説明

ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法

【課題】第一の金属板の上に搭載された電子部品等の発熱体からの熱の放散を促進することができ、かつ、熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板の割れの発生を抑制し、信頼性の高いヒートシンク付パワーモジュール用基板を提供する。
【解決手段】セラミックス基板21と、セラミックス基板21の一方の面に接合された第一の金属板22と、セラミックス基板21の他方の面に接合された第二の金属板23と、第二の金属板23の他方の面側に接合されたヒートシンク11と、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板10であって、第一の金属板22は、銅又は銅合金で構成され、この第一の金属板22の一方の面が電子部品3が搭載される搭載面22Aとされており、第二の金属板23は、耐力が30N/mm以下のアルミニウムで構成され、ヒートシンク11は、耐力が100N/mm以上の金属材料で構成され、その厚さが2mm以上とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の中でも電力供給のためのパワーモジュールは、発熱量が比較的高いため、これを搭載する基板としては、例えば、AlN(窒化アルミ)、Al(アルミナ)、Si(窒化ケイ素)などからなるセラミックス基板の一方の面側に第一の金属板が接合されるとともに、セラミックス基板の他方の面側に第二の金属板を介してヒートシンクが接続されたヒートシンク付パワーモジュール用基板が用いられる。
このようなヒートシンク付パワーモジュール基板では、第一の金属板に回路パターンが形成され、この第一の金属板の上に、はんだ材を介してパワー素子の半導体チップが搭載される。
【0003】
例えば、特許文献1には、第一の金属板及び第二の金属板を銅板とし、この銅板をDBC法によってセラミックス基板に直接接合してなるパワーモジュール用基板が提案されている。また、特許文献1の第1図に示すように、このパワーモジュール用基板に、有機系耐熱性接着剤用いてアルミニウム製のヒートシンクを接合することで、ヒートシンク付パワーモジュール用基板が構成されている。
【0004】
また、特許文献2には、第一の金属板及び第二の金属板としてアルミニウム板を用いてなるパワーモジュール用基板が提案されている。このパワーモジュール用基板は、第二の金属板がろう付けによってヒートシンクに接合されることにより、ヒートシンク付パワーモジュール用基板が構成されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、セラミックス基板の一方の面に金属板を接合し、セラミックス基板の他方の面に、鋳造法によってアルミニウム製のヒートシンクを直接形成したものが提案されている。そして、金属板としてアルミニウム板、銅板を使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−162756号公報
【特許文献2】特許第3171234号公報
【特許文献3】特開2002−076551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載されたヒートシンク付パワーモジュール用基板においては、アルミニウム製のヒートシンクとセラミックス基板との間に銅板が配設されていることから、ヒートシンクとセラミックス基板との熱膨張係数の差に起因する熱歪みを、この銅板において十分に緩和することができず、熱サイクル負荷時にセラミックス基板に割れ等が生じやすいといった問題があった。
なお、特許文献1には、ヒートシンクと第二の金属板との間に介在する有機系耐熱性接着剤によって熱歪みを緩和することが記載されているが、この有機系耐熱性接着剤が介在することで熱抵抗が高くなるため、第一の金属板の上に搭載された電気部品等の発熱体からの熱をヒートシンク側に効率的に放散することができないといった問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載されたヒートシンク付パワーモジュール用基板においては、第一の金属板としてアルミニウム板が用いられている。
ここで、銅とアルミニウムとを比較するとアルミニウムの方が熱伝導率が低いため、第一の金属板としてアルミニウム板を用いた場合には、第一の金属板の上に搭載された電気部品等の発熱体からの熱を拡げて放散することが銅よりも劣ることになる。このため、電子部品の小型化や高出力化により、パワー密度が上昇した場合には、熱を十分に放散することができなくなるおそれがあった。
【0009】
さらに、特許文献3に記載されたヒートシンク付パワーモジュール用基板においては、セラミックス基板に直接アルミニウム製のヒートシンクを接合していることから、ヒートシンクとセラミックス基板との熱膨張係数の差に起因する熱歪みによってセラミックス基板に割れが生じやすくなる。これを防止するために、特許文献3においては、ヒートシンクの耐力を低く設定する必要があった。このため、ヒートシンク自体の強度が不足し、取扱いが非常に困難であった。
また、鋳造法によってヒートシンクを形成していることから、ヒートシンクの構造が比較的簡単になり、冷却能力の高いヒートシンクを形成することができず、熱の放散を促進することができないといった問題があった。
【0010】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、第一の金属板の上に搭載された電子部品等の発熱体からの熱の放散を促進することができ、かつ、熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板の割れの発生を抑制し、信頼性の高いヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール、及び、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法は、セラミックス基板と、該セラミックス基板の一方の面に接合された第一の金属板と、前記セラミックス基板の他方の面に接合された第二の金属板と、該第二の金属板の他方の面側に接合されたヒートシンクと、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板であって、前記第一の金属板は、銅又は銅合金で構成され、この第一の金属板の一方の面が電子部品が搭載される搭載面とされており、前記第二の金属板は、耐力が30N/mm以下のアルミニウムで構成されており、前記ヒートシンクは、耐力が100N/mm以上の金属材料で構成され、その厚さが2mm以上とされていることを特徴としている。
【0012】
この構成のヒートシンク付パワーモジュール用基板においては、電子部品が搭載される搭載面を有する第一の金属板が銅又は銅合金で構成されているので、電子部品から発生する熱を十分に拡げることができ、熱の放散を促進することができる。
また、ヒートシンクとセラミックス基板との間に、耐力が30N/mm以下のアルミニウムからなる第二の金属板が配設されているので、ヒートシンクとセラミックス基板との熱膨張係数の差に起因する熱歪みをこの第二の金属板で十分に緩和することができ、セラミックス基板の割れを抑制することができる。
さらに、上述のように、第二の金属板によって熱歪みを緩和することが可能であることから、ヒートシンクを、耐力が100N/mm以上の金属材料で構成され、その厚さが2mm以上とすることができ、ヒートシンク自体の剛性が高く、取扱いが容易となる。
また、ヒートシンクを第二の金属板に接合する構成としていることから、ヒートシンクの構造に制約がなく、冷却能力に優れたヒートシンクを採用することができる。
【0013】
ここで、前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面又は前記ヒートシンクとの接合界面の少なくともいずれか一方には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、前記第二の金属板のうち接合界面近傍における前記添加元素の濃度の合計が0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されていることが好ましい。
この場合、前記第二の金属板に、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga及びLiのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しているので、前記第二の金属板の接合界面側部分が固溶強化することになる。これにより、第二の金属板部分での破断を防止することができる。
【0014】
また、前記第二の金属板のうち接合界面近傍における前記添加元素の濃度の合計が0.01質量%以上とされているので、第二の金属板の接合界面側部分を確実に固溶強化することができる。また、前記第二の金属板のうち接合界面近傍における前記添加元素の濃度の合計が5質量%以下とされているので、第二の金属板の接合界面近傍の強度が過剰に高くなることを防止でき、このパワーモジュール用基板に熱サイクルが負荷された際に、熱歪みを第二の金属板で緩和することが可能となり、セラミックス基板の割れの発生を抑制できる。
【0015】
さらに、前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素の濃度が、前記第二の金属板中の前記添加元素の濃度の2倍以上とされた添加元素高濃度部が形成されていることが好ましい。
この場合、第二の金属板の接合界面に、前記添加元素の濃度が前記第二の金属板中の前記添加元素の濃度の2倍以上とされた添加元素高濃度部が形成されているので、界面近傍に存在する前記添加元素原子により、第二の金属板の接合強度の向上を図ることが可能となる。なお、第二の金属板中の前記添加元素の濃度とは、第二の金属板のうち接合界面から一定距離(例えば、5nm以上)離れた部分における前記添加元素の濃度である。
【0016】
ここで、前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面に、前記添加元素高濃度部が形成されており、前記セラミックス基板がAlで構成され、前記セラミックス基板との接合界面に形成された前記添加元素高濃度部を含む前記接合界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、添加元素、Oの質量比が、Al:添加元素:O=50〜90質量%:1〜30質量%:45質量%以下とされていてもよい。
また、前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面に、前記添加元素高濃度部が形成されており、前記セラミックス基板がAlNで構成され、前記セラミックス基板との接合界面に形成された前記添加元素高濃度部を含む前記接合界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、添加元素、O、Nの質量比が、Al:添加元素:O:N=50〜90質量%:1〜30質量%:1〜10質量%:25質量%以下とされていてもよい。
