説明

マイクロ総合分析システム

【課題】複数流体の混合比を安定化させるマイクロ総合分析システムを提供する。
【解決手段】マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部と、流体が流通する流路と、2以上の流体が合流して混合される流体混合部と、が少なくとも設けられた検査チップと、システム本体とを備え、そのシステム本体は、少なくとも ベース本体と、そのベース本体内に配置され、該検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部と、形状が略同一の複数のマイクロポンプとを含むマイクロポンプユニットと、検出処理装置と、少なくとも該マイクロポンプユニットの機能と該検出処理装置の機能とを制御する制御装置と、を備え、各マイクロポンプの駆動電圧を実質的に略同一にしながら、該流体混合部において合流する2流体の混合比が、略m:nの割合(mおよびnは同時に1であることはない)となるように合流する量比を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、セ
ンサーなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(特許文献
1)。これは、μ−TAS(Micro total Analysis System)、バイオリアクタ、ラブ・
オン・チップ(Lab-on-chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。現実には遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化されたミクロ化分析システムは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とすることによる恩恵は多大と言える。
【0002】
各種の分析、検査ではこれらの分析用チップにおける分析の定量性、解析の精度、経済性などが重要視される。そのためにはシンプルな構成で、高い信頼性の送液システムを確立することが課題である。精度が高く、信頼性に優れるマイクロ流体制御素子が求められている。これに好適なマイクロポンプシステムおよびその制御方法を本発明者らはすでに提案している(特許文献2〜4)。
【0003】
上記ミクロ化分析システムにおいて、複数の流体、例えば試薬、試料をチップ内の微細流路で混合することが、ほとんど例外なく必要な工程として組み込まれる。従来、2つの液体をm:nの混合比で混合させる場合、それぞれの液体を送出するマイクロポンプの駆動電圧を変えることにより発生圧力を違えて液体の送液流量を調整することにより、混合比を制御する方式が採られていた。かかる方式では混合比が1:1であるか、これに近い比であれば問題はないが、混合比率が高い場合には、一方のマイクロポンプの駆動電圧を相対的にかなり低くする必要があるため、他方のポンプ力の影響を受けて混合比が安定しにくいという問題があった。また、マイクロポンプによって流路内に流体の存在しない初期状態から流体の送出を開始する場合、送出された流体によって流路が時間の経過とともに徐々に満たされていくことになる。それによって、マイクロポンプの負荷である流路抵抗値も時間とともに徐々に増加することになり、結果としてマイクロポンプが送出する流体の流速、つまり流量が徐々に低下していく。流量の目標値を定めてそれに応じた駆動電圧をマイクロポンプに供給していても、流路抵抗値の変化によって流量が目標値からずれてくるという問題がある。このように流路の合流部から下流にさらに流路が伸びる場合には、下流流路の流路抵抗、送液圧力の変動の影響を受けて、時間とともに流量が変化するために上記混合比を安定化させることは一層困難となる。
【0004】
シンプルな構成で、高い信頼性の送液システムを確立するためには、精度が高く、信頼性に優れるマイクロ流体制御素子の使用とともに、上記混合比が自在に変更でき、しかも安定して実現できることが必須であり、そのための技術の開発が要請されている。
【特許文献1】特開2004-28589号公報
【特許文献2】特開2001-322099号公報
【特許文献3】特開2004-108285号公報
【特許文献4】特開2004-270537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこれらの実状に鑑みてなされたものであり、2種類の流体をm:nの混合比で混合させる場合に、それぞれの流体を送出するマイクロポンプの駆動電圧を変えることなく、正確にその混合比を制御するマイクロ総合分析システムを提供する。本システムにお
いて混合比が1:1からかけ離れた高い比率であっても、2流体の安定的な混合比を確保できることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマイクロ総合分析システムは、
マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部と、流体が流通する流路と、2以上の流体が合流して混合される流体混合部と、が少なくとも設けられた検査チップと、
システム本体と、
を備え、そのシステム本体は、少なくとも
ベース本体と、
そのベース本体内に配置され、該検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部と、形状が略同一の複数のマイクロポンプとを含むマイクロポンプユニットと、
検出処理装置と、
少なくとも該マイクロポンプユニットの機能と該検出処理装置の機能とを制御する制御装置と、
を備え、
該流体混合部において合流する2流体の混合比が、略m:nの割合(mおよびnは同時に1であることはない)となるようにする場合には、各マイクロポンプの駆動電圧を実質的に略同一にしながら合流する量比を調整していることを特徴としている。
【0007】
前記の混合比が略m:nになるように、合流する2流体を送出する流路のそれぞれの流路抵抗、R1+R2(R1は、マイクロポンプから合流点までの間の流路抵抗であり、R2は、当
該駆動電圧でのマイクロポンプの実効的内部流路抵抗である)を違えて、合流する量比を調整することが好ましい。
【0008】
すなわち、前記m:nの割合で合流する2流体を送出する流路31および流路33の合
流点での流量比が、
【0009】
【数1】

【0010】
(それぞれ流路31、流路33を流通して、m:nで合流する2流体を送出する各ポンプを、P1、P2とする。)
に比例するように流路抵抗が調整される。
【0011】
前記の流路抵抗の調整は、合流する2流体を送出する流路の断面積もしくは流路の長さを違えることに基づいてもよい。
前記の混合比が略m:nになるように、合流する流体を送出するマイクロポンプの使用台数および流路数を増減して合流する量比を調整してもよい。
【0012】
前記の流体が流れる流路が、検査チップ上に設けたマイクロメートルオーダー幅の微細流路であることを特徴としている。
前記マイクロポンプが、
前記微細流路に設けられ、流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、
前記微細流路に設けられ、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小さい第2流路と、
前記微細流路に設けられ、第1流路および第2流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、
該アクチュエータを駆動する駆動装置と
を備えるマイクロポンプであることが望ましい。
【0013】
本マイクロ総合分析システムは、前記検査チップのポンプ接続部と前記マイクロポンプユニットのチップ接続部とを液密に密着させた状態で該検査チップを該ベース本体内に装着した後、該検査チップにおいて検体中の標的物質を分析することを特徴とする。
【0014】
本発明による2流体の混合比の制御方法は、前記マイクロ総合分析システムにおいて、流体混合部において合流する2流体の混合比が、略m:nの割合(mおよびnは同時に1であることはない)となるようにする場合には、流体を送出する各マイクロポンプの駆動電圧を実質的に略同一にしながら、合流前の流体が流通するそれぞれの流路の流路抵抗を違えるか、あるいは流体を送出するマイクロポンプの使用台数および流路数を増減させて、合流する量比を調整することを特徴としている。
