説明

プリント回路板および集積回路チップパッケージ用の熱伝導性アラミドベース誘電基材

【課題】熱伝導性プリント回路板基材としてまたは熱伝導性集積回路チップパッケージのコンポーネントとして有用であるシートを提供すること。
【解決手段】本発明は一般に、少なくとも1つのポリマーと、熱を伝導するのに適した熱伝導性フィラー成分とを含むポリマーマトリックスが含浸した、1つまたは複数の織られたまたは織られていないパラ−アラミドまたはグラスファイバの布、シートまたは紙を含む繊維ベース強化複合シートに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その中に熱伝導性粒子を分散させた少なくとも1つのポリマーを含むポリマーマトリックスが含浸した、1つ(または複数)の織られたまたは織られていない、パラ−アラミドの布、シートまたは紙を含む繊維強化複合基材(シート)を対象とする。この基材(シート)は、熱伝導性プリント回路板材料としてまたは熱伝導性集積回路チップパッケージとして有用である。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板(PWB)とも呼ばれるプリント回路板は、非特許文献1、非特許文献2、および非特許文献3、ならびに他の多数の製作手順に記載されている。一般に、これらの板は、誘電層と、金属層とを含む。金属は、架橋エポキシなどのマトリックス樹脂をその中に含浸させた繊維強化複合シートから通常作製した板(すなわち、基材)上に積層、接着、スパッタリング、またはめっきすることができる。次いで、その板を、そのすべてが当技術分野で公知である一連のステップにかけることによって誘電層上に金属回路パターンを残す。この回路パターンは、所望の電子デバイスを作製するために付加できる多様な電子コンポーネントを接続する働きをする。こうした回路層は、単独でまたはビアおよび層間接続部を有する多層スタックにおいて使用することができる。
【0003】
金属導線、電力導管、および電子デバイス内を伝播する電子信号が、非常に近接して存在すると、回路板自体の熱消散速度の改良が必要になる。既存のプリント回路板用市販材料は、本件特許出願人から入手できるThermount(登録商標)積層体など、グラスファイバまたは不織パラ−アラミド繊維強化紙を含む。しかし、この積層体は、通常、約0.2ワット/mK以下の熱伝導度しか有することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3063966号明細書
【特許文献2】米国特許第3869429号明細書
【特許文献3】米国特許第4308374号明細書
【特許文献4】米国特許第4698414号明細書
【特許文献5】米国特許第5459231号明細書
【特許文献6】米国特許第2999788号明細書
【特許文献7】米国特許第3756908号明細書
【特許文献8】米国特許第5910231号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. W. Jawitz "Printed Circuit Board Materials Handbook", McGraw-Hill (1997)
【非特許文献2】Clyde Coombs, Jr. "Printed Circuits Handbook", McGraw-Hill (1996)
【非特許文献3】IPC/JPCA-2315 standard "Design Guild for High Density Interconnects and Microvias"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、約0.5ワット/mKを超える、さらにより好ましくは1.0または2.0ワット/mKを超える熱伝導度を有するプリント回路板材料を製造しようとする強い誘因が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱伝導性電子基材材料として有用である複合シートであって、前記シートはポリマーマトリックスが含浸した、1つまたは複数の織られたまたは織られていない、パラ−アラミドの布、シートまたは紙を含み、該ポリマーマトリックスはポリマー成分と熱伝導性無機フィラー成分とを含み、以下の数値、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、および5.0ワット/mKの任意の2つの間の熱伝導度、ならびに約10、15、20、または25ミクロンから約50、75、100、125、または150ミクロンの間の厚さを有する複合シートを対象とする。
【0008】
本発明はまた、次式:
−HN−R−NHOCRCO−
[式中、RおよびRはそれぞれ、置換または非置換の芳香族基を表す]
の繰り返し単位を有するポリ(芳香族アミド)成分(ホモポリマーおよびコポリマーを含む)を含む少なくとも1つの織られた(または織られていない)布、シートまたは紙から誘導される複合シートであって、この織られた(または織られていない)シート布が、少なくとも10、20、30、または40から約50、55、60、65、70、または75重量%のアラミド繊維を含有し、その繊維の少なくとも50%が長さ約3から100mmを有する複合シートを対象とする。このアラミド繊維として、p−フェニレンテレフタルアミド、p−フェニレンジフェニルエーテルテレフタルアミド、ポリ(m−ベンズアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(m,m’−フェニレンベンズアミド)、およびポリ(1,6−ナフチレンイソフタルアミド)繊維が挙げられる。この布シートは、ガラス製チョップ繊維(chopped fibers)またはセラミックチョップ繊維を任意選択で含んでよい。一般に、このガラス製またはセラミック繊維は、布シート中に、全複合シートの50、45、40、35、30、25、20、15、10、5重量%未満の量で存在する。
【0009】
本発明はまた、熱硬化性(または熱可塑性)ポリマーマトリックスを含浸させたベース材料(不織アラミド布などの)を含む複合シート(「プリプレグ」と呼ばれる場合もある)であって、該ポリマーマトリックスがポリマー成分および熱伝導性フィラー成分を含む複合シートを対象とする。ポリマー成分は、任意のポリマー樹脂であってよい。適切な樹脂として、限定されないが、エポキシ、メラミン、フェノール、ポリイミド、または不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。複合シート中に存在するポリマー成分の量は、全複合シートの約3、5、10、または15重量%から約20、25または30重量%の範囲である。
【0010】
本発明はまた、複合シートの全重量に対して以下の数値、すなわち、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、および80重量%の任意の2つの間(およびそれらを含む)の量で存在する熱伝導性フィラー成分をその中に分散させた複合シートを対象とする。本発明の複合シートは、以下の数値、すなわち、20、40、60、80、100から約100、200、300、または400ワット/mKの任意の2つの間およびそれらを含む熱伝導度を有する、主として無機粒子である熱伝導性フィラー成分を含むことができる。
