説明

レジスト下層膜材料及びこれを用いたパターン形成方法

【課題】リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、反射率を低減でき、エッチング耐性が高く、高い耐熱性、耐溶媒性を有し、特に基板のエッチング中によれの発生がないレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料及びこれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、少なくとも、下記一般式(1)で示される繰り返し単位a1を有するポリフルオレンを含有することを特徴とするレジスト下層膜材料。
【化37】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる反射防止膜材料として有効なレジスト下層膜材料及びこれを用いた遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fレーザー光(157nm)、Krレーザー光(146nm)、Arレーザー光(126nm)、軟X線(EUV、13.5nm)、電子線(EB)、X線露光に好適なレジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0003】
レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源として、水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられており、更なる微細化のための手段として、露光光を短波長化する方法が有効とされてきた。このため、64MビットDRAM加工方法の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.13μm以下)を必要とする集積度1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、特にArFエキシマレーザー(193nm)を用いたリソグラフィーが検討されてきている。
【0004】
一方、従来、段差基板上に高アスペクト比のパターンを形成するには2層プロセスが優れていることが知られており、更に、2層レジスト膜を一般的なアルカリ現像液で現像するためには、ヒドロキシ基やカルボキシル基等の親水基を有する高分子シリコーン化合物が必要である。
【0005】
シリコーン系化学増幅ポジ型レジスト材料としては、安定なアルカリ可溶性シリコーンポリマーであるポリヒドロキシベンジルシルセスキオキサンのフェノール性水酸基の一部をt−Boc基で保護したものをベース樹脂として使用し、これと酸発生剤とを組み合わせたKrFエキシマレーザー用シリコーン系化学増幅ポジ型レジスト材料が提案された(特許文献1、非特許文献1等参照)。また、ArFエキシマレーザー用としては、シクロヘキシルカルボン酸を酸不安定基で置換したタイプのシルセスキオキサンをベースにしたポジ型レジスト材料が提案されている(特許文献2,3、非特許文献2等参照)。更に、Fレーザー用としては、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶解性基として持つシルセスキオキサンをベースにしたポジ型レジスト材料が提案されている(特許文献4等参照)。上記ポリマーは、トリアルコキシシラン、又はトリハロゲン化シランの縮重合によるラダー骨格を含むポリシルセスキオキサンを主鎖に含むものである。
【0006】
珪素が側鎖にペンダントされたレジスト用ベースポリマーとしては、珪素含有(メタ)アクリルエステル系ポリマーが提案されている(特許文献5、非特許文献3等参照)。
【0007】
2層プロセスのレジスト下層膜としては、酸素ガスによるエッチングが可能な炭化水素化合物であり、更にその下の基板をエッチングする場合におけるマスクになるため、高いエッチング耐性を有することが必要である。酸素ガスエッチングにおいては、珪素原子を含まない炭化水素のみで構成される必要がある。また、上層の珪素含有レジスト膜の線幅制御性を向上させ、定在波によるパターン側壁の凹凸とパターンの崩壊を低減させるためには、反射防止膜としての機能も有し、具体的にはレジスト下層膜からレジスト上層膜内への反射率を1%以下に抑える必要がある。
【0008】
ここで、最大500nmの膜厚までの反射率を計算した結果を図1,2に示す。露光波長は193nm、レジスト上層膜のn値を1.74、k値を0.02と仮定し、図1ではレジスト下層膜のk値を0.3に固定し、縦軸にn値を1.0〜2.0、横軸に膜厚0〜500nmの範囲で変動させたときの基板反射率を示す。膜厚が300nm以上の2層プロセス用レジスト下層膜を想定した場合、レジスト上層膜と同程度かあるいはそれよりも少し屈折率が高いn値が1.6〜1.9の範囲で反射率を1%以下にできる最適値が存在する。
【0009】
また、図2では、レジスト下層膜のn値を1.5に固定し、k値を0〜0.8の範囲で変動させたときの反射率を示す。膜厚が300nm以上の2層プロセス用レジスト下層膜を想定した場合、k値が0.24〜0.15の範囲で反射率を1%以下にすることが可能である。一方、40nm程度の薄膜で用いられる単層レジスト用の反射防止膜の最適k値は0.4〜0.5であり、300nm以上で用いられる2層プロセス用のレジスト下層膜の最適k値とは異なる。2層プロセス用のレジスト下層膜では、より低いk値、即ちより高透明なレジスト下層膜が必要であることが示されている。
【0010】
ここで、波長193nm用のレジスト下層膜材料として、非特許文献4に紹介されているようにポリヒドロキシスチレンとアクリル酸エステルの共重合体が検討されている。ポリヒドロキシスチレンは193nmに非常に強い吸収を持ち、そのもの単独ではk値が0.6前後と高い値である。そこで、k値が殆ど0であるアクリル酸エステルと共重合させることによって、k値を0.25前後に調整しているのである。
【0011】
しかしながら、ポリヒドロキシスチレンに対して、アクリル酸エステルの基板エッチングにおけるエッチング耐性は弱く、しかもk値を下げるためにかなりの割合のアクリル酸エステルを共重合せざるを得ず、結果的に基板エッチングの耐性はかなり低下する。エッチングの耐性は、エッチング速度だけでなく、エッチング後の表面ラフネスの発生にも現れてくる。アクリル酸エステルの共重合によってエッチング後の表面ラフネスの増大が深刻なほど顕著になっている。
【0012】
一方、珪素を含まない単層レジストをレジスト上層膜、その下に珪素を含有するレジスト中間層膜、更にその下に有機膜のレジスト下層膜を積層する3層プロセスが提案されている(例えば、非特許文献5参照)。一般的には珪素含有レジストより単層レジストの方が解像性に優れ、3層プロセスでは高解像な単層レジストを露光イメージング層として用いることができる。レジスト中間層膜としては、スピンオングラス(SOG)膜が用いられ、多くのSOG膜が提案されている。
【0013】
ここで3層プロセスにおける基板反射を抑えるための最適なレジスト下層膜の光学定数は2層プロセスにおけるそれとは異なっている。基板反射をできるだけ抑え、具体的には1%以下にまで低減させる目的は2層プロセスも3層プロセスも変わらないのであるが、2層プロセスはレジスト下層膜だけに反射防止効果を持たせるのに対して、3層プロセスはレジスト中間層膜とレジスト下層膜のどちらか一方あるいは両方に反射防止効果を持たせることができる。
【0014】
反射防止効果を付与させた珪素含有層材料が、特許文献6、特許文献7に提案されている。一般的に単層の反射防止膜よりも多層の反射防止膜の方が反射防止効果は高く、光学材料の反射防止膜として広く工業的に用いられている。レジスト中間層膜とレジスト下層膜の両方に反射防止効果を付与させることによって高い反射防止効果を得ることができる。
3層プロセスにおいて珪素含有レジスト中間層膜に反射防止膜としての機能を持たせることができれば、レジスト下層膜に2層プロセスの時のような反射防止膜としての最高の効果は特に必要がない。3層プロセスの場合のレジスト下層膜としては、反射防止膜としての効果よりも基板加工における高いエッチング耐性が要求される。
そのために、芳香族基を多く含有し、エッチング耐性が高いノボラック樹脂が3層プロセス用のレジスト下層膜として用いられてきた。
【0015】
ここで、図3にレジスト中間層膜のk値を変化させたときの基板反射率を示す。
レジスト中間層膜のk値として0.2以下の低い値と、適切な膜厚設定によって、1%以下の十分な反射防止効果を得ることができる。
通常反射防止膜として、膜厚100nm以下で反射を1%以下に抑えるためにはk値が0.2以上であることが必要であるが(図2参照)、レジスト下層膜である程度の反射を抑えることができる3層レジスト膜のレジスト中間層膜としては0.2より低い値のk値が最適値となる。
【0016】
次に、レジスト下層膜のk値が0.2の場合と0.6の場合の、レジスト中間層膜とレジスト下層膜の膜厚を変化させたときの反射率変化を図4と図5に示す。
図4のk値が0.2のレジスト下層膜は、2層プロセスに最適化されたレジスト下層膜を想定しており、図5のk値が0.6のレジスト下層膜は、波長193nmにおけるノボラックやポリヒドロキシスチレンのk値に近い値である。
レジスト下層膜の膜厚は基板のトポグラフィーによって変動するが、レジスト中間層膜の膜厚はほとんど変動せず、設定した膜厚で塗布できると考えられる。
【0017】
ここで、レジスト下層膜のk値が高い方(0.6の場合)が、より薄膜で反射を1%以下に抑えることができる。レジスト下層膜のk値が0.2の場合、膜厚250nmでは反射を1%にするためにレジスト中間層膜の膜厚を厚くしなければならない。しかし、このようにレジスト中間層膜の膜厚を上げると、レジスト中間層膜を加工するときのドライエッチング時に最上層のレジスト膜に対する負荷が大きく、好ましいことではない。
【0018】
