。
【0094】
本発明はさらに、本発明の化合物の固体または液体物理態様を含む薬物組合物を包含する。例えば、化合物は、結晶態様であってもよく、無定形態様であってもよい、粒径は特に限定されていない。粒子は、微粒子、塊、微粒子の顆粒、粉状、油状、油性懸濁液、及び他の固体または液体物理態様からなる群から選択されてもよい。
【0095】
本発明の化合物の溶解性が劣る時、該化合物を可溶化させる方法を使用してもよい。当業者に対してよく知られている可溶化方法は、これに限定されるものではないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような共溶媒の使用、Tweenのような界面活性剤、または炭酸水素ナトリウムの水溶解が挙げられる。
【0096】
本発明の化合物は、多様な組成物と共に使用されてもよい。これらの組成物は、本発明の化合物以外、通常の医薬添加物及び他の通常の薬学的な不活性剤を含んでもよい。さらに、これらの組成物は、本発明の化合物以外の活性剤を含んでもよい。他の活性成分は、本発明以外の化合物、または1つまたは複数の他の薬学的な活性剤を含んでもよい。
【0097】
さらに、本発明の化合物は、制御放出または速放性の態様であることが可能である。
【0098】
多様な投与方法を、本発明の化合物と共に使用してもよい。本発明の化合物を含む組成物は、経口的に、非経口的に、局所的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻腔内に、リポソーム的に、吸入により、膣に、眼内に、局所送達により(例えば、カテーテル、又は、ステントによる)、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は髄腔内に、投与または共投与されでもよい。本発明の化合物及び/または組成物は徐放性剤の態様として、投与または共投与されでもよい。組成物は、気体、液体、半液体または固体状態として、適切な投与経路に合わせて処方されてもよい。経口投与に対して、適切な固体経口処方は、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ペレット、発泡錠、散剤などを含む。適切な液体経口処方は、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、油などを含む。非経口投与に対して、凍結乾燥された粉末の再構築はよく使われている。
【0099】
本発明のヒドロキサム酸誘導体は、多様な反応スキームにより合成されてもよい。次には、一部の反応スキームが以下に提供されている。他の反応スキームは、当業者には容易に思い浮かぶ。
【0100】
本明細書中に開示されている本発明は、以下の実施例により例示されるが、この実施例は、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。代替的な機構の経路及び類似の構造物は、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に理解され得る。
【実施例】
【0101】
NMRデータが提示される場合には、Hスペクトルを、VarianのVXR−200(200MHz、H)、Varian Gemini−300(300MHz)またはXL400(400MHz)のいずれかを用いて得、カッコ内に示されるプロトン数、多重度およびHz単位の結合定数とともに、MeSiから低磁場のppm として報告する。HPLCデータが提示される場合には、分析はAgilent 1100システムを用いて実施した。アルテック白金C18は(3μmの、33ミリメートル×7ミリメートルの内径):LC/MSデータが提示される場合には、分析はAgilent 6210 TOF LC/MSまたはApplied BiosystemsのAPI−100質量分光計及びShimadzu SCL−10A LCカラム:Altech白金 C18、3ミクロン、33mm×7mm内径;0〜100%アセトニトリル(pH4.50)/200mMの酢酸アンモニウム溶液で溶離物を流速3.0mL/minで10分間の直線の勾配を用いてサンプルを溶離した。ダイオードアレイクロマトグラムは240〜400nmで処理した。
【0102】
実施例1:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化40】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。
【化41】

【0103】
ステップ1:出発物質である6−メチルピリジン−3−オール(30mmol)、7−ブロモヘプタン酸エチル(30mmol)と炭酸カリウム(100mmol)からなる混合物をDMF(80mL)に加え、60℃で3時間攪拌し、反応後混合物をろ過した。ろ液は真空中で濃縮し、残留物をジクロロメタンに溶解させ、飽和塩化ナトリウムで二回洗浄した。その後、有機相は硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、中間体(2)を得た。
【0104】
ステップ2:新たに調製したヒドロキシルアミン溶液(60mL、220mmol/mL)を備えた100mLのフラスコに化合物(2)(20mmol)を溶液に添加し、25℃で24時間攪拌した。反応後混合物を酢酸で中和し、得られた沈殿物を分離し、水で洗浄し、乾燥し、中間体(3)を得た。
【0105】
ステップ3:乳鉢と乳棒で微粉末に磨かれたKPtClを備えた25mLの丸底フラスコに6〜7mLの乾燥なNMPを添加した。10mmolの中間体(3)を3〜4mLのNMPに添加した後、均等の5組に分けられた。第1組の中間体(3)を白金の混合物に添加した後、その混合物を60℃の油浴中で完全に浸漬し、1200rpmで攪拌した。次に、30〜35分間で第1組の中間体(3)を添加した。中間体(3)の添加速度は30〜35分間で20%であった。最後の組を添加した後、50〜60分間の反応を行った。反応終了後、反応溶液の色はオレンジであった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。周囲温度で100mLの塩化メチレンを反応溶液に添加した。塩化メチレンの添加は化合物4と塩化カリウムの沈殿を起こした。ガラスフリットを用いて真空濾過で沈殿物を集め、塩化メチレン(3×5mL)とジエチルエーテル(3×5mL)で順に洗浄した。得られた沈殿物を周囲温度で16〜24時間真空乾燥し、中間体(4)を得た。
【0106】
ステップ4:6g(10mmol)の中間体(4)を備えた25mLの丸底フラスコに、10mlの2.5Nの塩化カリウム溶液10mlを添加した。60mmolの酢酸アンモニウム三水和物を25mLの2.5Nの水酸化アンモニウム溶液に溶解させ、攪拌の白金混合物に添加した。この反応の総容積は35mLであった。その後、混合物は45℃の油浴に浸漬し、暗所に1000rpm以上の速度で1時間攪拌した。ガラスフリットを用いて真空濾過で黄色の沈殿物を集め、水(2×5mL)とアセトン(3×5mL)で順に洗浄した。得られた沈殿物を周囲温度で16〜24時間真空乾燥し、中間体(5)を得た。
【0107】
ステップ5:中間体5(4mmol)とAgCBDCA(5mmol)を200mLの水に混合し、暗所に一晩静置させた。珪藻土でAgIをろ過し、除去し、溶液を減圧で約2mLまで濃縮した。得られた沈殿物を水とアセトンで洗浄し、真空乾燥し、目的物(6)を得た。
【0108】
以下の化合物は実施例1の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表8】