【0011】
本発明はまた、積み重ねて多層シートを形成する少なくとも2つ(またはそれ以上)の単一複合シートを含む多層複合シートを対象とする。さらには、この多層シート(または単一層シート)は、少なくとも1つの金属ホイルに対して積層することによって誘電金属積層体を形成することができる。この誘電金属積層体は、プリント配線板用のベース基材材料として、または集積回路チップパッケージ内のコンポーネントとして使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、次式:
−HN−R−NHOCRCO−
[式中、RおよびRはそれぞれ、置換または非置換の芳香族基を表す]
の繰り返し単位を有するポリ(芳香族アミド)成分(ホモポリマーおよびコポリマーを含む)を含む少なくとも1つの織られた(または織られていない)布、シートまたは紙から誘導される複合シートであって、該シートが、少なくとも10、20、30、または40から約50、55、60、65、70、または75重量%のアラミド繊維を含有し、該繊維の少なくとも50%が長さ約3〜100mmを有する複合シートを対象とする。本発明のアラミド繊維は、p−フェニレンテレフタルアミド、p−フェニレンジフェニルエーテルテレフタルアミド、ポリ(m−ベンズアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(m,m’−フェニレンベンズアミド)、およびポリ(1,6−ナフチレンイソフタルアミド)繊維を含む。既存のプリント回路板用市販材料は、E.I.duPont de Nemours and Co.から入手できるThermount(登録商標)積層体など、グラスファイバまたは不織パラ−アラミド繊維強化紙を含む。
【0013】
「織られた」または「織られていない」布(または紙)という用語は、繊維をランダムに、または準ランダムに置くことによって調製される繊維シート生成物を指す。スパンボンド布、スパンレース布、フラッシュスパン不織布を含む、こうした織られていない物品は周知である。紙は、水性分散液法によってセルロース紙を調製するための周知の方法におけると同様に、短繊維を用いてランダムに2次元配列させるという方法によって調製される。当技術分野では、紙と不織体との区別は明確でない。本明細書では、「紙」という用語は、比較的平滑な表面を有し、約10、15、20、または25ミクロンから約50、75、100、125、または150ミクロンの間の厚さを有し、面内が等方性である、短繊維で微小デニールの不織構造を指すのに用いられる。
【0014】
本明細書では、「複合シート」という用語は、本発明の実施に適したポリマー注入した布または紙を指すのに用いられる。「誘電シート」または「誘電層」という用語は、「複合シート」との同義語として使用される。
【0015】
「プリプレグ」という用語は、複合材の技術分野において広く使用される用語であり、未硬化または部分硬化の状態にある複合シートを指す。「プリプレグ」という用語は、本発明に包含される最終複合シート、すなわちポリマー(またはポリマー成分)が完全に(または実質的に完全に)反応したものを形成する前の前駆体材料である中間生成物を表す。
【0016】
「プリント回路板」という用語は、回路付誘電層の複合シート上に配置した導電性経路によって相互接続された1つまたは複数の電子コンポーネントをその上に実装した、またはその中に埋め込んだ回路付誘電層を指す。
【0017】
本発明の一実施形態では、モノビニル炭化水素、共役ジエン、および少なくとも1つの熱的に活性化可能な遊離ラジカル開始剤から誘導される1つまたは複数の架橋性コポリマーを揮発性液体中に溶解(または分散)させることによって溶液(または分散液)を形成する。次いで、その溶液(または分散液)を使用することによって織られたまたは織られていない、パラ−アラミドまたはグラスファイバ布または紙を形成することができる。
【0018】
本発明の実施に有用であるポリ(芳香族アラミド)紙は、織られたまたは織られていないパラ−アラミド紙を含む。適切なパラ−アラミドは、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−Tと呼ばれる);ポリ(p−フェニレンp,p’−ビフェニルジカルボキシアミド);ポリ(p−フェニレン1,5−ナフタレンジカルボキシアミド);ポリ(トランス,トランス−4,4’−ドデカヒドロビフェニレンテレフタルアミド);ポリ(トランス−1,4−シンナムアミド);ポリ(p−フェニレン4,8−キノリンジカルボキシアミド);ポリ(1,4−[2,2,2]−ビシクロオクチレンテレフタルアミド);コポリ(p−フェニレン4,4’−アゾキシベンゼンジカルボキシアミド/テレフタルアミド);ポリ(−p−フェニレン4,4’−トランス−スチルベンジカルボキシアミド)、およびポリ(p−フェニレンアセチレンジカルボキシアミド)が挙げられる。
【0019】
好都合には、本発明の実施に適したパラ−アラミドは、参照により本明細書に組み込まれている例えばKwolekらの特許文献1で教示されているのと同様の低温技法によってアミド型溶媒の存在下で適切なモノマーを反応させることによって作製される。本発明において好ましいパラ−アラミドは、p−フェニレンジアミンと塩化テレフタロイルの化学量論的重合から生成するホモポリマー、ならびにまた少量の他のジアミンをp−フェニレンジアミンに、および少量の他の塩化二酸を塩化テレフタロイルに組み込むことから生成するコポリマーである。一般的にいえば、他のジアミンおよび他の塩化二酸は、それらが、重合反応を妨害する反応基さえ含まなければ、p−フェニレンジアミンまたは塩化テレフタロイルの約30モル%またはおそらく若干大きい量まで使用することができる。また、例えば、塩化2,6−ナフタロイル、またはクロロもしくはジクロロテレフタロイルクロライドなど他の芳香族ジアミンおよび他の塩化芳香族二酸を組み込むことによって生成するコポリマーも適している。ただし、他の芳香族ジアミンおよび他の塩化芳香族二酸は、異方性スピンドープの調製が可能になる量で存在しさえすればよい。p−パラ−アラミドの調製およびそのp−パラ−アラミドから紡糸するための方法は記載されており、(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5参照)、これは参照により本明細書に組み込まれている。
【0020】
