説明

レーザ干渉計、及びそれを用いた測定装置

【課題】各光成分の偏向調整作業が簡単で、出力されるレーザ光の各光成分の平行度を向上させることができ、ロール方向の位置偏差の測定精度を向上させる。
【解決手段】2枚の平面鏡4,5を有する反射鏡2と、互いに直交する2つの直線偏光を入力して分光する偏光ビームスプリッタ8及び分光した各光成分を平面鏡4,5に対して垂直に入反射するように屈折させるバイプリズム6を有し、各光成分をバイプリズム6と反射鏡2との間で2往復させてから出力するレーザ干渉部3とを備えたレーザ干渉計1において、レーザ干渉部3は、各光成分が最初に往復する際に一方の光成分が通過し、各光成分が次に往復する際に他方の光成分が通過するよう、偏光ビームスプリッタ8とバイプリズム6との間に配置され、通過する光成分の偏向方向を調整自在とする一対のウェッジプリズム15a,15bを有する偏向部15を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工作機械のテーブル等の移動部材が支持部材に対して軸方向に移動する際に生じる位置偏差を測定するためのレーザ干渉計に係り、詳しくは、出力される各光成分を平行に調整可能とするレーザ干渉計、及びそれを用いた測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高精度な工作が要求される旋盤、フライス盤、研削盤などの工作機械などにおいては、工場などの床に対して固定されるベッドと、該ベッド上を移動するテーブルとが備えられており、工作の際には、このテーブルに被加工物などを設置して、該テーブルを所定の軸方向に移動させつつ工作を行う。このテーブルの移動においては、軸方向、横方向、縦方向、ピッチ方向、ヨー方向、ロール方向の6つの(つまり6自由度方向の)位置偏差(誤差)が生じる虞があり、機械精度の比較、受渡し、保守などの目的から、これらの位置偏差を測定する必要がある。
【0003】
従来、上記6つの位置偏差を測定するため、レーザ測長機などによって測定を行うものが種々提案されており、軸方向、横方向、縦方向、ピッチ方向、ヨー方向の位置偏差を測定するものは実用化されているものもある。ところが、ロール方向の測定は、精密水準器やダイヤルゲージによって測定するように規定されている(例えば、JISB6336−1、ISO10791−1)。しかしながら、上記工作機械のテーブルを移動させると、該工作機械自体の重心が移動するため、該工作機械全体が傾斜してしまう。そのため、上記水準器などによってロール方向の測定を行うと、該工作機械の傾斜も含めて測定することとなり、正確なロール方向の測定ができなかった。また、鉛直方向に移動するテーブルにおいては、ロール方向が水平方向であるため、上述の水準器ではロール方向の測定が不可能であった。そこで、特にロール方向に対する位置偏差をレーザ干渉計を用いて測定するもの(特許文献1、2参照)が提案されている。
【0004】
この種のレーザ干渉計は、略V字状となるように所定角度で傾斜した2枚の平面鏡を有する反射手段としての反射鏡と、互いに直交する2つの偏光成分を有するレーザ光を入力し、各光成分を反射鏡に2往復させてから出力するレーザ光路生成手段としてのレーザ干渉部とを備えている。レーザ干渉部は、分光部として偏光面を有する偏光ビームスプリッタと、偏光ビームスプリッタと反射鏡の間に配置される屈折部としてのバイプリズムと、軸方向に対して偏光ビームスプリッタの直角方向に配置されるターニングミラーとを有している。偏光ビームスプリッタは、レーザ光を入力自在とすると共に、反射鏡に2往復させたレーザ光を出力自在とする入出力部を有している。
【0005】
このレーザ干渉計では、互いに直交する2つの偏光成分を有するレーザ光がレーザヘッドから出射され、偏光ビームスプリッタの入出力部に入力されると、偏光ビームスプリッタの偏光面にて各光成分に分離される。
【0006】
偏光ビームスプリッタで分離された一方の光成分は、ターニングミラー、バイプリズムを順次通過し、反射鏡で反射され、バイプリズム、ターニングミラーを順次通過して偏光ビームスプリッタに戻ってくる。その後、一方の光成分は、偏光ビームスプリッタから出射され、バイプリズムを通過し、反射鏡で反射され、バイプリズムを通過して偏光ビームスプリッタに戻ってくる。このようにして偏光ビームスプリッタで分離された一方の光成分はバイプリズムと反射鏡との間を2往復する。
【0007】
次に、偏光ビームスプリッタで分離された他方の光成分は、バイプリズムを通過し、反射鏡で反射され、バイプリズムを通過して、偏光ビームスプリッタに戻ってくる。その後、他方の光成分は、ターニングミラー、バイプリズムを順次通過し、反射鏡で反射され、バイプリズム、ターニングミラーを順次通過して偏光ビームスプリッタに戻ってくる。このようにして他方の光成分は一方の光成分とは異なる光路でバイプリズムと反射鏡との間を2往復する。
【0008】
そして、バイプリズムと反射鏡との間を2往復したレーザ光の各光成分は、レーザ干渉部より出力される。このレーザ干渉部より出力された各光成分のレーザ光(干渉信号)は光電変換器により受光され、各光成分の波長の位相差に基づく、それら2つの光路長の相対変化を測定することによって、ロール方向の位置偏差を算出することを可能としている。
【0009】
【特許文献1】特開昭62−223604号公報
【特許文献2】特開2004−138433公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ターニングミラーを経由してバイプリズムに向かうレーザ光と、ターニングミラーを経由せずにバイプリズムに向かうレーザ光とが平行であれば、バイプリズムで屈折して出射するレーザ光が反射鏡において垂直に入反射し、レーザ光の復路においても往路と同じ光路を辿ることとなり、レーザ干渉部より出力されるレーザ光の各光成分は平行となるものである。
【0011】
しかしながら、上述したレーザ干渉計では、偏光ビームスプリッタ等の光学部品の製作精度が低いと、レーザ干渉部から出力される2つの光成分の平行度が低下してしまうことがある。
【0012】
具体的に説明すると、光学部品としての偏光ビームスプリッタは、2つの45°直角プリズムの斜面間に偏光面を設けて接着剤で接着した立方体状のものが一般的に知られており、この接着剤の乾燥時の収縮により、製作精度が低下してしまうことがある。そして、光学部品の製作精度が低下してしまうと、各光成分の往復過程で光路がずれてしまい、レーザ干渉部から出力される2つ光成分の平行度が低下してしまうことがある。
【0013】
このようにレーザ干渉部から出力される2つ光成分の平行度が低下してしまうと、2つの光成分による干渉信号が微弱になってしまい、良好な干渉信号を検出できず、ロール方向の位置偏差の測定精度が低下してしまうという問題がある。
【0014】
この問題を解消するために、ターニングミラーの角度を調整することで、レーザ干渉部から出力される2つの光成分を平行にすることはできるが、その調整作業は非常に難しく、より簡単に調整できるレーザ干渉計が望まれていた。
【0015】
そこで本発明は、各光成分の偏向調整作業が簡単で、レーザ光路生成手段から出力されるレーザ光の各光成分の平行度を向上させることができ、ロール方向の位置偏差の測定精度を向上させることができるレーザ干渉計、及びそれを用いた測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は(例えば、図3、図7、図14参照)、所定角度で傾斜した2枚の平面鏡(4,5)を有する反射手段(2)と、
偏光面が互いに直交する2つの偏光成分を有するレーザ光を入力して分光する分光部(8,208)、及び前記分光部(8,208)と前記反射手段(2)との間に配置され、前記分光部(8,208)で分光した各光成分を、前記反射手段(2)の平面鏡(4,5)に対して垂直に入反射するように前記所定角度に屈折させる屈折部(6)を有し、前記各光成分を前記屈折部(6)と前記反射手段(2)との間で2往復させてから出力するレーザ光路生成手段(3,103,203)と、を備え、
前記反射手段(2)と前記レーザ光路生成手段(3,103,203)とを軸方向(例えばZ軸方向)に相対移動させた際に、前記反射手段(2)と前記レーザ光路生成手段(3,103,203)との相対位置関係によって各光成分が通過する光路の距離が相対変化するレーザ干渉計(1,101,201)において、
前記レーザ光路生成手段(3,103,203)は、
前記各光成分が最初に往復する際に一方の光成分が通過し、前記各光成分が次に往復する際に他方の光成分が通過するよう、前記分光部(8,208)と前記屈折部(6)との間に配置され、通過する光成分の偏向方向を調整自在とする一対のウェッジプリズム(15a,15b)を有する偏向部(15)を備えたことを特徴とするレーザ干渉計(1,101,201)にある。
【0017】
