説明

プラズマ処理方法

【課題】フリージング法を用いたダブルパターニング技術により形成されたフォトレジストマスクのトリミング工程において、得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善する。
【解決手段】半導体基板201上の積層化された薄膜202〜205と、積層化された薄膜上にフリージング法を用いたダブルパターンニング技術により形成されたフォトレジストマスクパターン206,208とを有する被処理材を、よりマスク寸法の小さいマスクパターンを形成するトリミング工程において、フリージング材料207に被覆されたフォトレジストマスクパターン206とフリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターン208を酸素ガス(O)を含む混合ガスを用いてマスクパターン206と208フのトリミングレートを同じにし、得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法に係わり、プラズマを用いて半導体基板等の表面処理を行うのに好適なプラズマ処理方法に関する。特にダブルパターニング技術で形成されたフォトレジストパターンに対して、フォトレジストパターンよりマスク寸法の小さいマスクパターンを形成するトリミング工程を適用する場合に好適なプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製造工程では、フォトリソグラフィー技術が用いられる。半導体基板上に形成した積層化された薄膜上にフォトレジスト材料を塗布し、露光装置によって紫外線等を照射する。これにより、フォトレジスト材料にフォトマスクの回路パターンを露光により転写し、さらに現像を行う。その後、プラズマを用いたエッチング処理により所望の回路パターンを形成している。
【0003】
LSI(Large Scale Integration)の微細化の加速に対応するため、露光装置による回路パターンの転写プロセスでは、露光装置の解像度向上が進められてきた。一般に微細化を進めるためには、露光波長(λ)、レンズ開口数(NA)、レジスト性能や転写プロセスによって決まるプロセス定数(k)を改善する必要がある。最近では、ArFレーザ(193nm)の採用による露光波長の短波長化、液浸露光技術によるレンズ開口数(NA)の改善が実施されている。さらに回路パターンのマスクを2枚のマスクに分割し、露光パターンの最小ピッチを拡大しプロセス定数(k)を改善するダブルパターニング技術が採用され始めた。
【0004】
ダブルパターニング技術に関しては、露光や現像に様々な方法が提案されている。例えば露光を続けて2回行う2重露光法、1回目の露光後にエッチング処理を実施しその後2回目の露光を行う方法、回路パターン形成後にスペーサを成膜しそのスペーサをマスクパターンとする自己整合法などがある。しかし、これらのダブルパターニング技術は、工程数の増加、スループットの低下、製造コストの増大という課題が発生する。そこでフリージング法によるダブルパターニング技術が採用され始めている。フリージング法は、1回目の露光により形成されたフォトレジストパターンをフリージング(固化)し、その後2回目の露光を行う。フリージング法によるダブルパターニング技術は、ダブルイメージング技術とも呼ばれる。フリージング法によるダブルパターニング技術に関しては、非特許文献1などが知られている。
【0005】
また、プラズマエッチング処理により所望の回路パターンを形成する場合、エッチング後の回路パターン寸法は、露光、現像によって転写されるフォトレジスト材料の寸法により決定する。露光されるフォトレジスト材料の最小寸法、すなわち回路パターンの最小寸法は、露光装置の性能で決まる。しかし最近ではLSIの微細化に伴い、露光できるフォトレジスト材料の寸法よりさらに小さい回路パターンを形成しなければならなくなってきた。そこで露光装置での露光限界寸法よりさらに小さい寸法の回路パターンを得るため、プラズマエッチング処理において、露光、現像されたフォトレジストパターンよりマスク寸法の小さいマスクパターンを形成することを目的としたトリミング工程が使用される。なお、トリミング工程は、スリミング工程、シュリンク工程とも呼ばれる。トリミング工程に関しては、特許文献1などが知られている。
【0006】
現像されたフォトレジストの回路パターンを下地の積層化された薄膜に転写するエッチング処理は、一般にプラズマ処理装置を用いる。プラズマ処理装置では、真空処理室、これに接続されたガス供給装置、真空処理室内の圧力を所望の値に維持する真空排気系、半導体基板である被処理材を載置する電極、真空処理室内にプラズマを発生させるためのプラズマ発生手段などから構成されており、プラズマ発生手段により、シャワープレート等から真空処理室内に供給された処理ガスをプラズマ状態とすることで、半導体基板載置用電極に保持された被処理材のエッチング処理が行われる。
