説明

プラズマ処理装置

【課題】ウェハの周縁部の温度調節が容易にできるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理を施す基板Wを載置させる載置台11は、所定の温度に温度調節される載置台本体12と、載置台本体12の上部に配置された、基板Wを吸着するための静電チャック13を備え、静電チャック13の上面に、中央に配置される第1の熱伝達用ガス拡散領域47と、周縁部に配置される第2の熱伝達用ガス拡散領域48とが形成され、第1の熱伝達用ガス拡散領域47に熱伝達用ガスを供給する第1の熱伝達用ガス供給部51と、第2の熱伝達用ガス拡散領域48に熱伝達用ガスを供給する第2の熱伝達用ガス供給部52とを備え、第1の熱伝達用ガス拡散領域47と第2の熱伝達用ガス拡散領域48において、冷却能力をそれぞれ任意に設定して別々に制御し、第2の熱伝達用ガス拡散領域48は、静電チャック13の上面の周縁部に形成された環状の凹部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを生成して基板に対してエッチングなどの処理を施すプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体装置などの製造工程においては、高周波電圧を利用して処理室内にプラズマを生成させ、半導体基板(ウェハ)に対してエッチング処理や成膜処理等を施す装置が用いられている。かかるプラズマ処理装置では、処理室内において基板を載置させる載置台の内部に形成された冷媒流路に冷媒を流して載置台を所望の温度とし、載置台上に載置されたウェハの温度を調節するのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ウェハにプラズマ処理を施す場合には、載置台上にウェハを載置した後、処理室内を所定の真空度に保持しつつ、処理ガス、例えば、C、O、Arで構成される処理ガスを充填し、高周波電力を印加して処理室内で処理ガスからプラズマを発生させる。このプラズマにより、ウェハに対して例えば、ドライエッチング(RIE)処理などのプラズマ処理を施す。このとき、ドライエッチング処理が施されることによってウェハの温度が上昇するが、載置台を冷却し、ウェハに載置台の熱を伝達することでウェハを冷却する。この冷却の際、熱伝達性に優れたHeガス等の熱伝達用ガスをウェハの裏面に向けて流し、載置台上面とウェハ間の熱伝達性を向上することによってウェハを効率良く冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−347283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、以上のようなプラズマ処理装置にあっては、載置台の上面の面積は、ウェハよりも小さく形成されている。その理由は、載置台の上面が処理室内に露出していると、プラズマ処理の際に、プラズマによって載置台の上面が損傷されてしまうからである。そこで、載置台の上面の外周縁をウェハの外周縁よりも内側になるように配置させて、ウェハの外周縁を載置台の上面の外周縁よりも外側まで突出させ、プラズマによる損傷を回避している。
【0006】
しかしながら、このようにウェハの外周縁を載置台の上面の外周縁よりも外側まで突出させた場合、載置台の熱がウェハの周縁部に十分に伝達できなくなり、ウェハの周縁部の冷却が不十分になるという問題が生じた。その結果、ウェハの周縁部が内側部よりも高温になり、周縁部のエッチング特性が悪くなり、ホール抜け性が悪化したり、エッチングの選択比が低下してしまう。
【0007】
一方、近年はウェハの大口径化、ウェハの超微細加工化が飛躍的に進んだため、一枚のウェハから数多くのデバイスを生産するようになっている。そのため、ウェハの周縁部からもデバイスを生産する場合がある。従って、ウェハの周縁部の温度上昇を防止して周縁部におけるエッチング特性の悪化を防止する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、ウェハの周縁部の温度調節が容易にできるプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、処理室内において載置台に基板を載置させ、前記処理室内に供給された処理ガスをプラズマ化させて、基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、前記載置台は、所定の温度に温度調節される載置台本体と、前記載置台本体の上部に配置された、基板を吸着するための静電チャックを備え、前記静電チャックの上面に、中央に配置される第1の熱伝達用ガス拡散領域と、周縁部に配置される第2の熱伝達用ガス拡散領域とが形成され、前記第1の熱伝達用ガス拡散領域に熱伝達用ガスを供給する第1の熱伝達用ガス供給部と、前記第2の熱伝達用ガス拡散領域に熱伝達用ガスを供給する第2の熱伝達用ガス供給部とを備え、前記第1の熱伝達用ガス拡散領域と前記第2の熱伝達用ガス拡散領域において、冷却能力をそれぞれ任意に設定して別々に制御し、前記第2の熱伝達用ガス拡散領域は、前記静電チャックの上面の周縁部に形成された環状の凹部であることを特徴とする、プラズマ処理装置が提供される。
