説明

位置検出装置、その方法、そのプログラム及びその記録媒体

【課題】
移動体の位置を精度良く求める。
【解決手段】
マップマッチング位置算出部221は、地図情報121における道路上を車両が走行することを想定しつつ、GPS受信ユニット170による測位結果及び走行センサユニットによる検出結果に基づいて、マップマッチング位置を算出する。また、センサ位置算出部222は、走行センサユニットによる検出結果に基づいて、センサ位置を算出する。このセンサ位置は、当該測位結果又はマップマッチング位置の精度が高いと判断される場合には、センサ位置初期化部223により初期化される。こうして適宜初期化が施されるセンサ位置の精度がセンサ位置精度評価部224により高いと評価され、かつ、センサ位置とマップマッチング位置とがある程度以上離れている場合に、マップマッチング位置補正部225が、センサ位置を基準としてマップマッチング位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置、位置検出方法、位置検出プログラム及びその位置検出プログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等の移動体に搭載され、目的地までの推奨ルートを探索し、当該推奨ルートに沿った移動の誘導及び案内を行うナビゲーション装置が広く普及している。こうしたナビゲーション装置では、移動体の現在位置を地図上にマッチングすることにより得られるマップマッチング位置を移動体の位置として求め、ナビゲーション処理に利用している。
【0003】
かかるマップマッチング位置を求めるマップマッチング処理では、移動体が地図情報における移動路に沿って移動することを想定し、例えば、移動体に搭載された速度センサ、角速度センサ等の移動状況センサによる移動体の速度や方位変化量等の検出結果から得られる移動距離や移動方位を利用して、マップマッチング位置を算出する(特許文献1参照)。この従来例1の技術では、移動体が地図情報における移動路に沿って移動することを想定してマップマッチング位置を算出するので、地図情報における移動路データに誤差があったり、移動路が工事中等により臨時に迂回路が設けられていたりした場合には、マップマッチング位置は、実際の移動体の位置から外れることになる。このため、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からの受信電波に基づくGPS測位による測位結果を参照して、適宜位置補正を行う技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−334346号公報
【特許文献2】特開平9−311044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなGPS測位の結果を利用した補正を行ってマップマッチング位置を算出した場合には、マップマッチング位置の精度は、GPS測位の結果の精度に大きく依存する。こうしたGPS測位の結果の精度は、ナビゲーション処理で求められるマップマッチング位置の精度として非常に高いとはいい難い。また、近年におけるナビゲーション処理の高度化に伴い、マップマッチング位置として求められる精度を更に高めることが求められている。こうした要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0006】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、移動体の位置を精度良く求めることができる位置検出装置及び位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、移動体の外部から受信した情報に基づいて、前記移動体の位置を測位する測位手段と;前記移動体に搭載され、前記移動体の移動状況を検出するセンサ手段と;前記センサ手段による検出結果に基づいて、前記移動体の現在位置と推定されるセンサ位置を算出するセンサ位置算出手段と;前記測位手段による測位結果及び前記センサ手段による検出結果に基づき、地図上へのマッチングを行ってマップマッチング位置を算出するマップマッチング位置算出手段と;前記センサ位置の精度を評価する評価手段と;前記評価手段により前記センサ位置の精度が高いと評価され、かつ、前記マップマッチング位置と前記センサ位置とが所定距離以上離れている場合に、前記センサ位置を基準として、前記マップマッチング位置を補正する補正手段と;を備えることを特徴とする位置検出装置である。
【0008】
