説明

プリプレグ欠点検査方法

【課題】炭素繊維にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグ表面の欠点検査方法。特に、一方向に引き揃えたプリプレグ表面に対して、高精度で信頼性高く検査できる光学的手段を用いた欠点検査方法を提供する。
【解決手段】欠点候補領域の矩形率、最大径角度、凹凸度を求め、ワレ欠点を検出後、ワレ欠点検出領域をマスクした画像から、1画素列毎に閾値を算出し、その閾値により2値化して毛羽欠点を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグ表面の欠点検査方法、特に、一方向に引き揃えたプリプレグ表面に対して、高精度で信頼性高く検査できる光学的手段を用いた欠点検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化プラスチックス(以下、CFRPと呼称する。)は、その比強度、比弾性率の高さから様々な分野で多く利用されており、航空機、船艇、自動車、などの高い強度を要求される用途に利用が拡大している。これらの成形には炭素繊維を引き揃えて熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグと呼ばれるシート状成形用材料を用い、それを多層積層した後硬化させている。
【0003】
CFRPに用いられるプリプレグにおいては、少しの欠点がCFRPとした際の破壊起点および強度低下原因となりうる為、これら検査規格の合否判定においては、高い精度の検査水準が要求される。
【0004】
これら検査は、一般的に人の目によって行われていたが、省人化、精度向上、欠点見逃し抑制などを目的とした自動化技術の導入が進んでおり、検査時間の短縮や検査精度の向上のため、種々の技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には単一カメラにて複数種の欠点を検出できるプリプレグの製造方法および装置が提案されている。この特許文献1による欠点検査方法はプリプレグに光を照射し、プリプレグからの散乱光を受光手段により検出し該受光手段により検出された散乱反射光の信号レベルと予め設定した閾値との比較により欠点の識別をしている。
【0006】
また、特許文献2にはシート状表面の欠点識別装置が提案されており、信号レベルだけでなく検出画像の欠点の候補となる領域から複数の特徴量を抽出して、予め定めておいた欠点種類の特徴量と比較することで、欠点の識別をしている。
【特許文献1】特開平9−225939
【特許文献2】特開2004−109069
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の欠点検査方法では、正常部を欠点として誤検出してしまう問題や、形状が酷似した欠点を別の欠点として検出してしまう、または1つの欠点を数種類の欠点として検出してしまう問題があった。特に一方向に引き揃えたプリプレグでは走行方向軸に沿った輝度値のムラが延在し、ワレ欠点、毛羽欠点として誤検出される問題の発生が顕著である。本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、上記した従来の問題点を解決し、欠点を正確に識別する欠点検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題について、一方向に引き揃えたプリプレグでは、プリプレグ表面は樹脂の塗布ムラや表面の凹凸があるため、単一の方向からプリプレグに照射した光であっても、プリプレグの位置によって、異なる方向に反射(散乱)するので、かかる散乱光を受光手段により撮像すると、正常部であってもその撮像画の輝度の分布が均一にはならず、欠点部が正常部より相対的に輝度値が高い場合であっても、正常部の一部分が、欠点からの反射光を受光した際と同等の信号レベルになる場合があることによるのではないかとの考えの下、検討を行い本発明に想到した。すなわち、この様な輝度値の信号レベルが高い正常部は樹脂の塗布ムラやプリプレグ表面の凹凸に規則性がないため生じ、不規則に分布しているので、2値化処理した際その形状が欠点の形状に酷似した形となって現れる場合があるという認識の下、正常部のうち輝度値の信号レベルが高い部分と、形状が酷似した欠点を先に分離して検出した後、その情報を考慮して他の欠点を検出することにより、欠点を正確に識別する欠点検査方法を見出したものである。