説明

位置測定システム

【課題】品種によって変わる塗工パターンに影響されずに(すなわち品種による段替えが発生せずに)、エッジまたは注目部位の位置ずれを正確に測定する位置測定システムを実現する。
【解決手段】搬送されるシート状物体の予め定められた注目部位の位置をカメラを用いて測定する位置測定システムにおいて、前記シート状物体の一方のエッジの略上方に設置され、前記シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、前記シート状物体の前記注目部位を撮像する第1のカメラ手段と、前記シート状物体の他方のエッジの略上方に設置され、前記シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、前記シート状物体の前記注目部位を撮像する第2のカメラ手段と、前記各撮像素子に結像された前記シート状物体の像における、前記注目部位の位置の予め定められた基準位置からの変動に基づき、パスライン変動の有無を判定してエッジの位置ずれを測定する測定手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さ測定装置の配置位置を正確に制御することにより均一なシート状物体を生成(成膜、塗工)するために用いられ、搬送されるシート状物体の両エッジの位置または複数の予め定められた箇所の位置をカメラを用いて測定する位置測定システムに関し、特に、シート状物体の塗工端(エッジ)または予め定められた注目部位の位置の測定を行う生産ラインで、品種によって変わる塗工パターンに影響されずにエッジまたは注目部位の位置ずれを正確に測定する位置測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状物体のエッジの位置を測定し、測定したエッジの位置と基準となる位置との「ずれ」を測定し、この「ずれ」を是正し適切な位置に配置するために必要な移動量、移動方向を算出する位置測定システムがよく知られている。
このような位置測定システムは、厚さ測定装置の配置位置を正確に制御することにより均一なシート状物体を生成(成膜、塗工)するために用いられている。
【0003】
図3は従来の位置測定システムの一例を示す構成図である。
図3において、従来の位置測定システムは、シート状物体の一例である電池電極シート100、101を支持して搬送する図示しない搬送ローラーと、レンズ2a〜2eを介して電池電極シート100、101の予め定められた注目部位またはエッジ(縁部)を撮像するカメラ1a〜1eと、電気的にカメラ1a〜1eと接続され各カメラが撮像した各シートの注目部位およびエッジの位置に基づいて、予め定められた基準となる位置(以下、基準位置という)からどれだけ位置ずれが生じているかを測定し、位置ずれを是正する位置制御のための制御データを図示しない駆動手段に伝達して、シートを正確な位置に配置制御する演算制御手段から構成される。
【0004】
シート状物体の一例である電池電極シート100、101は、搬送ローラー(図示していない)に支持され、概ねパスラインが一定に保たれて搬送される。
これらの2条の電池電極シートは、シートの長手方向(または搬送方向)と交わる(垂直)方向に連続して配列される。
【0005】
カメラ1a〜1eとレンズ2a〜2eは、組み合わされて電池電極シート100、101の略上方であって、電池電極シート100、101の搬送方向に対して略直交するように配列される。
【0006】
カメラ1a〜1eに取り付けられるレンズ2a〜2eは、注目部位の測定分解能や、測定精度によって撮影倍率や撮影距離が決定される。
【0007】
ここで、電池電極シート100、101は搬送中に上下方向にばたつく現象(以下、パスライン変動という)が生じることがある。
塗工工程で均一なシート状物体を塗工するために求められる精度は、数十μm程度の測定精度であるので、パスライン変動の影響を受けないように、エッジまたは注目部位の位置を正確に計測することが求められている。
このため、カメラ1a〜1eは、エッジ(塗工端)の真上からテレセントリック光学系などのレンズを用いて撮影するのが好適である。ただし、近傍によって高倍率で撮影すれば必ずしもこの限りではない。
【0008】
具体的には、カメラ1aとレンズ2aは、連続して配列される電池電極シート100、101のうちの一方の終縁部(電池電極シート100のエッジであって電池電極シート101と隣接していない側のエッジ)の略上方に設置される。
カメラ1bとレンズ2bは、連続して配列される電池電極シート100の注目部位の略上方に設置される。
カメラ1cとレンズ2cは、連続して配列される電池電極シート101の注目部位の略上方に設置される。
カメラ1dとレンズ2dは、連続して配列される電池電極シート100、101のうちの他方の終縁部(電池電極シート101のエッジであって電池電極シート100と隣接していない側のエッジ)の略上方に設置される。
【0009】
カメラ1a〜1eは、ラインカメラまたはエリアカメラにより構成され、電池電極シート100、101のエッジまたは注目部位を撮像する。
カメラ1aは、レンズ2aを介し電池電極シート100におけるエッジ(電池電極シート100のエッジであって電池電極シート101と隣接していない側のエッジ)を撮像する。
カメラ1bは、レンズ2bを介し電池電極シート100における注目部位を撮像する。
カメラ1cは、レンズ2cを介し電池電極シート100、101における他のシートと隣接している側のエッジ(電池電極シート100、101のエッジであって電池電極シート101、100と隣接している側のエッジ)を撮像する。
カメラ1dは、レンズ2dを介し電池電極シート101における注目部位を撮像する。
カメラ1eは、レンズ2eを介し電池電極シート101におけるエッジ(電池電極シート101のエッジであって電池電極シート100と隣接していない側のエッジ)を撮像する。
【0010】
ここで図3では、2条塗り(ベース基材の金属箔にカーボンなどを全面塗りではなく、2条に塗り分ける)を示しているが、常に2条塗りであることはなく、品種によっては3条、4条と塗り方が異なる。
このように、3条、4条と品種によって塗り方が異なる場合は、従来の位置測定システムは、どこに塗工端がきても対応できるように、カメラ視野が途切れることのないように、カメラを密着させて電池電極シートの搬送方向に対して略直交するように並べている。
