説明

ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物、パターンの製造方法及び電子部品

【課題】感度、解像度、現像時の密着性、及び耐熱性に優れ、良好な形状のパターンが得られるると共に、アルカリ水溶液で現像が可能なポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物、パターンの製造方法及び電子部品を提供する。
【解決手段】ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、(A)分子中に、芳香環に結合しかつ−ORで示される基(但し、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基及びアルキル基からなる群から選択される基を示す。)を有するポリアミドイミドと、(B)放射線照射により酸を発生する化合物と、及び(C)溶剤とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物、パターンの製造方法及び電子部品に関し、特に、アルカリ水溶液で現像が可能で、感度、解像度、現像時の密着性、及び耐熱性に優れ、良好な形状のパターンが得られるポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物、パターンの製造方法及び電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は優れた耐熱性、電気特性、機械特性等を併せ持ち、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜などに用いられている。このポリイミド樹脂膜は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液(いわゆるワニス)を、スピンコートなどで薄膜化して熱的に脱水閉環(いわゆる硬化)して形成する(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
近年、半導体素子の高集積化、大型化が進み、封止樹脂パッケージの薄型化小型化の要求があり、LOC(リード・オン・チップ)や半田リフローによる表面実装などの方式が取られてきており、これまで以上に機械特性、耐熱性等に優れたポリイミド樹脂が必要とされるようになってきた。
【0004】
また、最近、ポリイミド樹脂自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドが用いられてきているが、これを用いるとパターン作成工程が簡略化でき、煩雑な製造工程の短縮が行えるという特徴を有する(例えば、特許文献1〜3参照)。さらに、近年、半導体微細加工用レジストにおいて感度不足を補うため、光照射と熱反応を組み合わせた化学増幅型レジストが提唱されており(非特許文献2)、化学増幅型感光性ポリイミドの検討もなされている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
前述のとおり、ポリイミド樹脂膜は前駆体膜を硬化して形成されるが、硬化時に脱水(イミド化)に起因する体積収縮が起き、膜厚の損失及び寸法精度の低下が起きる。また、最近、低温プロセスが望まれており、低温で脱水閉環ができ、脱水閉環後の膜の物性が高温で脱水閉環したものと遜色ない性能が得られるポリイミドが不可欠となってきた。しかし、ポリイミド前駆体を温度を下げて硬化した場合、イミド化が不完全なため、硬化膜は脆く物性は低下する。
【0006】
前述のポリイミド(前駆体)樹脂に対して、閉環型のポリアミドイミド樹脂は、硬化時の脱水に起因する体積収縮がなく、また、既にイミド化しているため低温プロセスに対応できる可能性をもつ。
ポリアミドイミド樹脂に感光特性を付与した感光性ポリアミドイミド樹脂としては、光重合性不飽和結合を分子内に有する溶剤現像ネガ型が知られている(例えば、特許文献5,6参照)。さらに、オルトナフトキノンジアジドスルホン酸化合物を含有するポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物も知られている(例えば、特許文献7〜9参照)。
【0007】
【非特許文献1】日本ポリイミド研究会編「最新ポリイミド〜基礎と応用〜」(2002年)
【非特許文献2】「最新レジスト材料ハンドブック〜材料特性・設計と制御・トラブル対策〜」(2005年)、株式会社 情報機構 発行
【特許文献1】特開昭49−11541号公報
【特許文献2】特開昭59−108031号公報
【特許文献3】特開昭59−219330号公報
【特許文献4】特開2001−166484号公報
【特許文献5】特開平10−292019号公報
【特許文献6】特開2003−280196号公報
【特許文献7】特許第2524240号明細書
【特許文献8】特許第2524241号明細書
【特許文献9】特許第2902761号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体の高集積化、低コスト化、及び環境負荷の低減から、感光性耐熱樹脂の露光波長は従来のg,h線からさらに短波長側のi線へと移行している。また、従来の溶剤現像から半導体レジスト材料と同様にアルカリ(具体的には水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH))水溶液現像対応のポジ型へ移行しつつある。
【0009】
しかしながら、感度、解像度、現像時の密着性、及び耐熱性に優れ、良好な形状のパターンが得られると共に、アルカリ水溶液で現像が可能な近年の要請に応じたポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物が求められているのが現状であるという問題点があった。
【0010】
本発明は、以上のような従来の課題を解決するためになされたものであって、感光性ポリアミドイミド樹脂に関して、アルカリ(TMAH)水溶液で現像が可能で、高感度なポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、酸存在下で脱離可能な保護基にてアルカリ可溶性基を保護したポリアミドイミドを用いた、前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の使用により、感度、解像度、現像時の密着性、及び耐熱性に優れた、良好な形状のパターンが得られるパターンの製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、良好な形状と特性のパターンを有し、硬化時の体積収縮が少ないため、寸法安定性が高く、さらには低温プロセスで硬化できることにより、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品を歩留まり良く提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、酸存在下で脱離可能な保護基にてアルカリ可溶性基を保護したアルカリ水溶液可溶のポリアミドイミドを含む感光性樹脂組成物は、アルカリ(TMAH)水溶液で現像することができ、感度、解像度、現像時の密着性に優れることを見出した。また、硬化時の膜の収縮が少なく、200℃以下の低温で硬化しても十分な膜特性を示すことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、(A)分子中に、芳香環に結合しかつ−ORで示される基(但し、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基及びアルキル基からなる群から選択される基を示す。)を有するポリアミドイミドと、(B)放射線照射により酸を発生する化合物と、及び(C)溶剤とを含有してなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物にあっては、前記(A)成分が、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミドであることを特徴とする。
【化1】

(式中、mは1以上の正数である。また、式中、Uは(2+m)価の有機基を示し、Vは3価の有機基を示し、Wは活性水素を有さない2価の有機基を示す。また、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基及びアルキル基からなる群から選択される基を示す。)
【0014】
また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物にあっては、前記一般式(I)のUが、一般式(II)で示される有機基であることを特徴とする。
【化2】