請求項13に記載の発明は、移動体の外部から受信した情報に基づいて、前記移動体の位置を測位する測位工程と;前記移動体に搭載されたセンサ手段により前記移動体の移動状況を検出する移動状況検出工程と;前記移動状況検出工程における検出結果に基づいてセンサ位置を算出するセンサ位置算出工程と;前記測位工程における測位結果及び前記移動状況検出工程における検出結果に基づき、地図上へのマッチングを行ってマップマッチング位置を算出するマップマッチング位置算出工程と;前記センサ位置の精度を評価する評価工程と;前記評価工程において前記センサ位置の精度が高いと評価されたか否かを判定する第1判定工程と;前記第1判定工程における判定結果が肯定的であった場合に、前記マップマッチング位置と前記センサ位置とが所定距離以上離れているか否かを判定する第2判定工程と;前記第2判定工程における判定結果が肯定的であった場合に、前記センサ位置を基準として、前記マップマッチング位置を補正する補正工程と;を備えることを特徴とする位置検出方法である。
【0009】
請求項14に記載の発明は、請求項13の位置検出方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする位置検出プログラムである。
【0010】
請求項15に記載の発明は、請求項14の位置検出プログラムが演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図8を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においては、車両に搭載され、位置検出装置の機能を有するナビゲーション装置を例示して説明する。
【0012】
[構成]
図1には、本実施形態に係るナビゲーション装置100の構成がブロック図にて示されている。図1に示されるように、このナビゲーション装置100は、制御ユニット110と、記憶装置120とを備えている。また、ナビゲーション装置100は、音出力ユニット130と、表示ユニット140と、操作入力ユニット150と、センサ手段としての走行センサユニット160と、測位手段としてのGPS(Global Positioning System)受信ユニット170とを備えている。上記制御ユニット110以外の要素120〜170は、それぞれ制御ユニット110に接続されている。
【0013】
制御ユニット110は、ナビゲーション装置100の全体を制御しつつ、様々な処理を行う。この制御ユニット110は、ナビゲーションに関する処理を行うナビゲーション処理部200を備えている。
【0014】
ナビゲーション処理部200は、センサデータ処理部210と、マップマッチング部220と、ルート探索部230とを備えている。このように構成されたナビゲーション処理部200は、記憶装置120にアクセスしつつ、上述した構成要素130〜170を利用して、利用者にナビゲーション情報を提供する。すなわち、ナビゲーション処理に関連する操作入力ユニット150からの指令入力結果、走行センサユニット160による検出結果、及び、GPS受信ユニット170における測位結果等に対応して、ナビゲーション処理部200は、記憶装置120に記憶されたナビゲーション用のデータを適宜読み出す。そして、ナビゲーション処理部200は、(a)利用者が指定する地域の地図を表示ユニット140の表示デバイスに表示する地図表示、(b)車両が地図上のどこに位置するのか、また、どの方角に向かっているのかを算出するマップマッチング、(c)車両の現在位置から、利用者が指定する目的地の位置までの推奨ルートの探索、(d)設定されたルートに沿って目的地まで運転するときに、目的地への到達予想時刻や、進行すべき方向を的確にアドバイスするために、表示ユニット140の表示デバイスに案内表示をしたり、音出力ユニット130から音声案内を出力してルート案内等を行う。
【0015】
センサデータ処理部210は、走行センサユニット160による検出結果に基づいて、移動距離、走行方位(車両の傾斜角(傾斜方位)を含んでもよい)の走行状況情報を算出する。センサデータ処理部210は、算出された走行状況情報をマップマッチング部220へ報告する。
【0016】
また、センサデータ処理部210は、走行センサユニット160による検出結果の処理をするための学習を行う。かかる学習の最中であるか否かの情報が、センサデータ処理部210からマップマッチング部220に報告される。
【0017】
また、センサデータ処理部210は、走行センサユニット160による検出結果を、GPS受信ユニット170からの報告結果等に基づいて適宜補正する。
【0018】
マップマッチング部220は、上記の(b)の機能を有している。このマップマッチング部220の詳細については、後述する。
【0019】
ルート探索部230は、上記の(c)の機能を有している。この機能の実行は、利用者による目的地を指定したルート探索指令に応答して行われる。また、ルート探索部230は、再ルート探索指令に応答してルート探索を行う。
【0020】
記憶装置120は、ハードディスク装置等から構成される。記憶装置120には、地図情報121をはじめとして、ナビゲーション装置100の動作のために必要な様々なデータが記憶される。なお、制御ユニット110は、記憶装置120の記憶領域にアクセス可能であり、当該記憶領域からのデータを読み取ることができるようになっている。
【0021】