【0109】
実施例2:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化42】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。
【化43】

【0110】
ステップ1:出発物質(1)(20mmol)のジエチルエーテル(60mL)溶液に、0℃でクロロギ酸エチル(24mmol)とN−メチルモルホリン(26mmol)を加えた後、混合物を10分間攪拌した。固体をろ過し、除去してから、ろ液を新たに調製したヒドロキシルアミン(30mmol)のメタノール溶液に添加した。次に、反応混合物を室温で15分間攪拌した。溶媒を蒸発させ、目的物(6)を得た。目的物の純度は、HPLCのピーク面積値を正規化法によって、99%以上であった。
【0111】
ステップ2:KPtCl(20mmol)の水溶液をKI(200mmol)で処理し、室温で10分間攪拌した。2当量の中間体(2)を得られたKPtI溶液に滴下した。30分間攪拌した後、黄色の沈殿物をろ過し、水で全面洗浄した。その後、沈殿物をDMF/HOの混合物から再結晶した。水、メタノール、ジメチルエーテルで洗浄した後、中間体(3)を真空乾燥した。
【0112】
ステップ3:中間体(3)(10mmol)を50mLの水(10mLの68%〜70%過塩素酸含み)に懸濁し、150mLのエタノールを添加した。反応サンプルを取ってPt NMR分光分析を行った。4日間攪拌した後、室温で茶色の沈殿物をろ過し、水で洗浄し、真空乾燥し、中間体(4)を得た。
【0113】
ステップ4:25mLの水に、中間体(4)(5mmol)を、5mLの1.5MのNHOHと混合した。その後、混合物を室温で一晩攪拌した。再び、反応進行度はPt NMR分光分析でモニターした。黄色の沈殿物をろ過し、水で洗浄し、真空乾燥し、中間体(5)を得た。
【0114】
ステップ5:中間体5(4mmol)を、200mLの水に、AgCBDCA(5mmol)と混合し、暗所に一晩静置させた。珪藻土でAgIをろ過し、除去し、溶液を減圧で約2mLまで濃縮した。得られた沈殿物を水とアセトンで洗浄し、真空乾燥し、目的物を得た。
【0115】
以下の化合物は実施例2の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表9】

【0116】
実施例3:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化44】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。
【化45】

【0117】
ステップ1:(2の合成)水酸化ナトリウム水溶液(20mmol)を、10mmolの1が溶解した水に加えた。次に、暗所に20mmolのAgNOを、ジカルボン酸ナトリウム溶液に添加し、直ぐに白い沈殿を生成した。その後、この混合物を、15〜30分間攪拌し、銀化合物2をろ過し、水で洗浄し、空気乾燥し、最後にデシケーターに置いた。
【0118】
ステップ2:(3の合成)化合物2と5を、1:1の比で、水に混合した。得られた混合物を暗所に2〜3日間で、AgIを完全に生成するまで攪拌した。黄色の沈殿物をろ過し、ろ液を蒸発することで乾燥させた。
【0119】
ステップ3:(4の合成)3(1当量)とヨウ化物6(2当量)をEtOH溶液(70%v/v)に溶解させ、超音波した後、CuI(2当量)とZn(6当量)を加えた。数分間後に、EtOH溶液(70%v/v)をさらに添加し、45〜90分間超音波した。得られた混合物をエーテルで希釈し、10分間超音波し、短いセライト柱でろ過し、固体を酢酸エチルで3回洗浄した。一体化された有機相を、食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)し、ろ過し、減圧で濃縮した。
【0120】
ステップ4:(5の合成)34.4gのテトラクロロ白金酸カリウムを275mLの水に溶解した。80.1gのKIを140mLの水に溶解したKI溶液を得た。これらの2つの溶液を15分間混合し、混合溶液を得た後、予めに用意された水溶液に加えた。その水溶液は、10gのトランス−L−4−シクロヘキセン−1,2−ジアミン(HPLCのピーク面積値を正規化法によって光学純度が99.9%以上であった)を30mLの水に溶解したことにより調製された。反応溶液を室温で10時間攪拌してから、反応溶液をろ過し、得られた沈殿物を55mLの水で3回洗浄し、粗製のシス−ジヨード−(トランス−L−4−シクロヘキセン−1,2−ジアミン)Pt(II)錯体を得た。その後、沈殿物を220mLの水で15分間再懸濁させ、懸濁沈殿物をろ過し、ハロゲンイオンを検出できないまで水で洗浄した。洗浄された沈殿物を45mLの予めに用意された溶液(50%ジメチルホルムアミドと50%水)で、15分間懸濁させた。懸濁沈殿物をろ過し、10mLの50%のN,N−ジメチルホルムアミドがあった水溶液で3回洗浄し、最後に20mLのアセトンで3回洗浄し、5を得た。25〜30℃で12時間真空乾燥し、高純度の5を得た。
【0121】
以下の化合物は実施例3の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表10】

【0122】
実施例4:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化46】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。
【化47】

