説明

ホイールモータ

【課題】電動モータとブレーキ装置をともに内蔵するとともに、電動モータとブレーキ装置との熱の移動を抑制するホイールモータを提供するものである。
【解決手段】ホイールモータ1は、ステータ21と、ステータ21に対し回転自在に配置され、モータ軸26が設けられているロータ22とを有する電動モータ2と、車両に備わる車輪が連係される出力軸34を有し、モータ軸26の回転を減速するとともに出力軸から減速された回転を出力する減速装置3とを備える。さらに、ホイールモータ1は、車輪の回転にブレーキ力を与えるブレーキ装置4を備える。そして、減速装置3は、電動モータ2とブレーキ装置4との間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホイールモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、車両に備わる車輪に駆動力を与え車両を駆動させるための動力装置、および車輪に制動力を与え車両を制動または停止させるブレーキ装置が設けられている。このブレーキ装置としては、ディスクブレーキまたはドラムブレーキが用いられ車輪に近接して配置されている。そして、車両が電気自動車等である場合には、動力源として電動モータを備え、ブレーキ装置とともに車輪の近傍に配置されるホイールモータが数多く採用されている。
【0003】
上記のように、車両の動力装置としてホイールモータが用いられる場合、ブレーキ装置と電動モータが近接して配置されるため、ブレーキ装置および電動モータのそれぞれから生じる発熱が相手方に与える影響が問題となる。
【0004】
例えば、車両の制動時には、ブレーキ装置は摩擦により発熱し高温となる。そして、この熱により電動モータが高熱となると電動モータに備えられているマグネットおよびコイルの性能が低下し電動モータの出力性能が低下するおそれがある。また、長時間にわたり電動モータが作動していると電動モータは銅損または鉄損により発熱し高温となる。そして、この熱によりブレーキ装置が高温となるとブレーキ装置に備えられている摩擦材の摩擦性能が低下しブレーキ装置の制動性能が低下するおそれがある。
【0005】
上記のように、互いに近接する電動モータとブレーキ装置との間に、相互に伝わる熱の移動を抑制するため、車輪のホイールを間に挟んで電動モータとブレーキ装置を配置した車両が提案されている(例えば、特許文献1)。この車両では、車輪のホイールを電動モータとブレーキ装置との間に配置することにより、電動モータとブレーキ装置と間を熱の移動を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−151359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気自動車等の車両のデザインにおいては、組み立ての容易化、小型軽量化のため複数の構成部品の一体化の求めがあり、ホイールモータにおいては、電動モータ(減速装置を含む)とブレーキ装置の一体化、すなわち、電動モータとブレーキ装置をともに内蔵したホイールモータが必要とされている。しかしながら、上記の従来技術においては、電動モータとブレーキ装置との熱の移動は抑制されているものの、車輪のホイールを間に挟んで電動モータとブレーキ装置が配置されているため、電動モータとブレーキ装置をともに内蔵したホイールモータとすることができない。
【0008】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、電動モータとブレーキ装置をともに内蔵するとともに、電動モータとブレーキ装置との熱の移動を抑制するホイールモータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載のホイールモータは、ステータと、前記ステータに対し回転自在に配置され、モータ軸が設けられているロータとを有する電動モータと、車両に備わる車輪が連係される出力軸を有し、前記モータ軸の回転を減速するとともに前記出力軸から減速された回転を出力する減速装置と、を備えるホイールモータにおいて、前記ホイールモータは、前記車輪の回転にブレーキ力を与えるブレーキ装置を備え、前記減速装置は、前記電動モータと前記ブレーキ装置との間に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のホイールモータは、請求項1に記載のホイールモータにおいて、前記ホイールモータは、前記減速装置と前記電動モータとの間を遮蔽する遮蔽手段を有するとともに前記減速装置を気密に内包する減速装置ケースを有し、前記減速装