説明

三輪車

【課題】揺動機構を簡単な構造で実現して部品点数の削減を図る。
【解決手段】三輪車1は、第1の車体部材2と、第2の車体部材3と、連結部材4と、ストッパ部とを備える。第1の車体部材2は前輪15を有しており、第2の車体部材3は2つの後輪33R,33Lを有している。第1の車体部材2と第2の車体部材3は、捩れ変形が可能な連結部材4によって相対的に揺動可能に連結されている。また、第1の車体部材2と第2の車体部材3との相対的な揺動を所定の範囲で制限するためにストッパ部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの前輪を有する第1の車体部材が2つの後輪を有する第2の車体部材に対して揺動可能に連結された三輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から1つの前輪と2つの後輪を備えた三輪車が知られている。このような三輪車は、ある程度のスピードで旋回すると、内側(コーナー側)に位置する後輪が浮き上がり、バランスが取り難くなる。そのため、一般的な三輪車には、旋回する場合に前輪を含む車体の一部を進行方向に対して左右に傾ける揺動機構が設けられている。
【0003】
このような三輪車の揺動機構としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、揺動式三輪車のジョイント構造が記載されている。この特許文献1に記載された揺動式三輪車のジョイント構造では、ジョイントケースにジョイントシャフトの前部を差込み、ジョイントケースに内蔵したナイトハルトダンパでジョイントシャフトの回転を弾性的に支えるようになっている。そして、このジョイント構造は、ジョイントケースとジョイントシャフトとの間の回転運動を減衰させる回転式ダンパを備えている。
【0004】
また、三輪車の揺動機構の技術としては、例えば、特許文献2に記載されているものがある。すなわち、特許文献2には、三輪自転車の揺動復元機構が記載されている。この特許文献2に記載された三輪自転車の揺動復元機構は、左右のレバーと、左右のスプリングと、ストッパ部を有している。
【0005】
左右のレバーの一端は、2つの後輪を支持する後フレームにそれぞれ軸支されており、他端は1つの前輪を支持する前フレームにそれぞれ当接している。左右のスプリングは、左右のレバーをその軸支部を中心として互いに逆回転方向に付勢する。ストッパ部は、後フレームに設けられている。このように構成される三輪自転車の揺動復元機構では、前フレームが後フレームに対して揺動すると、左右のレバーのうち一方のレバーの他端が前フレームに当接し、他方のレバーの中間部が後フレームに設けられたストッパ部に当接するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−334670号公報
【特許文献2】特開平9−156563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されているような揺動機構は、前フレーム(前車体)又は後フレーム(後車体)の一方に取り付けられる回転軸と、他方に取り付けられる軸受け部と、前フレームを中立位置に戻すための付勢部材を必要としていた。そのため、揺動機構が複雑になり、部品点数の削減が難しかった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、前フレームと後フレームを連結する揺動機構を簡単な構造で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の三輪車は、第1の車体部材と、第2の車体部材と、連結部材と、ストッパ部とを備える。第1の車体部材は、1つの前輪を有しており、第2の車体部材は、2つの後輪を有している。第1の車体部材と第2の車体部材は、捩れ変形が可能な連結部材によって揺動可能に連結されている。また、第1の車体部材と第2の車体部材との相対的な揺動を所定の範囲で制限するためにストッパ部が設けられている。
【0010】
本発明の三輪車では、連結部材が捩れ変形することにより、第1の車体部材が第2の車体部材に対して揺動する。そして、連結部材が元の形状に復元することにより、第1の車体部材が第2の車体部材に対する基準位置に復帰する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の車体部材と第2の車体部材を揺動可能に連結する揺動機構を簡単な構造にすることができ、部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の三輪車の第1の実施の形態を前方から見た斜視図である。