【0015】
前記の流路抵抗を違えることは、合流する2流体を送出する流路の断面積もしくは流路の長さを違えることに基づいている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシステムにおいて、2種類の流体をm:nの混合比で混合させる場合に、それぞれの流体を送出するマイクロポンプのすべての駆動電圧を、常に同じにしてポンプを駆動させる。これによりいずれの流路についても流入口から合流部までの圧力は連動して変化し、同一の割合を保つことから、合流量の比は常に一定のm:nとなる。特に混合比が1:1からかけ離れた高い比率であっても、2流体の安定的な混合比を確保できる。
【0017】
本発明により、シンプルな構成で、複数流体の安定的かつ精度の高い混合を実現し、効率良く迅速な分析のためのマイクロ総合分析システムを提供する。
〔発明の詳細な説明〕
本明細書において、「流体」とは、流体収容部などからマイクロポンプにより送出され、チップ内の流路を流れるものであり、適用する流体として液体、流動体、気体などであってもよい。対象とする流体は、実際は液体であることが多く、具体的には、各種の試薬類、試料液、変性剤液、洗浄液、駆動液などが該当する。
「微細流路」は、検査チップに形成された微小な溝状の流路のことである。試薬類などの収容部、反応部位もしくは検出部位が、容量の大きい広幅の液溜め状に形成されている場合にも、これらを含めて「微細流路」ということもある。「遺伝子」とは、何らかの機能を発現する遺伝情報を担うDNAまたはRNAをいうが、単に化学的実体であるDNA、RNAの形でいうこともある。分析対象である標的物質を「アナライト」ということもある。
・本発明のマイクロ総合分析システムの概要
本発明のマイクロ総合分析システムは、
マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部と、流体が流通する流路と、2以上の流体が合流して混合される流体混合部と、が少なくとも設けられた検査チップと、
システム本体と、
を備え、そのシステム本体は、少なくとも
ベース本体と、
そのベース本体内に配置され、該検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部と、形状が略同一の複数のマイクロポンプとを含むマイクロポンプユニットと、
検出処理装置と、
少なくとも該マイクロポンプユニットの機能と該検出処理装置の機能とを制御する制御
装置と、
を備え、
該流体混合部において合流する2流体の混合比が、略m:nの割合(mおよびnは同時に1であることはない)となるようにする場合には、各マイクロポンプの駆動電圧を実質的に略同一にしながら合流する量比を調整していることを特徴としている。
【0018】
以下、図面1〜8を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明のマイクロ総合分析システムの一実施形態における構成を示した概念図である。かかる実施形態では、図示したように検査チップ2とともに、このチップを収容する装置として、反応のための加熱・冷却ユニット(ペルティエ素子3、ヒーター4)と、送液用マイクロポンプ11、駆動液タンク10およびチップ接続部を有するマイクロポンプユニットと、その送液、温度、反応の各制御に関わる制御装置(図示せず)と、光学検出系(LED6、ホトダイオード5など)を含み、データの収集(測定)および処理をも受け持つ検出処理装置(図示せず)とを備えているシステム本体1がある。
【0019】
検査チップ2は、一般に分析チップ、マイクロリアクタ・チップなどとも称されるものと同等である。検査チップは、例えば樹脂、ガラス、シリコン、セラミックスなどを材料とし、そこに微細加工技術によりその幅および高さが約10μm〜数百μmのマイクロオーダーのサイズを有する微細流路を形成したものである。その縦横のサイズは、通常、数十mm、高さが数mm程度である。
【0020】
上記チップでは、各種試薬の収容部、検体収容部などの各収容部内の液体が、マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部12によってこれらの各収容部に連通された上記マイクロポンプ11によって送液される。
【0021】
検査チップ2以外の構成要素については、これらを一体化したシステム装置本体1とし、チップ2をこの装置本体に着脱するように構成することが望ましい。またマイクロポンプ11として、通常、形状が略同一の複数のマイクロポンプが装置本体に組み込まれる。これら複数のマイクロポンプと、検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部とを含むマイクロポンプユニットが、本発明システム本体のベース本体内に配置されている。図示したようにチップ2を該装置本体に装着し、面同士で重ね合わせることによりチップ2のポンプ接続部を装置本体のマイクロポンプユニットにあるチップ接続部のポートに接続するようになっている。
【0022】
マイクロポンプ11を制御する電気制御系統の装置は、流量の目標値を設定し、それに応じた駆動電圧をマイクロポンプに供給している。そうした制御を受け持つ制御装置についても、後述するように本発明システムの装置本体に組み込んで、検査チップのポンプ接続部を装置本体のマイクロポンプユニットのチップ接続部に接続させた場合に作動制御させるようにしてもよい。
【0023】
光学的検出、データの収集および処理を受け持つユニットである検出処理装置は、例えば可視分光法、蛍光測光法などの手法が適用される場合、その光学的測定の手段として特に限定されないが、LED、光電子増倍菅、フォトダイオード、CCDカメラなどがその構成要素としてシステム装置本体内に適宜設置されることが望ましい。
【0024】
少なくとも前記マイクロポンプユニットの機能と検出処理装置の機能とを制御する制御装置が本発明システムの装置本体に組み込まれている。その制御装置は、さらに温度管理、測定データの記録と処理なども含めてシステムを統括的に制御支配させてもよい。この場合の制御装置は、予め送液の順序、容量、タイミングなどに関して設定された諸条件を、マイクロポンプおよび温度の制御とともにプログラムの内容としてマイクロ総合分析シ
ステムに搭載されたソフトウェアに組み込まれている。測定試料である検体の前処理、反応および検出の一連の分析工程は、前記のマイクロポンプ、検出処理装置および制御装置とが一体化されたシステム装置本体1にチップを装着した状態で行なわれる。装着したチップに試料を注入してから、あるいは試料を注入したチップを装置本体に装着してから分析を開始してもよい。試料および試薬類の送液、前処理、混合に基づく所定の反応および光学的測定が、一連の連続的工程として自動的に実施され、測定データが、必要な条件、記録事項とともにファイル内に格納される形態が望ましい。
・流体収容部
検査チップ2には、流体収容部として試料液を収容する試料収容部のほか、各試薬を収容するための複数の試薬収容部が設けられ、この試薬収容部には所定の反応に用いる試薬類、洗浄液、変性処理液などが収容される。
【0025】
試薬収容部には、場所や時間を問わず迅速に検査ができるように、予め試薬が収容されていることが望ましい。チップ内に内蔵される試薬類などは、蒸発、漏失、気泡の混入、汚染、変性などを防止するため、その試薬部の表面が密封処理されている。
・マイクロポンプ11
マイクロポンプとしては、アクチュエータを設けた弁室の流出入孔に逆止弁を設けた逆止弁型のポンプなど各種のものが使用できるが、ピエゾポンプを用いることが好適である。図2(a)は、ピエゾポンプの一例を示した断面図、図2(b)は、その上面図である。このマイクロポンプには、第1液室48、第1流路46、加圧室45、第2流路47、および第2液室49が形成された基板42と、基板42上に積層された上側基板41と、上側基板41上に積層された振動板43と、振動板43の加圧室45と対向する側に積層された圧電素子44と、圧電素子44を駆動するための駆動部(図示せず)とが設けられている。この駆動部と、圧電素子44表面上の2つの電極とは、フレキシブルケーブルなどによる配線で接続されており、かかる接続を通じて当該駆動部の駆動回路によって圧電素子44に特定波形の電圧を印加する構成となっている。