【0007】
このようなエッチング処理には、大きく分類すると、アイソレーションやトレンチ型キャパシタを形成するための基板シリコンエッチング、コンタクト用のホールやトレンチを形成する絶縁膜エッチング、MOSトランジスタのゲート電極を形成するポリシリコンエッチングやシリサイドエッチング、High−k/メタルゲートトランジスタを形成するメタル層エッチングや高誘電率ゲート絶縁膜(High−k)エッチング、配線工程におけるメタルエッチング等がある。
【特許文献1】特開平6−244156号公報
【非特許文献1】Masafumi H、“Sub−40nm Half−Pitch Double Patterning with Resist Freezing Process”、Proc. of SPIE Vol.6923、69230H、2008.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように最近のLSIの微細化に伴い、回路パターンの転写プロセスにフリージング法によるダブルパターニング技術が採用され、プラズマエッチング処理にトリミング工程を用いることで所望寸法の微細回路パターンを形成している。フリージング法によるダブルパターニング技術では、1回目の露光によるフォトレジストパターンにフリージング材を塗布し、1回目の露光によるフォトレジストパターンの表面を被覆することで、2回目のフォトレジストパターンの露光と現像の際に1回目露光のフォトレジストパターンが影響を受けないようにしている。よって1回目露光のフォトレジストパターンの表面にのみフリージング材の被覆層が形成され、2回目露光のフォトレジストパターンの表面にはフリージング材の被覆層は形成されない。このような回路パターンに対して、プラズマエッチング処理おいてトリミング工程を適用すると、フリージング材に被覆されたフォトレジストマスクパターンとフリージング材に被覆されていないフォトレジストマスクパターンのトリミングレートが異なり、フリージング材の被覆の有無によりプラズマエッチング後の回路パターン寸法に差が生じるという問題がある。これによりプラズマエッチング後のウエハ面内の回路パターン寸法の均一性の低下や回路パターンの寸法制御性能の低下という課題が生じている。実際、半導体製造工程におけるMOS(Metal Oxide Semiconductor)型トランジスタのゲート電極の加工では、LSIの微細化に伴い、ゲート長32nmにまで縮小する際、許容できるプラズマエッチング後のウエハ面内のゲート長のばらつきは1.6nm以下となってきている。ゲート長のばらつきが大きくなるとリーク電流のばらつきやしきい値電圧のばらつきが生じる。このようなばらつきは、トランジスタ性能のゆらぎを生じ半導体デバイス特性に大きな影響を与え、歩留まりの低下を招く。
【0009】
上では、フリージング法を用いたトリミング工程におけるMOS型トランジスタのゲート長の均一性の課題について述べたが、次世代MOSトランジスタの構造として挙げられるhigh−k/メタルゲート、3次元構造MOSFET(例えばフィン型FET)についても同様の課題がある。
【0010】
また、上ではフリージング法を用いたトリミング工程におけるMOS型トランジスタのゲート長の均一性の課題について例を示したが、同様にホール加工、DeepTrench加工、STI加工、ダマシン加工等でもトリミング工程における均一性の問題があり、回路パターンを高精度にエッチング加工することができず、所定の性能の半導体デバイスを製造できないという課題がある。
【0011】
そこで、本発明では、プラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法に係わりプラズマを用いて半導体基板等の表面処理を行うのに好適なプラズマ処理方法に関し、特に、ダブルパターニング露光技術で形成されたフォトレジストパターンに対して、得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善し、半導体デバイス特性の劣化を防ぐ高精度なエッチング処理が可能なプラズマ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、特にダブルパターニング露光技術で形成されたフォトレジストパターンに対して、フリージング材料に被覆されたフォトレジストマスクパターンとフリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターンとのトリミングレートを同じとしたトリミング工程を適用することで、得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善することができる。