【図2】図1に示す三輪車をA−A′線で断面して示す断面図である。
【図3】本発明の三輪車の第1の実施の形態を後方から見た斜視図である。
【図4】本発明の三輪車の第1の実施の形態に係る連結部材の説明図である。
【図5】本発明の三輪車の第1の実施の形態に係る連結部材の取り付け状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の三輪車の第1の実施の形態に係る連結部材の取り付け状態を示す断面図である。
【図7】本発明の三輪車の第1の実施の形態に係る制限リンク部材を示す断面図である。
【図8】本発明の三輪車の第1の実施の形態に係る第1の車体部材を第2の車体部材に対して揺動させた状態の正面図である。
【図9】図8に示す状態の三輪車における連結部材の捩れ状態を示めす斜視図である。
【図10】本発明の三輪車の第2の実施の形態を示す説明図である。
【図11】図10に示す三輪車をB−B′線で断面して示す断面図である。
【図12】本発明の三輪車の第2の実施の形態に係るテンションロッドの取付け位置を上下方向に移動させた例を示す側面図である。
【図13】本発明の三輪車の第2の実施の形態に係るテンションロッドの取付け位置を左右方向に移動させた例を示す平面図である。
【図14】本発明の三輪車の第3の実施の形態を示す説明図である。
【図15】本発明の三輪車の第3の実施の形態に係る連結部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の三輪車の実施の形態について、図1〜図14を参照して説明する。各図において共通の部材には、同一の符号を付している。なお、以下の説明では、三輪車の進行方向を前後方向とし、進行方向の前方を向いた状態で上下方向、左右方向を示す。
また、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.第3の実施の形態
【0014】
〈1.第1の実施の形態〉
[三輪車]
まず、本発明の三輪車の第1の実施の形態の構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の三輪車の第1の実施の形態を前方から見た斜視図である。
【0015】
三輪車1は、いわゆる三輪自転車である。この三輪車1は、第1の車体部材2と、第2の車体部材3と、第1の車体部材2を第2の車体部材3に対して揺動可能に連結する連結部材4と、ストッパ部の一具体例を示す一対のワイヤ5A,5B(図3参照)とを備えている。
【0016】
[第1の車体部材]
次に、第1の車体部材2について、図1及び図2を参照して説明する。
図2は、図1に示す三輪車1をA−A′線で断面して示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、第1の車体部材2は、前フレーム11と、操作軸12と、ハンドル13と、フロントフォーク14と、前輪15と、シート16とを備えている。前フレーム11は、前後方向に延びており、下方に開口する略コ字状(図2参照)の部材からなっている。この前フレーム11の前部には、操作軸12が回動可能に挿通されるヘッドパイプ部18が設けられている。
【0018】
操作軸12は、上下方向に対して傾斜した方向に延びており、下端部がヘッドパイプ部18に挿通されている。この操作軸12の上端には、左右方向に延びるハンドル13が連続している。ハンドル13の右端部には、前輪15を制動するためのブレーキレバー19Rが取り付けられており、左端部には、後述する後輪33R,33Lを制動するためのブレーキレバー19Lが取り付けられている。
【0019】
操作軸12の下端は、フロントフォーク14に固定されている。このフロントフォーク14には、前輪15を回転可能に支持する前車軸21と、前輪15の上方に位置するフェンダ22が設けられている。シート16は、固定用ブラケット23を介して前フレーム11の上部に固定されている。
【0020】
図2に示すように、第1の車体部材2の前フレーム11には、クランク軸25が回転自在に支持されている。このクランク軸25は、前フレーム11を左右方向に貫通している。クランク軸25の両端には、それぞれクランク26A,26Bが固定ねじ30,30によって固定されている。クランク26A,26Bの一端には、ペダル27A,27Bがそれぞれ回転自在に取り付けられている。
