説明

中間ベースと、XYテーブルと、シール剤塗布装置および液晶パネルの製造方法

【課題】本発明は、所定の領域における変形量を抑制して信頼性の向上を得られる中間ベースと、この中間ベースを用いたXYテーブルと、この XYテーブルを用いたシール剤塗布装置と、このシール剤塗布装置を用いた液晶パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】中間ベース23は横長矩形状の板体であり、下面略中央部に長手方向とは直交する方向に亘るとともに両側端縁から突出して設けられ、端部に駆動モータ29が連結される第1のボールねじ27および、この両側部で軸方向に沿って並行して設けられる複数の第1のLMガイド26を備え、中央部2本の第1のLMガイド相互間で第1のボールねじが設けられる部位を領域Aとし、この領域Aの両側部位を領域Bとしたとき、領域Aにおける第1のボールねじに近接した位置に追設される少なくとも1本の第3のLMガイド30と、領域Bにおける板厚中に長手方向に沿って設けられ長手方向と直交する方向に互いに並行な複数の丸孔38とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間ベースと、この中間ベースをX/Yテーブルとして備えたXYテーブルと、このXYテーブルを用いて基板にシール剤を塗布するシール剤塗布装置と、このシール剤塗布装置を用いて液晶パネルを製造する液晶パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルを製造する過程で、シール剤塗布装置が用いられる。これは、ベース基台と、このベース基台上に載設されるXYテーブルと、前記ベース基台にコラムを介して備えられるZテーブルと、このZテーブルに取付けられるディスペンサノズルと、このディスペンサノズルにシール剤を供給するシール剤供給部とから構成される。
XYテーブルを構成する基板ステージ上にガラス基板を載置し、Zテーブルを駆動してディスペンサノズルを降下し、ノズル先端の吐出口とガラス基板との間隔を所定寸法に保持する。そして、XYテーブルとディスペンサノズルをガラス基板に対してX方向とY方向に相対移動させるとともに、ディスペンサノズルの吐出口からシール剤を供出してガラス基板に塗布する。
【0003】
[特許文献1]には、ディスペンサノズルとガラス基板との間隔を測定する間隔センサと、この間隔センサからの測定信号にもとづいて間隔を一定値に保つよう、ノズルをZ方向に駆動するリニアアクチュエータを備え、たとえガラス基板に反りが生じても、高速度で、かつ連続形状でシール剤を塗布できるシール剤供給装置が開示されている。
【特許文献1】特開平10−137655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のシール剤塗布装置において、シール剤を高速で塗布するとともに、シール剤を微量で塗布することが要求されている。しかしながら、高速塗布の実現は、装置自体の振動発生をともない、装置が微振動してもガラス基板とディスペンサノズルとの間隔が変動する。よって、塗布括れが出易く品質低下につながってしまう。そして、シール剤の微量塗布化は、前記塗布かすれを出現させ易くする。
【0005】
たとえ、前記[特許文献1]のシール剤供給装置を用いてガラス基板にシール剤を塗布しても、X方向からY方向への方向変換部分であるコーナー部では、XYテーブルを急激に加減速する必要がある。また、Y方向からX方向へのコーナー部でも同様に急激な加減速をなし、その影響で大きな力が発生して装置が振動する虞れがある。
なお説明すると、たとえば、XYテーブルの移動速度が100mm/sであり、コーナー部の曲率半径がR0.5mmとなるようにシール剤を塗布する際、コーナー部でのXYテーブルの必要とする加速度は2Gとなる。
【0006】
Xテーブルを高速移動して行っても、コーナー部に到達したら0.5mmの間で急減速してコーナー部を回り、そのあと停止させなければならない。一方、YテーブルはXテーブルの急減速にタイミングを合わせて発進し、スタート後0.5mmの間でコーナー部を回り、そのあと急加速して100mm/sに増速し移動しなければならない。
