説明

プラズマ溶射デバイス、およびプラズマ・ガス流内に液体前駆体を導入するための方法

【課題】溶射プロセスにおいて液体前駆体をプラズマ・トーチのプラズマ・ガス流内に完全に浸透させること。
【解決手段】プラズマ溶射デバイス1は、加熱区域6内でプラズマ・ガス5を加熱するためのプラズマ・トーチ4を含み、このプラズマ・トーチ4は、プラズマ・ガス流8を生成するためのノズル本体7を含み、且つこのノズル本体7を通って中心長手方向軸線10に沿って延びるアパーチャ9を有している。アパーチャ9は、プラズマ・ガス5用の入口12を有する収束セクション11と、アパーチャの最小断面領域を含むスロート・セクション13と、プラズマ・ガス流8用の出口15を有する発散セクション14とを有し、導入管16が、プラズマ・ガス流8内に液体前駆体17を導入するために提供される。本発明によれば、浸透手段18、182が、プラズマ・ガス流8内部に液体前駆体17を浸透させるために提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にコーティングを噴霧するためのプラズマ溶射デバイス、およびプラズマ・ガス流内に液体前駆体を導入するための方法、ならびにそれぞれのカテゴリーの独立クレームの前提部による基板を被覆するためのそのようなプラズマ溶射デバイスおよび/またはそのようなプラズマ溶射方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ・トーチは、工業技術で使用される最も丈夫であり、強力であり、よく制御されたプラズマ源の1つである。表面コーティング技術では、その主要な用途は、固体粒子の噴射による溶射の分野である(プラズマ溶射)。
【0003】
加工対象物の表面をスプレー粉末で被覆するための多様なプラズマ溶射装置が従来技術ではよく知られており、全く異なる諸技術分野で広く使用されている。既知のプラズマ溶射装置は、しばしば、プラズマ溶射ガンと、高出力直流源と、冷却アグリゲート(冷却結合体)と、さらには、噴霧する物質をプラズマ溶射ガンのプラズマ炎内に搬送するためのコンベアとを有する。従来の粉末溶射技術に関して、噴霧する物質は、当然、噴霧粉末である。
【0004】
大気プラズマ溶射では、プラズマ・トーチ内で、水冷式の陽極と、同様に水冷式のタングステン陰極との間でアークが引き起こされる。通常はアルゴン、窒素、またはヘリウム、あるいは不活性ガスと窒素または水素との混合物であるプロセス・ガスがアーク内でプラズマ状態に変換され、最大20000Kの温度を有するプラズマ・ビームが発生する。200〜800m/sの粒子速度が、ガスの熱膨張によって実現される。噴霧する物質は、陽極領域の軸線方向または半径方向内側または外側で、コンベア・ガスの助けによって、プラズマ・ビームに入る。
【0005】
先進の表面処理のための新たな市場を開くために、現在、既知のプラズマ溶射技術からの好適な原理に基づく新たなプロセスが、よりいっそう研究されている。方策の1つは、前駆体を気化および解離することによって薄膜堆積を可能にするために、(固体ではなく)液体または気体前駆体を使用することである(化学蒸着、CVD)。
【0006】
米国特許出願第2003/0077398号が、ナノ構造コーティングの製造のための従来の溶射堆積において、ナノ粒子懸濁液を使用するための方法を記載している。この方法は、プラズマ・ガス流内に噴射する前に、液体媒体中にナノ粒子を分散するために超音波を使用しなければならないという欠点を有する。
【0007】
国際公開第2006/043006号パンフレットは、ナノ粒子で表面を被覆するための方法、およびこの方法を実施するためのデバイスを開示し、この方法は、プラズマ・トーチの外側で、プラズマ・ジェット内にこれらナノ粒子のコロイド溶液を噴射することを伴うことを特徴とする。
【0008】
米国特許第6447848号明細書は、修正型の「Metco 9MBプラズマ・トーチ」を開示し、そこでは粉末噴射ポートは取り除かれて、様々な液体前駆体およびスラリを同時にプラズマ炎内に噴射するための複合噴射ノズルによって置き換えられている。すなわち、ここでも液体前駆体は、プラズマ・トーチの外部でプラズマ・ガス流内に供給される。
【0009】
特に、プラズマ・ジェット内への液体の噴射は、上述のよく開発されたプラズマ粉末溶射技術で使用される、ガス搬送される固体粒子の噴射とは顕著に異なる複雑な作業である。それゆえ、これは、一方でプラズマ・トーチ動作パラメータと、他方で新たな技術の発明および設計とを適合させることによる特別な開発を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
1つの主要な問題は、従来技術から知られている定形の幾何形状のプラズマ・ノズル内への液体の噴射によって、プラズマ・ガス流内での液体のほぼ均質な分散および/または圧力を得ることが難しいことである。液体は、プラズマ・ガス流内に十分に浸透(penetrate)することができず、液体をプラズマ・ガス流内に導入するそれぞれの導入管から出る際に膨張によって凍結することがある。
【0011】
すなわち、従来技術で知られているプラズマ溶射デバイスを使用すると、低圧での液体の自然気化と、気化熱の連続的な放出とが、導入管の出口での残留流体の凍結をしばしばもたらす。
【0012】
別の主要な問題は、噴射された液体ジェットまたはスプレーを散乱し、ジェット・コア内部へのその浸透を妨げる周囲バレル衝撃波(barrel shcok)または圧縮波による、プラズマ・ジェット流の超音波特性によるものである。これは、熱プラズマCVDに関して予測される動作圧力(100mbar未満)のほとんどに関して、(通常圧力の下での)プラズマ・トーチ・ノズル外部での液体の噴射を不適当なものにする。
【0013】
他方で、散乱を回避するために、噴射する液体ジェットの運動量が十分に高くなければならず、または噴射パイプが、バレル衝撃波を超えてプラズマ・ジェットを浸透させるべきである。これは、高い噴射速度を必要とし、または導入管に対する過剰な熱負荷をもたらす。全てのこれらの制限および複雑さにより、従来技術から知られているトーチ・ノズルの外部での液体の噴射は、プラズマ・ガス流内への液体の十分な浸透を実現するには不適切であることが判明している。
【0014】
しかし、プラズマ・トーチ内部での流体の噴射は、既知のプラズマ溶射ガンの設計に起因する難点があるために、特に上述したように水冷式の陽極および陰極を含む複雑な冷却システムのために、これまで考慮されていなかった。
