説明

ラジカルクリーニング方法及びラジカルクリーニング装置

【課題】Si基板上に形成されたSiO膜を除去するラジカルクリーニング方法であって、ラジカルクリーニングを行う際に生成する残留生成物も除去することができるラジカルクリーニング方法を提供する。
【解決手段】プラズマによりHラジカル生成用ガスを分解してHラジカルを生成させ、このHラジカルとNFガスを反応させてN、F及びHからなるラジカルを生成するNFHラジカル生成工程と、真空槽内で、Si基板上に形成されたSiO膜に前記N、F及びHからなるラジカルを照射することにより前記SiO膜を除去するエッチング工程と、真空槽内で、前記エッチング工程で前記Si基板上に生成した残留生成物にマイクロ波を照射することにより、前記残留生成物を加熱して蒸発させて除去する残留生成物除去工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Si基板(シリコン基板)上に形成された自然酸化膜等のSiO膜を除去するラジカルクリーニング方法及びラジカルクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Siトランジスターを作る工程においてソース、ドレインと配線とのコンタクトのためのNi及びCoのサリサイド形成の前工程として、また、ゲートPoly−Si膜と配線とのコンタクトの前工程としてSi基板表面にある自然酸化膜(SiO膜)を除去するために、以前はHFによる洗浄が行われていた。しかし、デバイスのシュリンクが進むにつれてHF溶液が微細ホールの中にうまく入らず、自然酸化膜の除去が十分でなくなってきた。
【0003】
上記問題を解決するために、NFHやNFHラジカルを用いた気相でのラジカルエッチング技術(CDT)が使用され始めている(例えば、特許文献1参照)。NFHラジカルでSiOのエッチングを行うと大量のHOと残留生成物(NHSiF等が生成し、この残留生成物が基板表面に付着する。この残留生成物を基板から除去するために、一般的にはヒーター等で200℃程度に加熱して蒸発させている。これは、(NHSiFが120℃程度で蒸発する特性を応用したものである。
【0004】
しかしながら、このヒーター等で200℃程度に加熱して蒸発させる方法では、残留生成物の基板からの除去は不十分であり、Si基板表面の残留生成物をさらに低減することができる方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−165954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、Si基板上に形成されたSiO膜を除去するラジカルクリーニング方法であって、ラジカルクリーニングを行う際に生成する残留生成物も除去することができるラジカルクリーニング方法及びラジカルクリーニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のラジカルクリーニング方法は、プラズマによりHラジカル生成用ガスを分解してHラジカルを生成させ、このHラジカルとNFガスを反応させてN、F及びHからなるラジカルを生成するNFHラジカル生成工程と、真空槽内で、Si基板上に形成されたSiO膜に前記N、F及びHからなるラジカルを照射することにより前記SiO膜を除去するエッチング工程と、真空槽内で、前記エッチング工程で前記Si基板上に生成した残留生成物にマイクロ波を照射することにより、前記残留生成物を加熱して蒸発させて除去する残留生成物除去工程とを有することを特徴とする。
前記エッチング工程を行う真空槽は、前記残留生成物除去工程を行う真空槽と同一の真空槽であってもよい。
また、前記エッチング工程を行う真空槽は、前記残留生成物除去工程を行う真空槽とは異なる真空槽であってもよい。
そして、前記Si基板は表面にリンを含有する部材が形成されたものであり、前記残留生成物がリンを含有する化合物及び(NHSiFを含んでいてもよい。
【0008】