請求項2に係る発明は(例えば、図3、図7、図14参照)、前記レーザ光路生成手段(3,103,203)は、前記分光部(8,208)の前記軸方向(例えばZ軸方向)に対して直角方向(例えばY軸方向)に配置され、前記分光部(8,208)を経て入射したレーザ光を前記屈折部(6)に向けて反射する反射部(9,209)を備え、
前記偏向部(15)は、前記反射部(9,209)と前記屈折部(6)との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ干渉計(1,101,201)にある。
【0018】
請求項3に係る発明は(例えば図14参照)、前記レーザ光路生成手段(203)は、前記分光部(208)の前記軸方向(例えばZ軸方向)に対して直角方向(例えばY軸方向)に配置され、前記分光部(208)を経て入射したレーザ光を前記屈折部(6)に向けて反射する反射部(209)を備え、
前記偏向部(15)は、前記分光部(208)と前記反射部(209)との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ干渉計(201)にある。
【0019】
請求項4に係る発明は(例えば図4、図5、図8、図9参照)、前記レーザ光路生成手段(3,103)を格納する筐体(3a)を備え、
前記偏向部(15)は、前記ウェッジプリズム(15a,15b)の外周に形成されたリング状の操作子(16a,16b)を有し、
前記ウェッジプリズム(15a,15b)は、前記操作子(16a,16b)が前記筐体(3a)から露出するよう前記筐体(3a)内に配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ干渉計(1,101)にある。
【0020】
請求項5に係る発明は(例えば、図7、図9参照)、前記分光部(8)は、レーザ光を入力自在とすると共に、前記反射手段(2)に2往復させたレーザ光を出力自在とする入出力部(8a)を有し、
前記レーザ光路生成手段(103)は、前記入出力部(8a)から出力されたレーザ光を、折り返し前記入出力部(8a)に入力する再入力部(17)を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ干渉計(101)にある。
【0021】
請求項6に係る発明は(図1、図2参照)、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の前記レーザ干渉計(1)と、
前記レーザ光を照射自在で、かつ前記レーザ光路生成手段(3)より出力された前記各光成分のレーザ光の波長の位相差に基づき、前記各光成分の光路の距離の相対変化を測定し得るレーザ測長手段(12)と、を備え、
前記反射手段(2)及び前記レーザ光路生成手段(3)のいずれか一方を、基準床(30)に対して支持される支持部材(21)に固定し、
前記反射手段(2)及び前記レーザ光路生成手段(3)の他方を、前記支持部材(21)に対して軸方向(例えばZ軸方向)に移動自在に支持される移動部材(22)に固定し、
前記移動部材(22)を前記支持部材(21)に対して前記軸方向(例えばZ軸方向)に移動させた際に、前記支持部材(21)に対する前記移動部材(22)の位置偏差を測定することを特徴とする測定装置(50)にある。
【0022】
尚、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る本発明によると、一対のウェッジプリズムを操作するだけで偏向部を通過する各光成分の偏向方向を簡単に調整することができる。そして、各光成分が反射手段の平面鏡に対して垂直に入反射するよう、偏向部の調整により屈折部に入射する各光成分を平行にすることで、レーザ光路生成手段から出力される各光成分の平行度を向上させることができる。そして、ロール方向の位置偏差の測定時には、良好な干渉信号を得ることができ、ロール方向の位置偏差の測定精度が向上する。
【0024】
請求項2に係る本発明によると、偏向部が反射部と屈折部との間に配置されるので、各光成分の偏光方向を調整する際に反射部を調整する必要がなくなり、調整作業が容易である。
【0025】
請求項3に係る本発明によると、偏向部が分光部と反射部との間に配置されるので、各光成分の偏光方向を調整する際に反射部を調整する必要がなくなり、調整作業が容易である。
【0026】
請求項4に係る本発明によると、操作子が筐体から露出しているので、筐体を分解しなくても偏向部を操作することができ、調整作業が容易である。
【0027】
請求項5に係る本発明によると、再入力部により、屈折部と反射手段との間を2往復して出力されたレーザ光が、再び屈折部と反射手段との間を2往復することとなるので、感度が向上し、ロール方向の位置偏差の測定精度が向上する。
【0028】
請求項6に係る本発明によると、移動部材の移動による支持部材の傾斜を含むことなく、移動部材と支持部材との相対位置関係の測定が可能であり、良好にロール方向の位置偏差を測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態を図に沿って説明する。図1はレーザ干渉部をテーブルに固定した際の測定装置及び工作機械を示す斜視図、図2は反射鏡をテーブルに固定した際の測定装置及び工作機械を示す斜視図、図3は第1の実施の形態に係るレーザ干渉計を示す斜視模式図である。図4は、レーザ干渉部の斜視図であり、図5は、図4中A−A線に沿うレーザ干渉部の断面図である。図6は、偏向部を通過するレーザ光の光路を示す説明図であり、図6の(a)は、レーザ干渉部において偏向部によりレーザ光の偏向方向を調整した場合の光路を示す説明図であり、図6の(b)は、偏向部を通過するレーザ光の偏向範囲を示す説明図である。
【0030】
図1に示すように、工作機械20の位置偏差を測定し得る測定装置50は、レーザ干渉計1とレーザヘッド(レーザ測長手段)12とを備えている。該工作機械20は、例えば工場の床30に載置されて支持されているベッド(支持部材)21を有しており、該ベッド21にはガイド部材21aが支持されている。該ガイド部材21aにはテーブル(移動部材)22がZ軸方向(軸方向)に移動自在に支持されており、該テーブル22は、例えば不図示のモータの駆動などによりZ軸方向に移動する。
【0031】
また、工作機械20のベッド21には、刃物台23が設けられており、該刃物台23に設けられたアーム24にチャック25を有している。工作機械20により工作を行う際は、該チャック25にバイトなどの工具を取付けると共にテーブル22に被工作物を設置・固定し、該テーブル22を移動させて被工作物と工具とを接触させつつ工作を行う。尚、図1に示す工作機械20は、説明の便宜上、簡単に示した模式的なものであり、Z軸方向に移動するものを一例として説明しているが、実際には更に複雑な形状、動作を行うものである。
【0032】
レーザヘッド12は、例えば三脚12bなどで床30に配置されており、該レーザヘッド12内には、互いに直交する2つの偏光成分を有するレーザ光、具体的には直線偏光であるP波(例えば縦波)と該P波に対して偏光面が直交し、周波数が異なる直線偏光であるS波(例えば横波)とを有するレーザ光を照射自在なレーザ発振器と、入力されるレーザ光のP波とS波との波長に基づき詳しくは後述する光路長の変化量を測定し得る光電変換器とが備えられている。また、レーザヘッド12には、レーザ発振器のレーザ光の照射と光電変換器へのレーザ光の入力とを同軸方向に行う入出力ヘッド12aが備えられており、該レーザヘッド12は、該入出力ヘッド12aが後述するレーザ干渉計1のレーザ干渉部3の入出力部8aに対して向けられ、かつレーザ光の入出力をZ軸方向に行うように配置される。
【0033】
尚、上記工作機械20のベッドやテーブルには、その形状や役割によって種々の名称があり、例えば主軸頭、刃物台、コラム、ステージなどの名称があるが、説明の便宜上、本明細書中においては、床30に対して支持されている支持部材をベッド21、該ベッド21に対して移動する移動部材をテーブル22とする。また、レーザヘッド12がレーザ発振器と光電変換器とを一体に備えるようにしたが、別体に備えるようにしてもよい。
【0034】
本発明の要部となるレーザ干渉計1は、反射鏡(反射手段)2とレーザ干渉部(レーザ光路生成手段)3とを備えて構成されており、該反射鏡2は、図3に示すように、略V字状となるようにレーザ干渉部3に対して略対称な所定角度に傾斜した2つの平面鏡4、5を有している。該反射鏡2は、図1に示すように、略直方体形状の反射鏡ケース2aを有しており、それら平面鏡4,5は、該本体ケース2a内に格納されている。また、本体ケース2aのレーザ干渉部3と対向する面には、レーザ光が通過するためのスリット状の孔2bが形成されている。
【0035】
レーザ干渉部3は、図3〜図5に示すように、2つの楔プリズム6a,6bを有するバイプリズム(屈折部)6、1/4波長板(第2の波長板)7a,7b、偏光ビームスプリッタ(分光部)8、平面型反射鏡(反射部)9、1/4波長板(第1の波長板)10、キューブコーナプリズム(光路軸変更部)11及び偏向部15を有して構成されており、略直方体形状の干渉部ケース(筐体)3aに格納されている。尚、図4及び図5において、バイプリズム6及びキューブコーナプリズム11は、干渉部ケース3aに取付けられて露出しているが、各光学部品が干渉部ケース3a内部に配置されていてもよく、本第1の実施の形態では、いずれの場合も干渉部ケース3aに格納されていると表現する。該干渉部ケース3aには、上記レーザヘッド12に対するレーザ光が通過する孔3bと、上記反射鏡2に対するレーザ光が通過する孔3c、3dとが、それぞれ形成されている。