さらに、前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面に、前記添加元素高濃度部が形成されており、前記セラミックス基板がSiで構成され、前記添加元素がCu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上とされており、前記セラミックス基板との接合界面に形成された前記添加元素高濃度部を含む前記接合界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、Si、添加元素、O、Nの質量比が、Al:Si:添加元素:O:N=15〜45質量%:15〜45質量%:1〜30質量%:2〜20質量%:25質量%以下とされていてもよい。
【0017】
接合界面に存在する前記添加元素原子の質量比が30質量%を超えると、過剰な添加元素によって接合強度が低下するおそれがある。また、第二の金属板の接合界面近傍が必要以上に強化されることになり、熱サイクル負荷時にセラミックス基板に応力が作用し、セラミックス基板が割れてしまうおそれがある。一方、前記添加元素原子の質量比が1質量%未満であると、添加元素原子による接合強度の向上を充分に図ることができなくなるおそれがある。よって、接合界面における添加元素原子の質量比は、1〜30質量%の範囲内とすることが好ましいのである。
【0018】
ここで、エネルギー分散型X線分析法による分析を行う際のスポット径は極めて小さいため、前記接合界面の複数点(例えば、10〜100点)で測定し、その平均値を算出することになる。また、測定する際には、第二の金属板の結晶粒界とセラミックス基板との接合界面は測定対象とせず、結晶粒とセラミックス基板との接合界面のみを測定対象とする。
なお、本明細書中におけるエネルギー分散型X線分析法による分析値は、日本電子製の電子顕微鏡JEM−2010Fに搭載したサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のエネルギー分散型蛍光X線元素分析装置NORAN System7を用いて加速電圧200kVで行った。
【0019】
また、前記セラミックス基板がAlNからなり、前記セラミックス基板のうち少なくとも一方の面には、Al層が形成されていることが好ましい。
この場合、銅または銅合金からなる第一の金属板が接合されるセラミックス基板の一方の面にAl層が形成されていることから、このAl層と第一の金属板(銅板)とを、酸素と銅との共晶反応を利用したDBC法によって接合することが可能となる。よって、セラミックス基板と第一の金属板(銅板)とを、比較的容易に、かつ、確実に接合することができる。
【0020】
本発明のパワーモジュールは、前述のヒートシンク付パワーモジュール用基板と、第一の金属板上に搭載された電子部品と、を備えたことを特徴としている。
この構成のヒートシンク付パワーモジュールによれば、第一の金属板上に搭載された電子部品からの熱を効率的に放散することができ、電子部品のパワー密度(発熱量)が向上した場合であっても、十分に対応することができる。
【0021】
本発明のパワーモジュール用基板の製造方法は、セラミックス基板と、該セラミックス基板の一方の面に接合された第一の金属板と、前記セラミックス基板の他方の面に接合された第二の金属板と、該第二の金属板の他方の面側に接合されたヒートシンクと、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、前記第一の金属板は、銅又は銅合金で構成され、前記第二の金属板は、耐力が30N/mm以下のアルミニウムで構成され、前記ヒートシンクは、耐力が100N/mm以上の金属材料で構成されており、前記第一の金属板と前記セラミックス基板とを接合する銅板接合工程と、前記第二の金属板と前記セラミックス基板とを接合するアルミニウム板接合工程と、前記第二の金属板と前記ヒートシンクとを接合するヒートシンク接合工程と、を備えており、前記アルミニウム板接合工程又は前記ヒートシンク接合工程のうち少なくともいずれか一方においては、前記第二の金属板の接合界面にSi,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を配置し、前記第二の金属板を接合することを特徴としている。
【0022】
この構成のパワーモジュール用基板の製造方法によれば、前述したヒートシンク付パワーモジュール用基板を製造することができる。また、前記アルミニウム板接合工程又は前記ヒートシンク接合工程のうち少なくともいずれか一方においては、前記第二の金属板の接合界面にSi,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を配置し、前記第二の金属板を接合する構成としているので、第二の金属板と前記セラミックス基板、あるいは、前記第二の金属板と前記ヒートシンク、を強固に接合することができる。また、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liといった元素は、アルミニウムの融点を降下させる元素であるため、比較的低温な条件においても、第二の金属板の接合界面に溶融金属領域を形成することができる。なお、これらの添加元素は、第二の金属板等の接合面に固着させてもよいし、接合面にこれらの添加元素を含む金属箔(ろう材箔)を配設してもよい。
【0023】
ここで、前記アルミニウム板接合工程又は前記ヒートシンク接合工程のうち少なくともいずれか一方においては、前記添加元素が前記第二の金属板側に向けて拡散することにより、接合界面に溶融金属領域を形成し、この溶融金属領域を凝固させることによって接合することが好ましい。
この場合、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を前記第二の金属板側に拡散させることにより、前記第二の金属板の接合界面に前記溶融金属領域を形成し、この溶融金属領域を凝固させることで、前記第二の金属板を接合する、いわゆる拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合しているので、比較的低温条件でおいても、接合信頼性に優れたヒートシンク付パワーモジュール用基板を製造することができる。
【0024】
また、前記第二の金属板の接合界面に配置される前記添加元素量が、0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、前記第二の金属板の接合界面に配置される前記添加元素量を0.01mg/cm以上としているので、第二の金属板の接合界面に、溶融金属領域を確実に形成することができる。
さらに、前記第二の金属板の接合界面に配置される前記添加元素量を10mg/cm以下としているので、前記添加元素が過剰に第二の金属板側に拡散して接合界面近傍の第二の金属板の強度が過剰に高くなることを防止できる。よって、パワーモジュール用基板に冷熱サイクルが負荷された際に、熱歪みを第二の金属板で吸収することができ、セラミックス基板の割れ等を防止できる。
また、前記第二の金属板の接合界面に配置される前記添加元素量が、0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされているので、前記第二の金属板のうち接合界面近傍における前記添加元素の濃度の合計が0.01質量%以上5質量%以下の範囲内とされたヒートシンク付パワーモジュール用基板を製造することができる。
【0025】
さらに、前記銅板接合工程の前に、前記セラミックス基板の少なくとも一方の面にAl層を形成するアルミナ層形成工程を行うことが好ましい。
この場合、セラミックス基板の一方の面にAl層を形成することにより、銅又は銅合金からなる第一の金属板とセラミックスとをDBC法を用いて接合することが可能となる。なお、形成するAl層の厚さは、1μm以上とすることが好ましい。Al層の厚さが1μm未満の場合、第一の金属板とセラミックスとの良好に接合できなくなるおそれがあるためである。
【0026】
また、前記アルミニウム板接合工程と前記ヒートシンク接合工程とを同時に行うことが好ましい。
この場合、前記第二の金属板と前記セラミックス基板、前記第二の金属板と前記ヒートシンク、を同時に接合する構成としていることから、前記第二の金属板の接合工程を1回で行うことができ、このヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造コストを大幅に削減することができる。また、セラミックス基板に不要な熱負荷が作用することがなく、反り等の発生を抑制することができる。さらに、セラミックス基板の他方の面側に、第二の金属板とヒートシンクとが同時に接合されることから、セラミックス基板の他方の面側に剛性の高い部材が一度に接合されることになり、接合時におけるセラミックス基板の反りの発生を抑制することができる。
【0027】
さらに、前記第二の金属板の接合界面に、前記添加元素とともにアルミニウムを配置することが好ましい。
この場合、前記添加元素とともにアルミニウムを配置しているので、第二の金属板の接合界面に溶融金属領域を確実に形成することが可能となる。また、添加元素の酸化損耗を抑制することができる。
【0028】
また、蒸着、CVD、スパッタリング、めっき又はペーストの塗布のいずれかから選択される手段により、前記第二の金属板の接合界面に前記添加元素を配置することが好ましい。
この場合、蒸着、CVD、スパッタリング、めっき又はペーストの塗布のいずれかから選択される手段によって、第二の金属板の接合界面に確実に添加元素を配置することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、第一の金属板の上に搭載された電子部品等の発熱体からの熱の放散を促進することができ、かつ、熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板の割れの発生を抑制し、信頼性の高いヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール、及び、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールの概略説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の第二の金属板の添加元素の濃度分布を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の第二の金属層及びヒートシンク(天板部)の添加元素の濃度分布を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の第二の金属板とセラミックス基板との接合界面の模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法のフロー図である。