【0026】
この例では、基板42として、厚さ500μmの感光性ガラス基板を用い、深さ100μmに達するまでエッチングを行なうことにより、第1液室48、第1流路46、加圧室45、第2流路47および第2液室49を形成している。第1流路46はその幅を25μm、長さを20μmとしている。また、第2流路47は、その幅を25μm、長さを150μmとしている。
【0027】
ガラス基板である上側基板41を、基板42上に積層することにより、第1液室48、第1流路46、第2液室49および第2流路47の上面が形成される。上側基板41の加圧室45の上面に当たる部分は、エッチングなどにより加工されて貫通している。
【0028】
上側基板41の上面には、厚さ50μmの薄板ガラスからなる振動板43が積層され、その上に、例えば厚さ50μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックスなどからなる圧電素子44が積層されている。
【0029】
駆動部からの駆動電圧により、圧電素子44とこれに貼付された振動板43が振動し、これにより加圧室45の体積が増減する。第1流路46と第2流路47とは、幅および深さが同じで、長さが第1流路よりも第2流路の方が長くなっており、第1流路46では、差圧が大きくなると、流路内で渦を巻くように乱流が発生し、流路抵抗が増加する。一方、第2流路47では、流路幅が長いので差圧が大きくなっても層流になり易く、第1流路に比べて差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が小さくなる。
【0030】
例えば、圧電素子44に対する駆動電圧により、加圧室45の内方向へ素早く振動板43を変位させて大きい差圧を与えながら加圧室45の体積を減少させ、次いで加圧室45
から外方向へゆっくり振動板43を変位させて小さい差圧を与えながら加圧室45の体積を増加させると、流体は同図のB方向へ送液される。逆に、加圧室45の外方向へ素早く振動板43を変位させて大きい差圧を与えながら加圧室45の体積を増加させ、次いで加圧室45から内方向へゆっくり振動板43を変位させて小さい差圧を与えながら加圧室45の体積を減少させると、流体は同図のA方向へ送液される。
【0031】
なお、第1流路と第2流路における、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合の相違は、必ずしも流路の長さの違いによる必要はなく、他の形状的な相違に基づくものであってもよい。
【0032】
上記のように構成されたピエゾポンプによれば、ポンプの駆動電圧および周波数を変えることによって、所望する流体の送液方向、送液速度を制御できるようになっている。図2(a)(b)に図示されていないが、第1液室48には、駆動液タンク10につながるポート72が、第2液室49にはポンプ接続部と連結するポート73がそれぞれ設けられている。
【0033】
図2(c)に、このポンプの他の例を示した。この例では、ポンプをシリコン基板71、圧電素子44、および図示しないフレキシブル配線から構成している。シリコン基板71は、シリコンウエハをフォトリソグラフィー技術により所定の形状に加工したものであり、エッチングにより加圧室45、ダイヤフラム43、第1流路46、第1液室48、第2流路47、および第2液室49が形成されている。第1液室48にはポート72が、第2液室49にはポート73がそれぞれ設けられており、例えばこのピエゾポンプを図1のチップ2とは別体とする場合には、このポート73を介して検査チップ2のポンプ接続部12と連通する。例えば、ポート72、73が穿孔された基板74と、検査チップのポンプ接続部近傍とを上下に重ね合わせることによって、ポンプを検査チップ2に接続することができる。また、前述したように、1枚のシリコン基板に複数のポンプを形成することも可能である。この場合、チップ2と接続したポートの反対側のポートには、駆動液タンク10が接続されていることが望ましい。ポンプが複数個ある場合、それらのポートは共通の駆動液タンクに接続されていてもよい。
【0034】
上記マイクロポンプと、図1に示した本発明システムとの関係を以下説明する。図1の例では、マイクロポンプは、検査チップ2とは別の装置としてシステム本体に属し、駆動液タンクと連通している。マイクロポンプは、検査チップ2とは、両者が互いに所定の形態で接合したときに、検査チップ上のポンプ接続部12と連結して検査チップの流路と連通するようになる。
【0035】
図2において、第1液室48にはポート72が設けられており、その第1液室は、「リザーバ」の役割を演じ、ポート72で駆動液タンク10から駆動液の供給を受けている。第2液室49にはポート73が設けられている。第2液室は、マイクロポンプユニットの流路を形成し、その流路の先にポート73があり、検査チップの「ポンプ接続部」12とつながる。
【0036】
図3は、マイクロポンプとしてのピエゾポンプを図1の検査チップ2とは別体とした場合におけるチップ2のポンプ接続部周辺の構成を示す。この図でマイクロポンプの流体送出のポートから検査チップの流路へと接続するポンプ接続部12から下流の流路が検査チップ上にある。(a)は駆動液を送液するポンプ部の構成を示し、同図(b)は試薬を送液するポンプ部の構成を示している。ここで、24は駆動液の収容部であり、図1の駆動液タンクに相当するである。駆動液は鉱物油などのオイル系または水系のいずれであってもよい。25は、予め収容された試薬を封止する封止液の収容部である。この封止液は、微細流路への漏出により試薬が反応してしまうこと等を防止するためのものである。封止
液は、微細流路中に充填してもよく、封止液用に設けられた貯留部に充填してもよい。
【0037】
なおマイクロポンプそのものもチップ上に組み込むことも可能である。特にチップ上の流路が比較的単純であり、反復使用を前提とする目的または用途、例えば化学合成反応用のマイクロリアクタとする場合にはこの形態を採り得る。
・検査チップ
検査チップ2は、マイクロリアクタとして、化学分析、各種検査、試料の処理・分離、化学合成などに利用される。本発明のチップの基本構造は、プラスチック樹脂、ガラス、シリコンなどの1以上の成形材料を適宜組み合わせて作製され、少なくとも2つの基板で本体が構成されるチップタイプのマイクロリアクタである。本発明の検査チップにおける好ましいその構造は、溝形成基板および被覆基板なる基本的基板を用いて、構造部として、ポンプ接続部、弁基部および液溜部(試薬収容部、検体収容部、廃液貯留部など)の構造部を形成するとともに、流路が少なくとも該溝形成基板上に形成されており、該溝形成基板における、少なくともこれらの構造部、該流路および検出部を、あるいは少なくとも検出部を光透過性の被覆基板を密着させて覆うことを特徴としている。
【0038】
チップの材料として、上記のように様々な成形材料が使用可能であり、個々の材料特性に応じて使用される。本発明のシステムに使用される検査チップにおいて、その流路、流路エレメントおよび躯体は、チップを製造容易なディスポーサブルタイプとするために、量産可能であり、軽量で衝撃に強く、焼却廃棄が容易なプラスチック樹脂で形成される。用いられるプラスチック樹脂は、好ましくは加工成形性、非吸水性、耐薬品性、耐熱性、廉価性などの特性が良好であることが望まれる。
【0039】
溝形成基板など流路を形成加工する基板では、吸水による流路の変形などが起こりにくく、微量の検体液が途中でロスすることなく送液されるように疎水性、溌水性のプラスチックが好ましい。このような材質には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、フルオロカーボン、飽和環状ポリオレフィンなどの樹脂が例示される。分析の都合により100℃近くに加熱する必要がある場合には
、耐熱性に優れる樹脂に変更する必要がある。それにはポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂が例示される。蛍光物質または呈色反応の生成物などを光学的に検出するために、マイクロリアクタ表面のうち少なくとも微細流路の検出部位を覆うその検出部分は、光透過性である部材であることが必要である。したがって、光透過性の被覆基板は、透明な材料、アルカリ硝子、石英硝子、透明プラスチック類が使用可能である。その被覆基板は、透明板として、該溝形成基板上の、少なくともこれらの構造部、該微細流路および検出部を覆う形態となるように、溝形成基板と接着されている。