図4と図5は、露光装置のレンズのNAが0.85のドライ露光の場合の反射であるが、3層プロセス用のレジスト中間層膜のn、k値と膜厚を最適化することによって、レジスト下層膜のk値によらずに1%以下の反射率にすることが出来ることが示されている。ところが、液浸リソグラフィーによって投影レンズのNAが1.0を超え、レジストだけでなくレジストの下の反射防止膜に入射する光の角度が浅くなってきている。反射防止膜は、膜自体の吸収だけでなく、光の干渉効果による打ち消しの作用を用いて反射を抑えている。斜めの光は光の干渉効果が小さくなるため、反射が増大する。3層プロセスの膜の中で光の干渉作用を用いて反射防止を行っているのはレジスト中間層膜である。レジスト下層膜は干渉作用を用いるには十分に厚いために干渉効果による打ち消し合いによる反射防止効果はない。レジスト下層膜表面からの反射を抑える必要があり、そのためにはレジスト下層膜のk値を0.6程度より小さく、n値を上層のレジスト中間層膜に近い値にすることが好ましい。k値が小さすぎて透明性が高すぎると、基板からの反射も生じてくるため、液浸露光のNA1.3の場合、k値は0.25〜0.48程度が最適となる。n値は中間層、下層共にレジストのn値1.7に近い値が目標値となる。
【0019】
ベンゼン環は吸収が非常に強く、クレゾールノボラックやポリヒドロキシスチレンのk値は0.6を超える。ベンゼン環よりも波長193nmにおける透明性が高く、エッチング耐性が高いものの一つにナフタレン環がある。例えば、特許文献8にナフタレン環、アントラセン環を有するレジスト下層膜が提案されている。我々の測定値では、ナフトール共縮合ノボラック樹脂、ポリビニルナフタレン樹脂のk値は0.3〜0.4の間である。また、ナフトール共縮合ノボラック樹脂、ポリビニルナフタレン樹脂の波長193nmにおけるn値は低く、ナフトール共縮合ノボラック樹脂で1.4、ポリビニルナフタレン樹脂に至っては1.2である。例えば、特許文献9、特許文献10で示されるアセナフチレン重合体においては、193nmにおけるn値は1.5、k値は0.4で目標値に近い。n値が高く、k値が低く透明でかつエッチング耐性が高いレジスト下層膜が求められている。
ここで、特許文献11にビスナフトール基を有するレジスト下層膜形成材料が提案されており、n値、k値共に目標値に近く、エッチング耐性に優れる特徴を有している。
特許文献12には、フルオレン構造を有するノボラック樹脂からなる下層膜材料が、特許文献13には、フルオレンモノマーを添加した下層膜材料が提案されている。
【0020】
また、下地の被加工基板に段差がある場合、レジスト下層膜によって段差を平坦化させる必要がある。レジスト下層膜を平坦化させることによって、その上に成膜するレジスト中間層膜やレジスト上層膜であるフォトレジスト膜の膜厚変動を抑え、リソグラフィーのフォーカスマージンを拡大することが出来る。
【0021】
しかし、メタンガス、エタンガス、アセチレンガスなどを原料に用いたCVDによって形成されたアモルファスカーボン下層膜は、段差をフラットに埋め込むことが困難である。一方、レジスト下層膜をスピンコーティングによって形成した場合、基板の凹凸を埋め込むことが出来る長所がある。また、更に、塗布型の材料に於いて埋め込み特性を向上させるために特許文献14に示すように、分子量が低く、分子量分布が広いノボラックを用いる方法、特許文献15に示されるようにベースポリマーに低融点の低分子化合物をブレンドする方法が提案されている。
【0022】
ノボラック樹脂が加熱だけで分子間架橋し硬化することは従来からよく知られている(非特許文献6)。ここでは、加熱によってクレゾールノボラックのヒドロキシ基にフェノキシラジカルが発生し、共鳴によってノボラック樹脂の連結基のメチレンにラジカルが移動し、メチレン同士が架橋するラジカルカップリングによる架橋メカニズムが報告されている。特許文献16にポリアリーレンやナフトールノボラック、ヒドロキシアントラセンノボラックなどの多環芳香族化合物を熱によって脱水素あるいは脱水縮合反応によって炭素密度を高めた下層膜を用いるパターン形成方法が報告されている。
ガラス状のカーボン膜は800℃以上の加熱によって形成される(非特許文献7)。しかしながら、デバイスダメージやウェハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウェハープロセスでの加熱できる温度の上限は600℃以下、好ましくは500℃以下である。
【0023】
加工線幅の縮小に伴い、レジスト下層膜をマスクに被加工基板をエッチングするときにレジスト下層膜がよれたり曲がったりする現象が起きる事が報告されている(非特許文献8)。フルオロカーボン系のガスによる基板エッチング中に、レジスト下層膜の水素原子がフッ素原子で置換される現象が示されている。レジスト下層膜表面がテフロン(登録商標)化されることによって下層膜の体積増加により膨潤したり、ガラス転移点が低下することによって、より微細なパターンのよれが生じるものと考えられる。前述の文献では、水素含有率の低いレジスト下層膜を適用することによってよれが防止できることが示されている。CVDで作成したアモルファスカーボン膜は、膜中の水素原子を極めて少なくすることが出来、よれ防止には非常に有効である。しかしながら、前述のようにCVDは段差の埋め込み特性が悪く、またCVD装置の価格と装置フットプリント面積の占有により導入が困難な場合がある。コーティング、特にスピンコート法で製膜可能なレジスト下層膜材料でよれの問題を解決することが出来れば、プロセスと装置の簡略化のメリットは大きい。
【0024】
レジスト下層膜の上にCVD法でハードマスクを形成するマルチレイヤープロセスが検討されている。シリコン系のハードマスク(珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素窒化酸化膜)の場合に於いてもスピンコート法で形成するハードマスクよりもCVD等で形成した無機ハードマスクの方がエッチング耐性が高い。また、被加工基板が低誘電率膜を有し、そこからのフォトレジストへの汚染(ポイゾニング)が生じる場合があるが、CVD膜の方がポイゾニング防止の遮断膜としての効果が高い。
【0025】
そこで、平坦化ためにレジスト下層膜をスピンコートで形成し、その上のレジスト中間層膜としての無機ハードマスク中間層膜をCVD法で作成するプロセスが検討されている。CVD法で無機ハードマスク中間層を作成する場合、特に窒化物系の膜の作成に於いて最低300℃、通常は400℃の基板の加熱が必要とされる。従って、スピンコート法でレジスト下層膜を作成した場合、400℃の耐熱性が必要であるが、通常のクレゾールノボラック、ナフトールノボラック、および耐熱性が高いフルオレンビスフェノールのノボラック樹脂においても400℃の加熱に耐えることが出来ず、加熱後大きな膜減りが生じてしまう。このように、CVD法で無機ハードマスク中間層膜を形成する際の高温の加熱にも耐えることができるようなレジスト下層膜が求められている。
【0026】
また、このような耐熱性が原因となる加熱後の膜減りや樹脂の劣化の問題から、従来レジスト下層膜材料の熱処理は通常300℃以下(好ましくは80〜300℃の範囲内)で行われていた。しかしながら、溶媒処理後に減膜が生じたり、基板のエッチング中にパターンによれが生じてしまうという問題は生じたままであった。
【0027】
以上より、反射防止膜としての最適なn、k値と埋め込み特性、優れたエッチング耐性、耐溶媒性を有し、更にCVD法などによる無機ハードマスク中間層膜形成中の高温にも耐えることができる耐熱性を有し、基板のエッチング中によれが生じないレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料が求められているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開平6−118651号公報
【特許文献2】特開平10−324748号公報
【特許文献3】特開平11−302382号公報
【特許文献4】特開2002−55456号公報
【特許文献5】特開平9−110938号公報
【特許文献6】米国特許第6506497号明細書
【特許文献7】米国特許第6420088号明細書
【特許文献8】特開2002−14474号公報
【特許文献9】特開2001−40293号公報
【特許文献10】特開2002−214777号公報
【特許文献11】特開2007−199653号公報
【特許文献12】特開2005−128509号公報
【特許文献13】特開2007−17867号公報
【特許文献14】特開2002−47430号公報
【特許文献15】特開平11−154638号公報
【特許文献16】特許3504247号
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】SPIE vol.1925(1993)p377
【非特許文献2】SPIE vol.3333(1998)p62
【非特許文献3】J.Photopolymer Sci. and Technol.Vol.9 No.3(1996)p435−446
【非特許文献4】SPIE vol.4345(2001)p50
【非特許文献5】J.Vac.Sci.Technol.,16(6),Nov./Dec.1979
【非特許文献6】SPIE Vol.469 p72(1984)
【非特許文献7】Glass Carbon Bull. Chem. Soc. JPN.41(12) 3023−3024 (1968)
【非特許文献8】(Proc.of Symp.Dry.Process, (2005) p11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、反射率を低減でき、エッチング耐性が高く、高い耐熱性、耐溶媒性を有し、特に基板のエッチング中によれの発生がないレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料及びこれを用いたパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、少なくとも、下記一般式(1)で示される繰り返し単位a1を有するポリフルオレンを含有することを特徴とするレジスト下層膜材料を提供する。
【化1】