【図6】本発明の第1の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【図7】図5におけるセラミックス基板と第二の金属板との接合界面近傍を示す説明図である。
【図8】図5における天板部と第二の金属板(金属層)との接合界面近傍を示す説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールの概略説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の第一の金属板とセラミックス基板との接合界面に拡大説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の第二の金属板の添加元素の濃度分布を示す説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の第二の金属層及びヒートシンク(天板部)の添加元素の濃度分布を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の第二の金属板とセラミックス基板との接合界面の模式図である。
【図14】本発明の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法のフロー図である。
【図15】本発明の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【図16】本発明の第3の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールの概略説明図である。
【図17】本発明の第3の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の第二の金属板の添加元素の濃度分布を示す説明図である。
【図18】本発明の第3の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の第二の金属層及びヒートシンク(天板部)の添加元素の濃度分布を示す説明図である。
【図19】本発明の第3の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の第二の金属板とセラミックス基板との接合界面の模式図である。
【図20】本発明の第3の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法のフロー図である。
【図21】本発明の第3の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【図22】本発明の他の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。
図1に本発明の第1の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板10及びこのヒートシンク付パワーモジュール用基板10を用いたパワーモジュール1を示す。
このパワーモジュール1は、ヒートシンク付パワーモジュール用基板10と、このヒートシンク付パワーモジュール用基板10の搭載面22A上にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3(電子部品)と、を備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。なお、本実施形態では、搭載面22Aとはんだ層2との間にNiメッキ層(図示なし)が設けられている。
【0032】
ヒートシンク付パワーモジュール用基板10は、セラミックス基板21と、このセラミックス基板21の一方の面(図1において上面)に接合された第一の金属板22と、セラミックス基板21の他方の面(図1において下面)に接合された第二の金属板23と、からなるパワーモジュール用基板20と、ヒートシンク11と、を備えている。
【0033】
セラミックス基板21は、第一の金属板22と第二の金属板23との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAl(アルミナ)で構成されている。また、セラミックス基板21の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0034】
第一の金属板22は、銅又は銅合金で構成されており、本実施形態では、タフピッチ銅の圧延板とされている。また、その板厚は0.1〜1.0mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.6mmに設定されている。
この第一の金属板22には、回路パターンが形成されており、その一方の面(図1において上面)が、半導体チップ3が搭載される搭載面22Aとされている。
【0035】
第二の金属板23は、耐力が30N/mm以下のアルミニウムで構成されており、本実施形態では純度99.99%以上の純アルミニウム(いわゆる4Nアルミ)で構成されている。また、その板厚は0.6〜6mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、2.0mmに設定されている。
【0036】
ヒートシンク11は、前述のパワーモジュール用基板20を冷却するためのものである。本実施形態におけるヒートシンク11は、パワーモジュール用基板20と接合される天板部12と、この天板部12に積層配置される冷却部材13と、を備えている。冷却部材13の内部には、冷却媒体が流通する流路14が形成されている。
ここで、天板部12と冷却部材13とは、固定ネジ15によって連結される構造とされている。このため、天板部12には、固定ネジ15をねじ込んでも容易に変形しないように剛性を確保する必要がある。そこで、本実施形態では、ヒートシンク11の天板部12を、耐力が100N/mm以上の金属材料で構成し、その厚さを2mm以上としている。なお、本実施形態では、天板部12は、A6063合金(アルミニウム合金)で構成されている。
【0037】
そして、図2に示すように、セラミックス基板21と第二の金属板23との接合界面30においては、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶している。
ここで、第二の金属板23の接合界面30近傍には、接合界面30から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が低下する濃度傾斜層31が形成されている。また、この濃度傾斜層31の接合界面30側(第二の金属板23の接合界面30近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、第二の金属板23の接合界面30近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面30から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図2のグラフは、第二の金属板23の中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
【0038】
また、図3に示すように、第二の金属板23とヒートシンク11の天板部12との接合界面40においては、第二の金属板23及び天板部12に、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶している。
ここで、第二の金属板23及び天板部12の接合界面40近傍には、接合界面40から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が低下する濃度傾斜層41、42が形成されている。また、この濃度傾斜層41、42の接合界面40側(第二の金属板23及び天板部12の接合界面40近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、この第二の金属板23及び天板部12の接合界面40近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面40から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図3のグラフは、第二の金属板23及び天板部12の中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
【0039】
また、セラミックス基板21と第二の金属板23との接合界面30を透過電子顕微鏡において観察した場合には、図4に示すように、接合界面30に添加元素(Cu)が濃縮した添加元素高濃度部32が形成されている。この添加元素高濃度部32においては、添加元素の濃度(Cu濃度)が、第二の金属板23中の添加元素の濃度(Cu濃度)の2倍以上とされている。なお、この添加元素高濃度部32の厚さHは4nm以下とされている。
【0040】
なお、ここで観察する接合界面30は、第二の金属板23の格子像の界面側端部とセラミックス基板21の格子像の接合界面30側端部との間の中央を基準面Sとする。また、第二の金属板23中の添加元素の濃度(Cu濃度)は、第二の金属板23のうち接合界面30から一定距離(本実施形態では5nm)離れた部分における添加元素の濃度(Cu濃度)である。
【0041】
また、この接合界面30をエネルギー分散型X線分析法(EDS)で分析した際のAl、添加元素(Cu)、Oの質量比が、Al:添加元素(Cu):O=50〜90質量%:1〜30質量%:45質量%以下の範囲内に設定されている。なお、EDSによる分析を行う際のスポット径は1〜4nmとされており、接合界面30を複数点(例えば、本実施形態では20点)で測定し、その平均値を算出している。また、第二の金属板23の結晶粒界とセラミックス基板21との接合界面30は測定対象とせず、第二の金属板23の結晶粒とセラミックス基板21との接合界面30のみを測定対象としている。また、エネルギー分散型X線分析法による分析値は、日本電子製の電子顕微鏡JEM−10Fに搭載したサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のエネルギー分散型蛍光X線元素分析装置NORAN System7を用いて加速電圧200kVで行った。
【0042】
以下に、前述の構成のヒートシンク付パワーモジュール用基板10の製造方法について、図5から図8を参照して説明する。
【0043】
まず、図5及び図6に示すように、銅からなる第一の金属板22と、セラミックス基板21とを接合する(銅板接合工程S01)。ここで、セラミックス基板21がAlで構成されていることから、銅からなる第一の金属板22とセラミックス基板21とを、銅と酸素の共晶反応を利用したDBC法により接合する。具体的には、タフピッチ銅からなる第一の金属板22と、セラミックス基板21とを接触させ、窒素ガス雰囲気中で1075℃で10分加熱することで、第一の金属板22と、セラミックス基板21とが接合されることになる。