【0015】
したがって、本発明の目的は、従来技術から知られている欠点を回避し、液体前駆体、すなわち噴霧またはコーティング流体を深くに、且つ多かれ少なかれ完全にプラズマ・トーチのプラズマ・ガス流内に浸透するのを可能にする改良されたプラズマ溶射デバイスを利用可能にすることである。また本発明の目的は、噴霧またはコーティング流体である液体前駆体をプラズマ・ガス流内に導入するためのそれぞれの新規であり改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的を満たす本発明の主題は、それぞれのカテゴリーの独立クレームの構成によって特徴付けられる。
【0017】
従属クレームは、本発明の特に有利な実施例に関係する。
【0018】
本発明はしたがって溶射プロセスによって基板上にコーティングを噴霧するためのプラズマ溶射デバイスに関する。このプラズマ溶射デバイスは、加熱区域内でプラズマ・ガスを加熱するためのプラズマ・トーチを含み、プラズマ・トーチは、プラズマ・ガス流を生成するためのノズル本体を含み、またプラズマ・トーチは、ノズル本体を通って中心長手方向軸線に沿って延びるアパーチャを有する。アパーチャは、プラズマ・ガス用の入口を有する収束セクションと、アパーチャの最小断面領域を含むスロート・セクションと、プラズマ・ガス流用の出口を有する発散セクションとを有し、導入管が、プラズマ・ガス流内に液体前駆体を導入するために提供される。本発明によれば、浸透手段(penetration means)が、プラズマ・ガス流内部に液体前駆体を浸透させるために提供される。
【0019】
したがって、本発明では、プラズマ・ガス流内部への液体前駆体の深く、本質的に完全な浸透を可能にする浸透手段が提供されることが不可欠である。
【0020】
本発明の特別な実施例に移る前に、本発明に関係するいくつかの一般的な考察および事実を提示する。
【0021】
以下、プラズマ・ジェット内への液体前駆体の噴射を実現するための本発明による様々な方策を提示する。調査のために使用するプラズマ・スプレー・トーチは、例えば低い圧力(1〜100mbar)の下で作動するF4−VBプラズマ・ガンである。本発明は、他のプラズマ・ガンに適用することもでき、また、より高いプロセス・チャンバ圧力にも適用可能である。
【0022】
使用するプラズマ・ガンは、上述したように、例えば30〜60SLPMの間のアルゴン流、および300〜700Aの範囲の電流を用いて、0.1〜1000mbarの間のチャンバ圧力で作動する(Sulzer Metcoによって提供される)F4−VBである。例えば液体前駆体、プラズマ・ガンのタイプ、噴霧するコーティングなどに応じて、他の溶射パラメータが、前述した特別なパラメータよりも適することもあることは言うまでもない。
【0023】
プラズマ・ジェット内に液体を噴射する2つの異なる方法が調査された。すなわち、液体前駆体の直接噴射と、ネブライジング(キャリア・ガスを用いた液体スプレーの噴射)とである。
【0024】
試験液体は、例えば脱イオン水である。低い圧力でのプラズマ・ジェット内への液体の噴射に対して、本質的に2つの主要な物理的制限が存在することが判明した。
【0025】
(1)低圧での液体の自然気化、および噴射パイプの出口または毛細管で残留流体の凍結をもたらす気化熱の連続的な放出
【0026】
(2)噴射する液体ジェットまたはスプレーを散乱したり、ジェット・コア内部へのその浸透を妨げる周囲バレル衝撃波または圧縮波といった、プラズマ・ジェット流の超音波特性
【0027】
したがって、熱プラズマCVDに関して予測される動作圧力(例えば100mbar未満)のほとんどに関してプラズマ・トーチ・ノズル外部での液体の噴射を不適当なものにする自然蒸発を回避するために、噴射位置での局所圧力が十分に高くなければならないことが、本発明の重要な洞察である。他方で、散乱を回避するために、噴射する液体ジェットの運動量が十分に高くなければならず、あるいは噴射パイプが、バレル衝撃波を超えてプラズマ・ジェットを浸透させるべきである。これは、高い噴射速度を必要とし、また/あるいは噴射パイプまたはネブライザ(噴霧器)に対する過剰な熱負荷をもたらす。全てのこれらの制限および複雑さは、本発明にしたがってトーチ・ノズル内部で液体前駆体を噴射することによって回避することができ、これはまた、工業プロセスへのさらなる組込みのためにより実用的であるという利点を有する。
【0028】
ノズル設計に関して、低圧プラズマ溶射のために使用されるほとんどのトーチ・ノズルは、「収束・発散」タイプ(「ラバル」ノズルとも呼ばれる)である。チャンバ圧力が十分に低い場合、プラズマ流は、M=1(音波の流れ)に達するまで、収束部分内で加速される。ノズルが下流で拡張していない場合、ガス速度は、M=1を超えることができず(チョーク流れ)、最大質量流量が制限される。超音波速度が望まれる場合、またはノズルの出口での圧力が低い場合、ノズル断面の後続の増大(発散)が必要とされる。これは、流れを超音波速度までさらに加速できるようにし、静圧が漸進的に降下して、最終的に出口でのチャンバ圧力に達するようにする(「適合した流れ」)。これが、低圧で収束・発散ノズルを使用しなければならない理由である。
【0029】
圧力は、ノズルの収束部分で最大であるが、トーチ水冷チャネルによって、およびアーク・ルート陽極アタッチメントの近接によって、液体噴射を近づけることは難しい。ノズルの発散セクション内では圧力が減少しているので、液体噴射のための最適な位置は、円筒形部分(スロート)の端部である。低圧プラズマ溶射のために使用される全ての標準的なF4−VPSノズルが、全ての適切なプロセス・チャンバ圧力に関して、200mbarを超えないスロートでの圧力を示す。流れが発散時に超音波であるとき、スロートでの圧力は、プロセス・チャンバ圧力によって影響を及ぼされないことに留意されたい。さらに、電流およびガス流のようなトーチ動作パラメータは、スロートでの圧力に対して弱い影響しか及ぼさない。したがって本発明によれば、液体噴射位置での圧力の増加が、ノズル形状および寸法に影響を及ぼす。
【0030】
