説明

ベルト駆動装置及び画像形成装置

【課題】ベルト駆動装置及び画像形成装置において、圧接/解除状態に応じて適切なチャタリング除去処理を実行し、ベルト位置を正確かつ迅速に検知できる技術を提供する。
【解決手段】複数の支持ローラに張架され、被圧接体に対して圧接又は離間した状態で走行する無端ベルトと、無端ベルトが圧接状態にあるか解除状態にあるかを検出する圧接/解除状態検出手段と、無端ベルトの幅方向の位置を検出するベルト位置検出手段と、ベルト位置検出手段による検出結果と判定値に基づいて、無端ベルトが異常位置にあるか否かを判定するベルト異常判定手段と、ベルト異常判定手段による判定結果に基づいて、無端ベルトの駆動を制御するベルト駆動制御手段と、を備えたベルト駆動装置において、無端ベルトの圧接/解除状態に対応して判定値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動装置及び画像形成装置に関し、特に、被圧接体に対する圧接/解除状態によってベルト搬送速度が変化するベルト駆動装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式のプリンタや複写機等の画像形成装置においては、画像データに基づいて感光体ドラム上にトナー像を現像し、そのトナー像を用紙上に転写する。そして、定着装置において熱圧着によりトナー像を定着させることで、用紙上に画像を形成する。
定着装置としては、複数の支持ローラに無端ベルト(以下、ベルト)を張架させたベルト駆動装置を備えたベルト方式の定着装置が知られている。このベルト方式の定着装置では、例えば、内部に加熱ヒータを有する定着ローラにベルトを圧接してニップ部を形成し、このニップ部で用紙を狭持搬送しながらトナー像を定着させる。
【0003】
このような定着装置に用いられるベルト駆動装置では、ベルトの走行に伴い、ベルトが幅方向(ベルトの走行方向と直交する方向)の一端側に寄ってしまい蛇行することが知られている。そして、蛇行が進行すると、ベルトが支持ローラから脱落するなどして破損してしまう。そこで、一般には、ベルトの走行中にベルト端の位置を検出し、検出結果に基づいて支持ローラの一つを傾動させてステアリング制御を行うことでベルトの蛇行を修正するようにしている(例えば特許文献1)。
【0004】
図7は、ベルト端の位置を検出する検出ユニットの一例について示す図である。
図7に示すように、検出ユニット110は、互いに対向して配置された発光素子と受光素子からなる透過型フォトセンサPS1〜PS3を備えている。そして、ベルト端101aの位置変動に連動して遮蔽体(図7ではベルト101自身)が発光素子と受光素子の間を移動し、発光素子からの光を透過/遮断するようになっている。フォトセンサPS1〜PS3は、受光素子における受光量に基づいてHIGHレベル(以下、Hレベル)又はLOWレベル(以下、Lレベル)の検出信号を出力し、これらの検出信号に基づいて制御部がベルト端の位置を判定する。ここで、フォセンサPS1〜PS3は、発光素子からの光が遮断された場合にHレベルの検出信号を出力し、発光素子からの光が透過された場合にLレベルの検出信号を出力するものとする。
【0005】
例えば、検出ユニット110において、フォトセンサPS1からHレベルの検出信号が出力され、フォトセンサPS2,PS3からLレベルの検出信号が出力された場合には、ベルトが蛇行修正不要な正常位置にあると判定する。
フォトセンサPS1,PS2からHレベルの検出信号が出力され、フォトセンサPS3からLレベルの検出信号が出力された場合(図7上、左側への片寄り)、又はフォトセンサPS1〜PS3のすべてからLレベルの検出信号が出力された場合(図7上、右側への片寄り)には、ベルトが蛇行修正必要な位置にあると判定する。この場合、ステアリング制御によりベルト101の蛇行を修正する。
フォトセンサPS1〜PS3のすべてからHレベルの検出信号が出力された場合には、ベルトが破損を生じうる異常位置にあると判定する。この場合、蛇行が進行してベルトが破損するのを防止するために、ベルト101の駆動を停止させる。
【0006】
このような検出ユニット110を備えたベルト駆動装置では、機械振動によるチャタリングやベルト端部101aの荒れ(凹凸)の影響を除去するため、ソフトウェア制御により、フォトセンサPS1〜PS3からの出力信号を所定タイマに従い2回サンプリングし(いわゆる2度読み)、2回のサンプリング値が一致したときにベルトの異常/正常位置を判断することが行われている(いわゆるチャタリング除去処理)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−34031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したチャタリング除去処理では、チャタリング等の影響を除去するための時間が十分でなければ誤検知となる虞がある。そして、誤検知が頻繁に生じると、装置の信頼性が損なわれることとなる。
図8は、フォトセンサPS3からの出力信号に対するベルト位置の判断結果を示す図である。図8には、チャタリング等の影響により誤検出信号(a)〜(e)が出力された場合について示している。
【0009】
図8に示すように、実際のベルト位置が正常位置である場合に、フォトセンサPS3から誤検出信号(a)が出力されると、2回のサンプリングにおいてHレベルで一致しているので、ベルトが異常位置に進入したと誤検知されてしまう。この場合、ベルトの駆動を停止させる指示がなされた後、すぐに再始動させる指示がなされることとなるが、一旦停止されたベルト駆動を再始動させるには所定の時間が必要となる。
また、実際のベルト位置が異常位置である場合に、フォトセンサPS3から誤検出信号(d)が出力されると、2回のサンプリングにおいてLレベルで一致しているので、ベルトが正常位置に復帰したと誤検知されてしまう。この場合、ベルトの駆動を再始動させる指示がなされた後、すぐにベルトの駆動を停止させる指示がなされることとなり、制御部の処理負担が無駄に増大する。