(一般式(1)中、R、Rは同一、又は異種の水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、酸不安定基、グリシジル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、カルボキシル基、又はシアノ基、あるいは、R、Rはまとめて1つの基であっても良く、その場合には、酸素原子、炭素数1〜6のアルキリデン基、又はイミノ基である。これらの基は、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、酸不安定基、グリシジル基、カルボキシル基を、1つ又は複数有していても良い。R、Rはそれぞれベンゼン環又はナフタレン環であり、R、Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数2〜10のアルキニル基である。)
【0032】
このように、上記一般式(1)で示される繰り返し単位a1を有するポリフルオレンを含有するレジスト下層膜材料であれば、該レジスト下層膜材料を基板上にコーティングし、コーティングしたレジスト下層膜材料を熱処理して硬化させることによって、反射防止膜としての最適なn、k値と埋め込み特性、優れたエッチング耐性、耐溶媒性を有し、更にCVD法などによる無機ハードマスク中間層膜形成中の高温にも耐えることができる耐熱性を有し、基板のエッチング中によれが生じないレジスト下層膜を形成することができる。
【0033】
また、上記一般式(1)で示される繰り返し単位a1が下記一般式(2)で示される繰り返し単位a2であることが好ましい。
【化2】

(一般式(2)中R〜Rは前述と同様、R、Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数2〜10のアルキニル基である。m、nはそれぞれ0〜2の整数であり、R、R10はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数1〜6のアシル基もしくはアルコキシカルボニル基、酸不安定基、又はグリシジル基である。)
【0034】
このように、上記一般式(2)で示される繰り返し単位a2を有するポリフルオレンを含有するレジスト下層膜材料であれば、該レジスト下層膜材料を基板上にコーティングし、コーティングしたレジスト下層膜材料を熱処理して硬化させることによって、反射防止膜としての最適なn、k値と埋め込み特性、優れたエッチング耐性、耐溶媒性を有し、更にCVD法などによる無機ハードマスク中間層膜形成中の高温にも耐えることができる耐熱性を有し、基板のエッチング中によれが生じないレジスト下層膜をより確実に形成することができる。
【0035】
また、前記レジスト下層膜材料として、前記一般式(2)で示される繰り返し単位a2を有するポリフルオレンをノボラック化した、下記一般式(3)で示される繰り返し単位a3を含有するものを用いることもできる。
【化3】

(一般式(3)中R〜R10、m、nは前述の通り、R11は炭素数1〜10のアルキレン基であり、アリル基を有していても良い。)
【0036】
このように、上記一般式(3)で示される繰り返し単位a3を有するポリフルオレンのノボラック樹脂を含有するレジスト下層膜材料であれば、該レジスト下層膜材料を基板上にコーティングし、コーティングしたレジスト下層膜材料を熱処理して硬化させることによって、反射防止膜としての最適なn、k値と埋め込み特性、優れたエッチング耐性、耐溶媒性を有し、更にCVD法などによる無機ハードマスク中間層膜形成中の高温にも耐えることができる耐熱性を有し、基板のエッチング中によれが生じないレジスト下層膜を形成することができる。
【0037】
また、前記レジスト下層膜材料が、有機溶剤を含有するものであることが好ましい。また、前記レジスト下層膜材料が、更に、架橋剤及び酸発生剤を含有するものであることが好ましい。
【0038】
このように、上記本発明のレジスト下層膜材料が、有機溶剤、架橋剤、酸発生剤を含有することで、基板等への塗布性を向上させたり、基板等への塗布後のベーク等により、レジスト下層膜内での架橋反応を促進させたりすることができる。したがって、このようなレジスト下層膜材料から形成されたレジスト下層膜は、膜厚均一性が良く、レジスト上層膜あるいはレジスト中間層膜とのインターミキシングの恐れが少なく、レジスト上層膜等への低分子成分の拡散が少ないものとなる。
【0039】
また、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0040】
このように、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は、特に短波長の露光において、最適なn値、k値を有し、かつ基板エッチング条件でのエッチング耐性にも優れる。このため、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜を、2層プロセスのレジスト下層膜として用いれば、高精度で基板にパターンを形成することができる。
【0041】
この場合、前記フォトレジストからなるレジスト上層膜材料が、珪素原子を含有するポリマーを含み、前記レジスト上層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0042】
本発明のレジスト下層膜材料から形成したレジスト下層膜は、レジスト上層膜として、ベース樹脂に珪素原子を含有したものを用い、前記レジスト上層膜をマスクにしたレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするドライエッチングで行い、レジスト上層膜のレジストパターンをレジスト下層膜に転写するのに適したものとなっている。
【0043】
また、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト中間層膜をエッチングし、得られたレジスト中間層膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0044】
このように、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は、特に短波長の露光において、最適なn値、k値を有し、かつ基板エッチング時のエッチング耐性に優れる。また、必要により反射防止効果のあるレジスト中間層膜と併せることで優れた反射防止効果をもたらす。このため、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜を、3層プロセスのレジスト下層膜として用いれば、更に高精度で基板にパターンを形成することができる。
【0045】
また、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に珪素酸化膜、珪素窒化膜及び珪素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間層膜を形成し、該無機ハードマスク中間層膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間層膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間層膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0046】
このように、本発明のパターン形成方法では、前記無機ハードマスク中間層膜とレジスト上層膜との間に有機反射防止膜を形成することができる。
【0047】
この場合、前記無機ハードマスク中間層膜は、CVD法あるいはALD法によって形成することができる。
【0048】
このように、無機ハードマスク中間層膜をCVD法あるいはALD法によって形成することにより、エッチング耐性を高くすることができる。また、本発明のレジスト下層膜はこのようなCVD法、ALD法の高温にも耐えることができるので好適である。
【0049】
また、前記フォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料が、珪素原子を含有するポリマーを含まず、前記中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0050】
レジスト上層膜に珪素原子含有ポリマーを含まないものは、珪素原子含有ポリマーを含むものと比較して、解像性に優れるという利点がある。また、無機ハードマスク中間層膜パターンをエッチングマスクにしてレジスト下層膜をエッチングする際、珪素原子を含む無機ハードマスクは、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すために好ましい。
【発明の効果】
【0051】
以上説明したように、本発明のレジスト下層膜材料を用いることにより、反射率を低減でき、エッチング耐性が高く、高い耐熱性、耐溶媒性を有し、特に基板のエッチング中によれの発生がないレジスト下層膜を形成することができる。また、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成されたレジスト下層膜は、短波長の露光において必要により反射防止効果のある中間層膜と組み合わせることによって、100nm以上の膜厚で十分な反射防止効果を発揮できるだけの吸光係数を有し、基板加工に用いられるCF4/CHF3ガス及びCl2/BCl3系ガスエッチングの速度も通常のm−クレゾールノボラック樹脂よりも遅く強固であり、高いエッチング耐性を有するものとなる。また、パターニング後のレジスト形状も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】2層プロセスにおけるレジスト下層膜屈折率k値が0.3固定で、n値を1.0〜2.0の範囲で変化させたときのレジスト下層膜の膜厚と基板反射率の関係を示すグラフである。
【図2】2層プロセスにおけるレジスト下層膜屈折率n値が1.5固定で、k値を0〜0.8の範囲で変化させたときのレジスト下層膜の膜厚と基板反射率の関係を示すグラフである。
【図3】3層プロセスにおけるレジスト中間層膜屈折率n値が1.5、k値を0〜0.4、膜厚を0〜400nmの範囲で変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図4】3層プロセスにおけるレジスト下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.2、レジスト中間層膜のn値が1.5、k値を0.1固定でレジスト下層膜の膜厚とレジスト中間層膜の膜厚を変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図5】3層プロセスにおけるレジスト下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.6、レジスト中間層膜のn値が1.5、k値を0.1固定でレジスト下層膜とレジスト中間層膜の膜厚を変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図6】2層プロセスの一例の説明図である。
【図7】3層プロセスの一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、多層レジスト膜のレジスト下層膜材料として、優れた反射防止膜機能とエッチング耐性、耐熱性、耐溶媒性、埋め込み特性を有し、特に基板のエッチング中によれが生じないレジスト膜を形成できるものが必要視されていた。
【0054】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、透明性が高く炭素数が多い基を有するポリフルオレン及びこの誘導体が、優れた反射防止膜機能と、耐熱性、耐溶媒性、埋め込み特性を有し、エッチング耐性にも優れる2層あるいは3層プロセス用レジスト下層膜を形成するレジスト下層膜材料として有望であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0055】
即ち、本発明のレジスト下層膜材料は、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、少なくとも、下記一般式(1)で示される繰り返し単位a1を有するポリフルオレンを含有することを特徴とする。
【化4】

