説明

レジスト保護膜材料及びパターン形成方法

【課題】撥水性と滑水性に優れ、現像欠陥が少なく、現像後のレジストパターン形状が良好な液浸リソグラフィー用レジスト保護膜材料、更にはこの材料を用いたパターン形成方法の提供。
【解決手段】少なくとも、側鎖にヘキサフルオロヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリレート単位、側鎖にフッ素含有環状エーテル構造含有基を有する(メタ)アクリレート単位、及び側鎖にスルホン酸基を有するビニルモノマー単位を含有し、重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲内である高分子化合物を含むものであることを特徴とするレジスト保護膜材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工のためのフォトリソグラフィー(例えば波長193nmのArFエキシマレーザーを光源とし、投影レンズと基板との間に水などの液体を挿入して露光を行う液浸フォトリソグラフィー)において、使用するフォトレジスト膜上に保護膜を形成するためのレジスト保護膜材料及びこの材料を用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。その背景には露光光源の短波長化があり、例えば水銀灯のi線(365nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)を経て、ArFエキシマレーザー(193nm)まで短波長化することにより65nmノードのデバイスの検討が実用化されている。さらに近年、投影レンズとウエハーの間に水を含浸させて露光するArF液浸リソグラフィーの検討が開始され、NAが1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nm以下の微細化が可能になった(非特許文献1)。
【0003】
ArF液浸露光においては、露光時にレジスト膜中の水溶性成分が液浸水へ溶出し(リーチング)、パターンの形状変化やパターン倒れが発生する可能性がある。また、スキャン後に残った微量の水滴が欠陥を誘発する可能性も指摘されている。そのため、ArF液浸リソグラフィーではレジスト膜上に保護膜を設け、レジスト成分の溶出と水由来の欠陥を抑える方法(トップコートプロセス)が提案されている(非特許文献2参照)。
【0004】
ArF液浸リソグラフィーでトップコートを使用する場合、アルカリ可溶性の保護膜材料を用いると現像と同時に保護膜を除去することが出来るため、コスト面やプロセス面でメリットが大きい。そのため、アルカリ可溶性の樹脂を用いた非水溶性レジスト保護膜材料の開発が精力的に進められている。
【0005】
一方で、保護膜材料を使わずにレジスト成分の水中への溶出を抑える方法(トップコートレスプロセス)も開発されている。この方法を用いる場合、あらかじめアルカリ可溶性の疎水性高分子化合物をレジストに添加しておき、レジスト成膜時に疎水性化合物をレジスト表面に局在化させる。その結果、トップコートを用いる場合と同様の効果が実現する。トップコートレスプロセスは保護膜の成膜と除去にかかる工程が不要であるため、コスト的にも有利である。
【0006】
トップコート/トップコートレスのいずれのプロセスにおいても、ArF液浸露光ではスループットを高めるために300〜700(mm/s)程度のスキャン速度が求められる。このような高速スキャンを行う場合、レジスト膜又は保護膜の撥水性が不十分だとスキャン後の膜表面に水滴が残り、それが欠陥を誘発する可能性がある。このような欠陥の解消には塗布膜の撥水性及び滑水性(特に後退接触角)を向上させる必要がある。
【0007】
樹脂の撥水性及び滑水性を向上させる手段としては、ポリマー骨格にフッ素原子を導入する方法が知られている。例えば、α−トリフルオロメチルアクリル酸エステルとノルボルネン誘導体の共重合体(非特許文献3参照)、あるいは側鎖に含フッ素アルコール単位を有する含フッ素閉環重合ポリマー(非特許文献4参照)は撥水性と滑水性に優れた性能を示す。また、後者のポリマーは含フッ素アルコールを酸不安定基で保護することにより、更に滑水性能が向上することが報告されている。
【0008】
ポリマー骨格にフッ素を導入すると撥水性や滑水性が飛躍的に向上するが、過度の導入はブロブ欠陥と呼ばれる新たな欠陥を誘発する。この欠陥は現像後のスピンドライ時に発生し、現像後の表面接触角が高いと発生しやすい。そのため、樹脂中に親水性の高い置換基(例えば、カルボキシル基やスルホ基など)を導入し、現像後の表面接触角を下げればブロブ欠陥は抑えられる。しかし、これらの基を含む樹脂は撥水性や滑水性が著しく低下するため、上述のような高速スキャンには適用出来ない。それ故に、液浸露光時における高い撥水性と滑水性を維持しつつ、ブロブ欠陥を抑えることが可能な材料の開発が望まれている。
【0009】
以上で述べた材料はArF液浸リソグラフィーにとどまらず、マスクブランクス用レジスト材料への応用も期待されている。マスクブランクスの露光では真空中で長時間の露光を行うが、その際にレジスト中のアミン成分がレジスト膜表面に吸着し、感度変動や形状変化を起こす可能性が指摘されている。そこで、レジスト膜上に保護膜を適用し、レジスト膜にアミンが吸着するのを防ぐ方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Proc.SPIE.Vol.5040、p724(2003)
【非特許文献2】2nd Immersion Work Shop:Resist and Cover Material Investigation for Immersion Lithography(2003)
【非特許文献3】Proc.SPIE.Vol.4690、p18(2002)
【非特許文献4】Proc.SPIE.Vol.6519、p651905(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、撥水性と滑水性に優れ、現像欠陥が少なく、現像後のレジストパターン形状が良好なレジスト保護膜材料、更にはこの材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明によれば、少なくとも、下記一般式(1a)、(1b−1)、及び(1c)で表される繰り返し単位を含有し、重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲内である高分子化合物(P1−1)を含むものであることを特徴とするレジスト保護膜材料を提供する。
【化1】

(式中、R1a〜R1cは水素原子又はメチル基である。Rは上記一般式(X)、(Y)、及び(Z)で表される基のいずれかを示し、一般式(X)、(Y)、(Z)中のR4a、R4b、R5a、R5bのいずれかを介して繰り返し単位(1b−1)の−(C=O)−O−結合に連結し、このとき−(C=O)−O−結合に連結するR4a、R4b、R5a、R5bは、単結合又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基を示す。繰り返し単位(1b−1)の−(C=O)−O−結合に連結しないR4a、R4b、R5a、R5bは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、及び炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状の一価の有機基のいずれかを表し、R4a、R4b、R5a、R5bのうち2個が互いに結合して環状構造を形成しても良い。R、R、Rは炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていても良く、また、メチレン基の一部が酸素原子、又はカルボニル基で置換されていてもよい。Rは水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基であり、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、また、メチレン基の一部が酸素原子、またはカルボニル基で置換されていてもよい。RとRは結合して環状構造を形成してもよい。R3aは単結合、−C(=O)−O−、及び−C(=O)−NH−のいずれかである。R3bは単結合、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基である。高分子化合物(P1−1)において、一般式(1a)、(1b−1)、及び(1c)の単位に対応するモノマーの総モル数をU11、U12、U13とし、高分子化合物(P1−1)に含まれる全繰り返し単位に対応するモノマーの総モル数をU1とした場合、0<U11/U1<1、0<U12/U1<1、0<U13/U1<1、0<(U11+U12+U13)/U1≦1である。)
【0013】
上記の高分子化合物(P1−1)において、一般式(1a)で表される繰り返し単位はアルカリ現像液に対する溶解性に寄与するとともに、撥水性や滑水性に優れた性能を発揮する。また、一般式(1b−1)で表される繰り返し単位は側鎖の炭素数、分岐度、フッ素数などの構造制御が容易であり、レジスト保護膜材料として必要な撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性に応じた高分子化合物の製造が可能である。さらに、これらの繰り返し単位に加えて、スルホ基を有する繰り返し単位(一般式(1c))を組み合わせることにより、現像欠陥が少なく、パターン形状に優れるレジスト保護膜材料用のベースポリマー(高分子化合物)を得ることが出来る。また、上記の高分子化合物(P1−1)は、波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、かつ入手及び取り扱いが容易な原料からの製造が可能である。
【0014】
また、前記一般式(1c)において、R3a及びR3bが単結合であることが好ましい。
【0015】
このように、高分子化合物(P1−1)は、一般式(1c)中のR3a及びR3bが単結合である繰り返し単位を含むものとすることができる。
【0016】
また、本発明では、少なくとも、下記一般式(1a)’、(1b−2)、及び(1c)’で表される繰り返し単位を含有し、重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲内である高分子化合物(P1−2)を含むことを特徴とするレジスト保護膜材料を提供する。
【化2】

