説明

モータ制御装置、電動パワーステアリング装置及び車両用操舵装置

【課題】簡素な構成にて、過電流の発生が回路に与える影響を有効に排除することが可能なモータ制御装置、電動パワーステアリング及び車両用操舵装置を提供すること。
【解決手段】プリドライバ22の給電線Lp2には、電源遮断手段としてのリレー回路40が設けられる。そして、同リレー回路40は、マイコン21の出力するリレー信号S_rlyにより、その作動が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、電動パワーステアリング装置及び車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、電動パワーステアリング装置(EPS)、或いは伝達比可変機構を備えた車両用操舵装置等のように、高い信頼性及び安全性が求められる用途では、そのモータ制御装置を構成する駆動回路を電源に接続する動力線にはリレーが設けられている(例えば、特許文献1参照)。そして、駆動回路を構成する何れかのスイッチングアームにおいて高電位側及び低電位側の各スイッチング素子が同時にオン状態となる短絡故障(所謂アーム短絡)が生じた場合等、動力線に過大な電流が流れる状況となった場合には、上記リレーをオフ作動して当該動力線を通電不能に遮断することにより、速やかにフェールセールを図ることが可能となっている。
【0003】
また、モータ制御装置には、制御回路(マイコン)の出力するモータ制御信号に基づいて、駆動回路に駆動信号(ゲート駆動信号)を出力するプリドライバが設けられている。そして、駆動回路は、その各スイッチング素子が同駆動信号に基づきオン/オフすることにより、モータ制御信号に示された駆動電力を出力する。従って、より一層の高い信頼性及び安全性を確保するためには、上記のような動力線の遮断による駆動回路の保護のみならず、そのプリドライバ及び当該プリドライバの給電線についてもまた、同様の過電流対策を講じることが望ましい。
【0004】
図7に示すように、通常、プリドライバ70は、駆動回路71の各スイッチング素子(FET72a〜72f)に対応したドライバ回路73(73a〜73f)を備える。尚、この例に示すモータ制御装置は、三相(U,V,W)の駆動電力を出力するブラシレスモータ用の制御装置であるため、そのスイッチング素子数及びドライバ回路数は、共に「6」となっている。そして、駆動回路71を構成する各FET72a〜72fは、その対応する各ドライバ回路73a〜73fの出力するゲート駆動信号に基づきオン/オフする。
【0005】
また、ドライバ回路73は、多くの場合、その出力段にプッシュプル回路74を備えている。尚、この例では、高電位側にpチャネルFET75、低電位側にnチャネルFET76を配したプッシュプル回路74が用いられている。そして、そのドライバ部となるオペアンプ回路(反転増幅回路)77の出力を、同プッシュプル回路74により反転して、対応する駆動回路71の各FET72a〜72fに出力する構成となっている。
【0006】
即ち、プリドライバ70(の各ドライバ回路73)は、その印加電圧に基づきモータ制御信号を増幅することにより、駆動回路71の各FET72a〜72fにゲート駆動信号を出力する。従って、仮に、そのプッシュプル回路74に短絡故障が発生した場合等には、上記のような駆動回路71における短絡故障の発生時と同様、当該プリドライバ70及びその給電線にも過電流が流れる可能性がある。
【0007】
しかしながら、プリドライバ70(及びその給電線)の場合、駆動回路71(及びその動力線)とは異なり、基本的に正常に作動している限り大電流は流れない。そのため、当該プリドライバ70の内部において短絡故障が発生すること自体、極めて可能性が低い。このため、従来、プリドライバ及びその給電線については、その過電流対策の必要性は低いというのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−220766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、モータ制御装置には、昇圧回路により昇圧した電圧をプリドライバに印加する構成がある(例えば、特許文献1参照)。そして、このような昇圧電圧をプリドライバに印加する構成を採用することにより、例えば、EPSでは、その左右の操舵方向の反転時(所謂切り返し操舵)等、通電方向の切替が生じた場合において、その応答性を高めることができる。
【0010】
しかしながら、このように印加電圧を高めることにより、プリドライバの内部において短絡故障が発生する可能性が高くなる。更に、その昇圧回路の出力段に平滑コンデンサを設けることにより、当該コンデンサに地絡が発生する可能性も付加される。そのため、こうした昇圧電圧をプリドライバに印加する構成では、その過電流が発生する可能性が無視できなくなっており、その有効な過電流対策が強く求められている。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、簡素な構成にて、過電流の発生が回路に与える影響を有効に排除することのできるモータ制御装置、電動パワーステアリング及び車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のスイッチング素子を接続してなる駆動回路と、モータ制御信号を出力するモータ制御信号出力手段と、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、前記昇圧回路が出力する昇圧電圧に基づいて前記モータ制御信号に対応する駆動信号を前記各スイッチング素子に出力するプリドライバと、を備えたモータ制御装置において、前記昇圧回路は、前記駆動回路と電源とを接続する動力線から分岐した前記プリドライバの給電線に設けられるとともに、前記給電線には、該給電線を通電不能に遮断すべく制御可能な電源遮断手段が設けられること、を要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、プリドライバ及びその給電線に過大な電流が流れるような状況が発生した場合においても、速やかに給電線を通電不能に遮断して、その過電流が回路に及ぼす影響を排除することができる。その結果、より高い信頼性を確保することができる。
【0014】
