説明

ベルト及びこれを備える画像形成装置

【課題】耐久寿命の長い転写ベルト及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】外周面に像担持体に形成されたトナー像が転写される無端状のベルト本体6a,61aの内周面の少なくとも一側部に設けられ、ローラRに形成された係止溝R1に係止される蛇行防止部材6b,61bの全体を発泡体により形成することにより、蛇行防止部材6b,61bのベルト本体6a,61aからの剥離及びベルト本体6a,61aの破損を防止するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト及びこれを備える画像形成装置に関し、特に無端状のベルトの内周面に設けられた蛇行防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真装置等の画像形成装置においては、ベルト状感光体、中間転写ベルト、転写ベルト、紙搬送ベルト、定着ベルト等としてエンドレスベルトが使用されている。
【0003】
ここで、このようなエンドレスベルトは、一般に2本以上のローラにより支持され、任意の張力を与えられながら回転駆動されているが、支持するローラの真直度あるいは真円度、各々のローラの軸線の平行度、エンドレスベルトそのものの真円度等に僅かな誤差やばらつきがあるため、回転駆動中に左右に蛇行する場合がある。そして、このようなエンドレスベルトを精度が要求されるフルカラー電子写真装置等の転写ベルトに用いた場合、この転写ベルトの蛇行により、転写ベルト上での色重ね時に各色の作像位置がずれ、色ズレを生じてしまう。
【0004】
そこで、このような蛇行を防止するため、転写ベルトの内周面に蛇行防止部材を全周にわたって設けると共に、転写ベルトが張架されるローラに溝を設け、この溝に蛇行防止部材を係止させながらローラを回転させることにより、転写ベルトを蛇行させることなくスムーズに走行させることができ、これにより色ズレのない良好な画像の形成が可能となる。
【0005】
ところが、この構成の転写ベルトでは、蛇行防止部材がローラ等で変形することによる応力により転写ベルトから蛇行防止部材が剥離したり、場合によっては転写ベルトに亀裂を生じることがあった。このため、例えばベルト補強基材にアクリル発泡体を用い、その上に硬度を規定したポリウレタンシートを粘着することにより、蛇行防止効果とベルトヘの応力緩和効果を奏するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−099706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような構成の場合、蛇行防止部材の厚みの大部分を非発泡体が占めるため、ベルト屈曲部で蛇行防止部材が大きく変形し、多大な応力を受けることから、長期間使用した場合、蛇行防止部材が剥離することがある。
【0008】
そして、この現象は、特に転写ベルトを張架しているローラの直径が小さく、転写ベルトのローラに対する巻付角が大きい場合に顕著であった。つまり、転写ベルトの寿命を満たすためには転写ベルトを張架しているローラの直径を太くし、転写ベルトのローラヘの巻付角を小さくする、つまりローラを多軸にする必要があり、このことは画像形成装置の小型化の大きな障壁となる。
【0009】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、耐久寿命の長いベルト及びこれを備える画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、無端状のベルト本体と、前記ベルト本体の内周面に設けられている蛇行防止部材を有し、前記ベルト本体は張架部材に張架され、前記ベルト本体と前記蛇行防止部材は移動可能であり、前記蛇行防止部材が前記張架部材に接触して前記ベルト本体及び前記蛇行防止部材の移動方向に直交する方向の移動を規制するベルトにおいて、前記蛇行防止部材は、全体が発泡体で形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のように、無端状のベルト本体の内周面に設けられる蛇行防止部材を発泡体によって全体を形成することにより、蛇行防止部材の剥離及びベルトの破損を防止することができ、これにより耐久寿命の長いベルトを得ることができる。また、蛇行防止部材の全体を発泡体によって形成することにより、ベルトを張架するローラの直径が小さく、また巻付角が大きい場合でも、蛇行防止部材の剥離及びベルトの破損を防止することができ、これにより画像形成装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るベルトの一例である中間転写ベルトを用いる画像形成装置の概略構成を示す図。
【図2】本発明の実施の形態に係るベルトの一例である転写搬送ベルトを用いる画像形成装置の概略構成を示す図。
【図3】上記ベルト(中間転写ベルト及び転写搬送ベルト)の構造を示す図。
【図4】上記ベルト(中間転写ベルト及び転写搬送ベルト)における色ズレを求める方法を説明する図。
【図5】上記ベルト(中間転写ベルト及び転写搬送ベルト)のローラヘの巻付角を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るベルトの一例である中間転写ベルトを用いるレーザーカラープリンタ(画像形成装置)の概略構成を示す図である。
【0015】
同図において、1は第1の画像担持体としてのドラム状の電子写真感光体(以下、感光ドラムという)であり、矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動されるようになっている。
【0016】