また、本発明のラジカルクリーニング装置は、被処理基板が載置される真空槽と、前記真空槽内にHラジカルを導入するHラジカル導入手段と、前記真空槽内にNFガスを導入するNFガス導入手段と、前記真空槽内に載置された前記被処理基板表面にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明のラジカルクリーニング装置は、被処理基板が載置されるエッチング用真空槽と、前記エッチング用真空槽内にHラジカルを導入するHラジカル導入手段と、前記エッチング用真空槽にNFガスを導入するNFガス導入手段と、前記被処理基板が載置される残留生成物除去用真空槽と、前記残留生成物除去用真空槽内に載置された前記被処理基板表面にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Si基板上に形成されたSiO膜を除去するラジカルクリーニング方法において、N、F及びHからなるラジカルの照射によるSiO膜のエッチングにより生成し基板に付着したリンを含有する化合物や(NHSiF等の残留生成物に、マイクロ波を照射することにより、残留生成物を十分に除去することができ、表面の残留生成物の量が少ないSi基板を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のラジカルクリーニング装置の一構成例を模式的に示す概略断面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】本発明のラジカルクリーニング装置の別の構成例を模式的に示す平面図及び概略断面図。
【図4】マイクロ波の照射時間とエッチング量との関係を示す図。
【図5】マイクロ波の照射時間とパーティクルの個数との関係を示す図。
【図6】マイクロ波の照射時間と基板の温度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のラジカルクリーニング方法は、プラズマによりHラジカル生成用ガスを分解してHラジカルを生成させ、このHラジカルとNFガスを反応させてN、F及びHからなるラジカルを生成するNFHラジカル生成工程と、真空槽内で、Si基板上に形成されたSiO膜にN、F及びHからなるラジカルを照射することによりSiO膜を除去するエッチング工程と、真空槽内で、エッチング工程でSi基板上に生成した残留生成物にマイクロ波を照射することにより、残留生成物を加熱して蒸発させて除去する残留生成物除去工程とを有するものである。
【0012】
具体的には、まず、プラズマによりHラジカル生成用ガスを分解してHラジカルを生成させ、このHラジカルとNFガスを反応させてN、F及びHからなるラジカルを生成する(NFHラジカル生成工程)。Hラジカル生成用ガスとしては、HガスやNHガス等が挙げられる。このHラジカル生成用ガスを、高周波電源から高周波を印加する等して発生させたプラズマで分解することにより、Hラジカルを生成することができる。そして、このHラジカルとNFガスを反応させることにより、N、F及びHからなるラジカルが生成する。N、F及びHからなるラジカルは、例えば、NF(x=1〜3、y=1〜4)で表されるものであり、具体例としては、NFHやNFH等が挙げられる。キャリアーガスとして、N、Ar、He、Ne、及びXeの不活性ガスを併用してもよい。
【0013】
次に、真空槽内で、Si基板上に形成されたSiO膜に、上記NFHラジカル生成工程で得られたN、F及びHからなるラジカルを照射することにより、SiO膜を除去する(エッチング工程)。このエッチング工程は、真空(例えば、10〜1000Pa)で行うものである。そして、真空下で、Si基板上に形成されたSiO膜にN、F及びHからなるラジカルを照射することにより、SiOがエッチングされてSi基板からSiO膜が除去される。このエッチングの際に、大量のHOと(NHSiF等の残留生成物が生成し、この(NHSiF等の残留生成物は、Si基板表面に固体として付着する。エッチング工程における一般反応式は以下の通りである。
【0014】
SiO+NF→(NHSiF+H
この式は、より正確に記載すれば、下記の3つの反応があると推測される。
【0015】
SiO+6NFH+6H→(NHSiF+2HO+4NH
SiO+NFH+5HF+NH+H+H→(NHSiF+2H
SiO+2NH+2HF+2HF→(NHSiF+2H
【0016】
また、Si基板が、ホウ素とリンと二酸化珪素を含有する化合物であるボロンフォスフォラスシリコンガラス(Boron Phosphorus Silicon Glass、BPSG)やリンと二酸化珪素を含有する化合物であるフォスフォラスシリコンガラス(Phosphorus Silicon Glass、PSG)を含有する層間絶縁膜等のリンを含有する部材が表面に形成されたSi基板の場合は、このエッチング工程において、リン酸やリン酸アンモニウム等のリンを含有する化合物も生成し、これも残留生成物となって、Si基板表面に付着する。生成するリン酸アンモニウムとしては、(NHPO、(NHHPO、NHPO、(NHPO、(NH)H(POが挙げられる。
