説明

二重エネルギCT用の高速kVpスイッチング・システム及び方法

【課題】多重イメージング・エネルギ源を用いるCTシステムを提供する。
【解決手段】CTシステム(10)は、ガントリ(12)の開口部(48)を通るX線(16)を投射するX線源(14)を含む。X線源は、ターゲット(100)へ第1及び第2の電子ビーム(114、116)をそれぞれ放出する第1及び第2の陰極(102、104)と、第1及び第2の陰極にそれぞれ結合された第1及び第2のグリッディング電極(108、112)とを含む。本システムは、第1及び第2の陰極を第1及び第2の電圧までそれぞれ付勢する発生装置(29)と、ガントリの開口部を通過したX線を受け取る検出器(123)と、第1及び/又は第2のグリッディング電極にグリッディング電圧を印加して第1及び/又は第2の電子ビームの放出を阻止し、また検出器からイメージング・データを取得するように構成されている制御装置(28)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云えば、診断用イメージングに関し、より具体的には、多重エネルギ・イメージング用線源を使用して2つ以上のエネルギ範囲でイメージング・データを取得する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
典型的には、コンピュータ断層撮影(CT)イメージング・システムでは、X線源が扇形ビームを被検体又は物体、例えば、患者又は手荷物へ向けて放出する。以後、用語「被検体」又は「物体」は、イメージングすることのできる任意のものを含むものとする。ビームは、被検体によって減弱した後、放射線検出器アレイに入射する。減弱したビームの放射線強度は、典型的には、被検体によるX線ビームの減弱に依存する。検出器アレイの各検出器素子は、その素子が受け取った減弱したビームを表す別々の電気信号を生成する。これらの電気信号は分析のためにデータ処理システムへ伝送され、データ処理システムが最終的に画像を生成する。
【0003】
一般に、X線源及び検出器アレイはイメージング平面内でガントリを中心にして被検体の周りを回転する。X線源は典型的にはX線管を含み、X線管は焦点でX線ビームを放出する。X線検出器は、典型的には、検出器で受け取るX線ビームをコリメートするためのコリメータと、コリメータに隣接してX線を光エネルギへ変換するシンチレータと、隣接したシンチレータからの光エネルギを受け取って、そこから電気信号を生成するフォトダイオードとを含む。
【0004】
典型的には、シンチレータ・アレイの各シンチレータはX線を光エネルギへ変換する。各シンチレータは、それに隣接したフォトダイオードへ光エネルギを放出する。各フォトダイオードは光エネルギを検出して、対応する電気信号を発生する。次いで、フォトダイオードの出力が、画像再構成のためにデータ処理システムへ伝送される。
【0005】
CTイメージング・システムは、材料分解又は有効Z推定のためのデータを取得するために、エネルギ検知(ES)、多重エネルギ(ME)及び/又は二重エネルギ(DE)CTイメージング・システムを含むことができ、これらはESCT、MECT及び/又はDECTイメージング・システムと呼ぶことができる。このようなシステムは、シンチレータ、或いはシンチレータの代わりに直接変換検出器材料を使用することができる。ESCT、MECT及び/又はDECTイメージング・システムは、一例では、異なるX線スペクトルに応答するように構成される。例えば、従来の第3世代のCTシステムはX線管の異なるピーク・キロボルト(kVp)動作レベルで逐次的に投影を取得することができ、それらのレベルは、放出X線ビームを構成する入射フォトンのエネルギのピーク及びスペクトルを変化させる。エネルギ検知検出器は、検出器に到達する各X線フォトンをそのフォトン・エネルギにより記録するように使用することができる。
【0006】
エネルギ検知測定値を求めるための技術は、(1)2つの明確に区別できるエネルギ・スペクトルを用いて走査すること、及び(2)検出器におけるエネルギ蓄積に従ってフォトン・エネルギを検出することを有する。ESCT/MECT/DECTはエネルギ弁別及び材料特徴付けを行える。例えば、物体散乱がない場合、システムは、スペクトルからの2つの相対的なフォトン・エネルギ領域、すなわち、入射X線スペクトルの低エネルギ及び高エネルギ部分からの信号に基づいて異なるエネルギにおける挙動を導き出す。医用CTに関連した所与のエネルギ領域では、2つの物理的過程がX線減弱を支配する。すなわち、それは(1)コンプトン散乱と、(2)光電効果である。2つのエネルギ領域からの検出された信号が、イメージングしている材料のエネルギ依存性を解消するための充分な情報を供給する。更にまた、2つのエネルギ領域からの検出された信号は、2つの仮想の材料より成る物体の相対組成、又は走査された物体の実効原子数分布を決定するための充分な情報を提供する。
【0007】