【0123】
ステップ1:(2の合成)ナトリウムエトキシド(200mmol)のエタノール溶液を0℃まで冷却した。マロン酸ジエチル(11.5mL、100mmol)を徐々に加えてから、続いて0℃で30分間攪拌した。その後、徐々に1(100mmol)を添加した。これらの混合物を室温まで暖めた後、3時間で加熱還流した。溶媒を減圧で蒸発させた後、残留物を200mLの1N塩酸で処理した。白い沈殿物を水で洗浄し、乾燥した。
【0124】
ステップ2:(3の合成)有機酸2(80mmol)のエーテル(200mL)溶液に、0℃でクロロギ酸エチル(10.4g、96mmol)とN−メチルモルホリン(10.4g、10.4mmol)を加え、この混合物を10分間攪拌した。固体をろ過し、除去し、ろ液を新たに調製したヒドロキシルアミン(4.0g、120mmol)のメタノール溶液に添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌した。その後、溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで純化し、3を得た。
【0125】
ステップ3:(4の合成)3(15mmol)のMeOH溶液(200mL)にNaOMe(2.5g、45mmol)を添加した。反応溶液を室温で24時間撹拌した後、混合物にpH6.5に至るまで、HCl溶液(1.4mol/L)を添加し、溶媒を蒸発させた。残留物を酢酸エチルから再結晶し、4を得た。
【0126】
ステップ4:(5の合成)10mmolの化合物4が溶解した少量の水に、NaOH水溶液(20mmol)を加えた。暗所に20mmolのAgNOをジカルボン酸ナトリウム酸塩溶液に添加した後、すぐに白い沈殿物を生成した。その混合物を15〜30分間攪拌した後、銀化合物をろ過し、水で洗浄し、空気で乾燥した後、デシケーターに置いた。
【0127】
ステップ5:(7−A及び7−Bの合成)5と6−A(または6−B)を水で1:1として混合した。AgIを生成するまで、その混合物を暗所に2〜3日攪拌した。黄色の沈殿物をろ過し、除去し、ろ液を蒸発させ、乾燥した。
【0128】
ステップ6:(6−Bの合成)34.4gのテトラクロロ白金酸カリウムを275mLの水に溶解した。80.1gのKIを140mLの水に溶解したKI溶液を得た。これらの2つの溶液を15分間混合し、混合溶液を得た後、予めに用意された水溶液に加えた。その水溶液は、10gのトランス−L−4−シクロヘキセン−1,2−ジアミン(HPLCのピーク面積値を正規化法によって光学純度が99.9%以上であった)を30mLの水に溶解したことにより調製された。反応溶液を室温で10時間攪拌してから、反応溶液をろ過し、得られた沈殿物を55mLの水で3回洗浄し、粗製のシス−ジヨード−(トランス−L−4−シクロヘキセン−1,2−ジアミン)Pt(II)錯体を得た。その後、沈殿物を220mLの水で15分間再懸濁させ、懸濁沈殿物をろ過し、ハロゲンイオンを検出できないまで水で洗浄した。洗浄された沈殿物を45mLの予めに用意された溶液(50%ジメチルホルムアミドと50%水)で、15分間懸濁させた。懸濁沈殿物をろ過し、10mLの50%のN,N−ジメチルホルムアミドがあった水溶液で3回洗浄した後、30mlの水で3回洗浄し、最後に20mLのアセトンで3回洗浄した後、6−Bを得た。得られた6−Bを25〜30℃で12時間真空乾燥し、高純度の6−B錯体を得た。得られた高純度の6−B錯体の融点が275〜300℃で、HPLCのピーク面積値を正規化法によって、光学純度が99.5%以上であり、重さが37.0gであった。
【0129】
以下の化合物は実施例4の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表11】

【0130】
実施例5:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化48】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。本実施例中では、Qはアリール基またはヘテロアリール基(例えば、
【化49】

)である。
【化50】

【0131】
1→2:乾燥なジクロロメタンの存在下、Nの保護下、バナジル酢酸(5%)と化合物1を備えた二口丸底フラスコに、2当量のt−BuOOHをフラスコ中の反応混合物に加えた後、室温で24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を蒸留水で洗浄し、ジクロロメタンで抽出した。抽出液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって、高純度のアロイルシアニドを得た。
【0132】
2→3:リチウムジイソプロピルアミド(1.1当量)をアルカリとして用い、ケトンと反応したことによって、ケトンエノラート(10mmol)を得た。1.1当量のアシルシアニド2が溶解したTHF溶液を、0℃でエノラート溶液に添加し、エノラートのアシル化反応は迅速に行われ、ジイソプロピルアミドのアシル化反応と競合した障害がなかった。
【0133】
3→4:化合物3を50mLのKOH(1.56g)の水溶液(50mL)に懸濁させ、均一になるまで約15分間加熱還流した後、さらに1時間加熱還流した。冷却した混合物を希釈した塩酸で酸化した後、EtOAc(3×50mL)で抽出した。一体化された有機相をワークアップし、残留物はシリカゲルクロマトグラフィーによって、目的有機酸4を得た。
【0134】
4→5:4(5.0mmol)のMeOH(50mL)とPd/C(0.5mmol)の溶液を、Hの存在下、室温で4時間攪拌した。MeOHを減圧留去し、残留物をCHClで抽出した。有機層をNaCl溶液で洗浄し、蒸留水で洗浄し、NaSOで乾燥した。その後、溶媒を蒸発させ、乾燥した後、残留物をフラッシュクロマトグラフィーによって純化した。
【0135】
5→6:5(4.2mmol)と酢酸(25mL)を水(25mL)に溶解させた。この混合物に、徐々にオキシランを滴下し、10℃で3時間攪拌した後、室温で一晩攪拌した。その後、混合物を氷水と蒸留水に注ぎだし、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、残留物をフラッシュクロマトグラフィーによって純化した。
【0136】
6→7:6(3.5mmol)のCHCl(30mL)溶液に、氷浴でSOCl(4.5mmol)を1時間滴下し、室温で4時間攪拌した。反応物を水で洗浄し、有機層をMgSOで乾燥した。その後、溶媒を蒸発させ、残留物をフラッシュクロマトグラフィーによって純化した。
【0137】
7→8:有機酸6(10mmol)のジエチルエーテル(30mL)溶液に、0℃でクロロギ酸エチル(1.3g、12mmol)とN−メチルモルホリン(1.3g、13mmol)を添加し、混合物を10分間攪拌した。その後、固体をろ過し、除去し、ろ液を次のステップに用いる。
【0138】
8→9:ろ液を新たに製造したヒドロキシルアミン(0.5g、15mmol)のメタノール溶液に添加し、室温で15分攪拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって純化し、目的物9を得た。
【0139】
以下の化合物は実施例5の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表12】