【0044】
次に、セラミックス基板21の他方の面側に第二の金属板23を接合する(アルミニウム板接合工程S02)とともに、第二の金属板23とヒートシンク11の天板部12とを接合する(ヒートシンク接合工程S03)。本実施形態では、これらアルミニウム板接合工程S02と、ヒートシンク接合工程S03と、を同時に実施することになる。
【0045】
第二の金属板23のセラミックス基板21との接合面にスパッタリングによって添加元素(Cu)を固着して第1固着層51を形成するとともに、第二の金属板23のヒートシンク11の天板部12との接合面にスパッタリングによって添加元素(Cu)を固着して第2固着層52を形成する(固着層形成工程S11)。ここで、第1固着層51及び第2固着層52における添加元素量は0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされており、本実施形態では、添加元素としてCuを用いており、第1固着層51及び第2固着層52におけるCu量が0.08mg/cm以上2.7mg/cm以下に設定されている。
【0046】
次に、図6に示すように、第二の金属板23をセラミックス基板21の他方の面側に積層する。さらに、第二の金属板23の他方の面側にヒートシンク11の天板部12を積層する(積層工程S12)。
このとき、図6に示すように、第二の金属板23の第1固着層51が形成された面がセラミックス基板21を向くように、かつ、第二の金属板23の第2固着層52が形成された面が天板部12を向くようにして、これらを積層する。すなわち、第二の金属板23とセラミックス基板21との間に第1固着層51(添加元素:Cu)を介在させ、第二の金属板23と天板部12との間に第2固着層52(添加元素:Cu)を介在させているのである。
【0047】
次に、第一の金属板22及びセラミックス基板21、第二の金属板23、天板部12をその積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱する(加熱工程S13)。ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−3〜10−6Paの範囲内に設定し、加熱温度は550℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
【0048】
すると、図7に示すように、第二の金属板23とセラミックス基板21との界面に第1溶融金属領域55が形成されることになる。この第1溶融金属領域55は、図7に示すように、第1固着層51の添加元素(Cu)が第二の金属板23側に拡散することによって、第二の金属板23の第1固着層51近傍の添加元素の濃度(Cu濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
また、図8に示すように、第二の金属板23と天板部12との界面に第2溶融金属領域56が形成される。この第2溶融金属領域56は、図8に示すように、第2固着層52の添加元素(Cu)が第二の金属板23側及び天板部12側に拡散することによって、第二の金属板23及び天板部12の第2固着層52近傍の添加元素の濃度(Cu濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
【0049】
次に、第1溶融金属領域55、第2溶融金属領域56が形成された状態で温度を一定に保持しておく(溶融金属凝固工程S14)。
すると、第1溶融金属領域55中のCuが、さらに第二の金属板23側へと拡散していくことになる。これにより、第1溶融金属領域55であった部分のCu濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、セラミックス基板21と第二の金属板23とが接合される。
同様に、第2溶融金属領域56中のCuが、さらに第二の金属板23側及び天板部12側へと拡散し、第2溶融金属領域56であった部分のCu濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、第二の金属板23と天板部12とが接合される。
【0050】
つまり、セラミックス基板21と第二の金属板23、及び、天板部12と第二の金属板23とは、いわゆる拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合されているのである。このようにして凝固が進行した後に、常温にまで冷却を行う。
【0051】
このようにして、第一の金属板22、セラミックス基板21、第二の金属板23、ヒートシンク11の天板部12とが接合され、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板10が製造されることになる。
【0052】
以上のような構成とされた本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板10によれば、半導体チップ3が搭載される搭載面22Aを有する第一の金属板22が、タフピッチ銅で構成されているので、半導体チップ3から発生する熱を十分に拡げることができ、この熱の放散を促進することができる。よって、パワー密度の高い半導体チップ3等の電子部品を搭載することができ、半導体パッケージの小型化、高出力化を図ることが可能となる。
【0053】
また、ヒートシンク11の天板部12を、耐力が100N/mm以上の金属材料で構成され、その厚さが2mm以上のものとしており、本実施形態では、A6063合金(アルミニウム合金)で構成されたものとしていることから、剛性が高く、取扱いが容易となる。よって、図1に示すように、この天板部12を冷却部材13に固定ネジ15で固定することができ、冷却能力に優れたヒートシンク11を構成することが可能となる。
【0054】
さらに、ヒートシンク11の天板部12とセラミックス基板21との間に、耐力が30N/mm以下のアルミニウム(本実施形態では、純度99.99%以上の純アルミニウム)からなる第二の金属板23が配設されているので、ヒートシンク11の天板部12の剛性が高くても、ヒートシンク11の天板部12とセラミックス基板21との熱膨張係数の差に起因する熱歪みをこの第二の金属板23で十分に緩和することができ、セラミックス基板21の割れの発生を抑制することができる。特に、本実施形態では、第二の金属層の厚さを0.6〜6mmの範囲内としていることから、確実に熱歪みを吸収することができるとともに、この第二の金属板23による熱抵抗の増大を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、セラミックス基板21がAlで構成されているので、上述のように、タフピッチ銅からなる第一の金属板22とセラミックス基板21とを、酸素と銅との共晶反応を利用したDBC法によって接合することができる。よって、セラミックス基板21と第一の金属板22との接合強度を確保することができ、接合信頼性に優れたヒートシンク付パワーモジュール用基板10を構成することができる。
【0056】
また、第二の金属板23とセラミックス基板21との接合界面30、及び、第二の金属板23とヒートシンク11の天板部12との接合界面40には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶されているので、第二の金属板23の接合界面30、40側部分が固溶強化することになり、第二の金属板23部分での破断を防止することができる。
【0057】
ここで、第二の金属板23のうち接合界面30、40近傍における添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されているので、第二の金属板23の接合界面30、40近傍の強度が過剰に高くなることを防止でき、このヒートシンク付パワーモジュール用基板10に冷熱サイクルが負荷された際に、熱歪みを第二の金属板23で緩和することが可能となり、セラミックス基板21の割れの発生を抑制できる。
【0058】
また、第二の金属板23とセラミックス基板21との接合界面30には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、第二の金属板23中の前記添加元素の濃度の2倍以上とされた添加元素高濃度部32が形成されているので、界面近傍に存在する添加元素原子(Cu原子)により、第二の金属板23の接合強度の向上を図ることが可能となる。
【0059】
また、添加元素高濃度部32を含む接合界面30をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、添加元素(Cu)、Oの質量比が、Al:添加元素(Cu):O=50〜90質量%:1〜30質量%:45質量%以下とされているので、Alと添加元素(Cu)との反応物が過剰に生成されることがなく、第二の金属板23とセラミックス基板21との接合を良好に行うことができる。また、この反応物によって第二の金属板23の接合界面30近傍が必要以上に強化されることがなく、熱歪みを確実に吸収することが可能となり、熱サイクル負荷時のセラミックス基板21の割れの発生を抑制することができる。
【0060】
本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板10の製造方法によれば、前述したヒートシンク付パワーモジュール用基板10を製造することができる。また、アルミニウム板接合工程S02及びヒートシンク接合工程S03においては、第二の金属板23の接合界面30、40にSi,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素(本実施形態ではCu)を配置し、第二の金属板23を接合する構成としているので、第二の金属板23とセラミックス基板21、及び、第二の金属板23とヒートシンク11の天板部12、をそれぞれ強固に接合することができる。また、Si,Cu,Zn,Mg,Ge,Ca,Liといった元素は、アルミニウムの融点を降下させる元素であるため、比較的低温な条件においても、第二の金属板23の接合界面30、40に、第1溶融金属領域55、第2溶融金属領域56を形成することができる。
さらに、Cuが存在することによって接合界面30、40近傍が活性化すると推測され、低温状況下でもセラミックス基板21と第二の金属板23、天板部12と第二の金属板23、をそれぞれ強固に接合すること可能となるのである。
【0061】
また、本実施形態では、アルミニウム板接合工程S02及びヒートシンク接合工程S03においては、添加元素(Cu)が第二の金属板23側及び天板部12側に向けて拡散することにより、接合界面30、40に第1溶融金属領域55、第2溶融金属領域56を形成し、この第1溶融金属領域55、第2溶融金属領域56を凝固させることによって接合する、いわゆる拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合しているので、比較的低温条件で強固に接合することができ、接合信頼性に優れたヒートシンク付パワーモジュール用基板10を製造することができる。
