説明

プリント配線板の製造方法

【課題】本発明は、絶縁信頼性に優れたプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】特定の多層構造からなる感光性ドライフィルムレジストを用いて、回路基板上に、絶縁保護層を形成する。上記感光性ドライフィルムレジストを上記回路基板上に積層し、該感光性ドライフィルムレジストに対して露光及びアルカリ現像を行う。その後、(a)Mgイオン又はCaイオンを含有する水溶液、又は、(b)酸性水溶液を用いて、該感光性ドライフィルムレジストを洗浄し、その後、加熱により硬化させる。これにより、絶縁安定性に優れるプリント配線板を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造方法に関するものであり、特に、絶縁信頼性に優れたプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化、小型化、軽量化に伴い、これら電子機器に用いられる電子部品に対しても、さらなる小型化、軽薄化が要求されている。そのため、プリント配線板上での半導体素子などの高密度実装や、配線の微細化、プリント配線板の多層化等を行うことにより、電子部品の高機能化や高性能化を図ることが求められている。また、配線の微細化に対応するためには、配線を保護する必要があるが、この配線の保護には、高い電気絶縁性を有する絶縁材料が用いられる。該絶縁材料としては、例えば、感光性材料が用いられている。このような感光性材料は、プリント配線板において、プリント配線板表面やパターン回路を保護するための保護層の形成、多層プリント配線板の層間絶縁層の形成に加えて、プリント配線板の基板上へのパターン化された回路(パターン回路)の形成など種々の用途に用いられている。
【0003】
従来、プリント配線板表面やパターン回路を保護するために感光性材料を用いて保護層を形成する場合、可撓性のあるフレキシブルプリント配線板(Flexible Print Circuit Board、以下、「FPC」ともいう)の表面に、カバーレイフィルムと呼ばれる感光性の高分子フィルムが貼り合わされる。この際、主としてエポキシ系やアクリル系等の接着剤を用いて貼り合わされる。このような接着剤を用いると、カバーレイフィルムとして用いられている高分子フィルムの性能を充分活かすことができず、得られるプリント配線板の(1)半田耐熱性や高温時の接着強度などが低い、(2)可撓性に乏しい等の問題がある。
【0004】
さらに、カバーレイフィルムを、FPC上の正しい位置に貼り合わせるための位置合わせは、ほとんど手作業に近い。そのため、作業性及び位置精度が悪く、またコストがかかるという問題がある。
【0005】
そこで、プリント配線板の品質向上、作業性の向上、及び位置精度の向上を図る技術の開発が進められている。そのような技術としては、例えば、感光性樹脂組成物の溶液をFPCの導体面に塗布・乾燥し保護層を形成する方法、フィルム状感光性ドライフィルムレジスト(感光性カバーレイフィルムとも呼ばれる)を積層する方法等が挙げられる。
【0006】
上記フィルム状感光性材料は、液状の感光性材料に比べて、膜厚の均一性や作業性に優れている。そのため、フィルム状感光性材料は、プリント配線板の基板上へのパターン回路の形成に用いるパターン回路用レジストフィルム(パターン回路の形成に用いる感光性ドライフィルムレジスト)、プリント配線板表面やパターン回路の保護層の形成に用いる感光性カバーレイフィルム、及び多層プリント配線板の層間絶縁層の形成に用いる感光性ドライフィルムレジストとして、幅広い用途に用いられている。
【0007】
感光性ドライフィルムレジストを用いて、プリント配線板に絶縁保護層を形成する場合、例えば、まず、該感光性ドライフィルムレジストを、回路基板上に、ラミネート等により積層する。続いて、該感光性ドライフィルムレジストを露光し、その後、現像及び洗浄を行う。そして、最後に、該感光性ドライフィルムレジストを加熱することにより、該感光性ドライフィルムレジストを硬化させる。こうして、プリント配線板に絶縁保護層が形成される。
【0008】
上記感光性ドライフィルムレジストの現像では、一般的に現像液として、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムといったアルカリが用いられる。これらの現像液に含まれるNaイオンやKイオンが最終的に絶縁保護層(レジスト)表面に残存すると、高温高湿下での絶縁信頼性が低下するという問題がある。そのため、上記のように、現像後に洗浄を行うことによって、NaイオンやKイオンを除去する。ここで、NaイオンやKイオンを効率よく除去するために、様々な技術が開発されている(特許文献1〜4を参照)。
【0009】
具体的には、特許文献1には、感光性ポリイミド樹脂を用いて基板上に形成された塗膜を露光、アルカリ現像した後、25℃の水溶液中で測定した酸解離指数pKaが5.0以下の酸性化合物を含有する水溶液からなるリンス液を用いて洗浄することが記載されている。さらに、上記リンス液は、酸性化合物の濃度が0.005〜10.0Mの範囲であること、非プロトン性極性溶媒を0.01〜30重量%の範囲でさらに含有することが記載されている。また、これにより、処理工程中の剥離を抑制しつつ、熱処理によりイミド化したポリイミド膜の物性を回復することができ、金属薄膜との間の密着力も回復することができることが記載されている。
【0010】
また、特許文献2には、導体パターンの表面に塗布した液体レジストを露光し、アルカリ現像した後、Caイオン濃度を17〜20mg/Lにした水洗用液を用いて水洗することが記載されている。また、上記水洗用液は、イオン交換による純水にCaCl2 を添加して作製されることが記載されている。
【0011】
特許文献3には、永久マスクレジストの製造法において、基板上の感光性樹脂組成物の層に、活性光線を照射し、ついで現像し、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンを混合又は溶解させてなる水洗液で水洗することが記載されている。
【0012】
さらに、特許文献4には、回路配線パターンの表面保護層として感光性絶縁樹脂を塗布又はラミネートした後、露光、現像、水洗、硬化処理により表面保護層を形成する工程に於いて、現像後の水洗工程に於ける水洗水に、Caイオン又はMgイオンより選ばれる少なくとも1種を50ppm〜500ppm含ませることが記載されている。
【特許文献1】特開平11−352701号公報(平成11(1999)年12月24日公開)
【特許文献2】特開2000−208904号公報(平成12(2000)年7月28日公開)
【特許文献3】特開2002−162739号公報(平成14(2002)年6月7日公開)
【特許文献4】特開2002−305368号公報(平成14(2002)年10月18日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1〜4の技術は、アルカリ現像後の洗浄に用いるリンス液のみの改良であるため、絶縁信頼性の低下をある程度防止することはできるが、実用上、十分とはいえない。具体的には、従来の感光性ドライフィルムレジストはそれ自体の絶縁信頼性が低く、上記リンス液の改良のみでは、レジストの絶縁信頼性を十分に向上させることはできない。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、絶縁信頼性に優れたプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の多層構造からなる感光性ドライフィルムレジストを用いて回路基板上に絶縁保護層を形成し、かつ、該絶縁保護層の形成時において、該感光性ドライフィルムレジストのアルカリ現像の洗浄を、MgイオンもしくはCaイオンを含有する水溶液、又は酸性水溶液を用いて行うことにより、絶縁信頼性に優れるプリント配線板を製造できることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の産業上有用な発明を包含する。
【0016】
(1)感光性ドライフィルムレジストを用いて形成された絶縁保護層を備えているプリント配線板の製造方法において、上記感光性ドライフィルムレジストは、(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、及び(D1)難燃剤を必須成分として含有する第1感光層と、(A2)バインダーポリマー、及び(B2)(メタ)アクリル系化合物を必須成分として含有する第2感光層と、を含む多層構造からなり、上記第2感光層の全重量に対する(D2)難燃剤の割合は、0重量%〜10重量%であり、かつ、該(D2)難燃剤の割合は、第1感光層の全重量に対する(D1)難燃剤の割合の0%〜50%以下であって、上記第2感光層が回路面に接するように、上記感光性ドライフィルムレジストを回路基板上に積層し、該感光性ドライフィルムレジストに対して、露光及びアルカリ現像を行った後、(a)Mgイオン又はCaイオンを10ppm〜1000ppm含有する水溶液、又は(b)酸性水溶液を用いて、該感光性ドライフィルムレジストを洗浄することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0017】
(2)上記Mgイオン又はCaイオンを10ppm〜1000ppm含有する水溶液は、硫酸マグネシウム水溶液、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム水溶液、塩化カルシウム水溶液水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、及び水酸化カルシウム水溶液からなる群より選択されることを特徴とする(1)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0018】
(3)上記酸性水溶液は、0.001M〜10Mの酸性化合物を含有することを特徴とすることを特徴とする(1)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0019】
(4)上記酸性水溶液は、25℃におけるpKが7.0以下の酸性化合物を含有することを特徴とする(3)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0020】
(5)上記酸性化合物は、塩酸、硫酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、及び乳酸からなる群より選択されることを特徴とする(3)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0021】
(6)上記第2感光層は、(C2)光反応開始剤を必須成分としてさらに含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【0022】
(7)上記(D1)難燃剤及び/又は(D2)難燃剤がリン系化合物であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【0023】
(8)上記(A1)バインダーポリマー及び/又は(A2)バインダーポリマーは、カルボキシル基含有ビニル系ポリマーを含んでいることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【0024】
(9)上記(A1)バインダーポリマー及び/又は(A2)バインダーポリマーは、ポリアミド酸を含んでいることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【0025】
(10)上記ポリアミド酸は、下記一般式(1)
【0026】
【化1】

(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
で表されるポリシロキサンジアミンを原料の一部として用いたポリアミド酸であることを特徴とする(9)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0027】
(11)上記ポリアミド酸は、下記一般式(2)
【0028】
【化2】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rはそれぞれ独立して、炭素数2〜5のアルキレン基を示し、Rはそれぞれ独立して、メチル基又はフェニル基を示し、R中のフェニル基の含有率が15%〜40%であり、且つ、mは4〜20の整数である。)
で表される構成単位と、下記一般式(3)
【0029】
【化3】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、芳香族ジアミンから2個のアミノ基を除いた2価の有機基を示す。)
で表される構成単位とからなるポリアミド酸であることを特徴とする(9)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0030】
(12)上記ポリアミド酸は、下記一般式(4)
【0031】
【化4】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、下記化学式群(5)
【0032】
【化5】

で表されるa、b、c、d、e、f又はgであり、化学式a中、mは1〜20のいずれかの整数を、nは0〜10のいずれかの整数を示し、化学式f中、Rは水素原子、メチル基、エチル基又はブチル基を示す。)
で表される構成単位をさらに有することを特徴とする(11)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0033】
(13)上記ポリアミド酸は、下記一般式(4)
【0034】
【化6】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、下記化学式群(5)
【0035】
【化7】

で表されるa、b、c、d、e、f又はgであり、化学式a中、mは1〜20のいずれかの整数を、nは0〜10のいずれかの整数を示し、化学式f中、Rは水素原子、メチル基、エチル基又はブチル基を示す。)
で表される構成単位と、下記一般式(3)
【0036】
【化8】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、芳香族ジアミンから2個のアミノ基を除いた2価の有機基を示す。)
で表される構成単位とからなるポリアミド酸であることを特徴とする(9)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0037】
(14)上記一般式(3)で表される構成単位は、上記一般式(3)中、Rの2価の有機基において、上記2個のアミノ基が結合していた芳香環の少なくともひとつが、メタ位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している構成単位を含むことを特徴とする(11)〜(13)のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【0038】
(15)上記一般式(3)中、Rの2価の有機基は、m−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノベンズアニリド、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、及び2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパンからなる群より選択される芳香族ジアミンから、2個のアミノ基を除いた2価の有機基であることを特徴とする(11)〜(14)のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【0039】
(16)上記(A1)バインダーポリマー及び/又は(A2)バインダーポリマーは、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドを含んでいることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【0040】
(17)上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドは、下記一般式(1)
【0041】
【化9】