【0010】
例えば、前記第1の熱伝達用ガス拡散領域は、前記静電チャックの上面の中央に形成された1または2以上の凹部であり、前記第1の熱伝達用ガス拡散領域には、複数の凸部が形成されている。
【0011】
例えば、前記第1の熱伝達用ガス供給部に対する前記第2の熱伝達用ガス供給部の供給圧比が、2以上である。好ましくは、2.5〜4.0である。
【0012】
例えば、前記第2の熱伝達用ガス供給部による熱伝達用ガスの供給が、前記第1の熱伝達用ガス供給部による熱伝達用ガスの供給よりも先に開始される。
【0013】
例えば、前記静電チャックは、前記載置台本体の上部にアクリル系の接着剤で接着されている。また、例えば、前記載置台本体の上部周縁部には、前記静電チャックの側面よりも内側まで、絶縁材料が溶射されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板の周縁部と内側部の温度調節を別々に行うことにより、ウェハの周縁部の温度調節が容易にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】載置台の上面図である。
【図3】載置台の上部周縁部を拡大して示した部分断面である。
【図4】載置台本体の上部周縁部を拡大して示した部分断面である。
【図5】本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置における処理工程の説明図である。
【図6】処理工程の変形例の説明図である。
【図7】第1、2の熱伝達用ガス拡散領域の容積比の試算の説明図である。
【図8】各種接着剤の耐ラジカル性確認のためのランニング評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置1の概略構成を示す断面図である。図2は、このプラズマ処理装置1が備える、載置台11の上面図である。図3は、載置台11の上部周縁部を拡大して示した部分断面である。図4は、載置台本体12の上部周縁部を拡大して示した部分断面である。
【0018】
プラズマ処理装置1は、金属製、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼製の電気的に接地された密閉構造の円筒型をした処理室10を有している。この処理室10内に、被処理基板としてのウェハWを載置させる円柱形状の載置台(下部電極)11が配設されている。この載置台11は、例えばアルミニウム等の導電性材料からなる載置台本体12と、載置台本体12の上部に配置された、ウェハWを吸着するための例えばAl等の絶縁材料からなる静電チャック13を備えている。載置台本体12は、絶縁材を介して、処理室10の底から垂直上方に延びる筒状支持部15に支持されている。
【0019】
処理室10の側壁と筒状支持部15との間には排気路16が形成され、この排気路16の底部に連通する排気管17が排気装置18に接続されている。排気装置18は、真空ポンプを有し、処理室10内を所定の真空度まで減圧する。また、排気管17は可変式バタフライバルブである自動圧力制御弁(automatic pressure control valve)19を有し、その自動圧力制御弁19によって処理室10内の圧力が制御されている。
【0020】
載置台本体12には、プラズマ生成およびイオン引き込み用の高周波電圧を印加する高周波電源21が、整合器22および給電棒23を介して電気的に接続されている。この高周波電源21は、所定の高周波、例えば、60MHzの高周波電力を載置台11に印加する。
【0021】
処理室10の天井部には、接地電極としてのシャワーヘッド24が配設されている。上述の高周波電源21により、載置台11とシャワーヘッド24との間に高周波電圧が印加される。シャワーヘッド24は、多数のガス通気孔25を有する下面の電極板26と、電極板26を着脱可能に支持する電極支持体27とを有する。また、電極支持体27の内部にバッファ室28が設けられ、このバッファ室28のガス導入口29には処理ガス供給部30からのガス供給配管31が接続されている。
【0022】