【0021】
また、クランク26Aの他端には、前側スプロケット28が固定されている。この前側スプロケット28は、クランク26A,26B及びクランク軸25と一体に回転される。前側スプロケット28と後述する後側スプロケット37(図3参照)には、無端状のチェーン29が係合されている。
【0022】
図2に示すように、前フレーム11は、上板部11aと、右板部11bと、左板部11cと、右板部11bに連続するカバー部11dからなっている。カバー部11dは、前側スプロケット28及びチェーン29を覆う。つまり、前フレーム11は、シート16を支持する役割と、前側スプロケット28及びチェーン29の一部を覆う役割を兼ねている。
【0023】
[第2の車体部材]
次に、第2の車体部材について図3を参照して説明する。
図3は、本発明の三輪車1を後方から見た斜視図である。
【0024】
第2の車体部材3は、シート16の下方に位置し、前フレーム11の後部と上下方向で対向している。この第2の車体部材3は、後フレーム31と、軸受け部32R,32L(軸受部32Rは図5参照)と、後輪33R,33Lとを備えている。後フレーム31は、略四角形の枠体からなり、前部片31aと、一対の後部片31b,31cと、右側部片31dと、左側部片31eと、補強片31f,31fとを有している。
【0025】
前部片31aは、左右方向に延びる角筒体からなっている。この前部片31aの両端部には、後述するアクスルパイプ34R,34Lにそれぞれ連結される連結片35a,35bが設けられている。一対の後部片31b,31cは、それぞれ左右方向に延びる角筒体からなり、上下方向に対向している。
【0026】
右側部片31dと左側部片31eは、板体からなり、互いの平面が左右方向に対向している。右側部片31dは、一対の後部片31b,31cの一端と、前部片31aの中間部にそれぞれ連続している。また、左側部片31eは、一対の後部片31b,31cの一端と、前部片31aの中間部にそれぞれ連続している。
【0027】
補強片31f,31fは、右側部片31dと左側部片31eとの間に配置されている。これら補強片31f,31fは、前後方向に延びる角筒体からなり、左右方向に適当な間隔をあけて設けられている。補強片31f,31fの一端は、前部片31aに連続しており、他端は後部片31bに連続している。
【0028】
軸受け部32R,32Lは、アクスルパイプ34R,34Lを介して後フレーム31に接続されている。これらアクスルパイプ34R,34Lは、後フレーム31の左右の側部片31d,31eに連続してそれぞれ左右方向の外側に突出する円筒状に形成されている。軸受け部32R,32Lは、アクスルパイプ34R,34Lの先端部に設けられている。これら軸受け部32R,32Lには、後車軸36が回転可能に嵌合される。後車軸36は、アクスルパイプ34R,34Lと後フレーム31の左右の側部片31d,31eを貫通している。この後車軸36の一端には後輪33Rが固定され、他端には後輪33Lが固定されている。
【0029】
後車軸36の中間部には、後側スプロケット37が固定されている。上述したように、後側スプロケット37と前側スプロケット28には、チェーン29が係合されている。ペダル27A,27Bを用いて加えられたクランク26A,26Bの回転力は、前側スプロケット28及びチェーン29を介して後側スプロケット37に伝達される。その結果、後側スプロケット37と一体に後車軸36が回転し、後輪33R,33Lが回転駆動される。
【0030】
[ストッパ部]
次に、ストッパ部の一具体例を示すワイヤ5A,5Bについて説明する。
ワイヤ5A,5Bは、第2の車体部材3と第1の車体部材2との相対的な揺動を所定の範囲で制限する。これらワイヤ5A,5Bの一端は、前フレーム11に接続されており、他端は後フレーム31の後部片31cに接続されている。
【0031】
図3に示すように、第1の車体部材2が基準位置(第2の車体部材3に対して揺動していない位置)にある場合は、ワイヤ5A,5Bが弛んだ状態になっている。そして、第1の車体部材2が基準位置に対して右方向へ所定の角度まで揺動すると、ワイヤ5Aが張った状態となり、第1の車体部材2の右方向へ揺動が制限される。これと同様に、第1の車体部材2が基準位置に対して左方向へ所定の角度まで揺動すると、ワイヤ5Bが張った状態となり、第1の車体部材2の左方向へ揺動が制限される。
【0032】