(式中、R1a’〜R1c’は水素原子又はメチル基である。R10a及びR10bは、水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状の一価炭化水素基であり、R10a及びR10bは互いに結合して炭素数3〜8の非芳香環を形成してもよい。R11は単結合又はメチレン基である。R12は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状の一価炭化水素基、フッ素化一価炭化水素基、及び酸不安定基のいずれかを示し、一価炭化水素基の場合、構成する−CH−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。R3a’は単結合、−C(=O)−O−、及び−C(=O)−NH−のいずれかである。R3b’は単結合、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基である。高分子化合物(P1−2)において、一般式(1a)’、(1b−2)、(1c)’の単位に対応するモノマーの総モル数をU11’、U12’、U13’とし、高分子化合物(P1−2)に含まれる全繰り返し単位に対応するモノマーの総モル数をU1’とした場合、0<U11’/U1’<1、0<U12’/U1’<1、0<U13’/U1’<1、0<(U11’+U12’+U13’)/U1’≦1である。)
【0017】
高分子化合物(P1−2)において、一般式(1a)’で表される繰り返し単位はアルカリ現像液に対する溶解性に寄与するとともに、撥水性や滑水性に優れた性能を発揮する。また、一般式(1b−2)で表される繰り返し単位は側鎖の炭素数、分岐度、フッ素数などの構造制御が容易であり、レジスト保護膜材料として必要な撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性に応じた高分子化合物の製造が可能である。さらに、これらの繰り返し単位に加えて、スルホ基を有する繰り返し単位(一般式(1c)’)を組み合わせることにより、現像欠陥が少なく、パターン形状に優れるレジスト保護膜材料用のベースポリマーを得ることが出来る。また、上記の高分子化合物(P1−2)は、波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、かつ入手及び取り扱いが容易な原料からの製造が可能である。
【0018】
また、前記一般式(1c)’において、R3a’及びR3b’が単結合であることが好ましい。
【0019】
このように、高分子化合物(P1−2)は、一般式(1c)’中のR3a’及びR3b’が単結合である繰り返し単位を含むものとすることができる。
【0020】
また、前記レジスト保護膜材料が、更に溶媒を含むものであることが好ましい。
【0021】
このように、高分子化合物(P1−1)、(P1−2)は、溶媒に溶解させて用いることが好ましい。
【0022】
また、前記溶媒が、炭素数8〜12のエーテル化合物であることが好ましい。
【0023】
このように、用いられる溶媒としては、レジスト層を溶解させない溶媒が好ましく用いられ、レジスト層を溶解しない溶媒の中でも、炭素数8〜12のエーテル化合物が好ましい。
【0024】
また、前記溶媒が、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ−secブチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−t−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルのうちの一種、又は二種以上の組み合わせであることが好ましい。
【0025】
本発明のレジスト保護膜材料に特に好ましく用いられる溶媒として、上記のエーテル化合物が挙げられる。
【0026】
また、前記溶媒が、前記エーテル化合物に加えて、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノールのいずれかのアルコール化合物の一種、又は二種以上を混合した溶媒を含むものであることが好ましい。
【0027】
このような炭素数4以上の高級アルコールは、レジスト層を溶解させないため、本発明のレジスト保護膜材料に用いる溶媒は、エーテル化合物に加えて、炭素数4以上の高級アルコールを含むものとすることが好ましい。
【0028】
また、本発明では、少なくとも、(1)基板上にフォトレジスト膜を形成する工程と、(2)該フォトレジスト膜の上に、前記レジスト保護膜材料を用いてレジスト保護膜を形成する工程と、(3)露光する工程と、(4)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0029】
このように、本発明のレジスト保護膜材料を用いてフォトレジスト膜の上にレジスト保護膜を形成してパターン形成を行うと、現像欠陥が少なく、現像後のレジストパターン形状が良好なリソグラフィー(特には液浸リソグラフィー)を実現することが出来る。
【0030】
また、前記(3)露光工程を、投影レンズと前記基板との間に液体を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する液浸リソグラフィーにより行うことが好ましい。また、前記(3)露光工程において、前記投影レンズと前記基板の間に挿入する液体を水とすることが好ましい。
【0031】
このように、露光工程において、レジスト保護膜と投影レンズとの間に液体を挿入して行う液浸(Immersion)露光が好ましい。このように、露光工程を、液浸リソグラフィーにより行うことで、本発明のレジスト保護膜材料が有効に作用し、より微細なレジストパターンをフォトレジスト膜に形成することができる。また、挿入する液体としては、水が好ましく用いられる。
【0032】
また、前記(3)露光工程において、露光光源として波長180〜250nmの範囲の高エネルギー線を用いることが好ましい。
【0033】
(3)露光工程の露光光源としては、特に液浸露光の場合、波長180〜250nmの範囲の高エネルギー線を用いることが好ましい。
【0034】
また、前記(4)現像工程において、アルカリ現像液を用いて現像し、前記フォトレジスト膜にレジストパターンを形成すると同時に、フォトレジスト膜上のレジスト保護膜の剥離を行うことが好ましい。
【0035】
このように、(4)現像工程において、アルカリ現像液を用いて現像し、フォトレジスト膜にレジストパターンを形成すると同時に、フォトレジスト膜上のレジスト保護膜の剥離を行うようにすれば、従来装置に剥離装置を増設することなく、より簡便にレジスト保護膜の剥離を行うことができる。
【0036】
また、本発明では、マスクブランクスに形成したフォトレジスト層上にレジスト保護膜材料によるレジスト保護膜を形成後、真空中電子ビームで露光を行った後、現像を行うリソグラフィーによるパターン形成方法において、前記レジスト保護膜材料として、前記レジスト保護膜材料を用いることを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0037】
このように、マスクブランクスに形成したフォトレジスト層上にレジスト保護膜材料による保護膜を形成し、真空中電子ビームで露光を行った後、現像を行うリソグラフィーによるパターン形成方法において、前記レジスト保護膜材料として本発明のレジスト保護膜材料を適用することによって、露光後の真空装置における安定性を向上させることができるため、本発明が有用である。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、含フッ素環状ヘミアセタール又は含フッ素アルコールを保護した構造を有する繰り返し単位((1b−1)又は(1b−2))を有するレジスト保護膜材料が提供される。このレジスト保護膜材料は波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、樹脂の構造の選択により撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性など各種性能の調整が可能であり、かつ入手及び取り扱いが容易な原料からの製造が可能である。また、本発明のレジスト保護膜材料は後退接触角が高いためにレジスト成分の溶出が抑えられる上、現像欠陥が少なく、現像後のレジストパターン形状が良好な液浸リソグラフィーを実現することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0039】
前述のように、撥水性と滑水性に優れ、現像欠陥が少なく、現像後のレジストパターン形状が良好なレジスト保護膜材料が求められていた。
【0040】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、含フッ素環状ヘミアセタールを保護した構造(下記一般式(1b−1))又は含フッ素アルコールを保護した構造(下記一般式(1b−2))を有する高分子化合物がレジスト保護膜材料用の樹脂として優れた撥水性と滑水性を有することを見出した。さらに、アルカリ溶解性の含フッ素アルコールを含む繰り返し単位(下記一般式(1a)、下記一般式(1a)’)及びスルホ基を含む繰り返し単位(下記一般式(1c)、下記一般式(1c)’)を組み合わせることにより、現像欠陥が少なく、パターン形状に優れるレジスト保護膜材料用のベースポリマーが得られることを見出し、本発明を完成させたものである。以下、本発明のレジスト保護膜材料についてより具体的に説明する。
【0041】
高分子化合物(P1−1)及び(P1−2)の構造
本発明のレジスト保護膜材料に用いる高分子化合物(P1−1)は、下記一般式(1a)、(1b−1)、(1c)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする。また、本発明のレジスト保護膜材料に用いる高分子化合物(P1−2)は、下記一般式(1a)’、(1b−2)、(1c)’で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする。
【0042】
【化3】

(式中、R1a〜R1cは水素原子又はメチル基である。Rは上記一般式(X)、(Y)、及び(Z)で表される基のいずれかを示し、一般式(X)、(Y)、(Z)中のR4a、R4b、R5a、R5bのいずれかを介して繰り返し単位(1b−1)の−(C=O)−O−結合に連結し、このとき−(C=O)−O−結合に連結するR4a、R4b、R5a、R5bは、単結合又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基を示す。繰り返し単位(1b−1)の−(C=O)−O−結合に連結しないR4a、R4b、R5a、R5bは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、及び炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状の一価の有機基のいずれかを表し、R4a、R4b、R5a、R5bのうち2個が互いに結合して環状構造を形成しても良い。R、R、Rは炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていても良く、また、メチレン基の一部が酸素原子、又はカルボニル基で置換されていてもよい。Rは水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基であり、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、また、メチレン基の一部が酸素原子、またはカルボニル基で置換されていてもよい。RとRは結合して環状構造を形成してもよい。R3aは単結合、−C(=O)−O−、及び−C(=O)−NH−のいずれかである。R3bは単結合、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基である。高分子化合物(P1−1)において、一般式(1a)、(1b−1)、及び(1c)の単位に対応するモノマーの総モル数をU11、U12、U13とし、高分子化合物(P1−1)に含まれる全繰り返し単位に対応するモノマーの総モル数をU1とした場合、0<U11/U1<1、0<U12/U1<1、0<U13/U1<1、0<(U11+U12+U13)/U1≦1である。)
【0043】
【化4】