【0011】
このような構成で、従来の位置測定システムは、以下の動作を行なう。
(1)搬送ローラーは、電池電極シート100、101を搬送する。
(2)カメラ1a〜1eは、レンズ2a〜2eを介して搬送される電池電極シート100、101の予め定められた注目部位またはエッジ(縁部)を撮像し、撮像データを演算制御手段(図示せず)に送信する。
(3)演算制御手段は、各カメラから受信した撮像データ(各シートの注目部位およびエッジの位置)に基づいて、基準位置からどれだけ位置ずれが生じているかを測定し、位置ずれを是正する位置制御のための制御データを図示しない駆動手段に伝達する。
たとえば、演算制御手段は、シート端が正常な位置から右側にずれていると判断された場合は、演算制御手段は、駆動手段にシートを左側に移動するように制御データを送信する。
(4)駆動手段は、受信した制御データに基づき、電池電極シート100、101の位置を移動する。たとえば、駆動手段は制御データに基づきシートを左側に移動する。
【0012】
このように、従来の位置測定システムは、注目部位およびエッジの位置の略上方に設置される複数のカメラが、電池電極シート100、101の注目部位またはエッジの位置を測定し、演算制御手段が測定したエッジの位置から基準となる位置からのずれを算出し、是正するために必要な移動量および移動方向を算出することにより、シートを正確な位置に配置制御できる。
【0013】
このような位置測定システムに関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−068285号公報
【特許文献2】特開2007−285867号公報
【0015】
特許文献1(特開2003−068285号公報)では、カメラを用いずに塗工端検出器を近傍に設置して検出するなどの方法がとられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、位置測定システムにおいてシート状物体を正確な位置への配置制御するにあたり、注目部位またはエッジの位置(塗工端の位置)ずれの測定には、生産ラインとしては付加価値を付けられるわけではないので安価な装置であることが望まれている。注目部位やエッジの位置ずれの測定には、検出精度や技術的難易度も低く様々な測定方法の提案が可能である。
【0017】
しかしながら、従来の位置測定システムでは、カメラと組み合わせるレンズが高価であると、カメラ台数が増えれば増えるほどシステム価格が高価になってしまいコスト的には不利であるという問題点があった。
また、注目部位およびエッジの位置の上方にそれぞれカメラ及びレンズが設置されるので、設置作業に時間がかかってしまうという問題点があった。
【0018】
また、特許文献1に示された位置測定システムでは、シート状物体の品種によっては塗り方が異なることがあり、塗工端検出器を塗工端近傍の適切な位置に改めて設置しなければならず、段替え作業が発生してしまうという問題点があった。このような場合、段替え作業には生産ラインを止める必要なければならないという問題点があった。
【0019】
本発明は上述の問題点を解決するものであり、その目的は、品種によって変わる塗工パターンに影響されずに(すなわち品種による段替えが発生せずに)、エッジまたは注目部位の位置ずれを正確に測定する位置測定システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
搬送されるシート状物体の予め定められた注目部位の位置をカメラを用いて測定する位置測定システムにおいて、
前記シート状物体の一方のエッジの略上方に設置され、前記シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、前記シート状物体の前記注目部位を撮像する第1のカメラ手段と、
前記シート状物体の他方のエッジの略上方に設置され、前記シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、前記シート状物体の前記注目部位を撮像する第2のカメラ手段と、
前記各撮像素子に結像された前記シート状物体の像における、前記注目部位の位置の予め定められた基準位置からの変動に基づき、パスライン変動の有無を判定してエッジの位置ずれを測定する測定手段を備えたことを特徴とする位置測定システム。
【0021】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の位置測定システムにおいて、
前記シート状物体における前記注目部位の基準位置として第1の基準位置、第2の基準位置を予め記憶する記憶手段を備え、
前記測定手段は、
前記各撮像素子に結像された前記シート状物体の像における前記注目部位の位置が、前記第1の基準位置および前記第2の基準位置からそれぞれ同じ方向に同じ量だけ移動した位置であるときは、パスライン変動が未発生であるものとして前記シート状物体のエッジの水平方向における位置ずれを測定することを特徴とする。
【0022】
請求項3記載の発明は、
請求項1または請求項2記載の位置測定システムにおいて、
前記測定手段は、
前記各撮像素子に結像された前記シート状物体の像における前記注目部位の位置が、前記第1の基準位置および前記第2の基準位置から互いに反対方向に移動した位置であるときは、パスライン変動が発生したものとして高さ方向におけるエッジの位置ずれを測定することを特徴とする。
【0023】
請求項4記載の発明は、
請求項1〜請求項3いずれかに記載の位置測定システムにおいて、
前記記憶手段が、
前記第1のカメラ手段、第2のカメラ手段により予め撮影されたシート状物体の注目部位の前記基準位置からの位置ずれの量および位置ずれの種類、位置ずれの方向を関連付けたデータテーブルを記憶し、
前記測定手段が、
各カメラ手段の各撮像素子におけるシート状物体の注目部位の位置ずれの方向および移動量と前記データテーブルに基づいて、注目部位の位置ずれの種類、位置ずれの方向、位置ずれの量を測定することを特徴とする。
【0024】
請求項5記載の発明は、
請求項1〜請求項4いずれかに記載の位置測定システムにおいて、
前記シート状物体は、