一方、フォトセンサPS3から誤検出信号(b),(c),(e)が出力されても、2回のサンプリングにおいて信号レベルは一致していないので、誤検知とはならない。
【0010】
チャタリング等の影響による誤検出信号を効果的に除去するには、単純にチャタリング除去処理時間を長くする(例えば、3度読み等)ことが考えられるが、そうするとベルトが正常位置から異常位置に進入したと判断するタイミングが遅くなり、結果としてベルトの破損を確実に防止できなくなる。また、異常位置から正常位置に復帰したと判断するタイミングが遅くなり、ベルトの駆動を早期に再始動させることが困難となる。
さらには、定着装置に用いられるベルト駆動装置のように、被圧接体にベルトを圧接させて走行させる場合には、被圧接体とベルトが圧接された圧接状態と被圧接体とベルトが離間された解除状態とで蛇行速度が異なる(解除状態の方が速い)こととなるが、チャタリング除去処理は同様に行われるため、圧接/解除状態に応じて適切にベルト位置の異常を判断できているとはいえない。その結果、ベルトの破損を招いたり、頻繁に誤検知を生じたりする虞がある。
【0011】
また、特許文献1に記載の技術では、ベルト端の位置変動をアナログ的に検出するため、ベルト位置の検出機構や使用するセンサが複雑になっており、コストの低減が困難であるという問題がある。
【0012】
本発明は、ベルト駆動装置及び画像形成装置において、圧接/解除状態に応じて適切なチャタリング除去処理を実行し、ベルト位置を正確かつ迅速に検知できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたもので、
複数の支持ローラに張架され、被圧接体に対して圧接又は離間した状態で走行する無端ベルトと、
前記無端ベルトが圧接状態にあるか解除状態にあるかを検出する圧接/解除状態検出手段と、
前記無端ベルトの幅方向の位置を検出するベルト位置検出手段と、
前記ベルト位置検出手段による検出結果と判定値に基づいて、前記無端ベルトが異常位置にあるか否かを判定するベルト異常判定手段と、
前記ベルト異常判定手段による判定結果に基づいて、前記無端ベルトの駆動を制御するベルト駆動制御手段と、を備え、
前記判定値が、前記無端ベルトの圧接/解除状態に対応して設定されていることを特徴とするベルト駆動装置である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のベルト駆動装置において、前記ベルト異常判定手段は、前記ベルト位置検出手段から出力された前記無端ベルトが異常位置にあることを示す異常位置検出信号の入力時間に応じて異常検知量を上限値まで増加させる一方、前記ベルト位置検出手段から出力された前記無端ベルトが正常位置にあることを示す正常位置検出信号の入力時間に応じて前記異常検知量を下限値まで減少させ、
この異常検知量と前記判定値を比較することにより、前記無端ベルトが異常位置にあるか否かを判定することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のベルト駆動装置において、前記判定値として、第1異常判定値とこの第1異常判定値より低い第2異常判定値を有し、
前記ベルト異常判定手段は、前記圧接状態においては、前記異常検知量が前記第1異常判定値を超えたときに前記無端ベルトが正常位置から異常位置に進入したと判定し、
前記解除状態においては、前記異常検知量が前記第2異常判定値を超えたときに前記無端ベルトが正常位置から異常位置に進入したと判定することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のベルト駆動装置において、前記判定値として、第1正常判定値とこの第1正常判定値より低い第2正常判定値を有し、
前記ベルト異常判定手段は、前記圧接状態においては、前記異常検知量が前記第1正常判定値を下回ったときにベルトが異常位置から正常位置に復帰したと判定し、
前記解除状態においては、前記異常検知量が前記第2正常判定値を下回ったときにベルトが異常位置から正常位置に復帰したと判定することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のベルト駆動装置において、前記異常検知量の増加速度及び減少速度は、
前記異常検知量が単調増加により前記下限値から前記第1異常判定値に到達する時間が、単調減少により前記上限値から前記第1正常判定値に到達する時間より長く、
単調増加により前記下限値から前記第2異常判定値に到達する時間が、単調減少により前記上限値から前記第2正常判定値に到達する時間より長くなるように設定されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のベルト駆動装置において、前記ベルト位置検出手段による検出結果に基づいて、前記無端ベルトの蛇行を修正するステアリング制御手段を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、用紙に形成されたトナー像を、定着装置により定着させる画像形成装置において、
前記定着装置が、請求項1から6のいずれか一項に記載のベルト駆動装置と、前記無端ベルトと圧接する定着ローラと、を備えて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧接/解除状態に応じて適切なチャタリング除去処理を実行し、ベルト位置を正確かつ迅速に検知することができるので、蛇行に起因するベルト破損を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の内部構成を示す図である。
【図2】定着装置のベルト駆動部について示す図である。
