説明

ポジ型感放射線性組成物、硬化膜、硬化膜の形成方法、表示素子、及び硬化膜形成用のポリシロキサン

【課題】ITO膜等の電極との密着性に優れ、耐熱性に優れた表示素子用硬化膜を形成可能なポリシロキサン系ポジ型感放射線性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、[A]メルカプト基を有するポリシロキサン、及び[B]キノンジアジド化合物を含有するポジ型感放射線性組成物であり、さらに、[A]メルカプト基を有するポリシロキサン中のSi原子に対するメルカプト基の含有率が、5モル%を超え60モル%以下であるポジ型感放射線性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子(LCD)や有機EL表示素子等の表示素子の層間絶縁膜、平坦化膜、隔壁材等の硬化膜を形成するための材料として好適なポジ型感放射線性組成物、その組成物から形成された硬化膜、その硬化膜の形成方法、及び硬化膜形成用のポリシロキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
カラーTFT液晶表示素子等は、カラーフィルター基板とTFTアレイ基板を重ね合わせることによって作成される。TFTアレイ基板においては、一般に層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜が設けられている。層間絶縁膜を形成する材料としては、必要とするパターン形状を得るための工程数が少なく、しかも十分な平坦性を有するものが好ましいことから、ポジ型感放射線性組成物が幅広く使用されている。
【0003】
このような、層間絶縁膜形成用の感放射線性組成物の成分としてアクリル系樹脂が主に使用されている(特開2001−354822号公報参照)。これに対し、アクリル系樹脂よりも耐熱性及び透明性に優れたポリシロキサン系材料を、感放射線性組成物の成分として用いる試みがなされている(特開2006−178436号公報、特開2006−276598号公報、特開2006−293337号公報参照)。従来のポリシロキサン系の感放射線性組成物に用いられるポリシロキサンは、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物を加水分解縮合することで得られる。このようなポリシロキサンを含む感放射線性組成物から得られる硬化膜の表面硬度を実用上問題ないレベルに保つためには、ポリシロキサン合成時のフェニルトリメトキシシラン等のフェニル基を有するシラン化合物の使用量の制御が重要である。ポリシロキサン中のフェニル基のSi原子に対する含有率が60モル%を超える場合、硬化膜の表面硬度が低下することが報告されている(例えば、特開2006−178436号公報参照)。
【0004】
しかし、硬化膜の表面硬度向上のみを目的として、ポリシロキサン中のフェニル基のSi原子に対する含有率を5モル%から60モル%以下とした場合、以下に示す問題点がある。例えば、フェニル基の含有率低下により硬化膜の屈折率が低下し、液晶パネルの輝度低下の一因となる。さらに、ポジ型感放射線性組成物の場合、低フェニル基含有率のポリシロキサンは感光剤であるキノンジアジド化合物との相溶性が低いため、硬化膜の白化(ポリシロキサンとキノンジアジド化合物とが相分離することで発生する硬化膜の白濁化)を引き起こす場合がある。
【0005】
ポリシロキサン中のフェニル基のSi原子に対する含有率を5モル%から60モル%以下とした場合、上記の点に加えて、ITOエッチング工程で使用されるレジスト剥離液への硬化膜の耐久性低下が大きな問題となる。TFTアレイ基板作成時に、層間絶縁膜が形成された後、その上にITO(酸化インジウムスズ)膜が基板の全面に形成される。その後、不要部分のITO膜を除去するために、強酸等のエッチング液を用いて、ITO膜のエッチングが行われる。ITO膜のエッチングの際には、必要部分のITO膜がエッチングされないように、ノボラック系ポジレジスト等を用いて、必要部分のITOを保護する。その後、レジスト剥離液によって、ポジレジストを除去する。この時に、低フェニル基含有率のポリシロキサンからなる層間絶縁膜は、レジスト剥離液により、硬化膜の膨潤、侵食が発生し、ITOエッチング工程の前後で膜厚に変化が生じる。硬化膜の膜厚の変化は、液晶表示素子のセルギャップ不良を招き、ひいては液晶表示素子の表示ムラを発生させる。
【0006】
また、例えば特開2003−288991号公報には、特定のシラン化合物と放射線の照射を受けて酸又は塩基を発生する化合物とを含有する有機EL表示素子の絶縁膜を形成するための感放射線性組成物が開示されている。しかし、フェニル基を有するシラン化合物の使用量を制御することにより、層間絶縁膜としての一般的に要求される耐熱性、透明性及び低誘電性等の諸性能の向上に加え、特に、屈折率及びITO膜エッチング工程におけるレジスト剥離液耐性及び耐ドライエッチング性等を向上できることは記載されていない。
【0007】
このような状況下、層間絶縁膜として一般的に要求される高い耐熱性、透明性及び低誘電性を有すると共に、屈折率及びITO膜エッチング工程におけるレジスト剥離液耐性に優れた硬化膜、並びに電圧保持率が高い液晶セルを形成可能であり、かつ、放射線感度及びキノンジアジド化合物との相溶性が高いポリシロキサン系のポジ型感放射線性組成物の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−354822号公報
【特許文献2】特開2006−178436号公報
【特許文献3】特開2006−276598号公報
【特許文献4】特開2006−293337号公報
【特許文献5】特開2003−288991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、耐熱性、透明性及び低誘電性に加えて、ITO電極等に対する優れた密着性、並びに電圧保持率が高い液晶セルを形成可能なポリシロキサン系のポジ型感放射線性組成物、その組成物から形成された硬化膜、並びにその硬化膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]メルカプト基を有するポリシロキサン、及び
[B]キノンジアジド化合物を含有するポジ型感放射線性組成物である。
【0011】
当該ポジ型感放射線性組成物は、[A]ポリシロキサン中のSi原子に対するメルカプト基の含有率が、5モル%を超え60モル%以下であることによって、ITO電極等に対する優れた密着性に優れた表示素子用硬化膜を形成可能である。また、当該ポジ型感放射線性組成物を用いることによって、電圧保持率が高い液晶セルを形成可能である。
【0012】
当該ポジ型感放射線性組成物は、さらに[A]ポリシロキサン中のSi原子に対するアリール基の含有率が、60モル%を超え95モル%以下であることによって、耐熱性、透明性及び低誘電性に優れた表示素子用硬化膜を形成可能である。
【0013】
当該ポジ型感放射線性組成物は、[C]感熱性酸発生剤又は感熱性塩基発生剤の少なくとも一方をさらに含むことが好ましい。このような感熱性の酸又は塩基発生剤を用いることによって、ポジ型感放射線性組成物の現像後の加熱工程における[A]成分(及び任意の[D]熱架橋性化合物)の縮合反応をより促進し、表面硬度及び耐熱性に優れた硬化膜を形成することができる。
【0014】
当該ポジ型感放射線性組成物は、任意成分の熱架橋性化合物をさらに含むことが好ましい。このような熱架橋性化合物を用いることによって、ポジ型感放射線性組成物の現像後の加熱工程における[A]成分の縮合反応(架橋)を一層促進し、表面硬度及び耐熱性がさらに改善された硬化膜を形成することが可能となる。
【0015】
本発明のポジ型感放射線性組成物は硬化膜を形成するために好適に用いられ、表面硬度及び耐熱性を改善した硬化膜を得ることができる。
【0016】
また、本発明の表示素子用硬化膜の形成方法は、
(1)当該ポジ型感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱する工程
を含んでいる。
【0017】
当該方法においては、優れた放射線感度を有する上記ポジ型感放射線性組成物を用い、感放射線性を利用した露光・現像・加熱によってパターンを形成することによって、容易に微細かつ精巧なパターンを有する表示素子用硬化膜を形成することができる。また、こうして形成された硬化膜は、一般的な要求特性、すなわち、耐熱性、透明性及び低誘電性に加えて、ITO電極等に対する優れた密着性、並びに電圧保持率が高い液晶セルを形成可能なポリシロキサン系のポジ型感放射線性組成物、その組成物から形成された硬化膜、並びにその硬化膜の形成方法を提供することができる。
【0018】
ポリシロキサン中のSi原子に対するメルカプト基の含有率が、5モル%を超え60モル%以下であることが好ましく、さらに10モル%を超え40モル%以下であることが特に好ましい。また、さらにSi原子に対する、アリール基の含有率が、60モル%を超え95モル%以下である本発明のポリシロキサンを用いることで、機械的、電気的特性に優れた硬化膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明のポジ型感放射線性組成物は、高い放射線感度を有すると共に、上記[A]及び[B]を含んでいることによって、耐熱性、透明性及び低誘電性という一般的な要求特性をバランス良く満たすと同時に、屈折率及びITO膜エッチング工程におけるレジスト剥離液耐性並びに耐ドライエッチング性に優れた表示素子用層間絶縁膜、さらには高い電圧保持率を有する液晶セルを形成することができる。また、本発明のポジ型感放射線性組成物は、有機EL素子等の平坦化膜、隔壁材等、電子ペーパーなどのフレキシブルディスプレー等の硬化膜を形成するためにも好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のポジ型感放射線性組成物は、[A]メルカプト基を有するポリシロキサン、[B]キノンジアジド化合物及びその他の任意成分を含有する。
【0021】
<[A]成分:メルカプト基を有するポリシロキサン>
本発明の[A]メルカプト基を有するポリシロキサンは、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合することによって得ることができる。メルカプト基を含む加水分解性シラン化合物の使用量を調節することによって、ポリシロキサン中のSi原子に対するメルカプト基の含有率を制御することができる。
【0022】
