説明

フィルム露光装置及びフィルム露光方法

【課題】フィルムを連続露光する際のアライメントマークの形成が容易であり、フィルムの蛇行を精度良く補正して、安定的に露光できるフィルム露光装置及びフィルム露光方法を提供する。
【解決手段】フィルム基材20の幅方向の両側のフィルム基材送給用領域の少なくとも一方に側部露光材料膜を形成し、アライメントマーク形成部14により、露光光を照射してアライメントマーク2aを形成し、このアライメントマーク2aを使用して、フィルム蛇行を検出してマスク12の位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム露光装置及びフィルム露光方法に関し、特にフィルムを連続露光する際に、フィルムの蛇行を精度良く補正して、安定的に露光できるフィルム露光装置及びフィルム露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば平板状の基板等の部材を露光する際には、その露光位置を精度よく管理するために、例えば表面上に所定のマーキングを施した基板を使用し、このマーキングにより、露光に使用するマスクの位置を決定したり(例えば、特許文献1乃至3)、基板を載置するパレットに位置合わせ用のピンを設置することが行われている(例えば、特許文献4)。
【0003】
しかしながら、ロールトゥロール方式のように露光対象であるフィルムが連続的に露光装置内に供給されてくる場合には、上記のような平板状部材の露光における位置合わせ技術を適用することが難しい。即ち、ロールトゥロール方式のフィルムの製造ラインにおいては、露光対象となるフィルムは、例えば図8に示すような工程で、露光装置1内に供給され、平板状の基板等を露光する場合とは異なり、搬送中のフィルム1には、その柔軟性により、容易に波打ちが発生する。
【0004】
また、図8に示すようなロールトゥロール方式のフィルムの製造ラインにおいては、あらゆる加工工程において、フィルムの柔軟性を利用した処理が行われている。即ち、フィルム2は、供給リール80から巻き解かれてラインに供給され、前処理部3において例えばドライ洗浄及び表面改質等の前処理が施され、スリットコーター4にて表面に所定の材料が塗工された後、塗工された材料が乾燥装置5にて乾燥される。そして、表面上に材料膜が形成されたフィルム2は、露光装置1に供給され、材料膜が露光装置1にて露光される。このとき、フィルム2は、各装置間を例えばローラ9により支持されて、その回転により搬送される。よって、特許文献1乃至4に開示された技術をロールトゥロール方式のフィルム2の露光に適用することは困難である。
【0005】
ロールトゥロール方式でフィルムを露光する場合におけるマスクの位置合わせ技術としては、例えば特許文献5に開示されたものがある。特許文献5には、1枚のフィルムに露光を2度に分けて行う技術が開示されており、フィルムに1回目の露光を施してパターンを形成した後、2回目の露光の際には、このパターンをラインCCDで検出することにより、マスクの位置を調節する技術が開示されている。なお、この特許文献5の図2に示されているように、フィルムの幅方向の両側の帯状の部分は露光領域ではない。
【0006】
図9は、露光光を出射する露光光源11が1個のマスク12に対応して1対ずつ向かい合わせて配置され、露光対象の例えば基板20に対して、互いに異なる方向から露光光を照射する型式の従来の露光装置を一例として示す図である。このような型式の露光装置は、例えば液晶ディスプレイ等のガラス基板上に配向膜を形成する際の露光工程において使用されており、ガラス基板上の1絵素となる領域を2個の領域に分割し、夫々の領域で配向膜を互いに異なる方向に配向させ、これにより、ガラス基板間に挟持する液晶の分子を配向膜の配向方向に応じて配向させ、これにより、液晶ディスプレイ等の視野角を広げることができる技術として、近時、注目を集めている。
【0007】
このような露光装置によりフィルムを露光する際には、フィルムには、搬送中に波打ちが発生しやすく、これにより、露光位置のずれが発生するという問題点がある。この露光位置のずれの影響を低減するために、例えば、上記のようなフィルムの移動方向に複数の光源を配置した構成の露光装置においては、例えば図10に示すように、マスクを複数個に分割し、更に、千鳥状に配置することが行われている。そして、図10に示すように、フィルムが供給されてくる上流側にて、互いに離隔して配置されたマスク121及び122により、フィルム2を露光領域A及びCで露光し、下流側にて、露光領域A及びC間の領域Bをマスク123により露光し、露光領域Cに隣接する領域Dをマスク124により露光することが行われている。これにより、フィルム2のほぼ全面に配向分割したパターンを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−294252号公報
【特許文献2】特開2005−283896号公報
【特許文献3】特開2005−316411号公報
【特許文献4】国際公開第08/139643号
【特許文献5】特開2006−292919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術には、以下のような問題点がある。即ち、特許文献5の技術は、1枚のフィルムに露光操作を2度に分けて行う必要があり、生産性が悪い。
【0010】