(式中、R1a’〜R1c’は水素原子又はメチル基である。R10a及びR10bは、水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状の一価炭化水素基であり、R10a及びR10bは互いに結合して炭素数3〜8の非芳香環を形成してもよい。R11は単結合又はメチレン基である。R12は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状の一価炭化水素基、フッ素化一価炭化水素基、及び酸不安定基のいずれかを示し、一価炭化水素基の場合、構成する−CH−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。R3a’は単結合、−C(=O)−O−、及び−C(=O)−NH−のいずれかである。R3b’は単結合、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基である。高分子化合物(P1−2)において、一般式(1a)’、(1b−2)、(1c)’の単位に対応するモノマーの総モル数をU11’、U12’、U13’とし、高分子化合物(P1−2)に含まれる全繰り返し単位に対応するモノマーの総モル数をU1’とした場合、0<U11’/U1’<1、0<U12’/U1’<1、0<U13’/U1’<1、0<(U11’+U12’+U13’)/U1’≦1である。)
【0044】
一般式(1b−1)において、Rは一般式(X)、(Y)、(Z)で表される構造を示し、一般式(X)、(Y)、(Z)はR4a、R4b、R5a、R5bのいずれかを介して繰り返し単位(1b−1)の−(C=O)−O−結合に連結する。
【0045】
一般式(X)、(Y)、(Z)において、R4a、R4b、R5a、R5bの炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルブチル基、メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、アダマンチルブチル基、メチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルブチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基等のアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基等のアシロキシ基を挙げることができる。また、これらの基において水素原子の一部がハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アルコキシアルキル基、アシロキシ基、アシロキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基等に置換されていてもよい。R4a、R4b、R5a、R5bとしては、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、パーフルオロアルキル基が特に好ましい。
また、−(C=O)−O−結合に連結するR4a、R4b、R5a、R5bは、単結合又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基を示すが、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基としては、上記例示中の炭素数1〜15のアルキル基から水素原子を1個除いたもの等が例示できる。
【0046】
4a、R4b、R5a、R5bは任意の組み合せで少なくともそのうち2個が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環状構造を形成してもよい。環を形成する組み合せの典型的な例としては、R4aとR4b、R4aとR5a、R4aとR5b、R4bとR5a、R4bとR5b、R5aとR5bが挙げられる。この場合、形成される環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、アダマンタン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン等の炭素数3〜12の脂環式炭化水素が例示でき、これらを含む縮合環でもよい。また、これらの脂環式炭化水素において水素原子の一部が水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アルコキシアルキル基、アシロキシ基、アシロキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基等に置換されていてもよい。
【0047】
一般式(X)において、Rの炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、イコサニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(ヘキサフルオロイソプロポキシ)エチル基、2−アセトキシエチル基、アセトニル基を例示できる。
【0048】
一般式(Y)において、Rの炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1−メチル−2,2,2−トリフルオロエチル基、2−メトキシエチル基、2−(ヘキサフルオロイソプロポキシ)エチル基、2−アセトキシエチル基、アセトニル基を例示できる。
【0049】
一般式(Z)において、Rの炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1−メチル−2,2,2−トリフルオロエチル基、2−メトキシエチル基、2−(ヘキサフルオロイソプロポキシ)エチル基、2−アセトキシエチル基、アセトニル基を例示できる。
【0050】
一般式(Z)において、Rの炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルブチル基、メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、アダマンチルブチル基、メチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルブチル基、メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1−メチル−2,2,2−トリフルオロエチル基、2−メトキシエチル基、2−(ヘキサフルオロイソプロポキシ)エチル基、2−アセトキシエチル基、2−(1−アダマンチルカルボニルオキシ)エチル基、アセトニル基を例示することができる。
【0051】
一般式(Z)において、RとRは結合してこれらが結合する炭素原子及び酸素原子と共に環状構造を形成してもよく、その場合、その結合により形成される環状構造として、具体的にはテトラヒドロフラン環、メチルテトラヒドロフラン環、メトキシテトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、メチルテトラヒドロピラン環、メトキシテトラヒドロピラン環、1,4−ジオキサン環を例示できる。
【0052】
一般式(X)、(Y)、(Z)において、R〜Rとして最適な構造を選択することにより、樹脂の酸/アルカリ分解性、撥水性、脂溶性等の諸特性を要求性能に応じて調整することができる。
【0053】
一般式(1b−2)において、R10a、R10b、R12の炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、アダマンチル基等が用いられる。
【0054】
一般式(1b−2)において、R10aとR10bは互いに結合して炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできるが、その場合、これらの基はアルキレン基であり、上記で例示した一価炭化水素基中の1個の水素原子を引き抜いた形式のものが用いられ、該環の具体例としては、シクロペンチレン基やシクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0055】
一般式(1b−2)において、R12の炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化一価炭化水素基の具体例としては、上記の一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換した形式のものが用いられ、具体例としてはトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基などが例示できる。
【0056】
一般式(1b−2)において、R12は酸不安定基を用いることが出来る。酸不安定基としては種々のものを用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0057】
【化5】

(一般式中、RL01及びRL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。RL03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。RL04は炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示す。RL05は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。RL06は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基である。RL07〜RL16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の非置換又は置換炭化水素基を示す。yは0〜6の整数である。mは0又は1、nは0〜3の整数であり、2m+n=2又は3である。なお、破線は結合手を示す。)
【0058】
式(L1)において、RL01及びRL02の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。
【0059】
L03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記RL01、RL02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【化6】

【0060】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するRL01、RL02、RL03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0061】
式(L2)において、RL04の三級アルキル基の具体例としては、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示できる。また、トリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基の具体例としては、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。
【0062】
式(L3)において、RL05の炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換されたもの等が例示できる。また、炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。
【0063】
式(L4)において、RL06の炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基の具体例としては、RL05と同様のもの等が例示できる。
【0064】
L07〜RL16において、炭素数1〜15の一価の炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。
【0065】
L07〜RL16は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、RL07とRL08、RL07とRL09、RL08とRL10、RL09とRL10、RL11とRL12、RL13とRL14等)、その場合には環の形成に関与する基は炭素数1〜15の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL07〜RL16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL07とRL09、RL09とRL15、RL13とRL15等)。
【0066】
一般式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化7】

【0067】
一般式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0068】
一般式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0069】
一般式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0070】
一般式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化8】

(式中、RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示す。破線は結合位置及び結合方向を示す。)
【0071】
一般式(L4−1)〜(L4−4)中、RL41の一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0072】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0073】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)と(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化9】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0074】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化10】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0075】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0076】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【化11】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0077】
一般式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化12】

【0078】
12の酸不安定基として用いられる炭素数4〜20の三級アルキル基の具体例としては、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示できる。また、トリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基の具体例としては、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。
【0079】
一般式(1c)、(1c)’において、R3b、R3b’の炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基の具体例としては、R4a、R4b、R5a、R5bで例示したアルキル基中の1個の水素原子を引き抜いた形式のものが用いられる。
【0080】
一般式(1b−1)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これに限定はされない。
【0081】
【化13】

【0082】
【化14】

(式中、R1bは前記と同様である。)
【0083】
一般式(1b−2)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これに限定はされない。
【化15】

(式中、R1b’は前記と同様である。)
【0084】
一般式(1c)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これに限定はされない。尚、一般式(1c)’の繰り返し単位としては、下記式中R1cをR1c’としたものが挙げられる。
【化16】

(R1c、R1c’は前記と同様である。)
【0085】
高分子化合物(P1−1)及び(P1−2)において、一般式(1a)及び(1a)’で表される繰り返し単位はアルカリ現像液に対する溶解性に寄与するとともに、撥水性や滑水性に優れた性能を発揮する。また、一般式(1b−1)及び(1b−2)で表される繰り返し単位は側鎖の炭素数、分岐度、フッ素数などの構造制御が容易であり、レジスト保護膜材料として必要な撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性に応じた高分子化合物の製造が可能である。さらに、これらの繰り返し単位に加えて、スルホ基を有する繰り返し単位(一般式(1c)及び(1c)’)を組み合わせることにより、現像欠陥が少なく、パターン形状に優れるレジスト保護膜材料用のベースポリマーを得ることが出来る。
【0086】
高分子化合物(P1−1)においては、必要に応じてアルカリ加水分解性を付与することが可能であり、その場合、一般式(Y)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。ヘミアセタール水酸基はアルコール水酸基に比べて酸性度が高いが、一般式(Y)中のエステル結合は、隣接炭素に5つのフッ素原子が結合することによりさらに酸性度が高くなったヘミアセタール水酸基とカルボン酸とのエステル、いわば混合酸無水物であるため、通常のアルコールとカルボン酸のエステルに比べて、大幅にアルカリ加水分解を受け易くなっており、例えばアルカリ現像液等により容易に加水分解されるものと考えられる。
【0087】
また、高分子化合物(P1−1)においては、必要に応じて酸分解性を付与することが可能であり、その場合、一般式(Z)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。一般式(Z)中には酸に不安定なアセタール構造(−O−CH(R)−OR)が存在し、例えば酸発生剤由来の酸が近傍に存在すれば、容易に分解するものと考えられる。
【0088】
高分子化合物(P1−2)についても、必要に応じてアルカリ加水分解性を付与することが出来る。フッ素を含むアルコール水酸基は通常のアルコール水酸基に比べて酸性度が高いため、一般式(1b−2)で表される繰り返し単位中のR12が−C(=O)−Rの構造を有するものは、酸性度が高くなったアルコール水酸基とカルボン酸とのエステル、いわば混合酸無水物の形式になっている。そのため、通常のアルコールとカルボン酸のエステルに比べて大幅にアルカリ加水分解を受け易くなっており、例えばアルカリ現像液等により容易に加水分解されるものと考えられる。
【0089】
また、高分子化合物(P1−2)においては、必要に応じて酸分解性を付与することが可能である。例えば、一般式(1b−2)で表される繰り返し単位中のR12が酸に不安定なアセタール構造を有している場合、酸発生剤由来の酸により容易に分解するものと考えられる。
【0090】
高分子化合物(P1−1)において、一般式(Y)中のエステル結合が加水分解された場合、あるいは一般式(Z)中のアセタール構造が分解した場合、親水性の高いヘミアセタール構造を生じるため、ポリマー表面の接触角、特に現像後の接触角が低下し、ブロブ欠陥の低減に寄与する。また、高分子化合物(P1−2)において、繰り返し単位(1b−2)の側鎖が酸又はアルカリにより分解し、含フッ素アルコール構造が生じるとアルカリ現像液に対する親和性が促進され、その結果、欠陥が低減する。
【0091】
高分子化合物(P1−1)においては一般式(1a)、(1b−1)、(1c)で表される繰り返し単位に加えて、高分子化合物(P1−2)においては、一般式(1a)’、(1b−2)、(1c)’で表される繰り返し単位に加えて、下記一般式(2a)〜(2i)の繰り返し単位の1つ又は2つ以上を共存させることにより、撥水性、滑水性、アルカリ溶解性、現像後接触角に更に優れたレジスト保護膜材料が実現する。
【化17】

(式中、R2a〜R2iは水素原子又はメチル基である。R21a及びR21bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基であり、R21aとR21bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。なお、一般式(2b)において、(R21a、R21b)=(水素原子、メチル基)の組み合わせは除外する。R22a、R22b、R22cは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基又はフッ素化一価炭化水素基であり、R22aとR22b、R22aとR22c、R22bとR22cは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R23aは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基である。R23bは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基であり、R23aとR23bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子及び酸素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R24及びR27は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化一価炭化水素基である。R25及びR26は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基又はフッ素化一価炭化水素基である。p1及びp2は0〜6の整数である。)
【0092】
21a、R21b、R22a〜R22c、R23a、R23b、R25、R26において、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、アダマンチル基等が用いられる。R21aとR21b、R22aとR22b、R22aとR22c、R22bとR22c、R23aとR23bは互いに結合して炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできるが、その場合、これらの基はアルキレン基であり、上記で例示した一価炭化水素基中の1個の水素原子を引き抜いた形式のものが用いられ、該環の具体例としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0093】
22a〜R22c及びR24〜R27において、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化一価炭化水素基の具体例としては、上記の一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換した形式のものが用いられ、具体例としてはトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基などが例示できる。
【0094】
一般式(2a)〜(2i)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これに限定はされない。
【化18】