エネルギ検知走査の主な目的は、異なる色エネルギ状態で2つの走査を利用することによって画像内の情報(コントラスト分離、材料特異性など)を向上させた診断用CT画像を得ることである。エネルギ検知走査を達成するために提案された多数の技術は、(1)時間的に相次いで2つの走査を取得するか(この場合、ガントリを被検体の周りに2回転させることを必要とする)、又は(2)被検体の周りに1回転させることを必要とする回転角度の関数としてインターリーブされた2つの走査を取得することを含み、その際に、X線管は、例えば、80kVp及び140kVpの電圧で動作させる。高周波発生装置は、高周波電磁エネルギ投射源のkVp電圧を交互の撮影時にスイッチングできるようになっている。結果として、2つのエネルギ検知走査のデータは、以前のCT技術で必要とされているように2つの別々の走査を数秒離して行うよりはむしろ時間的にインターリーブした態様で得ることができる。
【0008】
しかしながら、別々の走査を互いから数秒離して得ると、その結果として患者の動き(外部からの患者の動き及び内部器官の動きの両方)及び異なる円錐角によってデータセット間に不整合が惹起される虞がある。そして、一般的に云えば、動いている身体機能部について細部まで解像する必要がある場合、従来の2パス二重kVp技術は信頼性よく適用することができない。
【0009】
材料分解のために投影データを取得する別の技術は、電子的にピクセル化される構造又は陽極が取り付けられているCZT又は他の直接変換材料のようなエネルギ検知検出器を用いることを含む。しかしながら、この技術では、典型的には、低飽和フラックス・レートが不充分なことがあり、また現在の技術によって達成される最大フォトン計数速度が、汎用医学的CT用途で必要であるものよりも2桁以上小さいことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3946261号
【特許文献2】米国特許第4109151号
【特許文献3】米国特許第4541106号
【特許文献4】米国特許第4799248号
【特許文献5】米国特許出願公開第20070041490号
【特許文献6】国際特許出願番号2007017773
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、エネルギ・レベル間を高速でスイッチングし且つ2つ以上のエネルギ範囲でイメージング・データを取得する装置及び方法を設計することは望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態は、上記の欠点を克服した、2つ以上のエネルギ範囲でイメージング・データを取得する方法及び装置を対象とする。
【0013】
二重エネルギCTシステム及び方法を開示する。本発明の実施形態は、医用CTでの解剖学的詳細及び組織特徴付け情報の両方の取得、並びに手荷物内の物品についての同様な取得に役立つ。エネルギ弁別情報又はデータは、ビーム硬化及び同様なものの影響を低減するために用いることができる。システムは組織弁別データの取得に役立ち、従って疾患又は他の病状を表す診断用情報を供給する。この検出器はまた、ヨウ素及びカルシウム(及び他の高原子番号の材料)のコントラストを増強するために最適なエネルギ重み付けを使用することによって、被検体に注入することのできる造影剤及び他の特殊材料のような材料を検出し、測定し、特徴付けするように使用することもできる。造影剤としては、例えば、より良く視覚化するために血流に注入されるヨウ素が挙げられる。手荷物走査の場合、エネルギ検知CT原理から得られる実効原子番号は、ビーム硬化のような画像アーティファクトの低減を可能にすると共に、誤警報の低減のために追加の弁別情報を提供する。
【0014】
本発明の一面によれば、CTシステムは、走査すべき物体を受け入れる開口部を持つ回転可能なガントリと、前記ガントリに結合されていて、前記開口部を通るX線を投射するように構成されているX線源を含む。X線源は、ターゲットと、前記ターゲットへ向けて第1の電子ビームを放出するように構成されている第1の陰極と、前記第1の陰極に結合された第1のグリッディング(gridding)電極と、前記ターゲットへ向けて第2の電子ビームを放出するように構成されている第2の陰極と、前記第2の陰極に結合された第2のグリッディング電極とを含む。本システムはまた、前記第1の陰極を第1のkVpまで付勢し且つ前記第2の陰極を第2のkVpまで付勢するように構成されている発生装置と、前記ガントリに取り付けられていて、前記開口部を通過したX線を受け取るように位置決めされている検出器とを含む。本システムはまた、前記ターゲットへ向けての前記第1の電子ビームの放出を阻止するために前記第1のグリッディング電極にグリッディング電圧を印加し、前記ターゲットへ向けての前記第2の電子ビームの放出を阻止するために前記第2のグリッディング電極にグリッディング電圧を印加し、また前記検出器から二重エネルギ・イメージング・データを取得するように構成されている制御装置を含む。
【0015】