【図3】画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】ベルト駆動部におけるチャタリング除去処理及びベルト駆動制御処理を実現するハード処理回路の一例を示す図である。
【図5】図4中のA〜D点の電圧波形及びベルト駆動モータへの出力電圧波形を示す図である。
【図6】変形例に係るベルト駆動制御処理及びステアリング処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】ベルト端の位置を検出する検出ユニットの一例について示す図である。
【図8】フォトセンサPS3からの出力信号に対するベルト位置の判断結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、本発明に係る画像形成装置を、コピーやプリンタなどの機能を有するデジタル複合機(MFP:Multi Function Printer)に適用した例について説明する。具体的には、本発明に係るベルト駆動装置を、画像形成装置の定着装置に適用している。
なお、本発明に係る画像形成装置は、デジタル複合機に限定されるものではなく、用紙に画像形成する画像形成装置であれば、ファクシミリ装置、コピー又はプリンタ単体の装置などであってもよい。
【0023】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の内部構成を示す図である。
本実施形態に係る画像形成装置1は、原稿に形成されているカラー画像を読み取って取得された画像データ、又は、ネットワークを介して外部の情報機器(例えば、パーソナルコンピュータ)から入力された画像データに基づいて、用紙に色を重ね合わせて画像を形成する。画像形成装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応する感光体ドラム24(24Y,24M,24C,24K)を連装し、一回の手順で各色トナー像を順次転写し、用紙にカラー画像を形成するタンデム方式を採用している。
【0024】
図1に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、画像形成部20、搬送部30等を備えて構成される。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11、原稿画像走査装置12等で構成されている。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。原稿画像走査装置12は、搬送された原稿dを光走査し、CCD(Charge Coupled Device)により光電変換して原稿画像を読み取る。ここで、画像には、図形や写真等のイメージデータの他、文字や記号等のテキストデータ等も含まれる。
【0025】
画像読取部10により読み取られた画像(アナログ画像信号)は、後述する制御部90に出力され、A/D変換処理、シェーディング補正処理等の各種画像処理が施された後、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に色分解され、出力用画像データとして画像形成部20に出力される。
なお、自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となっている。読み取られた原稿画像のデータは画像形成部20内部の画像メモリに記憶され、順次出力用画像データとして読み出される。
【0026】
画像形成部20は、Y,M,C,Kの色ごとに設けられた、露光装置22(22Y,22M,22C,22K)、現像装置23(23Y,23M,23C,23K)、感光体ドラム24(24Y,24M,24C,24K)、帯電装置25(25Y,25M,25C,25K)、クリーニング装置26(26Y,26M,26C,26K)、1次転写ローラ27(27Y,27M,27C,27K)、中間転写ベルト28、クリーニング装置29、2次転写ローラ21、及び定着装置100等で構成されている。
【0027】
画像形成部2において、帯電装置25は感光体ドラム24を帯電し、露光装置22は帯電された感光体ドラム24に各色の画像データに応じた光を照射して静電潜像を形成する。現像装置23は、静電潜像が形成された感光体ドラム24の表面に各色トナーを付着させて静電潜像を現像する。1次転写ローラ27は、トナーが付着された感光体ドラム24に中間転写ベルト28を圧接し、各色トナー像を中間転写ベルト28に順次重ねて1次転写する。そして、2次転写ローラ21は、中間転写ベルト28に用紙を圧接し、トナー像を用紙に2次転写して、用紙にトナー像を形成する。定着装置100は、用紙に形成されたトナー像を熱圧着により定着させる。
クリーニング装置26は、1次転写後に感光体ドラム24の表面に残留しているトナーを除去する。クリーニング装置29は、2次転写後に中間転写ベルト28に残留しているトナーを除去する。
【0028】
搬送部30は、給紙装置31、搬送装置32、排紙装置33等で構成されている。給紙装置31は、3つの給紙トレイ31a〜31cを備え、これらの給紙トレイ31a〜31cには、用紙の斤量やサイズ等に基づいて識別された規格用紙や特殊用紙が予め設定された種類ごとに収容されている。給紙トレイ31a〜31cに収容されている用紙は、最上部から一枚ずつ送出され、複数の搬送ローラを備えた搬送装置32により画像形成部20に搬送される。画像形成部20において、2次転写ローラ21により中間転写ベルト28のトナー像が用紙の一方の面に一括して2次転写され、定着装置100により定着処理が施される。そして、画像形成された用紙は、排紙ローラを備えた排紙装置33により機外の排紙トレイ33aに排紙される。
【0029】