即ち、例えば、給電線にヒューズが設けられている場合、そのヒューズもまた、当該給電線を通電不能に遮断する機能を有している。しかしながら、ヒューズによる遮断は、過電流の通電により同ヒューズが溶融するまで時間を要する。従って、その作動を任意に制御することが可能な電源遮断手段を設けることで、過電流の発生が回路に与える影響を、より有効に排除することができるのである。
【0015】
また、駆動回路と電源とを接続する動力線に過電流が生ずる要因としては、駆動回路を構成するスイッチング素子対の直列回路(スイッチングアーム)の何れかにおいて、その高電位側及び低電位側の両方のスイッチング素子が同時にオン状態となる短絡故障(所謂アーム短絡)が挙げられる。しかしながら、こうしたアーム短絡のほとんどは、その各スイッチング素子に入力される各駆動信号の何れかの状態がアクティブに固着することにより発生する。そして、駆動回路は、その入力される駆動信号の信号レベルが「Hi」である場合に各スイッチング素子がオン作動する「Hiアクティブ」な構成とするのが一般的である。従って、その各駆動信号を出力するプリドライバへの給電を停止して、当該駆動信号の状態を非アクティブとすることにより、全てのスイッチング素子をオフ作動させることができる。
【0016】
即ち、上記構成により、こうしたアーム短絡の発生時にも給電線を通電不能に遮断することで、当該アーム短絡に起因して駆動回路の動力線に流れる過大な電流が回路に与える影響を有効に排除することができる。その結果、その動力線に設けられたリレー回路を廃することが可能になる。特に、プリドライバの給電線には、動力線のような大電流の通電要求がない。従って、給電線にリレー回路を設ける構成としても、動力線にリレー回路を設ける従来の構成と比較して、大幅な小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記給電線の途中には電圧センサが設けられるとともに、前記電源遮断手段は、前記電圧センサによる検出電圧が所定の閾値以下である場合に前記給電線を遮断すべく制御されること、を要旨とする。
【0018】
即ち、プリドライバ内部における短絡故障(地絡)、又は昇圧回路の出力段に設けられる平滑コンデンサ等、給電線に接続されたコンデンサに地絡が生じた場合、理論上、少なくとも昇圧回路よりも低電位側(接地側)における給電線の電圧は、接地電圧となる。従って、上記構成によれば、より迅速に、プリドライバ及びその給電線に過大な電流が流れるような状況を検知して、速やかに給電線を通電不能に遮断することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記駆動回路は、二個のスイッチング素子を直列に接続してなるスイッチングアームを並列に接続してなるものであって、何れかの前記スイッチングアームにおいて高電位側及び低電位側のスイッチング素子が同時にオン状態となる短絡故障の発生を検知する検知手段を備え、前記電源遮断手段は、前記短絡故障が検知された場合に前記給電線を遮断すべく制御されること、を要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、より迅速に、駆動回路及びその動力線に過大な電流が流れるような状況を検知して、速やかに給電線を通電不能に遮断することができる。そして、これにより、駆動回路の全てのスイッチング素子をオフ作動させて、そのアーム短絡に要因として動力線に流れる過大な電流が回路に与える影響を、より有効に排除することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、前記給電線には、前記昇圧回路と前記プリドライバとの間に、コンデンサが接続されるとともに、前記電源遮断手段は、前記コンデンサよりも電源側に設けられるものであって、前記給電線の遮断時に前記コンデンサを放電させる放電回路を備えること、を要旨とする。
【0022】
即ち、電源遮断手段により給電線を通電不能に遮断した後においても、当該電源遮断手段よりも低電位側(接地側)に接続されたコンデンサに電荷が残留することで、プリドライバに対する印加電圧の低下に遅れが生ずる。その結果、動力線の通電停止が遅延してしまうおそれがある。そして、特に、電解コンデンサを用いた場合には、その端子間リーク電流が小さいことから、この傾向が、より一層、顕著なものとなる。
【0023】
しかしながら、上記構成によれば、コンデンサに残留する電荷の影響を排除して、給電線の通電遮断後、速やかにプリドライバの印加電圧を低下させることができる。そして、これにより、遅滞なく各駆動信号の出力を停止させて(出力レベル「Lo」)、より迅速に動力線の通電を停止させることができるようになる。その結果、動力線に流れる過大な電流が回路に与える影響を効果的に排除することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、前記プリドライバは、前記各スイッチング素子に対応する複数のドライバ回路を備えるとともに、前記給電線は、前記電源遮断手段が設けられた本線と、各ドライバ回路に対応して前記本線から分岐した複数の支線とからなるものであって、前記放電回路は、前記スイッチングアームにおける低電位側のスイッチング素子及び該スイッチング素子に前記駆動信号を出力する前記ドライバ回路に対応する前記支線に接続された前記コンデンサを放電するように形成されること、を要旨とする。
【0025】
上記構成によれば、駆動回路を構成する各スイッチングアームにおいては、その低電位側に配置されたスイッチング素子の方が、高電位側に配置されたものよりも小さな電圧でオン作動する。このため、プリドライバにおいては、低電位側の各ドライバ回路の方が、より低い印加電圧でその出力する駆動信号が「Hi」となる。従って、上記のように、低電位側の各支線に接続された各コンデンサを放電することで、効果的に、動力線における通電停止の遅延を抑制することができる。その結果、その回路構成をより簡素なものとして基板を小型化するとともに、あわせて製造コストの低減を図ることができる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のモータ制御装置を備えた電動パワーステアリング装置であること、を要旨とする。