本発明で使用するのに適したパラ−アラミドは、当技術分野の教示に従って紡いで繊維になり、任意選択で切断して「フロック」と呼ばれる短繊維になる。そのようにして形成した繊維またはフロックは、織られたまたは織られていない布および紙に成形することができる。パラ−アラミド紙は、パラ−アラミド短繊維(フロック)とフィブリッドの混合物から形成することができる。このフロックは、パラ−パラ−アラミドポリマーまたはパラ−パラ−アラミドポリマーとメタ−パラ−アラミドポリマーの混合物からなっていてよい。パラ−アラミド紙で使用されるフィブリッドは、非剛性フィルム状粒子であってよく、好ましくはメタ−パラ−アラミドポリマーから形成される。フィブリッドの調製は、例えば特許文献6に見られるプロセスの一般的な議論を用いて特許文献7に教示されている。フィブリッドは、紙製造でパラ−パラ−アラミドフロック用の結合剤として使用される。フロックおよびフィブリッドの紙中の濃度は、フロックが45〜97重量%、フィブリッドが3〜30重量%の範囲であってよい。パラ−パラ−アラミドフロックが、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)であり、メタ−パラ−アラミドが、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)であることが好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態では、約5〜25重量%のポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)フィブリッドと、75〜95重量%のp−パラ−アラミドフロックとを含み、0.8〜4.0oz/ydの間の基準重量を有するパラ−アラミド紙がポリ(芳香族アラミド)シートとして使用される。例えば特許文献8の方法に従って調製したパラ−アラミド紙は、一般に、本発明のポリ(芳香族アラミド)シートとして好ましい。織られていないまたは織られたグラスファイバの布、シートまたは紙も、本発明で使用するのに適している。多数のそうした材料は、当技術分野で広範囲に使用され、多数の供給源から市販されている。
【0022】
本発明の一実施形態では、非熱伝導性ポリ(芳香族アラミド)繊維シートは、従来技術で公知の方法を介して形成される。次に、熱伝導性フィラー成分とポリマー成分とを含むポリマーマトリックスが形成される。本発明によるポリマー成分として使用される有用なポリマーは、限定されないが、ポリエステル(不飽和および飽和)、メラミン、ポリエステルアミド、ポリエステルアミドイミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズチアゾール、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、およびこれらのポリマーアロイを含む。一般に、本発明の複合シートでは、ポリマー成分は、全複合シートの約3、5、10、または15重量%から約20、25、または30重量%の範囲の量で存在する。
【0023】
本発明のポリマー成分は、加工助剤(例えば、可塑剤)、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外吸収剤、または多用な強化剤を含む追加の添加剤を任意選択的にさらに含むことができる。
【0024】
多様なポリマーを使用して本発明の実施に従ったポリマーマトリックスを形成することができるので、多様な加工技法および加工条件を使用することができる。加工の技法および条件は、選定されたポリマーの種類に対して具体的に調整されるであろうし、特定のポリマーはそれぞれ、熱伝導性複合シートを形成するために異なる一連の加工条件を要求しうるだろう。
【0025】
本発明のポリマーマトリックスはまた、熱伝導性フィラー成分を含む。この熱伝導性フィラー成分は、以下の大きさ、すなわち、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、1,000、10,000、および20,000ナノメートルの任意の2つの間(およびそれらを含む)の範囲にある(ポリイミドマトリックス内に分散した)平均の大きさを有する無機材料、場合によって金属酸化物であってよい。
【0026】
本発明の熱伝導性フィラーは、主として、熱伝導率が良好である複合シートが与えられるように選択される。窒化ホウ素は、有用な熱伝導性フィラー材料として当産業では広く受け入れられているので、本明細書で特に言及する。しかし、本発明では、良好な熱伝導性フィラーであるとして他のフィラーを使用することも予想されている。これらのフィラーは(限定されないが)、シリカ、窒化ホウ素被覆酸化アルミニウム、顆粒状アルミナ、顆粒状シリカ、フュームドシリカ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム被覆窒化アルミニウム、二酸化チタン、およびその組合せを含む。他の有用なフィラーは、グラスファイバ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミニウム、銀、ダイヤモンド、および金属被覆ダイヤモンドを含む。
【0027】
本発明の一実施形態では、熱伝導性フィラーをポリマー成分と混合してポリマーマトリックスを形成する。次いで、このポリマーマトリックスを、モノビニル炭化水素と、共役ジエンと、少なくとも1つの熱活性化遊離ラジカル開始剤との混合物から誘導される架橋性コポリマーの混合物に添加する。次いで、この材料(適切な混合および/または分散の後)は、成形して熱伝導性ポリ(芳香族アラミド)ベースの複合シートとすることができる。複合シートを形成した後、ポリマー成分が未硬化状態(すなわち、完全には反応していない)にある場合、この複合シートは、「プリプレグ」複合シートと呼ばれる。あるいは、ポリマー成分を、熱または化学硬化法のいずれかを介して完全に硬化させて熱伝導性複合シートを形成することができる。
【0028】
本発明の別の実施形態では、熱伝導性フィラー成分(すなわち、窒化ホウ素粒子)を、最初に溶媒中に分散させてスラリーを形成してもよい。次いで、このスラリーをポリマー成分中に分散させてポリマーマトリックスを形成してもよい。ポリマーマトリックス中の熱伝導性フィラー成分の量は、以下の数、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90重量%の任意の2つの間の範囲であってよい。次には、ポリマーマトリックスは、公知である多数のコーティング法の任意のものを使用して既存の多孔質または非多孔質ポリ(芳香族アラミド)ベースシート上にコートすることができ、このコーティング法として、限定されないが、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ドクターブレードコーティング、スロット押出し金型を介したダイレクトキャスティング法などが挙げられる。次いで、任意選択的に、このコート済ポリ(芳香族アラミド)シートは、ロールアニール(または圧縮)することによってポリマーマトリックスを織られた(または織られていないシート)布シート内にさらに注入することができる。加えて、ポリマーマトリックスをキャストして、「グリーンフィルム」(すなわち、完全に硬化していないフィルム)を形成することができ、次いで、「グリーンフィルム」を保管し、ポリ(芳香族アラミド)繊維シートに積層し、高温高圧でプレスすることによって最終複合シートを形成する。
【0029】
本明細書では、ポリマー成分と熱伝導性フィラー成分の組合せは、ポリマーマトリックスまたはポリマーマトリックス成分と本明細書で呼ばれる。通常、このポリマーマトリックス分散液は、熱伝導性フィラー粒子の平均粒径が適切に低減し、安定な分散液が形成されるように充分混合される。熱伝導性フィラー成分は、ポリマー成分と相容性の有機溶媒(またはポリマー成分)中のフィラーの平均粒径が約10、20、30、40、または50ナノメートル超から約1.0、2.0、3.0、5.0、10または20ミクロン未満であるように均一に分散することができる。一般的にいえば、適切に分散していないフィラー成分(例えば、大きい凝集体を含有するフィラー成分)は、複合シートで求められた機能態様を劣化または破壊する恐れのある場合が多い。