【0017】
次に、真空槽内で、エッチング工程でSi基板上に生成した残留生成物にマイクロ波を照射することにより、残留生成物を加熱して蒸発させて、残留生成物をSi基板上から除去する(残留生成物除去工程)。この残留生成物除去工程も、真空(例えば、3×10−4〜10000Pa)で行うものである。残留生成物に照射するマイクロ波は、残留生成物を加熱して蒸発させることができるものであれば特に限定されず、例えばマイクロ波を照射するために用いる導波管で伝送供給できる周波数であればよく、例えば周波数2.45〜10GHz程度とすることができる。商用で使用されている周波数の下限が2.45GHzであり、また、10GHzより大きいと導波管の径が小さくなって真空槽に均一に導入し難くなるためである。また、マイクロ波を照射する電力や真空槽内壁温度も限定されず、例えば、500W〜10kW、温度30〜80℃程度とすることができる。
【0018】
このように、マイクロ波を照射することにより、残留生成物を加熱して蒸発させることができるため、残留生成物をSi基板上から除去できる。ここで、リンを含む残留生成物であるリン酸(HPO)は加熱すると150℃で無水物となり200℃でHに変化するものである。また、リンを含む残留生成物であるリン酸アンモニウムは、(NHPO→(NHHPO→NHPOと変化するにつれて、融点が順に0℃→150℃→190℃と変化するものである。したがって、発生時は液体であったものが、加熱により固体へと変化する。よって、従来のヒーター等による200℃程度の加熱では、これらのリンを含有する化合物は、蒸発せずこの従来の加熱後もSi基板上に残ってしまい、パーティクルとして観測される。そして、これらのリンを含有する化合物は、Si基板を400℃程度まで加熱することにより蒸発させることができるが、400℃まで加熱するためには装置等が高価になってしまうという問題や、高温での加熱はSi基板に形成されたデバイスに対して熱ダメージを与える場合もあるという問題がある。しかしながら、本発明においては、マイクロ波を照射することにより、リンを含む化合物を加熱して蒸発させることができるため、Si基板を400℃程度まで加熱しなくても、リンを含む化合物をSi基板から除去することができる。
【0019】
また、残留生成物である(NHSiFは、マイクロ波の照射により直接加熱され励起されて昇華するため、(NHSiFをSi基板から除去することができる。
【0020】
そして、残留生成物にマイクロ波を照射すると、マイクロ波は、真空槽の内壁面、天板や真空槽内部に設けられた部材など、真空槽内全体に照射される。したがって、真空槽内に再付着した残留生成物が存在する場合、この残留生成物にもマイクロ波が照射されるため、この再付着した残留生成物を昇華等させて真空槽内から除去することができる。よって、真空槽内に再付着した残留生成物の真空槽内からの剥離を抑制することができるという効果も奏する。
【0021】
なお、残留生成物除去工程を行う真空槽と、エッチング工程を行う真空槽を同一の真空槽としてもよく、また、残留生成物除去工程を行う真空槽とエッチング工程を行う真空槽とを異なる真空槽としてもよい。そして、複数枚のSi基板を同時に処理するバッチ処理でもよく、また、一枚のSi基板を処理する枚葉処理でもよい。
【0022】
このような本発明のラジカルクリーニング方法は、Siトランジスターを作る工程においてソース、ドレインと配線とのコンタクトのためのNi及びCoのサリサイド形成の前工程として、また、ゲートPoly−Si膜と配線とのコンタクトの前工程等として、好適に用いられる。
【0023】
このような本発明のラジカルクリーニング方法を適用できるラジカルクリーニング装置について、以下に説明する。
【0024】
図1は、本発明のラジカルクリーニング装置の一構成例を模式的に示す概略断面図であり、図2は図1の平面図である。図1及び図2に示すように、本発明のラジカルクリーニング装置1は、被処理基板Sが載置される真空槽11と、真空槽11内にHラジカルを導入するHラジカル導入手段20と、真空槽11内にNFガスを導入するNFガス導入手段25と、真空槽11内に載置された被処理基板S表面にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段30とを備えるものである。
