説明

モータ制御装置及びモータ制御方法

【課題】エネルギの浪費を抑えつつ、過熱時におけるモータの突然停止を防止し得るモータ制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】モータの負荷状態に対応したポイント値を設定する。モータの負荷状態を検出し、ワイパモータのモータ負荷ポイントPointFを算出する(S1)。モータ負荷ポイントPointFと閾値A〜Cとを比較し(S3〜S5)、各比較結果に基づいて、モータの回転数を徐々に低下させるエナジー払拭モード(S6)や、間欠払拭動作(S7)、モータ停止(S8)などの過熱保護処理を実行する。過熱保護処理は、モータ負荷ポイントPointFが解除閾値X以下となった場合や、ワイパスイッチがオフされた場合は解除される(S10〜S12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常負荷等に対するモータの過熱防止に関し、特に、自動車用ワイパモータの発熱保護技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータの過熱防止対策としては、サーキットブレーカによる電流遮断や、制御装置にてモータ温度を推定し、モータ供給電流を適宜制御する方式などが知られている。例えば、特許文献1のモータでは、前者の方式が採用されており、ブラシに直列接続されるチョークコイルと、過電流によるモータ焼損を防止するためのサーキットブレーカが設けられている。サーキットブレーカは、チョークコイルの近傍に配置され、チョークコイルの発熱に基づいて作動する。モータが過負荷状態となると、過電流によりチョークコイルが発熱し、その熱により、サーキットブレーカが作動してモータへの電流供給を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-268852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、このような過熱防止システムでは、サーキットブレーカによる電流遮断回路が働いた場合や、制御装置にてモータの異常発熱を検出した場合、通常、その時点でモータ動作が停止してしまう。しかしながら、例えば、自動車等の車両に搭載されているワイパ駆動用モータでは、発熱によりモータが停止すると、雨天走行中にワイパ動作が突然停止する可能性があり、安全走行上、好ましくない。また、サーキットブレーカの作動により、モータが一旦停止すると、モータの温度が低くなるまで、システムを再始動させることができない。このため、ワイパモータの場合も、モータ発熱保護が働くと、その後しばらくワイパアームを作動できなくなってしまうというおそれがあった。
【0005】
さらに、従来の過熱防止システムでは、ユーザの要求通りに作動を続ける必要がない場合でも、モータ発熱保護が働く場合もある。例えば、ユーザが、ワイパスイッチを切り忘れ、ガラスが乾いている状態(DRY状態)でワイパを作動させているケースなどでも、過熱状態となるまでモータが作動し発熱保護が働く場合がある。このようなモータ動作は、エネルギの浪費であり、発熱によって、装置各部の温度劣化につながるため、好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、過熱に至る過程においてモータ回転数を徐々に低下させることにより、エネルギの浪費を抑えると共に、過熱時におけるモータの突然停止を防止し得るモータ制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のモータ制御装置は、例えば、ワイパアームの往復揺動によって、上反転位置と下反転位置の間にて払拭動作を行う自動車用ワイパ装置の駆動源として使用されるモータの駆動制御に使用され、モータの負荷状態に対応して設定されたポイント値を格納する格納部と、前記モータの現在の負荷状態を検出し、該負荷状態から、前記格納部の前記ポイント値に基づいて、前記ワイパモータのモータ負荷ポイントを算出するモータ負荷ポイント算出部と、前記モータ負荷ポイント算出部によって算出された前記モータ負荷ポイントと所定の閾値とを比較するポイント比較部と、前記ポイント比較部における比較結果に基づいて、前記モータの回転を制御するモータ駆動指令部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のモータ制御装置にあっては、モータ負荷ポイント算出部にて、モータの現在の負荷状態を検出してモータ負荷ポイントを算出し、ポイント比較部にて、モータ負荷ポイントと所定の閾値とを比較する。