(一般式(1)中、R、Rは同一、又は異種の水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、酸不安定基、グリシジル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、カルボキシル基、又はシアノ基、あるいは、R、Rはまとめて1つの基であっても良く、その場合には、酸素原子、炭素数1〜6のアルキリデン基、又はイミノ基である。これらの基は、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、酸不安定基、グリシジル基、カルボキシル基を、1つ又は複数有していても良い。R、Rはそれぞれベンゼン環又はナフタレン環であり、R、Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数2〜10のアルキニル基である。)
【0056】
また、上記一般式(1)で示される繰り返し単位a1が下記一般式(2)で示される繰り返し単位a2であることが好ましい。
【化5】

(一般式(2)中R〜Rは前述と同様、R、Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数2〜10のアルキニル基である。m、nはそれぞれ0〜2の整数であり、R、R10はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数1〜6のアシル基もしくはアルコキシカルボニル基、酸不安定基、又はグリシジル基である。)
【0057】
また、前記レジスト下層膜材料として、前記一般式(2)で示される繰り返し単位a2を有するポリフルオレンをノボラック化した、下記一般式(3)で示される繰り返し単位a3を含有するものを用いることもできる。
【化6】

(一般式(3)中R〜R10、m、nは前述の通り、R11は炭素数1〜10のアルキレン基であり、アリル基を有していても良い。)
【0058】
レジスト下層膜材料として用いられてきた従来のノボラック樹脂は、フェノール間がメチレンなどのアルキレン基で繋がっているため、アルキレン基の回転によって膜の剛直性や、炭素密度の低下によってエッチング耐性が低下するという問題があった。また、インデンやアセナフチレンなどを重合したシクロオレフィンポリマーは主鎖が剛直であるが、主鎖の炭素が3級炭素になるので、この部分が熱により開重合する可能性があり、4級炭素に比べるとエッチング耐性が弱いという問題があった。
これに対して、本発明のレジスト下層膜材料に含有される、上記一般式(1)もしくは(2)に示されるポリフルオレン、又は上記一般式(3)に示される、ポリフルオレンをノボラック化したノボラック樹脂(ポリフルオレンのノボラック樹脂)は、芳香族基同士が直接結合しているため、非常に剛直性が高く、4級炭素で繋がっているために、優れたエッチング耐性、耐溶媒性、耐熱性を有する。また、本発明のレジスト下層膜材料に含有される、前記ポリフルオレン及びポリフルオレンのノボラック樹脂は、透明性が高いため、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は、優れた反射防止機能を有するものとなる。
即ち、本発明のレジスト下層膜材料は、ポリフルオレン及び/又はポリフルオレンの誘導体(ノボラック樹脂)をベースにする材料を提案するもので、特に波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3〜20nmの軟X線、電子ビーム、X線におけるエッチング耐性に優れ、優れた反射防止機能、耐溶媒性、耐熱性、さらに、最適な埋め込み特性を有し、基板加工におけるドライエッチング耐性に優れる、多層レジストプロセス、例えば、2層あるいは3層プロセス用のレジスト下層膜を形成することができるものである。
【0059】
本発明のレジスト下層膜材料は、
(A)上記一般式(1)もしくは(2)に示されるポリフルオレン、又は上記一般式(3)に示される、ポリフルオレンのノボラック樹脂
を必須成分とするものであり、
(B)有機溶剤、
を含んでもよく、スピンコート特性、段差基板の埋め込み特性、膜の剛性や耐溶媒性を上げるために、
(C)上記一般式(1)、(2)のポリフルオレン及び上記一般式(3)のポリフルオレンノボラック樹脂以外の樹脂
(D)架橋剤、
(E)酸発生剤
を含むこともできる。
【0060】
上記一般式(1)及び(2)に示されるポリフルオレンを得るためのモノマーとしては、具体的には下記に例示されるが、これらに限定されるものではない。
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
【化9】