ここで、本実施形態では、ベルト方式の定着装置100を採用している。すなわち、定着装置100はベルト駆動部100Aを備えている。このベルト駆動部100Aでは、2つの支持ローラ102,103に張架された無端ベルト101が、被圧接体となる定着ローラ130に対して圧接又は離間した状態で走行するようになっている。以下において、定着装置100で用いられる無端ベルト101のことを定着ベルトと称する。
定着装置100では、後述する圧接/解除機構104により定着ベルト101が定着ローラ130に圧接されることにより、ニップ部が形成される。そして、このニップ部で用紙を狭持搬送しながらトナー像を定着させるようになっている。なお、定着処理を施すときにだけ定着ベルト101と定着ローラ130は圧接状態となり、定着処理を施さないときは互いに離間され解除状態となる。
【0030】
図2は、定着装置100のベルト駆動部100Aについて示す図である。図2に示すように、ベルト駆動部100Aでは、定着ベルト101が支持ローラ102,103に張架されている。
支持ローラ102は、動力伝達機構106を介してベルト駆動モータM1に接続されている。以下において、支持ローラ102を駆動ローラと称する。駆動モータM1を駆動すると、この動力が駆動ローラ102に伝達され、張架されている定着ベルト101を走行させる。また、駆動ローラ102は、バネ等の付勢部材107により定着ローラ130と離間する方向に付勢されるとともに、圧接/解除機構104のカム104aに支持されて固定されている。そして、駆動ローラ102が圧接/解除機構104に従動して移動することにより、定着ローラ130に対して定着ベルト101が圧接又は離間されるようになっている。
【0031】
定着ベルト101の圧接/解除状態、すなわち駆動ローラ102の圧接/解除状態は、圧接/解除検出ユニット120によって判定される。圧接/解除検出ユニット120は、互いに対向して配置された発光素子と受光素子からなる透過型フォトセンサ(圧接/解除の検出センサ)PS4と遮蔽体121を備えている。そして、駆動ローラ102の圧接/解除状態に連動して遮蔽体121が発光素子と受光素子の間を移動し、発光素子からの光を透過/遮断するようになっている。例えば、圧接状態では遮蔽体121が発光素子からの光を透過し、解除状態では遮蔽体121が発光素子からの光を遮断する。フォトセンサPS4は、受光素子における受光量に基づいて、圧接状態を示すLレベルの検出信号又は解除状態を示すHレベルの検出信号を出力する。
【0032】
支持ローラ103は、ステアリング機構105を介してステアリングモータM2に接続されている。以下において、支持ローラ103をステアリングローラと称する。ベルト端101aの位置に基づいて定着ベルト101が蛇行していると判定されると、ステアリングモータM2が駆動され、ステアリングローラ103の奥側を上昇又は下降させ定着ベルト101の蛇行を修正する。
【0033】
ベルト端101aの位置は、ベルト位置検出ユニット110によって検出される。ベルト位置検出ユニット110は、互いに対向して配置された発光素子と受光素子からなる透過型フォトセンサ(ベルト位置検出センサ)PS1〜PS3と扇形の遮蔽体111を備えている。遮蔽体111は付勢部材113に接続され、棒状のアーム112がベルト端111aに常時接触するように付勢されている。そして、ベルト端101aの位置変動に連動して遮蔽体111が軸中心に回転すると、その周壁が発光素子と受光素子の間を移動し、発光素子からの光を透過/遮断するようになっている。
フォトセンサPS1〜PS3は、受光素子における受光量に基づいて、Hレベル又はLレベルの検出信号PS1_SIG,PS2_SIG,PS3_SIGを出力する。これらの検出信号に基づいて制御部90がベルト端101aの位置を判定する。ここで、フォセンサPS1〜PS3は、発光素子からの光が遮断された場合にHレベルの検出信号を出力し、発光素子からの光が透過された場合にLレベルの検出信号を出力するものとする。
【0034】
このように、本実施形態に係るベルト駆動装置(定着装置100のベルト駆動部100A)は、複数の支持ローラ(駆動ローラ102,ステアリングローラ103)に張架され、被圧接体(定着ローラ130)に対して圧接又は離間した状態で走行する無端ベルト(定着ベルト101)と、無端ベルトが圧接状態にあるか解除状態にあるかを検出する圧接/解除状態検出手段(圧接/解除検出ユニット120)と、無端ベルトの幅方向の位置を検出するベルト位置検出手段(ベルト位置検出ユニット110)と、を備えている。
本実施形態では、このベルト駆動部100Aにおいて、ベルト位置検出ユニット110のフォトセンサPS3から出力される検出信号PS3_SIGに対して適切なチャタリング除去処理を施すことにより、定着ベルト101の圧接/解除状態に応じてベルト位置を正確かつ迅速に判定できるようになっている。
【0035】
図3は、画像形成装置1の機能的構成を示すブロック図である。
図3において、制御部90は、CPU(Central Processing Unit)91、RAM(Random Access Memory)92、ROM(Read Only Memory)93等を備えて構成されている。CPU91は、ROM93から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM92に展開し、展開したプログラムに従って画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。
画像メモリ71は、用紙に画像を形成するための画像データを格納する記憶領域であり、例えば揮発メモリ等の記憶装置で構成される。画像メモリ71には、画像読取部10で読み取られた画像データや、ネットワークを介して外部の情報機器から入力された画像データが記憶される。
操作表示部72は、LCD(Liquid Crystal Display)やタッチパネル等を備え、画像形成装置1に関する各種情報の表示や、オペレータによる各種入力操作の受付を行う。