置ケース内にはオイルが適量封入されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載のホイールモータは、請求項2に記載のホイールモータにおいて、前記ブレーキ装置は、前記車輪に備わるホイールが連結されるブレーキドラムと、前記ブレーキドラム内に配置されるブレーキシューとを備えるドラムブレーキであり、前記ドラムブレーキは、前記車輪の内側に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載のホイールモータは、請求項3に記載のホイールモータにおいて、前記減速装置は、前記電動モータの前記モータ軸に一体的に取り付けられている太陽歯車と、前記減速装置ケースの内壁に一体的に取り付けられている内歯車と、前記太陽歯車および前記内歯車の間に配置され、前記太陽歯車および前記内歯車の双方に噛合するとともに前記出力軸が連係されている少なくとも1つ以上の遊星歯車とを備える遊星歯車装置であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載のホイールモータは、請求項4に記載のホイールモータにおいて、前記電動モータの前記モータ軸と前記出力軸とは、同軸上に配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載のホイールモータは、請求項5に記載のホイールモータにおいて、前記ホイールモータは、前記ドラムブレーキの前記ブレーキドラムが一体的に設けられているとともに前記車輪の前記ホイールが取り付けられるプレート部材を備え、前記出力軸の端部にはテーパ形状の連結部が形成され、前記プレート部材は前記出力軸の連結部にテーパ結合されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載のホイールモータは、請求項6に記載のホイールモータにおいて、前記電動モータは、前記ロータが前記ステータの外側に配置されているアウターロータ型ブラシレスモータであることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載のホイールモータは、請求項7に記載のホイールモータにおいて、前記ホイールモータは、前記電動モータおよび前記減速装置を内包するフロントブラケットおよびエンドブラケットを備えており、前記エンドブラケットには前記電動モータが取り付けられ、前記フロントブラケットには前記車両に取り付けられる取り付け部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のホイールモータによれば、ホイールモータ1は、電動モータおよび減速装置の他に、ブレーキ装置を内蔵したオールインワンタイプのホイールモータである。そのため、ホイールモータは、車両に組み付けることが容易であり、ハウジング等を共有することができるため小型軽量なホイールモータである。
【0018】
さらに、ホイールモータは、減速装置が電動モータとブレーキ装置との間に配置されている。そのため、電動モータとブレーキ装置とにそれぞれ生じる発熱が相手方に移動することが抑制され、電動モータの出力性能およびブレーキ装置の制動性能が低減することがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態におけるホイールモータの正面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるホイールモータの縦断面図である。
【図3】図2において断面A−Aにて示すホイールモータの横断面図であり、ブレーキ装置を示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるブレーキ装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図1、図2および図3に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態におけるホイールモータの正面図である。図2は、本発明の実施形態におけるホイールモータの縦断面図である。図3は、図2において断面A−Aにて示すホイールモータの横断面図であり、ブレーキ装置を示す図である。
【0021】
図1に示すように、ホイールモータ1は、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両の車両フレームFに取り付けボルトBにより取り付けられる。また、ホイール61とホイール61に取り付けられているタイヤ62とを有する車輪60がボルト63により、ホイールモータ1に取り付けられている。そして、ホイールモータ1は、車輪60に駆動力および制動力を与え、車両の走行を制御する。
