説明

マイクロエレクトロニクス分野において単結晶膜を形成する方法

所定の材料の薄膜を形成する方法は次の工程を含む:表面上に上記所定の材料のアモルファスおよび/または多結晶膜12を有する第1の基板10が準備される;この第1の基板に疎水性直接結合(分子付着)によって、第2の基板20が結合され、上記第2の基板は、その表面上に所定の結晶配向の単結晶参照膜21を有する;少なくとも、アモルファスおよび/または多結晶膜に熱処理が適用され、上記熱処理は、このアモルファスおよび/または多結晶膜12の少なくとも一部に参照膜21の結晶配向に沿って固相再結晶を受けさせるように設計され、この参照膜は再結晶種として機能を果たす;少なくとも部分的に再結晶された膜は、参照膜の少なくとも一部から分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクスの分野(用語の最も広い意味では、特に、マイクロ機械部品、マイクロ音響部品、マイクロ光学部品などの部品を含む)における、任意の厚みの単結晶層の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
実際には、マイクロエレクトロニクス部品の形成は、数ナノメートルから数ミクロン、または数10ミクロンの層に関連する様々な工程を意味し、部品のすべてまたは一部が形成される。この分野で最も使用される材料はシリコンであるが、他の材料、例えば、ゲルマニウム(およびシリコンを含むその合金)、ガリウムおよびその合金(特に、ガリウムひ素)、および元素周期表のIV族の他の元素、およびIII−V型またはII−VII型のさらなる化合物も使用される。いくつかのこれらの部品は半導体であり、それらがマイクロエレクトロニクス分野で使用される理由となっている。
【0003】
そのようなマイクロエレクトロニクス部品の形成は、多くの場合、層の面の1つを定義する絶縁層上に、略称をSOIというシリコンオンインシュレーターの層、すなわち、単結晶シリコンの有用層が形成される工程を含む。マイクロエレクトロニクス分野がシリコン以外の材料に開放されているので、有用層がシリコンと異なる材料からなる場合でさえ、表現SOIが使用され続けている。以下に、多くの説明がシリコンの場合になされるが、それらの説明は、マイクロエレクトロニクス分野での他の材料に一般化され得ることが理解される。
【0004】
SOI型の層を製造するいくつかの方法がある。
【0005】
このように、シリコンを全体的にまたは部分的に酸化シリコンに変えるために、シリコン(一般的に、単結晶シリコン)のウェハを熱酸化させることが知られている。この第1のウェハは、次いで、シリコン(一般的に、単結晶シリコンの)の第2のウェハに、特に分子結合によって結合される。次いで、ウェハのどちらかを薄くして、酸化シリコンの層上にシリコンの層を得れば十分である。この薄くすることは、研削、次いで化学機械研磨によって一般的に実行される。そのような技術は、シリコンの層が広範囲の厚みで得られることが可能である。それによって、特に、所望の厚みの層を得ることが可能となる。しかしながら、5ミクロンの厚みのオーダーより低い厚みの良好なレベルの均一性(典型的には、厚みは、平均値に対して+/−10%のみ変化する)を得ることが困難であることが判明し、ウェハは、マイクロエレクトロニクス分野では、典型的には、直径が約200〜300nm、またはさらに大きなオーダーからなるディスクであることが想起される。
【0006】
厚みが十分に制御されたシリコンのより薄い膜を得ることが望まれる場合、「Smart Cut」(TM)の名称で知られた技術を使用することが知られており、それは、簡略版で、水素イオンで、表面(厚みが典型的にはおよそ145nmであるシリコンの熱酸化膜を備えた)で酸化されたシリコンウェハに注入し、例えば、分子結合によってそのウェハを他のシリコンウェハに結合し、次いで、酸化シリコンの層(つまり、注入面と注入ピークの位置との間に位置する元のウェハの一部)上にシリコンの薄膜を得るように、例えば、熱アニールを使用して、注入ピークで、そのように得られた組立品内で分離を引き起こすことからなる。この技術の重要な利点は、元のウェハが、酸化膜に結合されたその薄膜の分離後に、他の薄膜の形成のために再利用されてもよいということであり、所望の層は別として全体の基板を消費することを含む先行技術に対してコストの点から非常に有益である。この「Smart Cut」(TM)技術で、非常に良好なレベルの均一性(典型的には、最大でも1%)で、数ナノメートルと数ミクロンとの間で小さな厚みが得られることが可能である。しかしながら、この技術は、分離されるハイブリッド層の厚みが注入深さに相当するので、3ミクロンより大きな層を得ることに十分に適していない。イオンの注入が最大限でも200KeVで一般的に実行されると仮定すると、この厚みに制限があることが理解され得る(シリコンは、約2.5μmで注入ピークに相当する)。所望の厚みが到達されるまで、エピタキシーによる薄膜の成長によってそのように得られた層を作り出すことがもちろん可能であるが、全体費用は、そのとき、上記引用された第1の技術より大きくなる。
【0007】
SOI型の層を得る他の技術は、名称「Eltran」(R)で知られており、シリコンウェハにおいて多孔性シリコンの層を生成すること、次いで、多孔性膜上にエピタキシーによって単結晶シリコンの膜を成長することからなる。この膜の表面は次に熱酸化され、次いで、第2のシリコンウェハ上に、例えば、分子結合によって結合され、次いで、その第2のウェハ上に単結晶シリコン膜を移動するように多孔質層内に破壊が引き起こされる。「Smart Cut」(TM)技術のように、この技術は、薄膜が分離された元のウェハの一部の再利用と同様に、良好なレベルの均一性で、非常に薄い層が得られることを可能にすることが理解され得る。しかしながら、この技術は、この技術が数ミクロンより低い厚みのためにのみ実際にが使用可能なように、孔およびエピタキシーを形成する工程のコストを鑑みて比較的高価である。
【0008】