【0036】
画像形成装置1には、用紙検出センサ73、トナー濃度センサ74、その他図示しない各種センサが設けられており、各センサは検出信号を制御部90に対して出力する。制御部90では、入力された検出信号に基づいて各種処理が行われる。
画像処理制御部81、ドラム駆動制御部82、プロセス制御部83及び中間転写ベルト駆動制御部84は、制御部90からの制御信号に基づいて、画像形成部20の各ブロック(定着装置100を除く)を制御する。
搬送制御部85は、制御部90からの制御信号に基づいて、搬送部30における用紙の搬送や反転を制御する。
【0037】
ベルト駆動制御部151、ステアリング制御部152、圧接/解除機構制御部153は、制御部90からの制御信号に基づいて、ベルト駆動部100Aの各ブロックを制御する。ベルト駆動制御部151は、ベルト位置検出センサPS3からの検出信号PS3_SIGに基づいて判定されたベルトの位置(正常/異常)に従って、ベルト駆動モータM1のオン/オフを制御する。ステアリング制御部152は、ベルト位置検出センサPS1,PS2からの検出信号PS1_SIG,PS2_SIGに基づいて判定された蛇行方向(前側、奥側)に従って、ステアリングローラ103を傾動させてステアリング制御を行う。圧接/解除機構制御部153は、定着処理の開始/終了に応じて圧接/解除機構104を制御し、定着ベルト101(駆動ローラ102)を定着ローラ130に対して圧接/解除させる。
【0038】
定着温度制御部154は、制御部90からの制御信号及び定着ローラ130の近傍に設けられた温度感知センサ156からの検出信号に基づいて、定着ローラ130の内部に配設された定着ヒータ155の温度を制御する。
【0039】
図4は、ベルト駆動部100Aにおけるチャタリング除去処理及びベルト駆動制御処理を実現するハード処理回路の一例を示す図である。
図4に示すように、フォトセンサPS3から出力された検出信号PS3_SIG及びフォトセンサPS4から出力された検出信号PS4_SIGは、CPU91及びハード処理回路151Aに入力される。また、CPU91には、フォトセンサPS1,PS2から出力された検出信号PS1_SIG,PS2_SIGが入力される。
【0040】
ハード処理回路151Aにおいて、コンパレータCMPの−入力端子には検出信号PS3_SIGに基づく入力電圧(=B点の電圧)Vinが与えられ、+入力端子には検出信号PS4_SIGに基づくしきい値電圧(=E点の電圧)Vrefが与えられる。そして、コンパレータCMPにおいて、入力電圧Vinとしきい値電圧Vrefが比較される。
入力電圧Vinがしきい値電圧Vrefを超えると出力電圧Vout(=C点の電圧)がLレベルからHレベルに反転され、入力電圧Vinがしきい値電圧Vrefを下回ると出力電圧VoutがHレベルからLレベルに反転される。
この出力電圧Voutが、チャタリング除去処理後の検出信号PS3_INTとしてCPU91に入力される。ここでは、定着ベルト101が異常位置にあると判定される場合に検出信号PS3_INTはHレベルとなり、定着ベルト101が正常位置にあると判定される場合に検出信号PS3_INTはLレベルとなる。
【0041】
一方で、CPU91は、ベルト駆動モータM1を駆動させるためのLレベルの駆動信号M1_SIGをハード処理回路151Aに対して出力する(図5(e))。この駆動信号M1_SIGと検出信号PS3_INTに基づいて、ベルト駆動モータM1を制御するための制御信号M1_CONTがベルト駆動モータM1に出力される。
検出信号PS3_INTがHレベルの場合(すなわち定着ベルト101が異常位置にあると判定された場合)は、Hレベルの制御信号M1_CONTがベルト駆動モータに出力され、ベルト駆動モータM1が停止される。検出信号PS3_INTがLレベルの場合(すなわち定着ベルト101が正常位置にあると判定された場合)は、Lレベルの制御信号M1_CONTが出力され、ベルト駆動モータM1が駆動される。
このように、図4に示すハード処理回路151Aによれば、チャタリング除去処理及びベルト駆動制御処理が実現される。
【0042】
図4に示すハード処理回路151Aにおける動作を、図5を参照して具体的に説明する。図5には、(a)に示す電圧波形の検出信号PS3_SIGがハード処理回路151Aに入力された場合について示している。すなわち、図5(a)に示す波形は、A点の電圧波形である。
図4に示すように、ハード処理回路151Aに入力された検出信号PS3_SIGは、抵抗R1,R2,及びコンデンサC1等で構成された積分回路を通って、コンパレータCMPの−入力端子に与えられる。したがって、コンパレータCMPの入力電圧VinとなるB点の電圧は、コンデンサC1に入力される電流の時間積分に比例して変化する。すなわち、図5(a)に示すような検出信号PS3_SIGが入力されると、B点の電圧波形は図5(b)のようになる。
【0043】
ここで、定着ベルト101が異常位置にあることを示すHレベルの検出信号PS3_SIGが入力された場合は、抵抗R1を通って電流が流れ、コンデンサC1が充電される。一方、正常位置であることを示すLレベルの検出信号PS3_SIGが入力された場合は、コンデンサC1から抵抗R1,R2を通って電流が流れ、放電される。
このように構成することで、コンデンサC1の放電時間が充電時間よりも短くなるようにしている。これにより、チャタリング等の影響を確実に除去すべく十分に時間をかけて定着ベルト101が正常位置から異常位置へ進入したことを検出できるとともに、早期に異常位置から正常位置へ復帰したことを検出することができる。なお、抵抗R2の抵抗値を抵抗R1の抵抗値より小さくすれば、放電時間をさらに短縮することができる。
【0044】
