説明

プラズマ処理装置

【課題】イットリア材料のフッ化を抑制できるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】処理室7と、処理室7にガスを供給する手段10と、処理室7を減圧する排気手段12と、プラズマ生成のための高周波電力20,21と、被処理体4に入射するイオンを加速するための高周波バイアス電力22,23と、表面がイットリア17で覆われている内壁材を処理室側壁に有するプラズマ処理装置において、処理室内のイットリアのフッ化度合いを検知可能なフッ化検知センサー30を設置し、また、密度の高いプラズマに曝される側壁部分に石英製の円筒状の部品41を設置し、また、処理室側面の下方に導電率の高い材料をアース52として設置し、エッチング処理間のクリーニングにおいて、イットリア材料17,37のフッ化の緩和を基準にクリーニング時間を調整できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置におけるパーティクル低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAMやマイクロプロセッサ等の半導体装置の製造工程において、プラズマエッチングやプラズマCVDが広く用いられている。プラズマを用いた半導体装置の加工における課題の1つに、半導体ウエハ等の被処理体に付着する異物数を低減することが挙げられる。例えばエッチング処理中や処理前に被処理体の微細パターン上に異物粒子が落下すると、その部位は局所的にエッチングが阻害される。その結果、被処理体の微細パターンに断線などの不良が生じ、歩留まり低下を引き起こす。そのため、異物粒子の発生要因に着目した対策、及び、発生した異物粒子の輸送を制御することによってウエハに付着しないようにする方法が多数考案されている。
【0003】
例えば、異物粒子発生要因に関して、内壁の表面材料をアルマイトに変えて、イットリアを用いる案が提案されている。アルマイトは例えばフッ素系のプラズマによって少しずつ消耗し、消耗したアルマイトの構成粒子であるアルミ(Al)はフッ素と結合したAlFとして処理室内の特定の場所に堆積し、これが剥がれ落ちて半導体ウエハ等の処理対象の基板状の試料に付着することで、異物粒子による汚染を引き起こす。イットリア材料は、アルマイト材料に比べて、プラズマによる消耗速度が例えば1/10程度と少ないため、異物粒子による汚染を低減することができる。
【0004】
また、例えば、特許文献1には、基板ホルダーの近くに基板の処理の際のパーティクル汚染を最少にする露出面を有し、基板が連続処理される際の基板のパーティクル汚染をプラズマ処理チャンバー中で低減し、基板を処理する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−235924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイスの微細化の進展に伴い、より粒径の小さい異物粒子の低減が必要となっている。プラズマ処理装置においては一般に多くの場合、微小な異物粒子ほど発生量が多い傾向にある。
【0007】
そのため、プラズマに接している内壁材表面をアルマイトからイットリアに変えることにより、同じ粒子径に着目した場合の異物数は低減することが可能となったが、低減対象となる異物粒子径の縮小によって、結果的に、イットリア材料を用いた場合でも新たな異物粒子の低減策が必要となる。
【0008】
イットリア材料を内壁材として用いたことによる異物粒子の発生メカニズムはアルマイト材料を用いた場合と同等である。フッ素系のプラズマに曝されたことに起因して消耗し、壁材を構成する元素にフッ素が含まれる組成、即ちYFOとして処理室内に堆積し、これが剥離することによって異物粒子汚染を引き起こしている。
【0009】
