説明

プリプレグの製造方法、プリプレグ、金属張り積層板及び印刷配線板

【課題】この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、残留歪みの小さく、また、繊維基材の表裏で樹脂付着量ばらつきの小さいプリプレグの製造方法、この製造方法により得られるプリプレグ並びにこれを用いた表面平滑性,板厚精度およびそり特性の優れた金属張り積層板及び印刷配線板の提供を目的とする。
【解決手段】繊維基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸する塗工工程と繊維基材に含浸された熱硬化性樹脂ワニスの溶剤を揮発させ、樹脂を半硬化させる乾燥工程を含むプリプレグの製造方法において、乾燥工程を乾燥炉入口温度を樹脂の軟化点以下とする横型乾燥炉を用いて行うことを特徴とするプリプレグの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグの製造方法、プリプレグ、金属張り積層板及び印刷配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプリント配線板用に使用されるプリプレグは、ガラス織布に熱硬化性樹脂を有機溶剤で希釈した熱硬化性樹脂ワニスを含浸した後、乾燥炉にて溶剤を揮発させ熱硬化性樹脂をBステージ状態まで硬化させ製造される。この塗工工程と乾燥工程は、塗工機において一連の流れになっており、帯状のガラス織布に熱硬化性樹脂ワニスを含浸させ、含浸させたガラス織布を乾燥炉で乾燥している。
【0003】
ガラス織布に熱硬化性樹脂ワニスを含浸させる塗工工程は、熱硬化性樹脂ワニス中にガラス織布を浸漬させ、その後、スクイズロール間隙を通過させることで熱硬化性樹脂ワニスの計量を行っている。
【0004】
溶剤を揮発させ、樹脂を硬化させる乾燥工程は、ガラス織布の場合、一般に、縦型乾燥炉が用いられており、搬送されてくる基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸した後、スクイズロール間隙を垂直方向に通過させた後、乾燥炉出口の引き出しロールにより縦型乾燥炉内を垂直方向に引っ張られて移動し、樹脂をBステージ状態まで硬化させることが一般的に行われている。
【0005】
しかし、上述した縦型乾燥炉において、熱硬化性樹脂ワニスを含浸したガラス織布を乾燥する際、ガラス織布を上方に移動させる必要があり、ガラス織布を移動させるためには、大きな張力が必要となる。即ち、縦型乾燥炉では、ガラス織布を重力に抗して上方に移動させるための張力が必要であり、縦型乾燥炉の出口に設けた引き出しロールによりガラス織布に張力を作用させている。この張力が掛かった状態で樹脂が硬化するため、張力が歪みとなってプリプレグに残存する。
【0006】
この残存歪みを有するプリプレグを用いて、金属張り積層板を製造すると、残存歪みが悪影響を及ぼし,金属張り積層板の寸法安定性やそり特性が低下する課題がある。また、このプリプレグを多層接着用プリプレグとして用いても同様の課題となる。
【0007】
この残存歪みを有するプリプレグを用いて、金属張り積層板を製造すると、残存歪みが悪影響を及ぼし,金属張り積層板の寸法安定性やそり特性が低下する課題がある。また、このプリプレグを多層接着用プリプレグとして用いても同様の課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、残留歪みの小さいプリプレグの製造方法、この製造方法により得られるプリプレグ並びにこれを用いた高寸法安定性の金属張り積層板及び印刷配線板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次のものに関する。
1. 繊維基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸する塗工工程と繊維基材に含浸された熱硬化性樹脂ワニスの溶剤を揮発させ、樹脂を半硬化させる乾燥工程を含むプリプレグの製造方法において、乾燥工程を乾燥炉入口温度を樹脂の軟化点未満とする横型乾燥炉を用いて行うことを特徴とするプリプレグの製造方法。
2. 繊維基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸する塗工工程と繊維基材に含浸された熱硬化性樹脂ワニスの溶剤を揮発させ、樹脂を半硬化させる乾燥工程を含むプリプレグの製造方法において、乾燥工程を上記の熱硬化性樹脂ワニスによって含浸された繊維基材を水平方向に移動させて行い、しかも、乾燥工程の最初は樹脂の軟化点以下に加熱することを特徴とするプリプレグの製造方法。
3. 繊維基材が帯状のものである項1又は2記載のプリプレグの製造方法。
4. 項1〜3のいずれかに記載の方法により製造したプリプレグ。
5. 項4に記載のプリプレグ又はその積層体の片面又は両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形してなる金属張り積層板。