(式中、m’は1以上の正数であり、n’は1〜1,000の正数である。また、式中、U’は(2+m)価の有機基を示し、Gは4価の有機基を示す。また、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基及びアルキル基からなる群から選択される基を示す。)
【0015】
また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物にあっては、前記一般式(I)のVが、置換又は無置換の環状構造を有する有機基であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物にあっては、前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物が、前記(A)成分100重量部に対して、前記(B)成分0.01〜50重量部を配合してなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物にあっては、前記(B)成分が、芳香族N−オキシイミドスルホナート、オニウム塩又はオキシムエステルであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物にあっては、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物が、さらに(D)酸触媒作用でカルボン酸又はフェノール性水酸基に変換し得る有機基を有する化合物を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物にあっては、前記(D)成分が、分子中に−COOQで示される基(但し、Qは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価の有機基を示す)を有する化合物であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物にあっては、前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物が、前記(A)成分100重量部に対して、前記(D)成分を1〜100重量部含有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明のパターンの製造方法にあっては、前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を支持基板上に塗布して乾燥する工程と、前記乾燥工程により得られた感光性樹脂膜を露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像する工程と、及び前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程とを含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明のパターンの製造方法にあっては、前記露光工程の後に、さらに加熱工程を含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明のパターンの製造方法にあっては、前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱温度が200℃以下であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の電子部品にあっては、前記パターンの製造方法により得られるパターンの層を、層間絶縁膜層又は表面保護膜層として有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、アルカリ水溶液可溶性基を有するポリアミドイミドを製造する際に二酸化炭素のみが副成し、精製が容易又は不要であるため、低コストである。また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、化学増幅型であるため、得られるパターンは感度に優れる。さらに、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、TMAH水溶液による現像が可能なため、低コストであり、地球環境に与える負荷が低い。
【0026】
また、本発明のパターンの製造方法によれば、前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の使用により、低温硬化プロセスであっても、感度、解像度、接着性に優れると共に、耐熱性をはじめとした物性に優れた良好な形状のパターンが得られる。また、本発明のパターンの製造方法によれば、前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、硬化時の体積収縮が少ないため、寸法安定性に優れたパターンが得られる。
【0027】
また、本発明の電子部品は、良好な形状と接着性、耐熱性に優れたパターンを有し、さらには低温プロセスで硬化できることにより、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品である。また、デバイスへのダメージが少ないことから、高い歩留まりが得られる。さらに、ポジ型感光性樹脂組成物の被膜を硬化した硬化膜のガラス転移温度が高いため、硬化膜を有する電子部品を実装する際に、封止や半田リフローなどの加熱工程に耐えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明にかかるポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物、パターンの製造方法及び電子部品の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0029】
[ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物]
まず、本発明によるポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物について説明する。
本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、(A)分子中に、芳香環に結合しかつ−ORで示される基(但し、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基及びアルキル基からなる群から選択される基を示す。)を有するポリアミドイミドと、(B)放射線照射により酸を発生する化合物と、及び(C)溶剤とを含有してなるポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物である。
以下、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物に含有される各成分について説明する。なお、上記(A)ポリアミドイミド、(B)放射線照射により酸を発生する化合物及び(C)溶剤を、必要に応じてそれぞれ単に(A)成分、(B)成分及び(C)成分と呼ぶ。
【0030】
[(A)ポリアミドイミド]
ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の(A)成分は、ポリアミドイミドであり、分子中に、芳香環に結合しかつ−ORで示される基(但し、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基及びアルキル基等から選択される基を示す)を有することが必要である。上記のRが、酸の作用で分解し、水素原子に変換すると、フェノール性水酸基を発生するため、本発明の組成物に適度なアルカリ可溶性を与えることになる。
【0031】
本発明において、分子中に、芳香環に結合しかつ−ORで示される基は、ポリアミドイミドにおいて主鎖又は側鎖を介して存在していればよく、その数としては、ポリアミドイミドの構造単位当たり1以上であり、1〜5,000が好ましく、1〜1,000であることがより好ましい。
【0032】
本発明において、分子中に、芳香環に結合しかつ−ORで示される基のRは、酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基等で示される基(いわゆる保護基)である。酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基としては、例えば次の一般式(III)に示す構造を有するものが挙げられる。
【化3】

(式中、R'、R’’及びR’’’は各々独立に炭素数5以下のアルキル基であり、Xは炭素数2以上(好ましくは20以下)の2価のアルキレン基(側鎖を有していてもよい)である。)
【0033】
具体的には、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、アルキル置換テトラヒドロピラニル基、アルキル置換テトラヒドロフラニル基、アルコキシ置換テトラヒドロピラニル基、アルコキシ置換テトラヒドロフラニル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t-ブトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、1−エトキシエチル基などが典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。最も好ましい基はテトラヒドロピラニル基、エトキシメチル基、1−エトキシエチル基である。
【0034】
酸の作用で分解し、水素原子に変換しうる一価のアルキルシリル基は、特に制限はないが、好ましい炭素数としては1〜20である。具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基などが典型的な例として示されるが、これらに限定されるものではない。最も好ましい基はトリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基である。
【0035】
酸の作用で分解し、水素原子に変換しうる一価のアルコキシカルボニル基に特に制限はないが、好ましい炭素数としては2〜13である。具体的には、メトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基などであるが、これらに限定されるものではない。最も好ましい基はt−ブトキシカルボニル基である。
【0036】
酸の作用で分解し、水素原子に変換しうる一価のアルキル基に特に制限はないが、好ましい炭素数としては1〜12である。具体的には、t−ブチル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシル基、アリル基、p−メトキシベンジル基などであるが、これらに限定されるものではない。
上記以外の保護基(酸の作用で分解し、水素原子に変換しうる基)として、メチルチオメチル基、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類などを用いることもできる。
【0037】
本発明における(A)成分であるポリアミドイミドは、前述した酸の作用で分解し、水素原子に変換しうる官能基(保護基)でフェノール性水酸基(芳香環に結合しかつ−OHで示される基)を保護したポリアミドイミドであれば特に制限はない。例えば、特許第2524240号、第2524241号、第2902761号や特開2002−88154号公報に記載されているフェノール性水酸基を有するポリアミドイミドのフェノール性水酸基を、前記保護基で保護したものを本発明のポリアミドイミドとして用いることができる。
【0038】
また、本発明における(A)成分であるポリアミドイミドは、合成の容易さから、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミドであることが好ましい。
【化1】

(式中、mは1以上の正数である。また、式中、Uは(2+m)価の有機基を示し、Vは3価の有機基を示し、Wは活性水素を有さない2価の有機基を示す。また、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基等を示す。)
【0039】
ここで、繰り返し単位構造あたりの保護されたフェノール性水酸基(−OR)の数mは1以上の正数であるが、溶解性のバランスを考慮して、1〜5,000が好ましく、1〜1,000がより好ましい。また、上記一般式(I)で示される繰り返し単位の数をn(重合度n)とすると、その数は、特に制限はないが、溶解性や耐熱性などのバランスを考慮して、2〜10,000の正数が好ましく、3〜5,000がより好ましい。
【0040】
また、上記一般式(I)中、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る官能基(保護基)であり、その詳細は前述したものと同一である。
【0041】
また、上記一般式(I)中、Uは(2+m)価の有機基であり、m価がOR基の酸素原子に、2価がイミド基の窒素原子に結合する。このようなUとしては、具体的には以下のフェノール性水酸基を有するジアミン(a1)の残基を挙げることができる。すなわち、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル}フルオレン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス{4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル}アダマンタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス{4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル}アダマンタン、2−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)−2−(3−アミノ−4−ドロキシフェニル)ヘキサフロロプロパン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,6−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3−ヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4−ヒドロキシ−3,3’−ジアミノビフェニル、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン、3−ヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3−ヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3−ヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等であるが、これらに限定されるものではない。これらの構造は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
さらに、溶解性の観点から、Uは下記一般式(II)であることがより好ましい。下記一般式(II)の具体例としては、上記のフェノール性水酸基を有するジアミン(a1)と、テトラカルボン酸二無水物との縮合物(フェノール性水酸基を有するイミド化ジアミンオリゴマー)の残基に相当する構造である。
【0043】
【化2】