(式中、R2a〜R2iは前述と同様である。)
【0095】
本発明の高分子化合物(P1−1)は一般式(1a)、(1b−1)、(1c)、高分子化合物(P1−2)は一般式(1a)’、(1b−2)、(1c)’に加えて、(2a)〜(2i)で表される繰り返し単位の組み合わせだけでも十分な性能を発揮できるが、更なる撥水性や滑水性の付与、アルカリ溶解性や現像液親和性のコントロールのため、更に下記一般式(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)で表される繰り返し単位のいずれか1種又は2種以上を組み合わせて構成することも可能である。
【0096】
【化19】

(式中、R31及びR41は炭素数1〜15の一価炭化水素基又はフッ素化一価炭化水素基である。R32及びR42は密着性基である。R33及びR43は酸不安定基である。R34及びR44は単結合又は炭素数1〜15の2価の有機基である。R45a〜R45eは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。)
【0097】
31及びR41の炭素数1〜15の一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、アダマンチル基等が用いられ、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化一価炭化水素基の具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基などが例示できる。
【0098】
32及びR42の密着性基としては種々選定されるが、特に下記式で例示される基等であることが好ましい。
【0099】
【化20】

【0100】
【化21】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0101】
33及びR43の酸不安定基としては、上述したものと同様のものが用いられる。
【0102】
34及びR44の炭素数1〜15の二価の有機基としては、既述した一価炭化水素基中の1個の水素原子を引き抜いた形式のもの(例えば、メチレン基やエチレン基)が用いられる他、下記式で例示される基等も用いることができる。
【0103】
【化22】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0104】
本発明の高分子化合物(P1−1)において、一般式(1c)で表される繰り返し単位は、下記式のように、スルホ基の一部が塩基性化合物で中和された形式の繰り返し単位(1c)の形で存在することも可能である。同様に、高分子化合物(P1−2)においても、一般式(1c)’で表される繰り返し単位は、スルホ基の一部が塩基性化合物で中和された形式の繰り返し単位の形で存在する((1c)’)ことも可能である。
【化23】

(式中、R1c、R3a、R3bは前述の通りである。R13a〜R13dはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基、又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基である。R13a〜R13dは水素原子の一部又は全部がアルコキシ基によって置換されていても良く、窒素原子、エーテル基、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含むことも出来る。R13aとR13b、R13aとR13bとR13cは互いに結合して炭素数5〜10の環を形成することが出来るが、その場合、R13aとR13b、R13aとR13bとR13cはそれぞれアルキレン基であり、環内に窒素原子を含むことも出来る。)
【0105】
一般式(1c)において、R13a〜R13dにより形成されるアンモニウム塩(カチオン部)は対応するアミン化合物の中和反応により得られる。この場合、アミン化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が用いられ、具体的には特開2008−111103号公報の段落(0146)〜(0164)段落に記載のものが用いられる。
【0106】
一般式(1c)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これらに限定はされない。
【化24】

(式中、R1c、R13a〜R13dは前記と同様である。)
【0107】
本発明のレジスト保護膜材料は、高分子化合物(P1−1)又は(P1−2)単独でも十分な性能を発揮できる。しかし、更なる撥水性や滑水性の付与、アルカリ溶解性や現像液親和性のコントロールのため、高分子化合物(P1−1)又は(P1−2)に加え、下記一般式(i)〜(iv)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(P2)をブレンドして用いることが出来る。
【化25】

(式中、Rb1a〜Rb1cは水素原子又はメチル基である。Rbは単結合、炭素数1〜4のアルキレン基、フェニレン基、−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−のいずれかである。Rbは単結合、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基のいずれかである。Rb4a〜Rb4d及びRb6a〜Rb6cはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基のいずれかを示し、これらのうち水素原子の一部又は全部がアルコキシ基によって置換されていてもよく、Rb4a〜Rb4d及びRb6a〜Rb6cの中に窒素原子、エーテル基、エステル基、ヒドロキシ基、又はカルボキシル基を含んでいてもよい。Rb4a〜Rb4dのいずれか2つ、又は、R、Rb6a〜Rb6cのいずれか2つは互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成することができ、その場合それぞれ独立に炭素数3〜15のアルキレン基、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を示す。Rbは炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示す。Rbはカルボニル基、エステル基、エーテル基、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は、カルボニル基、エステル基、エーテル基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜15のアルキル基もしくはフッ素化アルキル基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基を示す。Rb8a及びRb8bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、Rb8a及びRb8bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成することもできる。)
【0108】
Rbの炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のうち、1個の水素原子を引き抜いた形式のものが用いられる。
【0109】
Rb及びRbの炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基のうち、1個の水素原子を引き抜いた形式のものが用いられる。
【0110】
一般式(ii)において、Rb4a〜Rb4dにより形成されるアンモニウム塩(カチオン部)は対応するアミン化合物の中和反応により得られる。この場合、アミン化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が用いられ、具体的には特開2008−111103号公報の段落(0146)〜(0164)に記載のものが用いられる。
【0111】
Rb6a〜Rb6cとRbについては、一般式(iii)の具体例中で詳述する。
【0112】
Rb8a及びRb8bの炭素数1〜15のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、アダマンチル基等が用いられる。
【0113】
一般式(i)の繰り返し単位の具体例としては、下記のものを例示することができるが、これらに限定はされない。
【化26】

(式中、Rb1aは前記と同様である。)
【0114】
一般式(ii)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これらに限定はされない。
【化27】

(式中、R1a、R4a〜R4dは前記と同様である。)
【0115】
一般式(iii)の繰り返し単位のカチオン部分の具体例としては、下記のものを例示することができる。
【0116】
【化28】

【0117】
【化29】

(式中、Rb1bは前記と同様である。)
【0118】
一般式(iii)の繰り返し単位は、上述のカチオン部分とスルホン酸イオンの塩により構成される。スルホン酸塩の具体例としては、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート、キシレンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p−t−ブチルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アントラセンスルホン酸、ピレンスルホン酸等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート、オクタンスルホン酸、カンファースルホン酸、アダマンタンスルホン酸、ノルボルナンスルホン酸、シクロヘキシルスルホン酸、シクロペンタンスルホン酸、シクロブタンスルホン酸、シクロプロパンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルスルホネートを挙げることができる。
【0119】
一般式(iv)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これらに限定はされない。
【化30】