また、2は感光ドラム1の表面を所定の極性、電位に一様に帯電処理するコロナチャージャ、41〜44は不図示の画像露光手段によって露光3を受けることにより感光ドラム上に形成された静電潜像をM(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、B(ブラック)のトナーによりそれぞれ現像する現像器である。なお、画像露光手段としては、カラー原稿の色分解・結像露光光学系、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光光学系等を使用する。
【0017】
また、6は中間転写ベルト、8は中間転写ベルト6を感光ドラム1に押し付けながら回転する一次転写ローラであり、感光ドラム1上に形成担持されたトナー画像は、中間転写ベルト6が感光ドラム1に圧接しながら通過する過程で、電源15から一次転写ローラ8に印加されるトナーとは逆の極性の一次転写バイアスにより形成される電界と圧力とにより、中間転写ベルト6の外周面上に転写されるようになっている。
【0018】
なお、この中間転写ベルト6は、駆動ローラ9、テンションローラ10、二次転写対向ローラ11及び一次転写ローラ8に張架されると共に、駆動ローラ9により矢印の方向に所定の周速度をもって回転駆動されるようになっている。
【0019】
また、12は中間転写ベルト6に当接する二次転写ローラであり、中間転写ベルト6上に転写されたフルカラー画像は、給紙カセット14から所定のタイミングでピックアップローラ13a等により給送された第2の担持体である転写材13が、中間転写ベルト6と二次転写ローラ12との当接ニップを通過する際、バイアス電源16から二次転写ローラ12に印加される二次転写バイアスによって転写材13に転写されるようになっている。
【0020】
また、17は転写されたトナー画像を転写材13に加熱定着する定着器、7は転写材13への画像転写終了後、中間転写ベルト6上の転写残トナーをクリーニングする中間転写ベルトクリーニング部材、5は感光ドラム1のクリーニング部材である。
【0021】
次に、このような構成の画像形成装置の画像形成動作について説明する。
【0022】
画像形成の際は、まず感光ドラム1の表面を、感光ドラム1の回転過程においてコロナチャージャ2により所定の極性、電位に一様に帯電処理する。次に、不図示の画像露光手段からの露光3により感光ドラム1の表面に目的のカラー画像の第1の色成分(例えばマゼンタ成分像)に対応した静電潜像を形成する。
【0023】
次に、その静電潜像を第1の現像器41(マゼンタ現像器)によって現像し、この後、この感光ドラム1上に形成担持された第1色のマゼンタトナー画像を、矢印の方向に所定の周速度をもって感光ドラム1に圧接しながら回転駆動している中間転写ベルト6の外周面上に、電源15から一次転写ローラ8に印加される一次転写バイアスによって一次転写する。
【0024】
以下、同様に第2色のシアントナー画像、第3色のイエロートナー画像及び第4色のブラックトナー画像を順次中間転写ベルト6上に重畳転写し、これにより目的のフルカラー画像を形成する。なお、この一次転写行程においては、二次転写ローラ12及び中間転写ベルトクリーニング部材7は中間転写ベルト6から離間している。
【0025】
次に、中間転写ベルト6上に重畳転写されたフルカラー画像を、所定のタイミングで給紙カセット14から給送され、中間転写ベルト6と二次転写ローラ12との当接ニップを通過する転写材13に、このときには既に中間転写ベルト6に当接した状態となっている二次転写ローラ12にバイアス電源16から印加される二次転写バイアスによって転写する。
【0026】
そして、このようにトナー画像が二次転写された転写材13を、定着器17へ導入し、この定着器17においてトナー画像を転写材13に加熱定着する。なお、転写材13への画像転写終了後、中間転写ベルト6上の転写残トナーは、このときには既に中間転写ベルト6に当接した状態となっている中間転写ベルトクリーニング部材7により除去される。
【0027】
一方、図2は本発明の実施の形態に係るベルトの一例である転写搬送ベルトを用いる画像形成装置の概略構成を示す図である。なお、同図において、図1と同一符号は、同一又は相当部分を示している。また、この画像形成装置は、複数色(例えばイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)の作像ステーションを配列したタンデム方式のレーザーカラープリンタである。
【0028】
同図において、20Y、20M、20C、20Kは第1〜第4作像ステーションであり、これら各作像ステーション20Y,20M,20C,20Kは、それぞれ矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される感光ドラム1Y,1M,1C,1Kと、感光ドラム1Y,1M,1C,1Kの表面を所定の極性、電位に一様に帯電処理する一次帯電ローラ2Y,2M,2C,2Kと、不図示の画像露光手段によって露光3Y,3M,3C,3Kを受けることにより感光ドラム上に形成された静電潜像をM、C、Y、Bのトナーによりそれぞれ現像する現像器4Y,4M,4C,4Kとを備えている。
【0029】
また、61は駆動ローラ9と従動ローラ91に張架され、駆動ローラ9により矢印の方向に所定の周速度をもって回転駆動される転写搬送ベルト、8Y、8M、8C、8Kは転写シートであり、感光ドラム1Y,1M,1C,1K上に形成担持されたトナー画像は、転写材13が感光ドラム1Y,1M,1C,1Kと転写搬送ベルト61とのニップ部を通過する過程で、バイアス電源15Y,15M,15C,15Kから転写シート8Y,8M,8C,8Kに印加される転写バイアスにより転写材13上に転写されるようになっている。
【0030】