また、フィルムの移動方向に複数の光源を配置した構成の露光装置においては、図9に示すように、露光用の露光光源11を内蔵している部分(露光光源11の筐体部分)は、1光源につき、例えばフィルムの移動方向に約2m程度の長さを有しており、図10に示すような露光領域A及びCと露光領域B及びDとの間の距離は、少なくとも4m程度と長くなる。よって、上流側の露光領域A及びCから下流側の露光領域B及びDへの搬送中に、フィルムが容易に波打つだけではなく、その幅方向にもずれやすいという問題点がある。従って、フィルムの移動方向下流側の露光領域において、フィルムの幅方向の位置ずれにより、露光領域が重なってしまったり、未露光の領域が発生してしまう。
【0011】
この問題点を解決するために、本願発明者等は、特願2010−089608号において、従来ではフィルム送給用の領域として使用され露光材料が塗布されていない領域にアライメントマークを形成し、フィルムの移動方向下流側にてアライメントマークのフィルム幅方向のずれを検出することにより、下流側のマスク123及び124の位置をフィルムの幅方向に調節して露光領域のずれを補正する技術を提案した。
【0012】
フィルムの縁部にアライメントマークを形成する方法としては、フィルムに機械的に穴をあけるか、又はレーザ等によるマーキングを行うことが考えられるが、機械的なマーキングについては、その加工の際に、フィルムに振動が加わって加工精度が低下するため、実用には適さない。また、マーキングを施す対象のフィルムは、通常、透明であり、レーザ等によるマーキングにおいては、レーザ光がフィルムを透過しやすい。よって、マーキングに例えば波長が266nmの紫外光を使用した場合においては、レーザ光の照射エネルギーを例えば8J/cmと極めて大きくしないとアライメントマークの形成が難しいという問題点がある。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、フィルムを連続露光する際のアライメントマークの形成が容易であり、フィルムの蛇行を精度良く補正して、安定的に露光できるフィルム露光装置及びフィルム露光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るフィルム露光方法は、フィルム基材上に露光材料膜が形成されたフィルムを、このフィルムが巻回された供給リールから、露光後のフィルムが巻き取られる巻取リールまで移動させる間に、前記フィルムの前記露光材料膜に、マスクを介して露光光を照射することにより、前記露光材料膜に前記マスクのパターンを露光するフィルム露光方法において、前記フィルム基材の幅方向の両側のフィルム基材送給用領域の少なくとも一方に、このフィルム基材送給用領域間の露光領域と同様に、側部露光材料膜を形成し、この側部露光材料膜にアライメントマーク用露光光を照射してアライメントマークを形成し、このアライメントマークを使用してフィルム蛇行を検出し、前記マスクの位置を調整することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るフィルム露光装置は、露光光を出射する露光光源と、フィルムに露光すべきパターンが形成されたマスクと、前記露光光源から出射した露光光を前記マスクを介して前記フィルムに照射する光学系と、フィルム基材上に露光材料膜が形成されたフィルムを、このフィルムが巻回された供給リールから、露光後のフィルムが巻き取られる巻取リールまで移動させ、その間に前記マスク及び前記光学系による露光位置を通過させるフィルム搬送部と、前記フィルム基材の幅方向の両側のフィルム基材送給領域の少なくとも一方にアライメントマーク形成用のレーザ光を照射するアライメントマーク用光源と、前記アライメントマークを使用してフィルム蛇行を検出し、前記マスクの位置を調整する制御部と、を有し、前記フィルムは、前記アライメントマーク用光源からのレーザ光が照射される領域に側部露光材料膜が形成されており、前記レーザ光による照射により前記側部露光材料膜にアライメントマークを形成することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るフィルム露光装置及びフィルム露光方法において、例えば前記露光光と前記アライメントマーク用露光光とは、別種のレーザ光が使用されるか、又は同一のレーザ光が兼用される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るフィルム露光装置及びフィルム露光方法においては、アライメントマーク用光源により、フィルム基材の幅方向の両側のフィルム基材送給領域の少なくとも一方にアライメントマーク形成用のレーザ光を照射する。そして、フィルムの側部露光材料膜が形成された領域にアライメントマーク用光源からのレーザ光を照射してアライメントマークを形成する。これにより、従来は露光材料膜が形成されていないフィルムの側部にも露光材料膜を形成し、これを露光することによりアライメントマークを形成するため、アライメントマークの形成が容易である。
【0018】
また、精度よく形成されたアライメントマークにより、フィルムの蛇行を検出してマスクの位置を精度良く調整できるため、安定的にフィルムを露光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、アライメントマークによるフィルムの幅方向のずれの補正を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、下流側のマスクによる露光工程を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、マスクを示す平面図である。
【図4】フィルム位置の制御部を一例として示す図である。
【図5】引き込みマーク形成部を一例として示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、上流側のマスクによる露光工程を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、引き込みマークによるマスク位置の補正を示す図である。