上記構成によれば、構成簡素且つ信頼性の高い電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のモータ制御装置に制御されるモータにより操舵系を駆動する車両用操舵装置であること、を要旨とする。
上記構成によれば、構成簡素且つ信頼性の高い車両用操舵装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、簡素な構成にて、過電流の発生が回路に与える影響を有効に排除することが可能なモータ制御装置、電動パワーステアリング及び車両用操舵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】EPSの電気的構成を示すブロック図。
【図3】駆動回路の回路図。
【図4】第1の実施形態におけるECUの回路図(プリドライバ関連部分)。
【図5】過電流回避制御の処理手順を示すフローチャート。
【図6】第2実施形態におけるECUの回路図(プリドライバ関連部分)。
【図7】プリドライバの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
以下、本発明を電動パワーステアリング(EPS)装置に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。尚、本実施形態のステアリングシャフト3は、コラムシャフト3a、インターミディエイトシャフト3b、及びピニオンシャフト3cを連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド6を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪7の舵角、即ち車両の進行方向が変更される。
【0032】
また、EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御する制御手段としてのECU11とを備えている。
【0033】
本実施形態のEPSアクチュエータ10は、駆動源であるモータ12が減速機構13を介してコラムシャフト3aと連結された所謂コラム型のEPSアクチュエータとして構成されている。そして、EPSアクチュエータ10は、そのモータトルクによりコラムシャフト3aを回転駆動することにより操舵系にアシスト力を付与する構成となっている。
【0034】
一方、ECU11には、トルクセンサ14及び車速センサ15が接続されており、ECU11は、これらトルクセンサ14及び車速センサ15により検出される操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、操舵系に付与すべきアシスト力(目標アシスト力)を演算する。尚、本実施形態のECU11は、その検出される操舵トルクτ(の絶対値)が大きいほど、また車速Vが低いほど、より大きなアシスト力を操舵系に付与すべく目標アシスト力を演算する。そして、この目標アシスト力に相当するモータトルクを発生させるべく、その駆動源であるモータ12に対する駆動電力の供給を通じてEPSアクチュエータ10の作動、即ち操舵系に付与するアシスト力を制御する構成となっている。
【0035】
次に、本実施形態のEPSの電気的構成について説明する。
図2に示すように、ECU11は、複数のスイッチング素子(FET)を接続してなる駆動回路20と、モータ制御信号出力手段としてのマイコン21と、同マイコン21の出力するモータ制御信号に基づいて駆動回路20の各スイッチング素子にゲート駆動信号を出力するプリドライバ22とを備えている。
【0036】
詳述すると、ECU11において、上記トルクセンサ14及び車速センサ15により検出される操舵トルクτ及び車速Vは、マイコン21に入力されるようになっている。そして、同マイコン21は、これら操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、目標アシスト力を演算し、その目標アシスト力に相当するモータトルクを発生させるべくモータ12を制御するためのモータ制御信号を出力する。
【0037】
尚、本実施形態では、マイコン21には、電流センサ23により検出されるモータ12の実電流値I(及びモータレゾルバ24により検出されるモータ12の回転角θ)が入力される。そして、マイコン21は、そのモータ12に発生させるべきモータトルクに対応する電流指令値に実電流値Iを追従させるべく、電流フィードバック制御を実行することにより上記モータ制御信号を生成する。
【0038】
また、駆動回路20及びプリドライバ22には、車載電源25の電源電圧V_pigに基づく電圧が印加される。具体的には、駆動回路20には、動力線Lp1を介して電源電圧V_pigが印加される。一方、プリドライバ22の給電線Lp2は、上記動力線Lp1から分岐する態様で配線されている。そして、同給電線Lp2には、その動力線Lp1との接続点P1付近にヒューズ26が設けられている。また、この給電線Lp2には、昇圧回路27が設けられており、同昇圧回路27は、マイコン21の出力するイネーブル信号S_enaがアクティブである場合に、電源電圧V_pigを昇圧して出力する。尚、本実施形態のマイコン21は、車両のイグニッションスイッチがオンされることにより、その昇圧回路27に出力するイネーブル信号S_enaをアクティブとする。更に、昇圧回路27とプリドライバ22との間には、平滑回路28が設けられている。そして、プリドライバ22には、この昇圧回路27により昇圧された昇圧電圧V_bpigが印加されるようになっている。
【0039】
即ち、本実施形態のプリドライバ22は、その印加された昇圧電圧V_bpigに基づきモータ制御信号を増幅することにより、駆動回路20を構成する各スイッチング素子にゲート駆動信号を出力する。そして、駆動回路20は、このゲート駆動信号に基づき各スイッチング素子がオン/オフすることにより、その印加された電源電圧V_pigに基づいて、マイコン21の出力するモータ制御信号に示された駆動電力をモータ12に出力する構成となっている。
【0040】
さらに詳述すると、図3に示すように、本実施形態では、EPSアクチュエータ10の駆動源であるモータ12には、三相(U,V,W)の駆動電力の供給により回転するブラシレスモータが採用されている。そして、本実施形態の駆動回路20は、直列に接続された二個のスイッチング素子を基本単位(スイッチングアーム)として、各相に対応する3つのスイッチングアーム30u,30v,30wを並列に接続してなる周知のPWMインバータとして構成されている。