音出力ユニット130は、(i)制御ユニット110から受信したデジタル音声データをアナログ信号に変換するDA変換器(Digital to Analog Converter)と、(ii)当該DA変換器から出力されたアナログ信号を増幅する増幅器と、(iii)増幅されたアナログ信号を音声に変換するスピーカとを備えて構成されている。この音出力ユニット130は、制御ユニット110による制御のもとで、車両の進行方向、走行状況、交通状況等の案内用音声、音楽等を出力する。
【0022】
表示ユニット140は、(i)液晶表示パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル、PDP(Plasma Display Panel)等の表示デバイスと、(ii)制御ユニット110から送出された表示制御データに基づいて、表示ユニット140全体の制御を行うグラフィックレンダラ等の表示コントローラと、(iii)表示画像データを記憶する表示画像メモリ等を備えて構成されている。この表示ユニット140は、制御ユニット110による制御のもとで、地図情報、ルート情報、操作ガイダンス情報等を表示する。
【0023】
操作入力ユニット150は、ナビゲーション装置100の本体部に設けられたキー部、あるいはキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、表示ユニット140に設けられたタッチパネルを用いることができる。なお、キー部を有する構成に代えて、音声入力する構成を採用することもできる。
【0024】
走行センサユニット160は、(i)車両の移動速度を検出する速度センサ161と、(ii)車両の角速度を検出する角速度センサ162と、(iii)車両に作用している加速度を検出する加速度センサ163と、を備えている。ここで、速度センサ161は、例えば、車輪や車輪の回転により出力されるパルス信号や電圧値を検出する。また、角速度センサ162は、例えば、ジャイロセンサとして構成され、角速度を検出する。また、加速度センサ163は、例えば、3次元加速度を検出する。こうした検出結果は、走行センサユニット160から制御ユニット110へ送られる。
【0025】
なお、上述した走行センサユニット160による検出結果の処理のための学習としては、車速パルスの1パルス当たりの走行距離、角速度センサ162の感度・温度特性・個体ばらつき、加速度センサ163の感度・温度特性・個体ばらつき等が挙げられる。
【0026】
GPS受信ユニット170は、複数のGPS衛星からの電波の受信結果に基づいて、車両の現在位置(以下、「測位結果」という)を算出し、その精度情報とともに制御ユニット110へ報告する。また、GPS受信ユニット170は、GPS衛星からの電波のドップラー効果による波長変化に基づいて、車両の速度及び走行方位を検出し、制御ユニット110へ報告する。また、GPS受信ユニット170は、GPS衛星から送出された時刻に基づいて現在時刻を計時し、制御ユニット110へ報告する。
【0027】
GPS受信ユニット170がGPS衛星からの電波を受信できない地域では、GPS受信ユニット170は、測位結果等を取得することができない。また、GPS衛星からの電波が弱い地域に車両が存在する場合、周囲に高層建築物等が存在することに由来するマルチパスが発生する地域に車両が存在する場合、捕捉できたGPS衛星の数が少ない場合等には、GPS受信ユニット170による測位結果等の精度が低くなる。
【0028】
上記のマップマッチング部220は、図2に示されるように、マップマッチング位置算出手段としてのマップマッチング位置算出部221と、センサ位置算出手段としてのセンサ位置算出部222と、初期化手段としてのセンサ位置初期化部223とを備えている。また、マップマッチング部220は、評価手段としてのセンサ位置精度評価部224と、補正手段としてのマップマッチング位置補正部225とを備えている。
【0029】
マップマッチング位置算出部221は、前回のマップマッチング位置、センサデータ処理部210によって算出された走行状況情報、及び、GPS受信ユニット170からの報告結果に基づいて、マッチング前位置を算出する。そして、マップマッチング位置算出部221は、地図情報121を利用して、算出されたマッチング前位置を地図上の車両の位置として最も確からしい位置を算出することにより、マップマッチング位置を算出する。すなわち、マップマッチング位置算出部221は、地図情報121中の道路データで表わされる道路上を車両が走行することを想定して、マップマッチング位置を算出する。
【0030】
マップマッチング位置算出部221は、マップマッチング位置(マッチング後位置)及びマッチング前位置をセンサ位置初期化部223へ報告する。また、マップマッチング位置算出部221は、マップマッチング位置をマップマッチング位置補正部225へ報告する。
【0031】
センサ位置算出部222は、前回のセンサ位置及びセンサデータ処理部210によって算出された走行状況情報に基づいて、推定車両位置を算出する。このセンサ位置算出部222によるセンサ位置の算出に際しては、地図情報121は考慮されない。算出されたセンサ位置は、マップマッチング位置補正部225に報告される。また、センサ位置が算出されたことは、センサ位置精度評価部224に報告される。