【図8】ロールトゥロール方式のフィルム製造ラインの一例を示す図である。
【図9】配向分割方式の露光装置を一例として示す斜視図である。
【図10】フィルムの移動方向に複数の光源を配置した構成の露光装置を一例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。先ず、本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置の構成について説明する。図1は本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、アライメントマークによるフィルムの幅方向のずれの補正を示す図、図2は本発明の実施形態に係るフィルムの露光方法において、下流側のマスクによる露光工程を示す図である。本実施形態に係るフィルムの露光装置1は、露光光を出射する露光光源11と、マスク12と、露光光源11から出射した露光光をマスク12を介してフィルム2に照射する光学系と、フィルム2を搬送する例えば搬送ローラ等のフィルム搬送部と、フィルム2の縁部にアライメントマーク2aを形成するアライメント用レーザマーカ14(アライメントマーク用光源)と、により構成されている。そして、従来と同様に、例えばコリメータレンズ及び/又は反射鏡等の光学系により、露光光源11から出射した露光光をマスク12を介してフィルム2に照射し、フィルム基材20の幅方向中央の領域において、フィルム基材20上に形成された露光材料膜21を露光する。
【0021】
また、本実施形態に係る露光装置1は、例えば図2及び図3に示すように、搬送ローラ等のフィルム供給部に近接して配置されたレーザマーカ13(引き込みマーク形成部)と、例えばマスク12の下方にてフィルム2の幅方向に延びるように配置された例えばラインCCD15(フィルム引き込み位置検出部)とを有する。これにより、フィルム供給部から供給されてくるフィルム2に対して、レーザマーカ13により、マスク12の位置決めの基準となる引き込みマーク2bを形成し、ラインCCD15により引き込みマーク2bを検出することにより、フィルム2に対するマスク12の位置を調整可能に構成されている。
【0022】
露光対象のフィルム2は、例えば図8に示すように、フィルム2の基材20がロールトゥロール方式の供給リール80から巻き取られてスリットコーター4に供給され、スリットコーター4にて表面に所定の露光材料、例えば配向膜材料が塗工され、乾燥装置5にて乾燥された後、搬送ローラにより、露光装置1内に供給される。本発明においては、図1に示すように、露光対象のフィルム2は、その幅方向の両側の領域の少なくとも一方のフィルム基材20上にも、露光材料膜21が形成されており、この側部露光材料膜の部分にアライメント用レーザマーカ14からレーザ光を照射してアライメントマーク2aを形成する。この側部露光材料膜が形成されている領域は例えばフィルムの縁部から25mmまでの領域であり、従来では露光材料膜21が形成されておらず、フィルム基材20の送給に使用していた領域である。本発明においては、側部露光材料膜の領域にアライメントマーク2aを形成し、このアライメントマーク2aを使用してフィルム2の蛇行を検出し、マスク12の位置を調整する。
【0023】
露光光源11は、例えば配向分割方式の露光装置においては、紫外光を出射する光源であり、例えば水銀ランプ、キセノンランプ、エキシマランプ及び紫外LED等の連続光又はパルスレーザ光を出射する光源が使用される。本実施形態においては、露光光源11から出射した露光光の光路上には、夫々、例えばフィルム2の表面の配向材料膜に所定の光量で露光光が照射されるように、例えばコリメータレンズ及び/又は反射鏡等の光学系が配置されている。露光光源11は、例えば図示しない制御装置により、露光光の出射方向を調整することができ、これにより、フィルム2に対する露光光の入射角を調整可能に構成されている。本実施形態の露光装置1は、1の露光領域に対して夫々2つの露光光源11が向かい合わせに配置されており、夫々の露光光源11から出射した露光光をマスク12に透過させた後、フィルム2上の1絵素となる領域を分割して、夫々異なる露光光により露光し、配向膜材料を夫々の領域にて互いに異なる方向に配向させた配向膜にする。配向材料膜に対して、夫々プレチルト角が異なる2つの露光光を照射することにより、液晶分子の配向方向を相互に異ならせることができ、例えば1絵素内において、配向膜の配向方向に追従して方向が揃う液晶分子の向きを2方向とすることにより、液晶ディスプレイ等の視野角を広くしている。なお、光源11は、1カ所の露光領域について2個に限らず、3個以上設けてもよく、互いに異なる方向からの露光光により、例えば配向膜材料を3方向以上に配向させてもよい。また、例えば、1カ所の露光領域について、光源11を1個設け、光源11から出射された露光光を偏光板等により分割し、分割した2つの露光光を互いに異なる方向から照射するように構成してもよい。例えば、偏光板により、露光光をP偏光の直線偏光の露光光とS偏光の直線偏光の露光光とに分割して、夫々異なる方向から照射することができる。
【0024】