【0030】
本発明の別の実施形態では、ポリイミドが、ポリマー成分として使用される。ポリイミドは、二無水物およびジアミンから誘導することができる。また、これらの二無水物およびジアミンを特に選択することによって、特に所望される特性を有する最終ポリイミド成分を与えることができる。特に有用な1つの特性は、良好な接着性を与える低いガラス転移温度である。良好な接着性のための有用なガラス転移温度は、以下の数字、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、および100℃の任意の2つの間、およびそれらを含む任意の温度を含むことができる。別の実施形態では、大きいモジュラスが複合シートでより重要である場合、ガラス転移温度が存在しないか、またはこれら2つの数字、550、530、510、490、470、450、430、410、390、370、350、330、310、290、270、および250℃の任意の2つの間のガラス転移温度を有するポリイミドが有用であり得る。
【0031】
ポリイミドが、本発明でポリマー成分として使用される場合、そのポリイミドは、ポリイミド前駆体材料、通常、1つまたは複数の二無水物モノマーと1つまたは複数のジアミンモノマーとを(溶媒系の存在下で)反応させることにより、ポリアミン酸溶液を最初に形成することによって合成することができる。
【0032】
本発明の実施に従ってポリイミドベースのポリマーマトリックスを合成するために有用な有機溶媒は、ポリイミド前駆体材料(例えば、ポリアミン酸)を溶解させることが可能であるべきである。こうした溶媒はまた、ポリイミド前駆体は、中程度の温度で乾燥し、硬化させることができる(すなわち、より好都合でより低コストである)ように、225℃未満など比較的低い沸点を有すべきである。210、205、200、195、190、または180℃未満の沸点が好ましい。有用な溶媒は、限定されないが、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチル−ピロリジン−3−オン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素(TMU)、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、γ−ブチロラクトン、およびピリジンを含む。一実施形態では、好ましい溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)およびジメチルアセトアミド(DMAc)含むが、溶媒の選定は、通常、どのポリマー成分を選定するかによって決まる。
【0033】
本明細書で使用される「ポリイミド成分」という用語には、少なくとも1つまたは複数の芳香族または脂環式二無水物(またはこれらを合成するのに適したその誘導物)と少なくとも1つまたは複数の芳香族、脂環式、または脂肪族ジアミン(またはこれらを合成するのに適したその誘導物)との反応を含む重縮合反応によって合成される任意のポリイミド前駆体材料、ポリイミド、ポリイミドエステル、またはポリイミドエーテルエステルが含まれるものである。
【0034】
本発明の実施に従ってポリイミドベースのポリマー成分を形成するのに使用される有用なジアミンは、限定されないが、
1.2,2ビス−(4−アミノフェニル)プロパン;
2.4,4’−ジアミノジフェニルメタン;
3.4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド;
4.3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS);
5.4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS);
6.4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA);
7.3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA);
8.1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134またはRODA);
9.1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133);
10.1,2−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン;
11.1,2−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン;
12.1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン;
13.1,4−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン;
14.1,5−ジアミノナフタレン;
15.1,8−ジアミノナフタレン;
16.2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン;
17.4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン;
18.4,4’−ジアミノジフェニルシラン;
19.4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド;
20.4,4’−ジアミノジフェニル−N−メチルアミン;
21.4,4’−ジアミノジフェニル−N−フェニルアミン;
22.1,2−ジアミノベンゼン(OPD);
23.1,3−ジアミノベンゼン(MPD);
24.1,4−ジアミノベンゼン(PPD);
25.2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼン;
26.2−(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン;
27.5−(トリフルオロメチル)−1,3−フェニレンジアミン;
28.2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−ヘキサフルオロプロパン(BDAF);
29.2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン;
30.ベンジジン;
31.4,4’−ジアミノベンゾフェノン;
32.3,4’−ジアミノベンゾフェノン;
33.3,3’−ジアミノベンゾフェノン;
34.m−キシリレンジアミン;
35.ビスアミノフェノキシフェニルスルホン;
36.4,4’−イソプロピリデンジアニリン;
37.N,N−ビス−(4−アミノフェニル)メチルアミン;
38.N,N−ビス−(4−アミノフェニル)アニリン
39.3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル;
40.4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート;
41.2,4−ジアミノトルエン;