【0032】
センサ位置初期化部223は、マップマッチング位置の精度が高いと判断した場合には、当該マップマッチング位置を基準として、センサ位置を初期化する。このセンサ位置初期化部223は、マップマッチング位置がGPS受信ユニット170による測位結果の近傍に存在する場合に、マップマッチング位置の精度が高いと判断する。ここで、「マップマッチング位置がGPS受信ユニット170による測位結果の近傍に存在する」といえるためのマップマッチング位置と当該測位結果との距離は、実験やシミュレーション等を行った結果等に基づいて予め定められる。
【0033】
また、センサ位置初期化部223は、交差点を曲がった場合等の地図情報121において所定角度以上で道路方位が変化する走行において、GPS受信ユニット170による測位結果、センサデータ処理部210による算出結果及び前回のマップマッチング位置に基づいて得られるマッチング前位置と、地図上へのマッチングにより得られるマッチング後位置との距離誤差が所定値以上とならなかった場合には、マップマッチング位置の精度が高いと判断する。ここで、「所定角度」及び「所定値」は、実験やシミュレーション等を行った結果等に基づいて予め定められる。
【0034】
例えば、所定角度が90度未満、所定値がd0の場合に、図3に示されるような道路の交差角が略90度の交差点(図3においては、地図データに基づく交差点の付近の道路状況が図示されている)において車両が右折したとする。この場合に、GPS受信ユニット170による測位結果、センサデータ処理部210による算出結果及び前回のマップマッチング位置(内部にハッチが施された△)に基づいて新たに得られた右折後のマッチング前位置(▲)が図3に示される地図上の位置であったときには、マップマッチング位置算出部221によって地図上へのマッチングが行われ、マッチング後位置(△)が得られることになる。この際におけるマッチング前位置とマッチング後位置との位置誤差がdであった場合、d<d0であれば、センサ位置初期化部223はマップマッチング位置の精度が高いと判断する。一方、d≧d0であれば、センサ位置初期化部223はマップマッチング位置の精度が低いと判断する。なお、図3に示されるような交差点を左折した場合にも、上記の右折の場合と同様にして、マップマッチング位置の精度の高低に関する判断が行われる。
【0035】
センサ位置初期化部223は、センサ位置を初期化する際には、マップマッチング位置が存在する道路上における当該道路の属性に応じた位置にセンサ位置を初期化する。例えば、道路属性が一方通行である場合には、マップマッチング位置にセンサ位置を初期化する。また、道路属性が両方通行である場合には、道路データが当該道路の中央を表わしていることから、例えば日本のような車両が左側走行の国では、図4に示されるように、道路方位の垂直方向左側の道路幅の半分だけマップマッチング位置から離れた位置にセンサ位置を初期化する。また、米国のような車両が右側走行の国では、道路方位の垂直方向右側の道路幅の半分だけマップマッチング位置から離れた位置にセンサ位置を初期化する。
【0036】
ここで、道路データとして幅員データが地図情報121内に存在する場合には、センサ位置初期化部223は、当該幅員データを利用してセンサ位置を初期化する。一方、幅員データが地図情報121内に存在しない場合には、通常の道路幅を利用してセンサ位置を初期化する。また、車両が走行している車線(走行車線)を認識できている場合には、走行車線の位置に応じてセンサ位置を初期化するようにしてもよい。
【0037】
また、センサ位置初期化部223は、GPS受信ユニット170による測位結果の精度が高いと判断した場合には、当該測位結果を基準としてセンサ位置を初期化する。ここで、センサ位置初期化部223は、GPS測位がSA(Selective Availability)なし、及び、マルチパスなしで行われ、PDOP(Positional Dilution Of Precision)が低かった場合には、当該測位結果の精度が高いと判断する。そして、センサ位置初期化部223は、GPS受信ユニット170による測位結果の位置にセンサ位置を初期化する。
【0038】
以上のようにして初期化されたセンサ位置は、センサ位置算出部222へ報告される。
【0039】
センサ位置精度評価部224は、センサ位置算出部222からセンサ位置が算出されたことの報告を受けると、センサ位置算出部222により算出されたセンサ位置の精度を評価する。この精度の評価に際し、センサ位置精度評価部224は、GPS受信ユニット170による測位結果の誤差範囲内にセンサ位置が存在していない場合には、センサ位置の精度が低いと評価する。
【0040】
また、センサ位置精度評価部224は、GPS受信ユニット170が測位結果等を報告していない状態、又は、GPS受信ユニットによる測位結果等の精度が低い状態(以下、「GPS低精度状態」と呼ぶ)がセンサ位置の初期化後において所定時間以上にわたって継続した場合には、走行センサユニット160における各種センサの検出精度がセンサ特性の経時変化等により保証されないと判断し、センサ位置の精度が低いと評価する。ここで、「所定時間」は、実験やシミュレーション等を行った結果等に基づいて予め定められる。