【0041】
具体的には、本実施形態の駆動回路20において、各スイッチングアーム30u,30v,30wは、FET30a,30d、FET30b,30e、及びFET30c,30fの各組のスイッチング素子対を、それぞれ直列に接続することにより形成されている。そして、そのFET30a,30d間、FET30b,30e間、FET30c,30f間の各接続点31u,31v,31wが、それぞれ、各相モータコイル12u,12v,12wに対応した出力部となっている。
【0042】
また、本実施形態では、これら各スイッチングアーム30u,30v,30wの低電位側(接地側、図3中下側)に、それぞれ、シャント抵抗32u,32v,32wを接続することにより、上記電流センサ23が形成されている。そして、本実施形態のマイコン21は、これにより、モータ12の実電流値Iとして、各相電流値Iu,Iv,Iwを検出する構成となっている。
【0043】
図4に示すように、本実施形態のプリドライバ22は、上記駆動回路20を構成する各FET30a〜30fに対応するドライバ回路33a〜33fを備えている。また、プリドライバ22の給電線Lp2は、接続点P1において駆動回路20の動力線Lp1から分岐した本線34と(図2参照)、上記各ドライバ回路33a〜33fに対応して同本線34から分岐した複数の支線35a〜35fとからなる。そして、上記昇圧回路27は、これらの各支線35a〜35fのそれぞれにチャージポンプ回路37a〜37fを設けることにより、また、平滑回路28はその一端が接地されたコンデンサ38a〜38fを設けることにより形成されている。
【0044】
即ち、プリドライバ22を構成する各ドライバ回路33a〜33fには、それぞれ、その対応する各チャージポンプ回路37a〜37fにより昇圧され、各コンデンサ38a〜38fにより平滑化された昇圧電圧V_bpigが印加される。尚、本実施形態では、各コンデンサ38a〜38fには、電解コンデンサが用いられている。また、各ドライバ回路33a〜33fには、マイコン21から、それぞれ、その対応する各スイッチングアーム30u,30v,30wの作動を規定するモータ制御信号が入力される。そして、各ドライバ回路33a〜33fは、その印加された昇圧電圧V_bpigに基づいて、それぞれ、その入力されたモータ制御信号S_md1〜S_md6を増幅することにより、対応する各FET30a〜30fにゲート駆動信号S_gd1〜S_gd6を出力する。
【0045】
一方、駆動回路20においては、これらの各ゲート駆動信号S_gd1〜S_gd6に応答して各FET30a〜30fがオン/オフすることにより、各相モータコイル12u,12v,12wに対する通電パターンが切り替わる。そして、駆動回路20は、これにより、その印加される電源電圧V_pigに基づいて、三相(U,V,W)の駆動電力を生成し、モータ12に出力するようになっている。
【0046】
図2及び図4に示すように、本実施形態では、プリドライバ22の給電線Lp2には、電源遮断手段としてのリレー回路40が設けられている。そして、本実施形態のリレー回路40は、マイコン21の出力するリレー信号S_rlyにより、その作動が制御されている。
【0047】
具体的には、本実施形態のリレー回路40は、その入力されるリレー信号S_rlyがアクティブである場合にオン作動して給電線Lp2を介した通電を許容し、リレー信号S_rlyが非アクティブである場合にオフ作動して給電線Lp2を通電不能に遮断する構成となっている。そして、本実施形態では、このリレー回路40を、給電線Lp2の本線34に設けることにより、上記接続点P1において当該給電線Lp2と接続された駆動回路20の動力線Lp1とは独立に、同給電線Lp2を通電不能に遮断することが可能となっている。
【0048】
尚、本実施形態では、上記リレー回路40には、半導体リレーが用いられる。また、本実施形態のリレー信号S_rlyは、その信号レベルが「Hi」である場合にアクティブ、「Lo」である場合に非アクティブとなっている。そして、マイコン21は、車両のイグニッションスイッチがオンされることにより、そのリレー回路40に出力するリレー信号S_rlyをアクティブとする。
【0049】
また、給電線Lp2には、その昇圧回路27と平滑回路28との間に電圧センサ41が設けられている。尚、本実施形態の電圧センサ41は、直列抵抗回路の分圧をそのセンサ出力とする公知の構成を有している。より具体的には、本実施形態では、電圧センサ41は、各支線35a〜35fにそれぞれ一つずつ設けられている。そして、本実施形態のマイコン21は、これら各電圧センサ41による検出電圧V_fd(V_fd1〜V_fd6)が、接地電圧に対応して設定された所定の閾値Vth以下である場合には、その給電線Lp2を通電不能に遮断すべく、そのリレー回路40に出力するリレー信号S_rlyを非アクティブとする(S_rly=Lo)。
【0050】
即ち、上述のように、プリドライバ22を構成する各ドライバ回路33a〜33fの内部における短絡故障(地絡)、又は平滑回路28を構成する各コンデンサ38a〜38fに地絡が生じた場合、理論上、当該各コンデンサ38a〜38fより電源側の電圧もまた、接地電圧となる。そして、本実施形態では、このような場合に、速やかに給電線Lp2を通電不能に遮断することにより、その短絡故障に起因して当該給電線Lp2に流れる過大な電流が回路に及ぼす影響を排除する構成となっている。
【0051】
更に、本実施形態のマイコン21は、駆動回路20を構成する各スイッチングアーム30u,30v,30wの何れかにおいて、その高電位側及び低電位側の各FET30a,30d、FET30b,30e、FET30c,30fが同時にオン状態となる短絡故障(所謂アーム短絡)が発生した場合に、これを検知する検知手段としての機能を有している。尚、本実施形態では、各スイッチングアーム30u,30v,30wの低電位側にシャント抵抗32u,32v,32wを接続してなる上記電流センサ23により、モータ12の実電流値Iとして検出される各相電流値Iu,Iv,Iwの何れかが、所定の閾値Ith以上である場合に、当該相において上記アーム短絡が発生したと判定する。そして、本実施形態のマイコン21は、このように、アーム短絡の発生を検知した場合にも、そのリレー回路40に出力するリレー信号S_rlyを非アクティブとするようになっている。