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、次のいずれかの構成を有する。(1)走行するプリプレグの表面に照明手段によって光を照射し、前記プリプレグの表面を撮像手段により撮像し、前記撮像手段によって撮像した画像を記憶手段に記憶し、前記記憶手段に記憶した画像を加工して欠点を検出及び識別するプリプレグ表面の検査方法であって、記憶手段に記憶したプリプレグ表面の画像を読み出し、予め定めた閾値を基準に2値化処理する第1の2値化処理ステップと
第1の2値化処理ステップにより得た第1の画像データより、明領域(A)を抽出し、前記明領域(A)の矩形率、最大径角度、凹凸度を求め、ワレ欠点を識別するワレ欠点識別ステップと
前記記憶手段に記憶したプリプレグの表面の画像から前記ワレ欠点識別ステップにより識別したワレ欠点である領域を除外するマスク処理ステップと
前記マスク処理ステップより得られたマスク画像を基に以下に定義される積算値Vs[x,y] (yは走行方向軸の要素、xは走行方向軸と直交する軸の要素)と1画素列毎の閾値Vt[x]を基準に2値化する第2の2値化処理ステップと、
第2の2値化処理ステップにより得られた第2の画像データより明領域(B)を抽出し、前記明領域(B)の特徴量を求め、毛羽欠点を識別する毛羽欠点識別ステップを有することを特徴とするプリプレグ表面の検査方法である。(なお、本明細書において、2値化処理ステップ後に得られる明領域(明領域(A)、明領域(B))を、その意味合いから総称して欠点候補領域と記すこともある)
【0010】
【数1】

【0011】
(2)前記照明手段はプリプレグ表面に対する入射角度がプリプレグ表面を基準とした場合20〜40度となるよう設けられた、(1)に記載のプリプレグ表面の検査方法である。
(3)前期照明手段はライン状照明であり、前記ライン状照明の長手方向の軸がプリプレグの走行方向と直交となるよう設けられた、(1)に記載のプリプレグ表面の検査方法である。
(4)前記撮像手段はその光軸がプリプレグ表面に対し、垂直となるよう設けられた、(1)に記載のプリプレグ表面の検査方法である。
【0012】
本発明において、「プリプレグ」とは一方向に引き揃えた炭素繊維にマトリックス樹脂を含浸させたシート状物をいう。
本発明において、「ライン状照明」とは、発光部が1次元方向に直線的に延びた形状を有するものでありその長手方向の軸に沿った輝度分布が一定である領域を持った照明をいい、発光部は長手方向に直交する方向の長さが10mm以内で長手方向にほぼ一定であれば、幅を有した細長い面であっても良い。ここで、ほぼ一定とは、長手方向の幅の平均に対し、各部の幅のずれが±5mm以内であることをいう。かかる「ライン状照明」は、具体的には直管形蛍光灯や、複数の光ファイバを線状に配置してハロゲンやLEDなどの光源からの光をライトガイドで導くもの、照明手段の前面にシリンドリカルレンズを設けることにより照明を行うもの等が挙げられるが、光量の可変が容易でかつ、コストや保守性の観点から、LEDライン照明を用いることが好ましい。本発明において、ライン状照明の「長手方向の軸」とは、発光面の長軸と定義する。
本発明において、撮像手段の「光軸」とは、受光面の中心からの垂線と定義する。
本発明において「矩形率」とは、図3に示す欠点候補領域30の重心31を通り、外周の2点を結ぶ直線の最大径32と最小径33の比と定義する。
本発明において、「最大径角度」とは、図4に示す欠点候補領域の最大径32の長手方向の軸方向と走行方向に直交する軸の相対角度34と定義する。
本発明において、「凹凸度」とは、図5に示す欠点候補領域の包絡周囲長35と周囲長36の比と定義する。
本発明において、「ワレ欠点」とは、炭素繊維束の拡がりが十分でないため、プリプレグ間に隙間が生じる状態の欠点をいう。「ワレ欠点」は、隙間を通して離型紙の反射が生じることにより白色に見えることで認識される。
本発明において、「毛羽欠点」とは、炭素繊維の一部が切れ、毛羽立った状態または糸束が塊になった状態の欠点をいう。「毛羽欠点」は、プリプレグの正常部と色相が同一である。