・流路
マイクロリアクタとしての検査チップの流路は、基板上に目的に応じて予め設計された流路配置に従って、形成される。流体が流れる流路は、例えば幅および深さが数十〜数百μm、好ましくは幅50〜200μm、深さ25〜300μm程度に形成されるマイクロメーターオーダー幅の微細流路である。流路幅が50μm未満であると、流路抵抗が増大し、流体の送出および検出上不都合である。幅500μmを超える流路ではマイクロスケール空間の利点
が薄まる。その形成方法は、従来の微細加工技術による。典型的にはフォトリソグラフィ技術による感光性樹脂による微細構造の転写が好適であり、その転写構造を利用して、不要部分の除去、必要部分の付加、形状の転写が行われる。チップの構成要素を型どるパターンをフォトリソグラフィ技術により作製し、このパターンを樹脂に転写成形する。したがって、マイクロリアクタの微細流路を形成する基本的基板の材料は、サブミクロンの構造も正確に転写でき、機械的特性の良好なプラスチックが好ましく用いられる。ポリスチレン、ポリジメチルシロキサンなどは形状転写性に優れる。必要であれば射出成形、押し
出し成形などによる加工も使用してもよい。
【0040】
微細空間では、流路内面が疎水性である流路が流体の流れを止めたり、緩めたりなどする流体運動の制御に好都合である。そこで微細流路を形成する基板に、溌水性のプラスチック樹脂を使用すれば、流路内を特に撥水コーティングは必要ない。特に必要であれば、フッ素系ポリマー材料のコーティングを施してもよい(例えば特開2004-75780号公報)。・複数の流体の混合
複数の微細流路を流れる流体が流体混合部に集まって合流し、混合する場合、それらの間の混合比は必ずしも1:1とは限らず、必要に応じて様々に変えることも多い。2種類の流体の合流・混合は、具体的には試薬と試薬、または検体と試薬とを流路内で混合する場合が該当する。例えば、検体液と反応試薬液を混合するときには、往々にして後者の方の容量が多い。2つの流体を1:1の混合比で混合する場合には、それぞれの流体を送出するマイクロポンプが同タイプでしかもその駆動電圧および流通する流路の流路抵抗が略同一であれば、2流体を1:1の割合で合流させればよい。しかし、2流体の混合比が1:1からはずれると上述のような問題が生じる。マイクロリアクタによる分析システムでは微小量の流体を高精度に送る必要があるばかりでなく、短時間で充分に混合し、安定した混合比が得られることが求められる。2種類の流体をm:n(mおよびnは同時に1であることはない)の高い混合比で混合させる場合には、それぞれの流体を送出するマイクロポンプの駆動電圧を変え、それによりポンプの発生圧力を違えて流体の送液流量を調整することにより混合比を制御する方式がある。このような方式では、「従来の技術」欄で述べた問題が存在している。2流体を混合させる際に、正確な混合比が安定して確立されないと、分析の精度にも影響する。正確な混合比を得るには、精密な流体の流量制御および混合方法の面から検討することが必要である。一例として、流量センサーを用いて流量を計測し、計測値に基づいてフィードバック制御を行う方法も考えられるが、センサーおよび制御回路がシステムをより複雑なものとし、その分コスト的に不利となる。
【0041】
本発明のマイクロ総合分析システムでは、次の構成で混合比を安定的に制御する。すなわち、該流体混合部において合流する2流体の混合比が、略m:nの割合(mおよびnは同時に1であることはない)となるようにする場合には、形状が略同一の各マイクロポンプの駆動電圧をすべて実質的に略同一にしながら合流する量比を調整していることを特徴としている。
【0042】
マイクロポンプの発生圧力Pは、ポンプに供給される駆動電圧にほぼ比例する。マイク
ロポンプの発生圧力Pとこのポンプにより送出される流体の流量をQ、当該駆動電圧でのマイクロポンプの実効的内部流路抵抗の値をR2とすると、次の式が成立する。
【0043】
P=R2×Q ・・・(1)
なお、式(1)は、マイクロポンプに対する外部負荷がない場合に相当する。ポンプに対し負荷となるような流路がつながっている場合には、これと同じ圧力Pに対して、流量Qは、当該外部負荷の分だけ少なくなる。ここで、「当該駆動電圧でのマイクロポンプの実効的内部流路抵抗」とは、マイクロポンプ自身が単独で持つ流体抵抗値を意味し、これはマイクロポンプに対する外部負荷がない状態で、ポンプの発生圧力Pと流量Qを実測して式(1)により求めることができる。「当該駆動電圧での」とするのは、このマイクロポンプが流路抵抗の非線形性を用いた原理で作動するために、駆動電圧が変わると、上記の内部流路抵抗値も変わる。ただし、その変化量は本発明の本質に影響を及ぼすような程度ではない。同様に「実効的」とするのは、本マイクロポンプでは、PとQの関係が比例関係から少しずれていることを考慮したものである。
【0044】
流体混合部において合流する2流体の混合比が、略m:nの割合(mおよびnは同時に1であることはない)となるようにする場合、本発明では、形状が略同一の複数のマイク
ロポンプを使用し、各マイクロポンプの駆動電圧がすべて実質的に略同一とし、かつ合流する2流体の合流量の比が略m:nとなるように調整する。「略m:n」とは、正確にm:nである場合のほか、測定誤差内で変動する範囲も含む趣旨である。上記の調整のために、具体的には、以下のいずれかの方策を採ることができる。
【0045】
最初の方法として、前記の混合比が略m:nになるように、合流する2流体を送出する流路のそれぞれの流路抵抗、R1+R2(R1は、マイクロポンプから合流点までの間の流路抵
抗であり、R2は、当該駆動電圧でのマイクロポンプの実効的内部流路抵抗である)を違えて、合流する量比を調整する方法である。すなわち、該2流体のそれぞれのR1+R2の間の
比が、略m:nになるように流路抵抗を違える方法である。実際は、各マイクロポンプはいずれも同一形状であることが製造上の理由から望まれるために、R2の値は略同一であることになり、上記の調整に主に用いられるのはR1である。このように流路抵抗が調整されていると、各マイクロポンプを略同一の駆動電圧で駆動したときに、当該2流体の混合比が略m:nとなる。
【0046】
各マイクロポンプを略同一の駆動電圧で駆動させたとき、上記のR1+R2が同一でなけれ
ば、合流する2流体の単位時間当りの流量が相違し、結果的に合流点に流入する流体量は同じにはならない。例えば流量の少ない方の流体が流れる流路の流路抵抗R1+R2を、流量
を高くする流体が流れる流路の流路抵抗R1+R2の値より高くすればよい。
【0047】
ここで流路の「流路抵抗」とは、流体が流路を通って流れる時の圧力損失の係数に相当し、流路を単位時間に流れる流体の体積つまり流量Q、流体が流路を流れることによる圧
力損失をΔPとした場合、流路抵抗R [N・s/m^5]は、下式で求められる。ただし、Nは力(Newton)、sは時間(second)である。
【0048】
R=ΔP/Q …(2)
この流路抵抗の値は、流路の入口に圧力をかけて流体を流した時の流量を測定し、その圧力をその流量の値で割ることにより求めることができる。
【0049】
特に、本発明における流路のように細くて長い流路であって流路内で層流が支配的であるならば、流路抵抗Rの値は、次の式で算出することもできる。
流路抵抗値: R = ∫[32×η/(S×φ2)] dL …(3)
(ηは粘度、Sは断面積、φは等価直径、Lは流路長さ)
なお、上記等価直径φは、幅:a,高さ:bの長方形断面の場合には、φ=(a×b)/[[a+b]/2] である。
【0050】
図5は、2つの流体の混合を行う流路構成の一例を示した図である。図示したように、マイクロポンプ11(図示せず)により送出され、流路31から合流する流体Aと、別の流体収容部からマイクロポンプ11により送出され、流路33から合流する流体Bとは、Y字流路の合流部で合流され、後続する流路15へ送り出される。この図5(a)におい
て流体Aを送出するポンプをP1、流体Bを送出するポンプをP2とし、2流体の合流点での、単位時間あたりの流量の比、Q1/Q2がm:n(mおよびnは同時に1であることはない)