42.2,5−ジアミノトルエン;
43.2,6−ジアミノトルエン;
44.2,4−ジアミン−5−クロロトルエン;
45.2,4−ジアミン−6−クロロトルエン;
46.4−クロロ−1,2−フェニレンジアミン;
47.4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン;
48.2,4−ビス−(β−アミノ−t−ブチル)トルエン;
49.ビス−(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル;
50.p−ビス−2−(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン;
51.1−(4−アミノフェノキシ)−3−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン;
52.1−(4−アミノフェノキシ)−4−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン;
53.2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP);
54.ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS);
55.2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(m−BAPS);
56.4,4’−ビス−(アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB);
57.ビス−(4−[4−アミノフェノキシ]フェニル)エーテル(BAPE);
58.2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(6F ジアミン);
59.ビス(3−アミノフェニル)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルホスフィンオキシド
60.2,2’−ビス−(4−フェノキシアニリン)イソプロピリデン;
61.2,4,6−トリメチル−1,3−ジアミノベンゼン;
62.4,4’−ジアミノ−2,2’−トリフルオロメチルジフェニルオキシド;
63.3,3’−ジアミノ−5,5’−トリフルオロメチルジフェニルオキシド;
64.4,4’−トリフルオロメチル−2,2’−ジアミノビフェニル;
65.4,4’−オキシ−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
66.4,4’−オキシ−ビス−[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
67.4,4’−チオ−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼン−アミン];
68.4,4’−チオビス−[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
69.4,4’−スルホキシル−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
70.4,4’−スルホキシル−ビス−[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
71.4,4’−ケト−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
72.9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン;
73.1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン;
74.3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン;
75.3,3’−ジアミノジフェニルエーテル;
76.および類似物を含む。
【0035】
上記とともにまたは単独で使用される他の有用なジアミンは、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン(DMD)、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン(DDD)、1,16−ヘキサデカメチレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、イソホロンジアミン、およびそれらの組合せである。低温結合を実現する目的で、エーテル結合を含むジアミンおよび/または脂肪族官能基を含むジアミンが使用される。低温結合という用語は、約180、185、または190℃から約195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、および250℃の温度範囲で2つの材料を結合させることを意味するものである。
【0036】
本発明に従ってポリイミドベースのポリマー成分を形成するのに使用される有用な二無水物は、限定されないが、
1.ピロメリト酸二無水物(PMDA);
2.3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA);
3.3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA);
4.4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA);
5.3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA);
6.2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA);
7.4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA);
8.2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;
9.1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;
10.1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;
11.2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;
12.2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;
13.2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;
14.2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;
15.2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;
16.2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;