【0013】
また、本発明では、トリミング工程に用いるガスに酸素ガス(O)を含むことによって、フリージング材料に被覆されたフォトレジストマスクパターンとフリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターンとのトリミングレートを同じとし、前記トリミング工程を適用することで、得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善することができる。
【0014】
さらに、本発明では、トリミング工程に用いるガスに酸素ガス(O)と臭化水素ガス(HBr)のいずれかまたは両方を含むことによって、フリージング材料に被覆されたフォトレジストマスクパターンとフリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターンとのトリミングレートを同じとし、前記トリミング工程を適用することで、得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善することができる。
【0015】
加えて、本発明では、トリミング工程に用いるガスに酸素ガス(O)、または酸素ガスに臭化水素ガス(HBr)と窒素ガス(N)の中から少なくとも1つ以上のガスを含むことによって、フリージング材料に被覆されたフォトレジストマスクパターンとフリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターンとのトリミングレートを同じとし、前記トリミング工程を適用することで、得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善することができる。
【0016】
また、本発明では、トリミング工程に用いるガスに酸素ガス(O)、または酸素ガスに臭化水素ガス(HBr)と窒素ガス(N)の中から少なくとも1つ以上のガスを含み、酸素ガスの流量が全混合ガス流量の10%以上とすることによって、フリージング材料に被覆されたフォトレジストマスクパターンとフリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターンとのトリミングレートを同じとし、前記トリミング工程を適用することで、得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善することができる。
【0017】
また、前記トリミング工程は、フリージング材料に被覆されたフォトレジストマスクパターンの前記被覆層をトリミング(エッチング)する間にのみ用いることによって、フリージング材料に被覆されたフォトレジストマスクパターンとフリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターンとのトリミングレートを同じとし、前記被覆層のエッチングが終了した後、次のトリミング工程に用いるガスとして酸素ガス(O)を含む混合ガスを用いることで、得られる回路パターン寸法を高精度に制御でき、半導体デバイス特性を改善することができる。
【0018】
また、前記トリミング工程の処理圧力は、0.1Pa以上100Pa以下が最適で、トリミング工程中に印加するRFバイアス電力に関しては0W以上100W以下とすることで得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善することができる。
【0019】
さらに、前記トリミング工程における被処理材の処理温度を20℃以上でかつ200℃以下とすることで得られる回路パターン寸法のウエハ面内均一性を改善することが可能となり、半導体デバイス特性を改善することができる。
【0020】
また、前記プラズマエッチング装置については、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング装置を用いることで、主要なプラズマ生成領域であるECR面、例えばマイクロ波発振周波数として2.45GHzの場合は磁束密度875Gである領域を磁場コイル電流により任意に制御でき、主要なプラズマ生成領域と被処理材であるウエハとの距離を最適化することで、得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善することができ、半導体デバイス特性を改善することができる。他のICP(inductively Coupled Plasma)エッチング装置、平行平板プラズマエッチング装置等では、主要なプラズマ生成領域と被処理材であるウエハとの距離を変更できない。