【0062】
また、第二の金属板23の接合面に形成される第1固着層51及び第2固着層52における添加元素量は0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされており、本実施形態では、添加元素としてCuを用いており、第1固着層51及び第2固着層52におけるCu量が0.08mg/cm以上2.7mg/cm以下に設定されているので、第二の金属板23の接合界面30、40に確実に、第1溶融金属領域55、第2溶融金属領域56を形成することができる。また、添加元素(Cu)が過剰に第二の金属板23側に拡散して接合界面30、40近傍の第二の金属板23の強度が過剰に高くなることを防止できる。よって、ヒートシンク付パワーモジュール用基板10に熱サイクルが負荷された際に、熱歪みを第二の金属板23で確実に吸収することができ、セラミックス基板21の割れ等を防止できる。
【0063】
また、本実施形態では、アルミニウム板接合工程S02とヒートシンク接合工程S03とを同時に行う構成としているので、第二の金属板23の両面の接合工程を1回で行うことができ、このヒートシンク付パワーモジュール用基板10の製造コストを大幅に削減することができる。さらに、セラミックス基板21に不要な熱負荷が作用することがなく、反り等の発生を抑制することができる。
また、スパッタリングにより、第二の金属板23の接合面に添加元素(Cu)を固着させることで、第1固着層51及び第2固着層52を形成しているので、第二の金属板23の接合界面30、40に確実に添加元素を配置することができる。
【0064】
次に、本発明の第2の実施形態について、図9から図15を参照して説明する。
図9に示すパワーモジュール101は、ヒートシンク付パワーモジュール用基板110と、このヒートシンク付パワーモジュール用基板110の搭載面122A上にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3(電子部品)と、を備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。なお、本実施形態では、搭載面122Aとはんだ層2との間にNiメッキ層(図示なし)が設けられている。
【0065】
ヒートシンク付パワーモジュール用基板110は、セラミックス基板121と、このセラミックス基板121の一方の面(図9において上面)に接合された第一の金属板122と、セラミックス基板121の他方の面(図9において下面)に接合された第二の金属板123と、からなるパワーモジュール用基板120と、ヒートシンク111と、を備えている。
【0066】
セラミックス基板121は、第一の金属板122と第二の金属板123との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板121の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0067】
第一の金属板122は、銅又は銅合金で構成されており、本実施形態では、タフピッチ銅の圧延板とされている。また、その板厚は0.1 〜1.0mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.6 mmに設定されている。
この第一の金属板122には、回路パターンが形成されており、その一方の面(図9において上面)が、半導体チップ3が搭載される搭載面122Aとされている。
【0068】
ここで、セラミックス基板121と第一の金属板122との界面には、図10に示すように、Al層125が形成されている。本実施形態では、このAl層125の厚さは、1μm以上とされている。
【0069】
第二の金属板123は、耐力が30N/mm以下のアルミニウムで構成されており、本実施形態では純度99.99%以上の純アルミニウム(いわゆる4Nアルミ)で構成されている。また、その板厚は0.6〜6mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、2.0mmに設定されている。
【0070】
ヒートシンク111は、前述のパワーモジュール用基板120を冷却するためのものである。本実施形態におけるヒートシンク111は、パワーモジュール用基板120と接合される天板部112と、冷却媒体(例えば冷却水)を流通するための流路114と、を備えている。
ここで、ヒートシンク111(天板部112)は、熱伝導性が良好な材質で構成されることが望ましく、かつ、構造材としての剛性を確保する必要がある。そこで、本実施形態においては、ヒートシンク111の天板部112は、A6063(アルミニウム合金)で構成されている。
【0071】
そして、図11に示すように、セラミックス基板121と第二の金属板123との接合界面130においては、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてGeが固溶している。
ここで、第二の金属板123の接合界面130近傍には、接合界面130から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではGe濃度)が低下する濃度傾斜層131が形成されている。また、この濃度傾斜層131の接合界面130側(第二の金属板123の接合界面130近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではGe濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、第二の金属板123の接合界面130近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面130から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図11のグラフは、第二の金属板123の中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
【0072】
また、図12に示すように、第二の金属板123とヒートシンク111の天板部112との接合界面140においては、第二の金属板123及び天板部112に、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてGeが固溶している。
ここで、第二の金属板123及び天板部112の接合界面140近傍には、接合界面140から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではGe濃度)が低下する濃度傾斜層141、142が形成されている。また、この濃度傾斜層141、142の接合界面140側(第二の金属板123及び天板部112の接合界面140近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではGe濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、この第二の金属板123及び天板部112の接合界面140近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面140から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図12のグラフは、第二の金属板123及び天板部112の中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
【0073】
また、セラミックス基板121と第二の金属板123との接合界面130を透過電子顕微鏡において観察した場合には、図13に示すように、接合界面130に添加元素(Ge)が濃縮した添加元素高濃度部132が形成されている。この添加元素高濃度部132においては、添加元素の濃度(Ge濃度)が、第二の金属板123中の添加元素の濃度(Ge濃度)の2倍以上とされている。なお、この添加元素高濃度部132の厚さHは4nm以下とされている。
【0074】
なお、ここで観察する接合界面130は、図13に示すように、第二の金属板123の格子像の界面側端部とセラミックス基板121の格子像の接合界面130側端部との間の中央を基準面Sとする。また、第二の金属板123中の添加元素の濃度(Ge濃度)は、第二の金属板123のうち接合界面130から一定距離(本実施形態では5nm)離れた部分における添加元素の濃度(Ge濃度)である。
【0075】
また、この接合界面130をエネルギー分散型X線分析法(EDS)で分析した際のAl、添加元素(Ge)、O、Nの質量比が、Al:添加元素(Ge):O:N=50〜90質量%:1〜30質量%:1〜10質量%:25質量%以下の範囲内に設定されている。なお、EDSによる分析を行う際のスポット径は1〜4nmとされており、接合界面130を複数点(例えば、本実施形態では20点)で測定し、その平均値を算出している。また、第二の金属板123の結晶粒界とセラミックス基板121との接合界面130は測定対象とせず、第二の金属板123の結晶粒とセラミックス基板121との接合界面130のみを測定対象としている。
また、エネルギー分散型X線分析法による分析値は、日本電子製の電子顕微鏡JEM−2010Fに搭載したサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のエネルギー分散型蛍光X線元素分析装置NORAN System7を用いて加速電圧200kVで行った。
【0076】
以下に、前述の構成のヒートシンク付パワーモジュール用基板110の製造方法について説明する。
【0077】
まず、図14及び図15に示すように、AlNからなるセラミックス基板121の一方の面に、Al層125を形成する(アルミナ層形成工程S100)。このアルミナ層形成工程S100においては、AlNの酸化処理を1200℃以上でAr−O混合ガス雰囲気にて行った。酸素分圧PO2を10kPaとし、水蒸気分圧PH2Oを0.05kPaに調整した。このように、高酸素分圧/低水蒸気分圧雰囲気にてAlNの酸化処理を行うことにより、AlNとの密着性に優れた緻密なAl層125が形成されることになる。ここで、Al層125の厚さは1μm以上とされている。
なお、高純度のArガスを脱酸処理した後に酸素ガスを混合することによって酸素分圧を調整した。また、この雰囲気ガスをシリカゲルと五酸化二リンを充填した乾燥系に通すことで脱水処理を行った後に所定温度に調整された水中を通過させることによって水蒸気分圧を調整した。
【0078】