17.2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;
18.1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;
19.1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;
20.ビス−(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;
21.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;
22.4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物;
23.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物;
24.テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物;
25.ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物;
26.チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物;
27.フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物;
28.ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物;
29.ビス−1,3−イソベンゾフランジオン;
30.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエーテル二無水物;
31.ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物;
32.2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンズイミダゾール二無水物;
33.2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンゾオキサゾール二無水物;
34.2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンゾチアゾール二無水物;
35.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)2,5−オキサジアゾール1,3,4−二無水物;
36.ビス−2,5−(3’,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4−オキサジアゾール二無水物;
37.ビス−2,5−(3’,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4−オキサジアゾール二無水物;
38.5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物;
39.トリメリト酸無水物2,2−ビス(3’,4’−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;
40.1,2,3,4−シクロブタン二無水物;
41.2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物;
42.それらの酸エステルおよび酸ハロゲン化物エステル誘導体、
43.および類似物が挙げられる。
【0037】
二無水物およびジアミンは、特に所望される特性を有するポリイミドベースポリマーマトリックスを与えるように特に選択することができる。そうした有用な特性の1つは、ポリイミドベースポリマーマトリックスが特定のガラス転移温度(Tg)を有することである。有用なTgは、以下の数値、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、および100℃の任意の2つの間およびそれらを含むものであってよい。接着性が他の特性より重要でない場合、別の有用な範囲は、550、530、510、490、470、450、430、410、390、370、350、330、310、290、270、および250℃からである。ここで、本発明で有用な一部のジアミンとして、APB−134、APB−133、3,4’−ODA、BAPP、BAPE、BAPS、および多数の脂肪族ジアミン含んでもよい。したがって、二無水物およびジアミン成分の選択は、ポリマー結合剤の最終特性として具体的に所望されているものをカスタマイズするのに重要である。有用な二無水物の一部には、BPADA、DSDA、ODPA、BPDA、BTDA、6FDA、およびPMDA、またはそれらの混合物を含む。これらの二無水物は、市販品として容易に入手可能であり、一般に許容可能な性能を提供する。
【0038】
本発明の一実施形態では、分散剤を使用することによってポリマー成分、したがって複合シート内にフィラー成分が組み込まれるのを補助することができる。かかる一実施形態では、分散剤を有機溶媒または共溶媒混合物(または溶媒系)に加えることによって分散溶液を形成することができる。この分散溶液は、通常、以下の数値、0.1、0.5、1.0、2.0、4.0、5.0、10.0、15.0、および20.0重量%の分散溶液の任意の2つの間のいくつかの濃度の分散剤を含む。次いで、この分散溶液を使用することによって溶媒内にフィラー成分を(必要であれば、せん断力とともに)分散させることができる。
【0039】
一般的にいえば、熱伝導性フィラーが、ポリイミド前駆体材料(例えば、ポリアミン酸溶液)中に充分、分散可能であれば、フィラーは、ポリアミン酸溶液を形成する前、形成する間、または形成した後で分散させることができる。少なくとも、粘度が増加することによってポリマーマトリックス内へのフィラーの適切な分散が妨害されるポリイミドへのイミド化(すなわち、溶媒除去、およびポリアミン酸のポリイミドへの硬化)までは、このことは一般に正しい。
【0040】
本発明の一実施形態では、実施者がポリマーをその最終形態まで硬化させることを望む場合、複数の加熱セクションまたはゾーンを有する加熱系を使用することによって、プリプレグを形成するのに必要なプリプレグ複合シートまたはその成分を加工することが好ましい。ポリマー成分がポリイミドである場合、加熱最高温度を制御することによって、約200から600℃、より好ましくは、350から500℃のオーブン空気(または窒素)最高温度を与えることが一般に好ましい。硬化最高温度を上記の範囲内に調整することによって、良好な機械強度、接着特性、および熱寸法安定性を有するポリイミドにポリアミン酸を変換することが可能である。
【0041】
あるいは、加熱時間は変更する一方で、加熱温度を、200〜600℃の間に設定してもよい。硬化時間に関しては、本発明のポリイミドを約1、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50秒から約60、70、80、90、100、200、400、500、700、800、900、1000、1100、または1200秒の間(時間の長さは加熱温度によって決まる)、加熱最高温度に曝露することが好ましい場合がある。加熱温度は、速やか過ぎる乾燥によってフィルムにシワが付かないように段階的に変化させることができる。
