ポリマーデバイスの製造
(i)ポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を基板上に成膜して層を形成する工程、および(ii)不溶性架橋化ポリマーを形成する条件下で工程(i)で形成された層を硬化する工程を備え、架橋部分が溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の範囲の量で工程(i)に存在することを特徴とする、ポリマーデバイスを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーデバイスの製造方法に関する。より詳細には、本発明はポリマーデバイスを製造する方法においてポリマー層を成膜する方法に関する。本発明はまた、本発明によって製造され得る電子デバイスおよび光電子デバイスのようなデバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーデバイスにはポリマー発光ダイオード(LED)、光検出器、光起電力素子(PV)、および電界効果トランジスタ(FET)がある。かかるデバイスは典型的には電極間に配置される1つ以上の半導体ポリマー層を備えている。半導体ポリマーは主鎖または側鎖における部分的または実質的なπ共役を特徴とする。
【0003】
半導体ポリマーは現在多数の光学デバイスに頻繁に使用されており、WO90/13148号に開示されているようなポリマー性発光ダイオード(PLED)、電界効果トランジスタ(FET)、WO96/16449号に開示されているような光起電力デバイス、および米国特許第5523555号に開示されているような光検出器などがあげられる。
【0004】
典型的なPLEDは基板を備え、基板上にはアノード、カソード、およびアノードとカソードの間に配置され少なくとも1つのポリマー性エレクトロルミネッセント材料からなる有機エレクトロルミネッセント層が支持されている。用いると、アノードを通してデバイスに正孔が注入され、カソードを通して電子がデバイスに注入される。正孔および電子は有機エレクトロルミネッセント層で結合して励起子を形成し、これが照射崩壊を起こして発光する。他の層がPLEDに存在してもよい。例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDT/PSS)のような有機正孔注入材料をアノードと有機エレクトロルミネッセント層との間に設けて、アノードから有機エレクトロルミネッセント層への正孔の注入を助けるようにしてもよい。
【0005】
トランジスタ、具体的には電界効果トランジスタ(FET)は三端子デバイスであり、ソース端子、ドレイン端子、およびゲート端子を備えている。半導体層(チャネル)はソース端子とドレイン端子とをつなぎ、それ自身はゲート誘電体と呼ばれる絶縁層によってゲート端子から隔てられている。ポリマートランジスタでは、半導体層は半導体ポリマー、典型的にはπ−共役有機ポリマーから作られる。この層はデバイス中で前駆体ルートによりまたは直接に溶液処理によって成膜される。
【0006】
ソース端子およびドレイン端子間に電圧が印加される。電界効果トランジスタではさらにゲート端子に対して電圧が印加される。この電圧が電界を形成しこれがゲート誘電体のすぐ下に存在する半導体層に電荷キャリアを蓄積または空乏させる。そして今度はこれがソース端子からドレイン端子への電流の流れを制御して所定のソース−ドレイン電圧となる。
【0007】
フォトトランジスタの場合、適切な波長の光がチャネルに当てられる。光子は正孔−電子対を生み出すことができこれが分裂してソースおよびドレイン間の電流の流れに寄与し、その結果ソース−ドレインの導電性を変調させる。
【0008】
WO96/16499号に記載されているように、典型的な光起電力デバイスは、第1および第2の主表面を有する光応答領域および光応答領域の第1および第2主表面のそれぞれに設けられた第1および第2の電極を備える。光応答領域は第1の半導体ポリマーを備えており、これは第1の半導体ポリマーから相分離されている第2の半導体ポリマーと必要に応じてブレンドされている。短絡した状態では、光応答領域内に内部電界が存在している。内部電界の向きは、電子が最も低い作業機能の端子、一般にはアルミニウム、マグネシウムまたはカルシウム電極に向かって移動し集められると同時に、正孔はインジウム酸化スズ電極のようなより高い作業機能を持つ電極に向かって移動するようになっている。このようにして、光電流が検出され、これを使って例えば太陽電池のように電力を提供でき、または画像センサ用の画像のような光パターンの一部を検出できるようになる。
【0009】
米国特許第5,523,555号に記載されているように、典型的な光検出デバイスは、異なる作業機能を持つ第1および第2の電極層の間に光応答層が配置されている。光応答層は半導体ポリマーまたはポリマーのブレンドからなる。光応答層は複数あってもよい。バイアス回路系が接続されていて第1および第2の電極層の間にバイアス電圧を印加するようになっている。検知回路系が接続されていて、ポリマー層に対して照射を行った結果ポリマー層を通って第1および第2の電極層の間に流れる光電流を検出しつつ、バイアス電圧が印加される。バイアス電圧は電極間の距離に対して選択される。
【0010】
半導体ポリマーは広範囲の光物理的特性(π−π*バンドギャップおよびフォトルミネッセント収率など)、光学特性(屈折率およびその分散など)、電子特性(正孔−電子移動エネルギーレベル、および正孔−電子易動度など)、および加工特性(溶媒可溶性、相転移温度、結晶性および相転移温度など)を示すことができる。これらの特性の大半はポリマーの化学構造によって制御される。この点について、これらの特性の大半はポリマーの主鎖単位および側鎖を適切に選択することによってある範囲内で制御できる。
【0011】
上述のポリマーデバイスにおける単一のポリマーまたは複数のポリマーは、デバイス製造中の基板への成膜を容易にするため、一般的な有機溶媒に可溶であることが好ましい。この可溶性の主な利点の1つは、ポリマー層を溶液加工、例えばスピンキャスティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ディップコーティングなどによって製造できる点である。このようなポリマーの例は、例えば、Adv. Mater. 2000 12(23) 1737-1750に開示されており、可溶性基を持つフルオレン、インデノフルオレン、フェニレン、アリーレンビニレン、チオフェン、アゾール、キノキサリン、ベンゾチアジアゾール、オキサジアゾール、チオフェン、およびアリールアミンのような芳香族または複素環式芳香族単位から形成されている少なくとも部分的に共役している主鎖を持つポリマー、およびポリ(ビニルカルバゾール)のような非共役主鎖を持つポリマーが挙げられている。ポリフルオレンのようなポリアリーレンは良好な膜形成特性を持っており、得られるポリマーの位置規則性を高度に制御できるスズキまたはヤマモト式重合法によって簡単に作ることができる。
【0012】
あるデバイスでは、単一の基板表面上に異なるポリマーの多重層すなわち積層を成形することが望ましい。例えば、これは別々の機能、例えば電子または正孔電荷移動、ルミネッセンス制御、光子封鎖、励起子封鎖、光誘導電荷生成、および電荷阻害または貯蔵を最適化する場合が該当するであろう。
【0013】
この点について、かかるポリマーの多重層を製造して電気的および光学的特性を例えばポリマー積層物全体にわたって制御できると便利であろう。これはデバイス性能を最適にするのに有用である。最適なデバイス性能は、例えば電子および正孔移動レベルオフセット、屈折率の不一致、およびインターフェース全体にわたるエネルギーギャップ不一致を注意深く設計することによって達成できる。かかる複合構造は例えば1つのキャリアの注入を容易にし、同時に反対のキャリアの抽出を阻害および/または励起子の消光インターフェースへの拡散を防止する。これにより、かかる複合構造は有用なキャリアおよび光子封鎖効果を提供することができる。
【0014】
デバイス構造に保護層を提供するために多重層を製造できることもまた有用である。この点に関して、1つの例をとると、PEDT/PSSはPLEDのエレクトロルミネッセント層に対して悪影響を及ぼすと考えられている。理論に束縛されることを望むわけではないが、これはPEDT:PSS層とエレクトロルミネッセント層(すなわち、正孔および電子が結合して励起子を形成している層)との間の電気化学反応によるものと考えられる。これによりルミネッセンスが消光し、必要とされる駆動電圧が累進的に増大すると考えられる。従って、PEDT:PSSとエレクトロルミネッセント層との間に保護層を提供することが望ましい。
【0015】
しかしながら、ポリマー積層の作成は一般的にはささいなことではない。特に、最初に成形または成膜された層が後続の層に使われる溶媒に対して可溶性を持つと問題となり得る。これは後続のポリマー層の溶液中での成膜が前の層を溶解しその統一性を破壊する可能性があるためである。
【0016】
この問題点を克服するための1つの選択肢は前駆体ポリマーシステムを使って作業することである。PPV(ポリフェニレンビニレン)およびPTV(ポリチエニレンビニレン)の前駆体システムはこの分野では公知である。
【0017】
半導体ポリマーの層は、可溶性ポリマー前駆体を成膜し、その後化学的に不溶性のエレクトロルミネッセント形態に変換することによって形成できる。例えば、WO94/03030号は、不溶性のエレクトロルミネッセントポリ(フェニレンビニレン)を可溶性の前駆体から形成し、そしてこの不溶性層の上にさらに別の層を溶液から成膜する方法を開示している。
【0018】
しかしながら、ポリマーデバイス中のポリマーを、不溶性前駆体ポリマーから形成され得るこのような種類のポリマーに限定することは明らかに望ましくない。さらに、前駆体ポリマーに必要な化学変換プロセスは過酷な処理条件、および最終デバイス内の前の層の性能を害する可能性のある反応性副産物をともなう。
【0019】
この問題点を克服するためのさらに別の選択肢は、溶解性挙動が大きく異なるポリマーを使うことである。例えば、水またはアセテート溶媒に可溶のポリマーとともに炭化水素溶媒に可溶のポリマーを使うと限られた2層または3層の積層物が作成できる。この点に関する重要な例としては、芳香族炭化水素溶媒に可溶でない最初に形成された導電性PEDT:PSS膜の上に芳香族炭化水素溶媒から共役ポリマーを成膜することが挙げられる。再び、このやり方は多層積層物に使えるポリマーの種類を厳格に限定する。なぜなら、ほとんどの共役ポリマー系は同じ一連の芳香族炭化水素溶媒(キシレンおよび他の置換ベンゼンなど)およびゆるやかな極性の炭化水素溶媒(テトラヒドロフランおよびハロゲン化溶媒など)に溶解する特徴があるからである。
【0020】
積層で使用できるポリマーが限られていることにより、デバイス構造の多くの概念を試験または実施することができないことがわかるであろう。かかる状況下では、デバイス構造体のさらなる開発が著しく妨げられる。
【0021】
WO96/20253号は、概して架橋結合を含むポリマーを加工し得るルミネッセント膜形成溶媒を記載している。薄膜は一般的な溶媒への溶解に耐えるためこれによりさらなる層を成膜でき、これによりデバイス製造が容易になると記載されている。ポリマー主鎖に結合するアジド基を使うことが熱による架橋の一例として挙げられている。7頁に示されている一般式では、ポリチオフェンコポリマーは5モル%から66モル%の範囲のレベルの架橋部分を持つ繰返し単位を含んでいる。
【0022】
米国特許第6107452号は多層デバイスの形成方法を開示しており、末端ビニル基を備えるフルオレンを含むオリゴマーを溶液から成膜し、架橋化して不溶性ポリマーを形成し、その上にさらに別の層を成膜している。ビニル単位は少なくとも25%を上回るモル比で存在しなければならない。このことは米国特許第6107452号で、架橋結合を生成するメカニズムによって決定されている。
【0023】
同様に、KimらによるSynthetic Metals 122 (2001), 363-368は、トリアリールアミン基およびエチニル基を備えたポリマーを開示し、ポリマーは成膜後架橋される。この文献はポリマーの繰返し単位の一部として100モル%存在しているエチニル基を開示している。
【0024】
ポリマー積層物の形成に使う以外に、成膜後にポリマーを不溶性とすることでネガ型リソグラフィーも可能となる。標準的なネガ型フォトレジストリソグラフィーによると、架橋系の臨界負荷を含むポリマー膜、しばしばポリスチレンまたはポリ(メチルメタクリレート)のポリマー膜が基板上に成形される。選択された領域がマスクパターンを通じて露光される。露光された領域は架橋反応を介して不溶性となる。露光されなかった領域は可溶性のまま残り、続いて現像溶媒系で洗浄することによって除去され、これによりマスクのネガ画像がフォトレジスト膜に転写される。
【0025】
この点に関して、赤色、緑色、青色のエレクトロルミネッセント材料をパターン化することによってフルカラーのディスプレイを形成することが望ましい。基板上に形成された個々のFETまたは光検出器素子をパターン化し分離することもまた望ましい。公知の方法としては、例えば欧州特許第0880303号に開示されているようにインクジェット印刷によって、またはシャドウマスクを介して蒸発可能な材料を蒸発させることによって、溶液加工可能な材料、特にポリマーをパターン化成膜する方法が挙げられる。
【0026】
1つの方法としてはポリマーの側鎖に重合可能な部分を組み込み、照射感知開始剤を介して重合(架橋)反応を開始することである。この方法の一例はNature 421, 829-833, 2003に記載されており、適切な照射露光による成膜後、光酸発生剤によって架橋されるオキセタン側鎖基を有する赤色、緑色、および青色のエレクトロルミネッセントポリマーの層を成膜することによってフルカラーディスプレイを形成する方法を開示している。モノマーを含むオキセタンは例示されているポリマーに25モル%のレベルで組み込まれる。それぞれの層の選択された領域だけをマスクを介して紫外線照射に露光し選択された領域を架橋させる。露光されなかった領域のポリマーは可溶性のまま残り、洗浄除去してパターン化層を残すことができる。しかしながら、開示されているように、この方法では電子および正孔易動度が低いポリマーしか得られない。さらにオキセタンは保存中微量の酸触媒の存在下で自己重合しやすい。
【0027】
別のやりかたとしては、ポリマー−溶媒配合物に低分子量の照射感知架橋剤を用いることが挙げられる。
【0028】
この点に関して、ビスアリールアジドを使用することがT Iwayanagi, T Kohashi, S Nonogaki, T Matsusawa, K Douta, H. Yanazawa, IEEE Transactions on Electronic Devices ED25 (1981) PP 1306に開示されている。この文献は、リソグラフィー用ネガ型深UVレジストとして、芳香族アジド化合物およびフェノール樹脂からなる感光組成物を開示している。アジド化合物は5〜30重量%の範囲でフェノール樹脂と混合される。
【0029】
さらに、S. X. Cai, D. J. Glenn, M. Kanskar, M. N. Wybourne & J. F. W. Keanaの「Development of highly efficient deep-uv and electorn beam mediated cross-linkers: synthesis and photolysis of bis(perfluorophenyl) azides」Chemistry of Material, 6 (1994) pp. 1822-1829には、ネガ型レジスト配合物のために複数のビス(パーフルオロフェニレンアジド)を使うことが開示されている。この開示では、ビス(パーフルオロフェニレンアジド)が従来のリソグラフィーポリマーであるポリ(スチレン)とブレンドされる。この文献はポリマーデバイスは開示していない。
【0030】
従って、架橋剤を使用することはネガ型レジスト電子ビームおよび光リソグラフィーの分野では公知であるが、ネガ型リソグラフィーレジスト(NLR)配合物の要件および半導体ポリマー(SP)用の架橋可能な配合物の要件はさまざまに異なっている。
【0031】
(1)NLR配合物は典型的には非吸収ポリマーマトリックスと、所望の照射に感光する架橋剤システムとを備えている。ポリマーマトリックスは目的とする照射波長を実質的に透過させるため、それ自身は架橋剤システムが感光する必要のある分光波長を要求することはない。従って、架橋剤システムの分光感度は本質的に選択した照射波長によって決定される。これに対し、SPは可視および紫外波長領域における強い光吸収帯によって特徴づけられる。かかる吸収特徴はデバイス中のSPの特性と有用性の基本である。それらの主要な吸収帯の吸収強度はかなり大きいため、対応する吸収深度は狭くSP膜はこれらの波長では実際には不透明である。例えば、この1/e吸収深度(または等価的に、照射透過深度)はほとんどのSPについて典型的には帯最大値で50nm未満である。従って、架橋システムは、制限された透明ウィンドウに適合した分光感度をそれぞれのSPにとっての強い吸収帯の間に備え持つのが有利である。この要件を満たさない架橋システムは膜の最上部の層を架橋するに過ぎず、従ってSPにおける有用性が限られる。さらに、SPが実質的に非吸収性である波長を使用して付随的な光誘導酸化および他の反応を避けることができることも有利である。
【0032】
(2)NLR配合物は半導体デバイスではアクティブ層としては使用されない。これらは犠牲マスク層として使用されるためデバイスで使用される架橋可能なSP配合物の厳格な要件が課せられることはない。特に、SP配合物においては、架橋剤システムはデバイスの性能を劣化させる可能性のある大きな濃度の電子トラップ、正孔トラップまたは励起子トラップを導入すべきではない。例えば、いくつかの公知の光生成酸(photogenerated acid; PGA)で化学的に増幅されたレジストシステムは電荷輸送および共役ポリマーのルミネッセンス特性を著しく妨げるPGA残留物を残す。
【0033】
照射感光性架橋剤として非フッ素化ビス(フェニルアジド)を使って導電性ポリマーPEDT:PSSをベースとするネガ型フォトレジストを作ることが近年、F. J. Touwslager, N. P. Willard and D. M. de Leeuw, 「I-line lithography of poly(3, 4-ethylenedioxythiophene) electrodes and application in all-polymer integrated circuits」Aplied Sphysics Letters, 81 (2002) pp. 4556-4558に開示されている。これは電極および相互接続を形成するための、半導体性とは異なる、導電性ポリマーラインのフォトリソグラフィーパターンニングを記載している。PEDT:PSSは365nmのI−ライン照射に露光するとビス(フェニルアジド)と架橋する。この方法の主な特徴は、(WO96/20253のアジド方法と同じく)材料の1種としてのフェニルアジドが架橋剤としてはかなり非効率的であり、高濃度で組み合わせることを必要とすることである。さらに、架橋反応の数多くの副産物があり、それらの多くはデバイス性能にとって有害である。
【0034】
同様の方法が米国特許第2002/106529号に記載されており、エレクトロルミネッセント材料をポリマー性バインダと配合または結合させる。バインダポリマーは架橋させてよい。光架橋可能な基を持ついくつかのバインダポリマーは5頁に開示されているように一般式(9)で表わされる繰返し単位を持っている。明らかに、これらの材料は光架橋可能な基のモル%含有量が高い。あるいは、光架橋部分をバインダポリマーと混合し、この実施態様では、バインダポリマーの100重量部に対して5から50重量部の量のこの薬剤を混合すべきであることが教示されている。
【0035】
従来技術において開示されているシステム、特に上述のApplied Letters Physicsの開示、米国特許第2002/106529号、WO96/20253号、および米国特許第6107452号に開示されているシステムは、デバイス内に使用するには特に適しているわけではない。開示されている架橋プロセスは重合または2つの架橋部分の間の特定の結合に基づいている。これが効率的に起こるには、架橋剤部分は非常に高い負荷(実質的に5モル%より大きい)で存在しなければならない。架橋剤部分自身の負荷が高いことまたは架橋剤部分の反応の副産物はデバイス層における効率的な電荷キャリア輸送の妨げとなりやすい。さらに架橋剤部分はその希釈効果および無秩序効果により間接的に効率的な電荷キャリア輸送を妨げる可能性がある。「希釈効果」によりとは、最終生成物の架橋化部分の負荷が増加するにつれてポリマー中の共役セグメントの相対的濃度が低下する結果生じる効果を意味する。「無秩序効果」によりとは、架橋化部分の負荷が高いために最終的な架橋化ポリマーの主鎖がその平面からねじれることを意味する。その結果、デバイスの駆動電圧は対応して高くなり、それらの作動寿命が短くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
以上を鑑みると、最初に成形または成膜されるポリマー層が後に続く加工工程に使われる溶媒中で不溶性となるさらに別のポリマーデバイス製造方法を提供する必要性がまだ残っていることが理解されるであろう。
【0037】
かかる状況下で、本発明の目的は、好ましくは高い性能と両立できるポリマーデバイス製造の新規の方法を提供することである。さらに本発明の目的は、この新規の方法によって得られるポリマーデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
この点に関して、本発明者らは驚くべきことに、これまで知られていなかった低濃度の架橋部分(5モル%未満)をデバイス製造における半導体層に良好に使えることを見出した。架橋部分は半導体ポリマーと混合するかまたはポリマー主鎖または側鎖の一部として使用して、架橋化部分の濃度が低い架橋化ポリマー生成物を形成する。さらに、本発明者らはこの低濃度の架橋化部分は実質的にポリマーデバイスのポリマーの性能を劣化させないことを見出した。
【0039】
かかる状況下で、本発明の第1の側面では、以下の工程を備えるポリマーデバイスを形成する方法であって、
(i)ポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を基板上に成膜して層を形成する工程;および
(ii)工程(i)で形成された層を不溶性架橋化ポリマーを形成するような条件下で硬化する工程;
架橋部分が、溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の範囲の量で工程(i)に存在することを特徴とする方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
架橋部分は工程(i)で成膜される溶液中のポリマーまたはオリゴマーと混合してよい。あるいは、架橋部分は溶液中のポリマー/オリゴマーの主鎖の一部またはポリマー/オリゴマーに対する側鎖の一部であり得る。
【0041】
架橋部分は工程(i)で、溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の範囲のレベルで、好ましくは0.05から5モル%未満の範囲のレベルで、より好ましくは0.05から3モル%の範囲で、もっと好ましくは0.1から2モル%の範囲のレベルで、そしてさらにもっと好ましくは0.1から1モル%の範囲のレベルで溶液中に存在する。
【0042】
架橋部分が溶液中のポリマーまたはオリゴマーと混合される場合、架橋部分が存在するレベルは以下の式に従って簡単に測定できる。
ncrosslinker/(ncrosslinker + npolymer) × 100
ここでncrosslinkerは架橋部分のモル数であり、npolymerはポリマーまたはオリゴマーの繰返し単位のモル数である。式AxByC(1-x-y)に従って書ける無作為のまたは交互のコポリマーについては、および式AxByCzに従って書けるブロックコポリマーについては、本発明の目的ではポリマーの繰返し単位はA、B、およびCとなるように定義する。
【0043】
以下に示す3つの例(a)、(b)、(c)では、npolymerは(Aのモル数)+(Bのモル数)+(Cのモル数)である。以下に示す例(a)、(b)(c)のそれぞれにおいて、npolymerは(6+6+6)=18である。単なる例として、もし1モルの架橋部分がポリマー(a)、(b)、(c)のいずれか1つと組み合わせて溶液中に存在していれば、架橋部分は1/(1+18)x100=5.26モル%の濃度で存在することになる。
(a)ABCBBACACCBAACBCBA
(b)ABCABCABCABCABCABC
(c)AAACCCBBBCCCAAABBB
【0044】
架橋剤部分の相対数および繰返し単位はミクロ分析またはNMRによって測定できる。
【0045】
架橋部分がポリマーまたはオリゴマー主鎖または側鎖の一部である場合、本発明の目的では、架橋部分が存在すべきであると定義されるレベルは以下に示すように測定できる。
【0046】
ポリマーまたはオリゴマーが下記構造の1つを有する繰返し単位を含んでいると考えると、