長手方向に交わる方向に2条以上が配列され、
前記第1のカメラ手段は、
前記各シート状物体のうち一方の終縁部の略上方に設置され、前記各シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、前記シート状物体の予め定められた注目部位を撮像し、
前記第2のカメラ手段は、
前記各シート状物体のうち他方の終縁部の略上方に設置され、前記各シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、前記シート状物体の予め定められた注目部位を撮像することを特徴とする。
【0025】
請求項6記載の発明は、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の位置測定システムにおいて、
前記シート状物体と前記各撮像素子は平行に設置され、
前記シート状物体と前記各撮像素子との間に設置されたレンズを平行移動させて、前記各撮像素子に前記シート状物体の像を結像させるシフトレンズ手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、シート状物体の一方のエッジの略上方に設置され、シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、シート状物体の注目部位を撮像する第1のカメラ手段と、シート状物体の他方のエッジの略上方に設置され、シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、シート状物体の注目部位を撮像する第2のカメラ手段と、各撮像素子に結像されたシート状物体の像における、注目部位の位置の予め定められた基準位置からの変動に基づき、パスライン変動の発生の有無を判定し、エッジの位置ずれを測定する測定手段を備えたことにより、品種によって変わる塗工パターンに影響されずに(すなわち品種による段替えが発生せずに)、エッジまたは注目部位の位置を正確に測定できる。
また、この場合、カメラとレンズの組み合わせ数が2個のみでよいため、短時間の設置作業で、かつ、低コストで実現できる点でも有効である。
【0027】
また、本発明によれば、撮影毎に測定装置が、測定した各カメラでの撮像素子におけるシート状物体の注目部位またはエッジの位置ずれの方向および移動量に基づいて、記憶手段のデータテーブル中のパスライン変動の位置ずれの方向と変位量、水平方向位置ずれの位置ずれの方向と変位量を抽出することにより、注目部位またはエッジ(塗工端)のパスライン変動の位置ずれの方向(ずれの方向)、変位量(移動量、ずれの量)、および、水平方向位置ずれの方向、変位量(移動量、ずれの量)のそれぞれを独立して計測できる。すなわち、本発明であれば、複合的に発生する注目部位、エッジ(塗工端)の「水平方向位置ずれ」とパスライン変動による「高さ方向位置ずれ」とを切り分けて算出できる点で有効である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る位置測定システムの一例を示す構成図である。
【図2】図1の測定手段62aの動作説明図である。
【図3】従来の位置測定システムの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(構成の概要)
図1は本発明に係る位置測定システムの一例を示す構成図であり、図3と共通する部分には同一の符号を付けている。
図3との相違点は、図1では、第1のカメラ手段および第2のカメラ手段が長手方向に交わる方向に2条以上が配列されたシート状物体のうち一方の終縁部および他方の終端部の略上方(搬送方向に対して垂直上方向)に設置される点である。
また、各カメラに備えられた各撮像素子に結像されたシート状物体の像における、注目部位の予め定められた基準位置からの変動に基づき、パスライン変動の発生の有無を判定し、両エッジの位置ずれを測定する測定手段を備えた点でも図3と相違する。
【0030】
図1において、本発明の位置測定システムは、主に、搬送方向に交わる方向に配列されるシート状物体の一例である電池電極シート100、101を支持して概ねパスライン一定に保って搬送する図示しない搬送ローラーと、レンズ4aを介して電池電極シート100、101の予め定められた各注目部位または各エッジ(縁部)をそれぞれ撮像する第1のカメラ手段の一例であるカメラ5aと、レンズ4bを介して電池電極シート100、101の予め定められた各注目部位または各エッジ(縁部)をそれぞれ撮像する第2のカメラ手段の一例であるカメラ5bと、カメラ5a、5bと接続線を介して電気的に接続され、カメラ5a、5bが備える各撮像素子に結像された電池電極シート100、101の像において、各注目部位および各エッジの位置が予め定められた「基準位置」からの変動に基づき、パスライン変動の発生の有無を判定し、両エッジの位置ずれを測定する測定装置6とから構成される。
ここで、位置ずれには、シート面上でシートの搬送方向と直交する方向(以下、水平方向という)のずれである「水平方向位置ずれ」と、パスライン変動により生じる高さ方向のずれである「高さ方向位置ずれ」がある。
【0031】
また、本発明の位置測定システムは、位置ずれを是正する位置制御のための制御データを図示しない駆動手段に伝達して、シートを正確な位置に配置制御する配置制御手段7と、電池電極シート100、101とカメラ5a、5bとの間に設置されたレンズ4a、4bを平行移動させて、カメラ5a、5bが有する各撮像素子にシート状物体の像を結像させるシフトレンズ手段8も備えるものでもよい。
【0032】
(主な構成要素の説明)
シート状物体の一例である電池電極シート100、101は、搬送ローラー(図示していない)に支持され、概ねパスラインが一定に保たれて搬送される。
これらの2条の電池電極シートは、シートの長手方向(または搬送方向)と交わる(垂直)方向に連続して配列される。
【0033】
レンズ4a、4bは、略同一のレンズであり、カメラ5a、5bに取り付けられる。レンズ4a、4bは、たとえば通常の画角を有するレンズであって、特に計測に支障がないような低ひずみ(歪曲収差)のレンズが好適である。
【0034】