本発明において、「入射角度」とは、照明手段の発光面から垂直に照射される光の光軸とプリプレグ面とのなす角度と定義する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、誤検出なくワレと毛羽を正確に識別できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の欠点検査方法の好ましい実施形態例を、図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の一実施形態による欠点検査方法の構成を示す概略ブロック図である(図中、「第1の2値化処理ステップ」等の「ステップ」は省略して示している)。本実施形態では、走行中のプリプレグを撮像し、撮像した画像に基づいて欠点検出処理を実行する。そのために、本実施形態の欠点検査方法は、図1に示すように、画像データを生成する照明・撮像手段1と、その撮像画像を記憶する記憶手段2と記憶した画像データを読み出し、予め定めた閾値により2値化処理する第1の2値化処理ステップ3と、複数の特徴量を抽出しワレ欠点を検出するワレ欠点検出ステップ4と、記憶した画像読み出し第1の欠点検出ステップで検出した欠点領域をマスクする、マスク処理ステップ5と、1画素列毎に閾値を求め2値化処理する第2の2値化処理ステップ6と少なくとも1つ以上の特徴量を抽出し毛羽欠点を検出する、毛羽欠点検出ステップ7から構成される。なお、第1の2値化処理ステップの閾値は、毛羽およびワレ欠点の平均輝度を求めておき、2値化処理ステップの際、毛羽欠点が明領域(A)欠点候補領域として検出されない閾値を予め決めておく。後述する第2の2値化処理ステップ6ではプリプレグ走行方向軸に長く輝度が高い部分があると、その画素列の閾値が大きくなる。ワレ欠点は走行方向に長く輝度が高いため、ワレ欠点が存在する状態で1画素列毎の閾値を算出しようとすると、ワレのある画素列は高い閾値を持つことになり、毛羽やその他の欠点の正確な識別が出来なくなる。そのため、第2の2値化処理ステップ6に先立ちに、ワレ欠点検出ステップ4でワレ欠点を検出し、マスク処理ステップ5でワレ欠点領域をマスクすることにより、第2の2値化処理ステップ6ではワレ欠点の影響を受けることなく画素列の閾値を算出することができる。
【0015】
図2はこの発明の一実施形態の照明・撮像手段の構成を表した図である。本実施形態で使用する照明手段21はライン状照明装置であり、その長手方向の軸がプリプレグ(図では輪郭のみ示すが、黒色である)の走行方向と直交となるよう設けられている。また、プリプレグ表面に対する入射角度がプリプレグ表面を基準とした場合20〜40度となるよう設けられている。
【0016】
照明手段の種類としては、本実施形態に示したようなライン状照明装置が好ましい。ライン状照明装置とは、発光部が1次元方向に直線的に延びた形状を有する照明装置でありその長手方向の軸に沿った輝度分布が一定である領域を持った照明装置であり、光源をライン状に直線的に配置したもの、複数の光ファイバを線状に配置して光源からの光をライトガイドで導くもの、照明手段の前面にシリンドリカルレンズを設けることにより照明を行うもの等が挙げられる。例えば直管形蛍光灯、LEDライン照明、集光型ライン照明、等がある。本発明においては、光量の可変が容易でかつ、コスト、保守性の観点からLEDライン照明が好ましい。かかるライン状照明装置の発光部の長さは、プリプレグの全幅を均一に照明できれば特に限定されるものではないが、プリプレグ幅に対して、片側50〜150mm外側までカバーすることが好ましい。例えば、プリプレグ幅が、1000mmであれば、ライン状照明の長さは1200とし、100mmずつ外側まで照明するようにすればよい。なお、照明手段としてライン状照明装置を用いない場合には、カメラ撮像範囲のプリプレグ表面の光量がプリプレグ幅方向に均一になるよう、光源を配置することが必要である。
撮像手段22はラインセンサである。ラインセンサとは、1ラインの明暗または輝度に関するデータを得るものであり、光を受光するフォトダイオード等の受光素子(画素)がライン状に、直線的に配置され、受光した光を電気信号に変換しデータを出力するものをいう。例えばCCDラインセンサ、CMOSラインセンサ、X線ラインセンサ等がある。本発明においては可視光域に受光感度をもち、微小な欠点を検出するためにノイズが少ないことが好ましく、かかる観点からCCDラインセンサが好ましい。ライン状照明装置によって照射された検査対象物を撮像し、検査対象物の撮像データを生成し、記憶手段2に転送する。