また、低減対象となる異物粒子の粒子径の縮小に伴って、内壁材がフッ素プラズマによって、表面の化学組成の変化(フッ化)し、これに起因して内壁材表面から内壁を構成している部材の微粒子が剥離することも新たな問題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的なものの一例を示せば以下の通りである。即ち、処理室と、プラズマを生成するための高周波電源と、処理ガスを処理室内に供給するためのガス供給手段と、前記処理ガスを排気する排気手段と、処理室内に被処理物を載置するためのステージと、処理室内の内壁に表面の材料がイットリアで構成されている部品を有するプラズマ処理装置において、処理室内壁に内壁のフッ化の度合いを検出するためのフッ化検知センサーを備えたことを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置は、処理室と、プラズマ生成のための高周波電力と、処理ガスを供給するための処理ガス供給機能と、処理室を減圧するための排気手段と、被処理体を戴置するためのステージと、被処理体に入射するイオンを加速するためのウエハバイアス電源と、処理室内の内壁にイットリアを有したプラズマ処理装置であって、処理室内壁に内壁のフッ化の度合いを検出するためのフッ化検知センサーを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置は、さらに、フッ化検知センサーはFT−IR法を用い、検出部表面には厚さ10nm〜10μmのイットリアでコーティングされていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のプラズマ処理装置は、処理室と、プラズマ生成のための高周波電力と、処理ガスを供給するための処理ガス供給機能と、処理室を減圧するための排気手段と、被処理体を戴置するためのステージと、被処理体に入射するイオンを加速するためのウエハバイアス電源と、金属の母材にイットリア膜をコーティングした内壁材を有するプラズマ処理装置であって、処理室内壁を構成する部品を複数に分割し、前記処理室内壁は、金属の母材にイットリアをコーティングした部品と、石英製の部品で構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のプラズマ処理装置は、さらに、石英製の部品を、プラズマ密度の大きい高さ位置に設置したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のプラズマ処理装置は、処理室と、プラズマ生成のための高周波電力と、処理ガスを供給するための処理ガス供給機能と、処理室を減圧するための排気手段と、被処理体を戴置するためのステージと、被処理体に入射するイオンを加速するためのウエハバイアス電源と、イットリア製の内壁材を有するプラズマ処理装置であって、処理室内壁を構成する部品を複数に分割し、前記処理室内壁は、イットリア製部品と導電性の部品で構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明のプラズマ処理装置は、さらに、導電性の部品にはSiCを用いたことを特徴とする。
【0017】
本発明のプラズマ処理装置は、前記フッ化検知センサーにより、イットリアのフッ化度をモニタし、前記フッ化度が所定の値以下になったことを以て、クリーニングの終点を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、処理室内壁のイットリア材料のフッ化度合いを検出するフッ化検知センサーを設置し、さらに、イットリア材料のフッ化を抑制するために、高い密度のプラズマに曝される部位や、ウエハバイアス電力が集中しやすい部分に石英材料を設置し、且つ、ウエハバイアス電力の伝播経路となる内壁部分にはSiC材料を用いることにより、イットリア材料の消耗に起因する異物粒子の発生量を低減することが可能となり、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の第1の実施例になるプラズマ処理装置の概要を示す図である。
【図2】図2は本発明のフッ化検知センサーの概要を示す図である。
【図3】図3は本発明のクリーニングの終点を判定するフローを示した図である。
【図4】図4は本発明の処理室内壁のイットリアがフッ化された状態を説明するための図である。
【図5】図5は本発明の第2の実施例になるプラズマ処理装置の概要を示す図である。
【図6】図6は本発明の第3の実施例になるプラズマ処理装置の概要を示す図である。
【図7】図7は本発明の第3の実施例になるプラズマ処理装置において、側壁を構成している部品を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明になる半導体製造装置の第1の実施例について、図面を参照しながら説明する。最初に、図1、図2により、本発明が適用される半導体製造の構成の概要について説明する。
【0022】