【0140】
実施例6:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化51】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。本実施例中では、Qはアリール基またはヘテロアリール基(例えば、
【化52】

)である。
【化53】

【0141】
ステップ1:1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンを(12.3g、61mmol)のエタノール溶液(120mL)に、0℃でメチルアミン(40%w/w溶液、34mL)を加えた後、室温で15時間攪拌した。その後、溶媒を減圧で蒸発させ、茶色の油状残留物を熱い水で処理した。沈澱物をろ過し、乾燥し、収率が95%以上であった1を得た。
【0142】
ステップ2:(2,4−ジニトロフェニル)メチルアミン1(12.14g、60.9mmol)の溶液に、Pd/C(10%)をアセトニトリル(35mL)とトリルエチルアミン(36.4mL)に溶解させた。この混合物を−15℃まで冷却し、ギ酸(11.1mL)を含むアセトニトリル(35mL)を加え、その後3時間還流し、ろ過した。溶媒を減圧で蒸発させ、収率95%以上で赤い液体の目的物2を得た。
【0143】
ステップ3:目的物2(1.0eq)と所定の酸無水物(1.0eq)を、クロロホルムに混合し、一晩攪拌した。溶媒を減圧で蒸発させ、収率が95%以上で粗生成物3を得た。
【0144】
ステップ4:化合物3(5.0mmol)のEtOH(50mL)溶液とPd/C(0.5mmol)を、Hの存在下、室温で4時間攪拌した。EtOHを減圧で留去し、残留物をCHClで抽出した。有機層をNaClと蒸留水で洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、残留物をフラッシュクロマトグラフィーによって純化した。
【0145】
ステップ5:化合物4(4.2mmol)とAcOH(25mL)を水に加えた。この混合物を、徐々にオキシランを滴下し、10℃で3時間攪拌した後、室温で一晩攪拌した。その後、混合物を氷水と蒸留水に注ぎだし、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、残留物をフラッシュクロマトグラフィーによって純化した。
【0146】
ステップ6:5(3.5mmol)のCHCl(30mL)溶液に、氷浴でSOCl(4.5mmol)を1時間滴下し、室温で4時間攪拌した。反応物を水と飽和NaHCOで洗浄し、有機層をMgSOで乾燥した。その後、溶媒を蒸発させ、残留物をフラッシュクロマトグラフィーによって純化した。
【0147】
ステップ7:有機酸6(10mmol)のジエチルエーテル(30mL)溶液に、0℃でクロロギ酸エチル(1.3g、12mmol)とN−メチルモルホリン(1.3g、13mmol)を添加し、混合物を10分間攪拌した。その後、固体をろ過し、除去し、ろ液を次のステップに用いた。
【0148】
ステップ8:ろ液を新たに製造したヒドロキシルアミン(0.5g、15mmol)のメタノール溶液に添加し、室温で15分攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって純化し、目的物8を得た。
【0149】
以下の化合物は実施例6の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表13】

【0150】
実施例7:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化54】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。本実施例中では、Qは少なくとも1つのニトロ基に置換されたアリール基またはヘテロアリール基(例えば、
【化55】

)である。
【化56】

【0151】
ステップ1:1(500mg、1.65mmol)のDMF(1mL)攪拌溶液を、0℃でLiBr(1.65mmol)で処理し、1−アジリジンエタノール(0.33mL、4.12mmol)を滴下した。混合物は室温まで暖め、16時間静置し、飽和水性NaCl(40mL)で希釈してから、冷蔵した。集まった沈殿物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって純化し、再結晶によって化合物2を得た(収率60%)。
【0152】
ステップ2:ピリジン(0.34mL、4.28mmol)を含み、2(1.64mmol)のCHCl(10mL)攪拌溶液を、0℃で、(MsO)O(372mg、2.14mmol)のCHCl(15mL)溶液を滴下したことで処理した。反応混合物を1時間暖めた後、飽和NaHCO(10mL)で処理し、さらに0.5時間攪拌した。有機層は1Nの水性AcOHで洗浄し、乾燥し、減圧で蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって純化し、再結晶によって化合物3を得た(収率70%)。
【0153】
ステップ3:3(1.38mmol)のTFA(3mL)溶液を室温で2時間攪拌した後、減圧で小容積まで(乾燥に至らず)濃縮した。その後、EtOAc層と水相を分離してから、有機層を減圧で乾燥した。残留物をiPrOで粉にし、得られた固体をEtOAc/ヘキサンから再結晶し、黄色の固体である4(収率85%)を得た。
【0154】
ステップ4,5:4(0.73mmol)のCHCl(5mL)の懸濁液を、オキサリルクロリド(0.12mL、1.40mmol)とDMF(1滴)で処理し、室温で1.5時間攪拌した。揮発性物質を減圧で30℃以下で蒸発させ、ベンゼンと共沸し、粗酸クロリドを得た。その後、粗酸クロリドのDMF(1mL)溶液を、ヒドロキサム酸5(1.10mmol)とDIPEA(14.2mg、1.10mmol)を含むジオキサン/テトラヒドロフラン(1:1)(2mL)攪拌溶液に、−5℃で滴下した。さらに、この混合物は、0℃で5分間攪拌し、0.12N 水性MsOH溶液(15mL)に注ぎだし、EtAc(2×10mL)で抽出した。一体化された有機相を水で洗浄し、乾燥し、減圧で蒸留した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、再結晶で目的物3を得た。
【0155】
以下の化合物は実施例7の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表14】

【0156】
実施例8:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化57】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。本実施例中では、Qはリン含有ヘテロシクロアルキル(例えば、
【化58】