従って、3つの上記各技術は制限を有する。第1の技術のみが、採用されるウェハの未使用部分の消費により高いコストを有しながら、厚膜が形成されることを可能とし(実際には、5ミクロン以上)、一方、次の2つの技術は、より少ない材料を消費するが、比較的高価な工程を実行し、さらに、それらは、小さな厚み(3ミクロン以下)に制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、単結晶層が、上記各技術の範囲を包含する広範囲の考えられる厚み(従って、数ナノメートルから数10またはさらに数百ミクロンまでの範囲)で、ウェハのスケールで、典型的には少なくとも10cm程度にわたる良好なレベルの均一性で、適度なコストのために、マイクロエレクトロニクスの分野において種々の材料で得られることを可能にする薄い層を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、所定の材料の薄い層を形成する方法であって、
表面上に上記所定の材料のアモルファスおよび/または多結晶層を含む第1の基板を準備することと、
第1の基板に、疎水性分子結合によって、所定の結晶配向を有する表面単結晶基準層を含む第2の基板を結合することと、
少なくとも、アモルファスおよび/または多結晶層に、再結晶種としての機能を果たす基準層の結晶配向に従うそのアモルファスおよび/または多結晶層の少なくとも一部の固相における再結晶を引き起こすようになされた熱処理を適用することと、
少なくとも部分的に再結晶された層を基準層の少なくとも一部から分離することと
を含む、方法を提供する。
【0011】
分離は、基準層の全体(またはほとんど全体)から生じることが好ましい。
【0012】
このように、本発明によれば、結合界面を介して結晶情報の伝播が生じ、分離は、有利には、結合界面に沿って(またはすぐ近くで)起こる。
【0013】
本発明の方法が、注入工程の実行を必要としないことに留意されたい。
【0014】
好ましくは、アモルファスおよび/または多結晶層が、熱処理の時に再結晶しないようになされた下位層に沿って延在するように、第1の基板は準備され、これが有する利点は、第2の基板に結合されたものに対する対向面上で、再結晶された層の表面の範囲をよく定めることである。その層は、一般的に、対象とする用途に従って選択される。特にSOIを製造することが望まれるなら、それは、誘電体層、例えば、アモルファス層の材料の酸化物の層などの酸化膜であることが好ましい。
【0015】
従って、本発明は、SOIのための再結晶種としてアモルファスおよび/または多結晶層上に一時的に加えられた層を使用し、それは、種形成基準層の結晶特性に依存して、得るための結晶形態の選択の際に大きな自由を付与する。
【0016】
この技術が、多孔性表面上でのエピタキシーの実行を含まないことによって、特に、「Eltran」(R)技術から区別されることが理解され得る(以下に意見が述べられるように、エピタキシーによる層、例えば、犠牲層の形成も、多孔質層の利用も除外しない)。さらに、結晶ネットワークの連続性は、結合界面にわたって作製されている。
【0017】
実際、再結晶によってSOI型の層を形成することを試みる他の選択は、シリコン酸化物層にアモルファスシリコンを堆積すること、およびアモルファスシリコンに再結晶を引き起こすのに十分な熱処理を適用することからなる。しかしながら、そのような自然発生の再結晶が絶縁層に沿った数10分の1センチメートルを超えない小スケールでのみ生じることを経験は示す。言いかえれば、自然発生の再結晶は、実際には、マイクロエレクトロニクスで使用されるウェハのように、広い部分にわたって単結晶層の形成を可能にしないであろう。そのような困難を克服することを試みるために、ELOGまたはELO(Epitaxy Lateral Overgrowth)と称する技術が、アモルファスシリコンの堆積の前に酸化膜に穴を形成するために準備する。このように、そのアモルファスシリコンの堆積においては、その一部は、その絶縁層、例えば、単結晶シリコンの下に位置する材料と接触する。再結晶条件によれば、絶縁層の下に位置する基板の単結晶の特徴は、その絶縁層の穴を「上がり」、それらの穴のまわりで再結晶された層に達する可能性がある。しかしながら、穴からの再結晶のこの種の欠点は、この再結晶が、これらの穴(従って、多結晶の再結晶)から隔てて十分に制御された方法で生じないということである。さらに、この選択の欠点は、絶縁層がもはや連続的ではないということであり、それは、それらの穴の位置で、再結晶された層の厚みの良好な決定に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0018】
分子結合が、基準層によって提供される種の役割を促進し、一方、材料(特に、接着剤または樹脂)の添加による結合は、そのような種の役割のための障害を構成する(これは、以下に示されるように、薄い犠牲層の存在を防止しない)ことが理解され得る。
【0019】
再結晶種形成基準層は、有利には、その厚みの少なくとも一部にわたって多孔性であり、それは、分離が破壊によってなされる可能性がある「脆弱」ゾーンの構成という利点を有する。言いかえれば、1つの選択によれば、第2の基板の準備、分子結合および再結晶のための熱処理は、この第2の基板が、好ましくは、界面に沿って、機械的強度が結合界面の機械的強度未満であるゾーンを含むような状態である。
【0020】
基準層が密度が高く、均一(すなわち、非多孔性)である場合、分離は、有利には、結合界面での未結合、または「Smart Cut」(TM)技術によって得られる。
【0021】
結合界面でのそのような未結合を促進するために、アモルファス層の再結晶のためのアニール後でさえ、結合された面間の界面での結合エネルギーが低いままであるように、分子結合は、有利には実行される。このために、アモルファス層上または種形成層上で、界面を形成する表面のうちの1つの表面を粗面化する、またはさらに十分に低い粗さで、それらの各表面を粗面化して、得られる分子結合が再結晶のためのアニール後に容易な分離を可能にするのに十分な強さであることを可能とすることがもたらされてもよい。