図1は、本発明をマイクロ波ECRプラズマエッチング装置に適用した第1の実施例を示している。図2は本発明をプラズマ処理装置に適用した箇所の概要を示している。
【0023】
このプラズマ処理装置は、プラズマを生成するための電界を供給する導波管及び電界の形成器を有した電界供給手段と、磁場発生手段であるソレノイドコイル22、23と、内部にプラズマが形成されてウエハ4がエッチング処理される処理室7を備えた真空容器1を備えている。電界供給手段は、マイクロ波による電界を出力するマグネトロン発振器20と、マイクロ波がその内部を伝播して処理室7の上方まで導入される導波管21を備えて構成されている。
【0024】
ソレノイドコイル22、23は処理室7を内部に有する円筒形状を備えた真空容器1の上方と側方で処理室7を囲んで配置されている。処理室7内には、プラズマにより処理されるウエハ4をその上面に載置するためのステージ6が配置されており、処理室7の上方でステージ6の当該上面に対向した位置に、処理室7の天井面を構成する円板形状の部材であってその中央部の領域に複数の貫通穴9を設けた石英等の絶縁性を有する材料から構成されたシャワープレート2が備えられている。
【0025】
シャワープレート2の上方には、真空容器1の上部を構成して処理室7内の真空を保つための石英等の絶縁性部材から構成された円板状のプレート3が備えられており、シャワープレート2とプレート3の間には所定の大きさの間隙8が形成されている。
【0026】
間隙8には処理室内に導入される反応性を有したガスの経路であるガス管が連結されガス流量制御手段10で流量制御された反応ガスは、間隙8に導入されてこの内部で拡散して充満し、シャワープレート2に設けられた貫通穴9を通過し処理室7内に均一に上方から供給される。
【0027】
真空容器1には処理室7内部の圧力の大きさを検知するセンサである圧力検出手段11がその側壁に配置されており、これに通信手段によって通信可能に接続された図示しない半導体製造装置の制御部においてその圧力検出手段11から出力された信号から処理室7内の圧力が検出される。また、真空容器1の下方には処理室7の下方に配置された開口を介して内部と連通され処理室7内部の反応性ガスやプラズマ、生成物を排出するターボ分子ポンプや粗引き用のロータリーポンプ等から構成された排気手段12が備えられており、ガス流量制御手段10により調節された貫通穴9からの反応ガスの導入の量速度と排気手段12の動作による処理室7内部の排気の量速度とのバランスによって処理室7内の圧力を所望の値の範囲内となるように調節できるようになっている。
【0028】
ステージ6には、図示しない円板形状の導電製部材からなる電極が配置されこの電極は高周波電源14と電気的に接続されており、ウエハ4の処理中に高周波電源14からインピーダンスマッチング回路13を介して高周波電圧が印加される。また、図示していないがステージ6の上面には内部に図示しない直流電源と電気的に接続された膜状の電極を有した誘電体製の膜が配置されており、その上面に載せられたウエハ4は膜状の電極に直流電力が印加されて形成された静電気力によってステージ6上面上に吸着されて保持される。
【0029】
貫通穴9から不活性ガスがガス導入経路から処理室7内に導入されて排気装置12の動作によって減圧され所定の真空度にされた処理室7内に、図示しないロボットアーム等の搬送手段のアーム上に載せられて搬送されたウエハ4がステージ6の上面に載せられて保持される。処理室7の側壁に配置された開口が閉じられて内部が密封された状態で、処理用の反応性ガスが貫通穴9から処理室内に導入され、マグネトロン発振器20から発振されたマイクロ波は導波管21内を伝搬し、プレート3、及びシャワープレート2を透過して処理室7内に導入される。さらにソレノイドコイル22,23からの磁界が処理室7内に導入され、マイクロ波によって生じる電界とソレノイドコイル22、23により発生する磁界との相互作用によってECR(Electron Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)を生じさせることにより、反応性ガスの粒子が励起されてプラズマ15が生成される。
【0030】
プラズマ15が形成されると高周波電源14からの高周波電力がステージ6内の電極に印加されて、ウエハ4上方にプラズマ15との間にバイアス電位が形成される。プラズマ15中のイオン等の荷電粒子は形成されたバイアス電位による電位差によってウエハ4の表面に誘引されてプラズマ15中のラジカル等の反応性粒子によるウエハ4表面に配置された処理対象の膜層のエッチング処理が開始され所定の条件で進行される。