マスク12は、フィルム2の移動方向の上流側及び下流側に夫々複数個、互いに離隔して配置されており、例えば図2に示すように、上流側(マスク121,122)及び下流側(マスク123,124)に夫々2個ずつ設けられている。複数個のマスク12は、上流側のマスク121,122による露光領域と下流側のマスク123,124による露光領域とが、フィルムの移動方向に沿って隣接するように、即ち、千鳥状に配置されており、夫々のマスク12について、上記の1対の露光光源11が設けられている。そして、図2に示すように、フィルム2の移動方向の上流側のマスク121及び122に露光光源11からの露光光を透過させて、フィルム2上の配向膜材料を露光領域A及びCで露光する。また、下流側のマスク123及び124に露光光源11からの露光光を透過させて、フィルム2上の配向膜材料を露光領域B及びDで露光する。
【0025】
本実施形態においては、マスク12は、図3に示すように、例えば枠体120とその中央のパターン形成部121により構成されており、パターン形成部121には、所定の光透過領域のパターン121aが形成されている。即ち、フィルム2に形成しようとするパターン形状に対応して露光光を透過する形状の開口が形成されているか、又は光透過性の部材が設置されている。そして、例えば配向分割方式の露光装置においては、パターン形成部121を透過した光によりステージ10上に配置されたフィルム2の表面の配向材料膜を露光する。本実施形態においては、マスク12ごとに1対の露光光源11を配置し、夫々入射角の異なる露光光を出射する。従って、本実施形態においては、パターン121aは、フィルムの幅方向に並ぶ複数個のスリットが、フィルムの移動方向に2列並ぶように形成されている。
【0026】
本実施形態においては、マスク12には、パターン121aよりも上流側に、フィルム2の移動方向に対して垂直の幅方向に延びるように、幅が300μm程度、長さが250mm程度のラインCCD用の覗き窓12aが設けられており、この覗き窓12aの長手方向の中間に露光光を遮光する例えば幅が15μm程度のライン状の遮光パターン12bが設けられている。そして、後述するラインCCD15により遮光パターン12bの位置を検出し、マスク12の位置決めに使用する。
【0027】
マスク12の夫々は、例えば枠体120の部分がマスクステージ17により支持されており、マスクステージ17の移動によりマスク12の全体が移動可能に構成されている。マスクステージ17は、例えば図4に示すようなマスク位置制御部30に接続されており、マスク位置制御部30による制御により、その位置を、例えば水平方向(フィルムの幅方向、又はフィルムの幅方向及びフィルムの長手方向)に移動可能に構成されている。これにより、マスク12によるフィルム2の露光位置を水平方向に調整することができる。マスクステージ17は、例えば鉛直方向にも移動可能であり、これにより、フィルム2上の例えば配向膜材料が所定の大きさで露光されるように調整可能に構成されている。
【0028】
フィルム搬送部は、例えば露光装置1外及び露光装置1内に設けられた例えば搬送ローラ9等であり、モータ等により駆動され、供給リール80から巻き解かれたフィルム2をその回転により露光装置1内へと搬送し、露光装置1内で露光されたフィルム2を巻取リール81まで移動させる。
【0029】
アライメント用レーザマーカ14(アライメントマーク用光源)は、例えばNd:YAGレーザ又は紫外光等を照射するレーザ光源であり、例えばキセノンフラッシュランプ等のパルス光源によりパルスレーザ光を出射して、図1に示すように、フィルム2の縁部に、例えば幅が20μm、長さが15mmのアライメントマーク2aを一定間隔で形成するものである。アライメント用レーザマーカ14は、例えばフィルム2の移動方向における上流側のマスク121,122に対し、フィルムの幅方向に並ぶように設けられている。アライメント用レーザマーカ14は、上流側マスク121,122の覗き窓12a(及び遮光パターン12b)に対応する位置にて、フィルム2の縁部にアライメントマーク2aを形成する。本発明においては、アライメントマーク2aを形成する領域は、例えばフィルムの縁部から25mmまでの部分であり、従来ではフィルム基材20の送給に使用しており、露光材料膜21が形成されていなかったフィルムの基材20の部分である。アライメントマーク2aを上流側マスク121,122の覗き窓12aの位置に対応するフィルムの縁部に形成することにより、フィルム2の移動方向上流側の夫々領域A及び領域Cで形成されるパターンとフィルム2の縁部におけるアライメントマーク2aとの距離は、常に一定間隔となる。
【0030】
本実施形態においては、アライメントマーク検出部16がフィルムの移動方向下流側のマスク123,124に対し、フィルムの幅方向に並ぶように設けられている。アライメントマーク検出部16は、フィルム2の上方又は下方に配置されており、アライメント用レーザマーカ14によりフィルム2の縁部に形成されたアライメントマーク2aのフィルム幅方向における位置を検出する。アライメントマーク検出部16は、マスク12の位置を制御するマスク位置制御部30に接続されており、検出した信号をマスク位置制御部30に送信する。
【0031】
アライメントマーク検出部16は、例えばCCDカメラであり、図1及び図2に示すように、例えば下流側マスク123,124の覗き窓12aに対応する位置にて、アライメントマーク2aのフィルム幅方向における位置を検出する。アライメントマーク検出部16は、検出したアライメントマーク2aのフィルム幅方向における位置を例えば図4に示すようなマスク位置制御部30に送信し、マスク位置制御部30はこのアライメントマーク2aの位置に基づいて、フィルムの移動方向下流側のマスク123及び124の位置を調整するように構成されている。
【0032】
図4はマスク位置制御部30の構成を一例として示す図である。図4に示すように、マスク位置制御部30は、例えばマスクステージ駆動部、露光光源11及びフィルム巻取リール81(図8参照)に設けられたモータの制御部に接続されている。図4に示すように、マスク位置制御部30は、画像処理部31と、演算部32と、メモリ33と、モータ駆動制御部34と、光源駆動部35と、マスクステージ駆動制御部36と、制御部37とを備えている。