また、18は転写搬送ベルト61に転写材13を吸着させるため吸着ローラ18に所定の吸着バイアスを印加するための吸着ローラであり、19は転写材13を転写搬送ベルト61から分離するための分離バイアスを印加する分離チャージャである。
【0031】
次に、このような構成の画像形成装置の画像形成動作について説明する。
【0032】
画像形成の際は、まず帯電行程として第1作像ステーション20Yの感光ドラム1Yの表面を、感光ドラム1Yの回転過程において一次帯電ローラ2Yにより所定の極性、電位に一様に帯電処理する。次に、露光行程として不図示の画像露光手段からの露光3Yにより感光ドラム1Yの表面に目的のカラー画像の第1の色成分(イエロー)に対応した静電潜像を形成する。
【0033】
次に、現像行程として静電潜像を第1の現像器4Y(イエロー現像器)により現像する。この後、転写行程として、この感光ドラム1Y上に形成担持された第1色のイエロートナー画像を、所定のタイミングで給紙カセット14から給送された後、駆動ローラ9により矢印の方向に所定の周速度をもって回転駆動している転写搬送ベルト61に担持されて移動する転写材13が、転写搬送ベルト61と感光ドラム1Yとの当接ニップを通過する際、この転写材13に、バイアス電源15Yから転写シート8Yに印加される転写バイアスによって静電的に転写する。なお、要すれば、転写搬送ベルト61に転写材13を吸着させるために吸着ローラ18に所定の吸着バイアスを印加する。
【0034】
次に、クリーニング行程として感光ドラム1Yから転写材13上に転写されなかった残トナーは感光ドラムクリーナ5Yにより除去される。以後、上記の帯電、露光、現像、転写及びクリーニングの各作像行程を繰り返す。
【0035】
さらに、第2〜第4作像ステーション20M,20C,20Kにおいても、所定のタイミングで第1作像ステーション20Yと同様の作像行程を経ることにより転写材13上にイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックトナーを重畳転写し、目的とするフルカラー画像を形成する。
【0036】
その後、トナー画像が転写された転写材13を、転写搬送ベルト61から分離した後、定着器17へ導入し、この定着器17においてトナー画像を転写材13に加熱定着する。さらに、転写材13への画像転写終了後、転写搬送ベルト61上の紙粉、トナー等をベルトクリーニング部材71により除去する。なお、転写材13を転写搬送ベルト61から分離する際、分離チャージャ19を使用することもある。
【0037】
ところで、蛇行に関して精度を要求されるベルトである中間転写ベルト6及び転写搬送ベルト61(以下、中間転写ベルト6等という)は、図3の(a)〜(c)に示すように外周面にトナー像が転写される無端状のベルト本体6a,61aと、このベルト本体6a,61aの内周面の片端部あるいは両端部に設けられた蛇行防止部材6b,61bとを有している。
【0038】
ところが、中間転写ベルト6等は、2本以上のローラ(図1及び図2参照)に張架されて回転駆動されるため、単に蛇行防止部材6b,61bを配設しただけでは、既述したように蛇行防止部材6b,61bがローラ部で変形することによる応力によりベルト本体6a,61aから蛇行防止部材6b,61bが剥離したり、場合によってはベルト本体6a,61aに亀裂を生じる。
【0039】
そこで、本実施の形態において、この蛇行防止部材6b,61bとして発泡体を用いるようにしている。そして、このように発泡体を用いることにより、蛇行防止部材6b,61bがローラ部等での変形に追従することができるようになる。これにより、蛇行防止部材6b,61bに加わる応力を軽減することができ、蛇行防止部材6b,61bのベルト本体6a,61aからの剥離及びベルト本体6a,61aの破損を防止することが可能となる。
【0040】
ここで、発泡体の平均発泡径は10μm以上300μm以下であることが好ましい。なお、平均発泡径が10μm未満の場合には蛇行防止部材6b,61bが変形に対して追従し難くなることからベルト本体6a,61aからの剥離が発生し易くなり、平均発泡径が300μmを超える場合には蛇行防止部材6b,61bの真直度が低くなることから蛇行防止効果が低下する場合がある。
【0041】
また、発泡体の空隙率は20%以上80%以下であることが好ましい。なお、空隙率が20%未満である場合には、蛇行防止部材6b,61bが変形に対して追従し難くなることからベルト本体6a,61aからの剥離が発生し易くなり、80%を超える場合には蛇行防止部材6b,61bの剛性が低下してしまい蛇行防止効果が低下する場合がある。
【0042】
さらに、蛇行防止部材6b,61bとベルト本体6a,61aとが接合する面及び蛇行防止部材6b,61bとローラ部材とが接する面の少なくとも一方には、即ち発泡体のベルト本体6a,61aと接合する面及びローラと接する面の少なくとも一方には、図3の(b)に示すように空隙率が他の部分よりも明らかに低い表層であるスキン層6c,61cを有していることが好ましい。
【0043】
そして、このようなスキン層6c,61cを有することにより、蛇行防止部材6b,61bとベルト本体6a,61aを接合(接着、粘着等)する場合の接合強度を高めることが可能となる。また、蛇行防止部材6b,61bとローラとの摺動性が向上し、蛇行防止効果が高くなる。
【0044】
ここで、このような効果はスキン層6c,61cの空隙率が20%未満である場合に著しく発揮される。また、スキン層6c,61cの厚みは100μm以下であることが好ましい。なお、スキン層が100μmを越えると、蛇行防止部材6b,61bの柔軟性が低下し、変形に対して追従し難くなることからベルト本体6a,61aからの剥離が発生し易くなる。
【0045】