【0022】
図2に示すように、ホイールモータ1は、電動モータとしてのアウターロータ型ブラシレスモータ(以下「ブラシレスモータ」ともいう。)2、減速装置としての遊星歯車装置3、ブレーキ装置としてのドラムブレーキ4、エンドブラケット5、フロントブラケット6、プレート部材56、減速装置ケース70とを備えている。そして、ブラシレスモータ2よび遊星歯車装置3は、エンドブラケット5およびフロントブラケット6内に内包されるとともに、遊星歯車装置3は、一部がフロントブラケット6により形成される減速装置ケース70により、更に気密に内容されている。
【0023】
ブラシレスモータ2は、ステータ21と、ステータ21の外側に回転自在に配置されているロータ22と、ロータ22に一体的に取り付けられているモータ軸26とを備える。ステータ21は、薄板状の電磁鋼板が複数枚積層され形成されたステータコア21aと、ステータコア21aにインシュレータ21bを介して巻装されているコイル21cとを有する。そして、ステータ21は、ステータボルト21dによりエンドブラケット5に取り付けられている。
【0024】
ロータ22は、円盤部22cと円盤部22cの外周に一体形成されているバックヨーク22bとからなり、有底円筒形状に形成されているロータ本体22aと、ロータ本体22aのバックヨーク22bの内壁に設けられているマグネット22dとを備えている。そして、ロータ本体22aの円盤部22cの内周には、ネジ27によりモータ軸26が取り付けられている。
【0025】
エンドブラケット5には、軸受(24,25)が挿入固定されており、軸受(24,25)にモータ軸26が軸支されることにより、モータ軸26を介してロータ22がエンドブラケット5に固定されているステータ21に対して回転自在に配置される。このように、ステータ21は、ステータボルト21dによりエンドブラケット5に取り付けられると
ともに、ロータ22に取付けられているモータ軸26が軸受(24,25)に軸支されることにより、ブラシレスモータ2は、エンドブラケット5に取り付けられている。
【0026】
ブラシレスモータ2には、ロータ22の回転位置の検出のために回転検出手段23が備えられている。回転検出手段23は、検出センサ23bが設けられ、エンドブラケット5に取り付けられている基板23aと、検出センサ23bに対向した位置にてロータ本体22aの円盤部22cに取り付けられている検出用マグネット23cとを備えている。なお、検出センサ23bとしてはホールIC等が用いられる。
【0027】
本実施の形態では、上記のように、電動モータとしてロータ22がステータ21の外側に配置されるアウターロータ型ブラシレスモータ2が用いられている。アウターロータ型ブラシレスモータ2は、回転子であるロータ22がステータ21の外側に配置されるためトルク半径を大きくすることができモータ軸26を高トルクで回転させることができる。また、ロータ22のバックヨーク22bの内壁にマグネット22dを配置できるため、バックヨーク22bによりマグネット22dが径方向外側から保持されており、マグネット22dのバックヨーク22bへの固定が容易となる。
【0028】
次に、図2に基づき本実施の形態の減速装置2について説明する。減速装置としての遊星歯車装置2は、モータ軸26が連結されているとともに、車両に備わる車輪60が連係される出力軸34を備えている。ホイールモータ1は、遊星歯車装置2を気密に内包する減速装置ケース70を備え、フロントブラケット6の一部と、減速装置ケース70はフロントブラケット6に一体的に取り付けられている遮蔽手段としてのシールプレート39と、シールプレート39とモータ軸26との間に配置されているオイルシール40と、フロントブラケット6と出力軸34との間に配置されているオイルシール41とを備えている。
【0029】
オイルシール40の外周はシールプレート39に密着し、オイルシール40の内周とモータ軸26の外周とは摺動自在であるともに、両者間は気密性が保たれている。同様に、オイルシール41の外周はフロントブラケット6に密着し、オイルシール41の内周と出力軸34の外周とは摺動自在であるともに、両者間は気密性が保たれている。このため、モータ軸26および出力軸34の回転が阻害されることなく、オイルシール(40,41)により減速装置ケース70内は気密に保たれている。
【0030】