なお、レンズ4a、4bは、一般的には歪曲収差が少ない引き伸ばしレンズで代表されるような、光学的設計が絞りに対して概ね対称形状にデザインされた低ひずみ撮影レンズで構成されることが好ましい。引き伸ばしレンズは、ガウス光学系を基本とした、絞りに対して左右対称のレンズ構成であることにより、そのレンズ構成から歪曲収差が発生しないというメリットがあるからである。
【0035】
カメラ5a、5bは、ラインカメラもしくはエリアカメラであって、レンズ4a、4bと組み合わされて、連続して配列される電池電極シート100、101の各終縁部(塗工端)の略上方(ほぼ真上)に設置される。このとき、カメラ5a、5bは互いを結ぶ直線が電池電極シート100、101に対して略直交方向になるように設置される。
また、カメラ5a、5bは電池電極シート100、101の略全幅を撮影可能な倍率となるようにレンズ4a、4bの焦点距離や撮影距離を設定して設置される。
【0036】
具体的には、カメラ5aは、レンズ4aと組み合わされて、電池電極シート100、101のうちの一方の終縁部(電池電極シート100のエッジであって電池電極シート101と隣接していない側のエッジ)の略上方(搬送方向に対して垂直上方向(ほぼ真上))に設置される。
カメラ5bは、レンズ4bと組み合わされ、電池電極シート100、101のうちの他方の終縁部(電池電極シート101のエッジであって電池電極シート100と隣接していない側のエッジ)の略上方(搬送方向に対して垂直上方向(ほぼ真上))に設置される。
【0037】
これらのカメラ5a、5bは、カメラ5aの視野とカメラ5bの視野が同じ視野になるようにカメラ5a、5bの姿勢、倍率、台形ひずみ等の撮影上のひずみ等を正確に合わせて設置される。たとえば、カメラ5aは、電池電極シート100、101の各エッジ部、注目部位を撮像する。
このとき、電池電極シート100、101とカメラ5a、5bが備える各撮像素子とは、平行になるように設置される。
【0038】
たとえば、カメラ5a(カメラ5b)は、たとえばシフトレンズ手段8が電池電極シート100、101と撮像素子とを平行に保ちつつ、レンズ4aのみを撮像素子から平行移動させることにより、電池電極シート100の注目部位若しくはエッジ、および電池電極シート101の注目部位又はエッジを撮像する。
このため、レンズのイメージサークルや撮像素子を有効に使用することができ、カメラ、レンズのスペックを落として使うことが出来る。
【0039】
言い換えれば、カメラ5a(カメラ5b)は、姿勢を傾けて、反対側に配列される電池電極シート100(電池電極シート101)の注目部位またはエッジ(塗工端)を撮像するのではない。なお、場合によっては、姿勢を傾けて、反対側に配列される電池電極シート100(電池電極シート101)の注目部位またはエッジ(塗工端)を撮像するのでもよい。
【0040】
測定装置6は、主に、予めカメラ5a、5bで撮像された位置ずれを測定するための基準となる「第1の基準位置」、「第2の基準位置」を記憶する記憶手段61と、CPU(Central Processing Unit)などの演算制御部62と、演算制御部62により制御されパスライン変動の有無を判定し位置ずれを測定する測定手段62aと、カメラ5a、5bまたは外部機器とデータ通信する通信手段63、から構成される。
【0041】
演算制御部62は、通信手段63を介して各カメラ5a、5bから受信した撮像データにより、各撮像素子に映った電池電極シート100、101の注目部位またはエッジの位置を予め定められた原点位置等に基づいて座標値などの2次元データにより特定し、記憶手段61に記憶する。
【0042】
ここで演算制御部62は、主に、測定手段62aおよび各機能を統合的に制御し、記憶手段61に格納されているOSなどを起動して、このOS上で格納されたプログラムを読み出して実行することにより、測定装置6および位置測定システム全体を制御し、測定装置6固有の動作を行うものであってよい。たとえば記憶部のRAM(図示せず)は、その動作の際に作業領域として使用される。
【0043】
測定装置6の記憶手段61は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクなどであって、主にOSや制御装置として動作するためのプログラムや、第1の基準位置、第2の基準位置、位置ずれ測定用データテーブルなどの各種情報を記憶する。
【0044】
第1の基準位置は、注目部位およびエッジの位置ずれを測定するために予めカメラ5aで撮像された電池電極シート100、101の注目部位または各エッジの位置を含む1又は2以上の2次元座標データ(撮像素子に写り込んだ画像の座標位置)などから構成される。
【0045】
第2の基準位置は、注目部位およびエッジの位置の位置ずれを測定するために予めカメラ5bで撮像された電池電極シート100、101の注目部位または各エッジの位置を含む1又は2以上の2次元座標データ(撮像素子に写り込んだ画像の座標位置)などから構成される。
【0046】
また、記憶手段61は、予めカメラ5a、5bにより電池電極シート100、101の注目部位、エッジが移動量・移動方向によってどのように見えるかを示した画素ごとの座標データを位置ずれ測定用データテーブル(以下、データテーブルという)を予め記憶している。
本発明の位置測定システムは、このデータテーブルの座標データと撮像された注目部位の座標データの比較によって、複合的に発生する塗工端の位置ずれとパスライン変動を切り分けて出力すること可能とするものである。
【0047】
具体的には、データテーブルは、予めカメラ5a、5bでパスライン変動を含む撮影条件で複数パターンの撮影を行い、これら撮影された画像に基づき演算制御部62により、各カメラで撮像された電池電極シート100、101の各部位の2次元座標データ(各撮像素子(全素子)に写り込んだ画像の座標位置など)を関連付けてテーブル化したものである。
【0048】
データテーブルは、たとえば次の動作により取得できる。
カメラ5a、5bは、予め寸法精度の安定した(温度などで伸縮しない)材質で、チャートを作成しておくかスケールの目盛りなどを事前に撮影する。
【0049】
カメラ5a、5bは、位置を高さ方向に任意に変えられる電池電極シートを載せた台もしくはカメラ台を用いて、擬似的にパスライン変動(高さ方向位置ずれ)を生じさせ、たとえば予め定められた位置から1mm毎に−4〜+4mmの高低を変化させて9回撮像する。