(式中、m’は1以上の正数であり、n’は1〜1000の正数である。また、式中、U’は(2+m)価の有機基を示し、Gは4価の有機基を示す。また、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基等を示す。)
【0044】
テトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ジフタル酸スルフィド二無水物、m−ターフェニル−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、スルホニルジフタル酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−テトラカルボキシノルボルナン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシシクロヘキシル)エーテル、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)アダマンタン二無水物、1,3−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}アダマンタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)アダマンタン二無水物、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}アダマンタン二無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
フェノール性水酸基を有するイミド化ジアミンオリゴマーは、上記フェノール性水酸基を有するジアミン(a1)と上記テトラカルボン酸二無水物とを、必要に応じて用いる有機溶媒中(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、トルエン、ベンゼン等)で定法にしたがって合成することができる。イミド化は、例えば、トルエンやキシレンを用いて加熱還流下で行う方法で行い、反応温度は、30〜300℃が好ましく、50〜250℃がより好ましい。また、ピリジン等の塩基触媒存在下で加熱する方法なども用いられ、反応温度は、−20〜200℃が好ましく、0〜150℃がより好ましい。反応時間は概ね10分〜10時間であり、雰囲気は大気、不活性ガス雰囲気いずれを用いてもよく、大気圧以外に加圧又は減圧雰囲気でも行うことができる。ここで、トルエンやキシレンを用いて加熱還流下で行う方法を用いると、フェノール性水酸基を有するイミド化ジアミンオリゴマーを精製することなく、以降の反応に供することができ好ましい。
【0046】
上記フェノール性水酸基を有するイミド化ジアミンオリゴマーを合成する際、上記フェノール性水酸基を有するジアミン(a1)と上記テトラカルボン酸二無水物の配合比は、フェノール性水酸基を有するジアミン1モルに対してテトラカルボン酸二無水物0.01モルから0.99モルが好ましく、0.1モルから0.9モルがより好ましく、0.2モルから0.8モルがさらに好ましい。テトラカルボン酸二無水物が0.01モル未満又は0.99モルを超えると、溶解速度の調整が困難となる。
【0047】
上記一般式(II)おいて、m’は1以上の正数であり、概ね、1〜1,000である。また、n’は1〜1000の正数が好ましい。また、式中、U’は(2+m)価の有機基を示し、一般式(I)におけるUの構造を好適に用いることができる。また、一般式(II)中、Rは一般式(I)の中で説明したものと同一である。また、Gは先に述べたテトラカルボン酸二無水物の残基を好適に挙げることができる。
【0048】
また、上記一般式(I)中、Vは3価の有機基であり、2価がイミド環を形成し、1価がアミド結合を形成する。このようなVとしては、具体的には以下に示すトリカルボン酸一無水物(a2)の残基を好適に挙げることができる。このうち、耐熱性等の観点から芳香族の環状構造がより好ましく、アルカリ水溶液に対する溶解性、i線透明性、耐熱性等の観点から脂肪族の環状構造がさらに好ましい。
【0049】
このようなトリカルボン酸一無水物としては、トリメリト酸無水物(1,2,4−トリカルボキシベンゼン−1,2無水物)、ヘミメリト酸無水物(1,2,3−トリカルボキシベンゼン−1,2無水物)、2,3,5−トリカルボキシナフタレン−2,3−無水物、4−(4−カルボキシフェノキシ)フタル酸無水物、1,2,4−カルボキシシクロヘキサン−1,2無水物、1,2,3−トリカルボキシシクロプロパン−1,2無水物、1,2,3−トリカルボキシシクロブタン−1,2無水物、アコニチン酸無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのトリカルボン酸一無水物のうち、耐熱性等の観点からトリメリト酸無水物、ヘミメリト酸無水物、2,3,5−トリカルボキシナフタレン−2,3−無水物、4−(4−カルボキシフェノキシ)フタル酸無水物、1,2,4−カルボキシシクロヘキサン−1,2無水物、1,2,3−トリカルボキシシクロプロパン−1,2無水物、1,2,3−トリカルボキシシクロブタン−1,2無水物などの環状トリカルボン酸一無水物が好ましい。さらに、アルカリ水溶液に対する溶解性、i線透明性、耐熱性等の観点から1,2,4−カルボキシシクロヘキサン−1,2無水物、1,2,3−トリカルボキシシクロプロパン−1,2無水物、1,2,3−トリカルボキシシクロブタン−1,2無水物などの脂環式トリカルボン酸一無水物が好ましい。
【0050】
また、上記一般式(I)中、Wは活性水素を有さない2価の有機基であり、アミド結合を形成する。このようなWとしては、具体的に、以下に示すジイソシアナート(a3)の残基を好適に挙げることができる。なお、Wに活性水素がある場合、基質のジイソシアナート基が反応するので不都合である。
【0051】
このようなジイソシアナートとしては、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−ジイソシアナトブタン、1,4−フェニレンジイソシアナート、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,8−ジイソシアナトオクタン、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジイソシアナート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、4−クロロ−6−メチル−1,3−フェニレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート(2,4−ジイソシアナトトリレン、2,5−ジイソシアナトトリレン、2,6−ジイソシアナトトリレン、α,4−ジイソシアナトトリレンの単体又は混合物)、trans−1,4−シクロへキシレンジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、4−ブロモ−6−メチル−1,3−フェニレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアナート)、4,4’−メチレンビス(2−クロロフェニルイソシアナート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルフェニルイソシアナート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアナート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
上記一般式(I)で示される(A)ポリアミドイミドに加え、溶解性や諸物性を調整する目的で、以下一般式(IV)に示す繰り返し単位を有するポリアミドイミドも本発明の(A)ポリアミドイミドとして用いることができる。
【0053】
【化4】