【化3】
(ここでRは炭化水素からなるポリマーまたはオリゴマーの主鎖中の繰返し単位であり、Xは架橋部分である)、架橋部分が存在するレベルは次のように測定される。
ncrosslinker/(ncrosslinker+ npolymer) × 100
ここでncrosslinkerは架橋部分Xのモル数であり、npolymerはポリマーまたはオリゴマーの繰返し単位のモル数である。
【0047】
工程(ii)で形成される不溶性架橋化ポリマーは0.05から5モル%の架橋化部分を含むことになる。好ましくは、架橋化部分は、工程(ii)で形成される層の不溶性架橋化ポリマーのモル総数に対して、0.05から5モル%未満の範囲の量で存在し、より好ましくは0.05から3モル%、さらに好ましくは0.1から2モル%の範囲の量、もっと好ましくは0.1から1モル%の範囲の量である。
【0048】
不溶性架橋化ポリマーが下記構造の1つを有する繰返し単位を含むと考えると、
【化4】
(ここでRおよびR’は架橋化ポリマーの主鎖中の繰返し単位であり、X’は架橋化部分である)、架橋化部分が存在するレベルは、
ncrosslink/(ncrosslink+ npolymer) × 100
として測定されるものとする。
【0049】
ここでncrosslinkは架橋化部分X’のモル数であり、npolymerはポリマーの繰返し単位のモル数である。
【0050】
本発明の方法は、ポリマー膜成膜後これを架橋化して、1つのプロセスサイクルで例えば約1nmから約500nmまでのどのような所望の膜厚でも得られるようにする簡単な工程を提供する。これは非常に用途が広く一般的なプロセスである。本発明の方法では、このプロセスは多くの場合、高濃度の電荷キャリアトラップまたは励起子トラップを導入することなく実現できる。その結果、広範囲の実用的なポリマー対ポリマー複合構造を製造し、これらを有利にポリマーデバイス、特に発光ダイオード、フォトダイオード、および電界効果トランジスタに組み込むことが可能である。本発明の方法はまたポリマー膜をパターンニングするための新規の道をも開くものである。
【0051】
概略として、本発明の方法によって定義されるような一般的な戦略を使って実用的で本質的に無限の多数積層物およびパターン化ポリマー膜を製造することができる。
【0052】
図らずも、本発明者らはこのような低レベルで架橋を行うと半導体ポリマー層の電気的および光電子的機能を著しく損なう「致命的な」欠陥または副産物を実質的に生み出すことはないことを見出した。
【0053】
工程(ii)での硬化は電子ビーム照射によって行ってよい。しかしながら、好ましくは、硬化条件は不活性雰囲気中での短波長照射への露光、より好ましくは不活性雰囲気中での深紫外線照射への露光から成る。さらに好ましくは、深紫外線照射の波長は200nmから400nmの範囲、より好ましくは245nmから370nm、さらに好ましくは250nmから260nmである。特に好ましい波長はHg低圧ランプから得られる約254nmであり、また例えばKrFエキシマレーザーから得られる248nmである。かかる状況下で、架橋部分は上述の波長の短波長照射に感光することが好ましい。
【0054】
工程(i)で成膜される溶液がオリゴマーを含む場合は、工程(ii)での硬化はオリゴマーを重合化すると同時に架橋化して不溶性架橋化ポリマーを形成するのがよい。
【0055】
有利なことに、半導体ポリマーは、露光が不活性雰囲気で行われる限り、露光に必要とされる実際の深紫外線量に対して一般に安定であることがわかった。
【0056】
本発明者らは、多くの主要な半導体ポリマー(ポリチオフェン、ポリアリールビニレン、ポリフルオレンおよびそれらのコポリマー)が思いがけず約200−300nmの深紫外線で共通の透明ウィンドウを共有することを見出した。この分光特性は以下に記載する好ましい架橋部分の感光スペクトル、および市販の光源にも有利に十分に適合する。
【0057】
好ましい架橋部分はフッ素化アリールアジドから成る。フッ素化アリールアジド中のアジドにオルト位の水素原子がないことがさらに好ましい。このためには、いくつかの実施態様では、フッ素原子をアジドにオルト位のいずれの位置にも配置することが好ましい。
【0058】
より好ましくは、架橋部分はパーフルオロアリールアジドから成り、更に好ましくはパーフルオロフェニルアジドまたはパーフルオロナフチルアジドから成る。
【0059】
第1の実施態様では、工程(i)で特に好ましい架橋部分を溶液中のポリマーまたはオリゴマーと混合すると、有利なことに、架橋反応は架橋部分とポリマーまたはオリゴマー単位との結合形成反応をともなうというメカニズムを介して架橋が進行し、これは架橋部分自身同士の結合形成反応とは異なる。言い換えれば、工程(ii)では架橋部分は実質的に自己結合または自己重合はしない。本発明者らは上述の能力を持つ架橋部分をかなりの低濃度で有利に使えることを見出した。
【0060】
上述のような好ましい架橋部分は工程(ii)では実質的に自己結合または自己重合することはない点に留意すべきである。しかしながら、かかる架橋部分は自己結合または自己重合する能力を持っていてよい。本発明の1つの実施態様ではこれらが本発明の方法の工程(ii)では実質的にそうしないことがただ単に必要なだけである。
【0061】
本第1の実施態様において、さらに好ましい架橋部分は一般式Iで示される:
N3−ArF−N3 I
ここでArFは置換または非置換フッ素化アリール基からなる。
【0062】
より好ましい架橋剤は一般式IIで示される:
N3−ArF−L−ArF’−N3 II
ここでArFおよびArF’はそれぞれ独立して置換または非置換フッ素化アリール基からなり、Lは適宜の2価または多価結合基からなる。好ましい置換基としてはFよりも大型の置換基、例えばCF3が挙げられる。1つの実施態様では、ArFおよびArF’のうちの1つまたは両方がFよりも大型の置換基を少なくとも1つ(好ましくは1つ)持っているのが好ましい。
【0063】
好ましい結合基はArFおよび/またはArF’に結合した電子吸引部分からなる。かかる電子吸引部分は−CO−、−C(O)O−、S(O)2O−、C(O)NR−、またはS(O)2NR−を含み、ここでRはHまたは置換基であり、(CH2)x(x=1−5)、(CH2)x−O−(CH2)x(x=1−3)などの柔軟なスペーサー基、またはシクロヘキサジイル基をともなっている。結合基は、柔軟なスペーサー基によって連結されている2つの電子吸引部分(1つはArFに結合し、もう一方はArF’に結合している)からなっていてもよい。より好ましい結合基としては、−C−O−、−C(O)O−(CH2)n−O(O)C−(n=1−5)、および−C(O)O−シクロヘキサジイル−O(O)C−、および−S(O)2−NR−(CH2)x−NR−S(O)2−が挙げられる。
【0064】
一般式IIでは、より好ましくはArFおよびArF’はそれぞれ置換または非置換フッ素化フェニル基またはナフチル基からなり、より好ましくは置換パーフルオロフェニル基またはパーフルオロナフチル基からなる。もっとも好ましくは、ArFおよびArF’はそれぞれパーフルオロフェニル基からなる。以下に述べる理由により、XVIからXVIIIに関して、1つの実施態様では、パーフルオロフェニルまたはパーフルオロナフチル上のフッ素基の1つ以上(好ましくは1つ)を、フッ素化アルキル基(例えばトリフロオロメチル基)などのより大型の基と有利に置換することができる。このような置換は2つの位置で有利に行うことができる。従って、1つの実施態様では、ArFおよび/またはArF’は好ましくは下記式からなる。
【0065】
【化2】
ここでBはフッ素化アルキル基(例えばトリフルオロメチル基)のような大型の置換基である。
【0066】
パーフルオロフェニル基間またはパーフルオロナフチル基間の結合基は好ましくは上述のタイプの短い結合基である。
【0067】
それぞれのアジド基(−N3)は光化学的に分解して電子不足のナイトレンとなり、これは簡単にC−H結合、特にアルキルC−H結合中に挿入される:
すなわち−N + −C−H = −C−N(H)
【0068】
このようにして、ビスアジドのそれぞれの端部はC−Hフラグメントに結合する。2つのC−Hフラグメントは名目上隣接するポリマー鎖またはオリゴマーに属するため、架橋がこれらの間に形成される。ポリマーまたはオリゴマーが好ましくは複数の飽和炭化水素セグメントからなるのはこのような理由による。しかしながら、可溶性を向上させるために、しばしば飽和炭化水素、具体的にはアルキルC−Hがすでにポリマーまたはオリゴマー中に存在していることがある。
【0069】
本発明者らは、C−H結合、特にアルキルC−H結合中への高効率的な挿入によって、主鎖に存在するπ共役をほぼ破壊することなく架橋が進行することを発見した。さらに、架橋部分がポリマーまたはオリゴマーと結合を形成する能力を持つことが本発明者によって見出されたことにより、より低濃度の架橋部分を使用できることになった。
【0070】
本発明者らは、実験によりこの架橋部分が、ポリマーの特性(電荷輸送およびルミネッセンス特性など)を損なう恐れのある残った残留物の不利を被ることはないことを見出した。
【0071】
さらに、この架橋部分の架橋メカニズムは半導体ポリマー中でπ共役の存在とほぼ両立することが見出された。
【0072】
さらに、この架橋部分があると共役ポリマーに対する固体状態の架橋効率は思いがけず高い(80%より高い)ことがわかった。理論に束縛されることを望むわけではないが、この種の架橋剤の効率が高いのは、環の上のフッ素原子(特にオルト位のフッ素原子)の存在が競合する付加的環拡大副反応を抑制するためと考えられる。
【0073】
以下の新規の架橋剤が本発明者らによって合成された。これらの架橋剤基は溶液中のポリマーまたはオリゴマーと混合するのに適している。
−アルキレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)、
−アルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンズアミド)
−アルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)
−シクロアルキレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオベンゾエート)
−シクロアルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフロオロベンズアミド)
−シクロアルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)。
【0074】
これら新規の架橋剤の具体例としては、
−エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンズアミド)
−エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフロオロベンゼンスルホンアミド)
−1,3−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)
−1,4−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)が挙げられる。
【0075】
上述の新規の架橋剤の等価物であって、テトラフルオロベンズアミド、テトラフルオロベンゼンスルホンアミドまたはテトラフルオロベンゾエートの少なくとも1つ(好ましくは1つ)のフッ素がより大型の基(フッ素化アルキル基、例えばCF3など)に置換されているのが望ましい。置換は好ましくは2つの位置で行われる。
【0076】
下記一般式IIで示される架橋剤、
N3−ArF−L−ArF’−N3 II
(ここでArFおよびArF’は上述のように定義される)は、F−ArF−L−ArF’−Fをアジドと反応させる工程からなる方法によって合成できる。
【0077】
好ましくは、アジドは金属アジドであり、より好ましくはアルカリ金属アジドであり、さらに好ましくはナトリウムアジドである。
【0078】
F−ArF−L−ArF’−Fは適切なフッ素化アリール(例えばペンタフルオロフェニル)酸ハロゲン化物の反応によって作られてよい。共反応剤はLの性質に依存することになる。しかしながら、フッ素化アリール(例えばペンタフルオロフェニル)酸塩化物とジオールまたはジアミンとの反応が一般的に有用である。
【0079】
例えば、F−ArF−L−ArF’−Fは、F−ArF−COXまたはF−ArF−SO2X(X=Cl、Br)をHO−R−OHまたはNHY−R−NHY(Y=H、アルキル、またはアリール、好ましくは最終生成物中の可溶性を向上させるため、アルキル、またはアリール)(R=アルキレン、シクロアルキレン)と反応させてF−ArF−L−ArF’−Fを合成して作ってもよい。
【0080】
エチレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)の場合、これはエチレンジアミンの1モル等価物をペンタフルオロベンジルクロリドの2モル等価物をわずかに上回る量と反応させてエチレンジアミンビス(ペンタフルオロベンゾエート)を生成させることによって作ってもよい。その後、エチレンジオールビス(ペンタフルオロベンゾエート)を金属アジドの1モル等価物をわずかに上回る量と反応させてエチレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)を作ってもよい。
【0081】
エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)の場合、これはエチレンジアミンの1モル等価物をペンタフルオロベンゼンスルホニルクロリドの2モル等価物をわずかに上回る量と反応させてエチレンジアミンビス(ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド)を生成させて作ってもよい。その後、エチレンジアミンビス(ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド)を金属アジドの1モル等価物をわずかに上回る量と反応させることによってエチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)を作ってもよい。
【0082】
工程(i)については、溶液は望ましくはポリマーおよび架橋部分のブレンド/混合物からなる。しかしながら、他の実施態様では、溶液はかわりにポリマーまたはオリゴマーを含んでおり、この場合架橋部分は、典型的には側基としてポリマーまたはオリゴマーと結合している。
【0083】
本実施態様では、特に好ましい架橋部分はポリマーまたはオリゴマーの主鎖の一部であるかまたは側鎖としてポリマーまたはオリゴマーに結合しており、有利なことに、架橋反応は架橋部分とポリマーまたはオリゴマー単位との結合形成反応をともなうというメカニズムを介して架橋が進行し、これは架橋部分自身同士の間の結合形成反応とは異なる。いいかえれば、工程(ii)では、架橋部分は実質的に自己結合または自己重合することはない。
【0084】
本実施態様では、架橋部分を含むポリマーまたはオリゴマーの好ましい構造単位は下記一般式IIIまたはIVを持つ。
【0085】
【化1】
ここでArFは置換または非置換フッ素化アリール基であり、Rはポリマーまたはオリゴマーの主鎖中の構造単位(典型的には繰返し単位)である。
【0086】
これらの好ましい架橋部分はアジド基を備えており、かかる状況下で、これらの架橋部分は本発明による好ましい架橋剤の第1の実施態様に関して上で説明したのと同じ利点を持つ。
【0087】
一般式IIIおよびIVにおいて、ArFは一般式IIに関して上記いずれかで定義したものである。
【0088】
一般式IIIおよびIVでは、好ましくはArFは置換または非置換フッ素化フェニル基またはナフチル基からなり、より好ましくはパーフルオロフェニル基またはパーフルオロナフチル基からなる。もっとも好ましくは、ArFはパーフルオロフェニル基からなる。
【0089】
一般に本発明に関して、工程(i)での成膜は例えばどのような適切な溶液加工法によって行ってもよい。この点に関して、インクジェット印刷、スピンキャスティング、スクリーン印刷、ディップコーティング、およびフレキソグラフィック印刷を挙げることができる。
【0090】
基板の適切な材料は形成されるポリマーデバイスに左右されることになる。LEDおよびフォトダイオード/光検出器については、好ましい基板はガラス上のITO、PET上のITO、Si上のITOなどの層が挙げられる。FETについては、好ましい基板はガラス、PET、ポリカーボネートなどの層が挙げられる。基板自身は積層構造を備えている。いいかえれば、基板はそれ自身が複数の異なる層を備えていてよい。
【0091】
上述のように、本発明の工程(ii)では、工程(i)で形成された層に不溶性が付与される。このような不溶性を達成するには、工程(i)で形成された層が架橋条件にかけられるとき工程(ii)で十分な程度の架橋が起こらなければならない。工程(ii)で必要な程度の架橋を行うために工程(i)で成膜される溶液中に必要とされる架橋部分の特定の範囲内の正確な量は、ポリマーの分子量分布特性に左右されることになる。一般に、ポリマーの分子量が高いほど必要な架橋剤の量は小さくなる。必要な最小量はゲルフラクション実験によって適切に決定できる。この実験は単純に次のようにして行える。
【0092】
・適切な溶液中の試験濃度(例えば、芳香族炭化水素溶媒中の0.5−2.5重量%)にあるポリマーまたはオリゴマーを、架橋基とポリマー/オリゴマーのモル総数に対して0.05−5モル%の範囲の濃度にある架橋基と配合する、または、この範囲の架橋部分を持つポリマーを合成する。
・スピンコーティングまたはインクジェット印刷によって膜を成形しその後硬化させる。
・プロファイロメトリ、エリプソメトリ、またはインターフェロメトリによって厚さを測定する。
・膜を100mJ/cm2の線量で架橋照射に露光する。
・通常、ポリマーを溶解する溶媒中に膜を10秒間浸漬(または現像)し、その後溶媒をブロー乾燥またはスピンオフする。
・再度膜厚を測定する。
・不溶性および所望の厚みが得られるまで、異なるモル比の架橋部分で上述の手順を繰り返す。
【0093】
溶液中のポリマーまたはオリゴマーの濃度についての好ましい範囲は架橋部分を添加する前で0.5から2.5重量%である。
【0094】
工程(ii)で形成した架橋化ポリマーは有利に導電性、半導体、または絶縁性のポリマーであり得る。好ましくは、架橋化ポリマーは半導体ポリマーである。
【0095】
ポリマーが工程(i)で使用される溶液中に存在し、架橋部分がポリマーと混合される場合は、望ましくは溶液中のポリマーは導電性、半導体、または絶縁性のポリマーであり得る。好ましくは、工程(i)の溶液中のポリマーは半導体ポリマーである。溶液中のポリマーが半導体ポリマーである場合、工程(ii)で層を硬化させても有利なことに実質的にはポリマーの半導体特性に悪影響を及ぼすことはない。
【0096】
半導体ポリマーとは対照的に、導電性ポリマーは典型的には濃厚にドーピング(繰り返し単位ごとに5モル%より大きい)されて導電状態とされている。その結果、導電性ポリマーは典型的には1018cm−3より大きな電荷キャリア濃度を持っている。「導電性ポリマー」とは、典型的には1×10−5S/cmより大きな導電性を持つポリマーを意味する。かかる状況下で、それらの電気的特性は本質的にはさらに別の不純物に反応することはない。かかる導電性ポリマーは主に送電線または電極端子として有用である。重大なことに、これらはしばしばフォトパターンニングプロセスの制限がゆるむにつれて、可視、紫外、および深紫外分光領域の部分へと大きく延びるトランスミッションウィンドウを保有する。
【0097】
半導体ポリマーは典型的にはドーピングされていないかまたは元来低濃度(典型的には0.001モル%以下)でドーピングされている。導電性ポリマーとは対照的に、半導体ポリマーは典型的には電荷キャリア濃度が1015cm−3未満である。「半導体ポリマー」とは、典型的には1×10−8S/cmより小さな導電性を持つポリマーを意味する。これらのポリマーは重大なことにLED、FET、およびPVをはじめとする広範囲のポリマーデバイス技術の中核を形成している。これらは典型的には上で説明したように可視−紫外領域においてかなり狭いトランスミッションウィンドウを持っている。これらはまた不純物レベルに対してはるかに敏感な、重要かつ独特の輸送特性および光物理的特性も持っている。
【0098】
本発明者らは、本発明により実質的に機能の損失なく半導体ポリマーを架橋させることができることを見出した。
【0099】
特に本発明者らは、架橋部分が特に0.1から0.5モル%の範囲の量で使用されたときおよびポリマーの分子量が十分に高い(300,000より大きい)ときには、現実には広範囲の共役ポリマー膜のフォトルミネッセンスおよびエレクトロルミネッセンス特性に架橋部分は影響を及ぼさないことを見出した。
【0100】
本発明らは、本発明で説明する架橋部分および架橋方法論が、広いバンドギャップ材料と、特に例えばWO03/095586号に記載されているような青色ELポリマーとも事実上適合することを見出した。本プロセスは、さもなければこれらの特に敏感な材料のデバイス性能を損なうであろう励起子または電荷トラップを導入することはない。
【0101】
より低分子量の材料に対しては、より高い濃度(0.5%を上回る)の架橋部分を使う必要があるが、場合によってこの濃度は、図11に架橋部分エチレンジオールビス(p−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)について示すように、ポリマーのフォトルミネッセンス効率を劣化させる効果を持ち始めることになる。多くの場合、フォトルミネッセンス効率はアニーリングによって部分的に回復させることができる。
【0102】
【化5】
【0103】
高濃度で架橋部分を付与するという望ましくない事態も架橋部分における立体バルクを増加させることによってさらに減少させることができる。一般式IIの架橋部分の場合、これは例えばL、またはArF、ArF’および/またはL上の置換基を適切に選択することによって行うことができる。例えば、フォトルミネッセンス消光について以下の序列が観察される。
【0104】
【化6】
【0105】
従って、架橋されるべきポリマーが低分子量であることから架橋部分が高い濃度で存在する必要があり、そしてその結果フォトルミネッセンス消光が問題となる場合は、パーフルオロ化環の近傍にあるより大きな立体バルクを持つ架橋部分、例えば2−トリフルオロメチル置換化合物XVIIIを選択してその問題を緩和するか完全に抑制することができる。
【0106】
このことは、ポリマーの望ましい光物理的および電子的特性を損なうことなく広い範囲の共役ポリマーに効果的な架橋を提供するにあたりフッ素化フェニルアジドは用途が広いことを表わしている。
【0107】
好ましくは、ポリマーまたはオリゴマー主鎖は少なくとも部分的に共役している。さらに1つの実施態様では、ポリマーまたはオリゴマー主鎖は実質的にまたは完全に共役されていることが望ましい場合がある。
【0108】
ポリマーまたはオリゴマーの構造については、好ましくはこれは側鎖または主鎖中に複数の飽和炭化水素セグメント(−CH2および−CH−)を備えている。ポリマーまたはオリゴマーは複数の脂肪族水素を備えていることが好ましい。
【0109】
ポリマーまたはオリゴマーにおけるこれらのセグメントの好ましい重量フラクションは10−100%であり、半導体ポリマーについては、好ましい重量フラクションは10−70%である。
【0110】
好ましい架橋化半導体ポリマーは下記構造を備える繰返し単位Ar1からなる。
(1)p−フェニレンビニレンのような置換または非置換フェニレンまたはアリールビニレン、
(2)9,9−ジアルキルフルオレン(さらに置換されている場合がある)のような9,9−二置換フルオレン、
(3)置換または非置換トリアリールアミン、
(4)チオフェン、ベンゾチアジアゾール、キノリン、ピリジン、好ましくはその置換類縁体のような非置換または置換複素芳香族単位、または
(5)非置換または置換オキサジアゾール。
【0111】
好ましい置換基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、およびアリールオキシ基が挙げられる。
【0112】
ポリマーはAr1と組み合わさった1つ以上の共繰返し単位を含んでいてよい。好ましい共繰返し単位はp−結合非置換または置換フェニレン、非置換または置換フェニレンビニレン、2,5−結合置換または非置換ベンゾチアジアゾール、2,5−結合置換または非置換チオフェン、ビチオフェンまたはターチオフェン、置換または非置換トリアリールアミンまたはビス(トリアリールアミン)からなる。架橋化ポリマーが1つ以上の共繰返し単位を含み、Ar1が9,9−二置換フルオレンからなる時が特に好ましい。
【0113】
これらポリマーはすべて本発明により架橋化することができる。
【0114】
当然ながら、ポリマーまたはオリゴマーは工程(i)で溶液中に存在するために可溶性でなければならない。この目的のために、ポリマーまたはオリゴマーは可溶性基を含んでいてよい。好ましい可溶性基としてはアルキル基、アルコキシアリール基、シクロアルキル基、アリールオキシ基、およびシクロアルキルオキシ基が挙げられる。
【0115】