上述のようにECRエッチング装置では、前記トリミング工程に最適なコイル電流、前記プラズマエッチング処理に最適なコイル電流を設定でき、最良のエッチング特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施例であるマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング装置を用いたプラズマ処理方法を図1〜図6により説明する。図1に本実施例で使用するプラズマ処理装置を示す。上部が開放された真空容器101の上部に、真空容器101内にエッチングガスを導入するためのシャワープレート102(例えば石英製)、誘電体窓103(例えば石英製)を設置し、密封することにより処理室104を形成する。シャワープレート102にはエッチングガスを流すためのガス供給装置105が接続される。また、真空容器101には真空排気口106を介し真空排気装置(図示省略)が接続されている。
【0022】
プラズマを生成するための電力を処理室104に伝送するため、誘電体窓103の上方には電磁波を放射する導波管107(またはアンテナ)が設けられる。導波管107(またはアンテナ)へ伝送される電磁波(プラズマ生成用高周波)は電磁波発生用電源109から発振させる。電磁波(プラズマ生成用高周波)の周波数は特に限定されないが、本実施例では2.45GHzのマイクロ波(プラズマ生成用高周波)を使用する。処理室104の外周部には、磁場を形成する磁場発生コイル110が設けてあり、電磁波発生用電源109より発振された電力は、形成された磁場との相互作用により、処理室104内に高密度プラズマを生成する。
【0023】
また、シャワープレート102に対向して真空容器101の下部にはウエハ載置用電極111が設けられる。ウエハ載置用電極111は電極表面が溶射膜(図示省略)で被覆されており、高周波フィルター115を介して直流電源116が接続されている。さらに、ウエハ載置用電源111には、マッチング回路113を介して高周波電源(バイアス用高周波電源)114が接続される。ウエハ載置用電極111には、温度調節器(図示省略)が接続されている。
【0024】
処理室104内に搬送されたウエハ112は、直流電源116から印加される直流電圧の静電気力でウエハ載置用電極111上に吸着、温度調節され、ガス供給装置105よって所望のエッチングガスを供給した後、真空容器101内を所定の圧力とし、処理室104内にプラズマを発生させる。ウエハ載置用電極111に接続された高周波電源114からバイアス用高周波電力を印加することにより、プラズマからウエハへイオンを引き込み、ウエハ112がエッチング処理される。
【0025】
次に、フリージング法を用いたダブルパターニング技術によりフォトレジストマスクパターンを形成する方法と、前記フォトレジストマスクパターンを用いてトリミング工程を適用し半導体基板等のエッチング処理を行う従来のプラズマ処理方法を図2と図3を用いて説明する。図2と図3は、特にMOSトランジスタのゲート電極の一般的な形成方法を示す。図2に示すように、半導体基板201にゲート絶縁膜層202を形成し、その上にゲート電極材料を堆積させた導電膜層203を形成する。さらに導電膜層203上に、フォトレジスト材料とは感光特性、現像特性、エッチング特性の異なるマスク層204(例えば、ハードマスク層)を形成する。続いて、フォトレジストを露光する際の反射防止膜として、マスク層204の上に、有機系材料を塗布し反射防止膜205(例えば、BARC(Bottom Anti−Reflection Coating)層、または無機系材料を用いたBARL(Bottom Anti−Reflection Layer)でも良い)を形成する。
【0026】
次に、この反射防止膜205上にフォトレジストマスクパターンを形成する。すなわち、スピンコートにより反射防止膜205上にレジスト材料(レジスト材料の主成分としては、例えば、ポリメタクリル酸エステル、フェノール樹脂、フッ素ポリマー、ポリメタクリル酸メチル、エポキシ樹脂、ポリt−ブトキシカルボニルオキシスチレン、ポリフタルアルデヒド、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ノルボルネンヘキサフルオロアルコール、ポリヒドロキシスチレン、ナフトキノンジアジド-ノボラック等が挙げられる。)を塗布し、ArFレーザ等を用いた投影露光法により1回目の回路パターンを露光し、現像することでフォトレジストマスクパターン(L)206を形成する。フォトレジストマスクパターン(L)206に対してフリージング材(フリージング材の主成分としては、例えば、樹脂、架橋剤、溶剤などが挙げられる)を塗布し、前記フォトレジストマスクパターン(L)206の表面に被覆層207を形成する。その後に再度反射防止膜205上にレジスト材料(レジスト材の主成分としては、前述と同様)を塗布し、ArFレーザ等を用いた投影露光法により2回目の回路パターンを露光し、現像することでフォトレジストマスクパターン(L)208を形成する。前記フォトレジストマスクパターン(L)208を露光、現像する際、前記フォトレジストマスクパターン(L)206は表面の被覆層207を有することで影響を受けず、前記ダブルパターニング技術により微細回路パターンマスクを形成できる。