コンパレータCMPの+入力端子には、定着ベルト101の圧接/解除状態に応じた電圧(E点の電圧)がしきい値電圧Vrefとして与えられる。具体的には、ハード処理回路151Aにおいて、定着ベルト101が定着ローラ130と圧接していることを示すLレベルの検出信号PS4_SIGが入力されたときにはトランジスタTr1により抵抗R5に電流が流れず、定着ベルト101が定着ローラ130と離間していることを示すHレベルの検出信号PS4_SIGが入力されたときには抵抗R5に電流が流れる。したがって、圧接状態(PS4_SIGがLレベル)のときの方が、解除状態(PS4_SIGがHレベル)のときよりE点の電圧は高くなる。
つまり、コンパレータCMPの+入力端子には、圧接状態におけるしきい値電圧をVref(圧接)、解除状態におけるしきい値電圧をVref(解除)とすると、Vref(圧接)>Vref(解除)を満たすしきい値電圧Vref(圧接)又はVref(解除)が、圧接/解除状態に応じて与えられることになる。
【0045】
また、コンパレータCMPには正帰還が施されているので(いわゆるヒステリシスコンパレータ)、出力電圧をLレベルからHレベルに反転させるときのしきい値電圧(以下、高いしきい値電圧)Vref_Hに対して、出力電圧をHレベルからLレベルに反転させるときのしきい値電圧(以下、低いしきい値電圧)Vref_Lは低くなる。
すなわち、コンパレータCMPでは、圧接状態における高いしきい値Vref_H(圧接)、低いしきい値Vref_L(圧接)、及び解除状態における高いしきい値Vref_H(解除)、低いしきい値Vref_L(解除)の4つの判定値のいずれかと、−入力端子の入力電圧Vinが比較されることとなる。
【0046】
つまり、図5に示すように、圧接状態の場合には、コンパレータCMPの入力電圧Vin(図5(b))が高いしきい値電圧Vref_H(圧接)を超えたときに、出力電圧Vout(図5(c))はLレベルからHレベルに反転される。そして、出力電圧VoutがHレベルになるとD点の電圧がLレベルとなるので(図5(f))、制御信号M1_CONTはHレベルとなり(図5(g))、ベルト駆動モータM1が停止される。
また、コンパレータCMPの入力電圧Vin(図5(b))が低いしきい値電圧Vref_L(圧接)を下回ったときに、出力電圧Vout(図5(c))はHレベルからLレベルに反転される。そして、出力電圧VoutがLレベルになるとD点の電圧がHレベルとなるので(図5(f))、制御信号M1_CONTはLレベルとなり(図5(g))、ベルト駆動モータM1が駆動される。
【0047】
また、解除状態の場合には、コンパレータCMPの入力電圧Vin(図5(b))が高いしきい値電圧Vref_H(解除)を超えたときに、出力電圧Vout(図5(d))はLレベルからHレベルに反転される。そして、出力電圧VoutがHレベルになるとD点の電圧がLレベルとなるので(図5(h))、制御信号M1_CONTはHレベルとなり(図5(i))、ベルト駆動モータM1が停止される。
また、コンパレータCMPの入力電圧Vin(図5(b))が低いしきい値電圧Vref_L(解除)を下回ったときに、出力電圧Vout(図5(d))はHレベルからLレベルに反転される。そして、出力電圧VoutがLレベルになるとD点の電圧がHレベルとなるので(図5(h))、制御信号M1_CONTはLレベルとなり(図5(i))、ベルト駆動モータM1が駆動される。
【0048】
ここで、解除状態における高いしきい値電圧Vref_H(解除)は、圧接状態における高いしきい値電圧Vref_H(圧接)よりも低いので、チャタリング等の影響が同じであれば、解除状態の方が圧接状態よりも早く異常を検知されることになる。つまり、解除状態では蛇行速度が速いので、ベルトが正常位置から異常位置に進入したか否かを、圧接状態で要する時間よりも短い時間で判定できるようにしている。
【0049】
また、ハード処理回路151Aでは、コンデンサC1の放電時間が充電時間よりも短くなるように回路構成されているので、入力電圧Vinが単調増加により下限値から高いしきい値電圧Vref_H(圧接)に到達する時間(T1(圧接))は、単調減少により上限値から低いしきい値電圧Vref_L(圧接)に到達する時間(T2(圧接))より長くなる。また、入力電圧Vinが単調増加により下限値から高いしきい値電圧Vref_H(解除)に到達する時間(T1(解除))は、単調減少により上限値から低いしきい値電圧Vref_L(解除)に到達する時間(T2(解除))より長くなる。
つまり、定着ベルト101が正常位置から異常位置に進入したかを判定する際には、チャタリング等の影響により誤検知が生じて装置が無闇に停止されないように慎重に判断し、異常位置から正常位置に復帰したかを判定する際には、誤検知による不具合は軽微なので迅速に判断している。
【0050】
[変形例]
図4に示す例では、ハード処理回路151Aによりチャタリング除去処理及びベルト駆動制御処理を実現しているが、変形例では、ハード処理回路151Aによりチャタリング除去処理を実現し、ベルト駆動制御処理についてはソフトウェア制御により実現する。
図6は、変形例に係るベルト駆動制御処理及びステアリング処理の一例を示すフローチャートである。図6に示すベルト駆動制御処理及びステアリング処理は、CPU91が図4に示す検出信号PS1_SIG,PS2_SIG,PS3_INTに基づいて所定の処理プログラムを実行することにより実現される。
【0051】
図6において、ステップS101では、ベルト駆動モータM1を駆動して、定着ベルト101を走行させる。
ステップS102では、検出信号PS3_SIGに対してハード処理回路151Aでチャタリング除去処理を行った後の検出信号PS3_INTを監視する。
ステップS103では、検出信号PS3_INTがオン(Hレベル)となっているか否かを判定する。そして、検出信号PS3_INTがオンであると判定した場合はステップS104に移行し、検出信号PS3_INTがオフであると判定した場合はステップS106に移行する。