モータ負荷が大きくなった場合には、ポイント比較部における比較結果に基づいて、例えば、モータの回転数を徐々に低下させたり、モータを間欠作動させたりするなどの駆動制御を実施する。これにより、システムが突然停止してしまうことを防止しつつ、モータの発熱が抑えられる。
【0009】
前記モータ制御装置において、前記閾値として、前記ポイント比較部における前記モータ負荷ポイントとの比較の結果、前記モータの回転数を徐々に低下させる第1制御状態が実施される第1閾値や、前記モータを間欠作動させる第2制御状態が実施される第2閾値や、前記モータを停止させる第3制御状態を設けても良い。また、これらの第1〜第3閾値を設定すると共に、前記モータ駆動指令部によって、前記モータの負荷状態に応じて、通常制御状態と、前記第1制御状態、前記第2制御状態、前記第3制御状態を適宜切り替えるようにしても良い。
【0010】
また、前記閾値として、前記第1〜第3制御状態が実施されている際に、前記ポイント比較部における前記モータ負荷ポイントとの比較の結果、前記第1〜第3制御状態を解除する解除閾値を設定しても良い。
【0011】
さらに、前記モータを自動車用ワイパ装置の駆動源として使用した場合、前記ポイントポイント比較部により、自動車の車速に応じて、前記閾値を適宜変更するようにしても良い。
【0012】
一方、本発明のモータ制御方法は、モータの負荷状態に対応したポイント値を設定し、前記モータの現在の負荷状態を検出し、該負荷状態から、前記ポイント値に基づいて、前記ワイパモータのモータ負荷ポイントを算出し、前記モータ負荷ポイントと所定の閾値とを比較し、該比較結果に基づいて、前記モータの回転を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明のモータ制御方法にあっては、モータの現在の負荷状態を検出してモータ負荷ポイントを算出し、このモータ負荷ポイントと所定の閾値とを比較する。モータ負荷が大きくなった場合には、ポイント比較部における比較結果に基づいて、例えば、モータの回転数を徐々に低下させたり、モータを間欠作動させたりするなどの駆動制御を実施する。これにより、システムが突然停止してしまうことを防止しつつ、モータの発熱が抑えられる。
【0014】
前記モータ制御方法において、前記閾値として、前記モータ負荷ポイントとの比較の結果、前記モータの回転数を徐々に低下させる第1制御状態が実施される第1閾値と、前記モータを間欠作動させる第2制御状態が実施される第2閾値と、前記モータを停止させる第3制御状態が実施される第3閾値を設定し、前記モータの負荷状態に応じて、通常制御状態と、前記第1制御状態、前記第2制御状態、前記第3制御状態を切り替えるようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモータ制御装置によれば、モータの現在の負荷状態を検出してモータ負荷ポイントを算出するモータ負荷ポイント算出部と、モータ負荷ポイントと所定の閾値とを比較するポイント比較部と、ポイント比較部における比較結果に基づいて、モータの回転を制御するモータ駆動指令部とを設けたので、モータ負荷が大きくなった場合には、例えば、モータの回転数を徐々に低下させたり、モータを間欠作動させたりするなどの駆動制御を実施することが可能となる。これにより、システムが突然停止してしまうことを防止しつつ、モータの発熱が抑えられ、モータが過熱状態となるのを防止することが可能となる。
【0016】
本発明のモータ制御方法によれば、モータの現在の負荷状態を検出してモータ負荷ポイントを算出し、モータ負荷ポイントと所定の閾値とを比較し、この比較結果に基づいて、モータの回転を制御するようにしたので、モータ負荷が大きくなった場合には、例えば、モータの回転数を徐々に低下させたり、モータを間欠作動させたりするなどの駆動制御を実施することが可能となる。これにより、システムが突然停止してしまうことを防止しつつ、モータの発熱が抑えられ、モータが過熱状態となるのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のモータ制御方法が適用されるモータを備えたモータユニットの構成を示す説明図である。