スロートでの圧力を増加することを可能にする特別なノズルが設計された。基本的な原理は、発散セクションの長さを増加することである。300〜650mbar(トーチ電流およびガス流れに依存する)の間のスロートでの最適な圧力は、6mmの円筒形直径を有し、25mmの長さにわたって出口での直径10mmまで拡張していくノズルに関して得ることができる。スロート圧力は、トーチ電流の増加と共にわずかに増加し、トーチ・ガス流が30SLPMアルゴンから60SLPMアルゴンに増加される場合、ほぼ倍増することができることに留意されたい。この設計の副作用は、出口圧力の増加であり、これは、「短い」標準的なノズルの場合よりも高いチャンバ圧力で、不足膨張流をもたらす。しかし、この点は、特定の用途に関して、プラズマ流圧力をプロセス・チャンバ圧力に合致させる必要がある場合にのみ、考慮されるべきである。
【0031】
大気圧に近い圧力または高圧での動作の場合、ノズル内部の圧力は比較的高く保たれ、これは、噴射される液体の自然気化をもたらさない。したがってこの場合、特別なノズルを開発する必要はない。
【0032】
論述を要約すると、液体の自然蒸発およびそれに続く凍結を回避するために、噴射位置での圧力は、好ましくは自然気化圧力よりも高くすべきである。本発明によれば、これは、スロート圧力を増加するために、ノズル・スロートでの噴射位置を位置決めすることによって、および/またはノズル形状の特別な設計によって実現することができる。これは、F4−VBガンを用いて実証に成功した。
【0033】
本発明によれば、特別なノズル設計による液体の噴射に有利である他の可能な方策が存在する。1つは、ノズルの発散部分内で付着斜行衝撃を誘発することである。これらの衝撃は、圧力の局所増加をもたらす。これは、(溝またはステップのように)ノズル壁の表面で不連続を形成することによって実現することができる。別の着想は、圧力を増加し、最終的には、通常の衝撃によって音速以下の速度まで流れを減速するために、発散部の下流に第2の収束セクションを挿入することである。
【0034】
本発明の特別な実施例では、液体前駆体は、プラズマ・ガス流内に直接導入される。液体の噴射は、加圧されたリザーバと、質量流量計と、液体流れおよび様々なパージを調節するためのニードル弁とを備える特別に設計された分散システムによって行われる。
【0035】
噴射位置での局所圧力が本発明による適切なノズル設計によって増加された後、液体は、1つまたは複数の導入管を通して直接噴射することができ、導入管は、好ましくは、ノズル壁にある小さなオリフィスとして設計される。しかし、液体がジェット内部に深く、安定して浸透できるようにするために、いくつかの制約が存在する。
【0036】
噴射される液体は、プラズマ流境界層を通過すべきである。噴射時の速度が非常に小さい場合、液体は浸透せず、内側ノズル壁に液滴を生成する。この液滴は、最終的には、プラズマ流によって同伴され、ジェットに浸透することなくノズル出口に向けて流される。噴射される液体の表面張力によっては、この現象が断続的に生じることがあり、液滴は、噴射穴で生成されて、プラズマ流によって除去されるまで成長し、プラズマ・ジェットの不安定性をもたらす。さらに、その場合、プラズマ・ジェット内部への液体の浸透が最適でない。
【0037】
多くの用途では、噴射される液体の質量流量が低い(数十g/h)ので、液体流れを増加することによって噴射時の速度を増加することは可能でない。取り得る方策は、噴射穴の直径を低減することである(毛細管の使用)。しかしこれは、高い液体圧力を必要とし、高い粘性の液体またはスラリには適用可能でない。50g/hまで下げた水流での、約100ミクロン直径の毛細管を通した水の噴射が、修正されたノズルを有するF4−VBガンで試験に成功した。
【0038】
液体がプラズマ・ジェットに浸透できるようにする別の方法は、プラズマ流境界層で渦流を誘発することである。これは、ノズル壁面で、ノズル軸と同軸に1つまたは複数の溝を整合させることによって実現することができる。
【0039】
この方法は、溝が液体噴射位置に形成され、また場合によっては下流にも形成された場合に、より効率的である。噴射位置にある溝は、液体を方位角的に分布させて、プラズマ・ジェットに滑らかに浸透できるようにする。噴射位置の下流にある溝は、回復(recuperating)によって液体がトーチ・ノズルから流出するのを防止する。これらの設計も、修正型のF4ノズルで実証に成功している。この手法が、中間の液体流量から高い液体流量(100〜500g/hの水相当量)により適していることに留意されたい。溝の深さは十分でなければならず(水に対しては0.5mmよりも大きい)、より高い表面張力の液体に関しては、さらに深くなければならないこともある。
【0040】
本発明の他の実施例に関して、液体がプラズマ・ジェットに浸透できるようにするために、ネブライザが使用される。これは、液体、すなわち液体前駆体をミストの形態で高速で噴射することができるという利点を有する。液体は霧化され、これは、プラズマ・ジェット内部での気化を助ける。別の利点は、これが、高い液滴速度により、非常に少量の液体をプラズマ・ジェット内部に深く噴射できるようにすることである。
【0041】
「流れ集束同心円ネブライザ(flow focusing concentric nebulizer)」(Elemental scientificからのPFA−ST。ネブライザの先端での外径が例えば約2mm)が、試験に成功した。液体がネブライザに供給され、アルゴンのガス流の流れは、質量流量計を用いて0.1〜1SLPMの範囲内に制御される。
【0042】
このネブライザは、PFA(フッ素重合体)からなっていてよく、または他の耐熱材料からなっていてもよく、少なくとも180℃までの温度で動作することができる。出口でのスプレーの全角度は約30°であり、液滴サイズは、キャリア・ガス流量に応じて40m/sまでの出口速度で、6マイクロメートル程度となることがある。本発明者は、アルゴン・ガス流を1SLMPとして作動させ、スプレーは、20〜500g/hの間の水流に関して安定であり、均一である。F4トーチ・ノズルは、ネブライザを装備されるように修正され、水スプレーは、プラズマ・ジェット内に正常に噴射された。噴射位置でのトーチ・ノズル内部の圧力は、ネブライザの出口での水の凍結を回避するために、例えば400mbarよりも高いことが必須であることに留意されたい。これは、上述した直接液体噴射の場合と同様に、「長い」ノズルを用いて行うこともできる。ネブライザの使用は、懸濁された粒子が毛細管の直径(100ミクロン)よりも実質的に小さければ、スラリまたは懸濁液の噴射の場合にも可能である。材料(PFA)は、ほとんどの酸、アルカリ、有機物、および塩溶液に対して化学的に耐性がある。
