説明

プラスチック容器の密封

プラスチック材料のアンプル(4)は、吸入薬剤または注射薬剤の溶液を含み、そしてアンプルの外表面は、アンプルからの水分放出を減少させ、そして外部からのアンプル内容物への汚染を減少させるために、金属または金属化合物のコーティングまたは蒸着法により蒸着されたポリマーでコーティングされる。ラベルは、該コーティングに容易に貼り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の密封に関し、化粧品および/または薬学的処方物のために使用され得るプラスチック材料で形成された容器のコーティングに関し、そして特に密封効果を達成するためのコーティングアンプルに関する。本発明はまた、密封されたまたはコーティングされた容器、特に密封されたまたはコーティングされたアンプルに関する。
【背景技術】
【0002】
薬学的および化粧品処方物は、種々の異なる包装(ガラス、金属、プラスチック、および天然材料で形成された包装を含む)により提供される。液状処方物、例えば溶液または懸濁液用として、包装は、漏出を防ぐために密封され、かつ密封されたままでなければならない。しかし、多くの技術的および実用的な困難性が、全てのこのような容器において存在している。
【0003】
一部の処方物は、揮発性が高い物質、または容器の材料を通過して拡散し得るその他の比較的小さな分子を含み得る。これは、例えば、香水での特有の問題である。製品が効力、芳香(aroma)、またはフレーバー(flavour)を失うため、したがって、保存期間が制限される。その結果、このような製品用の容器は、不透過性の材料、例えば、ガラスで形成され、そのような材料は一般にかなり高価である。したがって、プラスチックなどの安価な材料を使用することは不可能であり、そのため高い包装費用がかかる。
【0004】
容器中の薬学的処方物は、高温または高圧の条件下で滅菌されなければならず、あるいは一旦滅菌条件下で充填されると、容器は、その無菌性を維持するのに十分頑丈でなければならない。この場合も先と同様に、製品コストが高くなる傾向にある。
【0005】
ネブライザーを用いて患者の肺に薬物を投与することが知られており、これにより、呼吸が正常な間に患者に薬剤を投与することが可能となる。薬物は、単位用量アンプル(UDA)で提供され、このアンプルは、比較的小容量、代表的には、1mL〜5mLの溶液を含み、そして代表的にはプラスチック材料で形成される。アンプルの作成方法は、無菌条件下でのブローフィルシール法(BFS)による。このブローフィルシール法において、アンプルは、押出成形によって形成され、多くの部分に溶液が充填されるが、実質的に1工程のプロセスで行われる。必要に応じて、そして内容物が熱不安定性でない場合は、加熱滅菌法が用いられる。例えば、アンプルは、最終的に、例えば、アンプルに充填し、そして密封した後に、滅菌され得る。これらの方法は、世界的に、規制当局(regulatory authorities)によって、十分に確立され、認められている。
【0006】
アンプルに存在する公知の問題は、酸素、その他の気体およびその他の揮発性物質をアンプル内に許容し、かつ水(水分)が出て行くことを許容する点である。内容物試験により、保存中に、汚染物質がアンプルの壁のプラスチックを通過し得、そして処方物中に吸収されることが明らかとなっている。ある特定の例としては、許容できない量のバニリンがアンプル内部で見出され、製品の不具合を生じ、そしてこの外部汚染に対して防護対策がなければ、規制当局はアンプルを許可しないと拒絶した。
【0007】
特定の問題の例として、米国食品医薬品局は、近年、アンプル内容物の汚染を避けるために、アンプルを密封パウチにより外装することを要求している。パウチ材料は、代表的には、紙および/またはポリマー、アルミニウム、および低密度ポリエチレン(LDP)の三層積層体である。このパウチが無難な解決策とされている。
【0008】
アンプルは、代表的には、単回投与量の複数のストリップ、例えば、5、10、または30の単位で製造される。したがって、パウチを用いる問題は、数個のアンプルが1つのパウチに含まれる場合、パウチを開封し、そして最初のアンプルを使うと同時に、残りのアンプルが外気に露出され、汚染され得ることである。
【0009】
LDPの透過性はまた、アンプルのラベリングを制限する。例えば、アンプル上に直接プリントするために使用されるインク、および紙ラベルを貼り付けるために使用される接着剤は、アンプルを透過し、内容物を汚染するものでないことを確実にするために注意深くチェックされなければならない。