)である。
【化59】

【0157】
ステップ1:固体1(0.02mol)を乾燥したDMA(48mL)に溶解させた。次に、得られた溶液に、試薬A(0.03mol)とBaO(3.13g、0.02mol)を加え、この混合物は55℃で24時間攪拌した。室温まで冷却した後、この混合物をCHCl(500mL)とMeOH(15mL)に注ぎだした。その後、固体を集め、水に再懸濁させ、ろ過し、MeOHで洗浄し、100℃で真空乾燥した後、固体を得た。最後、再結晶することによって化合物2を得た。
【0158】
ステップ2:2(15mmol)のMeOH(200mL)溶液に、NaOMe(2.5g、45mmol)を加え、反応溶液を室温で24時間攪拌した。その後、混合物に、pHが6.5になるまで、HCl溶液(1.4mol/L)を加え、蒸発した。残留物を酢酸エチルから再結晶し、3を得た。
【0159】
ステップ3:有機酸3(10mmol)のジエチルエーテル(30mL)溶液に、0℃でクロロギ酸エチル(1.3g、12mmol)とN−メチルモルホリン(1.3g、13mmol)を添加し、混合物を10分間攪拌した。その後、固体をろ過し、除去し、ろ液を新たに製造したヒドロキシルアミン(0.5g、15mmol)のメタノール溶液に添加し、室温で15分攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって純化し、目的物4を得た。
【0160】
以下の化合物は実施例8の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表15】

【0161】
実施例9:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化60】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。
【化61】

【0162】
ステップa:5−フルオロウラシル(1.30g、0.01mol)の40mLの低温(5℃)ピリジン溶液に、ホスゲン(2.97g、0.03mol)を気泡として、10℃で1時間加えた。窒素ガスを通し、過剰なホスゲンを除去した。
【0163】
ステップb:次に、NH−(CH)−COOCH(1.01g、0.01mol)を添加し、この混合物を1時間攪拌した。得られたピリジン塩酸塩をろ過し、除去し、得られた混合物を乾燥まで蒸発させた。その後、残留物は50mLのクロロホルムに溶解し、塩化水素酸溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発してから目的物を得た。
【0164】
ステップc:1.76M NHOH−HClのMeOH溶液と2からなる混合物を、室温で一晩攪拌した。反応混合物は、0℃で1N HCl水性溶液(pH7)で中和された。固体沈殿物をろ過したことで集め、水とEtOで洗浄し、真空乾燥し、MeOH/CHClから再結晶によって目的物を得た。
【0165】
以下の化合物は実施例9の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表16】

【0166】
実施例10:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化62】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。
【化63】

【0167】
アニリンA(30mmol)とシラン(38mmol)の乾燥HMPA(10mL)溶液に、無水CsF(30mmol)を添加した。この懸濁液を、Arの存在下、120℃で攪拌した。冷却後、この混合物を、ヘキサン/ジエチルエーテル(1:1、200mL)溶液に溶解させ、pH7のリン酸緩衝液(0.4M、2×40mL)で洗浄し、乾燥し、溶媒を蒸発させた後、再結晶によって目的物Bを得た。
【0168】
Bを(13.5mmol)をTHF(50mL)に溶解し、−78℃まで冷却し、n−BuLi(5.7mL、1.1当量、2.5M ヘキサン溶液)を滴下した。この混合物は、30分間攪拌した後、混合物に試薬M(1.05当量)を加え、室温まで暖めた。水を加え、有機層をEtOAcで抽出した。一体化された有機層を乾燥し、濃縮してからCを得た。
【0169】
C(10mol)の氷冷したMeOH溶液に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(55mol)と85%のKOH(60mol)を加えた。反応混合物は室温で36時間攪拌し、減圧で溶媒を除去し、白い残留物を水に懸濁した。水性混合物を、1NのHClで慎重にpH7まで調整し、CHClで抽出した。有機相を濃縮し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで純化し、目的物Dを得た。
【0170】
DをTHF(10mL)に溶解し、徐々に1N HCl(10mL)を加え、一晩攪拌した。水性混合物を、1NのNaOHで慎重にpH7まで調整し、CHClで抽出した。有機相を濃縮し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって純化し、目的物Eを得た。
【0171】
化合物E(1.5mmol)のジクロロメタン(75mL)溶液とピリジン(6mL)からなる混合液を0℃まで冷却し、化合物N(1.7mmol)を混合物に加えた。この混合物は、0℃で1時間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、粗目的物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって、目的物Fを得た。
【0172】
以下の化合物は実施例10の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表17】

【0173】
実施例11:
以下の合成スキームに従い、Pは
【化64】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。
【化65】

【0174】
アニリンAを(30mmol)とシラン(38mmol)の乾燥HMPA(10mL)溶液に、無水CsF(30mmol)を添加した。この懸濁液は、Arの存在下、120℃で攪拌した。冷却後、この混合物は、ヘキサン/ジエチルエーテル(1:1、200mL)溶液に溶解させ、pH7のリン酸緩衝液(0.4M、2×40mL)で洗浄し、乾燥し、溶媒を蒸発させた後、再結晶によって目的物Bを得た。
【0175】
Bを(13.5mmol)をTHF(50mL)に溶解し、−78℃まで冷却し、n−BuLi(5.7mL、1.1当量、2.5Mのヘキサン溶液)を滴下した。この混合物を、30分間攪拌した後、混合物に試薬L(1.05当量)を加え、室温まで暖めた。水を加え、有機層をEtOAcで抽出した。一体化された有機層を乾燥し、濃縮してからC−1を得た。
【0176】
C−1をTHF(10mL)に溶解し、徐々に1N HCl(10mL)を加え、一晩攪拌した。水性混合物を、1N NaOHで慎重にpH7まで調整し、CHClで抽出した。有機相を濃縮し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで純化し、目的物D−1を得た。
【0177】
化合物D−1(1.5mmol)のジクロロメタン(75mL)溶液とピリジン(6mL)からなる混合液を0℃まで冷却し、化合物K(1.7mmol)を混合物に加えた。この混合物は、0℃で1時間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、粗目的物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって、目的物E−1を得た。
【0178】
E−1(1.0mol)の氷冷したMeOH溶液に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(5.5mol)と85%のKOH(6.0mol)を加えた。反応混合物は室温で36時間攪拌し、減圧で溶媒を除去し、白い残留物を水に懸濁した。水性混合物を、1N HClで慎重にpH7まで調整し、CHClで抽出した。有機相を濃縮し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで純化し、目的物F−1を得た。
【0179】
以下の化合物は実施例11の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表18】