6. 項6に記載の金属張り積層板に回路加工を施してなる印刷配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明より製造したプリプレグは、その製造時に繊維基材に掛かる張力を低減できているので残存歪みが生じにくい。これを用いて製造した金属張り積層板及び印刷配線板は、表面平滑性,板厚精度が優れ、そり,寸法変化が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明におけるプリプレグを製造するために使用されるプリプレグ横型製造装置の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明おいて、乾燥工程では、熱硬化性樹脂ワニスを含浸した繊維基材を水平方向に移動させるので、熱硬化性樹脂ワニスを含浸した繊維基材にかかる引っ張り力が小さくすることができるため、本発明により得られたプリプレグを用いて製造した金属張り積層板又は印刷配線板のそり又は寸法変化を小さくすることができる。また、本発明おいて、乾燥工程での引っ張り力は、特に、3.0N/cm以下になるように調整されることが好ましく、これにより得られたプリプレグを用いて製造した金属張り積層板又は印刷配線板のそり又は寸法変化を小さくすることができる。上記の引っ張り力は、2.5N/cm以下になるように調整されることが、さらに好ましい。本発明おいて、乾燥工程では、熱硬化性樹脂ワニスを含浸した繊維基材に乾燥炉内を移動させて乾燥されることが特に好ましい。上記の繊維基材としては、取り扱い安さの点から、帯状のものを使用することが好ましい。
【0013】
乾燥炉の長さは、熱硬化性樹脂を含浸した繊維基材の移動速度、乾燥炉の温度等により異なるが、それを通過したときに熱硬化性樹脂が半硬化状態、特にB−ステージ状態になるように調整される。
【0014】
乾燥工程の最初の温度又は乾燥炉の入り口温度は、樹脂の軟化点未満とされる。また、溶剤の揮発及び温度安定性を考慮すると50℃以上が好ましい。軟化点温度未満の温度にて、溶剤が十分揮発除去されるように、熱硬化性樹脂ワニスを含浸させた繊維基材を滞留させることが好ましいが、そのためにはこの滞留時間としては2〜15秒で十分である。また、熱硬化性樹脂ワニスに使用される溶剤としては、この目的に適合した易揮発性のものが好ましい。乾燥工程における温度又は乾燥炉内の温度は、軟化温度以上200℃以下の温度が好ましく、特に、150〜200℃の温度が好ましく、熱硬化性樹脂を含浸した繊維基材の乾燥は、この温度雰囲下に1〜15分曝されるようにして行うことが好ましい。
【0015】
乾燥工程では、乾燥工程又は乾燥炉(横型乾燥炉として一般に知られているのものでよい)〕の入り口付近以前に位置する送りロールと乾燥工程又は乾燥炉の出口付近以降に位置する引き出しロールとにより繊維基材を乾燥工程中は又は乾燥内を水平方向に移動させることが好ましい。この目的のために、特別に送りロールを設置してもよいが、スクイズロールにこの役目をさせてもよい。引き出しロールについても、この目的のために特別に引き出しロールを設置してもよく、巻き取りロールにこの役目をさせてもよい。
【0016】
送りロールの回転速度と引き出しロールの回転速度は、乾燥炉内での熱硬化性樹脂を含浸した繊維基材にかかる引っ張り力をなくすか小さくすることができるように調整される。これにより、繊維基材にかかる張力を少なくできるので繊維基材に作用する残留歪みを小さくすることできる。さらに、具体的には、送りロールの回転速度は、引き出しロールの回転速度の95〜105%とすることが好ましい。送りロール(特に、スクイズロールを送りロールとして使用した場合)はワニスにより滑るため、送りロールの回転速度は、引き出しロールの回転速度の100〜105%とすることが特に好ましい。また、引き出しロールの回転速度と送りロールの回転速度は、熱硬化性樹脂ワニスを含浸した繊維基材にかかる引っ張り力が、3.0N/cm以下になるように調整されることが特に好ましい。
【0017】
以下、本発明を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のプリプレグの製造に使用される装置の一例の概略図である。プリプレグ横型製造装置1は、熱硬化性樹脂ワニス2を入れた含浸槽3、含浸槽3内の含浸ロール4、送りロールを兼ねるスクイズロール5、横型乾燥炉6、引き出しロール7とを備えている。搬送されてくる帯状のガラス織布等の繊維基材8に含浸槽3で含浸ロール4の下を通過させて熱硬化性樹脂ワニス2を含浸した後、スクイズロール5間隙を通過させ、横型乾燥炉6中を水平移動して、引き出しロール7により引き出される。横型乾燥炉6では、熱硬化性樹脂をBステージ状態まで硬化させプリプレグを製造する。横型乾燥炉6からでてきたプリプレグは、引き出しロール7に又は引き出しロール7を通過後に巻き取りロールに巻き取られるか、引き出しロール7を通過後に所定寸法に裁断される。横型乾燥炉6内では、繊維基材8を支えるために、下からエアー等の気体を吹き上げることが好ましく、この場合、基材が波打たず安定するように上からもエアー等の気体を吹き付けるようにすることが好ましい。また、横型乾燥炉6内では、繊維基材を支えるために、ロール等を使用してもよい。乾燥炉内の気体は,繊維基材を支持するためには,風速5m/分〜15m/分が好ましい。
【0018】