【0022】
そのような粗さは、例えば、種形成層の表面またはアモルファス層の表面を彫ることによって得られてもよい。単結晶シリコン層の場合には、この彫ることは、有利には、5分間またはさらに10分間、70℃で水、水酸化アンモニウムおよび過酸化水素(HO、NH/OHおよびH)の比率が1:1:5である溶液内で得られる(各材料を彫るために適切な溶液を選択する当業者の能力内にある)。典型的には、5ミクロン×5ミクロンの表面上でAFM(原子間力測定)によって測定されたおよそ0.2nmのRMS(二乗平均平方根)である粗さは、このようにして得られてもよい。この粗さは、0.1nmのRMSと1nmのRMSとの間に含まれるように制御されることが好ましい。
【0023】
結合される予定の層の粗さを変更する代わりに、犠牲層が、伝播する結晶情報を維持する条件で、これらの2つの表面間に設けられてもよく、それによって、種形成層が再結晶においてその役割をすることを可能にする。一例として、この犠牲層は、アモルファスおよび/または多結晶層を構成する2つの材料、および種形成層の材料の合金であってもよく、それは、シリコンまたはゲルマニウムの種形成層に結合したシリコンのアモルファス層の場合には、種形成層、例えば、SiGe(1−x)上でエピタキシーによって形成される。単結晶シリコン種によってシリコンのアモルファス膜を再結晶させることが望まれる場合、種上にSiGeの犠牲薄膜を堆積することが可能である。その層は、臨界厚みより小さな厚みでなければならない(SiGeが下層シリコンの格子定数で成長するまでの厚みであり、それによって、シリコンの結晶情報を保存する)。Si上のSi0.8Ge0.2について、典型的には、5nmの厚みに限定がされる。結合および再結晶のためのアニール後に、分離を得るために、次いで、例えば、機械研削または種基板で予め形成された埋め込み脆弱ゾーンに位置する破壊によって、種基板の大部分を取り除き、次いで、種基板の残りの部分を除去するために任意の適切な公知のタイプの1つまたは複数の選択的アタック溶液、もしあれば、次いで、SiGeの犠牲層(例えば、シリコンに対してSiGeを選択的に彫るための公知の溶液は、HF/HNOである)を採用することで十分である。
【0024】
未結合を促進するために、再結晶のサーマルバジェットを制限することも可能である(同時に結合界面を強化する傾向がある)。例えば、結合界面からスタートして、アモルファスおよび/または多結晶層の厚みの小さな部分のみを再結晶させ、再結晶処理の適用の期間を制限し、次いで未結合を実行し(結合界面が適度な強度を有する条件で)、次いで補足的サーマルバジェットの適用によってアモルファスおよび/または多結晶層の再結晶を継続、達成することが予想されてもよい。これは、結合界面の「他の側から」結晶情報を移動する間に、事前未結合サーマルバジェットが制限される(このようにして、構造が結合可能でなくなることを確実にする)ことを可能にする。サーマルバジェットの概念は、処理の温度およびその期間の両方を含むことが思い起こされることになる。
【0025】
アモルファスおよび/または多結晶層の一部のみ(実際には、厚みの一部)の再結晶を引き起こすようになされた第1の処理、および分離後にアモルファスおよび/または多結晶層の再結晶を継続、達成するようになされた第2の熱処理(またはさらにいくつかの熱処理)の適用の2つの処理工程でのそのような再結晶は、分離がなされる位置と無関係に、補足的熱処理が種形成層に適用される必要がないのでエネルギーの利点をも有する。
【0026】
たとえそれが有利であるにもかかわらず、その層の厚みの同じ部分にわたって、再結晶する層の全体にわたって、再結晶が得られる必要がないことが容易に理解され得る。分離後に続く熱処理の時に、層の残りのための種となるのに十分に大きくなるために再結晶されたその層の一部としては十分である。
【0027】
アモルファスおよび/または多結晶層および種形成層の分子結合は疎水性であることが上に述べられた。実は、これは、結合界面にわたって結晶情報の良好で十分な伝播を得る最良の方法(またはさらに唯一の方法)である。しかしながら、表面の1つが親水性の場合、界面に存在する酸化物がその結晶情報の良好な伝播を防ぐことが分かった。
【0028】
種形成層が多孔性の場合、種形成層は、実際には、単結晶(例えば、シリコンの多孔質層の形成が望まれる場合、シリコンの)から形成されるが、比較的低い表面多孔性を必要とする「Eltran」技術で必要とされるように、エピタキシーとの表面適合性を確実にしなければならない場合よりもはるかに簡単な(および経済的な)方法で、2つのレベルの気孔率を管理し、表面を満たす補充のアニール操作を行なうことを一般的に必要とする。
【0029】
種形成層の厚みは、有利には、数ナノメートルと数百ミクロンとの間に含まれ、好ましくは1ミクロンより大きい。
【0030】
アモルファスおよび/または多結晶層および種形成層のために異なる材料を選択する利点は、必要に応じて、プレ応力に相当する種形成層によって付与される結晶形態(特に、格子定数について)を備えたアモルファスおよび/または多結晶層の再結晶を引き起こすことがそのとき可能であるということである。このように、例えば、アモルファスシリコンの層のための種として緩和Si0.8Ge0.2の使用は、張力下でのシリコンの再結晶された層の形成に寄与する。
【0031】
下位層、例えば、誘電体層(上記参照)は、有利には、数ナノメートルから数ミクロンまで及んでもよい厚みである。
【0032】
下位層は、結晶でも結晶でなくても、他の下位層の表面に形成されてもよい。
【0033】
下位層は、酸化膜、例えば、キャリア基板(例えば、ウェハ)、例えば、シリコン基板の表面に形成された酸化シリコンの熱酸化によって得られた熱酸化物であってもよい。変形例として、この下位層は、その層およびキャリア基板を構成する材料を独立して選択することを可能にするキャリア基板上に堆積されてもよい。一例として、キャリア基板は、石英または石英ガラスからなっていてもよく、一方、下位層は、例えば、PECVDによって堆積された酸化シリコンからなる。