【図2】図1のモータにおける制御系の構成を示す説明図である。
【図3】本発明のモータ制御装置のCPUにおける過熱保護処理系の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明による過熱保護処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】モータ負荷ポイント算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、総合負荷ポイントPointSとモータ負荷ポイントPointFとの関係を示す表、(b)は、これらの関係を示すグラフである。
【図7】正逆回転モータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のモータ制御方法が適用されるモータを備えたモータユニットの構成を示す説明図である。図1のモータユニット1は、例えば、自動車用ワイパ装置など車両用電装部品の駆動源として使用される。モータユニット1は、図示しないリンク機構等を介して、ワイパブレード(以下、ブレードと略記する)と接続され、ブレードが上下反転位置に達すると、正逆回転が切り替えられる。
【0019】
モータユニット1は、モータ2と、ギアボックス3とから構成される。モータ2のモータ軸4の回転は、ギアボックス3内にて減速され、出力軸5に出力される。モータ軸4は、有底筒状のヨーク6に回動自在に軸承される。モータ軸4には、コイルが巻装されたアーマチュアコア7と、コンミテータ8が取り付けられている。ヨーク6の内面には、複数の永久磁石9が固定されている。コンミテータ8には、給電用のブラシ10が摺接している。モータ2の速度(回転数)は、ブラシ10に対する供給電流量によって制御される。
【0020】
ヨーク6の開口側端縁部には、ギアボックス3のケースフレーム11が取り付けられている。モータ軸4の先端部は、ヨーク6から突出してケースフレーム11内に収納される。モータ軸4の先端部には、ウォーム12が形成されている。ウォーム12には、ケースフレーム11に回動自在に支持されたウォーム歯車13が噛合している。ウォーム歯車13には、その同軸上に小径の第1ギア14が一体的に設けられている。第1ギア14には、大径の第2ギア15が噛合している。第2ギア15には、ケースフレーム11に回動自在に軸承される出力軸5が一体に取り付けられている。なお、図示されないが、モータ軸4には、前記ウォーム12に隣接して、そのねじ方向とは逆向きのもう1つのウォームが形成されている。当該ウォームは、ウォーム歯車13、第1ギア14と同様の減速部材により、第2ギア15に動力伝達される。
【0021】
モータ2の駆動力は、ウォーム12、ウォーム歯車13、第1ギア14、第2ギア15を経て減速された状態で出力軸5に出力される。出力軸5には、ワイパ装置のクランクアーム(図示せず)が取り付けられている。モータ2が作動すると、出力軸5を介してクランクアームが駆動され、クランクアームと接続されたリンク機構を介してワイパアームが作動する。
【0022】
モータ軸4には、多極着磁マグネット16(以下、マグネット16と略記する)が取り付けられている。これに対し、ケースフレーム11内には、マグネット16の外周部と対向するように、ホールIC17が設けられている。ホールIC17は、モータ軸4の中心に対して90度の角度差を持った位置に2個設けられている。モータ2では、マグネット16は6極に着磁されており、モータ軸4が1回転すると各ホールIC17からは6周期分のパルス出力が得られる。2個のホールIC17からは、位相が1/4周期ずれたパルス信号が出力される。
【0023】
従って、ホールIC17からのパルスの出現タイミングを検出することにより、モータ軸4の回転方向が判別でき、これによりワイパ動作の往路/復路の判別を行うことができる。また、ホールIC17の何れか一方のパルス出力の周期から、モータ軸4の回転速度も検出できる。モータ軸4の回転数とブレードの速度との間には、減速比及びリンク動作比に基づく相関関係が存在しており、モータ軸4の回転数からブレードの速度も算出できる。