【0052】
即ち、駆動回路20を構成する各FET30a〜30fには、その入力されるゲート駆動信号の信号レベルが「Hi」である場合にオン作動するnチャネルFETを用いるのが一般的である。そして、各スイッチングアーム30u,30v,30wを構成する各スイッチング素子対(FET30a,30d、FET30b,30e、FET30c,30f)の両方が、同時に短絡(ショート)する可能性は極めて低い。
【0053】
つまり、上記のようなアーム短絡のほとんどは、各FET30a〜30fに入力される各ゲート駆動信号S_gd1〜S_gd6の何れかの信号レベルが「Hi」に固着することにより発生する。従って、その各ゲート駆動信号S_gd1〜S_gd6を出力するプリドライバ22への給電を停止して、当該各ゲート駆動信号S_gd1〜S_gd6の信号レベルを「Lo」とすることにより、各FET30a〜30fの全てをオフ作動させることができる。そして、本実施形態では、これを利用して、こうしたアーム短絡の発生時にも給電線Lp2を通電不能に遮断することにより、当該アーム短絡に起因して駆動回路20の動力線Lp1に流れる過大な電流が回路に及ぼす影響を排除する構成となっている。
【0054】
次に、本実施形態のマイコンによる過電流回避制御の態様について説明する。
図5のフローチャートに示すように、マイコン21は、先ず、各電圧センサ41による検出電圧V_fd、詳しくは、各支線35a〜35fにおける検出電圧V_fd1〜V_fd6の何れかが、接地電圧に対応して設定された所定の閾値Vthよりも大きいか否かを判定する(ステップ101)。次に、このステップ101において、各電圧センサ41による検出電圧V_fdが閾値Vthよりも大きい場合(V_fd>Vth、ステップ101:YES)、マイコン21は、電流センサ23により検出される実電流値Iが、所定の閾値Ithより小さいか否かを判定する(ステップ102)。詳しくは、各スイッチングアーム30u,30v,30wの低電位側において検出される各相電流値Iu,Iv,Iwの何れかが所定の閾値Ithよりも小さいか否かを判定する。そして、本実施形態のマイコン21は、このステップ102において、実電流値Iが、所定の閾値Ithよりも小さい場合(I<Ith、ステップ102:YES)には、そのリレー回路40に出力するリレー信号S_rlyをアクティブに維持する(S_rly=Hi、ステップ103)。
【0055】
一方、上記ステップ101において、各電圧センサ41による検出電圧V_fdが閾値Vth以下である場合(V_fd≦Vth、ステップ101:NO)、マイコン21は、先ず、昇圧回路27に出力するイネーブル信号S_enaを非アクティブとする(ステップ104)。そして、リレー回路40に出力するリレー信号S_rlyを非アクティブとして(S_rly=Lo)、プリドライバ22の給電線Lp2を通電不能に遮断すべく同リレー回路40を制御する(ステップ105)。
【0056】
同様に、電流センサ23により検出される実電流値Iが所定の閾値Ith以上である場合(I≧Ith、ステップ102:NO)にも、マイコン21は、昇圧回路27に出力するイネーブル信号S_enaを非アクティブとする(ステップ104)。そして、同じくリレー回路40に出力するリレー信号S_rlyを非アクティブとして(S_rly=Lo)、プリドライバ22の給電線Lp2を通電不能に遮断すべく同リレー回路40を制御する(ステップ105)。
【0057】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)プリドライバ22の給電線Lp2には、電源遮断手段としてのリレー回路40が設けられる。そして、同リレー回路40は、マイコン21の出力するリレー信号S_rlyにより、その作動が制御される。
【0058】
上記構成によれば、プリドライバ22及びその給電線Lp2に過大な電流が流れるような状況が発生した場合においても、速やかに給電線Lp2を通電不能に遮断して、その過電流が回路に及ぼす影響を排除することができる。
【0059】
尚、給電線Lp2に設けられたヒューズ26もまた、給電線Lp2を通電不能に遮断する機能を有している。しかしながら、ヒューズ26による遮断は、過電流の通電により当該ヒューズ26が溶融するまで時間を要する。従って、その作動を任意に制御することのできるリレー回路40の方が、より有効に過電流の発生が回路に与える影響を排除することができる。
【0060】
また、駆動回路20と車載電源25とを接続する動力線Lp1に過電流が生ずる要因としては、同駆動回路20を構成する各スイッチングアーム30u,30v,30wの何れかにおいて、その高電位側及び低電位側の両方のスイッチング素子が同時にオン状態となる短絡故障(所謂アーム短絡)が挙げられる。しかしながら、こうしたアーム短絡のほとんどは、その各スイッチング素子(FET30a〜30f)に入力される各ゲート駆動信号S_gd1〜S_gd6の何れかの信号レベルが「Hi」に固着することにより発生する。従って、その各ゲート駆動信号S_gd1〜S_gd6を出力するプリドライバ22への給電を停止して、当該各ゲート駆動信号S_gd1〜S_gd6の信号レベルを「Lo」とすることにより、各FET30a〜30fの全てをオフ作動させることができる。
【0061】
即ち、上記構成により、こうしたアーム短絡の発生時にも給電線Lp2を通電不能に遮断することにより、当該アーム短絡に起因して駆動回路20の動力線Lp1に流れる過大な電流が回路に与える影響を有効に排除することができる。その結果、動力線Lp1に設けられたリレー回路を廃することが可能になる。ここで、プリドライバ22の給電線Lp2には、動力線Lp1のように大電流の通電は要求されない。従って、給電線Lp2にリレー回路40を設ける構成を採用することにより、動力線Lp1にリレー回路を設ける従来の構成と比較して、大幅な小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0062】
(2)給電線Lp2には、その昇圧回路27と平滑回路28との間に電圧センサ41が設けられる。そして、マイコン21は、その電圧センサ41による検出電圧が、接地電圧に対応して設定された所定の閾値Vth以下である場合には、その給電線Lp2を通電不能に遮断すべくリレー回路40を制御する。