【0063】
【化10】

【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

(上記(化10)〜(化12)中、R及びR10は前述と同様である。)
【0066】
上記一般式(1)又は(2)で示されるポリフルオレンのうち、特にR及び/又はRがナフタレン環であるものは、レジスト下層膜のエッチング耐性と光学定数をより向上させることができる。
また、R及びRのどちらもが、ヒドロキシル基及びグリシジル基でないものは、レジスト下層膜を形成する際の段差基板上での埋め込み特性をより向上させることができる。
【0067】
上記一般式(1)又は(2)で示されるポリフルオレンの合成方法としては、特に限定されないが、例えば、WO2005/100437 A1記載の化学的酸化重合が挙げられる。酸化重合に用いられる触媒としては、FeCl、MoCl、WCl、AlCl−CuCl、AlCl−MnO等とルイス酸の組み合わせを用いることも出来るが、FeClが最も好ましく用いることが出来る。酸化重合の場合、フルオレンの2、7位の活性が高いために、主に2,7位同士がカップリングしながら重合が進行するが2,7位以外の部分がカップリングする場合もある。
また、例えば、他の重合方法として、特許3443736号記載の様にハロゲン化したフルオレンを重縮合する方法が挙げられる。ここで用いられる触媒としては、Ni触媒が用いられ、ニッケル(シクロオクタジエン)が好ましく用いられる
【0068】
このような方法により合成された、本発明のレジスト下層膜材料としてのポリフルオレンは、フルオレンモノマーの耐熱性と相俟って、フルオレン同士が単結合によって直接繋がる事によって、非常に高い耐熱性を有する。従って、本発明のレジスト下層膜材料を用いれば、高温の加熱にも耐えることができるレジスト下層膜を形成することができる。
これに比べて通常のクレゾールノボラック樹脂は、アルキレン基によってフェノール間が結合しているため、アルキレン基が振動或いは回転する分だけ耐熱性が低下する。
【0069】
本発明のレジスト下層膜材料の成分(A)として、上記一般式(3)で示されるような、上記一般式(2)で示されるポリフルオレン化合物をアルデヒド類との縮合反応によってノボラック化した樹脂を用いることもできる。
ここで用いられるアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、フルフラール等を挙げることができる。また、これらのうち、特にホルムアルデヒドを好適に用いることができる。
これらのアルデヒド類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アルデヒド類の使用量は、ポリフルオレン化合物1モルに対して0.2〜5モルが好ましく、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0070】
ポリフルオレン化合物とアルデヒド類の縮合反応に触媒を用いることもできる。
具体的には塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を挙げることができる。
これらの酸性触媒の使用量は、ビスナフトール化合物1モルに対して1×10-5〜5×10-1モルである。インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどの非共役2重結合を有する化合物との共重合反応の場合は、必ずしもアルデヒド類は必要ない。
【0071】
重縮合における反応溶媒として水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの混合溶媒を用いることができる。
これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0〜2,000質量部の範囲である。
反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができるが、通常10〜200℃の範囲である。
【0072】
重縮合反応方法としては、ポリフルオレン化合物、アルデヒド類、触媒を一括で仕込む方法や、触媒存在下ポリフルオレン化合物、アルデヒド類を滴下していく方法がある。
重縮合反応終了後、系内に存在する未反応原料、触媒等を除去するために、反応釜の温度を130〜230℃にまで上昇させ、1〜50mmHg程度で揮発分を除去することができる。
【0073】
ポリフルオレンの繰り返し単位としては、上記一般式(1)中の繰り返し単位a1、上記一般式(2)中の繰り返し単位a2、又は上記一般式(3)中の繰り返し単位a3単独のホモポリマー、a1、a2及びa3のうち少なくとも2つを共重合したコポリマーだけではなく、様々なモノマーと共重合することが出来る。
共重合可能なモノマーとしては、炭素数6〜30の芳香族化合物であり、ジハロゲン化の芳香族化合物が好ましく用いられる。具体的には、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモメチルベンゼン、ジブロモナフタレン、ジブロモメチルベンゼン、ジブロモアントラセン、ジブロモメチルアントラセン、ジブロモフェナントレン、ジブロモピレン、ジブロモペンタセン、ジブロモフルオレン、ジブロモビフェニル、ジブロモビルナフタレン、ジブロモフェノール、ジブロモナフトール、ジブロモビルナフトール、フルオランテン、インデン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、ピレン、アントラセン、ナフタセン、ペリレン、ペンタセン、コロネン、フェナントレン、インダセン、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、シクロペンタフェナントレン等を挙げることができる。
【0074】
また、他のフェノール類を共重合してもよい。
共重合可能なフェノール類は、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール等を挙げることができる。
【0075】
その他、共重合可能なモノマーを共重合させることができ、具体的には1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール及び1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ベンゼンジメタノール、ナフタレンジメタノール、フルオレンジメタノール、アントラセンジメタノール、ピレンジメタノール、ビフェニルジメタノール、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、テトラヒドロスピロビインデン化合物、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5‘−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、特開2006−259482号公報記載のジビスフェノール化合物、同2006−285095号公報記載のアダマンタンフェノール化合物、同2007−199653号公報記載のビスナフトール化合物などが挙げられ、これらのものを加えた3元以上の共重合体であっても構わない。
【0076】
ポリフルオレンのポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量(Mw)が400〜20,000、特に500〜15,000であることが好ましい。
ポリフルオレンのノボラック樹脂のポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量(Mw)が600〜30,000、特に700〜20,000であることが好ましい。
分子量分布(Mw/Mn)は1.2〜7の範囲内が好ましく用いられるが、モノマー成分、オリゴマー成分又は分子量(Mw)300以下の低分子量体をカットして分子量分布を狭くした方が架橋効率が高くなり、またベーク中の揮発成分を抑えることによりベークカップ周辺の汚染を防ぐことができる。
【0077】
また、上記一般式(1)もしくは(2)で示されるポリフルオレン、又は上記一般式(3)で示される、ポリフルオレンのノボラック樹脂のうち、ヒドロキシル基を有するものは、ヒドロキシル基のオルト位又はパラ位に縮合芳香族、あるいは脂環族の置換基を導入することができる。
ここで導入可能な置換基は、具体的には下記に挙げることができる。
【化13】