また、カメラ5a、5bは、水平方向に位置を任意に変えられる電池電極シートを載せた台もしくはカメラ台を用いて、擬似的に水平方向位置ずれを生じさせ、たとえば予め定められた位置から1mm毎に−4〜+4mmまで左右の位置を変化させて9回撮像する。
さらに、カメラ5a、5bは、高さおよび水平方向の位置を任意に変えられる電池電流シートを載せた台もしくはカメラ台を用いて、擬似的に高さ方向位置ずれ(パスライン変動)および水平方向位置ずれを生じさせ、たとえば予め定められた位置から水平方向および高さ方向に1mm毎にそれぞれ−4〜+4mmまで左右および高低の位置を変化させて9回撮像する。
【0050】
演算制御部62は、それぞれの電池電極シート100、101の注目部位またはそれぞれのエッジについて、予め定められた位置を原点とした2次元座標を用いて注目部位の位置検出またはエッジ検出を行い、カメラ5aおよび5bで得られた注目部位、各エッジの座標位置を擬似的に生じさせた水平方向位置ずれ、高さ方向位置ずれの量と関連付けてデータテーブル生成し記憶手段61に記憶する。
【0051】
また、演算制御部62は、これらの複数のパターンの撮影結果から、カメラ5aで得られた画像の注目部位(エッジ位置)の2次元座標が第1の基準位置からずれていると、「移動量」および「位置ずれの方向」を、擬似的に生じさせた水平方向位置ずれ、高さ方向位置ずれの量と関連付けてデータテーブルに記憶するものでもよい。
【0052】
さらに演算制御部62は、これらの複数のパターンの撮影結果から、カメラ5bで得られた画像の注目部位(エッジ位置)の2次元座標が第2の基準位置からずれていると、「移動量」および「位置ずれの方向」を、擬似的に生じさせた水平方向位置ずれ、高さ方向位置ずれの量と関連付けてデータテーブルに記憶するものでもよい。
【0053】
本発明の位置測定システムは、このように測定された注目部位、エッジの位置データに基づき、データテーブルを記憶手段61に記憶する。
【0054】
測定手段62aは、記憶手段61に記憶される第1の基準値、および、第2の基準値、データテーブル、撮像素子に映った電池電極シート100、101の注目部位またはエッジの位置の座標値等に基づいて、カメラ5a、5bの各撮像素子における基準位置からの「移動量」と「位置ずれの方向」を算出するとともに、これらを比較して、パスライン変動による要因が含まれた情報か否かを判定し(すなわち、パスライン変動の発生の有無を判定し)、両エッジの位置ずれを測定する。具体的な動作説明は図2を用いて後述する。
【0055】
(動作説明)
このような構成で、本発明の位置測定システムは、以下の動作を行なう。
(1)搬送ローラーは、電池電極シート100、101を搬送する。
(2)カメラ5a、5bは、レンズ4a、4bを介して搬送される電池電極シート100、101の予め定められた注目部位またはエッジ(縁部)を撮像し、撮像データを測定装置6に送信する。
(3)測定装置6の測定手段62aは、カメラ5a、5bの各撮像素子における基準位置からの「移動量」と「位置ずれの方向」を算出するとともに、これらを比較して、パスライン変動による要因が含まれた情報か否かを判定し(すなわち、パスライン変動の発生の有無を判定し)、両エッジの位置ずれを測定する。具体的には、以下の(3−1)、(3−2)、または(3−3)の少なくともいずれかの動作を行なう。
(3−1)測定手段62aは、各撮像素子に結像された電池電極シート100、101の像における注目部位の位置が、第1の基準位置および第2の基準位置からそれぞれ「同じ方向」に「同じ量」だけ移動した位置であるときは、水平方向位置ずれのみが発生し、パスライン変動が未発生であるものとして電池電極シート100、101のエッジの位置ずれ(移動量、移動量)を測定する。
(3−2)測定手段62aは、測定手段62aは、各撮像素子に結像された電池電極シート100、101の像における注目部位の位置が、第1の基準位置および第2の基準位置から互いに「反対方向」に「同じ量」だけ移動した位置であるときは、パスライン変動による高さ方向位置ずれのみが発生したものとしてエッジの位置ずれ(位置ずれの方向、移動量)を測定する。
(3−3)測定手段62aは、各撮像素子に結像された電池電極シート100の像における注目部位の位置が、第1の基準位置および第2の基準位置から互いに「反対方向」に「異なる量」だけ移動した位置であるときは、水平方向位置ずれとパスライン変動による高さ方向位置ずれの両方が発生しているものとしてエッジの位置ずれ(位置ずれの方向、移動量)を測定する。
また、測定手段62aは、各カメラで撮影されるエッジAの位置または基準位置からの位置ずれの方向および移動量および記憶手段63のデータテーブルに基づき、水平方向位置ずれが左右いずれかの方向にどの程度の量だけ発生したのか、または、パスラインが上下いずれかの方向にどの程度の量だけ移動したのかを算出する。
(4)測定装置6の演算制御部62は、測定手段62aで測定された位置ずれ(パスライン変動の位置ずれの方向、変位量、および、水平方向位置ずれの方向、変位量)を是正する位置制御のための制御データを図示しない駆動手段に伝達する。
たとえば、演算制御手段62は、測定手段62aにより水平方向位置ずれのみが生じていると判断され、シート端が正常な位置から水平方向に右側にずれていると判断された場合、演算制御手段は、駆動手段にシートを左側に移動するように制御データを送信する。
(5)駆動手段は、受信した制御データに基づき、電池電極シート100、101の位置を移動する。たとえば、駆動手段は制御データに基づきシートを左側に移動する。
【0056】
(測定手段の動作の詳細な説明)
以下、図2を用いて具体的に、測定手段62aによる位置ずれの測定動作を説明する。図2は、図1の測定手段62aの動作説明図であり、(A)は「水平方向位置ずれ」のみが発生し、パスライン変動が未発生であるときの説明図、(B)は「高さ方向位置ずれ」のみが発生した(パスライン変動のみが発生した)ときの説明図、(C)は、「高さ方向位置ずれ」と「水平方向位置ずれ」の両方が発生しているときの説明図である。
なお、図2は説明のために撮像素子周辺を誇張して描いてあるが、実際は図示した比率ではなく一般的な撮影倍率で構わない。
【0057】