【0042】
一般に、本発明の複合シートは、多様な応用および用途で使用することができる。そうした用途の1つは、複合シートが優れた熱伝導率を有する、すなわち、フィラー成分が、以下の数値、20、50、100、150、200、250、300、350、および400ワット/(メートルK)の任意の2つの間およびそれらを含む熱伝導率を有する無機粒子であり、複合シート層が、以下の数値、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、3.0、4.0、および5.0ワット/(メートルK)の任意の2つの間およびそれらを含む熱伝導率を有する場合である。
【0043】
本発明の複合シートは、使用することによって金属積層物を形成でき、または誘電層に良好な熱伝導率が要求される他のデザインにおける自立型シートとしても使用できる優れた誘電体であることができる。本発明の単一層金属クラッドは、通常、少なくとも1つの金属ホイルに接着された少なくとも1つの複合シートを含むことができる。これらのようなホイルは、限定されないが、銅、アルミニウム、ニッケル、鋼、または1つまたは複数のこれらの金属を含有する合金ホイルを含む金属から誘導される。ある場合では、複合シートは、金属に固く接着することができ、接着剤を使用しなくても、2ポンド/インチ超の剥離強度を有する。金属は、複合シートの一方または双方の側部に接着することができる。他の場合では、接着剤を使用して金属層に複合シートを積層することができる。金属ホイルに複合シートを結合するのに使用される普通の接着剤(接着剤が必要である場合)は、ポリイミドベース接着剤、アクリルベース接着剤、またはエポキシである。
【0044】
本明細書で使用される「導電層」および「導電ホイル」という用語は、金属層または金属ホイルであることを意味する。導電ホイルは通常金属ホイルである。金属ホイルは、純粋な形の元素として使用する必要はなく;ニッケル、クロム、鉄、および他の金属を含有する銅合金などの金属ホイル合金として使用してもよい。他の有用な金属は、限定されないが、銅、ニッケル、鋼、アルミニウム、黄銅、銅モリブデン合金、Kovar(登録商標)、Invar(登録商標)、バイメタル、トライメタル、2層の銅および1層のInvar(登録商標)から誘導されるトライメタル、ならびに2層の銅および1層のモリブデンから誘導されるトライメタルを含む。
【0045】
一般に、本発明の複合シートは、誘電材料の良好な熱伝導率が要求される電子デバイスにおける単一層ベース基材(誘電層)として有用である。かかる電子デバイスの例は(限定されないが)熱電モジュール、熱電クーラー、DC/ACおよびAC/DCインバータ、DC/DCおよびAC/ACコンバータ、電力増幅器、電圧調整器、イグナイター、発光ダイオード、ICパッケージなどを含む。
【実施例】
【0046】
「ナノフラッシュ」法を使用して、本発明の複合シートに対する熱伝導率を測定した。本明細書では、ナノフラッシュ法は、試料の表面を加熱し、読み取るために光学カップリングを使用することを指す(すなわち、インターフェース熱抵抗法を使用する必要性がない)。熱伝導率κ(W/m*K)は、κ=α×ρ×Cという関係から誘導される二次データである。熱拡散率α(mm/s)を比熱C(J/g*K)とともに測定する。円周25.4mmを有する試料をキセノン管フラッシュチューブパルスから一側部に対して均一に照射する。熱は、試料の反対側面で上昇し、その熱をInSb IR検出器を使用して時間の関数として測定する。分析では、Cowan+パルス補正法を使用することによって温度上昇曲線に可能なかぎり最もフィットさせる。本発明の試料では、約600Åの金を両側部上にスパッタリングすることによってランプフラッシュに対するIR検出器の盲板とした。次いで、その金スパッタリングフィルムの両側部上にグラファイトをスプレーすることによって熱反射を最小化し、熱吸収を最大化し、表面の均一性を増大させた。
【0047】
(実施例)
ポリマーAの調製
1リットルビーカーを使用して、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134)0.3モル(87.7g)をジメチルアセトアミド(DMAc)溶媒750mlに溶解させた。このビーカーを乾燥ボックスに入れ、充分攪拌された。
【0048】
4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)0.24モル(74.46g)とピロメリト酸二無水物(PMDA)0.06モル(13.08g)の混合物を二無水物混合物として調製した。この二無水物混合物の95%を15分かけてジアミン溶液にゆっくりと添加した。溶液の温度を40℃超まで上昇させた。このポリマー(A)の粘度は約50ポアズである。
【0049】
PMDAを加えることによって、ポリマーAの一部分(150g)の粘度を100ポアズまでさらに上昇させた。このポリマーを高多孔性で薄いKevlarまたはThermount紙にコートした。次いで、それを80℃で乾燥させ、ランプ速度5℃/分で最高350℃までの加熱プロファイルに従ってオーブン中で硬化させた。この複合シートを熱伝導率測定用の対照として使用した。熱可塑性ポリイミドを含む複合材もまた、350℃/350psiで銅ホイルとともに積層することによってフレキシブルプリント回路を作製するためのフレキシブル銅積層体を作製した。
【0050】
ポリマー(150g)の溶液Aの一部分を、窒化ホウ素、すなわち、HCPLグレードBN(30g;50%)と混合し、Silversionミキサーを使用して充分に分散させた。次いで、PMDA溶液をゆっくりと加えることによって、このポリマー粘度を100ポアズまで上昇させた。このスラリーをガラスプレート上にコートすることによって独立のフィルムを作製するか、またはガラスプレート上に支持された非常に薄いKevlar紙(Thermount)上にコート/含浸することによって複合材を作製いた。次いで、これをホットプレート上で乾燥させ(80℃で)、5℃/分の速度で温度が350℃に到達するまでオーブン中で硬化させた。この複合材をまた350℃/350psiで銅ホイルとともに積層することによって銅積層体を作製した。
【0051】
ポリマーBの調製
1リットルビーカーを使用して、4,4’−オキシジアニリン(ODA)0.015モル(3g)とパラ−フェニレンジアミン(PPD)0.285モル(30.8g)をジメチルアセトアミド(DMAc)溶媒510mlに溶解させた。このビーカーを乾燥ボックスに入れ、充分攪拌された。
【0052】
3,3’,4,4’−ビフェニル無水物(BPDA)0.264モル(77.7g)とピロメリト酸二無水物(PMDA)0.036モル(7.85g)の混合物を二無水物混合物として調製した。この二無水物混合物の95%を15分かけてジアミン溶液にゆっくりと添加した。溶液の温度を40℃超まで上昇させた。このポリマーBの粘度は約50ポアズである。
【0053】
PMDAを加えることによって、ポリマーBの一部分(150g)の粘度を100ポアズまでさらに上昇させた。このポリマーを高多孔性で薄いKevlarまたはThermount紙にコートした。次いで、それを80℃で乾燥させ、ランプ速度5℃/分で最高350℃までの加熱プロファイルに従ってオーブン中で硬化させた。この複合シートを熱伝導率測定用の対照として使用した。