【0025】
具体的には、図1及び図2に示すラジカルクリーニング装置1は、複数枚の被処理基板Sを同時に処理するいわゆるバッチ型の装置であり、真空槽11内には、複数枚の被処理基板Sを間隔をあけて50枚積層できるウェハーボード12が搬送されて配置される。また、真空槽11には、真空槽11内を排気して所望の真空状態にするための真空ポンプ14が配管13を経由して接続されている。また、Hラジカル導入手段20から真空槽11内に導入されたHラジカルを被処理基板Sの積層方向に拡散させるために、真空槽11には、導入されたHラジカルが通過する複数の孔を有するシャワープレート15が設けられている。
【0026】
そして、ラジカルクリーニング装置1は、真空槽11内にHラジカルを導入するHラジカル導入手段20を有する。図1及び図2においては、Hラジカル導入手段20は、真空槽11に連結されたプラズマ発生器21と、HガスやNHガス等のHラジカル生成用ガスをプラズマ発生器21に供給するHラジカル生成用ガス供給口22と、プラズマ発生器21にマイクロ波を供給するマイクロ波導入口23とを有する。
【0027】
また、ラジカルクリーニング装置1は、真空槽11内にNFガスを導入するNFガス導入手段25を有する。真空槽11内でHラジカルとNFガスを効率よく反応させてN、F及びHからなるラジカルを発生させるために、図1及び図2においては、NFガス導入手段25は、シャワープレート15の近傍に配置されたパイプであってNFガスが供給される孔を複数有するパイプとした。
【0028】
また、ラジカルクリーニング装置1は、真空槽11内に載置された被処理基板S表面にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段30を有する。図1及び図2においては、真空槽11の側面側からマイクロ波を導入する構成としたが、この構成に限定されず、例えば、真空槽11の上部からマイクロ波を導入する構成としてもよい。また、マイクロ波が真空槽11内全体に行き渡るように、撹拌機構を設けてもよい。
【0029】
そして、ラジカルクリーニング装置1は、ゲートバルブ31を介して、図示しない真空ポンプが接続されている仕込み取り出し室32と連結されており、この仕込み取り出し室32が有するゲートバルブ33を開けることにより、仕込み取り出し室32への被処理基板Sを載置したウェハーボード12の出し入れが可能になっている。
【0030】
このようなラジカルクリーニング装置1でラジカルクリーニングする例を説明する。まず、ゲートバルブ33を空けて、表面にSiO膜が形成されたSi基板である被処理基板Sを載置したウェハーボード12を、搬送機構34により仕込み取り出し室32へ搬送する。そして、ゲートバルブ33を閉じ、仕込み取り出し室32に接続された真空ポンプを動作させて仕込み取り出し室32を所定の真空状態まで排気する。次に、ゲートバルブ31を開けて、被処理基板Sを載置したウェハーボード12を搬送機構35により真空槽11へ搬送し、ゲートバルブ31を閉じる。なお、真空槽11は真空ポンプ14を動作させることにより予め所定の真空度に排気しておく。
【0031】
次に、Hラジカル生成用ガス供給口22からHガスやNHガス等のHラジカル生成用ガスとキャリアーガスであるN、Ar、He、Ne、Xe等の不活性ガスをプラズマ発生器21に供給すると共に、マイクロ波導入口23からマイクロ波をプラズマ発生器21に供給して放電を発生させることにより、HガスやNHガスを分解してHラジカルを発生させ、Hラジカルを真空槽11内に導入する。
【0032】
また、真空槽11に、NFガス導入手段25からNFガスを導入する。真空槽11に導入されたNFガスと、真空槽11に導入されシャワープレート15を経由したHラジカルが反応することにより、NFHやNFH等のN、F及びHからなるラジカルが発生する。図1においては、被処理基板S上でHラジカルとNFガスが合流するように配置されている。
【0033】
このようにして発生したN、F及びHからなるラジカルが被処理基板S表面に形成されたSiO膜と接触する、すなわち、N、F及びHからなるラジカルがSi基板上に形成されたSiO膜に照射されることにより、SiO膜がエッチングされる。なお、エッチングが終了した後は、真空槽11へのHラジカル及びNFガスの導入を停止する。
【0034】