【0010】
一部のアンプルは、不活性ガス、例えば、窒素で満たされる。パウチ内部でさえ、窒素と、アンプル外部であるが、パウチの内部である気体とのある種の平衡がある。パウチを開封すると同時に、より多くの窒素がアンプルから失われる。
【0011】
LDPアンプルは、半透明であり、これらの中に保存される一部の感光性の材料は、長期間保存後および光照射により被害を受け得る。パウチは部分的な解決策を提供するが、この場合もやはり、一旦、パウチが開封されると、内部のアンプルが使用される前に、不定期的な期間、光に曝される。
【0012】
これとは別に、LDPチューブは、化粧品用にかなり一般的に使用される。しかし、あるチューブ内容物、例えば、リポソームまたはその他の酸素に反応しやすい内容物に、到達する酸素を避ける必要がある。したがって、LDPおよびその他のこのような材料は、これらの化粧品用のチューブの製造には一般的に認められていない。
【発明の開示】
【0013】
本発明の目的は、上記の問題を解決あるいは少なくとも改善することである。本発明の好ましい実施態様の目的は、代替方法、より好ましくは容器の密封および/またはコーティングの改善方法を提供すること、ならびに容器、特に該方法により密封および/またはコーティングされたアンプルを提供することである。
【0014】
発明の要約
本発明は、プラスチック材料で形成された容器のコーティングを提供するための金属含有またはポリマー含有密封層の使用に基づく。
【0015】
第1の局面においては、本発明は、(a)金属または金属化合物のコーティングまたは(b)蒸着法により蒸着されたポリマーを含むアンプルを提供する。
【0016】
一般的に、本発明は、プラスチック材料で形成され、そして金属または金属化合物のコーティング、あるいはポリマーのコーティングを含む、液体用の容器を提供する。
【0017】
第2の局面においては、本発明は、プラスチック材料で形成された容器から水分放出を減少させる方法を提供し、該方法は、容器の外表面に、金属または金属化合物を含むコーティング、あるいはポリマーのコーティングを付与する工程を包含する。
【0018】
第3の局面においては、本発明は、プラスチック材料で形成された容器の密封方法を提供し、該方法は、容器の外表面に、金属または金属化合物を含むコーティング、あるいはポリマーのコーティングを付与する工程を包含する。
【0019】
本発明の第4の局面は、ラベルをアンプルに貼り付ける方法を提供し、該方法は、金属または金属化合物のコーティング、あるいはポリマーのコーティングをアンプルに付与する工程、およびラベルを該コーティングに貼り付ける工程を包含する。
【0020】
上記コーティングは、まずプラスチック層を準備し、次いで該層の上にコーティングを付与することによって付与され得る、あるいは例えば、押出しその他の方法によって、コーティングで覆われたプラスチック層を製造することによって付与され得る。
【0021】
本発明の好ましい実施態様においては、上記コーティングは、金属または金属化合物のコーティングであり、より好ましくは金属のコーティングである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明のコーティングされた容器は、金属または金属化合物のコーティングを有するアンプルである。アンプルは、単独であるか、あるいは複数のアンプルのストリップの1つであり得る。使用において、このコーティングは、アンプル内容物の密封効果を有し、アンプル内容物の外部への損失を減少し、そして外部からの内容物の汚染を減少することが見出されている。
【0023】
アンプルは、代表的には、プラスチック材料、特に、ポリプロピレンまたはポリエチレン(低密度または高密度)、あるいはアンプルの製造または飲料産業で使用されるその他のポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタラート)である。さらに、アンプルは、代表的には、吸入薬または注射薬のような薬剤を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含み得る。
【0024】
