説明

プラズマを傾斜させた基板洗浄装置

【課題】本発明は、基板に対してヘリコン波プラズマを斜めから照射して洗浄箇所を効率的に洗浄できるようにした基板洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、減圧した真空チャンバ内に酸素と水蒸気を導入して高周波によりプラズマを発生させ、水平に保持した基板のレジストを剥離するプラズマアッシャーにおいて、前記真空チャンバを傾けて基板に対してプラズマを斜めから照射することを特徴とする基板洗浄装置の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対してヘリコン波プラズマを斜めから照射して洗浄箇所を効率的に洗浄できるようにした基板洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する過程において、基板を加工するには、ヘリコン波プラズマを利用したドライエッチング等が行われる。また、基板に付着したレジストを剥離する際にも、ヘリコン波プラズマを利用することができる。
【0003】
図11は、従来の基板洗浄装置の図である。従来の基板洗浄装置1aは、真空チャンバ2内の上方においてヘリコン波プラズマを発生させ、下方に載置したマスク13等の基板の表面をアッシングする。
【0004】
マスク13等の基板の表面及び端面を洗浄する場合においては、基板の表面に対してヘリコン波プラズマが垂直に当たるため、端面に厚みがある場合には、十分にレジストを剥離できない可能性がある。
【0005】
特許文献1に記載されているように、基板上に幅の小さな被加工プレートを角度を設けて置き、被加工プレートに対して傾いた方向にエッチングすることにより、傾いた構造体を得ることができる発明も公開されている。
【特許文献1】特開2006−000945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、基板上のプレートに傾斜構造を形成するものであり、ヘリコン波プラズマにより基板を洗浄するには、均一にレジストを剥離できる必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、基板に対してヘリコン波プラズマを斜めから照射して洗浄箇所を効率的に洗浄できるようにした基板洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、減圧した真空チャンバ内に酸素と水蒸気を導入して高周波によりプラズマを発生させ、水平に保持した基板のレジストを剥離するプラズマアッシャーにおいて、前記真空チャンバを傾けて基板に対してプラズマを斜めから照射することを特徴とする基板洗浄装置の構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上の構成であるから以下の効果が得られる。第1に、チャンバーを傾けてヘリコン波プラズマを斜めから当てることにより、洗浄対象の端面に厚みがある場合でも、均一に洗浄することができる。
【0010】
第2に、基板を上下させる機構及び回転させる機構を設けることにより、傾斜したヘリコン波プラズマが適切に当たるように調整することができ、効率的にアッシングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、基板に対してヘリコン波プラズマを斜めから照射して洗浄箇所を効率的に洗浄できるようにするという目的を、真空チャンバを傾けて基板に対してプラズマを斜めから照射すると共に、マスクを回転させる機構とマスクの高さを調整する機構を設けることで実現した。
【実施例1】
【0012】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である基板洗浄装置について詳細に説明する。図1は、本発明である基板洗浄装置の図である。基板洗浄装置1は、アッシング角度を変えるために、真空チャンバ2を斜めに傾けた装置である。
【0013】
真空チャンバ2は、上箱体2aと中枠体2bと下箱体2cとを連結した密閉容器であり、上箱体2a及び中枠体2bが斜めに傾くように下箱体2cの側面を加工する。尚、傾斜角度は、アッシング対象に合わせて決定する。
【0014】
上箱体2aの上部中央には石英ベルジャー3が上方に突出するように設置され、上部内側には酸素導入口5が設けられる。また、インピーダンスを補正するためのマッチングボックス4も上側に設置される。
【0015】
中枠体2bは、上箱体2aと下箱体2cの間に挟まれた枠状の部材であり、内側には水蒸気導入口6が設けられ、マスク13周辺を水蒸気雰囲気とすることで、酸素プラズマによるアッシング率を調整する。
【0016】
下箱体2cの下部のステージには、マスク13等の基板を固定するためのマスクホルダー14が設けられる。また、下面には真空ポンプ11等と連結させるための真空配管9が接続される。
【0017】
下箱体2cの側面にはマスク投入口7があり、ゲートバルブ8により開閉する。マスク搬送機12により自動的にマスクホルダー14の位置にマスク13を搬入させたり、外部へ搬出させたりすることができる。