【0034】
この下位層の材料は、再結晶工程と適合する条件で、実際には広範囲の材料から選択されてもよい。このように、その材料は、キャリア基板またはスタート基板を構成する材料の酸化物であるだけでなく、窒化物(例えば、シリコンまたはアルミニウムの)、またはその高い誘電率(例えば、HfO)のために選択された材料、またはダイヤモンドなどからなっていもよい。その材料は、連続的に生成されたいくつかの層から形成されてもよい。
【0035】
このキャリア基板は、再結晶工程と適合する条件で、種形成層と異なる形態、または反対に同一の形態で、任意の適切な材料から形成されてもよいことが理解され得る。種形成層と異なる材料を選択する利点は、選択された特定の特性、例えば、種形成層とは異なる温度係数をその基板のために選択することができることである。これは、特に、構造(すなわち、組み立て後の層のセット)内での応力の生成を管理することを可能にする。その基板を構成する材料を、透明で柔軟性であるなどのように選択することも可能である。従って、キャリア基板またはスタート基板は、必要に応じて、ゲルマニウム、または炭化ケイ素、ガラス、石英、石英ガラスなどからなっていてもよい。
【0036】
その下位層は、必ずしもキャリア基板上に、またはスタート基板内に形成された層ではない。しかしながら、その下位層は、確かに、単独で十分に厚く、アモルファスおよび/または多結晶層のためのキャリア基板を構成してもよく、このように、例えば、アモルファスおよび/または多結晶層はシリコン基板上のゲルマニウムの層であってもよく、それはゲルマニウムの第2の種形成基板に結合される。アモルファスおよび/または多結晶層については、このように、下位基板と同じ材料を選択することが可能である。この場合、有利には、キャリア基板の結晶配向に対する種形成層のために異なる結晶配向が、その支持とは異なる配向でアモルファスおよび/または多結晶層が再結晶するように選択される。一例として、配向<110>の種でアモルファス(および/または多結晶)シリコンの層を再結晶させることによって、同じ材料であるが配向<100>の基板上に配向<110>の層を得ることが可能である。
【0037】
アモルファス層の堆積が、高温で、強い真空下でウェハ1つずつ実行されるエピタキシーに反して、低温で、大気圧で、いくつかの基板またはウェハにわたってキルン内で同時に実行されてもよいことに留意されたい。アモルファス形態でのこの堆積の処理は、このように集合的であり、エピタキシーによる堆積に対して非常にかなりの時間節約を可能にする。その処理は、また、その製造コストが低くなるように実行することが簡単な技術である。アモルファス層の厚みは、キルン内での堆積時間に従って任意に小さい、または大きくてもよいので、制御することは容易である。同様の意見が多結晶層に関して述べられてもよい。
【0038】
再結晶する層は、アモルファスおよび/または多結晶である(すなわち、単結晶でない)と述べられていた。アモルファス層の場合は、大きな実際的関心があるが、本発明が多結晶層(全体または一部で、残りはアモルファスであり、単結晶でない)の再結晶に有用に適用されてもよい用途があり、例えば、太陽光利用の分野では、その後切断されるポリシリコンのインゴットを形成することが知られている。そのとき、表面ポリシリコンを単結晶シリコンに転換することは有用であってもよい。
【0039】
再結晶のためのアニールは、有利には、シリコンのアモルファス層の場合には、数秒と数時間との間に含まれる期間で、200℃と1300℃との間で実行される。
【0040】
上記のように、この再結晶アニールは、典型的には、分離前の処理の期間を低減することによって、2工程(以上)で実行されてもよい。
【0041】
再結晶後に実行された分離は、特に、種層が多孔性の場合、または変形例として、結合界面の未結合によって、種層内(再結晶された層の近く)で第2の基板においてなされてもよいと述べた(これが、種形成層(および従って第2の基板の)の残りの部分の除去を必要としないという利点を有することが理解されることに関して)。
【0042】
両方の場合には、第2の基板が、その第2の基板の表面的なゾーンが再結晶のための種となる新しいサイクルに再利用されてもよいことが理解されてもよい。
【0043】
種形成層の分離は、種形成層(それが少なくとも部分的に多孔性の場合に、またはイオンがそこに注入された場合に)、または結合界面(その結合エネルギーが低い場合に)によって(または内で)構成された、少なくとも脆弱ゾーン内で、ツール(例えば、ブレード)の機械的挿入によって、または流体(特に、ガスまたは水によって)、または音波によって実行されてもよい。
【0044】
再結晶された層と種形成層との間の分離後、熱アニールは、有利には、まだ存在すると考えられる結晶欠陥をそこから除去するために、その再結晶された層に適用される(このアニールは、有利には、再結晶が実行された温度よりも一般的に高い温度で実行される)。
【0045】
仕上げ工程は、特に、例えば、粗さに関して良好な表面状態を得るために、そのように得られたSOI構造に役立ってもよい。それら仕上げ工程は、このようにして、還元雰囲気、真空下などで、化学機械研磨、アニール操作などの工程であってもよい。
【0046】
上記において、種形成層が連続的で均質だったことが非明示的に示された。これは、本発明の実行に必要ではない。このように、本発明は、また、ナノワイヤ(すなわち、ナノメートルまたは数ナノメートル、典型的には、5ナノメートル未満の大きさの直径のワイヤ)、例えば、酸化シリコン、あるいはSiGe(1−x)に囲まれたシリコンのナノワイヤからなる不連続層によって構成された種形成層で実行されてもよい。
【0047】