次に、銅からなる第一の金属板122と、セラミックス基板121とを接合する(銅板接合工程S101)。ここで、AlNからなるセラミックス基板121の一方の面にAl層125が形成されていることから、銅からなる第一の金属板122とAl層125とが、銅と酸素の共晶反応を利用したDBC法により接合されることになる。具体的には、タフピッチ銅からなる第一の金属板122と、セラミックス基板121のAl層125とを接触させ、窒素ガス雰囲気中で1075℃で10分加熱することで、第一の金属板122と、セラミックス基板121のAl層125とを接合するのである。
【0079】
次に、セラミックス基板121の他方の面側に第二の金属板123を接合する(アルミニウム板接合工程S102)とともに、第二の金属板123とヒートシンク111(天板部112)とを接合する(ヒートシンク接合工程S103)。本実施形態では、これらアルミニウム板接合工程S102と、ヒートシンク接合工程S103と、を同時に実施することになる。
【0080】
第二の金属板123のセラミックス基板121との接合面にスパッタリングによって添加元素を固着して第1固着層151を形成するとともに、第二の金属板123のヒートシンク111(天板部112)との接合面にスパッタリングによって添加元素を固着して第2固着層152を形成する(固着層形成工程S111)。ここで、第1固着層151及び第2固着層152における添加元素量は0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされており、本実施形態では、添加元素としてGeを用いており、第1固着層151及び第2固着層152におけるGe量が0.01mg/cm以上10mg/cm以下に設定されている。
【0081】
次に、図15に示すように、第二の金属板123をセラミックス基板121の他方の面側に積層する。さらに、第二の金属板123の他方の面側にヒートシンク111の天板部112を積層する(積層工程S112)。
このとき、図15に示すように、第二の金属板123の第1固着層151が形成された面がセラミックス基板121を向くように、かつ、第二の金属板123の第2固着層152が形成された面が天板部112を向くようにして、これらを積層する。すなわち、第二の金属板123とセラミックス基板121との間に第1固着層151(添加元素:Ge)を介在させ、第二の金属板123と天板部112との間に第2固着層152(添加元素:Ge)を介在させているのである。
【0082】
次に、第一の金属板122及びセラミックス基板121、第二の金属板123、天板部112をその積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱する(加熱工程S113)。ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−3〜10−6Paの範囲内に、加熱温度は550℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
【0083】
すると、第二の金属板123とセラミックス基板121との界面に第1溶融金属領域が形成されることになる。この第1溶融金属領域は、第1固着層151の添加元素(Ge)が第二の金属板123側に拡散することによって、第二の金属板123の第1固着層151近傍の添加元素の濃度(Ge濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
また、第二の金属板123と天板部112との界面に第2溶融金属領域が形成される。この第2溶融金属領域は、第2固着層152の添加元素(Ge)が第二の金属板123側及び天板部112側に拡散することによって、第二の金属板123及び天板部112の第2固着層152近傍の添加元素の濃度(Ge濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
【0084】
次に、第1溶融金属領域、第2溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持しておく(溶融金属凝固工程S114)。
すると、第1溶融金属領域中のGeが、さらに第二の金属板123側へと拡散していくことになる。これにより、第1溶融金属領域であった部分のGe濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、セラミックス基板121と第二の金属板123とが接合される。
同様に、第2溶融金属領域中のGeが、さらに第二の金属板123側及び天板部112側へと拡散し、第2溶融金属領域であった部分のGe濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、第二の金属板123と天板部112とが接合される。
【0085】
つまり、セラミックス基板121と第二の金属板123、及び、天板部112と第二の金属板123とは、いわゆる拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合されているのである。このようにして凝固が進行した後に、常温にまで冷却を行う。
【0086】
このようにして、第一の金属板122、セラミックス基板121、第二の金属板123、ヒートシンク111(天板部112)とが接合され、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板110が製造されることになる。
【0087】
以上のような構成とされた本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板110によれば、上述の第1の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板と同様の作用効果を奏することになり、第一の金属板122の上に搭載された半導体チップ3等の発熱体からの熱を効率良く促進することができ、かつ、熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板121の割れの発生を抑制し、信頼性の高いヒートシンク付パワーモジュール用基板110を提供することが可能となる。
【0088】
また、本実施形態では、AlNからなるセラミックス基板121の一方の面に、Al層125を形成し、このAl層125を介して、銅からなる第一の金属板122とセラミックス基板121とをDBC法によって接合していることから、第一の金属板122とセラミックス基板121とを強固に接合することができる。よって、AlNからなるセラミックス基板121であっても、DBC法を利用して銅からなる第一の金属板122を接合することが可能となる。
【0089】
さらに、アルミナ層形成工程S100において、形成するAl層125の厚さを1μm以上としているので、第一の金属板122とセラミックス基板121とを確実に接合することが可能となる。
また、本実施形態では、高酸素分圧/低水蒸気分圧雰囲気にてAlNの酸化処理を行うことにより、AlNとの密着性に優れた緻密なAl層125を形成しているので、AlNからなるセラミックス基板121とAl層125との間での剥離の発生を防止することが可能となる。
【0090】
次に、本発明の第3の実施形態について、図16から図18を参照して説明する。
図16に示すパワーモジュール201は、ヒートシンク付パワーモジュール用基板210と、このヒートシンク付パワーモジュール用基板210の搭載面222A上にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3(電子部品)と、を備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。なお、本実施形態では、搭載面222Aとはんだ層2との間にNiメッキ層(図示なし)が設けられている。
【0091】
ヒートシンク付パワーモジュール用基板210は、セラミックス基板221と、このセラミックス基板221の一方の面(図16において上面)に接合された第一の金属板222と、セラミックス基板221の他方の面(図16において下面)に接合された第二の金属板223とを備えたパワーモジュール用基板220と、ヒートシンク211と、を備えている。
【0092】
セラミックス基板221は、第一の金属板222と第二の金属板223との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いSi(窒化ケイ素)で構成されている。また、セラミックス基板221の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.32mmに設定されている。
【0093】
第一の金属板222は、銅又は銅合金で構成されており、本実施形態では、タフピッチ銅の圧延板とされている。また、その板厚は0.1〜1.0mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.6mmに設定されている。
この第一の金属板222には、回路パターンが形成されており、その一方の面(図16において上面)が、半導体チップ3が搭載される搭載面222Aとされている。
【0094】
第二の金属板223は、耐力が30N/mm以下のアルミニウムで構成されており、本実施形態では純度99.99%以上の純アルミニウム(いわゆる4Nアルミ)で構成されている。また、その板厚は0.6〜6mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、2.0mmに設定されている。
【0095】
ヒートシンク211は、前述のパワーモジュール用基板220を冷却するためのものである。本実施形態におけるヒートシンク211は、パワーモジュール用基板220と接合される天板部212と、冷却媒体(例えば冷却水)を流通するための流路214と、を備えている。
ここで、ヒートシンク211(天板部212)は、熱伝導性が良好な材質で構成されることが望ましく、かつ、構造材としての剛性を確保する必要がある。そこで、本実施形態においては、ヒートシンク211の天板部212は、A6063(アルミニウム合金)で構成されている。
【0096】
そして、図17に示すように、セラミックス基板221と第二の金属板223との接合界面230においては、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶している。
ここで、第二の金属板223の接合界面230近傍には、接合界面230から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が低下する濃度傾斜層231が形成されている。また、この濃度傾斜層231の接合界面230側(第二の金属板223の接合界面230近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、第二の金属板223の接合界面230近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面230から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図17のグラフは、第二の金属板223の中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