[A]成分のポリシロキサン中のメルカプト基のSi原子に対する含有率は、5モル%を超え60モル%以下であり、さらに10モル%を超え40モル%以下であることが特に好ましい。当該ポジ型感放射線性組成物において、[A]成分のポリシロキサン中のメルカプト基の含有率をこのような範囲に調整することによって、下地基板や金属配線等への密着性の向上を可能とする。メルカプト基のSi原子に対する含有率が5モル%より小さい場合、密着性向上の効果が十分に発現せず、メルカプト基のSi原子に対する含有率が60モル%を超える場合、電圧保持率や硬化膜の光線透過率が低下する。なお、ポリシロキサン中のメルカプト基のSi原子に対する含有率は、ポリシロキサンの29Si−NMR測定、H−NMR測定、13C−NMR測定等を行い、得られたスペクトルのピーク面積比から求める方法、ならびにイソシアネート化合物を用いる滴定法を用いることができる。
【0023】
[A]成分のポリシロキサンのさらに好ましい形態としては、メルカプト基を含む加水分解性シラン化合物を必須成分とし、その以外の加水分解性シラン化合物を用いて加水分解縮合することにより、メルカプト基を有するポリシロキサンを得ることができる。その以外の加水分解性シラン化合物としては、下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0024】
【化1】

【0025】
上記式(1)の加水分解性シラン化合物において、Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表す。また、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも、水素原子の一部又は全部が置換されていても、置換されていなくてもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−アミノプロピル基、3−イソシアネートプロピル基が挙げられる。アルケニル基の例としては、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基が挙げられる。なお、本明細書において、上記アリール基はアラルキル基を含む概念である。
【0026】
上記式(1)のRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表す。また、これらのアルキル基、アシル基、又はアリール基はいずれも、水素原子の一部又は全部が置換されていても、置換されていなくてもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基が挙げられる。アシル基の例としては、アセチル基が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基が挙げられる。
【0027】
上記式(1)のnは0から3の整数を表す。n=0の場合は4官能性シラン、n=1の場合は3官能性シラン、n=2の場合は2官能性シラン、n=3の場合は1官能性シランである。
【0028】
上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリi−プロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリi−プロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどの3官能性シラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどの2官能性シラン;トリメチルメトキシシラン、トリn−ブチルエトキシシランなどの1官能性シランが挙げられる。
【0029】
さらに、[A]ポリシロキサン中のSi原子に対するアリール基の含有率が、60モル%を超え95モル%以下であることが好ましい。上記式(1)のRが炭素数6〜15のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシランが好ましい。
[A]ポリシロキサン中のSi原子に対するアリール基の含有率が、60モル%を超え95モル%以下の所定範囲とすることによって高い表面硬度、高い透明性が維持された硬化膜を得ることができる。
本願発明における加水分解性シラン化合物の加水分解縮合に用いられる水は、逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水を使用することが好ましい。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。水の使用量は、上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解性基の合計量1モルに対して、好ましくは0.1〜3モル、より好ましくは0.3〜2モル、さらに好ましくは0.5〜1.5モルの量である。このような量の水を用いることによって、加水分解・縮合の反応速度を最適化することができる。
【0030】
本願発明における加水分解性シラン化合物の加水分解縮合に使用することができる溶剤としては、特に限定されるものではないが、通常、後述するポジ型感放射線性組成物の調製に用いられる溶剤と同様のものを使用することができる。このような溶剤の好ましい例としては、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピオン酸エステル類が挙げられる。これらの溶剤の中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又は3−メトキシプロピオン酸メチル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)が、特に好ましい。
【0031】
本願発明における加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合反応は、好ましくは酸触媒(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂、各種ルイス酸)、塩基触媒(例えば、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、ピリジンなどの含窒素化合物;塩基性イオン交換樹脂;水酸化ナトリウムなどの水酸化物;炭酸カリウムなどの炭酸塩;酢酸ナトリウムなどのカルボン酸塩;各種ルイス塩基)、又は、アルコキシド(例えば、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド)等の触媒の存在下で行われる。例えば、アルミニウムアルコキシドとしては、トリ−i−プロポキシアルミニウムを用いることができる。
【0032】
本願発明における加水分解性シラン化合物の加水分解縮合における反応温度及び反応時間は、適宜に設定される。例えば、下記の条件が採用できる。反応温度は、好ましくは40〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1〜12時間である。
【0033】
本願発明における加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物の分子量は、移動相にテトラヒドロフランを使用したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、ポリスチレン換算の数平均分子量として測定することができる。そして、加水分解縮合物の数平均分子量は、通常500〜10000の範囲内の値とするのが好ましく、1000〜5000の範囲内の値とするのがさらに好ましい。加水分解縮合物の数平均分子量の値を500以上とすることによって、ポジ型感放射線性組成物の塗膜の成膜性を改善することができる。一方、加水分解縮合物の数平均分子量の値を10000以下とすることによって、ポジ型感放射線性組成物の感放射線性の低下を防止することができる。
【0034】
<[B]成分:キノンジアジド化合物>
[B]成分は、放射線の照射によりカルボン酸を発生するキノンジアジド化合物である。このようなキノンジアジド化合物を含有するポジ型感放射線性組成物は、放射照射工程における露光部分が現像工程で除去されるポジ型の感放射線特性を有する。なお、本明細書にいう「感放射線性樹脂組成物」の「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を含む概念である。
【0035】
[B]成分のキノンジアジド化合物として、好ましくは、フェノール性水酸基を有する化合物及びナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドをエステル化反応させることによって得られる化合物を用いることができる。フェノール性水酸基を有する化合物の例としては、フェノール性水酸基のオルト位及びパラ位が、それぞれ独立して水素原子若しくは下記式(2)で表される置換基のいずれかである化合物が挙げられる。
【0036】
【化2】

(式中、R、R及びRは、各々独立して炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、フェニル基、置換フェニル基のいずれかを表す。また、R、R、Rのうち2以上が環を形成してもよい。)
【0037】
上記式(2)で表される置換基において、R、R、Rが、炭素数1〜10のアルキル基である場合、当該アルキル基は、水素原子の一部又は全部が置換されていても、置換されていなくてもよい。このようなアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基、2−カルボキシエチル基が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、水酸基が挙げられる。また、R、R、Rによって形成される環状基の例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、フルオレン環が挙げられる。
【0038】
フェノール性水酸基を有する化合物の例としては、下記式(3)及び(4)で表される化合物群が挙げられる。
【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

【0041】
ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、4−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドあるいは5−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドを用いることができる。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドから得られたエステル化合物(キノンジアジド化合物)は、i線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドから得られたエステル化合物(キノンジアジド化合物)は、広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドから得られたエステル化合物、あるいは5−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドから得られたエステル化合物を選択することが好ましい。特に好ましいキノンジアジド化合物の例としては、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物を挙げることができる。
【0042】
キノンジアジド化合物の分子量は、好ましくは300〜1500、さらに好ましくは350〜1200とすることができる。キノンジアジド化合物の分子量を300以上とすることによって、形成される層間絶縁膜の透明性を高く維持することができる。一方、キノンジアジド化合物の分子量を1500以下とすることによって、ポジ型感放射線性組成物のパターン形成能の低下を抑制することができる。
【0043】
これらの[B]成分のキノンジアジド化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。ポジ型感放射線性組成物における[B]成分の使用量は、[A]成分100質量部に対して、好ましくは2〜100質量部であり、より好ましくは3〜50質量部である。[B]成分の使用量を2〜100質量部とすることによって、現像液となるアルカリ水溶液に対する放射線の照射部分と未照射部分との溶解度の差が大きく、パターニング性能が良好となる。
【0044】
<[C]成分:感熱性酸発生剤又は感熱性塩基発生剤>
[C]成分の感熱性酸発生剤又は感熱性塩基発生剤は、加熱によって、[A]成分のポリシロキサン(好ましくは上記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物)を縮合・硬化反応させる際の触媒として作用する酸性活性物質又は塩基性活性物質を放出することができる化合物と定義される。このような[C]成分の化合物を用いることによって、ポジ型感放射線性組成物の現像後の加熱工程における[A]成分の縮合反応が促進され得、表面硬度及び耐熱性に優れた層間絶縁膜を形成することができる。なお、[C]成分の感熱性酸発生剤又は感熱性塩基発生剤としては、ポジ型感放射線性組成物の塗膜形成工程における比較的低温(例えば70〜120℃)のプレベーク時には酸性活性物質又は塩基性活性物質を放出せず、現像後の加熱工程における比較的高温(例えば120〜250℃)のポストベーク時に酸性活性物質又は塩基性活性物質を放出する性質を有するものが好ましい。
【0045】
[C]成分の感熱性酸発生剤には、イオン性化合物及び非イオン性化合物が含まれる。イオン性化合物としては、重金属、ハロゲンイオンを含まないものが好ましい。イオン性の感熱性酸発生剤の例としては、トリフェニルスルホニウム、1−ジメチルチオナフタレン、1−ジメチルチオ−4−ヒドロキシナフタレン、1−ジメチルチオ−4,7−ジヒドロキシナフタレン、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ベンゾイルオキシフェニルメチルスルホニウム等のメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ヘキサフルオロホスホン酸塩などが挙げられる。また、ベンジルスルホニウム塩の市販品の例としては、SI−60、SI−80、SI−100、SI−110、SI−145、SI−150、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−145L、SI−150L、SI−160L、SI−180L(三新化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0046】
非イオン性の感熱性酸発生剤の例としては、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、スルホンベンゾトリアゾール化合物などが挙げられる。
【0047】
ハロゲン含有化合物の例としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物などが挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物の例としては、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどが挙げられる。
【0048】
ジアゾメタン化合物の例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル(ベンゾイル)ジアゾメタンなどが挙げられる。
【0049】
スルホン化合物の例としては、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物、ジアリールジスルホン化合物などが挙げられる。好ましいスルホン化合物の例としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン、4−クロロフェニル−4−メチルフェニルジスルホン化合物などが挙げられる。
【0050】
スルホン酸エステル化合物の例としては、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなどが挙げられる。好ましいスルホン酸エステル化合物の例として、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、2,6−ジニトロベンジルベンゼンスルホネートなどが挙げられる。イミノスルホネートの市販品の例としては、PAI−101(みどり化学(株)製)、PAI−106(みどり化学(株)製)、CGI−1311(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)が挙げられる。
【0051】
カルボン酸エステル化合物の例としては、カルボン酸o−ニトロベンジルエステルが挙げられる。
【0052】
スルホンイミド化合物の例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド(商品名「SI−105」(みどり化学(株)製))、N−(カンファスルホニルオキシ)スクシンイミド(商品名「SI−106」(みどり化学(株)製))、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド(商品名「SI−101」(みどり化学(株)製))、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド(商品名「PI−105」(みどり化学(株)製))、N−(カンファスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(フェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド(商品名「NDI−100」(みどり化学(株)製))、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド(商品名「NDI−101」(みどり化学(株)製))、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド(商品名「NDI−105」(みどり化学(株)製))、N−(ノナフルオロブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド(商品名「NDI−109」(みどり化学(株)製))、N−(カンファスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド(商品名「NDI−106」(みどり化学(株)製))、N−(カンファスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド(商品名「NAI−105」(みどり化学(株)製))、N−(カンファスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド(商品名「NAI−106」(みどり化学(株)製))、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド(商品名「NAI−101」(みどり化学(株)製))、N−(フェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド(商品名「NAI−100」(みどり化学(株)製))、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド(商品名「NAI−109」(みどり化学(株)製))、N−(エチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(プロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド(商品名「NAI−1004」(みどり化学(株)製))、N−(ペンチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ヘキシルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ヘプチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(オクチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ノニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミドなどが挙げられる。
【0053】
感熱性酸発生剤のその他の例としては、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート等のテトラヒドロチオフェニウム塩、ジフェニル(4−(フェニルチオ)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0054】