【0017】
次にワレ欠点検出ステップ4は第1の2値化処理ステップ3の結果の2値化画像から、ワレ特徴量抽出処理8により明領域(A)の矩形率、最大径角度、凹凸度を抽出し、予め定めておいた各特徴量と比較し、ワレ欠点を検出する。なお、明領域(A)は前述した予め設定した閾値により2値化処理した後の明領域であり、本ステップで検出する欠点である疑いのある領域(欠点候補領域)である。例えば、輝度の深さを0〜255とするならば、2値化後の輝度値は0または255いずれかになるので、輝度値が255の領域を明領域、0の領域を暗領域とする。また、矩形率、最大径角度、凹凸度の比較基準となる値はワレおよび毛羽欠点のそれぞれの矩形率、最大径角度、凹凸度の平均値を求めておき、ワレおよび毛羽欠点を正確に識別できる線引きとなる値となるよう予め決めておく。また、矩形率、最大径角度、凹凸度を求める前に、空間フィルタリング処理によって、微小な領域を削除して、欠点候補領域を絞り込んでもよい。また、矩形率、最大径角度、凹凸度を求める前に、各欠点候補領域の画素数を求め、予め比較値を設定しておき、欠点候補領域を絞り込んでもよい。
【0018】
マスク処理ステップ5は記憶手段2より画像を読み出し、ワレ欠点検出ステップ4でワレと識別された領域をマスクする。具体的にはワレ欠点領域の輝度値を0にする処理である。
【0019】
第2の2値化処理ステップ6はマスク処理ステップ5よりワレ欠点領域がマスクされた画像より1画素列毎の閾値を算出し、その閾値により2値化処理を行なう。ここでいう1画素列とは図6のように走行方向軸をY軸、走行方向軸と直交する軸をX軸とし、その要素をy,x、各要素数をX:10 Y:5、各画素をV[x,y] とした場合を例にとると、V[a,1]〜V[a,5]の1列を指す。1画素列の閾値の算出においてはまず積算値Vs[x,y]を求める。積算値Vs[x,y]は各画素を中心としたX軸、数画素分の積算値であり、
【0020】
【数2】

【0021】
で求め、上式の計算を全画素に対して行う。p<xであるのはp≧xの場合、例えばVs[2,1]積算値をp=2で求める場合、積算範囲はV[0,1]〜V[4,1]となり、実際には存在しない画素[0,1]を参照することになる。故にp<xの条件が必要となる。画素列の閾値は積算値Vsと予め定めておいた比較値Vcと比較し、定数を加減算する計算を1画素列分行う。比較値Vcは正常部の平均輝度値に応じて実験的に求める。pの値は図7に示すように2値化後の明領域(B)の違いに出る。p=0の場合、輝度の高い画素が列の大半を占めている一画素列(以降、縦スジと記載)の画素は明領域(B)として検出されないが、他の部分は検出される。一方、p=1の場合、縦スジとその両隣の1画素列の画素も明領域(B)として検出されなくなる。1画素列の算出を、図8を例に取って説明する。図8ではp=1、Vc=75、k=1の条件でx=3の1画素列の閾値を求めている。まず、各画素V[3,1]〜V[3,5]まで積算値を求める。次に
【0022】
【数3】

【0023】
の条件でx=3のVrを求める。Vr[3,1]を例にとると、Vs[3,1]=81、Vc=75であるからVs>VcとなりVr[3,1]=Vaとなる。一方でVr[3,4]はVs[3,4]=67であるからVs<Vcとなり、Vr[3,4]=-Vaとなる。各画素のVrを算出後、
【0024】
【数4】

【0025】
の式に従い、各画素のVrを積算する。図8を例にとると、5画素のVrの合計値は3Va、k=1であるため、Vt[3]=3Vaとなる。図8のV[3,2]に注目すると、他の画素より極端に輝度値が高い。しかし、この値が28または255であったとしてもVt[3]=3Vaであり、画素の輝度値の大小ではなく、Vcに比べて輝度値の高い画素がその1画素列にどのくらい存在するかで閾値が決まってくることがわかる。そのため、極端に輝度値の高い画素があってもその列の閾値が極端に高い閾値になることがない。
【0026】
毛羽欠点検出ステップ7は第2の2値化処理ステップにより得た2値化画像より、明領域(B)を欠点候補として、少なくとも一つ以上特徴量(例えば画素数、長さ、幅等)を求め、予め定めた値と比較して毛羽欠点を検出する。なお、予め定めた値とは、例えば求める特徴量が画素数であれば、その値以上の画素数であれば毛羽欠点とし、以下であれば欠点と見なさないとするような値であり、分解能と欠点規格に応じて予め実験的に求めておく。