(式中、R1cは前記と同様である。)
【0120】
本発明のレジスト保護膜材料に用いることができる高分子化合物(P2)は、一般式(i)〜(iv)で表される繰り返し単位の組み合わせだけでも十分な性能を発揮できるが、更なる撥水性や滑水性の付与、アルカリ溶解性や現像液親和性のコントロールのため、先述の一般式(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)で表される繰り返し単位の1つ又は2つ以上を組み合わせて構成することも可能である。
【0121】
重合性単量体化合物の合成・入手
高分子化合物(P1−1)及び(P1−2)を合成する場合、一般式(1a)〜(1c)、(2a)〜(2i)、(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーを用い、高分子化合物(P1−2)を合成する場合、一般式(1a)’〜(1c)’、(2a)〜(2i)、(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーを用いて重合を行う。同様に、高分子化合物(P2)を合成する場合、一般式(i)〜(iv)、(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーを用いて重合する。一般式(1a)〜(1c)、(1a)’〜(1c)’、(2a)〜(2i)、(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)、(i)〜(iv)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーは公知文献(例えば、特願2008−279212、特開2007−204385号公報、特開2009−29974号公報、特開2007−182488号公報、特開2006−152255号公報、特願2009−290054等参照)などに記載の方法で合成することができる他、市販されているものを使用することも出来る。
【0122】
高分子化合物の合成
高分子化合物(P1−1)、(P1−2)、(P2)を合成する場合、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記)等の開始剤を用いるラジカル重合、アルキルリチウム等を用いるイオン重合(アニオン重合)等の一般的重合手法を用いることが可能であり、これらの重合はその常法に従って実施することができる。このうち、高分子化合物(P1−1)、(P1−2)、(P2)の合成はラジカル重合により製造を行うことが好ましい。この場合、重合条件は開始剤の種類と添加量、温度、圧力、濃度、溶媒、添加物等によって支配される。
【0123】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてAIBN、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物、tert−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート等の過酸化物系化合物、過硫酸カリウムのような水溶性重合開始剤、更には過硫酸カリウムや過酸化水素等の過酸化物と亜硫酸ナトリウムのような還元剤の組み合わせからなるレドックス系開始剤等が例示される。重合開始剤の使用量は種類や重合条件等に応じて適宜変更可能であるが、通常は重合させるべき単量体全量に対して0.001〜10モル%、特に0.01〜6モル%が採用される。
【0124】
高分子化合物(P1−1)、(P1−2)、(P2)を合成する場合、分子量の調整のためにドデシルメルカプタンや2−メルカプトエタノールのような公知の連鎖移動剤を併用してもよい。その場合、これらの連鎖移動剤の添加量は重合させる単量体の総モル数に対して0.01〜10モル%であることが好ましい。
【0125】
高分子化合物(P1−1)を合成する場合、一般式(1a)、(1b−1)、(1c)、(2a)〜(2i)、(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーを混合し、上述の開始剤や連鎖移動剤を添加して重合を行う。
【0126】
高分子化合物(P1−1)において、
一般式(1a)の単位に対応するモノマーの総モル数をU11、
一般式(1b−1)の単位に対応するモノマーの総モル数をU12、
一般式(1c)((1c)を含む)の単位に対応するモノマーの総モル数をU13とし、高分子化合物(P1−1)に含まれる全繰り返し単位に対応するモノマーの総モル数をU1とした場合、
0<U11/U1<1、より好ましくは0.5≦U11/U1≦0.95、
0<U12/U1<1、より好ましくは0.05≦U12/U1≦0.5、
0<U13/U1<1、より好ましくは0.01≦U13/U1≦0.3、
0<(U11+U12+U13)/U1≦1、より好ましくは0.6≦(U11+U12+U13)/U1≦1
である。さらに、
一般式(2a)〜(2i)の単位に対応するモノマーの総モル数をU14、
一般式(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)の単位に対応するモノマーの総モル数をU15、
U0=U11+U12+U13+U14+U15
とした場合、
0<(U11+U12+U13)/U0≦1、より好ましくは0.6≦(U11+U12+U13)/U0≦1
0≦U14/U0<1、より好ましくは0≦U14/U0≦0.2
0≦U15/U0<1、より好ましくは0≦U15/U0≦0.2
である。
【0127】
同様に高分子化合物(P1−2)を合成する場合、一般式(1a)’、(1b−2)、(1c)’、(2a)〜(2i)、(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーを混合し、上述の開始剤や連鎖移動剤を添加して重合を行う。
【0128】
高分子化合物(P1−2)において、
一般式(1a)’の単位に対応するモノマーの総モル数をU11’、
一般式(1b−2)の単位に対応するモノマーの総モル数をU12’、
一般式(1c)’((1c)’を含む)の単位に対応するモノマーの総モル数をU13’とし、
高分子化合物(P1−2)に含まれる全繰り返し単位に対応するモノマーの総モル数をU1’とした場合とした場合、
0<U11’/U1’<1、より好ましくは0.5≦U11’/U1’≦0.95、
0<U12’/U1’<1、より好ましくは0.05≦U12’/U1’≦0.5、
0<U13’/U1’<1、より好ましくは0.01≦U13’/U1’≦0.3、
0<(U11’+U12’+U13’)/U1’≦1、より好ましくは0.6≦(U11’+U12’+U13’)/U1’≦1
である。さらに、
一般式(2a)〜(2i)の単位に対応するモノマーの総モル数をU14’、
一般式(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)の単位に対応するモノマーの総モル数をU15’、
U0’=U11’+U12’+U13’+U14’+U15’
とした場合、
0<(U11’+U12’+U13’)/U0’≦1、より好ましくは0.6≦(U11’+U12’+U13’)/U0’≦1
0≦U14’/U0’<1、より好ましくは0≦U14’/U0’≦0.2
0≦U15’/U0’<1、より好ましくは0≦U15’/U0’≦0.2
である。
【0129】
高分子化合物(P2)を合成する場合、一般式(i)〜(iv)、(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーを混合し、上述の開始剤や連鎖移動剤を添加して重合を行う。
【0130】
高分子化合物(P2)において、
一般式(i)及び(ii)の単位に対応するモノマーの総モル数をU21、
一般式(iii)の単位に対応するモノマーの総モル数をU22、
一般式(iv)の単位に対応するモノマーの総モル数をU23、
とし、U2=U21+U22+U23とした場合、
0≦U21/U2≦1、より好ましくは0≦U21/U2≦0.4、
0≦U22/U2≦1、より好ましくは0≦U22/U2≦0.4、
0<U23/U2<1、より好ましくは0.5≦U23/U2<1、
である。さらに、
一般式(2a)〜(2i)の単位に対応するモノマーの総モル数をU24、
一般式(3a)〜(3e)、(4a)〜(4e)、(5a)〜(5c)の単位に対応するモノマーの総モル数をU25、
U=U21+U22+U23+U24+U25
とした場合、
0<(U21+U22+U23)/U≦1、より好ましくは0.6≦(U21+U22+U23)/U≦1
0≦U24/U<1、より好ましくは0≦U24/U≦0.3
0≦U25/U<1、より好ましくは0≦U25/U≦0.2
である。
【0131】
重合を行う際には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては重合反応を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤が使用できる。これらの溶剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。重合溶媒の使用量は、目標となる重合度(分子量)、開始剤の添加量、重合温度等の重合条件に応じて適宜変更可能であり、通常は重合させる単量体の濃度が0.1〜95質量%、特に5〜90質量%になるように溶媒を添加する。
【0132】
重合反応の反応温度は、重合開始剤の種類あるいは溶媒の沸点により適宜変更されるが、通常は20〜200℃が好ましく、特に50〜140℃が好ましい。かかる重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。
【0133】
このようにして得られた重合体の溶液又は分散液から、媒質である有機溶媒又は水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈澱濾過又は減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0134】
高分子化合物(P1−1)、(P1−2)、(P2)の場合、重量平均分子量(Mw)が小さすぎるとレジスト材料とのミキシングや水への溶解が起こり易くなる。また、重量平均分子量が大きすぎるとスピンコート後の成膜性に問題が生じたり、アルカリ溶解性が低下したりすることがある。その観点から、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量において1,000〜500,000である。好ましくは2,000〜30,000である。
【0135】
高分子化合物(P1−1)、(P1−2)、(P2)において、一般式(1b−2)のR12、一般式(3c)のR33、一般式(4c)のR43については、後保護化反応により導入することも可能である。即ち、予めR12、R33、R43が水素のモノマーを重合して高分子化合物を合成後、下式に示すような後保護化反応により得られたポリマーの水酸基の一部又は全部をR12、R33、R43で置換する。
【化31】

(式中、RはR12、R33、R43を表す。Xは塩素、臭素、ヨウ素である。)
【0136】
後保護化反応では、水酸基の置換率目標値に対し1〜2当量の塩基を高分子化合物と反応させた後、塩基に対し1〜2当量のR−Xと反応させることにより、目的の後保護化高分子化合物を得ることができる。
【0137】
後保護化反応の際に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類から選択して単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。また、塩基としては、水素化ナトリウム、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0138】
高分子化合物(P1−1)、(P1−2)、(P2)において、一般式(1c)及び一般式(ii)の繰り返し単位中のアンモニウム塩はスルホ基と対応するアミンとの中和反応、又は下記一般式で表されるアンモニウム塩とのイオン交換反応によって得ることができる。
【化32】