本発明の別の面によれば、エネルギ検知CTイメージング・データを取得する方法が提供され、本方法は、第1の陰極とX線ターゲットとの間に第1の電圧を印加する段階と、前記第1の陰極と前記X線ターゲットとの間に前記第1の電圧が印加されている間に、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧を第2の陰極と前記X線ターゲットとの間に印加する段階とを含む。本方法は更に、前記第1の陰極から前記X線ターゲットへの電子の放出を遮断する段階と、前記第2の電圧により発生されたX線から第1組のイメージング・データを求める段階と、取得されたイメージング・データから画像を再構成する段階とを含み、前記取得されたイメージング・データは前記第1組のイメージング・データを有する。
【0016】
本発明の更に別の面によれば、コンピュータ・プログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な記憶媒体が提供され、前記コンピュータ・プログラムは、コンピュータによって実行されたとき、第1の陰極とターゲットとの間に第1のkVp電圧を印加し且つ第2の陰極とターゲットとの間に第2のkVp電圧を印加するようにコンピュータを動作させる命令を有する。更にコンピュータは、第1の陰極及び第2の陰極に交互にグリッディング電圧を印加して、電子が第1及び第2のkVp電圧のそれぞれにより進行するのを交互に防止し、且つ第1及び第2のkVp電圧で発生されたX線から画像を再構成するように動作させられる。
【0017】
これらの及び他の利点及び特徴は、添付の図面に関連して提供される下記の本発明の好ましい実施形態についての詳しい説明から容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、CTイメージング・システムの絵画的斜視図である。
【図2】図2は、図1に示されたシステムの概略ブロック図である。
【図3】図3は、CTシステム検出器アレイの一実施形態の斜視図である。
【図4】図4は、検出器の一実施形態の斜視図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に従った双陰極X線管を例示する略図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に従ったX線管ターゲットの平面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に従ったX線管ターゲットの平面図である。
【図8】図8は、図5に示した実施形態の動作を例示する略図である。
【図9】図9は、図5に示した実施形態の動作を例示する略図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に従った非侵襲性荷物検査システムに使用するためのCTシステムの絵画的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
診断用装置には、X線システム、磁気共鳴(MR)システム、超音波システム、コンピュータ断層撮影(CT)システム、ポジトロン放出断層撮影(PET)システム、超音波、核医学、及びその他の種類のイメージング・システムが含まれる。X線源の用途には、イメージング、医学、安全防護及び工業検査用途が挙げられる。しかしながら、当業者に理解されるように、単一スライス又は他のマルチスライス構成と共に使用するための実装(implementation)が適用可能である。その上、X線の検出及び変換のための実装が採用可能である。しかしながら、当業者には、他の高周波電磁エネルギの検出及び変換のための実装が採用可能であることが理解されよう。「第3世代」のCTスキャナ及び/又は他のCTシステムを備えた実装が採用可能である。
【0020】
本発明の動作環境を、64スライスのコンピュータ断層撮影(CT)システムに関連して説明する。しかしながら、当業者には、本発明が他のマルチスライス構成に使用するために等しく適用可能であることが理解されよう。その上、本発明をX線の検出及び変換に関して説明する。しかしながら、当業者には、本発明が他の高周波電磁エネルギの検出及び変換のために等しく適用可能であることが理解されよう。また、本発明を「第3世代」のCTスキャナに関して説明するが、本発明は他のCTシステムに等しく適用可能である。
【0021】
図1をについて説明すると、「第3世代」のCTスキャナを表すガントリ12を含むものとしてコンピュータ断層撮影(CT)イメージング・システム10が示されている。ガントリ12はX線源14を備えており、X線源14はガントリ12の反対側にある検出器組立体又はコリメータ18へ向かってX線ビーム16を投射する。本発明の実施形態では、X線源14は静止ターゲット又は回転ターゲットのいずれかを含む。ここで、図2について説明すると、検出器組立体18は、複数の検出器20及びデータ取得システム(DAS)32によって形成される。複数の検出器20は患者22を通過した投射X線を検知し、DAS32はデータをその後の処理のためにディジタル信号へ変換する。各々の検出器20は、入射するX線ビームの強度、従って患者22を通過した減弱したビームの強度を表すアナログ電気信号を生成する。X線投影データを取得するための走査中、ガントリ12及びそれに装着された部品は回転中心の周りを回転する。