本発明の繊維基材は、ガラス繊維、有機繊維等の織布又は不織布である。ガラス織布が最も好ましい。この繊維基材に樹脂の保持力を持たせ、熱硬化性樹脂を含浸した繊維基材が乾燥炉内を移動する際、繊維基材に付着した熱硬化性樹脂ワニスが重力により繊維基材の下側に移行するので、プリプレグ表裏の樹脂付着量を均一になるように調整するためには、繊維基材の通気度y(cc/cm2/sec)と厚みx(μm)の相関が(1)式
【数1】

を満足するようにされることが好ましい。繊維基材の厚みは、材質にもよるが、50〜250μmが好ましい。本発明において、通気度は、JIS R 3420に基づいて測定したものである。従って、このプリプレグを用いて製造した金属張り積層板又は印刷配線板は、特に、そり又は寸法変化が小さい。上記プリプレグを、多層接着用プリプレグとして使用する場合においても同様の効果がある。
【0019】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、トリアジン環を有する熱硬化性樹脂が適用できるが、エポキシ樹脂が耐熱性、吸水率の点から特に好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂としては、2官能以上のエポキシ樹脂が用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノールのジグリシジルエーテル化物、多官能アルコールのジグリシジルエーテル化物、これらの水素添加物などを挙げることができる。これらは、通常は単独で用いられるが、何種類かを併用することもできる。
【0021】
硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として電気絶縁材料用途で用いられているものであれば特に制限はなく、例えば、アミン類、フェノール類、酸無水物などを用いることができる。以下に具体的な化合物を例示する。アミン類としては、ジエチルアミン、ジエツレントチアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、メタキシリレンジアミン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、メチレンジアニリン、メタフェニレンジアミンなどを挙げることができる。フェノール類としては、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、およびこれらのアルキル基置換体などを挙げることができる。酸無水物としては、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ピロメッリト酸、無水クロレンド酸、無水ナディック酸、無水メチルナディック酸、無水ドデシニルコハク酸、無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸などを挙げることができる。これらは、通常は単独で用いられるが、何種類かを併用することもできる。
【0022】
エポキシ樹脂として、ノボラック型エポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などと、また、硬化剤として、ノボラック型フェノール樹脂、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂などと組み合わせるのが硬化物の耐熱性が優れることから好ましい。
【0023】
硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤の官能基が0.8〜1.2当量の範囲に配合されるのが好ましく、0.85〜1.1当量の範囲となるように配合されるのがより好ましい。硬化剤の官能基が0.8当量未満の場合、および1.2当量を超えるいずれの場合も、ガラス転移温度が低くなり、吸湿しやすくなるため耐熱性が低下する。
【0024】
前記エポキシ樹脂及び硬化剤には、必要に応じてさらに硬化促進剤が併用される。硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基のエーテル化反応を促進させるような触媒機能を持つ化合物であれば制限無く、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、イミダゾール化合物、有機りん化合物、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩などが挙げられる。イミノ基がアクリロニトリル、イソシアネート、メラミンアクリレートなどでマスク化されたイミダゾールを用いると、従来の2倍以上の保存安定性を有するプリプレグを得ることができ好ましい。
【0025】
これらの硬化促進剤は何種類かを併用してもよく、配合量はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。0.01重量部未満では促進効果が低下する傾向があり、5重量部を超えると保存安定性が悪くなる傾向がある。
【0026】
前記イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられ、マスク化剤としては、アクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレートなどが挙げられる。
【0027】