密封が完全であることは要求されないが、例えば、アンプルの場合、規制当局の要求を満たす期間の試験後、内容物が十分に保護されており、パウチにより外部からさらに外装を施すなどのさらなる工程を必要としないことが好ましい。したがって、コーティングは、アンプルの外表面(外表面積)の少なくとも50%、またはアンプルの外表面の少なくとも70%、80%、90%、もしくは95%覆い得る。特に好ましくは、実質的にアンプルの外側全部がコーティングされる。
【0025】
アンプルのストリップがコーティングされ、1つのアンプルが該ストリップから取り外される場合、その結果として、残りのうちの、端に位置するアンプルの側面または部分(これはコーティングされていない)が生じ得、その箇所は露出する。しかし、仮にあったとしても、これは、コーティングの全体の密封効果から、恐らくわずかに損なわれるにすぎない。これは、露出する部分が、全表面積に比べて小さく、そして隣接するアンプルの間の接合部であるプラスチックの厚みが一般に非常に大きい部分が露出するためである。したがって、本発明は、単一の容器またはアンプル、そしてまたストリップで製造され、1つずつ取り外されるように設計されるアンプルをコーティングするために有用である。
【0026】
コーティング材料は、例えば、アンプルの上にコーティングされ得る広範な種類の金属および金属化合物から選択され得る。コーティングは、アルミニウム、銅、炭素、クロム、銀、ジルコニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、金、パラジウム、プラチナ、およびそれらの合金(スチールを含む)、ならびにそれらの化合物(気体を含む金属の化合物、例えば、窒化炭素、酸化スズ、酸化インジウム、二酸化ケイ素を含む)を含み得る。これらのコーティング材料のいくつかは、その他の材料より高価である。そして大量に製造され、かつ実質的に1度きりの使用であるアンプルなどの容器用としては、コーティングは、好ましくはアルミニウム、チタン、クロム、銀、銅、または上記材料の混合物または合金を含む。特に好ましいコーティングは、アルミニウム、チタン、クロム、または無定形四面体炭素を含むか、あるいはそれら各々の材料からなる。
【0027】
コーティングを付与するために、多数の異なる技術が使用され得る。適するコーティング方法には、物理的蒸着法、例えば、スパッタリング、およびアーク蒸着法が含まれる。スパッタコーティングはまた、必要に応じて、コーティングを保護するため、および接着を改善するために、UVラッカーを有する。
【0028】
物理的蒸着法の一例としてのスパッタリング蒸着法は、真空チャンバー内で行われ、原子、一般的には、アルゴン原子がイオン化され、そしてターゲット材料、例えば、アルミニウムに加速して衝突する。コーティング材料は、化学的処理または熱処理によるよりもむしろ物理的処理によって気相に入る。アルゴン原子は、それらがターゲットに衝突すると、アルミニウム原子を追い出し、その後、これらの追い出されたアルミニウム原子は容器に衝突し、コーティングされる、そしてこの処理は、密なコーティングに適用される。アルゴン(Ar)イオンは、イオン銃で作り出され、このイオン銃は運動エネルギーを与えて、イオンをターゲットに向けてスパッタする。あるいはアルゴンイオンは、Arおよび電子を含むプラズマで作り出される。
【0029】
化学的蒸着法またはCVDは、気相から固体材料を蒸着することを包含し、そして物理的蒸着法(PVD)といくつかの点で類似するプロセス群の一般的名称である。PVDは、前駆物質が、固体ターゲットから気化し、そして基板上に蒸着されるような材料を有する固体である点で異なる。CVDは、場合によっては本発明に適し得るが、一般的には、高温が要求されるため、コーティングし得る材料が制限される。CVDはまた、アンプルなどの1回使用の製品の大量製造にはコストがかかりすぎる。
【0030】
アーク蒸着法において、イオン含有プラズマは、陽極とターゲット(通常、陰極)との間の真空で作り出される。フィルタされた陰極アークにおいて、プラズマからのイオンは、マクロ粒子のような中性粒子を除去するために設計されたフィルタを介して基板に向かって導かれる。イオンは、表面に蒸着し、コーティングを形成する。フィルタされた真空陰極アークは、低温、つまりスパッタコーティングよりさらに低い、70℃以下で室温に至るまでの温度でコーティングに適用され得る。したがって、プラスチックなどの温度に敏感な基板に特に適している。もっとも約120℃までの温度に耐え得るプラスチックはスパッタ技術を用いてコーティングされ得る。金属または炭素または合金コーティングは、フィルタされた陰極アークを用いて、さらにまた、反応性ガスを導入した化合物を基板近くのコーティングチャンバーに入れて、作成され得る。