架橋部分は深紫外領域の狭いトランスミッションウィンドウに吸収性を持つことが好ましい。典型的には、これは200nmから300nmの範囲であり、より好ましくは245から270nmであり、さらに好ましくは250nmから260nmの範囲となる。架橋部分の吸収性は紫外可視吸収スペクトルによって測定することができる。
【0116】
架橋部分がこの範囲で適切な吸収率を持つと有利である、なぜならこれは多数の半導体ポリマーに共通の遷移ウィンドウに対応するからである。従って、ポリマーの架橋および画像化を低露光線量で行うことができる。
【0117】
工程(ii)で形成された硬化層の好ましい厚さは500nm以下の範囲である。工程(ii)の硬化が紫外線照射への露光による場合、1回の適切な紫外線露光によって形成される不溶性層は500nmの厚さから下は数nmの厚さとすることができる。必要に応じて、最終的な厚さが500nmより大きい層はコーティングおよび硬化を繰り返すことによって製造してよい。必要な最終膜厚は末端使用用途次第である。原則的にはこの方法によって製造できる層の数は制限されない。
【0118】
工程(ii)で形成される不溶性層の望ましい厚さはある程度層の機能によって左右される。層がポリマーLEDの注入中間層である場合は、好ましい厚さは5から20nmの範囲である。層が例えばフォトダイオードの電荷輸送層である場合は、好ましい厚さは10から50nmの範囲である。層が導波デバイスの被覆層である場合は、好ましい厚さは100から400nmの範囲である。層がFETのチャネル層である場合は、好ましい厚さは20から300nmの範囲である。
【0119】
1つの実施態様では、工程(i)で成膜される層はポリマーブレンドまたは複合物であり得る。硬化ポリマーブレンドまたは複合物の熱安定性を高めるためまたは最終的な硬化層の溶媒溶解に対する抵抗を最適化するために、架橋化を有利に使用してもよい。
【0120】
工程(ii)における硬化の条件については、硬化が紫外線照射への層の露光を伴う場合、これは好ましくは1−100mW/cm2の電力で行い、好ましくは露光時間は約0.1−100秒の範囲である。硬化させる層へのエネルギー線量は好ましくは1−100mJ/cm2であり、より好ましくは5−20mJ/cm2である。
【0121】
層は工程(ii)で硬化されて不溶性とされる。このことは、層、ひいてはポリマーが、架橋前であれば層が溶解したであろういずれの溶媒にも完全に溶けることはないことを意味する。上述のように、この結果が得られるかどうかは問題の特定の層に対して要求される架橋のレベルが達成されるかどうかに左右される。一般に、硬化した層は通常の有機溶媒中で不溶性となる。さらに、一般に、層はトルエン、キシレン、メシチレン、ジュレン、ヒドロナフタレン等の芳香族炭化水素溶媒中、およびクロロフォルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化溶媒中で不溶性になる。従ってこれらの溶媒はデバイス製造中のその後の加工で利用可能とされる。
【0122】
不溶性を測定する1つの具体的な試験を以下に説明する。
・スピンコーティングまたはインクジェット印刷によって膜を成形し、その後硬化させる。
・プロファイロメトリ、エリプソメトリ、またはインターフェロメトリによって正確に厚さを測定し、これをd1と呼ぶ。
・通常ポリマーを溶解する溶媒中に膜を10秒間浸漬(または現像)し、その後ブロー乾燥またはスピンオフする。
・再度膜厚を測定し、これをd2と呼ぶ。
【0123】
層が全体的に「不溶性」であれば、膜/層を浸漬した後には膜厚の減少は無い(すなわち、d2/d1=1.0)。しかしながら多くの場合、層は部分的に不溶性であればよい。(d2/d1)に保持されているフラクションが公知であれば、デバイス設計ではどのような減少も許容され得る。しかしながら、一般には、d2/d1は有用であるためには0.4を上回る必要があり、好ましくは0.5を上回る必要がある。
【0124】
一般に、工程(ii)での硬化後、層を溶媒に接触させてよい。架橋化ポリマーが等価の架橋されていないポリマーであれば溶けるであろう溶媒に溶けないという事実は、層が接触される溶媒は通常の有機溶媒を含む多くの種類の溶媒から選択できることを意味する。この接触によって工程(ii)で形成された架橋化ポリマーが溶解することはない。
【0125】
必要に応じて、工程(ii)での硬化後、層を適切な溶媒で洗浄してよい。かかる洗浄工程は、層に工程(ii)でパターン化架橋が行われる場合に行われる。これは工程(i)から得られた層の選択された領域だけを工程(ii)の硬化条件にさらすことにより行われる。これは例えばマスクを介して紫外線照射に露光することによって達成される。露光領域の材料は不溶性となるが非露光領域の材料は可溶性のまま残る。これにより非露光領域の材料を洗浄工程で取り除くことができる。
【0126】
必要に応じて工程(ii)での硬化後、液相化学による適切な化学反応によって層を化学的に改質してもよい。かかる化学反応としては、芳香族スルホン化、アミノメチル化、または他の誘導体反応が挙げられる。
【0127】
スルホン化によりSO3H基をポリマー繰返し単位のフラクションに導入する。これを使って、例えば自己ドーピング導電性ポリマー層を製造することができる。この特定の反応はさまざまな条件下で、例えば、層を−60℃でクロロスルホン酸の希釈クロロフォルム溶液と反応させることにより行うことができる。
【0128】
有用な他の反応としては架橋反応によって導入されたNH基のメチル化反応が挙げられる。この反応は水素原子を潜在的により安定なメチル基で置換するものである。この特定の反応は層を室温でヨウ化メチルと反応させ、その後クロロフォルム−エタノール混合物中でトリエチルアミンにより洗浄することにより行われる。従って、ポリマー層を不溶性とした後に、さまざまな化学反応を行って層のバルク特性および表面特性を変更または調節することができる。
【0129】
本方法によって形成された層の上にさらに別の(第2の)層を成膜してもよい。この点に関して、工程(ii)の硬化に鑑みて、本発明で形成される層はさらに別の(第2の)層を成膜するのに使われるいずれの溶液にも溶けないと思われる。
【0130】
必要に応じて、本発明はさらに本発明の第1の側面による方法の工程(ii)で形成される不溶性ポリマーをアニーリングする工程を備えていてもよい。アニーリングは本発明の第6の側面に従って以下に挙げるようなものである。
【0131】
典型的には、本発明の第1の側面による方法のポリマーデバイスは光学デバイスである。好ましくは、デバイスはポリマー発光デバイス、電界効果トランジスタのようなポリマートランジスタ、光検出器、光起電力デバイス、導波デバイス、または分布ブラッグリフレクタである。
【0132】
ポリマーLEDデバイスは本発明の方法により成膜される架橋化正孔輸送ポリマー層を使って製造できる。デバイスはさらに発光ポリマー層および/または電子輸送ポリマー層および/または励起子遮断ポリマー層を備えていてよい。必要に応じてこれらのさらなる層は本発明の方法に従って成膜することができる。ポリマーLEDについては、例えばアノード上に形成された正孔注入および電子遮断ポリマー層、その後に発光ポリマー層、そして電子注入、正孔遮断および励起子遮断ポリマー層、そしてその後カソードが形成されている構造が考えられる。有利なことに、適切なポリマーは、発光層としてパターンニングして上述のようなフルカラーディスプレイを提供するようにすることもできる。さらに、発光層はポリマーの架橋化ブレンドの膜であってよい。
【0133】
ポリマー導波LEDデバイスは本発明の方法によって成膜される1つ以上の架橋化ポリマー被覆層で製造することができる。デバイスはさらに、本発明の方法に従って適宜成膜されるコア発光層を備えている。導波デバイスは隣接するクラッド層(または周囲部)よりも屈折率が高いコア層(またはストリップ)によって特徴づけられている。コア層およびクラッド層はそれぞれ1つ以上の個々の層を備えていてよい。位相適合条件を満たす適切な波長の光が全体の内部反射によって閉じ込められ、その屈折率がより高いためコア層(またはストリップ)に導かれる。そしてこの光はデバイスの端部で発光されるかまたはその光を外接合することのできる他の領域に導かれる。このようにして発光される光は非常に方向性が高くまた光ファイバーと良好に接合することもできる。
【0134】
ポリマー分布ブラッグリフレクタは本発明の方法によって成膜される架橋化交互高屈折率および低屈折率ポリマー多重層によって製造できる。ブラッグリフレクタは、高い(nH)および低い(nL)屈折率材料の複数の四重波厚み(dH、dL)層を備えている。ブラッグ条件(λ/2=nHdH+nLdL)を満たす波長の光が積層物内で強く反射される。ブラッグリフレクタは他のブラッグリフレクタまたは鏡と接合して光共振器を形成できる。かかる共振器は波長選択器としての重要な用途を持つ。
【0135】
ポリマー微小共振器(microcavity)LEDデバイスは本発明の方法によって成膜される1つ以上の架橋化ポリマー分布ブラッグリフレクタ層で製造することができる。デバイスはさらにコア発光層を備えていてよい。必要に応じて、コア発光層を本発明の方法に従って成膜してよい。
【0136】
ポリマーFETデバイスは本発明の方法によって成膜される架橋化半導体ポリマー層で製造することができる。デバイスはさらに架橋化絶縁性ポリマー層を備えていてよい。必要に応じて、絶縁性ポリマー層は本発明の方法に従って成膜される。このことは特にこの層が半導体層の前に成膜される場合に当てはまる。デバイスは最上部ゲート、側部ゲート、または底部ゲート構成であり得る。ポリマーFETについては例えば、ソースおよびドレイン電極間で基板上に形成された電荷輸送半導体ポリマーとその後に形成されるゲート絶縁体として作用する絶縁性ポリマーからなる構造が考えられる。この絶縁性ポリマー層は半導体ポリマーが架橋された後にこれを成膜するのに使われたのと同じ溶媒システムから成膜することができる。
【0137】
ポリマー光起電力デバイスは架橋化ポリマーブレンドまたはポリマー複合物からなる光応答層で製造することができる。
【0138】
本発明の第2の側面は、本発明の第1の側面に関して先に定義した方法によって得られるまたは得ることのできるポリマーデバイスを提供する。このデバイスは本発明の第1の側面に関して先に定義した通りであり得る。本発明の第1の側面に関して上で記載したデバイスのうちいずれかにおいて、および本発明の第2の側面によるデバイスにおいて、カソードの好ましい材料としてはバリウムまたはカルシウムのようなアルカリ土類金属が挙げられる。
【0139】
本発明の第3の側面は本発明の第2の側面によるポリマーデバイスの使用を提供するものである。
【0140】
本発明の第4の側面はポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を提供するものであり、架橋部分は溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の全重量に対して0.05から5モル%の範囲の量で存在することを特徴とする。
【0141】
本発明の第4の側面では、ポリマーまたはオリゴマー、架橋部分および溶媒は本発明の第1の側面に関して先に説明した通りである。さらに、溶液中のそれらの濃度は本発明の第1の側面に関して先に説明した通りである。
【0142】
好ましくは、架橋部分はポリマーまたはオリゴマーと混合される。本発明の第4の側面による好ましい溶液は半導体ポリマーを含む。1つの特に好ましい実施態様では、架橋部分は一般式IIで示され、ここでArFおよびArF’ はそれぞれパーフルオロフェニル基である。
【0143】
本発明の第5の側面は、本発明の第1および第2の側面に従って定義したようなポリマーデバイスの製造において、本発明の第4の側面に従った溶液の使用を提供する。
【0144】
本発明の第6の側面はポリマーデバイスを形成する方法を提供するものであり、
(i)ポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を基板上に成膜して層を形成する工程、
(ii)工程(i)で形成された層を不溶性架橋化ポリマーを形成する条件下で硬化する工程、
(iii)工程(ii)で形成された不溶性ポリマーをアニーリングする工程、および
(iv)工程(ii)で形成された不溶性ポリマーの表面またはバルクを必要に応じて化学的に改質する工程を備える。
【0145】
本発明の第6の側面による方法では、ポリマー、オリゴマー、架橋部分、およびそれらの濃度および架橋条件は好ましくは本発明の第1の側面に関して先に定義した通りであり得る。本発明の第6の側面では、架橋部分が工程(i)で0.1から5モル%の範囲の量で存在することは必要不可欠ではない。
【0146】
好ましくは、工程(iii)でのアニーリングは120から200℃の範囲の温度で行う。
【0147】
本発明の第6の側面に関して、本発明者らは驚くべきことに、成膜および架橋後のアニーリング工程により、工程(ii)中に発生する何らかの観察される特性の劣化が有利に少なくとも部分的に回復されることを発見した。
【0148】
本発明の第6の側面による方法の工程(iv)における化学的改質は本発明の第1の側面に関して定義した通りに行ってよい。
【0149】
本発明は、添付の図面を参照することで更に詳細に説明される。
【実施例】
【0150】
架橋剤の合成:
以下の合成経路を使用する。
ジオールまたはジアミンを酸捕捉剤の存在下で適切なペンタフルオロフェニル酸ハロゲン化物と定量的に反応させ、その後生成物をアジ化ナトリウムと定量的に反応させて、再結晶後に架橋剤ビス(パーフルオロフェニルアジド)を得る。
【0151】
実施例1:エチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)
エチレングリコール(135mg、2.1ミリモル)およびトリエチルアミン(510mg、5.0ミリモル)を10mLの無水エーテルに溶解させ、10mLの無水エーテル中の塩化ペンタフルオロベンゾイル(1.2g、5.0ミリモル)に添加する。得られる塩化トリエチルアンモニウムの白色沈殿をろ過除去する。ろ液を3×20mLの水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、蒸発させて無色の液体としてエチレングリコールビス(ペンタフルオロベンゾエート)(I)を回収する(収率、75%)。その後2.2mLの水および3.7mLのアセトン中のアジ化ナトリウム(150mg、2.3ミリモル)を2mLのアセトン中でI(500mg、1.1ミリモル)と反応させ、60℃のホットプレート上で一晩中攪拌する。白色の沈殿が得られる。溶液を蒸発によって半分の体積に減らし、沈殿をろ過し(収率、80%)、1:3のクロロフォルム−へキサンで2回再結晶させてエチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(II)を白色結晶として得る。FTIR:2134(N3非対称伸縮)、1731(C=O伸縮)、1645、1483、1252(N3対称伸縮)、3000−3500に酸のOH帯なし。
【0152】
実施例2:エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)
エチレンジアミン(130mg、2.1ミリモル)およびトリエチルアミン(510mg、5.0ミリモル)を10mLの無水エーテルに溶解させ、10mL無水エーテル中の塩化ペンタフルオロベンゾイル(1.2g、5.0ミリモル)に添加する。得られる白色の沈殿をろ過除去する。残留物をクロロフォルムで洗浄し、その後水で洗浄してからろ過して白色の針状結晶としてエチレンジアミンビス(ペンタフルオロベンゾエート)(III)を回収する(収率、100%)。その後、1.7mLの水および4.0mLのDMF中のアジ化ナトリウム(270mg、4.2ミリモル)を20mLのDMF中でIII(870mg、2.0ミリモル)と反応させ、60℃のホットプレート上で一晩中攪拌する。白色の沈殿が得られる。蒸発により溶液を半分の体積に減らして沈殿をろ過し(収率、35%)、乾燥させてDMFから再結晶させ、白色の結晶としてエチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(IV)を得る。FTIR:2129(N3非対称伸縮)、1666(C=O伸縮)、1554、1483、1242(N3対称伸縮)、3000−3500に酸のOH帯なし。
【0153】
実施例3:エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)
エチレンジアミン(70mg、1.0ミリモル)およびトリエチルアミン(240mg、2.0ミリモル)を8mLの無水クロロフォルムに溶解させ、2mLの無水クロロフォルム中の塩化ペンタフルオロベンゼンスルホニル(710mg、2.2ミリモル)に添加する。得られる白色の沈殿をろ過する。ろ液を3×4mLの半飽和KCl水溶液で洗浄し、その後MgSO4で乾燥させ蒸発させて、白色の結晶としてエチレンジアミンビス(ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド)(V)を回収する(収率、80%)。その後、1.0mLの水および4.0mLのアセトン中のアジ化ナトリウム(105mg、1.6ミリモル)をV(390mg、0.76ミリモル)と反応させ、60℃のホットプレート上で一晩中攪拌する。白色の沈殿が得られる。蒸発により溶液を半分の体積に減らして2mLの水を添加する。その後沈殿をろ過し、乾燥させクロロフォルムから再結晶させて白色の結晶としてエチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)(VI)を得る。アセトン、イソプロパノール、およびキシレンには可溶であるが、水またはヘキサンには溶けない。FTIR:3315(N−H伸縮)、2130(N3非対称伸縮)、1642、1493、1358(SO2非対称伸縮)、1230(N3非対称伸縮)、1169(SO2対称伸縮)、989、1650−2800に水和された酸の吸収帯なし。
【0154】
実施例4:1,3−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)
1,3−シクロヘキサンジオールを使う以外は実施例1と同じ。
【0155】
実施例5:1,4−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)
1,4−シクロヘキサンジオールを使う以外は実施例1と同じ。
【0156】
実施例6:エチレンジオールビス(4−アジド−2−トリフルオロメチル−3,5,6−トリフルオロベンゾエート)
同じようにして、エチレングリコール(2.1ミリモル)およびトリエチルアミン(5.0ミリモル)を10mLの無水エーテルに溶解させ、10mLの無水エーテル中の2−トリフルオロメチル−3,4,5,6−塩化テトラフルオロベンゾイルに添加する。得られた塩化トリエチルアンモニウムの白色沈殿をろ過する。ろ液を3×20mLの水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、その後蒸発させて粗エチレンジオールビス(2−トリフルオロメチル−3,4,5,6−テトラフルオロベンゾエート)を回収する。その後、2.2mLの水および3.7mLのアセトン中のアジ化ナトリウム(150mg、2.3ミリモル)を2mLのアセトン中のI(1.1ミリモル)と反応させ、60℃のホットプレート上で一晩中攪拌する。蒸発により溶液を半分の体積に減らし、沈殿をろ過して1:5クロロフォルム−ヘキサン中で2回再結晶させる。
【0157】
(A)正孔輸送−および−電子遮蔽中間層または中間層の積層物を架橋して、中間層厚さおよび注入特性を正確に制御できるようにする:
実施例1(F8BT−エミッタLED):
a.あらかじめパターン化されたITOガラス基板からアセトン、イソプロパノール、および窒素ブローオフを使ってフォトレジストを除去する。その後、ITO表面をバレル型エッチング装置(Tegal Barrel Etcher 421、典型的な条件:圧力450ミリバール、電力150W)内で10分間酸素プラズマに露光する。その後、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(PEDT:PSS)をPEDT対PSSの比が1:15となるように配合した水性溶液からスピン成型して60−70nmの厚さの膜を得る。膜は150℃に設定したホットプレート上で15分間窒素下で焼き付ける。
【0158】
b.その後、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−アルト−[フェニレン−(N−p−2−ブチルフェニル)イミン−フェニレン])(TFB)の重量に対して1.8%のエチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(I)を加えた配合物を窒素下で0.9w/v%混合キシレン溶液からスピン成型して15nmの厚さの膜を得る。その後膜をフォトマスクを介して窒素下で2分間、膜表面上での輝度1mW/cm2で254nmの深紫外線照射に露光する。
【0159】
(1.アノードインターフェースにおける好ましい中間層ポリマーは正孔輸送および電子遮蔽特性を持っている。このポリマーはまた、動作にともなうインターフェースの電気特性を損なう発光ポリマーとの望ましくない電気化学反応に関与することなく安定である必要がある。例示的な中間層ポリマーとしてはTFBおよびポリ(トリアリールアミン)が挙げられる。
【0160】
(2.好ましいポリマー濃度は中間膜の望ましい厚さによって決定され、スピニング試験によって簡単に知ることができる。典型的には、10−20nmが目的の中間層厚さである場合、必要なポリマー濃度はポリマー粘度に依存して0.2−1w/v%であり、必要なスピン速度は2000−8000rpmである。あるいは、計器付きインクジェット印刷を使ってもよい。
【0161】
(3.好ましい架橋剤対ポリマーのモル比は、使用されるポリマーの数平均分子量およびその分布によって決定される。架橋剤は、膜中のポリマーの効果的な分子量をそれがもはや溶媒に溶解しなくなる点まで増加させることによって作用する。しかしながら、低分子量の種はもし存在するとしたらゲル限界に至ることはなく良好な溶媒にやはり浸出させることができる。従って、架橋剤比率またはポリマー分子量が減少するにつれて、保持される膜厚のフラクションはより小さくなる。典型的な膜保持(またはゲル化点)特性を図1に示す。数平均分子量が105の場合、50%より大きい妥当な膜保持とするのに必要な架橋剤比率は1.5−2w/w%である。数平均分子量が106の場合、必要な比率は0.3−0.6w/w%である。選択する比率は所望の架橋レベルが確実に得られる最小の値にすべきである。
【0162】
(4.好ましい照射線量は10−100mJ/cm2である。必要な最小の線量はフィルタ効果を介して254nmでポリマーが本来示す吸収性に左右される。これは線量シリーズ試験によって簡単に決めることができる。
【0163】
(5.好ましい照射波長は254nmまたは248nmである。これは低圧水銀ランプ源(254nm)またはKrFエキシマレーザ源(248nm)から都合よく得られる。
【0164】
(6.好ましい正孔注入中間層厚さはデバイスの所望領域への電子−正孔の取り込みを最適化することによって支配でき、実験によって知ることができる。典型的には、多数のポリフルオレン由来エミッタの場合、最適な厚さは5−20nmの範囲であり、これは本願に開示する方法によって簡単に達成される。膜厚は5−300nmの間で正確に制御できる。典型的な結果を図2に示す。以下の実施例3も参照のこと。
【0165】
c.基板はその後必要に応じて、180℃に設定したホットプレート上で窒素下で60分間焼き付ける。
【0166】
d.膜はその後、混合キシレンにより回転チャック上で洗浄する(10秒間浸漬後、8000rpmでスピンオフ)。
【0167】
e.その後、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−アルト−[ベンゾ−2−チア−1,3−ジアゾールー4,7−ジイル])(F8BT)を1.0w/v%トルエン溶液から窒素下でスピン成型して厚さ65−70nmの膜を得る。
【0168】
f.基板はその後、120℃に設定したホットプレート上で窒素下で3分間、焼き付ける。
【0169】
g.厚さ3nmのCaに続いて厚さ120nmのAlをベース圧2−4×10−6ミリバールでシャドウマスクを介して膜の上へと蒸発させる。
【0170】
デバイスを順方向バイアス(カソードとしてCa/Al、アノードとしてITO)で駆動させる場合、発光をともなう大きな順方向バイアスダイオード電流が得られる。デバイス特性について、図3および図4でTFB中間層のない類似デバイスと比較する。量子効率は15倍改善され、例えば1000cd/m2の場合の駆動電圧はTFB中間層がある場合で4.25Vから3.70Vに減少される。駆動電圧の改善は、デバイスの作動寿命を伴う大きなスケーリングのために重要である。本実施例では、正孔輸送中間層は正孔輸送/電子遮断層としてだけでなく界面電気化学に対する緩衝層としても作用する。その結果、作動寿命は10倍以上も長くなる。
【0171】
実施例2(F8BT−TFB−ブレンド−エミッタLED):
工程(e)の発光ポリマー層がF8BTおよびTFBを1:1でブレンドして1.4w/v%の混合キシレン溶液を用いたものである以外は、実施例1と同じである。
【0172】