図2において、カメラ5aは、レンズ4aを通して電池電極シート100のエッジ(塗工端)Aを撮像し、同じエッジAをカメラ5bでも撮像している。
以下、特にエッジAにおける基準位置からの変動について説明する。また、他のエッジ、注目部位における基準位置からの変動もエッジAと同様であるので説明を省略する。
【0058】
図2(A)において、「水平方向位置ずれ」が生じ、エッジAが図面上「右方向」に移動したとする。
この場合、カメラ5aでは撮像素子に写り込んだ電池電極シート100のエッジAは撮像素子上で第1の基準位置から「左」に移動する(SA101の動き)。
カメラ5bでは、撮影倍率は同じであるため、カメラ5bの撮像素子に写り込んだ電池電極シート100のエッジAは撮像素子上で同量分だけ第2の基準位置から「左(同方向)」に移動する(SA102で示した動き)。
【0059】
このように、水平方向位置ずれのみが発生するとカメラ5a、5bの撮像素子に写る電池電極シートの位置がそれぞれの基準位置から同じ方向に移動する。
パスライン変動が無く、レンズ4a、4bとカメラ5a、5bの撮像素子の距離が固定のままで「水平方向位置ずれ」のみが生じたため、カメラ5a、5bの撮像素子に写り込む像がそれぞれ同じ方向に移動するのである。
【0060】
このとき、測定手段62aは、各撮像素子に結像されたエッジAの位置が、第1の基準位置および第2の基準位置からそれぞれ「同じ方向」に「(略)同じ量」だけ移動した位置であるときは、水平方向位置ずれのみが発生し、パスライン変動が未発生であるものとして電池電極シート100のエッジAの位置ずれを測定する。
【0061】
すなわち、測定手段62aは、注目したエッジAがカメラ5aとカメラ5bの撮像素子において共に同じ方向に同量移動した場合は、パスライン変動が発生していないと判断して、移動した分をそのままエッジの移動量(位置ずれの距離)の計算に用いることができる。
【0062】
このように、図2(A)の場合では、本発明の位置測定システムは、測定手段が、各カメラで撮影されたシートにおける注目部位の位置の予め定められた各基準位置からの変動に基づき、各カメラで撮影された注目位置が「同じ方向」に「同じ量」だけ移動したときは、パスライン変動が発生しなかったものと判定することにより、パスライン変動の影響を排除して注目部位の水平方向の位置ずれの「ずれの方向」、「移動量」を測定することができる。
【0063】
ここで、パスライン変動は製品精度に関係が無い。
このため、本発明の位置測定システムは、各カメラで撮影された注目位置が「同じ方向」に「同じ量」だけ移動したときはパスライン変動の影響を排除し、水平方向位置ずれについてのエッジ(塗工端)の位置または位置ずれを正確に測定できるため、配置制御手段8により塗工機にフィードバックして一定の位置で塗工できることになり有効である。
【0064】
図2(B)において、パスライン変動が生じ(パスラインが下がった)、「高さ方向位置ずれ」が生じているものとする。
この場合、カメラ5aでは撮像素子に写り込んだ電池電極シート100の像は、パスラインが下がったことにより、全体に小さく写り、エッジAは撮像素子上で第1の基準位置から「右」に移動する(SB101の動き)。
カメラ5bでは、カメラ5bの撮像素子に写り込んだ電池電極シート100のエッジAは撮像素子上で同量分だけ第2の基準位置から「左」(SB102)に移動する。
【0065】
このように、パスライン変動のみが発生するとカメラ5a、5bの撮像素子に写る電池電極シートの位置がそれぞれの基準位置から互いに反対方向に移動する。
レンズ4a、4bとカメラ5a、5bの撮像素子の距離が固定であるのに対して、(水平方向位置ずれが無く)パスラインのみが下がったことでレンズと電池電流シート100、101との距離が遠くなったので、カメラ5a、5bの撮像素子に写り込む像が互いに反対方向に移動するのである。
【0066】
このとき、測定手段62aは、測定手段62aは、各撮像素子に結像された電池電極シート100、101の像における注目部位の位置が、第1の基準位置および第2の基準位置から互いに「反対方向」に「(略)同じ量」だけ移動した位置であるときは、パスライン変動のみが発生したものとしてエッジの位置ずれを測定する。
【0067】
すなわち、測定手段62aは、注目したエッジAがカメラ5aとカメラ5bの撮像素子において互いに反対方向に同量移動した場合は、パスライン変動のみが発生したものと判断して、移動した分をそのままエッジの移動量(位置ずれの距離)の計算に用いることができる。
【0068】
このように、図2(B)の場合では、本発明の位置測定システムは、測定手段が、各カメラで撮影されたシートにおける注目部位の位置の予め定められた各基準位置からの変動に基づき、各カメラで撮影された注目位置が「反対方向」に「同じ量」だけ移動したときは、パスライン変動のみが発生したものと判定することにより、注目部位の高さ方向位置ずれの「ずれの方向」、「移動量」を測定することができる。
【0069】
図2(C)において、「水平方向位置ずれ」、「高さ方向位置ずれ」が生じ、エッジAが「右方向」に移動し、パスライン変動により各電池電極シートの位置が低くなったものとする。
実際には図2(C)のように、パスライン変動(高さ方向位置ずれ)および水平方向位置ずれの両方を含んだ複合的な位置ずれが発生することが多い。
【0070】
この場合であっても、本発明の位置測定システムであれば、以下に説明するように、記憶手段63のデータテーブル中に基づき、各撮像素子に結像された電池電極シート100、101の像における注目部位の位置を比較することにより、複合的に発生するエッジ(塗工端)の水平方向位置ずれと高さ方向位置ずれを切り分けて出力することできる。
【0071】
具体的には、カメラ5aでは、全体に小さく写り、撮像素子に写り込んだ電池電極シート100のエッジAは撮像素子上で、たとえば第1の基準位置から移動量0.5mm分だけ「左」に移動する(SC101の動き)。
カメラ5bでは、撮影倍率は同じであるため、カメラ5bの撮像素子に写り込んだ電池電極シート100のエッジAは撮像素子上で、たとえば第2の基準位置から移動量1.0mm分だけに「左(同方向)」に移動する(SC102で示した動き)。
【0072】