【0031】
処理室7内に形成されたプラズマ15に面する処理室7の側壁はアルミニウム等の金属材料からできており、当該プラズマ15との間で、内部の微粒子が付着したりプラズマ内の反応性の粒子と間で物理的、化学的に反応するといった相互作用を生じる。このような相互作用が必要以上に進行すると、側壁が削れたりウエハ4に悪影響を及ぼす生成物が形成されたりするので、これを抑制するために、側壁のプラズマ15に面する内側表面には内側面部材として、イットリア等の耐プラズマの高いセラミクス材料から構成された皮膜17が50μmから数百μmの厚さで例えば溶射等のコーティング手段により被覆されている。
【0032】
本装置の真空容器1の側壁には内側面の部材のフッ化度合いを検出するためのフッ化センサー30が設置されている。フッ化センサー30の構成について、図2を用いて説明する。
【0033】
フッ化センサー30の構成要素の一つである窓材33は、石英等の透光性を有する材料から構成された板状の部材であって、真空容器1の円筒部分の側壁に配置された貫通孔の内部に処理室7の内側に面して設置されている。また、プラズマが生成される側の窓材33の表面には、処理室7の内壁材と同様のイットリア等の材料から構成された皮膜37が10nmから10μmの厚さを有して、例えばスパッタ等によりコーティングされて配置されている。窓材33の皮膜37が配置された面の領域に対向する外側の表面の領域には、これに接して反射板34が設置されている。
【0034】
フッ化センサー30は、窓材33の外側の大気側部分に発光手段、例えば赤外光等を発生させる光源31が備わっており、光源31から窓材33に向けて照射され窓材33の板材の内部に入射した入射光35は、窓材33の内側の表面にコーティングされた皮膜37に入射してこれの内部にわずかに浸透したところで反射され、反射板34に入射し再度反射される。入射した入射光35はこのように皮膜37と反射板34との間で複数回入反射されて窓材33内を移動し、その後、最終的に窓材33の外側表面から射出する反射光36として窓材33の外側の大気側部分に配置された検出器32に入射する。
【0035】
検出器32において反射光36が検知され、この出力から検出されるスペクトルと入射光35のスペクトルとが図示しない制御部において比較され、皮膜37の各波長毎の強度の変化等の吸収スペクトルが取得することができ、この吸収スペクトルから皮膜37の組成・結合状態を検出することができる。なお、皮膜37と反射板34との間でおこる反射回数を増やすことにより、吸収スペクトルのS/N比を向上することが可能となる。
【0036】
本実施例において、検出器の皮膜37の厚さは、処理室7内で低減の対象となる異物の粒子の直径の2〜3倍の間の範囲、例えば50nmの粒子が低減の対象であれば、皮膜37の膜厚は100〜300nmの範囲であることが望ましい。これは、異物の粒子の発生量が皮膜37の表面から異物の粒子の直径の数倍程度の深さにおけるフッ化の度合いに大きく依存しているためである。
【0037】
次に、本発明を用いたプラズマ処理装置の運用方法について説明する。図3に図1に示したプラズマ処理装置によって行われるウエハ4の処理フローを示す。エッチング処理中に処理室7に導入される反応ガスは、例えばAr、CHF、CH、CF、C、C、C、CO、O、N、CH、CO、H、HBr、Cl、SF等がある。
【0038】
これらエッチング処理に用いられる反応ガスはウエハ上に形成された膜の種類に応じて選択される。例えばCFガスのようにフッ素が含有された反応ガスを用いてエッチング処理を行った場合、エッチング処理によって処理室7の内側壁部材のプラズマ15に面する表面の領域を覆って配置された皮膜17はフッ化する。
【0039】
その結果、図4に示すようにエッチング処理終了後には皮膜17の表面にフッ化層40が形成される。また、処理室7の内側壁の特定の表面にはCFx膜等が堆積(図示はしていない)した状態となっている。
【0040】
本実施例では、エッチング処理終了後に、処理室7内の部材の表面に付着したCFx膜のような堆積物の除去とフッ化層40のフッ化緩和処理のためクリーニング処理を行う。クリーニング処理では酸素やSFガス等を用いる。
【0041】