【0054】
ポリマー(150g)の溶液Bの一部分を、窒化ホウ素、すなわち、HCPLグレードBN(90g;75%)と混合し、Silversionミキサーを使用して充分に分散させた。次いで、PMDA溶液をゆっくりと加えることによって、このポリマー粘度を100ポアズまで上昇させた。このスラリーをガラスプレート上にコートすることによって独立のフィルムを作製し、またはガラスプレート上に支持された非常に薄いKevlar紙(Thermount)上にコート/含浸することによって複合材を作製した。次いで、これをホットプレート上で(80℃で)乾燥させ、5℃/分の速度で温度が350℃に到達するまでオーブン中で硬化させた。
【0055】
ポリマー(150g)の溶液Bの一部分を、窒化ホウ素、すなわち、HCPLグレードBN(90g;75%)と混合し、Silversionミキサーを使用して充分に分散させた。次いで、PMDA溶液をゆっくりと加えることによって、このポリマー粘度を100ポアズまで上昇させた。このスラリーをガラスプレート上に支持された非常に薄いKevlar紙(Thermount)上にコート/含浸することによって複合材を作製した。次いで、BNを40%含む熱可塑性ポリアミン酸溶液の薄いコーティングを施した。このコーティングを乾燥させ、温度を最高350℃まで上昇させることによって硬化させた。このプロセスを反復することによって異なる充填濃度の窒化ホウ素を有する数種の複合材を作製した。
【0056】
複合シートを熱伝導率について試験した。ナノフラッシュ技法を使用してこの複合構造体の熱伝導率を測定した。熱伝導率は、フィラー充填濃度、フィラーの種類、複合材の厚さなどに応じて変化した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式;
−HN−R−NHOCRCO−
[式中、RおよびRは、置換または非置換いずれかの芳香族基を表す]
の反復単位を有するポリ(芳香族アミド)成分を含む複合シートであって、
ポリマー成分と熱伝導性フィラー成分とを含むポリマーマトリックスが含浸しており、熱伝導率が0.5〜5.0ワット/mKであることを特徴とする複合シート。
【請求項2】
ポリ(芳香族アミド)成分は、10〜75重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項3】
ポリ(芳香族アミド)成分は、アラミド繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項4】
ポリ(芳香族アミド)成分は、アラミド繊維を含み、その繊維の少なくとも50%は、長さ約3〜100mmを有することを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項5】
ポリ(芳香族アミド)成分は、p−フェニレンテレフタルアミド、p−フェニレンジフェニルエーテルテレフタルアミド、ポリ(m−ベンズアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(m,m’−フェニレンベンズアミド)、およびポリ(1,6−ナフチレンイソフタルアミド)からなる群から選択されるポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項6】
10〜150ミクロンの間の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項7】
ポリマー成分は、3〜30重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項8】
ポリマー成分は、ポリエステル(不飽和および飽和)、メラミン、ポリエステルアミド、ポリエステルアミドイミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズチアゾール、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、およびこれらのポリマーアロイからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項9】
ポリマー成分は、150と350℃の間のガラス転移温度を有するポリイミドであることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項10】
熱伝導性フィラーは、20〜80重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項11】
熱伝導性フィラーは、シート全体の40〜70重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項12】
熱伝導性フィラー成分は、約20と400ワット/mKの間の熱伝導度を有する無機粒子であることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項13】
熱伝導性フィラー成分は、酸化アルミニウム、シリカ、窒化ホウ素、顆粒アルミナ、フュームドアルミナ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素被覆酸化アルミニウム、窒化ホウ素被覆窒化アルミニウム、および酸化アルミニウム被覆窒化アルミニウムからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項14】
熱伝導性フィラー成分は、50から10,000ナノメートルの間の平均直径を有する無機粒子であることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項15】
単層または複層プリント配線板として有用であることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項16】
集積回路チップパッケージのコンポーネントとして有用であることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項17】
0.5と1.0ワット/mKの間の熱伝導度を有することを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項18】
10と25ppm/℃の間の熱膨張係数を有することを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項19】
少なくとも2つの請求項1に記載のシートを圧縮成形することによって作製されることを特徴とする多層シート。
【請求項20】
少なくとも1つの金属ホイルと少なくとも1つの請求項1に記載のシートとを含むことを特徴とする積層板。
【請求項21】
請求項19に記載の多層シートと少なくとも1つの金属ホイルとを含むことを特徴とする積層板。

【公開番号】特開2009−215532(P2009−215532A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−308828(P2008−308828)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】