また、蛇行防止部材6b,61bを有するベルト本体6a,61aは、つなぎめを有さないシームレスベルトであることが好ましい。そして、このようにつなぎめを有さないことにより膜厚ムラを小さくすることが可能となり、ローラ部での屈曲によるベルト本体6a,61aヘの応力の集中を抑えられることから、ベルト本体6a,61aの寿命を更に長くすることができる。
【0046】
ところで、蛇行防止部材6b,61bを構成する発泡体の材質としては特に限定されるものではなく公知の発泡体が使用できるが、圧縮永久歪みが小さく各種の接着剤、粘着剤でのベルト本体6a,61aヘの接合が可能であるという点から、ウレタン系発泡体、アクリル系発泡体が好ましい。
【0047】
また、蛇行防止部材6b,61bの断面形状は、既述した図3の(c)に示すように中間転写ベルト6等を張架するローラRの外周面に形成された蛇行防止用の溝R1に係止されるような断面形状であるが、一般に加工の容易さ等の理由から断面形状は正方形又は長方形のものが使用される。具体的には、幅1〜5mm、厚さ0.3〜0.5mmの正方形又は長方形の断面形状のものが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0048】
なお、本実施の形態においては、蛇行防止部材6b,61bをローラRの外周面に形成された蛇行防止用の溝R1に係止する場合について述べているが、蛇行防止部材6b,61bを図3の(d)に示すようにローラRの側端に係止するようにしてもよい。そして、このような場合でも、蛇行防止部材6b,61bの断面形状は上記のようにするのが好ましい。
【0049】
一方、可撓性を有するベルト本体6a,61aとしては、ベルト形状であればフィルム状のものや、メッシュ状のもの等、特に何ら限定されるものではない。また、その材質としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、金属及びゴム等、種々の材料からなるものを挙げることができるが、特に成型のし易さ、コスト等の面から、熱可塑性樹脂からなるものが好ましい。
【0050】
具体的には、ポリエチレン(高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度等)、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリカボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、液晶性ポリマー、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイト、ポリビスアミドトリアゾール、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、脂肪族ポリケトン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、クロロトリフルオロエチレン、エチレン四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、メタクリル樹脂、その他各種共重合体などから選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。
【0051】
特に、これらに限定されるものではないが、ベルトの機械特性、成型性等を考慮してポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリサルホン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、エチレン四フッ化エチレン共重合体(ETFE)が好ましい。
【0052】
また、これらの樹脂に導電性を付与する目的で、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、酸化チタン、チタン酸カリウム、酸化錫、リチウム塩、四級アンモニウム塩等の各種導電剤を添加しても良い。
【0053】
更に、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等の充填剤、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等の難燃剤、酸化防止剤(フェノール系、硫黄系等)等の添加剤を添加しても何ら差し支えない。もちろん、添加剤は上記物質に限定されるものではなく、その他任意の添加剤を使用することができる。
【0054】
ここで、上記樹脂に添加剤を添加する方法として、予備混合を行った後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ローラ、ニーダー等の公知の混練機を用いて混練、分散する方法が挙げられる。通常は、押出機等で各成分を各々に混練してベレット状のコンパウンドにした後に成型加工するが、特殊な場合は各成分を直接成形機に供給し、成形機で本組成物を混練しながら成形することもできる。
【0055】
一方、ベルト本体6a,61aの製造方法としては、遠心成形法、連続溶融押出成形法、射出成形法あるいはブロー成形法、インフレーションフィルム成形法等公知の方法を採用することができるが、連続溶融押出成型法あるいはインフレーション成型法が低コストで製造できることから好ましい。なお、この様にして成型されたエンドレスベルトは、延伸等の操作を行っても良い。
【0056】
ここで、ベルト本体6a,61aの厚みは、50μm以上1000μm以下が好ましく、100μm以上700μm以下が更に好ましい。なお、50μm未満になるとベルト本体6a,61aが伸び易くなり、また、1000μmを越えると柔軟な変形が困難になるため、小径ローラによる均一な速度の駆動ができず、装置の大型化の問題が生ずる。
【0057】