多くの場合、CFx膜の除去を行ってからフッ化の緩和、即ちYOFからYOへの還元を行うことが望ましい。この場合、第一のクリーニング放電を行い、処理ガスに起因して堆積したCFx等の堆積膜を積極的に除去する。堆積膜を除去する第一のクリーニング処理中に処理室7に導入されるガスは、O、Ar、SF、NF、CO、CO、H、CH、HBr、N、Cl等があり、これらの1種類のガスあるいは複数のガスを混合して用いる。例えば、CFx膜のような堆積膜の除去には、カーボン(C)との反応が起こる酸素を含有したガスを主としたもの、例えば、Oを単独ガスとして用い、又はO+Ar等のように複数のガスを混合して用い、蒸気圧の高い物質(CO等)に変換して堆積膜を除去する。また、例えば、処理室7内に付着した堆積膜がCFx膜ではなく、Si系の堆積膜が付着した場合、Si系の堆積膜の除去には、Siとの反応が起こるフッ素系のガスを含有したSFやNF等を主としたもの、例えば、SF、NFを単独ガスとして用い、又はSF+O、Cl+O等のように複数のガスを混合して用い、蒸気圧の高い物質(SiFx,SiClx等)に変換して堆積膜を除去する。
【0042】
このように、クリーニング処理に用いるガスは、処理室7内に付着した堆積膜の種類に応じて選択する。そのため、処理室7内に付着した堆積膜として、CFx膜やSi系等の堆積膜が混在している場合、堆積膜を除去する第一のクリーニング処理は、堆積膜の種類に応じて処理室7に導入するガスを切り替えて、複数のクリーニングステップにわけて行う。
【0043】
クリーニング処理では、図示しない受光装置による処理室7内部からの発光のスペクトルを検出することにより、堆積膜の種類やクリーニング処理に用いたガスに関連する例えばF原子のスペクトル強度をモニタし、その強度が所定の値以下になった際に上記第1のクリーニングを完了する。
【0044】
次に第2のクリーニングのステップとして、フッ化しYOFとなったイットリア表面を還元、即ちYOの組成に戻していく。第2のクリーニングのステップであるフッ化緩和処理中に処理室7に導入されるガスは、O、Ar、CO、CO、H、CH、HBr、N、Cl、SF、NF、CF等がある。酸素を含有したガスには酸化還元を促進する効果がある。水素を含有したガスにはフッ素との反応によるフッ素除去効果がある。これらのうち、例えば、O、Arを単独ガスとして用い、又はO+Ar、CH+Ar等のように複数のガスを混合して用いる。
【0045】
フッ化緩和を目的とした第2のクリーニング処理では、図2に示したフッ化センサー30を用いて、クリーニングの終了を判定する。具体的には、第2のクリーニング処理開始後に、フッ化センサー30に備えられている光源31から窓材33の内表面上の皮膜37に向けて赤外光を入射し(入射光35)、窓材37から射出される反射光36を用いて皮膜37の吸収スペクトルを検出器32の出力から検出する。
【0046】
検出器32の出力から得られたスペクトルからは、皮膜17または皮膜37の表面にフッ化層40がある場合、フッ素の吸収スペクトルが検出される。これらの操作を繰り返すことでフッ素の吸収スペクトルの時間変化のデータを取得する。第2のクリーニング開始後は所定の時間間隔毎にクリーニング処理の終了判定を行い、フッ素の吸収スペクトルがある基準値レベル以上に検出される場合は第2のクリーニング処理を続行する。フッ素の吸収スペクトルがある基準値レベル以下になったことが判定されると第2のクリーニング処理を終了する。
【0047】
以上、第1のクリーニング放電と第2のクリーニング放電によってそれぞれ、堆積膜の除去とイットリア表面のフッ化の緩和を主として行う方法を述べたが、当然、第1のクリーニング中にフッ化の緩和が同時に進行し、また、第2のクリーニング中に、堆積膜の除去が同時に進行することがあるのは言うまでものない。この場合、発光のスペクトル検出とフッ化センサー30によるクリーニング終了判定とを並行して行うことになる。
【0048】
次に、エッチング処理後のクリーニング中にCFx膜の堆積膜の除去とフッ化の緩和とが並行して実施される場合のクリーニング処理方法について述べる。
【0049】