このSiO膜がエッチングされる際に、大量のHOと(NHSiF等の残留生成物が生成し、この(NHSiF等の残留生成物は、被処理基板S表面に付着する。また、Si基板が、BPSGやPSGを含有する層間絶縁膜等のリンを含有する部材が表面に形成されたSi基板の場合は、このエッチング工程において、リン酸やリン酸アンモニウム等のリンを含有する化合物も生成し、これも残留生成物となって、Si基板表面に付着する。
【0035】
次に、マイクロ波照射手段30から例えば周波数2.45〜10GHzのマイクロ波を真空槽11内に導入することにより、被処理基板S表面に生成した残留生成物にマイクロ波を照射する。これにより、残留生成物が加熱されて蒸発し、被処理基板Sから残留生成物を除去できる。このように、マイクロ波を照射することにより、残留生成物が直接加熱されるため、被処理基板Sを400℃程度の高温にすることなく、リンを含有する化合物や、(NHSiF等の残留生成物が蒸発して、Si基板から残留生成物を除去することができる。
【0036】
また、真空槽11内にマイクロ波を照射すると、マイクロ波は、真空槽11の内壁面、天板や真空槽11内部に設けられた部材など、真空槽11内全体にも照射される。したがって、真空槽11内に再付着した残留生成物が存在する場合、この残留生成物にもマイクロ波が照射されるため、この再付着した残留生成物を昇華等させて真空槽11内から除去することができる。よって、真空槽11内に再付着した残留生成物の真空槽11内からの剥離を抑制することができるという効果も奏する。なお、マイクロ波を照射する際に、NFガス導入手段25等からN、Ar、He、Ne、Xe等の不活性ガスを流すことにより、排気効率が高くなるため、マイクロ波の照射により蒸発したリンを含有する化合物や(NHSiF等の残留生成物が真空槽11内に再付着する現象を抑制することができる。
【0037】
上述した例では、複数枚の被処理基板Sを同時に処理するいわゆるバッチ型の装置としたが、一枚の被処理基板Sを処理する枚葉式の装置としてもよい。この場合は、被処理基板Sを真空槽11内に載置する部材として、ウェハーボード12の代わりに被処理基板を載せる基板支持ステージとしてもよい。
【0038】
また、本発明のラジカルクリーニング方法を適用できる本発明のラジカルクリーニング装置は、エッチング工程を行う真空槽と、残留生成物除去工程を行う真空槽とを、異なる真空槽としてもよい。例えば、被処理基板が載置されるエッチング用真空槽と、エッチング用真空槽内にHラジカルを導入するHラジカル導入手段と、エッチング用真空槽にNFガスを導入するNFガス導入手段と、被処理基板が載置される残留生成物除去用真空槽と、残留生成物除去用真空槽内に載置された被処理基板にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段とを有するラジカルクリーニング装置としてもよい。
【0039】
このようなラジカルクリーニング装置について、ラジカルクリーニング装置の別の構成例を模式的に示す平面図(図3(a))及び概略断面図(図3(b))である図3を用いて説明する。図3に示すように、ラジカルクリーニング装置50は、エッチング工程を行う被処理基板Sが載置されるエッチング用真空槽51と、残留生成物除去工程を行う被処理基板Sが載置される残留生成物除去用真空槽61とを有し、エッチング用真空槽51と、残留生成物除去用真空槽61とは、真空搬送室52を介して真空の状態で被処理基板Sが搬送できるように連結されている。
【0040】
そして、エッチング用真空槽51には、エッチング用真空槽51内にHラジカルを導入するHラジカル導入手段と、エッチング用真空槽51にNFガスを導入するNFガス導入手段が接続されている。このエッチング用真空槽51、Hラジカルを導入するHラジカル導入手段及びNFガス導入手段で、エッチング工程を行う部材を構成する。
【0041】
また、残留生成物除去用真空槽61内には、図3(b)に示すように、被処理基板Sが載置される基板支持ステージ62が設けられ、この基板支持ステージ62は、被処理基板Sの搬送時に被処理基板Sを上下に移動することができるリフトピン等の手段(図示せず)を備えている。
【0042】
そして、残留生成物除去用真空槽61は、側壁61a、底部61b、蓋部61cで構成され、側壁61aには、被処理基板Sを出し入れするための基板搬送口64が設けられている。また、残留生成物除去用真空槽61には、内部を排気して所望の真空状態にするための真空ポンプ等(図示なし)が接続されている。