(式中、R13a〜R13d及びRb4a〜Rb4dは前記と同様であり、LはOH、Cl、Br、I、RbCO、NOである。Rb9は水素原子又は一価の有機基を示す。)
【0139】
高分子化合物(P1−1)、(P1−2)、(P2)に一般式(1c)及び一般式(ii)の繰り返し単位を導入する場合、上述の中和反応やイオン交換反応はモノマーの段階で行うこともできるし、ポリマー合成後に実施することも可能である。ただし、ポリマー合成後に上記反応を行う場合、添加するアミン量が少ないとポリマーユニット内で均一にアミン塩が形成されず、それが原因でパターン形成時に局所的なブリッジ欠陥が発生することもある。このようなことを避けるため、モノマーの状態で中和反応もしくはイオン交換反応を行い、スルホン酸アミン塩が均一に分布したモノマーを用いて重合することが好ましい。
【0140】
高分子化合物(P2)に一般式(iii)の繰り返し単位を導入する場合、三級以下のアンモニウム塩を含むものについては、側鎖にアミノ基を有する(メタ)アクリレートと対応するスルホン酸との中和反応によって得ることができる。また、四級アンモニウム塩を含むものについては、上述と同様のイオン交換反応によって得ることができる。一般式(ii)の繰り返し単位の場合と同様、上述の中和反応やイオン交換反応はモノマーの段階でもポリマー合成後でも行うことができる
【0141】
高分子化合物(P2)の一般式(ii)の繰り返し単位において、ポリマー全体におけるスルホ基とアミン化合物の中和量については、アミン当量が少なくスルホン酸残基があってもよいし、その逆でアミン過剰になっていてもよい。スルホン酸残基がある場合、フォトレジストと組み合わせたときに現像後のレジストパターン間のブリッジを防ぐ効果があるのに対し、アミンが過剰な場合、レジストパターンの矩形性を向上させる効果がある。このようなことを踏まえ、スルホ基とアミンの量については現像後のレジストパターンを観察しながら適宜調整することができる。一般式(iii)の繰り返し単位においても同様のことが言える。
【0142】
レジスト保護膜材料の調製
本発明のレジスト保護膜材料において、高分子化合物(P1−1)及び(P1−2)中の一般式(1a)、(1a)’で表される繰り返し単位はアルカリ現像液に対する溶解性を示す上に撥水性や滑水性に優れた性能を発揮する。また、一般式(1b−1)及び一般式(1b−2)で表される繰り返し単位は一般式(X)、(Y)、(Z)などの側鎖の構造制御を行うことによりレジスト保護膜材料として必要な撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性を調整することが出来る。さらに、高分子化合物(P1−1)及び(P1−2)では一般式(1c)、(1c)’で表される繰り返し単位を組み合わせることにより、現像欠陥が少なく、パターン形状に優れるレジスト保護膜材料が実現する。
【0143】
高分子化合物(P1−1)及び(P1−2)は単独でもレジスト保護膜材料として優れた性能を発揮するが、上述したように、高分子化合物(P2)とブレンドして用いることも出来る。高分子化合物(P2)が繰り返し単位中に親水性のスルホン酸アミン塩を含む場合には、高分子化合物(P1−1)又は(P1−2)と(P2)を混合して用いると、両者はスピンコート時に層分離を起こし、保護膜上層に撥水性と滑水性に優れる高分子化合物(P1−1)又は(P1−2)、レジスト膜の上部(保護膜下層)に親水性の高分子化合物(P2)が局在化する。その結果、現像後のレジスト表面が親水性になり、ブロブ欠陥を抑えることができる。
【0144】
保護膜材料としてスルホ基だけを有するポリマーを用いた場合、レジスト膜中のクエンチャーの一部は保護膜層へ移動する。クエンチャーの移動が起こるとレジスト最表面のクエンチャー濃度が低下し、それに伴い現像後のレジストパターンが膜減りしてしまい、結果的にエッチング耐性が低下する恐れがある。これに対し、高分子化合物(P2)は保護膜層にスルホン酸アミン塩が存在しているため、上述のようなクエンチャーの移動が起こらず、矩形なレジストパターンを得ることが可能になる。
【0145】
高分子化合物(P1−1)又は(P1−2)と高分子化合物(P2)をブレンドして用いる場合、その混合比率は任意であり、樹脂全体に対する高分子化合物(P1−1)又は(P1−2)の質量比は5〜95%、好ましくは20〜93%、より好ましくは30〜90%の範囲とすることができる。
【0146】
本発明のレジスト保護膜材料では、高分子化合物(P1−1)、又は(P1−2)に加え、(P2)を好ましく使用することができるが、膜の力学物性、熱的物性、アルカリ可溶性、撥水性能、滑水性能、その他の物性を変える目的で他の高分子化合物を混合することもできる。その際、混合する高分子化合物の範囲は特に限定されないが、レジスト保護膜用途の公知の高分子化合物等と任意の範囲で混合することができる。
【0147】
本発明のレジスト保護膜材料は、上記高分子化合物を溶媒に溶解させて用いることが好ましい。この場合、スピンコーティング法による成膜性の点から、上記高分子化合物の濃度が0.1〜20質量%、特に0.5〜10質量%となるように溶媒を使用することが好ましい。
【0148】
用いられる溶媒としては特に限定されないが、レジスト層を溶解させない溶媒が好ましく用いられる。レジスト層を溶解しない溶媒としては、例えば、炭素数4以上の高級アルコール、トルエン、キシレン、アニソール、ヘキサン、シクロヘキサン、デカン、エーテル化合物などの非極性溶媒等を挙げることができる。特に炭素数4以上の高級アルコールや炭素数8〜12のエーテル化合物が好ましく用いられ、具体的には、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−secブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−t−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
一方、フッ素系の溶媒もレジスト層を溶解しないので好ましく用いることができる。このようなフッ素置換された溶媒を例示すると、2−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、4−フルオロアニソール、2,3−ジフルオロアニソール、2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、5,8−ジフルオロ−1,4−ベンゾジオキサン、2,3−ジフルオロベンジルアルコール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、2’,4’−ジフルオロプロピオフェノン、2,4−ジフルオロトルエン、トリフルオロアセトアルデヒドエチルヘミアセタール、トリフルオロアセトアミド、トリフルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエチルブチレート、エチルヘプタフルオロブチレート、エチルヘプタフルオロブチルアセテート、エチルヘキサフルオログルタリルメチル、エチル−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリフルオロブチレート、エチル−2−メチル−4,4,4−トリフルオロアセトアセテート、エチルペンタフルオロベンゾエート、エチルペンタフルオロプロピオネート、エチルペンタフルオロプロピニルアセテート、エチルパーフルオロオクタノエート、エチル−4,4,4−トリフルオロアセトアセテート、エチル−4,4,4−トリフルオロブチレート、エチル−4,4,4−トリフルオロクロトネート、エチルトリフルオロスルホネート、エチル−3−(トリフルオロメチル)ブチレート、エチルトリフルオロピルベート、S−エチルトリフルオロアセテート、フルオロシクロヘキサン、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノール、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−7,7−ジメチル−4,6−オクタンジオン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタフルオロペンタン−2,4−ジオン、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−2−ペンタノール、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−2−ペンタノン、イソプロピル4,4,4−トリフルオロアセトアセテート、メチルパーフルオロデナノエート、メチルパーフルオロ(2−メチル−3−オキサヘキサノエート)、メチルパーフルオロノナノエート、メチルパーフルオロオクタノエート、メチル−2,3,3,3−テトラフルオロプロピオネート、メチルトリフルオロアセトアセテート、1,1,1,2,2,6,6,6−オクタフルオロ−2,4−ヘキサンジオン、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−デカノール、パーフルオロ(2,5−ジメチル−3,6−ジオキサンアニオニック)酸メチルエステル、2H−パーフルオロ−5−メチル−3,6−ジオキサノナン、1H,1H,2H,3H,3H−パーフルオロノナン−1,2−ジオール、1H,1H,9H−パーフルオロ−1−ノナノール、1H,1H−パーフルオロオクタノール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタノール、2H−パーフルオロ−5,8,11,14−テトラメチル−3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタデカン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリヘキシルアミン、パーフルオロ−2,5,8−トリメチル−3,6,9−トリオキサドデカン酸メチルエステル、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、1H,1H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデカン−1,2−ジオール、トリフルオロブタノール、1,1,1−トリフルオロ−5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、1,1,1−トリフルオロ−2−プロピルアセテート、パーフルオロブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロデカリン、パーフルオロ(1,2−ジメチルシクロヘキサン)、パーフルオロ(1,3−ジメチルシクロヘキサン)、プロピレングリコールトリフルオロメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルトリフルオロメチルアセテート、トリフルオロメチル酢酸ブチル、3−トリフルオロメトキシプロピオン酸メチル、パーフルオロシクロヘキサノン、プロピレングリコールトリフルオロメチルエーテル、トリフルオロ酢酸ブチル、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、2−トリフルオロメチル−2−プロパノール,2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、4,4,4−トリフルオロ−1−ブタノール等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
本発明のレジスト保護膜材料では、塩基性化合物を用いてパターン形状の補正などの性能改善を行うことができる。本発明のレジスト保護膜材料で用いる高分子化合物は繰り返し単位中に酸性水酸基を有するため、レジスト膜中のクエンチャーの一部が保護膜層に移動する可能性がある。上述の通り、クエンチャーの移動が起こるとレジスト最表面のクエンチャー濃度が低下し、現像後のレジストパターンが膜減りしてしまう。このようなクエンチャーの移動を避けるため、予め塩基性化合物をレジスト保護膜材料中に添加し、パターン形状の劣化を防ぐことができる。
【0151】
ここで、塩基性化合物としては含窒素有機化合物が好適であり、1種又は2種以上の含窒素有機化合物を配合して用いることができる。このような含窒素有機化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられ、その具体例としては、特開2008−111103号公報の段落(0149)〜(0163)に記載されている。塩基性化合物の使用量は、ベース樹脂100質量部に対して0.001〜2質量部、特に0.01〜1質量部が好適である。
【0152】
パターン形成方法
本発明におけるパターン形成方法では、少なくとも、基板上にフォトレジスト膜を形成する工程と、本発明のレジスト保護膜材料を用いて該フォトレジスト膜の上にレジスト保護膜を形成する工程と、露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことが好ましい。
【0153】
レジスト保護膜を形成する場合、プリベーク後のフォトレジスト膜上にレジスト保護膜材料溶液をスピンコートし、ホットプレート上で50〜150℃、1〜10分間、好ましくは70〜140℃、1〜5分間プリベークしてレジスト保護膜を形成する。膜厚は10〜500nmの範囲が好ましい。
【0154】
スピンコート時にレジスト膜表面を予め溶媒で濡らした後にレジスト保護膜を塗布すると、保護膜材料のディスペンス量を減らすことができる。その際、レジスト表面を濡らす方法としては回転塗布法やベーパープライム法が挙げられるが、回転塗布法が一般的に用いられ、使用する溶媒としては、前述のレジストを溶解させない高級アルコール、エーテル系、フッ素系溶媒の中から選択することができる。
【0155】
露光工程では、目的のパターンを形成するためのマスクを上記のフォトレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線、又は電子線等の高エネルギー線を露光量1〜200mJ/cm、好ましくは10〜100mJ/cmとなるように照射する。この際、レジスト保護膜と投影レンズの間に液体を挿入して行う液浸(Immersion)露光が好ましいが、特に限定されるものではなく、空気あるいは窒素雰囲気下でのドライ露光でもよいし、EB、EUVなどの真空中の露光でもよい。液浸露光の場合、180〜250nmの範囲の露光波長光源が好ましく、保護膜とレンズ間に挿入される液体として水が好ましく用いられる。
【0156】
液浸露光においては、ウエハー裏面への水の回り込みや基板からの溶出を防ぐため、ウエハーエッジや裏面のクリーニングの有無、更にはそのクリーニング方法が重要である。例えば、レジスト保護膜をスピンコート後に40〜130℃の範囲で10〜300秒間ベークすることによって溶媒を揮発させることがある。また、ドライ露光でレジスト膜形成時に行うエッジクリーニングは、親水性の基板面のエッジ部分に水が残る場合があるため、液浸露光では好ましくないことがある。そのため、レジスト保護膜のスピンコート時にはエッジクリーニングをしないこともある。
【0157】
露光後はホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行う。PEBを行う際、レジスト保護膜上に水が残っていると、PEB中に水が保護膜を通過する可能性がある。その結果、レジスト膜中の酸が吸い出され、パターン形成ができなくなる場合がある。このようなことを避けるため、PEB前に保護膜上の水を完全に除去する必要がある。その方法としては、スピンドライによる方法、乾燥空気や窒素による保護膜表面のパージによる方法、ステージ上の水回収ノズルの形状や水回収プロセスの最適化などが挙げられる。また、本発明の保護膜材料のような撥水性と滑水性に優れる材料を設計及び利用することも水の分離に有効である。
【0158】
PEBを行った後は、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、10〜300秒間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像を行う。アルカリ現像液は2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が一般的に広く用いられている。本発明のレジスト保護膜材料を用いる場合、保護膜材料自体がアルカリ溶解性を示すため、現像を行うと同時にレジスト保護膜の剥離も行うことができる。
【0159】
本発明のレジスト保護膜材料を用いたパターン形成方法においては、下層のフォトレジスト膜を形成するためのレジスト材料は特に限定されない。レジスト材料の種類はポジ型、ネガ型のいずれでもよい。また、通常の炭化水素系の単層レジスト材料でも、珪素原子などを含んだ二層(多層)レジスト材料でもよい。成膜方法としては、例えば、スピンコート法などが挙げられる。この時、フォトレジスト膜材料のスピンコーティングにおけるディスペンス量を削減するために、フォトレジスト溶媒あるいはフォトレジスト溶媒と混用する溶液で基板を塗らした状態でフォトレジスト膜材料をディスペンスしスピンコートするのが好ましい。
【0160】
KrF露光におけるレジスト材料は、ベース樹脂としてポリヒドロキシスチレン又はポリヒドロキシスチレン−(メタ)アクリレート共重合体の、ヒドロキシ基あるいはカルボキシル基の水素原子の一部又は全てが酸不安定基で置換された重合体が好ましく用いられる。
【0161】
ArF露光におけるレジスト材料は、ベース樹脂として芳香族を含まない構造が好ましく、具体的には(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、ノルボルネン誘導体と無水マレイン酸の交互共重合体、ノルボルネン誘導体、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、テトラシクロドデセン誘導体と無水マレイン酸の交互共重合体、テトラシクロドデセン誘導体、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、ノルボルネン誘導体とマレイミド誘導体の交互共重合体、ノルボルネン誘導体、マレイミド誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、テトラシクロドデセン誘導体とマレイミド誘導体の交互重合体、テトラシクロドデセン誘導体、マレイミド誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、ポリノルボルネン誘導体及びメタセシス開環重合体から選択される1種あるいは2種以上の高分子化合物が好ましく用いられる。
【0162】
繰り返し単位中に芳香環を含む材料は波長193nmに吸収を持つため、当初はArFレジスト材料に用いることができなかったが、レジスト膜の薄膜化に伴い吸収の影響が緩和され、適用が検討されるようになってきた。また、投影レンズのNAが1を超えると斜入射光による基板からの反射が増大するため、吸収のある芳香環を積極的に利用し、基板からの反射を抑えることが提案されている。この場合、ヒドロキシビニルナフタレン、側鎖にナフタレンやナフトール骨格を含むメタクリレート、フッ素化ヒドロキシスチレン、フルオロアルキルヒドロキシスチレン、フッ素化スチレン、フルオロアルキルスチレン、ヘキサフルオロイソプロパノールスチレン、ヘキサフルオロイソプロパノールインデンなどの共重合体を用いることができる。
【0163】
本発明のレジスト保護膜材料はマスクブランクス用のパターン形成方法にも適用できる。即ち、SiO、Cr、CrO、CrN、MoSi等のマスクブランクス基板上にフォトレジストを塗布後、その上層に本発明のレジスト保護膜材料を用いてレジスト保護膜を形成する。この際、フォトレジストとブランクス基板の間にSOG膜と有機下層膜を形成し、三層構造を形成してもよい。レジスト保護膜を形成後、電子ビーム描画機を用いて真空中電子ビームで露光し、露光後にポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行い、アルカリ現像液で10〜300秒間現像を行うことによりパターンを形成する。
【0164】
マスクブランクス用のレジスト材料は、ベース樹脂としてノボラックやヒドロキシスチレン等が主に用いられる。これらの樹脂中のアルカリ溶解性水酸基を酸不安定基で置換されたものがポジ型として、また架橋剤を添加したものがネガ型として用いられる。具体的には、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル誘導体、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、ヒドロキシビニルナフタレン、ヒドロキシビニルアントラセン、インデン、ヒドロキシインデン、アセナフチレン、ノルボルナジエン類、クマロン、クロモン等を共重合した高分子化合物が好ましく用いられる。
【実施例】
【0165】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、実施例中における“GPC”はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーのことであり、得られた高分子化合物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はGPCによりポリスチレン換算値として測定した。また、下記例中Meはメチル基を示す。
【0166】
ポリマー合成例
下記にポリマー合成例で使用した重合性単量体(Monomer1〜14)の構造式を示す。
【化33】