(式中、mは1以上の正数であり、l、l’はそれぞれ1〜10000の正数である。また、式中、Uは(2+m)価の有機基を示し、Vは3価の有機基を示し、Wは活性水素を有さない2価の有機基を示し、Yは2価の有機基を示す。また、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基等を示す。)
【0054】
上記一般式(IV)における、m、R、U、V、Wは一般式(I)におけるm、R、U、V、Wと同じであり、Yは後述するフェノール性水酸基を持たないジアミン(a1’)の残基を例示することができる。また、l、l’はそれぞれ1〜10,000の正数であり、本発明において、lとl’の比(モル分率)はlとl’の和を1とした場合、l’が0.4〜0であることが好ましく、0.2〜0であることがより好ましい。
【0055】
フェノール性水酸基を持たないジアミン(a1’)としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物、この他にもシロキサン骨格の入ったジアミンとして、LP−7100、X−22−161AS、X−22−161A、X−22−161B、X−22−161C及びX−22−161E(いずれも信越化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
上記一般式(I)又は(IV)で示される(A)ポリアミドイミドの合成方法について特に制限はなく、既知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、フェノール性水酸基を有するジアミンとトリカルボン酸一無水物を反応させて得られるジイミドジカルボン酸に、ジイソシアナートを反応させて得られるアルカリ水溶液可溶性のポリアミドイミドのフェノール性水酸基に、保護基を導入して得ることができる。あるいは、他の合成法によって調製しても良く、勿論、上述したフェノール性水酸基を有するジアミン(a1)とトリカルボン酸一無水物(a2)を反応させて得られるジイミドジカルボン酸に、ジイソシアナート(a3)を反応させ、さらに、フェノール性水酸基を保護して合成しても良い。
【0057】
上記ジイミドカルボン酸は上記フェノール性水酸基を有するジアミン(a1)と上記トリカルボン酸一無水物(a2)を、必要に応じて用いる有機溶媒中(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、トルエン、ベンゼン等)で定法にしたがって合成することができる。なお、この合成に用いるフェノール性水酸基を有するジアミン(a1)としては、上述したフェノール性水酸基を有するジアミンとテトラカルボン酸二無水物との縮合物や、フェノール性水酸基を有するジアミン(a1)にフェノール性水酸基を持たないジアミン(a1’)をさらに添加するものも含む。
【0058】
イミド化は、例えば、トルエンやキシレンを用いて加熱還流下で行う方法で行い、反応温度は、30〜300℃が好ましく、50〜250℃がより好ましい。また、ピリジン等の塩基触媒存在下で加熱する方法なども用いられ、触媒を用いる場合の反応温度は、−20〜200℃が好ましく、0〜150℃がより好ましい。イミド化の反応時間は概ね10分〜10時間であり、雰囲気は大気、不活性ガス雰囲気いずれを用いてもよく、大気圧以外に加圧又は減圧雰囲気でも行うことができる。ここで、トルエンやキシレンを用いて加熱還流下でイミド化を行うと、フェノール性水酸基を有するジイミドカルボン酸を精製することなく、ジイソシアナート(a3)を反応させることができ好ましい。
【0059】
上記ジイミドカルボン酸を合成する際、上記フェノール性水酸基を有するジアミンと上記トリカルボン酸一無水物の配合比は、フェノール性水酸基を有するジアミン1モルに対してトリカルボン酸一無水物1.6モルから2.4モルが好ましく、1.8モルから2.2モルがより好ましく、1.9モルから2.2モルがさらに好ましい。
【0060】
本発明において、上記ジイミドカルボン酸と上記ジイソシアナート(a3)を、必要に応じて用いる有機溶媒中(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、トルエン、ベンゼン等)で定法にしたがって重合することができる。重合反応は、ジイミドカルボン酸のカルボキシル基がジイソシアナート(a3)のイソシアナート基へ付加し、続いて、生成するカルボキシカルボニルアミノ基の脱炭酸を伴う熱分解により進行し、アミド基を形成するものである。反応温度は、30〜300℃が好ましく、50〜250℃がより好ましい。反応時間は概ね10分〜10時間であり、雰囲気は大気、不活性ガス雰囲気いずれを用いてもよく、大気圧以外に加圧又は減圧雰囲気でも行うことができる。
【0061】
上記重合反応の際、上記ジイミドカルボン酸と上記ジイソシアナート(a3)の配合比は、ジイミドカルボン酸1モルに対してジイソシアナート0.5モルから2.0モルが好ましく、0.6モルから1.8モルがより好ましく、0.7モルから1.6モルがさらに好ましい。
【0062】
重合反応後、生成物はそのまま次の保護化反応に用いてもよく、また、重合体(アルカリ水溶液可溶性ポリアミドイミド)の貧溶媒中に再沈殿させた後に、次の保護化反応に用いることもできる。ここで、上記合成方法(重合反応)は二酸化炭素が副生するのみであり、精製作業が必ずしも必要でないという特徴がある。従って、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を調製する工数を低減でき、製造コストを下げることができる。
【0063】
前記方法にて得られた重合体(アルカリ水溶液可溶性ポリアミドイミド)に保護基を導入するために、この重合体をテトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性有機溶媒中にて、Rを有する水酸基の保護化剤と、必要に応じて反応触媒とを加え保護化反応させて、前記一般式(I)又は(IV)で示される構造単位を有する(A)ポリアミドイミドを得ることができる。
【0064】
本発明において、保護化剤としては、本発明で用いるフェノール性水酸基を有するポリアミドイミド(アルカリ水溶液可溶性ポリアミドイミド)の水酸基に保護基を導入することができる反応剤であれば特に制限はないが、例えばジヒドロピラン、ジヒドロフラン、ビニルエーテル類、アルコキシアルキルハライド、シリルハライド、カーボナート類、クロロギ酸エステル類等を挙げることができる。
【0065】
本発明において、保護化の反応温度は、−100〜300℃が好ましく、−80〜250℃がより好ましい。反応時間は概ね10分〜10時間であり、雰囲気は大気、不活性ガス雰囲気いずれを用いてもよく、大気圧以外に加圧又は減圧雰囲気でも行うことができる。なお、生成物は必要に応じて貧溶媒中に再沈殿させた後、ろ過、乾燥させる工程を経て単離精製する。
【0066】
このようにして得られた、上記一般式(I)又は(IV)で示される(A)ポリアミドイミドの分子量は、脱保護体(すなわち、アルカリ水溶液可溶性ポリアミドイミド)のアルカリ水溶液に対する溶解性、感光特性と硬化膜物性のバランスを考慮して、重量平均分子量で3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。ここで、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0067】
また、上記一般式(I)又は(IV)で示される(A)ポリアミドイミドのRで示される保護基の導入率は、5〜95%とすることが好ましく、10〜90%とすることがより好ましい。これよりも置換率が高い場合には、基材との密着性に低下が見られ、またこれよりも置換率が低い場合には、未露光部の膜減りが大きくなる等、悪影響を与える場合がある。
ここで、本発明における「保護基の導入率」とは、本発明の(A)ポリアミドイミドにおいて、保護基を導入した官能基(OR基)数と保護基が導入されていない官能基(OH基)数の総和に対する保護基を導入した官能基(OR基)数の比を百分率で示したものである。すなわち、保護基の導入率[%]=[OR基モル数/(OR基モル数+OH基モル数)×100]で示される。保護基の導入率は具体的には、NMRスペクトルやIRスペクトルなどの公知の分析手法を用いて算出することができる。
【0068】
[(B)放射線照射により酸を発生する化合物]
本発明に使用する(B)放射線照射により酸を発生する化合物(酸発生剤)は、例えば紫外線などの活性光線の照射によって酸性を呈すると共に、(A)成分であるポリアミドイミドのフェノール性水酸基の保護基Rを脱離させる作用を有する。さらに、本発明において(B)酸発生剤は、必要に応じて添加する(D)酸触媒作用でカルボン酸に変換し得る有機基を有する化合物(具体的には溶解性変換剤)の変換作用も有する。
【0069】
このような(B)成分の化合物としては、オニウム塩、例えばジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩や、芳香族N−オキシイミドスルホナート、又はオキシムエステル、例えばオキシムスルホン酸エステル、オキシムカルボン酸エステル(O−アシルオキシム)などが用いられる。さらに、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族スルファミド、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステルなどを用いることもできる。このような化合物は必要に応じて2種類以上併用したり、他の増感剤と組合せて使用することができる。
【0070】
中でも芳香族N−オキシイミドスルホナート又はオキシムエステルは高感度が、ジアリールヨードニウム塩は、未露光部に適度な溶解阻止効果が期待できるので好ましい。
ここで、前記活性光線としては上述した紫外線のほかに、例えばX線、電子線、可視光線などが使用できる。特に、200nm〜500nmの波長のものが好ましい。また、g線、i線などの単色光を用いることもできる。
【0071】
本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物において、(B)成分の配合量は、感光時の感度、解像度を良好とするために、(A)成分100重量部に対して、0.01〜50重量部とすることが好ましく、0.01〜20重量部とすることがより好ましく、0.5〜15重量部とすることがさらに好ましい。
【0072】
[(C)溶剤]
本発明に使用される(C)成分である溶剤としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
これらの溶剤は単独で又は2種以上併用して用いることができる。また、(C)成分の配合量は特に制限はないが、一般にポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物中溶剤の割合が20〜90重量%となるように調整されることが好ましい。
【0073】
[(D)酸触媒作用でカルボン酸又はフェノール性水酸基に変換し得る有機基を有する化合物]
本発明において、前記(A)〜(C)成分に加え、未露光部における溶解抑止効果と露光部における溶解促進効果によって、コントラストを向上させることを目的として、(D)酸触媒作用でカルボン酸又はフェノール性水酸基に変換し得る有機基を有する化合物(以下、必要に応じて単に(D)成分と呼ぶ)を加えることができる。
【0074】
本発明で使用する(D)成分は、酸触媒作用でカルボン酸又はフェノール性水酸基に変換し得る有機基を有していればその構造としては特に制限はない。
まず、本発明で使用する(D)成分のうち、酸触媒作用でカルボン酸に変換し得る有機基を有する化合物は、分子中に−COOQで示される基(但し、Qは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価の有機基を示す)を有する化合物であることが、変換効率の点で好ましい。
そのような、酸触媒作用でカルボン酸に変換し得る有機基を有する化合物として好ましいものを以下の一般式(V)に示すが、下記のものに限定されるものではない。
【0075】
【化5】

【0076】
ここで、上記一般式(V)中のYは、具体的にはジフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ベンゼン、ナフタレン、ペリレンなどの骨格を有する芳香族炭化水素残基や、ブタン、シクロブタン、シクロヘキサン、アダマンタンなどの骨格を有する脂肪族炭化水素残基、あるいは次の一般式(VI)で示す構造を有するものが挙げられる。なお、ppはポリマーを示す。
【0077】
【化6】