本実施の形態では、ストッパ部としてワイヤ5A,5Bを用いたが、本発明に係るストッパ部はこれに限定されるものではない。本発明に係るストッパ部としては、例えば、第1の車体部材2に設けられた係合部と、第2の車体部材3に設けられ、第1の車体部材2を揺動させたときに係合部が当接する係止部とから構成してもよい。
【0033】
[連結部材]
次に、連結部材について図4を参照して説明する。
図4は、連結部材4の説明図である。
【0034】
連結部材4は、略長方形の板状に形成されており、長手方向を軸として捩れ変形可能であると共に、撓み変形も可能な弾性体になっている。この連結部材4は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなっている。すなわち、連結部材4は、炭素繊維からなる複合材料積層板4aと、複合材料積層板4aの表面を覆うアラミド繊維(aramid fiber)からなる表層部4bから構成されている。
【0035】
炭素繊維を用いて連結部材4を形成すると、連結部材4の捩れ変形に対する剛性と、撓み変形に対する剛性を異ならせることができる。本実施の形態では、第1の車体部材2が第2の車体部材3に対して揺動するように、連結部材4の捩れ変形に対する剛性を設定し、撓み変形に対する剛性を捩れ変形に対する剛性よりも高くしている。また、炭素繊維は、金属に比べて減衰係数が高いため、捩れ変形或いは撓み変形した連結部材4が元の形状に戻るまでに要する時間を短くすることできる。
【0036】
炭素繊維としては、ピッチ系材料(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料にしたものと、PAN系材料(ポリアクリロニトリル繊維)を原料にしたものを挙げることができる。複合材料積層板4aを形成する炭素繊維としては、減衰特性に優れた(減衰係数が高い)ピッチ系材料を適用することが好ましい。
【0037】
本発明に係る連結部材としては、捩れ変形及び撓み変形が可能な部材であればよく、例えば、鋼材、アルミニウム、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)から形成することもできる。なお、本発明に係る連結部材の捩れ変形及び撓み変形に対する剛性は、第1の車体部材2の重量、揺動の角度範囲の設定、減衰係数などを考慮して適宜設定することができる。
【0038】
[連結部材の取り付け状態]
次に、連結部材4を第1の車体部材2及び第2の車体部材3に取り付けた状態について、図5及び図6を参照して説明する。
図5は、連結部材4の取り付け状態を示す斜視図であり、図6は、連結部材4の取り付け状態を示す断面図である。
【0039】
第1の車体部材2の前フレーム11には、連結部材4の一端を取り付けるための前側ブラケット41が設けられている。前側ブラケット41は、横長の直方体に形成されている。この前側ブラケット41の長手方向一端は、前フレーム11の右板部11bに固定され、他端は前フレーム11の左板部11cに固定されている。そのため、前側ブラケット41は、前フレーム11の剛性を高めるための補強部材としての役割も有している。
【0040】
なお、前フレーム11の上板部11aには、制限リンク部材51の一端を取り付けるための軸支持部42,42が設けられている。この制限リンク部材51については、後で詳しく説明する。
【0041】
第2の車体部材3の後フレーム31には、連結部材4の一端を取り付けるための後側ブラケット43が設けられている。後側ブラケット43は、略L字状に形成されており、固定片43aと、取付片43bからなっている(図6参照)。後側ブラケット43の固定片43aは、後フレーム31の前部片31aにねじや接着剤または溶接等の固定方法によって固定されている。取付片43bの上面には、制限リンク部材51の他端を取り付けるための軸支持部44,44が設けられている。
【0042】
連結部材4の長手方向の一端は、前側ブラケット41にボルト47及びナット48によって固定されている。また、連結部材4の長手方向の他端は、後側ブラケット43の取付片43bにボルト47及びナット48によって固定されている。これにより、第1の車体部材2と第2の車体部材3は、相対的に揺動可能であって、且つ、相対的に上下方向に移動可能に連結される。
【0043】
なお、連結部材4が前側ブラケット41及び後側ブラケット43に固定された状態において、連結部材4の短手方向は、水平方向と平行になっている。つまり、連結部材4は、左右方向に対して傾いていない状態で第1の車体部材2と第2の車体部材3を連結する。
【0044】
[制限リンク部材]