さらに、ベルト本体6a,61aは単層からなるものでもよいし、複数の層により構成されるものでもよい。また、複数の層からなるベルト本体6a,61aを得る場合、予め複数の層で形成した熱可塑性樹脂部材を多層ダイスからの押出しによって得てもよいし、単層の熱可塑性樹脂部材から単層の円筒状フィルムを得て、その後、この単層エンドレスベルトの表面あるいは裏面に、例えば塗料等のスプレー、ディッピング等により新たな層を設けることにより複数の層からなるベルト本体6a,61aを得るようにしてもよい。
【0058】
一方、蛇行防止部材6b,61bとベルト本体6a,61aの接合方法は特に限定されるものではなく公知の接合(接着、粘着)方法により接合することができるが、取り扱いのし易さ、接合強度からアクリル系粘着剤を有する両面テープを使用するのが好ましい。
【0059】
また、補強あるいはベルト本体6a,61aと蛇行防止部材6b,61bの接合強度の向上を目的として、ベルト本体6a,61aの端部に不図示の帯状の部材を設けてもよい。なお、この帯状部材の材質としては各種材料を使用することができるが、ベルトの補強効果、取り扱いのし易さ等からPET(ポリエチレンテレフタレート)テープが好ましい。
【0060】
さらに、ベルト本体6a,61aと蛇行防止部材6b,61bの接合強度の向上を目的として蛇行防止部材6b,61bとベルト本体6a,61aの接合面にコロナ処理等の各種表面処理を施すことも可能である。
【0061】
次に、発泡体の平均発泡径及び空隙率の測定方法について説明する。
【0062】
測定を行う際、まず蛇行防止部材6b,61bを任意の箇所で鋭利な刃物(かみそり等)を用いて、発泡体(セル)をつぶさないように切断する。
【0063】
次に、顕微鏡(光学顕微鏡、走査電子顆微鏡等)を使用して拡大し、任意の計測範囲S(μm)当たりのセル数Nをカウントし、それぞれのセルの直径R(μm)を測定する。ここで、セルの形状が不定形である場合にはセルの外周を測定し、実測した外局と同等の外周を有する円とセルを仮定してセルの直径とする。拡大倍率や計測範囲は、セルの大きさ等を考慮して測定し易い条件を選ぶことができるが、カウントするセル数は50個以上となるように計測範囲を設定する。
【0064】
【数1】

なお、R〜R:カウントしたセルのそれぞれの直径(μm)
【0065】
【数2】

また、スキン層の空隙率の測定は、スキン層表面の任意の1mm四方中に存在するセル数とその平均発泡径から上記の式より求める。なお、その厚みは上記のようにして切断した発泡体断面を顕微鏡(光学顕微鏡、走査電子顕微鏡等)を使用し、拡大して計測する。
【0066】
次に、本実施の形態の実施例について説明する。
【0067】
(実施例1)
<エンドレスベルトの作製>
3種類の材料を下記のように配合する。
【0068】
ポリカーボネート樹脂 100 重量部
カーボンブラック 15 重量部
酸化防止剤 0.5 重量部
上記のように配合された3種類の材料を2軸の押し出し混練機で混練せしめ、カーボンブラック等添加剤を充分にバインダー中に均一分散させ、成型用原料を得た。更にこれを1〜2mmの粒径の混練物とした後、一軸押し出し機のホッパーヘ投入し、温度を270〜290℃の範囲に調節して押し出すことにより、溶融体とした。
【0069】
次に、この溶融体を直径100mm、ダイギャップ900μmの円筒状単層用押し出しダイスに導いた後、空気導入路より空気を吹き込んで拡大膨張させ、最終的な形状寸法として直径140mm、厚み150μmとした。更にベルト巾250mmで切断し、シームレスベルトを得た。
【0070】
一方、補強部材として、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる補強テープを用いて、シームレスベルトの内周面の両端部に貼着して、内周面に補強部材を有するシームレスベルトを得た。
【0071】
<エンドレスベルトヘの蛇行防止部材の接合>
次に、このようにして得られたシームレスベルトの補強部材内周面上に厚さ2mm、幅3mmの断面形状が長方形で、断面の4辺にスキン層を有するポリウレタン発泡体をアクリル系粘着剤を有する両面テープで貼着して蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを得た。ここで、スキン層の厚みは約3μmでスキン層の空隙率は10%であった。また、発泡体の平均発泡径は50μmで発泡体の空隙率は50%であった。
【0072】
そして、このようにして得られた蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを図1の構成のカラーレーザープリンタの中間転写ベルト6として組込み、中間転写ベルト6の4万回転に相当するフルカラー1万枚の耐久試験を行った。その結果、蛇行防止部材の剥離及びベルト端部に割れや欠けなどの不具合は発生せず、十分な耐久性を有していた。また、色ズレ量も平均で約50μmと良好であった。
【0073】
なお、色ズレ量の平均値は、図4に示すようなライン画像(ライン幅200μm以下の画像)を出力して、一番ズレ量が大きい2色間の値を100サンプル測定後、平均することにより求めた。
【0074】
更に、同様にして作製した蛇行防止部材を有する未耐久エンドレスベルトにおける蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度と、耐久試験後における蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度を比較したところ、未耐久ベルトの約90%の接合強度を保持していた。ここで、ベルトの接合強度の測定は、90°剥離強度を測定して接合強度とした。
【0075】
さらに、図1において中間転写ベルト6を張架している各ローラ8,9,10,11の直径と各ローラ8,9,10,11ヘの中間転写ベルト6の巻付角は以下に示す通りであった。なお、巻付角とは図5に示す部分である。また、中間転写ベルト6はテンションローラ10により総圧49Nで張架されていた。