【0024】
第2ギア15の底面には、絶対位置検出用のマグネット18が取り付けられている。ケースフレーム11には、プリント基板19が取り付けられている。プリント基板19の上には、マグネット18と対向するようにホールIC20が配置されている。マグネット18は、第2ギア15の底面上に1個設けられており、ブレードが下反転位置に来たときホールIC20と対向する。第2ギア15は、前述のようにクランクアームが取り付けられ、ブレードを往復動させるため180度回転する。第2ギア15が回転しブレードが下反転位置に来ると、ホールIC20とマグネット18が対向してパルス信号が出力される。
【0025】
ホールIC17,20からのパルス出力は、ワイパ駆動制御装置(モータ制御装置)21に送られる。図2は、モータ2の制御系の構成を示す説明図である。ワイパ駆動制御装置21のCPU(制御部)22は、イグニッションスイッチ31を介してバッテリ32と接続されており、ワイパスイッチ33によってワイパ装置の動作形態を切り替えられるようになっている。CPU22は、ホールIC20,17と接続されており、ホールIC20からのパルス出力を絶対位置信号として用いてブレードの位置を認識する。ホールIC17からのパルス信号は、ブレードの相対位置信号として用いられる。CPU22は、絶対位置信号が得られた後のパルス数をカウントすることにより、ブレードの現在位置を認識する。ここでは、ホールIC20からの下反転位置を示す絶対位置信号と、ホールIC17からのパルス数の組み合わせによって、ブレードの現在位置を検出する。このようにしてワイパ駆動制御装置21はブレードの現在位置と速度を認識し、そのデータに基づいてモータ2を制御する。
【0026】
CPU22は、ホールIC17のモータパルスから、モータ2の速度(回転数)を検出する。モータ2は、検出された速度に基づいて、フィードバック制御される。モータ2にはPWM制御が実行され、CPU22は、制御条件や検出速度に応じて、印加電圧を適宜ON/OFFさせて、ON時間の比率を適宜変更する。すなわち、CPU22は、ホールIC17のモータパルスに基づいてモータ速度を算出すると共に、その値に応じてPWM制御のON期間の時比率(Duty)を設定する。これにより、モータ2に対する印加電圧が実効的に変化し、モータ2の速度が所望の値に制御される。なお、CPU22では、モータパルスの周期(Hz)をそのまま速度として処理するが、パルス周期から求めた回転数(rpm)によって制御を行っても良い。
【0027】
一方、CPU22では、検出されたモータ速度と、前述のようにして設定されたDutyと、電源電圧(バッテリ電圧)に基づいて過熱保護処理が行われる。この制御処理では、モータ速度とDuty及び電源電圧からモータ負荷ポイントを算出し、このモータ負荷ポイントが所定の閾値を超えたとき過熱状態と判断し、モータ保護処理が実行される。
【0028】
図3は、CPU22における過熱保護処理系の構成を示すブロック図である。図3に示すように、CPU22には、負荷状態検出部として、モータ速度、Duty及び電源電圧からモータ負荷ポイントを算出するモータ負荷ポイント算出部23がまず設けられている。モータ負荷ポイント算出部23は、ROM(格納部)26に予め格納された負荷ポイントマップ27にアクセスし、モータ速度やDuty等に基づいて、モータ負荷ポイントを算出する。算出されたモータ負荷ポイントは、適宜RAM28に格納される。モータ負荷ポイント算出部23の後段には、モータ負荷ポイントを、ROM26に格納された基準値(閾値)と比較するポイント比較部24が設けられている。ポイント比較部24の後段にはさらに、比較結果に基づき、モータ2に対し動作指令を行うモータ駆動指令部25が設けられている。
【0029】