【0078】
これらの中で248nm露光用には、多環芳香族基、例えばアントラセンメチル基、ピレンメチル基が最も好ましく用いられる。193nmでの透明性向上のためには脂環構造を持つものや、ナフタレン構造を持つものが好ましく用いられる。一方、波長157nmにおいてベンゼン環は透明性が向上するウィンドウがあるため、吸収波長をずらして吸収を上げてやる必要がある。フラン環はベンゼン環よりも吸収が短波長化して157nmの吸収が若干向上するが、効果は小さい。ナフタレン環やアントラセン環、ピレン環は吸収波長が長波長化することによって吸収が増大し、これらの芳香族環はエッチング耐性も向上する効果もあり、好ましく用いられる。
【0079】
置換基の導入方法としては、重合後のポリマーに、上記置換基の結合位置がヒドロキシル基になっているアルコールを、酸触媒存在下ポリフルオレンのヒドロキシル基のオルト位又はパラ位に導入する方法が挙げられる。酸触媒は、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を用いることができる。これらの酸性触媒の使用量は、フェノール類1モルに対して1×10-5〜5×10-1モルである。置換基の導入量は、ポリフルオレンのヒドロキシル基1モルに対して0〜0.8モルの範囲である。
【0080】
本発明で用いられる上記一般式(1)もしくは(2)で示されるポリフルオレン、又は上記一般式(3)で示される、ポリフルオレンのノボラック樹脂の193nmにおける透明性を向上させるために、水素添加を行うことができる。好ましい水素添加の割合は、芳香族基の80モル%以下、特に60モル%以下である。
【0081】
更に、本発明のレジスト下層膜材料には、(C)成分として他のポリマーをブレンドすることもできる。
ブレンド用ポリマーとしては、上記一般式(1)もしくは(2)で示されるポリフルオレン、又は上記一般式(3)で示される、ポリフルオレンのノボラック樹脂と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つものや、炭素密度が高くエッチング耐性の高い材料が選ばれる。
【0082】
このような材料とは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5‘−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール及び1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどのノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレートおよびこれらの共重合体が挙げられる。
上記ブレンド用ポリマーの配合量は、上記一般式(1)乃至(3)に示される化合物100重量部に対して0〜1000重量部、好ましくは0〜500重量部である。
【0083】
反射防止膜を含むレジスト下層膜に要求される性能の一つとして、上層膜、例えば珪素含有レジスト中間層膜およびレジスト上層膜とのインターミキシングがないこと、上層膜ヘの低分子成分の拡散がないことが挙げられる(Proc. SPIE Vol.2195、p225−229(1994))。これらを防止するために、一般的に反射防止膜のスピンコート後のベークで熱架橋するという方法が採られている。そのため、反射防止膜材料の成分として架橋剤を添加する場合、ポリマーに架橋性の置換基を導入する方法が採られることがある。架橋剤を特に添加していない場合でも、300℃以上の加熱によってヒドロキシ基の縮合反応あるいはラジカルカップリング反応によって架橋させることが出来る。架橋反応が特に起きなくても、高温のベークによって膜密度が向上することによってミキシングが起こりにくくなる。
【0084】
本発明で使用可能な(D)成分としての架橋剤として、具体的には、特開2007−199653号公報中の(0056)〜(0059)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0085】
本発明における架橋剤の配合量は、ベースポリマー(全樹脂分)100部(質量部、以下同じ)に対して3〜50部が好ましく、特に5〜40部が好ましい。3部未満であるとレジストとミキシングを起こす場合があり、50部を超えると反射防止効果が低下したり、架橋後の膜にひび割れが入るあるいは炭素密度の低下によりエッチング耐性が低下することがある。
【0086】
本発明においては、熱による架橋反応を更に促進させるための(E)成分として酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。
本発明で使用可能な酸発生剤として、具体的には、特開2007−199653号公報中の(0062)〜(0084)段落に記載されているものを添加することができる。
【0087】
なお、上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸発生剤の添加量は、ベースポリマー100部に対して好ましくは0.1〜50部、より好ましくは0.5〜40部である。0.1部より少ないと酸発生量が少なく、架橋反応が不十分な場合があり、50部を超えると上層レジストへ酸が移動することによるミキシング現象が起こる場合がある。
【0088】
更に、本発明のレジスト下層膜材料には、保存安定性を向上させるための塩基性化合物を配合することができる。
塩基性化合物としては、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。
このような塩基性化合物としては、具体的には、特開2007−199653号公報中の(0086)〜(0089)段落に記載されているものを配合することができる。
【0089】
塩基性化合物の配合量は全ベースポリマー100部に対して0.001〜2部、特に0.01〜1部が好適である。配合量が0.001部より少ないと配合効果がなく、2部を超えると熱で発生した酸を全てトラップして架橋しなくなる場合がある。
【0090】
本発明のレジスト下層膜材料において使用可能な(B)成分としての有機溶剤としては、前記のベースポリマー、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。その具体例を列挙すると、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル,プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できるが、これらに限定されるものではない。本発明においては、これら有機溶剤の中でもジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0091】
溶剤の配合量は、全ベースポリマー100部に対して200〜10,000部が好ましく、特に300〜5,000部とすることが好ましい。
【0092】
本発明のレジスト下層膜材料には、上記成分以外に任意成分として界面活性剤、溶解阻止剤、カルボン酸化合物、アセチレンアルコール誘導体等の他の成分を添加することができ、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
このような任意成分としては、具体的には、特開2008−111103号公報中の(0165)〜(0192)段落に記載されているものを添加することができる。
【0093】
また、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0094】
この場合、前記フォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料が珪素原子を含有するポリマーを含み、前記レジスト上層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0095】
さらに、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト中間層膜をエッチングし、得られたレジスト中間層膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0096】
この場合、前記フォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料が、珪素原子を含有するポリマーを含まず、前記中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0097】
さらに、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に珪素酸化膜、珪素窒化膜及び珪素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間層膜を形成し、該無機ハードマスク中間層膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間層膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間層膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0098】
この場合、前記無機ハードマスク中間層膜は、CVD法あるいはALD法によって形成することが好ましい。また、前記フォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料が、珪素原子を含有するポリマーを含まず、前記中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0099】
本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成するレジスト下層膜は、通常のフォトレジスト膜の形成法と同様にスピンコート法などで被加工基板上に作製することが可能である。スピンコート法などを用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。スピンコート後、溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト中間層膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークをすることが望ましい。ベーク温度は80〜500℃の範囲内で、好ましくは150〜400℃の範囲内で10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。
250℃以下の温度で架橋を行うためには、熱酸発生剤と酸によって架橋する架橋剤を添加することが好ましい。250℃以上の高温でベークする場合は、架橋剤は特に必要なく、高温ベークによって炭素密度が高い緻密な膜を形成することができる。この様な高温でベークを行うと、酸化反応によって膜内に酸素が取り込まれてエッチング耐性が低下する場合がある。ベーク中の酸化反応を防止するために窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスで置換することは効果的である。
【0100】
尚、このレジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、30〜20,000nm、特に50〜15,000nmとすることが好ましい。レジスト下層膜を作製した後、2層プロセスの場合はその上に珪素含有レジスト上層膜、3層プロセスの場合はその上に珪素含有レジスト中間層膜、更にその上に珪素を含まないレジスト上層膜(単層レジスト膜)を形成することができる。
この場合、レジスト上層膜を形成するためのフォトレジスト組成物としては公知のものを使用することができる。
【0101】
2層プロセスにおける珪素含有ポリマーを含むフォトレジスト組成物としては、酸素ガスエッチング耐性の点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、更に有機溶剤、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト組成物が使用される。なお、珪素原子含有ポリマーとしては、この種のフォトレジスト組成物に用いられる公知のポリマーを使用することができる。
【0102】
3層プロセス用の珪素含有レジスト中間層膜としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層膜が好ましく用いられる。具体的には、特開2004−310019号公報、同2005−15779号公報、同2005−18054号公報、同2005−352104号公報、同2007−65161号公報、同2007−163846号公報、同2007−226170号公報、同2007−226204号公報等に示されるシルセスキオキサンベースの珪素化合物を含む材料が挙げられる。
レジスト中間層膜に反射防止膜としての効果を持たせることによって、より効果的に反射を抑えることができる。
【0103】
特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、中間層で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。
【0104】
反射防止効果があるレジスト中間層膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又は珪素−珪素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0105】
レジスト下層膜の上に無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、特開2002−334869号公報、WO2004/066377に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は5〜200nm、好ましくは10〜100nmであり、中でも反射防止膜としての効果の高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300〜500℃となるために、レジスト下層膜として300〜500℃の高温に耐える必要がある。本発明のレジスト下層膜材料は、高い耐熱性を有しており、300〜500℃の高温に耐えることができるため、CVD法あるいはALD法で形成された無機ハードマスクと、スピンコート法で形成されたレジスト下層膜との組み合わせが可能である。
【0106】
このようなレジスト中間層膜の上に、レジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成しても良いが、レジスト中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成しても良い。レジスト中間層膜としてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって、1.0を超える高NAの液浸露光においても、反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0107】
3層プロセスにおける珪素原子含有ポリマーを含まないフォトレジスト組成物は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。3層レジスト膜のレジスト上層膜に珪素原子含有ポリマーを含まないものは、珪素原子を含有するポリマーを含むものと比較して、解像性に優れるという利点がある。
【0108】
2層及び3層プロセスにおいて、上記フォトレジスト組成物によりレジスト上層膜を形成する場合、上記レジスト下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法が好ましく用いられる。レジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、80〜180℃で10〜300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、30〜500nm、特に50〜400nmが好ましい。
また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3〜20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0109】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。
2層プロセスにおけるレジスト下層膜のエッチングは、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行う。この場合、酸素ガス又は水素ガスに加えて、He、Arなどの不活性ガスや、CO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、ガスを加えることも可能であり、酸素ガス又は水素ガスを使わずにCO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2ガスだけでエッチングを行うこともできる。特に後者のガスはパターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために用いられる。
3層プロセスにおけるレジスト中間層膜のエッチングは、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして中間層の加工を行う。次いで上記酸素ガス又は水素ガスエッチングを行い、レジスト中間層膜パターンをマスクにしてレジスト下層膜の加工を行う。
【0110】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば基板がSiO2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜を有するものであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト又は珪素含有中間層の剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0111】
本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は、これら被加工基板のエッチング耐性に優れる特徴がある。
尚、被加工基板は、基板上に被加工膜を形成したものとすることができる。基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α−Si、p−Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工膜と異なる材質のものが用いられる。被加工膜としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nm厚さに形成し得る。
【0112】
2層プロセスの一例について、図6を用いて更に具体的に示すと下記の通りである。
2層レジスト加工プロセスの場合、図6(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工膜2上にレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜3を形成し、その上にフォトレジスト組成物、特に珪素原子含有ポリマーをベース樹脂とするフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜4を形成し、次いでフォトマスクを介してレジスト上層膜4のパターン回路領域5を露光し(図6(B))、PEB及び現像を行ってレジストパターン4aを形成する(図6(C))。
その後、得られたレジストパターン4aをマスクにしてレジスト下層膜3を酸素プラズマエッチング加工してレジスト下層膜パターン3aを形成し(図6(D))、更にレジストパターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクにして被加工膜2をエッチング加工し、基板1にパターン2aを形成する(図6(E))。
【0113】
また、3層プロセスの一例について、図7を用いて更に具体的に示すと下記の通りである。
3層レジスト加工プロセスの場合、図7(A)に示したように、2層レジスト加工プロセスの場合と同様に、基板1の上に積層された被加工膜2上にレジスト下層膜3を形成した後、珪素含有レジスト中間層膜6を形成し、その上に単層レジスト上層膜7を形成する。
次いで、図7(B)に示したように、レジスト上層膜7のパターン回路領域8を露光し、PEB及び現像を行ってレジストパターン7aを形成し(図7(C))、この得られたレジストパターン7aをマスクとして、CF系ガスを用いてレジスト中間層膜6をエッチング加工してレジスト中間層膜パターン6aを形成する(図7(D))。レジストパターン7aを除去後、この得られたレジスト中間層膜パターン6aをマスクとしてレジスト下層膜3を酸素プラズマエッチングしてレジスト下層膜パターン3aを形成する(図7(E))。更に、レジスト中間層膜パターン6aを除去後、この得られたレジスト下層膜パターン3aをマスクにして被加工膜2をエッチング加工し、基板1にパターン2aを形成する(図7(F))。
無機ハードマスク中間膜を用いる場合、レジスト中間層膜6が無機ハードマスク中間層膜であり、BARCを敷く場合は、レジスト中間層膜6とレジスト上層膜7との間にBARCを設ける。BARCのエッチングはレジスト中間層膜6のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変えるなどしてレジスト中間層膜6のエッチングを行うこともできる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
尚、分子量の測定法は具体的に下記の方法により行った。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0115】
[合成例1]
3Lのフラスコに4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノールの33g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー1を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw2,100、Mw/Mn2.10
【化14】