の割合であれば、2流体の混合比はm:nになるはずである。これらの2流体の粘度が略同一であり、同一材質で設けられた流路31および33における流路断面積も同一であれば、これらの流路における流路抵抗R1(マイクロポンプから合流点までの間の流路抵抗)が同一であるとしてもよい。2流体の合流の開始時点では、合流後に流れる下流部流路15には、流体が充填されておらず、上記流量比は、両ポンプ、P1およびP2の発生圧力の比、換言するとポンプ圧電素子の駆動電圧の比に等しくなる。しかし、本発明では、マイクロポンプの駆動電圧を変更する代わりに、合流する2流体の単位時間当りの流量を合流点より上流で調整することにより混合比を略m:nとなるようにする。これを達成するには
、上述のようにそれぞれのポンプから合流点までの流路における流路抵抗R1を変えて調整すればよい。流量比は、(2)式から、
【0051】
【数2】

【0052】
と比例する。したがって流路31の流路抵抗をRとすると、m>n、Q1>Q2の場合には、
流路33の流路抵抗は、Rよりも大きくする必要があるが、これをR+ΔRとする。
実際には2流体がm:nの流量比で合流点にどんどん流入していくと、下流部流路15には混合比m:nを保ちながら2流体が充填されていき、これに伴い徐々にその流路抵抗R15が増加していく。従って、下流部流路15の流路抵抗R15は、合流開始時では0であるが、合流後は時間とともに変化し、これによるポンプの圧力損失もまた変化するが、この量は2つのポンプからの総送液量によって予測可能である。
【0053】
合流した混合流体の流量は、合流後の流路抵抗値の増加により低下するので、圧電素子に供給する駆動電圧を一定にしたままでは、流路15に送出する流量を一定にすることはできない。ところが2つのポンプの駆動電圧が略同一であれば、混合部よりも下流の流路の流路抵抗、毛管力が変化し、流量が時間とともに変わっても、2流体の流量比は常にm:nに保たれる。合流する流体を送出するすべてのマイクロポンプを常に同一の駆動電圧で駆動している限り、いずれの流路についても流入口から合流部までの圧力差は互いに連動しており、常に同じ割合を保って時間変動する。すなわち圧力が連動していると、常に同じ駆動電圧で駆動を続けるだけで、同じ割合を保って時間変動するために流量比も常に一定となる。なお、流量比だけでなく、流量の値も一定に保ちたい場合には、2つのポンプの駆動電圧を互いに略同一の関係を保ちながら、時間変動させてもよい。
【0054】
マイクロメートル領域での流路と流体との関係では、流体の挙動は慣性力よりも粘性力の方が支配的となる。したがってポンプの発生圧力と流量との関係は線形関係に近づき、上の(2)および(3)式の関係によりよく適合する。流路の幅が狭いほど、粘性力と慣性力との力の比を表す無次元パラメータであるレイノルズ数(=密度×速度×代表寸法÷粘度)が小さくなる。例えば幅が1mm以下の領域ではこの効果は大きい。このレイノルズ数から流体の流れが層流かどうかを推測できる。概ね、レイノルズ数が2000以下だと層流である。
【0055】
上式(3)から、流路抵抗Rは流路のS×φ2に逆比例することは明らかである。すなわ
ち流路が細くなると、流体送出時の抵抗が直接的に増えるために送出できる流体の流量は低下することとなる。これより流路抵抗を変える好ましい方法として、合流する2流体を送出する流路の流路断面積または流路の内径が異なるようにすればよい。流路断面積の広狭は、容易に達成できる方法である。流量を絞るためにその流体が流れる流路を狭くする場所は、マイクロポンプにより送出されてから合流点近くの地点までのいずれかの区間であるが、その長さ、位置などは、流体の種類、その流量およびマイクロポンプの発生圧力などに基づいて設定する(図5(b))。あるいは合流する2流体を送出する流路の長さを変えることで流路抵抗を変えてもよい(図5(c))。式(3)から、Rは長さで積分
して求めるため、流路の長さを長くするほどRが大きくなることは明らかである。
【0056】
以上の方法は予め微細流路の設計段階で考慮され、作製において具体化されるが、微細流路の形成後は容易に変更はできない。この不便を解消する別の方法としては、前記混合比が略m:nになるように、合流する流体を送出するマイクロポンプの使用台数および流
路数を増減して合流する量比を調整してもよい。例えば流量を多くする流体の方の流路を、1つの流路ではなく2以上の流路を使用し、各々の流路にマイクロポンプを配置することにより該流体の流量を相対的に多くする形態であってもよい(図5(d))。この態様では合流点で2流体が合流しても、各流体が流れて来た流路の数は同一ではない。各流路の流体について1台のマイクロポンプが受け持って送出するために、複数のポンプを並列で接続することになる。特開2004-169706号公報には、複数個のマイクロポンプを並列に
接続してシステム化することにより、流量、発生圧力を増やす流体輸送システムが開示されている。このシステムによれば、システム発生圧力を増やすとともに、複数のマイクロポンプについてポンプ間の干渉を抑止し、お互いの圧力波を利用し合って特性を上げるような種々の工夫も示されており、上記の態様に応用されてもよい。
【0057】
本発明のシステムは、2流体の混合比m:nにおいて、mとnの比率が高いほど、たとえば1:3、5:1のように1:1からかけ離れるほどその有効性が発揮される。すなわち、mとnの比率が高い場合に、一方のマイクロポンプの駆動電圧を低下させてそうした比率を実現しようとすると、混合後の流体が流れる下流部流路が混合流体で徐々に充填されることに伴うその流路抵抗の経時的変化、毛管力の変化によって合流比率は不安定になり、混合比がばらついたりする事態が生じる。また駆動電圧を下げると、用いるマイクロポンプの送出特性から精密な送出調整がますます困難なものとなる。特に本発明に使用する、バルブのないポンプの場合、低電圧で動かすポンプの力が微小であるために、高電圧で動かす方のポンプの力の影響を受けやすい。特にR15(t)が大きくなるほどその影響は増大する。本発明のように2つのポンプを同一電圧で駆動すると上記の問題は回避することができる。
また、上記で混合比m:nは、合流して混合される2種の流体についての混合比であるが、例えば図4に示すように、合流し混合される流体が3つ以上になっても、流体の混合比およびそれを実現する態様は、上記2流体の場合を組み合わせたものとして考えればよい。いずれかの流体を固定して、残る流体とはそれぞれ個別の混合比、すなわち2流体の関係において考えればよい。
【0058】
さらに本発明による2流体の混合比の制御方法は、
前記マイクロ総合分析システムにおいて、流体混合部において合流する2流体の混合比が、略m:nの割合(mおよびnは同時に1であることはない)となるようにする場合には、流体を送出する各マイクロポンプの駆動電圧を実質的に略同一にしながら、合流前の流体が流通するそれぞれの流路の流路抵抗を違えるか、あるいは流体を送出するマイクロポンプの使用台数および流路数を増減させて、合流する量比を調整することを特徴としている。
【0059】
前記の流路抵抗を違えることは、合流する2流体を送出する流路の断面積もしくは流路の長さを違えることに基づいている。
・流体混合部
図5は、2つの流体の混合を行う流路構成の一例を示した図である。図5(a)に示したように、合流点までの流路径が異なる2つの流路を流れる2つの流体は、合流点に単位時間あたり、それぞれm:nの比率で流入して合流する。そして上記のように最終的にm:nの比率で混合する。この場合、合流点からこの割合での幅からなる2層の流れを形成する。マイクロメートルオーダーの幅の流路15に一定の幅比で複数の流体を層流状に流す方法は、例えばマイクロリアクタなどにおいて一定の混合比で薬液を拡散混合させるような場合にしばしば用いられる。この手法によると、比界面積(液体の体積に対する、液体間界面の面積の比)が大きいこと、および拡散距離が短いことから、少量の液体を比較的短い時間で定量混合することができる。例えば、流路径100μmの流路で2:1の一定の割合で流路15に流体Aと流体Bとを送出した場合、図5(a)に示したように、概ね60μm幅の流体Aの層と、概ね30μm幅の流体Bの層とが形成され、しばらくすると自然に
拡散混合する。
【0060】
このように、複数の分岐流路から各流体を混合流路に送出する場合、各分岐流路ごとに混合比に応じた流量となるように送出することによって、迅速に混合することができるとともに、所望の比率でこれらの流体を混合することができる。