作動寿命、量子効率、および所望の輝度とするための電圧は、良好に定義された正孔輸送および電子遮断中間層が10−15nmの範囲の厚さのアノードインターフェースに存在することによって、改善される。ブレンドの配合次第で、量子効率は電圧損失を伴うことなく20−100%の改善が見られた。このことは、たとえ正孔輸送ポリマーがブレンドに配合されたとしても、良好に定義された連続的な厚さ5−20nmの正孔輸送層をアノード端子に形成するとさらに性能および安定性が改善され得ることを示すものである。
【0173】
実施例3(F8BT−エミッタLED):
工程(b)のTFB中間層の厚さを5nmの解像度により10nmおよび30nmの間で制御する以外は、実施例1と同じである。中間層の厚さを原子力プロファイロメトリによって確認する。デバイスの電流密度、輝度および外部量子効率を図5、6、7にそれぞれ示す。本実施例は中間層の厚さを精密に制御することから得られる利点を示すために提示されるものである。その結果、デバイス性能を系統的に最適化することが可能となる。
【0174】
実施例4(積層正孔注入中間層):
第2の正孔輸送ポリマーのさらに別の層を中間層積層物の第2の層として使う以外は実施例1と同じである。ここで、選択されたこのポリマーはポリ(ビニルカルバゾール)(PVK)であって、PVKの重量に対して1.6重量%のIが配合される。混合物を窒素下で0.25w/v%のクロロフォルム溶液からスピン成型して厚さ10nmの膜を得る。膜はその後、膜表面上における輝度1mW/cm2でフォトマスクを介して254nmの深紫外線に窒素下で2分間露光される。
【0175】
(7.この第2の中間層ポリマーのアノードインターフェース(もし使われていれば)における好ましい性質は、第1の中間層ポリマーの正孔輸送レベルと発光ポリマーの正孔輸送レベルとの間の中間の正孔輸送レベルを提供すると同時に、いかなる達成可能な電子輸送レベルでも電子の漏えいをもたらすものは提供しないことである。このようにして、正孔輸送エネルギーレベルのはしごが設けられて発光ポリマー自身への正孔注入が容易となる。
【0176】
(8.もしくは、このポリマーを、動作にともなうインターフェースの電気特性を変えてしまう発光ポリマーとの望ましくない電気化学反応を抑制するためのキャップ層として使う。
【0177】
PVKは部分的にこれらの考察を満たすため、理想的ではない。それにもかかわらずPVKはTFBよりも良好に電子を遮断するため、そのおかげで低電圧効率が改善される。従って、本実施例はかかる積層中間層が適切なポリマーを使って有利に構築され得ることを確認するものである。
【0178】
(B)LEDにおけるLEP層の架橋およびフォトパターンニング:
実施例5(フォトパターン化OC1C10−PPV LED):
a.あらかじめパターン化されたITOガラス基板からアセトン、イソプロパノール、および窒素ブローオフを使ってフォトレジストを除去する。その後ITO表面をバレル型エッチング装置(Tegal Barrel Etcher 421、典型的な条件:圧力450ミリバール、電力150W)内で10分間酸素プラズマに露光する。その後、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(PEDT:PSS)をPEDT対PSSの比が1:15となるように配合した水性溶液からスピン成型して厚さ60−70nmの膜を得る。この膜を150℃に設定したホットプレート上で窒素下で15分間焼き付ける。
【0179】
b.その後、ポリ(2−メトキシ−5−(3,5−ジメチル)オクチル−1,4−フェニレンビニレン)(OC10−PPV)にOC1C10の重量に対して2%のエチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(I)を配合したものを0.5%w/v%混合キシレン溶液から窒素下でスピン成型して厚さ47nmの膜を得る。その後膜は、フォトマスクを介して窒素下で2分間、膜表面における輝度1mW/cm2で254nmの深紫外線照射に露光し、その後トルエンで現像する。
【0180】
c.基板はその後必要に応じて、200℃に設定したホットプレート上で窒素下で5分間焼き付ける。
【0181】
d.厚さ3nmのCaに続いて厚さ120nmのAlをベース圧2−4×10−6ミリバールでシャドウマスクを介して膜の上へと蒸発させる。
【0182】
デバイスを順方向バイアス(カソードとしてCa/Al、アノードとしてITO)で駆動させる場合、発光をともなう大きな順方向バイアスダイオード電流が得られる。デバイス特性について図8で架橋剤およびフォトパターンニングのない類似デバイスと比較する。両方の場合で同じような電流密度が得られる。従って、デバイスを介して電流を駆動する能力は損なわれない。量子効率はフォトパターン化されたデバイスについてはより劣るが、これは架橋剤のフラクションを0.5重量%未満へと減少させることによって元のレベルに回復させることができる。本実施例は、ここに記載される架橋プロセスがLEP層に適用され得ることを示すために提示されるものである。LEPからの必要不可欠なバイポーラ注入およびエレクトロルミネッセンスは、たとえ架橋剤の比率が比較的高くとも並びに膜厚が小さいため電流−電圧特性が特に注入端子に敏感となる場合でも、著しく損なわれることはない。従って、これらのデバイスは最適化されない。47nmというOC1C10−PPVの厚さは最適な60−65nmよりもかなり小さく、使用される架橋剤フラクションは必要とされる分(約0.5%)よりもかなり過剰である。
【0183】
(B)FETにおけるチャネル層の架橋およびフォトパターンニング
実施例6(架橋化/フォトパターン化P3HT−チャネル底部ゲートFET):
a.200nmのシリコン酸化物最上部誘電体層および金のソース−ドレイン端子パッドを持つあらかじめパターン化されたp+−ドーピングSi基板をバレル型エッチング装置(Tegal Barrel Etcher 421、典型的な条件:圧力450ミリバール、電力200W)内で10分間酸素プラズマに露光することによって清浄にし、その後CMOS級の水、イソプロパノールで洗浄し、そして窒素噴射中で乾燥させる。あらかじめパターン化されたチャネル長さは10μmでありチャネル幅は2ミリである。ヘキサメチルジシラザンを900rpmで30秒間基板上にスピンし、その後基板を120℃で2分間ホットプレート上で空気中で焼き付ける。
【0184】
b.その後、位置規則的なポリ(3−ヘキルチオフェン)(P3HT)の重量に対して5%のエチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(I)を配合したものを1.8%w/v%クロロフォルム溶液からスピン成型して厚さ50nmの膜を得る。その後膜は、膜表面における輝度1mW/cm2で254nmの深紫外線照射にフォトマスクを介して窒素下で2分間露光し、クロロフォルムで現像し、窒素によってブローオフする。
【0185】
c.デバイスはその後、2分間100℃でホットプレート上で窒素下でアニーリングする。
【0186】
このFETの伝達特性を図9に示す。しきい値ゲート電圧(Vth)は約−0Vである。ゲート電圧(Vg)がこのしきい値を越えたとき、チャネル導電性の強いターンオンが観察された。−30Vのドレイン電圧(Vds)および−50Vのゲート電圧(Vgs)のときに100μAの「オン」ソース−ドレインチャネル電流が得られる。ゲート電圧−50Vから+50Vの場合オン−オフ比は100よりも良好である。直線関係にあるIsd−Vgsの勾配から従来の数式により求められるFET易動度はほぼ3×10−2cm2/Vsである。架橋剤および光への露光が無い元のままのP3HTスピン成型膜の場合の典型的な易動度は10−1−10−2cm2/Vsである。順方向および逆方向走査特性は重複可能である。本実施例は、たとえかかる比較的高い架橋剤フラクションにおいてさえも本願記載の光架橋プロセスの後に所望の電界効果易動度を実質的に保持できることを証明するために提示するものである。電界効果易動度は、インターフェースに分離しがちな欠陥および不純物の存在に特に敏感である。この知見により、このアプローチが高い電界効果易動度を持つポリマートランジスタをパターンニングする実行可能な手段であることが実証される。実際のデバイスでは、FETトランジスタはガラス、ポリエチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)または他のポリマー材料などの他の基板上に構成され、ソース、ドレイン、ゲート端子としては導電性ポリマーベースの材料などの他の材料が使われる。また、使用される電界効果ポリマーの分子量も本願で使われたもの(約30,000)よりも一桁ほど大きくなる。従って、使用される架橋剤フラクションはさらに1%未満まで減少し、本プロセスの有利な特徴がさらに強化される。
【0187】
実施例7(架橋化/フォトパターン化TFB−チャネル最上部ゲートFET):
電界効果ポリマーをTFBと取り替え、TFBの重量に対して1.3%のエチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(I)をブレンドし、メシチレン中で1.8w/v%の濃度で使用する以外は、実施例6と同じである。これを1600rpmで60秒間基板上で回転させて30nmの膜を得る。基板には20nmの金のソースおよびドレイン端子があらかじめパターンニングされており、チャネル長さは5μmでありチャネル幅は10ミリ(くし歯状アレー)である。その後、基板を窒素中でフォトマスクを介して2分間254nm照射に露光してTFB膜を架橋し、10秒間メシチレンに浸漬して現像した後6000rpmで30秒間スピンオフする。
【0188】
メシチレン中のビス(ジメチルビニルベンゾシクロブテン)ジシロキサンモノマー(米国ミシガン州のDow Chemical Company社製CycloteneR)を12.7重量/体積%の濃度に希釈して6000rpmで60秒間TFB膜上にスピンして、200nmの膜が得られる。なお、もしTFB膜が架橋されていなければ、このBCBベースのモノマー/メシチレン溶液を使うと形成されたTFB層はたちまち再溶解するであろう点に留意すること。その後基板を290℃で10分間ホットプレート上で窒素下で焼き付ける。
【0189】
PEDT:PSS(ドイツLeverkusenのHC Starck社より「Baytron P」(登録商標)として販売されている)を塗布して実施例1に記載した最上部ゲート電極を得る。
【0190】
このデバイスの伝達特性を図10に示す。しきい値ゲート電圧(Vth)は約−30Vである。これはTFB電界効果ポリマー中の痕跡のイオン性不純物によって大きく制限される。ゲート電圧(Vgs)がこのしきい値を上回ったときチャネル導電性の強いターンオンが見られる。ドレイン電圧(Vds)が−20Vで(Vg−Vth)が−30Vの場合、数マイクロアンペアの「オン」のソース−ドレインチャネル電流(Isd)が得られる。オンオフ比は1000よりも良好である。直線関係にあるIsd−Vgsの勾配から従来の数式により求められるFET易動度は約4×10−4cm2/Vsである。この実施例は、光架橋化電界効果ポリマーが、さもなければ最初に形成されたポリマー膜の一体性を破壊するであろう広範囲の後続の溶媒加工工程(例えばゲート誘電体、中間レベル平坦化層、相互接続子などの成膜)と有利に組み合わされることができることを示すために提示するものである。元のスピン成型TFB膜の電界効果易動度は10−3−10−4cm2/Vsである。従って、実施例6のように易動度が損なわれることはなく、本願で説明する方法およびプロセスが大きく異なる特性を有する広範囲の半導体ポリマーと適合することが証明される。
【0191】
実施例8(ドナー−アクセプタ多層光導電性デバイス):
正孔輸送ドナーポリマー(「PFB」)および電子輸送アクセプタポリマー(「F8BT」)の複数の交互の層を、横方向のくし歯状アレーがパターンニングされたガラス基板上に作成する。ドナー−アクセプタという用語をここで援用するのは、光励起がこれら2つのポリマー間のインターフェースで分離して、インターフェースのPFB側に正孔を残しインターフェースのF8BT側に電子を残すことを示すためである。それぞれの層は厚さが約40nmである。多層形成のそれぞれの段階で収集される紫外可視吸収スペクトルを図12に示す。全体の膜厚が光学的な厚さ尺度に近づくにつれて透明ウィンドウにおける光学的散乱がなくなり干渉縞パターンが規則的に発生することから分かるように、膜の品質は良好である。事実、スペクトルはPFBまたはF8BTの膜を多層積層物に加えるごとに体系的に構築されていく。このことは数多くの後続ポリマー層が、厚さを制御した状態でかつ下にある層の一体性を損なうことなく成膜され得ることを意味する。これは本発明で記載する架橋部分技術が無ければ達成不可能である。
【0192】
励起子拡散距離は有機材料中では制限されるため、個々のドナーおよびアクセプタ膜厚を励起子拡散距離(典型的には20nm)よりも小さくして最大の電荷キャリア濃度が得られるようにすることで大きな光導電性感度が提供されるようにすると有利である。この可能性を試験するために2つの多層積層物が製造され、1つの積層物ではF8BTの厚さが40nmであり第2の積層物では80nmであった(図13の挿入図に示すデバイス構造)。PFB層の厚さは両積層物で同一に維持された(約40nm)。積層物を、F8BT成分だけを吸収する457nm(Arイオンレーザー)で照射した。積層物における累積F8BT厚さは積層物を横切るすべての光が実際に吸収される厚さとされた。得られた光電流図を図13に示す。この図は、より薄いF8BT層ではドナー−アクセプタ積層物の光導電性が2倍に増加することを示し、予想と一致する。
【0193】
本実施例は、多層化有機電子素子を製造して有利に相補的なドナー−アクセプタおよび電子−正孔輸送特性を利用する可能性を開くアプローチの有用性をさらに示すために提示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】図1は、異なる架橋剤比率での典型的な膜保持(またはゲル化点)特性を示す。
【図2】図2は、膜厚と膜保持との間の関係を示す。
【図3】図3は、TFB中間層を備えるデバイスのデバイス特性を示す。
【図4】図4は、図3で報告されているデバイスに類似するがTFB中間層は備えていないデバイスのデバイス特性を示す。
【図5】図5は、実施例3で測定された電流密度対ダイオード電圧を示す。
【図6】図6は、実施例3で測定されたルミネッセンス対ダイオード電圧を示す。
【図7】図7は、実施例3で測定された外部量子効率対ダイオード電圧を示す。
【図8】図8は、実施例5によるデバイスと、架橋剤がない類似デバイスとの間のデバイス特性の比較を示す。
【図9】図9は、実施例6によるFETの伝達特性を示す。
【図10】図10は、実施例7によるデバイスの伝達特性を示す。
【図11】図11は、2つの異なるポリマーにおける架橋部分エチレンジオールビス(p−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)についてのフォトルミネッセンス効率を示す。露光条件は、254nm Hg線;1mW/cm2、2分である。
【図12】図12は、実施例8で記載された多層形成中に収集された紫外−可視吸収スペクトルを示す。
【図13】図13は、実施例8で記載されているデバイスについての光電流図を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーデバイスの製造方法に関する。より詳細には、本発明はポリマーデバイスを製造する方法においてポリマー層を成膜する方法に関する。本発明はまた、本発明によって製造され得る電子デバイスおよび光電子デバイスのようなデバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーデバイスにはポリマー発光ダイオード(LED)、光検出器、光起電力素子(PV)、および電界効果トランジスタ(FET)がある。かかるデバイスは典型的には電極間に配置される1つ以上の半導体ポリマー層を備えている。半導体ポリマーは主鎖または側鎖における部分的または実質的なπ共役を特徴とする。
【0003】
半導体ポリマーは現在多数の光学デバイスに頻繁に使用されており、WO90/13148号に開示されているようなポリマー性発光ダイオード(PLED)、電界効果トランジスタ(FET)、WO96/16449号に開示されているような光起電力デバイス、および米国特許第5523555号に開示されているような光検出器などがあげられる。
【0004】
典型的なPLEDは基板を備え、基板上にはアノード、カソード、およびアノードとカソードの間に配置され少なくとも1つのポリマー性エレクトロルミネッセント材料からなる有機エレクトロルミネッセント層が支持されている。用いると、アノードを通してデバイスに正孔が注入され、カソードを通して電子がデバイスに注入される。正孔および電子は有機エレクトロルミネッセント層で結合して励起子を形成し、これが照射崩壊を起こして発光する。他の層がPLEDに存在してもよい。例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDT/PSS)のような有機正孔注入材料をアノードと有機エレクトロルミネッセント層との間に設けて、アノードから有機エレクトロルミネッセント層への正孔の注入を助けるようにしてもよい。
【0005】
トランジスタ、具体的には電界効果トランジスタ(FET)は三端子デバイスであり、ソース端子、ドレイン端子、およびゲート端子を備えている。半導体層(チャネル)はソース端子とドレイン端子とをつなぎ、それ自身はゲート誘電体と呼ばれる絶縁層によってゲート端子から隔てられている。ポリマートランジスタでは、半導体層は半導体ポリマー、典型的にはπ−共役有機ポリマーから作られる。この層はデバイス中で前駆体ルートによりまたは直接に溶液処理によって成膜される。
【0006】
ソース端子およびドレイン端子間に電圧が印加される。電界効果トランジスタではさらにゲート端子に対して電圧が印加される。この電圧が電界を形成しこれがゲート誘電体のすぐ下に存在する半導体層に電荷キャリアを蓄積または空乏させる。そして今度はこれがソース端子からドレイン端子への電流の流れを制御して所定のソース−ドレイン電圧となる。
【0007】
フォトトランジスタの場合、適切な波長の光がチャネルに当てられる。光子は正孔−電子対を生み出すことができこれが分裂してソースおよびドレイン間の電流の流れに寄与し、その結果ソース−ドレインの導電性を変調させる。
【0008】
WO96/16499号に記載されているように、典型的な光起電力デバイスは、第1および第2の主表面を有する光応答領域および光応答領域の第1および第2主表面のそれぞれに設けられた第1および第2の電極を備える。光応答領域は第1の半導体ポリマーを備えており、これは第1の半導体ポリマーから相分離されている第2の半導体ポリマーと必要に応じてブレンドされている。短絡した状態では、光応答領域内に内部電界が存在している。内部電界の向きは、電子が最も低い作業機能の端子、一般にはアルミニウム、マグネシウムまたはカルシウム電極に向かって移動し集められると同時に、正孔はインジウム酸化スズ電極のようなより高い作業機能を持つ電極に向かって移動するようになっている。このようにして、光電流が検出され、これを使って例えば太陽電池のように電力を提供でき、または画像センサ用の画像のような光パターンの一部を検出できるようになる。
【0009】
米国特許第5,523,555号に記載されているように、典型的な光検出デバイスは、異なる作業機能を持つ第1および第2の電極層の間に光応答層が配置されている。光応答層は半導体ポリマーまたはポリマーのブレンドからなる。光応答層は複数あってもよい。バイアス回路系が接続されていて第1および第2の電極層の間にバイアス電圧を印加するようになっている。検知回路系が接続されていて、ポリマー層に対して照射を行った結果ポリマー層を通って第1および第2の電極層の間に流れる光電流を検出しつつ、バイアス電圧が印加される。バイアス電圧は電極間の距離に対して選択される。
【0010】
半導体ポリマーは広範囲の光物理的特性(π−π*バンドギャップおよびフォトルミネッセント収率など)、光学特性(屈折率およびその分散など)、電子特性(正孔−電子移動エネルギーレベル、および正孔−電子易動度など)、および加工特性(溶媒可溶性、相転移温度、結晶性および相転移温度など)を示すことができる。これらの特性の大半はポリマーの化学構造によって制御される。この点について、これらの特性の大半はポリマーの主鎖単位および側鎖を適切に選択することによってある範囲内で制御できる。
【0011】
上述のポリマーデバイスにおける単一のポリマーまたは複数のポリマーは、デバイス製造中の基板への成膜を容易にするため、一般的な有機溶媒に可溶であることが好ましい。この可溶性の主な利点の1つは、ポリマー層を溶液加工、例えばスピンキャスティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ディップコーティングなどによって製造できる点である。このようなポリマーの例は、例えば、Adv. Mater. 2000 12(23) 1737-1750に開示されており、可溶性基を持つフルオレン、インデノフルオレン、フェニレン、アリーレンビニレン、チオフェン、アゾール、キノキサリン、ベンゾチアジアゾール、オキサジアゾール、チオフェン、およびアリールアミンのような芳香族または複素環式芳香族単位から形成されている少なくとも部分的に共役している主鎖を持つポリマー、およびポリ(ビニルカルバゾール)のような非共役主鎖を持つポリマーが挙げられている。ポリフルオレンのようなポリアリーレンは良好な膜形成特性を持っており、得られるポリマーの位置規則性を高度に制御できるスズキまたはヤマモト式重合法によって簡単に作ることができる。
【0012】
あるデバイスでは、単一の基板表面上に異なるポリマーの多重層すなわち積層を成形することが望ましい。例えば、これは別々の機能、例えば電子または正孔電荷移動、ルミネッセンス制御、光子封鎖、励起子封鎖、光誘導電荷生成、および電荷阻害または貯蔵を最適化する場合が該当するであろう。
【0013】
この点について、かかるポリマーの多重層を製造して電気的および光学的特性を例えばポリマー積層物全体にわたって制御できると便利であろう。これはデバイス性能を最適にするのに有用である。最適なデバイス性能は、例えば電子および正孔移動レベルオフセット、屈折率の不一致、およびインターフェース全体にわたるエネルギーギャップ不一致を注意深く設計することによって達成できる。かかる複合構造は例えば1つのキャリアの注入を容易にし、同時に反対のキャリアの抽出を阻害および/または励起子の消光インターフェースへの拡散を防止する。これにより、かかる複合構造は有用なキャリアおよび光子封鎖効果を提供することができる。
【0014】
デバイス構造に保護層を提供するために多重層を製造できることもまた有用である。この点に関して、1つの例をとると、PEDT/PSSはPLEDのエレクトロルミネッセント層に対して悪影響を及ぼすと考えられている。理論に束縛されることを望むわけではないが、これはPEDT:PSS層とエレクトロルミネッセント層(すなわち、正孔および電子が結合して励起子を形成している層)との間の電気化学反応によるものと考えられる。これによりルミネッセンスが消光し、必要とされる駆動電圧が累進的に増大すると考えられる。従って、PEDT:PSSとエレクトロルミネッセント層との間に保護層を提供することが望ましい。
【0015】
しかしながら、ポリマー積層の作成は一般的にはささいなことではない。特に、最初に成形または成膜された層が後続の層に使われる溶媒に対して可溶性を持つと問題となり得る。これは後続のポリマー層の溶液中での成膜が前の層を溶解しその統一性を破壊する可能性があるためである。
【0016】
この問題点を克服するための1つの選択肢は前駆体ポリマーシステムを使って作業することである。PPV(ポリフェニレンビニレン)およびPTV(ポリチエニレンビニレン)の前駆体システムはこの分野では公知である。
【0017】
半導体ポリマーの層は、可溶性ポリマー前駆体を成膜し、その後化学的に不溶性のエレクトロルミネッセント形態に変換することによって形成できる。例えば、WO94/03030号は、不溶性のエレクトロルミネッセントポリ(フェニレンビニレン)を可溶性の前駆体から形成し、そしてこの不溶性層の上にさらに別の層を溶液から成膜する方法を開示している。
【0018】
しかしながら、ポリマーデバイス中のポリマーを、不溶性前駆体ポリマーから形成され得るこのような種類のポリマーに限定することは明らかに望ましくない。さらに、前駆体ポリマーに必要な化学変換プロセスは過酷な処理条件、および最終デバイス内の前の層の性能を害する可能性のある反応性副産物をともなう。
【0019】
この問題点を克服するためのさらに別の選択肢は、溶解性挙動が大きく異なるポリマーを使うことである。例えば、水またはアセテート溶媒に可溶のポリマーとともに炭化水素溶媒に可溶のポリマーを使うと限られた2層または3層の積層物が作成できる。この点に関する重要な例としては、芳香族炭化水素溶媒に可溶でない最初に形成された導電性PEDT:PSS膜の上に芳香族炭化水素溶媒から共役ポリマーを成膜することが挙げられる。再び、このやり方は多層積層物に使えるポリマーの種類を厳格に限定する。なぜなら、ほとんどの共役ポリマー系は同じ一連の芳香族炭化水素溶媒(キシレンおよび他の置換ベンゼンなど)およびゆるやかな極性の炭化水素溶媒(テトラヒドロフランおよびハロゲン化溶媒など)に溶解する特徴があるからである。