測定手段62aは、各撮像素子に結像された電池電極シート100の像における注目部位の位置が、第1の基準位置および第2の基準位置から互いに「同方向」に「異なる量」だけ移動した位置であるときは、パスライン変動と水平方向位置ずれの両方が発生しているものとしてエッジの位置ずれを測定する。
【0073】
また測定手段62aは、各カメラでのエッジAの位置ずれの方向および移動量および記憶手段63のデータテーブルに基づき、水平方向位置ずれが左右いずれかの方向にどの程度の量だけ移動したのか、または、パスラインが垂直上下方向のいずれかの方向にどの程度の量だけ移動したのかを算出する。
【0074】
たとえば、測定手段62aは、カメラ5aでは撮像素子でのエッジAの移動が「左」方向に1mmだけ移動し、カメラ5bでは撮像素子でのエッジAの移動が「左」方向に0.5mmだけ移動した情報と、記憶手段63のデータテーブルとに基づいて、データテーブル中に適合する位置ずれの種類と位置ずれの方向、移動量を抽出する(またはデータテーブル中のデータの傾向から予測計算するものでもよい)。
測定手段62aは、たとえばデータテーブルに基づき、電池電極シート100の位置がパスラインの変動により高さ方向位置ずれが垂直「下」方向に5mm生じ、水平方向位置ずれが「右」方向に1mmだけ生じたことを抽出(算出)する。
【0075】
なお「水平方向位置ずれ」の量、「高さ方向位置ずれ」の量の大小によっては、カメラ5a、5bの各撮像素子に写りこむエッジAの位置の位置ずれの方向、移動量が、図2(C)で示したものとは異なることがある。
たとえば、エッジAはカメラ5aの撮像素子上では、移動量0.5mm分だけ「左」に移動し、カメラ5bの撮像素子上では、移動量1mm分だけに「右(カメラ5aと反対方向)」に移動することもある。
【0076】
このように、図2(C)のような場合であっても、本発明の位置測定システムは、測定装置6が撮影毎に、各カメラの撮像素子における電極電子シート100、101の注目部位またはエッジの各基準位置からの変動(位置ずれの方向、移動量)に基づいて、記憶手段63のデータテーブルから、パスライン変動による高さ方向位置ずれの方向と変位量、水平方向位置ずれの方向と変位量を抽出、算出することにより、生じた「ずれ」が、水平方向位置ずれ、高さ方向位置ずれ、または、高さ方向位置ずれと水平方向位置ずれとの複合ずれのいずれであるのかを判定することができる。
また、本発明の位置測定システムは、注目部位またはエッジ(塗工端)のパスライン変動による「高さ方向位置ずれ」の位置ずれの方向、変位量(移動量、ずれの量)、および、「水平方向位置ずれ」の位置ずれの方向、変位量(移動量、ずれの量)のそれぞれを独立して計測できる。
【0077】
いいかえれば、本発明の位置測定システムは、複合的に発生する注目部位、エッジ(塗工端)の「水平方向位置ずれ」とパスライン変動による「高さ方向位置ずれ」とを切り分けて算出できる。
【0078】
この結果、本発明の位置測定システムは、シート状物体の一方のエッジの略上方に設置され、シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、シート状物体の注目部位を撮像する第1のカメラ手段と、シート状物体の他方のエッジの略上方に設置され、シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、シート状物体の前記注目部位を撮像する第2のカメラ手段と、各撮像素子に結像されたシート状物体の像における、注目部位の位置の予め定められた基準位置からの変動に基づき、パスライン変動の発生の有無を判定し、エッジの位置ずれを測定する測定手段を備えたことにより、品種によって変わる塗工パターンに影響されずに(すなわち品種による段替えが発生せずに)、エッジまたは注目部位の位置を正確に測定できる。
また、この場合、カメラとレンズの組み合わせ数が2個のみでよいため、短時間の設置作業で、かつ、低コストで実現できる点でも有効である。
【0079】
また、本発明の位置測定システムは、撮影毎に測定装置6が、測定した各カメラでの撮像素子における電極電子シート100、101の注目部位またはエッジの位置ずれの方向および移動量に基づいて、記憶手段63のデータテーブル中のパスライン変動の位置ずれの方向と変位量、水平方向位置ずれの位置ずれの方向と変位量を抽出することにより、注目部位またはエッジ(塗工端)のパスライン変動の位置ずれの方向(ずれの方向)、変位量(移動量、ずれの量)、および、水平方向位置ずれの位置ずれの方向(ずれの方向)、変位量(移動量、ずれの量)のそれぞれを独立して計測できる。すなわち、本発明であれば、パスラインの変動に影響を受けず、エッジ(塗工端)や注目部位の位置ずれを測定できる点で有効である。
【0080】
また、パスライン変動は製品精度に関係が無い。具体的には、抜き取り検査のようにオフラインで測定できる場合はパスライン変動を気にしなくても良い。しかし、インラインの装置では連続生産され常時フィードバックをかける必要(フィードバックをかけないまでも、位置ずれの規定値を超えたら装置の調整を行うなど処置を行う必要)がある。
【0081】
このため、本発明の位置測定システムが、エッジ(塗工端)の高さ方向位置ずれおよび水平方向位置ずれの位置ずれの方向、変位量(移動量、ずれの量)のそれぞれを独立して正確に測定できれば、配置制御手段8により塗工機にフィードバックして一定の位置で塗工できることになり有効である。
【0082】
このように、エッジ(塗工端)の位置を常に一定(要求精度以下)に生産することで、後工程であるアッセンブリ工程での工程精度を上げることが出来、有効である。また、製品の品質向上に貢献でき、有効である。
【0083】
(その他の実施例)
なお、上記実施例では、2条のシートについての位置ずれの測定について説明したが、特にこれに限定するものではなく、1条のシートに対しての位置ずれを測定するものでもよい。
この場合、本発明の位置測定システムは、品種によって変わる塗工パターンに影響されずに(すなわち品種による段替えが発生せずに)、エッジまたは注目部位の位置ずれを正確に測定できる。また、この場合、カメラとレンズの組み合わせ数が2個のみでよいため、短時間の設置作業で、かつ、低コストで実現できる点でも有効である。
【0084】