【0027】
次に、トリミング工程を適用し半導体基板のエッチング処理を行う従来のプラズマ処理方法を、図3を用いて説明する。前記ダブルパターニング技術で形成されたマスクパターン(L)206とマスクパターン(L)208よりさらに小さい寸法のパターンを得るためプラズマエッチング処理においてトリミング工程を適用する。従来のトリミング工程を適用した場合、図3に示すように、フリージング材で被覆されたフォトレジストマスクパターン(L)206とフリージング材で被覆されていないフォトレジストマスクパターン(L)208のトリミングレートが異なり、トリミング工程後のマスクパターン寸法に差が生じていた。このようにフォトレジストマスクパターン寸法に差がある状態で、フォトレジストマスクパターンより下層の積層化された薄膜のエッチング処理を行っていた。例えば、フォトレジストマスクパターンで覆われていない部分に対して、直下の反射防止膜205に最適なエッチング処理条件(ガス種、圧力、マイクロ波出力、コイル電流、高周波電源出力等)を用いてプラズマ処理を行う。この場合、最初に反射防止膜205に最適なエッチング処理条件を用いてエッチング処理を行い、その後に前記トリミング工程を適用してもよい。さらに、反射防止膜205より下層のマスク層204、導電膜層203に最適なエッチング処理条件を用いて、順次エッチング処理を行う。このとき、マスク層204をエッチング処理した後、アッシング処理によりフォトレジストマスクパターン206、208と反射防止膜205を除去し、さらにマスク層204を用いて導電膜層203をエッチング処理しても良い。前記エッチング処理が完了すると図7のように、ゲート寸法の異なるMOSトランジスタが形成され、ウエハ面内の回路パターン寸法の均一性が低下する。これによりトランジスタ性能のゆらぎを生じ半導体デバイス特性に大きな影響を与え、歩留まりの低下を招いていた。
【0028】
次に、本発明の一実施例であるフリージング法を用いたダブルパターンニングリソグラフィにより形成されたフォトレジストマスクパターンに対して、プラズマエッチング装置を用いてトリミング工程を実施するプラズマ処理方法を図4から図6を用いて示す。
【0029】
本発明のプラズマ処理方法では、図2で示したフォトレジストマスクパターン(L)206の表面にのみ被覆層207がある状態に対して、フォトレジストマスクパターン(L)206とフォトレジストマスクパターン(L)208をより小さい寸法のゲート電極を形成するためにトリミングするトリミング工程を適用する。図4に本発明の一実施例であるトリミング工程実施後の被処理材の形状を示す。酸素ガス(O)と臭化水素ガス(HBr)と窒素ガス(N)とを含んだ混合ガスを用い、酸素ガスの流量が全混合ガス流量の10%以上としたトリミング処理を行った。図4に示すように前記トリミング処理によりフリージング材料に被覆されたフォトレジストマスクパターン(L)206の寸法とフリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターン(L)208の寸法とが同じとなっている。前記トリミング工程を適用することで、フリージング材料に被覆されたフォトレジストマスクパターン(L)206とフリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターン(L)208とのトリミングレートを同じとすることができる。酸素(O)ガス+臭化水素(HBr)ガス+窒素(N)ガスは、被覆層とフォトレジスト層に対して同じレートを得ることができる。すなわち、前述のように、一般的なフォトレジスト材料(被覆層を含む)は、ポリマーを主体としており、ドライエッチングする場合の主な使用ガスは酸素(O)である。本発明では、酸素(O)を主体として、臭化水素(HBr)+窒素(N)の添加、さらに酸素(O)ガスの流量%を調整することで、被覆層とフォトレジスト層に対して同じレートを得ることができる。
【0030】