【0180】
実施例12:
以下のスキームに従い、Pは
【化66】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。
【化67】

【0181】
1→3:シタラビン(36mmol)のジメチルアセトアミド(DMA)(150mL)溶液に、化合物2(42mmol)のDMA(50mL)溶液を添加し、得られた混合溶液は30℃で22時間攪拌した。その後、溶剤を高真空で蒸発させ、残留物を熱い酢酸エチルで処理し、ろ過した。粗生成物は、2M NaHCO溶液で処理し、ろ過し、除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって純化し、目的物3を得た。
【0182】
3→4:3(15mmol)のMeOH(200mL)溶液に、NaOMe(2.5g、45mmol)を加え、反応溶液を室温で24時間攪拌した。その後、混合物に、pHが6.5になるまで、HCl溶液(1.4mol/L)を加え、蒸発した。残留物を酢酸エチルから再結晶した。
【0183】
4→5:有機酸4(10mmol)のジエチルエーテル(30mL)溶液に、0℃でクロロギ酸エチル(1.3g、12mmol)とN−メチルモルホリン(1.3g、13mmol)を添加し、混合物を10分間攪拌した。その後、固体をろ過し、除去し、ろ液を新たに製造したヒドロキシルアミン(0.5g、15mmol)のメタノール溶液に添加し、室温で15分攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって純化し、目的物5を得た。
【0184】
以下の化合物は実施例12の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表19】

【0185】
実施例13:
以下のスキームに従い、Pは
【化68】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。
【化69】

【0186】
a+b→2:b(1当量)のCHCl溶液に、室温で1.1当量のEtNを添加した。この混合物を0℃まで冷却し、徐々に化合物aを加えた。その後、室温で10時間攪拌し、水で急冷却した。溶媒蒸発後、粗目的物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって目的物2を得た。
【0187】
1→3:ゲムシタビン(36mmol)のピリジン(150mL)溶液に、の化合物2(12g、40mmol)を添加し、反応混合物を周囲温度で2.5時間撹拌した。高真空で溶剤を蒸発させ、粗目的物を、15%メタノールを含んだクロロホルムの溶離液系を用い、シリカゲルクロマトグラフィーで純化した。目的物を含有した留分を蒸発させ、残留物を超音波にエーテル/ヘキサンで処理し、結晶性物質を乾燥し、目的物3を得た。
【0188】
3→4:3(15mmol)のMeOH(200mL)溶液に、NaOMe(2.5g、45mmol)を加え、反応溶液を室温で24時間攪拌した。その後、混合物に、pHが6.5になるまで、HCl溶液(1.4mol/L)を加え、蒸発した。残留物を酢酸エチルから再結晶した。
【0189】
4→5:有機酸4(10mmol)のジエチルエーテル(30mL)溶液に、0℃でクロロギ酸エチル(1.3g、12mmol)とN−メチルモルホリン(1.3g、13mmol)を添加し、混合物を10分間攪拌した。その後、固体をろ過し、除去し、ろ液を新たに製造したヒドロキシルアミン(0.5g、15mmol)のメタノール溶液に添加し、室温で15分攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって純化し、目的物5を得た。
【0190】
以下の化合物は実施例13の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表20】

【0191】
実施例14:
以下のスキームに従い、Pは
【化70】

であるヒドロキサム酸誘導体は調製された。(ここで、WはCFであり,R、R10、及びR12は水素原子である)。
【化71】

【0192】
2→3:D−リボース(2、19.25g、128.33mmol、市販物)を含んだアセトン溶液(75mL)と、メタノール(75mL)と、濃塩酸(2mL)からなる混合物を2時間加熱還流した。反応溶液を、水(200mL)で希釈し、CHCl(3×200mL)で抽出した。有機層を、NaSOで乾燥し、溶媒を蒸発させ、真空乾燥した後、黄色の粘稠な油状物3(20.50g、収率78%)を得た。3を、純化せずに次の反応に用いた。
【0193】
3→4:化合物3(5.11g、25.05mmol)をピリジン(30mL)に溶解させ、塩化トシル(6.50g、34.09mmol)を溶液に加えた。混合物を、室温で18時間攪拌した後、溶媒を真空蒸発させ、除去し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1:4)によって純化し、真空乾燥した白色の固体4(7.50g、収率84%)を得た。
【0194】
4→5:化合物4(4.40g、12.30mmol)とNaI(5.03g、33.53mmol)の2−ブタノン(50mL)溶液からなる混合物を24時間で加熱還流した。溶媒を蒸発させ、残留物をEtOで希釈した。ろ液を得てから、蒸発させ、真空乾燥し、微黄色の油状物5(3.75g、収率97%)を得た。
【0195】
5→6:化合物5(3.67g、11.69mmol)をメタノール(100mL)とEtN(3.0mL)に溶解させた。さらに、10%のPd/C(0.40g)を溶液に添加した。混合物を室温で、Hの存在下、24時間撹拌し、溶液を珪藻土で濾過した。ろ液の溶媒を蒸発し、除去し、真空乾燥し、微淡黄色の油性物6(2.10g、収率95%)を得た。
【0196】
6→7:化合物6(2.11g、11.22mmol)を含んだ1NのHCl(1.5mL)と水(35mL)との混合溶液を2時間加熱還流した。溶媒を除去し、残留物を無水酢酸(5.0mL)とピリジン(50mL)に溶解させた。その後、室温で24時間撹拌し、溶媒を除去し、残留物をCHClでし、水で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、溶媒を蒸発させ、除去し、無色の油性物7(2.89g、収率99%)を得た。ジイソプロピルエーテルで再結晶することで純化し、真空乾燥し、白色の固体目的物7を得た。
【0197】
7+8→9:5−フルオロシトシン(8、0.30g、2.32mmol、市販物)のトルエン(1.5mL)溶液とHMDS(0.38g、2.32mmol)からなる混合物は、3時間加熱還流した。溶媒を蒸発させ、除去した後、残留物をジクロロメタン(5mL)で溶解させた。化合物7(0.66g、2.54mmol)とSnCl(0.72g、0.32mmol)を0℃で溶液に加えた。得られた混合物は、0℃で2時間攪拌し、NaHCO(1.2g)とHO(0.5mL)を加えた。この混合物は、室温で3時間攪拌し、ろ過でろ液を得、1N NaHCOでろ液を洗浄した。溶媒を蒸発させ、除去し、粗目的物を得た。粗目的物は、フラッシュカラムクロマトグラフィー(MeOH/EtOAc=1:20)によって純化し、真空乾燥した白色の固体9を得た(0.60g、収率78%)。
【0198】
9+13→14:化合物9(1.5mmol)のジクロロメタン(75mL)溶液とピリジン(6mL)からなる混合液を0℃まで冷却し、化合物13(2.2mmol)を混合物に加えた。この混合物は、0℃で1時間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、粗目的物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって、真空乾燥した薄黄色の固体14を得た。
【0199】
14→15:14(1mmol)のMeOH(15mL)溶液に、NaOMe(0.25g、4.5mmol)を加え、反応溶液を室温で24時間攪拌した。その後、混合物に、pHが6.5になるまで、HCl溶液(1.4mol/L)を加え、蒸発した。残留物を酢酸エチルから再結晶した。
【0200】
15→1:有機酸15(1mmol)のジエチルエーテル(5mL)溶液に、0℃でクロロギ酸エチル(1.2mmol)とN−メチルモルホリン(1.3mmol)を添加し、混合物を10分間攪拌した。その後、固体をろ過し、除去し、ろ液を新たに製造したヒドロキシルアミン(1.5mmol)のメタノール溶液に添加し、室温で15分攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって純化し、目的物1を得た。
【0201】
以下の化合物は実施例14の若干変更されたスキームに従い調製された。
【表21】