【0061】
2つの流体をそれぞれ所定の流量で流路15内へ合流させた後、例えば流体Aを送出するマイクロポンプを、送出方向を順・逆方向と繰り返し切り替えるように駆動し、流路15内の合流した2流体を流路15内で前後動させて混合を促進しても良い。例えば流路15の幅が0.2mm、深さが0.2mm、液量が25μlである場合、振幅25mm、周期5秒程度の往復動をさせればよい。この前後動により、流路15内の2つの流体は活発に拡散混合される。
【0062】
また、流体B側の流路33に逆止弁、能動弁などの弁を設けて、混合時にはそれを閉止するとともに、流体Aを送出するマイクロポンプによって流路15内の合流した2流体を前後動させると、混合用の別途のマイクロポンプを流路に配置する必要がない。このようなマイクロポンプには、図2に示したようなピエゾポンプが好適である。
・正確な混合比率
2つの流体をY字流路により混合する場合、各流体を同時に送出したとしても、流体の先頭部分では混合比率が安定しない。図6は、この先頭部分を切り捨てて、混合比率が安定してから混合液を次工程へ送出するようにした流路構成を示した図である。同図において、混合する流体31aおよび31bは、それぞれ流路15a、15bから混合流路15cへ送出される。
【0063】
混合流路15cから、混合流体31cを次工程へ送出する分岐流路15dが分岐され、混合流路15cにおける分岐流路15dとの分岐点よりも先の位置には、第1の送出制御部13aが設けられている。分岐流路15dにおける混合流路15cとの分岐点の近傍位置には、混合流体31cが通過可能な送出圧力が第1の送出制御部13aよりも小さい第2の送出制御部13bが設けられている。
【0064】
流路15aおよび流路15bから混合流路15c内へ送出された、流体31aと流体31bとの混合流体31cは、その先端部31dが第1の送出制御部13aに達するまで混合流路15c内を送出される。混合流体31cの先端部31dが第1の送出制御部13aに達した後、さらに15c内に送出することにより、第2の送出制御部13bから分岐流路15dへ混合流体31cを通過させ、混合流体31cを次工程へ送出する。
【0065】
例えば、第1の送出制御部における前記細流路の断面積を、第2の送出制御部における前記細流路の断面積よりも小さくすることによって、第2の送出制御部13bにおける混合流体31cが通過可能な送出圧力を、第1の送出制御部13aのそれよりも小さくすることができる。
・流体の送出制御方法
マイクロポンプ11を制御する電気制御系統においても、流量の目標値を設定してそれに応じた駆動電圧をマイクロポンプに供給しているシステムでも、流路抵抗値の変化によって流量が目標値からずれてくるという問題がある。複数のマイクロポンプによって複数の流体を送出して合流させる場合には、合流後の流路に満たされる流体量に応じて複数のマイクロポンプ相互間の影響度合いが変化する。これを解決する技術として、流量が目標値になるように制御する方法の発明が開示されている(特開2004-270537号公報)。本発
明ではこのような制御系にさらに流体の混合比を制御する回路を装置に付加してシステムを複雑化させるということはなく、先行発明のシステムをそのまま維持できるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
本発明のマイクロ総合分析システムは、流体のうち液体を対象とすることがほとんどである。以下は、そうした場合について説明をさらに加える。
検査チップ2は、例えば、50×76×3mmの大きさの長方形板状であり、好ましくは自己シール性を有する弾性材料からなり、少なくとも検出部では透明または半透明であって透光性を有する。自己シール性を有する検査チップ2は、ガラス基板などの表面に載せるだけで自己吸着により密着する。このような検査チップ2の材料として、例えば、シリコンゴムの一種であるPDMS(Polydimethylsiloxane)が用いられる。
【0067】
検査チップ2には、分析用または化学合成用の微細流路がパターニングされている。微細流路の寸法形状の例を挙げると、幅が100μm程度、深さが100μm程度の断面矩形の溝である。なお、上に述べた以外の種々の構成および材料を採用することができる。
【0068】
検査チップ内には、ポンプ接続部、微細流路、検体収容部、試薬収容部、送液制御部、反応部、検出部などが設けられ、それぞれ流路で連絡されている。さらに送液の精度を高めるために、逆流防止部、定量送液機構なども配設することが望ましい。
【0069】
以下、複数の液体を混合する1つの具体例を記す。図4において、各試薬収容部18a、18b、18cには、合計で2.5μl超の試薬が収容されており、合流点である流体混合部14で混合され、先端を切り捨てた計7.5μlの試薬混合液が、2.5μlずつ3本に分岐した流路15b、15c、15dへ送液される。例えば試薬収容部18b、18cに収容されていた液体は同一の緩衝液であり、試薬収容部18aに収容されていた試薬を3倍希釈する形で混合される。3本に分岐した流路15b、15c、15dのうち一つの流路は、検体液との混合および反応、検出系へ繋がっており、残りは、例えばコントロール用の流路である。
【0070】
流体の逆流を防止して正確に所定の送液を行うために逆止弁を配設することが望ましいが、逆止弁を利用した好適な機構として、図7に示した定量送液機構を挙げることができる。この機構では、逆流防止部の逆止弁16と、疎水性バルブである送液制御部13aとの間の流路(試薬充填流路15a)には、所定量の試薬が充填される。また、この試薬充填流路15aから分岐し、駆動液を送液するマイクロポンプ11に連通する分岐流路15bが設けられている。
【0071】
試薬の定量送液は、次のように行われる。最初に、逆流防止部16側から、送液制御部13aから先へ試薬28が通過しない送液圧力で試薬充填流路15aに試薬28を供給することにより試薬28を充填する。次いで、送液制御部13aから先へ試薬28が通過することを許容する送液圧力で、マイクロポンプ11により分岐流路15bから試薬充填流路15aに向かう方向へ駆動液25を送液することにより、試薬充填流路15a内に充填された試薬28を送液制御部15aから先へ押し出し、これにより試薬28を定量的に送液する。分岐流路15bには、空気、封止液などが存在していることがあるが、この場合でもマイクロポンプ11で駆動液を送液してこの空気、封止液などを試薬充填流路15aに送り込むことによって試薬を押し出すことができる。なお、試薬充填流路15aに、大容積の貯留部17aを設けることによって、定量のバラツキが小さくなる。
【0072】
検体収容部にもマイクロポンプ11を接続し、検体収容部からの検体送液と、試薬収容部からの試薬の送液とを別制御としてもよい。
・分析の実施態様
本発明のマイクロ総合分析システムに用いられる前記検査チップは、以下の処理を行な
うことによって検体中の標的物質を分析することができるように一連の微細流路が形成されたチップである:
該検査チップのポンプ接続部と前記マイクロポンプユニットのチップ接続部とを液密に密着させた状態で該検査チップをベース本体内に装着した後、該検査チップにおいて、
検体収容部に収容された検体または該検体を流路内で処理した処理液に含まれる標的物質と、
試薬収容部に収容された試薬とを、
反応部位を構成する流路へ送液して合流させて、
これらを反応させた後、得られた反応生成物質もしくはその処理物質を、
検出部位を構成する流路へ送液してその検出を前記検出処理装置により行なう。
【0073】
典型的には、図8に示されるように最上流部に位置する複数の試薬収容部18に収容された各試薬28が、試薬収容部より下流側の流路15で混合され、混合試薬が下流の分析流路に送液される。分析流路において、検体19と混合試薬とがY字流路などから合流して混合され、昇温等により反応が開始され、流路15の下流に設けられた検出部位において反応が検出される。
・検体
本発明の測定対象となる検体は、生体由来のアナライト含有試料である。試料自体にも特に制限はないが、例えば全血、血漿、血清、バフィーコート、尿、糞便、唾液、喀痰など生体由来のほとんどの試料が該当する。
【0074】