【0031】
これらの種々の蒸着方法は、当業者によく知られている。物理的蒸着法および真空アーク蒸着法を含む薄膜方法の詳細は、次の文献中に見出される:John A. ThorntonおよびD. W. Hoffman、Thin Solid Films、171、5(1989);J. VossenおよびW. Kern編、Thin Film Processes、Academic Press、N.Y.、1978およびHandbook of Vacuum Arc Science and Technology、Boxman, R.L.;Sanders, D.;Martin, P.J.著、著作権、1995 William Andrew Publishing/Noyes。スパッタ装置は、米国のマーティンズヴィル市のCPFilms Inc.社を含む、多くの商業的供給源から入手できる。FCVA装置もまた、シンガポールのNanofilm Technologies International Pte. Ltd社を含む、多くの商業的供給源から入手できる。フィルタされた陰極真空アーク技術は、さらに米国特許第6,761,805号明細書、米国特許第6,736,949号明細書、米国特許第6,413,387号明細書、および米国特許第6,031,239号明細書に記載されている。そしてその内容は本明細書に援用される。本発明のために、コーティングは、物理的蒸着法またはアーク蒸着法によって付与されることが好ましい。
【0032】
物品のコーティングの前に、汚染物質を除去し、コーティングの接着性を改善するために表面の洗浄またはその他の調製を行うことがしばしば好ましい。本発明の容器については、水洗浄で通常十分である。本発明の実施態様であって、コーティングされる物品が、ポリマー製であるか、またはポリマーを含む場合は、このような物品は、より注意深い取扱い性が要求されることを除いて、公知の方法を用いて洗浄され得る。さらに、水洗浄の間、ポリマーは、水を吸収し得る。この水は、真空下でコーティングの密着を達成するためには後で除去しなければならない。コーティングは、水洗浄が省略され得る場合であっても、何ら処理することなく、密着し得る。
【0033】
物品は、乾燥窒素で浄化された容器などの特殊な環境、あるいはUV/オゾンチャンバー内でない場合は、ほんの短期間の間、おそらく清浄なままである。1つの選択肢は、コーティングステーションの一部として、あるいはコーティングステーションを並置して、洗浄および/または表面調製ステーションを提供することである。さらに考慮すべきことは次のとおりである。アンプル形成のために代表的に使用されるブローフィルシール法の場合、新たに形成または成型されるポリマーが、コーティングの十分な密着を得るために、いずれの表面調製を必要とし得ない点である。
【0034】
本発明の使用において、アンプルは、アンプルを形成し、そしてアンプルにコーティングを付与することによって調製され得る。アンプルを形成するための公知の方法は、ブローフィルシール(BFS)法によるものであり、コーティング工程は、BFS工程の直後であって、包装および/またはラベルの前において、アンプル製造ラインに都合よく追加され得る。アンプルは、代表的には、約1mL〜約5mL(取り出し可能な容量)の溶液を含む。
【0035】
コーティングは、上述のように、容器が密封できるように設計される。適切な深さは少なくとも20nmであり、好ましくは少なくとも50nmであり、そして適切には50ミクロンまで、好ましくは20ミクロンまでである。コーティング深さはまた、少なくとも100nmであり、10ミクロンまでである。
【0036】
本発明の特定の実施態様においては、アンプルは、プラスチック材料で形成され、そしてスパッタコーティングによって付与されたアルミニウムのコーティングを含む。具体的には、アンプルは、薬学的に受容可能なキャリア中に吸入薬剤の溶液を含む。よって、本発明の使用例においては、ブローフィルシール方法は、生理食塩水中にサルブタモールを含む、2.5mLの処方物を含むアンプルを得るために使用される。アンプルは、LDPで形成され、10個のストリップで充填装置を出る。このストリップは、スパッタコーターを用いて付与される、約300nmの深さのアルミニウムの外部コーティングで被覆され、光沢のある金属様の外観を有する。アンプルは、外装されないが、通常の方法で包装される。患者はストリップのアンプルが与えられ、1回に1つのアンプルを剥ぎ取る。残りのアンプルは、次のアンプルが取り外されて使用されるまで、そしてすべてのアンプルが使用されるまでストリップ(現在の小さくなったサイズ)の形態で保持される。