【0022】
ガントリ12の回転及びX線源14の動作はCTシステム10の制御機構26によって統制される。制御機構26は、X線源14に電力及びタイミング信号を供給するX線制御装置28及び発生装置29と、ガントリ12の回転速度及び位置を制御するガントリ・モータ制御装置30とを含んでいる。画像再構成装置34がDAS32からサンプリングされディジタル化されたX線データを受け取って、高速画像再構成を実行する。再構成された画像はコンピュータ36に入力として印加され、コンピュータは該画像を大容量記憶装置38に記憶する。
【0023】
コンピュータ36はまた、キーボ−ド、マウス、音声作動制御器、又は任意の他の入力装置のような或る形態のオペレータ・インターフェースを備えたコンソール40を介して、オペレータから指令及び走査パラメータも受け取る。関連した表示装置42により、オペレータはコンピュータ36から再構成された画像やその他のデータを観察することが可能になる。コンピュータ36はオペレータから供給された指令及びパラメータを使用して、DAS32、X線制御装置28及びガントリ・モータ制御装置30へ制御信号及び情報を供給する。更に、コンピュータ36は、ガントリ12内に患者22を位置決めするために電動テーブル46を制御するテーブル・モータ制御装置44を動作させる。具体的に述べると、テーブル46は患者22の全体又は一部を図1のガントリ開口部48内へ通すように移動する。
【0024】
システム10はモノポーラ又はバイポーラ・モードのいずれかで動作させることができる。モノポーラ動作では、陽極を接地して、陰極に負電位を印加するか、或いは、陰極を接地して、陽極に正電位を印加する。逆に、バイポーラ動作では、印加される電圧を陽極と陰極との間で分割する。モノポーラ又はバイポーラのいずれの場合でも、陽極と陰極との間には電圧が印加されて、陰極から放出する電子を、該電圧により、陽極へ向けて加速させる。例えば、−140kVの電位差が陰極と陽極との間に維持され、且つX線管がバイポーラ設計であるとき、例えば、陰極は−70kVに維持することができ、また陽極は+70kVに維持することができる。対照的に、陰極と陽極との間を同様に−140kVの電位差にしたモノポーラの場合、陰極が対応的に−140kVのより高い電位に維持される一方、陽極が接地、従ってほぼ0kVに維持される。これにより、陽極は管内で陰極に対して正味140kVの差を持つように作動される。
【0025】
図3に示されているように、検出器組立体18はレール17を含み、レール17の間にはコリメート用ブレード又は板19が配置されている。板19は、例えば、検出器組立体18上に位置決めされた図4の検出器20にX線ビームが衝突する前にX線16をコリメートするように位置決めされる。一実施形態では、検出器組立体18は57個の検出器20を含み、各検出器20は64×16のピクセル素子50より成るアレイ寸法を持つ。結果として、検出器組立体18は64行及び912列(16×57の検出器)を持ち、これによりガントリ12の1回転毎に64スライスのデータを同時に収集することが可能になる。
【0026】
図4について説明すると、検出器20はDAS32を含んでおり、各検出器20はパック51内に配列された多数の検出器素子50を含む。検出器20は、検出器素子50に対してパック51内に位置決めされたピン52を含む。パック51は、複数のダイオード59を持つ背面照明ダイオード・アレイ53上に位置決めされる。背面照明ダイオード・アレイ53は次いで、多層基板54上に位置決めされる。スペーサ55が多層基板54上に位置決めされる。検出器素子50は背面照明ダイオード・アレイ53に光学的に結合され、次いで背面照明ダイオード・アレイ53は多層基板54に電気的に結合される。多層基板54の面57とDAS32とに可撓性回路56が取り付けられる。検出器20は、ピン52を使用することによって検出器組立体18内に位置決めされる。
【0027】
一実施形態の動作では、検出器素子50に入射するX線がフォトンを生成し、これらのフォトンはパック51を横切って、アナログ信号を生成させ、アナログ信号は背面照明ダイオード・アレイ53内のダイオードで検出される。生成されたアナログ信号は、多層基板54及び可撓性回路56を介してDAS32へ運ばれ、DAS32でアナログ信号はディジタル信号へ変換される。
【0028】