[C]成分の感熱性塩基発生剤の例としては、コバルトなど遷移金属錯体、オルトニトロベンジルカルバメート類、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルカルバメート類、アシルオキシイミノ類などを挙げることができる。
【0055】
遷移金属錯体の例としては、ブロモペンタアンモニアコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタメチルアミンコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタプロピルアミンコバルト過塩素酸塩、ヘキサアンモニアコバルト過塩素酸塩、ヘキサメチルアミンコバルト過塩素酸塩、ヘキサプロピルアミンコバルト過塩素酸塩などが挙げられる。
【0056】
オルトニトロベンジルカルバメート類の例としては、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]メチルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]プロピルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキシルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]アニリン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペリジン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]フェニレンジアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]トルエンジアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ジアミノジフェニルメタン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペラジン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]メチルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]プロピルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキシルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]アニリン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペリジン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]フェニレンジアミン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]トルエンジアミン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ジアミノジフェニルメタン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペラジンなどが挙げられる。
【0057】
α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルカルバメート類の例としては、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]メチルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]プロピルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキシルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]アニリン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ピペリジン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]フェニレンジアミン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]トルエンジアミン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ジアミノジフェニルメタン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ピペラジンなどが挙げられる。
【0058】
アシルオキシイミノ類の例としては、プロピオニルアセトフェノンオキシム、プロピオニルベンゾフェノンオキシム、プロピオニルアセトンオキシム、ブチリルアセトフェノンオキシム、ブチリルベンゾフェノンオキシム、ブチリルアセトンオキシム、アジポイルアセトフェノンオキシム、アジポイルベンゾフェノンオキシム、アジポイルアセトンオキシム、アクロイルアセトフェノンオキシム、アクロイルベンゾフェノンオキシム、アクロイルアセトンオキシムなどが挙げられる。
【0059】
感熱性塩基発生剤のその他の例としては、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、O−カルバモイルヒドロキシアミドが挙げられる。
【0060】
ここまで挙げた感熱性酸発生剤及び感熱性塩基発生剤の中でも、[A]成分の縮合・硬化反応の触媒作用の観点から、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、ジフェニル(4−(フェニルチオ)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタンが、特に好ましい。
【0061】
[C]成分の感熱性酸発生剤又は感熱性塩基発生剤は、酸あるいは塩基のいずれかが使用され、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。[C]成分を使用する場合の量は、[A]成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜10質量部、更に好ましくは1質量部〜5質量部である。[C]成分の使用量を0.1質量部〜10質量部とすることによって、ポジ型感放射線性組成物の放射線感度を最適化し、透明性を維持しつつ表面硬度が高い層間絶縁膜を形成することができる。
【0062】
<[D]成分:熱架橋性化合物>
[D]成分の熱架橋性化合物は、層間絶縁膜を形成する際の加熱工程(ポストベーク工程)における熱硬化時に[A]成分のポリシロキサン等の架橋成分として作用する。このような[D]成分の化合物を用いることによって、ポジ型感放射線性組成物の現像後の加熱工程における[A]成分の縮合(架橋)をより促進し、表面硬度及び耐熱性が一層優れた層間絶縁膜を形成することができる。
【0063】
熱架橋性化合物は、熱硬化時にポリシロキサン等を架橋する化合物であれば特に限定されないが、2個以上の反応性基、例えばエポキシ基(オキシラニル基、オキセタニル基)、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、メチロール基、アルコキシメチル基、シラノール基を有する化合物を用いることができる。これらの化合物の中でも、下記式(5)で表される基を2個以上有する化合物、下記式(6)で表される化合物、下記式(7)で表される化合物、及びオキセタン基を2個以上有する化合物よりなる群から選択される化合物が好ましく用いられる。なお、下記式(6)で表される化合物は、[A]成分のポリシロキサンを構成する上記式(1)のシラン化合物と共通の構造を有するため、そのようなポリシロキサンとの相溶性が良好であり、高い透明性を有する硬化膜を得ることができる。
【0064】
【化5】

(式中、Rは、各々独立に水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【0065】
【化6】

(式中、Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表す。Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表す。mは0から2の整数を表す。)
【0066】
【化7】

(式中、R、R10及びR11は、それぞれ独立に炭素数が1〜4のアルキル基であり、b、c及びdはそれぞれ独立に1〜6の整数である。)
【0067】
上記式(5)で表される基におけるRのアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基などが挙げられる。
【0068】
上記式(5)で表される基を2個以上有する化合物の例としては、以下のようなメラミン誘導体、尿素誘導体、フェノール性化合物などの式(8)で表される化合物群が挙げられる。
【0069】
【化8】

【0070】
上記式(5)で表される基を2個以上有する化合物は、熱架橋性化合物として硬化膜の表面硬度や耐熱性を向上させるだけではなく、ポジ型感放射線性組成物における[A]成分の溶解度が向上し、結果として放射線感度の向上や現像時のスカム低減をもたらすことができる。これらの化合物の中でも、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(市販品の例としては三和ケミカル(株)製の「ニカラックMX−270」)は、溶解促進の効果が大きく、特に好ましく用いられる。
【0071】
上記式(6)で表される化合物において、Rは、各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表す。これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基などが挙げられる。アルケニル基の例としては、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基などが挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0072】