【0043】
本発明の特別な実施例に関して、導入管は、アパーチャの収束セクションと発散セクションとの間の、特にアパーチャの最小断面領域に提供され、また/あるいは導入管は、収束セクションの入口と、アパーチャの最小断面領域との間に提供され、また/あるいは導入管は、アパーチャの最小断面領域と発散セクションの出口との間に提供される。
【0044】
導入管の正確な位置は、液体前駆体(懸濁液、スラリ、または固体粒子を含まない流体)、および/または噴霧すべきコーティング、および/または使用するプラズマ溶射デバイスの特別な設計に依存することがある。
【0045】
実用上非常に重要な特別な実施例では、浸透手段は、ノズル本体の内壁に提供された浸透溝であり、特に円周浸透溝であり、また/あるいは浸透溝は、アパーチャの収束セクションと発散セクションとの間に、特にアパーチャの最小断面領域に提供され、また/あるいは浸透溝は、収束セクションの入口と、アパーチャの最小断面領域との間に提供され、また/あるいは浸透溝は、アパーチャの最小断面領域と発散セクションの出口との間に提供される。浸透溝を提供すると、強い渦流を生成することができ、プラズマ流内の液体前駆体のほぼ均質な混合をもたらす。
【0046】
好ましくは、浸透溝は、三角形状を有し、且つ/または0.5mm〜3mm、特に1mm〜2mmの間、特別には1.5mmの幅を有し、且つ/または0.05mm〜2mm、特に0.75mm〜1.5mmの間、好ましくは1mmの深さを有し、しかし必ずしもそうでなくてもよい。
【0047】
浸透溝を使用する特別な利点は、プラズマ・ガス流内に液体前駆体を深く浸透するために、小さい直径を有する導入管、すなわち毛細管が必要とされないので、比較的大きな粒子を含む懸濁液またはスラリを液体前駆体として使用することができることである。
【0048】
本発明によるさらなる非常に重要な実施例では、浸透手段は、ネブライザとして設計された導入管によって提供され、ネブライザは、アパーチャの収束セクションと発散セクションとの間に、特にアパーチャの最小断面領域に提供され、また/あるいはネブライザは、収束セクションの入口と、アパーチャの最小断面領域との間に提供され、また/あるいはネブライザは、アパーチャの最小断面領域と、発散セクションの出口との間に提供される。
【0049】
非常に微細な液体前駆体噴射流、および/または液体前駆体を高い圧力の下で導入しなければならない場合、浸透手段は、小さな直径を有する噴射穴を有する毛細管として設計された導入管によって提供される。
【0050】
本発明の特別な実施例によれば、毛細管は、アパーチャの収束セクションと発散セクションとの間に、特にアパーチャの最小断面領域に提供され、また/あるいは毛細管は、収束セクションの入口と、アパーチャの最小断面領域との間に提供され、また/あるいは毛細管は、アパーチャの最小断面領域と発散セクションの出口との間に提供される。
【0051】
好ましくは、プラズマ・ガス流内への液体前駆体を最適にできるように、導入管の導入角度は、20°〜150°の間、特に45°〜135°の間、好ましくは70°〜110°の間、特別には約90°である。
【0052】
それにより、導入管および/または浸透手段、特にネブライザは、特に使用する液体前駆体に応じて、PFAおよび/または他の適切な材料から作られる。
【0053】
液体前駆体を供給および計測するために、液体前駆体を供給するための供給ユニットが提供され、この供給ユニットは、液体前駆体用のリザーバ、および/またはキャリア・ガス用のリザーバ、および/またはキャリア・ガスによって液体前駆体を加圧するためのリザーバ加圧、および/または、液体前駆体および/またはキャリア・ガスの流れを計測するための計測デバイス、特に液体および/またはガス流量計、特別には質量流量計を含む。
【0054】
前述したように、液体前駆体は、スラリおよび/または懸濁液であってよく、また/あるいは液体前駆体は、水、および/または酸、および/またはアルカリ流体、および/または有機流体、特にメタノール、および/または塩溶液、および/または有機珪素、および/または別の液体前駆体であり、また/あるいは液体前駆体は、懸濁液またはスラリ、特にナノ粒子を含むコーティング流体、および/または前述の液体前駆体の溶液または混合物である。
【0055】
また本発明は、プラズマ溶射デバイスを使用してプラズマ・ガス流内に液体前駆体を導入するための方法に関し、この方法は、以下のステップを含む。ノズル本体を有するプラズマ・トーチを含むプラズマ溶射デバイスを提供する。前記プラズマ・トーチが、前記ノズル本体を通って中心長手方向軸線に沿って延びるアパーチャを有する。アパーチャは、プラズマ・ガス用の入口を有する収束セクションと、アパーチャの最小断面領域を含むスロート・セクションと、プラズマ・ガス用の出口を有する発散セクションとを有し、導入管が、プラズマ・ガス流内に液体前駆体を導入するために提供される。プラズマ・ガスは、アパーチャの収束セクションの入口に導入され、プラズマ・ガスは、収束セクション、スロート・セクション、および発散セクションを通して、発散セクションの出口に供給される。プラズマ炎が、プラズマ・トーチ内部で、加熱区域内で点火および確立され、プラズマ・ガスを加熱して、プラズマ・ガス流を生成し、基板の表面が、プラズマ・ガス流をアパーチャの発散セクションの出口を介して基板の表面上に供給することによって被覆される。本発明の方法によれば、浸透手段が提供され、液体前駆体が、浸透手段を用いて導入管を通してプラズマ・ガス流内部に浸透される。
【0056】
本発明の特別な実施例に関して、導入管は、アパーチャの収束セクションと発散セクションとの間、特にアパーチャの最小断面領域に提供され、また/あるいは導入管は、収束セクションの入口と、アパーチャの最小断面領域との間に提供され、また/あるいは導入管は、アパーチャの最小断面領域と発散セクションの出口との間に提供される。
【0057】
実用上非常に重要な実施例では、浸透手段は、ノズル本体の内壁に提供された浸透溝であり、特に円周浸透溝である。
【0058】
浸透溝は、アパーチャの収束セクションと発散セクションとの間、特にアパーチャの最小断面領域に提供されていてもよく、また/あるいは浸透溝は、収束セクションの入口とアパーチャの最小断面領域との間に提供され、また/あるいは浸透溝は、アパーチャの最小断面領域と発散セクションの出口との間に提供される。重要な実施例では、浸透溝は、導入管に対して近接して、下流に位置付けられる。