図5は、図1及び図2に示されたシステム10の一実施形態を例示する。システム10は、前に述べたように、X線源14、X線制御装置28、発生装置29、及びコンピュータ36を含む。X線源14は、ターゲット100(ターゲットの縁の視点から示されている)と、第1及び第2の陰極102,104とを含む。第1の陰極102は、第1のフィラメント106と、一対のmAグリッディング電極108とを含む。第2の陰極104は、同様に、第2のフィラメント110と、一対のmAグリッディング電極112とを含む。陰極102は、第1のフィラメント106から焦点118へ向かって第1の電子ビーム114を放出するように位置決めされ、また陰極104は、この実施形態では、焦点119へ向かって第2の電子ビーム116を放出するように位置決めされる。図示の実施形態では、焦点118及び焦点119は一致していて、ターゲット100の回転軸(図示せず)に対して実質的に同じ位置でターゲットに衝突する。第1及び第2のフィラメント106,110は、同じ又は異なる大きさの焦点を生成するように同じ大きさにするか又は異なる大きさにすることができる。各々の陰極102,104は、それにグリッディング電圧が印加されるように構成される。第1の陰極102のmAグリッディング電極108が線120を介してX線制御装置28に結合され、また第2の陰極104のmAグリッディング電極112が線122を介してX線制御装置28に結合される。mAグリッディング電極108,112に印加されるグリッディング電圧は、数百ボルトから数千ボルトまでの範囲にすることができる。
【0029】
図6及び図7は、本発明の実施形態に従ったターゲット100と第1及び第2のフィラメント106,110との平面図を図式的に例示する。図6は、それぞれの第1及び第2の電子ビーム114,116が図5に示されているような一致する地点118,119でターゲット100に衝突するように、図5の陰極102,104のような陰極(図示せず)内に位置決めされた第1及び第2のフィラメント106,110を例示する。図7は別の実施形態を例示しており、この場合、陰極(図示せず)並びにそれぞれの第1及び第2のフィラメント106,110は、焦点118,119がターゲット100の回転軸(図示せず)に対して実質的に同じ位置でターゲットに衝突せずに、X方向に距離107だけずれるように、離隔されている。更に、図7はまた、そこから放出するX線が第2のフィラメント110に対してZ方向にずれるようにした随意選択による焦点位置111も例示している。仮想線で示されているように、X方向にのみずらすだけでなく、第1のフィラメント106はまた位置109へずらして、位置109に位置決めしたときの第1のフィラメント106から放出される電子ビーム113が焦点111に衝突するようにすることもできる。図6及び図7に示された実施形態によれば、本発明の実施形態には、図6に示されているように同じ焦点位置からX線を放出するか、又は図7に示されているようにX方向及び/又はZ方向にずれた相異なる位置からX線を放出することが含まれる。
【0030】
図8及び図9は、グリッディング電極108とグリッディング電極112とに交互にグリッディング電圧を印加することを図式的に示している。図8に示されているように、X線制御装置28は、発生装置29により第1の電圧を第1の陰極102とターゲット100との間に印加させる。X線制御装置28は同時に、発生装置29により第2の電圧を第2の陰極104とターゲット100との間に印加させる。一実施形態では、第1の電圧は80kVpであり、また第2の電圧は140kVpである。X線制御装置28はグリッディング電圧をグリッディング電極108に印加する。第1のフィラメント106はグリッディング電極108へのグリッディング電圧の印加中に電子117を放出するが、グリッディング電圧は第1のフィラメント106から放出する電子117を陰極102へ逆戻りするように方向変更する。このように、グリッディング電圧はターゲット100への電子117の放出を阻止又は妨げる。第2の陰極104のグリッディング電極112には何らグリッディング電圧が印加されていないので、電子116が第2のフィラメント110から放出させられて、第2の電圧によりターゲット100へ向かって、より詳しく述べると、焦点118へ向かって加速される。この場合、焦点118から第2のエネルギを持つX線16が発生される。
【0031】
図9に例示されるような次の動作段階では、X線制御装置28は、グリッディング電圧を第2の陰極104のグリッディング電極112に印加させる一方、第1の陰極102のグリッディング電極108へのグリッディング電圧の印加を除去する。このようなとき、グリッディング電圧が印加されているグリッディング電極112は、第2のフィラメント110から放出された電子119を陰極104へ向けて逆戻りさせて、ターゲット100への電子119の放出を阻止又は妨げる。第1の陰極102のグリッディング電極108には何らグリッディング電圧が印加されていないので、第1のフィラメント106から電子114が放出させられて、第1の電圧によりターゲット100へ向けて、より詳しく述べると、焦点119へ向けて加速される。この場合、焦点119から第1のエネルギを持つX線16が発生される。
【0032】