【0007】
実際に、従来のXYテーブルにおいて中間ベースを2Gの加速度で動かしたときに生じる変形状態を、有限要素法を用いてシュミレーションしてみた。その結果を、図10(A)(B)に示している。図10(C)は、実際の変位数値をハッチング・模様の種類別にして表している。
図の最上段はガラス基板を載置するための基板ステージ1であり、この基板ステージ1はトップ板2に支持される。トップ板2の下面には、運動直進性を実現する複数のLMガイド3を介して中間ベース4を備えている。中間ベース4の下面略中央部には、ここでは図示しないボールねじに螺合するナット部5が設けられる。
【0008】
図10(A)は、基板ステージ1がY方向からコーナー部を回ったあと、中間ベース4がX方向(図の手前側)へ急加速したときの変形状態であり、(U)は上方向への最大変位、(D)は下方向への最大変位を示し、(M)は最大と最小の中間変位を示している。したがって、中間変位(M)から最大変位(U)へ複数段階で変位が増大し、中間変位(M)から最小変位(D)へ複数段階で変位が小さくなる。
ボールねじによって変位させられる中間ベース4が、X方向へ急加速するのにともなって、基板ステージ1の手前側角部aが最大変位(U)となって最もめくり上がる。その一方で、X方向に反対側の角部bは最小変位(D)であって最も下がる変形をなす。図10(B)はY方向から見た図であるので、基板ステージ1は図の左側角部aが最大変位(U)で、右側角部bが最小変位(D)となる。
【0009】
再び図10(A)に示すように、中間ベース4はY方向に長い横長矩形状をなし、基板ステージ1の最も変形の大なる部位は中間ベース4下面に設けられる複数のLMガイド(図では、LMナット)6のうち、中央2本のLMガイド6相互間である中間の領域部分である。
この中間領域には、中間ベース4、トップ板2、基板ステージ1、Y方向に沿うボールねじ、ボールねじの駆動源、複数のLMガイド3など、中間ベース4を含む、中間ベース4上に載置される全ての構成部品の総質量に応じた慣性力が発生する。
したがって、中間領域における変形が、この両側の領域と比較して大きく、その結果、基板ステージ1自体が変形して傾き、基板ステージ1に載置される前記ガラス基板と、このガラス基板に対向するディスペンサノズルとの間隔が変動してしまい、シール剤塗布の不良原因となる。
【0010】
本発明は上記事情にもとづきなされたものであり、その目的とするところは、所定の領域に作用する慣性力が他の領域に作用する慣性力よりも大であることを前提として、この所定領域における変形量を抑制して、信頼性の向上を得られる中間ベースと、この中間ベースをXテーブルもしくはYテーブルとして用いることで品質の向上を得られるXYテーブルと、このXYテーブルを備えて高速塗布と微量塗布化を得られるシール剤塗布装置と、このシール剤塗布装置を用いて生産性の向上を得られる液晶パネルの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を満足するため本発明の中間ベースは、横長矩形状に形成される板体であり、下面略中央部に長手方向とは直交する方向に亘るとともに両側端縁から突出して設けられ端部に駆動機構が連結される第1のボールねじおよび、このボールねじの両側部で軸方向に沿って並行して設けられ運動直線性を実現する複数の第1のLMガイドを備え、第1のLMガイドにおける中央部にある2本の第1のLMガイド相互間で第1のボールねじが設けられる部位を領域Aとし、この領域Aの両側部位を領域Bとしたとき、
領域Aにおける前記第1のボールねじに近接した位置に追設される少なくとも1本の第3のLMガイドと、領域Bにおける板厚中に長手方向に沿って設けられ長手方向と直交する方向に互いに並行な複数の孔部とを具備する。
【0012】