【0018】
マスク13は、マスクホルダー14により水平に保持され、回転軸15を上下させることにより、高さを調整することができる。また、回転機構16により回転軸15に回転力を加え、マスク13を回転させることもできる。
【0019】
圧力調整バルブ10で調整しながら真空ポンプ11により真空チャンバ2内を減圧する。減圧下の真空チャンバ2内に酸素導入口5から酸素を供給し、石英ベルジャー3に高周波電源で印加することにより、ヘリコン波プラズマが発生する。
【0020】
真空チャンバ2が傾いているため、マスク13等の基板に対し、ヘリコン波プラズマが斜めから照射される。尚、マスク13を回転させることで、反対側など他の面にも照射することが可能である。
【0021】
マスク13の高さを変更してプラズマがアッシング対象に効果的に当たるように調整することが可能である。マスク13に厚みがあるなど形状が特殊な場合に、斜めから当てることで効率良くレジストの剥離等を行うことができる。
【実施例2】
【0022】
図2は、本発明である基板洗浄装置の評価について実験方法を示す図である。評価実験においては、マスク13の角度を傾けて、ヘリコン波2dを垂直に照射することにより、レジストのアッシング率を比較する。
【0023】
実際の基板洗浄装置1では、マスク13は水平で真空チャンバ2を傾斜させるが、マスク13を傾けてヘリコン波2dを垂直に照射すれば、マスク13に対して斜めに当てていることとなり、評価実験は有効である。
【0024】
実験条件は、高周波電源の電力が1500W、真空チャンバ2内の圧力が10mtorr、酸素導入口5から供給する酸素の量が180sccm、水蒸気導入口6から供給する純水の量が1分間当たり60mg、温度が20℃、処理時間が30秒である。
【0025】
30度傾斜時18、45度傾斜時19、及び60度傾斜時20について、マスク13の表面及び側面2面のレジストを測定し、傾斜のない水平な状態で測定した比較データ17と比較する。
【0026】
図3は、本発明である基板洗浄装置の評価について30度での実験を示す図である。図4は、本発明である基板洗浄装置の評価について45度での実験を示す図である。図5は、本発明である基板洗浄装置の評価について60度での実験を示す図である。
【0027】
30度傾斜時18は、ステージ14aの中央に石英製の支持台14bを設置し、30度傾けたマスク13を支持台14bで支える。ヘリコン波2dを上方から垂直に当てて、マスク13の表面13aと端面13b、13cのレジスト剥離量を測定する。
【0028】
45度傾斜時19は、ステージ14aの中央に石英製の支持台14bを設置し、45度傾けたマスク13を支持台14bで支える。ヘリコン波2dを上方から垂直に当てて、マスク13の表面13aと端面13b、13cのレジスト剥離量を測定する。
【0029】
60度傾斜時20は、ステージ14aの中央に石英製の支持台14bを設置し、60度傾けたマスク13を支持台14bで支える。ヘリコン波2dを上方から垂直に当てて、マスク13の表面13aと端面13b、13cのレジスト剥離量を測定する。
【0030】
図6は、本発明である基板洗浄装置の評価について評価方法を示す図である。マスク13の表面13aと、傾けた際に上側となる端面13bと、端面13bの隣りの端面13cに比較評価用の測定ポイント13dを設定する。
【0031】
実験においては、マスク13の表面13a上に5点の測定ポイント13d、端面13b上に3点の測定ポイント13d、及び端面13c上に3点の測定ポイント13dを設定し、レジストの量を測定する。
【0032】
図7は、本発明である基板洗浄装置の評価について30度での測定データを示す図である。図8は、本発明である基板洗浄装置の評価について45度での測定データを示す図である。図9は、本発明である基板洗浄装置の評価について60度での測定データを示す図である。
【0033】
30度傾斜時18において、表面13aの第1の測定ポイント13dを見ると、処理前のレジスト量は5621.5であり、30秒間処理すると1412.1剥離されて4209.4となることから、1分間のアッシング率は2824.2となる。
【0034】
表面13aの第1〜5の測定ポイント13dにおける1分間のアッシング率を算出すると、2824.2、3046.4、2801、2717、2873であり、平均すると、2852.32となる。
【0035】
同様にして、端面13bの第1〜3の測定ポイント13dにおける平均アッシング率は3210.867となり、端面13cの第1〜3の測定ポイント13dにおける平均アッシング率は1704.4となる。
【0036】
45度傾斜時19において、表面13aの第1の測定ポイント13dを見ると、処理前のレジスト量は5702.1であり、30秒間処理すると1539剥離されて4163.1となることから、1分間のアッシング率は1539となる。
【0037】
表面13aの第1〜5の測定ポイント13dにおける1分間のアッシング率を算出すると、3078、3216、3058、2954.8、3121であり、平均すると、3085.56となる。
【0038】