【0059】
好ましくは、浸透溝は、三角形状を有し、且つ/または好ましくは0.5mm〜3mm、特に1mm〜2mmの間、特別には1.5mmの幅を有し、且つ/または0.05mm〜2mm、特に1mm〜1.5mmの間の深さを有し、しかし必ずしもそうでなくてよい。本発明による浸透溝の前述の寸法は、溶射ガンおよび/または液体前駆体の性質に応じて、および/またはそれぞれの溶射プロセスでのさらなるパラメータまたは要求に応じて変わることがあり、前述した値とは異なることがあることは言うまでもない。
【0060】
やはり実用上非常に重要な本発明のさらなる特別な実施例に関して、浸透手段は導入管によって提供され、この導入管自体がネブライザとして設計される。すなわち、液体前駆体は、プラズマ・ガス流内にミストの形態で導入される。
【0061】
好ましくは、ネブライザは、アパーチャの収束セクションと発散セクションとの間、特にアパーチャの最小断面領域に提供され、また/あるいはネブライザは、収束セクションの入口と、アパーチャの最小断面領域との間に提供され、また/あるいはネブライザは、アパーチャの最小断面領域と、発散セクションの出口との間に提供される。
【0062】
さらなる重要な実施例では、浸透手段は、小さな直径を有する噴射穴を有する毛細管として設計された導入管によって提供される。
【0063】
毛細管は、アパーチャの収束セクションと発散セクションとの間、特にアパーチャの最小断面領域に提供することができ、また/あるいは毛細管は、収束セクションの入口と、アパーチャの最小断面領域との間に提供されてもよく、また/あるいは毛細管は、アパーチャの最小断面領域と、発散セクションの出口との間に提供される。
【0064】
好ましくは、液体前駆体は、アパーチャの長手方向軸線に関して、20°〜150°の間、特に45°〜135°の間、好ましくは70°〜110°の間、特別には約90°の導入角度で導入される。
【0065】
液体前駆体として、かなり多様な流体、および流体の混合物、および/または流体と固体粒子との混合物を使用することができる。好ましくは、液体前駆体は、スラリおよび/または懸濁液であり、流体は、水、および/または酸、および/またはアルカリ流体、および/または有機流体、特にメタノール、および/または塩溶液、および/または別のコーティング流体であり、また/あるいは液体前駆体は、懸濁液またはスラリ、特にナノ粒子を含むコーティング流体、および/または前述の液体前駆体の溶液または混合物である。
【0066】
さらに、本発明は、基板またはデバイスの表面、特に光起電力デバイス、特別には太陽電池の表面を被覆するため、および/または基板上、特にガラス基板上または半導体上、特別にはシリコン基板上、より特には電子素子を備えるウェハ上に、コーティング、特に機能コーティングを提供するため、および/または織物上にカーボン・コーティング、特にダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティング、および/または炭化物コーティング、および/または窒化物コーティング、および/または複合物コーティング、および/またはナノ構造コーティング、および/または機能コーティングを提供するための、本発明によるプラズマ溶射デバイスおよび/またはプラズマ溶射方法の使用に関する。
【0067】
上で述べた本発明による特別な実施例は単なる例示であること、および特別な場合には、上述した特別な実施例をあらゆる適切な様式で組み合わせることができることは言うまでもなく、当業者には理解されよう。特別な場合における要求に応じて、本発明によるプラズマ溶射デバイスは、様々な導入管および/または様々な浸透手段を含むことがあり、すなわち、プラズマ溶射デバイスは、浸透手段および/またはネブライザおよび/または毛細管を並列に含むことができ、それにより、例えば、異なる液体前駆体をプラズマ・ガス流内に同時に、および/または順次に供給することができ、多様な異なる基板上に複雑なコーティングを形成することを可能にする。
【0068】
以下、本発明を、概略図面を参照しながらより詳細に説明する。
【実施例】
【0069】
図1に、本発明によるプラズマ溶射デバイスが概略的に示されており、このプラズマ溶射デバイスは、以下、全体を参照番号1によって表される。異なる図面における同じ参照番号が同じ技術的な機能を表すことに留意されたい。
【0070】
図1によるプラズマ溶射デバイスは、加熱区域6内でプラズマ・ガス5を加熱するためのプラズマ・トーチ4を含む。プラズマ・トーチ4は、プラズマ・ガス流8を生成するためのノズル本体7を有する。アパーチャ9が、ノズル本体7を通って中心長手方向軸線10に沿って延びており、このアパーチャ9は、プラズマ・ガス5用の入口12を有する収束セクション11と、アパーチャの最小断面領域を含むスロート・セクション13と、プラズマ・ガス流8用の出口15を有する発散セクション14とを有する。導入管16が、供給ユニット19によって提供される液体前駆体17をプラズマ・ガス流8内に導入するために提供される。また本発明によれば、プラズマ・ガス流8内部に液体前駆体17を浸透させるために浸透手段18も提供され、プラズマ・ガス流8は、基板3上にコーティング2を噴霧するために、基板3の表面に向けられる。
【0071】
図1の特別な実施例において、導入管16は、アパーチャ9の収束セクション11と発散セクション14との間の、アパーチャ9の最小断面領域に提供される。別の特別な実施例では、導入管16は、収束セクション11の入口12と、アパーチャ9の最小断面領域との間に提供することができ、且つ/または導入管16は、アパーチャ9の最小断面領域と発散セクション14の出口15との間に提供されることを理解されたい。
【0072】
図2に、プラズマ・トーチ4が浸透溝181を含む本発明の第2の実施例を示す。浸透溝18、181は、ノズル本体7の内壁19に提供され、特に円周浸透溝181である。導入管16は、アパーチャ9の収束セクション11と発散セクション14との間の、浸透溝181付近のアパーチャ9の最小断面領域に提供される。
【0073】
浸透溝181は、三角形状を有し、例えば0.5mm〜3mm、特に1mm〜2mmの間、特別には1.5mmの幅1811を有し、且つ0.05mm〜2mm、特に0.75mm〜1.5mmの間、好ましくは1mmの深さ1812を有する。
【0074】
図2の実施例における導入管16は、同時に浸透手段18を含み、浸透手段18は、浸透溝181および毛細管182である。