【0037】
本発明のさらなる実施態様においては、アンプルは、プラスチック材料で形成され、スパッタコーティングまたはフィルタされた陰極アークによって付与されたアルミニウム、クロム、またはチタンのコーティングを含み、そして薬学的に受容可能なキャリア中に注射薬剤の溶液を含む。溶液は、例えば、注射用の水、あるいは注射用の生理食塩水であり得る。代表的な容量は、30ml以下、25ml以下、20ml以下、15ml以下、または10ml以下である。本発明の他の実施態様においては、アンプルは、5、10、15、またはそれ以上のストリップで製造され得、所要の場合に剥ぎ取られ、使用される。
【0038】
本発明のさらなる特定の実施態様においては、プラスチックアンプルは、スパッタコーティングで付与されたチタン層でコーティングされ、その深さは約150nmである。
【0039】
本発明のさらなる特定の実施態様においては、プラスチックアンプルは、無定形四面体炭素でコーティングされ、その深さは約100nmである。
【0040】
本発明の実施態様は、アンプルに付与されるコーティングに関して記載されているが、本発明は、ある実施態様においては、より一般的には、プラスチック材料で形成され、金属または金属化合物のコーティングを含む、液体を含有するための容器に関する。これらの容器は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含むポリマーで形成され、そしてさらに、最大充填容量が100mlまで、好ましくは50mlまで、より好ましくは20mlまでである。これらの容器は、そうでなければ、プラスチック容器を許容できない程度に透過する揮発性物質を含む液体用として有用である。
【0041】
また、本発明により、容器の外表面に、金属または金属化合物を含むコーティングを付与する工程を包含する、プラスチック材料で形成された容器から水分放出を減少させる方法、および容器の外表面に、金属または金属化合物を含むコーティングを付与する工程を包含する、プラスチック材料で形成された容器の密封方法が提供される。これらの方法において、コーティングおよびその付与は、本発明の上記実施態様に関して、さらに、そして好適に記載されている。
【0042】
本発明のさらなる特定の方法は、アンプルを密封する方法であり、アンプルは、0.5ml〜10mlの薬学的に受容可能なキャリア中に吸入薬剤または注射薬剤(例えば、注射用の水または生理食塩水)を含み、該アンプルに、金属または金属化合物のコーティングを該アンプルの外表面の少なくとも70%を超えて付与する工程を包含する。
【0043】
本発明のコーティングは、さらなるあるいは代替する特性(すなわちラベルがコーティング上に貼り付けられる特性)を有する。したがって、本発明のさらなる方法は、ラベルをアンプルに貼り付ける方法であり、この方法は、金属または金属化合物のコーティングをアンプルに付与する工程、およびラベルを該コーティングに貼り付ける工程を包含する。
【0044】
ラベルは、接着剤を用いてコーティングされたアンプルに貼り付けられ得る。ラベルはまた、コーティングされたアンプル上に吹き付けまたはプリントされ得る。例えば、インクがコーティングされたアンプル上に吹き付けられる。
【0045】
本発明は、その種々の実施態様において、多くの利点を提供する。そのいくつかまたは数種、あるいは全部は与えられた実施態様において明らかにされ得る。アンプルは、上記方法によって密封され;例えば、水分の損失を減少させ、そして外部からの汚染を減少させる。アンプルはなお5、10、30個などのストリップで製造されるが、アンプルの形状のため、そのプロセスにより、各アンプルが個々に効果的に密封される。アンプルがストリップから取り外される場合、残りのアンプルは実質的に密封されたままであるので、これは、アンプルのストリップをパウチで包装する方法の改善である。これは、多くのアンプルを含むパウチが開封され、そして全てが外気に露出する場合とは対照的である。
【0046】
コーティングの付与後、インクの選択または以前に付与した溶媒の存在により制約されることなく、アンプルにラベルを貼り付けること、または従来のインクでプリントすることが比較的容易である。