【0036】
図3〜図5に示すように、偏光ビームスプリッタ8は、Z軸方向に対して略45°の角度で傾斜する偏光面8bと、レーザ光を入出力する入出力面(入出力部)8aと、を有しており、該入出力面8aは、反射鏡2に対して偏光ビームスプリッタ8におけるZ軸方向の反対側に位置し、即ち上記レーザヘッド12の入出力ヘッド12aにZ軸方向において対向するように位置している。
【0037】
また、平面型反射鏡9は、該偏光ビームスプリッタ8のZ軸方向に対して直角方向(Y軸方向)に配置されており、偏光ビームスプリッタ8のZ軸方向に対して略45°の角度に傾斜する傾斜面に一体に形成されている。
【0038】
上記偏光ビームスプリッタ8及び平面型反射鏡9と反射鏡2との間のZ軸方向上には、上記バイプリズム6と1/4波長板7a,7bとがそれぞれ配置されている。更に、キューブコーナプリズム11は、上記平面型反射鏡9に対して偏光ビームスプリッタ8の反対側に配置されており、該キューブコーナプリズム11と偏光ビームスプリッタ8との間には、1/4波長板10が配置されている。
【0039】
尚、バイプリズム6と1/4波長板7a,7bとのZ軸方向における位置は、図3に示すように、反射鏡2、バイプリズム6、1/4波長板7a,7b、偏光ビームスプリッタ8及び平面型反射鏡9の順が好ましいが、反射鏡2、1/4波長板7a,7b、バイプリズム6、偏光ビームスプリッタ8及び平面型反射鏡9の順に配置されていてもよい。また、1/4波長板7a,7bは別体であるが、一体的なものであってもよい。
【0040】
また、1/4波長板とは、結晶軸に対して正確にスライスした結晶片を用いたものであり、1/4波長板7a,7bはX−Y軸平面において結晶軸を45°に傾斜させ、1/4波長板10はX−Z軸平面において結晶軸を45°に傾斜させて用いている。
【0041】
本第1の実施の形態において、偏向部15は、通過するレーザ光の偏向方向を調整自在とする一対(2つ)のウェッジプリズム15a,15bと、ウェッジプリズム15a,15bの外周に形成されウェッジプリズム15a,15bを保持するリング状のホルダ16a,16bとを有しており、偏光ビームスプリッタ8とバイプリズム6との間、より具体的には、平面型反射鏡9及びバイプリズム6の間に配置される1/4波長板7aと、平面型反射鏡9との間に配置されている。
【0042】
ウェッジプリズム15a,15bは、両端面が平面に形成された円盤形状であり、一方の平面が他方の平面(X−Y平面)に対して所定角度θ(図6の(a)参照)だけ傾斜する傾斜面に形成された楔形状のプリズムである。
【0043】
そして、図5に示すように、各ウェッジプリズム15a,15bの平面同士が対向するよう近接して配置され、各ウェッジプリズム15a,15bのホルダ16a,16bが、ウェッジプリズム15a,15bの中心軸を中心として回動自在に干渉部ケース3a内に支持されている。
【0044】
ホルダ16a,16bは、そのホルダ16a,16bの外周が干渉部ケース3aの外部に露出するように干渉部ケース3a内に支持されており、操作者が各ウェッジプリズム15a,15bを操作するときは、この露出したホルダ16a,16bを操作すればよく、干渉部ケース3aを分解しなくても済むので、各ウェッジプリズム15a,15bの調整操作が簡単である。
【0045】
そして、図6の(a)ように、ウェッジプリズム15a,15bの中心軸を中心に矢印A方向(時計回り)或いは矢印B方向(反時計回り)にウェッジプリズム15a,15bを回動させることにより、通過するレーザ光の偏向方向を調整することができる。
【0046】
具体的に説明すると、一対のウェッジプリズム15a,15b同士を近接して対向するように配置しているので、図6(b)に示すように、各ウェッジプリズム15a,15bを矢印A方向或いは矢印B方向に回動させることにより、ウェッジプリズム15aに入射してウェッジプリズム15bから出射されるレーザ光は、ウェッジプリズム15a,15bの傾斜面の傾斜角度θに対応する所定の略円錐領域R内を通過する任意の方向に偏向される。従って、各ウェッジプリズム15a,15bを矢印A方向又は矢印B方向に回動操作することにより、レーザ光の偏向方向を調整することができる。
【0047】
本第1の実施の形態のレーザ干渉計1は、S波とP波を有するレーザ光を偏光ビームスプリッタ8の入出力面8aから入力し、偏光ビームスプリッタ8で分光された各光成分を、レーザ干渉部3のバイプリズム6と反射鏡2との間で2往復させて偏光ビームスプリッタ8の入出力面8aから出力するよう構成されており、レーザヘッド12から2つの光成分を有するレーザ光をレーザ干渉計1のレーザ干渉部3に入力し、レーザ干渉部3の出力である2つの光成分による干渉信号に基づいてロール方向の位置偏差を測定するものである。この測定作業に先立って、レーザヘッド12から2つの光成分を有するレーザ光を照射し、レーザ干渉部3から出力される各光成分が平行となるよう、反射鏡2及びレーザ干渉部3の偏向部15を調整操作する必要がある。
【0048】
以下、レーザ干渉計1にレーザ光を照射した場合について詳細に説明する。
【0049】
上記レーザヘッド12のレーザ発振器よりP波とS波とを有するレーザ光がZ軸方向に対して平行に出力され、図3に示す光路a1,b1を介して偏光ビームスプリッタ8の入出力面8aに入力される。この偏光ビームスプリッタ8の入出力面8aに入力されたレーザ光は、偏光面8bにより第1光成分(P波)と第2光成分(S波)に分光され、P波が第1光路(図3中、a2〜a11)を通過し、S波が第2光路(図3中、b2〜b11)を通過する。詳述すると、P波は該偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bをそのまま通過して直進方向、即ちZ軸方向の光路a2に出力されると共に、S波は該偏光面8bにより直角方向、即ちY軸方向に反射されて偏光ビームスプリッタ8内を通過し、平面型反射鏡9に到達する。ここで、図3には、第1光成分が通過する第1光路を破線で示し、第2光成分が通過する第2光路を実線で示している。
【0050】
まず、偏光ビームスプリッタ8で分光された各光成分を、レーザ干渉部3と反射鏡2との間で2往復させる際に最初に往復させる場合について説明する。
【0051】
第1光路(図3中、破線)を通過する第1光成分として、光路a2に出力されたP波のレーザ光は、1/4波長板7bを通過して円偏光のレーザ光になると共に、バイプリズム6の楔プリズム6bによってZ軸方向に対して角度φに屈折され、光路a3に出力される。該光路a3の第1光成分である円偏光のレーザ光は、反射鏡2の平面鏡4の点4bにおいて該平面鏡4に垂直に入力され、該光路a3に反射される。言い換えれば、反射鏡2の平面鏡4は、第1光成分が垂直に入反射するようにその角度が操作者によって調整される。反射された光路a3の円偏光のレーザ光は、再び楔プリズム6bによりZ軸方向に屈折されると共に、1/4波長板7bを通過してS波のレーザ光になり、光路a2に出力され、偏光ビームスプリッタ8に戻される。
【0052】
つまり、偏光面8bをZ軸方向に直進した第1光成分は、光路a2、1/4波長板7b、バイプリズム6、光路a3を往路として順次通過し、反射鏡2の平面鏡4で反射されて、往路と同一光路である光路a3、バイプリズム6、1/4波長板7b、光路a2を復路として順次通過し、偏光面8bに戻ってくることとなり、レーザ干渉部3のバイプリズム6と反射鏡2との間で第1光成分が往復したこととなる。
【0053】
一方、第2光路(図3中、実線)を通過する第2光成分として、偏光ビームスプリッタ8により分光された光成分であるS波のレーザ光は、平面型反射鏡9によりバイプリズム6が配設されている方向に反射され、光路b2に出力される。
【0054】
該光路b2のS波レーザ光は、偏向部15の各ウェッジプリズム15a,15bを通過して、光路b3に出力されるが、この偏向部15で第2光成分であるS波レーザ光の偏向方向が調整される。
【0055】
具体的に説明すると、図6の(a)に示すように、光学部品である偏光ビームスプリッタ8の製造精度が低い場合、偏光面8bで反射された第2光成分であるS波レーザ光は、Y軸方向からずれた光路を辿ることとなる。平面型反射鏡9により反射された第2光成分は、仮に偏向部15が無い状態では光路b3’の如く、Z軸方向からずれて光路b2を通過する第1光成分に対して平行とはならず、平行度が極めて低いものとなってしまう。これに対し、本第1の実施の形態では、図6の(b)に示すように、操作者が偏向部15の各ウェッジプリズム15a,15bを矢印A方向又は矢印B方向に回動操作することにより、偏向部15を通過するレーザ光を所定の略円錐領域R内で偏向可能であり、図6の(a)に示すように、光路b3に出力される第2光成分を、光路a2に出力される第1光成分に対して平行となるように偏向方向を調整することができるので、光路a2を通過する第1光成分に対する光路b3を通過する第2光成分の平行度を向上させることができる。