【0041】
また、センサ位置精度評価部224は、GPS低精度状態が継続しているときに、速度センサ161又は加速度センサ163による検出結果に基づいて、所定移動距離以上の走行があった場合には、センサ位置の精度が低いと評価する。ここで、「所定移動距離」は、事前の実験、評価等により予め定められる。
【0042】
また、センサ位置精度評価部224は、GPS低精度状態が継続しているときに、角速度センサ162による検出結果に基づいて、走行方位が所定方位変化量以上変化した場合には、センサデータ処理部210によって算出される走行方位の精度が低くなっていると判断し、マップマッチング位置の精度が低いと評価する。こうした事態は、例えば、図5に示されるような高層駐車場内を何階にもわたって走行した場合等に発生する。ここで、「所定方位変化量」は、実験やシミュレーション等を行った結果等に基づいて予め定められる。
【0043】
また、センサ位置精度評価部224は、ナビゲーション装置100への通電直後等という走行センサユニット160の周囲温度の変化が激しい期間には、センサ位置の精度が低いと評価する。なお、本実施形態では、「走行センサユニット160の周囲温度の変化が激しい期間」は、実験やシミュレーション等を行った結果等に基づいて予め定められる。もちろん、温度計によって温度変化を測定することで、走行センサユニット160の周囲温度の変化が激しい期間を検出するようにしてもよい。
【0044】
また、センサ位置精度評価部224は、センサデータ処理部210からの情報に基づいて走行センサユニット160による検出結果の処理のための学習中であると判断した場合には、センサ位置の精度が低いと評価する。
【0045】
センサ位置精度評価部224は、以上のようなセンサ位置の精度が低いと評価される場合を除いて、センサ位置の精度が高いと評価する。こうしてセンサ位置の精度が高いと評価された場合には、その旨がマップマッチング位置補正部225に報告される。
【0046】
マップマッチング位置補正部225は、センサ位置の精度が高いと評価された旨の報告をセンサ位置精度評価部224から受けた場合には、センサ位置算出部222から最新に報告されたセンサ位置と、マップマッチング位置算出部221から最新に報告されたマップマッチング位置との距離を算出する。この算出された距離によりマップマッチング位置が補正を要する程度にセンサ位置から離れていると判断される場合には、マップマッチング位置補正部225は、センサ位置を基準としてマップマッチング位置を補正する。この補正に際し、マップマッチング位置補正部225は、例えば、図6に示されるような、センサ位置を通りマップマッチング位置が存在する道路と直交する線と当該道路の交点位置にマップマッチング位置を補正する。
【0047】
[動作]
次に、以上のように構成されたナビゲーション装置100において実行されるセンサ位置を基準とするマップマッチング位置の補正処理に主に着目して説明する。
【0048】
<センサ位置の初期化処理>
まず、センサ位置を基準とするマップマッチング位置の補正を行うために必要なセンサ位置の初期化処理について、説明する。このセンサ位置の初期化処理は、マップマッチング位置算出部221により新たなマップマッチング位置が算出された場合、及び、GPS受信ユニット170により新たなGPS測位結果が得られた場合に、センサ位置初期化部223により実行される。
【0049】
センサ位置の初期化処理では、図7に示されるように、まず、ステップS11において、センサ位置初期化部223が、マップマッチング位置の精度が高いか否かを判定する。この判定に際して、センサ位置初期化部223は、上述したように、(i)マップマッチング位置がGPS受信ユニット170による測位結果の近傍に存在する場合、又は、(ii)交差点を曲がった場合等の地図情報121において所定角度以上で道路方位が変化する走行において、マッチング前位置と、地図上へのマッチングにより得られるマッチング後位置(マップマッチング位置)との距離誤差が所定値以上とならなかった場合に、マップマッチング位置の精度が高いと判定する。
【0050】
ステップS11における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS11:Y)には、処理はステップS12へ進む。このステップS12では、センサ位置初期化部223が、マップマッチング位置を基準として、センサ位置を初期化する。かかるセンサ位置の初期化に際して、センサ位置初期化部223は、上述したように、マップマッチング位置が存在する道路上における当該道路の属性に応じた位置にセンサ位置を初期化する。
【0051】