(式中、Z、Z’はアルキル基あるいはアルキル置換又は無置換のヘテロ原子を示す。)
【0078】
また、上記一般式(V)におけるQは、酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価の有機基を示す。
この酸触媒作用で分解し水素原子に変換し得る一価の基Qとしては、前述した基Rで例示した一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基を好ましいものとして挙げることができる。
【0079】
次に、本発明で使用する(D)成分のうち、酸触媒作用でフェノール性水酸基に変換し得る有機基を有する化合物は、分子中に−OQ’で示される基(但し、−OQ’は芳香環に結合しており、Q’は酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価の有機基を示す。)を有する化合物であることが、変換効率の点で好ましい。そのような酸触媒作用でフェノール性水酸基に変換し得る有機基を有する化合物は、フェノール性水酸基(芳香環に結合し、かつ−OHで示される基)を有する化合物のフェノール性水酸基をQ’で保護したものである。
【0080】
酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価の有機基Q’としては、前述した基Rで例示した一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基及びアルキル基を好ましいものとして挙げることができる。
【0081】
上記フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ポリビニルフェノールなどのアルカリ可溶性樹脂、あるいはフェノール類、ビスフェノール類、トリスフェノール類、トリスフェノールアルカン類、三核体のフェノール樹脂、テトラキスフェノール類等が挙げられる。
このような酸触媒作用でフェノール性水酸基に変換し得る有機基を有する化合物としては、特許第3755382号に記載の酸触媒反応によりアルカリ水溶液に対する溶解性が増加する酸分解性基を有する化合物を例示することができる。
【0082】
(C)成分の配合量は、感度と硬化後の膜質の観点から(C)成分がオリゴマーあるいはポリマーの場合に(A)成分100重量部に対して1〜100重量部とすることが好ましく、5〜100重量部とすることがより好ましい。それ以外の場合は(A)成分100重量部に対して1〜50重量部とすることが好ましく、1〜25重量部とすることがより好ましい。
【0083】
本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物において、上記(A)〜(C)及び(D)成分に加えて、(1)架橋剤、(2)溶解促進剤、(3)溶解阻害剤、(4)カップリング剤及び(5)界面活性剤などの成分を配合しても良い。
【0084】
[その他の成分:(1)架橋剤]
本発明において、(1)架橋剤としては、具体的に好ましいものとしてエポキシ基を有する化合物やフェノール性水酸基を有する化合物を用いることができる。このうち、フェノール性水酸基を有する化合物は、配合することによってアルカリ水溶液で現像する際に露光部の溶解速度が増加し感度が上がり、また、パターン形成後の膜の硬化時に、ポリアミドイミドと反応、すなわち橋架けする。これによって、膜の脆さや膜の溶融を防ぐことができるので好ましい。
【0085】
本発明に使用することのできるフェノール性水酸基を有する化合物は、特に制限はないが、分子量が大きくなると露光部の溶解促進効果が小さくなるので、一般に分子量が1,500以下の化合物が好ましい。中でも下記一般式(VII)に挙げられるものが、露光部の溶解促進効果と膜の硬化時の溶融を防止する効果のバランスに優れ特に好ましい。
【0086】
【化7】

(式中、Xはその両側の2つのベンゼン環を繋ぐ単なる結合(即ちXとしては何もなし)又は2価の有機基を示し、R1〜R4は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、α及びβは各々独立に1〜3の整数であり、γ及びδは各々独立に0〜4の整数である。)
【0087】
一般式(VII)において、Xがその両側の2つのベンゼン環を繋ぐ単なる結合(即ちXとしては何もなし)である化合物は、具体的にはビフェノール(ジヒドロキシビフェニル)誘導体である。また、Xで示される2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数が1〜10のアルキレン基、エチリデン基等の炭素数が2〜10のアルキリデン基、フェニレン基等の炭素数が6〜30のアリーレン基、これら炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子で置換した基、スルホン基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合等が挙げられる。
【0088】
本発明に使用される(1)架橋剤として、フェノール性水酸基を有する化合物に類似の化合物を添加することもできる。フェノール性水酸基を有する化合物に類似の化合物は、配合することによってアルカリ水溶液で現像する際に露光部の溶解速度が増加して感度が上がり、また、パターン形成後の膜の硬化時に、膜の溶融を防ぐことができる。さらに、フェノール性水酸基を有する化合物類似の化合物を(1)架橋剤として用いると、感度、解像度、接着性に優れ、耐熱性をはじめとした物性に優れるパターンを得ることができる。そのような化合物として、以下の化学式(VIII)に示す化合物を例示することができる。
【0089】
【化8】