【0076】
直径 巻付角
一次転写ローラ8 25mm 50°
二次転写対向ローラ11 25mm 110°
テンションローラ10 30mm 100°
駆動ローラ9 30mm 100°
このように、各ローラ8,9,10,11の直径が小さく、また巻付角が大きい場合でも、蛇行防止部材を発泡体により形成することにより、蛇行防止部材の剥離及びベルトの破損を防止することができる。
【0077】
(実施例2)
<エンドレスベルトの作製>
3種類の材料を下記のように配合する。
【0078】
ポリカーボネート樹脂 100 重量部
カーボンブラック 12 重量部
酸化防止剤 0.5 重量部
上記のように配合された3種類の材料を2軸の押し出し混練機で混練せしめ、カーボンブラック等添加剤を充分にバインダー中に均一分散させ、成型用原料を得た。更にこれを1〜2mmの粒径の混練物とした後、一軸押し出し機のホッパーヘ投入し、温度を270〜290℃の範囲に調節して押し出すことにより、溶融体とした。
【0079】
次に、この溶融体を直径200mm、ダイギャップ900μmの円筒状単層用押し出しダイスに導いた後、そこで空気導入路より空気を吹き込んで拡大膨張させ、最終的な形状寸法として直径250mm、厚み150μmとした。更にベルト巾350mmで切断し、シームレスベルトを得た。
【0080】
一方、補強部材として、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる補強テープを用いて、シームレスベルトの外局面の両端部に貼着して、外周面に補強部材を有するシームレスベルトを得た。
【0081】
<エンドレスベルトヘの蛇行防止部材の接合>
実施例1と同様の蛇行防止部材を、上記のようにして得られた補強部材を有するエンドレスベルトの内周面にアクリル系粘着剤を有する両面テープで貼着して蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを得た。
【0082】
得られた蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを図2の構成のカラーレーザープリンタの転写搬送ベルト61として組込み、転写搬送ベルト61の4万回転に相当するフルカラー10万枚の耐久試験を行った。その結果、蛇行防止部材の剥離及びベルト端部に割れや欠けなどの不具合は発生せず、十分な耐久性を有していた。また色ズレ量も平均で約50μmと良好であった。
【0083】
更に、同様にして作製した蛇行防止部材を有する未耐久エンドレスベルトにおける蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度と、耐久試験後における蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度を比較したところ、未耐久ベルトの約80%の接合強度を保持していた。ここで、ベルトの接合強度の測定は、90°剥離強度を測定して接合強度とした。
【0084】
図2において転写搬送ベルト61を張架している各ローラ9,91,10の直径と各ローラヘの転写搬送ベルト61の巻付角は以下に示す通りであった。また、転写搬送ベルト61はテンションローラ10により総圧68.6Nで張架されていた。
【0085】
直径 巻付角
駆動ローラ9 35mm 150°
従動ローラ91 30mm 165°
テンションローラ10 20mm 45°
このように、各ローラ9,10,91の直径が小さく、また巻付角が大きい場合でも、蛇行防止部材を発泡体により形成することにより、蛇行防止部材の剥離及びベルトの破損を防止することができる。
【0086】
(実施例3)
<エンドレスベルトの作製>
実施例1と同様の方法で内周面に補強部材を有するシームレスベルトを得た。
【0087】
<エンドレスベルトヘの蛇行防止部材の接合>
上記のようにして得られたシームレスベルトの補強部材内周面上に厚さ2mm、幅3mmの断面形状が長方形で、断面の4辺にスキン層を有するポリウレタン発泡体を、アクリル系粘着剤を有する両面テープで貼着して、蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを得た。ここで、スキン層の厚みは2μmでスキン層の空隙率は8%であった。また、発泡体の平均発泡径は12μmで発泡体の空隙率は25%であった。
【0088】
得られた蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを図1の構成のカラーレーザープリンタの中間転写ベルト6として組込み、中間転写ベルト6の4万回転に相当するフルカラー1万枚の耐久試験を行った。その結果、蛇行防止部材の剥離及びベルト端部に割れや欠けなどの不具合は発生せず、十分な耐久性を有していた。また色ズレ量も平均で約40μmと良好であった。
【0089】
更に、同様にして作製した蛇行防止部材を有する未耐久エンドレスベルトにおける蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度と、耐久試験後における蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度を比較したところ、未耐久ベルトの約50%の接合強度を保持していた。ここで、ベルトの接合強度の測定は、90°剥離強度を測定して接合強度とした。
【0090】
(実施例4)
<エンドレスベルトの作製>
実施例1と同様の方法で内周面に補強部材を有するシームレスベルトを得た。
【0091】
<エンドレスベルトヘの蛇行防止部材の接合>