【0027】
また、第2の2値化処理ステップに先立つ前処理として、記憶手段より画像を読み出し、水平フィルタリング処理をかけた画像をマスク処理ステップ6よりワレ欠点領域がマスクされた画像に加算する処理を加えるのが好ましい。
【実施例】
【0028】
[実施例1]
本発明による一実施形態について説明する。検査対象である、プリプレグは幅1000mmで、7m/minで走行される。ライン状照明は高輝度LEDライン照明(CCS社製 HLND型)を1台使用し、前記プリプレグの全面に光が入射するように配置した。撮像手段として、ラインセンサを使用し、具体的には、素子数7450、駆動周波数40MHz、最高走査周期192μsの性能を有するラインセンサカメラ(NED社製 e7450D)を2台並列に設置し、撮像される画像の、プリプレグの幅方向の分解能は0.1mm/画素以上になるように調整した。 照明の角度はプリプレグ表面に対する入射角度が30度となるよう設置し、プリプレグ表面の照度が9000lxになるよう照明の光量を設定した。ラインセンサはその光軸がプリプレグ表面に対し、垂直となるよう設置する。また、カメラ撮像範囲のプリプレグ面に直接外光が当たらないよう、上面および側面に遮光板を取り付ける。
【0029】
カメラで撮像した画像データは一旦パソコン上に取り付けた画像処理ボード上に記憶させ、ボード上で7450×1000画素の画像にし、その後、パソコン上のメモリに読込む。
【0030】
輝度の深さを255階調とし、複数の毛羽およびワレ欠点画像の輝度の平均値を求め、第1の2値化処理ステップの閾値を45に設定した。この値では2値後、第1の2値化処理を行い、欠点候補領域として明領域(A)を75点検出した。すべての明領域(A)の矩形率、最大径角度、凹凸度を求め、ワレ欠点と識別する最大径角度の範囲を75〜115度、矩形率を5以上、凹凸度を1.5以下として、ワレ欠点検出処理をおこなった。なお、最大径角度の範囲はワレ欠点の最大径角度が発生原因の特性上、走行方向軸にほぼ水平としかならない為、90±25度の範囲とした。矩形率および凹凸度は最大径角度による識別で、はじかれない複数の欠点の特徴量を求めて定めた。第2の2値化処理ステップにおいて使用する閾値の算出において、p=1、Va=1、Vc=90、k=1として、1画素列毎に閾値を算出し、2値化処理後、明領域(B)の画素数を求めた。なお、各値Va、kは予め1に決めておき、Vcは(1+2p)×正常部の平均輝度値とし、輝度値の高い正常部の影響が最も軽減されるpの値を実験的に求めた。画素数:500以上を毛羽欠点として、毛羽欠点検出処理をおこなった。なお、毛羽欠点とし識別する画素数は予め複数の毛羽欠点の画素数を求めておき、最も画素数の少ない毛羽欠点の値とした。表1にワレ欠点に形状が酷似した欠点候補領域の抽出結果および毛羽欠点の検出結果を示す。
【0031】
この例ではワレ欠点の条件を満たしているものはLabel 230,400,507となり、形状が酷似した欠点および正常部を誤検出することなくワレ欠点を検出できた。また、毛羽欠点も誤検出することなく検出できた。
【0032】
【表1】

【0033】
[実施例2]
プリプレグを、5m/minで走行させ、1撮像画像における、プリプレグの走行方向の長さを実施例1と同一に合わせるよう、カメラ取込み設定を変更した以外は、実施例1と同じ状態で欠点処理を行った。結果を表2に示す。この例ではワレ欠点の条件を満たしているものはLabel 89,287,412となり、形状が酷似した欠点および正常部を誤検出することなくワレ欠点を検出できた。また、毛羽欠点も誤検出することなく検出できた。
【0034】
【表2】

【0035】
[実施例3]
プリプレグを、3m/minで走行させ、1撮像画像における、プリプレグの走行方向の長さを実施例1と同一に合わせるよう、カメラ取込み設定を変更した以外は、実施例1と同じ状態で欠点処理を行った。結果を表3に示す。この例ではワレ欠点の条件を満たしているものはLabel 65,87,408となり、形状が酷似した欠点および正常部を誤検出することなくワレ欠点を検出できた。また、毛羽欠点も誤検出することなく検出できた。