【0033】
画像処理部31は、アライメントマーク検出部16により撮像されたアライメントマーク2aの画像処理を行い、例えばアライメントマーク2aのフィルム幅方向における中心位置を検出するものである。演算部32は、例えば設定すべきアライメントマーク2aの中心位置と実際のアライメントマーク2aの中心位置とのフィルムの幅方向のずれを演算する。また、演算部32は、後述するラインCCD15が検出したフィルムの引き込みマーク2bの位置とマスク12上の遮光パターン12bの位置との距離により、露光を開始する際に設定すべきマスク12の位置と実際のマスク12の位置とのフィルム幅方向のずれも演算する。メモリ33は、例えば画像処理部31が検出したアライメントマーク2aの中心位置及び演算部32が演算したずれ量を記憶する。モータ駆動制御部34は、例えばフィルム巻取リール81のモータの駆動若しくは停止、又は駆動されている際の回転速度を制御する。
【0034】
光源駆動部35は、露光光源11の点灯若しくは消灯、出力、又は発振周波数を制御するものである。マスクステージ駆動制御部36は、マスクステージ17の駆動を制御するものであり、例えばマスクステージ17の移動方向及び移動量を制御する。制御部37は、これらの画像処理部31、演算部32、メモリ33、モータ駆動制御部34、光源駆動部35及びマスクステージ駆動制御部36の駆動を制御する。これにより、フィルムの露光装置1は、例えばマスク12の位置を調整したり、露光光源11による露光光の照射のオンオフを切り替えたり、又はフィルム2を巻取リール81に設けられたモータの回転速度等を制御できるように構成されている。
【0035】
これにより、本実施形態においては、例えば、図1に示すように、アライメントマーク2aの位置がフィルムの幅方向外側にずれた場合、マスク位置制御部30は、下流側のマスク123及び124の位置を、アライメントマーク2aがずれた量だけフィルムの幅方向外側に移動させる。アライメントマーク2aの位置がフィルムの幅方向内側にずれた場合においては、マスク位置制御部30は、下流側のマスク123及び124の位置を、アライメントマーク2aがずれた量だけフィルムの幅方向内側に移動させる。
【0036】
レーザマーカ13は、図5に示すように、ガントリーステージ13a、搬送部13b及びマーキング部13cにより構成されており、ガントリーステージ13aは、フィルムが供給されてくる部分の上方にてフィルムの移動方向に対して垂直のフィルム幅方向に延びるように配置されている。搬送部13bは、ガントリーステージ13aにより支持されていると共に、ガントリーステージ13a上をその長手方向に沿って移動できるように構成されている。また、搬送部13bは、図示しない制御装置により、その位置が制御されており、これによりマーキング部13cの位置が調整可能である。
【0037】
マーキング部13cは、例えばNd:YAGレーザ等のレーザ光源からレーザ光を出射して、図5に示すように、フィルム供給部から供給されてくるフィルム2の先端部に所定形状、例えば十字状の引き込みマーク2bを形成するものである。マーキング部13cは、搬送部13bに固定されており、制御装置により搬送部13bの位置が制御されることにより、フィルム2上への引き込みマーク2bの形成位置を調整できるように構成されている。本実施形態においては、図6に示すように、マーキング部13cは、4個のマスク12の夫々に対応するように、フィルム2の先端部に4個の引き込みマーク2bを、例えば一定の間隔で形成するように構成されている。
【0038】
図7に示すように、ラインCCD15(フィルム引き込み位置検出部)は、夫々のマスク12に設けられた覗き窓12a及び遮光パターン12bの下方にてフィルム2の幅方向に延びるように配置されており、フィルム2の先端部がラインCCD15の上方(ラインCCD15とマスク12との間)に位置するまで搬送されてきたときに、フィルム2の先端部に形成された引き込みマーク2bの位置を検出する。また、ラインCCD15は、マスク12の覗き窓12aの中間に設けられた遮光パターン12bをマスク12の実際の位置として検出する。ラインCCD15は、マスク位置制御部30に接続されており、検出した引き込みマーク2b及び遮光パターン12bの位置をマスク位置制御部30に送信するように構成されている。
【0039】
マスク位置制御部30は、ラインCCD15から送信されてきた引き込みマーク2b及び遮光パターン12bの位置から演算されたフィルム面に平行な面における両者間の距離により、フィルムに最初に露光を行う際のマスク12の位置も調整する。即ち、マスク位置制御部30には、予め、引き込みマーク2bの位置を基準として、設定すべきマスク(遮光パターン12b)の位置のデータが格納されており、図7に示すように、マスク位置制御部30は、ラインCCD15により検出した引き込みマーク2bの位置を基準位置として、検出した遮光パターン12bの位置により決まるマスク位置が所定の位置となるまで、マスクステージ17の位置を移動させる。これにより、本実施形態の露光装置においては、露光を開始する際においても、フィルム2に予め高い精度で形成した引き込みマーク2bの位置を基準として、マスク12の位置を調整することができ、フィルムの露光すべき位置を高精度で決めることができる。
【0040】