X線制御装置28は、図8及び図9に例示したように線120及び122を介してグリッディング電極108及び112にそれぞれグリッディング電圧を高速に且つ交互に印加する一方、第1及び第2のエネルギで発生されたX線16からのイメージング・データを検出器123で高速に且つ交互に取得させる。各陰極102,104とターゲット100との間には第1及び第2の電圧がそれぞれ絶えず印加されているので、グリッディング電極108,122に印加されるグリッディング電圧の高速な交互切換えは、電子114,116を同様に高速な交互切換えの態様でそれぞれ放出させ、これにより第1の電圧で、次いで第2の電圧で発生されるX線16を焦点119,118から放出させる。このように、X線源14は2つの電圧レベルでX線を発生させることができ、これによりシステム10は高及び低kVpの間を高速に交互切換えされるX線から二重エネルギ・イメージング・データを取得することが可能になる。このような場合、図2の画像再構成装置34はイメージング・データを投影データとして取得して、高及び低kVpで取得された二重エネルギ・データを使用して画像を再構成することができる。
【0033】
X線制御装置28は、動作中、グリッディング電極108及び112の両方からグリッディング電圧の印加を同時に除去することができる。従って、何らグリッディング電圧が印加されていないとき、電子ビーム114及び116はそれぞれの第1及び第2のフィラメント106,110から同時に放出させることができ、その結果、焦点118,119で発生されるX線16は、両方の第1及び第2のエネルギで同時に発生されるX線スペクトルを持つ。
【0034】
当業者には、グリッディング電圧を、例えば、図1及び図2のガントリ12の回転と同期して、或いは(ゲート式取得におけるように)患者の心拍動と同期して、それぞれの陰極102,104に印加することができることが認められよう。例示したように、焦点118,119はそれぞれ、ターゲット100の回転軸線に対してターゲット100上の同じ地点に、X方向にずらした位置に、またX及びZ方向の両方にずらした位置に配置することができる。従って、異なるエネルギを持つX線16を高速に発生させることができる。ビーム114及び116は互いから独立に制御されるので、各々は同時に又は異なる時点にターン・オン及びオフすることができる。更に、各陰極102,104がそれぞれのグリッディング電極108,112及びフィラメント加熱回路を含んでいるので、第1及び第2のフィラメント106,110から放出される電流(すなわち、mA)は同様に独立に制御することができる。その上、図示していないが、グリッディング電極108,112に加えて集束電極を各陰極102,104に設けることができ、その結果、ビーム114,116がターゲット100へ向かって放出するときにそれらのグリッディング及び集束を同時に行うことができる。このような用途では、焦点118,119は静的に位置決めすることができ、或いは揺動用途におけるように動的に位置決めすることができる。
【0035】
次に図10について説明すると、荷物/手荷物検査システム510は、荷物又は手荷物を通すことのできる開口部514を持つ回転可能なガントリ512を含む。回転可能なガントリ512は、高周波電磁エネルギ源516を収容すると共に、図4又は図5に示されているものと同様なシンチレータ素子で構成されたシンチレータ・アレイを持つ検出器組立体518を収容している。またコンベヤー・システム520が設けられていて、コンベヤー・システム520は、走査すべき荷物又は手荷物526を開口部514に自動的に且つ連続的に通すために、構体524によって支持されたコンベヤー・ベルト522を含む。対象物526はコンベヤー・ベルト522によって開口部514に通され、そこでイメージング・データが取得され、次いでコンベヤー・ベルト522は制御された連続的な態様で荷物526を開口部514の外へ移動させる。結果として、郵便検査員、手荷物取扱者及びその他の警備担当者が、爆発物、刃物、銃、密輸品などについて荷物526の中味を非侵襲的に検査することができる。
【0036】
一例におけるシステム10及び/又は510の実装は、複数の構成部品、例えば、1つ以上の電子部品、ハードウエア部品及び/又はコンピュータ・ソフトウエア部品を有する。多数のこのような構成部品は、システム10及び/又は510の実装内で組み合わせ又は分割することができる。システム10及び/又は510の実装の模範的な構成部品は、当業者に理解されるように、多数のプログラミング言語で書かれた又は具現化された一組の及び/又は一連のコンピュータ命令を用い及び/又は有する。一例におけるシステム10及び/又は510の実装は、任意の(例えば、水平な、斜めの又は垂直な)は配向を有し、本書における記載及び図は、説明の目的で、システム10及び/又は510の実装の模範的な配向を例示している。
【0037】