CPU22では、モータ2の作動時に、次のような過熱保護処理が、例えば10ms間隔で実施される。図4は、そのフローチャートである。図4に示すように、ここではまず、ステップS1にて、モータ負荷ポイントの算出処理が行われる。モータ負荷ポイント算出の後、ステップS2に進み、現在、モータの過熱保護処理が実行されているか否かを示すフラグを確認する。過熱保護処理が実行されていない場合には、ポイント比較部24にて、算出したモータ負荷ポイントを所定の検出閾値A〜Cと比較する(ステップS3,S4,S5)。そして、各検出閾値A〜Cとの比較結果に応じて、モータ駆動指令部25により、各状態に対応したモータ過熱保護処理が実行される(ステップS6,S7,S8)。過熱保護処理が実行されている場合は、モータ負荷ポイントが所定の解除閾値Xと比較された後(ステップS10)、ステップS3以下に進む。
【0030】
ステップS1のモータ負荷ポイント算出処理では、モータ負荷ポイント算出部23によって、モータ速度、Duty及び電源電圧から、現在のモータ2の負荷状態を示すモータ負荷ポイントが算出される。図5は、モータ負荷ポイント算出処理の処理手順を示すフローチャートである。図5に示すように、ここではまず、ステップS21〜23にて、モータ速度、Duty、電源電圧がそれぞれ検出される。各ステップS21〜23は順不同であり、何れを先に行っても良い。モータ速度等の各検出値を取得した後、ステップS24にて、各検出値から個別の負荷ポイント値(モータ速度:freqP,Duty:dutyP,電源電圧:voltP)を、負荷ポイントマップ27を用いて算出する。
【0031】
モータ速度の負荷ポイント値freqPは、モータパルス周波数[Hz]×係数にて表され、モータ回転数が、0→0.5→1.0→1.5→2.0(rpm)・・・と上がると、それに連れて、0→1→2→3→4のように大きくなる。Dutyの負荷ポイント値dutyPは、モータ駆動PWM Duty×係数にて表され、Duty値が0→100(%)と上がるに連れて、0→255のように大きくなる。電源電圧の負荷ポイント値voltPは、電圧アナログデータ値×係数にて表され、13Vを境に下はマイナス、上はプラスの値となる。すなわち、バッテリ電圧が13VのときvoltP=0となり、例えば、バッテリ電圧が8.5VのときvoltP=−30、16VのときvoltP=20、などの値が設定される。
【0032】
個別の負荷ポイント値(freqP,dutyP,voltP)を、ステップS24にてそれぞれ算出した後、ステップS25に進み、各負荷ポイント値から総合負荷ポイントPointSを求める。PointSは、次式(PointS = dutyP − freqP + voltP)にて算出される。S25にて求めた総合負荷ポイントPointSは、外力によってモータ2が回されている状態(モータが発電機となり発熱する)では、比較的大きな負の値(例えば、−100超)となり、PointSは、+,−何れの値ともなる。そこで、ステップS26にて、PointSの正負を判定し、負の値の場合には、その絶対値を取る(ステップS27)。そして、正の値のPointSに基づき、ステップS28にて、負荷ポイントマップ27からモータ負荷ポイントPointFを算出し、ルーチンを抜ける。なお、モータ負荷ポイントPointFは、誤作動防止のため、過去の複数回(例えば、10回)払拭分の平均値を採用する。
【0033】
図6(a)は、総合負荷ポイントPointSとモータ負荷ポイントPointFとの関係を示す表、同(b)は、これらの関係を示すグラフである。図6に示すように、PointFは、PointSの値に対応して設定されており、PointSが0,1,2のような小さな値のときは−6のような負の値となり、PointSが100近傍にて0となる。PointSは、「0,1,2」や「96〜103」のように、複数個の値がグループ化されており、PointFは、各グループに対応する形で複数に区切られている(PointS=0,1,2→PointF=−6,PointS=96〜103→PointF=0)。PointFは、PointSの増加と共に増大し、PointSが255のとき、PointF=127となる。なお、
【0034】