トリミング工程は、図1のプラズマ処理装置を用いて行われ、処理室内に酸素ガスと臭化水素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスを所定の圧力に封入し、処理室内にマイクロ波を印加、処理室内にプラズマを生成することで、半導体基板上のフォトレジストマスクがトリミング処理される。トリミング処理におけるプラズマ処理の条件は、圧力は0.1Pa以上100Pa以下、マイクロ波(プラズマ生成用高周波)の出力は100W以上2000W以下、被処理材に印加するRFバイアス(バイアス用高周波)出力は0W以上100W以下である。またコイル電流による主要なプラズマ生成領域(ECR面)とウエハの距離を調節することにより、トリミング処理を最適化できる。
【0031】
図5に、前記トリミング工程を実施した後、フォトレジストマスクパターン206、208より下層の積層化された薄膜をエッチング処理した被処理材の形状を示す。前記トリミング工程の実施後、各薄膜である反射防止膜205、マスク層204、導電膜層203のエッチング処理を行う。実際には、トリミング工程を適用し、続けて直下の反射防止膜205に最適なエッチング処理条件(ガス種、圧力、マイクロ波出力、コイル電流、高周波電源出力等)を用いてエッチング処理を行う。この場合、最初に反射防止膜205に最適なエッチング処理条件を用いてエッチング処理を行い、その後に前記トリミング工程を適用してもよい。さらに反射防止膜205より下層のマスク層204と導電膜層203に最適なエッチング処理条件を用いて、順次各薄膜層のエッチング処理を行う。これにより得られる回路パターン寸法のウエハ面内均一性を改善することが可能となり、半導体デバイス特性を改善することができる。またトリミング工程により、フォトレジストマスクパターン直下の反射防止膜205の一部がエッチングされても問題無く、同様の効果が得られる。
【0032】
図6に、フリージング材料に被覆されたマスクパターン(L)とフリージング材料に被覆されていないマスクパターン(L)のトリミングレート差の酸素添加量依存性を示す。トリミング工程では臭化水素ガス(HBr)、窒素ガス(N)、酸素ガス(O)を含んだ混合ガスを用いた。酸素添加量が2%ではLとLのトリミングレート差は大きいが、酸素添加量を10%とするとLとLのトリミングレート差は小さくなる。これはフリージング材料による被覆層207を形成するポリマーとフォトレジスト材料を形成するポリマーの側鎖基が異なり、エッチング反応に必要な酸素ラジカル量のしきい値が異なるためと考えられる。
【0033】
また、トリミング工程におけるウエハの処理温度は、ラジカル反応や側鎖基の脱離を考慮すると20℃以上であることが望ましい。さらに、フォトレジスト材料のガラス転移による相変化を考慮するとトリミング工程におけるウエハの処理温度は回路パターン形成後のフォトレジスト材料のガラス転移温度以下、例えば200℃以下であることが望ましい。しかしながら、トリミング工程とプラズマエッチング処理に最適なウエハの処理温度が同じとは限らないため、トリミング工程とプラズマエッチング処理中のウエハ処理温度を変化させても構わない。
【0034】
図6のように、酸素添加量が大きいほどLとLのトリミングレート差は小さい。よって、前記トリミング工程においては、酸素単体ガスを用いても同様の効果を得ることができる。酸素単体ガスを用いて前記トリミング工程を適用した場合、一般的にはトリミングレートの絶対値が増加する。よって、トリミングレートを高精度に制御したい場合は、前記トリミング工程においては、酸素ガスと臭化水素ガスとを含んだ混合ガスを用い、トリミングレートの絶対値を低下させ、寸法制御性能を向上させても良い。この場合でも同様の効果を得ることができる。さらに、形成されるパターンの側面の凹凸の低減、LWR(Line Width Roughness)の低減のため前記トリミング工程に窒素ガスを添加してもよい。この場合、LとLのトリミングレート差が小さくなる効果だけでなく、形成されるパターンの側面の凹凸の低減、LWR低減の効果も得られる。
【0035】
さらに、フォトレジストマスクパターンに対して酸素ガスと臭化水素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスを用いてトリミング処理を実施することで、半導体基板の面内全体で同等のトリミング性能を確保することができるという効果がある。
【0036】
さらに、前記トリミング処理をフリージング材料に被覆されたフォトレジストマスクパターン(L)206の前記被覆層207のトリミング(エッチング)の間のみに適用し、その後次のトリミング処理に用いるガスとして酸素ガス(O)を含む混合ガスとすることで、得られる回路パターン寸法を高精度に制御でき、半導体デバイス特性を改善できる。この場合、前記次のトリミング処理に用いる酸素ガス添加量は、最初のトリミング工程の酸素ガス添加量より少なくしトリミングレートの絶対値を低下させることで高精度にパターン寸法を管理できる。
【0037】