上記のようにして得られたシームレスベルトの補強部材内周面上に厚さ2mm、幅3mmの断面形状が長方形で、断面の4辺にスキン層を有するポリウレタン発泡体を、アクリル系粘着剤を有する両面テープで貼着して、蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを得た。ここで、スキン層の厚みは8μmでスキン層の空隙率は25%であった。また、発泡体の平均発泡径は270μmで発泡体の空隙率は70%であった。
【0092】
得られた蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを図1の構成のカラーレーザープリンタの中間転写ベルト6として組込み、中間転写ベルト6の4万回転に相当するフルカラー1万枚の耐久試験を行った。その結果、蛇行防止部材の剥離及びベルト端部に割れや欠けなどの不具合は発生せず、十分な耐久性を有していた。色ズレ量は平均で約90μmと良好であった。
【0093】
更に、同様にして作製した蛇行防止部材を有する未耐久エンドレスベルトにおける蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度と、耐久試験後における蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度を比較したところ、未耐久ベルトの約90%の接合強度を保持していた。ここで、ベルトの接合強度の測定は、90°剥離強度を測定して接合強度とした。
【0094】
(実施例5)
<エンドレスベルトの作製>
実施例1と同様の方法で内周面に補強部材を有するシームレスベルトを得た。
【0095】
<エンドレスベルトヘの蛇行防止部材の接合>
上記のようにして得られたシームレスベルトの補強部材内周面上に厚さ2mm、幅3mmの断面形状が長方形で、スキン層を有さないポリウレタン発泡体を、アクリル系粘着剤を有する両面テープで貼着して、蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを得た。ここで、発泡体の平均発泡径は50μmで発泡体の空隙率は50%であった。
【0096】
得られた蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを図1の構成のカラーレーザープリンタの中間転写ベルト6として組込み、中間転写ベルト6の4万回転に相当するフルカラー1万枚の耐久試験を行った。その結果、蛇行防止部材の剥離及びベルト端部に割れや欠けなどの不具合は発生せず、十分な耐久性を有していた。色ズレ量は平均で約80μmと良好であった。
【0097】
更に、同様にして作製した蛇行防止部材を有する未耐久エンドレスベルトにおける蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度と、耐久試験後における蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度を比較したところ、未耐久ベルトの約75%の接合強度を保持していた。ここで、ベルトの接合強度の測定は、90°剥離強度を測定して接合強度とした。
【0098】
(実施例6)
<エンドレスベルトの作製>
実施例1と同様の方法で内周面に補強部材を有するシームレスベルトを得た。
【0099】
<エンドレスベルトヘの蛇行防止部材の接合>
上記のようにして得られたシームレスベルトの補強部材内周面上に厚さ2mm、幅3mmの断面形状が長方形で、断面の4辺にスキン層を有するポリウレタン発泡体を、アクリル系粘着剤を有する両面テープで貼着して、蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを得た。ここで、スキン層の厚みは1μmでスキン層の空隙率は5%であった。また、発泡体の平均発泡径は10μmで発泡体の空隙率は15%であった。
【0100】
得られた蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを図1の構成のカラーレーザープリンタの中間転写ベルト6として組込み、中間転写ベルト6の4万回転に相当するフルカラー1万枚の耐久試験を行った。その結果、蛇行防止部材の剥離及びベルト端部に割れや欠けなどの不具合は発生せず、十分な耐久性を有していた。色ズレ量は平均で約40μmと良好であった。
【0101】
更に、同様にして作製した蛇行防止部材を有する未耐久エンドレスベルトにおける蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度と、耐久試験後における蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度を比較したところ、未耐久ベルトの約30%の接合強度を保持していた。ここで、ベルトの接合強度の測定は、90°剥離強度を測定して接合強度とした。
【0102】
(実施例7)
<エンドレスベルトの作製>
実施例1と同様の方法で内周面に補強部材を有するシームレスベルトを得た。
【0103】
<エンドレスベルトヘの蛇行防止部材の接合>
上記のようにして得られたシームレスベルトの補強部材内周面上に厚さ2mm、幅3mmの断面形状が長方形で、スキン層を有さないポリウレタン発泡体を、アクリル系粘着剤を有する両面テープで貼着して、蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを得た。ここで、発泡体の平均発泡径は330μmで発泡体の空隙率は82%であった。
【0104】
得られた蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを図1の構成のカラーレーザープリンタの中間転写ベルト6として組込み、中間転写ベルト6の4万回転に相当するフルカラー1万枚の耐久試験を行った。その結果、蛇行防止部材の剥離及びベルト端部に割れや欠けなどの不具合は発生せず、十分な耐久性を有していた。色ズレ量は平均で約120μmと大き目であったが、十分実用に耐え得るレベルであった。