上記目的を満足するため本発明のXYテーブルは、中間ベースをXYテーブルとして、第1のボールねじおよび第1のLMガイドを介して支持するベース基台と、中間ベース上に長手方向に沿って載設され端部に駆動機構が連結される第2のボールねじおよび第2のボールねじの軸方向に沿って並行に設けられる複数の第2のLMガイドと、第2のボールねじおよび第2のLMガイドに支持されY/Xテーブルとなるトップ板とを具備する。
【0013】
上記目的を満足するため本発明のシール剤塗布装置は、ガラス基板を載置するトップ板を備えたXYテーブルと、このXYテーブルに載置されるガラス基板に対し先端吐出口を対向して配置されるディスペンサノズルと、このディスペンサノズルにシール剤を供給し先端吐出口から基板にシール剤を塗布させるシール剤供給部とを具備する。
上記目的を満足するため本発明の液晶パネルの製造方法は、シール剤塗布装置を用いて、ディスペンサノズルとXYテーブルをガラス基板の面に沿ってX方向とY方向に相対移動させガラス基板にシール剤を塗布して液晶パネルを製造する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定領域の変形量を抑制して信頼性の向上を得られる中間ベースと、この中間ベースをX/Yテーブルとして品質の向上を得られるXYテーブルと、このXYテーブルを備えて高速塗布と塗布量の微量化を得られるシール剤塗布装置と、このシール剤塗布装置を用いて生産性の向上を得られる液晶パネルの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて説明する。
図1はシール剤塗布装置10の概略の斜視図、図2はガラス基板11にシール剤を塗布する液晶パネル製造の途中工程を説明する斜視図である。
図1に示すように、液晶パネルの製造に用いられるシール剤塗布装置10は、ベース基台12と、このベース基台12上に載設されるXYテーブル20と、前記ベース基台12にコラム13を介して備えられるZテーブル14と、このZテーブル14に取付けられるディスペンサノズル15と、このディスペンサノズル15にシール剤を供給するシール剤供給部16とから構成される。
【0016】
前記XYテーブル20を構成する基板ステージ21上にガラス基板11を載置し、Zテーブル14を駆動してディスペンサノズル15を降下し、この先端供給口15aとガラス基板11との間隔を所定寸法に保持する。
そのあと、図2に示すようにXYテーブル20とディスペンサノズル15をガラス基板11の面に沿ってX方向とY方向に相対移動させ、同時に、シール剤供給部16からディスペンサノズル15へシール剤を供給して、ディスペンサノズル15の先端吐出口15aからガラス基板11に塗布する。
【0017】
シール剤塗布が完了したガラス基板11に対して、他のガラス基板を貼り合せたあと、シール剤の非塗布部分からガラス基板11相互間に液晶材料を供給する。そして、他の種々の工程を経て液晶パネルが製造される。
図3は前記XYテーブル20の斜視図、図4は図3の状態から基板ステージ21を取除いたXYテーブル20の斜視図、図5は図4の状態からトップ板22を取除いたXYテーブル20の斜視図、図6は図5の状態から中間ベース23を取除いたXYテーブル20の斜視図である。
【0018】
図中25はY方向の長さと、X方向の長さが略同一の矩形状に形成され、かつ所定板厚のベース基台である。このベース基台25のY方向の両側端部には、X方向全長に亘って第1のLMガイド26が敷設される。さらに、ベース基台25のY方向の中央部を基準にしてY方向の両側に所定間隔を存した位置にも第1のLMガイド26が敷設される。したがって、ベース基台25には合計4本の第1のLMガイド26が設けられる。
図6に示すように、全ての第1のLMガイド26における長手方向(X方向)の略中央部にはLMナット26aが設けられている。前記第1のLMガイド26のうち、中央2本の第1のLMガイド26相互間で、かつ中央部に、ベース基台25のX方向全長に亘って第1のボールねじ27が設けられる。この第1のボールねじ27の一端部は軸受部28によって軸支され、他端部には駆動モータ(駆動機構)29が連結される。
【0019】