次に、制限リンク部材51について図6及び図7を参照して説明する。
図7は、制限リンク部材51を示す断面図である。
【0045】
制限リンク部材51は、第1の車体部材2と第2の車体部材3に回動可能に取り付けられており、第1の車体部材2と第2の車体部材3の相対的な上下方向の移動を制限する。この制限リンク部材51は、球面軸52,53と、リンク本体54を備えている。
【0046】
球面軸52は、前フレーム11の上板部11aに設けた軸支持部42,42にボルト57及びナット58によって固定されている。また、球面軸53は、後フレーム31の後側ブラケット43に設けた軸支持部44,44にボルト57及びナット58によって固定されている。
【0047】
リンク本体54は、伸縮可能に構成されており、外筒部55と、この外筒部55に摺動可能に嵌合される内筒部56とを有している。外軸部55は、円筒状に形成されている。この外筒部55の一端には、球面軸52に回動可能に嵌合する球面軸受け55aが設けられている。内筒部56は、外筒部55の内径よりも小さい外径の円筒状に形成されている。この内筒部56の他端(下端)には、球面軸53に回動可能に嵌合する球面軸受け56aが設けられている。
【0048】
リンク本体54は、使用者がシート16に座っていない空車状態において最も短くなるように設定されている。そのため、前フレーム11と後フレーム31との上下方向の間隔は、常に所定の距離(制限リンク部材51と略等しい距離)以上に保たれるようになっている。つまり、前フレーム11と後フレーム31は、上下方向に接近しないようになっている。
【0049】
これにより、後フレーム31が上方に移動して前フレーム11と干渉することを防止することができる。また、使用者の荷重などにより前フレーム11を下方に押圧する荷重が加えられても、その荷重による力を連結部材4に伝えないようにすることができる。その結果、前フレーム11に荷重が加わることによって連結部材4が撓むことを防止することができる。
【0050】
ところで、制限リンク部材51は、球面軸52,53と、球面軸受け55a,56aによって前フレーム11と後フレーム31に回動可能に取り付けられている。そのため、制限リンク部材51は、球面軸52,53に対する球面軸受け55a,56aの姿勢が変更可能な範囲内で移動することができる。
【0051】
したがって、制限リンク部材51は、移動可能な範囲内において、連結部材4の撓み変形に応じた移動を行うことができる。その結果、走行中の路面の凹凸による振動を連結部材4によって緩和させることができる。
【0052】
[第1の車体部材の揺動動作]
次に、第2の車体部材3に対する第1の車体部材2の揺動動作について、図8及び図9を参照して説明する。
図8は、第1の車体部材2を第2の車体部材3に対して揺動させた状態の三輪車1の正面図である。図9は、図8に示す状態の三輪車1における連結部材の捩れ状態を示めす斜視図である。
【0053】
例えば、使用者がシート16に座って、姿勢を右方向に傾けると、第1の車体部材2を右方向へ押す力が生じる。この第1の車体部材2を右方向へ押す力は、第1の車体部材2と第2の車体部材3を連結する連結部材4に加わり、連結部材4が捩れ変形する(図9参照)。これにより、第1の車体部材2は、第2の車体部材3に対して揺動して右方向に傾く(図8を参照)。このとき、制限リンク部材51は、第1の車体部材2の揺動に追従するように、前フレーム11及び後フレーム31に対して回動する。
【0054】
第1の車体部材2の右方向への揺動は、ワイヤ5Aによって所定の角度で制限される。一方、捩れ変形した連結部材4には、元の形状の戻ろうとする復元力(反力)が生じる。そのため、第1の車体部材2を右方向に押す力が無くなると、第1の車体部材2が第2の車体部材3に対して左方向に揺動し、基準位置に復帰する。
【0055】
第2の車体部材3に対する第1の車体部材2の左方向への揺動については、上述した右方向への揺動と同様に行われるため、説明を省略する。なお、第1の車体部材2の左方向への揺動は、ワイヤ5Bによって所定の角度で制限される。
【0056】
[第1の実施の形態の効果]
本実施の形態の三輪車1によれば、第2の車体部材3に対して第1の車体部材2を揺動させる揺動機構を連結部材4のみによって実現することができる。したがって、揺動機構を簡単な構造にすることができ、部品点数の削減を図ることができる。
【0057】