このようにして、モータ負荷ポイントPointFを算出した後、ステップS3にて、PointFと検出閾値A(第1閾値)を比較する。PointFと検出閾値との比較は、ROM26を参照しつつ、ポイント比較部24によって行われる。その際、PointFが検出閾値A(例えば、0)未満の場合には、負荷状態に問題はない。従って、特に過熱保護処理は行わずルーチンを抜け、ワイパスイッチ33の状態に応じて、通常払拭動作(絶対位置信号と相対位置信号に基づいて、ワイパアームを上下反転位置間にて往復動させる通常のワイパ動作)が実施される。これに対して、PointFが検出閾値A以上の場合には、DRY状態相当以上の負荷が想定されるため、ステップS4に進み、PointFと検出閾値B(第1閾値、例えば、30)を比較する。この時、PointFが検出閾値B未満の場合には、DRY状態相当の負荷ではあるが、過負荷とまでは言えない状態であり、ステップS6に進み、第1段階の過熱保護処理として、モータ速度(ワイパ払拭速度)を所定速度まで徐々に低下させるエナジー払拭モード(第1制御状態)を実行する。
【0035】
エナジー払拭モードでは、例えば、60(cpm=cycle/min)にて駆動されているワイパの払拭速度を、30回の払拭にて30(cpm)に低下させる。つまり、現在の払拭速度Vcを、所定回数N(ここでは、30回)にてエナジーモード速度Ve(ここでは、30(cpm))に低下させるべく、1払拭毎に(Vc−Ve)/Nずつ、ワイパ速度を低下させる。従って、当該過熱保護処理では、モータ2の過熱を検出しても、ワイパが突然停止してしまうことがなく、モータ2の過熱を抑えつつ、ワイパ動作が徐々に遅くなる。
【0036】
このように、エナジー払拭モードでは、このまま作動を続けると、発熱による作動停止に至る場合や、システムを継続して作動させる必要がない場合に、ユーザが違和感を持たないように、モータ2の作動速度を徐々に落としてモータ2の発熱を防止する。これにより、モータ発熱が抑えられ、システムとしては作動を継続することが可能となる。また、従来のシステムのように、システムが突然停止してしまうことを防止できる。さらに、モータ発熱が抑えられるため、モータ各部の温度劣化を防止できる。加えて、モータ速度を落とすことにより、時間当たりの消費エネルギが削減されると共に、DRY払拭のような、不要なワイパ動作によるエネルギ浪費を抑えることができ、環境に優しいシステムを提供することが可能となる。
【0037】
一方、ステップS4にて、PointFが検出閾値B以上の場合には、DRY状態相当を超えた過負荷状態であるため、更なる過熱保護処理を行うべく、ステップS5に進み、検出閾値C(第3閾値、例えば、120)との比較を行う。この時、PointFが検出閾値C未満の場合には、DRY状態相当の負荷を超える過負荷ではあるが、異常負荷とまでは言えない状態であり、ステップS7に進み、第2段階の過熱保護処理として、ワイパの動作状態を間欠作動状態(第2制御状態)に変更する。エナジー払拭モードでは、速度が低下したとは言え、モータ2が連続的に作動しているが、S7の処理では、モータ停止時間が設定され、モータ2の負荷がエナジー払拭モードよりも低減される。これにより、ワイパが突然停止することなく、モータ2の過熱が抑えられ、モータ各部の温度劣化も防止できる。なお、S7の間欠作動移行処理は、ワイパ動作が顕著に変化するため、ユーザに各負荷状態を認知させる契機ともなる。
【0038】
これに対し、ステップS5にて、PointFが検出閾値C以上の場合には、モータ2に大きな負荷が掛かっており、異常負荷と判断し、ステップS8に進む。ステップS8では、第3段階の過熱保護処理として、緊急処理であるモータ2の作動停止(第3制御状態)を実行する。PointFが検出閾値C以上となるのは、異物によりワイパアームの動作が妨げられている場合や、外力によってワイパアームが異常に動かされている場合など、システムに尋常ならざる状態が生じている可能性があることが想定される。従って、この場合には、ワイパ動作の継続よりも、システムの保護を優先して、モータ2を停止させる。
【0039】
このような3段階の過熱保護処理を行った後は、ステップS9に進み、過熱保護処理を行っている旨を示すフラグ(過熱保護実行フラグ)を立て、ルーチンを抜ける。ステップS9に立てられたフラグは、次の処理機会のステップS2にて確認され、フラグが立っている場合には、ステップS10に進む。ステップS10では、PointFが解除閾値X(例えば、−2)と比較される。PointFが解除閾値X(例えば、−2)より大きい場合には、過熱保護処理が必要な状況が継続していると判断し、ステップS3以下の処理に進む。これに対し、PointFが解除閾値X(例えば、−2)以下の場合には、過熱保護処理が必要な状況は解消したと判断し、ステップS11にてフラグを取り下げた後、ワイパを通常払拭動作に戻し(ステップS12)、ルーチンを抜ける。なお、ワイパスイッチ33がオフされた場合も過熱保護処理は解除され、次回作動時は通常払拭動作が行われる。