ステップS11における判定の結果が否定的であった場合(ステップS11:N)には、処理はステップS13へ進む。このステップS13では、センサ位置初期化部223が、GPS受信ユニット170による測位結果の精度が高いか否かを判定する。この判定に際して、センサ位置初期化部223は、上述したように、GPS測位がSAなし、及び、マルチパスなしの環境で行われ、PDOPが低かった場合には、当該測位結果の精度が高いと判定する。
【0052】
ステップS13における判定の結果が否定的であった場合(ステップS13:N)には、センサ位置を初期化することなく、センサ位置の初期化処理が終了する。一方、ステップS13における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS13:Y)には、処理は、ステップS14へ進む。ステップS14では、センサ位置初期化部223が、GPS受信ユニット170による測位結果の位置にセンサ位置を初期化する。
【0053】
こうして、センサ位置が初期化されると、初期化結果がセンサ位置算出部222に報告され、センサ位置の初期処理が終了する。この報告を受けたセンサ位置算出部222は、それまでのセンサ位置を報告されたセンサ位置に置き換えた後、以後のセンサ位置の算出を行う。
【0054】
<センサ位置を基準とするマップマッチング位置の補正処理>
次に、センサ位置を基準とするマップマッチング位置の補正処理について説明する。この補正処理では、図8に示されるように、まず、ステップS21において、マップマッチング位置算出部221がマップマッチング位置を算出するとともに、センサ位置算出部222がセンサ位置を算出する。
【0055】
次に、ステップS22において、センサ位置精度評価部224が、センサ位置の精度を評価する。かかる評価に際して、センサ位置精度評価部224は、上述したように、(i)GPS受信ユニット170による測位結果の誤差範囲内にセンサ位置が存在していない場合、(ii)GPS低精度状態がセンサ位置の初期化後において所定時間以上にわたって継続した場合、(iii)GPS低精度状態が継続しているときに、角速度センサ162による検出結果に基づいて、走行方位が所定方位変化量以上変化した場合、(iv)GPS低精度状態が継続しているときに、速度センサ161又は加速度センサ163による検出結果に基づいて、所定移動距離以上の走行があった場合、(v)走行センサユニット160の周囲温度の変化が激しい期間に該当する場合、又は、(vi)走行センサユニット160による検出結果の処理のための学習中であると判断した場合には、センサ位置の精度が低いと評価する。一方、こうしたセンサ位置の精度が低いと評価される場合以外の場合には、センサ位置精度評価部224は、センサ位置の精度が高いと評価する。
【0056】
引き続き、ステップS23において、センサ位置精度評価部224が、センサ位置の精度が高いか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS23:N)には、処理はステップS21へ進み、ステップS23において肯定的な判定結果が得られるまで、上記のステップS21〜S23の処理が繰り返される。
【0057】
ステップS23における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS23:Y)には、センサ位置精度評価部224が、センサ位置の精度が高い旨をマップマッチング位置補正部225へ報告する。そして、処理はステップS24へ進む。
【0058】
ステップS24では、マップマッチング位置補正部225が、マップマッチング位置とセンサ位置との間の距離(以下、単に「差距離」とも呼ぶ)を算出する。引き続き、ステップS25において、マップマッチング位置補正部225が、差距離が所定距離以上であるか否かが判定される。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS25:N)には、マップマッチング位置の補正の必要が無いと判断され、処理がステップS21へ進む。この後、ステップS25において肯定的な判定結果が得られるまで、上記のステップS21〜S25の処理が繰り返される。
【0059】
ステップS25における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS25:Y)には、処理はステップS26へ進む。このステップS26では、マップマッチング位置補正部225が、センサ位置を基準としてマップマッチング位置を補正する。この補正に際し、マップマッチング位置補正部225は、上述したように、例えば、図6に示されるような、センサ位置を通りマップマッチング位置が存在する道路と直交する線と当該道路の交点位置にマップマッチング位置を補正する。
【0060】