【0020】
積層で使用できるポリマーが限られていることにより、デバイス構造の多くの概念を試験または実施することができないことがわかるであろう。かかる状況下では、デバイス構造体のさらなる開発が著しく妨げられる。
【0021】
WO96/20253号は、概して架橋結合を含むポリマーを加工し得るルミネッセント膜形成溶媒を記載している。薄膜は一般的な溶媒への溶解に耐えるためこれによりさらなる層を成膜でき、これによりデバイス製造が容易になると記載されている。ポリマー主鎖に結合するアジド基を使うことが熱による架橋の一例として挙げられている。7頁に示されている一般式では、ポリチオフェンコポリマーは5モル%から66モル%の範囲のレベルの架橋部分を持つ繰返し単位を含んでいる。
【0022】
米国特許第6107452号は多層デバイスの形成方法を開示しており、末端ビニル基を備えるフルオレンを含むオリゴマーを溶液から成膜し、架橋化して不溶性ポリマーを形成し、その上にさらに別の層を成膜している。ビニル単位は少なくとも25%を上回るモル比で存在しなければならない。このことは米国特許第6107452号で、架橋結合を生成するメカニズムによって決定されている。
【0023】
同様に、KimらによるSynthetic Metals 122 (2001), 363-368は、トリアリールアミン基およびエチニル基を備えたポリマーを開示し、ポリマーは成膜後架橋される。この文献はポリマーの繰返し単位の一部として100モル%存在しているエチニル基を開示している。
【0024】
ポリマー積層物の形成に使う以外に、成膜後にポリマーを不溶性とすることでネガ型リソグラフィーも可能となる。標準的なネガ型フォトレジストリソグラフィーによると、架橋系の臨界負荷を含むポリマー膜、しばしばポリスチレンまたはポリ(メチルメタクリレート)のポリマー膜が基板上に成形される。選択された領域がマスクパターンを通じて露光される。露光された領域は架橋反応を介して不溶性となる。露光されなかった領域は可溶性のまま残り、続いて現像溶媒系で洗浄することによって除去され、これによりマスクのネガ画像がフォトレジスト膜に転写される。
【0025】
この点に関して、赤色、緑色、青色のエレクトロルミネッセント材料をパターン化することによってフルカラーのディスプレイを形成することが望ましい。基板上に形成された個々のFETまたは光検出器素子をパターン化し分離することもまた望ましい。公知の方法としては、例えば欧州特許第0880303号に開示されているようにインクジェット印刷によって、またはシャドウマスクを介して蒸発可能な材料を蒸発させることによって、溶液加工可能な材料、特にポリマーをパターン化成膜する方法が挙げられる。
【0026】
1つの方法としてはポリマーの側鎖に重合可能な部分を組み込み、照射感知開始剤を介して重合(架橋)反応を開始することである。この方法の一例はNature 421, 829-833, 2003に記載されており、適切な照射露光による成膜後、光酸発生剤によって架橋されるオキセタン側鎖基を有する赤色、緑色、および青色のエレクトロルミネッセントポリマーの層を成膜することによってフルカラーディスプレイを形成する方法を開示している。モノマーを含むオキセタンは例示されているポリマーに25モル%のレベルで組み込まれる。それぞれの層の選択された領域だけをマスクを介して紫外線照射に露光し選択された領域を架橋させる。露光されなかった領域のポリマーは可溶性のまま残り、洗浄除去してパターン化層を残すことができる。しかしながら、開示されているように、この方法では電子および正孔易動度が低いポリマーしか得られない。さらにオキセタンは保存中微量の酸触媒の存在下で自己重合しやすい。
【0027】
別のやりかたとしては、ポリマー−溶媒配合物に低分子量の照射感知架橋剤を用いることが挙げられる。
【0028】
この点に関して、ビスアリールアジドを使用することがT Iwayanagi, T Kohashi, S Nonogaki, T Matsusawa, K Douta, H. Yanazawa, IEEE Transactions on Electronic Devices ED25 (1981) PP 1306に開示されている。この文献は、リソグラフィー用ネガ型深UVレジストとして、芳香族アジド化合物およびフェノール樹脂からなる感光組成物を開示している。アジド化合物は5〜30重量%の範囲でフェノール樹脂と混合される。
【0029】
さらに、S. X. Cai, D. J. Glenn, M. Kanskar, M. N. Wybourne & J. F. W. Keanaの「Development of highly efficient deep-uv and electorn beam mediated cross-linkers: synthesis and photolysis of bis(perfluorophenyl) azides」Chemistry of Material, 6 (1994) pp. 1822-1829には、ネガ型レジスト配合物のために複数のビス(パーフルオロフェニレンアジド)を使うことが開示されている。この開示では、ビス(パーフルオロフェニレンアジド)が従来のリソグラフィーポリマーであるポリ(スチレン)とブレンドされる。この文献はポリマーデバイスは開示していない。
【0030】
従って、架橋剤を使用することはネガ型レジスト電子ビームおよび光リソグラフィーの分野では公知であるが、ネガ型リソグラフィーレジスト(NLR)配合物の要件および半導体ポリマー(SP)用の架橋可能な配合物の要件はさまざまに異なっている。
【0031】
(1)NLR配合物は典型的には非吸収ポリマーマトリックスと、所望の照射に感光する架橋剤システムとを備えている。ポリマーマトリックスは目的とする照射波長を実質的に透過させるため、それ自身は架橋剤システムが感光する必要のある分光波長を要求することはない。従って、架橋剤システムの分光感度は本質的に選択した照射波長によって決定される。これに対し、SPは可視および紫外波長領域における強い光吸収帯によって特徴づけられる。かかる吸収特徴はデバイス中のSPの特性と有用性の基本である。それらの主要な吸収帯の吸収強度はかなり大きいため、対応する吸収深度は狭くSP膜はこれらの波長では実際には不透明である。例えば、この1/e吸収深度(または等価的に、照射透過深度)はほとんどのSPについて典型的には帯最大値で50nm未満である。従って、架橋システムは、制限された透明ウィンドウに適合した分光感度をそれぞれのSPにとっての強い吸収帯の間に備え持つのが有利である。この要件を満たさない架橋システムは膜の最上部の層を架橋するに過ぎず、従ってSPにおける有用性が限られる。さらに、SPが実質的に非吸収性である波長を使用して付随的な光誘導酸化および他の反応を避けることができることも有利である。
【0032】
(2)NLR配合物は半導体デバイスではアクティブ層としては使用されない。これらは犠牲マスク層として使用されるためデバイスで使用される架橋可能なSP配合物の厳格な要件が課せられることはない。特に、SP配合物においては、架橋剤システムはデバイスの性能を劣化させる可能性のある大きな濃度の電子トラップ、正孔トラップまたは励起子トラップを導入すべきではない。例えば、いくつかの公知の光生成酸(photogenerated acid; PGA)で化学的に増幅されたレジストシステムは電荷輸送および共役ポリマーのルミネッセンス特性を著しく妨げるPGA残留物を残す。
【0033】
照射感光性架橋剤として非フッ素化ビス(フェニルアジド)を使って導電性ポリマーPEDT:PSSをベースとするネガ型フォトレジストを作ることが近年、F. J. Touwslager, N. P. Willard and D. M. de Leeuw, 「I-line lithography of poly(3, 4-ethylenedioxythiophene) electrodes and application in all-polymer integrated circuits」Aplied Sphysics Letters, 81 (2002) pp. 4556-4558に開示されている。これは電極および相互接続を形成するための、半導体性とは異なる、導電性ポリマーラインのフォトリソグラフィーパターンニングを記載している。PEDT:PSSは365nmのI−ライン照射に露光するとビス(フェニルアジド)と架橋する。この方法の主な特徴は、(WO96/20253のアジド方法と同じく)材料の1種としてのフェニルアジドが架橋剤としてはかなり非効率的であり、高濃度で組み合わせることを必要とすることである。さらに、架橋反応の数多くの副産物があり、それらの多くはデバイス性能にとって有害である。
【0034】
同様の方法が米国特許第2002/106529号に記載されており、エレクトロルミネッセント材料をポリマー性バインダと配合または結合させる。バインダポリマーは架橋させてよい。光架橋可能な基を持ついくつかのバインダポリマーは5頁に開示されているように一般式(9)で表わされる繰返し単位を持っている。明らかに、これらの材料は光架橋可能な基のモル%含有量が高い。あるいは、光架橋部分をバインダポリマーと混合し、この実施態様では、バインダポリマーの100重量部に対して5から50重量部の量のこの薬剤を混合すべきであることが教示されている。
【0035】
従来技術において開示されているシステム、特に上述のApplied Letters Physicsの開示、米国特許第2002/106529号、WO96/20253号、および米国特許第6107452号に開示されているシステムは、デバイス内に使用するには特に適しているわけではない。開示されている架橋プロセスは重合または2つの架橋部分の間の特定の結合に基づいている。これが効率的に起こるには、架橋剤部分は非常に高い負荷(実質的に5モル%より大きい)で存在しなければならない。架橋剤部分自身の負荷が高いことまたは架橋剤部分の反応の副産物はデバイス層における効率的な電荷キャリア輸送の妨げとなりやすい。さらに架橋剤部分はその希釈効果および無秩序効果により間接的に効率的な電荷キャリア輸送を妨げる可能性がある。「希釈効果」によりとは、最終生成物の架橋化部分の負荷が増加するにつれてポリマー中の共役セグメントの相対的濃度が低下する結果生じる効果を意味する。「無秩序効果」によりとは、架橋化部分の負荷が高いために最終的な架橋化ポリマーの主鎖がその平面からねじれることを意味する。その結果、デバイスの駆動電圧は対応して高くなり、それらの作動寿命が短くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
以上を鑑みると、最初に成形または成膜されるポリマー層が後に続く加工工程に使われる溶媒中で不溶性となるさらに別のポリマーデバイス製造方法を提供する必要性がまだ残っていることが理解されるであろう。
【0037】
かかる状況下で、本発明の目的は、好ましくは高い性能と両立できるポリマーデバイス製造の新規の方法を提供することである。さらに本発明の目的は、この新規の方法によって得られるポリマーデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
この点に関して、本発明者らは驚くべきことに、これまで知られていなかった低濃度の架橋部分(5モル%未満)をデバイス製造における半導体層に良好に使えることを見出した。架橋部分は半導体ポリマーと混合するかまたはポリマー主鎖または側鎖の一部として使用して、架橋化部分の濃度が低い架橋化ポリマー生成物を形成する。さらに、本発明者らはこの低濃度の架橋化部分は実質的にポリマーデバイスのポリマーの性能を劣化させないことを見出した。
【0039】
かかる状況下で、本発明の第1の側面では、以下の工程を備えるポリマーデバイスを形成する方法であって、
(i)ポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を基板上に成膜して層を形成する工程;および
(ii)工程(i)で形成された層を不溶性架橋化ポリマーを形成するような条件下で硬化する工程;
架橋部分が、溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の範囲の量で工程(i)に存在することを特徴とする方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
架橋部分は工程(i)で成膜される溶液中のポリマーまたはオリゴマーと混合してよい。あるいは、架橋部分は溶液中のポリマー/オリゴマーの主鎖の一部またはポリマー/オリゴマーに対する側鎖の一部であり得る。
【0041】
架橋部分は工程(i)で、溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の範囲のレベルで、好ましくは0.05から5モル%未満の範囲のレベルで、より好ましくは0.05から3モル%の範囲で、もっと好ましくは0.1から2モル%の範囲のレベルで、そしてさらにもっと好ましくは0.1から1モル%の範囲のレベルで溶液中に存在する。
【0042】
架橋部分が溶液中のポリマーまたはオリゴマーと混合される場合、架橋部分が存在するレベルは以下の式に従って簡単に測定できる。
ncrosslinker/(ncrosslinker + npolymer) × 100
ここでncrosslinkerは架橋部分のモル数であり、npolymerはポリマーまたはオリゴマーの繰返し単位のモル数である。式AxByC(1-x-y)に従って書ける無作為のまたは交互のコポリマーについては、および式AxByCzに従って書けるブロックコポリマーについては、本発明の目的ではポリマーの繰返し単位はA、B、およびCとなるように定義する。
【0043】
以下に示す3つの例(a)、(b)、(c)では、npolymerは(Aのモル数)+(Bのモル数)+(Cのモル数)である。以下に示す例(a)、(b)(c)のそれぞれにおいて、npolymerは(6+6+6)=18である。単なる例として、もし1モルの架橋部分がポリマー(a)、(b)、(c)のいずれか1つと組み合わせて溶液中に存在していれば、架橋部分は1/(1+18)x100=5.26モル%の濃度で存在することになる。
(a)ABCBBACACCBAACBCBA
(b)ABCABCABCABCABCABC
(c)AAACCCBBBCCCAAABBB
【0044】
架橋剤部分の相対数および繰返し単位はミクロ分析またはNMRによって測定できる。
【0045】
架橋部分がポリマーまたはオリゴマー主鎖または側鎖の一部である場合、本発明の目的では、架橋部分が存在すべきであると定義されるレベルは以下に示すように測定できる。
【0046】
ポリマーまたはオリゴマーが下記構造の1つを有する繰返し単位を含んでいると考えると、
【化3】
(ここでRは炭化水素からなるポリマーまたはオリゴマーの主鎖中の繰返し単位であり、Xは架橋部分である)、架橋部分が存在するレベルは次のように測定される。
ncrosslinker/(ncrosslinker+ npolymer) × 100
ここでncrosslinkerは架橋部分Xのモル数であり、npolymerはポリマーまたはオリゴマーの繰返し単位のモル数である。
【0047】
工程(ii)で形成される不溶性架橋化ポリマーは0.05から5モル%の架橋化部分を含むことになる。好ましくは、架橋化部分は、工程(ii)で形成される層の不溶性架橋化ポリマーのモル総数に対して、0.05から5モル%未満の範囲の量で存在し、より好ましくは0.05から3モル%、さらに好ましくは0.1から2モル%の範囲の量、もっと好ましくは0.1から1モル%の範囲の量である。
【0048】
不溶性架橋化ポリマーが下記構造の1つを有する繰返し単位を含むと考えると、
【化4】
(ここでRおよびR’は架橋化ポリマーの主鎖中の繰返し単位であり、X’は架橋化部分である)、架橋化部分が存在するレベルは、
ncrosslink/(ncrosslink+ npolymer) × 100
として測定されるものとする。
【0049】
ここでncrosslinkは架橋化部分X’のモル数であり、npolymerはポリマーの繰返し単位のモル数である。
【0050】
本発明の方法は、ポリマー膜成膜後これを架橋化して、1つのプロセスサイクルで例えば約1nmから約500nmまでのどのような所望の膜厚でも得られるようにする簡単な工程を提供する。これは非常に用途が広く一般的なプロセスである。本発明の方法では、このプロセスは多くの場合、高濃度の電荷キャリアトラップまたは励起子トラップを導入することなく実現できる。その結果、広範囲の実用的なポリマー対ポリマー複合構造を製造し、これらを有利にポリマーデバイス、特に発光ダイオード、フォトダイオード、および電界効果トランジスタに組み込むことが可能である。本発明の方法はまたポリマー膜をパターンニングするための新規の道をも開くものである。
【0051】
概略として、本発明の方法によって定義されるような一般的な戦略を使って実用的で本質的に無限の多数積層物およびパターン化ポリマー膜を製造することができる。
【0052】
図らずも、本発明者らはこのような低レベルで架橋を行うと半導体ポリマー層の電気的および光電子的機能を著しく損なう「致命的な」欠陥または副産物を実質的に生み出すことはないことを見出した。
【0053】
工程(ii)での硬化は電子ビーム照射によって行ってよい。しかしながら、好ましくは、硬化条件は不活性雰囲気中での短波長照射への露光、より好ましくは不活性雰囲気中での深紫外線照射への露光から成る。さらに好ましくは、深紫外線照射の波長は200nmから400nmの範囲、より好ましくは245nmから370nm、さらに好ましくは250nmから260nmである。特に好ましい波長はHg低圧ランプから得られる約254nmであり、また例えばKrFエキシマレーザーから得られる248nmである。かかる状況下で、架橋部分は上述の波長の短波長照射に感光することが好ましい。
【0054】
工程(i)で成膜される溶液がオリゴマーを含む場合は、工程(ii)での硬化はオリゴマーを重合化すると同時に架橋化して不溶性架橋化ポリマーを形成するのがよい。
【0055】
有利なことに、半導体ポリマーは、露光が不活性雰囲気で行われる限り、露光に必要とされる実際の深紫外線量に対して一般に安定であることがわかった。
【0056】
本発明者らは、多くの主要な半導体ポリマー(ポリチオフェン、ポリアリールビニレン、ポリフルオレンおよびそれらのコポリマー)が思いがけず約200−300nmの深紫外線で共通の透明ウィンドウを共有することを見出した。この分光特性は以下に記載する好ましい架橋部分の感光スペクトル、および市販の光源にも有利に十分に適合する。
【0057】
好ましい架橋部分はフッ素化アリールアジドから成る。フッ素化アリールアジド中のアジドにオルト位の水素原子がないことがさらに好ましい。このためには、いくつかの実施態様では、フッ素原子をアジドにオルト位のいずれの位置にも配置することが好ましい。
【0058】
より好ましくは、架橋部分はパーフルオロアリールアジドから成り、更に好ましくはパーフルオロフェニルアジドまたはパーフルオロナフチルアジドから成る。
【0059】
第1の実施態様では、工程(i)で特に好ましい架橋部分を溶液中のポリマーまたはオリゴマーと混合すると、有利なことに、架橋反応は架橋部分とポリマーまたはオリゴマー単位との結合形成反応をともなうというメカニズムを介して架橋が進行し、これは架橋部分自身同士の結合形成反応とは異なる。言い換えれば、工程(ii)では架橋部分は実質的に自己結合または自己重合はしない。本発明者らは上述の能力を持つ架橋部分をかなりの低濃度で有利に使えることを見出した。
【0060】
上述のような好ましい架橋部分は工程(ii)では実質的に自己結合または自己重合することはない点に留意すべきである。しかしながら、かかる架橋部分は自己結合または自己重合する能力を持っていてよい。本発明の1つの実施態様ではこれらが本発明の方法の工程(ii)では実質的にそうしないことがただ単に必要なだけである。
【0061】
本第1の実施態様において、さらに好ましい架橋部分は一般式Iで示される:
N3−ArF−N3 I
ここでArFは置換または非置換フッ素化アリール基からなる。
【0062】
より好ましい架橋剤は一般式IIで示される:
N3−ArF−L−ArF’−N3 II
ここでArFおよびArF’はそれぞれ独立して置換または非置換フッ素化アリール基からなり、Lは適宜の2価または多価結合基からなる。好ましい置換基としてはFよりも大型の置換基、例えばCF3が挙げられる。1つの実施態様では、ArFおよびArF’のうちの1つまたは両方がFよりも大型の置換基を少なくとも1つ(好ましくは1つ)持っているのが好ましい。
【0063】
好ましい結合基はArFおよび/またはArF’に結合した電子吸引部分からなる。かかる電子吸引部分は−CO−、−C(O)O−、S(O)2O−、C(O)NR−、またはS(O)2NR−を含み、ここでRはHまたは置換基であり、(CH2)x(x=1−5)、(CH2)x−O−(CH2)x(x=1−3)などの柔軟なスペーサー基、またはシクロヘキサジイル基をともなっている。結合基は、柔軟なスペーサー基によって連結されている2つの電子吸引部分(1つはArFに結合し、もう一方はArF’に結合している)からなっていてもよい。より好ましい結合基としては、−C−O−、−C(O)O−(CH2)n−O(O)C−(n=1−5)、および−C(O)O−シクロヘキサジイル−O(O)C−、および−S(O)2−NR−(CH2)x−NR−S(O)2−が挙げられる。
【0064】
一般式IIでは、より好ましくはArFおよびArF’はそれぞれ置換または非置換フッ素化フェニル基またはナフチル基からなり、より好ましくは置換パーフルオロフェニル基またはパーフルオロナフチル基からなる。もっとも好ましくは、ArFおよびArF’はそれぞれパーフルオロフェニル基からなる。以下に述べる理由により、XVIからXVIIIに関して、1つの実施態様では、パーフルオロフェニルまたはパーフルオロナフチル上のフッ素基の1つ以上(好ましくは1つ)を、フッ素化アルキル基(例えばトリフロオロメチル基)などのより大型の基と有利に置換することができる。このような置換は2つの位置で有利に行うことができる。従って、1つの実施態様では、ArFおよび/またはArF’は好ましくは下記式からなる。
【0065】
【化2】
ここでBはフッ素化アルキル基(例えばトリフルオロメチル基)のような大型の置換基である。
【0066】
パーフルオロフェニル基間またはパーフルオロナフチル基間の結合基は好ましくは上述のタイプの短い結合基である。
【0067】
それぞれのアジド基(−N3)は光化学的に分解して電子不足のナイトレンとなり、これは簡単にC−H結合、特にアルキルC−H結合中に挿入される:
すなわち−N + −C−H = −C−N(H)
【0068】
このようにして、ビスアジドのそれぞれの端部はC−Hフラグメントに結合する。2つのC−Hフラグメントは名目上隣接するポリマー鎖またはオリゴマーに属するため、架橋がこれらの間に形成される。ポリマーまたはオリゴマーが好ましくは複数の飽和炭化水素セグメントからなるのはこのような理由による。しかしながら、可溶性を向上させるために、しばしば飽和炭化水素、具体的にはアルキルC−Hがすでにポリマーまたはオリゴマー中に存在していることがある。
【0069】
本発明者らは、C−H結合、特にアルキルC−H結合中への高効率的な挿入によって、主鎖に存在するπ共役をほぼ破壊することなく架橋が進行することを発見した。さらに、架橋部分がポリマーまたはオリゴマーと結合を形成する能力を持つことが本発明者によって見出されたことにより、より低濃度の架橋部分を使用できることになった。
【0070】
本発明者らは、実験によりこの架橋部分が、ポリマーの特性(電荷輸送およびルミネッセンス特性など)を損なう恐れのある残った残留物の不利を被ることはないことを見出した。
【0071】
さらに、この架橋部分の架橋メカニズムは半導体ポリマー中でπ共役の存在とほぼ両立することが見出された。
【0072】
さらに、この架橋部分があると共役ポリマーに対する固体状態の架橋効率は思いがけず高い(80%より高い)ことがわかった。理論に束縛されることを望むわけではないが、この種の架橋剤の効率が高いのは、環の上のフッ素原子(特にオルト位のフッ素原子)の存在が競合する付加的環拡大副反応を抑制するためと考えられる。
【0073】
以下の新規の架橋剤が本発明者らによって合成された。これらの架橋剤基は溶液中のポリマーまたはオリゴマーと混合するのに適している。
−アルキレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)、
−アルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンズアミド)
−アルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)
−シクロアルキレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオベンゾエート)
−シクロアルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフロオロベンズアミド)
−シクロアルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)。
【0074】
これら新規の架橋剤の具体例としては、
−エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンズアミド)
−エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフロオロベンゼンスルホンアミド)
−1,3−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)
−1,4−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)が挙げられる。
【0075】
上述の新規の架橋剤の等価物であって、テトラフルオロベンズアミド、テトラフルオロベンゼンスルホンアミドまたはテトラフルオロベンゾエートの少なくとも1つ(好ましくは1つ)のフッ素がより大型の基(フッ素化アルキル基、例えばCF3など)に置換されているのが望ましい。置換は好ましくは2つの位置で行われる。
【0076】
下記一般式IIで示される架橋剤、
N3−ArF−L−ArF’−N3 II
(ここでArFおよびArF’は上述のように定義される)は、F−ArF−L−ArF’−Fをアジドと反応させる工程からなる方法によって合成できる。
【0077】
好ましくは、アジドは金属アジドであり、より好ましくはアルカリ金属アジドであり、さらに好ましくはナトリウムアジドである。
【0078】
F−ArF−L−ArF’−Fは適切なフッ素化アリール(例えばペンタフルオロフェニル)酸ハロゲン化物の反応によって作られてよい。共反応剤はLの性質に依存することになる。しかしながら、フッ素化アリール(例えばペンタフルオロフェニル)酸塩化物とジオールまたはジアミンとの反応が一般的に有用である。
【0079】
例えば、F−ArF−L−ArF’−Fは、F−ArF−COXまたはF−ArF−SO2X(X=Cl、Br)をHO−R−OHまたはNHY−R−NHY(Y=H、アルキル、またはアリール、好ましくは最終生成物中の可溶性を向上させるため、アルキル、またはアリール)(R=アルキレン、シクロアルキレン)と反応させてF−ArF−L−ArF’−Fを合成して作ってもよい。
【0080】
エチレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)の場合、これはエチレンジアミンの1モル等価物をペンタフルオロベンジルクロリドの2モル等価物をわずかに上回る量と反応させてエチレンジアミンビス(ペンタフルオロベンゾエート)を生成させることによって作ってもよい。その後、エチレンジオールビス(ペンタフルオロベンゾエート)を金属アジドの1モル等価物をわずかに上回る量と反応させてエチレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)を作ってもよい。
【0081】
エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)の場合、これはエチレンジアミンの1モル等価物をペンタフルオロベンゼンスルホニルクロリドの2モル等価物をわずかに上回る量と反応させてエチレンジアミンビス(ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド)を生成させて作ってもよい。その後、エチレンジアミンビス(ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド)を金属アジドの1モル等価物をわずかに上回る量と反応させることによってエチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)を作ってもよい。
【0082】
工程(i)については、溶液は望ましくはポリマーおよび架橋部分のブレンド/混合物からなる。しかしながら、他の実施態様では、溶液はかわりにポリマーまたはオリゴマーを含んでおり、この場合架橋部分は、典型的には側基としてポリマーまたはオリゴマーと結合している。
【0083】
本実施態様では、特に好ましい架橋部分はポリマーまたはオリゴマーの主鎖の一部であるかまたは側鎖としてポリマーまたはオリゴマーに結合しており、有利なことに、架橋反応は架橋部分とポリマーまたはオリゴマー単位との結合形成反応をともなうというメカニズムを介して架橋が進行し、これは架橋部分自身同士の間の結合形成反応とは異なる。いいかえれば、工程(ii)では、架橋部分は実質的に自己結合または自己重合することはない。
【0084】
本実施態様では、架橋部分を含むポリマーまたはオリゴマーの好ましい構造単位は下記一般式IIIまたはIVを持つ。
【0085】
【化1】
ここでArFは置換または非置換フッ素化アリール基であり、Rはポリマーまたはオリゴマーの主鎖中の構造単位(典型的には繰返し単位)である。
【0086】
これらの好ましい架橋部分はアジド基を備えており、かかる状況下で、これらの架橋部分は本発明による好ましい架橋剤の第1の実施態様に関して上で説明したのと同じ利点を持つ。
【0087】
一般式IIIおよびIVにおいて、ArFは一般式IIに関して上記いずれかで定義したものである。
【0088】
一般式IIIおよびIVでは、好ましくはArFは置換または非置換フッ素化フェニル基またはナフチル基からなり、より好ましくはパーフルオロフェニル基またはパーフルオロナフチル基からなる。もっとも好ましくは、ArFはパーフルオロフェニル基からなる。
【0089】
一般に本発明に関して、工程(i)での成膜は例えばどのような適切な溶液加工法によって行ってもよい。この点に関して、インクジェット印刷、スピンキャスティング、スクリーン印刷、ディップコーティング、およびフレキソグラフィック印刷を挙げることができる。
【0090】
基板の適切な材料は形成されるポリマーデバイスに左右されることになる。LEDおよびフォトダイオード/光検出器については、好ましい基板はガラス上のITO、PET上のITO、Si上のITOなどの層が挙げられる。FETについては、好ましい基板はガラス、PET、ポリカーボネートなどの層が挙げられる。基板自身は積層構造を備えている。いいかえれば、基板はそれ自身が複数の異なる層を備えていてよい。
【0091】
上述のように、本発明の工程(ii)では、工程(i)で形成された層に不溶性が付与される。このような不溶性を達成するには、工程(i)で形成された層が架橋条件にかけられるとき工程(ii)で十分な程度の架橋が起こらなければならない。工程(ii)で必要な程度の架橋を行うために工程(i)で成膜される溶液中に必要とされる架橋部分の特定の範囲内の正確な量は、ポリマーの分子量分布特性に左右されることになる。一般に、ポリマーの分子量が高いほど必要な架橋剤の量は小さくなる。必要な最小量はゲルフラクション実験によって適切に決定できる。この実験は単純に次のようにして行える。
【0092】
・適切な溶液中の試験濃度(例えば、芳香族炭化水素溶媒中の0.5−2.5重量%)にあるポリマーまたはオリゴマーを、架橋基とポリマー/オリゴマーのモル総数に対して0.05−5モル%の範囲の濃度にある架橋基と配合する、または、この範囲の架橋部分を持つポリマーを合成する。
・スピンコーティングまたはインクジェット印刷によって膜を成形しその後硬化させる。
・プロファイロメトリ、エリプソメトリ、またはインターフェロメトリによって厚さを測定する。
・膜を100mJ/cm2の線量で架橋照射に露光する。
・通常、ポリマーを溶解する溶媒中に膜を10秒間浸漬(または現像)し、その後溶媒をブロー乾燥またはスピンオフする。
・再度膜厚を測定する。
・不溶性および所望の厚みが得られるまで、異なるモル比の架橋部分で上述の手順を繰り返す。
【0093】
溶液中のポリマーまたはオリゴマーの濃度についての好ましい範囲は架橋部分を添加する前で0.5から2.5重量%である。
【0094】
工程(ii)で形成した架橋化ポリマーは有利に導電性、半導体、または絶縁性のポリマーであり得る。好ましくは、架橋化ポリマーは半導体ポリマーである。
【0095】
ポリマーが工程(i)で使用される溶液中に存在し、架橋部分がポリマーと混合される場合は、望ましくは溶液中のポリマーは導電性、半導体、または絶縁性のポリマーであり得る。好ましくは、工程(i)の溶液中のポリマーは半導体ポリマーである。溶液中のポリマーが半導体ポリマーである場合、工程(ii)で層を硬化させても有利なことに実質的にはポリマーの半導体特性に悪影響を及ぼすことはない。
【0096】
半導体ポリマーとは対照的に、導電性ポリマーは典型的には濃厚にドーピング(繰り返し単位ごとに5モル%より大きい)されて導電状態とされている。その結果、導電性ポリマーは典型的には1018cm−3より大きな電荷キャリア濃度を持っている。「導電性ポリマー」とは、典型的には1×10−5S/cmより大きな導電性を持つポリマーを意味する。かかる状況下で、それらの電気的特性は本質的にはさらに別の不純物に反応することはない。かかる導電性ポリマーは主に送電線または電極端子として有用である。重大なことに、これらはしばしばフォトパターンニングプロセスの制限がゆるむにつれて、可視、紫外、および深紫外分光領域の部分へと大きく延びるトランスミッションウィンドウを保有する。
【0097】
半導体ポリマーは典型的にはドーピングされていないかまたは元来低濃度(典型的には0.001モル%以下)でドーピングされている。導電性ポリマーとは対照的に、半導体ポリマーは典型的には電荷キャリア濃度が1015cm−3未満である。「半導体ポリマー」とは、典型的には1×10−8S/cmより小さな導電性を持つポリマーを意味する。これらのポリマーは重大なことにLED、FET、およびPVをはじめとする広範囲のポリマーデバイス技術の中核を形成している。これらは典型的には上で説明したように可視−紫外領域においてかなり狭いトランスミッションウィンドウを持っている。これらはまた不純物レベルに対してはるかに敏感な、重要かつ独特の輸送特性および光物理的特性も持っている。
【0098】
本発明者らは、本発明により実質的に機能の損失なく半導体ポリマーを架橋させることができることを見出した。
【0099】
特に本発明者らは、架橋部分が特に0.1から0.5モル%の範囲の量で使用されたときおよびポリマーの分子量が十分に高い(300,000より大きい)ときには、現実には広範囲の共役ポリマー膜のフォトルミネッセンスおよびエレクトロルミネッセンス特性に架橋部分は影響を及ぼさないことを見出した。
【0100】
本発明らは、本発明で説明する架橋部分および架橋方法論が、広いバンドギャップ材料と、特に例えばWO03/095586号に記載されているような青色ELポリマーとも事実上適合することを見出した。本プロセスは、さもなければこれらの特に敏感な材料のデバイス性能を損なうであろう励起子または電荷トラップを導入することはない。
【0101】
より低分子量の材料に対しては、より高い濃度(0.5%を上回る)の架橋部分を使う必要があるが、場合によってこの濃度は、図11に架橋部分エチレンジオールビス(p−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)について示すように、ポリマーのフォトルミネッセンス効率を劣化させる効果を持ち始めることになる。多くの場合、フォトルミネッセンス効率はアニーリングによって部分的に回復させることができる。
【0102】
【化5】
【0103】
高濃度で架橋部分を付与するという望ましくない事態も架橋部分における立体バルクを増加させることによってさらに減少させることができる。一般式IIの架橋部分の場合、これは例えばL、またはArF、ArF’および/またはL上の置換基を適切に選択することによって行うことができる。例えば、フォトルミネッセンス消光について以下の序列が観察される。
【0104】
【化6】
【0105】
従って、架橋されるべきポリマーが低分子量であることから架橋部分が高い濃度で存在する必要があり、そしてその結果フォトルミネッセンス消光が問題となる場合は、パーフルオロ化環の近傍にあるより大きな立体バルクを持つ架橋部分、例えば2−トリフルオロメチル置換化合物XVIIIを選択してその問題を緩和するか完全に抑制することができる。
【0106】
このことは、ポリマーの望ましい光物理的および電子的特性を損なうことなく広い範囲の共役ポリマーに効果的な架橋を提供するにあたりフッ素化フェニルアジドは用途が広いことを表わしている。
【0107】
好ましくは、ポリマーまたはオリゴマー主鎖は少なくとも部分的に共役している。さらに1つの実施態様では、ポリマーまたはオリゴマー主鎖は実質的にまたは完全に共役されていることが望ましい場合がある。
【0108】
ポリマーまたはオリゴマーの構造については、好ましくはこれは側鎖または主鎖中に複数の飽和炭化水素セグメント(−CH2および−CH−)を備えている。ポリマーまたはオリゴマーは複数の脂肪族水素を備えていることが好ましい。
【0109】
ポリマーまたはオリゴマーにおけるこれらのセグメントの好ましい重量フラクションは10−100%であり、半導体ポリマーについては、好ましい重量フラクションは10−70%である。
【0110】
好ましい架橋化半導体ポリマーは下記構造を備える繰返し単位Ar1からなる。
(1)p−フェニレンビニレンのような置換または非置換フェニレンまたはアリールビニレン、
(2)9,9−ジアルキルフルオレン(さらに置換されている場合がある)のような9,9−二置換フルオレン、
(3)置換または非置換トリアリールアミン、
(4)チオフェン、ベンゾチアジアゾール、キノリン、ピリジン、好ましくはその置換類縁体のような非置換または置換複素芳香族単位、または
(5)非置換または置換オキサジアゾール。
【0111】
好ましい置換基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、およびアリールオキシ基が挙げられる。
【0112】
ポリマーはAr1と組み合わさった1つ以上の共繰返し単位を含んでいてよい。好ましい共繰返し単位はp−結合非置換または置換フェニレン、非置換または置換フェニレンビニレン、2,5−結合置換または非置換ベンゾチアジアゾール、2,5−結合置換または非置換チオフェン、ビチオフェンまたはターチオフェン、置換または非置換トリアリールアミンまたはビス(トリアリールアミン)からなる。架橋化ポリマーが1つ以上の共繰返し単位を含み、Ar1が9,9−二置換フルオレンからなる時が特に好ましい。
【0113】
これらポリマーはすべて本発明により架橋化することができる。
【0114】
当然ながら、ポリマーまたはオリゴマーは工程(i)で溶液中に存在するために可溶性でなければならない。この目的のために、ポリマーまたはオリゴマーは可溶性基を含んでいてよい。好ましい可溶性基としてはアルキル基、アルコキシアリール基、シクロアルキル基、アリールオキシ基、およびシクロアルキルオキシ基が挙げられる。
【0115】
架橋部分は深紫外領域の狭いトランスミッションウィンドウに吸収性を持つことが好ましい。典型的には、これは200nmから300nmの範囲であり、より好ましくは245から270nmであり、さらに好ましくは250nmから260nmの範囲となる。架橋部分の吸収性は紫外可視吸収スペクトルによって測定することができる。
【0116】
架橋部分がこの範囲で適切な吸収率を持つと有利である、なぜならこれは多数の半導体ポリマーに共通の遷移ウィンドウに対応するからである。従って、ポリマーの架橋および画像化を低露光線量で行うことができる。
【0117】
工程(ii)で形成された硬化層の好ましい厚さは500nm以下の範囲である。工程(ii)の硬化が紫外線照射への露光による場合、1回の適切な紫外線露光によって形成される不溶性層は500nmの厚さから下は数nmの厚さとすることができる。必要に応じて、最終的な厚さが500nmより大きい層はコーティングおよび硬化を繰り返すことによって製造してよい。必要な最終膜厚は末端使用用途次第である。原則的にはこの方法によって製造できる層の数は制限されない。
【0118】
工程(ii)で形成される不溶性層の望ましい厚さはある程度層の機能によって左右される。層がポリマーLEDの注入中間層である場合は、好ましい厚さは5から20nmの範囲である。層が例えばフォトダイオードの電荷輸送層である場合は、好ましい厚さは10から50nmの範囲である。層が導波デバイスの被覆層である場合は、好ましい厚さは100から400nmの範囲である。層がFETのチャネル層である場合は、好ましい厚さは20から300nmの範囲である。
【0119】
1つの実施態様では、工程(i)で成膜される層はポリマーブレンドまたは複合物であり得る。硬化ポリマーブレンドまたは複合物の熱安定性を高めるためまたは最終的な硬化層の溶媒溶解に対する抵抗を最適化するために、架橋化を有利に使用してもよい。
【0120】
工程(ii)における硬化の条件については、硬化が紫外線照射への層の露光を伴う場合、これは好ましくは1−100mW/cm2の電力で行い、好ましくは露光時間は約0.1−100秒の範囲である。硬化させる層へのエネルギー線量は好ましくは1−100mJ/cm2であり、より好ましくは5−20mJ/cm2である。
【0121】
層は工程(ii)で硬化されて不溶性とされる。このことは、層、ひいてはポリマーが、架橋前であれば層が溶解したであろういずれの溶媒にも完全に溶けることはないことを意味する。上述のように、この結果が得られるかどうかは問題の特定の層に対して要求される架橋のレベルが達成されるかどうかに左右される。一般に、硬化した層は通常の有機溶媒中で不溶性となる。さらに、一般に、層はトルエン、キシレン、メシチレン、ジュレン、ヒドロナフタレン等の芳香族炭化水素溶媒中、およびクロロフォルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化溶媒中で不溶性になる。従ってこれらの溶媒はデバイス製造中のその後の加工で利用可能とされる。
【0122】
不溶性を測定する1つの具体的な試験を以下に説明する。
・スピンコーティングまたはインクジェット印刷によって膜を成形し、その後硬化させる。
・プロファイロメトリ、エリプソメトリ、またはインターフェロメトリによって正確に厚さを測定し、これをd1と呼ぶ。
・通常ポリマーを溶解する溶媒中に膜を10秒間浸漬(または現像)し、その後ブロー乾燥またはスピンオフする。
・再度膜厚を測定し、これをd2と呼ぶ。
【0123】
層が全体的に「不溶性」であれば、膜/層を浸漬した後には膜厚の減少は無い(すなわち、d2/d1=1.0)。しかしながら多くの場合、層は部分的に不溶性であればよい。(d2/d1)に保持されているフラクションが公知であれば、デバイス設計ではどのような減少も許容され得る。しかしながら、一般には、d2/d1は有用であるためには0.4を上回る必要があり、好ましくは0.5を上回る必要がある。
【0124】
一般に、工程(ii)での硬化後、層を溶媒に接触させてよい。架橋化ポリマーが等価の架橋されていないポリマーであれば溶けるであろう溶媒に溶けないという事実は、層が接触される溶媒は通常の有機溶媒を含む多くの種類の溶媒から選択できることを意味する。この接触によって工程(ii)で形成された架橋化ポリマーが溶解することはない。
【0125】
必要に応じて、工程(ii)での硬化後、層を適切な溶媒で洗浄してよい。かかる洗浄工程は、層に工程(ii)でパターン化架橋が行われる場合に行われる。これは工程(i)から得られた層の選択された領域だけを工程(ii)の硬化条件にさらすことにより行われる。これは例えばマスクを介して紫外線照射に露光することによって達成される。露光領域の材料は不溶性となるが非露光領域の材料は可溶性のまま残る。これにより非露光領域の材料を洗浄工程で取り除くことができる。
【0126】
必要に応じて工程(ii)での硬化後、液相化学による適切な化学反応によって層を化学的に改質してもよい。かかる化学反応としては、芳香族スルホン化、アミノメチル化、または他の誘導体反応が挙げられる。
【0127】
スルホン化によりSO3H基をポリマー繰返し単位のフラクションに導入する。これを使って、例えば自己ドーピング導電性ポリマー層を製造することができる。この特定の反応はさまざまな条件下で、例えば、層を−60℃でクロロスルホン酸の希釈クロロフォルム溶液と反応させることにより行うことができる。
【0128】
有用な他の反応としては架橋反応によって導入されたNH基のメチル化反応が挙げられる。この反応は水素原子を潜在的により安定なメチル基で置換するものである。この特定の反応は層を室温でヨウ化メチルと反応させ、その後クロロフォルム−エタノール混合物中でトリエチルアミンにより洗浄することにより行われる。従って、ポリマー層を不溶性とした後に、さまざまな化学反応を行って層のバルク特性および表面特性を変更または調節することができる。
【0129】
本方法によって形成された層の上にさらに別の(第2の)層を成膜してもよい。この点に関して、工程(ii)の硬化に鑑みて、本発明で形成される層はさらに別の(第2の)層を成膜するのに使われるいずれの溶液にも溶けないと思われる。
【0130】
必要に応じて、本発明はさらに本発明の第1の側面による方法の工程(ii)で形成される不溶性ポリマーをアニーリングする工程を備えていてもよい。アニーリングは本発明の第6の側面に従って以下に挙げるようなものである。
【0131】
典型的には、本発明の第1の側面による方法のポリマーデバイスは光学デバイスである。好ましくは、デバイスはポリマー発光デバイス、電界効果トランジスタのようなポリマートランジスタ、光検出器、光起電力デバイス、導波デバイス、または分布ブラッグリフレクタである。
【0132】
ポリマーLEDデバイスは本発明の方法により成膜される架橋化正孔輸送ポリマー層を使って製造できる。デバイスはさらに発光ポリマー層および/または電子輸送ポリマー層および/または励起子遮断ポリマー層を備えていてよい。必要に応じてこれらのさらなる層は本発明の方法に従って成膜することができる。ポリマーLEDについては、例えばアノード上に形成された正孔注入および電子遮断ポリマー層、その後に発光ポリマー層、そして電子注入、正孔遮断および励起子遮断ポリマー層、そしてその後カソードが形成されている構造が考えられる。有利なことに、適切なポリマーは、発光層としてパターンニングして上述のようなフルカラーディスプレイを提供するようにすることもできる。さらに、発光層はポリマーの架橋化ブレンドの膜であってよい。
【0133】
ポリマー導波LEDデバイスは本発明の方法によって成膜される1つ以上の架橋化ポリマー被覆層で製造することができる。デバイスはさらに、本発明の方法に従って適宜成膜されるコア発光層を備えている。導波デバイスは隣接するクラッド層(または周囲部)よりも屈折率が高いコア層(またはストリップ)によって特徴づけられている。コア層およびクラッド層はそれぞれ1つ以上の個々の層を備えていてよい。位相適合条件を満たす適切な波長の光が全体の内部反射によって閉じ込められ、その屈折率がより高いためコア層(またはストリップ)に導かれる。そしてこの光はデバイスの端部で発光されるかまたはその光を外接合することのできる他の領域に導かれる。このようにして発光される光は非常に方向性が高くまた光ファイバーと良好に接合することもできる。
【0134】
ポリマー分布ブラッグリフレクタは本発明の方法によって成膜される架橋化交互高屈折率および低屈折率ポリマー多重層によって製造できる。ブラッグリフレクタは、高い(nH)および低い(nL)屈折率材料の複数の四重波厚み(dH、dL)層を備えている。ブラッグ条件(λ/2=nHdH+nLdL)を満たす波長の光が積層物内で強く反射される。ブラッグリフレクタは他のブラッグリフレクタまたは鏡と接合して光共振器を形成できる。かかる共振器は波長選択器としての重要な用途を持つ。
【0135】
ポリマー微小共振器(microcavity)LEDデバイスは本発明の方法によって成膜される1つ以上の架橋化ポリマー分布ブラッグリフレクタ層で製造することができる。デバイスはさらにコア発光層を備えていてよい。必要に応じて、コア発光層を本発明の方法に従って成膜してよい。
【0136】
ポリマーFETデバイスは本発明の方法によって成膜される架橋化半導体ポリマー層で製造することができる。デバイスはさらに架橋化絶縁性ポリマー層を備えていてよい。必要に応じて、絶縁性ポリマー層は本発明の方法に従って成膜される。このことは特にこの層が半導体層の前に成膜される場合に当てはまる。デバイスは最上部ゲート、側部ゲート、または底部ゲート構成であり得る。ポリマーFETについては例えば、ソースおよびドレイン電極間で基板上に形成された電荷輸送半導体ポリマーとその後に形成されるゲート絶縁体として作用する絶縁性ポリマーからなる構造が考えられる。この絶縁性ポリマー層は半導体ポリマーが架橋された後にこれを成膜するのに使われたのと同じ溶媒システムから成膜することができる。
【0137】
ポリマー光起電力デバイスは架橋化ポリマーブレンドまたはポリマー複合物からなる光応答層で製造することができる。
【0138】
本発明の第2の側面は、本発明の第1の側面に関して先に定義した方法によって得られるまたは得ることのできるポリマーデバイスを提供する。このデバイスは本発明の第1の側面に関して先に定義した通りであり得る。本発明の第1の側面に関して上で記載したデバイスのうちいずれかにおいて、および本発明の第2の側面によるデバイスにおいて、カソードの好ましい材料としてはバリウムまたはカルシウムのようなアルカリ土類金属が挙げられる。
【0139】
本発明の第3の側面は本発明の第2の側面によるポリマーデバイスの使用を提供するものである。
【0140】