(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
で表されるポリシロキサンジアミンを原料の一部として用いたカルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドであることを特徴とする(16)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0042】
(18)第1感光層の厚みを100とした場合、第2感光層の厚みは、500以下であることを特徴とする(1)〜(17)のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【0043】
(19)上記感光性ドライフィルムレジストの洗浄後、該感光性ドライフィルムレジストを180℃以下の温度で硬化させることを特徴とする(1)〜(18)のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0044】
本発明にかかるプリント配線板の製造方法は、絶縁保護層を形成する感光性ドライフィルムレジストとして、(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、及び(D1)難燃剤を必須成分として含有する第1感光層と、(A2)バインダーポリマー、及び(B2)(メタ)アクリル系化合物を必須成分として含有する第2感光層とを含む多層構造からなる感光性ドライフィルムレジストを用いる。さらに、該感光性ドライフィルムレジストは、上記第2感光層の全重量に対する(D2)難燃剤の割合が0重量%〜10重量%であり、かつ、該(D2)難燃剤の割合が、第1感光層の全重量に対する(D1)難燃剤の割合の0%〜50%以下である。このような感光性ドライフィルムレジストの第2感光層が回路面に接するように、上記感光性ドライフィルムレジストを回路基板上に積層する。続いて、該感光性ドライフィルムレジストに対して、露光及びアルカリ現像を行った後、Mgイオン又はCaイオンを10ppm〜1000ppm含有する水溶液又は酸性水溶液を用いて、感光性ドライフィルムレジストを洗浄する。したがって、上記アルカリ現像の現像液に含まれるNaイオンやKイオンが効率よく除去される。それゆえ、絶縁信頼性に優れるプリント配線板を製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明にかかる一実施形態について具体的に説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
<I.プリント配線板の製造方法>
本発明にかかるプリント配線板の製造方法は、感光性ドライフィルムレジストを用いて形成された絶縁保護層を備えているプリント配線板の製造方法である。具体的には、感光性ドライフィルムレジストを、回路基板上に積層する工程(以下、「積層工程」ともいう)と、積層工程後、上記感光性ドライフィルムレジストに対して、露光及びアルカリ現像を行う工程(以下、「露光・現像工程」ともいう)と、露光・現像工程後、(a)Mgイオン又はCaイオンを含有する水溶液又は(b)酸性水溶液を用いて、上記感光性ドライフィルムレジストを洗浄する工程(以下、「洗浄工程」ともいう)とを含む。本発明にかかるプリント配線板の製造方法は、上記感光性ドライフィルムレジストを製造する工程(以下、「感光性ドライフィルムレジスト製造工程」ともいう)、及び/又は、上記洗浄工程後、感光性ドライフィルムレジストを加熱し、硬化させる工程(以下、「加熱硬化工程」ともいう)を含んでいてもよい。
【0047】
以下、感光性ドライフィルムレジスト製造工程、積層工程、露光・現像工程、洗浄工程、及び加熱硬化工程について、詳細に説明する。
【0048】
(I−1)感光性ドライフィルムレジスト製造工程
上記感光性ドライフィルムレジスト製造工程では、本発明にかかるプリント配線板の製造方法において、プリント配線板の絶縁保護層を形成するために用いる感光性ドライフィルムレジストを製造する。ここでは、まず、上記感光性ドライフィルムレジストの構造について説明し、その後、該感光性ドライフィルムレジストの具体的な製造方法について説明する。
【0049】
(I−1−1)感光性ドライフィルムレジストの構造
上記感光性ドライフィルムレジストは、(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、及び(D1)難燃剤を必須成分として含有する第1感光層と、(A2)バインダーポリマー、及び(B2)(メタ)アクリル系化合物を必須成分として含有する第2感光層と、を含む多層構造からなる。上記第1感光層及び第2感光層は、それぞれ、上記成分に加えて、必要に応じて、(E1)及び(E2)として、その他の成分を含有していてもよい。
【0050】
また、上記第2感光層は、(D2)難燃剤を含有していてもよいが、実質的には含有しないことが好ましい。具体的には、上記第2感光層の全重量に対する(D2)難燃剤の割合は、0重量%〜10重量%、好ましくは0重量%〜5重量%、より好ましくは0重量%〜1重量%である。さらに、該(D2)難燃剤の割合は、第1感光層の全重量に対する(D1)難燃剤の割合の0%〜50%以下であることが好ましい。これにより、感光性ドライフィルムレジストの耐湿性、絶縁信頼性を高めることができる。すなわち、耐湿性、絶縁信頼性に優れるプリント配線板を製造することができる。さらに、上記構成によれば、感光性ドライフィルムレジストを回路基板に貼り合せる際、回路面に接する第2感光層がアルカリ溶解性に優れる。そのため、アルカリ現像時に残渣が発生しにくくなり、現像性、解像度をより高めることができる。そのため、絶縁信頼性の低下、アルカリ溶解性の低下、残渣の発生を防止することができる。なお、残渣は、相互作用の強い基材との界面で発生する場合が多い。したがって、基材に接する第2感光層のアルカリ溶解性が優れていれば、第1感光層のアルカリ溶解性が劣っていても、残渣は発生しにくくなる。
【0051】
上記感光性ドライフィルムレジストでは、上記第1感光層における(A1)バインダーポリマーの含有量は、第1感光層の全重量に対して、10重量%〜90重量%であることが好ましく、20重量%〜85重量%であることがより好ましく、25重量%〜80重量%であることがさらに好ましい。同様に、上記第2感光層おける(A2)バインダーポリマーの含有量は、第2感光層の全重量に対して、10重量%〜90重量%であることが好ましく、20重量%〜85重量%であることがより好ましく、25重量%〜80重量%であることがさらに好ましい。このように、上記第1感光層及び第2感光層におけるバインダーポリマーの含有量が10重量%以上であることにより、第1感光層及び第2感光層の耐熱性を向上させることができる。また、該含有量が90重量%以下であることにより、基材に対する低温での圧着を可能にすることができる。
【0052】
また、上記第1感光層における(B1)(メタ)アクリル系化合物の含有量は、上記(A1)バインダーポリマー100重量部に対して、1重量部〜400重量部であることが好ましく、3重量部〜300重量部であることがさらに好ましい。同様に、上記第2感光層における(B2)(メタ)アクリル系化合物の含有量は、上記(A2)バインダーポリマー100重量部に対して、1重量部〜400重量部であることが好ましく、3重量部〜300重量部であることがさらに好ましい。上記第1感光層及び第2感光層における(メタ)アクリル系化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、第1感光層及び第2感光層を、従来のものに比べて、低温で効果的にイミド化することができる。
【0053】
また、上記第1感光層及び第2感光層において、(C1)光反応開始剤及び(C2)光反応開始剤の含有量は特に限定されるものではなく、増感効果が得られ、かつ現像性に悪影響を及ぼさない範囲で配合すればよい。具体的には、上記第1感光層における(C1)光反応開始剤の含有量は、上記(A1)バインダーポリマー100重量部に対して、0.01重量部〜50重量部であることが好ましい。同様に、上記第2感光層における(C2)光反応開始剤の含有量は、(A2)バインダーポリマー100重量部に対して、0.01重量部〜50重量部であることが好ましい。
【0054】
なお、第1感光層における光反応開始剤の含有量が上記範囲内であれば、第2感光層が(C2)光反応開始剤を含有しない構成としても、一定の解像度及び感光能を有する感光性ドライフィルムレジストを形成することができる。それゆえ、別の実施形態として、第2感光層が実質的に(C2)光反応開始剤を含有しない構成とすることもできる。ここで「第2感光層が実質的に(C2)光反応開始剤を含有しない」とは、第2感光層において、(C2)光反応開始剤を全く含有しないか、含有してもわずかな量であることが意図される。具体的には、第2感光層において、(C2)光反応開始剤の含有量が、上記(A2)バインダーポリマー100重量部に対して、0重量部〜0.01重量部であることが意図される。
【0055】
さらに、上記第1感光層において、(D1)難燃剤の含有量は、特に限定されるものではなく、用いる難燃剤の種類に応じて適宜選択すればよい。具体的には、上記第1感光層における(D1)難燃剤の含有量は、上記(A1)バインダーポリマー及び(B1)(メタ)アクリル系化合物の合計量を100重量部としたときに、1重量部〜50重量部であることが好ましく、5重量部〜40重量部であることがより好ましく、10重量部〜40重量部であることがさらに好ましく、10重量部〜30重量部であることが最も好ましい。第1感光層における難燃剤の含有率が1重量部未満であると、十分な難燃効果が得られない場合がある。一方、該含有量が50重量部を超えると硬化物の物性、例えば、硬化後の感光性ドライフィルムレジストの機械特性に悪影響を与える場合がある。しかし、上記範囲内とすれば、硬化後の感光性ドライフィルムレジストの機械特性に悪影響を与えることなく、十分な難燃性を付与することができる。なお、上記第2感光層は、上述したように、(D2)難燃剤を含有してもよいが、実質的に含有しないことが好ましい。
【0056】
上記感光性ドライフィルムレジストは、上記の条件を満足する範囲であれば、その具体的な層構造や化学組成は特に限定されるものではない。すなわち、上記感光性ドライフィルムレジストは、二層構造であってもよいし、三層構造以上の多層構造であってもよい。
【0057】
上記感光性ドライフィルムレジストの厚みは、特に限定されるものではないが、一般的には、5μm〜75μmであることが好ましく、10μm〜60μmであることがより好ましい。上記感光性ドライフィルムレジストの厚みが、5μm未満であると銅等の導体配線を被覆できない場合がある。一方、上記感光性ドライフィルムレジストの厚みが、75μmより大きいと感光能が低下する場合がある。しかし、上記範囲内であれば、銅等の導体配線を確実に被覆することができる上、感光能が低下することもない。
【0058】
また、上記第2感光層の厚みは、第1感光層の厚みを100とした場合、10〜500であることが好ましく、20〜400であることがより好ましく、50〜300であることがさらに好ましい。第1感光層の厚みを100とした場合、第2感光層の厚みが500より大きいと、上記感光性ドライフィルムレジストの難燃性が低下する傾向がある。一方、第1感光層の厚みを100とした場合、第2感光層の厚みが10より小さいと絶縁信頼性が低下する傾向がある。したがって、上記構成によれば、難燃性及び絶縁信頼性に優れる感光性ドライフィルムレジストとすることができる。
【0059】
第1感光層の厚みを100とした場合、第2感光層の厚みが500より大きいと感光性ドライフィルムレジストの難燃性が低下してしまう場合がある。また、第1感光層の厚みを100とした場合、第2感光層の厚みが10より小さいと絶縁信頼性が低下する傾向にある。しかし、上記範囲内であれば、感光性ドライフィルムレジストの難燃性及び絶縁信頼性ともに良好なものとすることができる。
【0060】
ここで、上記第1感光層及び第2感光層に含有されるバインターポリマー、(メタ)アクリル系化合物、光反応開始剤、難燃剤、及びその他の成分について、具体的に説明する。
【0061】
(1)バインダーポリマー
本明細書において、「バインダーポリマー」とは、感光性ドライフィルムレジストを形成するために用いられる感光性樹脂組成物中に、フィルム形成能を付与するために配合されるポリマー成分が意図される。なお、本発明において、ポリマー成分とは、重量平均分子量が5,000以上のオリゴマー、ポリマー成分を指す。なお、上記重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
【0062】
上記バインダーポリマーは、特に限定されないが、水系現像を可能とするために、アルカリ水溶液に可溶、又は膨潤可能であることが望ましい。具体的には、ポリマー鎖中にカルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性官能基を含有することが好ましい。酸性官能基を有するバインダーポリマーとしては、カルボキシル基含有ビニル系ポリマー、ポリアミド酸、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドを挙げることができる。
【0063】
上記バインダーポリマーのうち、カルボキシル基含有ビニルポリマーによれば、感光性ドライフィルムレジストを、柔軟性、アルカリ溶解性に優れた感光性ドライフィルムレジストとすることができる。さらに、このようなカルボキシル基含有ビニルポリマーは、製造が容易であるため、感光性ドライフィルムレジストを低コストで製造することを可能にする。また、上記ポリアミド酸によれば、感光性ドライフィルムレジストを、全体として、水系現像性、難燃性、密着性、耐湿性、絶縁信頼性、半田耐熱性などの特性を優れたものとすることができる。さらに、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドによれば、感光性ドライフィルムレジストに難燃性、耐熱性を付与することができる。さらに、このような可溶性ポリイミドは、既にイミド化されているため、加熱キュアの温度を低く設定したり、時間を短く設定したりすることが可能である。それゆえ、本発明にかかるプリント配線板の製造方法において、プリント配線板の生産性を向上させることができる。
【0064】
これらの酸性官能基を有するバインダーポリマーは、単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、本発明において、第1感光層に含有される(A1)バインダーポリマーと第2感光層に含有される(A2)バインダーポリマーとは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
以下、上記感光性ドライフィルムレジストに含有されるバインダーポリマーとして、カルボキシル基含有ビニル系ポリマー、ポリアミド酸、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドについて説明する。なお、上記感光性ドライフィルムレジストに含まれるバインダーポリマーはこれらに限定されるものではない。
【0066】
〔カルボキシル基含有ビニル系ポリマー〕
上記カルボキシル基含有ビニル系ポリマーは特に限定されるものではなく、カルボキシル基含有モノマーと、該カルボキシル基含有モノマーと共重合可能なモノマーとが共重合したものであればあらゆるものを用いることができる。
【0067】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、ビニル安息香酸、桂皮酸、プロピオール酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸無水物、フタル酸無水物等が挙げられる。中でも、コスト、重合性などの観点から、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0068】
上記カルボキシル基含有モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコール類、スチレン、スチレン誘導体等が挙げられる。中でも、重合性、可とう性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、スチレン誘導体を用いることが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0069】
また、上記カルボキシル基含有ビニル系ポリマーにおいて、カルボキシル基含有モノマーの含有率は特に限定されないが、具体的には、5モル%〜50モル%であることが好ましく、15モル%〜40モル%であることがより好ましい。該含有率が5モル%未満では、アルカリ水溶液への溶解性が劣る傾向があり、50モル%より大きいと、アルカリ水溶液への耐性が劣る場合がある。なお、カルボキシル基含有モノマーの含有率は、使用する全モノマーに対するカルボキシル基含有モノマーの割合のことを指す。
【0070】
また、上記カルボキシル基含有ビニル系ポリマーの重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、5000〜300000であることが好ましく、10000〜200000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、感光性ドライフィルムレジスト3にベタツキが生じやすく、さらに硬化後のフィルムの耐屈曲性に劣るという傾向がある。一方、重量平均分子量が300000より大きいと、製造された感光性ドライフィルムレジストの現像性が低下する場合がある。なお、上記重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
【0071】
〔ポリアミド酸〕
上記ポリアミド酸は、有機溶媒中で、酸二無水物とジアミンとを反応させて得られる化合物である。上記ポリアミド酸の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、2000〜1000000であることが好ましく、5000〜300000であることがより好ましく、10000〜200000であることがさらに好ましい。上記ポリアミド酸の重量平均分子量を2000以上とすれば、感光性ドライフィルムレジストの強度が低下することはない。また、重量平均分子量を5000以上とすれば、感光性ドライフィルムレジストにベタツキが生じたり、硬化後のフィルムの耐屈曲性が劣ったりすることがない。一方、重量平均分子量を1000000以下とすれば、感光性ドライフィルムレジストの現像時間が長くなるのを抑制することができる。さらに、重量平均分子量を300000以下とすれば、溶液粘度が高くなりすぎ、取扱いが難しくなったり、製造された感光性ドライフィルムレジストの現像性が低下したりすることがない。なお、上記重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
【0072】
上記第1感光層及び第2感光層に含有させるポリアミド酸の構造について、より具体的にすると、ジアミンとして、下記一般式(1)
【0073】
【化10】

(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
で表されるポリシロキサンジアミンを原料の少なくとも一部として用いたポリアミド酸を用いることが好ましい。このようなポリアミド酸は、感光性ドライフィルムレジストの柔軟性、密着性、可とう性を向上させることができる。それゆえ、現像性、解像度、難燃性、密着性、耐湿性、絶縁信頼性に優れると共に、低反り性をも有する感光性ドライフィルムレジストを実現することができる。
【0074】
さらに、一定の構造を有するポリシロキサンジアミンを原料とするポリアミド酸を用いることにより、ポリイミド自体の難燃性を向上させると共に、低いイミド化温度を実現できる。このようなポリアミド酸を用いれば、水系現像液による現像性;優れた解像度、難燃性、密着性、耐湿性、絶縁信頼性、及び、低反り性;及び低いイミド化温度のすべてを満たす感光性ドライフィルムレジストを実現することができる。
【0075】
このように、上記感光性ドライフィルムレジストに含有されるポリアミド酸は、難燃性と柔軟性とのバランスがとれたポリアミド酸であることが好ましい。具体的には、下記一般式(2)
【0076】
【化11】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rはそれぞれ独立して、炭素数2〜5のアルキレン基を示し、Rはそれぞれ独立して、メチル基又はフェニル基を示し、R中のフェニル基の含有率が15%〜40%であり、且つ、mは4〜20の整数である。)
で表される構成単位と、
下記一般式(3)
【0077】
【化12】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、芳香族ジアミンから2個のアミノ基を除いた2価の有機基を示す。)
で表される構成単位と、からなるポリアミド酸であることが非常に好ましい。
【0078】
このようなポリアミド酸を含有させることにより、水系現像が可能で、解像度、難燃性、密着性、耐湿性、絶縁信頼性、及び、低反り性に優れた感光性ドライフィルムレジストとすることができる。
【0079】
一般式(2)中、Rは特に限定されるものではなく、4価の有機基であればよいが、単環式の芳香族基、縮合多環式の芳香族基、及びこれらの芳香族基の2個以上が直接又は連結基により連結された基から選択される炭素数6〜50の4価の芳香族基であることがより好ましい。Rとしては、具体的には、例えば、後述する酸二無水物から、2つの−CO−O−CO−を除いた残基を挙げることができる。なお、Rは一般式(2)で表される構成単位ごとに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0080】
一般式(2)中、Rは、それぞれ独立して炭素数2〜5のアルキレン基であればよい。具体的には、Rは、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基又はペンタメチレン基である。
【0081】
また、一般式(2)中、Rはそれぞれ独立して、メチル基又はフェニル基である。なお、R中のメチル基は、得られるポリアミド酸、これを含む感光性ドライフィルムレジスト、及びそのイミド化物(以下、これら3つを総称して、「ポリアミド酸等」ともいう)の性能に好ましくない影響を与えない限り、その一部がエチル基やプロピル基で置換されていてもよい。ここで、R中のフェニル基の含有率は15%〜40%であることが好ましく、18%〜38%であることがより好ましく、20%〜35%であることがさらに好ましい。R中のフェニル基の含有率を15%以上とすることにより、ポリアミド酸等の難燃性をより向上させることができる。一方、フェニル基の含有率が40%より大きいと、得られるポリアミド酸等の柔軟性・低反り性が低下する傾向があるが、40%以下とすることにより、得られるポリアミド酸等の柔軟性・低反り性が低下することはない。したがって、上記フェニル基の含有率を上記範囲内とすることにより、より反りが小さく可撓性・屈曲性・絶縁信頼性・感光性に優れ、難燃性を有する感光性ドライフィルムレジストを実現することができる。
【0082】
また、上記構成によれば、難燃性が向上するため、従来のポリシロキサンジアミンを用いて得られるポリアミド酸を用いた感光性ドライフィルムレジストと比較して、難燃剤の含有量を低減することができる。それゆえ、難燃性、耐湿性、絶縁信頼性の点でより優れた感光性ドライフィルムレジストを得ることができる。
【0083】
なお、ここで、フェニル基の含有率とは、R中に含まれるフェニル基のモル分率をいい、下記式で表される。
フェニル基の含有率(%)=(R中のフェニル基のモル数)÷(R中のフェニル基のモル数+R中のメチル基のモル数)×100
また、R中のメチル基の含有率は60%〜85%であることが好ましく、62%〜82%であることがより好ましく、65%〜80%であることがさらに好ましい。R中のメチル基の含有率を60%以上とすることにより、得られるポリアミド酸等の柔軟性・低反り性をより向上させることができる。一方、メチル基の含有率が85%より大きいと、得られるポリアミド酸等の難燃性が低下する傾向にあるが、85%以下とすれば、そのような難燃性の低下が起こることはない。
【0084】
また、一般式(2)中、シロキサン結合の繰り返し単位数mは、4〜20、好ましくは4〜18、より好ましくは5〜15の整数である。mを4以上とすれば、得られるポリアミド酸等の柔軟性・低反り性をより向上させることができる。一方、mが20より大きいと、得られるポリアミド酸等においてポリシロキサン部位が凝集し、凝集したドメインが可視光の波長以上になり光を乱反射して白化し、感光能が低下する場合がある。また、ポリシロキサンのみの大きなドメインができると難燃性が低下する場合がある。しかし、mを20以下とすれば、そのような問題が起こることはない。したがって、mを上記範囲内とすれば、反りが小さく可撓性・屈曲性・絶縁信頼性・感光性に優れ、難燃性を有する感光性ドライフィルムレジストを実現することができる。
【0085】
また、一般式(3)中、Rは特に限定されるものではなく、4価の有機基であればよいが、単環式の芳香族基、縮合多環式の芳香族基、及びこれらの芳香族基の2個以上が直接又は連結基により連結された基から選択される炭素数6〜50の4価の芳香族基であることがより好ましい。Rとしては、具体的には、例えば、後述する酸二無水物から、2つの−CO−O−CO−を除いた残基を挙げることができる。なお、Rは一般式(3)で表される構成単位ごとに同一であってもよいし異なっていてもよい。また、一般式(2)中のRと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0086】
また、一般式(3)中、Rは、特に限定されるものではなく、芳香族ジアミンから2個のアミノ基を除いた2価の有機基であればよい。なお、ここで、芳香族ジアミンとは、芳香環に直接結合したアミノ基を2個有する化合物をいう。中でも、Rは、単環式の芳香族基、縮合多環式の芳香族基、及びこれらの芳香族基の2個以上が直接又は連結基により連結された基から選択される炭素数6〜50の2価の芳香族基であることがより好ましい。なお、Rは一般式(3)で表される構成単位ごとに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0087】
上記一般式(3)で表される構成単位は、上記一般式(3)中、Rにおける、上記芳香族ジアミンの上記2個のアミノ酸が結合していた芳香環の少なくともひとつが、メタ位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している構成単位を含むことがより好ましい。このような構成単位とは、例えば、上記芳香族ジアミンがフェニレンジアミンである場合は、2個のアミノ基が結合していた単一のベンゼン環が、メタ位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している構成単位である。すなわち、このような場合は、上記芳香族ジアミンがm−フェニレンジアミンであり、Rはm−フェニレンジアミンから、2個のアミノ基を除いた2価のm−フェニレン基である。
【0088】
また、例えば、上記芳香族ジアミンがジアミノジフェニルメタンである場合は、2個のアミノ基それぞれ結合していた2個のベンゼン環のうち少なくとも1個が、メタ位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している構成単位である。すなわち、このような場合は、上記芳香族ジアミンが3,3’−又は3,4’−ジアミノジフェニルメタンであり、Rは3,3’−又は3,4’−ジアミノジフェニルメタンから、2個のアミノ基を除いた2価の基である。
【0089】
これにより、ポリアミド酸等のイミド化温度を低下させることが可能となる。具体的には、180℃以下の加熱で95%以上のイミド化率となるポリアミド酸を得ることができる。
【0090】
従来の感光性ポリイミドは、主に半導体用途に検討されていたものである。半導体用途では、イミド化の温度が高温でも問題がない。そのため、イミド化温度を低くすることについて検討は行われてこなかった。つまり、従来の感光性ポリイミドは、ポリアミド酸の状態で露光・現像したのち、通常、300℃以上の温度でイミド化することによって得られるものである。このような高温でイミド化する感光性ポリイミドを、FPCの感光性ドライフィルムレジストとして用いると、FPC自体に、250℃以上の熱を加えることになる。一般に、リジット及びフレキシブルプリント基板の構成材としては、エポキシ樹脂等が用いられるが、これらの樹脂は、ポリイミドより耐熱性が低く、200℃以下の耐熱性しかもたない。そのため、300℃以上の高温で硬化させる、従来の感光性ポリイミドをFPC用途に用いると、高温により、銅箔の酸化や、銅の結晶構造変化が起こり、銅箔の強度が低下するという問題が起こる。それゆえ、従来の感光性ポリイミドは、リジット及びフレキシブルプリント基板用途として用いることはできない。これに対して、上記ポリアミド酸は、180℃以下の加熱で95%以上のイミド化率となるポリアミド酸である。したがって、上記構成によれば、感光性ドライフィルムレジストを180℃以下の温度で硬化させることができる。つまり、このような感光性ドライフィルムレジストによれば、180℃以下の加熱により、回路基板上に、絶縁保護層を形成することができる。これにより、高温による銅箔の酸化や銅の結晶構造変化が起こり、銅箔の強度が低下するという問題を解消し、性能のよいプリント配線板を製造することができる。
【0091】
上記芳香環が、オルト位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している場合は、イミド化により生成するイミド環と主鎖とが近接している。その結果、立体障害が生じるため、イミド化が阻害される。よってイミド化温度が上昇する傾向にあると考えられる。
【0092】
これに対して、上記芳香環が、パラ位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している場合は、立体障害は生じないが、主鎖全体が直線状となり、熱振動を受けにくくなるため、ガラス転移温度(Tg)が高くなると考えられる。また、主鎖全体が直線状となり、分子間の凝集力が増大することによってもTgが高くなると考えられる。すなわち、イミド化の際には水分子が除かれて閉環するため体積が減少する。しかし、分子全体が動かないとイミド化はできない。
【0093】
また、上記芳香環が、メタ位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している場合は、光の吸収が小さい傾向にあるため、感光性樹脂とした場合、高感度の感光性樹脂とすることができる。
【0094】
したがって、上記一般式(3)で表される構成単位は、Rにおける、上記芳香環がオルト位やパラ位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している構成単位を、イミド化温度やTgの上昇に影響を与えない程度であれば含んでいてもよいが、より低い割合で含むことが好ましい。
【0095】
言い換えれば、上記一般式(3)で表される構成単位は、上記芳香環がメタ位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している構成単位をより高い割合で含むことがより好ましい。
【0096】
例えば、{(芳香族ジアミン中のメタ位アミノ基のモル数)/(ポリアミド酸前駆体の製造に用いる全芳香族ジアミンのアミノ基のモル数)}×100=メタ位の含有量(%)とすると、メタ位の含有量が、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。なお、上記全芳香族ジアミンのアミノ基のモル数は、ポリアミド酸の製造に用いる全芳香族ジアミンのモル数を2倍して得られる。例えば、ポリアミド酸前駆体の製造に用いる芳香族ジアミンとして、3,3’−ジフェニルエーテルのみを用いる場合には、メタ位の含有量は100%であり、3,4’−ジフェニルエーテルのみを用いる場合には、メタ位の含有量は50%であり、4,4’−ジフェニルエーテルのみを用いる場合には、メタ位の含有量は0%である。また、ポリアミド酸の製造に用いる芳香族ジアミンとして、m−フェニレンジアミンのみを用いる場合には、メタ位の含有量は100%であり、p−フェニレンジアミン、又は、o−フェニレンジアミンのみを用いる場合には、メタ位の含有量は0%である。
【0097】
また、{(芳香族ジアミン中のパラ位アミノ基のモル数)/(ポリアミド酸前駆体の製造に用いる全芳香族ジアミンのアミノ基のモル数)}×100=パラ位の含有量(%)とすると、パラ位の含有量が、20%以下であることがより好ましい。
【0098】
上記メタ位アミノ基を有する芳香族ジアミンは、芳香族環に直接アミノ基が結合しており、そのアミノ基の位置が3−或いはm−であるジアミノ化合物であればよい。具体的には、例えば、m−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノベンズアニリド、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−ビフェニル、ン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、9,9−ビス(3−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,6−ジアミノレゾルシノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルフォン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルフォン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミン化合物を挙げることができる。この場合、上記一般式(3)で表される構成単位は、上記一般式(3)中、Rが、上記芳香族ジアミンの2個のアミノ基を除いた構造である。
【0099】
特に絶縁信頼性の高いポリアミド酸等を得るためには、上記例示したメタ位アミノ基を有する芳香族ジアミンの中でも、水酸基あるいはカルボキシル基を有さない化合物を選択することがより望ましい。具体的には、上記メタ位アミノ基を有する芳香族ジアミンは、m−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノベンズアニリド、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、又は2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパンであることがさらに好ましい。
【0100】
また、上記第1感光層及び第2感光層において、バインダーポリマーとして含有されるポリアミド酸は、上記一般式(2)で表される構成単位と、上記一般式(3)で表される構成単位とに加えて、さらに、下記一般式(4)
【0101】
【化13】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、下記化学式群(5)
【0102】
【化14】