ここでは、トリミング工程を行う場合のプラズマ処理圧力は、プラズマ生成の効率により大気圧以下であることが重要であるため100Pa以下が望ましい。また極低圧でもプラズマ生成の効率が低下し、さらにレジストポリマーと反応する反応性ラジカル濃度も低下するため0.1Pa以上が望ましい。よって、トリミング工程の効果が顕著に現れるのは、0.1Pa以上100Pa以下である。
【0038】
さらに、トリミング処理を行う場合の被処理材に印加するRFバイアス電力は、0W以上100W以下である必要がある。特にRFバイアス電力は0Wが望ましい。これは高いエネルギーを持ったイオンが入射するとフォトレジスト材料がスパッタエッチングされ回路パターンが消滅するためであり、スパッタエッチングを抑制するためにRFバイアス電力を100W以下とする必要がある。特に、本実施例におけるトリミング工程では、フォトレジスト材料のスパッタエッチングを抑制するためRFバイアス電力は0Wとした。
【0039】
以上の実施例によれば、フリージング法を用いたダブルパターニング技術を用いて形成されたフォトレジストマスクパターンに対して、酸素ガス、臭化水素ガス、窒素ガスの中から少なくとも1つ以上のガスを含むトリミング工程を行い、前記フリージング材料に被覆された前記フォトレジストマスクパターンと前記フリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターンとのトリミングレートを同じとする。これにより得られる回路パターン寸法のウエハ面内の均一性を改善することができるという効果がある。また高精度なエッチング処理が可能となり、半導体デバイス特性が改善、歩留まりが向上するという効果がある。
【0040】
以上、本実施例の各効果について、特にMOSトランジスタのゲート電極のエッチング処理を例とし、代表的な薄膜層、プラズマエッチング条件、エッチング形状を用いて具体的に説明したが、類似の特性を示す薄膜材料や半導体製造工程であれば、同様の作用効果が得られるのは言うまでもない。
【0041】
また、上述の実施例では半導体デバイスの前工程を中心に各効果を説明したが、半導体デバイスの後工程(配線接続、スーパーコネクト)、マイクロマシン、MEMS分野(ディスプレイ分野、光スイッチ分野、通信分野、ストレージ分野、センサー分野、イメージャ分野、小型発電機分野、小型燃料電池分野、マイクロプローバ分野、プロセス用ガス制御システム分野、医学バイオ分野の関係含む)等の分野でのエッチング加工技術に適用しても同様の作用効果が得られる。
【0042】
また、以上の実施例ではマイクロ波ECR放電を利用したエッチング装置を用いたプラズマ処理方法を例に説明したが、他の放電(有磁場UHF放電、容量結合型放電、誘導結合型放電、マグネトロン放電、表面波励起放電、トランスファー・カップルド放電)を利用したドライエッチング装置においても同様の作用効果がある。ただし、ECR放電を用いた場合、主要なプラズマ生成領域とウエハとの距離の制御性、高解離度のプラズマによる反応性ラジカルの密度増加等によって、より高精度の効果を得ることができることから、より最適な効果を得るためにはECR放電がより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例であるマイクロ波ECRエッチング装置の縦断面図。
【図2】フリージング法を用いたダブルパターニング技術により形成されたフォトレジストパターン形状を模式的に説明する図。
【図3】従来の方法でトリミング処理されたパターン形状を模式的に説明する図。
【図4】本発明の一実施例であるトリミング処理を実施したフォトレジストパターン形状を模式的に説明する図。
【図5】本発明の一実施例であるトリミング処理とプラズマエッチング処理とを実施した回路パターン形状を模式的に説明する図。
【図6】本発明の一実施であるトリミング工程においてLとLのエッチングレート差の酸素ガス添加量依存性を示す図。
【図7】従来の方法でエッチング処理されたパターン形状を模式的に説明する図。
【符号の説明】
【0044】
101…真空容器、102…シャワープレート、103…誘電体窓、104…処理室、105…ガス供給装置、106…真空排気口、107…導波管、109…電磁波発生用電源、110…磁場発生コイル、111…ウエハ載置用電極、112…ウエハ、113…マッチング回路、114…高周波電源、201…半導体基板、202・・・絶縁膜層、203・・・導電層、204・・・マスク層、205・・・反射防止層、206・・・1回目の露光によるフォトレジストマスクパターン(L)、207・・・被覆層、208・・・2回目の露光によるフォトレジストマスクパターン(L

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上の積層化された薄膜と、前記積層化された薄膜上にフリージング法を用いたダブルパターンニング技術により形成されたフォトレジストマスクパターンとを有する被処理材を、プラズマエッチング装置を用いてプラズマ処理する方法であって、