前記第1のボールねじ27における軸方向の略中央部にはナット部27aが設けられている。このナット部27aの位置と、第1のLMガイド26を構成するLMナット26aの位置は、互いにベース基台25におけるX方向の略中央部となる。
前記第1のボールねじ27と並行して、第1のボールねじ27の一側部には第3のLMガイド30が設けられ、かつ第3のLMガイド30とは第1のボールねじ27を介した反対側の側部に、リニアスケール32が並行して設けられる。第3のLMガイド30を構成するLMナット30aの位置は、第1のLMガイド26のLMナット26aと同位置に揃えられる。
【0020】
前記第1、第3のLMガイド26,30を構成するLMナット26a,30aおよび第1のボールねじ27のナット部27a上には、図5に示すように中間ベース23が載設される。この中間ベース23のY方向長さは、ベース基台25のY方向長さと略同一であり、X方向長さは、中間ベース23を各第1、第3のLMガイドLMナット26a,30aと第1のボールねじナット部27aに取付けるのに必要最小限の長さに形成されている。
換言すれば、中間ベース23はY方向に長く、X方向に狭い幅の横長矩形状に形成される板体であり、第1のLMガイド26と第3のLMガイド30および第1のボールねじ27を介してベース基台25に支持され、第1、第3のLMガイド26,30および第1のボールねじ27ともに、中間ベース23のX方向の両側縁から突出する。
【0021】
前記第1のボールねじ27を回転駆動することにより、中間ベース23は第1のボールねじ27の回転方向に応じてX方向に沿って進退移動する。このとき、第1のLMガイド26および第3のLMガイド30は、ともに中間ベース23の運動直進性を実現するように機能する。
前記リニアスケール32は、中間ベース23のX方向の変位量を計測する機能を有する。そして、リニアスケール32を第1のボールねじ27に可能な限り近接した位置に設けることで、リニアスケール32の中間ベース23に対する計測精度を高く保持できる。
【0022】
前記中間ベース23上のX方向の両側部で、かつY方向全長に亘って第2のLMガイド33が取付けられる。したがって、前記第2のLMガイド33は2本取付けられることになる。
【0023】
さらに、中間ベース23上のX方向の略中央部で、Y方向全長に亘って第2のボールねじ35が取付けられる。この第2のボールねじ35の一端部には軸受部36が設けられ、他端部には駆動モータ(駆動機構)37が連結される。さらに、ここでは図示していないが、前記第2のボールねじ35と並行してリニアスケールが設けられている。このリニアスケールも、トップ板22のY方向の変位量を計測する機能を有する。
なお、図5においては第2のボールねじ35を構成するナット部35aを示しているが、第2のLMガイド33のLMナットは図示を省略している。これらナット部35aとLMナットとに亘って、図4に示すようにトップ板22が取付けられる。
【0024】
したがって、第2のボールねじ35を回転駆動することにより、トップ板22は第2のボールねじ35の回転方向に応じてY方向に沿って進退移動し、このとき第2のLMガイド33は中間ベース23の運動直進性を実現するように機能する。
なお、前記中間ベース23には、部分的に重量削減用の孔部38が設けられているが、これについては後述する。
前記トップ板22上には、図3に示すように基板ステージ21が載設されていて、これらでXYテーブル20が構成される。第1のボールねじ27を回転駆動すれば、中間ベース23は第2のLMガイド33および第2のボールねじ35とともに、トップ板22と基板ステージ21を載設したままX方向に移動変位する。また、第2のボールねじ35が回転駆動されれば、トップ板22と基板ステージ21がY方向に移動変位する。
【0025】
このようなXYテーブル20の中間ベース23に対し、前記第1のLMガイド26における中央部にある2本の第1のLMガイド26相互間で第1のボールねじ27が設けられる部位を領域Aと呼び、この領域Aの両側部位を領域Bと呼ぶ。