遺伝子検査の場合、増幅反応の鋳型となる核酸として遺伝子、DNAまたはRNAがアナライトである。検体は、このような核酸を含む可能性のある試料から調製または単離したものであってよい。したがって上記の試料の他に、細胞培養物;ウィルス、細菌、カビ、酵母、植物、動物などの核酸含有試料;微生物などが混入または含有する可能性のある試料、その他核酸が含有されている可能性のあるあらゆる試料が対象となる。そのような試料から遺伝子、DNAまたはRNAを調製する方法は、特に限定されず、従来技術を使用することができる。本発明のマイクロ総合分析システムは、従来の装置を使用して行う手作業の場合に比べて、必要とされる検体量は極めて少ない。例えば、縦横の長さが数cmのチップに2〜3μL程度の血液検体を注入するだけでよい。例えば遺伝子の場合、DNAとして0.001〜100ngである。
・遺伝子検査
本発明のシステムは、特に遺伝子または核酸(DNA、RNA)の検査に好適に用いることができる。その場合、検査チップ2の微細流路はPCR増幅に適した構成とされるが、遺伝子検査以外の生体物質についても基本的な流路構成はほぼ同一になるといえる。通常は検体前処理部、試薬類、プローブ類を変更すればよく、その場合、送液エレメントの配置、数などは変化するであろう。当業者であれば、例えばイムノアッセイ法のために必要な試薬類などを検査チップ2に搭載し、若干の流路エレメントの変更、仕様の変更を含む修正を施すことにより、分析の種類を容易に変更することができる。ここにいう遺伝子以外の生体物質とは、各種の代謝物質、ホルモン、タンパク質(酵素、抗原なども含む)などをいう。
【0075】
検査チップ2の好ましい一態様では、一つのチップ内において、
検体もしくは検体から抽出したアナライト(例えば、DNA、RNA、遺伝子)が注入さ
れる検体収容部と、
検体の前処理を行う検体前処理部と、
プローブ結合反応、検出反応(遺伝子増幅反応または抗原抗体反応なども含む)などに用いる試薬が収容される試薬収容部と、
ポジティブコントロールが収容されるポジティブコントロール収容部と、
ネガティブコントロールが収容されるネガティブコントロール収容部と、
プローブ(例えば、遺伝子増幅反応により増幅された検出対象の遺伝子にハイブリダイズさせるプローブ)が収容されるプローブ収容部と、
これらの各収容部に連通する微細流路と、
前記各収容部および流路内の液体を送液する別途のマイクロポンプに接続可能なポンプ接続部と、が設けられている。
【0076】
図8に示されるようにこの検査チップ2には、ポンプ接続部12を介してマイクロポンプが接続され、検体収容部20に収容された検体19もしくは検体から抽出した生体物質(例えばDNAまたはそれ以外の生体物質)と、試薬収容部18に収容された試薬19とを流路15へ送液し、微細流路の反応部位、例えば遺伝子増幅反応(タンパク質の場合、抗原抗体反応など)の部位で混合して反応させた後、その下流側流路にある検出部へ、この反応液を処理した処理液27と、プローブ収容部に収容されたプローブとを送液し、流路内で混合してプローブと結合(またはハイブリダイゼーション)させ、この反応生成物に基づいて生体物質の検出を行う。
【0077】
また、ポジティブコントロール収容部に収容されたポジティブコントロールおよびネガティブコントロールに収容されたネガティブコントロールについても同様に上記反応および検出を行う。
【0078】
検査チップ2における検体収容部20は、検体注入部に連通し、検体の一時収容および混合部への検体供給を行う。検体収容部20の上面から検体を注入する検体注入部は、外部への漏失、感染および汚染を防ぎ、密封性を確保するために、ゴム状材質などの弾性体からなる栓が形成されているか、あるいはポリジメチルシロキサン(PDMS)などの樹脂、強化フィルムで覆われていることが望ましい。例えば、当該ゴム材質の栓を突き刺したニードルまたは蓋付き細孔を通したニードルでシリンジ内の検体を注入する。前者の場合、ニードルを抜くとその針穴が直ちに塞がることが好ましい。あるいは他の検体注入機構を設置してもよい。
【0079】
検体収容部20に注入された検体19は、必要に応じて、試薬28との混合前に、予め流路15に設けられた検体前処理部にて、例えば検体19と処理液とを混合することによって前処理される。そのような検体前処理部は、分離フィルター、吸着用樹脂、ビーズなどを含んでもよい。好ましい検体前処理として、アナライトの分離または濃縮、除タンパクなどが含まれる。例えば1%SDS混合液などの溶菌剤を用いて溶菌処理・DNA抽出処理を行なう。
【0080】
検査チップ2の試薬収容部18には、必要な試薬類28が予め所定の量だけ封入されている。したがって使用時にその都度、試薬28を必要量充填する必要はなく、即使用可能の状態になっている。検体中の生体物質を分析する場合、測定に必要な試薬類は、通常それぞれ公知である。例えば、検体に存在する抗原を分析する場合、それに対する抗体、好ましくはモノクローナル抗体を含有する試薬が使用される。抗体は、好ましくはビオチンおよびFITCで標識されている。
【0081】
遺伝子検査用の試薬類には、遺伝子増幅に用いられる各種試薬、検出に使用されるプローブ類、発色試薬とともに、必要であれば前記の検体前処理に使用する前処理試薬も含めてもよい。
【0082】
マイクロポンプから駆動液を供給することにより各収容部から検体液および試薬液を押し出してこれらを合流させることによって、遺伝子増幅反応、アナライトのトラップまたは抗原抗体反応といった分析に必要な反応が開始される。
【0083】
試薬と試薬との混合、および検体と試薬との混合は、単一の混合部で所望の比率で混合してもよく、あるいは何れかもしくは両方を分割して複数の合流部を設け、最終的に所望の混合比率となるように混合してもよい。
【0084】
そうした反応部位の態様は特に限定されるものではなく、様々な形態および様式が考えられる。一例としては、試薬を含む2以上の液体を合流させる合流部(流路分岐点)から先に、各液が拡散混合される微細流路が設けられ、この微細流路の下流側端部から先に設けられた、該微細流路よりも広幅の空間からなる液溜めにおいて反応が行われる。
【0085】
DNA増幅方法としては、改良点も含めて各種文献などに記載され、多方面で盛んに利用されているPCR増幅法を使用することができる。PCR増幅法においては、3つの温度間で昇降させる温度管理が必要になるが、マイクロチップに好適な温度制御を可能とする流路デバイスが、すでに本発明者らにより提案されている(特開2004−108285号)。このデバイスシステムを本発明のチップの増幅用流路に適用すればよい。
【0086】
最近開発されたICAN(Isothermal chimera primer initiated nucleic acid
amplification)法は、50〜65℃における任意の一定温度の下にDNA増幅を短時間で実施できるため(特許第3433929号)、本発明システムにおいても好適な増幅技術である。
【0087】
検査チップ2の微細流路における反応部位よりも下流側には、アナライト、例えば増幅された遺伝子を検出するための検出部位が設けられている。さらに微細流路上の検出部位に吸着されたビオチン親和性タンパク質(アビジン、ストレプトアビジン)はプローブ物質に標識されたビオチン、または遺伝子増幅反応に使用されるプライマーの5’末端に標識されたビオチンと特異的に結合する。これにより、ビオチンで標識されたプローブまたは増幅された遺伝子が本検出部位でトラップされる。
【0088】
分離されたアナライトまたは増幅された目的遺伝子のDNAを検出する方法は特に限定されないが、好ましい態様として基本的には以下の工程で行われる。
(1a) 検体もしくは検体から抽出したDNA、あるいは検体もしくは検体から抽出したRNAから逆転写反応により合成したcDNAと、5’位置でビオチン修飾したプライマーとを、これらの収容部から下流の微細流路へ送液する。
【0089】
反応部位の微細流路内で、遺伝子を増幅する工程、微細流路内で増幅された遺伝子を含む増幅反応液と変性液とを混合して、増幅された遺伝子を変性処理により一本鎖にし、これと末端をFITC(fluorescein isothiocyanate)で蛍光標識したプローブDNAと
をハイブリダイズさせる。
【0090】
次いで、ビオチン親和性タンパク質を吸着させた微細流路内の検出部位に送液し、前記増幅遺伝子を微細流路内の検出部位にトラップする(増幅遺伝子を検出部位でトラップした後に蛍光標識したプローブDNAとをハイブリダイズさせてもよい。)。