【0090】
本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物において、(1)架橋剤の配合量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅の点から、(A)成分100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、2〜25重量部がより好ましい。
【0091】
[その他の成分:(2)溶解促進剤]
本発明において、溶解促進剤(2)は(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性を向上させる化合物である。そのような化合物としては特に制限はないが、具体的には、カルボキシル基、スルホン酸、スルホンアミド基、フェノール性水酸基を有する化合物である。このうち、前記一般式(VII)に示すフェノール性水酸基を有する化合物は、硬化時の(1)架橋剤としての効果と(2)溶解促進剤としての効果を兼ね備えている点で好ましい。
【0092】
本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物において、溶解促進剤(2)成分の配合量は、アルカリ水溶液に対する溶解速度によって決まるものであるが、概ね(A)成分100重量部に対して0.01〜30重量部である。
なお、前述の通り、例えばフェノール性水酸基を有する化合物の中には、架橋剤(1)としての機能及び溶解促進剤(2)としての機能を併せ持つものがある。そのような(1)成分と(2)成分の機能をあわせ持つ化合物を使用すれば、(1)成分と(2)成分をあえて別々に使用する必要はない。この場合、現像時間、未露光部残膜率の許容幅及び現像時の溶解促進効果の観点から、(1)成分と(2)成分の機能を併せ持つ化合物の配合量は、(A)成分100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、2〜25重量部がより好ましい。
【0093】
[その他の成分:(3)溶解阻害剤]
本発明において、(3)溶解阻害剤は、(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物であり、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物に含有させることができる。具体的には、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨージド等である。これらは、残膜厚や現像時間をコントロールするのに役立つ。上記成分の配合量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(A)成分100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、0.01〜15重量部がより好ましく、0.05〜10重量部がさらに好ましい。
【0094】
[その他の成分:(4)カップリング剤]
本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、硬化膜の基板との接着性を高めるために、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等のカップリング剤を含むことができる。有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルシフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、t−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、t−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、t−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。これらのカップリング剤を用いる場合は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0095】
[その他の成分:(5)界面活性剤]
また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、塗布性、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだり、現像性を向上させるために、適当な界面活性剤あるいはレベリング剤を添加することができる。このような界面活性剤あるいはレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等があり、市販品としては、メガファックスF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社製商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社商品名)、オルガノシロキサンポリマーKP341、KBM303、KBM403、KBM803(信越化学工業株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0096】
[パターンの製造方法]
次に、本発明によるパターンの製造方法について説明する。本発明のパターンの製造方法は、上述したポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を支持基板上に塗布して乾燥する工程と、前記乾燥工程により得られた感光性樹脂膜を露光する工程と、好ましくは前記露光後の感光性樹脂膜を加熱する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像する工程と、及び前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程とを含む。以下、各工程について説明する。
【0097】
(塗布・乾燥(成膜)工程)
まず、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥する工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO2、SiO2等)、窒化ケイ素などの支持基板上に、上述したポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を、スピンナーなどを用いて回転塗布した後、この支持基板をホットプレート、オーブンなどを用いて乾燥する。これにより、支持基板上にポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の被膜すなわち、感光性樹脂膜が形成される。
【0098】
(露光工程)
次に、露光工程では、支持基板上で被膜となった感光性樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線を照射する。なお、本発明に用いるポリアミドイミドのうち、i線に対する透明性が高いポリアミドイミドを用いた感光性ポリアミドイミド樹脂組成物については、i線の照射を好適に用いることができる。
【0099】
(露光後加熱工程)
なお、照射部表層部に発生した酸を底部まで拡散させることを目的として、露光後加熱(PEB)を行ってから、現像工程に進むことが好ましい。露光後加熱の温度は50℃〜150℃、露光後加熱の時間は1分〜10分が好ましい。
【0100】
(現像工程)
現像工程では、活性光線が露光した感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の露光部を、現像液で除去することによりパターンが得られる。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウムなどのアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10重量%とすることが好ましい。さらに、上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で配合することができる。
【0101】
(加熱処理工程)
次いで、加熱処理工程では、現像後得られたパターンを加熱処理することにより、ポリアミドイミドのパターンを形成することができる。加熱処理工程における加熱温度は、250℃以下、望ましくは、200℃以下であり、より望ましくは、140〜200℃の範囲である。
【0102】
また、加熱処理は、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、及びマイクロ波硬化炉等を用いて行なう。また、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方が感光性ポリアミドイミド樹脂組成物膜の酸化を防ぐことができるので望ましい。上記加熱温度範囲は従来の加熱温度よりも低いため、支持基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができる。従って、本発明のパターンの製造方法を用いることによって、デバイスが歩留り良く製造できる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。さらに、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂は、従来の感光性ポリイミド等に見られた加熱処理工程における体積収縮(硬化収縮)が小さいため、寸法精度の低下を防ぐことができる。従って、寸法安定性に優れたパターンが得られる。
【0103】
本発明の加熱処理工程における加熱処理時間は、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物が硬化するまでの時間、例えば、架橋反応などが十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下が好ましい。
【0104】
(マイクロ波硬化)
パターンの製造方法の加熱処理工程における加熱処理としては、通常の窒素置換されたオーブンを用いる以外に、マイクロ波硬化装置や周波数可変マイクロ波硬化装置を用いることもできる。これらを用いることにより、基板やデバイスの温度を例えば200℃以下に保ったままで、感光性ポリアミドイミド樹脂組成物膜のみを効果的に加熱することが可能である。
【0105】
周波数可変マイクロ波硬化装置においては、マイクロ波がその周波数を変化させながらパルス状に照射されるので、定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができる点で好ましい。また、基板として後述する電子部品のように金属配線を含む場合、マイクロ波を周波数を変化させながらパルス状に照射すると、金属からの放電等の発生を防ぐことができ、電子部品を破壊から守ることができる点で好ましい。さらに、周波数可変マイクロ波を用いて加熱すると、オーブンに比べて硬化温度を下げても硬化膜物性が低下しないので好ましい(J.Photopolym.Sci.Technol.,18,327−332(2005)参照)。
【0106】
周波数可変マイクロ波の周波数は0.5〜20GHzの範囲であるが、実用的には1〜10GHzの範囲が好ましく、さらに2〜9GHzの範囲がより好ましい。また、照射するマイクロ波の周波数は連続的に変化させることが望ましいが、実際は周波数を階段状に変化させて照射する。その際、単一周波数のマイクロ波を照射する時間はできるだけ短い方が定在波や金属からの放電等が生じにくく、その時間は1ミリ秒以下が好ましく、100マイクロ秒以下が特に好ましい。
【0107】
照射するマイクロ波の出力は、装置の大きさや被加熱体の量によっても異なるが、概ね10〜2000Wの範囲であり、実用上は100〜1000Wがより好ましく、100〜700Wがさらに好ましく、100〜500Wが最も好ましい。出力が10W以下では被加熱体を短時間で加熱することが難しく、2000W以上では急激な温度上昇が起こりやすいので好ましくない。
【0108】
また、マイクロ波は、パルス状に入/切させて照射することが好ましい。マイクロ波をパルス状に照射することにより、設定した加熱温度を保持することができ、また、硬化膜や基材へのダメージを避けることができる点で好ましい。パルス状のマイクロ波を1回に照射する時間は条件によって異なるが、概ね10秒以下が好ましい。
【0109】
[半導体装置の製造工程]
次に、本発明によるパターンの製造方法の一例として、半導体装置の製造工程を図面に基づいて説明する。図1−1〜図1−5は、多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。これらの図1−1〜図1−5において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。半導体基板1上にスピンコート法等でポリイミド樹脂等の層間絶縁膜4が成膜される(図1−1)。
【0110】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、マスクとして前記層間絶縁膜4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられる(図1−2)。この窓6Aの層間絶縁膜4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが空けられている。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(図1−3)。さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(図1−4)。
【0111】
次に、表面保護膜8を形成する。図1−1〜図1−5の例では、本発明によるポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物をスピンコート法にて層間絶縁膜4及び第2導体層7上に塗布、乾燥する。次に、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、好ましくは露光後の感光性樹脂被膜を加熱し、さらに、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成する。その後、加熱(硬化)して、表面保護膜8としてのポリアミドイミド膜を形成する(図1−5)。このポリアミドイミド膜は、導体層を外部からの応力、α線などから保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
【0112】