一例におけるシステム10及び/又は510の実装は、1種類以上のコンピュータ読取り可能な信号支持媒体を用いる。一例におけるコンピュータ読取り可能な信号支持媒体は、1つ以上の実装の1つ以上の部分を遂行するためのソフトウエア、ファームウエア及び/又はアセンブリ言語を記憶する。システム10及び/又はシステム510の実装のためのコンピュータ読取り可能な信号支持媒体の一例は、画像再構成装置34の記録可能なデータ記憶媒体、及び/又はコンピュータ36の大容量記憶装置38を有する。一例におけるシステム10及び/又はシステム510の実装のためのコンピュータ読取り可能な信号支持媒体は、磁気、電気的、光学的、生物学的及び/又は原子的データ記憶媒体の1種類以上を有する。例えば、コンピュータ読取り可能な信号支持媒体の実装は、フレキシブル・ディスク、磁気テープ、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク駆動装置及び/又は電子メモリを有する。別の例では、コンピュータ読取り可能な信号支持媒体の実装は、システム10及び/又はシステム510の実装、例えば、電話網、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、インターネット及び/又は無線ネットワークの1種類以上を有しているか又はそれらに結合されたネットワークを介して伝送される被変調搬送波を有する。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、CTシステムは、走査すべき物体を受け入れる開口部を持つ回転可能なガントリと、前記ガントリに結合されていて、前記開口部を通るX線を投射するように構成されているX線源を含む。X線源は、ターゲットと、前記ターゲットへ向けて第1の電子ビームを放出するように構成されている第1の陰極と、前記第1の陰極に結合された第1のグリッディング電極と、前記ターゲットへ向けて第2の電子ビームを放出するように構成されている第2の陰極と、前記第2の陰極に結合された第2のグリッディング電極とを含む。本システムはまた、前記第1の陰極を第1のkVpまで付勢し且つ前記第2の陰極を第2のkVpまで付勢するように構成されている発生装置と、前記ガントリに取り付けられていて、前記開口部を通過したX線を受け取るように位置決めされている検出器とを含む。本システムはまた、前記ターゲットへ向けての前記第1の電子ビームの放出を阻止するために前記第1のグリッディング電極にグリッディング電圧を印加し、前記ターゲットへ向けての前記第2の電子ビームの放出を阻止するために前記第2のグリッディング電極にグリッディング電圧を印加し、また前記検出器から二重エネルギ・イメージング・データを取得するように構成されている制御装置を含む。
【0039】
本発明の別の実施形態によれば、エネルギ検知CTイメージング・データを取得する方法が提供され、本方法は、第1の陰極とX線ターゲットとの間に第1の電圧を印加する段階と、前記第1の陰極と前記X線ターゲットとの間に前記第1の電圧が印加されている間に、前記第1の電圧とは異なる第2の電圧を第2の陰極と前記X線ターゲットとの間に印加する段階とを含む。本方法は更に、前記第1の陰極から前記X線ターゲットへの電子の放出を遮断する段階と、前記第2の電圧により発生されたX線から第1組のイメージング・データを求める段階と、取得されたイメージング・データから画像を再構成する段階とを含み、前記取得されたイメージング・データは前記第1組のイメージング・データを有する。
【0040】
本発明の更に別の実施形態によれば、コンピュータ・プログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な記憶媒体が提供され、前記コンピュータ・プログラムは、コンピュータによって実行されたとき、第1の陰極とターゲットとの間に第1のkVp電圧を印加し且つ第2の陰極とターゲットとの間に第2のkVp電圧を印加するようにコンピュータを動作させる命令を有する。更にコンピュータは、第1の陰極及び第2の陰極に交互にグリッディング電圧を印加して、電子が第1及び第2のkVp電圧のそれぞれにより進行するのを交互に防止し、且つ第1及び第2のkVp電圧で発生されたX線から画像を再構成するように動作させられる。
【0041】
開示した方法及び装置の技術的な貢献は、多重エネルギ・イメージング用線源を使用して2つ以上のエネルギ範囲でイメージング・データを取得するコンピュータ実施型装置及び方法を提供することである。
【0042】
本発明を限られた数の実施形態のみに関して詳しく説明したが、本発明がこのような開示した実施形態に制限されないことが直ぐに理解されるはずである。むしろ、本発明は、これまで述べていないが、本発明の精神及び範囲に相応する任意の数の変形、変更、置換又は等価構成を取り入れるように修正することができる。更にまた、これまで単一エネルギ及び二重エネルギ技術につい説明したが、本発明は3つ以上のエネルギを用いる方式も包含する。更に、本発明の様々な実施形態を説明したが、本発明の様々な面が記載した実施形態の幾つかのみを含むことがあることを理解されたい。従って、本発明は以上の記載によって制限されるものと見なすべきではなく、特許請求の範囲によって制限される。