載置台本体12の内部には、例えば、円周方向に配置される環状の冷媒室35が設けられている。この冷媒室35には、チラーユニット36から配管37、38を介して所定温度の冷媒、例えば、冷却水が循環供給される。これにより、載置台本体12は所定の温度に冷却されている。
【0023】
載置台本体12の上部に配置された静電チャック13は、適当な厚さを持った円板形状をなしており、静電チャック13の内部には、タングステン等の導電材料からなる電極板40が埋め込まれている。電極板40には直流電源41が電気的に接続されている。そして、静電チャック13は、直流電源41から電極板40に直流電圧を印加することにより、クーロン力でウェハWを吸着保持することができる。
【0024】
上述のように所定の温度に冷却された載置台本体12の熱は、この静電チャック13を介して、静電チャック13上面に吸着したウェハWに伝達される。この場合、処理室10内が減圧されても熱を効率よくウェハWに伝達させるために、静電チャック13上面に吸着したウェハWの裏面に向けて、Heなどの熱伝達用ガスが、第1ガス供給ライン45、第2ガス供給ライン46を介して供給されている。
【0025】
図2、3に示すように、静電チャック13の上面には、中央に配置される第1の熱伝達用ガス拡散領域47と、周縁部に配置される第2の熱伝達用ガス拡散領域48が形成されている。この実施の形態では、第1の熱伝達用ガス拡散領域47は、静電チャック13の上面中央に形成された円形状の単一の凹部であり、後述するように、第1の熱伝達用ガス拡散領域47には、第1ガス供給ライン45からの熱伝達用ガスが吐出される第1ガス孔102が複数形成されている。また、この第1の熱伝達用ガス拡散領域47には、複数の凸部(突起部)50が形成されている。この凸部50は直径1mm程度の円柱形状であり、第1ガス孔102の数よりも多く形成されている。
【0026】
一方、第2の熱伝達用ガス拡散領域48は、静電チャック13の上面の周縁部に形成された環状の凹部であり、後述するように、第2の熱伝達用ガス拡散領域48には、第2ガス供給ライン46からの熱伝達用ガスが吐出される第2ガス孔104が複数形成されている。これにより、第2の熱伝達用ガス拡散領域48は、静電チャック13の上面の周縁部において、第1の熱伝達用ガス拡散領域47の外側を囲むように配置されている。
【0027】
静電チャック13上面にウェハWを吸着すると、ウェハWの裏面との間において、これら第1の熱伝達用ガス拡散領域47および第2の熱伝達用ガス拡散領域48によって熱伝達用ガスの供給空間が形成される。この場合、第1の熱伝達用ガス拡散領域47に対する第2の熱伝達用ガス拡散領域48の容積比が0.1以下であることが好ましい。なお、第1の熱伝達用ガス拡散領域47および第2の熱伝達用ガス拡散領域48は、静電チャック13上面からほぼ同じ深さの凹部である。このため、静電チャック13の上面から見た場合において、第1の熱伝達用ガス拡散領域47に対する第2の熱伝達用ガス拡散領域48の面積比も0.1以下であることが好ましい。また、第1の熱伝達用ガス拡散領域47に対する第2の熱伝達用ガス拡散領域48の容積比(面積比)は、0.02〜0.07であることがより好ましく、0.03〜0.06であることが更に好ましい。なお、第1の熱伝達用ガス拡散領域47の容積とは、凸部50の総体積を除いたものである。
【0028】
第1の熱伝達用ガス拡散領域47には、第1の熱伝達用ガス供給部51から、第1ガス供給ライン45を介して第1ガス孔102からHeなどの熱伝達用ガスが供給されている。一方、第2の熱伝達用ガス拡散領域48には、第2の熱伝達用ガス供給部52から、ガス供給ライン46を介して第2ガス孔104からHeなどの熱伝達用ガスが供給されている。このように第1の熱伝達用ガス供給部51と第2の熱伝達用ガス供給部52を別々に有していることにより、第1の熱伝達用ガス拡散領域47に対する熱伝達用ガスの供給圧力と、第2の熱伝達用ガス拡散領域48に対する熱伝達用ガスの供給圧力を任意に設定することができる。この場合、第1の熱伝達用ガス供給部51に対する第2の熱伝達用ガス供給部52の供給圧比が2以上であることが好ましく、より好ましくは供給圧比が2.5〜4.0である。
【0029】
静電チャック13は、載置台本体12の上部に、接着剤55で接着されている。接着剤55は、シリコン系の接着剤ではなく、アクリル系の接着剤を用いることが好ましい。アクリル系の接着剤は、シリコン系の接着剤に比べてプラズマ中のラジカルに対する消耗が少なく、長期間、静電チャック13を固定しておくことができる。
【0030】