前記領域Aにおける第1のボールねじ27に近接した位置に、第1のボールねじ27と並行して前記第3のLMガイド30が設けられている。さらに、領域Aにおける第1のボールねじ27に隣接して、前記リニアスケール32を備えている。このリニアスケール32は、第3のLMガイド30とは第1のボールねじ27を介して反対側の側部に沿って設けられる。
【0026】
そして、領域Aには第1のボールねじ27が取付けられているため、中間ベース23、第2のLMガイド33、第2のボールねじ35、駆動モータ37、トップ板22、基板ステージ21など、中間ベース23を含む、中間ベース23より上に位置する全ての部品の総質量が慣性力として作用する。これに対して領域Bには、トップ板22および基板ステージ21の合計質量が慣性力として作用する。
当然ながら、領域Aにかかる部品の総質量が、領域Bにかかる部品の総質量よりもはるかに大であるから、領域Aに作用する慣性力は領域Bに作用する慣性力よりもはるかに大である。
【0027】
特に、図7に示すように、前記中間ベース23における領域Bの部分には、前記孔部38が設けられていて、ここでは孔部として丸孔(両側部は、長円状)が採用される。これら丸孔38は、中間ベース23の領域Bにおける板厚中に、中間ベース23の長手方向であるY方向に沿って設けられ、長手方向と直交する方向であるX方向に互いに並行している。
このことにより、中間ベース23の領域Aについては何らの加工も加えられていない中実状をなしているのに対して、この両側の領域Bにおいては複数の丸孔38が設けられることにより、中間ベース23の重量軽減化が図られている。
【0028】
すなわち、先に図10(A)(B)(C)で説明したように、従来構造のXYテーブルにおいて、可動部の質量がテーブル駆動時の慣性力となり、XYテーブルを部分的に変形させる力となることが判明している。しかしながら、単純な軽量化は剛性の低下を招くために、剛性低下を極力抑えながら軽量化する必要がある。
軽量化の基本的な考え方として、板体の断面積を半分にしたときの断面二次モーメントを比較してみた。
1. 幅寸法:b、板厚寸法:h、断面積S=b・hの板体を基準にしたとき、この板体の断面二次モーメントは、I=b・h/12となる。
2. 幅寸法:bは変らず、板厚を半分(h/2)としたときの断面二次モーメントは、Ia=b・h/96=(1/8)Iであり、断面二次モーメントは1/8となってしまい、幅寸法は保持したままの薄肉化は剛性にとって非常に不利である。
【0029】
3. 板厚寸法:h、個々の幅寸法bであり、合計の幅寸法が前記1.案の幅寸法の半分となるように複数に分割した板体を、非常に細い板で結合した場合の断面二次モーメントは、Ib=b・h/24=(1/2)Iとなり、断面二次モーメントは1/2となる。
4. 幅寸法:bを変えず、板厚寸法:h/4の極く薄い板体を2枚用意して、これらを非常に細い板で結合した場合の断面二次モーメントは、Ic=7・b・h3 /96=(1/1.14)Iであり、断面二次モーメントは0.875倍にしかならず、断面積が半減(質量低減に相当する)したわりには剛性が維持される。
【0030】
しかしながら、4.案では非常に細い板で幅寸法bの板体相互を連結しなければならず、XYテーブル20を構成するものとして現実的でない。そこで、4.案の延長として、幅寸法:b、板厚寸法:hの板体に直径dの丸孔をn個設けたものを5.案とする。
5. 丸孔の直径dを板厚寸法hの3/4とした場合の断面二次モーメントは、I=(1/12−9/512)・bh=(1/1.27)・I=0.789・Iとなり、断面二次モーメントは1/1.27(0.789)倍になって、断面積を縮小して剛性が確保される。
【0031】
丸孔を稠密に配置すると蜂の巣状になるところから、5.案の有効性が理解できる。また、部品製作においても、ガンドリルを使用すると深い孔の加工が可能となる。そして、丸孔であるために応力集中の可能性が低いので、前記中間ベース23における領域Bの軽量化のために、孔部38として丸孔を設けることとする。
なお、両側部の孔部38は長円状になっているが、これは孔部を設けたあとの板体の断面積を、孔部を設けない前における板体の断面積の1/2に設定するために、2つの丸孔の一部を互いに重ならせた状態で加工したことによる。したがって、板体の断面積もしくは丸孔の直径を設定し直すことにより、断面積を1/2としたうえで、上述の断面二次モーメントの数値に合わせた丸孔のみを備えることは可能である。