【0202】
(検定実施例)
生物検定法:
(a)ヒストンデアセチラーゼ酵素活性の抑制
金属キレート剤、特に亜鉛キレート剤として、ヒドロキサム酸がよく知られている。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、腫瘍壊死因子α変換酵素(TACE)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ペプチジルデホルミアーゼ(PDF)、ディスインテグリンメタロプロテアーゼ(A Disintegrin And Metalloproteinase、ADAM)、UDP−3−O−[R−3−ヒドロキシミリストイル]−N−アセチルグルコサミンデアセチラーゼ、ヒストリチクム菌コラゲナーゼ(Clostridium Histolytium Collagenase)(ChC)、プロコラーゲンCプロテイナーゼ、アグリカナーゼが挙げられる多様な金属酵素に対して、ヒドロキサム酸官能基は数多くの非常に強力な選択的阻害剤の重要な構成要素である。これらの金属酵素には、多数はよく知られ、重要な疾患標的(例えば、HDAC及びMMP)である。当業界において例示されている、すべてのヒドロキサム酸化合物は、1つまたは複数の金属酵素にテストされている。以下のプロトコルを用いて、HDAC酵素に対する本発明の化合物を検定する。
【0203】
本検定において、用いられる緩衝液は25mM HEPES、pH8.0、137mM NaCl、2.7mM KCl、1mM MgClであり、基質はDMSO中の50mM保存溶液中のBoc−Lys(Ac)−AMC(Fluor−de−Lys基質、カタログ番号#KI−104)である。酵素保存溶液は、緩衝液中で4.084μg/1mLである。本化合物を、酵素(20μL、4μg/mL)とともに室温で10分間予備インキュベートする(検定プレートに移すため、2μL/DMSOを13μL/緩衝液に希釈)(35μL予備インキュベート容積)。混合物を室温で5分予備インキュベートする。反応は、温度を37℃にし、16μLの基質を加えることによって開始する。総反応容積は50μLである。20分後にバイオモルによって指示された方法で調製した50μLの顕色剤(Fluor−de−Lys顕色剤、カタログ番号#KI−105)を加えることによって、反応を停止する。プレートを暗所で、室温で10分インキュベーション後に、読み取りを行う(λEx=360nm、λEm=470nm、カットオフフィルター435nm)。このような検定は、広範なテスト化合物を用いて実施し、IC50の近似値を決めた。HDAC阻害剤であるSAHAを参考化合物として用いた。すべての例示されている化合物は、HDAC−1、HDAC−2、HDAC−3、HDAC−4、HDAC−5、HDAC−6、HDAC−7、HDAC−8、HDAC−9、HDAC−10又はHDAC−11よりなる群から選択される1つまたは複数のHDACに対して抑制活性を示す。本発明の化合物のHDAC抑制特性は化合物の構造によって異なるが、一般的にこれらの阻害剤のIC50値は、1〜1000nMの範囲とする。
【0204】
例としては、下記に表されるのは、DNAのアルキル化剤であるベンダムスチン及びそれのヒドロキサム酸誘導体CY−190602である。下記の表にヒドロキサム酸誘導体CY190602のHDACのIC50値を示す。
【表22】

【0205】
(b)in vitro抗増殖性検定
抗細胞増殖はPerkinElmer ATPlite(商標)光検出システムによって検定する。癌細胞系は、96ウェルCostarプレートに10k細胞/ウェルの密度で播種し、5%FBSの存在下、37℃で5日間まで、様々な濃度の試験化合物に曝露する。5mLの基質緩衝液を加えることによって、凍結乾燥基質溶液バイアルをもどし、溶液が均質化するまでやさしく攪拌する。50μLの哺乳類細胞溶解溶液を、100μLのマイクロプレートの各ウェルの細胞懸濁液に加え、プレートをオービタルシェーカーに5分間700rpmで振とうする。この作業は、細胞を分解し、ATPを安定させる。次に、50μLの基質溶液をウェルに加え、プレートをオービタルシェーカーに5分間700rpmで振とうする。TopCount(登録商標) Microplate Scintillation Counter(Perkin Elmer)上で発光を測定する。このような検定は、広範なテスト化合物を用いて実施し、癌細胞系のin vitro抗細胞増殖性検定におけるIC50の近似値を決める。本発明の化合物のHDAC抑制特性は化合物の構造によって異なるが、一般的にこれらの阻害剤のIC50値は、0.01〜200nMの範囲とする。
【0206】
例としては、下記に表されるのは、ベンダムスチン及びそれのヒドロキサム酸誘導体CY−190602のIC50値である。本発明の発明者は、驚くことに、RPMI−8226、MM−1R及びMM−1Sのような数多くの癌細胞系において、ヒドロキサム酸誘導体の抗腫瘍活性は親薬物であるベンダムスチンより著しくよいということがわかる。
【表23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されることを特徴とする化合物
【化I】