【0075】
すなわち、浸透溝181に加えて、浸透手段18は、小さな直径を有する噴射穴183を有する毛細管182として設計された導入管16によって提供され、毛細管182は、アパーチャ9の収束セクション11と発散セクション14との間に、特に浸透溝181付近のアパーチャ9の最小断面領域に提供され、浸透溝181は、毛細管182に関して下流に配置される。本実施例では、導入管16の導入角αは約90°である。
【0076】
図3を参照すると、ネブライザ161を有するプラズマ・トーチ4が、本発明のさらなる非常に重要な実施例として示されている。
【0077】
この実施例では、浸透手段18は、ネブライザ161として設計された導入管16によって提供され、浸透溝は提供されない。他の実施例では、ネブライザ161は、有利には、浸透溝181および/または毛細管182と組み合わせることができることを理解されたい。
【0078】
図3によれば、ネブライザ161は、アパーチャ9の収束セクション11と発散セクション14との間に、特にアパーチャ9の最小断面領域に提供され、中心長手方向軸線10に関して約90°の導入角αで構成される。
【0079】
本発明は、直接、またはネブライザを使用して、プラズマ・トーチのノズル内部に液体を噴射することができる可能性を初めて示す。どちらの方法も、液体の凝固を回避するために噴射点で十分に高い圧力を得るように、トーチ・ノズルの特別な設計を必要とする。直接噴射では、プラズマ流境界層を通って浸透するために、高速の液体が必要である。これは、非常に小さい直径の噴射穴(毛細管)を使用して実現され、しかしほとんどの場合、高い粘性の液体またはスラリには有利に適用可能でない。低い噴射速度をもたらす、より大きな直径の噴射穴が使用される場合、プラズマ・ジェットとの液体の混合は、浸透溝によって大きく改善することができ、浸透溝は、境界層で渦流を誘発し、液体を方位的に分布させる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明によるプラズマ溶射デバイスを示す図である。
【図2】浸透溝を有するプラズマ・トーチを示す図である。
【図3】ネブライザを有するプラズマ・トーチを示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 プラズマ溶射デバイス
2 コーティング
3 基板
4 プラズマ・トーチ
5 プラズマ・ガス
6 加熱区域
7 ノズル本体
8 プラズマ・ガス流
9 アパーチャ
10 中心長手方向軸線
11 収束セクション
12 入口
13 スロート・セクション
14 発散セクション
15 出口
16 導入管
17 液体前駆体
18 浸透手段
19 供給ユニット
19 内壁
161 ネブライザ
181 浸透溝
182 毛細管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶射プロセスによって基板(3)上にコーティング(2)を噴霧するためのプラズマ溶射デバイスであって、該プラズマ溶射デバイスは、加熱区域(6)内でプラズマ・ガス(5)を加熱するためのプラズマ・トーチ(4)を含み、該プラズマ・トーチ(4)は、プラズマ・ガス流(8)を生成するためのノズル本体(7)を含み、該プラズマ・トーチ(4)は、前記ノズル本体(7)を通って中心長手方向軸線(10)に沿って延びるアパーチャ(9)を有し、該アパーチャ(9)は、前記プラズマ・ガス(5)用の入口(12)を有する収束セクション(11)と、該アパーチャの最小断面領域を含むスロート・セクション(13)と、前記プラズマ・ガス流(8)用の出口(15)を有する発散セクション(14)とを有し、導入管(16)が、前記プラズマ・ガス流(8)内に液体前駆体(17)を導入するために提供されているプラズマ溶射デバイスにおいて、
浸透手段(18、161、181、182)が、前記プラズマ・ガス流(8)内部に前記液体前駆体(17)を浸透させるために提供されていることを特徴とするプラズマ溶射デバイス。
【請求項2】
前記導入管(16)は、前記アパーチャ(9)の前記収束セクション(11)と前記発散セクション(14)との間に、特に前記アパーチャ(9)の最小断面領域に提供されており、また/あるいは前記導入管(16)は、前記収束セクション(11)の前記入口(12)と前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域との間に提供されており、また/あるいは前記導入管(16)は、前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域と前記発散セクション(14)の前記出口(15)との間に提供されている請求項1に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項3】
前記浸透手段(18)は、前記ノズル本体(7)の内壁(19)に提供された浸透溝(181)であり、特に円周方向浸透溝(181)である請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項4】
前記浸透溝(181)は、前記アパーチャ(9)の前記収束セクション(11)と前記発散セクション(14)との間に、特に前記アパーチャ(9)の最小断面領域に提供されており、また/あるいは前記浸透溝(181)は、前記収束セクション(11)の前記入口(12)と前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域との間に提供されており、また/あるいは前記浸透溝(181)は、前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域と前記発散セクション(14)の前記出口(15)との間に提供されている請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項5】
前記浸透溝(181)は三角形状を有し、且つ/または0.5mm〜3mm、特に1mm〜2mmの間、特別には1.5mmの幅(1811)を有し、且つ/または0.05mm〜2mm、特に0.75mm〜1.5mmの間、好ましくは1mmの深さ(1812)を有している請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項6】