【0032】
再び図10(A)(B)に示すように、第1のボールねじを駆動して中間ベース4ごとトップ板2と基板ステージ1をX方向に急加速した状態で、トップ板2におけるX方向の手前側角部aが上がり、反対側の角部bが下がる大きな変形をきたすのは、特に中央2本のLMガイド6相互間の領域においてである。
そこで、本発明の実施の形態では、領域Aに設けられる第1のボールねじ27に限りなく接近した側部に沿って第3のLMガイド30を追設している。第3のLMガイド30は第1のボールねじ27の作用に何ら干渉することがなく、しかも領域Aの中央部に可能な限り近づけて備える。
【0033】
このようにして構成されるXYテーブル20を備えたシール剤塗布装置10であり、中間ベース23に対する領域Aに新たな第3のLMガイド30を追設したから、領域Aにおける変形を抑制できる。さらに、領域Bに複数の丸孔38を設けたから、領域Bの軽量化を図り、領域Bに作用する慣性力が小さくなって断面二次モーメントの低減を最小限にとどめることができ、領域Aの変形に対する抑制に寄与する。
なお、領域Aに対して作用する慣性力が大であるので、領域Aに軽量化のための孔部を設けることはない。また、トップ板22に対しても中間ベース23と同様の考え方で孔部を設けることで軽量化を図れる。
【0034】
以上述べた、中間ベース23とトップ板22の軽量化による加減速時の慣性力の低減と、中間ベース23の最も変形する部位に第3のLMガイド30を新たに設けることにより剛性が向上して、コーナー部塗布時におけるXYテーブル20の変形と、基板ステージ21の傾きを低減できる。
図9(A)(B)に有限要素法によりシュミレーションして求めたXYテーブル20の変形図を示す。図からも明らかなように、領域Aと領域Bにおける変位量は略等しくなり、図9(C)にも示すように変位量の絶対値は従来である図10(C)の略半分になっていて、バランスの取れた設計であることが分かる。
【0035】
したがって、液晶パネルの製造方法において、ガラス基板11にシール剤を塗布する工程では、より高速で、より微量のシール剤塗布が実現する。
なお、上記実施の形態では第1のボールねじ27の側部に沿ってリニアスケール32を備えているが、これに限定されるものではなく、特にリニアスケール32が不要の場合は、リニアスケール32の位置に第3のLMガイド30を備えることとする。
したがって、リニアスケール32を備えた場合に中間ベース23は5本のLMガイド26,30で支持されるが、リニアスケール32の代用として第3のLMガイド30を備えると、中間ベース23は6本のLMガイド26,30で支持されることになる。
【0036】
あるいは図8に示すように、リニアスケール32と中央部の第1のLMガイド26との間に、第3のLMガイド30を備えるようにしてもよい。前述したように、リニアスケール32を備える場合は、第1のボールねじ27に可能な限り近接した位置に設けることで、リニアスケール32の中間ベース23に対する計測精度を高く保持できる。
なお、本発明は上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。そして、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明における一実施の形態に係る、液晶パネル製造に用いられるシール剤塗布装置の概略斜視図。
【図2】同実施の形態に係る、シール剤塗布工程を説明する図。
【図3】同実施の形態に係る、XYテーブルの斜視図。
【図4】同実施の形態に係る、図3のXYテーブルから基板ステージを取外した斜視図。
【図5】同実施の形態に係る、図4のXYテーブルからトップ板を取外した斜視図。
【図6】同実施の形態に係る、図5のXYテーブルから中間ベースを取外した斜視図。
【図7】同実施の形態に係る、中間ベースの斜視図。
【図8】変形例の、XYテーブルの斜視図。