こうしてマップマッチング位置の補正が終了すると、処理はステップS21へ進む。以後、上記のステップS21〜S26の処理が繰り返される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態では、マップマッチング位置算出部221が、地図情報121における道路上を車両が走行することを想定しつつ、GPS受信ユニット170による測位結果及び走行センサユニット160による検出結果に基づいて、マップマッチング位置を算出する。また、センサ位置算出部222が、走行センサユニット160による検出結果に基づいて、センサ位置を算出する。このセンサ位置は、GPS受信ユニット170による測位結果又はマップマッチング位置の精度が高いと判断された場合には、センサ位置初期化部223により初期化される。
【0062】
こうして適宜初期化が施されるセンサ位置の精度がセンサ位置精度評価部224により高いと評価され、かつ、センサ位置とマップマッチング位置とがある程度以上離れている場合には、マップマッチング位置補正部225が、センサ位置を基準として、マップマッチング位置を補正する。このため、道路データに誤差がある場合等に、適切にかつ精度良くマップマッチング位置を補正することができる。したがって、本実施形態によれば、車両の位置を精度良く求めることができる。
【0063】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0064】
例えば、上記の実施形態では、センサ位置を基準とするマップマッチング位置の補正を、センサ位置とマップマッチング位置との距離が所定距離以上であり、センサ位置とマップマッチング位置とがある程度以上離れている場合に行うようにした。これに対し、センサ位置とマップマッチング位置との距離が第2所定距離以上であり、大きく離れている場合には、何等かの不都合が生じていると判断し、フェールセーフのために、マップマッチング位置の補正を行わないようにすることもできる。
【0065】
また、上記の実施形態では、本発明を車両に搭載されるナビゲーション装置に適用したが、例えば、航空機や船舶に搭載されるナビゲーション装置に本発明を適用することもできる。また、例えば、ナビゲーション機能を有する携帯端末装置等のルート探索を行う装置であれば、本発明を適用することができる。
【0066】
なお、上記の実施形態における制御ユニット110を中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、読出専用メモリ(ROM:Read Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)等を備えた演算手段としてのコンピュータとして構成し、上記の実施形態における処理を、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行するようにしてもよい。これらのプログラムはハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配送の形態で取得されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1のマップマッチング部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】マップマッチング位置の精度の高低の判断処理例を説明するための図である。
【図4】センサ位置の初期化例を示す図である。
【図5】方位変化量が大きくなる例を説明するための図である。
【図6】マップマッチング位置の補正例を示す図である。
【図7】図1の装置におけるセンサ位置の初期化処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】図1の装置におけるセンサ位置を基準とするマップマッチング位置の補正処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
100 … ナビゲーション装置(位置検出装置)
160 … 走行センサユニット(センサ手段)
170 … GPS受信ユニット(測位手段)
221 … マップマッチング位置算出部(マップマッチング位置算出手段)
222 … センサ位置算出部(センサ位置算出手段)
223 … センサ位置初期化部(初期化手段)
224 … センサ位置精度評価部(評価手段)
225 … マップマッチング位置補正部(補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の外部から受信した情報に基づいて、前記移動体の位置を測位する測位手段と;
前記移動体に搭載され、前記移動体の移動状況を検出するセンサ手段と;
前記センサ手段による検出結果に基づいて、前記移動体の現在位置と推定されるセンサ位置を算出するセンサ位置算出手段と;
前記測位手段による測位結果及び前記センサ手段による検出結果に基づき、地図上へのマッチングを行ってマップマッチング位置を算出するマップマッチング位置算出手段と;
前記センサ位置の精度を評価する評価手段と;