ステップS104では、定着ベルト101の破損を防止するために、ベルト駆動モータM1及びステアリングモータM2を停止させる。
ステップS105では、画像形成装置1の全体の動作を停止させ、操作表示部72にエラー表示を行う。
【0052】
ステップS106では、フォトセンサPS1,PS2から入力された検出信号PS1_SIG,PS2_SIGを、所定タイマに従い2度読みする。チャタリング等による影響を除去するためである。
ステップS107では、2度読みの結果、検出信号PS2_SIGがオン(Hレベル)であるか否かを判定する。そして、検出信号PS2_SIGがオンであると判定した場合(図2において定着ベルト101が前側に片寄って蛇行している場合)はステップS108に移行し、検出信号PS2_SIGがオフであると判定した場合はステップS109に移行する。
ステップS108では、ステアリングモータM2を所定ステップ数に回転させて奥側のベルト端を下げ、定着ベルト101の蛇行を修正する。
【0053】
ステップS109では、2度読みの結果、検出信号PS1_SIGがオン(Hレベル)であるか否かを判定する。そして、検出信号PS1_SIGがオンであると判定した場合はステップS103に移行し、検出信号PS1_SIGがオフであると判定した場合(図2において定着ベルト101が奥側に片寄って蛇行している場合)はステップS110に移行する。
ステップS110では、ステアリングモータM2を所定ステップ数に回転させて奥側のベルト端を上げ、定着ベルト101の蛇行を修正する。
このように、ステップS102〜S104によりベルト駆動制御処理が実現され、ステップS106〜S110によりステアリング制御処理が実現される。
【0054】
上述したように、本実施形態に係るベルト駆動装置(定着装置100のベルト駆動部100A)は、ベルト位置検出手段(ベルト位置検出ユニット110)による検出結果(入力電圧Vin)と判定値(しきい値電圧Vref)に基づいて、ベルトが異常位置にあるか否かを判定するベルト異常判定手段(ハード処理回路151A)と、ベルト異常判定手段による判定結果(検出信号PS3_INT)に基づいて、無端ベルトの駆動(走行/停止)を制御するベルト駆動制御手段(ハード処理回路151A又は図6のステップS102〜104)と、を備えている。
そして、無端ベルトが異常位置にあるか否かを判定するための判定値が、無端ベルトの圧接/解除状態に対応して設定されている(しきい値電圧Vref(圧接)、Vref(解除))。
【0055】
これにより、圧接/解除状態に応じて適切なチャタリング除去処理を実行しベルト位置を正確かつ迅速に検知することができるので、蛇行に起因するベルト破損を確実に防止する。また、停止された定着ベルト101の駆動を早期に再始動させることができる。
【0056】
具体的には、ベルト異常判定手段(ハード処理回路151A)は、ベルト位置検出手段(ベルト位置検出ユニット110)から出力された無端ベルトが異常位置にあることを示す異常位置検出信号(Hレベルの検出信号PS3_SIG)の入力時間に応じて異常検知量(入力電圧Vin)を上限値まで増加させる一方、ベルト位置検出手段から出力された無端ベルトが正常位置にあることを示す正常位置検出信号(Lレベルの検出信号PS3_SIG)の入力時間に応じて異常検知量(入力電圧Vin)を下限値まで減少させる。
そして、この異常検知量と判定値(しきい値電圧Vref(圧接)、Vref(解除))を比較することにより、無端ベルトが異常位置にあるか否かを判定する。
これにより、チャタリング等の影響を効果的に除去でき、ベルト位置を正確に検知することができる。
【0057】
また、ベルト駆動装置(ベルト駆動部100A)は、判定値として、第1異常判定値(高いしきい値電圧Vref_H(圧接))とこの第1異常判定値より低い第2異常判定値(高いしきい値電圧Vref_H(解除))を有している。
そして、ベルト異常判定手段(ハード処理回路151A)は、圧接状態においては、異常検知量(入力電圧Vin)が第1異常判定値を超えたときに無端ベルトが正常位置から異常位置に進入したと判定する。解除状態においては、異常検知量が前記第2異常判定値を超えたときに無端ベルトが正常位置から異常位置に進入したと判定する。
これにより、チャタリング等の影響が同じであれば、解除状態の方が圧接状態よりも早く、ベルトの異常位置への進入が検知されることになる。すなわち、解除状態では圧接状態に比較して蛇行速度が速くなるが、ベルトが正常位置から異常位置に進入したと判定する時間を短縮することで、解除状態においても蛇行に起因するベルト破損を確実に防止することができる。
【0058】
さらに、ベルト駆動装置(ベルト駆動部100A)は、判定値として、第1正常判定値(低いしきい値電圧Vref_L(圧接)とこの第1正常判定値より低い第2正常判定値(低いしきい値電圧Vref_L(解除)を有している。
そして、ベルト異常判定手段(ハード処理回路151A)は、圧接状態においては、異常検知量(入力電圧Vin)が第1正常判定値を下回ったときにベルトが異常位置から正常位置に復帰したと判定し、解除状態においては、異常検知量が第2正常判定値を下回ったときにベルトが異常位置から正常位置に復帰したと判定する。
これにより、チャタリング等の影響が同じであれば、解除状態の方が圧接状態よりも遅く、ベルトの正常位置への復帰が検知されることになる。すなわち、解除状態では圧接状態に比較して蛇行速度が速くなるが、ベルトが十分に正常位置へ復帰してからベルトの駆動を再始動させることで、再始動後直ちに異常位置に戻るような事態が生じるのを防止できる。
【0059】
また、異常検知量(入力電圧Vin)の増加速度(コンデンサC1の充電速度)及び減少速度(コンデンサC1の放電速度)は、異常検知量が単調増加により下限値から第1異常判定値に到達する時間(T1(圧接))が、単調減少により上限値から第1正常判定値に到達する時間(T2(圧接))より長く、かつ、単調増加により下限値から第2異常判定値に到達する時間(T1(解除))が、単調減少により上限値から第2正常判定値に到達する時間(T2(解除))より長くなるように設定されている。