【0043】
また、蓋部61cの開口部には、絶縁部材65を介してマイクロ波拡張誘電体66が該開口部を覆うように設けられており、このマイクロ波拡張誘電体66上に、マイクロ波発生手段67が載置されている。そして、マイクロ波拡張誘電体66上には、マイクロ波発生手段67で発生させたマイクロ波の拡散を防止し残留生成物除去用真空槽61内に効率よく導入させるようにするために、Cuからなる金属板68が設けられている。このマイクロ波発生手段67、マイクロ波拡張誘電体66及び金属板68で、残留生成物除去用真空槽61内に載置された被処理基板S表面にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段を構成する。なお、所望の強度のマイクロ波を残留生成物除去用真空槽61内に導入することができれば、マイクロ波拡張誘電体66や金属板68はなくてもよい。
【0044】
この図3(b)に示すような残留生成物除去用真空槽61及びマイクロ波照射手段で、残留生成物除去工程を行う部材を構成する。
【0045】
このようなラジカルクリーニング装置1でラジカルクリーニングする例を説明する。まず、真空搬送室52を真空ポンプ等により排気して真空搬送室52内を所定の真空状態にすると共に、真空搬送室52内に、表面にSiO膜が形成されたSi基板である被処理基板Sを搬送する。
【0046】
次いで、所定の真空状態にしたエッチング用真空槽51内に、被処理基板Sを搬送する。そして、HガスやNHガス等のHラジカル生成用ガスを用いて発生させたHラジカルを、Hラジカル導入手段によりエッチング用真空槽51内に導入すると共に、NFガスをNFガス導入手段によりエッチング用真空槽51に導入する。導入されたHラジカルとNFガスが反応することにより、NFHやNFH等のN、F及びHからなるラジカルが発生する。
【0047】
このようにして発生したN、F及びHからなるラジカルが被処理基板S表面に形成されたSiO膜と接触することにより、SiO膜がエッチングされる。なお、エッチングが終了した後は、エッチング用真空槽51へのHラジカル及びNFガスの導入を停止する。
【0048】
このSiO膜がエッチングされる際に、大量のHOと(NHSiF等の残留生成物が生成し、この(NHSiF等の残留生成物は、被処理基板S表面に付着する。また、Si基板が、BPSGやPSGを含有する層間絶縁膜等のリンを含有する部材が表面に形成されたSi基板の場合は、このエッチング工程において、リン酸やリン酸アンモニウム等のリンを含有する化合物も生成し、これも残留生成物となって、Si基板表面に付着する。
【0049】
次に、被処理基板Sを、真空搬送室52を経由して、所定の真空状態にした残留生成物除去用真空槽61へ搬送する。
【0050】
その後、マイクロ波発生手段67で発生させた例えば周波数2.45〜10GHzのマイクロ波を、マイクロ波拡張誘電体66を介して残留生成物除去用真空槽61内に導入することにより、被処理基板S表面に生成した残留生成物にマイクロ波を照射する。これにより、残留生成物が加熱されて蒸発し、被処理基板Sから残留生成物を除去できる。このように、マイクロ波を照射することにより、残留生成物が直接加熱されるため、被処理基板Sを400℃程度の高温にすることなく、リンを含有する化合物や、(NHSiF等の残留生成物が蒸発して、被処理基板Sから残留生成物を除去することができる。
【0051】
また、残留生成物除去用真空槽61内にマイクロ波を照射すると、マイクロ波は、残留生成物除去用真空槽61の内壁面、天板や残留生成物除去用真空槽61内部に設けられた部材など、残留生成物除去用真空槽61内全体にも照射される。したがって、残留生成物除去用真空槽61内に再付着した残留生成物が存在する場合、この残留生成物にもマイクロ波が照射されるため、この再付着した残留生成物を昇華、蒸発等させて残留生成物除去用真空槽61内から除去することができる。よって、残留生成物除去用真空槽61内に再付着した残留生成物の残留生成物除去用真空槽61内からの剥離を抑制することができるという効果も奏する。なお、マイクロ波を照射する際に、NFガス導入手段25等からN、Ar、He、Ne、Xe等の不活性ガスを流すことにより、排気効率が高くなるため、マイクロ波の照射により蒸発したリンを含有する化合物や(NHSiF等の残留生成物が残留生成物除去用真空槽61内に再付着する現象を抑制することができる。
【0052】