(化学式a中、mは1〜20のいずれかの整数を、nは0〜10のいずれかの整数を示し、化学式f中、Rは水素原子、メチル基、エチル基又はブチル基を示す。)
に示されるa、b、c、d、e、f又はgである。)
で表される構成単位を有していてもよい。
【0103】
一般式(4)中、Rは4価の有機基であればよいが、単環式の芳香族基、縮合多環式の芳香族基、及びこれらの芳香族基の2個以上が直接又は連結基により連結された基から選択される炭素数6〜50の4価の芳香族基であることがより好ましい。Rとしては、具体的には、例えば、後述する酸二無水物から、2つの−CO−O−CO−を除いた残基を挙げることができる。なお、Rは一般式(4)で表される構成単位ごとに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0104】
一般式(4)で表される構成単位をさらに有することにより、(メタ)アクリル系化合物との相溶性を向上させることができる。
【0105】
上記一般式(2)で表される構成単位と、上記一般式(3)で表される構成単位と、場合によって、上記一般式(4)で表される構成単位とからなるポリアミド酸では、(A)バインダーポリマー中又は(A)バインダーポリマーとしてのポリアミド酸中の上記構成単位全体に対する一般式(2)で表される構成単位のモル分率と一般式(4)で表される構成単位のモル分率の合計:
((一般式(2)で表される構成単位のモル数)+(一般式(4)で表される構成単位のモル数))÷(一般式(2)で表される構成単位のモル数+一般式(3)で表される構成単位のモル数+一般式(4)で表される構成単位のモル数)×100
は、10%以上90%未満であることが好ましく、20%以上80%未満であることがより好ましく、30%以上70%未満であることがさらに好ましく、40%以上60%未満であることが特に好ましい。一般式(2)で表される構成単位と一般式(4)で表される構成単位とのモル分率の合計が10%以上とすれば、従来の感光性ドライフィルムレジストよりも低い温度でのイミド化が可能となるとともに、反りが小さく可撓性・屈曲性に優れた感光性ドライフィルムレジストを実現することができる。
【0106】
また、このとき、一般式(2)で表される構成単位のモル分率と一般式(4)で表される構成単位のモル分率の合計に対する一般式(2)で表される構成単位のモル分率:
(一般式(2)で表される構成単位のモル数)÷(一般式(2)で表される構成単位のモル数+一般式(4)で表される構成単位のモル数)×100
は、0より大きく100%以下であればよいが、10%〜100%であることがより好ましく、30%〜100%であることがさらに好ましい。これにより、感光性ドライフィルムレジストにおいて、高い難燃性並びに可撓性及び屈曲性を実現することができる。
【0107】
また、上記一般式(2)で表される構成単位と、上記一般式(3)で表される構成単位と、場合によって、上記一般式(4)で表される構成単位とを少なくとも含むポリアミド酸の重量平均分子量/数平均分子量は、2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
【0108】
第1感光層及び第2感光層のうち少なくとも一方、好ましくは第1感光層が、上記ポリアミド酸を含有している場合、難燃性、耐湿性、絶縁信頼性、及び、低反り性に優れ、かつ、低いイミド化温度を有する感光性ドライフィルムレジストを実現することができる。
【0109】
もちろん、バインダーポリマーは、上記一般式(2)で表される構成単位と、上記一般式(3)で表される構成単位と、場合によって、上記一般式(4)で表される構成単位とを少なくとも含むポリアミド酸の他に、得られる感光性ドライフィルムレジストの性能に好ましくない影響を与えない限り、他のポリアミド酸を含んでいてもよい。
【0110】
また、ポリアミド酸は、上述した上記一般式(2)で表される構成単位と上記一般式(3)で表される構成単位とからなるポリアミド酸と、上述した上記一般式(4)で表される構成単位と上記一般式(3)で表される構成単位とからなるポリアミド酸との混合物であってもよい。この場合も、上述した上記一般式(2)で表される構成単位と、上記一般式(3)で表される構成単位と、上記一般式(4)で表される構成単位と、からなる共重合物の場合と同様の効果を得ることができる。
【0111】
感光性ドライフィルムレジストの第1感光層及び第2感光層において、バインダーポリマーとして含有させるポリアミド酸は、上記のものが好ましいが、別のポリアミド酸としては、下記一般式(4)
【0112】
【化15】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、下記化学式群(5)
【0113】
【化16】

(化学式a中、mは1〜20のいずれかの整数を、nは0〜10のいずれかの整数を示し、化学式f中、Rは水素原子、メチル基、エチル基又はブチル基を示す。)
で表されるa、b、c、d、e、f又はgである。)
で表される構成単位と、
下記一般式(3)
【0114】
【化17】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、芳香族ジアミンから2個のアミノ基を除いた2価の有機基を示す。)
で表される構成単位とからなるポリアミド酸が挙げられる。
【0115】
ここで、上記一般式(3)で表される構成単位及び上記一般式(4)で表される構成単位については、上記一般式(2)で表される構成単位と、上記一般式(3)で表される構成単位と、場合によって、上記一般式(4)で表される構成単位とからなるポリアミド酸のところで説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0116】
上記一般式(3)で表される構成単位と、上記一般式(4)で表される構成単位とからなるポリアミド酸では、ポリアミド酸中の上記構成単位全体に対する一般式(4)で表される構成単位のモル分率:
(一般式(4)で表される構成単位のモル数)÷(一般式(3)で表される構成単位のモル数+一般式(4)で表される構成単位のモル数)×100
は、10%以上90%未満であることが好ましく、20%以上80%未満であることがより好ましく、30%以上70%未満であることがさらに好ましく、40%以上60%未満であることが特に好ましい。一般式(4)で表される構成単位のモル分率が10%以上とすれば、従来の感光性ドライフィルムレジストよりも低い温度でのイミド化を可能とするともに、反りが小さく可撓性・屈曲性に優れた感光性ドライフィルムレジストを実現することができる。
【0117】
また、上記一般式(3)で表される構成単位と、上記一般式(4)で表される構成単位とからなるポリアミド酸の重量平均分子量/数平均分子量は、2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
【0118】
第1感光層及び第2感光層のうち少なくとも一方、好ましくは両方が、上記一般式(3)で表される構成単位と、上記一般式(4)で表される構成単位とからなるポリアミド酸を含有している場合、難燃性、耐湿性、絶縁信頼性、及び、低反り性に優れ、かつ、低いイミド化温度を有する感光性ドライフィルムレジストを実現することができる。
【0119】
なお、第1感光層及び第2感光層のうち少なくとも一方は、得られる感光性ドライフィルムレジストの性能に好ましくない影響を与えない限り、他のポリアミド酸を含んでいてもよい。
【0120】
第2感光層においてバインダーポリマーとして用いられるポリアミド酸は、第1感光層に用いられるポリアミド酸と同一であることが好ましいが、それ以外のポリアミド酸を用いてもよい。
【0121】
上述したポリアミド酸以外に、第2感光層においてバインダーポリマーとして含有させることが可能なポリアミド酸としては、例えば、上記一般式(3)で表される構成単位からなるポリアミド酸を挙げることができる。
【0122】
〔カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミド〕
本明細書において、「可溶性ポリイミド」とは、有機溶媒に溶解するポリイミドが意図される。より具体的には、有機溶媒100gに対して、20℃で1.0g以上、好ましくは5.0g以上、さらに好ましくは10g以上の溶解性を示すものが意図される。有機溶媒100gに対する20℃での溶解性が1.0g未満であると、所望する厚みにて、感光性ドライフィルムレジストを形成することが困難になる傾向がある。上記有機溶媒は、特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等を挙げることができる。
【0123】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、5000〜300000であることが好ましく、10000〜200000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、後述の感光性樹脂組成物を用いて作製された感光性ドライフィルムレジストにベタツキが生じやすく、さらに硬化後のフィルムの耐屈曲性に劣るという傾向がある。一方、重量平均分子量が200000より大きいとカルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの溶液粘度が高くなりすぎるため取扱いが難しくなる傾向があり、また製造された感光性ドライフィルムレジストの現像性が低下する場合がある。なお、上記重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
【0124】
また、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドにおけるカルボキシル基及び/又は水酸基1個あたりの重量平均分子量(以下、酸当量という)は、7000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、3000以下であることが最も好ましい。上記酸当量が7000を超えると、感光性ドライフィルムレジストの水系現像が困難になる傾向がある。なお、上記可溶性ポリイミドの酸当量は、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの組成より計算して求めることが可能である。
【0125】
(2)(メタ)アクリル系化合物
(メタ)アクリル系化合物は、感光性ドライフィルムレジストに対して、良好な硬化性を付与するだけでなく、プリント配線板の製造における感光性ドライフィルムレジストの熱加工時の粘弾性を下げ、熱ラミネート時の流動性を付与することができる。すなわち、比較的低温での熱ラミネートが可能となり、回路基板上の回路の凹凸を埋め込むことができる。
【0126】
上記(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる化合物を示す。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル化合物及び/又はメタクリル化合物を指すものとする。
【0127】
上記(メタ)アクリル系化合物は、特に限定されるものではないが、少なくとも2つの炭素間二重結合を有する多官能の(メタ)アクリル化合物が含まれることが好ましい。このような(メタ)アクリル系化合物によれば、光照射による架橋密度を向上させることができる。また、1分子中に芳香環及び/又は複素環を少なくとも1つ有する化合物が含まれることが好ましい。これにより、得られる感光性ドライフィルムレジストに耐熱性を付与することができる。
【0128】
1分子中に芳香環及び/又は複素環を少なくとも1つ有し、かつ炭素間二重結合を少なくとも2つ有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、アロニックスM−210、M−211B(東亞合成製)、NKエステルA−BPE−4、A−BPE−10−、A−BPE−30等のビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、アロニックスM−208(東亞合成製)等のビスフェノールF EO 変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、デナコールアクリレートDA−250(ナガセ化成製)等のビスフェノールA PO変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、芳香環は含まないが、アロニックスM−215等のイソシアヌル酸EO変性ジアクリレートやアロニックスM−315(東亞合成製)等のイソシアヌル酸EO変性トリアクリレートなどが挙げることができる。なお、上記EO変性とは、エチレンオキサイド変性部位を有することを示し、PO変性とは、プロピレンオキサイド変性部位を有することを示す。
【0129】
また、現像性を制御するために、アルコール水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を用いることが好ましい。これらアルコール水酸基を有する(メタ)アクリル化合物はベースポリマーとの相溶性に優れる。
【0130】
アルコール水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、V#2308、V#2323(大阪有機化学工業)等を挙げることができる。
【0131】
また、特に、1分子中に少なくとも1以上のエポキシ基及び1以上の(メタ)アクリル基を含有する(メタ)アクリル系化合物を用いることにより、得られる感光性ドライフィルムレジストの耐加水分解性及び銅箔への接着性を向上させることが可能となる。
【0132】
1分子中に少なくとも1以上のエポキシ基及び1以上の(メタ)アクリル基を含有する(メタ)アクリル系化合物は、特に限定されないが、例えば、グリシジルメタクリレート等のグリシジル化合物、NKオリゴEA−1010、EA−6310(新中村化学製)等を挙げることができる。
【0133】
また、1分子中に少なくとも2以上の水酸基を含有するエポキシ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。このようなエポキシ(メタ)アクリレートを用いることにより、得られる感光性ドライフィルムレジストの水系現像液への溶解性が向上し、現像時間の短縮化が実現できる。
【0134】
1分子中に少なくとも2以上の水酸基を含有するエポキシ(メタ)アクリレートは、特に限定されないが、リポキシSP−2600(昭和高分子製)、NKオリゴEA−1020、NKオリゴEA−6340(新中村化学製)、カラヤッドR−280、カラヤッドR−190(日本化薬製)、Ebecryl600、Ebecryl3700(ダイセルサイテック)等のビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート、KRM7856、Ebecryl3604、Ebecryl3702、Ebecryl3703,Ebecryl3708(ダイセルサイテック)、LR9019(BASF)等の変性ビスフェノールA型のエポキシアクリレート、LR8765(BASF)等の脂肪族系エポキシアクリレート、NKオリゴEA−6320、NKオリゴEA−6340(新中村化学製)等のフェノールノボラックエポキシアクリレート、カラヤッドR−167、MAX−2104(日本化薬製)、デナコールアクリレートDA−212(ナガセ化成製)等の変性1,6−へキサンジオールジアクリレート、デナコールアクリレートDA−721(ナガセ化成製)等の変性フタル酸ジアクリレート、NKオリゴEA−1020(新中村化学製)等のクレゾールノボラックエポキシアクリレート等を挙げることができる。
【0135】
ポリエステル(メタ)アクリレートを用いることにより、上記感光性ドライフィルムレジストに柔軟性を付与することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−5300、M−6100、M−7100(東亞合成製)等を挙げることができる。
【0136】
ウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、上記感光性ドライフィルムレジストに柔軟性を付与することができる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−1100、M−1310(東亞合成製)、カラヤッドUX−4101(日本化薬製)等を挙げることができる。
【0137】
イミド(メタ)アクリレートを用いることにより、上記感光性ドライフィルムレジストを貼り合わせる基材(例えば、ポリイミドフィルム、銅箔等)への密着性を向上させることができる。イミド(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスTO−1534、TO−1429、TO−1428(東亞合成製)を挙げることができる。
【0138】
また、上記(メタ)アクリル系化合物としては、さらに、例えば、ビスフェノールF EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、スフェノールS EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、β−メタクロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ1,3ジメタクロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタクロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ポリエチレングリコールジクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ1−アクリロキシ3−メタクロキシプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、1−アクリロイルオキシプロピル−2−フタレート、イソステアリルアクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアクリレート、ノニルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−メキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールメタクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル]プロパン、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、エトキシ化トチメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トチメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸トリ(エタンアクリレート)、ペンタスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトレアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリル1,3,5−ベンゼンカルボキシレート、トリアリルアミン、トリアリルシトレート、トリアリルフォスフェート、アロバービタル、ジアリルアミン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジスルフィド、ジアリルエーテル、ザリルシアルレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、1,3−ジアリロキシ−2−プロパノール、ジアリルスルフィドジアリルマレエート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジメタクリレート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジアクリレート等を例示することができる。なお、架橋密度を向上させるためには、特に2官能以上のモノマーを用いることが好ましい。
【0139】
また、上記(メタ)アクリル系化合物は、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニル−4−t−ブチルベンゾエート、ビニルn−ブチルエーテル、ビニルisoブチルエーテル、ビニルn−ブチレート、ビニル−n−カプロレート、及びビニルn−カプリレート等のビニル化合物;イソシアヌル酸トリアリル、及びフタル酸ジアリルエーテル等のアリル化合物であってもよい。
【0140】
上記第1感光層及び第2感光層は、上記例示したような(メタ)アクリル系化合物を、単独で含有してもよいし、2種類以上を組み合わせて含有してもよい。また、第1感光層に含有される(メタ)アクリル系化合物と、第2感光層に含有される(メタ)アクリル系化合物とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0141】
(3)光反応開始剤
光反応開始剤は、感光性ドライフィルムレジストを露光した場合に、露光領域にて架橋反応や重合反応を促進させる。これにより、露光領域と未露光領域とで、感光性ドライフィルムレジストの水系現像液への溶解性を十分に異なるようにすることができ、それゆえに、感光性ドライフィルムレジスト上にパターンを好適に現像することが可能になる。
【0142】
上記光反応開始剤としては、ラジカル発生剤、光カチオン発生剤、光塩基発生剤、光酸発生剤等を挙げることができる。
【0143】
上記ラジカル発生剤とは、光照射によりラジカルを発生する化合物の総称である。感光性ドライフィルムレジストに光反応開始剤として含有させるラジカル発生剤は、光照射によりラジカルを発生する化合物であればよいが、250nm〜450nmの光照射により、ラジカルを発生する化合物であることが好ましい。
【0144】
具体的には、例えば、下記一般式(9)及び(10)
【0145】
【化18】