(式(I)中、Zは単結合、C(R)、O、S、C(O)、N(R)、SO、OC(O)、C(O)O、OSO、S(O)O、C(O)S、SC(O)、C(O)C(O)、C(O)N(R)、N(R)C(O)、S(O)N(R)、N(R)S(O)、OC(O)N(R)、N(R)C(O)O、N(R)C(O)SまたはN(R)C(O)N(R)であり、ここでRおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、
mは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16であり、
Pは白金を含む官能基、
【化2】

であり、XおよびXはそれぞれ独立してハロゲンまたはOSOであり、ここでRはアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、Qは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、カルボニル基、−C=NH、シアノ基、OR、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)SR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)SR、C(O)NR、SOR、SO、NRまたはN(R)C(O)Rで置換されていてもよいシクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基であり、ここでR、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基またはアルコキシ基であり、W及びWはCRまたはNであり、Rは水素原子、ハロゲン、アルキル基,アルケニル基またはアルキニル基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、−C=NH、OR、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)SR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)SR、C(O)NR、SOR、SO、NRまたはN(R)C(O)Rである)。
【請求項2】
Zは単結合、CH、O、CO、NH、SO、OC(O)、C(O)O、C(O)S、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)NH、NHC(O)OまたはNHC(O)Sであり、mは5、6、7または8である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Pは白金を含む官能基である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Pは
【化3】

(式中、Lは環状アミン基であり、L及びLはそれぞれ独立してNHR1314であり、L、またはLおよびLは二座アミンを形成し、ここでR13およびR14はそれぞれ独立して水素原子であるか、またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、カルボニル基、−C=NH、シアノ基、OR、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)SR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)SR、C(O)NR、SOR、SO、NRまたはN(R)C(O)Rで置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基であり、A、A、A、 A、A及びAはそれぞれ独立してハロゲン、ヒドロキシル基、カルボン酸エステル基、アルコキシ基、またはAおよびA、AおよびA、AおよびAからなる二座カルボン酸エステル基、アルコキシ基カルボン酸エステル基、ホスホノカルボン酸エステル基、ジホスホン酸エステル基、または硫酸エステル基である)
である請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Pは
【化4】

である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Pは
【化5】

(式中、A及びAは、それぞれ独立してハロゲン、カルボン酸エステル基であるか、またはAおよびAは二座カルボン酸エステル基を形成し、nは0、1、2または3であり、各R15はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、−C=NH、OR、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)SR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)SR、C(O)NR、SOR、SO、NRまたはN(R)C(O)Rである)
である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Pは
【化6】

である請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
Pは
【化7】

である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Pは
【化8】

である請求項4に記載の化合物。
【請求項10】
Pは
【化9】

である請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Pは
【化10】

である請求項4に記載の化合物。
【請求項12】
Pは
【化11】

である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Pは
【化12】

である請求項2に記載の化合物。
【請求項14】
Qはアリール基またはヘテロアリール基である請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Qは9〜10員のアリール基またはヘテロアリール基である請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Pは
【化13】

である請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Qは少なくとも一つのニトロ基で置換されたアリール基またはヘテロアリール基である請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
Pは
【化14】

である請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
Qはリン含有ヘテロシクロアルキル基である請求項13に記載の化合物。
【請求項20】
Pは
【化15】

である請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
Pは
【化16】

である請求項2に記載の化合物。
【請求項22】
Pは
【化17】

である請求項2に記載の化合物。
【請求項23】
Pは
【化18】

である請求項2に記載の化合物。
【請求項24】
Pは
【化19】

である請求項2に記載の化合物。
【請求項25】
はCHまたはNであり、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、C(O)R、C(O)OR、C(O)SR、ハロゲン、ヒドロキシル基またはシアノ基である請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
Pは
【化20】

である請求項2に記載の化合物。
【請求項27】
はCH、CFまたはNであり、R、R、R10、R11及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル基、シアノ基、OR、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)SR、C(O)R、C(O)OR、またはC(O)SRであり、ここでRは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはアルコキシ基である請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
化合物は
【化21】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項29】
化合物は
【化22】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
化合物は
【化23】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項31】
化合物は
【化24】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項32】
化合物は
【化25】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項33】
化合物は
【化26】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項34】
化合物は
【化27】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項35】
化合物は
【化28】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項36】
化合物は
【化29】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項37】
化合物は
【化30】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項38】
化合物は
【化31】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項39】
請求項1〜38のいずれか1項に記載の化合物と薬学的に許容される担体を含む薬物組成物。
【請求項40】
薬学的に許容される請求項1〜38のいずれか1項に記載の化合物の塩。
【請求項41】
未修飾化合物に比べて、薬物の溶解性、安定性、および/または生体利用率が改善される修飾化合物である請求項1〜38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項42】
請求項1〜38のいずれか1項に記載の化合物、請求項39に記載の薬物組成物、請求項40に記載の化合物の塩および/または請求項41に記載の修飾化合物を有効な量で対象へ投与する段階を含む、腫瘍性疾患または免疫疾患を処置する方法。

【公表番号】特表2012−515776(P2012−515776A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547997(P2011−547997)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/020373
【国際公開番号】WO2010/085377
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511281763)ノースレイク インターナショナル エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】