【0116】
[合成例2]
3Lのフラスコに4,4’−メトキシ−(9−フルオレニリデン)ジフェニルの36g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー2を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw2,900、Mw/Mn2.36
【化15】

【0117】
[合成例3]
3Lのフラスコに4,4’−アセトキシ−(9−フルオレニリデン)ジフェニルの41g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー3を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw3,200、Mw/Mn3.90
【化16】

【0118】
[合成例4]
3Lのフラスコに6,6’−(9−フルオレニリデン)2,2’−ジナフトールの42g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー4を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw1,900、Mw/Mn2.86
【化17】

【0119】
[合成例5]
3Lのフラスコに6,6’−(9−フルオレニリデン)2,2’−ジナフトールの21g、フルオレンの7.8g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー5を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw3,300、Mw/Mn3.10
【化18】

【0120】
[合成例6]
3Lのフラスコに9−カルボン酸メチルフルオレンの10.5g、フルオレンの7.8g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー6を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw3,500、Mw/Mn2.66
【化19】

【0121】
[合成例7]
3Lのフラスコに9,9’−ジカルボン酸メチルフルオレンの13.2g、ベンゾ[c]フルオレンの10.6g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー7を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw1,600、Mw/Mn1.94
【化20】

【0122】
[合成例8]
3Lのフラスコに9−ヒドロキシフルオレンの8.6g、フルオレンの7.8g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー8を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw4,500、Mw/Mn1.98
【化21】

【0123】
[合成例9]
3Lのフラスコに9−(2−ナフチル)−9−フルオレノールの14.5g、ベンゾ[b]フルオレンの10.6g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー9を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw1,800、Mw/Mn2.30
【化22】

【0124】
[合成例10]
3Lのフラスコに3,3’−ジビニル−4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノールの37.9g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー10を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw1,500、Mw/Mn2.10
【化23】

【0125】
[合成例11]
3Lのフラスコに6,6’−(9−フルオレニリデン)2,2’−ジナフトールの21.2g、99−ジエチニル−フルオレンの10.1g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー11を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw2,900、Mw/Mn2.63
【化24】

【0126】
[合成例12]
3Lのフラスコに6,6’−(9−フルオレニリデン)2,2’−ジナフトールの21.2g、9−ベンジリデンフルオレンの12.0g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー12を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw3,500、Mw/Mn3.10
【化25】

【0127】
[合成例13]
3Lのフラスコに6,6’−(9−フルオレニリデン)2,2’−ジナフトールの21.2g、フルオランテンの10g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー13を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw1,100、Mw/Mn2.30
【化26】

【0128】
[合成例14]
3Lのフラスコに6,6’−(9−フルオレニリデン)2,2’−ジナフトールの21.2g、シクロペンタ[d,e,f]フェナントレンの10g、三塩化鉄46g、ジクロロエタン1600g室温で100時間撹拌し、反応液に1Lの水を添加して三塩化鉄をろ過分別、ろ液を濃縮してジクロロエタンを蒸発させ、ポリマー14を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw1,200、Mw/Mn2.90
【化27】

【0129】
[合成例15]
300mlのフラスコに合成例1で得られたポリマー1の20g、37%ホルマリン水溶液7.5g、シュウ酸0.5gを加え、撹拌しながら100℃で24時間撹拌させた。反応後メチルイソブチルケトン500mlに溶解し、十分な水洗により触媒と金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃、2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、ポリマー15を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw5,900、Mw/Mn4.50
【化28】

【0130】
[合成例16]
500mLのフラスコに上記合成例1で得られたポリマー1の12.5g、エピクロルヒドリン30gを入れ溶解させ、80℃に加熱し、撹拌しながら20%水酸化ナトリウム22gを3時間かけて滴下し、1時間の熟成撹拌の後、下層の食塩水を分離、未反応のエピクトルヒドリンを150℃加熱で蒸留除去した後MIBK(メチルイソブチルケトン)を30g加えて溶解させた後、水洗分離を3回繰り返して下層の水層を除去、乾燥濾過、150℃加熱によりMIBKを脱溶媒しポリマー16を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw2,300、Mw/Mn2.30
【化29】

【0131】
比較例用ポリマー1としてはラジカル重合によって得られた4−ヒドロキシスチレン:2−メタクリル酸―1−アントラセンメチル=56:44、重量平均分子量(Mw)=14400、分子量分布(Mw/Mn)=1.77、比較例用ポリマー2としてはMw8,800、Mw/Mn4.5のm−クレゾールノボラック樹脂、比較例用ポリマー3としてはMw9,200、Mw/Mn1.05のポリヒドロキシスチレンを用いた。
【0132】
ブレンド用ポリマー1としては、カチオン重合によって得られたアセナフチレン−ヒドロキシスチレン、ブレンドポリマー2としては4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノールをホルマリンにてノボラック化した樹脂、ブレンドポリマー3としては2,2’−(9H−フルオレン−9−イリデン)−6,6’−ビスナフトールをホルマリンにてノボラック化した樹脂、ブレンドポリマー4としては、1−ナフトールとジシクロペンタジエン共縮合樹脂を用いた。
ブレンドポリマーの構造、重合比率分子量を下記に示す。
【化30】