一例として、シリコンから形成された層の場合には、シリコンナノワイヤは、有利には、シリコンナノワイヤがすべて同じ結晶情報を有するように、単結晶シリコン基板上に生成される(「Kuiqing Peng,Ying Xu,Yin Wu,Yunjie Yan,Shuit−Tong Lee and Jing Zhu,small 2005,1,No.11,1062−1067頁」参照)。実行された方法は、例えば、以下に記載されたものである:
Allon I.Hochbaum,Rong Fan,Rongrui He and Peidong Yang,NANO LETTERS 2005,Vol5,No.3,457−460頁
Kuiqing Peng,Juejun Hu,Yunjie Yan,Yin Wu,Hui Fang,Ying Xu,Shuit−Tong Lee and Jing Zhu,Adv.Funct.Mater.2006,16,387−394頁
【0048】
好ましくは、酸化物の層は、次いで、ナノワイヤのセット上に堆積され、化学機械研磨の工程後に、「Volker Schmidt,Heike Riel,Stephan Senz,Siegfried Karg,Walter Riess,and Ulrich Gosele,small 2006年,第2巻,No.1,85−88頁」で説明されるように、酸化物および結晶シリコン(平らなワイヤのための)からなる表面が得られる。疎水結合は、次に、アモルファスシリコンの層上で実行され、次いで、再結晶のためにアニールされる。分離は、次に、複合酸化物/ナノワイヤ層内で、好ましくは機械的におよび/または化学的に(例えば、HF内での酸化物の分解)なされる。分離を促進するために、低い機械的強度を有する層、例えば、HfO、またはHfOおよび酸化シリコンからなる双晶層(分子結合に必要な平面を得るために、化学機械研磨が促進されることを可能にする酸化シリコンの上側層)で、ナノワイヤのまわりにある酸化シリコンを置換することが可能である。
【0049】
種形成層に関して前に述べられたように、ナノワイヤは、ゲルマニウムを再結晶することが望まれる場合(ゲルマニウムの通常の結晶形態による)、シリコンではなく、ゲルマニウムなどの他の材料であってもよい。
【0050】
シリコンナノワイヤ上にSi(1−x)Ge(例えば、x=0.2)を成長させることが可能もあり、その利点は、特に、緩和格子定数を備え、ナノワイヤ内に応力のないSi(1−x)Geを得ることである。アモルファスゾーン(例えば、シリコンの)の再結晶においては、それは、種になるナノワイヤのパラメーターであり、再結晶後、および分離後に、Si(1−x)Geに対応する格子定数を備え、従って内部応力を備えたシリコンが得られることを可能にする。
【0051】
均質層よりはむしろナノワイヤを使用して種形成層を形成する際の関心は、いくつかの材料の存在が分離を促進する可能性があるということであることが理解され得る。ナノワイヤは、また、緩和材料が容易に堆積されて、緩和材料を容易に得ることを可能にする。
【0052】
添付図面を参照して、本発明の目的、特徴および利点が、例示される限定しない例として付与される次の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】表面上に多孔質層を含み、第1の実施形態による本発明の実行のために予定される第1の基板の断面図である。
【図2】表面で基準層を含む第2の基板の断面図である。
【図3】図1および図2の基板の、分子結合による組立品の断面図である。
【図4】再結晶のためのアニールの操作後のこの組立品の断面図である。
【図5】分離中でのその組立品の断面図である。
【図6】考えられる仕上げ工程の適用後の第1の基板の断面図である。
【図7】表面上に多孔質層を含み、第2の実施形態による本発明の実行のために予定される別の第1の基板の断面図である。
【図8】表面に基準層を含む予定の別の第2の基板の断面図である。
【図9】準備の第1の工程後の第2の基板の断面図である。
【図10】準備の第2の工程後の第2の基板および分子結合による図7の第1の基板に対する組み立ての断面図である。
【図11】分離中の組立品の断面図である。
【図12】第3の実施形態による本発明の実行のために予定されたさらに別の第1の基板の断面図である。
【図13】図12の第1の基板および粗面化処理を受けた第2の基板の組立品の断面図である。
【図14】分離中の組立品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
第1の例の実施形態
図1から図6は、単結晶シリコンの層の形成のための本発明の方法の第1の実施形態の工程を記載している。
【0055】
200nmの直径の単結晶シリコンウェハ、および表面で、第1の材料、つまりシリコンのアモルファス層12によってここで構成された支持基板10を含む第1の基板を準備することによって開始される。キャリア基板は、例えば、水蒸気中で2時間アニールすることによって予め熱酸化されて、400nmの厚みの酸化シリコンの層11を生成した。50nmのオーダーの厚みの所望の層12がここで形成されるまで、熱酸化されたシリコン層は、アモルファスシリコンの低温(ほぼ400℃)でCVD(化学蒸着法)によって堆積された。
【0056】
酸化およびアモルファス堆積が炉内でまとめて実行される場合、基板は、図1で説明されるように、その各面上に酸化層およびアモルファス層(下面上の参照記号11’および12’)を含むが、当然のことながら、基板10の面のうちの1つのみの上にそのような層11および12が存在すれば十分である。
【0057】
電気化学を使用して、第2の基板20は、ここで、例えば、適切な条件下でHF系溶液での処理によって多孔性にされた自由表面下でその厚みの一部のみにわたる。この多孔質層21は、例えば、10ミクロンの厚みを有する。この基板20は、有利には、第1の基板10が形成されたウェハに類似するウェハである。図2の構成はこのようにして得られる。
【0058】
この第2の基板20は、ここで、配向<001>を備えた単結晶である。それは、例えば、400mA.cmの電流密度が背面で照明なしで適用された1Ω.cmのドープされたn型シリコンである。
【0059】