熱硬化性樹脂には、さらに必要に応じて、水酸化アルミニウム、クレー等の無機充填材が添加される。さらに、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で他の化合物を配合することも可能である。
【0028】
前記熱硬化性樹脂、その他の成分は、溶剤に溶解または分散させてワニスとして使用される。使用される溶剤としては,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤,トルエン,キシレンなどの芳香属炭化水素系溶剤,酢酸エチルなどのエステル系溶剤,エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤,N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤,メタノール,エタノールなどのアルコール系溶剤が挙げられ,これらは何種類かを混合して用いても良い。ワニス中の固形濃度は、50〜80重量%になるようにするのが好ましい。
【0029】
繊維基材への熱硬化性樹脂ワニスの含浸方法には、特に制限はないが、熱硬化性樹脂ワニスを入れた槽内を基材樹脂に通過させることが好ましい。このとき、繊維基材へのの樹脂付着量は、ワニス固形分と基材の総量に対して、ワニス固形分が35〜60重量%になるようにするのが好ましい。
【0030】
得られたプリプレグは、所定の寸法に裁断した後、1枚だけでまたは適宜任意枚数を積層してその片面若しくは両面に金属箔を重ねて加熱加圧成形することにより金属箔張り積層板とすることができる。このときの条件としては、加熱温度が150〜230℃、圧力が2〜5MPaの条件とすることが好ましく、この条件に0.5〜2.0時間さらすことが好ましい。
【0031】
上記金属箔としては銅箔、アルミ箔等が使用される。金属箔の厚さは用途にもよるが5〜100μmのものが好適に用いられる。
【0032】
金属箔張り積層板の金属箔に対して回路加工を施すことにより印刷配線板とすることができる。回路加工は、例えば、金属箔表面にレジストパターンを形成後、エッチングにより不要部分の箔を除去し、レジストパターンを剥離後、ドリルにより必要なスルーホールに導通させるためのメッキを施し、最後にレジストパターンを剥離することにより行うことができる。このようにして得られた印刷積層板の表面にさらに上記の金属箔張り積層板を前記したのと同様の条件で積層し、さらに、上記と同様にして加工して多層印刷配線板とすることができる。この場合、必ずしもスルーホールを形成する必要はなく、バイアホールを形成してもよく、両方を形成してもよい。このような多層化は必要な枚数行われる。
【0033】
(作用)
横型乾燥炉において、熱硬化性樹脂ワニスを含浸したガラス織布を乾燥する際、乾燥炉入口を樹脂の軟化点以上の温度に設定すると樹脂が急激に軟化し,ガラス織布表面を容易に移動し,その状態で樹脂が硬化してしまうため,樹脂付着量が繊維基材の表裏でばらつく恐れがある。樹脂付着量ばらつきが大きいプリプレグを用いて、金属張り積層板を製造すると、金属張り積層板の表面平滑性,板厚精度およびそり特性が低下するという問題が生じるが、本発明においては、乾燥工程の最初又は横型乾燥炉の入口温度を樹脂の軟化点以下とすることで樹脂の粘度低下を抑制し、ガラス織布表面の樹脂流動を小さくし,その後,樹脂硬化をするので樹脂の付着量ばらつきが小さくなる。このように、本発明においては、繊維基材の表裏で樹脂付着量ばらつきの小さいプリプレグが得られるので、表面平滑性,板厚精度およびそり特性の優れた金属張り積層板及び印刷配線板を製造することができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の実施例を示す。
実施例1
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量480,臭素含有量21.5重量%、軟化温度80℃)100重量部、ジシアンジアミド2.6重量部及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解して固形分65重量%の熱硬化性樹脂ワニスを作製した。また、図1に示すようなプリプレグ横型製造装置を用いた。上記の熱硬化性樹脂ワニスを含浸槽に入れ、これに、厚み0.20mm、通気度5cc/cm2/secであって幅1.2mの帯状のガラス織布を通過させて、熱硬化性樹脂ワニスをガラス織布に含浸させ、ついで、熱硬化性樹脂ワニスが含浸されたガラス織布を乾燥炉に通して、樹脂分42重量%のプリプレグを製造した。
【0035】
乾燥炉の仕様は次の通りである。
乾燥炉の長さ;35m熱硬化性樹脂ワニスが含浸されたガラス織布の乾燥炉内滞留時間:50秒乾燥炉内の温度:熱硬化性樹脂ワニスが含浸されたガラス織布が通過する隙間を開けて、乾燥炉を6個の部屋に区切り、各部屋の温度を一定にした。各部屋の長さと、温度は次のとおりである。
最初から第1番目の部屋:4.5m、70℃(入り口温度)
最初から第2番目の部屋:4.5m、100℃最初から第3番目の部屋:4.5m、140℃最初から第4番目の部屋:4.5m、180℃最初から第5番目の部屋:6.0m、180℃最初から第6番目の部屋:6.0m、140℃スライドロールの回転速度:25m/分引き出しロールの回転速度:25m/分熱硬化性樹脂ワニスが含浸されたガラス織布にかかる引っ張り力:2.3N/cm(引き出しロール直前)