前記浸透手段(18)は、ネブライザ(161)として設計された前記導入管(16)によって提供される請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項7】
前記ネブライザ(161)は、前記アパーチャ(9)の前記収束セクション(11)と前記発散セクション(14)との間に、特に前記アパーチャ(9)の最小断面領域に提供されており、また/あるいは前記ネブライザ(161)は、前記収束セクション(11)の前記入口(12)と前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域との間に提供されており、また/あるいは前記ネブライザ(161)は、前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域と前記発散セクション(14)の前記出口(15)との間に提供されている請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項8】
前記浸透手段(18)は、小さな直径を有する噴射穴(183)を有する毛細管(182)として設計された前記導入管(16)によって提供される請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項9】
前記毛細管(182)は、前記アパーチャ(9)の前記収束セクション(11)と前記発散セクション(14)との間に、特に前記アパーチャ(9)の最小断面領域に提供されており、また/あるいは前記毛細管(182)は、前記収束セクション(11)の前記入口(12)と前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域との間に提供されており、また/あるいは前記毛細管(182)は、前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域と前記発散セクション(14)の前記出口(15)との間に提供されている請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項10】
前記導入管(16)の導入角(α)が20°〜150°の間、特に45°〜135°の間、好ましくは70°〜110°の間、特別には約90°である請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項11】
前記導入管(16)および/または前記浸透手段(18)、特に前記ネブライザ(161)は、PFAおよび/または他の材料から作られる請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項12】
前記液体前駆体(17)を供給するために供給ユニット(19)を含む請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項13】
前記供給ユニット(19)は、前記液体前駆体(17)用のリザーバ、および/またはキャリア・ガス用のリザーバ、および/または前記キャリア・ガスによって前記液体前駆体(17)を加圧するためのリザーバ加圧、および/または前記液体前駆体および/または前記キャリア・ガスの流れを計測するための計測デバイス、特に液体および/またはガス流量計、特別には質量流量計を含む請求項12に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項14】
前記液体前駆体(17)が、スラリおよび/または懸濁液であり、また/あるいは前記流体が、水、および/または酸、および/またはアルカリ流体、および/または有機流体、特にメタノール、および/または塩溶液、および/または有機珪素、および/または別のコーティング流体(17)であり、また/あるいは前記液体前駆体(17)が、懸濁液またはスラリ、特にナノ粒子を含む液体前駆体(17)、および/または前記液体前駆体(17)の溶液または混合物である請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス。
【請求項15】
プラズマ溶射デバイス(1)を使用してプラズマ・ガス流(8)内に液体前駆体(17)を導入するための方法であって、
ノズル本体(7)を有するプラズマ・トーチ(4)を含むプラズマ溶射デバイス(1)を提供するステップであって、前記プラズマ・トーチ(4)は、前記ノズル本体(7)を通って中心長手方向軸線(10)に沿って延びるアパーチャ(9)を有し、前記アパーチャ(9)は、前記プラズマ・ガス(5)用の入口(12)を有する収束セクション(11)と、前記アパーチャの最小断面領域を含むスロート・セクション(13)と、前記プラズマ・ガス(5)用の出口(15)を有する発散セクション(14)とを有し、導入管(16)が、プラズマ・ガス流(8)内に液体前駆体(17)を導入するために設けられているステップと、
前記アパーチャ(9)の前記収束セクション(11)の前記入口(12)にプラズマ・ガス(5)を導入し、該プラズマ・ガス(5)を、前記収束セクション(11)、前記スロート・セクション(13)、および前記発散セクション(14)を通して、前記発散セクション(14)の前記出口(15)に供給するステップと、
前記プラズマ・トーチ(4)の内部において、加熱区域(6)内でプラズマ炎を点火および確立し、前記プラズマ・ガス(5)を加熱して、前記プラズマ・ガス流(8)を形成するステップと、
前記プラズマ・ガス流(9)を、前記アパーチャ(9)の前記発散セクション(14)の前記出口(15)を介して基板(3)の表面上に供給することによって、前記基板(3)の表面を被覆するステップと
を含む方法において、
浸透手段(18、161、181、182)が提供され、また前記液体前駆体(17)は、該浸透手段(8、181)によって、前記導入管(16)を通して前記プラズマ・ガス流(8)内部に浸透されることを特徴とする液体前駆体導入方法。
【請求項16】