上記式(6)のRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表す。これらのアルキル基、アシル基、アリール基はいずれも、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。アシル基の例としては、アセチル基などが挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基などが挙げられる。
【0073】
上記式(6)で表される化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリi−プロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリi−プロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0074】
上記式(7)で表される化合物において、R、R10及びR11は、それぞれ独立に炭素数が1〜4のアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。また、式(3)中のb、c及びdは、[A]成分との反応性や相溶性の観点から、1〜3の整数であることが好ましい。
【0075】
上記式(7)で表される化合物の例としては、トリス−(3−トリメトキシシリルメチル)イソシアヌレート、トリス−(3−トリエトキシシリルメチル)イソシアヌレート、トリス−(3−トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス−(3−トリエトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス−(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0076】
オキセタン基を2個以上有する化合物の例としては、市販品としてOXT−121、OXT−221、OXT−191、OX−SQ−H、PNOX−1009、RSOX(東亜合成(株)製)、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP(宇部興産(株)製)が挙げられる。
【0077】
これらの[D]成分の熱架橋性化合物の中でも、形成される層間絶縁膜の表面硬度及び耐熱性を高める観点から、N,N,N,N−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが特に好ましい。
【0078】
[D]成分の熱架橋性化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。[D]成分を使用する場合の量は、[A]成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜20質量部、更に好ましくは1質量部〜10質量部である。[D]成分の使用量を0.1質量部〜20質量部とすることによって、ポジ型感放射線性組成物の放射線感度をさらに高め、透明性の低下を防止しつつ表面硬度が高い層間絶縁膜を形成することができる。
【0079】
<その他の任意成分>
本発明のポジ型感放射線性組成物は、上記の[A]及び[B]成分、並びに好適な任意成分としての[C]及び[D]成分に加え、所期の効果を損なわない範囲で、必要に応じて界面活性剤等の他の任意成分を含有することができる。
【0080】
[E]成分の界面活性剤は、ポジ型感放射線性組成物の塗布性の改善、塗布ムラの低減、放射線照射部の現像性を改良するために添加することができる。好ましい界面活性剤の例としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0081】
ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸系共重合体類などが挙げられる。(メタ)アクリル酸系共重合体類の例としては、市販されている商品名で、ポリフローNo.57、同No.95(共栄社化学(株)製)等を挙げることができる。
【0082】
フッ素系界面活性剤としては、例えば1,1,2,2−テトラフルオロオクチル(1,1,2,2−テトラフルオロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル等のフルオロエーテル類;パーフルオロドデシルスルホン酸ナトリウム;1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフルオロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロデカン等のフルオロアルカン類;フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム類;フルオロアルキルオキシエチレンエーテル類;フルオロアルキルアンモニウムヨージド類;フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル類;パーフルオロアルキルポリオキシエタノール類;パーフルオロアルキルアルコキシレート類;フッ素系アルキルエステル類等を挙げることができる。
【0083】
これらのフッ素系界面活性剤の市販品としては、エフトップEF301、303、352(新秋田化成(株)製)、メガファックF171、172、173(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC−101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、FTX−218((株)ネオス製)等を挙げることができる。
【0084】
シリコーン系界面活性剤の例としては、市販されている商品名で、SH200−100cs、SH28PA、SH30PA、ST89PA、SH190、SH8400FLUID(東レダウコーニングシリコーン(株)製)、オルガノポリシロキサンKP341(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0085】
[E]界面活性剤を使用する場合の量は、[A]成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。[E]界面活性剤の使用量を0.01〜10質量部とすることによって、ポジ型感放射線性組成物の塗布性を最適化することができる。
【0086】
<ポジ型感放射線性組成物>
本発明のポジ型感放射線性組成物は、上記の[A]成分のポリシロキサン及び[B]成分のキノンジアジド化合物、並びに任意成分([C]成分の感熱性酸発生剤又は感熱性塩基発生剤、[D]成分の熱架橋性化合物等)を混合することによって調製される。通常、ポジ型感放射線性組成物は、好ましくは適当な溶剤に溶解又は分散させた状態に調製され、使用される。例えば溶剤中で、[A]及び[B]成分、並びに任意成分を所定の割合で混合することにより、溶液又は分散液状態のポジ型感放射線性組成物を調製することができる。
【0087】
当該ポジ型感放射線性組成物の調製に用いることができる溶剤としては、各成分を均一に溶解又は分散し、各成分と反応しないものが好適に用いられる。このような溶剤としては、例えばエーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等を挙げることができる。
【0088】
これらの溶剤としては、
エーテル類として、例えばテトラヒドロフラン等;
ジエチレングリコールアルキルエーテル類として、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等;
エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類として、例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテル類として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート等;
【0089】
芳香族炭化水素類として、例えばトルエン、キシレン等;
ケトン類として、例えばメチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)等;
エステル類として、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロチル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等をそれぞれ挙げることができる。
【0090】
これらの溶剤の中でも、溶解性あるいは分散性が優れていること、各成分と非反応性であること、及び塗膜形成の容易性の観点から、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ケトン類及びエステル類が好ましく、特に、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチルが好ましい。これらの溶剤は、単独で又は混合して用いることができる。
【0091】
上記した溶剤に加え、さらに必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の高沸点溶剤を併用することもできる。
【0092】
ポジ型感放射線性組成物を溶液又は分散液状態として調製する場合、液中に占める溶剤以外の成分(すなわち[A]及び[B]成分並びに任意成分の合計量)の割合は、使用目的や所望の膜厚等に応じて任意に設定することができるが、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは15〜35質量%である。
【0093】
<硬化膜の形成>
本発明のポジ型感放射線性組成物は硬化膜を形成するために好適に用いられる。上記のポジ型感放射線性組成物を用いて、基板上に層間絶縁膜等の硬化膜を形成する方法について説明する。当該方法は、以下の工程を以下の記載順で含む。
(1)本発明のポジ型感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱する工程。
【0094】
(1)ポジ型感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程
上記(1)の工程において、基板上に本発明のポジ型感放射線性組成物を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより溶剤を除去して、塗膜を形成する。使用できる基板材料の例としては、ガラス、石英、シリコン、樹脂などを挙げることができる。樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの開環重合体及びその水素添加物などを挙げることができる。