(一般式(9)及び(10)中、R、R10、R11、R12、R13、及びR14は、C−、C(CH)−、C(CH−、(CHC−、CCl−、メトキシ基、又はエトキシ基を示す。)
で表されるアシルフォスフィンオキシド化合物を挙げることができる。これにより発生したラジカルは、2重結合を有する反応基(ビニル、アクリロイル、メタクリロイル、又はアリル等)と反応し架橋を促進することができる。
【0146】
上記一般式(9)で表されるアシルフォスフィンオキシドは、2個のラジカルを発生するのに対して、上記一般式(10)で表されるアシルフォスフィンオキシドは、α開裂により4個のラジカルを発生する。したがって、本発明においては、上記一般式(10)で表されるアシルフォスフィンオキシドを用いることがより好ましい。
【0147】
また、上記ラジカル発生剤としては、オキシムエステル化合物を使用することが特に好ましい。オキシムエステル化合物は、長波長領域に吸収をもち、光反応速度が速く、酸素障害も受けにくい。さらに、光退色するため、光が浸透しやすく、厚膜硬化も比較的容易になる。オキシム化合物を使用することによって、高感度、高解像度の感光性ドライフィルムレジストを得ることが出来る。
【0148】
オキシムエステル化合物としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(О−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)などを挙げることができる。
【0149】
オキシムエステル以外のラジカル発生剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンなどのケトン化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物、ビス(−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン化合物が挙げることができる。とくに、ホスフィンオキサイド化合物やチタノセン化合物を用いることが好ましい。
【0150】
また、上記光カチオン発生剤としては、例えば、ジメトキシアントラキノンスルフォン酸のジフェニルヨードニウム塩等のジフェニルヨードニウム塩類、トリフェニルスルフォニウム塩類、ピリリニウム塩類、トリフェニルオニウム塩類、ジアゾニウム塩類等を挙げることができる。なお上記塩類の他、カチオン硬化性の高い脂環式エポキシやビニルエーテル化合物を混合することが好ましい。
【0151】
さらに、上記光塩基発生剤としては、ニトロベンジルアルコールやジニトロベンジルアルコールとイソシアナートとの反応により得られるベンジルアルコール−ウレタン化合物、ニトロ−1−フェニルエチルアルコールやジニトロ−1−フェニルエチルアルコールとイソシアナートとの反応により得られるフェニルアルコール−ウレタン化合物、ジメトキシ−2−フェニル−2−プロパノールとイソシアナートとの反応により得られるプロパノール−ウレタン化合物等を挙げることができる。
【0152】
また、上記光酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、オニウム塩等のスルホン酸を発生させる化合物、ナフトキノンジアジド等のカルボン酸を発生させる化合物を挙げることができる。あるいは、ジアゾニウム塩や、ビス(トリクロロメチル)トリアジン類等の化合物は、光の照射によりスルホン基を生成させることができるので、これらの化合物も、上記感光性ドライフィルムレジストに好ましく含有させることができる。
【0153】
また、上記感光性ドライフィルムレジストには、上記光反応開始剤として、パーオキサイドと増感剤とを組み合わせて用いてもよい。このような構成によれば、上記感光性ドライフィルムレジストは、実用に供しうる感光感度を達成することができる。
【0154】
上記パーオキサイドは、特に限定されるものではなく、種々のパーオキサイドを用いることができる。具体的には、上記パーオキサイドとしては、例えば、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、パーオキシジカーボネート類等を挙げることができるが、特に、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを用いることが好ましい。
【0155】
また、上記増感剤も特に限定されるものでないが、例えば、ミヒラケトン、ビス−4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、ベンジル、4,4’−ジメチルアミノベンジル、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジメチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−エチル−4−ピペリドン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、リボフラビンテトラブチレート、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、3,5−ジメチルチオキサントン、3,5−ジイソプロピルチオキサントン、1−フェニル−2−(エトキシカルボニル)オキシイミノプロパン−1−オン、ベンゾインエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンズアントロン、5−ニトロアセナフテン、2−ニトロフルオレン、アントロン、1,2−ベンズアントラキノン、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、チオキサンテン−9−オン、10−チオキサンテノン、3−アセチルインドール、2,6−ジ(p−ジメチルアミノベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−ジメチルアミノベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−ジエチルアミノベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−ジエチルアミノベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−(1−メチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ゼンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−3,3−ジメチル−3H−インドール等を好適に用いることができる。中でも、特に、2,4−ジエチルチオキサントンを用いることが好ましい。なお、上記増感剤は、1種類を単独で含有されてもよいし、2種類以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0156】
上記第1感光層及び/又は第2感光層が、光反応開始剤と増感剤とを含有する実施形態では、光反応開始剤と増感剤との組み合わせは、特に、オキシムエステル化合物と、2,4−ジエチルチオキサントンとの組み合わせであることが好ましい。
【0157】
また、上記第1感光層及び第2感光層において、上記増感剤の含有量は特に限定されるものではなく、増感効果が得られ、かつ現像性に悪影響を及ぼさない範囲で配合すればよい。具体的には、上記第1感光層においては、上記(A1)バインダーポリマー100重量部に対して、0.01重量部〜50重量部であることが好ましく、0.1重量部〜20重量部であることがより好ましい。同様に、上記第2感光層においては、上記(A2)バインダーポリマー100重量部に対して、0.01重量部〜50重量部であることが好ましく、0.1重量部〜20重量部であることがより好ましい。また、上記第1感光層及び第2感光層において、上記パーオキサイドの含有量も特に限定されるものではないが、具体的には、増感剤100重量部に対して、1重量部〜200重量部であること好ましく、1重量部〜150重量部であることがより好ましい。
【0158】
上記第1感光層及び第2感光層は、上記光反応開始剤を、単独で含有していてもよいし、2種類以上を組み合わせて含有していてもよい。また、第1感光層の(C1)光反応開始剤と、第2感光層の(C2)光反応開始剤とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0159】
しかしながら、本発明においては、第2感光層は難燃剤を実質上含有しないため、第1感光層と比較して、光架橋密度がかなり高くなる。したがって、第2感光層のほうが光が浸透しにくいにも関わらず、第2感光層のほうが第1感光層よりも硬化が早くなる傾向があり、第1感光層、第2感光層の光感度のミスマッチにより、解像度が低下する場合もある。
【0160】
そのため、本発明では、第1感光層の全重量に対する(C1)光反応開始剤の重量の割合を第1感光層の光反応開始剤含有率、第2感光層の全重量に対する(C2)光反応開始剤の重量の割合を第2感光層の光反応開始剤含有率としたときに、第1感光層の光反応開始剤含有率を100とした場合、第2感光層の光反応開始剤含有率が100以下の条件を満たすようにすることが好ましい。上記構成によれば、感度、及び解像度に優れた多層構成の感光性ドライフィルムレジストとなることができる。
【0161】
また、上記光反応開始剤は、実用に供しうる感光感度を達成するため、さらに、光重合助剤を含んでいてもよい。上記光重合助剤は、特に限定されるものでないが、具体的には、例えば、4−ジエチルアミノエチルベンゾエート、4−ジメチルアミノエチルベンゾエート、4−ジエチルアミノブロピルベンゾエート、4−ジメチルアミノプロピルベンゾエート、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−(4−シアノフェニル)グリシン、4−ジメチルアミノベンゾニトリル、エチレングリコールジチオグリコレート、エチレングリコールジ(3−メルカブトプロピオネート)、トリメチロールプロパンチオグリコレート、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールエタントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸、α一メルカプトプロピオン酸、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシメトキシペンゾエート、t−ブチルペルオキシニトロベンゾエート、t−ブチルペルオキシエチルベンゾエート、フェニルイソプロピルペルオキシベンゾエート、ジt−ブチルジペルオキシイソフタレート、トリt−ブチルトリペルオキシトリメリテート、トリt−ブチルトリペルオキシトリメシテート、テトラt−ブチルテトラペルオキシピロメリテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ペンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−アミルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4―カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−メトキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサノン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−1−メチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−4−ピペリドン、3,5−ジ(p−アジベンザル)−N−アセチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−N−メトキシカルボニルー4−ピペリドン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(m−アジドベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(m−アジドベンザル)−4−メトキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(m−アジドベンザル)−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサノン、3,5−ジ(m−アジドべンザル)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−4−ピペリドン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−N−アセチルー4−ピペリドン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−N−メトキシカルボニル−4−ピペリドン、2,6−ジ(p−アジドシンナミリデン)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドシンナミリデン)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドシンナミリデン)−4−シクロヘキサノン、3,5−ジ(p−アジドシンナミリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、4,4’−ジアジドカルコン、3,3’−ジアジドカルコン、3,4’−ジアジドカルコン、4,3’−ジアジドカルコン、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−アセチル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−n−プロピルカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−フェニルオキシカルボニル)オキシム、1,3−ビス(p−メチルフェニル)−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ビス(p−メトキシフェニル)−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−(p−メトキシフェニル)−3−(p−ニトロフェニル)−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−フェニルオキシカルボニル)オキシム等を用いることができる。また、別の光重合助剤として、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン類を挙げることができる。
【0162】
これら光重合助剤は、1種類の化合物が単独で含有されてもよいし、2種類以上の化合物が組み合わされて含有されてもよい。
【0163】
また、上記第1感光層及び第2感光層において、上記光重合助剤の含有量は特に限定されるものではなく、増感効果が得られ、かつ現像性に悪影響を及ぼさない範囲であればよい。具体的には、上記第1感光層において、上記(A1)バインダーポリマー100重量部に対して、0.01重量部〜50重量部であることが好ましく、0.1重量部〜20重量部であることがより好ましい。同様に、上記第2感光層においては、上記(A2)バインダーポリマー100重量部に対して、0.01重量部〜50重量部であることが好ましく、0.1重量部〜20重量部であることがより好ましい。
【0164】
(4)難燃剤
本明細書において、「難燃剤」とは、プラスチック、木材、又は繊維等の可燃性物質に、添加又は反応させることにより、可燃性物質を燃えにくくする働きのある物質のことを意味する。本発明に使用可能な難燃剤としては、具体的には、例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィンオキサイド、ホスフィン、リン−窒素二重結合をもつホスファゼン化合物のようなリン系難燃剤、芳香族環の含有率が高いシリコーン化合物等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。中でも、感光性樹脂組成物との相溶性、難燃性の観点から、リン系難燃剤が含有されることがより好ましい。具体的には、例えば、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物リン系難燃剤を用いることが好ましい。なお、本明細書において、「リン系難燃剤」とは、リンを含む難燃剤が意図される。上記リン系難燃剤のリン含量は、リン系難燃剤を100としたときに、5.0重量%以上であることが好ましく、7.0重量%以上であることがより好ましい。そのようなリン系難燃剤を用いることにより、難燃性を効果的に付与することができる。
【0165】
上記リン系難燃剤としては、具体的には、例えば、リン−窒素二重結合をもつホスファゼン、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル(縮合リン酸エステルも含む)、亜リン酸エステル等の縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物リン系難燃剤を挙げることができる。上記バインダーポリマー、(メタ)アクリル系化合物及び光反応開始剤との相溶性の面から、ホスファゼン、縮合リン酸エステル等を含有することが好ましい。このようなリン系難燃剤のより具体的な例としては、SPE−100(大塚化学製)、SPH−100(大塚化学製)、TPP(トリフェニルホスフェート)(大八化学製)、TCP(トリクレジルホスフェート)(大八化学製)、TXP(トリキシレニルホスフェート)(大八化学製)、CDP(クレジルジフェニルホスフェート)(大八化学製)、PX−110(クレジル2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学製)などのリン酸エステル;CR−733S(レゾシノ−ルジホスフェート)(大八化学製)、CR−741(大八化学製)、CR−747(大八化学製)、PX−200(大八化学製)などの非ハロゲン系縮合リン酸エステルなどを挙げることができる。これら例示のリン系難燃剤は、難燃性を付与でき、かつ耐加水分解性をもつため、上記感光性ドライフィルムレジストに含有させる難燃剤として好適に用いることができる。また、これらのリン系難燃剤は、単独で含有されてもよいし、複数が組み合わされて含有されてもよい。
【0166】
また、上記感光性ドライフィルムレジストは、リン系難燃剤以外の難燃剤を含有していてもよい。そのような難燃剤としては、芳香族環の含有率が高いシリコーン化合物等を挙げることができる。
【0167】
なお、第2感光層に(D2)難燃剤が含まれる実施形態では、第1感光層の(D1)難燃剤と、第2感光層の(D2)難燃剤とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0168】
(5)その他の成分
上記第1感光層及び第2感光層には、上述したように、上記(A)バインダーポリマー、(B)(メタ)アクリル系化合物、(C)光反応開始剤及び(D)難燃剤以外に、必要に応じて(E)その他の成分が含有されていてもよい。その他の成分としては、例えば、エポキシ樹脂、硬化促進剤及び/又は硬化剤、重合禁止剤、密着付与剤、フィラー、保存安定剤、イオン捕捉剤等を挙げることができる。また、これらのその他の成分は、上記第1感光層及び第2感光層において、同一のものが含有されていてもよいし、異なるものが含有されていてもよい。以下、その他の成分について具体的に説明する。
【0169】
〔エポキシ樹脂〕
エポキシ樹脂を用いることにより、上記感光性ドライフィルムレジストに銅箔やポリイミドフィルム等に対する接着性を向上させることができる。
【0170】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、製品名エピコート828、834、1001、1002、1003、1004、1005、1007、1010、1100L(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、製品名ESCN−220L、220F、220H、220HH、180H65(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、製品名EPPN−502H(日本化薬(株)製)等のトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、製品名ESN−375等のナフタレンアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、製品名ESN−185(新日鐵化学(株))等のノボラック型エポキシ樹脂、製品名YX4000H等のビフェノール型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0171】
また、上記の他、ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラックグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等であってもよい。
【0172】
上記エポキシ樹脂は、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いればよい。上記第1感光層及び第2感光層において、上記エポキシ樹脂の含有量は特に限定されるものではないが、上記第1感光層及び第2感光層のいずれにおいても、(A)バインダーポリマー100重量部に対して、1重量部〜100重量部の範囲内であることが好ましく、0重量部〜50重量部の範囲内であることがより好ましく、1重量部〜30重量部の範囲内であることが特に好ましい。特に、30重量部以下に抑えると、耐屈曲性の低下を引き起こすこともない。
【0173】
〔硬化促進剤及び/又は硬化剤〕
第1感光層及び第2感光層としてエポキシ樹脂を含有させる場合、上記感光性ドライフィルムレジストの硬化を効率良く行うために、第1感光層及び第2感光層に硬化促進剤及び/又は硬化剤を添加してもよい。このような硬化促進剤及び/又は硬化剤としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂の硬化を効率良く行うためには、イミダゾ−ル系化合物、酸無水物、第3級アミン類、ヒドラジン類、芳香族アミン類、フェノール類、トリフェニルホスフィン類、有機過酸化物などを挙げることができる。これらの硬化促進剤及び/又は硬化剤のうち、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いればよい。
【0174】
上記硬化促進剤及び/又は硬化剤の含有量は、(A)バインダーポリマー100重量部に対し0.1重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましく、0.5重量部〜20重量部の範囲内であることがより好ましく、0.5重量部〜15重量部の範囲内であることが特に好ましい。上記含有量を0.1重量部以上とすれば、エポキシ樹脂の硬化が十分に行うことができる。また、20重量部以下とすれば、耐熱性の低下を引き起こすことはない。
【0175】
〔重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤〕
第1感光層及び第2感光層には、(A)バインダーポリマー及び/又は(B)(メタ)アクリル系化合物に含有されるビニル基、アクリル基、メタクリル基等の光重合性・熱重合性官能基が、第1感光層及び第2感光層を形成するための感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムレジストの貯蔵中に架橋反応するのを防止するため、重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマー添加剤を添加することが好ましい。
【0176】
上記重合禁止剤は、特に限定されるものではなく、重合禁止剤、重合抑制剤として一般的に用いられているものであればよい。上記安定剤は、特に限定されるものではなく、熱安定剤、光安定剤として一般に知られているものであればよい。上記酸化防止剤は、特に限定されるものではなく、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤として一般的に用いられているものであればよい。
【0177】
上記の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤は、それぞれ別々の化合物であるとは限らず、1つの化合物が重合禁止剤としても酸化防止剤としても用いられる場合もある。
【0178】
上記重合禁止剤、安定剤及び酸化防止剤からなる群より選ばれるポリマー添加剤は、特に限定されるものではなく、一般的に重合禁止剤、重合抑制剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤として用いられているものであればよい。例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン(和光純薬(株)製、商品名DOHQ)、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノン(和光純薬(株)製、商品名DHHQ)等のハイドロキノン系化合物;p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、t−ブチルベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン化合物;ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス1010)、N,N‘−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド](同社製、商品名イルガノックス1098)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(同社製、商品名イルガノックス3114)、ヒドロキシフェノールベンゾトリアゾール(旭電化工業(株)製、商品名アデカAO−20)等のヒンダードフェノール系化合物;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−;クレゾール(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、商品名TINUVIN P)等のベンゾトリアゾ−ル系化合物;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン(和光純薬(株)製、商品名Q−1300)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(和光純薬(株)製、商品名Q−1301)等のニトロソアミン系化合物;フェノチアジン、ジチオベンゾイルスルフィド、ジベンジルテトラスルフィド等の有機硫黄化合物;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピぺリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネ−ト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス144)等のヒンダードアミン系化合物;p−ェニレンジアミン(通称パラミン)、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(同社製、商品名イルガノックス168)テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォネート(同社製、商品名イルガノックスP−EPQ)等のリン系化合物などが挙げられる。
【0179】
特に、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ニトロソアミン系化合物、芳香族アミンであることが好ましい。これらの化合物を用いることにより、光重合性・熱重合性官能基の架橋反応を防ぐことができるため、第1感光層及び第2感光層を形成するための感光性樹脂組成物の貯蔵中にその感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液の粘度の上昇を抑えることができ、感光性ドライフィルムレジストの保存安定性を向上させることができる。さらに、酸化防止効果もあるので樹脂の劣化を防ぐことができ、感光性樹脂組成物から製造される硬化後の感光性ドライフィルムレジストの長期耐熱性や耐加水分解性を向上させることができる。
【0180】
上記重合禁止剤の使用量は、上記(A)成分であるバインダーポリマー及び(B)成分である(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対して、0.00001重量部〜5重量部の範囲内であることが好ましく、0.0001重量部〜1重量部の範囲内であることがより好ましい。上記光反応開始剤及び/又は増感剤の使用量が、0.00001重量部以上であれば、保存時の安定性が低下することはない。また、5重量部以下であれば、活性エネルギー線に対する感度が低下することはない。
【0181】
〔密着付与剤〕
感光性ドライフィルムレジストと、ポリイミドフィルムや金属等の基材との密着性を向上させるために、公知のいわゆる密着付与剤を添加してもよい。該密着付与材は、基材との密着面となる第2感光層に添加されることが好ましい。
【0182】
このような密着付与剤は特に限定されないが、例えば、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、トリアゾール、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0183】
上記感光性ドライフィルムレジストは、上記構成を備えているため、第2感光層が銅張積層板(回路付きCCLともいう)の回路を形成された側に接するように積層して用いることにより、得られるプリント配線板の解像度、耐湿性、絶縁信頼性を向上させることができる。この点についてより詳しく説明すると、上記構成では、上記感光性ドライフィルムレジストにおいて回路を形成した銅張積層板に接する部分(すなわち、第2感光層)の難燃剤の濃度が低い。そのため、この銅張積層板に接する部分の耐湿性の低下を防止することができる。それゆえ、効果的に絶縁信頼性を向上させることができるものと考えられる。
【0184】
また、上記感光性ドライフィルムレジストが感光性を発現するのは、光照射により、光反応開始剤がラジカル等を発生させ、(メタ)アクリル系化合物が架橋することによる。ここで、難燃剤の濃度が高いと、発生したラジカル等の濃度を低下させたり、(メタ)アクリル系化合物の架橋密度(濃度)を低下させたりすることとなり、感光能が低下する。特に、光照射される側から遠い側(深い部分)ではこの傾向が大きい。しかし、上記構成によれば、光照射される側から遠い側、すなわち、銅張積層板に接する側である第2感光層の難燃剤の濃度が低い。そのため、解像度及び感光能を向上させることができる。さらに、上記構成によれば、第2感光層のアルカリ溶解性が向上する。それゆえ、アルカリ現像時に残渣が発生しにくくなり、解像度及び感光能をより高めることができる。本発明にかかるプリント配線板の製造方法では、上記特性を有する感光性ドライフィルムレジストを用いて、絶縁保護層を形成するため、得られるプリント配線板の絶縁信頼性を向上させることができる。
【0185】
(I−1−2)感光性ドライフィルムレジストの製造
上記感光性ドライフィルムレジストの製造においては、まず、感光性ドライフィルムレジストを形成するための感光性樹脂組成物を製造する(以下、「感光性樹脂組成物製造工程」ともいう)。次に、該感光性樹脂組成物を用いて、支持フィルム上に感光性ドライフィルムレジストを形成する(以下、「感光性ドライフィルムレジスト形成工程」ともいう)。さらに、必要に応じて、感光性ドライフィルムレジスト上に、保護フィルムを積層する(以下、「保護フィルム積層工程」ともいう)。以下、感光性樹脂組成物製造工程、感光性ドライフィルムレジスト形成工程、保護フィルム積層工程について説明する。
(1)感光性樹脂組成物製造工程
上記感光性樹脂組成物は、上記感光性ドライフィルムレジストを形成するためのものである。本発明では、上記感光性ドライフィルムレジストは、少なくとも、上記第1感光層と、第2感光層とを備えるため、上記感光性樹脂組成物として、上記第1感光層を形成するための第1感光性樹脂組成物と、第2感光層を形成するための第2感光性樹脂組成物とを製造する。上記第1感光性樹脂組成物は、(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、及び(D1)難燃剤を必須成分として所望の割合で含有する。また、上記第2感光性樹脂組成物は、(A2)バインダーポリマー、及び(B2)(メタ)アクリル系化合物を必須成分として所望の割合で含有する。
【0186】
上記第1感光性樹脂組成物は、必要に応じて(E1)その他の成分を含有してもよい。また、上記第2感光性樹脂組成物は、(C2)光反応開始剤をさらに含有することが好ましい。また、第1感光性樹脂組成物と同様に、必要に応じて(E2)その他の成分を含有してもよい。さらに、上記第2感光性樹脂組成物は、(D2)難燃剤を含有してもよいが、実質的に含有しないことが好ましい。
【0187】
第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物は、有機溶媒に、上記成分を均一に溶解させた溶液として製造される。第1感光性樹脂組成物、及び第2感光性樹脂組成物を、それぞれ、以下、第1感光層の有機溶媒溶液、及び第2感光層の有機溶媒溶液と称することもある。
【0188】
上記有機溶媒は、特に限定されるものではなく、第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物に含有される成分を溶解することができる有機溶媒であればよい。上記有機溶媒としては、例えば、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶媒等を挙げることができる。これらの有機溶媒は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、後の工程にて、上記有機溶媒の除去を行うので、上記第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物に含有される成分を溶解し、できるだけ沸点の低いものを選択することが、製造工程上、有利である。
【0189】
第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物に含有される(メタ)アクリル系化合物の総重量は、(A)成分であるバインダーポリマー100重量部に対して、1重量部〜400重量部の範囲内であることが好ましく、3重量部〜300重量部の範囲内であることがより好ましく、1重量部〜200重量部の範囲内であることがさらに好ましく、1重量部〜100重量部の範囲内であることが特に好ましい。なお、(A)成分であるバインダーポリマー100重量部に対して、(B)成分として200重量部を超える(メタ)アクリル系化合物を含有させた場合は、得られる感光性ドライフィルムレジストにベタツキが生じやすくなる傾向がある。
【0190】
また、第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物に含有される(C)光反応開始剤の総重量は、(A)成分であるバインダーポリマー100重量部に対して、0.01重量部〜50重量部の範囲内であることが好ましい。また、(A)成分であるバインダーポリマー及び(B)成分である(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対して、0.001重量部〜10重量部の範囲内であることが好ましく、0.01重量部〜10重量部の範囲内であることがより好ましい。上記光反応開始剤及び/又は増感剤の使用量が、0.001重量部未満であると、十分な感度が得られず、10重量部を超えると、感光性ドライフィルムレジスト表面での吸収が増大し、内部の光硬化が不十分となる場合がある。
【0191】
また、上述したように、第2感光層は(C2)光反応開始剤を実質的に含有しない構成とすることができる。このような実施形態には、第2感光性樹脂組成物における(C2)光反応開始剤の配合割合は、上記(A2)バインダーポリマー100重量部に対し、0重量部〜0.01重量部の範囲内である場合が含まれる。さらに、上記(A2)成分であるバインダーポリマー及び(B2)成分である(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対して、0重量部〜0.001重量部の範囲内である場合が含まれる。
【0192】
なお、上記第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物に含有されるバインダーポリマー、(メタ)アクリル系化合物、光反応開始剤、難燃剤、その他の成分については、(I−1−1)感光性ドライフィルムレジストの構造の中で、説明した通りであるが、ここで、バインダーポリマーと使用可能なカルボキシル基含有ビニル系ポリマー、ポリアミド酸、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの合成について説明する。
【0193】
〔カルボキシル基含有ビニル系ポリマーの合成〕
カルボキシル基含有ビニル系ポリマーは、カルボキシル基含有モノマーと、該カルボキシル基含有モノマーと共重合可能なモノマーとを、公知の方法によって共重合させることによって得ることができる。なお、カルボキシル基含有モノマー、及び該カルボキシル基含有モノマーと共重合可能なモノマーとしては、(I−1−1)感光性ドライフィルムの構造において例示したものを用いればよい。
【0194】
〔ポリアミド酸の合成〕
ポリアミド酸は、有機溶媒中でジアミンと酸二無水物とを反応させることにより得ることができる。例えば、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解、又はスラリー状に分散させて、ジアミン溶液とする。一方、酸二無水物は、有機溶媒に溶解、又はスラリー状に拡散分散させた状態とした後、あるいは固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。
【0195】
具体的には、例えば、(I−1−1)感光性ドライフィルムの構造において例示した、上記一般式(2)で表される構成単位と上記一般式(3)で表される構成単位とからなるポリアミド酸を合成する場合、酸二無水物と芳香族ジアミンと、下記一般式(6)
【0196】
【化19】