減速装置ケース70内はオイル42が適量封入されており、遊星歯車装置42は、オイル42が適量封入された減速装置ケース70内に配置されている。また、減速装置ケース70を構成する遮蔽手段としてのシールプレート39が、ブラシレスモータ2と遊星歯車装置3との間に配置されており、オイルシール40とともにシールプレート39により、減速装置ケース70内のオイル42がブラシレスモータ2に付着することがない。
【0031】
遊星歯車装置3は、モータ軸26に一体的に取り付けられている太陽歯車31と、減速装置ケース70を形成するフロントブラケット6の内壁に一体的に取り付けられている内歯車32と、太陽歯車31および内歯車32の間に配置され、太陽歯車31および内歯車32の双方に噛合する3つの遊星歯車(33,33,33)とを有する。そして、遊星歯車(33,33,33)は、出力軸34に一体に形成されている連結部(35,35,35)により、軸受(36,36,36)を介して軸支されている。また、出力軸34は、フロントブラケット6に配置されている軸受(37,38)により軸支されており、モータ軸26と出力軸34とは、同軸上に配置されている。
【0032】
本実施の形態では、上記のように、減速装置として遊星歯車装置3を用いられている。遊星歯車装置3は、太陽歯車31,内歯車32並びに遊星歯車(33,33,33)を同
一の平面上に配置することができ軸方向に偏平に構成することができる。そのため、ホイールモータ1の軸方向長さを短くすることができる。また、太陽歯車31,内歯車32並びに遊星歯車(33,33,33)は、力の伝達効率の高い平歯車で構成することができるため、減速効率が高い。さらに、上述のように入力であるモータ軸26に対し、出力である出力軸34を同軸上に配置することができる。そのため、減速装置と電動モータを同軸上に配置することができ、ホイールモータ1の外径寸法が小さくなり車輪60のホイール61内へのレイアウト性が向上される。
【0033】
また、本実施の形態では、遊星歯車装置3はオイル42が適量封入されている減速装置ケース70内に配置されており、遊星歯車装置3はオイル潤滑により歯車間(31と33、32と33)の摺動が円滑となり、伝達効率が向上する。さらに、減速装置ケース70を形成する遮蔽手段としてのシールプレート39が、遊星歯車装置3とブラシレスモータ2との間に配置されているため、オイル42がブラシレスモータ2に付着することがない。このオイル42には、歯車(31,32,33)から生じるバリや摩耗粉が混在するおそれがあるが、オイル42がブラシレスモータ2に付着することがないため、歯車(31,32,33)から生じるバリや摩耗粉によりブラシレスモータ2の耐久性能や出力性能が低下するおそれがない。
【0034】
次に、図2および図3に基づき本実施の形態のブレーキ装置4について説明する。ドラムブレーキ4は、遊星歯車装置3から突出する出力軸34側に設けられ、遊星歯車装置3を挟んでブラシレスモータ2の反対側に配置される。従って、遊星歯車装置3は、ブラシレスモータ2とドラムブレーキ4との間に配置されている。
【0035】
ブレーキ装置としてのドラムブレーキ4は、フロントブラケット6に圧入固定されている支持ピン51と、互いに対向して配置されている一対のブレーキシュー(52,52)と、フロントブラケット6に回転自在に支持されているブレーキカム53と、ブレーキカム53に一体的に取り付けられているブレーキアーム54と、ブレーキシュー(52,52)を内包するブレーキドラム55とを備える。そして、図1に示すように、ドラムブレーキ4は、車輪60のホイール61の内側に配置される。
【0036】
ブレーキシュー52は、円弧形状のブレーキシュー本体52aと、ブレーキシュー本体52aの円弧外壁に取り付けられている摩擦部材52bとを備え、摩擦部材52bはブレーキドラム55の内壁に対向する位置に配置されている。一対のブレーキシュー(52,52)の一端は支持ピン51の円柱端部51aに回転自在に回転自在に軸支され、他端はブレーキカム53の2方取り形状となっているカム端部53aに当接されるとともに、一対のブレーキシュー(52,52)には引張りバネ(57,58)が取り付けられている。
【0037】
一対のブレーキシュー(52,52)は、引張りバネ(57,58)により互いに引き付けられ、支持ピン51に軸支されている一端を支点とし、ブレーキカム53に当接する他端を作用点とするレバー構造となっている。また、ブレーキカム53に一体的に取り付けられているブレーキアーム54の端部には、車両からのブレーキワイヤWが取り付けられ、ワイヤWの引張り動作によりブレーキアーム54が取り付けられているブレーキカム53は回転する。
【0038】