【0095】
本発明のポジ型感放射線性組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法などの適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスピンコート法又はスリットダイ塗布法が好ましい。プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは70〜120℃で1〜10分間程度とすることができる。
【0096】
(2)塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程
上記(2)の工程では、形成された塗膜の少なくとも一部に露光する。この場合、塗膜の一部に露光する際には、通常、所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光する。露光に使用される放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
【0097】
当該工程における露光量は、放射線の波長365nmにおける強度を、照度計(OAI model356、OAI Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは100〜10,000J/m、より好ましくは300〜6,000J/mである。
【0098】
(3)現像工程
上記(3)の工程では、露光後の塗膜を現像することにより、不要な部分(放射線の照射部分)を除去して、所定のパターンを形成する。現像工程に使用される現像液としては、アルカリ(塩基性化合物)の水溶液が好ましい。アルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0099】
また、このようなアルカリ水溶液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。アルカリ水溶液におけるアルカリの濃度は、適当な現像性を得る観点から、0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。現像方法としては、例えば液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を利用することができる。現像時間は、ポジ型感放射線性組成物の組成によって異なるが、好ましくは10〜180秒間程度である。このような現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30〜90秒間行った後、例えば圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のパターンを形成することができる。
【0100】
(4)加熱工程
上記(4)の工程では、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用い、パターニングされた薄膜を加熱することによって、上記[A]成分の縮合反応を促進し、硬化物を得ることができる。特に、[C]成分の感熱性酸発生剤又は感熱性塩基発生剤を用いる場合には、加熱工程において酸性活性物質又は塩基性活性物質が発生し、これが触媒となって[A]成分の縮合反応がさらに促進されると考えられる。当該工程における加熱温度は、例えば120〜250℃である。加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えば、ホットプレート上で加熱工程を行う場合には5〜30分間、オーブン中で加熱工程を行う場合には30〜90分間とすることができる。2回以上の加熱工程を行うステップベーク法等を用いることもできる。このようにして、目的とする硬化膜に対応するパターン状薄膜を基板の表面上に形成することができる。
【0101】
<硬化膜>
このように形成された硬化膜の膜厚は、好ましくは0.1〜8μm、より好ましくは0.1〜6μm、さらに好ましくは0.1〜4μmである。
【0102】
本発明のポジ型感放射線性組成物から形成された硬化膜は、下記の実施例からも明らかにされるように、耐熱性、透明性及び低誘電性という一般的な要求特性をバランス良く満たすと共に、屈折率及びITO膜エッチング工程におけるレジスト剥離液耐性並びに耐ドライエッチング性に優れることに加え、電圧保持率が高い液晶パネルを形成することができる。そのため、当該硬化膜は、表示素子用として好適に用いられる。
【0103】
<表示素子>
本発明の表示素子は、当該ポジ型感放射線性組成物から形成される硬化膜を備える。これにより、表示素子として実用面で要求される一般的特性を満足する。当該表示素子は、液晶配向膜が表面に形成された基板が2枚、基板の周辺部に設けられたシール剤を介して液晶配向膜側で対向して配置されており、これら2枚の基板間に液晶が充填されている。
【0104】
<ポリシロキサン>
Si原子に対するメルカプト基の含有率が、5モル%を超え60モル%以下である発明のポリシロキサンを用いて得られる硬化膜は機械的、電気的特性に優れるので、表示素子の層間絶縁膜、平坦化膜、隔壁の形成に好適に用いられる。
【実施例】
【0105】
以下に合成例、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
以下の各合成例から得られた加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、下記の仕様によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
装置:GPC−101(昭和電工(株)製)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803及びGPC−KF−804(昭和電工(株)製)を結合したもの
移動相:テトラヒドロフラン
【0107】
<[A]成分の加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物の合成例>
[合成例1]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、フェニルトリメトキシシラン16質量部、メチルトリメトキシシラン2質量部、
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン35質量部、及びシュウ酸0.7質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が70℃に到達後、イオン交換水を15質量部仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。反応終了後、エバポレーションすることで、イオン交換水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。 以上により、加水分解縮合物(A−1)を得た。加水分解縮合物(A−1)の固形分濃度は39.5質量%であり、得られた加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)は1,700であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。また、加水分解縮合物(A−1)中のアリール基(フェニル基)のSi原子に対する含有率は、29モル%であり、メルカプト基のSi原子に対する含有率は、66モル%であった。
【0108】
[合成例2]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、フェニルトリメトキシシラン17質量部、メチルトリメトキシシラン34質量部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン2質量部、及びシュウ酸0.7質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が70℃に到達後、イオン交換水を15質量部仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。反応終了後、エバポレーションすることで、イオン交換水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−2)を得た。加水分解縮合物(A−2)の固形分濃度は40.5質量%であり、得られた加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)は1,600であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。また、加水分解縮合物(A−2)中のアリール基(フェニル基)のSi原子に対する含有率は、23モル%であり、メルカプト基のSi原子に対する含有率は、3モル%であった。
【0109】
[合成例3]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、フェニルトリメトキシシラン19質量部、メチルトリメトキシシラン7質量部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン27質量部、及びシュウ酸0.7質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が70℃に到達後、イオン交換水を15質量部仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。反応終了後、エバポレーションすることで、イオン交換水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−3)を得た。加水分解縮合物(A−3)の固形分濃度は39.8質量%であり、得られた加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)は1,800であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。また、加水分解縮合物(A−3)中のアリール基(フェニル基)のSi原子に対する含有率は、31モル%であり、メルカプト基のSi原子に対する含有率は、48モル%であった。
【0110】