前記導入管(16)は、前記アパーチャ(9)の前記収束セクション(11)と前記発散セクション(14)との間に、特に前記アパーチャ(9)の最小断面領域に提供されており、また/あるいは前記導入管(16)は、前記収束セクション(11)の前記入口(12)と前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域との間に提供されており、また/あるいは前記導入管(16)は、前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域と前記発散セクション(14)の前記出口(15)との間に提供されている請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記浸透手段(18)は、前記ノズル本体(7)の内壁(19)に提供された浸透溝(181)であり、特に円周方向浸透溝(181)である請求項15または請求項16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記浸透溝(181)は、前記アパーチャ(9)の前記収束セクション(11)と前記発散セクション(14)との間に、特に前記アパーチャ(9)の最小断面領域に提供されており、また/あるいは前記浸透溝(181)は、前記収束セクション(11)の前記入口(12)と前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域との間に提供されており、また/あるいは前記浸透溝(181)は、前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域と前記発散セクション(14)の前記出口(15)との間に提供されている請求項15から請求項17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記浸透溝(181)は三角形状を有し、且つ/または0.5mm〜3mm、特に1mm〜2mmの間、特別には1.5mmの幅(1811)を有し、且つ/または0.05mm〜2mm、特に1mm〜1.5mmの深さ(1812)を有している請求項15から請求項18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記浸透手段(18)は、ネブライザ(161)として設計された前記導入管(16)によって提供される請求項15から請求項19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ネブライザ(161)は、前記アパーチャ(9)の前記収束セクション(11)と前記発散セクション(14)との間に、特に前記アパーチャ(9)の最小断面領域に提供されており、また/あるいは前記ネブライザ(161)は、前記収束セクション(11)の前記入口(12)と前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域との間に提供されており、また/あるいは前記ネブライザ(161)は、前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域と前記発散セクション(14)の前記出口(15)との間に提供されている請求項15から請求項20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記浸透手段(18)は、小さな直径を有する噴射穴(183)を有する毛細管(182)として設計された前記導入管(16)によって提供される請求項15から請求項21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記毛細管(182)は、前記アパーチャ(9)の前記収束セクション(11)と前記発散セクション(14)との間に、特に前記アパーチャ(9)の最小断面領域に提供されており、また/あるいは前記毛細管(182)は、前記収束セクション(11)の前記入口(12)と前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域との間に提供されており、また/あるいは前記毛細管(182)は、前記アパーチャ(9)の前記最小断面領域と前記発散セクション(14)の前記出口(15)との間に提供されている請求項15から請求項22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記液体前駆体(17)が、20°〜150°の間、特に45°〜135°の間、好ましくは70°〜110°の間、特別には約90°の導入角(α)で導入される請求項15から請求項23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記液体前駆体(17)が、スラリおよび/または懸濁液であり、また/あるいは前記流体が、水、および/または酸、および/またはアルカリ流体、および/または有機流体、特にメタノール、および/または塩溶液、および/または有機珪素、および/または別のコーティング流体であり、また/あるいは前記液体前駆体(17)が、懸濁液またはスラリ、特にナノ粒子を含む液体前駆体、および/または前記液体前駆体(17)の溶液または混合物である請求項15から請求項24までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
基板(3)またはデバイス(3)の表面、特に光起電力デバイス(3)、特別には太陽電池の表面の被覆、カーボン・コーティング、特にダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティング、および/または炭化物コーティング、および/または窒化物コーティング、および/または複合物コーティング、および/またはナノ構造コーティングのため、および/または基板(3)上、特にガラス基板または半導体上、特別にはシリコン基板(3)上、より特には電子素子を備えるウェハ上にコーティング、特に機能コーティングを提供するため、および/または織物上に機能コーティングを提供するための、請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射デバイス(1)および/または請求項15から請求項25までのいずれか一項に記載のプラズマ溶射方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−55414(P2008−55414A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196903(P2007−196903)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(500063790)ズルツァー・メットコ・アクチェンゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】Sulzer Metco AG
【Fターム(参考)】