ここでHF(溶液中、または気相中)による処理からなる選択処理後、第1および第2基板10および20の2つの自由表面(つまり、層12および21の自由表面)は、疎水性分子結合(分子結合は、「分子付着」と称せられる場合がある)によって結合される。図3の構成はこのように得られる。
【0060】
熱アニールは、次に、このように分子結合界面を介して再結晶種形成基準層を構成する結晶パラメーター21によれば、単結晶シリコンへのアモルファス層12の固相において再結晶を引き起こすために実行される。
【0061】
このアニールは、例えば、200〜1200℃の間で0.5℃/minの温度傾斜からなっていてもよい。
【0062】
実際には、このアニールの影響は、アモルファス層の再結晶を引き起こすだけでなく、分子結合界面を強化することである。
【0063】
第1の基板10は、その各面上にアモルファス層を備えているので、アニール処理は、その上側面上の層12だけでなく、下側面上の層12’の再結晶を引き起こしたことが図4で留意されてもよい。しかしながら、その層12’は、いかなる種形成層にも接していなかったので、層12’は、多結晶の形態で再結晶される。
【0064】
図5に図式的で表されるように、再結晶のためにそのための基準となる層21からの再結晶された層(単結晶層12)の分離は、いかなる適切な手段によっても次に引き起こされる。
【0065】
結合界面(下記第3の例参照)のあまりにも強い強化を回避するために特有の予防がない場合に、その多孔質層が、結合界面より実際には機械的に脆弱であるならば、ここで考えられた例では、この分離は、多孔質層21内でなされる。
【0066】
この分離後、第2の基板20は、まだ多孔質層21の一部を含み、一方、その多孔質の他の部分は、分子結合の理由で第1の基板10+11+12に結合された。
【0067】
仕上げ処理が、次いで、例えば、多孔質層のその残りの部分を除去するように、化学機械的またはイオン研削の形態で適用される。必要に応じて、第1の基板の反対の面から、多結晶形態で再結晶された層12’を除去することがさらに可能である。変更された第1の基板がこのように得られ、再結晶種となる基準層として選択された層21のものによって設定された結晶特性(寸法および配向)を有する単結晶層12を含む。
【0068】
第2の基板20については、例えば、多孔質層の残りの化学的除去によって、除去後に実際には再利用されてもよい。その基板上に、新しい多孔質層が、次いで、同じまたは異なる結晶パラメーターによって新しい第1の基板のアモルファス層のための再結晶種となる予定で形成されてもよい。
【0069】
再結晶のための熱アニールは、変形例として、2つの工程(またはさらに多い)で実行されてもよく、その第1の工程は、界面からスタートするアモルファス層の厚みの一部の再結晶を引き起こすのに十分であり、その一部は、場合により小さくてもよい。分離後に、アモルファス層の残りの再結晶は、種として再結晶された部分をアモルファス層の残りに使用する1つまたは複数工程で得られてもよい。第1の工程は、例えば、上記のものよりより速い立ち上がりである。
【0070】
変形例として、層12および12’は、最初には、多結晶形態である。
【0071】
さらに他の変形例によれば、種形成層は、将来の分離を局部にとどめるように、イオンの適切な注入によって予め弱められる。
【0072】
第2の例の実施形態
図7から図11は、本発明の方法の他の実施形態を説明する。これらの図では、図1から図6のものに類似する要素は、番号100を付加することによって図1から図6のものから推定される参照符号で示される。
【0073】
従って、本発明のこの第2の例の実施形態は、第1の例の第1の基板10をもたらしたものと同じ操作を使用して、第1の基板110の準備で始まる。すなわち:
キャリア基板を構成する要素の酸化物によって構成された停止層111を形成するように、200nmの直径の単結晶シリコンのウェハ110の熱酸化、
例えば、50nmの厚みのアモルファスシリコンの層の酸化膜上への堆積。
【0074】
第1の例のように、ウェハ110は、その各面に沿って、酸化膜111または111’、次いでアモルファスシリコン112または112’層を延在している。
【0075】
ここで、例えば、第1の例の支持ウェハ20と同一のシリコンの第2のウェハ120上に、単結晶シリコン121のナノワイヤが形成される(つまり、それらのナノワイヤとそのウェハとの間に中間層なしで)。これらのナノワイヤは、例えば、「Allon I.Hochbaum,Rong Fan,Rongrui He and Peidong Yang,NANO LETTERS 2005 第5巻、No.3、457−460頁」または「Kuiqing Peng,Juejun Hu,Yunjie Yan,Yin Wu,Hui Fang,Ying Xu,ShuitTong Lee and Jing Zhu,Funct.Mater.2006年、16 387−394」に記載された方法で形成される。図8の構成はこのように得られる。
【0076】
ウェハ120上に形成されたこれらの単結晶ワイヤは、すべて、同じ配向、つまり、下層ウェハによってそれらに付与されたものを有していることに留意されたい。それから、不連続性にもかかわらず、これらのナノワイヤが単結晶層を形成するという結果となる。
【0077】
これらのナノワイヤは、互いに平行であり、それらの分離は、有利には、それらの横の寸法のもの未満であり、その結果、この不連続層121は、それらのナノワイヤを構成する材料によって形成された圧倒的多数にあり、典型的には、3分の2より大きい、またはさらに4分の3より大きい。
【0078】
図9に表されるように、第1の酸化物123は、ナノワイヤ間に堆積され、次いで、第2の酸化物124がナノワイヤを被覆する。表された例において、第1の酸化物は酸化ハフニウム(HfO)であり、一方、第2の酸化物は酸化シリコンである。
【0079】
ナノワイヤが再結晶種として機能を果たすことを可能にするように、それらのナノワイヤ121を露出するように、図9の構造に平坦化処理が適用される。