【符号の説明】
【0043】
10 コンピュータ断層撮影(CT)イメージング・システム
12 ガントリ
14 X線源
16 X線ビーム
17 レール
18 検出器組立体又はコリメータ
19 コリメート用ブレード又は板
20 検出器
22 患者
24 回転中心
26 制御機構
32 データ取得システム(DAS)
42 関連表示装置
48 ガントリ開口部
50 ピクセル素子
51 パック
52 ピン
53 背面照明ダイオード・アレイ
54 多層基板
55 スペーサ
56 可撓性回路
59 ダイオード
100 ターゲット
102 第1の陰極
104 第2の陰極
106 第1のフィラメント
107 距離
108 一対のmAグリッディング電極
109 位置
110 第2のフィラメント
111 焦点位置
112 一対のmAグリッディング電極
113 電子ビーム
114 第1の電子ビーム
116 第2の電子ビーム
117 電子
118 焦点
119 焦点
120 線
122 線
510 荷物/手荷物検査システム
512 回転可能なガントリ
514 開口部
516 高周波電磁エネルギ源
518 検出器組立体
520 コンベヤー・システム
522 コンベヤー・ベルト
524 構体
526 荷物又は手荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査すべき物体(22)を受け入れる開口部(48)を持つ回転可能なガントリ(12)と、
前記ガントリ(12)に結合されていて、前記開口部(48)を通るX線(16)を投射するように構成されているX線源(14)であって、
イ)ターゲット(100)、
ロ)前記ターゲット(100)へ向けて第1の電子ビーム(114)を放出するように構成されている第1の陰極(102)、
ハ)前記第1の陰極(102)に結合された第1のグリッディング電極(108)、
ニ)前記ターゲット(100)へ向けて第2の電子ビーム(116)を放出するように構成されている第2の陰極(104)、並びに
ホ)前記第2の陰極(104)に結合された第2のグリッディング電極(112)を含んでいる当該X線源(14)と、
前記第1の陰極(102)を第1のkVpまで付勢し且つ前記第2の陰極(104)を第2のkVpまで付勢するように構成されている発生装置(29)と、
前記ガントリ(12)に取り付けられていて、前記開口部(48)を通過したX線(16)を受け取るように位置決めされている検出器(123)と、
前記ターゲット(100)へ向けての前記第1の電子ビーム(114)の放出を阻止するために前記第1のグリッディング電極(108)にグリッディング電圧を印加し、また前記ターゲット(100)へ向けての前記第2の電子ビームの放出を阻止するために前記第2のグリッディング電極(112)にグリッディング電圧を印加し、また前記検出器(123)から二重エネルギ・イメージング・データを取得するように構成されている制御装置(28)と、
を有するCTシステム(10)。
【請求項2】
前記制御装置(28)は、前記第1のグリッディング電極(108)へのグリッディング電圧の印加中は前記第2のグリッディング電極(112)へのグリッディング電圧の印加を抑えるように構成されており、また前記制御装置(28)は、前記第2の電子ビーム(116)により発生されたX線(16)から二重エネルギ・イメージング・データを取得するように構成されている、請求項1記載のCTシステム(10)。
【請求項3】
前記発生装置(28)は更に、前記第1及び第2の陰極(102,104)をそれぞれ前記第1のkVp及び前記第2のkVpまで同時に付勢するように構成されている、請求項1記載のCTシステム(10)。
【請求項4】
印加される前記グリッディング電圧は前記回転可能なガントリ(12)の回転と同期させる、請求項1記載のCTシステム(10)。
【請求項5】
前記ターゲット(100)は回転型及び静止型ターゲット(100)の一方である、請求項1記載のCTシステム(10)。
【請求項6】
前記第1の電子ビーム(114)は前記ターゲット(100)上の第1の点(119)、また前記第2の電子ビーム(116)は第1の点(119)とは異なる前記ターゲット(100)上の第2の点(118)へ差し向けられる、請求項1記載のCTシステム(10)。
【請求項7】
前記第1の電子ビーム(114)及び前記第2の電子ビーム(116)はそれぞれ前記ターゲット(100)上の同じ点(118,119)へ差し向けられる、請求項1記載のCTシステム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−103111(P2010−103111A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241945(P2009−241945)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】