【0040】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例では、検出閾値A〜Cを固定値として前記処理を行っているが、車速に応じてその値を適宜変更しても良い。自動車が走行している場合、走行風により、モータ2が冷却されることが考えられ、例えば、図4のフローチャートのS3前段に、車速の有無を判定するステップと、車速有りの場合に検出閾値A〜Cを変更するステップを設けても良い。その際、検出閾値A〜Cは、前述の例で言えば、検出閾値A=0→40、検出閾値B=30→75、検出閾値C=120→150、のように変更される。なお、車速の有無のみならず、高速時は検出閾値A〜Cを大きく、低速時は検出閾値A〜Cを小さくするなど、速度の大小に応じて検出閾値A〜Cを適宜変更しても良い。
【0041】
また、モータ負荷ポイントPointFとして、過去の複数回払拭分の平均値を採用する例を示したが、モータ負荷ポイントを累積し、その累積値を所定の閾値と比較して前述同様の処理を行っても良い。この場合、検出閾値A〜Cは、例えば、検出閾値A=0、検出閾値B=3000、検出閾値C=12000、のように設定され、累積値と各閾値との比較により、エナジー払拭モードや間欠作動、モータ停止などの各処理が実行される。さらに、前述の実施例では、総合負荷ポイントPointSから、負荷ポイントマップ27用いてモータ負荷ポイントPointFを算出する処理形態を示したが、総合負荷ポイントPointSを直接過負荷判断の対象とすることも可能である。但し、モータ負荷ポイントPointFへの換算処理を行う方が、制御が必要以上に細かくならず、CPU22への負荷も少なくなる。
【0042】
一方、図7には、図2で開示されたモータとは異なるモータが開示されており、Hブリッジ回路34を備える正逆回転モータが開示されている。本発明は、このような正逆回転モータにも適用可能である。CPU22とワイパスイッチ33とが通信線35を介して接続されており、通信線35から伝達される制御情報に応じてワイパが制御される。なお、図7で開示されている図番は図2と共通のものは同じ番号を使用している。
【0043】
また、前述の実施例では、本発明をワイパ装置用モータの制御に適用した例を示したが、その適用対象はこれには限定されず、自動車のテールゲートやスライドドア、パワーウインド、サンルーフなどに使用されるモータにも適用可能である。加えて、本発明の制御方法・装置は、自動車用のみならず、各種電動機器用のモータにも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 モータユニット
2 モータ
3 ギアボックス
4 モータ軸
5 出力軸
6 ヨーク
7 アーマチュアコア
8 コンミテータ
9 永久磁石
10 ブラシ
11 ケースフレーム
12 ウォーム
13 ウォーム歯車
14 第1ギア
15 第2ギア
16 マグネット
17 ホールIC
18 マグネット
19 プリント基板
20 ホールIC
21 ワイパ駆動制御装置
22 CPU
23 モータ負荷ポイント算出部
24 ポイント比較部
25 モータ駆動指令部
26 ROM(格納部)
27 負荷ポイントマップ
28 RAM
31 イグニッションスイッチ
32 バッテリ
33 ワイパスイッチ
34 Hブリッジ回路
35 通信線
PointF モータ負荷ポイント
PointS 総合ポイント値
dutyP 負荷ポイント値(Duty)
freqP 負荷ポイント値(モータ速度)
voltP 負荷ポイント値(電源電圧)
A 検出閾値(第1閾値)
B 検出閾値(第2閾値)
C 検出閾値(第3閾値)
X 解除閾値
Vc 現在払拭速度
Ve エナジーモード払拭速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの負荷状態に対応して設定されたポイント値を格納する格納部と、
前記モータの現在の負荷状態を検出し、該負荷状態から、前記格納部の前記ポイント値に基づいて、前記ワイパモータのモータ負荷ポイントを算出するモータ負荷ポイント算出部と、