本実施の形態の三輪車1によれば、制限リンク部材51によって前フレーム11と後フレーム31が上下方向に接近しないようにした。そのため、後フレーム31が上方向に移動して前フレーム11と干渉することを避けることができる。また、連結部材4が撓み変形することを防止或いは抑制することができる。その結果、撓み変形に対する剛性を考慮せずに、捩れ変形に対する剛性を考慮して連結部材4の設計を行うことができる。
【0058】
本実施の形態の三輪車1によれば、連結部材4の表面にアラミド繊維からなる表層部4bを設けた。そのため、連結部材4の基材となる複合材料積層板4aに物性限界を超えた応力が生じて複合材料積層板4aが破断しても、破断した複合材料積層板4aが飛散することを防止できる。なお、本発明に係る表層部としては、樹脂チューブなど複合材料積層板4aが飛散することを防ぐその他の材料から構成することができる。
【0059】
本実施の形態の三輪車1によれば、前フレーム11がカバー部11dを有するようにした。そのため、前フレーム11によって前側スプロケット28及びチェーン29の一部を覆うことができる。
【0060】
本実施の形態の三輪車1では、第1の車体部材2と第2の車体部材3の上下方向の相対的な移動を制限する制限リンク部材51を設ける構成としたが、本発明に係る三輪車としては、制限リンク部材51を設けない構成にすることもできる。
【0061】
制限リンク部材51を設けない場合は、前フレーム11に荷重が加わると、連結部材4が撓み変形する。また、撓み変形した連結部材4には、元の形状に戻ろうとする復元力(反力)が生じる。そのため、制限リンク部材51を設けない場合には、走行中の路面の凹凸に追従して連結部材4を撓み変形させ、連結部材4に緩衝機能を発揮させることができる。しかも、連結部材4に対して撓み変形と捩じり変形を同時に生じさせることができるため、一般的なサスペンションを有する三輪車よりも、路面の凹凸に対する追従動作を高精度に行うことができ、操縦性、安定性を向上させることができる。
【0062】
本実施の形態の三輪車1では、制限リンク部材51のリンク本体54を、空車状態において最も短くなるように設定し、前フレーム11と後フレーム31が上下方向に接近しないようにした。しかしながら、本発明に係る制限リンク部材としては、前フレーム11と後フレーム31が上下方向に適当な距離だけ接近するように、伸縮可能な範囲を設定してもよい。このような制限リンク部材を用いると、後フレーム31が上方向に移動して前フレーム11と干渉することを避けることができると共に、連結部材4の緩衝機能を向上させることができる。
【0063】
また、本発明にかかる制限リンク部材としては、長さが固定されたリンク本体を用いて構成することもできる。つまり、リンク本体を1本の軸部から構成してもよい。この場合は、1本のリンク本体の両端に球面軸受けが設けられる。このような制限リンク部材においても、第1の実施の形態に係る制限リンク部材51と同様の効果を得ることができる。
【0064】
本実施の形態の三輪車1では、第1の車体部材2が第2の車体部材3に対する基準位置にあるとき、連結部材4の平面部が上下方向を向くようになっているが、平面部が左右方向を向くように連結部材4を取り付けてもよい。
【0065】
この場合は、連結部材4の短手方向が上下方向に略一致する。連結部材4は、短手方向に撓み難い形状であるため、連結部材4の平面部を左右方向に向けると、第1の車体部材2と第2の車体部材3の上下方向の相対的な移動の範囲が短くなる。
【0066】
〈2.第2の実施の形態〉
[三輪車]
次に、本発明の三輪車の第2の実施の形態について、図10及び図11を参照して説明する。
図10は、本発明の三輪車の第2の実施の形態を示す説明図である。図11は、図10に示す三輪車をB−B′線で断面して示す断面図である。
【0067】
第2の実施の形態の三輪車61は、第1の実施の形態の三輪車1と同様の構成を有しており、異なるところは、一対のテンションロッド62A,62Bを設けたことである。そのため、ここでは、一対のテンションロッド62A,62Bについて説明し、三輪車1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0068】
[テンションロッド]
図10に示すように、三輪車61の一対のテンションロッド62A,62Bは、連結部材4の左右方向の両側にそれぞれ配置されている。テンションロッド62Aは、前フレーム11の左板部11cに固定されたロッド用ブラケット64と、後フレーム31の前部片31aに固定されたロッド用ブラケット64に揺動可能に取り付けられている。
【0069】