また、上述したように、載置台本体12の熱は静電チャック13を介してウェハWに伝達されるが、その際、温度変化によって、静電チャック13に変形が生じて静電チャック13上面の平面度が悪化する場合がある。静電チャック13上面の平面度が悪化すると、ウェハWを確実に吸着できなくなってしまう。そこで、接着剤55の厚さを調整することにより、温度変化によって生ずる静電チャック13の変形を接着剤55で吸収し、このような静電チャック13上面の平面度の悪化を防止することが望ましい。そのためには、例えばウェハWの直径が200mmの場合は、接着剤55の厚さを60μm以上、ウェハWの直径が300mmの場合は、接着剤55の厚さを90〜150μmとすることが好ましい。
【0031】
また、図3に示すように、プラズマ処理装置1にあっては、載置台本体12および静電チャック13で構成される載置台11の上面の面積は、ウェハWよりも小さく形成されている。このように、ウェハWの外周縁を載置台11の上面の外周縁よりも外側まで突出させることにより、載置台11の表面(静電チャック13の表面)がプラズマによって損傷されるのを回避している。一方、ウェハWとフォーカスリング60および静電チャック13とフォーカスリング60との間の隙間lにプラズマが入り込む場合がある。その場合、上述のように載置台本体12の上部に、アクリル系の接着剤55を用いて静電チャック13を接着した場合、アクリル系の接着剤55は、シリコン系の接着剤に比べて抵抗値が低いため、Vdcが生じやすくなり、そのVdcにより、静電チャック13がダメージを受ける可能性がある。
【0032】
そこで、載置台本体12の上部にアクリル系の接着剤55を用いて静電チャック13を接着した場合は、図4に示すように、載置台本体12の上部周縁部には、静電チャック13の側面よりも内側まで、Al等の絶縁材料56を溶射して、載置台本体12の上部周縁部の抵抗を高くしておくことが望ましい。この場合、絶縁材料56の溶射範囲は、静電チャック13の側面よりも例えば5mm程度内側までとすることが望ましい。
【0033】
図1に示すように、載置台11の上部において、静電チャック13の外側を環状に囲むフォーカスリング60が配置されている。また、載置台11の周囲には、環状のバッフル板61が設けられている。また、処理室10の側壁には、ウェハWの搬入出口62を開閉するゲートバルブ63が取り付けられている。また、処理室10の周囲には、環状又は同心状に延びる磁石64が配置されている。
【0034】
このプラズマ処理装置の処理室10内では、磁石64によって一方向に向かう水平磁界が形成されると共に、載置台11とシャワーヘッド24との間に印加された高周波電圧によって鉛直方向のRF電界が形成され、これにより、処理室10内において処理ガスを介したマグネトロン放電が行われ、載置台11の表面近傍において処理ガスから高密度のプラズマが生成される。
【0035】
プラズマ処理装置1の各構成要素、例えば、排気装置18、高周波電源21、処理ガス供給部30、静電チャック13用の直流電源41、第1の熱伝達用ガス供給部51および第2の熱伝達用ガス供給部52等は、制御部70によって動作が制御されている。
【0036】
さて、以上のように構成されたプラズマ処理装置1で例えばドライエッチング処理を行う場合、先ず、ゲートバルブ63を開状態にして加工対象のウェハWを処理室10内に搬入し、静電チャック13の上に載置する。そして先ず、図5に示すように、直流電源41直流電圧が印加され、クーロン力でウェハWを静電チャック13上に吸着保持する。
【0037】
次に、排気装置18によって処理室10内を所定の真空度まで減圧した後、処理ガス供給部30より、例えばCガス、O2ガス及びArガスから成る混合ガス等の処理ガスを、所定の流量および流量比で処理室10内に導入し、排気装置18により処理室10内の圧力を所定値に維持する。
【0038】
そして、第1の熱伝達用ガス供給部51によって、ウェハWの裏面中央に形成された第1の熱伝達用ガス拡散領域47に、Heなどの熱伝達用ガスを供給し、同様に、第2の熱伝達用ガス供給部52によって、ウェハWの裏面周縁部に形成された第2の熱伝達用ガス拡散領域48に、Heなどの熱伝達用ガスを供給する。こうして、載置台本体12の熱をウェハWに効率よく伝達することにより、ウェハWの温度を調節する。
【0039】
その後、高周波電源21より高周波電力を載置台本体12に供給し、シャワーヘッド24より吐出された処理ガスをプラズマ化させる。そして、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによってウェハWの表面がエッチングされる。
【0040】
エッチング処理を終了する場合は、先ず、高周波電源21からの高周波電力の供給が停止され、次いで、静電チャック13の吸着保持が停止され、ウェハW裏面への熱伝達用ガスの供給も停止される。なお、静電チャック13の吸着保持を停止する場合、更にマイナスの電圧を印加して除電を行っても良い。その後、排気装置18による減圧と、処理ガス供給部30よる処理ガスの供給が、それぞれ停止される。