(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数2〜5のアルキレン基を示し、Rはそれぞれ独立して、メチル基又はフェニル基を示し、R中のフェニル基の含有率が15%〜40%であり、且つ、mは4〜20の整数である。)
で表されるポリシロキサンジアミンとを、有機極性溶媒中で反応させることにより合成することができる。
【0197】
また、例えば、上記一般式(2)で表される構成単位と、上記一般式(3)で表される構成単位と、上記一般式(4)で表される構成単位とからなるポリアミド酸を合成する場合、酸二無水物と芳香族ジアミンと、上記一般式(6)で表されるポリシロキサンジアミンと、下記化学式群(7)
【0198】
【化20】

(化学式a’中、mは1〜20のいずれかの整数を、nは0〜10のいずれかの整数を示し、化学式f’中、Rは水素原子、メチル基、エチル基又はブチル基を示す。)
に示されるa’、b’、c’、d’、e’、f’又はg’を、有機極性溶媒中で反応させることにより合成することができる。
【0199】
また、例えば、上記一般式(3)で表される構成単位と、上記一般式(4)で表される構成単位とからなるポリアミド酸を合成する場合、酸二無水物と芳香族ジアミンと、上記化学式群(7)に示されるa’、b’、c’、d’、e’、f’又はg’を、有機極性溶媒中で反応させることにより合成することができる。
【0200】
なお、上記化学式群(7)に示されるa’、b’、c’、d’、e’、f’又はg’を用いる場合は、これらを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0201】
また、例えば、上記一般式(4)で表される構成単位からなるポリアミド酸を合成する場合、酸二無水物と芳香族ジアミンとを、有機極性溶媒中で反応させることにより合成することができる。
【0202】
上記一般式(6)中、Rは、それぞれ独立して炭素数2〜5のアルキレン基であり、具体的には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、又はペンタメチレン基である。
【0203】
また、一般式(6)中、Rはそれぞれ独立して、メチル基又はフェニル基である。ここで、R中のフェニル基の含有率、メチル基の含有率については、上記において説明した一般式(2)中のRの場合と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0204】
なお、一般式(6)中、R中のメチル基は、得られる感光性樹脂組成物の性能に好ましくない影響を与えない限り、その一部がエチル基やプロピル基で置換されていてもよい。
【0205】
また、一般式(6)中のシロキサン結合の繰り返し単位数mも、上記において説明した一般式(2)中のmと同様であるのでここでは説明を省略する。
【0206】
上記酸二無水物は、特に限定されるものではなく、あらゆる酸二無水物を用いることができる。なお、これら酸二無水物から、2つの−CO−O−CO−を除いた残基は、一般式(2)中のR、上記R及びRの好適な例である。これら酸二無水物としては、具体的には、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸二無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0207】
中でも、上記酸二無水物としては、得られるポリイミドの難燃性が優れるという点から芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることがより好ましい。
【0208】
また、有機溶媒への溶解性の高いポリイミドを得るためには、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、又は1,2−エタンジベンゾエート-3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物のうち、少なくとも1つを上記酸二無水物として、含有させることがさらに好ましい。
【0209】
さらに、合成の容易で工業的に安価であるという点、及びアルカリ水溶液への溶解性からは、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸二無水物、ビフェニル−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物を少なくとも一部用いることが好ましい。
【0210】
また、上記ジアミンは特に限定されるものではないが、芳香族ジアミンを用いることが好ましい。該芳香族ジアミンもまた、特に限定されるものではないが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と、当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子とを有する芳香族ジアミン;4,6−ジアミノレゾルシノール等のジアミノレゾルシノール類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル等のヒドロキシビフェニル化合物類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルメタン類又はヒドロキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル等のヒドロキシジフェニルエーテル化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン等のジフェニルスルホン化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]アルカン化合物類;ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン化合物;2,4−ジアミノフェノール等のジアミノフェノール類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2’−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル化合物類;2,5−ジアミノテレフタル酸等のジアミノフタル酸類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニル等のカルボキシビフェニル化合物類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、及び4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエーテル等のカルボキシジフェニルエーテル化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルフォン等のジフェニルスルホン化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]アルカン化合物類;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン化合物;3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類を挙げることができる。これらの芳香族ジアミンは、単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお言うまでもないが、上記芳香族ジアミン以外に、公知の他のジアミンを原料の一部として同時に用いてもよい。
【0211】
上記芳香族ジアミンのうち、耐熱性、アルカリ水溶液への溶解性から、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンを少なくとも一部用いることが好ましい。
【0212】
中でも、上記芳香族ジアミンは、上述したように、芳香族ジアミンの上記2個のアミノ基が結合している芳香環の少なくともひとつが、メタ位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している芳香族ジアミンであることがより好ましく、上記で例示した、メタ位アミノ基を有する芳香族ジアミンであることがより好ましい。これにより、ポリアミド酸前駆体等のイミド化温度を低下させることが可能となる。また、メタ位アミノ基を有する芳香族ジアミンも、単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0213】
上記酸二無水物と、芳香族ジアミンと、ポリシロキサンジアミン又は上記化学式群(7)のジアミンとを有機極性溶媒中で反応させる順序は特に限定されるものではなく、上記酸二無水物と、ジアミンと、ポリシロキサンジアミン又は上記化学式群(7)のジアミンとを同時に反応させてもよいし、酸二無水物とポリシロキサンジアミン又は上記化学式群(7)のジアミンとの反応を先に開始した後、芳香族ジアミンを加えて反応させてもよいし、酸二無水物と芳香族ジアミンとの反応を先に開始した後、ポリシロキサンジアミン又は上記化学式群(7)のジアミンを加えて反応させてもよい。
【0214】
中でも酸二無水物とポリシロキサンジアミン又は上記化学式群(7)のジアミンとの反応を先に開始した後、芳香族ジアミンを加えて反応させることがより好ましい。
【0215】
この場合には、まず、酸二無水物とポリシロキサンジアミン又は上記化学式群(7)のジアミンとを、有機極性溶媒中で反応させればよく、例えば、酸二無水物と有機極性溶媒とからなる溶液あるいは懸濁溶液に、ポリシロキサンジアミン又は上記化学式群(7)のジアミン又はその溶液を添加すればよい。続いて、芳香族ジアミンを加えることにより本発明で用いられるポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を合成することができる。
【0216】
上記有機極性溶媒は、特に限定されるものではないが、ポリアミド酸を溶解でき、かつ、なるべく沸点の低いものを選択することが工程上有利である。具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0217】
このとき、酸二無水物とポリシロキサンジアミン及び/又は上記化学式群(7)のジアミンとの反応は、上記有機極性溶媒中で−20℃〜80℃の温度条件下で反応させることが好ましく、−15℃〜50℃の温度条件下で反応させることがより好ましい。反応温度を−20℃以上とすることにより、酸二無水物とポリシロキサンジアミン及び/又は上記化学式群(7)のジアミンとの重合反応を効率的に進行させることができる。また、80℃以下とすることにより、合成されたポリアミド酸が分解するのを防ぐことができる。
【0218】
また、酸二無水物とポリシロキサンジアミン及び/又は上記化学式群(7)のジアミンとを反応させるときの反応時間は、特に限定されるものではない。一般的には、10分〜30時間の範囲で任意に設定すればよい。例えば、1時間〜12時間であることが好ましい。
【0219】
また、このとき、1種類のジアミンと1種類の酸二無水物が実質上等モルであれば、酸二無水物成分1種類及びジアミン成分1種類のポリアミド酸になる。また、2種類以上の酸二無水物成分及び2種類以上のジアミン成分を用いる場合、複数のジアミン成分全量のモル比と複数の酸二無水物成分全量のモル比とを、実質上等モルに調整しておけば、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。本発明では、この際に、反応させる酸二無水物のモル数は、ポリシロキサンジアミン及び/又は上記化学式群(7)のジアミンのモル数より多いことが好ましい。これにより、酸二無水物末端のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)オリゴマーを得ることができる。
【0220】
続いて、これに芳香族ジアミンを加え反応させるときの反応温度は、−20℃〜80℃であることが好ましく、−15℃〜50℃であることがより好ましい。上記温度範囲とすることにより、芳香族ジアミンとの共重合を好適に行うことができる。
【0221】
また、芳香族ジアミンを加え反応させるときの反応時間も、特に限定されるものではないが、例えば、0.5時間〜24時間であることが好ましい。
【0222】
上記芳香族ジアミンは、全ジアミンの90モル%を超えると、イミド化温度を上げる傾向があるため、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましい。
【0223】
上記ポリアミド酸は、5g/lのN−メチルピロリドンの溶液の30℃における対数粘度が、0.2〜4.0の範囲であることが好ましく、0.3〜2.0の範囲であることがより好ましい。
【0224】
〔カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミド〕
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドは、まず、所望のポリアミド酸を合成し、該ポリアミド酸を脱水閉環してイミド化することにより合成することができる。ここでは、ポリアミド酸の合成と、ポリアミド酸のイミド化とに分けて、詳細に説明する。
【0225】
(A)ポリアミド酸の合成
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、有機溶媒中でジアミンと酸二無水物とを反応させることにより得ることができる。具体的には、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解、又はスラリー状に分散させて、ジアミン溶液とする。一方、酸二無水物は、有機溶媒に溶解、又はスラリー状に分散させた状態とした後、あるいは固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。
【0226】
上記ジアミンは、特に限定されるものではないが、水系現像性の点から、1分子中に1以上のカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンを原料の少なくとも一部として用いることが好ましい。また、耐熱性や耐薬品性の点から、1分子中に1以上の芳香環を有する芳香族系ジアミンを原料の少なくとも一部として用いることが好ましい。特に、1分子中に1以上のカルボキシル基及び/又は水酸基を有する芳香族系ジアミンを原料の一部として用いれば、上記感光性ドライフィルムレジストに、耐熱性と水系現像性を付与することができるため、特に好ましい。
【0227】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有する芳香族系ジアミンとしては、特に限定されるものではないが、下記一般式(8)
【0228】
【化21】

(式中、R15は同一でも異なっていてもよく、カルボキシル基若しくは水酸基のいずれか一方であり、R16及びR17は、各々同一であっても異なっていてもよいが、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシ基、又は−COOR18(R18は炭素数1〜9のアルキル基を示す。)であり、Xは同一でも異なっていてもよく、−O−、−S−、−SO−、−C(CH−、−CH−、−C(CH)(C)−、又は−C(CF−である。mは1以上、nは0以上の整数であり、mとnはm+n=4の条件を満たす整数である。また、pは1以上、qは0以上の整数であり、pとqはp+q=4の条件を満たす整数である。rは0〜10の整数である。)
で表される芳香族系ジアミンを可溶性ポリイミドの原料の一部として用いることが好ましい。
【0229】
上記カルボキシル基を有する芳香族系ジアミンは、特に限定されるものではないが、例えば、3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−2,2',5,5'−テトラカルボキシビフェニル等のカルボキシビフェニル化合物類、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジカルボキシジフェニルメタン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルアルカン類、4,4'−ジアミノ−2,2',5,5'−テトラカルボキシジフェニルエーテル等のカルボキシジフェニルエーテル化合物、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジカルボキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン化合物、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス(カルボキシフェノキシ)ビフェニル化合物、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン化合物等を例示することができる。
【0230】
中でも、特に好ましいカルボキシル基含有芳香族系ジアミンの構造式の一部を以下に示す。
【0231】
【化22】