【0097】
また、図18に示すように、第二の金属板223とヒートシンク211の天板部212との接合界面240においては、第二の金属板223及び天板部212に、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶している。
ここで、第二の金属板223及び天板部212の接合界面240近傍には、接合界面240から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が低下する濃度傾斜層241、242が形成されている。また、この濃度傾斜層241、242の接合界面240側(第二の金属板223及び天板部212の接合界面240近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、この第二の金属板223及び天板部212の接合界面240近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面240から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図12のグラフは、第二の金属板223及び天板部212の中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
【0098】
また、セラミックス基板221と第二の金属板223との接合界面230を透過電子顕微鏡において観察した場合には、図19に示すように、接合界面230に添加元素(Cu)が濃縮した添加元素高濃度部232が形成されている。この添加元素高濃度部232においては、添加元素の濃度(Cu濃度)が、第二の金属板223中の添加元素の濃度(Si濃度)の2倍以上とされている。なお、この添加元素高濃度部232の厚さHは4nm以下とされている。
【0099】
なお、ここで観察する接合界面230は、図19に示すように、第二の金属板223の格子像の界面側端部とセラミックス基板221の格子像の接合界面230側端部との間の中央を基準面Sとする。また、第二の金属板223中の添加元素の濃度(Cu濃度)は、第二の金属板223のうち接合界面230から一定距離(本実施形態では5nm)離れた部分における添加元素の濃度(Cu濃度)である。
【0100】
また、この接合界面230をエネルギー分散型X線分析法(EDS)で分析した際のAl、Si、添加元素(Cu)、O、Nの質量比が、Al:Si:添加元素(Cu):O:N=15〜45質量%:15〜45質量%:1〜30質量%:2〜20質量%:25質量%以下の範囲内に設定されている。なお、EDSによる分析を行う際のスポット径は1〜4nmとされており、接合界面230を複数点(例えば、本実施形態では20点)で測定し、その平均値を算出している。また、第二の金属板223の結晶粒界とセラミックス基板121との接合界面230は測定対象とせず、第二の金属板223の結晶粒とセラミックス基板221との接合界面230のみを測定対象としている。
また、エネルギー分散型X線分析法による分析値は、日本電子製の電子顕微鏡JEM−2010Fに搭載したサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のエネルギー分散型蛍光X線元素分析装置NORAN System7を用いて加速電圧200kVで行った。
【0101】
以下に、前述の構成のヒートシンク付パワーモジュール用基板210の製造方法について説明する。
【0102】
まず、図20及び図21に示すように、銅からなる第一の金属板222と、セラミックス基板221とを接合する(銅板接合工程S201)。ここで、Siからなるセラミックス基板221と第一の金属板222とは、いわゆる活性金属法によって接合されている。この活性金属法では、図21に示すように、セラミックス基板221と第一の金属板222との間に、Ag−Cu−Tiからなるろう材225を配設して、セラミックス基板221と第一の金属板222とを接合するものである。
なお、本実施形態では、Ag−27.4質量%Cu−2.0質量%Tiからなるろう材225を用いて、10−3Paの真空中にて、850℃で10分加熱することによって、セラミックス基板221と第一の金属板222とを接合している。
【0103】
次に、セラミックス基板221の他方の面側に第二の金属板223を接合する(アルミニウム板接合工程S202)とともに、第二の金属板223とヒートシンク211(天板部212)とを接合する(ヒートシンク接合工程S203)。本実施形態では、これらアルミニウム板接合工程S202と、ヒートシンク接合工程S203と、を同時に実施することになる。
【0104】
第二の金属板223のセラミックス基板221との接合面にスパッタリングによって添加元素(Cu)を固着して第1固着層251を形成するとともに、第二の金属板223のヒートシンク211の天板部212との接合面にスパッタリングによって添加元素(Cu)を固着して第2固着層252を形成する(固着層形成工程S211)。ここで、第1固着層251及び第2固着層252における添加元素量は0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされており、本実施形態では、添加元素としてCuを用いており、第1固着層251及び第2固着層252におけるCu量が0.08mg/cm以上2.7mg/cm以下に設定されている。
【0105】
次に、図21に示すように、第二の金属板223をセラミックス基板221の他方の面側に積層する。さらに、第二の金属板223の他方の面側にヒートシンク211の天板部212を積層する(積層工程S212)。
【0106】
そして、第一の金属板222及びセラミックス基板221、第二の金属板223、天板部212をその積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱する(加熱工程S213)。ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−3〜10−6Paの範囲内に、加熱温度は550℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
すると、第二の金属板223とセラミックス基板221との界面に第1溶融金属領域が形成され、第二の金属板223と天板部212との界面に第2溶融金属領域が形成されることになる。
【0107】
次に、冷却を行うことで第1溶融金属領域、第2溶融金属領域を凝固させる(溶融金属凝固工程S214)。
【0108】
このようにして、第一の金属板222、セラミックス基板221、第二の金属板223、ヒートシンク211(天板部212)とが接合され、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板210が製造されることになる。
【0109】
以上のような構成とされた本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板210によれば、上述の第1、第2の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板と同様の作用効果を奏することになり、第一の金属板222の上に搭載された半導体チップ3等の発熱体からの熱を効率良く促進することができ、かつ、熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板221の割れの発生を抑制し、信頼性の高いヒートシンク付パワーモジュール用基板210を提供することが可能となる。
【0110】
また、Ag−Cu−Tiのろう材225を用いた活性金属法によって、第一の金属板222とセラミックス基板221とを接合しているので、第一の金属板222及びセラミックス基板221に酸素を介在させることなく、パワーモジュール用基板220を構成することができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第二の金属板を、純度99.99%以上の純アルミニウムの圧延板としたものとして説明したが、これに限定されることはなく、耐力が30N/mm以下のアルミニウムで構成されたものであればよい。
【0112】
また、第2の実施形態において、AlNを酸化処理することによってAl層を形成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の手段によってセラミックス基板の表面にAl層を形成してもよい。
さらに、第1の実施形態及び第2の実施形態における固着層形成工程において、スパッタによって添加元素を固着するものとして説明したが、これに限定されることはなく、蒸着、CVD、めっき又はペーストの塗布によって添加元素を固着させてもよい。
【0113】
また、第二の金属板とセラミックス基板、第二の金属板と天板部、との間に、それぞれ1種の添加元素を配置して接合するものとして説明したが、これに限定されることはなく、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を配設してもよい。
さらに、MgやCa等の易酸化元素を用いる場合には、アルミニウムとともに添加元素を配設することが好ましい。これにより、MgやCa等の易酸化元素が酸化損耗することを抑制することができる。
【0114】
また、本実施形態では、ヒートシンクの天板部をA6063合金で構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、A1100合金、A3003合金、A5052合金、A7N01合金等の他の金属材料で構成されたものであってもよい。
さらに、ヒートシンクの構造は、本実施形態に限定されることはなく、他の構造のヒートシンクを採用してもよい。
【0115】
また、本実施形態では、ヒートシンクの上に一つのパワーモジュール用基板が接合された構成として説明したが、これに限定されることはなく、一つのヒートシンクの上に複数のパワーモジュール用基板が接合されていてもよい。
【0116】
さらに、図22に示すように、第二の金属板323を、複数の金属板323A、323Bを積層した構造としてもよい。この場合、第二の金属板323のうち一方側(図22において上側)に位置する金属板323Aがセラミックス基板321に接合され、他方側(図22において下側)に位置する金属板323Bがヒートシンク311の天板部312に接合されることになる。なお、図22では、2枚の金属板323A、323Bを積層させたものとしているが、積層する枚数に制限はない。また、図22に示すように、積層する金属板同士の大きさ、形状が異なっていても良いし、同じ大きさ、形状に調整されたものであってもよい。さらに、これらの金属板の組成が異なっていても良い。
【実施例】
【0117】
本発明の有効性を確認するために行った比較実験について説明する。