また、テンションロッド62Bは、前フレーム11の右板部11b(図7参照)に固定されたロッド用ブラケット(不図示)と、後フレーム31の前部片31aに固定されたロッド用ブラケット64に揺動可能に取り付けられている。不図示のロッド用ブラケットは、ロッド用ブラケット64と同一のものである。
【0070】
図11に示すように、ロッド用ブラケット64は、断面形状がコ字状に形成されており、上下方向に対向するねじ固定部64a,64bと、これらねじ固定部64a,64bに直交する側部64cからなっている。ねじ固定部64a,64bのそれぞれの中央部には、ボルト68が貫通する貫通孔64d,64eが設けられている。ねじ固定部64a,64bの間には、筒軸66が介在されている。この筒軸66は、ボルト68及びナット69によって固定されている。
【0071】
テンションロッド62A,62Bの両端には、カラー状の連結部71が設けられている。この連結部71の貫通孔には、ロッド用ブラケット64にボルト68とナット69により固定された筒軸66が貫通している。連結部71と筒軸66との間には、弾性を有するブッシュ72が介在されている。これにより、テンションロッド62A,62Bは、前フレーム11及び後フレーム31に揺動可能に連結されている。
【0072】
テンションロッド62A,62Bは、第1の車体部材2と第2の車体部材3との相対的な揺動に対して抵抗力を生じさせる。これにより、第1の車体部材2が第2の車体部材3に対して傾く特性を制御、調整することができる。この第1の車体部材2が傾く速度は、ブッシュの硬度、テンションロッド62A,62Bの取付け位置などによって調節することができる。
【0073】
図12は、テンションロッド62A,62Bの取付け位置を上下方向に移動させた例を示す説明図である。
図12において、三輪車61のテンションロッド62A,62Bは、実線で示している。つまり、第2の実施の形態では、テンションロッド62A,62Bを連結部材4と略同じ高さで略平行に取り付けられている。
【0074】
このテンションロッド62A,62Bの取付け位置を下方に移動(破線C参照)させると、第1の車体部材2と第2の車体部材3との相対的な揺動に対する抵抗力を大きくすることができる。その結果、第1の車体部材2が第2の車体部材3に対して傾く特性を制御、調整することができる。なお、テンションロッド62A,62Bの取付け位置を上方に移動させても、第1の車体部材2が第2の車体部材3に対して傾く特性を制御、調整することができる。
【0075】
また、テンションロッド62A,62Bを連結部材4に対して傾斜(破線D参照)させて取り付けた場合にも、第1の車体部材2と第2の車体部材3との相対的な揺動に対する抵抗力が大きくなり、第1の車体部材2が傾く速度をより遅くすることができる。
【0076】
図13は、テンションロッド62A,62Bの取付け位置を左右方向に移動させた例を示す説明図である。
図13において、三輪車61のテンションロッド62A,62Bは、実線で示している。つまり、第2の実施の形態におけるテンションロッド62A,62Bの取付け位置は、左右方向で連結部材4を挟んで適当な距離Lだけ離れている。
【0077】
このテンションロッド62A,62Bの取付け位置の間隔や角度を変化させる(破線E参照)と、第1の車体部材2と第2の車体部材3との相対的な揺動に対する抵抗力を大きくすることができる。その結果、第1の車体部材2が第2の車体部材3に対して傾く速度をより遅くすることができる。このように、第1の車体部材2が傾く速度は、テンションロッド62A,62Bの取付け位置によって調節することができる。
【0078】
本実施の形態の三輪車61では、テンションロッド62A,62Bの連結部71と筒軸66との間に弾性を有するブッシュ72を介在させる構成にした。しかしながら、本発明に係るテンションロッドとしては、例えば、両端を球面軸及び球面軸受けを用いて前フレーム11と後フレーム31に取り付けると共に、中間部を弾性体で形成する構成にしてもよい。
【0079】
〈3.第3の実施の形態〉
[三輪車]
次に、本発明の三輪車の第3の実施の形態について、図14及び図15を参照して説明する。
図14は、本発明の三輪車の第3の実施の形態を示す説明図である。図15は、本発明の三輪車の第3の実施の形態に係る連結部材の説明図である。
【0080】
第3の実施の形態の三輪車81は、第1の実施の形態の三輪車1と同様の構成を有しており、異なるところは、連結部材84のみである。そのため、ここでは、連結部材84について説明し、三輪車1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0081】