【0167】
(ポリマー合成例1)Monomer1、Monomer2、Monomer8の共重合(85/12.5/2.5)
窒素雰囲気下のフラスコに86.39gのMonomer1、15.12gのMonomer2、0.93gのMonomer8、6.19gの2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、200gの2−プロパノールを投入して単量体溶液を調製し、溶液温度を20〜25℃とした。窒素雰囲気下の別のフラスコに100gの2−プロパノールを投入し、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま3時間撹拌を続け、熟成終了後に室温まで冷却した。エバポレーターを用いて重合液の総質量が200gになるまで濃縮を行った後、200gのメタノール及び800gのヘキサンを投入し、15分間攪拌した。攪拌停止後、分液操作により取り出した下層に200gのメタノール及び800gのヘキサンを投入し、15分間攪拌した。分液操作により下層を取り出し、700gの4−メチル−2−ペンタノールを添加し、エバポレーターを用いてポリマー溶液の総質量が650gになるまで濃縮を行い、目的の高分子化合物(Polymer1)の4−メチル−2−ペンタノール溶液を得た。
ポリマー溶液の溶媒を蒸発させ、残渣の重量を測定することにより溶液の濃度を決定したところ、11.7wt%であった(収率は76.1%)。樹脂の組成をH−NMR及び19F−NMRで分析した結果、共重合体中のMonomer1/Monomer2/Monomer8の組成比は86/12.3/1.7モル%であった。また、GPCにより分子量を測定した結果、Mw=6,600(Mw/Mn=1.44)であった。
【0168】
(ポリマー合成例2〜12)
以下表1〜5に示す組成で上述の重合性単量体(Monomer1〜14)を仕込み、Polymer1の合成と同様の処方を用いて以下に示すPolymer2〜12の合成を行った。
【0169】
【表1】

【0170】
【化34】

【0171】
【表2】

【0172】
【化35】

【0173】
【表3】

【0174】
【化36】

【0175】
【表4】

【0176】
【化37】

【0177】
【表5】

【0178】
【化38】

【0179】
(ポリマー合成例13)Base1共存下でのMonomer11及びMonomer8の共重合(90/10)
窒素雰囲気下のフラスコに96.46gのMonomer11、4.03gのMonomer8、1.87gのBase1(下記式)、4.18gの2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、155,56gの2−プロパノールを投入して単量体溶液を調製し、溶液温度を20〜25℃とした。窒素雰囲気下の別のフラスコに77.78gの2−プロパノールを投入し、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、熟成終了後に室温まで冷却した。得られた重合液中に2−プロパノール300gを投入後、300gの超純水で3回洗浄した。有機層を抽出し、エバポレーターを用いて全量が200gになるまで濃縮後、1,500gのヘキサンで晶出を行った。析出した共重合体を分離後、600gのヘキサンで洗浄し、白色固体を分離した。白色固体を50℃で20時間真空乾燥させることにより、目的の高分子化合物(Polymer13)79.8gを得た。樹脂の組成をH−NMRで分析した結果、共重合体中のMonomer11、Monomer8、Monomer8とBase1の塩(下記式参照)の組成比は89.0/9.0/2.0モル%であった。また、GPCにより分子量を測定した結果、Mw=7,100(Mw/Mn=1.44)であった。
【0180】
【化39】

【0181】
(比較ポリマー合成例1)Monomer1及びMonomer8の共重合(95/5)
Monomer1及びMonomer8をモル比が(95/5)になるように仕込み、Polymer1の合成と同様の処方を用いて比較Polymer1の合成を行った。樹脂の組成をH−NMRで分析した結果、共重合体中のMonomer1、Monomer8の組成比は96.8/3.2モル%であった。また、GPCにより分子量を測定した結果、Mw=7,100(Mw/Mn=1.44)であった。
【0182】
【化40】

【0183】
(比較ポリマー合成例2)Monomer11のホモポリマー合成
窒素雰囲気下のフラスコに100.0gのMonomer11、3.91gの2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、100.0gの2−プロパノールを投入して単量体溶液を調製し、溶液温度を20〜25℃とした。窒素雰囲気下の別のフラスコに50.0gの2−プロパノールを投入し、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま3時間撹拌を続け、熟成終了後に室温まで冷却した。得られた重合液を2,000gの水中に滴下し、析出した共重合体を濾別した。得られた共重合体を600gのヘキサン/イソプロピルエーテル(9/1)混合溶液で4回洗浄し、白色固体を分離した。白色固体を50℃で20時間真空乾燥させることにより、目的の高分子化合物(比較Polymer2)92.8gを得た。得られた共重合体のGPC測定を行った結果、重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で7,800、分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
【0184】
(レジスト保護膜を用いた評価実施例:実施例1〜18、比較例1〜3)
Polymer1〜13、比較Polymer1及び2の1.0g(固形分換算)を表6に示す混合比でジイソペンチルエーテル/4−メチル−2−ペンタノール(40/60)の混合溶媒42.0gに溶解させ、それぞれ0.03μmサイズのポリプロピレンフィルターで濾過し、レジスト保護膜溶液を作製した(TC−1〜18、比較TC−1〜3)。
【0185】
【表6】

【0186】
得られたレジスト保護膜溶液をシリコン基板上にスピンコートし、100℃で60秒間ベークした後、50nm膜厚のレジスト保護膜を作製した。その後、この保護膜が塗布されたウエハーを用いて、(1)分光エリプソメトリ(J.A.ウーラム(株)製)による屈折率測定(波長193nm)、(2)純水リンス(5分間)後の膜厚変動、(3)2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液による現像後の膜厚変動、(4)上記傾斜法接触角計Drop Master 500(協和界面科学(株)製)を用いた転落角と後退接触角の測定を行った(実施例1〜18、比較例1〜3)。以上の結果を表6に示す。
【0187】
表6から、高分子化合物(P1−1)及び(P1−2)を単独で用いたレジスト保護膜材料(TC−1〜12)は比較ポリマー1よりも後退接触角が高く、一般式(1b−1)及び(1b−2)の繰り返し単位が撥水性の向上に効果的であることがわかる(実施例1〜12)。また、高分子化合物(P1−1)又は(P1−2)と高分子化合物(P2)をブレンドして用いた場合(TC−13〜18)、高分子化合物(P1−1)又は(P1−2)単独の場合とほとんど後退接触角の値が変わらないことから、両者は層分離して高分子化合物(P1−1)又は(P1−2)が高分子化合物(P2)の上層に存在していることがわかる(実施例13〜18)。一般に、転落角が低いほど保護膜上の水は流動し易く、後退接触角が高いほど高速のスキャン露光でも液滴が残りにくいため、表6から、本発明のレジスト保護膜材料TC−1〜18を用いた場合では、転落角や後退接触角の性能が比較TC−1〜3を用いた場合よりも優れていることがわかる。
【0188】
(レジスト評価実施例:実施例19〜30、比較例4〜8)
下記に示すResist Polymerを5g、PAG1を0.5g、Quencher1を0.1g用い、これらを100gのプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させ、0.03μmサイズのポリプロピレンフィルターで濾過し、レジスト溶液を作製した。
【0189】
【化41】