【0056】
このように偏向部15で光路a2を通過する第1光成分に平行に調整されてZ軸方向の光路b3を通過した第2光成分であるS波レーザ光は、1/4波長板7aを通過して円偏光のレーザ光になると共に、バイプリズム6の楔プリズム6bによってZ軸方向に対して角度φに屈折され、光路b4に出力される。該光路b4の第2光成分である円偏光のレーザ光は、反射鏡2の平面鏡4の点4aにおいて反射される。
【0057】
ここで、光路b3を通過する第2光成分は、偏向部15にて光路a2を通過する第1光成分に平行になるよう調整されているので、光路b4を通過した第2光成分は、平面鏡4の点4bで垂直に入反射される第1光成分と同様に、平面鏡4の点4aにおいて垂直に入反射される。
【0058】
反射された光路b4の第2光成分である円偏光のレーザ光は、再び楔プリズム6bによりZ軸方向に屈折されると共に、1/4波長板7aを通過してP波のレーザ光になり、光路b3に出力される。そして、光路b3のP波のレーザ光は、偏向部15で偏向方向が調整されて光路b2に出力され、平面型反射鏡9により偏光面8bに向けて反射される。
【0059】
つまり、偏光面8bで反射された第2光成分は、平面型反射鏡9、光路b2、偏向部15、光路b3、1/4波長板7a、バイプリズム6、光路b4を往路として順次通過し、反射鏡2の平面鏡4で反射されて、往路と同一光路である光路b4、バイプリズム6、1/4波長板7a、光路b3、偏向部15、光路b2、平面型反射鏡9を復路として順次通過し、偏光面8bに戻ってくることとなり、レーザ干渉部3のバイプリズム6と反射鏡2との間で第2光成分が往復したこととなる。
【0060】
次に、偏光ビームスプリッタ8で分光された各光成分を、レーザ干渉部3と反射鏡2との間で2回目を往復させる場合について説明する。
【0061】
第2光路(図3中、実線)を通過する第2光成分として、光路b2を通過して偏光面8bに戻ってきたレーザ光は、P波になっているため、偏光面8bを直進してそのまま通過し、光路b5に出力される。該光路b5のP波のレーザ光は1/4波長板10を通過して円偏光のレーザ光になって光路b6に出力され、該光路b6の円偏光のレーザ光は、キューブコーナプリズム11により、該光路b6の軸方向に対して平行でX軸方向に異なる軸上である光路b7に折り返して出力される。該光路b7の円偏光のレーザ光は、再び1/4波長板10を通過してS波のレーザ光となり、光路b8に出力される。
【0062】
光路b8のレーザ光は、S波になっているため、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bにより直角方向、即ちZ軸方向の光路b9に反射される。ここで、光路b9に出力される第2光成分は、図6に示すように、光路b1を通過した第2光成分が偏光面8bで反射される角度と同一角度で偏光面8bに反射されるので、第1光成分が最初の往復時に通過した光路a2と平行に出力される。
【0063】
光路b9のS波のレーザ光は、1/4波長板7bを通過して円偏光のレーザ光になると共に、バイプリズム6の楔プリズム6aによってZ軸方向に対して角度φに屈折され、光路b10に出力される。該光路b10の第2光成分である円偏光のレーザ光は、反射鏡2の平面鏡5の点5bにおいて該平面鏡5に垂直に入力され、該光路b10に反射される。言い換えれば、反射鏡2の平面鏡5は、第2光成分が垂直に入反射するようにその角度が操作者によって調整される。反射された光路b10の円偏光のレーザ光は、再び楔プリズム6aによりZ軸方向に屈折されると共に、1/4波長板7bを通過してP波のレーザ光になり、光路b9に出力される。そして、光路b9のレーザ光は、P波になっているため、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bをそのまま直進方向に通過し、光路a1の第1光成分及び光路b1の第2光成分に対して平行な光路b11に出力される。
【0064】
つまり、偏光面8bで反射された第2光成分は、光路b9、1/4波長板7b、バイプリズム6、光路b10を往路として順次通過し、反射鏡2の平面鏡5で反射されて、往路と同一光路である光路b10、バイプリズム6、1/4波長板7b、光路b9を復路として順次通過し、偏光面8bに戻ってくることとなり、レーザ干渉部3のバイプリズム6と反射鏡2との間で第2光成分が往復したこととなる。
【0065】
そして、反射鏡2の平面鏡4,5に対して2往復した第2光成分は、入出力面8aより光路b11に出力された後、上記レーザヘッド12の光電変換器に入力される。
【0066】
一方、第1光路(図3中、破線)を通過する第1光成分として、光路a2に戻ってきたレーザ光は、S波になっているため、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bによりキューブコーナプリズム11が配設されている方向に反射され、光路a4に出力される。
【0067】
詳述すると、光路a2を戻ってきた第1光成分は、光路b1を通過して偏光面8bで反射された第2光成分の反射角度と同一角度で反射され、このときの第2光成分と平行且つ反対方向の光路a4に出力される。
【0068】
該光路a4のS波のレーザ光は1/4波長板10を通過して円偏光のレーザ光になって光路a5に出力され、該光路a5の円偏光のレーザ光は、キューブコーナプリズム11により、該光路a5の軸方向に対して平行でX軸方向に異なる軸上である光路a6に折り返して出力される。該光路a6の円偏光のレーザ光は、再び1/4波長板10を通過してP波のレーザ光となり、光路a7に出力される。
【0069】
光路a7のレーザ光は、P波になっているため、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bを直進してそのまま通過し、平面型反射鏡9に出力され、平面型反射鏡9によりバイプリズム6が配設されている方向に反射され、光路a8に出力される。
【0070】
ここで、最初の往復時に偏光面8bで反射され平面型反射鏡9に向かう第2光成分と、キューブコーナプリズム11を折り返して光路b8を通過し平面型反射鏡9に向かう第1光成分とは平行である。従って、光路a8の第1光成分は、光路b2の第2光成分と平行である。
【0071】
そして、光路a8を通過した第1光成分であるP波レーザ光は、光路b3を通過した第2光成分の偏向方向と同一方向に偏向部15で偏向され、光路b9を通過する第2光成分に平行に調整されて光路a9に出力される。
【0072】
つまり、最初の往復時に第2光成分が偏向部15を通過し、次の往復時に第1光成分が偏向部15を通過するので、両光成分の偏向方向が偏向部15で調整されたこととなる。
【0073】
該光路a9の第1光成分であるP波レーザ光は、1/4波長板7aを通過して円偏光のレーザ光になると共に、バイプリズム6の楔プリズム6aによってZ軸方向に対して角度φに屈折され、光路a10に出力される。該光路a10の第1光成分である円偏光のレーザ光は、反射鏡2の平面鏡5の点5aにおいて反射される。
【0074】
ここで、光路a9を通過する第1光成分であるP波レーザ光は、光路b9を通過する第2光成分に平行になるよう調整されているので、光路a10を通過した第1光成分は、平面鏡5の点5bで垂直に入反射される第2光成分と同様に、平面鏡5の点5aにおいて垂直に入反射される。
【0075】
反射された光路a10の第1光成分である円偏光のレーザ光は、再び楔プリズム6aによりZ軸方向に屈折されると共に、1/4波長板7aを通過してS波のレーザ光になり、光路a9に出力される。そして、光路a9のS波のレーザ光は、偏向部15で偏向方向が調整されて光路a8に出力され、平面型反射鏡9により偏光面8bに向けて反射される。偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに往路と同じ光路で戻ってきたレーザ光は、S波になっているため、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bにより、光路b1の第2光成分が偏光面8bで反射したときの反射角度と同一角度でZ軸方向に反射され、光路a1の第1光成分及び光路b1の第2光成分に対して平行となり、入出力面8aより光路a11に出力される。
【0076】
つまり、偏光面8bを通過した第1光成分は、平面型反射鏡9、光路a8、偏向部15、光路a9、1/4波長板7a、バイプリズム6、光路a10を往路として順次通過し、反射鏡2の平面鏡5で反射されて、往路と同一光路である光路a10、バイプリズム6、1/4波長板7a、光路a9、偏向部15、光路a8、平面型反射鏡9を復路として順次通過し、偏光面8bに戻ってくることとなり、レーザ干渉部3のバイプリズム6と反射鏡2との間で第1光成分が往復したこととなる。