これにより、チャタリング等の影響により誤検知が生じて装置が無闇に停止されないように、定着ベルト101が正常位置から異常位置に進入したかを慎重に判断することができるとともに、異常位置から正常位置に復帰したかを迅速に判断することができる。
【0060】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、ベルト駆動装置(ベルト駆動部100A)におけるチャタリング除去処理をハードウェア制御(ハード処理回路151A)で実現する場合について説明したが、CPU91によるソフトウェア制御により実現することもできる。例えば、ベルト位置検出手段(ベルト位置検出ユニット110)から出力された無端ベルトが異常位置にあることを示す異常位置検出信号(Hレベルの検出信号PS3_SIG)の入力時間をタイマによって積算して異常検知量とし、この異常検知量を圧接/解除状態に応じて設定された判定値と比較すればよい。
【0062】
また、本発明に係るベルト駆動装置は、画像形成装置の定着装置だけでなく、中間転写ベルト28の駆動装置等、無端ベルトが被圧接体に圧接又は離間した状態で走行するようなベルト駆動装置に適用できる。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 画像形成装置
100 定着装置
100A ベルト駆動部(ベルト駆動装置)
101 定着ベルト(無端ベルト)
102 駆動ローラ(支持ローラ)
103 ステアリングローラ(支持ローラ)
110 ベルト位置検出ユニット(ベルト位置検出手段)
120 圧接解除検出ユニット(圧接解除状態検出手段)
130 定着ローラ
151A ハード処理回路(ベルト異常判定手段,ベルト駆動制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持ローラに張架され、被圧接体に対して圧接又は離間した状態で走行する無端ベルトと、
前記無端ベルトが圧接状態にあるか解除状態にあるかを検出する圧接/解除状態検出手段と、
前記無端ベルトの幅方向の位置を検出するベルト位置検出手段と、
前記ベルト位置検出手段による検出結果と判定値に基づいて、前記無端ベルトが異常位置にあるか否かを判定するベルト異常判定手段と、
前記ベルト異常判定手段による判定結果に基づいて、前記無端ベルトの駆動を制御するベルト駆動制御手段と、を備え、
前記判定値が、前記無端ベルトの圧接/解除状態に対応して設定されていることを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
前記ベルト異常判定手段は、前記ベルト位置検出手段から出力された前記無端ベルトが異常位置にあることを示す異常位置検出信号の入力時間に応じて異常検知量を上限値まで増加させる一方、前記ベルト位置検出手段から出力された前記無端ベルトが正常位置にあることを示す正常位置検出信号の入力時間に応じて前記異常検知量を下限値まで減少させ、
この異常検知量と前記判定値を比較することにより、前記無端ベルトが異常位置にあるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記判定値として、第1異常判定値とこの第1異常判定値より低い第2異常判定値を有し、
前記ベルト異常判定手段は、前記圧接状態においては、前記異常検知量が前記第1異常判定値を超えたときに前記無端ベルトが正常位置から異常位置に進入したと判定し、
前記解除状態においては、前記異常検知量が前記第2異常判定値を超えたときに前記無端ベルトが正常位置から異常位置に進入したと判定することを特徴とする請求項2に記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
前記判定値として、第1正常判定値とこの第1正常判定値より低い第2正常判定値を有し、
前記ベルト異常判定手段は、前記圧接状態においては、前記異常検知量が前記第1正常判定値を下回ったときにベルトが異常位置から正常位置に復帰したと判定し、
前記解除状態においては、前記異常検知量が前記第2正常判定値を下回ったときにベルトが異常位置から正常位置に復帰したと判定することを特徴とする請求項3に記載のベルト駆動装置。
【請求項5】
前記異常検知量の増加速度及び減少速度は、
前記異常検知量が単調増加により前記下限値から前記第1異常判定値に到達する時間が、単調減少により前記上限値から前記第1正常判定値に到達する時間より長く、
単調増加により前記下限値から前記第2異常判定値に到達する時間が、単調減少により前記上限値から前記第2正常判定値に到達する時間より長くなるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載のベルト駆動装置。
【請求項6】
前記ベルト位置検出手段による検出結果に基づいて、前記無端ベルトの蛇行を修正するステアリング制御手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のベルト駆動装置。
【請求項7】
用紙に形成されたトナー像を、定着装置により定着させる画像形成装置において、
前記定着装置が、請求項1から6のいずれか一項に記載のベルト駆動装置と、前記無端ベルトと圧接する定着ローラと、を備えて構成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−118296(P2011−118296A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277741(P2009−277741)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】