なお、乾燥炉内では、繊維基材を支えるために、下からエアーを吹き上げ、また、繊維基材が安定するように上からもエアーを吹き付けるようにした。
【0036】
実施例2ガラス織布として、厚み0.10mm、通気度15cc/cm2/secのガラス織布を使用したこと以外は実施例1に準じて行い、樹脂分46重量%のプリプレグを製造した。
【0037】
比較例1乾燥炉として縦型乾燥炉を用いたプリプレグ製造装置を使用したこと及び0.10mm,通気度5cc/cm2/secのガラス織布を使用したこと以外は実施例1に準じて行い、樹脂分46重量%のプリプレグを製造した。このプリプレグ製造装置における縦型乾燥炉の大きさは、高さ17mであり、この中をロールを介して繊維基材が往復し、長さで34m分が乾燥炉内に存在するようにした。これ以外は図1に示す装置と同様にした。ただし、スライドロールの回転速度:25m/分引き出しロールの回転速度:0.7m/分とした。繊維基材がはためかないで安定して送られるようにするために、引き出しロールの回転速度をスライドロールの回転速度よりも大きくする必要がある。引き出しロール直前での引っ張り力は,3.4N/cmであった。
【0038】
比較例2厚み0.10mm,通気度20cc/cm2/secのガラス織布を使用したこと以外は比較例1に準じて行い、樹脂分46重量%のプリプレグを製造した。引き出しロール直前での引っ張り力は,3.4N/cmであった。
【0039】
比較例3実施例1において、乾燥炉入口温度を150℃とし、しかも、乾燥炉内温度を150〜185℃に保持したこと以外は、実施例1に準じて行い、樹脂分42重量%のプリプレグを製造した。
【0040】
実施例1、実施例2および比較例1〜3のプリプレグを所定の大きさに裁断し、この両側に18μmの銅箔を配置し,この材料をステンレス製の厚さ1.8mmの鏡板にはさみ,これら構成品を13回重ねあわせ,プレス熱板間に挿入し,多段プレスにて温度185℃,圧力4Mpaの条件下で85分間成形し,両面銅張積層板を作製した。得られた両面銅張積層板に常法により回路加工を施し,印刷配線板を作製した。両面銅張積層板及び印刷配線板の性能を表1に示す。これらの性能を表1に示す。
【0041】
【表1】

*1;両面銅張積層板の300mm角のサンプルないの任意の50点での板厚を測定したときの偏差である。
*2;両面銅張積層板の300mm角のサンプルないの任意の50点での板厚を測定したときの最大値と最小値の差を示す。
*3;300mm角のサンプルの中央部に標点を記し,印刷配線板への回路加工による端部のそり(最大)及び寸法変化をみたものである。
【0042】
実施例1および2と比較例の銅張積層板の性能は,表1から明らかなように本発明の銅張積層板の性能は,本発明以外の銅張積層板よりそり,寸法変化が小さく,且つ多層化接着時のそり,寸法変化も小さいことを確認した。
【符号の説明】
【0043】
1 横型塗工機
2 熱硬化性樹脂ワニス
3 含浸槽
4 含浸ロール
5スクイズロール
6 横型乾燥炉
7 引き出しロール
8 ガラス織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸する塗工工程と繊維基材に含浸された熱硬化性樹脂ワニスの溶剤を揮発させ、樹脂を半硬化させる乾燥工程を含むプリプレグの製造方法において、乾燥工程を乾燥炉入口温度を樹脂の軟化点未満とする横型乾燥炉を用いて行うことを特徴とするプリプレグの製造方法。
【請求項2】
繊維基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸する塗工工程と繊維基材に含浸された熱硬化性樹脂ワニスの溶剤を揮発させ、樹脂を半硬化させる乾燥工程を含むプリプレグの製造方法において、乾燥工程を上記の熱硬化性樹脂ワニスによって含浸された繊維基材を水平方向に移動させて行い、しかも、乾燥工程の最初は樹脂の軟化点以下に加熱することを特徴とするプリプレグの製造方法。
【請求項3】
繊維基材が帯状のものである請求項1又は2記載のプリプレグの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により製造したプリプレグ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリプレグ又はその積層体の片面又は両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形してなる金属張り積層板。
【請求項6】
請求項5に記載の金属張り積層板に回路加工を施してなる印刷配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−248520(P2010−248520A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126134(P2010−126134)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【分割の表示】特願2000−81836(P2000−81836)の分割
【原出願日】平成12年3月17日(2000.3.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】