本発明の第4の側面はポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を提供するものであり、架橋部分は溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の全重量に対して0.05から5モル%の範囲の量で存在することを特徴とする。
【0141】
本発明の第4の側面では、ポリマーまたはオリゴマー、架橋部分および溶媒は本発明の第1の側面に関して先に説明した通りである。さらに、溶液中のそれらの濃度は本発明の第1の側面に関して先に説明した通りである。
【0142】
好ましくは、架橋部分はポリマーまたはオリゴマーと混合される。本発明の第4の側面による好ましい溶液は半導体ポリマーを含む。1つの特に好ましい実施態様では、架橋部分は一般式IIで示され、ここでArFおよびArF’ はそれぞれパーフルオロフェニル基である。
【0143】
本発明の第5の側面は、本発明の第1および第2の側面に従って定義したようなポリマーデバイスの製造において、本発明の第4の側面に従った溶液の使用を提供する。
【0144】
本発明の第6の側面はポリマーデバイスを形成する方法を提供するものであり、
(i)ポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を基板上に成膜して層を形成する工程、
(ii)工程(i)で形成された層を不溶性架橋化ポリマーを形成する条件下で硬化する工程、
(iii)工程(ii)で形成された不溶性ポリマーをアニーリングする工程、および
(iv)工程(ii)で形成された不溶性ポリマーの表面またはバルクを必要に応じて化学的に改質する工程を備える。
【0145】
本発明の第6の側面による方法では、ポリマー、オリゴマー、架橋部分、およびそれらの濃度および架橋条件は好ましくは本発明の第1の側面に関して先に定義した通りであり得る。本発明の第6の側面では、架橋部分が工程(i)で0.1から5モル%の範囲の量で存在することは必要不可欠ではない。
【0146】
好ましくは、工程(iii)でのアニーリングは120から200℃の範囲の温度で行う。
【0147】
本発明の第6の側面に関して、本発明者らは驚くべきことに、成膜および架橋後のアニーリング工程により、工程(ii)中に発生する何らかの観察される特性の劣化が有利に少なくとも部分的に回復されることを発見した。
【0148】
本発明の第6の側面による方法の工程(iv)における化学的改質は本発明の第1の側面に関して定義した通りに行ってよい。
【0149】
本発明は、添付の図面を参照することで更に詳細に説明される。
【実施例】
【0150】
架橋剤の合成:
以下の合成経路を使用する。
ジオールまたはジアミンを酸捕捉剤の存在下で適切なペンタフルオロフェニル酸ハロゲン化物と定量的に反応させ、その後生成物をアジ化ナトリウムと定量的に反応させて、再結晶後に架橋剤ビス(パーフルオロフェニルアジド)を得る。
【0151】
実施例1:エチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)
エチレングリコール(135mg、2.1ミリモル)およびトリエチルアミン(510mg、5.0ミリモル)を10mLの無水エーテルに溶解させ、10mLの無水エーテル中の塩化ペンタフルオロベンゾイル(1.2g、5.0ミリモル)に添加する。得られる塩化トリエチルアンモニウムの白色沈殿をろ過除去する。ろ液を3×20mLの水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、蒸発させて無色の液体としてエチレングリコールビス(ペンタフルオロベンゾエート)(I)を回収する(収率、75%)。その後2.2mLの水および3.7mLのアセトン中のアジ化ナトリウム(150mg、2.3ミリモル)を2mLのアセトン中でI(500mg、1.1ミリモル)と反応させ、60℃のホットプレート上で一晩中攪拌する。白色の沈殿が得られる。溶液を蒸発によって半分の体積に減らし、沈殿をろ過し(収率、80%)、1:3のクロロフォルム−へキサンで2回再結晶させてエチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(II)を白色結晶として得る。FTIR:2134(N3非対称伸縮)、1731(C=O伸縮)、1645、1483、1252(N3対称伸縮)、3000−3500に酸のOH帯なし。
【0152】
実施例2:エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)
エチレンジアミン(130mg、2.1ミリモル)およびトリエチルアミン(510mg、5.0ミリモル)を10mLの無水エーテルに溶解させ、10mL無水エーテル中の塩化ペンタフルオロベンゾイル(1.2g、5.0ミリモル)に添加する。得られる白色の沈殿をろ過除去する。残留物をクロロフォルムで洗浄し、その後水で洗浄してからろ過して白色の針状結晶としてエチレンジアミンビス(ペンタフルオロベンゾエート)(III)を回収する(収率、100%)。その後、1.7mLの水および4.0mLのDMF中のアジ化ナトリウム(270mg、4.2ミリモル)を20mLのDMF中でIII(870mg、2.0ミリモル)と反応させ、60℃のホットプレート上で一晩中攪拌する。白色の沈殿が得られる。蒸発により溶液を半分の体積に減らして沈殿をろ過し(収率、35%)、乾燥させてDMFから再結晶させ、白色の結晶としてエチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(IV)を得る。FTIR:2129(N3非対称伸縮)、1666(C=O伸縮)、1554、1483、1242(N3対称伸縮)、3000−3500に酸のOH帯なし。
【0153】
実施例3:エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)
エチレンジアミン(70mg、1.0ミリモル)およびトリエチルアミン(240mg、2.0ミリモル)を8mLの無水クロロフォルムに溶解させ、2mLの無水クロロフォルム中の塩化ペンタフルオロベンゼンスルホニル(710mg、2.2ミリモル)に添加する。得られる白色の沈殿をろ過する。ろ液を3×4mLの半飽和KCl水溶液で洗浄し、その後MgSO4で乾燥させ蒸発させて、白色の結晶としてエチレンジアミンビス(ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド)(V)を回収する(収率、80%)。その後、1.0mLの水および4.0mLのアセトン中のアジ化ナトリウム(105mg、1.6ミリモル)をV(390mg、0.76ミリモル)と反応させ、60℃のホットプレート上で一晩中攪拌する。白色の沈殿が得られる。蒸発により溶液を半分の体積に減らして2mLの水を添加する。その後沈殿をろ過し、乾燥させクロロフォルムから再結晶させて白色の結晶としてエチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド)(VI)を得る。アセトン、イソプロパノール、およびキシレンには可溶であるが、水またはヘキサンには溶けない。FTIR:3315(N−H伸縮)、2130(N3非対称伸縮)、1642、1493、1358(SO2非対称伸縮)、1230(N3非対称伸縮)、1169(SO2対称伸縮)、989、1650−2800に水和された酸の吸収帯なし。
【0154】
実施例4:1,3−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)
1,3−シクロヘキサンジオールを使う以外は実施例1と同じ。
【0155】
実施例5:1,4−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)
1,4−シクロヘキサンジオールを使う以外は実施例1と同じ。
【0156】
実施例6:エチレンジオールビス(4−アジド−2−トリフルオロメチル−3,5,6−トリフルオロベンゾエート)
同じようにして、エチレングリコール(2.1ミリモル)およびトリエチルアミン(5.0ミリモル)を10mLの無水エーテルに溶解させ、10mLの無水エーテル中の2−トリフルオロメチル−3,4,5,6−塩化テトラフルオロベンゾイルに添加する。得られた塩化トリエチルアンモニウムの白色沈殿をろ過する。ろ液を3×20mLの水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、その後蒸発させて粗エチレンジオールビス(2−トリフルオロメチル−3,4,5,6−テトラフルオロベンゾエート)を回収する。その後、2.2mLの水および3.7mLのアセトン中のアジ化ナトリウム(150mg、2.3ミリモル)を2mLのアセトン中のI(1.1ミリモル)と反応させ、60℃のホットプレート上で一晩中攪拌する。蒸発により溶液を半分の体積に減らし、沈殿をろ過して1:5クロロフォルム−ヘキサン中で2回再結晶させる。
【0157】
(A)正孔輸送−および−電子遮蔽中間層または中間層の積層物を架橋して、中間層厚さおよび注入特性を正確に制御できるようにする:
実施例1(F8BT−エミッタLED):
a.あらかじめパターン化されたITOガラス基板からアセトン、イソプロパノール、および窒素ブローオフを使ってフォトレジストを除去する。その後、ITO表面をバレル型エッチング装置(Tegal Barrel Etcher 421、典型的な条件:圧力450ミリバール、電力150W)内で10分間酸素プラズマに露光する。その後、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(PEDT:PSS)をPEDT対PSSの比が1:15となるように配合した水性溶液からスピン成型して60−70nmの厚さの膜を得る。膜は150℃に設定したホットプレート上で15分間窒素下で焼き付ける。
【0158】
b.その後、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−アルト−[フェニレン−(N−p−2−ブチルフェニル)イミン−フェニレン])(TFB)の重量に対して1.8%のエチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(I)を加えた配合物を窒素下で0.9w/v%混合キシレン溶液からスピン成型して15nmの厚さの膜を得る。その後膜をフォトマスクを介して窒素下で2分間、膜表面上での輝度1mW/cm2で254nmの深紫外線照射に露光する。
【0159】
(1.アノードインターフェースにおける好ましい中間層ポリマーは正孔輸送および電子遮蔽特性を持っている。このポリマーはまた、動作にともなうインターフェースの電気特性を損なう発光ポリマーとの望ましくない電気化学反応に関与することなく安定である必要がある。例示的な中間層ポリマーとしてはTFBおよびポリ(トリアリールアミン)が挙げられる。
【0160】
(2.好ましいポリマー濃度は中間膜の望ましい厚さによって決定され、スピニング試験によって簡単に知ることができる。典型的には、10−20nmが目的の中間層厚さである場合、必要なポリマー濃度はポリマー粘度に依存して0.2−1w/v%であり、必要なスピン速度は2000−8000rpmである。あるいは、計器付きインクジェット印刷を使ってもよい。
【0161】
(3.好ましい架橋剤対ポリマーのモル比は、使用されるポリマーの数平均分子量およびその分布によって決定される。架橋剤は、膜中のポリマーの効果的な分子量をそれがもはや溶媒に溶解しなくなる点まで増加させることによって作用する。しかしながら、低分子量の種はもし存在するとしたらゲル限界に至ることはなく良好な溶媒にやはり浸出させることができる。従って、架橋剤比率またはポリマー分子量が減少するにつれて、保持される膜厚のフラクションはより小さくなる。典型的な膜保持(またはゲル化点)特性を図1に示す。数平均分子量が105の場合、50%より大きい妥当な膜保持とするのに必要な架橋剤比率は1.5−2w/w%である。数平均分子量が106の場合、必要な比率は0.3−0.6w/w%である。選択する比率は所望の架橋レベルが確実に得られる最小の値にすべきである。
【0162】
(4.好ましい照射線量は10−100mJ/cm2である。必要な最小の線量はフィルタ効果を介して254nmでポリマーが本来示す吸収性に左右される。これは線量シリーズ試験によって簡単に決めることができる。
【0163】
(5.好ましい照射波長は254nmまたは248nmである。これは低圧水銀ランプ源(254nm)またはKrFエキシマレーザ源(248nm)から都合よく得られる。
【0164】
(6.好ましい正孔注入中間層厚さはデバイスの所望領域への電子−正孔の取り込みを最適化することによって支配でき、実験によって知ることができる。典型的には、多数のポリフルオレン由来エミッタの場合、最適な厚さは5−20nmの範囲であり、これは本願に開示する方法によって簡単に達成される。膜厚は5−300nmの間で正確に制御できる。典型的な結果を図2に示す。以下の実施例3も参照のこと。
【0165】
c.基板はその後必要に応じて、180℃に設定したホットプレート上で窒素下で60分間焼き付ける。
【0166】
d.膜はその後、混合キシレンにより回転チャック上で洗浄する(10秒間浸漬後、8000rpmでスピンオフ)。
【0167】
e.その後、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−アルト−[ベンゾ−2−チア−1,3−ジアゾールー4,7−ジイル])(F8BT)を1.0w/v%トルエン溶液から窒素下でスピン成型して厚さ65−70nmの膜を得る。
【0168】
f.基板はその後、120℃に設定したホットプレート上で窒素下で3分間、焼き付ける。
【0169】
g.厚さ3nmのCaに続いて厚さ120nmのAlをベース圧2−4×10−6ミリバールでシャドウマスクを介して膜の上へと蒸発させる。
【0170】
デバイスを順方向バイアス(カソードとしてCa/Al、アノードとしてITO)で駆動させる場合、発光をともなう大きな順方向バイアスダイオード電流が得られる。デバイス特性について、図3および図4でTFB中間層のない類似デバイスと比較する。量子効率は15倍改善され、例えば1000cd/m2の場合の駆動電圧はTFB中間層がある場合で4.25Vから3.70Vに減少される。駆動電圧の改善は、デバイスの作動寿命を伴う大きなスケーリングのために重要である。本実施例では、正孔輸送中間層は正孔輸送/電子遮断層としてだけでなく界面電気化学に対する緩衝層としても作用する。その結果、作動寿命は10倍以上も長くなる。
【0171】
実施例2(F8BT−TFB−ブレンド−エミッタLED):
工程(e)の発光ポリマー層がF8BTおよびTFBを1:1でブレンドして1.4w/v%の混合キシレン溶液を用いたものである以外は、実施例1と同じである。
【0172】
作動寿命、量子効率、および所望の輝度とするための電圧は、良好に定義された正孔輸送および電子遮断中間層が10−15nmの範囲の厚さのアノードインターフェースに存在することによって、改善される。ブレンドの配合次第で、量子効率は電圧損失を伴うことなく20−100%の改善が見られた。このことは、たとえ正孔輸送ポリマーがブレンドに配合されたとしても、良好に定義された連続的な厚さ5−20nmの正孔輸送層をアノード端子に形成するとさらに性能および安定性が改善され得ることを示すものである。
【0173】
実施例3(F8BT−エミッタLED):
工程(b)のTFB中間層の厚さを5nmの解像度により10nmおよび30nmの間で制御する以外は、実施例1と同じである。中間層の厚さを原子力プロファイロメトリによって確認する。デバイスの電流密度、輝度および外部量子効率を図5、6、7にそれぞれ示す。本実施例は中間層の厚さを精密に制御することから得られる利点を示すために提示されるものである。その結果、デバイス性能を系統的に最適化することが可能となる。
【0174】
実施例4(積層正孔注入中間層):
第2の正孔輸送ポリマーのさらに別の層を中間層積層物の第2の層として使う以外は実施例1と同じである。ここで、選択されたこのポリマーはポリ(ビニルカルバゾール)(PVK)であって、PVKの重量に対して1.6重量%のIが配合される。混合物を窒素下で0.25w/v%のクロロフォルム溶液からスピン成型して厚さ10nmの膜を得る。膜はその後、膜表面上における輝度1mW/cm2でフォトマスクを介して254nmの深紫外線に窒素下で2分間露光される。
【0175】
(7.この第2の中間層ポリマーのアノードインターフェース(もし使われていれば)における好ましい性質は、第1の中間層ポリマーの正孔輸送レベルと発光ポリマーの正孔輸送レベルとの間の中間の正孔輸送レベルを提供すると同時に、いかなる達成可能な電子輸送レベルでも電子の漏えいをもたらすものは提供しないことである。このようにして、正孔輸送エネルギーレベルのはしごが設けられて発光ポリマー自身への正孔注入が容易となる。
【0176】
(8.もしくは、このポリマーを、動作にともなうインターフェースの電気特性を変えてしまう発光ポリマーとの望ましくない電気化学反応を抑制するためのキャップ層として使う。
【0177】
PVKは部分的にこれらの考察を満たすため、理想的ではない。それにもかかわらずPVKはTFBよりも良好に電子を遮断するため、そのおかげで低電圧効率が改善される。従って、本実施例はかかる積層中間層が適切なポリマーを使って有利に構築され得ることを確認するものである。
【0178】
(B)LEDにおけるLEP層の架橋およびフォトパターンニング:
実施例5(フォトパターン化OC1C10−PPV LED):
a.あらかじめパターン化されたITOガラス基板からアセトン、イソプロパノール、および窒素ブローオフを使ってフォトレジストを除去する。その後ITO表面をバレル型エッチング装置(Tegal Barrel Etcher 421、典型的な条件:圧力450ミリバール、電力150W)内で10分間酸素プラズマに露光する。その後、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(PEDT:PSS)をPEDT対PSSの比が1:15となるように配合した水性溶液からスピン成型して厚さ60−70nmの膜を得る。この膜を150℃に設定したホットプレート上で窒素下で15分間焼き付ける。
【0179】
b.その後、ポリ(2−メトキシ−5−(3,5−ジメチル)オクチル−1,4−フェニレンビニレン)(OC10−PPV)にOC1C10の重量に対して2%のエチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(I)を配合したものを0.5%w/v%混合キシレン溶液から窒素下でスピン成型して厚さ47nmの膜を得る。その後膜は、フォトマスクを介して窒素下で2分間、膜表面における輝度1mW/cm2で254nmの深紫外線照射に露光し、その後トルエンで現像する。
【0180】
c.基板はその後必要に応じて、200℃に設定したホットプレート上で窒素下で5分間焼き付ける。
【0181】
d.厚さ3nmのCaに続いて厚さ120nmのAlをベース圧2−4×10−6ミリバールでシャドウマスクを介して膜の上へと蒸発させる。
【0182】
デバイスを順方向バイアス(カソードとしてCa/Al、アノードとしてITO)で駆動させる場合、発光をともなう大きな順方向バイアスダイオード電流が得られる。デバイス特性について図8で架橋剤およびフォトパターンニングのない類似デバイスと比較する。両方の場合で同じような電流密度が得られる。従って、デバイスを介して電流を駆動する能力は損なわれない。量子効率はフォトパターン化されたデバイスについてはより劣るが、これは架橋剤のフラクションを0.5重量%未満へと減少させることによって元のレベルに回復させることができる。本実施例は、ここに記載される架橋プロセスがLEP層に適用され得ることを示すために提示されるものである。LEPからの必要不可欠なバイポーラ注入およびエレクトロルミネッセンスは、たとえ架橋剤の比率が比較的高くとも並びに膜厚が小さいため電流−電圧特性が特に注入端子に敏感となる場合でも、著しく損なわれることはない。従って、これらのデバイスは最適化されない。47nmというOC1C10−PPVの厚さは最適な60−65nmよりもかなり小さく、使用される架橋剤フラクションは必要とされる分(約0.5%)よりもかなり過剰である。
【0183】
(B)FETにおけるチャネル層の架橋およびフォトパターンニング
実施例6(架橋化/フォトパターン化P3HT−チャネル底部ゲートFET):
a.200nmのシリコン酸化物最上部誘電体層および金のソース−ドレイン端子パッドを持つあらかじめパターン化されたp+−ドーピングSi基板をバレル型エッチング装置(Tegal Barrel Etcher 421、典型的な条件:圧力450ミリバール、電力200W)内で10分間酸素プラズマに露光することによって清浄にし、その後CMOS級の水、イソプロパノールで洗浄し、そして窒素噴射中で乾燥させる。あらかじめパターン化されたチャネル長さは10μmでありチャネル幅は2ミリである。ヘキサメチルジシラザンを900rpmで30秒間基板上にスピンし、その後基板を120℃で2分間ホットプレート上で空気中で焼き付ける。
【0184】
b.その後、位置規則的なポリ(3−ヘキルチオフェン)(P3HT)の重量に対して5%のエチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(I)を配合したものを1.8%w/v%クロロフォルム溶液からスピン成型して厚さ50nmの膜を得る。その後膜は、膜表面における輝度1mW/cm2で254nmの深紫外線照射にフォトマスクを介して窒素下で2分間露光し、クロロフォルムで現像し、窒素によってブローオフする。
【0185】
c.デバイスはその後、2分間100℃でホットプレート上で窒素下でアニーリングする。
【0186】
このFETの伝達特性を図9に示す。しきい値ゲート電圧(Vth)は約−0Vである。ゲート電圧(Vg)がこのしきい値を越えたとき、チャネル導電性の強いターンオンが観察された。−30Vのドレイン電圧(Vds)および−50Vのゲート電圧(Vgs)のときに100μAの「オン」ソース−ドレインチャネル電流が得られる。ゲート電圧−50Vから+50Vの場合オン−オフ比は100よりも良好である。直線関係にあるIsd−Vgsの勾配から従来の数式により求められるFET易動度はほぼ3×10−2cm2/Vsである。架橋剤および光への露光が無い元のままのP3HTスピン成型膜の場合の典型的な易動度は10−1−10−2cm2/Vsである。順方向および逆方向走査特性は重複可能である。本実施例は、たとえかかる比較的高い架橋剤フラクションにおいてさえも本願記載の光架橋プロセスの後に所望の電界効果易動度を実質的に保持できることを証明するために提示するものである。電界効果易動度は、インターフェースに分離しがちな欠陥および不純物の存在に特に敏感である。この知見により、このアプローチが高い電界効果易動度を持つポリマートランジスタをパターンニングする実行可能な手段であることが実証される。実際のデバイスでは、FETトランジスタはガラス、ポリエチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)または他のポリマー材料などの他の基板上に構成され、ソース、ドレイン、ゲート端子としては導電性ポリマーベースの材料などの他の材料が使われる。また、使用される電界効果ポリマーの分子量も本願で使われたもの(約30,000)よりも一桁ほど大きくなる。従って、使用される架橋剤フラクションはさらに1%未満まで減少し、本プロセスの有利な特徴がさらに強化される。
【0187】
実施例7(架橋化/フォトパターン化TFB−チャネル最上部ゲートFET):
電界効果ポリマーをTFBと取り替え、TFBの重量に対して1.3%のエチレングリコールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)(I)をブレンドし、メシチレン中で1.8w/v%の濃度で使用する以外は、実施例6と同じである。これを1600rpmで60秒間基板上で回転させて30nmの膜を得る。基板には20nmの金のソースおよびドレイン端子があらかじめパターンニングされており、チャネル長さは5μmでありチャネル幅は10ミリ(くし歯状アレー)である。その後、基板を窒素中でフォトマスクを介して2分間254nm照射に露光してTFB膜を架橋し、10秒間メシチレンに浸漬して現像した後6000rpmで30秒間スピンオフする。
【0188】
メシチレン中のビス(ジメチルビニルベンゾシクロブテン)ジシロキサンモノマー(米国ミシガン州のDow Chemical Company社製CycloteneR)を12.7重量/体積%の濃度に希釈して6000rpmで60秒間TFB膜上にスピンして、200nmの膜が得られる。なお、もしTFB膜が架橋されていなければ、このBCBベースのモノマー/メシチレン溶液を使うと形成されたTFB層はたちまち再溶解するであろう点に留意すること。その後基板を290℃で10分間ホットプレート上で窒素下で焼き付ける。
【0189】
PEDT:PSS(ドイツLeverkusenのHC Starck社より「Baytron P」(登録商標)として販売されている)を塗布して実施例1に記載した最上部ゲート電極を得る。
【0190】