【0080】
それらのナノワイヤ間に位置する酸化物124と結合して、このように露出したナノワイヤの端面は、次いで、アモルファス層112の自由表面への、結晶情報の良好な伝播を確実にするように、疎水性分子結合によって組み立てられ、次いで、アニール処理は、組み立てられた構造に適用され、例えば、第1の例において適用された処理と同一であり、層112(および層112’が存在する場合には層112’)の再結晶を引き起こすようになされている。アモルファス層112と単結晶シリコンのナノワイヤとの間の分子結合を考えると、このアモルファス層は、それらの共通の結晶形態によれば、それらのナノワイヤの結晶パラメーターに従って再結晶する。これは、図10に図示される。
【0081】
図10では、表された例において、第2の基板は、ナノワイヤ間に2つの酸化物を含むことが留意されてもよく、それぞれ123、124で示され、その間で再結晶種および後の分離(上記参照)のための脆弱ゾーンの役割が共有されてもよい。
【0082】
図11に表されるように、分離処理が、ここで、酸化シリコンの層より機械的に強くなく、特有の予防措置が分子結合の時にされなければ、その結合に起因する界面より機械的に強くない酸化ハフニウムからなる(不連続)層内で次いで適用される。
【0083】
第1の例のように、ナノワイヤおよび第1の基板に結合された酸化シリコンの部分は、次いで、特定の化学アタックによって、例えば、湿式HFアタックによって除去されてもよい。
【0084】
変形例として、ナノワイヤ内、またはさらにそれらのナノワイヤ端と再結晶された層との間で破壊を促進するように、分離は、ナノワイヤおよび結合界面に沿って延在する材料の選択的化学アタック、ここでは、例えば、酸化シリコン層のHFでのアタックによって得られてもよい。
【0085】
さらに他の変形例によれば、例えば、分子結合を受ける予定の表面の1つは、第2の基板の酸化シリコンにおける過剰エッチングの形成によって粗面化され、分子結合はナノワイヤに向かい合って選択的に形成されることを効果として有し、このように、基板間の接続のためのブリッジまたはピラーを構成する。シリコンパターンを出現させることは、第2の基板の自由表面の十分に制御された部分への分子結合を局部にとどめることを利点として有し、結合界面の機械的強度が制御されることが可能であり、従って、その結合界面の位置で分離を得るために供給することが必要なエネルギーレベルの範囲を定める。
【0086】
そのような過剰エッチングは、例えば、酸化シリコン(2分間のアタックは、ナノワイヤのシリコンを著しくアタックすることなく、およそ12nmの酸化物を取り除く)の場合に1%HFによるアタックによって実行される。
【0087】
第1の例のように、再結晶のためのアニールは、分離工程によって分離された2工程で実行されてもよい。同様に、再結晶する層は、最初に多結晶であってもよい。
【0088】
第3の例の実施形態
図12から図14は、図式的に本発明の方法の第3の実施形態を表す。これらの図では、図1から図6のものに類似する要素は、番号200を付加することによってそれらの図で使用されるものから推定され得る参照符号で示される。
【0089】
この例において、第1の基板210は、前の例の第1の基板10および110と同じ方法で準備される。この第1の基板は、このように、その面の両方に沿って延在する酸化層211および211’、およびアモルファスシリコン212および212’の層を有するキャリア基板210を含む。
【0090】
制御された方法で、疎水性分子結合(結晶情報の最適の伝播のため)によって得られる界面の機械的強度を下げるように、粗面化処理は、次いで、第2の基板220の自由表面に適用され、その自由表面は、その第2の基板自体の自由表面であってもよい(すなわち、層にいかなる添加なしで)。一例として、その第2の基板がシリコンである場合、この粗面化は、10分間70℃で、水、水酸化アンモニウムおよび過酸化水素(HO、NH/OHおよびH)の比率が1:1:5である溶液でのアタックによって得られ、0.2nmRMSの粗さをほぼ得ることを可能にする(5ミクロン×5ミクロンの領域にわたってAFMによって測定された)。
【0091】
得られたこの粗さは、図13の参照符号225で、非常に誇張された形態で表されている。
【0092】
変形例として、またはさらに、アモルファス層の自由表面の粗さを変更することも可能である。
【0093】
2つの表面の粗さは、実際には、著しく分子結合を妨げないように、0.4nmのRMSを超えてはいけない。
【0094】
高温(1000℃超)で超高真空下での平滑化処理(化学機械研磨CMPなどの)アニール処理、高温(600℃超)で水素分圧下でのアニール操作、および水酸化アンモニウム系の上記のもの、または希釈HF、HF/HNO、HF/CrO、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)またはHF/CHCOOOH(ペルアセタート)系の化学アタックなどの粗面化処理を交互にすることによって、表面粗さを制御することが可能である。もちろん、高温での熱処理は、分子結合前に多結晶形態でアモルファス層を再結晶させないように、アモルファス層に適用されてはならない。
【0095】
2つの表面は、次に、疎水性タイプの分子結合によって結合される。それは、シリコンの場合には、Si−Hタイプの表面機能化を得るために、例えば、HF系溶液で化学アタックによって表面の準備を終了する問題である。酸化シリコンが存在せず、末端がSi−Hタイプである2つの表面が、次いで接触して置かれる。
【0096】
サーマルバジェットが、前述のように適用されて(少なくとも1つの期間/温度ペアによって定義される)、再結晶を引き起こす、または少なくとも開始する。
【0097】
後の分離(図14参照)が、次いで、例えば、挿入がその界面で試みられるブレードなどの機械的ツールの適用によって、結合界面で得られてもよいことが理解され得る。他のタイプの分離も、例えば、構造に曲げ力を適用することによって、液体またはガスの局所的なジェットを発射することによって、または特に、超音波によっても想定されてもよい。