[合成例4]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、フェニルトリメトキシシラン17質量部、メチルトリメトキシシラン16質量部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン20質量部、及びシュウ酸0.7質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が70℃に到達後、イオン交換水を15質量部仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。反応終了後、エバポレーションすることで、イオン交換水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−4)を得た。加水分解縮合物(A−4)の固形分濃度は40.8質量%であり、得られた加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)は1,400であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。また、加水分解縮合物(A−4)中のアリール基(フェニル基)のSi原子に対する含有率は、26モル%であり、メルカプト基のSi原子に対する含有率は、33モル%であった。
【0111】
[合成例5]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、フェニルトリメトキシシラン34質量部、メチルトリメトキシシラン2質量部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン17質量部、及びシュウ酸0.7質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が70℃に到達後、イオン交換水を15質量部仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。反応終了後、エバポレーションすることで、イオン交換水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−5)を得た。加水分解縮合物(A−5)の固形分濃度は39.8質量%であり、得られた加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)は1,600であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。また、加水分解縮合物(A−5)中のアリール基(フェニル基)のSi原子に対する含有率は、62モル%であり、メルカプト基のSi原子に対する含有率は、32モル%であった。
【0112】
[合成例6]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、フェニルトリメトキシシラン44質量部、メチルトリメトキシシラン2質量部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン7質量部、及びシュウ酸0.7質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が70℃に到達後、イオン交換水を15質量部仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。反応終了後、エバポレーションすることで、イオン交換水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−6)を得た。加水分解縮合物(A−6)の固形分濃度は40.8質量%であり、得られた加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)は1,500であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。また、加水分解縮合物(A−6)中のアリール基(フェニル基)のSi原子に対する含有率は、81モル%であり、メルカプト基のSi原子に対する含有率は、14モル%であった。
【0113】
[比較合成例1]
撹拌機付の容器内に、ジアセトンアルコール25質量部を仕込み、続いて、フェニルトリメトキシシラン20質量部、メチルトリメトキシシラン33質量部、及びシュウ酸0.7質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が70℃に到達後、イオン交換水を15質量部仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。反応終了後、エバポレーションすることで、イオン交換水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(a−1)を得た。加水分解縮合物(a−1)の固形分濃度は40.2質量%であり、得られた加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)は1,500であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。また、加水分解縮合物(a−1)中のアリール基(フェニル基)のSi原子に対する含有率は、27モル%であった。
【0114】
[比較合成例2]
撹拌機付の容器内に、ジアセトンアルコール25質量部を仕込み、続いて、フェニルトリメトキシシラン38質量部、メチルトリメトキシシラン15質量部、及びシュウ酸0.7質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が70℃に到達後、イオン交換水を15質量部仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。反応終了後、エバポレーションすることで、イオン交換水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(a−2)を得た。加水分解縮合物(a−2)の固形分濃度は40.2質量%であり、得られた加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)は1,500であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。また、加水分解縮合物(a−2)中のアリール基(フェニル基)のSi原子に対する含有率は、62モル%であった。
【0115】
<感放射性樹脂組成物の調製>
[実施例1]
合成例1で得られた加水分解縮合物(A−1)を含む溶液(加水分解縮合物(A−1)100質量部(固形分)に相当する量)に、[B]成分として(B−1)4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物20質量部、[E]界面活性剤として(E−1)シリコーン系界面活性剤((株)東レ・ダウコーニング製の「SH 8400 FLUID」)0.1質量部を加え、固形分濃度が25質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、ポジ型感放射線性組成物を調製した。
【0116】
[実施例2〜13 及び比較例1〜2]
各成分の種類及び量を表1に記載の通りとした他は、実施例1と同様にしてポジ型感放射線性組成物を調製した。
【0117】
<物性評価>
上記のように調製したポジ型感放射線性組成物を使用し、以下のように当該組成物、硬化膜及び液晶セルとしての各種の特性を評価した。
【0118】
〔ポジ型感放射線性組成物の放射線感度の評価〕
シリコン基板上に、実施例1〜3及び5〜17並びに比較例1〜8については、スピンナーを用いて各組成物を塗布した後、100℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚4.0μmの塗膜を形成した。実施例4については、スリットダイコーターを用いて組成物を塗布した後、室温で15秒かけて0.5Torrまで減圧し、溶媒を除去した後、100℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚4.0μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に対し、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を用い、3.0μmのライン・アンド・スペース(10対1)のパターンを有するマスクを介して露光時間を変化させて露光を行った後、2.38質量%のTMAH水溶液にて25℃、80秒間、液盛り法で現像した。次いで、超純水で1分間流水洗浄を行い、乾燥させてシリコン基板上にパターンを形成した。このとき、スペース線幅(底部)が0.30μmとなるのに必要な最小露光量を測定した。この最小露光量を放射線感度として表1に示す。最小露光量が600(J/m)以下の時、放射線感度は良好であると言える。
【0119】
〔硬化膜の現像密着性の評価〕
上記「放射線感度の評価」と同様にしてITO電極基板上に塗膜を形成した。その後、5.0、10.0、20.0、40.0μmのライン・アンド・スペース、マスク(1対1)を介して、露光量が800(J/m)で露光した。その後、2.38質量%のTMAH水溶液にて25℃、80秒間、液盛り法で現像しパターンを形成した。その後、得られたパターンを光学電子顕微鏡により観察した。
パターンの剥れは発生している場合、現像時密着性は不良と判断できる。このとき、線幅の小さいパターンにおいてパターン剥れが発生していない場合、現像密着性は良好であると言える。以下に評価判断を示す。結果は表1に記載した。
・5.0、10.0、20.0、40.0μmのライン・アンド・スペースパターンのすべてに剥れがない場合:現像密着性は非常に良好であり、◎と表記した。
・10.0、20.0、40.0μmのライン・アンド・スペースパターンに剥れがない場合:現像密着性良好であり、○と表記した。
・20.0、40.0μmのライン・アンド・スペースパターンに剥れがない場合:現像密着性を△と表記した。
・40.0μmのライン・アンド・スペースパターンのみに剥れがない場合:現像密着性は不良であり、×と表記した。
・すべてのライン・アンド・スペースパターンで剥れが発生した場合:現像密着性は非常に不良であり、××と表記した。
【0120】
〔硬化膜の耐メルトフロー性の屈折率の評価〕