[連結部材]
三輪車81の連結部材84は、炭素繊維からなる複合材料積層ロッド85と、複合材料積層ロッド85の表面を覆う表層部86から構成されている。表層部86は、アラミド繊維等によって形成されている。複合材料積層ロッド85は、平面形状がH字状に形成されており、細長の直方体状に形成された変形部85aと、この変形部85aの両端に連続する取付部85b,85cからなっている。
【0082】
変形部85aは、長手方向を軸として捩れ変形可能であり、且つ、厚み(上下)方向に撓み変形可能な弾性体になっている。この変形部85aは、厚み方向の長さが短手方向の長さよりも長くなっている。そのため、変形部85aは、撓み変形に対する剛性が捩れ変形に対する剛性よりも高くなっている。
【0083】
連結部材4の取付部85bは、前側ブラケット41に固定され、取付部85cは、後側ブラケット43に固定される(図14参照)。これにより、第1の車体部材2と第2の車体部材3は、相対的に揺動可能であって、且つ、相対的に上下方向に移動可能に連結される。
【0084】
本発明は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施の形態では、連結部材を板状、H字状に形成した。しかしながら、本発明に係る連結部材としては、捩れ変形及び撓み変形が可能なであればよく、捩れ変形及び撓み変形に対する剛性、減衰特性、設置スペースなどを考慮して形状を適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0085】
1,61,81…三輪車、 2…第1の車体部材、 3…第2の車体部材、 4,84…連結部材、 5A,5B…ワイヤ(ストッパ部)、 11…前フレーム、 11d…カバー部、 15…前輪、 31…後フレーム、 33L,33R…後輪、 41…前側ブラケット、 43…後側ブラケット、 51…制限リンク部材、 52,53…球面軸、 54…リンク本体、 55…外軸部、 56…内軸部、 62A,62B…テンションロッド、 64…ロッド用ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの前輪を回転可能に支持する第1の車体部材と、
2つの後輪を回転可能に支持する第2の車体部材と、
前記第1の車体部材と前記第2の車体部材とを揺動可能に連結する捩れ変形が可能な連結部材と、
前記第1の車体部材と前記第2の車体部材との相対的な揺動を所定の範囲で制限するストッパ部と、
を備える三輪車。
【請求項2】
前記連結部材は、前記第1の車体部材と前記第2の車体部材の上下方向の相対的な移動によって撓み変形する
請求項1記載の三輪車。
【請求項3】
前記第1の車体部材と前記第2の車体部材の上下方向の相対的な移動を制限する制限リンク部材を有する
請求項2記載の三輪車。
【請求項4】
前記制限リンク部材は、球面軸と球面軸受けを用いて前記第1の車体部材と前記第2の車体部材にそれぞれ回動可能に取り付けられる
請求項3記載の三輪車。
【請求項5】
前記制限リンク部材は、伸縮可能に構成される
請求項3又は4記載の三輪車。
【請求項6】
前記連結部材は、炭素繊維強化プラスチックから形成される
請求項1〜5のいずれかに記載の三輪車。
【請求項7】
前記連結部材は、前記炭素繊維強化プラスチックを覆うアラミド繊維からなる表層部を有する
請求項6記載の三輪車。
【請求項8】
前記連結部材は、板状に形成されている
請求項1〜7のいずれかに記載の三輪車。
【請求項9】
前記第1の車体部材と前記第2の車体部材に揺動可能に取り付けられ、前記第2の車体部材に対する前記第1の車体部材の揺動に抵抗力を生じさせるテンションロッドを有する
請求項1〜8のいずれかに記載の三輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−228545(P2010−228545A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77185(P2009−77185)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000151276)株式会社東京アールアンドデー (34)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】