【0047】
本発明により金属コーティングでコーティングされたアンプルは、さらに目立つ外観を有する。コーティングは、連続的で、剥がれることがなく、そして摩擦などの磨耗に対して耐性を有することが見出されている。
【0048】
さらなる実施態様においては、付与されるコーティングはポリマーを含み、蒸着法を用いて付与または蒸着される。ポリマー薄膜の蒸着方法は、例えば、米国特許第6,022,595号明細書;米国特許第4,013,532号明細書;米国特許第4,673,588号明細書;および米国特許第4,921,723号明細書に記載されており、その内容は本明細書に援用される。ポリパラキシリレンのコーティングを付与する特定の方法は、例えば、Medical Device Technology、1月/2月2006年、第10-11頁に記載されている。
【0049】
したがって、本発明の実施態様のアンプルは、蒸着法によって蒸着されたポリマーのコーティングを含む。このコーティングは、ポリパラキシリレンであり得るか、ポリパラキシリレンを含み得、そして本発明のポリマーコーティングは、化学的蒸着法によって適切に付与される。
【0050】
これらの実施態様において、蒸着されたポリマー薄膜のバリア特性は、容器の密封性を改善することができる。
【0051】
上記アンプルは、アンプルを形成し、アンプルにコーティングを付与することによって製造される。本発明の他の実施態様として、アンプルは、特に薬学的に受容可能なキャリア中に吸入薬剤または注射薬剤の溶液を含み得る。
【0052】
本発明はまた、プラスチック材料で形成された容器から水分放出を減少させる方法を提供し、該方法は、化学的蒸着法によるなどの蒸着法を用いて、容器の外表面に、ポリマーを含むコーティングを付与する工程を包含する。
【0053】
本発明はまた、アンプルを密封する方法を提供し、該アンプルは、0.5ml〜10mlの薬学的に受容可能なキャリア中に吸入薬剤または注射薬剤を含み、該方法は、該アンプルに、蒸着法を用いてポリマーコーティングを該アンプルの外表面の少なくとも70%を超えて付与する工程を包含する。本発明はまた、ラベルをアンプルに貼り付ける方法を提供し、該方法は、蒸着法を用いてポリマーのコーティングをアンプルに付与する工程、およびラベルを該コーティングに貼り付ける工程を包含する。
【0054】
金属および金属化合物コーティングに関して記載される本発明の他の任意のそして好ましい特徴が、必要な変更を加えて、ポリマーを含むコーティングに与えられる。
【0055】
他のプラスチック容器がコーティングされる本発明の局面に関して、その方法は、気体および他の揮発性物質(例えば、ビタミン、フレーバー、香料など)の損失あるいはそれらの物質による汚染によって内容物が被害を受ける場合に用いられる包装に一般に適用される。本発明は、プラスチック材料(例えば、ガラス、三層ラミネート、セラミックスなどの安価な材料であるLDP)でなる包装を提供する。
【0056】
本発明は、添付の図を参照して以下の実施例で説明される。
【実施例】
【0057】
実施例1
低密度ポリエチレンで製造された10個のアンプルのストリップを、標準のブローフィルシール装置を用いて調製した。各アンプルには3mlのサルブタモール溶液が含まれていた。アンプルを目視にて検査し、内容物の正確な充填を確認し、そしてアンプルが全て無傷であることを手作業で確認した。アンプルのストリップを、アルミニウムターゲットを取付けたフィルタされた陰極アークコーティング装置に導入した。装置を閉じ、ポンプダウンして真空運転を行った。コーティング操作を開始し、コーティング厚モニターが300nmの厚みを示すまで操作を続けた。コーティングを終了し、真空を解除し、そしてチャンバーを開いた。
【0058】
コーティングされたアンプル(1)を図1〜3に示す。10個のアンプルを、コーティングチャンバーからそのまま取り出した(図1)。このアンプルは、使用において、首部(2)をねじり取り、内容物を放出するための頭部(3)を有する。
【0059】
得られたコーティングされたアンプルは、光沢があり、金属様の外観であり、アルミニウムの薄層で完全にコーティングされていた。
【0060】
アンプルの全表面にわたってアルミニウムコーティングは、連続的であり、そして滑らかであり、顕著な欠陥は見当たらなかった。コーティングは、アンプルに堅固に密着し、そして剥離せず、耐摩擦性を有していた。
【0061】