なお、3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い、各層を形成することができる。すなわち、層間絶縁膜4を形成する各工程、及び表面保護膜8を形成する各工程を繰り返すことによって、多層のパターンを形成することが可能である。また、上記例において、表面保護膜8だけでなく、層間絶縁膜4も本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
【0113】
[電子部品]
次に、本発明による電子部品について説明する。本発明による電子部品は、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を用いて上記パターンの製造方法によって形成されるパターンを有する。ここで、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等を含む。また、上記パターンは、具体的には、半導体装置の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明による電子部品は、前記組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【0114】
[その他の構造]
また、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、応力緩和性、接着性、化学薬品耐性等にも優れるため、近年開発された各種構造のパッケージにおける各種の構造材としても使用することができる。図2、図3にそのような半導体装置の一例の断面構造を示す。
【0115】
図2は、半導体装置の多層配線構造を示す概略断面図であり、図2において、層間絶縁層11の上にはAl配線層12が形成され、その上部にはさらに絶縁層13(例えばP−SiN層)が形成され、さらに素子の表面保護膜層14が形成されている。Al配線層12のパッド部15からは再配線層16が形成され、この再配線層16は、外部接続端子であるハンダ、金等で形成された導電性ボール17との接続部分であるコア18の上部まで伸びている。さらに、表面保護膜層14の上には、カバーコート層19が形成されている。再配線層16は、バリアメタル20を介して導電性ボール17に接続されているが、この導電性ボール17を保持するために、カラー21が設けられている。このような構造のパッケージを実装する際には、さらに応力を緩和するために、導電性ボール17の周囲にアンダーフィル22を形成することもある。
【0116】
図3は、半導体装置の配線構造を示す概略断面図であり、図3において、シリコンチップ23上にAl配線層(図示しない)及びAl配線層のパッド部15が形成されており、その上部には絶縁層13が形成され、さらに素子の表面保護膜層14が形成されている。パッド部15からは、図2と同様に、再配線層16が形成され、この再配線層16は、導電性ボール17との接続部24の上部まで伸びている。さらに、表面保護膜層14の上には、カバーコート層19が形成されている。再配線層16は、バリアメタル20を介して導電性ボール17に接続されている。
【0117】
これらの図2及び図3において、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、層間絶縁層11や表面保護膜層14ばかりではなく、カバーコート層19、コア18、カラー21、アンダーフィル22等の材料として使用することができる。本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を用いた樹脂硬化体は、Al配線層12や再配線層16などのメタル層や封止剤等との接着性に優れ、応力緩和効果も高いため、この硬化体をカバーコート層19、再配線用コア18、半田等のボール用カラー21、フリップチップ等で用いられるアンダーフィル12などに用いた半導体装置は、極めて信頼性に優れるものとなる。
【0118】
以上のように、本発明によるポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を使用することにより、従来は300℃以上を必要としていた上記の加熱処理工程において、200℃以下の低温加熱を用いた硬化が可能である。また、本発明の感光性ポリアミドイミド樹脂は、従来の感光性ポリイミド等に見られた加熱処理工程における体積収縮(硬化収縮)が小さいため、寸法精度の低下を防ぐことができる。ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の硬化膜は、高いガラス転移温度を有する。従って、耐熱性に優れた表面保護膜となる。この結果、信頼性に優れた半導体装置等の電子部品を歩留まり良く高収率で得ることができる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0120】
(合成例1) ポリアミドイミドの合成
攪拌機、温度計、還流管、及び、ディーンシュターク型水分受器を備えた0.5リットルのフラスコ中に、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン5.49g、及び、トリメリト酸無水物6.05gをN−メチルピロリドン50gに溶解させた。この溶液を80℃に加熱し、30分間反応させた。次に、トルエン30mlを加え、160℃で2時間加熱後、さらに180℃に昇温してトルエンを留去した。反応液を冷却し、さらに、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアナート)3.00gを加え、150℃で2時間反応させた。反応液を冷却し、さらに、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン2.52gと触媒量のp−トルエンスルホン酸を加え、室温で1時間反応させた。反応生成物は1リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で洗浄した後、減圧乾燥してポリアミドイミドを得た(以下、ポリマーA1とする)。ポリマーA1のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は33,000、分散度は1.7であった。また、保護基の導入率は87%であった。
【0121】
(合成例2) ポリアミドイミドの合成
攪拌機、温度計、還流管、及び、ディーンシュターク型水分受器を備えた0.5リットルのフラスコ中に、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン5.49g、及び、1,2,4−トリカルボキシシクロヘキサン−1,2−無水物6.24gをN−メチルピロリドン50gに溶解させた。この溶液を80℃に加熱し、30分間反応させた。次に、トルエン30mlを加え、160℃で4時間加熱後、さらに180℃に昇温してトルエンを留去した。反応液を冷却し、さらに、トリレンジイソシアナート(2,4−ジイソシアナトトリレンと2,6−ジイソシアナトトリレンの混合物)2.87gを加え、150℃で2時間反応させた。反応液を冷却し、さらに、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン2.52gと触媒量のp−トルエンスルホン酸を加え、室温で1時間反応させた。反応生成物を1リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で洗浄した後、減圧乾燥してポリアミドイミドを得た(以下、ポリマーA2とする)。ポリマーA2のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は38,000、分散度は2.2であった。また、保護基の導入率は85%であった。
【0122】
(合成例3) ポリアミドイミドの合成
実施例2と同様に、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン5.49g、1,2,4−トリカルボキシシクロヘキサン−1,2−無水物6.24g、及び、トリレンジイソシアナート2.87gを反応させた後、クロロメチルメチルエーテル2.17gと炭酸カリウムを加え、室温で2時間反応させた。反応生成物は1リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で洗浄した後、減圧乾燥してポリアミドイミドを得た(以下、ポリマーA3とする)。ポリマーA3のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は37,000、分散度は2.5であった。また、保護基の導入率は80%であった。
【0123】
(合成例4) ポリアミドイミドの合成
実施例2と同様に、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン5.49g、1,2,4−トリカルボキシシクロヘキサン−1,2−無水物6.24g、及び、トリレンジイソシアナート2.87gを反応させた後、tert−ブチルジメチルシリルクロリド4.07gとイミダゾールを加え、室温で3時間反応させた。反応生成物は1リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で洗浄した後、減圧乾燥してポリアミドイミドを得た(以下、ポリマーA4とする)。ポリマーA4のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は35,000、分散度は2.1であった。また、保護基の導入率は82%であった。
【0124】
(合成例5) ポリアミドイミドの合成
実施例2と同様に、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン5.49g、1,2,4−トリカルボキシシクロヘキサン−1,2−無水物6.24g、及び、トリレンジイソシアナート2.87gを反応させた後、ジ−tert−ブチルジカーボナート6.54gと触媒量の4−(ジメチルアミノ)ピリジンを加え、室温で3時間反応させた。反応生成物は1リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で洗浄した後、減圧乾燥してポリアミドイミドを得た(以下、ポリマーA5とする)。ポリマーA5のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は35,000、分散度は2.5であった。また、保護基の導入率は90%であった。
【0125】
(合成例6) ポリアミドイミドの合成
攪拌機、温度計、還流管、及び、ディーンシュターク型水分受器を備えた0.5リットルのフラスコ中に、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン10.98g、及び、オキシジフタル酸二無水物4.65gをN−メチルピロリドン50gに溶解させた。この溶液を80℃に加熱し、30分間反応させた。次に、トルエン30mlを加え、160℃で3時間加熱後、さらに180℃に昇温してトルエンを留去した。反応液を冷却し、1,2,4−トリカルボキシシクロヘキサン−1,2−無水物6.24gを加え、溶液を80℃に加熱し、30分間反応させた。次に、トルエン30mlを加え、160℃で4時間加熱後、さらに180℃に昇温してトルエンを留去した。反応液を冷却し、さらに、トリレンジイソシアナート(2,4−ジイソシアナトトリレンと2,6−ジイソシアナトトリレンの混合物)3.13gを加え、150℃で2時間反応した。反応液を冷却し、さらに、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン5.04gと触媒量のp−トルエンスルホン酸を加え、室温で1時間反応させた。反応生成物は1リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で洗浄した後、減圧乾燥してポリアミドイミドを得た(以下、ポリマーA6とする)。ポリマーA6のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は40,000、分散度は2.1であった。また、保護基の導入率は88%であった。
【0126】
(合成例7) ポリアミドイミドの合成
実施例2と同様に、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン10.98g、オキシジフタル酸二無水物4.65g、1,2,4−トリカルボキシシクロヘキサン−1,2−無水物6.24g、トリレンジイソシアナート3.13gを反応させた後、ジ−tert−ブチルジカーボナート13.08gと触媒量の4−(ジメチルアミノ)ピリジンを加え、室温で3時間反応させた。反応生成物は1リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で洗浄した後、減圧乾燥してポリアミドイミドを得た(以下、ポリマーA7とする)。ポリマーA7のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は41,000、分散度は2.5であった。また、保護基の導入率は85%であった。
【0127】
(実施例1〜9) ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の調製と特性評価
配合
合成例1〜7におけるアルカリ水溶液可溶性のポリアミドイミド[(A)成分]100重量部に対し、酸発生剤(B)、及び、溶剤(C)を表1に示した所定量にて配合し、さらに接着助剤として尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液5重量部を配合した。また、必要に応じて、酸触媒作用でカルボン酸に変換し得る有機基を有する化合物(D)及び架橋剤を配合した。この溶液を3μm孔のテフロン(登録商標)フィルタを用いて加圧ろ過して、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の溶液(M1〜M9)を得た。
【0128】
実施例1〜9について、上記(A)〜(C)成分、及び架橋剤は、表1に示すように配合した。すなわち、(A)成分は、上記合成例1〜7で合成したポリマーA1〜A7を使用し、(B)成分は、B1として9,10−ジメトキシ−2−アントラセンスルホン酸ジフェニルヨードニウム塩(DIAS)を使用し、B2として1,8−ナフタルイミジルトリフラートを使用し、B3として2−(4−メトキシフェニル)−2−p−トルエンスルホニルオキシイミノアセトニトリル(みどり化学(株)商品名PAI−101)をそれぞれ使用した。(C)成分は、C1としてγ−ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=90/10(重量比)を使用した。(D)成分は、D1としてトリメリト酸トリス(エトキシメチル)を使用した。架橋剤は本州化学工業(株)製商品名TML−BPAF[(1)−1]を使用した。なお、比較例1の配合は後述する。
【0129】
【表1】