【0077】
そして、反射鏡2の平面鏡4,5に対して2往復した第1光成分は、入出力面8aより光路a11に出力された後、上記レーザヘッド12の光電変換器に入力される。
【0078】
以上、反射鏡2の平面鏡4,5に対して2往復した光路a11の第1光成分と光路b11の第2光成分は、入力されるレーザ光に平行しているので、入出力面8aより互いに平行に出力されることとなる。
【0079】
尚、図3に示した光路a1,b1、光路a4,b5、光路a5,b6、光路a6,b7、光路a7,b8、及び光路a11,b11は、説明の便宜上、平行な軸線として示しているが、これらの光路は、それぞれ同一軸上の光路である。
【0080】
本第1の実施の形態では、レーザヘッド12より照射された第1光成分及び第2光成分を有するレーザ光が入出力面8aより入力して偏光面8bで分光され、バイプリズム6と反射鏡2との間の最初の往復時に第2光成分が偏向部15を通過し、次の往復時に第1光成分が偏向部15を通過するので、偏向部15の一対のウェッジプリズム15a,15bを回動操作して各光成分の偏向方向を調整でき、その調整作業によりバイプリズム6に出射される各光成分を平行にすることができ、各光成分を反射鏡2に対して垂直に入反射させることができる。そして、反射鏡2にて垂直に入反射されるので、各光成分は往路と復路で同一光路を辿ることができ、入出力面から出力される各光成分を互いに平行にすることができる。従って、レーザ干渉部3から出力される各光成分の平行度を向上させることができる。
【0081】
しかも、各光成分の偏向方向を調整するために、偏光ビームスプリッタ8に一体に形成されている平面型反射鏡9の角度を調整する必要がなく、偏向部15の一対のウェッジプリズム15a,15bを回動操作するだけでよいので、その調整作業は非常に簡単である。
【0082】
また、両光成分が一対のウェッジプリズム15a,15bを通過するよう構成されているので、各光成分毎に一対のウェッジプリズムを用意しなくてもよいので、部品点数が少なく済み、構造も簡単となる。
【0083】
次に、例えば反射鏡2がレーザ干渉部3に対してZ軸周りのγ方向であるロール方向に相対移動したとする。すると、第1光路と第2光路とをそれぞれ通過するレーザ光が反射する点4a,5b及び点4b,5aは、点4a及び点5bが平面鏡4,5の傾斜に対して谷側(つまり内側)又は山側(つまり外側)に、点4b及び点5aが平面鏡4,5の傾斜に対して山側(つまり外側)又は谷側(つまり内側)に移動する形となる。即ち、光路b4及び光路b10の光路長に対して光路a3及び光路a10の光路長が縮まる、又は伸びることになり、第1光路と第2光路との光路長に相対的な変化が生じる。
【0084】
第1光路と第2光路との光路長に相対的な変化が生じると、入出力面8aから出力される光路a11の第1光成分であるS波のレーザ光と、光路b11の第2光成分であるP波のレーザ光とのドップラー周波数偏移が生じ、干渉信号が得られる。この干渉信号を入力したレーザヘッド12の光電変換器により光路長の変化(以下、「検出光長」とする。)を検出することができるものである。尚、この光電変換器によるドップラー周波数偏移の検出は、公知の技術であるので、その説明を省略する。
【0085】
また、点4aと点4b(点5aと点5b)の距離を2vとし、上記ロール方向の角度θγと光路長の変化量Δとを式で示すと、
θγ=tan−1(Δ/(8v・sinφ))・・・・・・式1
となる。それらロール方向の角度θと光路長の変化量Δとの関係は、点4aと点5a(点4bと点5b)の距離2uに依存せず、つまり反射鏡2とレーザ干渉部3との距離はなんら影響がない。
【0086】
上記式1の関係は、点4aと点4b(点5aと点5b)の距離2vが一定で、かつ角度φも一定であるため、検出光長(mm)と発生ローリング(角秒)との関係として得られる。この発生ローリングを累積演算することで、反射鏡2とレーザ干渉部3とのロール方向の位置偏差を算出することが可能であり、つまり検出光長に基づいてロール方向の位置偏差を算出することが可能である。
【0087】
従って、本第1の実施の形態では、レーザ干渉部3から出力される各光成分を平行にできるので、ロール方向の位置偏差の測定時には、良好な干渉信号を得ることができ、検出される光路長の変化量Δの誤差も小さくなるので、ロール方向の位置偏差の測定精度が向上する。
【0088】
尚、従来の技術と同様に、横方向(X方向)、縦方向(Y方向)、軸方向(Z方向)、ピッチ方向(α方向)、ヨー方向(β方向)に対して変位があった場合は、光路b4及び光路b10の光路長と、光路a3及び光路a10の光路長とが共に伸縮、或いは変化せずに、その2つの光路長に相対的な変化が生じない。
【0089】
レーザ干渉計1を用いて工作機械20を測定する際は、図1に示すように、該工作機械20に、レーザ干渉計1を備えた測定装置50を設置する。まず、レーザ干渉計1の反射鏡2を工作機械20のベッド21上に固定し、レーザ干渉部3をテーブル22上に固定する。この固定の際は、反射鏡2とレーザ干渉部3とがZ軸方向において正確に一直線上になるように、かつ平面鏡4,5の角度とレーザ干渉部3の角度がZ軸方向に対する正確な位置になるように固定することが好ましいが、僅かなずれがあっても第1光路(特に光路a3及び光路a10)と第2光路(特に光路b4及び光路b10)との光路長に差が生じないので、特に問題はない。また、レーザヘッド12を、レーザ干渉部3の入出力面8aに対して入出力ヘッド12aがZ軸方向において一直線上になるように床30上に設置する。
【0090】
その後、レーザヘッド12のレーザ発振器よりレーザ光を照射すると共に、光電変換器により第1光路と第2光路との光路長の相対変化の測定を開始する。そして、工作機械20のテーブル22をベッド21に対してZ軸方向に移動させ、測定装置50によって、テーブル22の移動に伴うロール方向(γ方向)の位置偏差を測定する。この際、レーザ干渉部3の入出力面8aはZ軸方向に移動し、またレーザヘッド12の入出力ヘッド12aもZ軸方向に向けられているので、レーザ干渉部3をテーブル22によりZ軸方向に移動しても、入出力面8aに対するレーザ光の入出力がずれることはない。また、レーザ干渉部3がZ軸方向に移動するだけであれば、第1光路と第2光路との光路長が共に伸縮するだけであって、相対的な光路長の差は生じない。
【0091】
また、レーザ干渉計1を用いて工作機械20を測定する際は、図2に示すように、レーザ干渉計1の反射鏡2を工作機械20のテーブル22上に固定し、レーザ干渉部3をベッド21上に固定してもよい。この際も同様に、レーザヘッド12を、レーザ干渉部3の入出力面8aに対して入出力ヘッド12aがZ軸方向において一直線上になるように床30上に設置する。
【0092】
その後、レーザヘッド12のレーザ発振器よりレーザ光を照射すると共に、光電変換器により第1光路と第2光路との光路長の相対変化の測定を開始し、工作機械20のテーブル22をベッド21に対してZ軸方向に移動させ、測定装置50によって、テーブル22の移動に伴うロール方向(γ方向)の位置偏差を測定する。この際、入出力面8aに対するレーザヘッド12からのレーザ光の入出力がずれることなく、また、反射鏡2がZ軸方向に移動するだけであれば、第1光路と第2光路との光路長が共に伸縮するだけであって、相対的な光路長の差は生じない。
以上、本第1の実施の形態の測定装置50によれば、測定に先立って、レーザ干渉計1のレーザ干渉部3より出力される各光成分を平行に調整する作業を簡単に行うことができ、ロール方向の位置偏差の測定時には、良好な干渉信号を得ることができ、ロール方向の位置偏差の測定精度を向上させることができる。
【0093】
<第2の実施の形態>
ついで、以下に本発明に係る第2の実施の形態を図に沿って説明する。図7は第2の実施の形態に係るレーザ干渉計を示す斜視模式図である。図8は、レーザ干渉部を示す斜視図である。図9は、図8中、B−B線に沿うレーザ干渉部の断面図である。図10は、図8中、矢印C方向から見たレーザ干渉部の平面図である。尚、第2の実施の形態においては、一部の変更部分を除き、第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付して、その説明を省略する。
【0094】
本第2の実施の形態のレーザ干渉計101は、反射鏡2とレーザ干渉部103とを備えており、レーザ干渉部103は、上記第1の実施の形態のレーザ干渉部3の構成に更にキューブコーナプリズム(再入力部)17を備えたものである。
【0095】
このキューブコーナプリズム17は、偏光ビームスプリッタ8の入出力面8aに近接して配置されており、干渉部ケース3aに対して固定金具18で固定されている。更に、キューブコーナプリズム17は、図10に示すように、入出力面8aにおいてレーザ光が入力される点D1及びレーザ光を出力するための点D4を避けて配置されている。そして、キューブコーナプリズム17は、バイプリズム6と反射鏡2との間を2往復してレーザ光が出力される点D2とレーザ光を再入力する点D3に対向して配置されている。