1つのアンプル(4)を10個のストリップから取り外したが(図2を参照)、該取り外されたアンプルと、残りの9個のアンプルのストリップとの接合部(5)でコーティングが剥ぎ取られることはなかった。
【0062】
アンプルの完全性を試験し、それらが無傷のままであること、そしてコーティングする前と同じ体積の溶液を含むことを確認した。4つのアンプルの内容物を原子吸収に基づく方法を用いて各々試験し、アルミニウムによる汚染があるかどうかを決定した。それぞれ別に試験を行い、検出方法の下限値を超える、1ppm未満のアルミニウム含量が表示され、それぞれの場合において、コーティング後のアンプル内部の溶液のアルミニウム含量が実質的にゼロであることが確認された。これらの結果により、コーティング工程の間、アンプル壁に欠陥がないことが確認した。
【0063】
実施例2
低密度ポリエチレンで製造された5個のアンプルのストリップを、標準のブローフィルシール装置を用いて調製した。各アンプルには3mlの生理食塩水が含まれていた。アンプルを目視にて検査し、内容物の正確な充填を確認し、そしてアンプルが全て無傷であることを手作業で確認した。アンプルのストリップを、チタンターゲットを取付けたフィルタされた陰極真空アーク装置に導入した。装置を閉じ、ポンプダウンして真空運転を行った。コーティング操作を開始し、コーティング厚モニターが300nmの厚みを示すまで操作を続けた。コーティングを終了し、真空を解除し、そしてチャンバーを開いた。
【0064】
得られたコーティングされたアンプル(6)を図4に示す。そしてこのアンプルは、光沢のある外観であり、チタンの薄層で実質的に完全にコーティングされ、そのコーティングは、実施例1のアルミニウムコーティングよりわずかに光沢がなかった。
【0065】
したがって、本発明はコーティングされたプラスチック容器および該容器を得るための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明によりアルミニウムでコーティングされた10個のアンプルのストリップの正面図を示す。
【図2】1つのアンプルが取り外された図1のストリップを示す。
【図3】1つのアンプルが取り外された図1のストリップを示す。
【図4】本発明によりチタンでコーティングされた10個のアンプルのストリップの正面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属または金属化合物のコーティングまたは(b)蒸着法により蒸着されたポリマーを含む、アンプル。
【請求項2】
金属または金属化合物のコーティングを含む、請求項1に記載のアンプル。
【請求項3】
プラスチック材料で形成される、請求項1または2に記載のアンプル。
【請求項4】
前記コーティングが、前記アンプルの外表面積の少なくとも70%を覆っている、上記請求項のいずれかの項に記載のアンプル。
【請求項5】
前記コーティングが、アルミニウム、チタン、クロム、銀、銅、無定形四面体炭素、およびこれらの混合物および合金からなる群より選択される、上記請求項のいずれかの項に記載のアンプル。
【請求項6】
前記コーティングが、物理的蒸着法またはアーク蒸着法により付与される、上記請求項のいずれかの項に記載のアンプル。
【請求項7】
アンプルを形成する工程、およびコーティングを該アンプルに付与する工程により製造される、上記請求項のいずれかの項に記載のアンプル。
【請求項8】
前記コーティングが、金属薄膜である、上記請求項のいずれかの項に記載のアンプル。
【請求項9】
前記コーティングが、少なくとも20nmの深さを有する、請求項8に記載のアンプル。
【請求項10】
前記コーティングが、20μmまでの深さを有する、請求項9に記載のアンプル。
【請求項11】
プラスチック材料で形成され、そしてアルミニウムのコーティングを含む、上記請求項のいずれかの項に記載のアンプル。
【請求項12】
前記アンプルが、薬学的に受容可能なキャリア中に吸入薬剤または注射薬剤の溶液を含む、請求項11に記載のアンプル。
【請求項13】
プラスチック材料で形成され、そしてチタンのコーティングを含む、請求項1から10のいずれかの項に記載のアンプル。
【請求項14】
前記アンプルが、薬学的に受容可能なキャリア中に吸入薬剤または注射薬剤の溶液を含む、請求項13に記載のアンプル。
【請求項15】
プラスチック材料で形成され、そしてクロムのコーティングを含む、請求項1から10のいずれかの項に記載のアンプル。
【請求項16】