本実施形態においては、従来ではフィルム基材20の送給用の領域の少なくとも一方の領域にも側部露光材料膜を形成し、この側部露光材料膜にアライメント用レーザマーカ14から露光光を照射してアライメントマーク2aを形成する。よって、アライメントマーク2aの形成が容易である。即ち、従来であれば、アライメントマーク2aを形成する領域は、露光材料膜21が形成されていなかったフィルムの基材20の部分であったため、例えば使用するレーザ光を波長が266nmの紫外光とした場合に、レーザ光の照射エネルギーを例えば8J/cmと極めて大きくしないとアライメントマーク2aの形成が難しいという問題点があった。これに対して、本実施形態においては、このフィルムの基材20上の例えば縁部から25mmの領域まで露光材料21を塗布して側部露光材料膜を形成するため、例えば露光材料として、光配向性の材料を使用し、レーザ光を波長が266nmの紫外光とした場合に、レーザ光の照射エネルギーを0.1J/cm程度まで小さくしても、アライメントマーク2aを明瞭かつ精度良く形成することができる。従って、精度よく形成されたアライメントマーク2aにより、フィルム2の蛇行を検出してマスク12の位置を精度良く調整できるため、安定的にフィルムを露光することができる。
【0041】
また、フィルムの先端部に引き込みマーク2bを形成し、この引き込みマーク2bの位置によってマスク12の位置を調整することにより、本実施形態においては、露光領域を上流側と下流側とに分けた場合に、フィルム2の波打ち及び幅方向のずれにより、露光領域が重なってしまったり、未露光の領域が発生することはない。そして、マスク12の初期位置を、フィルム2の先端に形成した引き込みマーク2bを基準として決定しているため、上流側のパターンに加えて、下流側のパターンも精度よく形成することができる。これにより、フィルムを安定して露光することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、露光光を出射する露光光源11とアライメントマーク2aを形成するレーザマーカ14とは、同一のレーザ光を兼用することができる。即ち、露光光として、水銀ランプ等による連続光ではなく、例えばキセノンフラッシュランプ等によるパルス光を使用する場合においては、露光光源11とレーザマーカ14とは、同一のレーザ光を兼用することができ、露光装置の構成を簡略化できる。
【0043】
また、本実施形態においては、フィルムの先端部に引き込みマーク2bを形成し、これをラインCCD15で検出することにより、露光を開始する際のマスク12の初期位置を調整しているが、本発明においては、これらの構成は設けられていなくてもよい。
【0044】
次に、本実施形態のフィルムの露光装置の動作について説明する。先ず、図8に示すようなスリットコーター4及び乾燥装置5等により、縁部から25mmの領域にも露光材料21が塗布されたフィルム2は、例えば搬送ローラ9により、その先端部から露光装置1内に供給される。露光装置1内に供給されたフィルム2は、例えば搬送ローラ等のフィルム供給部により、先端部がレーザマーカ13の下方へと供給される。
【0045】
フィルム2の先端部がレーザマーカ13の下方に供給されたら、例えば、搬送ローラ等によるフィルム2の供給を一旦停止する。そして、制御装置による制御により、レーザマーカ13の搬送部13bをガントリーステージ13a上で移動させることにより、マーキング部13cを所定の位置まで搬送する。これにより、マーキング部13cは、例えば4個のマスク12の夫々に設けられた覗き窓12aの上流側のいずれかの位置に配置される。
【0046】
マーキング部13cの位置が確定したら、マーキング部13cからレーザ光を出射してフィルム2の先端部に、例えば十字状の引き込みマーク2bを形成する。このとき、フィルム2はフィルム供給部側の搬送ローラ等により支持された状態であるため、フィルム2の先端部が振動したり波打つことはなく、引き込みマーク2bを高精度で形成することができる。1カ所の引き込みマーク2bの形成が終了したら、制御装置は、例えば搬送部13bをガントリーステージ13a上で移動させることにより、マーキング部13cを移動させた後、同様に、レーザ光を照射して、フィルムの先端部に引き込みマーク2bを形成する。そして、図6に示すように、フィルムの先端部に4個の引き込みマーク2bの形成が終了したら、レーザマーカ13の動作を停止し、搬送ローラ等によるフィルム2の搬送を再開する。
【0047】
フィルム2は、搬送ローラ等による搬送により、図7に示すように、先端部が露光領域A及びCに対応して配置されたマスク12(マスク121,122)の下方に到達する。夫々のマスク12の下方の覗き窓12a(及び遮光パターン12b)に対応する位置には、フィルム2の幅方向に延びるようにラインCCD15が配置されており、ラインCCD15は、引き込みマーク2bがラインCCD15の上方に位置するまで搬送されてきたときに、引き込みマーク2bの位置を検出する。また、ラインCCD15は、マスク12の覗き窓12aの中間に設けられた遮光パターン12bの位置を検出する。これにより、引き込みマーク2bとマスク12の遮光パターン12bとの間の距離を測定する。そして、ラインCCD15は、検出した引き込みマーク2bと遮光パターン12bとの間の距離の信号をマスク位置制御部30に送信する。なお、ラインCCD15による検出工程からマスク位置の調整が終了するまでは、例えば、フィルム2の搬送を停止しておくか、又はフィルム2に対する露光を開始させない。
【0048】
次に、ラインCCD15から引き込みマーク2bと遮光パターン12bとの間の距離の信号が入力されたら、マスク位置制御部30は、先ず、フィルム面に平行な面における両者間の距離を予め格納されたデータ(引き込みマーク2bの位置を基準としたマスク12の設定すべき初期位置のデータ)と比較する。そして、遮光パターン12bの位置により決まるマスク位置が所定の初期位置となるまで、マスクステージ17を移動させる。これにより、露光領域A及びCにおける露光の開始前に、フィルム2を基準として、マスク12(マスク121,122)の初期位置が精度よく決まる。