前記フォトレジストパターンよりマスク寸法の小さいマスクパターンを形成するトリミング工程において、
フリージング材料に被覆された前記フォトレジストマスクパターンと前記フリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターンとのトリミングレートを同じとしたトリミング工程を行う
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理方法において、
前記トリミング工程に用いられるガスに酸素ガス(O)を含む
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマ処理方法において、
前記トリミング工程に用いられるガスに酸素ガス(O)と臭化水素ガス(HBr)のいずれかまたは両方を含んでいる
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】
請求項1記載のプラズマ処理方法において、
前記トリミング工程に用いられるガスに酸素ガス(O)、または酸素ガス(O)に臭化水素ガス(HBr)、窒素ガス(N)の中から少なくとも1つ以上のガスを含んでいる
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
請求項1記載のプラズマ処理方法において、
前記トリミング工程に用いられるガスに酸素ガス(O)、または酸素ガス(O)に臭化水素ガス(HBr)、窒素ガス(N)の中から少なくとも1つ以上のガスを含み、酸素ガス(O)のガス流量が全混合ガス流量の10%以上である
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のプラズマ処理方法において、
フリージング材料に被覆された前記フォトレジストマスクパターンの前記被覆層をトリミングする間のみ前記トリミング工程を適用し、その後のトリミング工程に用いられるガスに酸素ガス(O)を含む
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載のプラズマ処理方法において
前記トリミング工程の処理圧力は、0.1Pa以上100Pa以下である
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載のプラズマ処理方法において、
前記トリミング工程における被処理材に印加するRFバイアス電力は、0W以上100W以下である
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載のプラズマ処理方法において、
前記トリミング工程における被処理材の処理温度は、20℃以上でかつ200℃以下である
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載のプラズマ処理方法において、
前記トリミング工程における被処理材の処理温度とプラズマエッチング処理における被処理材の処理温度が異なる
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載のプラズマ処理方法において、
前記プラズマエッチング装置は、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング装置である
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項12】
半導体基板上の積層化された薄膜と、前記積層化された薄膜上にフリージング法を用いたダブルパターンニング技術により形成されたフォトレジストマスクパターンとを有する被処理材を、プラズマエッチング装置を用いてプラズマ処理する方法であって、
前記フォトレジストパターンよりマスク寸法の小さいマスクパターンを形成するトリミング工程において、
フリージング材料に被覆された前記フォトレジストマスクパターンをマスクとしてエッチング処理を実施したパターン寸法と前記フリージング材料に被覆されていないフォトレジストマスクパターンをマスクとしてエッチング処理を実施したパターン寸法とが同じマスクパターン寸法となるようなトリミング処理を行う
ことを特徴とするプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−56389(P2010−56389A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221413(P2008−221413)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】