前記評価手段により前記センサ位置の精度が高いと評価され、かつ、前記マップマッチング位置と前記センサ位置とが所定距離以上離れている場合に、前記センサ位置を基準として、前記マップマッチング位置を補正する補正手段と;を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記マップマッチング位置の精度が高いと判断した場合に、前記マップマッチング位置を基準として前記センサ位置を初期化する初期化手段を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記初期化手段は、前記マップマッチング位置が前記測位手段による測位結果の近傍に存在する場合には、前記マップマッチング位置の精度が高いと判断する、ことを特徴とする請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記初期化手段は、前記地図情報において所定角度以上で移動路方位が変化する移動路の移動において、前記測位手段による測位結果、前記センサ手段による検出結果及び前回のマップマッチング位置に基づいて得られるマッチング前位置と、前記マッチングにより得られるマッチング後位置との距離誤差が所定値以上とならなかった場合には、前記マップマッチング位置の精度が高いと判断する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記初期化手段は、前記マップマッチング位置が存在する移動路の属性に応じて定まる位置に前記センサ位置を初期化する、ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記マップマッチング位置が存在する移動路の属性には当該移動路の幅員が含まれる、ことを特徴とする請求項5に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記測位手段による測位結果の精度が高いと判断した場合に、当該測位結果を基準として前記センサ位置を初期化する初期化手段を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記評価手段は、前記センサ位置が前記測位手段による測位結果の誤差範囲内に存在しない場合には、前記センサ位置の精度が低いと評価する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記評価手段は、前記測位手段が測位を行っていない状態又は前記測位手段による測位結果精度の低い状態が所定時間以上継続した場合には、前記センサ位置の精度が低いと評価する、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記評価手段は、前記測位手段が測位を行っていない状態又は前記測位手段による測位結果精度の低い状態が継続している期間中に、所定距離以上の移動、及び、所定方位変化量以上の方位変化のいずれかが発生した場合には、前記センサ位置の精度が低いと評価する、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記評価手段は、前記センサ手段の周囲の温度変化が激しいと判断した場合に、前記センサ位置の精度が低いと評価する、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項12】
前記評価手段は、前記センサ手段の検出結果を処理するための学習が進んでいないと判断した場合に、前記センサ位置の精度が低いと評価する、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項13】
移動体の外部から受信した情報に基づいて、前記移動体の位置を測位する測位工程と;
前記移動体に搭載されたセンサ手段により前記移動体の移動状況を検出する移動状況検出工程と;
前記移動状況検出工程における検出結果に基づいてセンサ位置を算出するセンサ位置算出工程と;
前記測位工程における測位結果及び前記移動状況検出工程における検出結果に基づき、地図上へのマッチングを行ってマップマッチング位置を算出するマップマッチング位置算出工程と;
前記センサ位置の精度を評価する評価工程と;
前記評価工程において前記センサ位置の精度が高いと評価されたか否かを判定する第1判定工程と;
前記第1判定工程における判定結果が肯定的であった場合に、前記マップマッチング位置と前記センサ位置とが所定距離以上離れているか否かを判定する第2判定工程と;
前記第2判定工程における判定結果が肯定的であった場合に、前記センサ位置を基準として、前記マップマッチング位置を補正する補正工程と;を備えることを特徴とする位置検出方法。
【請求項14】
請求項13の位置検出方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする位置検出プログラム。
【請求項15】
請求項14の位置検出プログラムが演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−263844(P2007−263844A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91219(P2006−91219)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】