同様にして、端面13bの第1〜3の測定ポイント13dにおける平均アッシング率は4219となり、端面13cの第1〜3の測定ポイント13dにおける平均アッシング率は2061.067となる。
【0039】
60度傾斜時20において、表面13aの第1の測定ポイント13dを見ると、処理前のレジスト量は5585.1であり、30秒間処理すると1659.3剥離されて3925.8となることから、1分間のアッシング率は3318.6となる。
【0040】
表面13aの第1〜5の測定ポイント13dにおける1分間のアッシング率を算出すると、3318.6、3115.2、3301、3487.2、3263であり、平均すると、3297となる。
【0041】
同様にして、端面13bの第1〜3の測定ポイント13dにおける平均アッシング率は4697.067となり、端面13cの第1〜3の測定ポイント13dにおける平均アッシング率は2477.4となる。
【0042】
図10は、本発明である基板洗浄装置の評価について結果を示す図である。比較データ17における表面13aのアッシング率は3230.9、端面13bのアッシング率は2292.6、端面13cのアッシング率は2287.5である。
【0043】
それに対し、30度傾斜時18の評価データ21については、表面13aのアッシング率は2852、端面13bのアッシング率は3211、端面13cのアッシング率は1704.4である。
【0044】
また、45度傾斜時19の評価データ21については、表面13aのアッシング率は3086、端面13bのアッシング率は4219、端面13cのアッシング率は2061.1である。
【0045】
さらに、60度傾斜時20の評価データ21については、表面13aのアッシング率は3297、端面13bのアッシング率は4697、端面13cのアッシング率は2477.4である。
【0046】
マスク13を傾けることでヘリコン波2dが当たりやすくなった端面13bのアッシング率が角度を上げる度に飛躍的に向上する。ヘリコン波2dを斜めから照射することは、特定部位のアッシング率を向上させるのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明である基板洗浄装置の図である。
【図2】本発明である基板洗浄装置の評価について実験方法を示す図である。
【図3】本発明である基板洗浄装置の評価について30度での実験を示す図である。
【図4】本発明である基板洗浄装置の評価について45度での実験を示す図である。
【図5】本発明である基板洗浄装置の評価について60度での実験を示す図である。
【図6】本発明である基板洗浄装置の評価について評価方法を示す図である。
【図7】本発明である基板洗浄装置の評価について30度での測定データを示す図である。
【図8】本発明である基板洗浄装置の評価について45度での測定データを示す図である。
【図9】本発明である基板洗浄装置の評価について60度での測定データを示す図である。
【図10】本発明である基板洗浄装置の評価について結果を示す図である。
【図11】従来の基板洗浄装置の図である。
【符号の説明】
【0048】
1 基板洗浄装置
1a 基板洗浄装置
2 真空チャンバ
2a 上箱体
2b 中枠体
2c 下箱体
2d ヘリコン波
3 石英ベルジャー
4 マッチングボックス
5 酸素導入口
6 水蒸気導入口
7 マスク投入口
8 ゲートバルブ
9 真空配管
10 圧力調整バルブ
11 真空ポンプ
12 マスク搬送機
13 マスク
13a 表面
13b 端面
13c 端面
13d 測定ポイント
14 マスクホルダー
14a ステージ
14b 支持台
15 回転軸
16 回転機構
17 比較データ
18 30度傾斜時
19 45度傾斜時
20 60度傾斜時
21 評価データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧した真空チャンバ内に酸素と水蒸気を導入して高周波によりプラズマを発生させ、水平に保持した基板のレジストを剥離するプラズマアッシャーにおいて、前記真空チャンバを傾けて基板に対してプラズマを斜めから照射することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
基板に対してヘリコン波プラズマを含むプラズマ発生源を斜めから照射することを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
マスクに対しプラズマを斜めから照射する場合において、マスクを回転させる機構及びマスクの高さを調整する機構を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−193992(P2009−193992A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30153(P2008−30153)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(301028325)株式会社つくばセミテクノロジー (15)
【出願人】(500460782)株式会社シー・ヴィ・リサーチ (4)
【Fターム(参考)】