【0049】
マスク12の初期位置が決まったら、露光対象部位が露光光の照射領域に位置するまでフィルム2を例えば搬送ローラ等により搬送し、露光光源11からの露光光をマスク12に透過させて、フィルム2を露光する。これにより、フィルム2上の配向膜材料が所定の方向に配向する。1カ所の露光が終了したら、順次フィルム2を供給し、露光対象部位を順次露光する。これにより、フィルム2には、露光領域A及びCにより露光されたパターンが帯状に2本形成されていく。
【0050】
また、本実施形態においては、露光装置は、フィルム2の移動方向における上流側マスク12(マスク121,122)の覗き窓12a(及び遮光パターン12b)に対応する位置に、アライメント用レーザマーカ14を有しており、フィルム2の移動方向における上流側マスク12(マスク121,122)の覗き窓12a(及び遮光パターン12b)に対応する位置にて、フィルム2の縁部にアライメントマーク2aを形成する。これにより、フィルム2の移動方向の上流側の領域A及び領域Cで形成されるパターンとフィルム2の縁部におけるアライメントマーク2aとの距離は、一定間隔となる。このとき、アライメント用レーザマーカ14を露光光源11と同一のレーザ光を兼用するように構成している場合においては、アライメントマーク2aをパターン2cと同様に明瞭且つ精度よく形成することができる。
【0051】
搬送されてくるフィルム2には、その縁部から25mmの領域にまで露光材料21が塗布されており、アライメント用レーザマーカ14から出射するレーザ光(例えば、波長が266nmの紫外光)の照射領域にまで露光材料21が塗布されている。レーザ光は、フィルム2の表面の露光材料21への吸収率が高く、フィルム2の縁部にアライメントマーク2aを容易に形成することができる。このとき、レーザ光の照射エネルギーを例えば0.1J/cm程度まで小さくしても、アライメントマーク2aを明瞭かつ精度良く形成することができる。
【0052】
フィルム2は、搬送により、図2に示すように、先端部が、下流の露光領域B及びDに対応して配置されたマスク12(マスク123,124)の下方に到達する。夫々のマスク12の下方の覗き窓12a(及び遮光パターン12b)に対応する位置には、上流の場合と同様に、フィルム2の幅方向に延びるようにラインCCD15が配置されており、ラインCCD15は、フィルムの先端部がラインCCD15の上方(ラインCCD15とマスク12との間)に位置するまで搬送されてきたときに、フィルム2の先端部に形成された引き込みマーク2bの位置を検出する。そして、上流側の場合と同様に、ラインCCD15は、マスク12の覗き窓12aの中間に設けられた遮光パターン12bをマスク12の実際の位置として検出し、これにより、引き込みマーク2bとマスク12の遮光パターン12bとの間の距離を測定する。そして、検出した引き込みマーク2bと遮光パターン12bとの間の距離の信号をマスク位置制御部30に送信する。なお、ラインCCD15による検出工程からマスク位置の調整が終了するまでは、例えば、フィルム2の搬送を停止しておくか、又はフィルム2に対する露光を開始させない。
【0053】
ラインCCD15から引き込みマーク2bと遮光パターン12bとの間の距離の信号が入力されたら、マスク位置制御部30は、フィルム面に平行な面における両者間の距離を予め格納されたデータ(引き込みマーク2bの位置を基準としたマスク12の設定すべき初期位置のデータ)と比較する。そして、遮光パターン12bの位置により決まるマスク位置が所定の初期位置となるまで、マスクステージ17を移動させる。これにより、露光領域B及びDにおける露光の開始前に、フィルム2を基準として、マスク12(マスク123,124)の初期位置が精度よく決まる。
【0054】
マスク12の初期位置が決まったら、露光対象部位が露光光の照射領域に位置するまでフィルム2を例えば搬送ローラ等により搬送し、露光光源11からの露光光をマスク12に透過させて、フィルム2を露光する。これにより、フィルム2上の配向膜材料が所定の方向に配向する。1カ所の露光が終了したら、順次フィルム2を供給し、露光対象部位を順次露光する。これにより、フィルム2には、露光領域B及びDにより露光されたパターンが形成され、露光領域A及びC間により形成されたパターン間が露光領域Bにより露光されたパターンにより埋められ、露光領域Cにより形成されたパターンに隣接するように、露光領域Dによるパターンが形成される。このとき、既に露光領域A及びCにより形成されたパターンと露光領域B及びDにより形成されたパターンとは、重なったり、未露光の部分が残ったりすることはなく、精度よく、フィルムの全面にパターンが形成される。
【0055】
露光装置1を以上のように動作させることにより、フィルムへのパターン形成を精度よく開始することができる。しかしながら、フィルムの移動方向の下流側のマスク12(123,124)の位置は、上流側のマスク12(121,122)の位置から4m程度と遠く、従って、フィルムへの露光を連続的に行っていくうちに、フィルムの移動方向の下流側においては、フィルム2の波打ちにより、フィルム2がマスク12(123,124)に対して幅方向にずれてしまう。
【0056】