次に、水酸基を有する芳香族系ジアミンは、特に限定されるものではないが、例えば、2,2'−ジアミノビスフェノールA、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メタン、2,6−ジ[(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、2,6−ジ[(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メチル]−4−ヒドロキシ安息香酸プロピル等の化合物を挙げることができる。
【0232】
中でも、特に好ましい水酸基含有芳香族系ジアミンの構造式の一部を以下に示す。
【0233】
【化23】

これらのジアミンを原料の一部として使用することで、得られるカルボキシル基及び/又は水酸基を含有する可溶性ポリイミドの酸当量が低くなり、水系現像性を向上させることができる。
【0234】
なお言うまでもないが、上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミン以外に、公知の他のジアミンを可溶性ポリイミドの原料の一部として同時に用いてもよい。例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[ビス(4−アミノ−3−カルボキシ)フェニル]メタン、下記一般式(1)
【0235】
【化24】

(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
で表されるポリシロキサンジアミンなどを挙げることができる。特に、一般式(1)で表されるポリシロキサンジアミンは柔軟性、密着性、可とう性を向上させることが出来ることから特に好ましい。上記ジアミンは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0236】
一方、ポリアミド酸を合成するために用いられる酸二無水物は、特に限定されないが、耐熱性を向上させる点から、芳香環を1〜4個有する酸二無水物又は脂環式の酸二無水物を用いることが好ましい。また、有機溶媒への溶解性が高いポリイミド樹脂を得るためには、芳香環を2個以上有する酸二無水物を少なくとも一部の原料として用いることが好ましく、芳香環を4個以上有する酸二無水物を少なくとも一部の原料として用いることがより好ましい。
【0237】
上記の酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。上記酸二無水物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0238】
上記酸二無水物のうち、合成の容易さ、得られるポリイミドの有機溶媒への溶解性の点から、2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物等の芳香環を2個以上有する酸二無水物を少なくとも一部の原料として用いることが好ましい。
【0239】
上記ジアミンと酸二無水物とを用いてポリアミド酸を合成する場合、上記ジアミンと酸二無水物とを、それぞれ少なくとも1種類ずつ用いて反応を行えばよい。すなわち、例えば、カルボキシル基及び/又は水酸基を含有するジアミンを少なくとも一部として含むジアミン成分と、上記酸二無水物とを用いて、上述したように、有機溶媒中で重合反応を行うことにより、カルボキシル基及び/又は水酸基を分子鎖中に1以上含有するポリアミド酸を得ることができる。
【0240】
このとき、1種類のジアミンと1種類の酸二無水物が実質上等モルであれば、酸二無水物成分1種類及びジアミン成分1種類のポリアミド酸になる。また、2種類以上の酸二無水物成分及び2種類以上のジアミン成分を用いる場合、複数のジアミン成分全量のモル比と複数の酸二無水物成分全量のモル比とを、実質上等モルに調整しておけば、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。
【0241】
上記ジアミンと酸二無水物との反応(ポリアミド酸の合成反応)の温度条件は、特に限定されないが、−20℃〜80℃であることが好ましく、−15℃〜50℃であることがより好ましい。80℃を超えると、ポリアミド酸が分解する恐れがあり、逆に−20℃以下だと、重合反応の進行が遅くなる場合がある。また、反応時間は10分〜30時間の範囲で任意に設定すればよい。
【0242】
さらに、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒は、特に限定されるものではなく、有機極性溶媒であればよい。しかしながら、上記ジアミンと酸二無水物との反応が進行するにつれてポリアミド酸が生成し、反応液の粘度が上昇する。また、後述するように、ポリアミド酸を合成して得られるポリアミド酸溶液を、減圧下で加熱して、有機溶媒の除去とイミド化を同時に行うことができる。そのため、上記有機溶媒としては、ポリアミド酸を溶解でき、かつ、なるべく沸点の低いものを選択することが工程上有利である。
【0243】
具体的には、ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒等を挙げることができる。
【0244】
(B)ポリアミド酸のイミド化
次に、上記ポリアミド酸を用いて、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドを得るために、上記ポリアミド酸をイミド化する方法について説明する。イミド化は、ポリアミド酸を脱水閉環することによって行われる。この脱水閉環は、共沸溶媒を用いた共沸法、熱的手法又は化学的手法によって行うことができる。
【0245】
共沸溶媒を用いた共沸法は、ポリアミド酸溶液にトルエン・キシレン等の水と共沸する溶媒を加え、170℃〜200℃に昇温して、脱水閉環により生成してくる水を積極的に系外へ除去しながら、1時間〜5時間程度反応させればよい。反応終了後、メタノール等のアルコール溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール溶媒にて洗浄を行ったのち、乾燥を行ってポリイミド樹脂を得ることができる。
【0246】
熱的手法による脱水閉環は、ポリアミド酸溶液を加熱して行えばよい。あるいは、ガラス板、金属板、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のフィルム状支持体に、ポリアミド酸溶液を流延又は塗布した後、80℃〜300℃の範囲内で熱処理を行えばよい。さらに、フッ素系樹脂によるコーティング等の離型処理を施した容器に直接ポリアミド酸溶液を入れ、減圧下で加熱乾燥することによって、ポリアミド酸の脱水閉環を行うこともできる。このような熱的手法によるポリアミド酸の脱水閉環により、上記可溶性ポリイミドを得ることができる。
【0247】
なお、上記各処理の加熱時間は、脱水閉環を行うポリアミド酸溶液の処理量や加熱温度により異なるが、一般的には、処理温度が最高温度に達してから1分間〜5時間の範囲で行うことが好ましい。
【0248】
一方、化学的手法による脱水閉環は、上記ポリアミド酸溶液に、脱水剤と、必要に応じて触媒として、触媒量の第3級アミンとを加えて、加熱処理を行えばよい。なお、この加熱処理は、上記の熱的手法にて行った加熱処理を指すものとする。これにより、可溶性ポリイミドを得ることができる。
【0249】
化学的手法における上記脱水剤としては、一般的には、無水酢酸、無水プロピオン酸等の酸無水物が用いられる。また、上記第3級アミンとしては、ピリジン、イソキノリン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、イミダゾ−ル、ピコリン等を用いればよい。
【0250】
なお、上記可溶性ポリイミドが水酸基を有するものである場合には、脱水剤として加える酸無水物と水酸基との反応が考えられるため、用いる酸無水物は化学量論的にイミド化に必要な最低限の量にすることが好ましい。
【0251】
(2)感光性ドライフィルムレジスト形成工程
上記感光性樹脂組成物を用いて、支持フィルム上に、感光性ドライフィルムレジストを形成させる。上記支持フィルムは、上記感光性ドライフィルムレジストを支持するためのフィルムであればよく、その材質は、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、及びポリイミドフィルムなど、通常市販されている各種のフィルムを用いることができる。上記支持フィルムとしては、ある程度の耐熱性を有し、比較的安価に入手可能であることから、PETフィルムが多く用いられる。なお、上記支持フィルムの感光性ドライフィルムレジストと接する面(表面)には、上記支持フィルムと感光性ドライフィルムレジストとの密着性及び剥離性を向上させるための表面処理が施されていてもよい。
【0252】
上記支持フィルム上に、感光性ドライフィルムレジストを形成させる方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。ここでは、第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物を用いて、二層構造からなる感光性ドライフィルムレジストを形成させる実施形態について、以下、説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、感光性ドライフィルムレジストの層構造に応じて、同じ原理(方法)を用いて、あらゆる層構造の感光性ドライフィルムレジストを形成させることができる。
【0253】
上記第1感光性樹脂組成物を支持フィルム上に均一に塗布した後、加熱及び/又は熱風吹き付けを行う。これによって、上記有機溶媒を除去し、第1感光性樹脂組成物がフィルム状となった第1感光層を得ることができる。このように形成された第1感光層は、感光性樹脂組成物を半硬化状態(Bステージ)に保ったものである。それゆえ、熱ラミネート処理等の熱圧着処理を行う場合には適度な流動性を持ち、プリント配線板のパターン回路の埋め込みを好適に行うことができる。また、パターン回路を埋め込んだ後、露光処理、熱圧着処理、加熱キュアを行うことによって、完全に硬化させることができる。
【0254】
上記加熱及び/又は熱風吹き付けを行うことによって、第1感光性樹脂組成物を乾燥する時の温度は、第1感光性樹脂組成物に含有される(メタ)アクリル基、エポキシ基などの硬化性基が反応しない程度の温度であればよい。具体的には、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることが特に望ましい。また、乾燥時間は有機溶媒を除去することが可能な範囲内で、より短い時間とすることが好ましい。
【0255】
続いて、第1感光層の表面に、上記第2感光性樹脂組成物を用いて、第2感光層を形成する。上記第1感光層の表面に、第2感光層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。具体的には、例えば、1)直接塗布法、及び2)転写法を挙げることができる。1)直接塗布法では、第1感光層表面に第2感光性樹脂組成物を塗布及び乾燥することにより、第2感光層を形成することができる。また、2)転写法では、第2感光性樹脂組成物を表面に塗布し乾燥した保護フィルムの溶液塗布面を第1感光層に貼り合わせた後に、保護フィルムを剥離することにより、第1感光層表面に第2感光層を転写させる。
【0256】
上記1)の方法の場合、支持フィルム上に第1感光層を形成した後、第1感光層表面に第2感光性樹脂組成物をグラビアメッシュなどの塗布器具を用いて均一に塗布する。その後、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶媒を除去して乾燥する。このようにして、第1感光層上に第2感光層が形成された「支持フィルム/第1感光層/第2感光層」という構成の感光性ドライフィルムレジストが得られる。
【0257】
一方、上記2)の方法の場合、第2感光性樹脂組成物をPEフィルムなどの保護フィルムにグラビアメッシュなどの塗布器具を用いて均一に塗布した後、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶媒を除去して乾燥する。こうして得られた第2感光層が形成された保護フィルム(「保護フィルム/第2感光層」)を、第2感光層が第1感光層と接合するように、第1感光層が形成された支持フィルム(「第1感光層/支持フィルム」)と貼り合わせる。なお、この貼りあわせは、20℃〜70℃の温度でロールラミネートすることにより行うことができる。この後、上記保護フィルムを剥離すれば、「支持フィルム/第1感光層/第2感光層」という構成の感光性ドライフィルムレジストが得られる。
【0258】
(3)保護フィルム積層工程
保護フィルム積層工程では、上記感光性ドライフィルムレジスト形成工程で形成された感光性ドライフィルムレジスト上に、保護フィルムを積層する。保護フィルムを積層する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、感光性ドライフィルムレジスト上に、保護フィルムをラミネートして積層することができる。なお、ラミネート処理時の温度は、保護フィルムの熱膨張が起こらず、ラミネート処理後の保護フィルムにしわやカールが生じない温度であればよい。具体的には、上記ラミネート処理時の温度は、10℃〜50℃の温度であることが好ましい。また、上記保護フィルムは、使用時には剥離するため、保護フィルムと感光性ドライフィルムレジストとの接合面は、保管時には適度な密着性を有し、かつ剥離性に優れていることが好ましい。
【0259】
上記保護フィルムの材質は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)、ポリエチレンビニルアルコールフィルム(EVAフィルム)、「ポリエチレンとエチレンビニルアルコールの共重合体フィルム」(以下、「(PE+EVA)共重合体フィルム」ともいう)、「PEフィルムと(PE+EVA)共重合体フィルムとの貼り合わせ体」、もしくは「(PE+EVA)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(片面がPEフィルム面であり、もう片面が(PE+EVA)共重合体フィルム面であるフィルムとなる)等を挙げることができる。上記例示したフィルムのうち、上記PEフィルムは安価であり、表面の滑り性に優れているという長所がある。また、(PE+EVA)共重合体フィルムは、感光性ドライフィルムレジストへの適度な密着性と剥離性とを備えている。したがって、このような保護フィルムを用いることにより、保護フィルム、感光性ドライフィルムレジスト、及び支持フィルムが積層された構造シートをロール状に巻き取った場合に、その表面の滑り性を向上することができる。このような構成とすれば、第2感光層の表面に空気中のゴミやチリが付着することを防止することができる。また、感光性ドライフィルムレジストの乾燥による品質の劣化を防止することができる。なお、該保護フィルムは、感光性ドライフィルムレジストの必須の構成ではない。
【0260】
以上の方法により、本発明にかかるプリント配線板の絶縁保護層の形成に用いる感光性ドライフィルムレジストを製造することができる。なお、本発明にかかるプリント配線板の製造方法において用いる感光性ドライフィルムレジストは、上記製造方法で製造された感光性ドライフィルムレジストに限定されるものではないことはいうまでもない。すなわち、上述した構造を有する感光性ドライフィルムレジストであれば、どのような方法で製造された感光性ドライフィルムレジストを用いてもよい。
【0261】
(I−2)積層工程
上記積層工程では、上述した構造を有する感光性ドライフィルムレジストを、回路基板上に積層する。上記回路基板は、特に限定されるものではなく、基板(ベースフィルム)上に、回路(一般的には、銅回路)が形成されているものであればよい。本実施形態においては、上記回路基板として、ベースフィルム上に銅のパターン回路が形成されてなるCCL(以下、「銅回路付きCCL」ともいう)を用いる実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0262】
上記積層工程では、まず、上記感光性ドライフィルムレジストとして、保護フィルムを備えるものを用いる場合、まず、保護フィルムを剥離する。次に、第2感光層と銅回路付きCCLの回路部分とが対向するように、該銅回路付きCCLを、感光性ドライフィルムレジストにて覆い、熱圧着によって貼り合せる。この熱圧着による貼り合わせは、特に限定されるものではなく、熱プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、熱ロールラミネート処理等によって行えばよい。
【0263】
上記貼り合わせを、熱ラミネート処理、熱ロールラミネート処理(以下、ラミネート処理と記載)によって行う場合、処理温度は、ラミネート処理が可能である下限の温度(以下、圧着可能温度)以上であればよい。具体的には、上記圧着可能温度は、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましく、60℃〜120℃の範囲内であることがより好ましく、80℃〜120℃の範囲内であることが特に好ましい。
【0264】
上記処理温度が150℃を超えると、ラミネート処理時に、感光性ドライフィルムレジストに含まれる感光性反応基の架橋反応が生じ、感光性ドライフィルムレジストの硬化が進行する場合がある。一方、上記処理温度が50℃未満であると、感光性ドライフィルムレジストの流動性が低く、銅回路付きCLLのパターン回路を埋め込むことが困難となる。さらに、銅回路付きCCLの回路や該回路付きCCLのベースフィルムとの接着性が低下する場合がある。しかし、上記温度範囲内であれば、銅回路付きCCL上に感光性ドライフィルムレジストを好適に積層することができる。
【0265】
(I−3)露光・現像工程
上記積層工程で得られた、貼り合わせサンプル(銅回路付きCCL上に積層された感光性ドライフィルムレジスト)についてパターン露光及び現像を行う。このパターン露光及び現像に際しては、上記貼り合わせサンプルの支持フィルム上にフォトマスクパターンを配置し、該フォトマスクを介して露光処理を行う。その後、支持フィルムを剥離して現像処理を行うことにより、フォトマスクパターンに応じた穴(ビア)が形成される。
【0266】
なお、上記支持フィルムは、露光処理後に剥離してもよいし、銅回路付きCCL上に感光性ドライフィルムレジストを貼り合わせた後に、すなわち、露光処理を行う前に剥離してもよい。感光性ドライフィルムレジストを保護する点からは、露光処理が完了した後に剥離することが好ましい。
【0267】
ここで露光に用いる光源としては、250nm〜450nmの光を有効に放射する光源が好ましい。この理由は、感光性ドライフィルムレジストに含有される光反応開始剤が、通常450nm以下の光を吸収して機能するためである。
【0268】
また、上記現像処理は、アルカリ現像であることが好ましく、現像液としては、塩基性化合物が溶解した塩基性溶液を用いればよい。塩基性化合物を溶解させる溶媒は特に限定されるものではなく、上記塩基性化合物を溶解することができる溶媒であればよい。中でも、環境問題等の観点から、水を用いることが特に好ましい。
【0269】
上記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アミン化合物等を挙げることができる。上記塩基性化合物は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0270】
上記塩基性溶液に含有される塩基性化合物の濃度は、0.1重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましいが、感光性ドライフィルムレジストの耐アルカリ性の点から、0.1重量%〜5重量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0271】
また、現像処理の方法も特に限定されるものではない。例えば、塩基性溶液中に現像サンプル(パターン露光後の、感光性ドライフィルムレジストが積層された銅回路付きCCL)を入れて攪拌する方法や、現像液をスプレー状にして現像サンプル(パターン露光後の、感光性ドライフィルムレジストが積層された銅回路付きCCLの感光性ドライフィルムレジスト面)に噴射する方法等が挙げられる。
【0272】
本発明においては、特に好ましい現像方法として、液温40℃に調整した1重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液、あるいは1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を現像液に用い、スプレー現像機を用いて行う現像処理を例示することができる。ここで、スプレー現像機とは、特に限定されるものではなく、現像液をスプレー状にしてサンプルに噴射する装置であればよい。
【0273】
また、現像時間は、上記感光性ドライフィルムレジストのパターンが描かれるのに十分な時間であればよい。一般的には、180秒以下の時間で現像できることが好ましく、90秒以下の時間で現像できることがより好ましく、60秒以下の時間で現像できることが最も好ましい。現像時間が180秒を超えると生産性が劣る傾向がある。
【0274】
現像時間の目安は、Bステージ(半硬化)状態の感光性ドライフィルムレジストの溶解時間を測定する方法により知ることができる。具体的には、感光性ドライフィルムレジストを銅箔光沢面に貼り合わせたサンプルを、未露光の状態で、1重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)、あるいは1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)を現像液として、スプレー圧0.85MPaで、スプレー現像処理を行う。このスプレー現像処理により、感光性ドライフィルムレジストが180秒以下の時間で溶解して除去されることが好ましい。感光性ドライフィルムレジストが溶解除去されるまでの時間が180秒を超えると、作業性が低下する傾向がある。
【0275】
(I−4)洗浄工程
上記露光・現像工程後、露光及び現像された感光性ドライフィルムレジストを、リンス液にて洗浄する。
【0276】
上記リンス液としては、Mgイオン又はCaイオンを含有する水溶液、又は酸性水溶液を用いることが好ましい。
【0277】
上記Mgイオン又はCaイオンを含有する水溶液は、Mgイオン又はCaイオンを10ppm〜1000ppm含有することが好ましく、50ppm〜800ppm含有することがより好ましく、100ppm〜500ppm含有することがさらに好ましい。このようなMgイオン又はCaイオンを含有する水溶液は、Mg塩又はCa塩を水に溶解することにより得ることができる。上記Mg塩は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、及び水酸化マグネシウム等を挙げることができる。上記Ca塩もまた、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、及び水酸化カルシウム等を挙げることができる。これらのMg塩及びCa塩は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、Mg塩とCa塩とを組み合わせて用いてもよい。
【0278】
上記酸性水溶液は、水溶液中での酸性化合物の濃度は、0.001M〜10Mであることが好ましい。また、上記酸性化合物は、25℃におけるpKが7.0以下、好ましくは5.0以下の酸性化合物を含有することが好ましい。上記酸性化合物としては、具体的には、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、亜硝酸、亜硫酸、酢酸、乳酸、及び蟻酸等を挙げることができる。中でも、塩酸、硫酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、及び乳酸を用いることが好ましい。これらの酸性化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0279】
本発明では、感光性ドライフィルムレジストに含有されるバインダーポリマーはカルボキシル基(酸性官能基)を有する。そのため、上記露光・現像工程においてアルカリ現像した際、現像液に含まれるNaイオンやKイオンと、上記バインダーポリマーのカルボキシル基とがイオン結合を形成する。このバインダーポリマーのカルボキシル基とイオン結合したNaイオン及びKイオンが、最終的にレジストに残存すると、得られるプリント配線板の絶縁信頼性が低下する。具体的には、NaイオンやKイオンは、物理的に不安定な1価の陽イオンである。そのため、NaイオンやKイオンやレジストに残存していると、配線パターン上で電解質として働く。その結果、高温高湿下での絶縁信頼性に悪影響を及ぼす。そのため、アルカリ現像処理後、上記バインダーポリマーのカルボキシル基の水素と置換されたNaイオンやKイオンを洗浄により除去する。従来は、この洗浄工程において、リンス液として水道水での水洗、イオン交換水での水洗を適宜組み合わせて行っていた。水道水にも微量のCaイオンは含まれるものの、十分な洗浄効果は得られず、また成分も不安定なため、品質も安定しなかった。
【0280】
しかし、上記Mgイオン又はCaイオンを10ppm〜1000ppm含有する水溶液によれば、上記バインダーポリマーのカルボキシル基に水素結合したNaイオンやKイオンをMgイオン又はCaイオンによって置換し、NaイオンやKイオンを完全に除去することができる。
【0281】
また、上記酸性溶液であれば、感光性ドライフィルムレジストに含有されるバインダーポリマーのカルボキシル基(酸性官能基)よりも酸性が強いため、該カルボキシル基に水素結合したNaイオンやKイオンを効率よく除去することができる。
【0282】
上記洗浄工程における処理時間は、特に限定されるものではなく、リンス液の組成に応じて決定すればよい。例えば、上記リンス液として上記酸性水溶液を用いる場合、一般的に、洗浄処理時間が短すぎると、NaイオンやKイオンの除去を十分に行えなくなる傾向がある。逆に、洗浄処理時間が長すぎると、洗浄中に、回路基板から感光性ドライフィルムレジスト膜が剥離する場合がある。そのため、上記処理時間は、10秒間〜60分間とすることが好ましく、10秒間〜10分間とすることがより好ましく、10秒間〜5分間とすることがさらに好ましい。なお、上記酸性水溶液に含まれる酸性化合物のpKaが小さいほど、また、濃度が大きいほど、洗浄処理時間を短くしても、アルカリ成分の除去効率を高くすることができる。
【0283】
上記洗浄工程における処理温度もまた、特に限定されるものではなく、上記リンス液の組成に応じて決定すればよい。一般的には、0℃〜50℃とすることが好ましく、5℃〜40℃とすることがより好ましく、10℃〜30℃とすることがさらに好ましい。
【0284】
上記リンス液を用いて、パターンが形成された感光性ドライフィルムレジストが積層された回路基板を洗浄する方法は特に限定されるものではないが、例えば、上記露光・現像工程処理後、感光性ドライフィルムレジストが積層された回路基板を上記リンス液中に浸漬して行ってもよいし、上記リンス液をスプレー状にして噴射して行ってもよい。
【0285】
(I−5)加熱硬化工程
上記洗浄工程後、加熱により、感光性ドライフィルムレジストを完全に硬化させる。これにより、硬化した感光性ドライフィルムレジストは、プリント配線板の絶縁保護膜となる。
【0286】
上記加熱硬化工程において、加熱温度は、特に限定されるものではないが、できるだけ低いことが好ましい。上記感光性ドライフィルムレジストにおいてバインダーポリマーとして含有されるポリアミド酸は、上述したように、180℃以下の加熱で95%以上のイミド化率となる。したがって、上記加熱硬化工程では、180℃以下の加熱により、上記感光性ドライフィルムレジストを硬化させることが好ましい。このような構成によれば、リジット及びフレキシブルプリント基板の構成材(一般的には、例えば、エポキシ樹脂等)の耐熱性が200℃程度であっても、構成材を損傷することはない。また、高温により、銅箔の酸化や、銅の結晶構造変化が起こり、銅箔の強度が低下することを防止することができる。
【0287】
以上の工程を経ることにより、絶縁信頼性の高いフレキシブル配線板を製造することができる。
【0288】
また、多層のプリント配線板を形成する場合には、プリント配線板の保護層を層間絶縁層とし、該層間絶縁層上に、さらにスパッタリングや鍍金、もしくは銅箔との貼り合わせ等を行った後、パターン回路を形成し、上記のように感光性ドライフィルムレジストを積層すればよい。これにより、多層のプリント配線板を製造することができる。
【0289】
本発明にかかるプリント配線板の製造方法は、上記の各工程を備えているため、絶縁信頼性に優れるプリント配線板を製造することができる。本発明には、本発明にかかるプリント配線板の製造方法により製造されたプリント配線板も含まれる。本発明にかかるプリント配線板は、回路基板上に、上述した感光性ドライフィルムレジストを用いて形成された絶縁保護層を備えるプリント配線板である。上記プリント配線板は、該絶縁保護層(換言すれば、熱硬化した上記感光性ドライフィルムレジスト)の表面に、Naイオン及びKイオンが実質的に残存していない。それゆえ、本発明にかかるプリント配線板は、絶縁信頼性に優れる。なお、ここでいう「Naイオン及びKイオンが実質的に残存しない」とは、Naイオン及びKイオンが全く残存していないことに加えて、Naイオン又はKイオンがわずかに残存しているが、検出感度以下(ノイズレベル)であること意図される。
【0290】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0291】
本発明について、実施例及び比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、及び改変を行うことができる。なお、以下の実施例及び比較例における感光性ドライフィルムレジストの物性は、次のようにして評価した。
【0292】
〔感光性ドライフィルムレジストの物性の評価〕
感光性ドライフィルムレジストについて、(i)絶縁信頼性、(ii)Naイオンの有無、(iii)密着性、(iv)難燃性、(v)半田耐熱性、及び、(vi)反りについて、以下の方法により評価した。
【0293】
(i)絶縁信頼性
感光性ドライフィルムレジストの絶縁信頼性は、プリント配線板の抵抗値変化、銅回路の変色、イオンマイグレーションの有無によって評価することができる。
【0294】
具体的には、ドライフィルムレジストが良好な状態では、上記抵抗値は一定で、銅回路の変色、及びイオンマイグレーションも見られない。ドライフィルムレジストの絶縁性が低下し始める初期段階では、上記抵抗値は保持されているものの、やや抵抗値が低下し始める。さらに、銅回路も変色し始める。ただし、この時点では、イオンマイグレーションは見られない。ドライフィルムレジストの絶縁性がさらに低下すると、上記抵抗値は、ある程度保持されているが、より低下が進むと共に、銅回路が黒色化する。さらに、銅回路の銅が樹脂上に析出しはじめ、イオンマイグレーションの初期症状が現れる。そして、ドライフィルムレジストの絶縁性がより低下すると、上記抵抗値は短絡し、銅回路の銅が樹脂上に析出し導体間を繋ぎ、イオンマイグレーションが発生する。なお、イオンマイグレーションとは、プリント配線板の電極間でイオンが移行して、絶縁が劣化する現象である。より詳しく説明すると、絶縁体(ここでは、ドライフィルムレジスト)が、イオン性の物質(ここでは、Naイオン)により汚染、又は、該物質を含有する場合に発生する。このような場合には、加湿下で電圧を印加すると、イオンが移動して、金属が樹脂上に析出し、短絡する。
【0295】
本実施例及び比較例では、感光性ドライフィルムレジストの絶縁安定性を、上記抵抗値変化、及び銅回路の変色を指標に評価した。以下に、具体的な評価方法を示す。