【0133】
また、ArF珪素含有中間層膜用ポリマーとしては、下記のものを用いた。
【化31】

【0134】
(実施例1〜20、比較例1〜4)
(レジスト下層膜材料及びレジスト中間層膜材料の調製)
表1に示すように、ポリマー1〜16、比較ポリマー1〜4、ブレンドポリマー1〜4、ArF珪素含有中間層膜用ポリマー、架橋剤、酸発生剤を、フッ素系界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってレジスト下層膜材料(実施例1〜20、比較例1〜4)とレジスト中間層膜材料(SOG―1)を調製した。
【0135】
(屈折率測定)
上記のように調整したレジスト下層膜材料(実施例1〜20、比較例1〜4)をシリコン基板上に塗布して、実施例16、比較例1〜3は200℃で60秒間ベークし、実施例1〜15、17〜20、比較例4は350℃で60秒間ベークして、それぞれ膜厚300nmのレジスト下層膜を形成した。また、上記のように調整したレジスト中間層膜材料(SOG1)をスピンコートにより塗布して、200℃で60秒間ベークし、膜厚30nmの珪素含有レジスト中間層膜を形成した。
レジスト下層膜と珪素含有レジスト中間層膜を形成後、J.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)で、波長193nmにおける屈折率(n,k)を求め、結果を表1に示した。
【0136】
【表1】

PGMEA;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CR1(下記構造式参照)
AG1(下記構造式参照)
【化32】

【0137】
(CF4/CHF3系ガスでのエッチング試験)
次いで、ドライエッチング耐性のテストを行った。まず、前記屈折率測定に用いたものと同じレジスト下層膜(実施例1〜20、比較例1〜4)を作製し、これらのレジスト下層膜のCF4/CHF3系ガスでのエッチング試験として下記(1)の条件で試験した。この場合、東京エレクトロン株式会社製ドライエッチング装置TE−8500Pを用い、エッチング前後のレジスト下層膜の膜厚差を測定した。結果を表2に示す。
【0138】
(1)CF4/CHF3系ガスでのエッチング試験
エッチング条件は下記に示す通りである。
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 1,300W
ギャップ 9mm
CHF3ガス流量 30ml/min
CF4ガス流量 30ml/min
Arガス流量 100ml/min
時間 60sec
【表2】

【0139】
(レジスト上層膜材料の調製)
レジスト上層膜材料としては、表3に示す組成の樹脂、酸発生剤、塩基化合物をFC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【表3】

【0140】
表3中、ArF単層レジストポリマー1、PAG1、Quencher1、及び撥水性ポリマー1は下記のものを用いた。
【化33】

【0141】
(パターンエッチング試験)
前記調整したレジスト下層膜材料(実施例1〜20、比較例1〜4)を、膜厚200nmのSiO2基板上に塗布して、実施例1〜15、17〜20、比較例4は350℃で60秒間、実施例16、比較例1〜3は200℃で60秒間ベークして膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。
その上に、前記調整した珪素含有レジスト中間層膜材料(SOG1)を塗布し、200℃で60秒間ベークして膜厚30nmの中間層を形成した。
更にその上に、前記調整したレジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)を塗布し、110℃で60秒間ベークして膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。
このようにして、3層レジスト膜とした。
尚、下層膜のベーク雰囲気は窒素気流下で行った。
【0142】
次いで、レジスト上層膜のパターン回路領域をArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポール偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、43nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0143】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いて上記ドライエッチングにより得られたレジストパターンをマスクにして珪素含有レジスト中間層膜(SOG)をエッチング加工し、これにより得られた珪素含有レジスト中間層膜パターンをマスクにしてレジスト下層膜をエッチング加工し、これにより得られたレジスト下層膜パターンをマスクにしてSiO膜のエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
レジストパターンのレジスト中間層膜への転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CFガス流量 15sccm
ガス流量 75sccm
時間 15sec
【0144】
レジスト中間層膜パターンのレジスト下層膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
2ガス流量 45sccm
時間 120sec
【0145】
レジスト下層膜パターンのSiO膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
12ガス流量 20sccm
ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
60sccm
時間 90sec
【0146】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4700)にて観察し、形状を比較し、表4にまとめた。
【0147】
【表4】

【0148】
表1に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は(実施例1〜20)、波長193nmにおける屈折率のn値が1.35〜1.50の範囲であり、k値が0.38〜0.62の範囲であるため、特に液浸リソグラフィー用の多層プロセスのレジスト下層膜として実用に適する屈折率を有していることが認められた。
【0149】
また、表2に示されるように、実施例1〜20のCF4/CHF3ガスエッチングの速度は、比較例1〜3よりも十分に遅く、比較例4よりも遅いことが認められた。
【0150】
さらに、表4に示されるように、350℃という高温でレジスト下層膜の熱処理を行った場合でも、現像後のレジスト形状、酸素エッチング後、基板加工エッチング後のレジスト下層膜の形状は良好であり、パターンのよれもないことが認められた(実施例1〜15、17〜20)。また、従来のように、300℃以下(本実施例では200℃)で熱処理を行った実施例16においても、実施例1〜15、17〜20同様良好な結果が得られた。
一方、比較例においては、350℃で熱処理を行った場合(比較例4)、200℃で熱処理を行った場合(比較例1〜3)、いずれにおいても、膜減りやパターンによれが生じていることが認められた。
【0151】
以上のように、本発明のレジスト下層膜材料を用いれば、反射率を低減でき、エッチング耐性の高いレジスト下層膜を形成することができ、また、本発明のレジスト下層膜材料を用いることで、基板に高精度のパターンを形成することができることが確認された。
【0152】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0153】
1…基板、 2…被加工膜、 2a…基板に形成されるパターン、 3…レジスト下層膜、 3a…レジスト下層膜パターン、 4、7…レジスト上層膜、 4a、7a…レジスト上層膜パターン、 5、8…パターン回路領域、 6…レジスト中間層膜、 6a…レジスト中間層膜パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、少なくとも、下記一般式(1)で示される繰り返し単位a1を有するポリフルオレンを含有することを特徴とするレジスト下層膜材料。
【化34】

(一般式(1)中、R、Rは同一、又は異種の水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、酸不安定基、グリシジル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、カルボキシル基、又はシアノ基、あるいは、R、Rはまとめて1つの基であっても良く、その場合には、酸素原子、炭素数1〜6のアルキリデン基、又はイミノ基である。これらの基は、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、酸不安定基、グリシジル基、カルボキシル基を、1つ又は複数有していても良い。R、Rはそれぞれベンゼン環又はナフタレン環であり、R、Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数2〜10のアルキニル基である。)
【請求項2】
上記一般式(1)で示される繰り返し単位a1が下記一般式(2)で示される繰り返し単位a2であることを特徴とする請求項1に記載のフォトレジスト下層膜材料。
【化35】

(一般式(2)中R〜Rは前述と同様、R、Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数2〜10のアルキニル基である。m、nはそれぞれ0〜2の整数であり、R、R10はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数1〜6のアシル基もしくはアルコキシカルボニル基、酸不安定基、又はグリシジル基である。)
【請求項3】
前記一般式(2)で示される繰り返し単位a2を有するポリフルオレンをノボラック化した、下記一般式(3)で示される繰り返し単位a3を含有することを特徴とする請求項2に記載のレジスト下層膜材料。
【化36】

(一般式(3)中R〜R10、m、nは前述の通り、R11は炭素数1〜10のアルキレン基であり、アリル基を有していても良い。)
【請求項4】
前記レジスト下層膜材料が、有機溶剤を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項5】
前記レジスト下層膜材料が、更に、架橋剤及び酸発生剤を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項6】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
前記フォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料が珪素原子を含有するポリマーを含み、前記レジスト上層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト中間層膜をエッチングし、得られたレジスト中間層膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に珪素酸化膜、珪素窒化膜及び珪素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間層膜を形成し、該無機ハードマスク中間層膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間層膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間層膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
前記無機ハードマスク中間層膜は、CVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記フォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料が、珪素原子を含有するポリマーを含まず、前記中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−271654(P2010−271654A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125600(P2009−125600)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】