【0096】
尚、本第2の実施の形態では、図10に示すように、キューブコーナプリズム17が干渉部ケース3aの外側に固定されて外部に露出しているが、キューブコーナプリズム17が干渉部ケース3aに覆われていてもよく、いずれの場合も干渉部ケース3aに格納されていると表現する。
【0097】
以下、レーザ干渉計101にレーザ光を照射した場合について説明する。
【0098】
レーザヘッドのレーザ発振器よりP波とS波とを有するレーザ光がZ軸方向に対して平行に出力され、図7に示す光路c1,d1を介して偏光ビームスプリッタ8の入出力面8aに入力される。このとき、図10に示す入出力面8aの点D1にレーザ光が入力される。この偏光ビームスプリッタ8の入出力面8aに入力されたレーザ光は、偏光面8bにより第1光成分(P波)と第2光成分(S波)に分光され、第1光成分が第1光路(図7中、c2〜c22)を通過し、第2光成分が第2光路(図7中、d2〜d22)を通過する。詳述すると、P波は該偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bをそのまま通過して直進方向、即ちZ軸方向の光路c2に出力されると共に、S波は該偏光面8bにより直角方向、即ちY軸方向に反射されて偏光ビームスプリッタ8内を通過し、平面型反射鏡9に到達する。ここで、図7には、第1光成分が通過する第1光路を破線で示し、第2光成分が通過する第2光路を実線で示している。
【0099】
まず第1光路(図7中、破線)を通過する第1光成分は、光路c2、1/4波長板7b、バイプリズム6の楔プリズム6b、光路c3を順次通過して、反射鏡2の平面鏡4に垂直に入反射し、光路c3、楔プリズム6b、1/4波長板7b、光路c2を順次通過して偏光ビームスプリッタ8に戻ってくる。
【0100】
次に、光路c2に戻ってきたレーザ光は、S波となっており、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bによりキューブコーナプリズム11が配設されている方向に反射され、光路c4、1/4波長板10、光路c5を順次通過し、キューブコーナプリズム11により、光路c5の軸方向に対して平行でX−Z平面において対角の位置の異なる軸上である光路c6に折り返して出力される。次いで第1光成分は、光路c6、1/4波長板10、光路c7を順次通過する。
【0101】
光路c7のレーザ光は、P波になっており、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bを直進してそのまま通過し、平面型反射鏡9、光路c8を順次通過し、偏向部15で偏向方向が調整され、光路c9、1/4波長板7a、バイプリズム6の楔プリズム6a、光路c10を順次通過し、反射鏡2の平面鏡5に垂直に入反射し、光路c10、楔プリズム6a、1/4波長板7a、光路c9、偏向部15、光路c8、平面型反射鏡9を順次通過して偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻ってくる。
【0102】
偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻ってきたレーザ光は、S波になっており、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bによりZ軸方向に反射され、入出力面8aより光路c11に出力される。このとき、光路c11に出力されたレーザ光は、図10に示す入出力面8aのX−Y平面で点D1の対角に位置し、キューブコーナプリズム17に対向する点D2より出力される。
【0103】
本第2の実施の形態では、この光路c11に出力された第1光成分が、キューブコーナプリズム17により、光路c11の軸に平行でY軸方向に異なる軸上の光路c12を通過し、再び偏光ビームスプリッタ8の入出力面8aに入力される。このとき、光路c12に出力されたレーザ光は、図10に示す入出力面8aの点D2よりY軸方向に所定距離ずれた点D3に入力される。
【0104】
光路c12を通過した第1光成分は、S波になっているので、偏光面8bにより反射され、平面型反射鏡9、光路c13を順次通過し、偏向部15で偏向方向が調整され、光路c14、1/4波長板7a、バイプリズム6の楔プリズム6a、光路c15を順次通過し、反射鏡2の平面鏡5に垂直に入反射し、光路c15、楔プリズム6a、1/4波長板7a、光路c14、偏向部15、光路c13、平面型反射鏡9を順次通過して偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻ってくる。
【0105】
偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻ってきたレーザ光は、P波になっており、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bを直進してそのまま通過し、光路c16、1/4波長板10、光路c17を順次通過し、キューブコーナプリズム11により、該光路c17の軸方向に対して平行でX−Z平面において対角の位置の異なる軸上である光路c18に折り返して出力される。該光路c18のレーザ光は、1/4波長板10、光路c19を順次通過し、S波のレーザ光として偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻る。この戻ってきたレーザ光は、偏光面8bで反射され、光路c20、1/4波長板7b、バイプリズム6の楔プリズム6b、光路c21を順次通過し、反射鏡2の平面鏡4に垂直に入反射し、光路c21、楔プリズム6b、1/4波長板7b、光路c20を順次通過して、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻ってくる。この戻ってきた第1光成分のレーザ光はP波であり、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bを直進してそのまま通過し、入出力面8aから光路c22に出力される。このとき、光路c22に出力されたレーザ光は、図10に示す入出力面8aのX−Y平面で点D3の対角の位置であり、キューブコーナプリズム17を避けた点D4より出力される。
【0106】
つまり、第1光成分のレーザ光は、バイプリズム6と反射鏡2との間を2往復してキューブコーナプリズム17に出力された後、キューブコーナプリズム17により入出力面8aに戻されて、更にバイプリズム6と反射鏡2との間を2往復して入出力面8aから出力されるので、バイプリズム6と反射鏡2との間を、上記第1の実施の形態の2倍である4往復して入出力面8aから出力されることとなる。
【0107】
そして、反射鏡2の平面鏡4,5に対して4往復した第1光成分は、入出力面8aより光路c22に出力された後、レーザヘッドの光電変換器に入力される。
【0108】
一方、第2光路(図7中、実線)を通過する第2光成分として、偏光ビームスプリッタ8により分光された光成分であるS波のレーザ光は、平面型反射鏡9、光路d2を順次通過し、偏向部15で偏向方向が調整され、光路d3、1/4波長板7a、楔プリズム6b、光路d4を順次通過し、反射鏡2の平面鏡4において垂直に入反射し、光路d4、楔プリズム6b、1/4波長板7a、光路d3、偏向部15、光路d2、平面型反射鏡9を順次通過して、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻ってくる。
【0109】
この戻ってきた第2光成分のレーザ光はP波となっているため、偏光面8bを直進してそのまま通過し、光路d5、1/4波長板10、光路d6を順次通過し、キューブコーナプリズム11により、該光路d6の軸方向に対して平行でX−Z平面において対角の位置の異なる軸上である光路d7に折り返して出力される。該光路d7のレーザ光は、1/4波長板10、光路d8を順次通過し、S波のレーザ光として偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻る。この戻ってきたレーザ光は、偏光面8bで反射され、光路d9、1/4波長板7b、楔プリズム6a、光路d10を順次通過し、反射鏡2の平面鏡5で垂直に入反射し、光路d10、楔プリズム6a、1/4波長板7b、光路d9を順次通過して、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻ってくる。
【0110】
この戻ってきた第2光成分のレーザ光はP波であり、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bをそのまま直進方向に通過し、入出力面8aから光路d11に出力される。このとき、光路d11に出力されたレーザ光は、図10に示す入出力面8aのX−Y平面で点D1の対角の位置であり、キューブコーナプリズム17に対向する点D2より出力される。
【0111】