【0296】
銅箔付きポリイミドフィルム(新日鐵化学(株)製、商品名エスパネックス、ポリイミドフィルムの厚み25μm、銅箔の厚み18μm)の銅箔面、レジストフィルム(旭化成(株)製、サンフォート)を用いて、図1及び図2に、それぞれ示す、ライン/スペース=100/100μm及び25/25μmの櫛型パターンを形成して、回路付きCCLを得た。保護フィルムを剥離した感光性ドライフィルムレジストを、この回路付きCCLの櫛型パターン部分の上を被覆するように重ねて、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この貼り合わせサンプルの感光性ドライフィルムレジスト面に波長405nmの光を300mJ/cm露光した後、PETフィルムを剥離し、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)を使用して、60秒スプレー現像を行った。所定のリンス液で、60秒浸漬リンスした後、さらに蒸留水で洗浄処理行った後、180℃で2時間キュアして硬化させた。
【0297】
このサンプルを温度85℃/相対湿度85%の条件の恒温恒湿器(エスペック製、商品名プラチナスPR―2K)の中に入れ、櫛型パターンの端子間に60Vの電圧を印加し続け、30分間おきに線間絶縁抵抗を測定した。
【0298】
少なくとも、ライン/スペース=100/100μmの櫛型パターンで、印加時間が500時間の時点での抵抗値が、1.0×10Ω以上であれば合格とし、500時間未満で回路が短絡してしまうものは不合格とした。ライン/スペース=25/25μmの櫛型パターンでも1.0×10Ω以上の抵抗値を保持していれば、絶縁信頼性はより良好であるといえる。
【0299】
また、印加時間から500時間経過後のサンプルを光学顕微鏡で観察し、銅回路の変色を観察した。銅回路が変色していなければ絶縁信頼性は、より良好でるといえる。
【0300】
(ii)Naイオンの有無
絶縁信頼性試験用サンプルについて、硬化後のドライフィルムレジストにNaイオンが残存しているかどうかを、EPMA(XMA)分析により評価した。なお、装置には、日立製S−3000N型、堀場製 EXAM−7000を使用した。
【0301】
(iii)密着性
感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離後、25μm厚のポリイミドフィルム((株)カネカ製 NPI)に100℃、75000Pa・mでラミネート加工した。次に、波長405nmの光を600mJ/cmだけ露光した後、PETフィルムを剥離し、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)を使用して、60秒スプレー現像を行った。所定のリンス液で、60秒浸漬リンスした後、さらに蒸留水で洗浄処理行った後、180℃で2時間キュアして硬化させた。
【0302】
このように製造した「ポリイミドフィルム/感光性ドライフィルムレジスト」積層体サンプルをIPC TM650 2.4.28.1に準拠してクロスカットピール試験を行い、剥離が無ければ合格とした。
【0303】
(iv)難燃性
感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離後、50μm厚みのポリイミドフィルム((株)カネカ製 NPI)の両面に100℃、75000Pa・mでラミネート加工した。次に、波長405nmの光を両面に600mJ/cmだけ露光した後、PETフィルムを剥離し、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)を使用して、60秒スプレー現像を行った。所定のリンス液で、60秒浸漬リンスした後、さらに蒸留水で洗浄処理行った後、180℃で2時間キュアして硬化させた。
【0304】
このように製造した「感光性ドライフィルムレジスト/ポリイミドフィルム/感光性ドライフィルムレジスト」積層体サンプルをUL94薄手材料垂直燃焼試験(VTM−0)にしたがって試験を行った。
【0305】
(v)半田耐熱性
銅箔(三井金属(株)製の電解銅箔、厚み38μm)を5cm角にカットし10重量%硫酸水溶液で1分間ソフトエッチングし、水洗い後、エタノール、アセトンで表面を洗ってから乾燥させた。次に4cm角にカットした感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離し、上記電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に重ねて、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この貼り合わせサンプルの感光性ドライフィルムレジスト面に波長405nmの光を300mJ/cm露光した後、PETフィルムを剥離し、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)を使用して、60秒スプレー現像を行った。所定のリンス液で、60秒浸漬リンスした後、さらに蒸留水で洗浄処理行った後、180℃で2時間キュアして硬化させた。
【0306】
このサンプルを<1>常態(20℃/相対湿度40%の環境で24時間)、<2>吸湿(40℃/相対湿度85%の環境で48時間)調湿した後に、260℃以上の溶融半田に30秒間浮かべ、銅箔と感光性ドライフィルムレジストの界面に膨れの発生若しくは剥離が生じていない最高温度を測定した。少なくとも260℃以上の半田耐熱性があれば、合格とした。
【0307】
(vi)反り
ポリイミドフィルム アピカル25NPI(カネカ製)に密着性の測定項と同様に作製した感光性ドライフィルムレジストをあわせ110℃、20000Pa・mの条件でラミネートした。続いて、400nmの光を300mJ/cmだけ露光した後、PETフィルムを剥離し、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)を使用して、60秒スプレー現像を行った。所定のリンス液で、60秒浸漬リンスした後、さらに蒸留水で洗浄処理行った後、180℃で2時間キュアして硬化して積層体を得た。この積層体を5cm各にカットして5cm×5cmの試験サンプルとした。試験サンプルを23℃65%RHの環境下に24時間放置後、感光性ドライフィルムレジスト面を上にして平らな台の上におき、台からそりあがった部分の最大高さを定規で測定し反り(mm)とした。反りが5mm以下を合格ラインとした。
【0308】
〔合成例1:ポリアミド酸の合成〕
感光性ドライフィルムレジストのバインダーポリマーとして用いるポリアミド酸を以下のようにして合成した。
【0309】
攪拌機を設置した2000mlのセパラブルフラスコに、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン 29.23g(100mmol)をとり、N,N’−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」ともいう) 58.46gに溶解して加え室温で1時間撹拌を行った。ついで、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以下、「BTDA」ともいう) 31.02g(100mmol)を加え、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸を得た。得られたポリアミド酸について重量平均分子量を測定した。重量平均分子量は、高速GPC(東ソー製、商品名HLC−8220GPC)を用いて測定した。測定条件は、溶離液として、DMF(30mM LiBr、20mM HPOを含む)を用い、カラムとして、TSK gel Super AWM-H(東ソー製)2本を用い、カラム温度40℃、検出器としてRI、流量0.6ml/minで、標準試料として、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコールを使用した。その結果、上記ポリアミド酸の重量平均分子量は100000であった。
【0310】
〔合成例2:ポリアミド酸の合成〕
攪拌機を設置した2000mlのセパラブルフラスコに、BTDA 31.02g(100mmol)、DMF 102.7gをとり、信越化学製ポリシロキサンジアミンX−22−9409S 59.68g(40mmol:分子量1492)をDMF 59.68gに溶解して加え室温で1時間撹拌を行った。ついで、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン 17.54g(60mmol)を加え、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸を得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量を、合成例1に記載の方法で測定したところ、上記ポリアミド酸の重量平均分子量は80000であった。
【0311】
〔合成例3:ポリアミド酸の合成〕
3Lセパラブルフラスコに攪拌機、還流冷却器、滴下ロート及び窒素導入菅を設置し、窒素雰囲気下、ピロメリット酸二無水物 87.3g(400mmol)、N−メチルピロリドン(以下、「NMP」ともいう) 496gをフラスコ内に投入し、これを攪拌しながら内部温度を50℃まで昇温した。その温度で、滴下ロートから東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のポリシロキサンジアミン BY16−853U(一般式(6)中R=プロピレン基、mが約10、フェニル基の含有量0%)92.6g(100mmol:分子量926)を少量ずつ2時間かけて滴下した。滴下終了後、その温度で1時間撹拌を継続させた。その後、反応温度を30℃以下に冷却し、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを87.7g(300mmol)添加後20時間窒素雰囲気下で攪拌を継続し、ポリアミド酸を得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量を合成例1に記載の方法で測定したところ、上記ポリアミド酸の重量平均分子量は120000であった。
【0312】
〔合成例4:カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの合成〕
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコに(2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト)−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物 17.3g (30mmol)、ジメチルホルムアミドを30g入れて、攪拌機で攪拌して溶解させた。次に、[ビス(4−アミノ−3−カルボキシ)フェニル]メタン 5.15g (18mmol)をDMF 9gに溶解して、上記(2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト)−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物の溶液に加え、激しく攪拌した。溶液が均一になったらさらに、上記溶液に信越化学製ポリシロキサンジアミンKF−8010を7.47g(9mmol)を加え、激しく攪拌した。溶液が均一になったら最後に、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンを1.29g(3mmol)加えて1時間激しく攪拌した。このようにして得たポリアミド酸溶液をフッ素系樹脂でコートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、26.40gのカルボキシル基を有するポリイミドを得た。得られたポリイミドの重量平均分子量は37000であった。
【0313】
〔実施例1〕
(1)第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物の調製
第1感光性樹脂組成物として、以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させて有機溶媒溶液を調製した。また、第2感光性樹脂組成物として、以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=30%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させて有機溶媒溶液を調製した。
【0314】
ここで、固形分重量とは、有機溶媒以外の材料のことであり、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分の総重量を示す。例えば第1感光層樹脂組成物の場合、(A1)、(B1)、(C1)、(D1)及び(E1)成分の総重量を示し、有機溶媒以外の液体材料の重量は、液体であっても固形分として重量に含めるものとする。
<第1感光性樹脂組成物>
(A1)バインダーポリマー
・カルボキシル基含有ビニル系ポリマー(ダイセルサイテック(株)製、製品名ACA320 重量平均分子量25000)・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名EB150)・・・・・20重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・20重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・1重量部
(D1)難燃剤
・レゾルシノールビス(ジ2,6−キシレニル)ホスフェート(大八化学(株)製、製品名PX−200・・・・・30重量部
<第2感光性樹脂組成物>
(A2)バインダーポリマー
・カルボキシル基含有ビニル系ポリマー(ダイセルサイテック(株)製、製品名ACA320 重量平均分子量25000)・・・・・100重量部
(B2)(メタ)アクリル系化合物
・ペンタエリストールアクリレート(東亜合成(株)製、製品名M305)・・・・・40重量部
(C2)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・1重量部。
【0315】
(2)感光性ドライフィルムレジストの製造
上記第1感光性樹脂組成物を、乾燥後の厚み(感光性ドライフィルムレジストの厚み)が20μmになるように支持フィルムに塗布した。支持フィルムとしては、PETフィルム(東レ(株)製ルミラー、厚み25μm)を用いた。その後、支持フィルム上の塗布層を100℃10分間の条件で乾燥することによって、有機溶媒を除去した。これにより、第1感光層/PETフィルムからなるシートを得た。なお、第1感光層はBステージ状態にある。
【0316】
次に、第1感光層の表面に、転写法により、第2感光層を形成させた。具体的には、PPSフィルム(東レ(株)製トレリナ#3000、厚み25μm)上に、第2感光性樹脂組成物を、乾燥後の厚みが5μmになるように塗布し、100℃で5分間乾燥して有機溶媒を除去した。
【0317】
こうして得られた第2感光層が形成された保護フィルムを第2感光層側が、上記で製造した第1感光層の表面に接するようにして、ロール温度45℃、ニップ圧は50000Pa・mの条件でラミネートした。これにより、第1感光層20μm厚、第2感光層5μm厚であるBステージ状態の二層構造の感光性ドライフィルムレジストを得た。なお、PPSフィルムは感光性ドライフィルムレジスト使用時に、まず剥離されるものである。
【0318】
(3)感光性ドライフィルムレジストの物性の評価
得られた感光性ドライフィルムレジストについて、上述の評価方法を用いて、物性の評価を行った。その結果を以下に示す。なお、現像後のリンス液には700ppm塩化カルシウム水溶液を使用した。
絶縁信頼性:合格(ライン/スペース=100/100μm:2.1×10Ω、ライン/スペース=25/25μm:6.5×10Ω)。銅回路の変色(ライン/スペース=100/100μm:なし、ライン/スペース=25/25μm:黒色に変色)。
Naイオンの有無:Naイオンは検出されなかった。
密着性:合格。
難燃性:合格。
半田耐熱性:半田耐熱性は260℃で合格。
反り:4mmで合格。
【0319】
〔実施例2〕
(1)第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物の調製
第1感光性樹脂組成物として、以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させて有機溶媒溶液を調製した。また、第2感光性樹脂組成物として、以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=30%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させて有機溶媒溶液を調製した。
<第1感光性樹脂組成物>
(A1)バインダーポリマー
・合成例1で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名EB150)・・・・・10重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・40重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・2重量部
(D1)難燃剤
・ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート(大八化学(株)製、製品名CR−741・・・・・15重量部
<第2感光性樹脂組成物>
(A2)バインダーポリマー
・合成例1で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B2)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・40重量部
(C2)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・1重量部。
【0320】
(2)感光性ドライフィルムレジストの製造
上記第1感光性樹脂組成物を、乾燥後の厚み(感光性ドライフィルムレジストの厚み)が20μmになるように支持フィルムに塗布した。支持フィルムとしては、PETフィルム(東レ(株)製ルミラー、厚み25μm)を用いた。その後、支持フィルム上の塗布層を100℃10分間の条件で乾燥することによって、有機溶媒を除去した。これにより、第1感光層/PETフィルムからなるシートを得た。なお、第1感光層はBステージ状態にある。
【0321】
次に、第1感光層の表面に、直接塗布法により、第2感光層を形成させた。具体的には、上記で製造した第1感光層の表面に、第2感光性樹脂組成物を、乾燥後の厚みが5μmになるように塗布し、100℃で5分間乾燥して有機溶媒を除去した。
【0322】
このようにして製造された支持フィルム/感光性ドライフィルムレジスト上に、保護フィルムとして「(EVA+PE)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(積水化学(株)製プロテクト(#6221F)フィルム(厚み50μm))をその(EVA+PE)共重合体フィルム面が感光性ドライフィルムレジスト面と接するように、ロール温度40℃、ニップ圧は50000Pa・mの条件でラミネートした。こうして、第1感光層20μm厚、第2感光層5μm厚であるBステージ状態の二層構造の感光性ドライフィルムレジストを得た。
【0323】
(3)感光性ドライフィルムレジストの物性の評価
得られた感光性ドライフィルムレジストについて、上述の評価方法を用いて、物性の評価を行った。その結果を以下に示す。なお、現像後のリンス液には300ppm硫酸マグネシウム水溶液を使用した。
絶縁信頼性:合格(ライン/スペース=100/100μm:5.8×1011Ω、ライン/スペース=25/25μm:4.5×10Ω)。銅回路の変色(ライン/スペース=100/100μm:なし、ライン/スペース=25/25μm:なし)。
Naイオンの有無:Naイオンは検出されなかった。
密着性:合格。
難燃性:合格。
半田耐熱性:半田耐熱性は290℃で合格。
反り:筒状 不合格。
【0324】
〔実施例3〕
(1)第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物の調製
第1感光性樹脂組成物として、以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させて有機溶媒溶液を調製した。また、第2感光性樹脂組成物として、以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=30%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させて有機溶媒溶液を調製した。
<第1感光性樹脂組成物>
(A1)バインダーポリマー
・合成例2で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名EB150)・・・・・20重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・30重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・2重量部
(D1)難燃剤
・ホスファゼン化合物(大塚化学(株)製、製品名SPH−100)・・・・・20重量部
<第2感光性樹脂組成物>
(A2)バインダーポリマー
・合成例2で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B2)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名EB150)・・・・・10重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・20重量部
(C2)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・1重量部。
【0325】
(2)感光性ドライフィルムレジストの製造
上記第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物を用いて、実施例2と同様の方法で第1感光層20μm厚、第2感光層5μm厚であるBステージ状態の二層構造の感光性ドライフィルムレジストを製造した。
【0326】
(3)感光性ドライフィルムレジストの物性の評価
得られた感光性ドライフィルムレジストについて、上述の評価方法を用いて、物性の評価を行った。その結果を以下に示す。なお、現像後のリンス液には600ppm塩化カルシウム水溶液を使用した。
絶縁信頼性:合格(ライン/スペース=100/100μm:6.0×1011Ω、ライン/スペース=25/25μm:5.9×10Ω)。銅回路の変色(ライン/スペース=100/100μm:なし、ライン/スペース=25/25μm:なし)。
Naイオンの有無:Naイオンは検出されなかった。
密着性:合格。
難燃性:合格。
半田耐熱性:半田耐熱性は290℃で合格。
反り:1mm以下で合格。
【0327】
〔実施例4〕
実施例3において、感光性ドラフィルムレジストの現像後のリンス液を0.1重量%硫酸に変更して、感光性ドライフィルムレジストの物性評価を行った。その結果を以下に示す。
絶縁信頼性:合格(ライン/スペース=100/100μm:7.0×1011Ω、ライン/スペース=25/25μm:9.5×10Ω)。銅回路の変色(ライン/スペース=100/100μm:なし、ライン/スペース=25/25μm:なし)。
Naイオンの有無:Naイオンは検出されなかった。
密着性:合格。
難燃性:合格。
半田耐熱性:半田耐熱性は290℃で合格。
反り:1mm以下で合格。
【0328】
〔実施例5〕
(1)第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物の調製
第1感光性樹脂組成物として、以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させて有機溶媒溶液を調製した。また、第2感光性樹脂組成物として、以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=30%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させて有機溶媒溶液を調製した。
<第1感光性樹脂組成物>
(A1)バインダーポリマー
・合成例4で合成したカルボキシル基を有する可溶性ポリイミド・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・変性ビスフェノールA型のエポキシアクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名Ebecryl3708)・・・・・50重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア819)・・・・・2重量部
(D1)難燃剤
・ホスファゼン化合物(大塚化学(株)製、製品名SPE−100)・・・・・15重量部
<第2感光性樹脂組成物>
(A2)バインダーポリマー
・合成例4で合成したカルボキシル基を有する可溶性ポリイミド・・・・・100重量部
(B2)(メタ)アクリル系化合物
・変性ビスフェノールA型のエポキシアクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名Ebecryl3708)・・・・・50重量部
(C2)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア819)・・・・・2重量部
(E2)その他の成分
エポキシ樹脂として、
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、製品名エピコート828)・・・・・10重量部
硬化剤として、
・4,4'−ジアミノジフェニルメタン(DDM)・・・・・1重量部。
【0329】
(2)感光性ドライフィルムレジストの製造
上記第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物を用いて、実施例2と同様の方法で第1感光層20μm厚、第2感光層5μm厚であるBステージ状態の二層構造の感光性ドライフィルムレジストを製造した。
【0330】
(3)感光性ドライフィルムレジストの物性の評価
得られた感光性ドライフィルムレジストについて、上述の評価方法を用いて、物性の評価を行った。その結果を以下に示す。なお、現像後のリンス液には1重量%塩酸を使用した。
絶縁信頼性:合格(ライン/スペース=100/100μm:9.0×10Ω、ライン/スペース=25/25μm:5.9×10Ω)。銅回路の変色(ライン/スペース=100/100μm:なし、ライン/スペース=25/25μm:黒色に変色)。
Naイオンの有無:Naイオンは検出されなかった。
密着性:合格。
難燃性:合格。
半田耐熱性:半田耐熱性は300℃で合格。
反り:3mmで合格。
【0331】
〔比較例1〕
(1)第1感光性樹脂組成物及び第2感光性樹脂組成物の調製
第1感光性樹脂組成物として、以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させて有機溶媒溶液を調製した。また、第2感光性樹脂組成物として、以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=30%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させて有機溶媒溶液を調製した。
<第1感光性樹脂組成物>
(A1)バインダーポリマー
・合成例3で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・ペンタエリストールアクリレート(東亜合成(株)製、製品名M−305)・・・・・25重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・25重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・2重量部
(D1)難燃剤
・ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート(大八化学(株)製、製品名CR−741・・・・・20重量部
(2)感光性ドライフィルムレジストの製造
上記第1感光性樹脂組成物を、乾燥後の厚み(感光性ドライフィルムレジストの厚み)が25μmになるように支持フィルムに塗布した。支持フィルムとしては、PETフィルム(東レ(株)製ルミラー、厚み25μm)を用いた。その後、支持フィルム上の塗布層を100℃10分間の条件で乾燥することによって、有機溶媒を除去した。これにより、第1感光層の厚み25μmで、第2感光層は設けないBステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを得た。
【0332】
(3)感光性ドライフィルムレジストの物性の評価
得られた感光性ドライフィルムレジストについて、上述の評価方法を用いて、物性の評価を行った。その結果を以下に示す。なお、現像後のリンス液には、600ppm塩化カルシウム水溶液を使用した。
絶縁信頼性:不合格(ライン/スペース=100/100μm:400時間後に短絡、ライン/スペース=25/25μm:200時間後に短絡)。銅回路の変色(ライン/スペース=100/100μm:黒色に変色、ライン/スペース=25/25μm:黒色に変色)。
Naイオンの有無:Naイオンは検出されなかった。
密着性:合格。
難燃性:合格。
半田耐熱性:半田耐熱性は260℃で合格。
反り:4mm以下で合格。
【0333】
このように、第2感光層を設けない感光性ドライフィルムレジストでは、Naイオンを除去しても、絶縁信頼性に劣る結果となった。
【0334】
〔比較例2〕
実施例1において、感光性ドラフィルムレジストの現像後のリンス液を蒸留水に変更して、感光性ドライフィルムレジストの物性評価を行った。その結果を以下に示す。
絶縁信頼性:合格(ライン/スペース=100/100μm:1.7×10Ω、ライン/スペース=25/25μm:4.5×10Ω)。銅回路の変色(ライン/スペース=100/100μm:黒色に変色、ライン/スペース=25/25μm:黒色に変色)。
Naイオンの有無:Naイオンが検出された。
密着性:合格。
難燃性:合格。
半田耐熱性:半田耐熱性は260℃で合格。
反り:4mmで合格。
【0335】
このように、リンス工程が水洗のみの場合、Naイオンが検出され、電気絶縁性がやや劣る場合がある。
【0336】
〔比較例3〕
実施例2において、感光性ドラフィルムレジストの現像後のリンス液を1ppm硫酸マグネシウム水溶液に変更して、感光性ドライフィルムレジストの物性評価を行った。その結果を以下に示す。
絶縁信頼性:合格(ライン/スペース=100/100μm:5.4×1011Ω、ライン/スペース=25/25μm:3.7×10Ω)。銅回路の変色(ライン/スペース=100/100μm:黒色に変色、ライン/スペース=25/25μm:黒色に変色)。
Naイオンの有無:Naイオンが検出された。
密着性:合格。
難燃性:合格。
半田耐熱性:半田耐熱性は290℃で合格。
反り:筒状 不合格。
【0337】
このように、Mgイオン、Caイオンの濃度が極端に低い場合、Naイオンの置換が十分に行われず、残存する場合がある。
【0338】
以上の実施例1〜5における感光性ドライフィルムレジストの構成を表1に、該感光性ドライフィルムレジストの物性評価の結果を表2にまとめている。同様に、比較例1〜3における感光性ドライフィルムレジストの構成を表3に、該感光性ドライフィルムレジストの物性評価の結果を表4にまとめている。
【0339】
【表1】