そして、図4に示すように、ワイヤWの引張り動作によりブレーキカム53が回転すると、2方取り形状となっているカム端部53aによりブレーキシュー(52,52)の他端間の距離が大きくなり、ブレーキシュー(52,52)の摩擦部材(52b,52b)はブレーキドラム55の内壁に押圧され、ブレーキドラム55と摩擦部材(52b,52b)との間に摩擦による制動力が生じる。
【0039】
本実施の形態では、上記のように、ブレーキ装置としてディスクブレーキではなくドラムブレーキ4が用いられている。ディスクブレーキは、円盤形状のブレーキディスクと、ブレーキディスクの外周に配置され、ブレーキシューを有するブレーキキャリパを備え、ブレーキキャリパはブレーキトルクを大きくするため車軸から離れた位置に配置される。そのため、ディスクブレーキは径方向の長さの大きなブレーキ装置となってしまう。
【0040】
それに対し、ドラムブレーキ4は円筒形状のブレーキドラム55の内側にブレーキシュー52が配置されているため、径方向の長さが短いブレーキ装置である。このため、ドラムブレーキ52は、車輪60のホイール61の内側に容易に配置されることができ、ホイールモータ1の多くの部分を車輪60のホイール61の内側に配置することができる。これにより、ホイールモータ1とホイールモータ1が取り付けられた車輪60の全体としての大きさが小さくなり、車両に対するレイアウト性が向上する。
【0041】
また、ドラムブレーキ4は、ワイヤWの引張りにより制動力を発生する構成である。そして、ワイヤWの引張りは、車両に備わるラチェット機構等により一定に保つことができる。そのため、ドラムブレーキ4は、車両を長時間停車するときに用いられる所謂サイドブレーキとしても用いることができる。
【0042】
次に、図2に基づき本実施の形態のプレート部材56およびプレート部材56と出力軸34との締結について説明する。プレート部材56は、出力軸34に取り付けられるともに、プレート部材56の外周部には車輪60のホイール61がボルト63により取り付けられる。プレート部材56が取り付けられる出力軸34の端部にはテーパ形状の連結部34aが形成されており、プレート部材56は連結部に挿入されるとともにナット43により締め付けられ、プレート部材56はテーパ結合により出力軸34に締結されている。また、プレート部材56には、ドラムブレーキ4のブレーキドラム55が一体形成されている。
【0043】
本実施の形態では、上記のように、テーパ結合により出力軸34に対しプレート部材56が締結されることにより、出力軸34に対し軸ずれすることなくプレート部材56が締結される。そのため、プレート部材56を介して出力軸34に取り付けられる車輪60も、出力軸34に対して軸ずれが殆どない。これにより、車輪60を出力軸34に対して振れなく回転することができ、車両の安定走行を実現することができる。
【0044】
次に、ホイールモータ1の車両フレームFの取り付けについて図1に基づき説明する。フロントブラケット6には取り付け部6aが一体形成されている。そして、ボルトBにより車両の車両フレームFに、ホイールモータ1が取り付けられる。このような構成とすることで、車両フレームFにフロントブラケット6が取り付けられるとともに、フロントブラケット6に車輪60が取り付けられる出力軸34が軸支される構成となる。そのため、車重はフロントブラケット6に作用し、ブラシレスモータ2が取り付けられているエンドブラケット5には、車重は作用しない構成となる。よって、車重によりブラシレスモータ2の出力性能が変化することがない。
【0045】
本発明のホイールモータ1の有する効果について、本実施の形態に基づき説明する。
(1)ホイールモータ1は、電動モータであるブラシレスモータ2および減速装置である遊星歯車装置3の他に、ブレーキ装置であるドラムブレーキ4を内蔵したオールインワンタイプのホイールモータである。そのため、ホイールモータ1は、車両に組み付けることが容易であり、ハウジング等を共有することができるため小型軽量なホイールモータである。
(2)ホイールモータ1は、減速装置3が電動モータ2とブレーキ装置4との間に配置さ
れている。そのため、電動モータ2とブレーキ装置4とにそれぞれ生じる発熱が相手方に移動することが抑制され、電動モータ2の出力性能およびブレーキ装置4の制動性能が低減することがない。
(3)電動モータ2とブレーキ装置4との間に配置されている減速装置3は、オイル42が適量封入されている減速装置ケース70により気密に内包されている。オイル42が適量封入されている減速装置ケース70は、熱容量が大きいとともに減速装置3と同様に電動モータ2とブレーキ装置4との間に配置されている。そのため、電動モータ2とブレーキ装置4とにそれぞれ生じる発熱が相手方に移動することが、より一層抑制される。