本第2の実施の形態では、この光路d11に出力された第2光成分が、キューブコーナプリズム17により、光路d11の軸に平行でY軸方向に異なる軸上の光路d12を通過し、再び偏光ビームスプリッタ8の入出力面8aに入力される。このとき、光路d12に出力されたレーザ光は、図10に示す入出力面8aの点D2よりY軸方向に所定距離ずれた点D3に入力される。
【0112】
光路d12を通過した第2光成分は、P波になっているので、偏光面8bをそのまま通過し、光路d13、1/4波長板7b、楔プリズム6a、光路d14を順次通過し、反射鏡2の平面鏡5で垂直に入反射し、光路d14、楔プリズム6a、1/4波長板7b、光路d13を順次通過し、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻ってくる。
【0113】
偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻ってきたレーザ光は、S波になっており、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bで反射され、光路d15、1/4波長板10、光路d16を順次通過し、キューブコーナプリズム11により、該光路d16の軸方向に対して平行でX−Z平面において対角の位置の異なる軸上である光路d17に折り返して出力される。該光路d17のレーザ光は、1/4波長板10、光路d18を順次通過し、P波のレーザ光として偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻る。この戻ってきたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bを直進してそのまま通過し、平面型反射鏡9、光路d19を順次通過し、偏向部15で偏向方向が調整され、光路d20、1/4波長板7a、楔プリズム6b、光路d21を順次通過し、反射鏡2の平面鏡5で垂直に入反射し、光路d21、楔プリズム6b、1/4波長板7a、光路d20、偏向部15、光路d19、平面型反射鏡9を順次通過し、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻る。
【0114】
偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bに戻ってきたレーザ光は、S波になっており、偏光ビームスプリッタ8の偏光面8bによりZ軸方向に反射され、入出力面8aより光路d22に出力される。このとき、光路d22に出力されたレーザ光は、図10に示す入出力面8aのX−Y平面で点D3の対角の位置であり、キューブコーナプリズム17を避けた点D4より出力される。
【0115】
つまり、第2光成分のレーザ光は、バイプリズム6と反射鏡2との間を2往復してキューブコーナプリズム17に出力された後、キューブコーナプリズム17により入出力面8aに戻されて、更にバイプリズム6と反射鏡2との間を2往復して入出力面8aから出力されるので、バイプリズム6と反射鏡2との間を、上記第1の実施の形態の2倍である4往復して入出力面8aから出力されることとなる。
【0116】
そして、反射鏡2の平面鏡4,5に対して4往復した第2光成分は、入出力面8aより光路d22に出力された後、レーザヘッドの光電変換器に入力される。
【0117】
このように、本第2の実施の形態では、キューブコーナプリズム17により、バイプリズム6と反射鏡2との間を2往復して出力されたレーザ光が、再びバイプリズム6と反射鏡2との間を2往復して出力されるので、各光成分は光路長が上記第1の実施の形態の2倍となり、ロール方向の位置偏差が生じた場合、光路長の変化量が2倍となる。従って、光路長の変化を検出するレーザヘッド12の光電変換器において検出感度が2倍になり、ロール方向の位置偏差の測定精度が向上する。
【0118】
また、本第2の実施の形態では、レーザヘッド12より照射された第1光成分及び第2光成分を有するレーザ光が入出力面8aより入力して偏光面8bで分光され、バイプリズム6と反射鏡2との間の最初の往復時に第2光成分が偏向部15において偏光方向を調整され、次の往復時に第1光成分が偏向部15において偏光方向を調整されるので、キューブコーナプリズム17に出力される各光成分を平行にすることができる。更に、キューブコーナプリズム17により入出力面8aから再度入力された互いに平行なレーザ光の各光成分も、偏光面8bで分光され、バイプリズム6と反射鏡2との間の最初の往復時に第1光成分が偏向部15において偏光方向を調整され、次の往復時に第2光成分が偏向部15において偏光方向を調整されるので、レーザ光を再入力した場合に偏向部15の調整量を変更しなくても出力される各光成分を平行にすることができる。従って、ロール方向の位置偏差の測定時には、良好な干渉信号を得ることができ、ロール方向の位置偏差の測定精度を向上させることができる。
【0119】
次に、上記第1の実施の形態のレーザ干渉計1を備えた測定装置のロール検出感度と、本第2の実施の形態のレーザ干渉計101を備えた測定装置のロール検出感度とを比較した実験結果について説明する。図11は、上記第1の実施の形態の測定装置により計測したロール検出感度を示す図であり、図12は、本第2の実施の形態の測定装置により計測したロール検出感度を示す図である。尚、上記第1の実施の形態のレーザ干渉計1における反射鏡2には、第1光成分と第2光成分とを合せて4回入反射し、本第2の実施の形態のレーザ干渉計101における反射鏡2には、第1光成分と第2光成分とを合せて8回入反射することとなる。
【0120】
図11及び図12において、横軸は、反射鏡2をロール方向に回転させた角度(ロール)であり、縦軸は、反射鏡2のロールに対してレーザ干渉計1,101を用いて検出された検出光長である。なお、図11及び図12中、Lは、反射鏡2とバイプリズム6との距離であり、作図上、データのプロット位置を、Lの値が大きくなるに従って上方にシフトさせて見易くしている。例えば、L=300(mm)の場合は、検出光長を0.01(mm)だけ上方にシフトしてプロットしているが、実際の検出光長は、プロット位置よりも0.01(mm)だけ低い値である。
【0121】
ここで、レーザ干渉計1,101を備えた測定装置のロール検出感度は、測定データの回帰直線の傾きであり、測定データの回帰直線の傾きが大きいほど、検出感度が高いものである。図11に示す上記第1の実施の形態の測定装置のロール検出感度は、Lの値がいずれの場合でも、0.81×10−5であり、反射鏡2とバイプリズム6との距離に依存しないことが確認できた。
【0122】
また、図12に示す本第2の実施の形態の測定装置のロール検出感度は、Lの値がいずれの場合でも、1.63×10−5であり、これによっても、反射鏡2とバイプリズム6との距離に依存しないことが確認できた。そして、本第2の実施の形態の測定装置のロール検出感度は、上記第1の実施の形態の測定装置のロール検出感度の2倍となるのが確認できた。
【0123】
次に、本第2の実施の形態のレーザ干渉計101を備えた測定装置を用いて、実際に光学実験台のロール方向の位置偏差を検出した場合について説明する。図13は、光学実験台のロール方向の位置偏差を検出した結果を示す図である。この実験では、光学実験台上にテーブルを載置し、テーブルを移動させてロール方向の位置偏差を検出した。
【0124】
ここで、レーザ干渉計101より得られるのは、検出光長であり、図12に示すロール検出感度(1.63×10−5)を校正データとして用いてロール方向の位置偏差を算出している。具体的に説明すると、図13に示すロール、つまりロール方向の位置偏差は、レーザ干渉計101より得られた検出光長を、校正データであるロール検出感度で除算することにより求められる。
【0125】
図13に示すように、ロール方向の位置偏差の測定を5回行ったが、ロール検出感度が倍増したので、測定結果のばらつきはほとんどない。従って、ロール方向の位置偏差の測定精度が向上したことが確認された。
【0126】
<第3の実施の形態>
ついで、以下に本発明に係る第3の実施の形態を図に沿って説明する。図14は第3の実施の形態に係るレーザ干渉計を示す斜視模式図である。尚、第3の実施の形態においては、一部の変更部分を除き、第1或いは第2の実施の形態と同様な部分に同符号を付して、その説明を省略する。
【0127】
本第3の実施の形態では、図14に示すように、レーザ干渉計201のレーザ干渉部203が、偏光ビームスプリッタ(分光部)208と平面型反射鏡(反射部)209とを別体に有し、平面型反射鏡209が、偏光ビームスプリッタ208のZ軸方向に対して直角方向(Y軸方向)に配置されて構成される。
【0128】
本第3の実施の形態でも、偏向部15は、平面型反射鏡209と1/4波長板7aとの間に配置されている。これにより本第3の実施の形態によれば、レーザ干渉部203から出力される各光成分を平行に調整する際に平面型反射鏡209の角度を調整する必要はなく、偏向部15の各ウェッジプリズム15a,15bを調整するだけでよいので、調整作業が簡単である。