上述した例では1枚の被処理基板Sを処理したが、基板支持ステージ62に載置できれば数枚を同時に処理するようにしてもよい。
【0053】
以下に、本発明を試験例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
(試験例)
図1及び図2に示すラジカルクリーニング装置1を用いて、表面にBPSGからなる層間絶縁膜が設けられ且つ表面にSiO膜が形成されたSi基板をラジカルクリーニングした。
【0055】
まず、真空槽11内に、被処理基板Sである表面にBPSGからなる層間絶縁膜が設けられ且つ表面にSiO膜が形成されたSi基板を、50枚載置した。この真空槽11内は、10Paであった。次に、Hラジカル導入手段で真空槽11内にHラジカルを導入した。具体的には、NとNHの混合ガス(N=5000sccm、NH=2000sccm)にマイクロ波を印加してプラズマで分解することによりHラジカルを生成させ、これを真空槽11に導入した。また、NFガス導入手段25でNFガスを2000sccmで真空槽11内に導入し、被処理基板S上でHラジカルと反応させることにより、N、F及びHからなるラジカルを生成させた。生成したN、F及びHからなるラジカルにより、被処理基板S表面に形成されたSiO膜がエッチングされた。この際、被処理基板S表面には、堆積物(残留生成物)が付着した。
【0056】
次に、真空槽11へのHラジカル及びNFガスの導入を停止した。そして、NFガス導入手段25からNを500sccmで導入しながら、3×10−4Paで、マイクロ波照射手段30により5kWで2.45GHzのマイクロ波を真空槽11内に導入することにより、被処理基板S表面にマイクロ波を照射した。このマイクロ波照射により、被処理基板S表面に付着した堆積物(残留生成物)がエッチングされた。マイクロ波照射の前及び後の、被処理基板S上に設けられたBPSGからなる層間絶縁膜及び堆積物(残留生成物)の厚さを、光学式膜厚計(エリプソメーター)で測定し、マイクロ波の照射により被処理基板S表面がエッチングされた量(エッチング量)を求めた。このマイクロ波を真空槽11内に導入した時間(すなわち、マイクロ波照射時間)を5〜45分まで5分おきに変化させて、それぞれ測定を行った。結果を図4に示す。
【0057】
図4に示すように、マイクロ波の照射時間が長いほどマイクロ波の照射によるエッチング量は多くなり、15分間の照射でほぼ完全に除去することができることがわかる。なお、マイクロ波の照射時間が短い場合にエッチング量がマイナスになっているのは、堆積物が初期のBPSGからなる層間絶縁膜表面よりも上に盛り上がっているため測定上マイナスに出ているためである。
【0058】
次に、15分〜40分間マイクロ波を照射した上記被処理基板Sを、それぞれ大気中で1時間放置した。1時間放置後の被処理基板Sについて、表面に付着したパーティクルの個数を、レーザー式パーティクルカウンターで測定した。結果を図5に示す。図5に示すように、マイクロ波の照射時間が15分の場合は多数のパーティクルが観察されたが、マイクロ波の照射時間が長くなるとパーティクルは減少していき、40分の照射でパーティクルはなくなったとみなすことができる。ここで、図4に示す結果では、マイクロ波の15分間の照射で、堆積物は完全に除去されたように見えるが、図5に示すように大気中に一時間放置することによりパーティクルが観察されたことから、実際にはリン酸やリン酸アンモニウム等のリンを含有する化合物が残っており、大気中の水分と反応してパーティクルとして観測されたものと推測される。一方、マイクロ波の40分の照射では、大気中に一時間放置した後のパーティクルがなくなったため、リン酸やリン酸アンモニウム等のリンを含有する化合物が、完全に除去できたといえる。
【0059】
また、マイクロ波照射時間と被処理基板Sの温度との関係を求めた。結果を図6に示す。図6に示すように、マイクロ波の照射時間が長くなるほど被処理基板Sの温度(Si基板の温度)は上昇し40分で280℃に達した。一般的にはリン酸やリン酸アンモニウム等のリンを含有する化合物を蒸発させるためには被処理基板Sを400℃程度まで加熱することが必要だが、マイクロ波を照射することにより、被処理基板Sを400℃程度まで加熱することなく、リンを含有する化合物も含めて、残留生成物を除去することができることが確認された。したがって、400℃程度までの加熱が必要でないため装置等が高価にならず、また、基板上に形成されたデバイスに加熱により熱ダメージを与えることがない。