【0098】
分離後に、他のサーマルバジェットが、単結晶の再結晶化を終了するために適用されてもよく、それは第1のサーマルバジェットの間にちょうど始まる。
【0099】
第1の基板の仕上げは、第2の基板の残りの部分を取り除くことがもはや必要ではないということによって、前の例に対して簡素化される。
【0100】
当業者の一般的知識に従って、結合条件、再結晶処理、またはさらに表面の処理を適応させることによって、本発明は、他の材料、特に、ゲルマニウムまたはシリコンゲルマニウム合金、さらには元素周期表のIII−V族用合金に適用してもよいことが上記から理解され得る。
【0101】
上記の例において、アモルファス層は、数10ナノメートルの厚みに再結晶されるが、公知の技術的な限定を有することなく、必要に応じて、はるかに厚い単結晶層の形成に本発明は当てはまることが理解される。従って、本発明は、特に、数ミクロンの厚み、またはさらに10ミクロン程度よりさらに厚い単結晶層の形成を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の材料の薄い層を形成する方法であって、
表面上に前記所定の材料のアモルファスおよび/または多結晶層を含む第1の基板を準備することと、
第1の基板に、疎水性分子結合によって、所定の結晶配向を有する表面単結晶基準層を含む第2の基板を結合することと、
少なくとも、アモルファスおよび/または多結晶層に、再結晶種としての機能を果たす基準層の結晶配向に従うそのアモルファスおよび/または多結晶層の少なくとも一部の固相における再結晶を引き起こすようになされた熱処理を適用することと、
少なくとも部分的に再結晶された層を基準層の少なくとも一部から分離することと
を含む、方法。
【請求項2】
アモルファスおよび/または多結晶層が熱処理の時に再結晶しないようになされた下位層に沿って延在するように第1の基板が準備されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下位層が酸化層であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
下位層がアモルファスおよび/または多結晶層の材料の熱酸化物の層であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アモルファスおよび/または多結晶層の堆積が、同じ炉内でいくつかの基板上に同じ材料を堆積することによってまとめて実行されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2の基板の準備、分子結合および再結晶用熱処理は、この第2の基板が、界面に沿って、機械的強度が結合界面の機械的強度未満であるゾーンを含むことにあることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
基準層が、その厚みの少なくとも一部にわたって多孔性であり、分離は、多孔性ゾーン内で引き起こされることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
分子結合によって結合される予定の面のうちの1つに、その粗さを増大させるように表面処理が適用され、分離はそのように得られた結合界面で引き起こされることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
そのように形成された粗さが、0.1nmのRMSから1nmのRMSの間に含まれることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
基準層が、同じ配向および同じ結晶寸法を有する単結晶ナノワイヤのネットワークの形態で準備されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
基準層が、ナノワイヤ間に、分子結合界面に沿って延在する少なくとも1つの層と、界面に沿って延在する前記層の機械的強度未満であり、前記界面の機械的強度未満である機械的強度を有する層とを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
基準層は、アモルファスおよび/または多結晶層が応力状態で再結晶することによって、アモルファスおよび/または多結晶層の材料とは異なる材料から形成されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アモルファスおよび/または多結晶層および基準層が、シリコン、ゲルマニウムおよびそれらの合金から選択される材料からなることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
再結晶のための熱処理が、アモルファスおよび/または多結晶層の一部のみの再結晶を引き起こすようにだけなされ、分離後に、アモルファスおよび/または多結晶層の再結晶を達成するようになされた第2の熱処理が適用されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
再結晶に起因する考えられる結晶欠陥を除去するように、分離後にアニール処理が適用されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−507172(P2012−507172A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533793(P2011−533793)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052096
【国際公開番号】WO2010/049657
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(510099914)
【Fターム(参考)】