【0063】
即ち、プリドライバ22の内部における短絡故障(地絡)、又は平滑回路28を構成する各コンデンサ38a〜38fに地絡が生じた場合、理論上、当該各コンデンサ38a〜38fより電源側の電圧もまた、接地電圧となる。従って、上記構成によれば、より迅速に、プリドライバ22及びその給電線Lp2に過大な電流が流れるような状況を検知して、速やかに給電線Lp2を通電不能に遮断することができる。
【0064】
(3)マイコン21は、駆動回路20を構成する各スイッチングアーム30u,30v,30wの何れかにおいて、上記アーム短絡が発生した場合に、これを検知する検知手段としての機能を有する。
【0065】
上記構成によれば、より迅速に、駆動回路20及び動力線Lp1に過大な電流が流れるような状況を検知して、速やかに給電線Lp2を通電不能に遮断することができる。そして、これにより、各FET30a〜30fをオフ作動させて、そのアーム短絡に起因して駆動回路の動力線Lp1に流れる過大な電流が回路に与える影響を、より有効に排除することができる。
【0066】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜のため、上記第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
図6は、本実施形態におけるECU11の回路図である。尚、同図は、説明の便宜のため、ECU11に形成された回路のうち、電源部及びU相対応部分を抜粋したものとなっている。
【0068】
同図に示すように、本実施形態は、上記第1の実施形態と比較して、その電源遮断手段の構成が相違する。即ち、本実施形態では、プリドライバ22の給電線Lp2(の本線34)には、上記第1の形態において電源遮断手段を構成したリレー回路40に代えて、通電制御回路50が設けられている。
【0069】
詳述すると、同図に示すように、本実施形態では、給電線Lp2の本線34には、その動力線Lp1との接続点P1近傍に、pチャネルFET51が設けられている。また、接続点P1には、抵抗52を介して、npnトランジスタ53のコレクタ端子が接続されている。そして、これら抵抗52及びnpnトランジスタ53の接続点P2には、上記pチャネルFET51のゲート端子が接続されるとともに、npnトランジスタ53のエミッタ端子は接地されている。
【0070】
更に、npnトランジスタ53のベース端子は、信号線54を介してマイコン21に接続されている。尚、この信号線54には、抵抗55が設けられるとともに、プルダウン抵抗56が接続されている。そして、npnトランジスタ53(のベース端子)には、当該信号線54を介して、マイコン21の出力する通電制御信号S_pcが入力されるようになっている。
【0071】
即ち、マイコン21の出力する通電制御信号S_pc(の信号レベル)が「Hi」である場合には、npnトランジスタ53は「オン」状態となり、これにより、当該npnトランジスタ53及び上記抵抗52間の接続点P2の電圧は、略接地電圧となる。そして、これにより、その接続点P2に接続されたpチャネルFET51のゲート電圧(の電圧レベル)が「Lo」となり、当該pチャネルFET51がオン作動することにより、給電線Lp2を介した通電が許容される。
【0072】
一方、通電制御信号S_pcが「Lo」である場合には、npnトランジスタ53は「オフ」状態となり、これにより接続点P2の電圧は、電源電圧V_pig(及び抵抗52による電圧降下分)に基づく値となる。そして、これにより、その接続点P2に接続されたpチャネルFET51のゲート電圧が「Hi」となり、当該pチャネルFET51がオフ作動することにより、給電線Lp2が通電不能に遮断される構成となっている。
【0073】
尚、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様、マイコン21は、車両のイグニッションスイッチがオンされることにより、上記通電制御回路50(を構成するnpnトランジスタ53)に出力する通電制御信号S_pcの信号レベルをアクティブ状態に対応した「Hi」とする。そして、プリドライバ22内部における短絡故障(地絡)、平滑回路28を構成する各コンデンサ38a〜38fの地絡、又は駆動回路20を構成する各スイッチングアーム30u,30v,30wの何れかにアーム短絡が発生した場合には、その出力する通電制御信号S_pcの信号レベルをアクティブ状態に対応した「Lo」とする(図2〜図4参照)。
【0074】
また、本実施形態では、ECU11には、上記のように、電源遮断手段としての通電制御回路50によって、プリドライバ22の給電線Lp2が通電不能に遮断された場合に、上記平滑回路28を構成する各コンデンサを放電させる放電回路60が設けられている。
【0075】
詳述すると、本実施形態の放電回路60は、その低電位側の各支線35d,35e,35fに接続された各コンデンサ38d,38e,38f、即ち低電位側の各FET30d,30e,30f及び各ドライバ回路33d,33e,33fに対応する各支線に接続されたコンデンサを放電可能に形成されている(図3及び図4参照)。
【0076】
ここで、本実施形態では、この低電位側の支線に接続された各コンデンサを放電させる回路構成については、U,V,Wの各相ともに同一である。従って、以下、説明の便宜のため、U相低電位側のコンデンサ38dを放電させるための回路構成についてのみ説明し、他相(V,W相)については、その説明を省略する。
【0077】
図6に示すように、本実施形態の放電回路60は、各相毎に、そのエミッタ端子が接地された二つのnpnトランジスタ61,62を備えている。npnトランジスタ61は、そのコレクタ端子が、抵抗63を介して直流電源64に接続されている。一方、npnトランジスタ62のコレクタ端子は、そのコンデンサ38dの接続点P3よりも低電位側(接地側)の接続点P4において、低電位側の支線35dに接続されている。そして、その接続点P4とnpnトランジスタ62のコレクタ端子との間にはディスチャージ抵抗65が設けられている。
【0078】
また、npnトランジスタ61のベース端子には、上記通電制御回路50とマイコン21とを接続する信号線54から分岐した信号線66が接続されている。尚、この信号線66には、npnトランジスタ61の近傍に抵抗67が設けられるとともに、プルダウン抵抗68が接続されている。そして、npnトランジスタ62のベース端子は、npnトランジスタ61及び抵抗63間の接続点P5と接続されている。