【0129】
尚、上記第3の実施の形態では、偏向部15が、平面型反射鏡209と1/4波長板7aとの間に配置される場合について説明したが、これに限るものではなく、図14の破線で示すように、偏向部15を偏光ビームスプリッタ208と平面型反射鏡209との間に配置してもよい。これによっても、出力される各光成分を平行に調整する際に平面型反射鏡209の角度を調整する必要はなく、偏向部15の各ウェッジプリズム15a,15bを調整するだけでよいので、調整作業が簡単である。
【0130】
また、上記第1〜第3の実施の形態では、偏向部15を平面型反射鏡9,209と1/4波長板7aとの間に配置したが、その代わりに、例えば図14の破線で示すように、偏向部15を1/4波長板7aとバイプリズム6との間に配置してもよい。また、偏向部15を偏光ビームスプリッタ8,208、反射鏡9,209、1/4波長板7a、バイプリズム6を通過する光路に設ける代わりに、偏光ビームスプリッタ8,208、1/4波長板7b、バイプリズム6を通過する光路、即ち、偏向部15を偏光ビームスプリッタ8,208と1/4波長板7bとの間、或いは、1/4波長板7bとバイプリズム6との間に配置するようにしてもよい。
【0131】
また、上記第1〜第3の実施の形態では、レーザ干渉部3,103,203が、反射部として平面型反射鏡9,209を有する場合について説明したが、これに限るものではなく、レーザ干渉部が反射部としてアミチプリズム(不図示)を有する場合であってもよい。
【0132】
また、上記第1〜第3の実施の形態では、レーザ干渉計1,101,201を用いてロール方向(γ方向)の位置偏差を測定するものを説明したが、該レーザ干渉計1,101,201全体を90度回転させた形、つまり横向きで用いることも可能である。
【0133】
また、上記第1の実施の形態では、工作機械20を測定する測定装置50について説明したが、該測定装置50は、特に工作機械に限らず、支持部材と該支持部材に対して軸方向に移動する移動部材とであり、反射鏡2とレーザ干渉部3,103,203とが設置(固定)可能なものであれば、どのようなものであってもそれらの位置偏差を測定することが可能である。
【0134】
また、上記第1〜第3の実施の形態では、レーザ干渉部3,103,203の入出力面が反射鏡2に対して偏光ビームスプリッタ8,208における軸方向の反対側に位置する場合について説明したが、これに限るものではなく、偏光ビームスプリッタの入出力面が、軸方向に対して直角方向に形成され、レーザ干渉部がレーザ光を軸方向に対して直角方向に入出力するよう構成されたものであってもよい。
【0135】
また、上記第2の実施の形態では、レーザ干渉部103が再入力部として1個のキューブコーナプリズム17を備え、レーザ光をバイプリズム6と反射鏡2との間で4往復させる場合について説明したが、これに限るものではなく、レーザ干渉部が再入力部として複数個(N個:Nは2以上の整数)のキューブコーナプリズムを備え、レーザ光をバイプリズム6と反射鏡2との間で2×(N+1)往復させるよう構成された場合であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】レーザ干渉部をテーブルに固定した際の測定装置及び工作機械を示す斜視図。
【図2】反射鏡をテーブルに固定した際の測定装置及び工作機械を示す斜視図。
【図3】第1の実施の形態に係るレーザ干渉計を示す斜視模式図。
【図4】レーザ干渉部の斜視図。
【図5】図4中A−A線に沿うレーザ干渉部の断面図。
【図6】偏向部を通過するレーザ光の光路を示す説明図であり、(a)は、レーザ干渉部において偏向部によりレーザ光の偏向方向を調整した場合の光路を示す説明図、(b)は、偏向部を通過するレーザ光の偏向範囲を示す説明図。
【図7】第2の実施の形態に係るレーザ干渉計を示す斜視模式図。
【図8】レーザ干渉部を示す斜視図。
【図9】図8中、B−B線に沿うレーザ干渉部の断面図。
【図10】図8中、矢印C方向から見たレーザ干渉部の平面図。
【図11】第1の実施の形態の測定装置により計測したロール検出感度を示す図。
【図12】第2の実施の形態の測定装置により計測したロール検出感度を示す図。
【図13】光学実験台のロール方向の位置偏差を検出した結果を示す図。
【図14】第3の実施の形態に係るレーザ干渉計を示す斜視模式図。
【符号の説明】
【0137】
1,101,201 レーザ干渉計
2 反射鏡(反射手段)
3,103,203 レーザ干渉部(レーザ光路生成手段)
3a 干渉部ケース(筐体)
4 平面鏡
5 平面鏡
6 バイプリズム(屈折部)
6a 楔プリズム
6b 楔プリズム
8,208 偏光ビームスプリッタ(分光部)
8a 入出力面(入出力部)
8b 偏光面
9,209 平面型反射鏡(反射部)
12 レーザヘッド(レーザ測長手段)
15 偏向部
15a ウェッジプリズム
15b ウェッジプリズム
16a ホルダ(操作子)
16b ホルダ(操作子)
17 キューブコーナプリズム(再入力部)
20 工作機械
21 ベッド(支持部材)
22 テーブル(移動部材)
30 床(基準床)
50 測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度で傾斜した2枚の平面鏡を有する反射手段と、
偏光面が互いに直交する2つの偏光成分を有するレーザ光を入力して分光する分光部、及び前記分光部と前記反射手段との間に配置され、前記分光部で分光した各光成分を、前記反射手段の平面鏡に対して垂直に入反射するように前記所定角度に屈折させる屈折部を有し、前記各光成分を前記屈折部と前記反射手段との間で2往復させてから出力するレーザ光路生成手段と、を備え、
前記反射手段と前記レーザ光路生成手段とを軸方向に相対移動させた際に、前記反射手段と前記レーザ光路生成手段との相対位置関係によって各光成分が通過する光路の距離が相対変化するレーザ干渉計において、
前記レーザ光路生成手段は、
前記各光成分が最初に往復する際に一方の光成分が通過し、前記各光成分が次に往復する際に他方の光成分が通過するよう、前記分光部と前記屈折部との間に配置され、通過する光成分の偏向方向を調整自在とする一対のウェッジプリズムを有する偏向部を備えたことを特徴とするレーザ干渉計。
【請求項2】
前記レーザ光路生成手段は、
前記分光部の前記軸方向に対して直角方向に配置され、前記分光部を経て入射したレーザ光を前記屈折部に向けて反射する反射部を備え、
前記偏向部は、前記反射部と前記屈折部との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ干渉計。
【請求項3】
前記レーザ光路生成手段は、
前記分光部の前記軸方向に対して直角方向に配置され、前記分光部を経て入射したレーザ光を前記屈折部に向けて反射する反射部を備え、
前記偏向部は、前記分光部と前記反射部との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ干渉計。
【請求項4】
前記レーザ光路生成手段を格納する筐体を備え、
前記偏向部は、前記ウェッジプリズムの外周に形成されたリング状の操作子を有し、
前記ウェッジプリズムは、前記操作子が前記筐体から露出するよう前記筐体内に配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ干渉計。
【請求項5】
前記分光部は、レーザ光を入力自在とすると共に、前記反射手段に2往復させたレーザ光を出力自在とする入出力部を有し、
前記レーザ光路生成手段は、前記入出力部から出力されたレーザ光を、折り返し前記入出力部に入力する再入力部を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ干渉計。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の前記レーザ干渉計と、
前記レーザ光を照射自在で、かつ前記レーザ光路生成手段より出力された前記各光成分のレーザ光の波長の位相差に基づき、前記各光成分の光路の距離の相対変化を測定し得るレーザ測長手段と、を備え、
前記反射手段及び前記レーザ光路生成手段のいずれか一方を、基準床に対して支持される支持部材に固定し、
前記反射手段及び前記レーザ光路生成手段の他方を、前記支持部材に対して軸方向に移動自在に支持される移動部材に固定し、
前記移動部材を前記支持部材に対して前記軸方向に移動させた際に、前記支持部材に対する前記移動部材の位置偏差を測定することを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−168709(P2009−168709A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9032(P2008−9032)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【出願人】(592253736)シグマ光機株式会社 (46)
【Fターム(参考)】