CFx膜の堆積膜の除去とフッ化の緩和を並行して進行させるため、クリーニング処理中に処理室7に導入されるガスは、O、Ar、CO、CO、H、CH、HBr、N、Cl、SF、NF、CF等がある。この場合の第1のクリーニング処理では、発光のスペクトルの検出とフッ化センサー30によるクリーニング終了判定とを並行して実施し、堆積膜の除去についてモニタしているF原子のスペクトル強度が所定の値以下になりフッ化の緩和について検出しているフッ化センサー30のフッ素に対応する波長の吸収スペクトルがある基準値レベル以下になった場合、つまり、堆積膜の除去とフッ化緩和処理の終了判定との両者が共に得られたと判定された場合に、制御部からの指令に従って上記クリーニング処理が終了される。したがって、CFx膜の堆積膜の除去とフッ化の緩和が同時に進行して当該クリーニング処理の一段階で十分なフッ化の緩和が得られた場合には、フッ化緩和のクリーニングは実施する必要はなくなる。
【実施例2】
【0050】
本発明になる半導体製造装置の第2の実施例について、図1と同等の構成部分については説明を省略する。図5を参照しながら説明する。本実施例では、図1の実施例と異なる構成は、処理室7の側壁を構成する部材の一部を周方向にこれを覆う円筒状の石英部を備えている点である。皮膜17のフッ化する速度は、その表面が接しているプラズマ15の密度が大きいほど早くなる。従って、プラズマ15が生成される処理室7内のステージ6上方の領域においては、フッ化緩和のためのクリーニング処理の時間が長くかかり複数のウエハ4の処理の間の時間が長くなり結果として半導体製造装置による処理の効率が低下する問題がある。
【0051】
そのため、図5に示したように、プラズマ15の生成される高さ位置の上下の付近の処理室7の側壁部材を耐プラズマ性の高い材料により構成されたリング状の部材を着脱可能に配置している。より詳細には、本実施例の真空容器1を内外2重の部材を備え内側の円筒形状の部材であっての処理室7のプラズマ15に面する側壁を構成する部分を2つの上下に隣接して連結された円筒形状の内筒40−1、40−2とで構成し、これらの間に挟まれた位置に石英製のリング状部材41を配置している。
【0052】
内筒40−1,40−2は第1の実施例の側壁と同様にその処理室7に面する側の内側壁の表面には耐プラズマ製の高い材料から構成された皮膜17が配置されている。上方の内筒40−1の内側壁の下端部には内側壁が円筒の半径方向外側に所定の大きさだけ凹まされて段差を有した凹み部が配置されている。
【0053】
また、内筒40−1の外周側の下端部は内筒40−1,40−2が真空容器1内に挿入されて配置された状態で下方に配置された内筒40−2の上端の上面と接して処理室7の内側壁を構成し、内筒40−1の下端部の凹み部の凹みの内側に、リング状部材41の外周側の側面に周方向に全周またはこれと見なせる程度に全周囲にわたって配置された凸部が挿入され、内筒40−1の下端部と内筒40−2の上端部との間で挟持されている。つまり、本実施例ではリング状部材41は下側の内筒40−2の上端面上に載せられて処理室7の内側壁を構成してプラズマ15に面するものとなっている。
【0054】
リング状部材41の処理室7の内側に面する内周壁面の部分は平滑な面を構成した円筒形状を有した石英製の部分であって、その内周壁面の大きさ(Ls)はLsの高さ方向の範囲内に形成されたプラズマ15のECR面の高さ位置(シャワープレート2の下面からの距離)(Hp)の少なくとも一部が配置するように、内筒40−2の上端面の高さ、あるいは内筒40−1の上端面(あるいはシャワープレート2の下面)から内周壁面の高さ方向の中央(Lsの中点)までの距離が適切となるように内筒40−1,40−2及びリング状部材41の形状が決められる。
【0055】
なお、本実施例では、処理室7を構成する真空容器1の組み立ての際には、プレート3およびシャワープレート2が真空容器1の上方から外れた状態で、下方の内筒40−2を処理室7内に配置し、その上方にリング状部材41を載置した後に上方の円筒40−1がその下端部の凹み部をリング状部材41の外周側のリング状の凸部と係合させて凹み部内に凸部画挿入されて内筒40−1,40−2でリング状部材41を挟みこれを保持させる。これらの部材には設置された状態で相互の位置が所定の誤差内に収まるように位置決め用に組み合わせが定められた突起とこれが嵌め込まれる凹みとが配置されていてもよい。
【0056】