【0041】
このプラズマ処理装置1にあっては、第1の熱伝達用ガス供給部51と第2の熱伝達用ガス供給部52を別々に有していることにより、第1の熱伝達用ガス拡散領域47に対する熱伝達用ガスの供給圧力と、第2の熱伝達用ガス拡散領域48に対する熱伝達用ガスの供給圧力を任意に設定することができる。このため、ウェハW中央部と周縁部の冷却能力を任意に変更できる。例えば、ウェハWの外周縁が載置台11の上面外周縁よりも外側まで突出されているため、従来は、ウェハWの周縁部の冷却が不十分になるという問題があった。これに対して、このプラズマ処理装置1によれば、第2の熱伝達用ガス拡散領域48に対する熱伝達用ガスの供給圧力を上げ、ウェハW中央部の冷却能力に比べて、ウェハW周縁部の冷却能力を高くすることにより、ウェハWの周縁部を、ウェハWの中央部と同程度の温度に冷却することが可能となる。なお、第1の熱伝達用ガス拡散領域47に対する第2の熱伝達用ガス拡散領域48の容積比が0.1以下であることにより、ウェハWの周縁部を局所的に、かつ高速に冷却することができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0043】
例えば、ウェハWの裏面中央の第1の熱伝達用ガス拡散領域47と裏面周縁部の第2の熱伝達用ガス拡散領域48に熱伝達用ガスを供給する場合、図6に示すように、先に第2の熱伝達用ガス供給部52によって第2の熱伝達用ガス拡散領域48に熱伝達用ガスを供給し始め、その後、第1の熱伝達用ガス供給部51によって第1の熱伝達用ガス拡散領域47に熱伝達用ガスを供給しても良い。このように、ウェハWの裏面周縁部を先に冷却することによっても、ウェハW周縁部の冷却能力を高くすることができる。
【0044】
また、第1の熱伝達用ガス拡散領域47は、単一の凹部に複数の凸部50が設けられた構成でなくても良い。例えば、第1の熱伝達用ガス拡散領域47を静電チャック13の上面に設けられた溝としても良い。この場合も、第1の熱伝達用ガス拡散領域47に対する第2の熱伝達用ガス拡散領域48の容積比は、前述の通り0.1以下、好ましくは0.02〜0.07、更に好ましくは0.03〜0.06である。
【0045】
なお、以上の実施の形態では、ウェハWを冷却する場合を説明したが、ウェハWを昇温させる場合にも本発明は同様に適用できる。また、以上説明した実施の形態では、下部電極に一周波の高調派を印加するタイプの装置について説明したが、二周波の高調派を印加するタイプの装置であっても良い。また、以上説明した実施の形態では、高周波電圧を用いたプラズマ処理装置を例にとって説明したが、これに限定されず、マイクロ波を用いたプラズマ処理装置についても本発明を適用できるのは勿論である。また、以上の実施の形態では、本発明をエッチング処理を行うプラズマ処理装置1に適用していたが、本発明は、エッチング処理以外の基板処理、例えば成膜処理を行うプラズマ処理装置にも適用できる。また、本発明のプラズマ処理装置で処理される基板は、半導体ウェハ、有機EL基板、FPD(フラットパネルディスプレイ)用の基板等のいずれのものであってもよい。
【実施例】
【0046】
(第1、2の熱伝達用ガス拡散領域の容積比の試算)
静電チャック13の上面に形成される中央の第1の熱伝達用ガス拡散領域47の容積βと周縁部の第2の熱伝達用ガス拡散領域48の容積αについて試算した。図7に示すように、静電チャック13の半径Aを150mm、第2の熱伝達用ガス拡散領域48(環状)の外半径Bを148mm、内半径Cを145mm、第1の熱伝達用ガス拡散領域47(円形状)の半径Dを140mm、支持部50(円柱形状)の半径Eを0.5mm、第1の熱伝達用ガス拡散領域47と第2の熱伝達用ガス拡散領域48の深さFを50μm(0.05mm)、支持部50の個数Gを250個とした。
α=π×B×F−π×C×F=138.003
β=π×D×F−π×E×F×G=3067.3875
α/β=0.045
となった。
【0047】
この寸法で静電チャックの上面に第1の熱伝達用ガス拡散領域と第2の熱伝達用ガス拡散領域を形成してエッチング処理を行った。その結果、ウェハの温度を全体的に均一にでき、ウェハの周縁部まで均一にエッチングできた。なお、上記式によれば、上限として、A=150mm、B=148mm、C=144mm、D=140mm、E=0.5mm、F=50μm(0.05mm)、G=250の場合、α/β=0.060となる。一方、下限として、A=150mm、B=147mm、C=145mm、D=140mm、E=0.5mm、F=50μm(0.05mm)、G=250の場合、α/β=0.030となる。
【0048】
(静電チャックを貼り付ける接着剤の検討)