【0105】
更に、同様にして作製した蛇行防止部材を有する未耐久エンドレスベルトにおける蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度と、耐久試験後における蛇行防止部材のエンドレスベルトヘの接合強度を比較したところ、未耐久ベルトの約90%の接合強度を保持していた。ここで、ベルトの接合強度の測定は、90°剥離強度を測定して接合強度とした。
【0106】
次に、比較例について説明する。
【0107】
(比較例1)
<エンドレスベルトの作製>
既述した実施例1と同様の方法で内周面に補強部材を有するシームレスベルトを得た。
【0108】
そして、この補強部材を有するシームレスベルトを蛇行防止部材を設けずに図1の構成のカラーレーザープリンタの中間転写ベルト6として組込み、フルカラー耐久試験を行った。その結果、蛇行によりローラの一方向にベルトが寄ってしまったことによる応力のため、約50枚画像を出力したところでベルト端部に割れが発生したので耐久試験を中止した。
【0109】
(比較例2)
<エンドレスベルトの作製>
既述した実施例2と同様の方法で外周面に補強部材を有するシームレスベルトを得た。
【0110】
<エンドレスベルトヘの蛇行防止部材の接合>
上記のようにして得られた補強部材を有するシームレスベルトの内周面上に厚さ2mm、幅3mmの断面形状が長方形のポリウレタンエラストマーよりなる蛇行防止部材を、アクリル系粘着剤を有する両面テープで貼着して、蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを得た。
【0111】
得られた蛇行防止部材を有するエンドレスベルトを図2の構成のカラーレーザープリンタの転写搬送ベルト61として組込み、フルカラー耐久試験を行った。その結果、約5万枚耐久(転写搬送ベルト約2万回転)した時点で蛇行防止部材が剥離したことにより、画像形成装置が脱調し、画像出力不可能となったので耐久試験を中止した。また、その時点で耐久ベルトを目視により確認したところ、ベルト端部に微少な亀裂が多数見られた。
【符号の説明】
【0112】
1,1Y,1M,1C,1K 感光ドラム
2 コロナチャージャ
2Y,2M,2C,2K 一次帯電ローラ
41〜44,4Y,4M,4C,4K 現像器
6 中間転写ベルト
6a ベルト本体
6b 蛇行防止部材
6c スキン層
8 一次転写ローラ
8Y,8M,8C,8K 転写シート
9,91 駆動ローラ
10 テンションローラ
11 二次転写対向ローラ
12 二次転写ローラ
13 転写材
61 転写搬送ベルト
61a ベルト本体
61b 蛇行防止部
61c スキン層
R ローラ
R1 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルト本体と、前記ベルト本体の内周面に設けられている蛇行防止部材を有し、前記ベルト本体は張架部材に張架され、前記ベルト本体と前記蛇行防止部材は移動可能であり、前記蛇行防止部材が前記張架部材に接触して前記ベルト本体及び前記蛇行防止部材の移動方向に直交する方向の移動を規制するベルトにおいて、
前記蛇行防止部材は、全体が発泡体で形成されていることを特徴とするベルト。
【請求項2】
前記蛇行防止部材は、前記張架部材の側端によって前記ベルト本体及び前記蛇行防止部材の移動方向に直交する方向の移動が規制されることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記発泡体がウレタン系発泡体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト。
【請求項4】
前記発泡体がアクリル系発泡体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト。
【請求項5】
前記発泡体は、前記ベルト本体に対してアクリル系粘着剤を有する両面テープによって貼着されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項6】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体上に形成されたトナー像が転写される中間転写ベルトとを備え、前記中間転写ベルト上のトナー像は転写材に転写される画像形成装置において、
前記中間転写ベルトは、前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルトであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
トナー像を担持する像担持体と、転写材を担持する転写搬送ベルトと、前記像担持体上のトナー像を前記転写搬送ベルト上の転写材へ転写する画像形成装置において、
前記転写搬送ベルトは、前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルトであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−184833(P2009−184833A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107981(P2009−107981)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【分割の表示】特願平11−301675の分割
【原出願日】平成11年10月22日(1999.10.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】