また、本実施例のようにECR放電方式のプラズマ処理装置では、プラズマ15が生成される高さ位置(Hp)を磁場強度分布を調整することによって変化させることが可能であるため、プラズマ処理装置の処理条件(磁場分布条件)に合わせて、LsとHsを求められる仕様に応じて変更できる構造とすることが望ましい。例えば、異なる大きさのLsを有するリング状部材41複数または上下の高さが異なる大きさの円筒40−1,40−2の対の複数から構成されたこれらの組み合わせをセットとしてその複数を予め備えておき、処理室7内で実施される処理の条件やウエハ4の仕様に応じて、当該処理の前もって処理室7内にこれらの適切な組み合わせを選択して真空容器1内に設置するようにしてもよい。なお、内筒40−1,40−2のいずれかにはフッ化センサー30の窓材33が挿入される貫通孔を有していることは言うまでもない。
【実施例3】
【0057】
本発明になる半導体製造装置の第3の実施例について、図6、7を参照しながら説明する。図1、図5と同様の構成部分については説明を省略する。図6は図1、図5においてイットリアでコーティングされた処理室7の内側壁を構成する部材に換えて、イットリアのバルク材によって形成されている円筒型部品を処理室7の内側壁部材として用いている。
【0058】
図7は、本実施例の内側壁部材を構成している円筒形状を有した内筒50−1,50−2を含む真空容器1の構成の概略を示したものである。本図では、図1,5と異なり、各部材が真空容器1から取り外された状態で、相互に組み合わせられて処理室7内に設置される前の状態を示しており、各部材、部品の配置をより明確になるように示している。
【0059】
本実施例では、図5に示す実施例と同様に真空容器1内に処理室7内部に面する内側の側壁部材である内筒50−1,50−2が上下に隣接して配置されており、処理室7内部に設置された状態でこれらの間に挟まれて保持される石英製のリング状部材41を有している。
【0060】
内筒50−1,50−2は、耐プラズマ性の高いセラミクス、例えばイットリア(Y)を含んで一体に構成された部材であって、特に本実施例では上記セラミクスを焼結されて形成された部材(バルク部材)である。図1、図5のように、処理室7の側壁を構成する部材として、アルミ等の導電性の高い金属を母材に厚さ数百マイクロメートルの厚さでその表面にイットリア等耐プラズマ性の高い材料をコーティングして皮膜を配置した場合、数百kHz以上の周波数のウエハバイアス電力は、当該コーティングを透過して母材のアルミ等の金属へ伝播するため、イットリアでコーティングした材料はアースとして機能する。
【0061】
一方で、このような内側壁部材はアースとして機能するため、皮膜表面にはウエハ4に形成されるバイアス電力に応じて加速されたイオンが入射し、これが皮膜のフッ化の進行を促進する。このため、フッ化の緩和のための処理に要する時間が長くなり処理の効率が低下してしまう。これを抑制するために、本実施例では上記のバルク状の耐プラズマ性材料から構成された部材(円筒50−1,50−2)を用いることが望ましい。
【0062】
一方で、処理室7内にウエハバイアスから見てアースとして機能しない石英やイットリア等のセラミクスからなる部材を用いると、プラズマ15から見た処理室7内部のアース面積が小さくなり、その状態でもしイットリアの皮膜を有した部材を処理室7内部のプラズマ15に面した位置に用いると、その部位がウエハバイアス電力の伝達経路となってウエハバイアス電力が集中し、皮膜の消耗及びフッ化が急速に進行する。これを抑制するためには処理室7内にアースとし機能する部材を設置することが必要となる。
【0063】
そこで、図6に示す実施例では、ウエハ4の高さ方向の位置(シャワープレート2下面からのウエハ4またはステージ6上面のウエハ4の載置面の距離)Hwよりも上方の処理室7の内側壁は、イットリアのバルク材で形成された内筒50−1,50−2を設置し、その間のECR面の高さHpの位置の上下の所定の範囲の領域を含む側壁としてその内周壁面の大きさLsを有した石英製のリング状部材41を設置した。そして、ウエハ4の高さ位置Hwより下方の高さ位置、すなわちステージ6の載置面より下方の周囲に、リング状の部材であるアース52を設置した。
【0064】
アース52はリング状部分の内周端の部分に上方に延在して円筒形状の内側壁を構成するフランジ部を有し、このフランジ部がアース52の上面に接して上方に載せられて連結された円筒50−2の下部の内周側の表面を覆っている。このフランジ部の上端の高さは上記のようにウエハ4の高さ位置より下方に位置している。
【0065】
一方で、アース52の内周壁面は処理室7内のプラズマ15に面している。このような構成により、ステージ6内の電極の対をなす高周波電力の電極としてアース52が機能して上記の問題が生じることが抑制される。