(1b) 検体に存在する抗原、代謝物質、ホルモンなどのアナライトに対する特異的な抗体、好ましくはモノクローナル抗体を含有する試薬を検体と混合する。 その場合、抗体は、ビオチンおよびFITCで標識されている。したがって抗原抗体反応により得られる生成物は、ビオチンおよびFITCを有する。これをビオチン親和性タンパク質(好ましくはストレプトアビジン)を吸着させた微細流路内の検出部位に送液し、ビオチン親和性タンパク質とビオチンとの結合を介して該検出部位に固定化する。
(2) 上記微細流路内にFITCに特異的に結合する抗FITC抗体で表面を修飾した金コロイド液を流し、これにより固定化したアナライト・抗体反応物のFITCに、あるいは遺伝子にハイブリダイズしたFITC修飾プローブに、その金コロイドを吸着させる

(3) 上記微細流路の金コロイドの濃度を光学的に測定する。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、種々の実施の形態において、本発明の趣旨に沿って任意の変形、変更が可能であり、それらは本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1−1】図1−1は、本発明のマイクロ総合分析システムの一つの実施形態として概略構成を示した図である。
【図1−2】図1−2は、その側面から見た図である。
【図2】図2(a)は、ピエゾポンプの一例を示した断面図、図2(b)は、その上面図である。図2(c)は、ピエゾポンプの他の例を示した断面図である。
【図3】図3は、ピエゾポンプをチップとは別体とした場合におけるチップのポンプ接続部周辺の構成を示した図である。
【図4】図4は、3つの流体の合流および混合が行なわれる流路構成の一例を示した図である。
【図5】図5(a)、(b)は、Y字の分岐流路の上流から2つの流体を送出することにより、これらを合流させる様子を示した図である。(c)は、(b)の場合に、マイクロポンプの駆動の様子を表したグラフである。
【図6】図6は、合流した2流体が混合してなる混合流体の先頭部分を切り捨てて、混合比率が安定してから混合液を次工程へ送液するようにした流路構成を示した図である。
【図7】図7は、試薬を定量的に送液する試薬定量部の構成を示した図である。
【図8】図8は、検査チップでの分析の一態様を示す。この図で流体の合流および混合が行なわれる流路構成の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0093】
1 本体
2 検査チップ
3 ペルチェ
4 ヒーター
5 ホトダイオード
6 LED
10 駆動液タンク
11 マイクロポンプ(ピエゾポンプ)
12 ポンプ接続部
13 疎水性バルブ
13a、13b 送出制御部
14 流体混合部
15 微細流路
15a、15c 流路
15b、15d 分岐流路
16 逆止弁
17a 試薬貯留部
17c 混合液貯留部
18 試薬収容部
18a〜18c 試薬収容部
19 検体
20 検体収容部
24 駆動液収容部
25 封止液収容部
26 空気抜き用流路
27 混合液
28 試薬
31 分岐部
31a〜31d流体
33 分岐部
41 上側基板
42 基板
43 振動板
44 圧電素子
45 加圧室
46 第1流路
47 第2流路
48 第1液室
49 第2液室
71 シリコン基板
72 ポート
73 ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部と、流体が流通する流路と、2以上の流体が合流して混合される流体混合部と、が少なくとも設けられた検査チップと、
システム本体と、
を備え、そのシステム本体は、少なくとも
ベース本体と、
そのベース本体内に配置され、該検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部と、形状が略同一の複数のマイクロポンプとを含むマイクロポンプユニットと、
検出処理装置と、
少なくとも該マイクロポンプユニットの機能と該検出処理装置の機能とを制御する制御装置と、
を備え、
該流体混合部において合流する2流体の混合比が、略m:nの割合(mおよびnは同時に1であることはない)となるようにする場合には、各マイクロポンプの駆動電圧を実質的に略同一にしながら合流する量比を調整していることを特徴とするマイクロ総合分析システム。
【請求項2】
前記の混合比が略m:nになるように、合流する2流体を送出する流路のそれぞれの流路抵抗、R1+R2(R1は、マイクロポンプから合流点までの間の流路抵抗であり、R2は、当
該駆動電圧でのマイクロポンプの実効的内部流路抵抗である)を違えて、合流する量比を調整することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項3】
前記m:nの割合で合流する2流体を送出する流路31および流路33の合流点での流
量比が、
【数1】

(それぞれ流路31、流路33を流通して、m:nで合流する2流体を送出する各ポンプを、P1、P2とする。)
に比例するように流路抵抗が調整されることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項4】
前記の流路抵抗の調整が、合流する2流体を送出する流路の断面積もしくは流路の長さを違えることに基づく請求項2または3に記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項5】
前記の混合比が略m:nになるように、合流する流体を送出するマイクロポンプの使用台数および流路数を増減して合流する量比を調整することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項6】
前記の流体が流れる流路が、検査チップ上に設けたマイクロメートルオーダー幅の微細流路であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項7】
前記マイクロポンプが、
前記微細流路に設けられ、流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、
前記微細流路に設けられ、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小
さい第2流路と、
前記微細流路に設けられ、第1流路および第2流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、
該アクチュエータを駆動する駆動装置と
を備えるマイクロポンプであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項8】
前記検査チップのポンプ接続部と前記マイクロポンプユニットのチップ接続部とを液密に密着させた状態で該検査チップを該ベース本体内に装着した後、該検査チップにおいて検体中の標的物質を分析することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項9】
前記マイクロ総合分析システムにおいて、流体混合部において合流する2流体の混合比が、略m:nの割合(mおよびnは同時に1であることはない)となるようにする場合には、流体を送出する各マイクロポンプの駆動電圧を実質的に略同一にしながら、合流前の流体が流通するそれぞれの流路の流路抵抗を違えるか、あるいは流体を送出するマイクロポンプの使用台数および流路数を増減させて、合流する量比を調整することを特徴とする2流体の混合比の制御方法。
【請求項10】
前記の流路抵抗を違えることは、合流する2流体を送出する流路の断面積もしくは流路の長さを違えることに基づく、請求項9に記載の混合比の制御方法。

【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1−1】
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【公開番号】特開2006−266923(P2006−266923A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86681(P2005−86681)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】