前記アンプルが、薬学的に受容可能なキャリア中に吸入薬剤または注射薬剤の溶液を含む、請求項15に記載のアンプル。
【請求項17】
容器の外表面に、金属または金属化合物を含むコーティングを付与する工程を包含する、プラスチック材料で形成された容器から水分放出を減少させる方法。
【請求項18】
前記コーティングを、前記容器の外表面の少なくとも50%以上に付与する工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記コーティングを物理的蒸着法またはアーク蒸着法により付与する工程を包含する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属が、アルミニウム、チタン、クロム、および無定形四面体炭素からなる群より選択される、請求項17から19のいずれかの項に記載の方法。
【請求項21】
アンプルを密封する方法であって、該アンプルが、0.5ml〜10mlの薬学的に受容可能なキャリア中に吸入薬剤または注射薬剤を含み、該アンプルに、金属または金属化合物のコーティングを、該アンプルの外表面の少なくとも70%以上に付与する工程を包含する、方法。
【請求項22】
金属または金属化合物のコーティングをアンプルに付与する工程、およびラベルを該コーティングに貼り付ける工程を包含する、ラベルをアンプルに貼り付ける方法。
【請求項23】
前記ラベルが、前記コーティングされたアンプルに接着剤を用いて貼り付けられる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ラベルが、前記コーティングされたアンプル上に吹き付けまたはプリントされる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
50mlまでの吸入薬剤の溶液を含む、プラスチック材料で形成されたアンプルであって、該アンプルが、金属または金属化合物でコーティングされている、アンプル。
【請求項26】
50mlまでの注射薬剤の溶液を含む、プラスチック材料で形成されたアンプルであって、該アンプルが、金属または金属化合物でコーティングされている、アンプル。
【請求項27】
蒸着法により蒸着されたポリマーのコーティングを含む、請求項1に記載のアンプル。
【請求項28】
前記コーティングが、ポリパラキシリレンである、あるいはポリパラキシリレンを含む、請求項27に記載のアンプル。
【請求項29】
前記コーティングが、化学的蒸着法により付与される、請求項27または28に記載のアンプル。
【請求項30】
アンプルを形成する工程および前記コーティングを該アンプルに付与する工程により製造される、請求項27から29のいずれかの項に記載のアンプル。
【請求項31】
前記アンプルが、薬学的に受容可能なキャリア中に吸入薬剤または注射薬剤の溶液を含む、請求項27から30のいずれかの項に記載のアンプル。
【請求項32】
容器の外表面に、ポリマーを含むコーティングを蒸着法を用いて付与する工程を包含する、プラスチック材料で形成された容器から水分放出を減少させる方法。
【請求項33】
前記コーティングを化学的蒸着法により付与する工程を包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
アンプルを密封する方法であって、該アンプルが、0.5ml〜10mlの薬学的に受容可能なキャリア中に吸入薬剤または注射薬剤を含み、該アンプルに、蒸着法を用いて、ポリマーのコーティングを、該アンプルの外表面の少なくとも70%以上に付与する工程を包含する、方法。
【請求項35】
蒸着法を用いて、ポリマーのコーティングをアンプルに付与する工程、およびラベルを該コーティングに貼り付ける工程を包含する、ラベルをアンプルに貼り付ける方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−529629(P2008−529629A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554632(P2007−554632)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000433
【国際公開番号】WO2006/085063
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(503183455)ブレス リミテッド (11)
【Fターム(参考)】