【0190】
次に、シリコン基板上に反射防止膜ARC−29A(日産化学工業(株)製)を成膜後(膜厚は87nm)、その上に上記レジスト溶液を塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚120nmのレジスト膜を作製した。その上に上述のレジスト保護膜材料を塗布し、100℃で60秒間ベークした。擬似的な液浸露光を再現するため、露光後の膜を純水で5分間リンス後、ArFスキャナーS307E((株)ニコン製、NA0.85、σ0.93/0.62、20度ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光を行い、純水をかけながら5分間リンスを行い、100℃で60秒間ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行い、2.38質量%のTMAH水溶液で60秒間現像を行った。また、保護膜なしで露光−純水リンス−PEB−現像のプロセスも行った。そして、得られたウエハーを割断し、65nmライン・アンド・スペースのパターン形状、感度を比較した。更には、現像後のレジスト膜上に5μlの水滴を滴下し、レジスト界面と水滴界面の接触角を測定した。これらの結果をまとめて表7に示す。
【0191】
【表7】

【0192】
比較例TC−1、2を用いた場合、パターン形状は頭丸形状となった(比較例4、5)。また、保護膜なしで露光後に純水リンスを行った場合、パターン形状はT−トップ形状になった(比較例6)。これは発生した酸が水に溶解したためと考えられる。一方、本発明の保護膜材料は高い後退接触角を有し、現像後のレジストの接触角が小さくなっただけでなく、現像後のレジストパターンも矩形形状であった(実施例19〜24)。
【0193】
次に、上記露光実験で用いたレジスト保護膜(TC−1〜6と比較TC−1〜2)を0.02μmサイズの高密度ポリエチレンフィルターで精密濾過した。8インチのシリコン基板上に反射防止膜ARC−29A(日産化学工業(株)製)を成膜後(膜厚は87nm)、その上にレジスト溶液を塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚120nmのレジスト膜を作製した。その上にレジスト保護膜を塗布し、100℃で60秒間ベークした。ArFスキャナーS307E((株)ニコン製、NA0.85 σ0.93、Crマスク)でウエハー全面を20mm角の面積でオープンフレームの露光部と未露光部を交互に露光するチェッカーフラッグ露光を行った後、ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行い、2.38質量%のTMAH水溶液で60秒間現像を行った。チェッカーフラッグの未露光部分の欠陥個数を欠陥検査装置WinWin−50−1200((株)東京精密製)を用いてピクセルサイズ0.125μmで計測した。未露光部のレジスト表面に発生した欠陥はシミ状欠陥であり、ブロブ欠陥に分類される。結果を表8に示す。この結果より、高分子化合物(P1−1)及び(P1−2)を用いたレジスト保護膜材料は比較例の保護膜材料より欠陥数が少ないことがわかる。
【0194】
【表8】

【0195】
(電子線露光評価実施例:実施例31〜36、比較例9)
電子ビーム描画の評価では、ラジカル重合で合成した下記のEB Polymer(90質量部)、下記PAG2(10質量部)及びQuencher2(0.4質量部)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、700質量部)と乳酸エチル(EL、300質量部)に溶解させた後、0.02μmサイズのフィルターで濾過してポジ型レジスト材料を調製した。
【0196】
【化42】

【0197】
得られたポジ型レジスト材料を直径6インチ(150mm)のSi基板上にクリーントラックMark5(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコートし、ホットプレート上110℃で60秒間プリベークして200nmのレジスト膜を作製した。その上にレジスト保護膜を塗布し、100℃で60秒間ベークした。このウエハーを用いて、HL−800D((株)日立製作所製)を用いてHV電圧50keVで真空チャンバー内描画を行った。その後、真空チャンバー内に20時間放置し、描画場所を変えて更に追加で描画を行った。描画後直ちにクリーントラックMark5(東京エレクトロン(株)製)を用いてホットプレート上90℃で60秒間ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行い、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
【0198】
次に、測長SEM(S−7280、(株)日立製作所製)を用いて真空中で放置する際の寸法変動量を次の方法で求めた。即ち、0.12μmのライン・アンド・スペースを1:1で解像する露光量で、現像直前と20時間後における0.12μmのライン・アンド・スペースのライン寸法の差を求め、寸法変動量とした。寸法変動量において、プラスは真空中放置によってレジスト感度が高感度化、マイナスは低感度化に変動であることを示す。結果を表9に示す。
【0199】
【表9】

【0200】
電子線露光においては、本発明のレジスト保護膜(TC−1〜6)を適用することにより、露光後の真空放置における安定性が向上した。
【0201】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(1a)、(1b−1)、及び(1c)で表される繰り返し単位を含有し、重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲内である高分子化合物(P1−1)を含むものであることを特徴とするレジスト保護膜材料。
【化1】

(式中、R1a〜R1cは水素原子又はメチル基である。Rは上記一般式(X)、(Y)、及び(Z)で表される基のいずれかを示し、一般式(X)、(Y)、(Z)中のR4a、R4b、R5a、R5bのいずれかを介して繰り返し単位(1b−1)の−(C=O)−O−結合に連結し、このとき−(C=O)−O−結合に連結するR4a、R4b、R5a、R5bは、単結合又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基を示す。繰り返し単位(1b−1)の−(C=O)−O−結合に連結しないR4a、R4b、R5a、R5bは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、及び炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状の一価の有機基のいずれかを表し、R4a、R4b、R5a、R5bのうち2個が互いに結合して環状構造を形成しても良い。R、R、Rは炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていても良く、また、メチレン基の一部が酸素原子、又はカルボニル基で置換されていてもよい。Rは水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基であり、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、また、メチレン基の一部が酸素原子、またはカルボニル基で置換されていてもよい。RとRは結合して環状構造を形成してもよい。R3aは単結合、−C(=O)−O−、及び−C(=O)−NH−のいずれかである。R3bは単結合、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基である。高分子化合物(P1−1)において、一般式(1a)、(1b−1)、及び(1c)の単位に対応するモノマーの総モル数をU11、U12、U13とし、高分子化合物(P1−1)に含まれる全繰り返し単位に対応するモノマーの総モル数をU1とした場合、0<U11/U1<1、0<U12/U1<1、0<U13/U1<1、0<(U11+U12+U13)/U1≦1である。)
【請求項2】
前記一般式(1c)において、R3a及びR3bが単結合であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項3】
少なくとも、下記一般式(1a)’、(1b−2)、及び(1c)’で表される繰り返し単位を含有し、重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲内である高分子化合物(P1−2)を含むことを特徴とするレジスト保護膜材料。
【化2】

(式中、R1a’〜R1c’は水素原子又はメチル基である。R10a及びR10bは、水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状の一価炭化水素基であり、R10a及びR10bは互いに結合して炭素数3〜8の非芳香環を形成してもよい。R11は単結合又はメチレン基である。R12は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状の一価炭化水素基、フッ素化一価炭化水素基、及び酸不安定基のいずれかを示し、一価炭化水素基の場合、構成する−CH−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。R3a’は単結合、−C(=O)−O−、及び−C(=O)−NH−のいずれかである。R3b’は単結合、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基である。高分子化合物(P1−2)において、一般式(1a)’、(1b−2)、(1c)’の単位に対応するモノマーの総モル数をU11’、U12’、U13’とし、高分子化合物(P1−2)に含まれる全繰り返し単位に対応するモノマーの総モル数をU1’とした場合、0<U11’/U1’<1、0<U12’/U1’<1、0<U13’/U1’<1、0<(U11’+U12’+U13’)/U1’≦1である。)
【請求項4】
前記一般式(1c)’において、R3a’及びR3b’が単結合であることを特徴とする請求項3に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項5】
前記レジスト保護膜材料が、更に溶媒を含むものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項6】
前記溶媒が、炭素数8〜12のエーテル化合物であることを特徴とする請求項5に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項7】
前記溶媒が、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ−secブチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−t−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルのうちの一種、又は二種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項8】
前記溶媒が、前記エーテル化合物に加えて、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノールのいずれかのアルコール化合物の一種、又は二種以上を混合した溶媒を含むものであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項9】
少なくとも、(1)基板上にフォトレジスト膜を形成する工程と、(2)該フォトレジスト膜の上に、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のレジスト保護膜材料を用いてレジスト保護膜を形成する工程と、(3)露光する工程と、(4)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
前記(3)露光工程を、投影レンズと前記基板との間に液体を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する液浸リソグラフィーにより行うことを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記(3)露光工程において、前記投影レンズと前記基板の間に挿入する液体を水とすることを特徴とする請求項10に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記(3)露光工程において、露光光源として波長180〜250nmの範囲の高エネルギー線を用いることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記(4)現像工程において、アルカリ現像液を用いて現像し、前記フォトレジスト膜にレジストパターンを形成すると同時に、フォトレジスト膜上のレジスト保護膜の剥離を行うことを特徴とする請求項9乃至請求項12のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
マスクブランクスに形成したフォトレジスト層上にレジスト保護膜材料によるレジスト保護膜を形成後、真空中電子ビームで露光を行った後、現像を行うリソグラフィーによるパターン形成方法において、前記レジスト保護膜材料として、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のレジスト保護膜材料を用いることを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−257713(P2011−257713A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134433(P2010−134433)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】