また、減速装置ケース70には、電動モータ2と減速装置3との間を遮断する遮断手段としてのシールプレート39が設けられており、減速装置ケース70内のオイル42が電動モータ2に付着することがない。そのため、オイル42に混同されるおそれのある減速装置3のバリや摩耗粉等が電動モータ2に付着することがなく、バリや摩耗粉等により電動モータ2の出力性能が低下することがない。
【符号の説明】
【0046】
1 ホイールモータ
2 電動モータ(アウターロータ型ブラシレスモータ、ブラシレスモータ)
3 減速装置(遊星歯車装置)
4 ブレーキ装置(ドラムブレーキ)
5 エンドブラケット
6 フロントブラケット
6a 取り付け部
21 ステータ
21a ステータコア
21b インシュレータ
21c コイル
21d ステータボルト
22 ロータ
22a ロータ本体
22b バックヨーク
22c 円盤部
22d マグネット
26 モータ軸
31 第1太陽歯車
32 第2太陽歯車
33 遊星歯車
34 出力軸
35 連結部
39 シールプレート(遮蔽手段)
40 オイルシール
41 オイルシール
42 オイル
51 支持ピン
52 ブレーキシュー
53 ブレーキカム
54 ブレーキアーム
55 ブレーキドラム
56 プレート部材
60 車輪
61 ホイール
62 タイヤ
70 減速装置ケース
F 車両フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記ステータに対し回転自在に配置され、モータ軸が設けられているロータとを有する電動モータと、
車両に備わる車輪が連係される出力軸を有し、前記モータ軸の回転を減速するとともに前記出力軸から減速された回転を出力する減速装置と、を備えるホイールモータにおいて、
前記ホイールモータは、前記車輪の回転にブレーキ力を与えるブレーキ装置を備え、
前記減速装置は、前記電動モータと前記ブレーキ装置との間に配置されていることを特徴とするホイールモータ。
【請求項2】
前記ホイールモータは、前記減速装置と前記電動モータとの間を遮蔽する遮蔽手段を有するとともに前記減速装置を気密に内包する減速装置ケースを有し、前記減速装置ケース内にはオイルが適量封入れていることを特徴とする請求項1に記載のホイールモータ。
【請求項3】
前記ブレーキ装置は、前記車輪に備わるホイールが連結されるブレーキドラムと、前記ブレーキドラム内に配置されるブレーキシューとを備えるドラムブレーキであり、前記ドラムブレーキは、前記車輪の内側に配置されることを特徴とする請求項2に記載のホイールモータ。
【請求項4】
前記減速装置は、前記電動モータの前記モータ軸に一体的に取り付けられている太陽歯車と、前記減速装置ケースの内壁に一体的に取り付けられている内歯車と、前記第1太陽歯車および前記内歯車の間に配置され、前記第1太陽歯車および前記内歯車の双方に噛合するとともに前記出力軸が連係されている少なくとも1つ以上の遊星歯車とを備える遊星歯車装置であることを特徴とする請求項3に記載のホイールモータ。
【請求項5】
前記電動モータの前記モータ軸と前記出力軸とは、同軸上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のホイールモータ。
【請求項6】
前記ホイールモータは、前記ドラムブレーキの前記ブレーキドラムが一体的に設けられているとともに前記車輪の前記ホイールが取り付けられるプレート部材を備え、前記出力軸の端部にはテーパ形状の連結部が形成され、前記プレート部材は前記出力軸の連結部にテーパ結合されていることを特徴とする請求項5に記載のホイールモータ。
【請求項7】
前記電動モータは、前記ロータが前記ステータの外側に配置されているアウターロータ型ブラシレスモータであることを特徴とする請求項6に記載のホイールモータ。
【請求項8】
前記ホイールモータは、前記電動モータおよび前記減速装置を内包するフロントブラケットおよびエンドブラケットを備えており、前記エンドブラケットには前記電動モータが取り付けられ、前記フロントブラケットには前記車両に取り付けられる取り付け部が設けられていることを特長とする請求項7に記載のホイールモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−84179(P2011−84179A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238833(P2009−238833)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】