【0340】
【表2】

【0341】
【表3】

【0342】
【表4】

なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0343】
以上のように、本発明では、プリント配線板の製造方法において、回路基板上に積層された感光性ドライフィルムレジストの現像後の洗浄を、Mgイオン又はCaイオンを含有する水溶液、又は酸性水溶液を用いて行う。そのため、絶縁信頼性の高いプリント配線板を製造することができる。したがって、本発明は、FPC等のプリント配線板を製造する産業に用いることができるだけではなく、このようなプリント配線板を用いる電子機器の産業分野に広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0344】
【図1】実施例の絶縁信頼性を評価する方法において、フレキシブル銅貼積層板上に形成させる櫛型パターン(ライン/スペース=100μm/100μm)を示す模式図である。
【図2】実施例の絶縁信頼性を評価する方法において、フレキシブル銅貼積層板上に形成させる櫛型パターン(ライン/スペース=25μm/25μm)を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性ドライフィルムレジストを用いて形成された絶縁保護層を備えているプリント配線板の製造方法において、
上記感光性ドライフィルムレジストは、
(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、及び(D1)難燃剤を必須成分として含有する第1感光層と、
(A2)バインダーポリマー、及び(B2)(メタ)アクリル系化合物を必須成分として含有する第2感光層と、を含む多層構造からなり、
上記第2感光層の全重量に対する(D2)難燃剤の割合は、0重量%〜10重量%であり、
かつ、該(D2)難燃剤の割合は、第1感光層の全重量に対する(D1)難燃剤の割合の0%〜50%以下であって、
上記第2感光層が回路面に接するように、上記感光性ドライフィルムレジストを回路基板上に積層し、
該感光性ドライフィルムレジストに対して、露光及びアルカリ現像を行った後、
(a)Mgイオン又はCaイオンを10ppm〜1000ppm含有する水溶液、又は(b)酸性水溶液を用いて、該感光性ドライフィルムレジストを洗浄することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
上記Mgイオン又はCaイオンを10ppm〜1000ppm含有する水溶液は、硫酸マグネシウム水溶液、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム水溶液、塩化カルシウム水溶液水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、及び水酸化カルシウム水溶液からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
上記酸性水溶液は、0.001M〜10Mの酸性化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
上記酸性化合物は、25℃におけるpKが7.0以下の酸性化合物であることを特徴とする請求項3に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
上記酸性化合物は、塩酸、硫酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、及び乳酸からなる群より選択されることを特徴とする請求項3に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
上記第2感光層は、(C2)光反応開始剤を必須成分としてさらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
上記(D1)難燃剤及び/又は(D2)難燃剤がリン系化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
上記(A1)バインダーポリマー及び/又は(A2)バインダーポリマーは、カルボキシル基含有ビニル系ポリマーを含んでいることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
上記(A1)バインダーポリマー及び/又は(A2)バインダーポリマーは、ポリアミド酸を含んでいることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
上記ポリアミド酸は、下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
で表されるポリシロキサンジアミンを原料の一部として用いたポリアミド酸であることを特徴とする請求項9に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
上記ポリアミド酸は、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rはそれぞれ独立して、炭素数2〜5のアルキレン基を示し、Rはそれぞれ独立して、メチル基又はフェニル基を示し、R中のフェニル基の含有率が15%〜40%であり、且つ、mは4〜20の整数である。)
で表される構成単位と、
下記一般式(3)
【化3】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、芳香族ジアミンから2個のアミノ基を除いた2価の有機基を示す。)
で表される構成単位とからなるポリアミド酸であることを特徴とする請求項9に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
上記ポリアミド酸は、下記一般式(4)
【化4】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、下記化学式群(5)
【化5】

で表されるa、b、c、d、e、f又はgであり、化学式a中、mは1〜20のいずれかの整数を、nは0〜10のいずれかの整数を示し、化学式f中、Rは水素原子、メチル基、エチル基又はブチル基を示す。)
で表される構成単位をさらに有することを特徴とする請求項11に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項13】
上記ポリアミド酸は、下記一般式(4)
【化6】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、下記化学式群(5)
【化7】

で表されるa、b、c、d、e、f又はgであり、化学式a中、mは1〜20のいずれかの整数を、nは0〜10のいずれかの整数を示し、化学式f中、Rは水素原子、メチル基、エチル基又はブチル基を示す。)
で表される構成単位と、
下記一般式(3)
【化8】

(式中、Rは4価の有機基を示し、Rは、芳香族ジアミンから2個のアミノ基を除いた2価の有機基を示す。)
で表される構成単位とからなるポリアミド酸であることを特徴とする請求項9に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項14】
上記一般式(3)で表される構成単位は、上記一般式(3)中、Rの2価の有機基において、上記2個のアミノ基が結合していた芳香環の少なくともひとつが、メタ位に位置する2本の結合手で主鎖に結合している構成単位を含むことを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項15】
上記一般式(3)中、Rの2価の有機基は、
m−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノベンズアニリド、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、及び2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパンからなる群より選択される芳香族ジアミンから、2個のアミノ基を除いた2価の有機基であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項16】
上記(A1)バインダーポリマー及び/又は(A2)バインダーポリマーは、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドを含んでいることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項17】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドは、
下記一般式(1)
【化9】

(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
で表されるポリシロキサンジアミンを原料の一部として用いたカルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドであることを特徴とする請求項16に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項18】
上記第1感光層の厚みを100とした場合、上記第2感光層の厚みは、500以下であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項19】
上記感光性ドライフィルムレジストの洗浄後、
該感光性ドライフィルムレジストを180℃以下の温度で硬化させることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−15158(P2009−15158A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178789(P2007−178789)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】