【0036】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0037】
上述した本発明の欠点検査方法は、一方向に引き揃えた炭素繊維にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグに好ましく適用されるが、適用対象としては、一方向に引き揃えた黒色の繊維シート状物であるようなものであれば、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態による欠点検査方法の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態の照明・撮像手段の構成を表した図である。
【図3】欠点候補領域の矩形率を説明するための図である。
【図4】欠点候補領域の最大径角度を説明するための図である。
【図5】欠点候補領域の凹凸度を説明するための図である。
【図6】第2の2値化処理ステップにおいて閾値を算出する際の1画素列の定義を説明するための図である。
【図7】第2の2値化処理ステップにおけるpの値による欠点候補領域の違いを説明するための図である。
【図8】第2の2値化処理ステップにおける1画素列の閾値の計算を説明するための図である。
【符号の説明】
【0039】
1 照明・撮像手段
2 記憶手段
3 第1の2値化処理ステップ
4 ワレ欠点検出ステップ
5 マスク処理ステップ
6 第2の2値化処理ステップ
7 毛羽欠点検出ステップ
8 ワレ特徴量抽出処理
9 毛羽特徴量抽出処理
10 記憶・演算装置
20 プリプレグ
21 照明
22 カメラ
30 欠点候補領域
31 欠点候補領域の重心
32 欠点候補領域の最大径
33 欠点候補領域の最小径
34 欠点候補領域の最大径角度
35 欠点候補領域の包絡周囲長
36 欠点候補領域の周囲長
40 10×5画像
41 Y軸要素数
42 X軸要素数
43 1画素列


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するプリプレグの表面に照明手段によって光を照射し、前記プリプレグの表面を撮像手段により撮像し、前記撮像手段によって撮像した画像を記憶手段に記憶し、前記記憶手段に記憶した画像を加工して欠点を検出及び識別するプリプレグ表面の検査方法であって、記憶手段に記憶したプリプレグ表面の画像を読み出し、予め定めた閾値を基準に2値化処理する第1の2値化処理ステップと
第1の2値化処理ステップにより得た第1の画像データより、明領域(A)を抽出し
前記明領域(A)の矩形率、最大径角度、凹凸度を求め、ワレ欠点を識別するワレ欠点識別ステップと
前記記憶手段に記憶したプリプレグの表面の画像から前記ワレ欠点識別ステップにより識別したワレ欠点である領域を除外するマスク処理ステップと
前記マスク処理ステップより得られたマスク画像を基に輝度値を以下に定義される積算値Vs[x,y](yは走行方向軸の要素、xは走行方向軸と直交する軸の要素)と1画素列毎の閾値Vt[x]を基準に2値化する第2の2値化処理ステップと、
第2の2値化処理ステップにより得られた第2の画像データより、明領域(B)を抽出し、前記明領域(B)の特徴量を求め、毛羽欠点を識別する毛羽欠点識別ステップを有することを特徴とするプリプレグ表面の検査方法。
【数1】

【請求項2】
前記照明手段はプリプレグ表面に対する入射角度がプリプレグ表面を基準とした場合20〜40度となるよう設けられた、請求項1に記載のプリプレグ表面の検査方法。
【請求項3】
前期照明手段はライン状照明であり、前記ライン状照明の長手方向の軸がプリプレグの走行方向と直交方向となるよう設けられた、請求項1に記載のプリプレグ表面の検査方法。
【請求項4】
前記撮像手段はその光軸がプリプレグ表面に対し、垂直となるよう設けられた、請求項1に記載のプリプレグ表面の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−85166(P2010−85166A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252818(P2008−252818)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】