【図9】本発明の実施の形態に係る、有限要素法を用いてシュミレーションしたXYテーブルの変形図と変位量の説明図。
【図10】従来の、有限要素法を用いてシュミレーションしたXYテーブルの変形図と変位量の説明図。
【符号の説明】
【0038】
29…駆動モータ(駆動機構)、27…第1のボールねじ、26…第1のLMガイド、30…第3のLMガイド、38…孔部(丸孔)、23…中間ベース、32…リニアスケール、25…ベース基台、35…第2のボールねじ、33…第2のLMガイド、22…トップ板、20…XYテーブル、10…シール剤塗布装置、11…ガラス基板、15…ディスペンサノズル、16…シール剤供給部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長矩形状に形成される板体であり、
下面略中央部に、長手方向とは直交する方向に亘るとともに両側端縁から突出して設けられ、端部に駆動機構が連結される第1のボールねじおよび、前記第1のボールねじの両側部で、この軸方向に沿って並行して設けられ運動直線性を実現する複数の第1のLMガイドを備え、
前記第1のLMガイドにおける中央部にある2本の第1のLMガイド相互間で、前記第1のボールねじが設けられる部位を領域Aとし、
この領域Aの両側部位を領域Bとしたとき、
前記領域Aにおける前記第1のボールねじに近接した位置に追設される、少なくとも1本の運動直線性を実現する第3のLMガイドと、
前記領域Bにおける板厚中に長手方向に沿って設けられ、長手方向と直交する方向に互いに並行な複数の孔部と
を具備することを特徴とする中間ベース。
【請求項2】
前記領域Aにおける前記第1のボールねじに隣接して、リニアスケールを備えたことを特徴とする請求項1記載の中間ベース。
【請求項3】
前記第1のボールねじの一側部に隣接して前記リニアスケールが配置され、第1のボールねじの他側部に隣接して前記第3のLMガイドが配置されることを特徴とする請求項2記載の中間ベース。
【請求項4】
前記リニアスケールを介して、この一側部に、さらに別の第3のLMガイドが配置されることを特徴とする請求項2および請求項3のいずれかに記載の中間ベース。
【請求項5】
前記孔部は、丸孔であることを特徴とする請求項1記載の中間ベース。
【請求項6】
ベース基台と、
このベース基台上に、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の前記第1のボールねじおよび第1のLMガイドに支持される、XテーブルもしくはYテーブルである前記中間ベースと、
この中間ベース上に、中間ベースの長手方向に沿って載設され、端部に駆動機構が連結される第2のボールねじおよび、前記第2のボールねじの軸方向に沿って並行に設けられ運動直線性を実現する複数の第2のLMガイドと、
前記第2のボールねじおよび第2のLMガイドに支持される、YテーブルもしくはXテーブルであるトップ板と
を具備することを特徴とするXYテーブル。
【請求項7】
シール剤を基板に塗布するシール剤塗布装置において、
前記基板を載置するトップ板を備えた請求項6記載の前記XYテーブルと、
このXYテーブルに載置される基板に対し、先端吐出口を対向して配置されるディスペンサノズルと、
このディスペンサノズルにシール剤を供給し、先端吐出口から基板にシール剤を塗布させるシール剤供給部と
を具備することを特徴とするシール剤塗布装置。
【請求項8】
請求項7記載の前記シール剤塗布装置を用いて、前記ディスペンサノズルと前記XYテーブルをガラス基板の面に沿ってX方向とY方向に相対移動させ、ガラス基板にシール剤を塗布して液晶パネルを製造することを特徴とする液晶パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−319952(P2007−319952A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150529(P2006−150529)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】