【0060】
一方、マイクロ波を照射する代わりに、ランプ加熱により被処理基板Sを加熱した以外は上記と同様の操作を行った場合、被処理基板S(Si基板)を280℃まで加熱しても、大気中一時間放置後には多量のパーティクルが観察される。したがって、本発明においては、マイクロ波の照射により、被処理基板S表面の堆積物(残留生成物)を直接マイクロ波が加熱しているといえる。
【0061】
また、マイクロ波を照射した後の真空槽11内を観察したところ、真空槽11の天井部、側壁や真空槽11内部に設けられた部材など、真空槽11の内部には残留生成物が付着しておらず、綺麗であった。被処理基板S表面に生成した残留生成物を加熱すると、真空槽11内の低温部分に残留生成物が再付着する場合があるが、この再付着した残留生成物にもマイクロ波が照射されため、再付着した残留生成物が昇華等して真空槽11内から除去されたといえる。
【符号の説明】
【0062】
S 被処理基板 1、50 ラジカルクリーニング装置
11 真空槽 12 ウェハーボード
13 配管 14 真空ポンプ
15 シャワープレート 20 Hラジカル導入手段
21 プラズマ発生器 22 ラジカル生成用ガス供給口
23 マイクロ波導入口 25 NFガス導入手段
30 マイクロ波照射手段 31、33 ゲートバルブ
32 仕込み取り出し室 34、35 搬送機構
51 エッチング用真空槽 52 真空搬送室
61 残留生成物除去用真空槽 61a 側壁
61b 底部 61c 蓋部
62 基板支持ステージ 64 基板搬送口
65 絶縁部材 66 マイクロ波拡張誘電体
67 マイクロ波発生手段 68 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマによりHラジカル生成用ガスを分解してHラジカルを生成させ、このHラジカルとNFガスを反応させてN、F及びHからなるラジカルを生成するNFHラジカル生成工程と、
真空槽内で、Si基板上に形成されたSiO膜に前記N、F及びHからなるラジカルを照射することにより前記SiO膜を除去するエッチング工程と、
真空槽内で、前記エッチング工程で前記Si基板上に生成した残留生成物にマイクロ波を照射することにより、前記残留生成物を加熱して蒸発させて除去する残留生成物除去工程とを有することを特徴とするラジカルクリーニング方法。
【請求項2】
前記エッチング工程を行う真空槽は、前記残留生成物除去工程を行う真空槽と同一の真空槽であることを特徴とする請求項1に記載するラジカルクリーニング方法。
【請求項3】
前記エッチング工程を行う真空槽は、前記残留生成物除去工程を行う真空槽とは異なる真空槽であることを特徴とする請求項1に記載するラジカルクリーニング方法。
【請求項4】
前記Si基板は表面にリンを含有する部材が形成されたものであり、前記残留生成物がリンを含有する化合物及び(NHSiFを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載するラジカルクリーニング方法。
【請求項5】
被処理基板が載置される真空槽と、前記真空槽内にHラジカルを導入するHラジカル導入手段と、前記真空槽内にNFガスを導入するNFガス導入手段と、前記真空槽内に載置された前記被処理基板表面にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段とを備えることを特徴とするラジカルクリーニング装置。
【請求項6】
被処理基板が載置されるエッチング用真空槽と、前記エッチング用真空槽内にHラジカルを導入するHラジカル導入手段と、前記エッチング用真空槽にNFガスを導入するNFガス導入手段と、
前記被処理基板が載置される残留生成物除去用真空槽と、前記残留生成物除去用真空槽内に載置された前記被処理基板表面にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段とを備えることを特徴とするラジカルクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−119539(P2012−119539A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268825(P2010−268825)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】