前記モータ負荷ポイント算出部によって算出された前記モータ負荷ポイントと所定の閾値とを比較するポイント比較部と、
前記ポイント比較部における比較結果に基づいて、前記モータの回転を制御するモータ駆動指令部と、を有することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータ制御装置において、前記閾値として、前記ポイント比較部における前記モータ負荷ポイントとの比較の結果、前記モータの回転数を徐々に低下させる第1制御状態が実施される第1閾値を有することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のモータ制御装置において、前記閾値として、前記ポイント比較部における前記モータ負荷ポイントとの比較の結果、前記モータを間欠作動させる第2制御状態が実施される第2閾値を有することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3記載の何れか1項に記載のモータ制御装置において、前記閾値として、前記ポイント比較部における前記モータ負荷ポイントとの比較の結果、前記モータを停止させる第3制御状態が実施される第3閾値を有することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項5】
請求項1記載のモータ制御装置において、前記閾値として、前記ポイント比較部における前記モータ負荷ポイントとの比較の結果、前記モータの回転数を徐々に低下させる第1制御状態が実施される第1閾値と、前記モータを間欠作動させる第2制御状態が実施される第2閾値と、前記モータを停止させる第3制御状態が実施される第3閾値を有し、
前記モータ駆動指令部は、前記モータの負荷状態に応じて、通常制御状態と、前記第1制御状態、前記第2制御状態、前記第3制御状態を切り替えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5記載の何れか1項に記載のモータ制御装置において、前記閾値として、前記第1〜第3制御状態が実施されている際に、前記ポイント比較部における前記モータ負荷ポイントとの比較の結果、前記第1〜第3制御状態を解除する解除閾値を有することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6記載の何れか1項に記載のモータ制御装置において、前記モータは、ワイパアームの往復揺動によって、上反転位置と下反転位置の間を払拭する自動車用ワイパ装置の駆動源として使用されることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項8】
請求項7記載のモータ制御装置において、前記ポイント比較部は、自動車の車速に応じて前記閾値を変更することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項9】
モータの負荷状態に対応したポイント値を設定し、
前記モータの現在の負荷状態を検出し、該負荷状態から、前記ポイント値に基づいて、前記ワイパモータのモータ負荷ポイントを算出し、
前記モータ負荷ポイントと所定の閾値とを比較し、該比較結果に基づいて、前記モータの回転を制御することを特徴とするモータ制御方法。
【請求項10】
請求項9記載のモータ制御方法において、前記閾値として、前記モータ負荷ポイントとの比較の結果、前記モータの回転数を徐々に低下させる第1制御状態が実施される第1閾値と、前記モータを間欠作動させる第2制御状態が実施される第2閾値と、前記モータを停止させる第3制御状態が実施される第3閾値を設定し、
前記モータの負荷状態に応じて、通常制御状態と、前記第1制御状態、前記第2制御状態、前記第3制御状態を切り替えることを特徴とするモータ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−130596(P2011−130596A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287160(P2009−287160)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】