Alからなる厚さ0.635mmのセラミックス基板と、タフピッチ銅の圧延板からなる厚さ0.6mmの第一の金属板と、アルミニウムからなる厚さ2.0mmの第二の金属板と、を準備した。ここで、第二の金属板においては、アルミニウムの純度を変更することにより、耐力が10N/mm、25N/mm、35N/mmの3種類を準備した。
また、ヒートシンクとしてアルミニウム板を準備した。ここで、ヒートシンクとなるアルミニウム板として、耐力が145N/mmで厚さ5.0mm(A6063合金)、耐力が110N/mmで厚さ3.0mm(A3003合金)、耐力が95N/mmで厚さ5.0mm(Al−Si合金)、耐力が145N/mmで厚さ1.0mm(A6063合金)の4種類を準備した。
【0118】
これらのセラミックス基板、第一の金属板、第二の金属板、ヒートシンクを、第1の実施形態に記載された方法により接合し、表1に示すように、6種類のヒートシンク付パワーモジュール用基板を製造した。なお、固着層形成工程S11におけるCu量は0.9mg/cmとした。また、加熱工程S13における加圧圧力を5kgf/cm、加熱温度を610℃、真空加熱炉内の圧力を10−4Paとした。
【0119】
そして、これらのヒートシンク付パワーモジュール用基板に、冷熱サイクル(−45℃−125℃)を2000回繰り返し、セラミックス基板の割れの有無について確認した。また、ヒートシンクの変形についても確認した。評価結果を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
第二の金属板の耐力を35N/mmとした比較例1においては、セラミックス基板に割れが確認された。ヒートンシンクとセラミックス基板との熱膨張係数の差に起因する熱歪みを、第二の金属板で十分緩和することができなかったためと推測される。
また、ヒートシンクを構成するアルミニウム板を耐力が95N/mmで厚さ5.0mm(Al−Si合金)とした比較例2、耐力が145N/mmで厚さ1.0mm(A6063合金)とした比較例3においては、ヒートシンクの強度が不十分であってヒートシンクに変形が生じた。
【0122】
これに対して、耐力が30N/mm以下のアルミニウムからなる第二の金属板と、耐力が100N/mm以上で厚さが2mm以上とされたヒートシンクと、を備えた実施例1−3においては、セラミックス基板に割れは確認されなかった。また、ヒートシンクの変形も認められなかった。
【符号の説明】
【0123】
1、101、201、301 パワーモジュール
3 半導体チップ(電子部品)
10、110、210、310 ヒートシンク付パワーモジュール用基板
11、111、211、311 ヒートシンク
12、112、212、312 天板部
20、120、220、320 パワーモジュール用基板
21、121、221、321 セラミックス基板
22、122、222、322 第一の金属板
22A、122A、222A、322A 搭載面
23、123、223、323 第二の金属板
30、130、230 接合界面(セラミックス基板/第二の金属板)
32、132、232 添加元素高濃度部
40、140、240 接合界面(第二の金属板/天板部)
55 第1溶融金属領域(溶融金属領域)
56 第2溶融金属領域(溶融金属領域)
125 Al

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板と、該セラミックス基板の一方の面に接合された第一の金属板と、前記セラミックス基板の他方の面に接合された第二の金属板と、該第二の金属板の他方の面側に接合されたヒートシンクと、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板であって、
前記第一の金属板は、銅又は銅合金で構成され、この第一の金属板の一方の面が電子部品が搭載される搭載面とされており、
前記第二の金属板は、耐力が30N/mm以下のアルミニウムで構成されており、
前記ヒートシンクは、耐力が100N/mm以上の金属材料で構成され、その厚さが2mm以上とされていることを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板。
【請求項2】
前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面又は前記ヒートシンクとの接合界面の少なくともいずれか一方には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、前記第二の金属板のうち接合界面近傍における前記添加元素の濃度の合計が0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板。
【請求項3】
前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素の濃度が、前記第二の金属板中の前記添加元素の濃度の2倍以上とされた添加元素高濃度部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板。
【請求項4】
前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面に、前記添加元素高濃度部が形成されており、
前記セラミックス基板がAlで構成され、前記セラミックス基板との接合界面に形成された前記添加元素高濃度部を含む前記接合界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、添加元素、Oの質量比が、Al:添加元素:O=50〜90質量%:1〜30質量%:45質量%以下とされていることを特徴とする請求項3に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板。
【請求項5】
前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面に、前記添加元素高濃度部が形成されており、
前記セラミックス基板がAlNで構成され、前記セラミックス基板との接合界面に形成された前記添加元素高濃度部を含む前記接合界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、添加元素、O、Nの質量比が、Al:添加元素:O:N=50〜90質量%:1〜30質量%:1〜10質量%:25質量%以下とされていることを特徴とする請求項3に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板。
【請求項6】
前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面に、前記添加元素高濃度部が形成されており、
前記セラミックス基板がSiで構成され、前記添加元素がCu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上とされており、
前記セラミックス基板との接合界面に形成された前記添加元素高濃度部を含む前記接合界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、Si、添加元素、O、Nの質量比が、Al:Si:添加元素:O:N=15〜45質量%:15〜45質量%:1〜30質量%:2〜20質量%:25質量%以下とされていることを特徴とする請求項3に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板。
【請求項7】
前記セラミックス基板がAlNからなり、前記セラミックス基板のうち少なくとも一方の面には、Al層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板と、前記第一の金属板上に搭載された電子部品と、を備えたことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項9】
セラミックス基板と、該セラミックス基板の一方の面に接合された第一の金属板と、前記セラミックス基板の他方の面に接合された第二の金属板と、該第二の金属板の他方の面側に接合されたヒートシンクと、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記第一の金属板は、銅又は銅合金で構成され、前記第二の金属板は、耐力が30N/mm以下のアルミニウムで構成され、前記ヒートシンクは、耐力が100N/mm以上の金属材料で構成されており、
前記第一の金属板と前記セラミックス基板とを接合する銅板接合工程と、前記第二の金属板と前記セラミックス基板とを接合するアルミニウム板接合工程と、前記第二の金属板と前記ヒートシンクとを接合するヒートシンク接合工程と、を備えており、
前記アルミニウム板接合工程又は前記ヒートシンク接合工程のうち少なくともいずれか一方においては、前記第二の金属板の接合界面にSi,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を配置し、前記第二の金属板を接合することを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項10】
前記アルミニウム板接合工程又は前記ヒートシンク接合工程のうち少なくともいずれか一方においては、前記添加元素が前記第二の金属板側に向けて拡散することにより、接合界面に溶融金属領域を形成し、この溶融金属領域を凝固させることによって接合することを特徴とする請求項9に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項11】
前記第二の金属板の接合界面に配置される前記添加元素量が、0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項12】
前記銅板接合工程の前に、前記セラミックス基板の少なくとも一方の面にAl層を形成するアルミナ層形成工程を行うことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項13】
前記アルミニウム板接合工程と前記ヒートシンク接合工程とを同時に行うことを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項14】
前記第二の金属板の接合界面に、前記添加元素とともにアルミニウムを配置することを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項15】
蒸着、CVD、スパッタリング、めっき又はペーストの塗布のいずれかから選択される手段により、前記第二の金属板の接合界面に前記添加元素を配置することを特徴とする請求項9から請求項14のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2012−64801(P2012−64801A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208350(P2010−208350)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】