しかしながら、本実施形態においては、フィルムの縁部の上方又は下方における下流側マスク12(マスク123,124)の覗き窓12a(及び遮光パターン12b)に対応する位置には、例えばCCDカメラ等のアライメントマーク検出部16が設けられており、フィルム2の縁部に形成されたアライメントマーク2aのフィルム幅方向における位置を検出する。これにより、図1に示すように、例えばアライメントマーク2aの位置がフィルムの幅方向外側にずれた場合、マスク位置制御部30は、下流側のマスク123及び124の位置を、アライメントマーク2aがずれた量だけフィルムの幅方向外側に移動させる。逆に、アライメントマーク2aの位置がフィルムの幅方向内側にずれた場合においても、マスク位置制御部30は、下流側のマスク123及び124の位置を、アライメントマーク2aがずれた量だけフィルムの幅方向内側に移動させる。従って、フィルム2の移動方向の下流側において、アライメントマーク12aと下流側マスク123,124との距離が一定間隔に維持される。
【0057】
よって、本実施形態においては、連続露光の際に、図1に示すように、フィルム2がその幅方向にずれた場合において、フィルム2の移動方向下流側のマスク12の位置を補正することにより、フィルム2に対する露光位置がずれることなく、安定した露光を行うことができる。
【0058】
なお、本実施形態においては、1絵素となる領域を分割して露光する配向分割方式の露光装置について説明したが、例えば露光装置を以下のように構成することにより、3Dディスプレイ用の偏光フィルムを製造することができる。即ち、2つの光源からの露光光により、例えば、フィルムの幅方向に隣接する画素となる領域ごとに、P偏光及びS偏光の直線偏光の露光光を交互に照射すれば、複数個の絵素により構成された画素ごとに配向材料膜の配向方向を異ならせることができる。これにより、フィルム面における配向方向が相互に90°異なり1/4λ板と同様の機能を有する配向膜を得ることができ、得られたフィルムを偏光フィルムとして使用することができる。即ち、直線偏光の画像表示用の光をこの偏光フィルムに透過させれば、複数個の画素により構成されフィルムの幅方向に延びる表示列ごとに、相互に回転方向が逆の円偏光の透過光が出射される。この円偏光の2つの透過光を、夫々例えば3Dディスプレイの右目用及び左目用の表示光として使用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1:露光装置、10:ステージ、11:光源、12:マスク、12a:覗き窓、12b:遮光パターン、120:マスクパターン、121:第1のマスク、122:第2のマスク、123:第3のマスク、124:第4のマスク、13:レーザマーカ、13a:ガントリーステージ、13b:搬送部、13c:マーキング部、14:アライメント用レーザマーカ、15:フィルム引き込み位置検出部、16:アライメントマーク検出部、17:マスクステージ、2:フィルム、2a:アライメントマーク、2b:引き込みマーク、2c:パターン、30:マスク位置制御部、31:画像処理部、32:演算部、33:メモリ、34:モータ駆動制御部、35:光源駆動部、36:マスクステージ駆動制御部、37:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材上に露光材料膜が形成されたフィルムを、このフィルムが巻回された供給リールから、露光後のフィルムが巻き取られる巻取リールまで移動させる間に、前記フィルムの前記露光材料膜に、マスクを介して露光光を照射することにより、前記露光材料膜に前記マスクのパターンを露光するフィルム露光方法において、前記フィルム基材の幅方向の両側のフィルム基材送給用領域の少なくとも一方に、このフィルム基材送給用領域間の露光領域と同様に、側部露光材料膜を形成し、この側部露光材料膜にアライメントマーク用露光光を照射してアライメントマークを形成し、このアライメントマークを使用してフィルム蛇行を検出し、前記マスクの位置を調整することを特徴とするフィルム露光方法。
【請求項2】
前記露光光と前記アライメントマーク用露光光とは、別種のレーザ光が使用されるか、又は同一のレーザ光が兼用されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム露光方法。
【請求項3】
露光光を出射する露光光源と、フィルムに露光すべきパターンが形成されたマスクと、前記露光光源から出射した露光光を前記マスクを介して前記フィルムに照射する光学系と、フィルム基材上に露光材料膜が形成されたフィルムを、このフィルムが巻回された供給リールから、露光後のフィルムが巻き取られる巻取リールまで移動させ、その間に前記マスク及び前記光学系による露光位置を通過させるフィルム搬送部と、前記フィルム基材の幅方向の両側のフィルム基材送給領域の少なくとも一方にアライメントマーク形成用のレーザ光を照射するアライメントマーク用光源と、前記アライメントマークを使用してフィルム蛇行を検出し、前記マスクの位置を調整する制御部と、を有し、前記フィルムは、前記アライメントマーク用光源からのレーザ光が照射される領域に側部露光材料膜が形成されており、前記レーザ光による照射により前記側部露光材料膜にアライメントマークを形成することを特徴とするフィルム露光装置。
【請求項4】
前記露光光源と前記アライメントマーク用光源とは、別種のレーザ光源が使用されるか、又は同一のレーザ光源が兼用されていることを特徴とする請求項3に記載のフィルム露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−58348(P2012−58348A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199360(P2010−199360)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】