各種接着剤の耐ラジカル性確認のためのランニング評価結果を図8に示す。シリコン系の接着剤に比べて、アクリル系の接着剤では寿命が飛躍的に向上した。また、接着剤の厚さについて高温槽ランニング評価を行ったところ、ウェハの直径が200mmの場合は、接着剤の厚さを60μm以上、ウェハの直径が300mmの場合は、接着剤の厚さを90〜150μmとすることが好ましいことが分かった。ウェハの直径が200mmの場合は、接着剤の厚さを60μmにした場合が最も平面度変化量が少なく、ウェハの直径が300mmの場合は、接着剤の厚さを120μmにした場合が最も平面度変化量が少なくなった。また、接着剤の直径は、ウェハの直径が200mmの場合は195.6mm、ウェハの直径が300mmの場合は、295.2mmが最適であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば基板のエッチング処理等を行うプラズマ処理装置に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
W ウェハ
1 プラズマ処理装置
10 処理室
11 載置台
12 載置台本体
13 静電チャック
18 排気装置
21 高周波電源
24 シャワーヘッド
30 処理ガス供給部
35 冷媒室
36 チラーユニット
40 電極板
47 第1の熱伝達用ガス拡散領域
48 第2の熱伝達用ガス拡散領域
50 支持部
51 第1の熱伝達用ガス供給部
52 第2の熱伝達用ガス供給部
55 接着剤
56 絶縁材料
70 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内において載置台に基板を載置させ、前記処理室内に供給された処理ガスをプラズマ化させて、基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
前記載置台は、所定の温度に温度調節される載置台本体と、前記載置台本体の上部に配置された、基板を吸着するための静電チャックを備え、
前記静電チャックの上面に、中央に配置される第1の熱伝達用ガス拡散領域と、周縁部に配置される第2の熱伝達用ガス拡散領域とが形成され、
前記第1の熱伝達用ガス拡散領域に熱伝達用ガスを供給する第1の熱伝達用ガス供給部と、前記第2の熱伝達用ガス拡散領域に熱伝達用ガスを供給する第2の熱伝達用ガス供給部とを備え、
前記第1の熱伝達用ガス拡散領域と前記第2の熱伝達用ガス拡散領域において、冷却能力をそれぞれ任意に設定して別々に制御し、
前記第2の熱伝達用ガス拡散領域は、前記静電チャックの上面の周縁部に形成された環状の凹部であることを特徴とする、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1の熱伝達用ガス拡散領域は、前記静電チャックの上面の中央に形成された1または2以上の凹部であり、前記第1の熱伝達用ガス拡散領域には、複数の凸部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1の熱伝達用ガス供給部に対する前記第2の熱伝達用ガス供給部の供給圧比が2以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1の熱伝達用ガス供給部に対する前記第2の熱伝達用ガス供給部の供給圧比が2.5〜4.0であることを特徴とする、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2の熱伝達用ガス供給部による熱伝達用ガスの供給が、前記第1の熱伝達用ガス供給部による熱伝達用ガスの供給よりも先に開始されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記静電チャックは、前記載置台本体の上部にアクリル系の接着剤で接着されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記載置台本体の上部周縁部には、前記静電チャックの側面よりも内側まで、絶縁材料が溶射されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−42145(P2013−42145A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193364(P2012−193364)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【分割の表示】特願2007−91691(P2007−91691)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】