【0066】
このアース52はフッ化に起因した材料の剥離による異物粒子の発生の恐れの少ない材料を用いることが望ましく、例えば、SiCやステンレス等の金属がその候補となる。特にSiCはその構成要素であるシリコン(Si)とカーボン(C)は、スパッタによって処理室内に拡散し、処理室内の特定箇所で堆積しても、フッ素系ガスや、酸素を用いた放電により除去することができ、内壁材料の消耗に起因して発生する堆積膜の形成、及び堆積膜からの異物粒子発生のリスクを低減しやすい。これにより、イットリア材料のフッ化や消耗を大幅に抑制し、歩留まりを向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 真空容器
2 シャワープレート
3 プレート
4 ウエハ
6 ステージ
7 処理室
8 間隙
9 貫通穴
10 ガス流量制御手段
11 圧力検出手段
12 排気手段
13 インピーダンスマッチング回路
14 高周波電源
15 プラズマ
17 皮膜
20 マグネトロン発振器
21 導波管
22 ソレノイドコイル
23 ソレノイドコイル
30 フッ化センサー
31 光源
32 検出器
33 窓材
34 反射板
35 入射光
36 反射光
37 皮膜
40 フッ化層
40−1,40−2 内筒
41 リング状部材
50−1,50−2 内筒
52 アース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、プラズマ生成のための高周波電力と、処理ガスを供給するための処理ガス供給機能と、処理室を減圧するための排気手段と、被処理体を戴置するためのステージと、被処理体に入射するイオンを加速するためのウエハバイアス電源と、処理室内の内壁にイットリアを有したプラズマ処理装置において、
処理室内壁に内壁のフッ化の度合いを検出するためのフッ化検知センサーを備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記フッ化検知センサーはFT−IR法を用い、検出部表面は厚さ10nm〜10μmのイットリアでコーティングされていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
処理室と、プラズマ生成のための高周波電力と、処理ガスを供給するための処理ガス供給機能と、処理室を減圧するための排気手段と、被処理体を戴置するためのステージと、被処理体に入射するイオンを加速するためのウエハバイアス電源と、金属の母材にイットリア膜をコーティングした内壁材を有するプラズマ処理装置において、
処理室内壁を構成する部品を複数に分割し、前記処理室内壁は、金属の母材にイットリアをコーティングした部品と、石英製の部品で構成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプラズマ処理装置において、前記石英製の部品を、プラズマ密度の大きい高さ位置に設置したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
処理室と、プラズマ生成のための高周波電力と、処理ガスを供給するための処理ガス供給機能と、処理室を減圧するための排気手段と、被処理体を戴置するためのステージと、被処理体に入射するイオンを加速するためのウエハバイアス電源と、イットリア製の内壁材を有するプラズマ処理装置において、
処理室内壁を構成する部品を複数に分割し、前記処理室内壁は、イットリア製部品と導電性の部品で構成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ処理装置において、前記導電性の部品にはSiCを用いたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、前記フッ化検知センサーにより、イットリアのフッ化度をモニタし、前記フッ化度が所定の値以下になったことを以て、クリーニングの終点を判定することを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−222225(P2012−222225A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88103(P2011−88103)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】