【0079】
即ち、マイコン21の出力する通電制御信号S_pcの信号レベルが「Hi」である場合、その通電制御信号S_pcが信号線66を介して入力されることにより、npnトランジスタ61は「オン」状態となる。そして、これにより、当該npnトランジスタ61及び上記抵抗63間の接続点P5の電圧が略接地電圧となり、npnトランジスタ62のベース端子に印加される電圧レベルが「Lo」となることにより、同npnトランジスタ62はオフ状態となる。従って、上記通電制御回路50により給電線Lp2の通電が許容されている状態では、当該給電線Lp2を流れる電流が放電回路60に流入することはない。
【0080】
一方、マイコン21の出力する通電制御信号S_pcの信号レベルが「Lo」である場合、その通電制御信号S_pcが信号線66を介して入力されることにより、npnトランジスタ61は「オフ」状態となる。そして、これにより、当該npnトランジスタ61及び上記抵抗63間の接続点P5の電圧が、直流電源64の制御電圧Vcc(及び抵抗63による電圧降下分)に基づく値となり、npnトランジスタ62のベース端子に印加される電圧レベルが「Hi」となることにより、同npnトランジスタ62はオン状態となる。
【0081】
即ち、同npnトランジスタ62がオン状態となることで、コンデンサ38dの電源側端子は、上記接続点P3において当該電源側端子と接続された支線35d、及び同接続点P3よりも低電位側の接続点P4において支線35dに接続されたディスチャージ抵抗65及びnpnトランジスタ62を介して接地される。そして、本実施形態の放電回路60は、これにより、上記通電制御回路50により給電線Lp2が通電不能に遮断されている場合に、その給電線Lp2を構成する低電位側の各支線35d,35e,35fに接続された各コンデンサ38d,38e,38fを放電させることが可能となっている。
【0082】
以上、本実施形態によれば、上記第1の実施形態において記載した(1)〜(3)の作用・効果に加え、以下のような作用・効果を得ることができる。
(4)電源遮断手段としての通電制御回路50により給電線Lp2が通電不能に遮断された場合に、上記平滑回路28を構成する各コンデンサを放電させる放電回路60が設けられる。
【0083】
即ち、給電線Lp2を通電不能に遮断した後においても、当該給電線Lp2に接続されたコンデンサに電荷が残留することで、プリドライバ22に対する印加電圧の低下に遅れが生じ、その結果、動力線Lp1の通電停止が遅延してしまうおそれがある。そして、特に、電解コンデンサを用いた場合には、その端子間リーク電流が小さいことから、この傾向が、より一層、顕著なものとなる。
【0084】
しかしながら、上記構成によれば、コンデンサに残留する電荷の影響を排除して、給電線Lp2の通電遮断後、速やかにプリドライバ22の印加電圧を低下させることができる。そして、これにより、遅滞なく各ゲート駆動信号の出力レベルを「Lo」として、より迅速に動力線Lp1の通電を停止させることができるようになる。
【0085】
(5)放電回路60は、給電線Lp2における低電位側の各支線35d,35e,35fに接続された各コンデンサ38d,38e,38fを放電可能に形成されている。
即ち、駆動回路20を構成する各スイッチングアーム30u,30v,30wにおいては、その低電位側に配置された各FET30d,30e,30fの方が、高電位側に配置された各FET30a,30b,30cよりも小さなゲート電圧でオン作動する。このため、プリドライバ22においては、低電位側の各ドライバ回路33d,33e,33fの方が、より低い印加電圧でその出力するゲート駆動信号が「Hi」となる。従って、上記のように、低電位側の各支線35d,35e,35fに接続された各コンデンサ38d,38e,38fを放電することで、効果的に、動力線Lp1における通電停止の遅延を抑制することができる。その結果、その回路構成をより簡素なものとして基板を小型化するとともに、あわせて製造コストの低減を図ることができる。
【0086】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明をEPSアクチュエータ10の駆動源であるモータ12の作動を制御するモータ制御装置としてのECU11に具体化した。しかし、これに限らず、EPS以外の用途に適用してもよい。
【0087】
・また、EPSの形式についても所謂コラム型に限らず、所謂ピニオン型やラックアシスト型であってもよい。
・更に、例えば、伝達比装置等、操舵系を駆動するモータを有するものであれば、EPS以外の車両用操舵装置に適用してもよい。
【0088】
・上記各実施形態では、駆動回路20を構成する各スイッチング素子には、FET30a〜30f(MOSFET)を用いることとした。しかし、これに限らず、プリドライバの出力する駆動信号によりオン/オフするものであれば、他の種類のトランジスタを用いてもよい。
【0089】
・上記各実施形態では、ECU11は、三相(U,V,W)の駆動電力の供給により回転するブラシレスモータを制御することとした。しかし、これに限らず、本発明は、ブラシ付の直流モータ用のモータ制御装置に適用してもよい。尚、この場合における駆動回路には、そのプリドライバの出力する駆動信号によりオン/オフする各スイッチング素子をHブリッジ状に接続した公知の構成、即ち二つのスイッチングアームを並列に接続した構成を採用するとよい。
【0090】
・上記各実施形態では、昇圧回路27は、給電線Lp2を構成する各支線35a〜35fに、それぞれチャージポンプ回路37a〜37fを設けるとにより形成されることとした。しかし、これに限らず、チャージポンプ回路37a〜37f以外の昇圧要素(例えば、コイルを用いたフライバック回路等)により昇圧回路27を形成してもよい。
【0091】
・また、必ずしも全ての支線35a〜35fに昇圧要素を設けなくともよい。即ち、本発明は、一の昇圧回路により昇圧した電圧をプリドライバ22に印加する構成や、複数の昇圧回路を切り換えつつ、その昇圧した電圧をプリドライバ22に印加する構成、或いは高電位側のドライバ回路のみに昇圧電圧を印加する構成等に具体化してもよい。尚、この場合における平滑回路についてもまた、必要な箇所にコンデンサを接続するものでよい。