また、上記実施例では、2条のシートについての位置ずれの測定について説明したが、特にこれに限定するものではなく、2条以上のシートが搬送方向に交わる方向に配列されるものに対して各シートの位置ずれを測定するものであってもよい。
この場合、本発明の位置測定システムは、品種によって変わる塗工パターンに影響されずに(すなわち品種による段替えが発生せずに)、エッジまたは注目部位の位置を正確に測定できる。また、この場合、カメラとレンズの組み合わせ数が2個のみでよいため、短時間の設置作業で、かつ、低コストで実現できる点でも有効である。
【0085】
また、上記実施例では、シート状物体の一例として電池電極シートを用いて説明しているが、特にこれに限定するものではなく、紙、フィルムシート、金属箔、または金属蒸着のフィルム、多層膜シート(食品の包装材など)、電池の電極、などの連続体の試料であってもよい。
【0086】
また、カメラ2台1組の構成を複数組配置して、幅広いシート状物体の計測もしくは、カメラをシート状物体に寄せて高倍率撮影することにより、数μmの高分解能撮影を可能にするものでもよい。
【0087】
また、本発明に係る位置測定システムは、測定装置6により算出されたパスライン変動による高さ方向位置ずれの移動量、位置ずれの方向に基づいて、電池電極シートを搬送する搬送装置の保守診断などを行うものでもよいし、生産ライン保全のデータとして利用可能とするものでもよい。
【0088】
また、上記実施例では、レンズ4a、4bは低ひずみレンズを用いるものが好ましいと説明しているが、特にこれに限定するものではなく、低ひずみレンズで構成されるものでなくても、予め校正用のチャートを撮影して記憶手段61に記憶しておくことにより、測定装置6がレンズ固有の高次のレンズひずみ補正(収差)をソフトウェアにより実現するものであってもよい。
【0089】
(付記項7)
前記注目部位は、
前記シート状物体のエッジであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の位置測定システム。
【符号の説明】
【0090】
100、101 電池電極シート
4a、4b レンズ
5a、5b カメラ
6 測定装置
61 記憶手段
62 演算制御部
62a 測定手段
63 通信手段
7 配置制御手段
8 シフトレンズ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシート状物体の予め定められた注目部位の位置をカメラを用いて測定する位置測定システムにおいて、
前記シート状物体の一方のエッジの略上方に設置され、前記シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、前記シート状物体の前記注目部位を撮像する第1のカメラ手段と、
前記シート状物体の他方のエッジの略上方に設置され、前記シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、前記シート状物体の前記注目部位を撮像する第2のカメラ手段と、
前記各撮像素子に結像された前記シート状物体の像における、前記注目部位の位置の予め定められた基準位置からの変動に基づき、前記シート状物体が上下方向にずれるパスライン変動の有無を判定してエッジの位置ずれを測定する測定手段を備えたことを特徴とする位置測定システム。
【請求項2】
前記シート状物体における前記注目部位の基準位置として第1の基準位置、第2の基準位置を予め記憶する記憶手段を備え、
前記測定手段は、前記各撮像素子に結像された前記シート状物体の像における前記注目部位の位置が、前記第1の基準位置および前記第2の基準位置からそれぞれ同じ方向に同じ量だけ移動した位置であるときは、パスライン変動が未発生であるものとして前記シート状物体のエッジの水平方向における位置ずれを測定することを特徴とする請求項1記載の位置測定システム。
【請求項3】
前記測定手段は、
前記各撮像素子に結像された前記シート状物体の像における前記注目部位の位置が、前記第1の基準位置および前記第2の基準位置から互いに反対方向に移動した位置であるときは、パスライン変動が発生したものとして高さ方向におけるエッジの位置ずれを測定することを特徴とする請求項2記載の位置測定システム。
【請求項4】
前記記憶手段が、
前記第1のカメラ手段、第2のカメラ手段により予め撮影されたシート状物体の注目部位の前記基準位置からの位置ずれの量および位置ずれの種類、位置ずれの方向を関連付けたデータテーブルを記憶し、
前記測定手段が、
各カメラ手段の各撮像素子におけるシート状物体の注目部位の位置ずれの方向および移動量と前記データテーブルに基づいて、注目部位の位置ずれの種類、位置ずれの方向、位置ずれの量を測定することを特徴とする請求項1〜3に記載の位置測定システム。
【請求項5】
前記シート状物体は、
長手方向に交わる方向に2条以上が配列され、
前記第1のカメラ手段は、
前記各シート状物体のうち一方の終縁部の略上方に設置され、前記各シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、前記シート状物体の予め定められた注目部位を撮像し、
前記第2のカメラ手段は、
前記各シート状物体のうち他方の終縁部の略上方に設置され、前記各シート状物体の像を結像する撮像素子を具備し、前記シート状物体の予め定められた注目部位を撮像することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の位置測定システム。
【請求項6】
前記シート状物体と前記各撮像素子は平行に設置され、
前記シート状物体と前記各撮像素子との間に設置されたレンズを平行移動させて、前記各撮像素子に前記シート状物体の像を結像させるシフトレンズ手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の位置測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−237210(P2011−237210A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107130(P2010−107130)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】