このデバイスの伝達特性を図10に示す。しきい値ゲート電圧(Vth)は約−30Vである。これはTFB電界効果ポリマー中の痕跡のイオン性不純物によって大きく制限される。ゲート電圧(Vgs)がこのしきい値を上回ったときチャネル導電性の強いターンオンが見られる。ドレイン電圧(Vds)が−20Vで(Vg−Vth)が−30Vの場合、数マイクロアンペアの「オン」のソース−ドレインチャネル電流(Isd)が得られる。オンオフ比は1000よりも良好である。直線関係にあるIsd−Vgsの勾配から従来の数式により求められるFET易動度は約4×10−4cm2/Vsである。この実施例は、光架橋化電界効果ポリマーが、さもなければ最初に形成されたポリマー膜の一体性を破壊するであろう広範囲の後続の溶媒加工工程(例えばゲート誘電体、中間レベル平坦化層、相互接続子などの成膜)と有利に組み合わされることができることを示すために提示するものである。元のスピン成型TFB膜の電界効果易動度は10−3−10−4cm2/Vsである。従って、実施例6のように易動度が損なわれることはなく、本願で説明する方法およびプロセスが大きく異なる特性を有する広範囲の半導体ポリマーと適合することが証明される。
【0191】
実施例8(ドナー−アクセプタ多層光導電性デバイス):
正孔輸送ドナーポリマー(「PFB」)および電子輸送アクセプタポリマー(「F8BT」)の複数の交互の層を、横方向のくし歯状アレーがパターンニングされたガラス基板上に作成する。ドナー−アクセプタという用語をここで援用するのは、光励起がこれら2つのポリマー間のインターフェースで分離して、インターフェースのPFB側に正孔を残しインターフェースのF8BT側に電子を残すことを示すためである。それぞれの層は厚さが約40nmである。多層形成のそれぞれの段階で収集される紫外可視吸収スペクトルを図12に示す。全体の膜厚が光学的な厚さ尺度に近づくにつれて透明ウィンドウにおける光学的散乱がなくなり干渉縞パターンが規則的に発生することから分かるように、膜の品質は良好である。事実、スペクトルはPFBまたはF8BTの膜を多層積層物に加えるごとに体系的に構築されていく。このことは数多くの後続ポリマー層が、厚さを制御した状態でかつ下にある層の一体性を損なうことなく成膜され得ることを意味する。これは本発明で記載する架橋部分技術が無ければ達成不可能である。
【0192】
励起子拡散距離は有機材料中では制限されるため、個々のドナーおよびアクセプタ膜厚を励起子拡散距離(典型的には20nm)よりも小さくして最大の電荷キャリア濃度が得られるようにすることで大きな光導電性感度が提供されるようにすると有利である。この可能性を試験するために2つの多層積層物が製造され、1つの積層物ではF8BTの厚さが40nmであり第2の積層物では80nmであった(図13の挿入図に示すデバイス構造)。PFB層の厚さは両積層物で同一に維持された(約40nm)。積層物を、F8BT成分だけを吸収する457nm(Arイオンレーザー)で照射した。積層物における累積F8BT厚さは積層物を横切るすべての光が実際に吸収される厚さとされた。得られた光電流図を図13に示す。この図は、より薄いF8BT層ではドナー−アクセプタ積層物の光導電性が2倍に増加することを示し、予想と一致する。
【0193】
本実施例は、多層化有機電子素子を製造して有利に相補的なドナー−アクセプタおよび電子−正孔輸送特性を利用する可能性を開くアプローチの有用性をさらに示すために提示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】図1は、異なる架橋剤比率での典型的な膜保持(またはゲル化点)特性を示す。
【図2】図2は、膜厚と膜保持との間の関係を示す。
【図3】図3は、TFB中間層を備えるデバイスのデバイス特性を示す。
【図4】図4は、図3で報告されているデバイスに類似するがTFB中間層は備えていないデバイスのデバイス特性を示す。
【図5】図5は、実施例3で測定された電流密度対ダイオード電圧を示す。
【図6】図6は、実施例3で測定されたルミネッセンス対ダイオード電圧を示す。
【図7】図7は、実施例3で測定された外部量子効率対ダイオード電圧を示す。
【図8】図8は、実施例5によるデバイスと、架橋剤がない類似デバイスとの間のデバイス特性の比較を示す。
【図9】図9は、実施例6によるFETの伝達特性を示す。
【図10】図10は、実施例7によるデバイスの伝達特性を示す。
【図11】図11は、2つの異なるポリマーにおける架橋部分エチレンジオールビス(p−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート)についてのフォトルミネッセンス効率を示す。露光条件は、254nm Hg線;1mW/cm2、2分である。
【図12】図12は、実施例8で記載された多層形成中に収集された紫外−可視吸収スペクトルを示す。
【図13】図13は、実施例8で記載されているデバイスについての光電流図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を基板上に成膜して層を形成する工程、および
(ii)不溶性架橋化ポリマーを形成する条件下で工程(i)で形成された層を硬化する工程を備え、
架橋部分が溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の範囲の量で工程(i)に存在することを特徴とする、
ポリマーデバイスを形成する方法。
【請求項2】
前記方法は更に、第2のポリマーを含む溶液を工程(ii)で形成された架橋化ポリマー上に成膜する工程を備えてなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は更に、前記不溶性架橋化ポリマーを化学的に改質する工程を備えてなる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)で形成されるポリマーは、工程(i)で形成された層の一部だけを硬化し非硬化部分を除去することによってパターン化される上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
非硬化部分の除去は溶媒で洗浄することによって行われる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋部分は200nmから400nmの範囲の波長を持つ紫外線照射に感光し、工程(ii)の前記条件は不活性雰囲気中で200nmから400nmの範囲の波長を持つ紫外線照射に前記層を露光することを含む上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
工程(ii)で形成される架橋化ポリマーは部分的に、実質的に、または完全に共役化されている上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
工程(ii)で形成される架橋化ポリマーは半導体ポリマーである上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体ポリマーはフルオレンおよび/またはインデノフルオレンおよび/またはトリアリールアミンおよび/またはチオフェンおよび/またはフェニレンおよび/またはフェニレンビニレンおよび/または置換アゾールの繰返し単位を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(i)で形成される前記層の厚さは1から500nmの範囲である上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項11】
ポリマーデバイスは、ポリマーLEDデバイス、ポリマー導波LEDデバイス、ポリマー分布ブラッグリフレクタ、ポリマー微小共振器LEDデバイス、ポリマーFETデバイス、ポリマー光検出器およびポリマー光起電力デバイスからなる群から選択されるデバイスである上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記架橋部分は工程(ii)において自己結合または自己重合しない上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記架橋部分はポリマーまたはオリゴマーの主鎖の一部であるかまたはポリマーまたはオリゴマーに側鎖として結合する上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーまたはオリゴマーは、前記架橋部分を含み下記一般式IIIまたはIVで示される構造単位を備え、
【化1】
式中ArFは置換または非置換フッ素化アリール基から成り、Rはポリマーまたはオリゴマーの主鎖の構造単位である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ArFはパーフルオロフェニル基から成る請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記架橋部分は溶液中のポリマーまたはオリゴマーと混合される請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記架橋部分は下記一般式Iで示され、
N3−ArF−N3 (I)
式中ArFは置換または非置換フッ素化アリール基から成る、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記架橋部分は下記一般式IIで示され、
N3−ArF−L−ArF’−N3 ( II )
式中ArFおよびArF’はそれぞれ独立してフッ素化アリール基から成り、Lは適宜2価または多価結合基から成る、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記架橋部分は工程(i)において、溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の範囲の量で存在する請求項16乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーまたはオリゴマーは前記架橋部分の添加前に、溶液中に0.5から2.5重量%の範囲の量で存在する請求項16乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれかに記載の方法によって得られるポリマーデバイス。
【請求項22】
コア層および少なくとも1つのクラッド層を備え、前記コア層および前記少なくとも1つのクラッド層はそれぞれ架橋化ポリマーを備えてなる導波LEDデバイス。
【請求項23】
半導体ポリマーおよび架橋部分を含む溶液であって、架橋部分は溶液中のポリマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の量で存在することを特徴とする溶液。
【請求項24】
前記架橋部分は溶液中のポリマーと混合される請求項23に記載の溶液。
【請求項25】
前記架橋部分は下記一般式IIで示され、
N3−ArF−L−ArF’−N3 ( II )
式中ArFおよびArFはそれぞれフッ素化アリール基であり、Lは適宜2価および多価結合基から成る、請求項24に記載の溶液。
【請求項26】
(i)ポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を基板上に成膜して層を形成する工程、
(ii)不溶性架橋化ポリマーを形成する条件下で工程(i)で形成された層を硬化する工程、および
(iii)工程(ii)で形成された不溶性ポリマーをアニーリングする工程を備えてなる、ポリマーデバイスを形成する方法。
【請求項27】
工程(iii)におけるアニーリングは1−100分間120から200℃の範囲の温度で行われる請求項26に記載の方法。
【請求項28】
アルキレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート);アルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンズアミド);アルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド);シクロアルキレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート);シクロアルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンズアミド);シクロアルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド);およびこれらのテトラフルオロベンズアミド、テトラフルオロベンゼンスルホンアミドまたはテトラフルオロベンゾエートのフッ素のうちの1つがCF3で置換された等価化学構造物からなる群から選択される化学構造を有する架橋部分。
【請求項29】
1,3−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート);1,4−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート);エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンズアミド);エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド);およびこれらのテトラフルオロベンズアミド、テトラフルオロベンゼンスルホンアミドまたはテトラフルオロベンゾエートのフッ素のうちの1つがCF3で置換された等価化学構造物からなる群から選択される化学構造を有する、請求項28に記載の架橋部分。
【請求項30】
下記一般式IIで示される架橋剤を作る方法であって、
N3−ArF−L−ArF’−N3 ( II )
式中ArFおよびArF’はそれぞれフッ素化アリール基、パーフルオロフェニル基、またはトリフルオロフェニル基から成り、Lは適宜2価または多価結合基から成り、前記方法は、
(i)XがClまたはBrであるF−ArF−COXまたはF−ArF−SO2Xを、YがH、アルキル、またはアリールでありRがアルキレンまたはシクロアルキレンであるHO−R−OHまたはNHY−R−NHYと反応させてF−ArF−L−ArF’−Fを作る工程、および
(ii)F−ArF−L−ArF’−Fを金属アジドと反応させる工程を備えてなる方法。
【請求項31】
ArFおよび/またはArF’はパーフルオロフェニル基から成る請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ArFおよび/またはArF’は下記一般式から成り、
【化2】
式中Bは大型の置換基である、請求項30または31に記載の方法。
【請求項1】
(i)ポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を基板上に成膜して層を形成する工程、および
(ii)不溶性架橋化ポリマーを形成する条件下で工程(i)で形成された層を硬化する工程を備え、
架橋部分が溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の範囲の量で工程(i)に存在することを特徴とする、
ポリマーデバイスを形成する方法。
【請求項2】
前記方法は更に、第2のポリマーを含む溶液を工程(ii)で形成された架橋化ポリマー上に成膜する工程を備えてなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は更に、前記不溶性架橋化ポリマーを化学的に改質する工程を備えてなる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)で形成されるポリマーは、工程(i)で形成された層の一部だけを硬化し非硬化部分を除去することによってパターン化される上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
非硬化部分の除去は溶媒で洗浄することによって行われる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋部分は200nmから400nmの範囲の波長を持つ紫外線照射に感光し、工程(ii)の前記条件は不活性雰囲気中で200nmから400nmの範囲の波長を持つ紫外線照射に前記層を露光することを含む上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
工程(ii)で形成される架橋化ポリマーは部分的に、実質的に、または完全に共役化されている上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
工程(ii)で形成される架橋化ポリマーは半導体ポリマーである上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体ポリマーはフルオレンおよび/またはインデノフルオレンおよび/またはトリアリールアミンおよび/またはチオフェンおよび/またはフェニレンおよび/またはフェニレンビニレンおよび/または置換アゾールの繰返し単位を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(i)で形成される前記層の厚さは1から500nmの範囲である上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項11】
ポリマーデバイスは、ポリマーLEDデバイス、ポリマー導波LEDデバイス、ポリマー分布ブラッグリフレクタ、ポリマー微小共振器LEDデバイス、ポリマーFETデバイス、ポリマー光検出器およびポリマー光起電力デバイスからなる群から選択されるデバイスである上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記架橋部分は工程(ii)において自己結合または自己重合しない上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記架橋部分はポリマーまたはオリゴマーの主鎖の一部であるかまたはポリマーまたはオリゴマーに側鎖として結合する上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーまたはオリゴマーは、前記架橋部分を含み下記一般式IIIまたはIVで示される構造単位を備え、
【化1】
式中ArFは置換または非置換フッ素化アリール基から成り、Rはポリマーまたはオリゴマーの主鎖の構造単位である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ArFはパーフルオロフェニル基から成る請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記架橋部分は溶液中のポリマーまたはオリゴマーと混合される請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記架橋部分は下記一般式Iで示され、
N3−ArF−N3 (I)
式中ArFは置換または非置換フッ素化アリール基から成る、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記架橋部分は下記一般式IIで示され、
N3−ArF−L−ArF’−N3 ( II )
式中ArFおよびArF’はそれぞれ独立してフッ素化アリール基から成り、Lは適宜2価または多価結合基から成る、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記架橋部分は工程(i)において、溶液中のポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の範囲の量で存在する請求項16乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーまたはオリゴマーは前記架橋部分の添加前に、溶液中に0.5から2.5重量%の範囲の量で存在する請求項16乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれかに記載の方法によって得られるポリマーデバイス。
【請求項22】
コア層および少なくとも1つのクラッド層を備え、前記コア層および前記少なくとも1つのクラッド層はそれぞれ架橋化ポリマーを備えてなる導波LEDデバイス。
【請求項23】
半導体ポリマーおよび架橋部分を含む溶液であって、架橋部分は溶液中のポリマーおよび架橋部分の繰返し単位のモル総数に対して0.05から5モル%の量で存在することを特徴とする溶液。
【請求項24】
前記架橋部分は溶液中のポリマーと混合される請求項23に記載の溶液。
【請求項25】
前記架橋部分は下記一般式IIで示され、
N3−ArF−L−ArF’−N3 ( II )
式中ArFおよびArFはそれぞれフッ素化アリール基であり、Lは適宜2価および多価結合基から成る、請求項24に記載の溶液。
【請求項26】
(i)ポリマーまたはオリゴマーおよび架橋部分を含む溶液を基板上に成膜して層を形成する工程、
(ii)不溶性架橋化ポリマーを形成する条件下で工程(i)で形成された層を硬化する工程、および
(iii)工程(ii)で形成された不溶性ポリマーをアニーリングする工程を備えてなる、ポリマーデバイスを形成する方法。
【請求項27】
工程(iii)におけるアニーリングは1−100分間120から200℃の範囲の温度で行われる請求項26に記載の方法。
【請求項28】
アルキレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート);アルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンズアミド);アルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド);シクロアルキレンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート);シクロアルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンズアミド);シクロアルキレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド);およびこれらのテトラフルオロベンズアミド、テトラフルオロベンゼンスルホンアミドまたはテトラフルオロベンゾエートのフッ素のうちの1つがCF3で置換された等価化学構造物からなる群から選択される化学構造を有する架橋部分。
【請求項29】
1,3−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート);1,4−シクロヘキサンジオールビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾエート);エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンズアミド);エチレンジアミンビス(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンスルホンアミド);およびこれらのテトラフルオロベンズアミド、テトラフルオロベンゼンスルホンアミドまたはテトラフルオロベンゾエートのフッ素のうちの1つがCF3で置換された等価化学構造物からなる群から選択される化学構造を有する、請求項28に記載の架橋部分。
【請求項30】
下記一般式IIで示される架橋剤を作る方法であって、
N3−ArF−L−ArF’−N3 ( II )
式中ArFおよびArF’はそれぞれフッ素化アリール基、パーフルオロフェニル基、またはトリフルオロフェニル基から成り、Lは適宜2価または多価結合基から成り、前記方法は、
(i)XがClまたはBrであるF−ArF−COXまたはF−ArF−SO2Xを、YがH、アルキル、またはアリールでありRがアルキレンまたはシクロアルキレンであるHO−R−OHまたはNHY−R−NHYと反応させてF−ArF−L−ArF’−Fを作る工程、および
(ii)F−ArF−L−ArF’−Fを金属アジドと反応させる工程を備えてなる方法。
【請求項31】
ArFおよび/またはArF’はパーフルオロフェニル基から成る請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ArFおよび/またはArF’は下記一般式から成り、
【化2】
式中Bは大型の置換基である、請求項30または31に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−527542(P2007−527542A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506242(P2006−506242)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002078
【国際公開番号】WO2004/100282
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(503372842)ケンブリッジ エンタープライズ リミティド (32)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002078
【国際公開番号】WO2004/100282
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(503372842)ケンブリッジ エンタープライズ リミティド (32)
【Fターム(参考)】
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