【0092】
・上記各実施形態では、平滑回路28には、電解コンデンサを用いることとした。しかし、これに限らず、平滑回路28は、セラミックコンデンサ等、その他種類のコンデンサを用いて、或いは電解コンデンサをも含め、その任意の組み合わせにより構成してもよい。
【0093】
・上記第1の実施形態では、上記リレー回路40には、半導体リレーが用いられることとしたが、接点式のリレー回路を用いてもよい。
・また、上記第2実施形態において電源遮断手段を構成する通電制御回路50の回路構成についても、図6に示すものに限らない。
【0094】
・そして、放電回路60の回路構成についても、図6に示すものに限らない。
・上記第2実施形態では、放電回路60は、給電線Lp2における低電位側の各支線35d,35e,35fに接続された各コンデンサ38d,38e,38fを放電可能に形成されることとした。しかし、これに限らず、高電位側の各支線35a,35b,35cに接続された各コンデンサ38a,38b,38cについても同様に放電可能な構成としてもよい。また、プリドライバ22に対する印加電圧の低下に遅れが生じさせるような電荷が残留するコンデンサ、具体的には、電源遮断手段よりも低電位側(接地側)において給電線Lp2に接続されたコンデンサがあれば、これらについても放電可能な構成とするとよい。これにより、給電線Lp2の通電遮断後、より速やかに、プリドライバ22の印加電圧を低下させることができるようになる。
【符号の説明】
【0095】
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、10…EPSアクチュエータ、11…ECU、12…モータ、12u,12v,12w…各相モータコイル、20…駆動回路、21…マイコン、22…プリドライバ、23…電流センサ、25…車載電源、27…昇圧回路、28…平滑回路、Lp1…動力線、30a〜30f…FET、30u,30v,30w…スイッチングアーム、32u,32v,32w…シャント抵抗、33a〜33f…ドライバ回路、34…本線、Lp2…給電線、35a〜35f…支線、37a〜37f…チャージポンプ回路、38a〜38f…コンデンサ、40…リレー回路、41…電圧センサ、50…通電制御回路、60…放電回路、70…プリドライバ、71…駆動回路、72a〜72f…FET、73(73a〜73f)…ドライバ回路、74…プッシュプル回路、75…pチャネルFET、76…nチャネルFET、V_pig…電源電圧、V_bpig…昇圧電圧、V_fd(V_fd1〜V_fd6)…検出電圧、Vth…閾値、I…実電流値、Iu,Iv,Iw…相電流値、Ith…閾値、S_md1〜S_md6…モータ制御信号、S_gd1〜S_gd6…ゲート駆動信号、S_rly…リレー信号、S_pc…通電制御信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を接続してなる駆動回路と、モータ制御信号を出力するモータ制御信号出力手段と、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、前記昇圧回路が出力する昇圧電圧に基づいて前記モータ制御信号に対応する駆動信号を前記各スイッチング素子に出力するプリドライバと、を備えたモータ制御装置において、
前記昇圧回路は、前記駆動回路と電源とを接続する動力線から分岐した前記プリドライバの給電線に設けられるとともに、前記給電線には、該給電線を通電不能に遮断すべく制御可能な電源遮断手段が設けられること、を特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
前記給電線の途中には電圧センサが設けられるとともに、
前記電源遮断手段は、前記電圧センサによる検出電圧が所定の閾値以下である場合に前記給電線を遮断すべく制御されること、を特徴とするモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のモータ制御装置において、
前記駆動回路は、二個のスイッチング素子を直列に接続してなるスイッチングアームを並列に接続してなるものであって、
何れかの前記スイッチングアームにおいて高電位側及び低電位側のスイッチング素子が同時にオン状態となる短絡故障の発生を検知する検知手段を備え、
前記電源遮断手段は、前記短絡故障が検知された場合に前記給電線を遮断すべく制御されること、を特徴とするモータ制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のモータ制御装置において、
前記給電線には、前記昇圧回路と前記プリドライバとの間に、コンデンサが接続されるとともに、前記電源遮断手段は、前記コンデンサよりも電源側に設けられるものであって、
前記給電線の遮断時に前記コンデンサを放電させる放電回路を備えること、
を特徴とするモータ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ制御装置において、
前記プリドライバは、前記各スイッチング素子に対応する複数のドライバ回路を備えるとともに、前記給電線は、前記電源遮断手段が設けられた本線と、各ドライバ回路に対応して前記本線から分岐した複数の支線とからなるものであって、
前記放電回路は、前記スイッチングアームにおける低電位側のスイッチング素子及び該スイッチング素子に前記駆動信号を出力する前記ドライバ回路に対応する前記支線に接続された前記コンデンサを放電するように形成されること、
を特徴とするモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のモータ制御装置を備えた電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のモータ制御装置に制御されるモータにより操舵系を駆動する車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−109779(P2011−109779A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261245(P2009−261245)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】