【0130】
感光特性
前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の溶液(M1〜M9)をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚11〜13μmの塗膜を形成した。その後、i線ステッパー(キャノン製FPA−3000iW)を用いて、マスクを介してi線(365nm)での縮小投影露光を行った。樹脂M1の塗膜については、さらに、g線ステッパー(キャノン製FPA−1550MARKII)を用いて、マスクを介してg線
(436nm)で縮小投影露光を行った。露光後の塗膜を120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液にて現像を行い、残膜厚が初期膜厚の70〜90%程度となるように現像を行った。その後、水でリンスしパターン形成に必要な最小露光量と解像度を求めた。結果を表2に記す。
【0131】
【表2】

【0132】
膜物性測定試料のパターニング
さらに、前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の溶液(M1〜M9)をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚約15μmの塗膜を形成した。その後、樹脂M1〜M9の塗膜をプロキシミティ露光機(キャノン製PLA−600FA)を用いて、マスクを介して露光した。露光後の塗膜を120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液にて現像を行い、10mm幅の矩形パターンを得た。その後、前記塗膜を以下の方法で加熱処理(硬化)した。
【0133】
硬化
硬化は以下の方法で行い、膜厚約10μmの硬化膜を得た。
(i)縦型拡散炉(光洋サーモシステム製μ−TF)を用い、窒素中、温度200℃(昇温時間1.5時間)で1時間、塗膜を加熱処理した
(ii)周波数可変型マイクロ波硬化炉(ラムダテクノロジー社製Microcure2100)を用い、マイクロ波出力450W、マイクロ波周波数5.9〜7.0GHz、温度175℃(昇温時間5分間)、2時間加熱処理した。
なお、硬化前後の膜厚の収縮率((1−硬化後の膜厚/硬化前の膜厚)×100[%])を表3に示す。
【0134】
膜物性
上記の方法で硬化した膜厚約10μmの硬化膜をシリコン基板から剥離し、剥離膜のガラス転移温度(Tg)をセイコーインスツルメンツ社製TMA/SS600で測定した。なお、試料の幅は2mm、膜厚は9〜11μmであり、チャック間は10mmとする。また、荷重は10gで、昇温速度は5℃/分である。また、剥離膜の平均破断伸度(EL)を島津製作所製オートグラフAGS−H100Nによって測定した。なお、試料の幅は10mm、膜厚は9〜11μmであり、チャック間は20mmとする。引っ張り速度は5mm/分で、測定温度は室温(20℃〜25℃)程度とする。ここでは、同一条件で得た硬化膜について5本以上の測定値の平均を「平均破断伸度(EL)」とする。硬化条件、Tg、及び、ELを表3に示す。
【0135】
【表3】

【0136】
(比較合成例) ポリアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体の保護体)の合成
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g、N−メチルピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した後、塩化チオニル12.64gを滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン18.30gを添加し、攪拌溶解した後、ピリジン8.53gを添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を得た。
【0137】
次に、得られたポリヒドロキシアミド30gをテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン6.50gと触媒量のp−トルエンスルホン酸を加え、室温で1時間反応させた。反応生成物は1リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で洗浄した後、減圧乾燥してポリアミドを得た(以下、ポリマーαとする)。ポリマーαのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は16,000、分散度は1.6であった。また、保護基の導入率は80%であった。
【0138】
(比較例1)
比較合成例におけるポリアミド[(A)成分]100重量部に対し、酸発生剤(B)として9,10−ジメトキシ−2−アントラセンスルホン酸ジフェニルヨードニウム塩B1、溶剤(C)としてγ−ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(C1)を表1に示すように配合した。さらに接着助剤として尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液5重量部を配合した。この溶液を3μm孔のテフロン(登録商標)フィルタを用いて加圧ろ過して、ポジ型感光性樹脂組成物の溶液(M10)を得た。配合量を表1に併記した。続いて、実施例1〜9と同様に感光特性を調べ、その結果を表2に併記した。さらに、実施例1〜9と同様に硬化膜の物性を測定し、その結果を表3に併記した。
【0139】
[結果の検討]
感光特性を表2にまとめたが、ここから明らかなように、本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物M2〜M9(実施例2〜9)は、i線露光(365nm)において感度及び解像度が高い値であった。一方、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物M1(実施例1)は、i線露光において感度が低いものの、g線露光(436nm)では十分な感度と解像度を示した。
【0140】
本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物の被膜(プリベーク膜)を加熱処理(硬化)したときの膜の収縮率を表3に示した。樹脂組成物M1〜M9(実施例1〜9)いずれも10%程度の低い収縮率を示した。一方、ポリアミドイミドの代わりにポリアミド(ポリベンゾキサゾール前駆体の保護体)を用いたポジ型感光性樹脂組成物M10の被膜(比較例1)では、硬化時に閉環反応に起因する水の脱離が起こるため、収縮率が高く20%以上であった。
【0141】
ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂硬化膜の物性を表3に示した。本発明のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物M1〜M9は200℃で硬化しても220℃程度のTgを示し、ELは10%以上を示した。特に、架橋剤を少量配合した樹脂組成物M9(実施例9)のTgとELは高い値を示した。実施例2では、175℃マイクロ波硬化(硬化条件ii)でも、200℃熱硬化(硬化条件i)により硬化した膜に匹敵する十分なTg及びELを示した。一方、ポリアミド(ポリベンゾキサゾール前駆体の保護体)を用いたポジ型感光性樹脂組成物M10の硬化膜(比較例1)は、200℃の比較的低い硬化温度では脱水閉環反応が十分ではないため、脆く、ELは10%以下となった。さらに、測定中に膜が破断するため、TMAによってTgを測定することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上のように、本発明にかかるポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物、パターンの製造方法及び電子部品は、i線で露光が可能で、アルカリ(TMAH)水溶液で現像が可能である。これによって、ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を用いると、感度、解像度に優れた、良好な形状のパターンが得られる。また、本発明によるポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、200℃以下の硬化においてもその膜物性に優れる。したがって、耐熱性を始めとする物性に優れた良好な形状のパターンが得られる。さらに、プロセスが低温化できることから、デバイスの熱による欠陥を低減でき、信頼性に優れた半導体装置等の電子部品に有用である。一方、本発明によるポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物は、硬化時の体積収縮が少ないため寸法安定性が高く、この点においても信頼性に優れた半導体装置等の電子部品に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1−1】本発明の実施の形態における多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【図1−2】本発明の実施の形態における多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【図1−3】本発明の実施の形態における多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【図1−4】本発明の実施の形態における多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【図1−5】本発明の実施の形態における多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【図2】本発明の他の電子部品の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の他の電子部品の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0144】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜層
5 感光樹脂層
6A、6B、6C、6D 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜層
11 層間絶縁層
12 Al配線層
13 絶縁層
14 表面保護膜層
15 パット部
16 再配線層
17 導電性ボール
18 コア
19 カバーコート層
20 バリアメタル
21 カラー
22 アンダーフィル
23 シリコンチップ
24 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子中に、芳香環に結合しかつ−ORで示される基(但し、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基及びアルキル基からなる群から選択される基を示す。)を有するポリアミドイミドと、(B)放射線照射により酸を発生する化合物と、及び(C)溶剤とを含有してなることを特徴とするポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミドであることを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物。
【化1】

(式中、mは1以上の正数である。また、式中、Uは(2+m)価の有機基を示し、Vは3価の有機基を示し、Wは活性水素を有さない2価の有機基を示す。また、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基及びアルキル基からなる群から選択される基を示す。)
【請求項3】
前記一般式(I)のUが、一般式(II)で示される有機基であることを特徴とする請求項2に記載のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物。
【化2】

(式中、m’は1以上の正数であり、n’は1〜1,000の正数である。また、式中、U’は(2+m)価の有機基を示し、Gは4価の有機基を示す。また、Rは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る、一価のアセタールもしくはケタールを構成する基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アルコキシカルボニル基及びアルキル基からなる群から選択される基を示す。)
【請求項4】
前記一般式(I)のVが、置換又は無置換の環状構造を有する有機基であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物が、前記(A)成分100重量部に対して、前記(B)成分0.01〜50重量部を配合してなることを特徴とする請求項1から請求項4のうち、いずれか1項に記載のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、芳香族N−オキシイミドスルホナート、オニウム塩又はオキシムエステルであることを特徴とする請求項1から請求項5のうち、いずれか1項に記載のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物が、さらに(D)酸触媒作用でカルボン酸又はフェノール性水酸基に変換し得る有機基を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のうち、いずれか1項に記載のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項8】
前記(D)成分が、分子中に−COOQで示される基(但し、Qは酸の作用で分解し水素原子に変換し得る一価の有機基を示す)を有する化合物であることを特徴とする請求項7に記載のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物が、前記(A)成分100重量部に対して、前記(D)成分を1〜100重量部含有することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から請求項9のうち、いずれか1項に記載のポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥する工程と、前記乾燥工程により得られた感光性樹脂膜を露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像する工程と、及び前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程を含むことを特徴とするパターンの製造方法。
【請求項11】
前記露光工程の後に、さらに加熱工程を含むことを特徴とする請求項10に記載のパターンの製造方法。
【請求項12】
前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱温度が200℃以下であることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載のパターンの製造方法。
【請求項13】
請求項10から請求項12のうち、いずれか1項に記載のパターンの製造方法により得られるパターンの層を有してなる電子デバイスを有する電子部品であって、前記電子デバイス中に前記パターンの層を、層間絶縁膜層又は表面保護膜層として有することを特徴とする電子部品。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−272072(P2007−272072A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99714(P2006−99714)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(398008295)日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】