上記「放射線感度の評価」と同様に、スペース線幅(底部)が6.0μmとなるパターンを形成した。得られたパターンに、それぞれキヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を用いて、積算照射量が3,000J/mとなるように露光を行った後、クリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱することによりポストベークを行った。さらに、230℃で10分間加熱して、パターンをメルトフローさせ、SEM(走査型電子顕微鏡)によりパターン底部の寸法を測定した。この時、パターン底部の寸法が6.35μm未満であるとき、耐メルトフロー性が良好であるといえる。一方、パターン底部の寸法が6.35μm以上の場合、耐メルトフロー性は不良であるといえる。このパターン底部の寸法測定結果を、耐メルトフロー性の評価として表1に示す。
【0121】
〔硬化膜の耐熱性の評価〕
上記「放射線感度の評価」で露光しなかった以外は、同様にシリコン基板上に塗膜を形成した。その後、得られた塗膜に、それぞれキヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を用いて、積算照射量が3,000J/mとなるように露光を行った後、クリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱することにより硬化膜を得た。得られた硬化膜の膜厚(T1)を測定した。そして、この硬化膜が形成されたシリコン基板をクリーンオーブン内にて240℃で1時間追加ベークした後、当該硬化膜の膜厚(t2)を測定し、追加ベークによる膜厚変化率{|t2−T1|/T1}×100〔%〕を算出した。結果を表1に示す。この値が3%以下のとき、耐熱性は良好であると言える。
【0122】
〔硬化膜の光線透過率の評価〕
上記「放射線感度の評価」と同様に、ガラス基板上に塗膜を形成した。得られた塗膜に、それぞれキヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を用いて、積算照射量が3,000J/mとなるように露光を行った後、クリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱することにより硬化膜を得た。この硬化膜を有するガラス基板の光線透過率を、分光光度計「150−20型ダブルビーム」((株)日立製作所製)を用いて400〜800nmの範囲の波長で測定した。そのときの最低光線透過率の値を表1に示す。最低光線透過率が95%以上の時、光線透過率は良好であると言える。
【0123】
〔硬化膜の比誘電率の評価〕
研磨したSUS304製基板上に、実施例1〜3及び5〜17並びに比較例1〜8については、スピンナーを用いて各組成物を塗布した後、100℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚3.0μmの塗膜を形成した。実施例4については、スリットダイコーターを用いて組成物を塗布した後、室温で15秒かけて0.5Torrまで減圧し、溶媒を除去した後、100℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚3.0μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に対し、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を用い、積算照射量が3,000J/mとなるように露光を行った後、クリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱することにより、基板上に硬化膜を形成した。この硬化膜上に、蒸着法によりPt/Pd電極パターンを形成し、比誘電率測定用サンプルを作成した。得られたサンプルにつき、横河・ヒューレットパッカード(株)製HP16451B電極及びHP4284AプレシジョンLCRメーターを用い、CV法により、周波数10kHzの周波数における比誘電率を測定した。結果を表1に示す。なお、比誘電率の評価においては、形成する膜のパターニングは不要のため、現像工程を省略し、塗膜形成工程、放射線照射工程及び加熱工程のみ行い評価に供した。
【0124】
〔液晶セルの電圧保持率の評価〕
表面にナトリウムイオンの溶出を防止するSiO膜が形成され、さらにITO(インジウム−酸化錫合金)電極を所定形状に蒸着したソーダガラス基板上に、スピンナーを用いて表1に記載の各組成物を塗布し、100℃のホットプレート上で2分間プレベークを行って、膜厚2.0μmの塗膜を形成した。2.38質量%のTMAH水溶液にて、25℃、80秒間、ディップ法による現像を行った。次いで、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介さずに、塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を3,000J/mの積算照射量で露光した。さらに220℃で1時間ポストベークを行い、硬化膜を形成した。次いで、この硬化膜を有する基板上に5.5μm径のビーズスペーサーを散布後、これと表面にITO電極を所定形状に蒸着しただけのソーダガラス基板とを対向させた状態で、液晶注入口を残して4辺を0.8mmのガラスビーズを混合したシール剤を用いて貼り合わせ、メルク社製の液晶MLC6608(商品名)を注入した後に液晶注入口を封止することにより、液晶セルを作製した。
【0125】
この液晶セルを60℃の恒温層に入れて、(株)東陽テクニカ製の液晶電圧保持率測定システムVHR−1A型(商品名)により、印加電圧を5.5Vの方形波とし、測定周波数を60Hzとして液晶セルの電圧保持率を測定した。結果を表1に示す。なお、ここで電圧保持率とは、下記式で求められる値である。液晶セルの電圧保持率の値が低いほど、液晶パネル形成時に「焼き付き」と呼ばれる不具合を起こす可能性が高くなる。一方、電圧保持率の値が高くなるほど、「焼き付き」発生の可能性が低くなり、液晶パネルの信頼性が高くなると言える。 電圧保持率の目安として、90%以上の場合、焼き付き」発生の可能性が低くなり、液晶パネルの信頼性が高くなると言える。
電圧保持率(%)=(基準時から16.7ミリ秒後の液晶セル電位差)/(0ミリ秒〔基準時〕で印加した電圧)×100
【0126】
なお、表1において、[B]キノンジアジド化合物、[C]感熱性酸発生剤又は感熱性塩基発生剤、[D]熱架橋性化合物、[E]界面活性剤の略称は、それぞれ以下のものを表す。
【0127】
B−1:4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物
B−2:1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物
C−1:1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウム トリフルオロメタンスルホナート
C−2:ジフェニル(4−(フェニルチオ)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート
C−3:ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン
C−4:2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート
D−1:N,N,N,N−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリル(三和ケミカル(株)製の「ニカラックMX−270」)
D−2:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
D−3:トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業(株)製の「X−12−965」)
E−1:シリコーン系界面活性剤((株)東レ・ダウコーニング製の「SH 8400 FLUID」)
【0128】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のポジ型感放射線性組成物は、上述のように、高い耐熱性、透明性及び低誘電性を有すると同時に、ITO電極に対する優れた密着性に優れた硬化膜、並びに高い電圧保持率を有する液晶セルを形成することができる。従って、当該ポジ型感放射線性組成物は、表示素子用の層間絶縁膜、平坦化膜、隔壁を形成するために好適に用いられる。また、この組成物は、有機EL素子、電子ペーパーなどのフレキシブルディスプレー等の硬化膜を形成するためにも好ましく用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]メルカプト基を有するポリシロキサン、及び
[B]キノンジアジド化合物を含有するポジ型感放射線性組成物。
【請求項2】
[A]ポリシロキサン中のSi原子に対するメルカプト基の含有率が、5モル%を超え60モル%以下である請求項1記載のポジ型感放射線性組成物。
【請求項3】
さらに、[A]ポリシロキサン中のSi原子に対するアリール基の含有率が、60モル%を超え95モル%以下である請求項1又は請求項2記載のポジ型感放射線性組成物。
【請求項4】
[C]感熱性酸発生剤又は感熱性塩基発生剤の少なくとも一方を、さらに含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポジ型感放射線性組成物。
【請求項5】
硬化膜を形成するために用いられる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポジ型感放射線性組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のポジ型感放射線性組成物から形成された硬化膜。
【請求項7】
(1)請求項5に記載のポジ型感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱する工程
を含む表示素子用硬化膜の形成方法。
【請求項8】
請求項6に記載の硬化膜を具備した表示素子。
【請求項9】
Si原子に対するメルカプト基の含有率が、5モル%を超え60モル%以下である硬化膜形成用のポリシロキサン。

【公開番号】特開2012−155226(P2012−155226A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15780(P2011−15780)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】